ラッチ機構
【課題】高負荷荷重が加わっても、ラッチ機構そのものの破壊あるいは無理抜き等が未然に防止されるようにする。
【解決手段】固定体8もしくは移動体9の何れか一方にラッチ本体1を設けると共に、他方に該ラッチ本体1に係脱されるストライカ5を設け、移動体9を押込み操作により固定体8側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するラッチ機構において、ラッチ本体1は、ストライカ5と異方向に摺動可能であると共に、該ストライカ5と係合して該ストライカの抜け方向への移動を阻止する係止部材2と、ストライカ5からの入力方向を変換して係止部材2に伝達するカム部材3とを備えていることを特徴としている。
【解決手段】固定体8もしくは移動体9の何れか一方にラッチ本体1を設けると共に、他方に該ラッチ本体1に係脱されるストライカ5を設け、移動体9を押込み操作により固定体8側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するラッチ機構において、ラッチ本体1は、ストライカ5と異方向に摺動可能であると共に、該ストライカ5と係合して該ストライカの抜け方向への移動を阻止する係止部材2と、ストライカ5からの入力方向を変換して係止部材2に伝達するカム部材3とを備えていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ機構のうち、特に移動体を押込み操作により固定体側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するプッシュ・プッシュ式のラッチ機構(これは浮出しラッチ、又は、プッシュロック・プッシュオープン式のラッチと称されることもある)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のラッチ機構は、固定体に対する移動体の保持及び解除共に移動体への押込み操作で行える点で使い勝手に優れており、特許文献1や2に例示されるように収納装置などに使用されている。特許文献1では、以上のラッチ機構を備えることで、蓋体が付勢力に抗した閉方向への押込み操作によりボックスの閉位置で保持されると共に、蓋体が閉位置から更に押込み操作されると前記保持状態を解除して開方向へ切り換えられる。特許文献2では、以上のラッチ機構を使い勝手及び外観性を改良したものである。機構特徴は、蓋体には押込み桿が枢支されると共にケース本体には該押込み桿の案内手段が設けられている点、ケース本体には押込み桿の先端側に当接係合される係合凹部、及び係合ピンとを備える係合桿が枢支されている点、前記係合桿の回動に伴なう係合ピンの移動軌跡上には係合ピンとの摺動カム部を備えた係合部材が設けられている点にある。そして、蓋体のケース本体側に向けた押込み操作による押込み桿の再移動により、係合部材の係止部と係合ピンとの係止が解かれて、押込み桿の先端側と係合桿との係合が解かれる構成としたものである。
【0003】
【特許文献1】実開平5−65687号公報
【特許文献2】特許第3098379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のラッチ機構では、蓋体の抜去力が直接ラッチに作用するため、抜去方向の力が高負荷として加わると、保持状態にあるのにも関わらず無理抜きされてしまうか、ラッチ機構そのものが破壊されてしまう虞があった。つまり、一般的に使用されているラッチ機構では、保持力ないしは保持荷重がおおよそ数kgと小さいため、それより大きな外力が加わると誤作動や破壊要因となり、また、操作性を向上するため保持と解除時の押しストロークを小さくしようとしても、ラッチ機構を構成しているハート形循環カムと摺動ピンとの関係で制約される。
【0005】
本発明の目的は、以上のような課題を解決して、特に高負荷荷重が加わっても、ラッチ機構そのものの破壊あるいは無理抜き等が未然に防止されるようにして、特に耐久性に優れて品質及び信頼性を高めると共に用途拡大を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、固定体もしくは移動体の何れか一方にラッチ本体を設けると共に、他方に該ラッチ本体に係脱されるストライカを設け、前記移動体を押込み操作により前記固定体側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するラッチ機構において、前記ラッチ本体は、前記ストライカと異方向に摺動可能であると共に、該ストライカと係合して該ストライカの抜け方向への移動を阻止する係止部材と、前記ストライカからの入力方向を変換して前記係止部材に伝達するカム部材とを備えていることを特徴としている。
【0007】
以上のラッチ機構において、移動体は固定体に対して相対的に移動されるものであればよく、蓋体、扉、引戸などを含む。固定体は移動体を配置しているものであればよく、各種装置、ボックス、ハウジング、更には形態例のような引出体なども含む。この機構特徴は、プッシュ・プッシュ式ラッチ機構の耐久性、つまりストライカに対する保持力を従来機構よりも数段(例えば数十〜数百倍)高くするため、従来機構に対しストライカと係脱する係止部材、及びストライカから受ける力を入力方向を変換して係止部材に伝達するカム部材を有している。係止部材としては、ストライカと異方向に摺動されてストライカと係脱することから、ストライカと係合した状態で過大な抜去力が加わっても破壊されたり無理抜きされ難くし易い。より好ましくは、形態例のごとく係止部材をストライカと略直交方向へ配置することである。カム部材としては、ストライカがラッチ本体に対し係止部材を介して係脱されるようにする場合、ストライカの移動量をカム作用により係止部材に増幅して伝達可能にし、それによりストライカの小さな移動量で係止部材を大きく動かすことでラッチ機構の応答性ないしは操作性を良好にし易い。
