説明

ラッチ式電磁バルブの動作確認装置及び方法並びにインクジェット記録装置

【課題】ラッチ式電磁バルブにおける励磁終了後に状態が維持できない不具合を検知する。
【解決手段】コイル24に第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブ10であって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブ10の動作確認装置において、駆動回路により第1の方向又は第2の方向に電流を供給してラッチ式電磁バルブ10の状態を移行させるバルブ駆動手段と、駆動回路によりバルブ駆動手段と同じ方向に電流を供給する検査駆動手段と、検査駆動に基づく駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を検出する検出手段と、検出手段により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいてラッチ式電磁バルブ10の動作状態を判定する判定手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラッチ式電磁バルブの動作確認装置及び方法並びにインクジェット記録装置に係り、特に、ラッチ式電磁バルブにおいて励磁終了後に状態を維持することができない不具合を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁バルブを駆動する際、逆起電力によって駆動電流波形に波形歪が発生することが知られている。この波形歪みを観察することにより、電磁バルブの動作異常検出や駆動時間の最適化が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、電磁バルブに電源電流が供給された際の電流を検出することにより、電磁弁の動作確認を行っている。
【0004】
また、特許文献2では、ソレノイドに印加した駆動信号に対するバリスタ両端の電圧変化を検出することで、ソレノイド内のプランジャの動作を監視している。
【0005】
また、特許文献3では、電磁バルブ駆動時の立ち上がりの電流積分値及び平均値を特徴量として抽出し、正常動作時の特徴量と比較することで、電磁バルブの故障の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−43081号公報
【特許文献2】特開平6−333732号公報
【特許文献3】特許第4135494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
消費電力を低減するために、永久磁石を用いて、開閉動作後に通電が停止されてもその状態を維持するように構成されたラッチ式電磁バルブが知られている。図9は、ラッチ式電磁バルブの内部構成を示す図である。
【0008】
図9(a)は、電磁バルブ10の閉弁状態を示している。この状態においては、スプリング34の付勢力によってプランジャ22はダイヤフラム30を介して弁座26に当接され、弁座26内のオリフィス部28は塞がれ、流路32が閉じられた状態となっている。
【0009】
閉弁状態から開弁状態にする場合は、永久磁石により構成されたコア20の磁束に対して同じ方向に磁束が生じるようにコイル24を通電し、コイル24に磁束を発生させる。この磁束によりプランジャ22が磁化され、互いの吸引力によりプランジャ22がスプリング34の付勢力を上回り、コア20側に吸着される。この状態では、コア20とプランジャ22との間に設けたスプリング34は圧縮されているが、永久磁石による吸着力がスプリング34の付勢力より強いため、その後コイル24への通電を停止してもプランジャ22はコア20から離れずに、開弁状態を維持することができる。
【0010】
図9(b)は、電磁バルブ10の開弁状態を示している。この状態においては、弁座26からダイヤフラム30が離間され、弁座26内のオリフィス部28は開放され、流路32は開いた状態となる。
【0011】
開弁状態から再び閉弁状態にする場合は、コイル24に開弁時とは逆方向に通電し、コア20の永久磁石の磁束に対して反対方向に磁束をコイル24により発生させる。この磁束により永久磁石の磁力が打ち消され、プランジャ22は、スプリング34の付勢力によってコア20から離れる。この状態でコイル24への通電を停止しても、コア20とプランジャ22との間が離れているため、スプリング34の付勢力に抗してプランジャ22がコア20に吸着されることはなく、閉弁状態を維持することができる。
【0012】
このようなラッチ式電磁バルブにおいては、異物固着等による機能障害により、コイルへの通電時(励磁時)には正常に動作するものの、励磁終了後に、開弁状態又は閉弁状態を維持することができずに、励磁前の状態に戻ってしまう不具合が発生する場合がある。
【0013】
しかしながら、特許文献1〜3の技術では、ラッチ式電磁バルブの上記のような不具合の発生を検出することはできなかった。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ラッチ式電磁バルブにおける励磁終了後に状態が維持できない不具合を検知するラッチ式電磁バルブの動作確認装置及び方法並びにインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために請求項1に記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置は、コイルに第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブであって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、駆動回路により前記第1の方向又は第2の方向に電流を供給して前記ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ駆動手段と、前記駆動回路により前記バルブ駆動手段と同じ方向に電流を供給する検査駆動手段と、前記検査駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を検出する検出手段と、前記検出手段により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記ラッチ式電磁バルブの動作状態を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、電流を供給してラッチ式電磁バルブの状態を移行させ、さらに同じ方向に電流を供給して検査駆動し、検査駆動に基づく駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を検出し、検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいてラッチ式電磁バルブの動作状態を判定するようにしたので、ラッチ式電磁バルブにおける励磁終了後に状態が維持できない不具合を検知することができる。
