説明

ラック搬送装置及び自動分析装置

【課題】ラックに保持された複数の検体容器の配列順とは無関係に検体を分注することができ、分析に要する時間を短縮することが可能なラック搬送装置及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】ラックテーブル4と、ラックテーブルをラックの搬送方向に沿った2方向へ移動し、保持した複数の検体容器のそれぞれを検体分注位置へ移動させるX−Yステージ5と、ラック搬送部3b上又はラック回収部3f上のラックをそれぞれラックテーブルへ搬入移動させる搬入装置6,8と、ラックテーブル上のラックをラック搬送部3c又はラック排出部3gへそれぞれ搬出移動させる搬出装置7,9と、これらの装置の作動タイミングを制御する搬送制御部10とを備え、ラックテーブル上のラックが保持した複数の検体容器のそれぞれを所望の順に検体分注位置へ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応させた反応液の光学的特性を測定することによって検体を分析する際に使用するラック搬送装置とこのラック搬送装置を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、検体を採取した複数の検体容器をラックに保持させ、前記ラックをラック搬送装置によって歩進させながら検体吸引位置へ搬送し、検体を反応容器へ分注している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−148202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の自動分析装置は、複数のラックを一方向に沿って順次検体吸引位置へ搬送することから、ラックの配列順やラック上における複数の検体容器の配列順によって検体を反応容器へ分注する順番が決まっていた。この結果、自動分析装置は、検体相互間や使用する試薬相互間のコンタミネーションを回避するうえで、検体によって分注プローブの洗浄回数を増加させる、或いは分析動作全体におけるシーケンスを変更させる等の必要が生じ、分析時間が遅延するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ラックに保持された複数の検体容器の配列順とは無関係に検体を分注することができ、分析に要する時間を短縮することが可能なラック搬送装置及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のラック搬送装置は、複数の検体容器を保持したラックを第一の方向に沿って搬送する第一の複数の搬送手段と、前記第一の複数の搬送手段の搬送始端側又は搬送終端側に配置され、前記ラックを第二の方向に沿って搬送する第二の複数の搬送手段とを備えたラック搬送装置であって、前記第一の複数の搬送手段又は第二の複数の搬送手段の中の2つの第一の搬送手段及び2つの第二の搬送手段と隣接配置され、前記第一及び第二の搬送手段によって搬送されてくる前記ラックが載置されるラックテーブルと、前記ラックテーブルを前記第一の方向又は前記第二の方向に沿って移動することによって、保持した前記複数の検体容器のそれぞれを検体分注位置へ移動させる移動手段と、前記第一の搬送手段上又は第二の搬送手段上のラックをそれぞれ前記ラックテーブルへ搬入移動させる少なくとも2つのラック搬入手段と、前記ラックテーブル上のラックを前記第一の搬送手段又は第二の搬送手段へそれぞれ搬出移動させる少なくとも2つのラック搬出手段と、前記第一の搬送手段、前記第二の搬送手段、前記移動手段、前記ラック搬入手段及び前記ラック搬出手段の作動タイミングを制御する制御手段と、を備え、前記ラックテーブル上のラックが保持した前記複数の検体容器のそれぞれを所望の順に検体分注位置へ移動させることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のラック搬送装置は、上記の発明において、前記移動手段は、X−Yステージであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のラック搬送装置は、上記の発明において、前記ラックテーブルは、初検用のラックを配置する初検配置部と、再検用又は緊急検体用のラックを配置する初検外配置部とを有することを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬が反応した反応液の光学的特性をもとに前記検体を分析する自動分析装置であって、前記ラック搬送装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ラックテーブルによってラックが保持した検体容器を検体分注位置へ移動させ、複数の搬送手段によってラックのラックテーブルへの搬入と搬出を行っている。