説明

ラック装置及び冷却方法

【課題】 ラック装置内へ吸引する空気の温度変化には追従せず、ファンの動作を安定させ、ラック装置内の電子機器の発熱量や位置(高さ)に応じた温度変化には追従し、ファンを細やかに制御するラック装置を提供する。
【解決手段】 電子部品を有する1以上の基板3を内部に収容するラック装置1であって、ラック装置1の第一の側面10から外部の空気を吸入し、その空気を第二の側面11から外部へ排出するファン6と、第一の側面10から吸入する空気の温度を検知する第一センサ4と、第二の側面11から排出する空気の温度を検知する第二センサ5と、第一センサ4が検知した温度と第二センサ5が検知した温度との差に基づき、ファン6の回転を制御する制御部7とを備えるラック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータやネットワーク機器等の電子機器を収納するラック装置及びラック装置に収納される電子機器の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやネットワーク等のシステムのクラウド化に伴い、かかる電子機器を収納するラックにおいては、電子機器の高密度化や設置スペースの縮小による小型化が進められ、電子機器の温度上昇はシステムトラブルに直結するため、ラック内部の電子機器の発熱問題に対処することがますます重要になってきており、より効率的な冷却手法が要請されている。
一般的に、この発熱問題に対応するため、電子機器の冷却手法としては、ラック内に冷気を取り込み、発熱した電子機器から熱を吸収し温められた暖気をラック外に強制的に排出することにより、電子機器を冷却する構成や方法が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、複数の電子機器を収納するための前面及び後面が開口したキャビネットを備え、該キャビネットの後面開口に通気可能なリアドアを備え、該リアドアに冷凍サイクルを構成する蒸発器と共に、排気する空気の温度を検知する排熱温度センサと送風ファンを備え、送風ファンにより送風される電子機器の排熱を含む空気をリアドアの蒸発器で冷却して室内に戻すようにしたラックが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、吸気口と排気口とを有するラック本体からなり、該ラック本体内には、仕切板で仕切られた複数のサーバ収容室が形成され、排気口に、サーバ収容室に収容されたサーバが備える内蔵ファンよりも大風量を送風できるファンと、該ファンに近接して温度検知装置が備わり、排気される暖気の温度に基づいて、ファンの風量を調整するサーバラックが開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、電子機器を内部に収容するラック本体と、ラック本体の内部を冷却する本体冷却手段と、ラック本体内部の温度を検出する温度検出手段と、ラック本体内部の騒音状態を表す騒音特性値を検出する騒音検出手段と、温度検出手段により検出された温度、及び、騒音検出手段により検出された騒音特性値に基づいて、本体冷却手段の出力を制御する制御手段とを備えるラック装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−140421号公報
【特許文献2】特開2009−134507号公報
【特許文献3】特開2010−27911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のいずれの冷却手法も、排気するファンの近傍に温度センサを設け排出する空気の温度に基づいて、又は、ラック内部の前後に温度センサを設けラック装置内部の空気の温度の平均値に基づいて、ファンの風量や回転速度を制御している。また、ラック装置が複数のファンを備える場合、ファンと温度センサとの対応が取れておらず、検知した空気の温度とその空気を排気するファンの制御とが対応していない。
【0008】
しかし、排出温度のみでファンを制御すると、ラック装置に吸引されるラック装置前面の空気(コールドアイルの空気)の温度が変化した場合、吸引温度の変化に伴いファンの制御を行う必要がある。例えば、吸引温度が上昇した場合排出温度もそのままでは上昇するので、その上昇分を抑えようとして、ファンの回転速度を上げる必要がある。逆に、吸引温度が下降した場合、ファンの回転速度を下げる必要がある。このように、排出温度のみでファンを制御すると、回転制御が頻繁となり、ファンの動作が安定しない。