【0017】
請求項2に示すように請求項1に記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、前記バルブ駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を検出する第2の検出手段を備え、前記判定手段は、前記第2の検出手段により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記ラッチ式電磁バルブの動作状態を判定することを特徴とする。
【0018】
これにより、さらに適切にラッチ式電磁バルブの動作状態を判定することができる。
【0019】
前記目的を達成するために請求項3に記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置は、コイルに第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブであって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、複数のラッチ式電磁バルブに対してそれぞれの駆動回路により前記第1の方向又は第2の方向に電流を供給して該ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ駆動手段と、前記複数のラッチ式電磁バルブに対して前記それぞれの駆動回路により順次前記バルブ駆動手段と同じ方向に電流を供給する検査駆動手段と、前記検査駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を順次検出する単一の検出手段と、前記検出手段により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記複数のラッチ式電磁バルブの個々の動作状態を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、電流を供給して複数のラッチ式電磁バルブの状態を移行させ、さらに同じ方向に順次電流を供給して検査駆動し、検査駆動に基づく駆動回路の電流又は電圧を検出し、検出した電流又は電圧に基づいて複数のラッチ式電磁バルブの動作状態を判定するようにしたので、複数のラッチ式電磁バルブの中から励磁終了後に状態が維持できない不具合を持つ電磁バルブを検知することができる。
【0021】
請求項4に示すように請求項1から3のいずれかに記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、前記検査駆動手段の電流供給時間は、前記バルブ駆動手段の電流供給時間よりも短いことを特徴とする。
【0022】
これにより、検査時間を短くすることができ、また検査に要する消費電力も少なくすることができる。
【0023】
請求項5に示すように請求項1から4のいずれかに記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、前記判定手段において前記ラッチ式電磁バルブの動作状態が異常と判定された場合に、前記バルブ駆動手段と同じ方向に電流を供給して再度前記ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ再駆動手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
これにより、ラッチ式電磁バルブの異常の原因を取り除き、正常状態に復帰させることができる。
【0025】
請求項6に示すように請求項5に記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、前記バルブ再駆動手段は、前記バルブ駆動手段とは異なる波形で電流を供給することを特徴とする。
【0026】
これにより、ラッチ式電磁バルブの異常の原因を取り除き、正常状態に復帰させることができる。
【0027】
請求項7に示すように請求項1から4のいずれかに記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、前記判定手段において前記ラッチ式電磁バルブの動作状態が異常と判定された場合に、前記バルブ駆動手段とは反対の方向に電流を供給して前記ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ逆駆動手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
これにより、ラッチ式電磁バルブの異常の原因を取り除き、正常状態に復帰させることができる。
【0029】
前記目的を達成するために請求項8に記載のインクジェット記録装置は、インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクを格納するインクタンクから前記インクジェットヘッドへ前記インクを供給するインク流路と、前記インク流路を開閉するためのラッチ式電磁バルブと、請求項1から7のいずれかに記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置とを備えたことを特徴とする。
【0030】
これにより、インク流路を開閉するためのラッチ式電磁バルブの動作状態を確認することができ、インクジェット記録装置の記録品質を保つことができる。
【0031】