【0008】
以上の本発明は次のように具体化されることがより好ましい。
(ア)、請求項1において、前記係止部材を前記ストライカと係合する方向に付勢する付勢手段と、前記係止部材を前記ストライカと係合解除した位置に保つ保持手段とを有している構成である(請求項2)。これは、図1〜図9の形態例、図10〜図11の第1変形例、図14の第3変形例に基づいて共通要部を特定したものである。
(イ)、請求項1において、前記係止部材を前記ストライカと係合解除する方向に付勢する付勢手段と、前記係止部材を前記ストライカと係合した状態に保つ保持手段とを有している構成である(請求項3)。これは、図12〜図13の第2変形例に基づいて請求項2に対応した要部を特定したものである。
【0009】
(ウ)、請求項2と3において、前記ラッチ本体は、前記付勢手段及び前記保持手段をケーシングに配設したラッチユニットを有し、前記係止部材が前記ラッチユニットの前記保持手段に係脱される構成である(請求項4)。これは、形態例、第1変形例と第2変形例に基づいて共通要部を特定したものである。
(エ)、請求項2から4において、前記保持手段は、循環カム及び該循環カムをトレースする摺動ピンを有している構成である(請求項5)。これは、形態例、第1変形例から第3変形例に基づいて共通点を確認的に特定したものである。
【0010】
(オ)、請求項2から5において、前記カム部材は、前記ストライカから力を受ける入力部及び前記係止部材に力を伝達する伝達部とを有している構成である(請求項6)。この場合、更に、前記カム部材は、短片及び長片からなる略L形状であり、前記短片及び長片の略交差部分を枢支した状態で、前記短片を前記入力部として、前記長片を前記伝達部として用いられることが好ましい(請求項7)。これらは全ての例の共通要部を特定したものである。
(カ)、請求項1から7において、前記ラッチ本体は、前記係止部材を配置しているケースと、前記ケースに設けられて前記係止部材を摺動可能で、かつ前記ストライカの出退方向への摺動を阻止する壁部を有している構成である(請求項8)。これも全ての例の共通要部を特定したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、ラッチ機構の耐久性、つまりラッチ機構としての抜去力ないしは保持力を従来機構よりも高くするため、従来機構に対しストライカと係脱する係止部材、及びストライカから受ける力を入力方向を変換して係止部材に伝達するカム部材を有している。そして、係止部材は、ストライカと異方向に摺動されてストライカと係脱することで、ストライカを介して過大な抜去力が加わった際の破壊や無理抜きに対し改善可能にする。カム部材は、ストライカの移動量をカム作用により係止部材に増幅して伝達可能し、それによりラッチ機構としての応答性ないしは操作性を改善可能にする。
【0012】
請求項2と3の発明では、ラッチ本体の保持手段として、形態例と第1変形例又は第3変形例の構成か、第2変形例の構成か、必要に応じて選択可能にし、それにより設計自由度を拡大できる。
【0013】
請求項4の発明では、ラッチ本体が既存のラッチユニットを使用可能なため汎用性を持たせて簡易化できる。これに対し、請求項5の発明では、保持手段が既存の循環カム及び摺動ピンを使用可能なため簡易化できる。
【0014】
請求項6の発明では、ストライカからの力をカム部材を介し係止部材に増幅して伝達でき、それにより上記したラッチ機構としての応答性ないしは操作性を向上できる。この場合、請求項7の発明では、更にカム部材が短片と長片のレバー比に応じた増幅率で増大される関係で、ラッチ機構としての応答性ないしは操作性をより確実に向上できる。
【0015】
請求項8の発明では、係止部材が壁部により摺動方向を規制されるため、壁部の強度設定により上記したラッチ機構として保持力をより高めて耐久性に優れたものを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具体例について添付図面を参照しながら説明する。この説明では、図1〜図9に示される形態例の概要、機構特徴、作動特徴、図10及び図11に示される第1変形例、図12及び図13に示される第2変形例、図14に示される第3変形例の順に詳述する。
【0017】
(概要)図1は形態例のラッチ機構の使用例と外観例を示している。図1(a)において、符号7はシステムキッチンを構成しているキッチン本体、7aはシンク等を保持する支持フレーム、7bはその下側に設けられている大きな空間、8は該空間7bに配置された引出体、8aは該引出体8の前側に設けられた小収納部、9は該小収納部8aの前開口を開閉する蓋体である。ここで、引出体8は、不図示のスライド機構により前後に所定距離だけ摺動可能に支持されている。小収納部8aは、包丁等の小物類を収容する箇所であり、引出体8の前側に一体的に設けられると共に前開口している。蓋体9は、下側ヒンジ部9aを支点として回動される前面板であり、上縁に沿って設けられた取手部9bを有している。
【0018】
