説明

ラッチングリレー

【課題】構造が簡単で衝撃に強いラッチングリレーを提供する。
【解決手段】ラッチングリレーは、回転軸を有するモータと、前記回転軸に固定され、第1の接続部と第2の接続部を備えた導体部を有する略円柱形状または略円板形状の回転体と、前記回転体が第1の位置にあるとき前記第1の接続部に接触し、前記回転体が第2の位置にあるとき前記第1の接続部に接触しない第1の接点部と、前記回転体が前記第1の位置にあるとき前記第2の接続部に接触する第2の接点部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自己保持型ラッチングリレーに関する。
【背景技術】
【0002】
ラッチングリレーは、入力信号を入れたときに接点がONまたはOFFし、入力信号を断ってもその状態を保持できる機能を持ったリレーであり、動作および復帰時にはパルス状の電力を必要とするが、動作状態および復帰状態を保持する場合は駆動電力を必要としないため、省エネルギーに効果がある。
【0003】
ラッチングリレーの多くは電磁石と永久磁石を組み合わせた構造が採用されており、電磁石の電磁作用により機械的に接点を開閉させてON/OFF動作(動作、復帰動作)を行う。接点を動作させる主な構造としてヒンジ型とプランジャ型があり、ヒンジ型は、電磁石の接極子が支点を中心に回転運動を行いその動きによって直接または間接に接点の開閉を行うものである。プランジャ型は、接触部を主としてプランジャ型電磁石の力によって駆動し、接点の開閉を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−40661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒンジ型、プランジャ型ともヒンジあるいはプランジャが衝撃によって保持位置から移動して接点が離れたり接触したりして誤動作する可能性があるため、衝撃を受けても誤動作しないラッチングリレーが求められている。
【0006】
本発明の目的は、上記したような事情に鑑み成されたものであって、構造が簡単で衝撃に強いラッチングリレーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、実施形態によれば、ラッチングリレーは、回転軸を有するモータと、前記回転軸に固定され、第1の接続部と第2の接続部を備えた導体部を有する略円柱形状または略円板形状の回転体と、前記回転体が第1の位置にあるとき前記第1の接続部に接触し、前記回転体が第2の位置にあるとき前記第1の接続部に接触しない第1の接点部と、前記回転体が前記第1の位置にあるとき前記第2の接続部に接触する第2の接点部とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るラッチングリレーの断面図。
【図2】実施形態に係るラッチングリレーの平面図。
【図3】回転体が第2の位置にあるときの状態を示した図。
【図4】第1の接続部の凹部を示した図。
【図5】第1の接続部の凹部の別の形状を示した図。
【図6】モータの駆動電圧波形と第1の出力端子と第2の出力端子の接続状態を示した図。
【図7】導体部の別の形状の例を示した図。
【図8】回転体が第2の位置に移動したときの状態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係るラッチングリレー1の断面図である。図2は実施形態に係るラッチングリレーの平面図である。図1は、図2におけるAA断面図を示し、図2は図1におけるBB断面図を示す。ラッチングリレー1は、本体2、ケース3、底板4、第1の出力端子5、第2の出力端子6、モータ7、回転体9により構成される。
【0011】
底板4は、絶縁体で構成されており、底板4にケース3、第1の出力端子5、第2の出力端子6、モータ7が固定されている。ケース3は、絶縁体または金属製であり、底板4の周辺部で接合され、ラッチングリレー1の底板4を除く全体を覆っている。
【0012】
第1の出力端子5は、支柱部5a、腕部5b、第1の接点部5c、接続端子部5dから構成されている。第1の接点部5cと接続端子部5dは電気的に導通している。支柱部5aは、底板4に接触する部分において底板4に固定されている。接続端子部5dは、底板4から外部へ突出しており、回路基板等に搭載されたときの接続端子となる。
【0013】
第2の出力端子6は、支柱部6a、腕部6b、第2の接点部6c、接続端子部6dから構成されている。第2の接点部6cと接続端子部6dは電気的に導通している。支柱部6aは、底板4に接触する部分において底板4に固定されている。接続端子部6dは、底板4から外部へ突出しており、回路基板等に搭載されたときの接続端子となる。
【0014】
モータ7は、モータ本体7a、回転軸7b、端子7c、7dにより構成されている。モータ本体7aの形状は、略円柱形、または円柱形の一部に両側に対向する平行な平面(二面幅)を有する形状、または略直方体形状をしている。モータ本体7aは設置部材8を介して底板4に固定されている。モータ7は、直流モータ、交流モータ(誘導電動型モータ)、ステッピングモータ等が用いられる。モータ7を駆動する駆動回路は適宜用いればよい。