前記目的を達成するために請求項9に記載のラッチ式電磁バルブの動作確認方法は、コイルに第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブであって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブの動作確認方法において、駆動回路により前記第1の方向又は第2の方向に電流を供給して前記ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ駆動工程と、前記駆動回路により前記バルブ駆動工程と同じ方向に電流を供給する検査駆動工程と、前記検査駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を検出する検出工程と、前記検出工程により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記ラッチ式電磁バルブの動作状態を判定する判定工程とを備えたことを特徴とする。
【0032】
前記目的を達成するために請求項10に記載のラッチ式電磁バルブの動作確認方法は、コイルに第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブであって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブの動作確認方法において、複数のラッチ式電磁バルブに対してそれぞれの駆動回路により前記第1の方向又は第2の方向に電流を供給して該ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ駆動工程と、前記複数のラッチ式電磁バルブに対して前記それぞれの駆動回路により順次前記バルブ駆動工程と同じ方向に電流を供給する検査駆動工程と、前記検査駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を単一の検出手段により順次検出する検出工程と、前記検出工程により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記複数のラッチ式電磁バルブの個々の動作状態を判定する判定工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ラッチ式電磁バルブにおいて励磁終了後に状態を維持することができない不具合を検知することができる。また、複数のラッチ式電磁バルブの中から励磁終了後に状態が維持できない不具合を持つ電磁バルブを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ラッチ式電磁バルブの動作確認装置の概略構成図
【図2】電磁バルブの動作時の電流歪を説明するための図
【図3】バルブ駆動パルスとバルブ検査パルスを示す図
【図4】第2の実施形態の動作確認装置の概略構成図
【図5】第2の実施形態のバルブ駆動パルスとバルブ検査パルスを示す図
【図6】その他の実施形態の動作確認装置の概略構成図
【図7】第3の実施形態のバルブ駆動パルスとバルブ検査パルスを示す図
【図8】動作確認装置が搭載されたインクジェット記録装置のインク供給系の構成例を示した概略図
【図9】ラッチ式電磁バルブの内部構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0036】
〔駆動回路の構成〕
図1は、本発明が適用されたラッチ式電磁バルブの動作確認装置の概略構成図である。
【0037】
同図に示すように、本実施の形態の動作確認装置40は、制御回路50、電流検出回路52、電流検出用抵抗54、バルブ駆動ドライバ58等を備えて構成され、バルブ駆動ドライバ58に接続された電磁バルブ10の動作を確認する。
【0038】
電磁バルブ10は、図9に示したラッチ式電磁バルブであり、コイル24に通電されることにより、開弁状態/閉弁状態が切り替わる。
【0039】
制御回路50はCPUから構成され、図示しないROMに記録された制御プログラムを読み出し、逐次実行することにより、動作確認装置40の各部を制御する。
【0040】
電流検出回路52は、電流検出用抵抗54の両端の電圧を検出することにより、電流検出用抵抗54を流れる電流を検出する回路である。
【0041】
電流検出用抵抗54は、バルブ駆動ドライバ58の電源に直列に接続された抵抗であり、その両端にバルブ駆動ドライバ58に流れた電流に相当する電圧を発生させる。
【0042】
バルブ駆動ドライバ58は、電磁バルブ10を駆動するためのドライバであり、制御回路50からの制御信号に基づいて電磁バルブ10のコイル24の両端に電圧を印加する。
【0043】
バルブ駆動ドライバ58が電磁バルブ10のコイル24の両端に電圧を印加すると、コイル24には電流が流れ、この電流の向きに応じて磁束が発生し、この磁束により電磁バルブ10の開弁状態/閉弁状態が切り替わる。
【0044】
また、このコイル24に流れた電流は、電流検出用抵抗54にも流れ、電流検出用抵抗54の両端にはこの電流値に応じた電圧が発生する。この電圧値を検出することにより、電流検出回路52は電磁バルブ10の駆動電流を計測する。
【0045】
〔駆動波形と電流波形〕
図2(a)は、電磁バルブ10を閉弁状態から開弁状態へ移行させる場合のコイル24への印加電圧、図2(b)は、図2(a)の電圧が印加されたことによってプランジャ22が移動し、閉弁状態から開弁状態へ移行した場合のコイル24に流れる電流の波形(電流検出回路52の検出結果)である。
【0046】
図2(b)に示すように、図2(a)の電圧が印加されることによりプランジャ22がコイル24の内側を移動するため、コイル24には逆起電力が発生し、電流歪が生じる(部分波形C1)。
【0047】
また、図2(c)は、開弁状態の電磁バルブ10において、再び図2(a)に示す電圧をコイル24へ印加した場合のコイル24に流れる電流の波形(電流検出回路52の検出結果)である。
【0048】
この場合は、プランジャ22は既にコア20側に吸着されており、図2(a)に示す電圧が印加されてもプランジャ22は移動しない。したがって、コイル24に逆起電力が発生せず、電流歪は生じない(部分波形C2)。
【0049】
このように、電磁バルブ10の動作が正常であれば、コイル24に連続して同じ方向に電圧を印加した場合、プランジャ22が移動する1回目と移動しない2回目とでは、電流波形が異なる。
【0050】