以上の使用例において、ラッチ機構としては、主要部を構成しているラッチ本体1が小収納部8aの上面側に固定されると共に、ラッチ本体1に係脱されるストライカ5が蓋体9の上内面側にベース6を介して取り付けられており、蓋体9を最初の押込み操作により小収納部8a側、つまり小収納部8aの前開口を塞ぐ閉位置に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除して蓋体9を開方向へ切換可能にするものである。但し、使用態様は、ラッチ本体1を蓋体9等の移動体側に設けると共に、ストライカ5を小収納部8a等の固定体側に設けるようにしてもよい。また、他の用途例としては、キッチン本体7もしくは引出体8の何れか一方にラッチ本体1を設けると共に、他方に該ラッチ本体1に係脱されるストライカ5を設け、引出体8を引き出されている状態から収納位置へ押し込む押込み操作(最初の押込み操作)によりキッチン本体7側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するような使い方でもよい。
【0019】
(機構特徴)上記したラッチ機構のうち、ラッチ本体1は、従来機構に比べ、特にケース10内に配置された係止部材2及びカム部材3を有していると共に、それに関連する構成が相違している。以下、これらの点を明らかにする。
【0020】
ここで、ケース10は、図2や図3及び図6に示されるごとく、上面開口した横長矩形容器状をなし、上開口が取付兼用のカバー15により閉じられる。ケース10には、位置合わせ用の上フランジ部10aと、両側の係合孔10bと、ガイド用壁部11と、ガイドレール12と、軸受用ボス部13と、出入用開口14が設けられている。このうち、上フランジ部10aは、ケース10の上端面に沿って複数箇所に設けられており、カバー対応部と嵌合することでケース10に対するカバー15の装着精度を保つ。係合孔10bは、ケース両側部にスリットを介して区画された揺動部に設けられている。壁部11は、ケース内底面にあって略左右中間から一方側壁の手前まで延びている横壁部分11a及び該横壁部分から直角に屈曲されて後壁部に接続されている縦壁部分11bとからなる。横壁部分11aは、ストライカ5の出退方向と略直交した状態に設けられており、ケース後壁部との間に係止部材2を摺動可能に配置すると共に、ストライカ5の出退方向への摺動を阻止する壁部である。
【0021】
また、横壁部分11aとケース後壁部には、図6(b)のごとく爪部11d,11dが対向した状態に設けられている。縦壁部分11bには後述するラッチユニット4を装着する係合孔11cが設けられている。ガイドレール12は、横壁部分11aとケース後壁部との間のケース内底面に突設された断面凸状からなり、横壁部分11aと平行でかつ短くなっている。ボス部13は、カム部材3を枢支する箇所で、ケース前壁部側でかつケース前壁部に設けられた矩形の出入用開口14の片側に位置している。
【0022】
これに対し、カバー15は、図2から推察されるごとく、ケース10より一回り大きな矩形板状であり、ケース10の上開口に挿入される枠部16と、枠部16の左右側壁に設けられた係止爪17と、枠部16の外両側に下設された取付用ボス部18と、枠部16の前側に下設されたガイド片部19と、下面に設けられてケース側の各上フランジ部10aと係合する凹部15a(図2(c)を参照)とを有している。そして、以上のカバー15は、ケース10に係止部材2、カム部材3、ラッチユニット4を組み入れた状態で、枠部16がケース内に押し込まれることにより、各係止爪17と係合孔10bとの係合、前記凹部と上フランジ部10aとの係合を介してケース1に精度良く装着される。
【0023】
係止部材2は、図3及び図7に示されるごとく矩形ブロック状の板部20と、該板部後端に突設されている係止片部21と、板部前片側に設けられた嵌合凹部22と、板部前端の片側に突設された係合部23と、板部両側面に設けられた爪部25と、板部下面に設けられて前後方向に延びているガイド溝26とを一体に有している。係止片部21は、先端がラッチユニット4に係脱される膨出部21aとなっている。
【0024】
以上の係止部材2は、ケース10内にあって横壁部分11aとケース後壁部との間に押し込めると、両側の爪部25が上記した対応する爪部11dを弾性的に乗り越えることで抜け止めされると共に、ガイド溝26とガイドレール12の嵌合を介してケース左右に摺動可能に配置される。この形態では、係止部材2が図4(b)のごとく縦壁部分11bに最も近づく位置から、同(c)のごとく縦壁部分11bから最も離れる位置まで自在に摺動される。
【0025】
カム部材3は、概略L形状からなり、L形の長片30及び短片31の交差部分にあって上下に突設された軸部32,32と、下側軸部32及び短片31に連設されている入力部33と、長片30の下面先端側に突設された軸状の伝達部34とを有している。入力部33は後述するストライカ5の基部51の前端対応部と当接する箇所である。伝達部34は、係止部材2の嵌合凹部22に差し込まれて、カム部材3のカム作用つまり、長片30と短片31のレバー比に応じた増幅率で係止部材2を摺動可能にする。
【0026】
以上のカム部材3は、伝達部34を嵌合凹部22に挿入すると共に下側軸部32をボス部13に嵌合した状態で、カバー15がケース10に装着されることで回動可能に保持される。なお、カバー15は、ボス部13に対応する不図示のボス部を有し、ケース10に装着された状態で、前記上側軸部32がそのボス部と嵌合するようになっている。
【0027】