このため、本発明によれば、ラックテーブルが複数の搬送手段から独立して作動するため、ラックに保持された複数の検体容器の配列順とは無関係に検体を分注することができ、分析に要する時間が短縮されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、自動分析装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、自動分析装置のラック搬送装置を拡大した平面図である。
【図3】図3は、ラック搬送装置によって搬送されるラックの斜視図である。
【図4】図4は、初検搬入装置の構成を示す平面図である。
【図5】図5は、初検搬出装置の構成を示す正面図である。
【図6】図6は、初検外搬入装置の構成を示す正面図である。
【図7】図7は、初検外搬入装置の搬入レバーを示す斜視図である。
【図8】図8は、初検外搬出装置の構成を示す正面図である。
【図9】図9は、初検外搬出装置の搬出レバーを示す斜視図である。
【図10】図10は、初検のラックをラックセット部にセットした状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図11】図11は、初検のラックをラックセット部からラック搬送部に乗り換えさせた状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図12】図12は、ラック搬送部上のラックが初検搬入装置の搬入レバーによってラックテーブルへ搬入される状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図13】図13は、ラックがラックテーブルへ搬入された状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図14】図14は、ラックが保持した1検体目の検体容器が検体分注位置へ搬送された状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図15】図15は、ラックが保持した6検体目の検体容器が検体分注位置へ搬送された状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図16】図16は、検体の分注が終了したラックがラックテーブルによってラック搬送部と対向する位置へ移動された状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図17】図17は、初検搬出装置の搬出レバーがラックをラックテーブルから排出する状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図18】図18は、ラックテーブルから排出されたラックがラック搬送部をバッファ部に臨む端部まで搬送された状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図19】図19は、再検の場合を説明する図であり、再検対象のラックをラック回収部の奥部にセットした状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図20】図20は、ラックを初検外搬入装置の搬入レバーによってラックテーブルへ搬入する状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図21】図21は、ラックをラックテーブルへ搬入した状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図22】図22は、検体の再検分注が終了したラックをラックテーブルによってラック搬送部と対向する位置へ移動した状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図23】図23は、検体の再検分注が終了したラックを初検外搬出装置の搬入レバーによってラックテーブルから排出する状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図24】図24は、検体の再検分注が終了したラックをラック排出部へ移動した状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図25】図25は、緊急検体の場合を説明する図であり、緊急検体を