ここでは、開弁状態について説明したが、閉弁状態においてプランジャ22がコア20側から離れる方向に磁束が発生するようにコイル24に電圧を印加した場合でも同様である。本実施形態では、この原理を利用してラッチ式電磁バルブの状態確認を行う。
【0051】
〔第1の実施形態〕
図3(a)は、バルブ駆動ドライバ58から電磁バルブ10のコイル24に印加するバルブ駆動パルス301と、バルブ検査パルス302を示す図である。バルブ駆動パルス301は、閉弁状態から開弁状態へ移行させるためのパルスであるとする。
【0052】
また、図3(b)、(c)は、それぞれ図3(a)に示すパルスが印加された場合の電流検出回路52の検出結果である。
【0053】
バルブ駆動ドライバ58は、電磁バルブ10のコイル24にまずバルブ駆動パルス301を印加し、所定時間経過後にバルブ検査パルス302を印加する。
【0054】
図3(b)に示すように、電流検出回路52は、バルブ駆動パルス301の立ち上がり付近において電流波形311を検出する。プランジャ22が正常に動作していれば、図3(b)に示すように、電流波形311は図2の部分波形C1のような歪を持った波形となる。
【0055】
また、電流検出回路52は、バルブ検査パルス302の立ち上がり付近において、電流波形312を検出する。プランジャ22が正常に動作していれば、図3(b)に示すように、電流波形312は図2の部分波形C2のような歪のない波形となる。
【0056】
制御回路50は、電流検出回路52が検出した電流波形311、312に基づいて、電磁バルブ10の動作の正常/異常を判断する。例えば、電流波形311と312とを比較して同様の波形であるか否かを判定してもよいし、電流波形311、312が予め記憶された部分波形C1とC2のうちいずれに類似しているかを判定してもよい。
【0057】
バルブ駆動パルス301の印加中はプランジャ22が正常に動作した場合であっても、バルブ駆動パルス301の印加停止後、プランジャ22がその状態を維持できず(この場合であれば、コア20側への吸着を維持できず)、バルブ駆動パルス301の印加前の状態へ戻ってしまう不具合(即ち、開弁状態を維持できない不具合)が発生する場合がある。
【0058】
この場合、図3(c)に示すように、バルブ駆動パルス301の印加時は、その立ち上がり付近における電流波形311が電流歪を持つ部分波形C1と同様となる。しかし、その後プランジャ22が元の位置へ戻ってしまうため、その後バルブ検査パルス302を印加すると、再びプランジャ22がコイル24の内部を移動するため、その立ち上がり付近における電流波形312は、部分波形C2に類似するものではなく、再び電流歪を持つ部分波形C1と同様の波形となる。
【0059】
また、プランジャ22が全く移動しない不具合(即ち、常に閉弁状態である不具合)が発生する場合もある。この場合は、バルブ駆動パルス301の立ち上がり付近における電流波形311が、電流歪を持たない部分波形C2と同様となる。
【0060】
ここでは、電磁バルブ10の閉弁状態の検査について説明したが、バルブ駆動パルス301、バルブ検査パルス302をコイル24に逆方向の電流が流れるように印加することにより、開弁状態の検査を行うこともできる。すなわち、バルブ駆動パルス301を印加してもプランジャ22が移動しない不具合(常に開弁状態である不具合)や、バルブ駆動パルス301の印加終了後に、プランジャ22がスプリング34の付勢力によって弁座26に当接された状態を維持できずに、コア20側に戻ってしまう不具合(即ち、閉弁状態を維持できない不具合)を検出することが可能である。
【0061】
電磁バルブ10の異常を検出した場合は、図示しないユーザインターフェースにより、使用者に異常があった旨を告知してもよい。
【0062】
このように、バルブ駆動パルス301、バルブ検査パルス302の立ち上がり付近において検出される電流波形311、312を解析して判断することにより、電磁バルブ10の動作状態を確認することができ、不具合発生を検出することができる。
【0063】
また、バルブ検査パルス302は、バルブ駆動パルス301と同じ方向のパルスであるので、バルブ検査パルス302によってバルブの状態に変化を与えることなく、動作状態を確認することができる。
【0064】
また、バルブ検査パルス302は、バルブ駆動パルス301の印加直後でなく、いつ印加してもよいので、他の制御との兼ね合いで、空いた時間に行うことができる。
【0065】
また、バルブ検査パルス302は、バルブ駆動パルス301よりも印加時間を短くすることで、検査時間を短くすることができ、また検査に要する消費電力も少なくすることができる。
【0066】
〔第2の実施形態〕
図4は、第2の実施形態の動作確認装置の概略構成図である。なお、図1に示す構成図と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図4に示すように、動作確認装置41は、n個のバルブ駆動ドライバ58−1、58−2、58−3、・・・、58−nを備えており、それぞれ電磁バルブ10−1、10−2、10−3、・・・、10−nが接続されている。バルブ駆動ドライバ58−1〜58−nには、それぞれ制御回路50からの制御信号が入力され、電磁バルブ10−1〜10−nを駆動する。
【0068】
各バルブ駆動ドライバ58−1〜58−nは、電源の一方がそれぞれ基準電位に接続されているとともに、他方も共通に接続されており、電流検出用抵抗54を介して動作確認装置41の電源に接続されている。
【0069】
電流検出回路52は、第1の実施形態と同様に1つだけ備えられており、バルブ駆動ドライバ58−1〜58−nから出力される検査パルスにより、それぞれの電磁バルブ10−1〜10−nの動作を確認することが可能である。
【0070】
図5は、各バルブ駆動ドライバ58−1〜58−nから各電磁バルブ10−1〜10−nに印加するバルブ駆動パルス301と、バルブ検査パルス302−1〜302−nとを示す図である。図3と同様に、バルブ駆動パルス301は、閉弁状態から開弁状態へ移行させるためのパルスであるとする。
【0071】
図5に示すように、電磁バルブ10−1〜10−nは同時に駆動されることが可能である。すなわち、各バルブ駆動ドライバ58−1〜58−nから同時にバルブ駆動パルス301を出力することにより、電磁バルブ10−1〜10−nは、動作が正常であれば一斉に閉弁状態から開弁状態へ移行する。