ラッチユニット4は、図5では一部省略しているが、特許第3126992号公報に開示のものと実質的に同じく、ケーシング40と、保持手段であるラッチボディ41と、付勢手段であるコイルばね44と、概略コ形状のトレース用摺動ピン45とを備えている。ケーシング40は、対向側壁に設けられた弾性爪40a,40aと、内底面に設けられてコイルばね44を支持する軸部40bと、不図示のピン用取付部を有している。ラッチボディ41は、両側(紙面前後)に設けられたハート形島43a及び該島43aの周囲に設けられた循環カム43と、先端の左右側に設けられて係止片部側膨出部21aを係脱する一対の弾性係止爪42,42と、後端面から先端側に向かって設けられたガイド穴とを有している。そして、ラッチボディ41は、前記ガイド穴に軸部40b及びコイルばね44の対応部を差し込んだ状態でケーシング40に組み込まれ、通常はコイルばね44の付勢力により突出方向へ付勢移動されている。摺動ピン45は、コ形の中間部がケース内底面に支持され、コ形の両端を内側に折り曲げた先端が対応する循環カム43の対応部に突出している。
【0028】
以上のラッチユニット4は、上記した縦壁部分側係合孔11cに対しケーシング4を後端から挿入し、かつ両側の弾性爪40aを介して抜け止めされた状態で固定されている。そして、ラッチボディ41は、図5(a)のごとく接近する係止部材2の係止片部(の膨出部21a)により押されると、コイルばね44の付勢力に抗し、かつ、両弾性爪42を弾性変位しつつケーシング4内に押し込まれる。最終的には、両弾性爪42が係止片部の膨出部21aを係合抜け止めし、摺動ピン45の両先端が循環カム43を構成している係止溝に係止される。該係止は、ラッチボディ41が再び図5(a)の矢印方向に押されると、摺動ピン45の両先端が同図の矢印方向、つまり循環カム43を構成している係止溝から解除用誘導溝、更に復帰溝に入って係止解除される。すると、ラッチボディ41は、図5(b)のごとくコイルばね44の付勢力でケーシング40から突出する方向へ摺動され、その摺動により係止部材2が図5(b)の矢印方向へ摺動されることになる。なお、循環カム43は、従来と同じため細部を省略したが、図5(a)において、左下側から左上側へ延びる住路溝と、該住路溝の上側に位置して左右に別れている係止用誘導溝及び解除用誘導溝と、これら両誘導溝の間に設けられた係止溝と、解除用誘導溝から下側へ延びる復路溝とを有している。
【0029】
これに対し、ストライカ5は、細長い矩形状の固定部50と、固定部50の中央部に突設された板状の基部51と、基部51の前端片側より前方へ突出したアーム部52と、アーム部52の前端左側へ突出した係止爪部53とを一体に有している。基部51の上下面には爪部51が設けられている。アーム部52の上下面には、中央長手方向に沿って、かつ先端が拡開した凹溝54が形成されている。
【0030】
以上のストライカ5は、図1から推察されるごとく固定部50が上記した蓋体9の内壁にベース6を介して固定される。ベース6には、両側の取付孔6aと、中央に設けられて基部51及びアーム部52を余裕を持って挿通する不図示の貫通孔と、後面ないしは取付面側にあって固定部50を所定距離だけ摺動可能に嵌合する凹部6bとが設けられている。また、この形態では、上記した凹溝52の先端が拡開しており、また、固定部50がベース6に対して上記した貫通孔及び凹部6bを介して若干量だけ移動可能に取付けられている。これらは、ストライカ5が左右の取付位置に誤差があっても該誤差を吸収して、開口14からケース1内に入ったり出る過程で、凹溝54が上記ガイド片部19と嵌合した状態で精度よく挿通されるようにする。
【0031】
(作動特徴)上記ラッチ機構の作動特徴を図4及び図5を参照しながら明らかにする。
(ア)図4(a)は、ラッチユニット4が係止部材2を係止し、それにより係止部材2をストライカ5と係合解除した解除位置に保持している。具体的には、図1(a)の例だと、蓋体9が開から閉方向へ回動操作されたり、逆に、ストライカ5がラッチ本体1から係合解除された後、蓋体9を閉から開方向へ回動する直前の状態に対応している。この状態において、ラッチユニット4は、図5(a)のごとくラッチボディ41がコイルばね44の付勢力に抗しケーシング40内に押し込まれることで係止爪42同士の間に膨出部21aを係合抜け止めし、その状態を循環カム43の係止溝に摺動ピン45を係止することで保持している。
【0032】
(イ)図4(b)は、ストライカ5が蓋体9の更なる閉方向への回動操作によりケース1内へ最大まで押し入れられた状態である。この状態では、ストライカ5がカム部材側短片31と一体化されている不図示の入力部33を基部51の前端対応部で押し、その結果、カム部材3が軸部32を支点として逆時計回りに回動され、その回動と同期して、長片30と一体化されている不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁を押し、その押し力で係止部材2がラッチユニット4側へ摺動される。
【0033】