【0009】
また、サーバに代表されるラック装置内部の電子機器は、その使用状態により発熱量が変化するので、ラック装置内部に複数の電子機器を含む基板がある場合、一部の基板では発熱量が多くその他の基板では少ないなど、ラック装置内部においても発熱温度が異なる場合がある。さらに、コールドアイルの空気の温度は、床面からの高さにより異なる場合が多く、ラック装置内部における基板の位置(高さ)によって、吸引温度が異なる場合がある。かかる場合、ラック装置全体で排出する温度の空気の温度を制御すると、各サーバの発熱量と位置(高さ)に応じた排出温度制御ができない。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ラック装置を配置するマシンルームの空調設備と協働することを前提として、ラック装置内へ吸引する空気の温度変化には追従せず、ファンの動作を安定させ、ラック装置内の電子機器の発熱量や位置(高さ)に応じた温度変化には追従し、ファンを細やかに制御するラック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、電子部品を有する1以上の基板を内部に収容するラック装置であって、そのラック装置の第一の側面から外部の空気を吸入し、該空気を第二の側面から外部へ排出するファンと、第一の側面から吸入する空気の温度を検知する第一センサと、第二の側面から排出する空気の温度を検知する第二センサと、第一センサが検知した温度と第二センサが検知した温度との差に基づき、ファンの回転を制御する制御部とを備えるラック装置が提供される。
これによれば、ラック装置内へ吸引する空気の温度変化に追従しない、ファンの動作を安定させるラック装置を提供できる。
【0012】
さらに、第一センサと第二センサは、ファンに対応した高さに備えられ、制御部は、ファンに対応した第一センサと第二センサが検知した温度の差に基づき、ファンの回転を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、ラック装置内の電子機器の温度変化に追従し、ファンを細やかに制御するラック装置を提供できる。
【0013】
さらに、ファンとファンに対応する第一センサ及び第二センサの組を垂直方向に複数備え、制御部は、各組ごとに、その差に基づき、ファンの回転を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、ラック装置内の電子機器の位置と発熱量に応じた温度変化に追従し、ファンを細やかに制御するラック装置を提供できる。
【0014】
さらに、ラック装置は、基板は筐体の内部に備えられ、その筐体を内部に載置することを特徴としてもよい。
これによれば、電子機器を有する基板が筺体内部に含まれる場合であっても、ラック装置内へ吸引する空気の温度変化には追従せず、ファンの動作を安定させ、ラック装置内の電子機器の発熱量や位置(高さ)に応じた温度変化には追従し、ファンを細やかに制御するラック装置を提供できる。
【0015】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、ラック装置に収容された電子機器を、ラック装置に備えられた吸排気手段によって、冷却する冷却方法であって、ラック装置の外部からラック装置の中へ吸入する空気の温度と、ラック装置の中からラック装置の外へ排出する空気の温度との差に基づき、吸排気手段の出力を制御する冷却方法が提供される。
これによれば、ラック装置内へ吸引する空気の温度変化に追従せず、ファンの動作を安定させる、ラック装置に収容された電子機器を冷却する冷却方法を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、ラック装置を配置するマシンルームの空調設備と協働することを前提として、ラック装置内へ吸引する空気の温度変化には追従せず、ファンの動作を安定させ、ラック装置内の電子機器の発熱量や位置(高さ)に応じた温度変化には追従し、ファンを細やかに制御するラック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第一実施例の縦断面図。