【0072】
次に、制御回路50は、電磁バルブ10−1〜10−nの開弁状態を順次検査する。すなわち、各検査パルス302−1〜302−nは、各バルブ駆動ドライバ58−1〜58−nから時間差を持って出力される。
【0073】
電流検出回路52は、各検査パルス302−1〜302−nの立ち上がり付近において電流波形を検出する。制御回路50は、第1の実施形態と同様に、検出した電流波形と部分波形C1、C2との比較を行い、検出した電流波形が部分波形C2と同様であれば正常、部分波形C1と同様であれば異常と判定する。
【0074】
ここでは、開弁状態について説明したが、閉弁状態における検査パルスについても同様である。
【0075】
このように順次検査パルスを出力することにより、電流検出回路を1つしか備えていない場合であっても、複数の電磁バルブの検査を行うことができる。
【0076】
〔電圧波形による不具合の検出〕
なお、第1、第2の実施形態では、電流検出回路52によって駆動電流波形を解析することにより電磁バルブ10の検査を行ったが、駆動時の電圧を検出することによって検査を行ってもよい。
【0077】
例えば、図6に示す動作確認装置42のように、電流検出回路52の代わりに電圧検出回路56を備え、電圧検出回路56においてバルブ駆動ドライバ58の電源供給側の電圧を検出する。電流検出回路52は電流検出用抵抗54の両端電圧を検出していたが、電圧検出回路56はバルブ駆動ドライバ58の両端の電圧を検出することになる。結果として、電圧検出回路56の検出電圧は、電源電圧と電流検出回路52が検出していた電圧との差分となる。
【0078】
このように、コイル24の一端の電圧を検出して電磁バルブ10の検査を行うことも可能である。
【0079】
〔第3の実施形態〕
第1、第2の実施形態のように電磁バルブ10の不具合を検出した場合に、ユーザに告知するだけでなく、不具合を解消するように電磁バルブ10を動作させてもよい。
【0080】
例えば、電磁バルブ10の不具合を検出した場合に、バルブ駆動パルスを複数回出力してもよい。図7(a)に示すように、バルブ駆動パルス301を出力後、バルブ検査パルス302を出力し、電流検出回路52により電磁バルブ10の検査を行う。ここで、電磁バルブ10に異常があった場合には、再びバルブ駆動パルス301及びバルブ検査パルス302を出力し、電流検出回路52により電磁バルブ10の検査を行う。
【0081】
電磁バルブ10内部における異物固着等の原因により、電磁バルブ10の動作異常が発生している可能性がある。このような場合には、図7(a)に示すように、電磁バルブ駆動パルス301を出力して電磁バルブ10を動作させることで、電磁バルブ10の異常の原因が取り除かれ、正常状態に復帰する可能性がある。
【0082】
なお、電磁バルブ10の異常を検出した場合に、バルブ駆動パルス301を2回以上繰り返して出力してもよい。
【0083】
また、電磁バルブ10の不具合を検出した場合に、一度逆位相のバルブ駆動パルス(コイル24の電流が逆方向となるパルス)を出力してから、再びバルブを所望の状態に動作させ、その後再検査を行ってもよい。
【0084】
例えば、図7(b)に示すように、バルブ駆動パルス301aを出力後、バルブ検査パルス302を出力する。このとき電磁バルブ10に異常があったと判断された場合には、逆位相となるバルブ駆動パルス301bを出力する。ここでは、当初のバルブ駆動パルス301aが閉弁状態から開弁状態へと移行させるパルスであるので、逆位相のバルブ駆動パルス301bは開弁状態から閉弁状態へと移行させるパルスである。なお、当初のバルブ駆動パルス301aが開弁状態から閉弁状態へと移行させるパルスであれば、逆位相のバルブ駆動パルス301bとは閉弁状態から開弁状態へと移行させるパルスを指す。
【0085】
そして再びバルブ駆動パルス301aを出力し、その後バルブ検査パルス302を出力し、電磁バルブ10の検査を行う。
【0086】
このように、検査で異常を検出した場合に、一度逆位相のパルスを出力してから再び同位相のパルスを出力して電磁バルブ10を動作させることで、電磁バルブ10の異常の原因が取り除かれ、正常状態に復帰する可能性がある。
【0087】
また、電磁バルブ10の不具合を検出した場合に、当初の駆動パルスとは波形を変更した駆動パルスを出力してから再検査を行ってもよい。
【0088】
例えば、図7(c)に示すように、バルブ駆動パルス301を出力後、バルブ検査パルス302を出力し、電流検出回路52により電磁バルブ10の検査を行う。ここで、電磁バルブ10に異常があった場合には、当初に出力したバルブ駆動パルス301とは異なるバルブ駆動パルス301’を出力し、その後再びバルブ検査パルス302を出力して電磁バルブ10の検査を行う。
【0089】
ここでは、当初の駆動パルス301はパルス幅がT1の矩形状の波形としており、バルブ駆動パルス301’は、立ち上がり時間がT2、パルス幅が(T2+T3)の波形としている。なお、バルブ駆動パルス301’は、立ち上がり時間とパルス幅との一方だけ変更してもよいし、その他の要素を変更してもよい。
【0090】
このように、検査で異常を検出した場合に、波形の異なる駆動パルスを再出力して電磁バルブ10を動作させることで、電磁バルブ10の異常の原因が取り除かれ、正常状態に復帰する可能性がある。
【0091】
〔電磁バルブ検査装置の適用例〕
図8は、本発明に係る動作確認装置が搭載されたインクジェット記録装置100のインク供給系の構成例を示した概略図である。なお、図8では、説明の便宜上、1色についてのインク供給系のみを示しているが、複数色の場合には同一構成のものが複数備えられる。
【0092】
図8に示すように、インクジェット記録装置100のインク供給系は、主としてメインタンク101、バッファタンク110、供給タンク120、回収タンク130、供給圧力センサS1、回収圧力センサS2、供給ポンプP1、回収ポンプP2、供給流路切替装置176、回収流路切替装置216、メンテナンスユニット240、記録ヘッド60で構成されている。
【0093】
メインタンク101は、記録ヘッド60に供給するためのインクが貯蔵される基タンク(インク供給源)である。メインタンク101は流路103を介してバッファタンク110に連通されている。
【0094】