保持したラックをラック回収部の奥部にセットした状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図26】図26は、緊急検体のラックを初検外搬入装置の搬入レバーによってラックテーブルへ搬入する状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図27】図27は、緊急検体のラックをラックテーブルへ搬入した状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図28】図28は、緊急検体の分注が終了したラックをラックテーブルによってラック搬送部と対向する位置へ移動した状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図29】図29は、緊急検体の分注が終了したラックを初検外搬出装置の搬入レバーによってラックテーブルから排出する状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【図30】図30は、緊急検体の分注が終了したラックをラック排出部へ移動した状態を示すラック搬送装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のラック搬送装置及び自動分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、自動分析装置の概略構成を示す平面図である。図2は、自動分析装置のラック搬送装置を拡大した平面図である。図3は、ラック搬送装置によって搬送されるラックの斜視図である。
【0013】
自動分析装置1は、図1に示すように、ラック搬送装置2、キュベットホイール11、検体分注装置12、試薬保冷庫13、試薬分注装置14、撹拌装置15、測光装置16、洗浄装置17、制御部21、入力部22及び出力部23を備えている。
【0014】
ラック搬送装置2は、ラックを検体分注位置Ps(図1参照)へ搬送すると共に、検体の分注を終えたラックを回収位置へ搬送する装置であり、図1及び図2に示すように、搬送コンベア3、ラックテーブル4、初検搬入装置6、初検搬出装置7、初検外搬入装置8、初検外搬出装置9及び搬送制御部10を備えている。ここで、図2は、初検のラックをラックテーブル4へ搬入し、初検のラックをラックテーブル4から搬出する際のラックテーブル4の基準位置を示している。
【0015】
搬送コンベア3は、2種類のコンベアから構成され、図2に示すように、ラックセット部3a、ラック搬送部3b,3c、バッファ部3d、戻し搬送部3e、ラック回収部3f及びラック排出部3gを有している。ここで、以下の説明においては、搬送コンベア3によるラックの水平面内における搬送方向を言う場合、第一の方向をX軸方向といい、第二の方向をY軸方向という。そして、鉛直方向をZ軸方向という。
【0016】
ラックセット部3aは、セットされるラックをX軸方向に沿ってラックを搬送する搬送手段であり、図2に矢印で示すように、ラックをラック搬送部3bへ搬送する。ラック搬送部3b,3cは、Y軸方向に沿ってラックを搬送する搬送手段である。ラック搬送部3bは、ラックセット部3aを搬送されてきたラックをラックテーブル4へ搬送する。ラック搬送部3cは、ラックテーブル4から搬出されるラックをバッファ部3dへと搬送する。
【0017】
バッファ部3dは、X軸方向に沿ってラックを搬送する搬送手段であり、図2に矢印で示すように、ラック搬送部3cを搬送されてきたラックを戻し搬送部3eへ搬送する。戻し搬送部3eは、Y軸方向に沿ってラックを搬送する搬送手段であり、バッファ部3dを搬送されてきたラックをラック回収部3fへ搬送する。ラック回収部3fは、X軸方向に沿ってラックを搬送する搬送手段であり、図2に矢印で示すように、戻し搬送部3eを搬送されてくるラックを回収部となるラック搬送部3c側へ搬送する。
【0018】
ラック排出部3gは、X軸方向に沿ってラックを搬送する搬送手段であり、ラックテーブル4から搬出される緊急時に割り込んだラックや再検のラックを図2に矢印で示す方向へ搬送する。
【0019】
ここで、図3に示すように、ラックRは、採血管等の検体を保持した検体容器Tbを複数搭載し、端面に他のラックRと識別する識別番号を含むラック情報を記録した記録媒体としてバーコードラベルやRFID或いはIDコード、2次元コード等のラック情報記録媒体Mrが貼付されている。また、検体容器Tbには、検体を識別する検体番号,分析項目等を含む検体情報を記録した記録媒体としてバーコードラベルやRFID或いはIDコード、2次元コード等の検体情報記録媒体Msが側面に貼付されている。