【0015】
モータ本体7aの底板と対向する面には端子7c、7dが配置されており、これらの端子を介してモータ7に電力が供給される。端子7c、7dは底板4から外部へ突出しており、回路基板等に搭載されたときの接続端子となる。モータ7が例えば3相駆動の場合には端子が3個になる場合がある。また磁気センサを搭載したモータの場合には更に端子が増えることもある。
【0016】
回転軸7bは、モータ本体7aの底板と反対側の面からラッチングリレー1の本体2の内部方向に延出している。回転軸7bの延出部分に回転体9が圧入等により固定されており、回転軸7bの回転に伴って回転する。
【0017】
回転体9は、略円柱形状または略円板形状であり、略中心部がモータ本体7aの回転軸7bと結合している。回転体9のモータ本体7aと対向する面と反対側の面には導体部10が設置されている。導体部10の一端には第1の接続部10aと他端に第2の接続部10bを備えている(図3参照。)。回転体9の導体部10以外の範囲は不導体である。導体部10は薄い金属板が回転体9の表面に接着されている。または導体部10の形状に合わせて金属メッキが施されていてもよい。金属メッキは金メッキが好適である。
【0018】
図1、図2において、回転体9は第1の位置にある。回転体9が第1の位置にあるとき、第1の出力端子5の第1の接点部5cが、導体部9の第1の接続部10aと接触している。またこのとき、第2の出力端子6の第2の接点部6cが、導体部9の第2の接続部10bと接触している。従って、第1の接点部5cと第2の接点部6cが、導体部10を介して電気的に導通しており、第1の出力端子5と第2の出力端子6は電気的に導通した状態となる。
【0019】
図3は、回転体9が第2の位置にあるときの状態を示した図である。回転体9が回転軸7bを回転中心としてD方向に角度で20〜25度回転した後の状態である。このとき第1の接点部5cは、第1の接続部10aおよび導体部10に接触しない。また、第2の接点部6cは、第2の接続部10bおよび導体部10に接触しない。従って、第1の出力端子5と第2の出力端子6は電気的に導通しない状態となる。
【0020】
回転体9の回転はモータ7の端子7c、7dにモータ7に相応しいパルス状あるいはパルス状に類似した電圧を加えることにより行われる。回転体9の回転角度は、回転体9の一部に設けられた切り欠き部11の突き当て部12a、12bと係止部14によって規制される。
【0021】
回転体9が、第1の位置にあるとき、突き当て部12aが係止部14に当接し、図3に示したD方向と逆方向の回転が規制される。図3において、回転体9が、第2の位置にあるとき突き当て部12bが係止部14に当接し、D方向の回転が規制される。
【0022】
係止部14は、係止部支柱13の先端に設けられ、係止部14の先端が回転体9の切り欠き部11に入り込んでいる。係止部14は、支柱部13の先端部に固定されている。支柱部13は、一端が底板4に固定されており、係止部14は、底板4に対して固定された状態となっている。
【0023】
回転体9の回転角度の大きさは切り欠き部11、突き当て部12a、12bの位置を変えることによって調整が可能である。例えば25〜90度の範囲としてもよい。モータ7の性能によって第1の位置に対する第2の位置を変更する(回転角度を変更する)必要が生じた場合には、切り欠き部11、突き当て部12bの位置を変更し、さらに導体部10の形状を変更することにより対処できる。
【0024】
図4は、第1の接続部の凹部を示した図である。図1におけるCC断面を示している。回転体9が第1の位置にあるとき、第1の出力端子5の第1の接点部5cと、導体部10の第1の接続部10aの接触状態を示している。第1の接続部10aには第1の接点部5cの先端と係合する凹部10Cを有している。凹部10cの形状は球形の一部を切り取ったようなお椀型のような形状である。第1の接点部5cの先端は略半球状をしており、この曲率半径をR1とし、凹部10cの曲率半径をR2とすると、R2はR1よりも大きい。
【0025】
第1の出力端子5の腕部5bは、第1の接点部5cを導体部10に押し付ける方向に押圧力を発揮するバネ性を有している。第1の接点部5cが第1の接続部10aの凹部10cに落ち込むことによって、回転体9の回転が制動される。従って、回転体9が第1の位置にあるとき、回転体9は回転方向の制動を受けて接触状態が安定する。第2の接点部6cが接触する第2の接続部10bも同様な凹部を備える。
【0026】
回転体9が第1の位置から第2の位置へ回転移動するときには、モータ7の大きな回転トルクによって、第1の接点部5cが第1の接続部10aの凹部10cから抜け出すための制動力を超えて、回転することが可能である。
【0027】
なお、図5に示すように、凹部10cの形状は回転体9の円周から回転軸7bの方向に伸びるV溝部10dであってもよい。凹部は第1の接続部10aだけでなく、第2の接続部10bに備えてもよい。また、回転体9が第2の位置にあるときに、第1の接点部5cが接触する箇所に凹部を備えてもよく、こうすることによって第2の位置における回転体9の位置が安定する。