流路103には、上流側(メインタンク101側)から順にメインタンク開閉バルブ102とメインポンプP0とが設けられている。メインタンク開閉バルブ102は、流路103を開閉するもので、図9に示したラッチ式電磁バルブ10が使用される。また、メインポンプP0は、メインタンク101からバッファタンク110にインクを送液する。メインタンク101からバッファタンク110にインクを供給する場合は、メインタンク開閉バルブ102を開き、メインポンプP0を駆動する。これにより、メインタンク101内のインクが流路103を経由してバッファタンク110に供給される。
【0095】
なお、メインタンク101の交換時、メインタンク開閉バルブ102は閉じられる(閉弁状態)。これにより、流路103からのインク漏れが防止される。
【0096】
また、メインタンク開閉バルブ102の代わりに、メインタンク101側からバッファタンク110側への方向のインクの流れのみを許容する逆止バルブを設ける態様もある。
【0097】
バッファタンク110は、メインタンク101から供給されるインクが貯留される液体貯留部である。このバッファタンク110は、供給タンク120と回収タンク130とに連通されている。後述するように、供給タンク120と回収タンク130に貯留されたインクは、供給ポンプP1と回収ポンプP2とによって、供給タンク120と回収タンク130との間を移動する。
【0098】
バッファタンク110の鉛直上方部には、大気連通口112が設けられており、バッファタンク110内部は、この大気連通口112を介して大気開放されている。これにより、供給タンク120と回収タンク130との間でインク移動を行う際、各タンク120、130からバッファタンク110側に流出したインクが行き場を失うことなく、各タンク120、130の内部圧力を独立して制御することが可能になる。
【0099】
供給タンク120は、密閉容器の内部が可撓膜122によって2つの空間(液体室124及び気体室126)に仕切られた構成とされており、液体室124と気体室126は、いずれも内部が密閉された構成とされている。
【0100】
供給圧力センサS1は、この供給タンク120の液体室124の内部圧力を検出する。
【0101】
供給タンク120の液体室124には、第1連通流路140を介してバッファタンク110が連通されている。この第1連通流路140には、上流側(バッファタンク110側)から順にフィルタ142と供給ポンプP1が設けられている。
【0102】
供給ポンプP1は、供給タンク120の液体室124の内部圧力を調整する。すなわち、この供給ポンプP1の回転方向(駆動方向)や回転量を変化させることにより、バッファタンク110と供給タンク120との間でインクが移動し、供給タンク120の液体室124内部を所定の圧力に調整することができる。たとえば、供給ポンプP1を正転駆動すると、バッファタンク110側から供給タンク120の液体室124側にインクが流入し、供給タンク120の液体室124の内部圧力を高くすることができる。一方、供給ポンプP1を逆転駆動すると、供給タンク120の液体室124側からバッファタンク110側にインクが流出し、供給タンク120の液体室124の内部圧力を低くすることができる。
【0103】
なお、供給タンク120の内部空間を仕切る可撓膜122は、弾性膜(たとえば、ゴムなど)で構成することが好ましい。この可撓膜122の弾性力と気体室126の圧縮性による適度な弾性力とによって、供給ポンプP1又は記録ヘッド60による急峻な圧力変動を減衰させることができる。
【0104】
なお、本例では気体室126に空気が貯留されるが、気体室126に貯留される気体については、特に限定されるものではない。
【0105】
回収タンク130は、供給タンク120と同一構成が適用される。すなわち、密閉容器の内部が可撓膜132(たとえば、ゴム等)によって2つの空間部(液体室134及び気体室136)に仕切られた構成とされ、液体室134と気体室136は、いずれも内部が密閉された構成とされている。
【0106】
回収圧力センサS2は、この回収タンク130の液体室134の内部圧力を検出する。
【0107】
回収タンク130の液体室134には、第2連通流路160の一端が接続されている。この第2連通流路160の他端は、2つの流路(第1分岐流路160Aと第2分岐流路160B)に分岐している。そして、一方の第1分岐流路160Aは、第1連通流路140のフィルタ142とバッファタンク110との間に接続されており、他方の第2分岐流路160Bは、第1連通流路140のフィルタ142と供給ポンプP1との間に接続されている。
【0108】
第1分岐流路160Aには、回収タンク130側から第1連通流路140側へのインクの流れのみを許容する逆止バルブ162が設けられており、第2分岐流路160Bには、第1連通流路140側から回収タンク130側へのインクの流れのみを許容する逆止バルブ164が設けられている。
【0109】
なお、本例では第1分岐流路160Aを第1連通流路140に接続しているが、第1連通流路140ではなく、バッファタンク110に接続することもできる。
【0110】
第2連通流路160には、回収タンク130と流路の分岐点と間に回収ポンプP2が設けられている。回収ポンプP2は、回収タンク130の液体室124の内部圧力を調整する。すなわち、この回収ポンプP2の回転方向(駆動方向)や回転量を変化させることにより、バッファタンク110(又は供給タンク120)と回収タンク130との間でインクが移動し、回収タンク130の液体室134内部を所定の圧力に調整することができる。たとえば、回収ポンプP2を正転駆動すると、バッファタンク110側(第1連通流路140側)からフィルタ142を通過したインクが第2分岐流路160Bを経由して回収タンク130の液体室134内に流入し、回収タンク130の液体室134の内部圧力を高くすることができる。一方、回収ポンプP2を逆転駆動すると、回収タンク130の液体室134内のインクが第1分岐流路160Aを経由してバッファタンク110側(第2連通流路160側)に流出し、回収タンク130の液体室134の内部圧力を低くすることができる。
【0111】