【0020】
そして、図2に示すように、ラックセット部3aにセットされたラックは、ラックセット部3aの近傍に設置した情報読取装置2aによってラック情報が読み取られ、ラック搬送部3bを搬送される際に、近傍に設置した情報読取装置2bによって検体情報が読み取られる。また、例えば、再検対象等のラックは、ラック排出部3gを搬送される際に、近傍に設置した情報読取装置2cによってラック情報が読み取られ、ラックテーブル4からラック排出部3gへ搬出される際に、ラック搬送部3bとラック排出部3gとの間に配置した情報読取装置2dによって検体情報が読み取られる。情報読取装置2a〜2dは、読み取ったラック情報や検体情報を、制御部21を介して搬送制御部10へ出力する。なお、ラックは、図1に示すように、ラック搬送部3b,3cからX軸方向に沿って離れた位置にある検体分注位置Psにおいて検体分注装置12によって検体容器Tbから検体が吸引される。
【0021】
ラックテーブル4は、X−Yステージ5によって図1に示すX軸方向とY軸方向へ移動され、載置したラックに保持された複数の検体容器を検体分注位置Psへ搬送する。ラックテーブル4は、図2に示すように、上面に2条のガイド板4aによって初検検体を保持したラックをセットする初検ラック保持部と、2条のガイド板4bによって緊急検体や再検検体を保持したラックをセットする初検外ラック保持部とが形成されている。前記初検ラック保持部及び初検外ラック保持部のラック搬出側には、それぞれ搬入位置を位置決めするストッパ4c,4dが配置されている。ストッパ4c,4dとしては、例えば、ソレノイド等を使用することができる。また、ラックテーブル4は、2条のガイド板4aによって形成される初検ラック保持部にY軸と並行に長孔4eが形成され、レバー7jが長孔4eから出没するように長孔4eの下部に初検搬出装置7が設置されている。
【0022】
X−Yステージ5は、X軸ステージ5aと、X軸ステージ5a上に支持されるY軸ステージ5cを備えている。X軸ステージ5aは、モータ5bによって駆動され、Y軸ステージ5cを支持してX軸方向へ移動させる。Y軸ステージ5cは、モータ5dによって駆動され、ラックテーブル4を支持してY軸方向へ移動させる。
【0023】
初検搬入装置6は、初検のラックをラックテーブル4へ搬入する搬入手段であり、図2に示すように、ラック搬送部3bと並行に配置されている。初検搬入装置6は、ラック搬送部3bによって搬送されてくるラックを2条のガイド板4aによって形成される初検ラック保持部へと搬入する。初検搬入装置6は、図4に示すように、基板6a、駆動ベルト6e、ガイドレール6g、ベアリングローラ6h及び搬入レバー6jを有している。駆動ベルト6eは、基板6aに回転自在に取り付けた主動プーリ6cと従動プーリ6dの間に掛け渡されており、モータ6bによって主動プーリ6cを回転させると、取付部材6fと共に左右に移動する。搬入レバー6jは、基端がベアリングローラ6hに連結されている。そして、ベアリングローラ6hは、駆動ベルト6eに設けた取付部材6fとの間を連結した引張りばね6iにより、駆動ベルト6eの作動による取付部材6fの移動に伴ってガイドレール6gに沿って移動するように付勢されている。
【0024】
初検搬出装置7は、初検のラックをラックテーブル4の前記初検ラック保持部からラック搬送部3cへ搬出する搬出手段であり、ラックテーブル4の長孔4e下方に設置されている。ここで、初検搬出装置7、初検外搬入装置8及び初検外搬出装置9は、初検搬入装置6と機械的構成が同一であるので、以下の説明においては対応する部分に対応する符号を付している。
【0025】
初検搬出装置7は、図5に示すように、ベアリングローラ7hと駆動ベルト7eに設けた取付部材7fとの間を連結した引張りばね7iにより、駆動ベルト7eの作動による取付部材7fの移動に伴ってベアリングローラ7hが搬出レバー7jと共にガイドレール7gに沿って移動する。このとき、搬出レバー7jは、取付部材7fが図中Y軸方向右方へ移動すると、ガイドレール7gの湾曲によってZ軸方向へ移動して長孔4eからラックテーブル4上へ上昇し、ラックをラック搬送部3cへと搬出する。そして、搬出レバー7jは、取付部材7fが図中Y軸方向左方へ移動すると、長孔4eから下降し、初期位置へ戻る。
【0026】