(ウ)すると、ラッチユニット4としては、上記した図5(a)のごとく摺動ピン45が循環カム43の係止溝に係止して係止部材2を拘束している状態から、ラッチボディ41が係止部材2により同図の矢印方向へ押される結果、摺動ピン45が循環カム43の係止溝から係止解除されて同図の矢印方向、つまり解除用誘導溝から復路溝へトレースする。すると、図5(b)のごとくラッチボディ41は、コイルばね44の付勢力で突出方向へ摺動される。同期して、係止部材2は、そのラッチボディ41を介して同図の矢印方向、つまり図4(c)のごとくストライカ5側へ摺動され、それにより係合部23がストライカの係止爪部53と係合する。この係合により、蓋体9は、引出体側小収納部8aの前開口を塞ぐ閉位置に保持される。なお、カム部材3は、係止部材2が図4(c)の状態まで摺動される過程で、不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁で押される結果、軸部32を支点として時計回りに回動されて、短片31と一体化されている不図示の入力部33を基部51の前端対応部に軽く接している。
【0034】
(エ)蓋体9を閉位置から開に切り換える場合は、蓋体9を再び押込み操作する。すると、ストライカ5は、蓋体9の更なる閉方向への回動操作により上記した図4(b)のごとくケース1内へ最大まで押し入れられ、カム部材側短片31と一体化されている不図示の入力部33をストライカ側基部51の前端対応部で押し、その結果、カム部材3が軸部32を支点として逆時計回りに回動される。この回動により、係止部材2は、長片30と一体化されている不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁を押し、その押し力でラッチユニット4側へ摺動され、係止爪部53に対する係合部23の係合を解除して、ストライカ5の引き抜きを許容する。同時に、ラッチユニット4は、上記した図5(a)のごとくラッチボディ41が係止部材2の押圧力によりコイルばね44の付勢力に抗しケーシング40内に押し込まれることで係止爪42同士の間に膨出部21aを係合抜け止めし、その状態を循環カム43の係止溝に摺動ピン45を係止することで保持することになる。
【0035】
(オ)以上のラッチ機構は従来機構に比べて次のような点で特に優れている。
第1に、従来ラッチ機構(上記形態のラッチユニット4に対応している)では、ストライカがラッチユニットに直接作用する関係で蓋体等の移動体に対する保持力を増大しようとしても循環カムと摺動ピンの関係から制約される。これに対し、以上のラッチ機構では、ストライカ5がラッチユニット4に対し直接作用することなくカム部材3及び係止部材2を介して作用すること、ストライカ5がラッチユニット4ではなく係止部材2に対して係合したり係合解除すること、係止部材2に対しストライカ5から加わる負荷加重はガイド用壁部11のうち横壁部分11aで専ら受け止められる。従って、蓋体等の移動体に対する抜去力や保持力は、係止部材2及び横壁部分11aの強度や剛性を確保するだけでよいことから、例えば、従来と同じラッチユニットを使用しても壁部11、係止部材2、カム部材3を補強するだけで保持荷重を従来の数百倍にも増大できる。
【0036】
第2に、従来ラッチ機構では、ストライカがラッチユニットに直接作用する関係で蓋体等の移動体を固定体側に保持したり保持解除するための押しストロークが循環カムと摺動ピンの関係から制約されてストロークの短縮化が難しい。この問題は、例えば、移動体が固定体側開口を開閉する場合だと、閉位置において、移動体が更に解除用の押しストローク分だけ閉方向へ移動可能に配置しなければならず用途的な制約要因となる。これに対し、以上のラッチ機構では、ストライカ5がラッチユニット4に対しカム部材3及び係止部材2を介して、つまりストライカ5の移動量をカム部材3により増幅し、かつ係止部材2を介して伝達することにより、上記した押しストロークを従来より大幅に小さくでき、その結果、上記した用途的な制約要因を解消したり、ラッチ機構としての応答性ないしは操作性を向上できる
【0037】
(第1変形例)図10及び図11は、上記したストライカ5と係止部材2との係合構造を変更した一例を示している。この説明では、上記形態と同一部材及び作用的に同じ部位に同じ符号を付し、変更した箇所だけ述べて重複した記載を極力省く。
【0038】
図10は要部外観を示し、図11(a)は図4(a)に対応し、図11(b)は図4(c)に対応して示されている。各図において、ストライカ5のアーム部52には、先端部55が先細りになっていると共に、該先端部55の下側に係止爪部55aが設けられている。これに対し、係止部材2の板部20前側には、一段低くなった平板部27が一体に設けられていると共に、該平板部27が前記係止爪部55aに係合される上向き係合部26を有している。換言すると、この変形例は、係止爪部55aが上記係止爪部53に対応し、係合部26が上記係合部23に対応している。そして、上記(ア)〜(オ)の作動では、係止爪部53を係止爪部55aに代え、係合部23を係合部26に代えるだけでのまま当てはまる。
【0039】
(第2変形例)図12及び図13は、係止部材2がストライカ5と係合しているときラッチユニット4に対し係止され、ストライカ5と係合解除しているときラッチユニット4に対し係止解除されるようにした一例を示している。この説明でも、上記形態と同一部材及び作用的に同じ部位に同じ符号を付し、変更点だけ述べる。
【0040】
図12は要部外観を示し、図13(a)は図12(a)に対応し、図13(b)は図12(c)に対応して示されている。各図において、ストライカ5のアーム部52には、上記形態例とは逆向き(図に向って右側)の鈎形の係止爪部56が突設されている。これに対し、係止部材2の板部20前側(右側)には、ケース10の後側内壁に沿って平行でその先端がL字形に屈曲した延長部28が設けられている。延長部28の先端側には、前記した係止爪部56に係合する鉤形の係止爪部28aが形成されている。また、ケース10の内底面には、延長部28の屈曲先端を案内するガイド用壁部10dが設けられている。