回収タンク130の液体室134から第1分岐流路160Aを経由して第1連通流路140側に流れ込んだインクは、バッファタンク110に移動するか、又は、そのままフィルタ142を通過して供給タンク120の液体室124、あるいは、第2分岐流路160Bを経由して回収タンク130の液体室134に移動する。つまり、バッファタンク110内のインクや、後述するように供給タンク120から記録ヘッド60を経由して回収タンク130に循環したインクは、フィルタ142によって増粘成分等の異物が除去されてから、各タンク120、130に供給される。このため、記録モジュール60には異物を含まない良好なインクが循環され、吐出安定性が向上する。
【0112】
供給タンク120の液体室124は、第1供給流路170、供給バルブモジュール172、第2供給流路174A、174B、…を介して記録ヘッド60の各ヘッドモジュール60A、60B、…の供給口66A、66B、…に連通されている。
【0113】
第1供給流路170は、一端が供給タンク120の液体室124に接続されている。この第1供給流路170は、他端が複数に分岐して形成されている。すなわち、記録ヘッド60に備えられたヘッドモジュール60A、60B、…の数(本例では説明の便宜上3つ)に対応した数に分岐して形成されている。そして、分岐した各第1供給流路170A、170B、…の先端は、それぞれ供給バルブモジュール172に備えられた各供給バルブ172A、172B、…の一端(入口)に接続されている。
【0114】
供給バルブモジュール172は、記録ヘッド60に備えられたヘッドモジュール60A、60B、…の数に対応した数の供給バルブ172A、172B、…を有している。この供給バルブモジュール172に備えられた各供給バルブ172A、172B、…は、図9に示したラッチ式電磁バルブ10が使用されており、図示しないシステムコントローラ(例えば図1に示す制御回路50)に制御されて個別に開閉される。上述したように、分岐した第1供給流路170A、170B、…の先端は、この供給バルブモジュール172の各供給バルブ172A、172、…の一端(入口)に接続されている。
【0115】
各供給バルブ172A、172B、…の他端(出口)には、それぞれ第2供給流路174A、174B、…の一端が接続されている。この第2供給流路174A、174B、…の他端は、それぞれ記録ヘッド60に備えられた各ヘッドモジュール60A、60B、…の供給口66A、66B、…に接続されている。
【0116】
以上のように、各供給バルブ172A、172B、…が、すべてのヘッドモジュール60A、60B、…に連通される。
【0117】
回収タンク130の液体室134は、第1回収流路210、回収バルブモジュール21
2、第2回収流路214A、214B、…を介して記録ヘッド60の各ヘッドモジュール60A、60B、…の排出口68A、68B、…に連通されている。
【0118】
第1回収流路210は、一端が回収タンク130の液体室134に接続されている。この第1回収流路210は、他端が複数に分岐して形成されている。すなわち、記録ヘッド60に備えられたヘッドモジュール60A、60B、…の数(本例では説明の便宜上3つ)に対応した数に分岐して形成されている。そして、分岐した各第1回収流路210A、210B、…の先端は、それぞれ回収バルブモジュール212に備えられた各回収バルブ212A、212B、…の一端(出口)に接続されている。
【0119】
回収バルブモジュール212は、記録ヘッド60に備えられたヘッドモジュール60A、60B、…の数に対応した数の回収バルブ212A、212B、…を有している。この回収バルブモジュール212に備えられた各回収バルブ212A、212B、…は、図9に示したラッチ式電磁バルブ10が使用されており、図示しないシステムコントローラに制御されて個別に開閉される。上述したように、分岐した第1回収流路210A、210B、…の先端は、この回収バルブモジュール212の各回収バルブ212A、212B、…の一端(出口)に接続されている。
【0120】
各回収バルブ212A、212B、…の他端(入口)には、それぞれ第2回収流路214A、214B、…の一端が接続されている。この第2回収流路214A、214B、…の他端は、それぞれ記録ヘッド60に備えられた各ヘッドモジュール60A、60B、…の排出口68A、68B、…に接続されている。
【0121】
このように、ヘッドモジュール毎に供給バルブ及び回収バルブを備えることで、ヘッドモジュール毎にインクの充填およびメンテナンスを行うことが可能となる。例えば、正常なヘッドモジュールに連通するバルブを閉め、不具合の発生したヘッドモジュールに対して、インクを加圧してヘッドモジュール内の劣化したインクを外に押し出す等を行うことが可能となる。
【0122】
このように構成されたインクジェット記録装置において、上記の実施形態に係る動作確認装置40、41、42等を搭載することにより、メインタンク開閉バルブ102、各供給バルブ172A、172B、…、各回収バルブ212A、212B、…、の動作状態を確認することができ、これによりインクジェット記録装置100の記録品質を保つことが可能となる。
【0123】
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されず、ラッチ式電磁バルブを使用する様々な装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0124】
10…電磁バルブ、20…コア、22…プランジャ、24…コイル、34…スプリング、40、41、42…動作確認装置、50…制御回路、52…電流検出回路、54…電流検出用抵抗、58…バルブ駆動ドライバ、301…バルブ駆動パルス、302…バルブ検査パルス、311、312…検出波形、C1、C2…部分波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブであって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、
駆動回路により前記第1の方向又は第2の方向に電流を供給して前記ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ駆動手段と、
前記駆動回路により前記バルブ駆動手段と同じ方向に電流を供給する検査駆動手段と、
前記検査駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記ラッチ式電磁バルブの動作状態を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とするラッチ式電磁バルブの動作確認装置。