初検外搬入装置8は、緊急検体や再検検体等の初検外のラックをラックテーブル4へ搬入する搬入手段であり、図2に示すように、ラック搬送部3cとラック回収部3fとの間の下方に設置されている。初検外搬入装置8は、ラック回収部3fのラック搬送部3c側に配置された初検外のラックを2条のガイド板4bによって形成された初検外ラック保持部へと搬入する。初検外搬入装置8は、図6に示すように、ベアリングローラ8hと駆動ベルト8eに設けた取付部材8fとの間を連結した引張りばね8iにより、駆動ベルト8eの作動による取付部材8fの移動に伴ってベアリングローラ8hが搬入レバー8jと共にガイドレール8gに沿って移動する。ここで、搬入レバー8jは、図7に示す基端Eがベアリングローラ8hに連結され、ベアリングローラ8hと共にY軸方向へ移動する。
【0027】
初検外搬出装置9は、初検外のラックをラックテーブル4の前記初検外ラック保持部からラック排出部3gへ搬出する搬出手段であり、図2に示すように、ラック回収部3fとラック排出部3gとの間の下方に設置されている。初検外搬出装置9は、図8に示すように、ベアリングローラ9hと駆動ベルト9eに設けた取付部材9fとの間を連結した引張りばね9iにより、駆動ベルト9eの作動による取付部材9fの移動に伴ってベアリングローラ9hが搬出レバー9jと共にガイドレール9gに沿って移動する。ここで、搬出レバー9jは、図9に示す基端Eがベアリングローラ9hに連結され、ベアリングローラ9hと共にY軸方向へ移動する。
【0028】
搬送制御部10は、マイクロコンピュータ等の制御手段が使用され、制御部21を介して入力される情報読取装置2a〜2dが読み取ったラック情報や検体情報をもとに搬送コンベア3によるラックの搬送、X−Yステージ5によるラックテーブル4の移動、並びに初検搬入装置6、初検搬出装置7、初検外搬入装置8及び初検外搬出装置9の駆動を含むラック搬送装置2の作動を制御する。
【0029】
キュベットホイール11は、図1に示すように、複数の反応容器11aを保持して回転し、検体分注位置Psの検体容器から反応容器11aに検体が分注される。キュベットホイール11は、加温装置(図示せず)によって一定温度(=略37℃)に保温されている。
【0030】
検体分注装置12は、図1に示すように、ラック搬送装置2とキュベットホイール11との間に配置されており、上下方向への昇降と水平方向への回動をする分注アーム12aに保持される分注プローブによって検体分注位置Psの検体容器から反応容器11aに検体を分注する。
【0031】
試薬保冷庫13は、図1に示すように、放射状に仕切られた内部に複数の試薬容器13aを収容し、所定温度に保冷している。試薬容器13aは、検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類,ロット番号及び有効期限等の試薬情報を記録したバーコードラベルやRFID等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。試薬保冷庫13の外側には、試薬容器13aに貼付した前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、制御部21へ出力する情報読取装置13bが設置されている。
【0032】
試薬分注装置14は、図1に示すように、キュベットホイール11と試薬保冷庫13との間に配置されており、上下方向への昇降と水平方向への回動をする分注アーム14aに保持される分注プローブによって試薬容器13aから反応容器11aに試薬を分注する。
【0033】
撹拌装置15は、反応容器11a内の液体を、例えば、撹拌棒によって撹拌する。測光装置16は、反応容器11a内の液体を透過する光の光量を測定し、測定した光量に対応する測定信号を制御部21へ出力する。洗浄装置17は、測光装置16による測定が終了した反応容器11aを洗剤や洗浄水によって洗浄し、乾燥させる。
【0034】
制御部21は、例えば、分析結果を記憶する記憶機能等を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、上述した各構成部並びに入力部22や出力部23と接続され、自動分析装置1の各部の作動を制御する。制御部21は、ホストコンピュータから入力される検体や試薬の識別番号、試薬保冷庫13における試薬容器13aの配置位置、分析項目、再検の要否等、分析に関連する情報を記憶する。また、制御部21は、測光装置16が測光した光量に基づいて求められる反応容器11a内の反応液の吸光度(光学的特性)から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を記憶する。
【0035】
入力部22は、制御部21へ検体数や分析項目等の入力操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。
【0036】