【図2】本発明に係る第一実施例の斜視図。
【図3A】本発明に係る第一実施例の変形例における、(A)正面図、(B)背面図、(C)側面図、(D)上面図、(E)底面図、(F)縦断面図、(G)横断面図。
【図3B】本発明に係る第一実施例の変形例における、ファンの詳細図。(A)上から見た図。(B)背面から見た図。
【図4】本発明に係る第一実施例の変形例の斜視図。
【図5】本発明に係る第一実施例の変形例のタッチパネル初期画面。
【図6】本発明に係る第一実施例の変形例のタッチパネル画面遷移図。
【図7】本発明に係る第一実施例の変形例のタッチパネル目標出入温度差入力画面。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
(第一実施例)
図1は、本発明に係る第一実施例におけるラック装置1の縦断面図を示す。ラック装置1は、通常、空気調和システムを有した電算機室の、床下空間を有する床Fの上に設置される。空気調和システムで冷却された冷気は床下空間に吹き出され、この床下空間に冷気が正圧をもって充満し、冷気は床Fの所々に設けられた吹出口から上方に吹き出す。
【0019】
電算機室の中では、ラック装置1は、室内で当ラック装置を効率よく配置するために、列をなし配置される。ラック装置1は、通常その前面から冷気を吸入し、背面から電子機器などにより温められた暖気を排出する。したがって、列をなし配置されたラック装置1からなる電子機器収納ラック群(図示せず)は、互いが平行になるように配置される際、各ラック装置1の冷却効果を高めるため、冷気が噴き出す吹出口がある通路に対して前面を向けて両側に配置される。そうすると、暖気を排出するラック装置1の背面側も、隣のラック装置群のラック装置1の背面側と向き合うように配置されることとなる。その結果、電算機室では、冷気が吹き出す吹出口がある通路、すなわち、コールドアイルCAと、両側のラック群が暖気を排出するホットアイルHAとが交互に現れることになる。
【0020】
ホットアイルHAに排出された暖気は上昇し、電算機室の天井付近に到達した後、空気調和システムが、壁面の上部辺りや天井の開口部などから暖気を吸入し、冷却することにより、再度冷気となって電算機室内を循環させる。このように、コールドアイルCAとホットアイルHAを明確に分けると冷気と暖気が混合されることが少なくなるので、空気調和システムを使って冷却した空気を効率よくラック装置内の電子機器に供給できる。
【0021】
ラック装置1は筺体2を内部に備え、筺体2は電子部品を有する基板3を内部に備える。典型的には、筺体は、1U〜数Uの高さを有するサーバであり、通常ラック装置1に1以上収容される。本図のように横置きされてもよいし、ブレードサーバのように縦置きされてもよい。また、電子部品を有する基板3は筺体2に含まれず、直接ラック装置1の中に収容されてもよい。筺体が不要となるので、基板3をより高密度にラック装置1の中に収容できる。
【0022】
ラック装置1の第一側面10は、コールドアイルCAに面し、空気の流れを生じさせるファン6を動力として、コールドアイルCAの冷気W1をラック装置1の中へ吸入する。ファン6が生じさせる空気の流れは、ラック装置1の第一側面10から第二側面11へ、即ちコールドアイルCAからホットアイルHAへ流れる流れである。これにより、第一側面10から内部へ吸入された冷気は、基板3上の発熱した電子部品を冷却することにより、冷気自身は熱を吸収し暖気W2となる。
【0023】
ファン6は、第二側面11に備えられているので、暖気W2をさらに吸引し、暖気W3として、ラック装置1の外部即ちホットアイルHAへ暖気W2を排出する。本実施例では、ファン6は第二側面11に備えられるが、これに限定されず、第一側面10に備えられてもよい。好ましくは、ファン6は、負圧で空気の流れを生じさせる方が空気の流れが安定するので、第二側面11に備えられる。なお、ファン6は、軸流ファン、遠心ファンなどあり、特に限定されない。好ましくは、静圧が高い遠心ファンである。
【0024】