【請求項2】
前記バルブ駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を検出する第2の検出手段を備え、
前記判定手段は、前記第2の検出手段により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記ラッチ式電磁バルブの動作状態を判定することを特徴とする請求項1に記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置。
【請求項3】
コイルに第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブであって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブの動作確認装置において、
複数のラッチ式電磁バルブに対してそれぞれの駆動回路により前記第1の方向又は第2の方向に電流を供給して該ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ駆動手段と、
前記複数のラッチ式電磁バルブに対して前記それぞれの駆動回路により順次前記バルブ駆動手段と同じ方向に電流を供給する検査駆動手段と、
前記検査駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を順次検出する単一の検出手段と、
前記検出手段により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記複数のラッチ式電磁バルブの個々の動作状態を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とするラッチ式電磁バルブの動作確認装置。
【請求項4】
前記検査駆動手段の電流供給時間は、前記バルブ駆動手段の電流供給時間よりも短いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置。
【請求項5】
前記判定手段において前記ラッチ式電磁バルブの動作状態が異常と判定された場合に、前記バルブ駆動手段と同じ方向に電流を供給して再度前記ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ再駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置。
【請求項6】
前記バルブ再駆動手段は、前記バルブ駆動手段とは異なる波形で電流を供給することを特徴とする請求項5に記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置。
【請求項7】
前記判定手段において前記ラッチ式電磁バルブの動作状態が異常と判定された場合に、前記バルブ駆動手段とは反対の方向に電流を供給して前記ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ逆駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置。
【請求項8】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクを格納するインクタンクから前記インクジェットヘッドへ前記インクを供給するインク流路と、
前記インク流路を開閉するためのラッチ式電磁バルブと、
請求項1から7のいずれかに記載のラッチ式電磁バルブの動作確認装置と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
コイルに第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブであって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブの動作確認方法において、
駆動回路により前記第1の方向又は第2の方向に電流を供給して前記ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ駆動工程と、
前記駆動回路により前記バルブ駆動工程と同じ方向に電流を供給する検査駆動工程と、
前記検査駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を検出する検出工程と、
前記検出工程により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記ラッチ式電磁バルブの動作状態を判定する判定工程と、
を備えたことを特徴とするラッチ式電磁バルブの動作確認方法。
【請求項10】
コイルに第1の方向に電流が供給されることにより閉弁状態から開弁状態へ移行し、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に電流が供給されることにより開弁状態から閉弁状態へ移行するラッチ式電磁バルブであって、電流供給停止後に移行後の状態を維持するラッチ式電磁バルブの動作確認方法において、
複数のラッチ式電磁バルブに対してそれぞれの駆動回路により前記第1の方向又は第2の方向に電流を供給して該ラッチ式電磁バルブの状態を移行させるバルブ駆動工程と、
前記複数のラッチ式電磁バルブに対して前記それぞれの駆動回路により順次前記バルブ駆動工程と同じ方向に電流を供給する検査駆動工程と、
前記検査駆動に基づく前記駆動回路の駆動電流又は駆動電圧を単一の検出手段により順次検出する検出工程と、
前記検出工程により検出した駆動電流又は駆動電圧に基づいて前記複数のラッチ式電磁バルブの個々の動作状態を判定する判定工程と、
を備えたことを特徴とするラッチ式電磁バルブの動作確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−203204(P2011−203204A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72998(P2010−72998)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】