出力部23は、分析結果を含む分析内容の表示や警告の表示等を出力する出力手段であり、ディスプレイパネル等が使用される。ここで、出力部23は、音声によって警告等を告知してもよい。
【0037】
以上のように構成される自動分析装置1は、キュベットホイール11によって周方向に沿って試薬の分注位置へ搬送されてくる反応容器11aに試薬分注装置14によって試薬容器11aから試薬が順次分注される。試薬が分注された反応容器11aは、キュベットホイール11によって周方向に沿って搬送され、ラック搬送装置2によって検体分注位置Psに搬送されてくる検体容器Tbから順次検体が検体分注装置12によって分注される。
【0038】
そして、検体が分注された反応容器11aは、分注された試薬や試薬と検体が撹拌装置15によって撹拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、キュベットホイール11が再び回転したときに測光装置16を通過して反応液が測光され、測光信号が制御部21へ出力される。制御部21は、測光装置16から入力される測光信号をもとに反応容器11a内の反応液の吸光度(光学的特性)を演算し、検体の成分濃度等を分析する。また、分析が終了した反応容器11aは、洗浄装置17において洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0039】
この検体の分析に際し、ラックRは、搬送制御部10の制御のもとに、ラック搬送装置2によって初検の場合、再検の場合、緊急検体の場合に分けて、以下のようにして搬送される。尚、ラックRの動きを説明する図10〜図29においては、情報読取装置2a〜2dは省略し、初検搬入装置6は簡略化して示している。
【0040】
(初検の場合)
先ず、初検のラックRは、図10に示すように、ラックセット部3aにセットされる。すると、ラックRは、ラックセット部3a上を矢印で示すようにラック搬送部3bへ搬送され、図11に示すように、ラック搬送部3bに乗り換えさせられる。
【0041】
次に、ラックRは、ラック搬送部3bによって搬送されると共に、同期して作動する初検搬入装置6の搬入レバー6jによって、図12に示すように、ラック搬送部3bからラックテーブル4へ移動される。そして、ラックRは、図13に示すように、2条のガイド板4aによって形成されるラックテーブル4の前記初検ラック保持部へと搬入される。このとき、ラックRは、ストッパ4cによって搬入位置が規制されて位置決めされる。
【0042】
このとき、ラックRは、ラックセット部3aの近傍に設置した情報読取装置2aによってラック情報が読み取られ、ラック搬送部3bを搬送される際に、近傍に設置した情報読取装置2bによって検体情報が読み取られる。
【0043】
次いで、X−Yステージ5が作動してラックテーブル4がX軸方向とY軸方向に移動され、ラックRは、1検体目の検体容器(図示せず)の位置が検体分注位置Psと一致する図14に示す位置へ搬送される。このとき、ラックRは、ストッパ4cによってラックテーブル4上に位置決めされているので、X−Yステージ5はラックテーブル4の位置を検体分注位置Psに対して調整すればよい。
【0044】
そして、ラックRは、この位置から検体分注装置12による反応容器11aへの検体の分注が開始され、ラックテーブル4がX−Yステージ5によって検体容器の1つ分ずつY軸方向へ移動されてゆく。ここで、図15は、X−Yステージ5によってラックテーブル4を移動させることにより、6検体目の検体容器(図示せず)を検体分注位置Psまで移動させた状態のラックRの位置を示している。
【0045】
このようにして10検体目の検体容器(図示せず)までの検体分注装置12による検体分注が終了すると、図16に示すように、ラックRは、ラックテーブル4によってラック搬送部3cと対向する位置へ移動される。その後、ラックRは、図17に示すように、初検搬出装置7の搬出レバー7jによってラックテーブル4から排出される。
【0046】
このようにしてラックテーブル4から排出されたラックRは、図18に示すように、ラック搬送部3cをバッファ部3dに臨む端部まで搬送された後、バッファ部3d、戻し搬送部3eを通ってラック回収部3fへ搬送される。そして、保持した検体容器が再検対象とならなかったラックは、ラック回収部3fから回収される。
【0047】
(再検の場合)
一方、保持した検体容器が再検対象となったラックRは、図19に示すように、ラック回収部3f奥部にセットされる。すると、ラックRは、図20に示すように、初検外搬入装置8の搬入レバー8jによってラックテーブル4へ搬入される。そして、ラックRは、図21に示すように、2条のガイド板4bによって形成される初検外ラック保持部へ搬入される。このとき、ラックRは、ストッパ4dによって搬入位置が規制されて位置決めされる。