上述したように、ラック装置1からホットアイルHAへ排出された暖気W3は、電算機室の空気調和システムにより回収、冷却され、再度コールドアイルCAに冷気となって排出され、電算機室を循環する。なお、ラック装置1の第一側面10は、コールドアイルCAから冷気W1を吸入する開口部(図示せず)を有する。
【0025】
ラック装置1は、さらに第一側面10に第一センサ4、第二側面11に第二センサ5を備える。空気の流れは、図示右から左へ流れているので、第一側面10に備えられた第一センサ4は、第一側面10から吸入する空気の温度、即ち、コールドアイルCAの空気の温度を検知する。また、第二側面11に備えられた第二センサ5は、基板3の電子部品により暖められた、第二側面11から排出する空気の温度を検知する。
【0026】
ラック装置1は、さらに第一センサ4が検知した温度と第二センサ5が検知した温度との差に基づき、ファン6の回転を制御する制御部7を備える。即ち、第二センサ5が検知した温度である第二側面11から排出する空気の温度は、基板3の電子部品により暖められるので、第一センサ4が検知した温度であるコールドアイルCAの空気の温度に比べ、温度は高く、両センサが検知した温度には差がある。制御部7は、この検知温度の差に基づきファン6の回転を制御する。
【0027】
具体的には、この検知温度差が、事前に定めた目標温度差と異なる場合にファン6の回転速度を変化させる制御を行う。例えば、目標温度差を20°Cと定めた場合、検知温度差が19°C〜21°Cの場合、即ち、検知温度差と目標温度差との差が±1°C以下の場合は、検知した時点でのファン6の回転速度を維持する。検知温度差が21°Cを超える場合、即ち、検知温度差と目標温度差との差が+1°C以上の場合は、検知した時点でのファン6の回転速度を上げ、第一側面10から第二側面11へ流れる空気の風量を増加させ、基板3上の電子部品の冷却能力を高める。逆に、検知温度差が19°Cを下回る場合、即ち、検知温度差と目標温度差との差が−1°C以上の場合は、検知した時点でのファン6の回転速度を下げ、不要な電力を使用しないようにする。
【0028】
通常、コールドアイルCAの冷気W1の温度が何らかの事情により変化すると、何もしなければホットアイルHAに排出される暖気W3の温度もその変化分変化する。従って、例えば、第二センサ5で検知される温度のみに基づいてファン6の回転速度を制御すると、コールドアイルCAの冷気W1の温度が変化しただけで、その変化に対応してファン6の回転速度が変化することとなる。しかし、本来コールドアイルCAの冷気W1の温度は電算機室の空気調和システムにより制御されるべきものであり、それぞれのラック装置の冷却装置に影響を与えることは好ましくなく、このような制御の仕方では、ファン6の回転速度が安定しない。
【0029】
しかし、本発明のように、制御部7が、第一センサ4が検知した温度と第二センサ5が検知した温度との差に基づきファン6の回転制御を行うと、コールドアイルCAの空気の温度が変化しても、検知温度差と目標温度差の差に変化が無い限り、ファン6の回転速度に変化は生じない。その結果、ラック装置1内へ吸引する空気の温度変化に追従せず、ファン6の動作を安定させることができる。
【0030】
また、ラック装置1内の電子機器の使用量が増え、発熱量が大きくなった場合、コールドアイルCAの冷気W1の温度は不変であっても、ホットアイルHAに排出される暖気W2やW3の温度は高くなり、第一センサ4と第二センサ5が検知した温度の差が大きくなり、その検知温度差と目標温度差の差が大きくなる。その結果、検知温度差が事前に設定された目標温度差より大きくなると、ファン6の回転速度を上げ、第一側面10から第二側面11へ流れる空気の風量を増加させ、基板3上の電子部品に対する冷却能力を高めることができる。
【0031】
なお、回転速度を変化させる制御は、特に限定されず、インバータ制御を行ってもよいし、ファン6の制御信号電圧の値から算出される回転率に基づき制御を行ってもよい。ここで、回転率とは、ファンの現在の回転数/ファンの最大回転数(能力)をいう。例えば、「回転率が50%」とは、1分間に3000回転できるファンが1500回転している状態をいう。
【0032】