【0041】
以上の第2変形例は、上記形態例及び第1変形例に対し、係止部材2及びストライカ5の係脱関係と、係止部材2及びラッチユニット4の係脱関係が逆になっている。換言すると、上記形態例及び第1変形例では、ラッチユニット4がラッチボディ41及びコイルばね44を介して係止部材2をストライカ5と係合する方向に付勢すると共に、係止部材2をストライカ5と係合解除した位置に保つ構成である。これに対し、第2変形例では、ラッチユニット4がラッチボディ41及びコイルばね44を介して図13(a)のごとく係止部材2をストライカ5と係合解除する方向に付勢すると共に、ラッチユニット4が図13(b)のごとく係止部材2をストライカ5と係合(ストライカ側係止爪部56と係止部材側係止爪部28aとが係合)した位置に保つ構成である。そして、この変形例でも、上記(ア)〜(オ)の作動は係止部材2及びストライカ5の係脱関係と、係止部材2及びラッチユニット4の係脱関係を逆にすれば実質的に当てはまる。
【0042】
(第3変形例)図14は、上記したラッチユニット4を簡素化した一例を示している。この説明でも、上記形態と同一部材及び作用的に同じ部位に同じ符号を付し、変更点だけ述べる。
【0043】
図14(a)は図12(a)に対応し、図14(b)は図12(c)に対応して示されている。すなわち、第3変形例では、第1変形例に対し、ラッチユニット4を省くと共に、係止部材2に循環カム29を形成している点、係止部材2を付勢手段であるコイルばね47により直にストライカ5と係合する方向へ付勢している点、循環カム29をトレースする摺動ピン48を図示を省いたカバー15の内面側に支持している点で変更されている。
【0044】
このうち、循環カム29は、上記したラッチボディ41に設けられている循環カム43と同様な構成であり、図14のごとくハート形島29aの周囲に設けられて、左下側から右上側へ延びる住路溝と、該住路溝の上側に位置して左右に別れている係止用誘導溝及び解除用誘導溝と、これら両誘導溝の間に設けられた係止溝と、解除用誘導溝から下側へ延びる復路溝とを有している。コイルばね47は、壁部11の縦壁部分11b内面に突設された軸部11cに支持された状態で配置され、通常は係止部材2をストライカ5と係合する方向へ付勢している。摺動ピン48は、図示を省いたが、略L形からなり、L形の短片部が循環カム29をトレースするようカバー15に組み付けられる。この場合、摺動ピン48は、カバー15の内面に設けられた取付部に対し揺動可能で、かつ板ばねによりL形の長片部を押圧した状態に保持されている。そして、この変形例でも、上記(ア)〜(オ)の作動はラッチユニット4と関係する記載を循環カム29、コイルばね47、摺動ピン48にて置き換えることで実質的に当てはまる。
【0045】
以上のように本発明は、請求項で特定される構成を実質的に備えておればよく、細部はこの形態及び各変形例を参考にして更に変更したり展開可能なものである。また、名称としては、要部を分かり易くしたり従来のラッチ装置と区別するためラッチ機構としたが、ラッチ装置ないしはラッチ組立体と称しても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)は本発明形態の用途例を示す模式図、(b)は発明形態のラッチ機構を装置化した際の外観を示す模式斜視図である。
【図2】(a)は図1(b)の正面図、(b)は側面図、(c)はA−A線断面図である。
【図3】上記ラッチ機構の主構成部品を示す模式分解斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は上記ラッチ機構の動作を示す平面図である。
【図5】(a)と(b)上記ラッチ機構のラッチユニットの作動を示す模式断面図である。
【図6】(a)は上記ラッチ機構を組み込んでいるケースを示す平面図、(b)はB−B線断面図である。
【図7】(a)は上記ラッチ機構の係止部材を示す平面図、(b)はC−C線断面図である。
【図8】(a)は上記ラッチ機構のカムを示す平面図、(b)は右側面図、(c)はD−D線拡大断面図である。
【図9】(a)は上記ラッチ機構を構成しているストライカの平面図、(b)は右側面図である。
【図10】第1変形例のラッチ機構を示す模式斜視図である。
【図11】(a),(b)は上記図10のラッチ機構の動作を示す平面図である。
【図12】第2変形例のラッチ機構を示す模式斜視図である。
【図13】(a),(b)は上記図12のラッチ機構の動作を示す平面図である。
【図14】(a),(b)は第3変形例のラッチ機構を図11に対応して示す平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…ラッチ本体(10はケース、15はカバー、11ガイド用壁部)
2…係止部材(21は係止片部、21aは膨出部、22は嵌合凹部、24は係合部)
3…カム部材(30は長片、31は短片、33は入力部、34は伝達部)
4…ラッチユニット
5…ストライカ(51は基部、52アーム部、53,55a,56は係止爪部)
6…べース
7…キッチン本体
8…引出体(固定体)
9…蓋体(移動体)
29…循環カム
40…ケーシング(ラッチユニット)
41…ラッチボディ(ラッチユニット、42は係止爪、43は循環カム)
44…コイルばね(付勢手段)
45…摺動ピン(ラッチユニット)
47…コイルばね(付勢手段)