【0028】
図6は、モータ7に印加されるモータ7の駆動電圧波形と第1の出力端子5と第2の出力端子6の接続状態を示した図である。図6(a)はモータ7が直流モータである場合に印加されるモータ7の駆動電圧波形の例である。ONパルスとは、回転体9が第2の位置から第1の位置へ移動するために加えられるものであり、OFFパルスとは、回転体9が第1の位置から第2の位置へ移動するために加えられるものである。ONパルスとOFFパルスは印加電圧の極性が逆である。ONパルスの印加時間T1、印加電圧V1、OFFパルスの印加時間T2、印加電圧V2はそれぞれモータ7の性能、回転体9の回転慣性モーメント、接点5c、6cと接続部10a、10bの摩擦力、凹部10cから抜け出す力、第1の位置と第2の位置との回転角度等の要素を考慮して適宜決めればよい。
【0029】
図6(b)は、第1の出力端子5と第2の出力端子6の接続状態を示した図である。モータ7にONパルスを印加した後で、次のOFFパルスが印加されるまで、接続状態が保持されることが示されている。
【0030】
図7は、導体部10の別の形状の例を示した図である。図2における導体部10は、略コの字形状であったが、図7においては、導体部15は、少し円弧になった略長方形形状である。導体部15の一端には第1の接続部15aと他端に第2の接続部15bを備えている(図8参照。)。
【0031】
図8は、図7における回転体9が第2の位置に移動したときの状態を示した図である。図8においては、第1の接点部5cは、第1の接続部15aおよび導体部15に接触しないが、第2の接点部6cは、第2の接続部15bに接触しないが、導体部15には接触する例である。
【0032】
以上のように、ラッチングリレー1の第1の出力端子5の第1の接点部5cと、第2の出力端子6の第2の接点部6cと、モータ7の回転軸7bに固定された回転体9に第1の接続部10aと第2の接続部10bを備えた導体部10を設け、回転体9が第1の位置にあるとき、第1の接点部5cと第1の接続部10aが接触、導通し、第2の接点部6cと第2の接続部10bが接触、導通することでラッチングリレー1が接続(導通)状態となり、回転体9が第2の位置にあるとき、少なくとも第1の接点5cが導体部10に接触しないようにすることで、ラッチングリレー1が非接続(非導通)状態となる。回転体9は、ランチングリレー1が外部から衝撃を受けても回転体9が回転するような力が殆ど働かないため、衝撃に強いラッチングリレーとすることができる。更に、第1の接点部5cが接触する第1の接続部10aの位置に凹部10cやV溝部10dを設けることにより、回転体9が安定し、接続状態を安定に維持することができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ラッチングリレー
2 本体
3 ケース
4 底板
5 第1の出力端子
5a 支柱部
5b 腕部
5c 第1の接点部
5d 接続端子部
6 第2の出力端子
6a 支柱部
6b 腕部
6c 第2の接点部
6d 接続端子部
7 モータ
7a モータ本体
7b 回転軸
7c 端子
7d 端子
8 設置部材
9 回転体
10 導体部
10a 第1の接続部
10b 第2の接続部
10c 凹部
10d V溝部
11 切り欠き部
12a 突き当て部
12b 突き当て部
13 係止部支柱
14 係止部
15 導体部
15a 第1の接続部
15b 第2の接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータと、
前記回転軸に固定され、第1の接続部と第2の接続部を備えた導体部を有する略円柱形状または略円板形状の回転体と、
前記回転体が第1の位置にあるとき前記第1の接続部に接触し、前記回転体が第2の位置にあるとき前記第1の接続部に接触しない第1の接点部と、
前記回転体が前記第1の位置にあるとき前記第2の接続部に接触する第2の接点部と
を有するラッチングリレー。
【請求項2】
前記回転体の回転角度を規制する係止部を有する請求項1記載のラッチングリレー。
【請求項3】
前記回転体は、前記係止部と係合して前記回転体の回転を制動するする係合部を有する請求項2記載のラッチングリレー。
【請求項4】
前記第1の接続部は前記第1の接点の先端と係合する凹部を有する請求項1記載のラッチングリレー。
【請求項5】
前記第2の接続部は前記第2の接点の先端と係合する凹部を有する請求項1記載のラッチングリレー。
【請求項6】
前記モータにパルス電圧を加えて前記回転体が前記第1の位置から前記第2の位置へ回転するときと前記第2の位置から前記第1の位置へ回転するときとで、前記モータに加える前記パルス電圧の極性が異なる請求項1記載のラッチングリレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−79532(P2012−79532A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223210(P2010−223210)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】