【0048】
ラックRは、初検の場合と同様に、X−Yステージ5に駆動されるラックテーブル4によってX軸方向とY軸方向に移動され、保持した複数の検体容器が検体分注位置Psまで移動されて反応容器11aへ検体が分注される。そして、ラックRは、保持した複数の検体容器の検体が分注された後、X−Yステージ5に駆動されるラックテーブル4によって、図22に示すように、ラックRをラック排出部3gへ移動可能な位置まで移動される。
【0049】
次いで、ラックRは、図23に示すように、初検外搬出装置9の搬出レバー9jによってラックテーブル4から排出される。そして、ラックRは、図24に示すように、ラック排出部3gへ移動される。このようにしてラック排出部3gへ移動されたラックRは、ラック排出部3gによって矢印で示す方向(X軸方向)へ搬送されて回収される。このとき、ラック排出部3gへ搬送されたラックRは、ラック搬送部3bとの間に設置した情報読取装置2dによって検体情報が読み取られ、ラック搬出部3gを搬送される際に、近傍に設置した情報読取装置2cによってラック情報が読み取られる。
【0050】
(緊急検体の場合)
また、緊急検体は、分析中の検体に割り込むことになる。このため、図25に示すように、緊急検体を保持したラックRsをラック回収部3f奥部にセットし、2条のガイド板4bによって形成される初検外ラック保持部がラックRsと対向する位置までX−Yステージ5によって分析中のラックRを保持したラックテーブル4を移動させる。
【0051】
次に、ラックRsは、図26に示すように、初検外搬入装置8の搬入レバー8jによってラックテーブル4へ搬入される。そして、ラックRsは、図27に示すように、2条のガイド板4bによって形成される初検外ラック保持部へ搬入される。このとき、ラックRsは、ストッパ4dによって搬入位置が規制されて位置決めされる。
【0052】
次に、ラックRsは、初検や再検の場合と同様に、X−Yステージ5に駆動されるラックテーブル4によってX軸方向とY軸方向に移動され、保持した複数の検体容器が検体分注位置Psまで移動されて反応容器11aへ検体が分注される。そして、ラックRsは、保持した複数の検体容器の検体が分注された後、X−Yステージ5に駆動されるラックテーブル4によって、図28に示すように、ラックRsをラック排出部3gへ移動可能な位置まで移動される。
【0053】
次いで、ラックRsは、図29に示すように、初検外搬出装置9の搬出レバー9jによってラックテーブル4から排出される。そして、ラックRsは、図30に示すように、ラック排出部3gへ移動される。このようにしてラック排出部3gへ移動されたラックRsは、ラック排出部3gによって矢印で示す方向(X軸方向)へ搬送されて回収される。一方、ラックテーブル4上に残ったラックRは、X−Yステージ5によってラックテーブル4を移動することにより、保持した複数の検体容器が検体分注位置Psまで移動され、検体の分注が続行される。
【0054】
以上のように、本発明のラック搬送装置2は、ラックテーブル4が搬送コンベア3から独立していることから、ラックRに保持された検体容器を任意の順序で検体分注位置Psまで搬送することができ、検体を反応容器へ分注する順番も任意である。このため、例えば、ラックRが、血清1を収容した反応容器、尿1を収容した反応容器、血清2を収容した反応容器、尿2を収容した反応容器の順に4本の反応容器を保持していたとする。
【0055】
この場合、自動分析装置1は、血清分注後、連続して他の血清サンプルを分注する場合、及び尿分注後、連続して他の尿サンプルを分注する場合には、分注プローブの洗浄は1回義務付けられている。これに対して、血清分注後、連続して他の尿サンプルを分注する場合、及び尿分注後、連続して他の血清サンプルを分注する場合には、分注プローブを5回洗浄することが義務付けられている。
【0056】
このような分注条件の場合、自動分析装置1は、搬送制御部10の制御のもとにラック搬送装置2を制御することで、上述した血清と尿からなる4検体を表1に示すようにして順序を変更して検体を分注することが可能である。これに対して、ラックテーブル4を備えておらず、検体容器の配列順によって検体の分注順番が決まってしまう従来の自動分析装置では、表1に併記したように分注プローブの洗浄回数が増加する結果、分析時間が遅延してしまう。
【0057】
【表1】

【0058】