48…摺動ピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ機構のうち、特に移動体を押込み操作により固定体側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するプッシュ・プッシュ式のラッチ機構(これは浮出しラッチ、又は、プッシュロック・プッシュオープン式のラッチと称されることもある)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のラッチ機構は、固定体に対する移動体の保持及び解除共に移動体への押込み操作で行える点で使い勝手に優れており、特許文献1や2に例示されるように収納装置などに使用されている。特許文献1では、以上のラッチ機構を備えることで、蓋体が付勢力に抗した閉方向への押込み操作によりボックスの閉位置で保持されると共に、蓋体が閉位置から更に押込み操作されると前記保持状態を解除して開方向へ切り換えられる。特許文献2では、以上のラッチ機構を使い勝手及び外観性を改良したものである。機構特徴は、蓋体には押込み桿が枢支されると共にケース本体には該押込み桿の案内手段が設けられている点、ケース本体には押込み桿の先端側に当接係合される係合凹部、及び係合ピンとを備える係合桿が枢支されている点、前記係合桿の回動に伴なう係合ピンの移動軌跡上には係合ピンとの摺動カム部を備えた係合部材が設けられている点にある。そして、蓋体のケース本体側に向けた押込み操作による押込み桿の再移動により、係合部材の係止部と係合ピンとの係止が解かれて、押込み桿の先端側と係合桿との係合が解かれる構成としたものである。
【0003】
【特許文献1】実開平5−65687号公報
【特許文献2】特許第3098379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のラッチ機構では、蓋体の抜去力が直接ラッチに作用するため、抜去方向の力が高負荷として加わると、保持状態にあるのにも関わらず無理抜きされてしまうか、ラッチ機構そのものが破壊されてしまう虞があった。つまり、一般的に使用されているラッチ機構では、保持力ないしは保持荷重がおおよそ数kgと小さいため、それより大きな外力が加わると誤作動や破壊要因となり、また、操作性を向上するため保持と解除時の押しストロークを小さくしようとしても、ラッチ機構を構成しているハート形循環カムと摺動ピンとの関係で制約される。
【0005】
本発明の目的は、以上のような課題を解決して、特に高負荷荷重が加わっても、ラッチ機構そのものの破壊あるいは無理抜き等が未然に防止されるようにして、特に耐久性に優れて品質及び信頼性を高めると共に用途拡大を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、固定体もしくは移動体の何れか一方にラッチ本体を設けると共に、他方に該ラッチ本体に係脱されるストライカを設け、前記移動体を押込み操作により前記固定体側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するラッチ機構において、前記ラッチ本体は、前記ストライカと異方向に摺動可能であると共に、該ストライカと係合して該ストライカの抜け方向への移動を阻止する係止部材と、前記ストライカからの入力方向を変換して前記係止部材に伝達するカム部材とを備えていることを特徴としている。
【0007】
以上のラッチ機構において、移動体は固定体に対して相対的に移動されるものであればよく、蓋体、扉、引戸などを含む。固定体は移動体を配置しているものであればよく、各種装置、ボックス、ハウジング、更には形態例のような引出体なども含む。この機構特徴は、プッシュ・プッシュ式ラッチ機構の耐久性、つまりストライカに対する保持力を従来機構よりも数段(例えば数十〜数百倍)高くするため、従来機構に対しストライカと係脱する係止部材、及びストライカから受ける力を入力方向を変換して係止部材に伝達するカム部材を有している。係止部材としては、ストライカと異方向に摺動されてストライカと係脱することから、ストライカと係合した状態で過大な抜去力が加わっても破壊されたり無理抜きされ難くし易い。より好ましくは、形態例のごとく係止部材をストライカと略直交方向へ配置することである。カム部材としては、ストライカがラッチ本体に対し係止部材を介して係脱されるようにする場合、ストライカの移動量をカム作用により係止部材に増幅して伝達可能にし、それによりストライカの小さな移動量で係止部材を大きく動かすことでラッチ機構の応答性ないしは操作性を良好にし易い。
【0008】
以上の本発明は次のように具体化されることがより好ましい。
(ア)、請求項1において、前記係止部材を前記ストライカと係合する方向に付勢する付勢手段と、前記係止部材を前記ストライカと係合解除した位置に保つ保持手段とを有している構成である(請求項2)。これは、図1〜図9の形態例、図10〜図11の第1変形例、図14の第3変形例に基づいて共通要部を特定したものである。
(イ)、請求項1において、前記係止部材を前記ストライカと係合解除する方向に付勢する付勢手段と、前記係止部材を前記ストライカと係合した状態に保つ保持手段とを有している構成である(請求項3)。これは、図12〜図13の第2変形例に基づいて請求項2に対応した要部を特定したものである。
【0009】