回転率の増減量は、検知温度差と目標温度差の差に基づき求められる。具体的には、検知温度差と目標温度差の差(°C)を、回転率の増減量(%)としてもよい。例えば、初期の回転率を50%とした場合、検知温度差と目標温度差の差が±1°C以下ならば増減させず(現状維持)、その差が+5°Cとなった場合、回転率を+5%、即ち55%とし、その後逆にその差が−10°Cなった場合、回転率を−10%、即ち45%するような制御を行ってもよい。増減の結果、増減量が40%未満になる場合は40%とし、100%を超える場合は100%としてもよい。また、回転率の増減は、所定の間隔、例えば、5秒ごとに制御される。
【0033】
また、第一センサ4と第二センサ5は、ファン6に対応した位置、即ちファン6に対応した高さに備えられており、第一センサ4と第二センサ5は、床Fからほぼ同じ高さの位置に備えられている。空気の流れは、床Fの床面にほぼ平行に即ち水平に流れる流れなので、第一センサ4が検知した吸入空気温度と第一センサ4と同じ高さに備えられた第二センサ5が検知した排出空気温度は対応したものとなる。従って、検知温度差に変化があった場合は、第一センサ4と第二センサ5の間にある、空気が通過した電子機器の発熱量に変化があったものと考えることができる。
【0034】
本実施例では、3つのファン6が縦に備えられ、その3つのファン6にそれぞれ対応した位置に、それぞれの第一センサ4と第二センサ5が備えられる。かかる構成とすることにより、ラック装置1内の電子機器の温度変化に追従し、ファンを細やかに制御するラック装置1を提供できる。
【0035】
さらに、本実施例におけるラック装置1は、ファン6とファン6に対応する第一センサ4及び第二センサ5の組Cを垂直方向に3つ備えており、制御部7は、各組Cごとに、検知温度差と目標温度差の差に基づき、ファン6の回転を制御してもよい。
【0036】
通常、コールドアイルCAの冷気W1の温度は、床Fに近いほど低く、高さが高いほど温度が高くなり、高さ方向で温度が異なる。このような高さ方向での温度分布は、コールドアイルCAを人が移動した場合でも変化するので、高さ方向で異なる排気温度のみで制御すると、ファンの回転は不安定となる。しかし、本発明のように、検知温度差と目標温度差の差に基づきファン6を制御することにより、ラック装置1内へ吸引する空気の温度変化に追従せず、ファン6の動作を安定させることができるとともに、ラック装置1内の電子機器の高さと発熱量に応じた温度変化に追従し、ファンを細やかに制御することができる。
【0037】
このように制御することは、換言すれば、ラック装置1に収容された電子機器を、ラック装置1に備えられたファン6である吸排気手段によって、冷却する冷却方法である。より具体的には、ラック装置1の外部からラック装置1の中へ吸入する空気の温度と、ラック装置1の中からラック装置1の外へ排出する空気の温度との差、即ち検知温度差に基づき、ファン6である吸排気手段の出力を制御する冷却方法である。かかる冷却方法によれば、ラック装置1内へ吸引する空気の温度変化には追従せず、ファンの動作を安定させ、ラック装置1内の電子機器の発熱量や位置(高さ)に応じた温度変化には追従し、ファンを細やかに制御することができる。
【0038】
図2は、本実施例におけるラック装置1の、第二側面11即ちリアドア11方向からの斜視図である。リアドア11には、ラック装置1内部の暖気を排出するための排気口20が設けられると共に、ファン6が縦方向に3つ備えられている。本図では、第二センサ5は、リアドア11の内側に備えられるので、図示しない。
【0039】
リアドア11には、検知した温度の表示や温度差の設定が行えるタッチパネル8が備えられる。タッチパネル8の操作の詳細は後述する。また、リアドア11は、リアドア11の開閉を検知するドアセンサ22を備える。例えば、ドアセンサ22は、リアドア11が取っ手21を持って開かれたことを検知すると、安全性を考慮し、ファン6を停止する。
【0040】
(第一実施例の変形例)
図3Aは、本変形例の正面図等であり、上記本実施例と異なる点のみ記載する。本変形例におけるラック装置1’では、リアドア11’は、さらにリアドア内ドア12を備える。リアドア内ドア12がファン6’を備え、ファン6’の保守等のためにリアドア内ドア12のみを開閉することができる。図4に示すように、リアドア内ドア12を開くと共に、リアドア11をさらに開くことができるように、リアドア11とリアドア内ドア12は、独立して開閉自在に構成される。
【0041】