以上のように、本発明によれば、ラックテーブル4が搬送コンベア3から独立していることから、ラックRに保持された複数の検体容器の配列順とは無関係に検体を分注することができる。このため、ラック搬送装置2及びラック搬送装置2を搭載した自動分析装置1は、分析に要する時間を短縮し、分析効率を高めることができる。また、自動分析装置1は、ラック搬送装置2における分注順序を検体に応じて変更するだけでよいので、制御も簡単になるという利点がある。また、自動分析装置1は、検体に応じて分注順序を変更することにより、分注プローブの洗浄回数を低減することができるので、洗浄水や洗剤の使用量を低減することができる。
【0059】
また、自動分析装置1は、ラック搬送装置2の移動手段としてX−Yステージ5を使用するので、ラック搬送装置2をコンパクトに構成することができる。
【0060】
また、ラックテーブル4は、初検用のラックを配置する初検配置部と、再検用又は緊急検体用のラックを配置する初検外配置部とを有しているので、初検の場合のみならず、再検の場合や緊急検体の場合にもラック搬送装置2を使用することができる。
【0061】
尚、自動分析装置1は、試薬保冷庫が1つの場合について説明したが1つに限定されるものではない。また、本発明の自動分析装置は、複数の自動分析装置を組み合わせたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明のラック搬送装置及び自動分析装置は、ラックに保持された複数の検体容器の配列順とは無関係に検体を分注することができ、分析に要する時間を短縮するのに適している。
【符号の説明】
【0063】
1 自動分析装置
2 ラック搬送装置
3 搬送コンベア
3a ラックセット部
3b,3c ラック搬送部
3d バッファ部
3e 戻し搬送部
3f ラック回収部
3g ラック排出部
4 ラックテーブル
5 X−Yステージ
6 初検搬入装置
7 初検搬出装置
8 初検外搬入装置
9 初検外搬出装置
10 搬送制御部
11 キュベットホイール
12 検体分注装置
13 試薬保冷庫
14 試薬分注装置
15 撹拌装置
16 測光装置
17 洗浄装置
21 制御部
22 入力部
23 出力部
Mr ラック情報記録媒体
Ms 検体情報記録媒体
Ps 検体分注位置
R ラック
Tb 検体容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体容器を保持したラックを第一の方向に沿って搬送する第一の複数の搬送手段と、前記第一の複数の搬送手段の搬送始端側又は搬送終端側に配置され、前記ラックを第二の方向に沿って搬送する第二の複数の搬送手段とを備えたラック搬送装置であって、
前記第一の複数の搬送手段又は第二の複数の搬送手段の中の2つの第一の搬送手段及び2つの第二の搬送手段と隣接配置され、前記第一及び第二の搬送手段によって搬送されてくる前記ラックが載置されるラックテーブルと、
前記ラックテーブルを前記第一の方向又は前記第二の方向に沿って移動することによって、保持した前記複数の検体容器のそれぞれを検体分注位置へ移動させる移動手段と、
前記第一の搬送手段上又は第二の搬送手段上のラックをそれぞれ前記ラックテーブルへ搬入移動させる少なくとも2つのラック搬入手段と、
前記ラックテーブル上のラックを前記第一の搬送手段又は第二の搬送手段へそれぞれ搬出移動させる少なくとも2つのラック搬出手段と、
前記第一の搬送手段、前記第二の搬送手段、前記移動手段、前記ラック搬入手段及び前記ラック搬出手段の作動タイミングを制御する制御手段と、
を備え、前記ラックテーブル上のラックが保持した前記複数の検体容器のそれぞれを所望の順に検体分注位置へ移動させることを特徴とするラック搬送装置。
【請求項2】
前記移動手段は、X−Yステージであることを特徴とする請求項1に記載のラック搬送装置。
【請求項3】
前記ラックテーブルは、初検用のラックを配置する初検配置部と、再検用又は緊急検体用のラックを配置する初検外配置部とを有することを特徴とする請求項1に記載のラック搬送装置。
【請求項4】
検体と試薬が反応した反応液の光学的特性をもとに前記検体を分析する自動分析装置であって、請求項1〜3のいずれか一つに記載のラック搬送装置を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−2340(P2011−2340A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145786(P2009−145786)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】