また、本変形例におけるラック装置1’では、図3Bに示す遠心ファンであるファン6’を備える。リアドア内ドア12に備えられた遠心ファンであるファン6’は、静圧が高いので、第一側面10から安定してコールドアイルCAから冷気を吸入し、ホットアイルHAへ暖気を排出できる。図3Bは、矢印により、ファン6’による暖気W2及びW3の排気方向を示す。ラック装置1’内の暖気W2は、ファン6’に吸引され、暖気W3として、ダクト23を通してホットアイルHAへ排出される。ダクト23は、遠心ファンであるファン6’を取り囲むように背面視矩形に構成され、ファン6’が排出する暖気W3を上下左右均等に吹き出す。ダクト23の形状は、かかる矩形に限定されず、ファン6’を取り囲むように背面視円形に構成されてもよい。また、上方にのみ吹き出すように構成してもよい。
【0042】
図5は、タッチパネル8の初期画面を示す。初期画面は、現在の、コールドアイルCAから吸入する空気の温度(入空気温度)を右上に、ホットアイルHAへ排出する空気の温度(出空気温度)を左上に表示し、それぞれ、3つの組に対応した上、中、下の温度と平均温度を表示する。また、初期画面は、現在の、ファン6’の回転率を左下に表示し、3つの組に対応した上、中、下の回転率と平均の回転率を表示する。
【0043】
図6は、初期画面の右上にある「M」のマークをタッチすると、図の中央にある画面遷移メニューが表示され、過去の温度や回転率を示すグラフを表示する画面、過去のログを表示する画面、目標温度差等を設定する画面などを表示してもよい。また、ファンの停止など異常が生じた場合には警告する画面を設けてもよい。
【0044】
図7は、タッチパネルで目標温度差を入力し、設定する画面を示す。目標温度差等を設定する画面で目標出入温度差の部分をタッチすると、本図の右側に示す目標出入温度差を入力する画面が表示され、目標温度差を入力できる。本図では、目標温度差を20°Cと設定したことを示している。
【0045】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ラック装置
2 筐体
3 基板
4 第一センサ
5 第二センサ
6 ファン
7 制御部
8 タッチパネル
10 第一側面
11 第二側面(リアドア)
12 リアドア内ドア
20 排気口
21 取っ手
22 ドアセンサ
23 ダクト
C ファン、第一センサと第二センサの組
CA コールドアイル
HA ホットアイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を有する1以上の基板を内部に収容するラック装置であって、
前記ラック装置の第一の側面から外部の空気を吸入し、該空気を第二の側面から外部へ排出するファンと、
前記第一の側面から吸入する空気の温度を検知する第一センサと、
前記第二の側面から排出する空気の温度を検知する第二センサと、
前記第一センサが検知した温度と前記第二センサが検知した温度との差に基づき、前記ファンの回転を制御する制御部と、
を備えるラック装置。
【請求項2】
前記第一センサと前記第二センサは、前記ファンに対応した高さに備えられ、
前記制御部は、前記ファンに対応した前記第一センサと前記第二センサが検知した温度の差に基づき、前記ファンの回転を制御することを特徴とする請求項1に記載のラック装置。
【請求項3】
前記ファンと前記ファンに対応する前記第一センサ及び前記第二センサの組を垂直方向に複数備え、
前記制御部は、各組ごとに、前記差に基づき、前記ファンの回転を制御することを特徴とする請求項2に記載のラック装置。
【請求項4】
前記基板は筐体の内部に備えられ、前記筐体を内部に載置することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のラック装置。
【請求項5】
ラック装置に収容された電子機器を、前記ラック装置に備えられた吸排気手段によって、冷却する冷却方法であって、
前記ラック装置の外部から前記ラック装置の中へ吸入する空気の温度と、前記ラック装置の中から前記ラック装置の外へ排出する空気の温度との差に基づき、前記吸排気手段の出力を制御する冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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