(ウ)、請求項2と3において、前記ラッチ本体は、前記付勢手段及び前記保持手段をケーシングに配設したラッチユニットを有し、前記係止部材が前記ラッチユニットの前記保持手段に係脱される構成である(請求項4)。これは、形態例、第1変形例と第2変形例に基づいて共通要部を特定したものである。
(エ)、請求項2から4において、前記保持手段は、循環カム及び該循環カムをトレースする摺動ピンを有している構成である(請求項5)。これは、形態例、第1変形例から第3変形例に基づいて共通点を確認的に特定したものである。
【0010】
(オ)、請求項2から5において、前記カム部材は、前記ストライカから力を受ける入力部及び前記係止部材に力を伝達する伝達部とを有している構成である(請求項6)。この場合、更に、前記カム部材は、短片及び長片からなる略L形状であり、前記短片及び長片の略交差部分を枢支した状態で、前記短片を前記入力部として、前記長片を前記伝達部として用いられることが好ましい(請求項7)。これらは全ての例の共通要部を特定したものである。
(カ)、請求項1から7において、前記ラッチ本体は、前記係止部材を配置しているケースと、前記ケースに設けられて前記係止部材を摺動可能で、かつ前記ストライカの出退方向への摺動を阻止する壁部を有している構成である(請求項8)。これも全ての例の共通要部を特定したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、ラッチ機構の耐久性、つまりラッチ機構としての抜去力ないしは保持力を従来機構よりも高くするため、従来機構に対しストライカと係脱する係止部材、及びストライカから受ける力を入力方向を変換して係止部材に伝達するカム部材を有している。そして、係止部材は、ストライカと異方向に摺動されてストライカと係脱することで、ストライカを介して過大な抜去力が加わった際の破壊や無理抜きに対し改善可能にする。カム部材は、ストライカの移動量をカム作用により係止部材に増幅して伝達可能し、それによりラッチ機構としての応答性ないしは操作性を改善可能にする。
【0012】
請求項2と3の発明では、ラッチ本体の保持手段として、形態例と第1変形例又は第3変形例の構成か、第2変形例の構成か、必要に応じて選択可能にし、それにより設計自由度を拡大できる。
【0013】
請求項4の発明では、ラッチ本体が既存のラッチユニットを使用可能なため汎用性を持たせて簡易化できる。これに対し、請求項5の発明では、保持手段が既存の循環カム及び摺動ピンを使用可能なため簡易化できる。
【0014】
請求項6の発明では、ストライカからの力をカム部材を介し係止部材に増幅して伝達でき、それにより上記したラッチ機構としての応答性ないしは操作性を向上できる。この場合、請求項7の発明では、更にカム部材が短片と長片のレバー比に応じた増幅率で増大される関係で、ラッチ機構としての応答性ないしは操作性をより確実に向上できる。
【0015】
請求項8の発明では、係止部材が壁部により摺動方向を規制されるため、壁部の強度設定により上記したラッチ機構として保持力をより高めて耐久性に優れたものを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具体例について添付図面を参照しながら説明する。この説明では、図1〜図9に示される形態例の概要、機構特徴、作動特徴、図10及び図11に示される第1変形例、図12及び図13に示される第2変形例、図14に示される第3変形例の順に詳述する。
【0017】
(概要)図1は形態例のラッチ機構の使用例と外観例を示している。図1(a)において、符号7はシステムキッチンを構成しているキッチン本体、7aはシンク等を保持する支持フレーム、7bはその下側に設けられている大きな空間、8は該空間7bに配置された引出体、8aは該引出体8の前側に設けられた小収納部、9は該小収納部8aの前開口を開閉する蓋体である。ここで、引出体8は、不図示のスライド機構により前後に所定距離だけ摺動可能に支持されている。小収納部8aは、包丁等の小物類を収容する箇所であり、引出体8の前側に一体的に設けられると共に前開口している。蓋体9は、下側ヒンジ部9aを支点として回動される前面板であり、上縁に沿って設けられた取手部9bを有している。
【0018】
以上の使用例において、ラッチ機構としては、主要部を構成しているラッチ本体1が小収納部8aの上面側に固定されると共に、ラッチ本体1に係脱されるストライカ5が蓋体9の上内面側にベース6を介して取り付けられており、蓋体9を最初の押込み操作により小収納部8a側、つまり小収納部8aの前開口を塞ぐ閉位置に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除して蓋体9を開方向へ切換可能にするものである。但し、使用態様は、ラッチ本体1を蓋体9等の移動体側に設けると共に、ストライカ5を小収納部8a等の固定体側に設けるようにしてもよい。また、他の用途例としては、キッチン本体7もしくは引出体8の何れか一方にラッチ本体1を設けると共に、他方に該ラッチ本体1に係脱されるストライカ5を設け、引出体8を引き出されている状態から収納位置へ押し込む押込み操作(最初の押込み操作)によりキッチン本体7側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するような使い方でもよい。
【0019】
(機構特徴)上記したラッチ機構のうち、ラッチ本体1は、従来機構に比べ、特にケース10内に配置された係止部材2及びカム部材3を有していると共に、それに関連する構成が相違している。以下、これらの点を明らかにする。
【0020】
ここで、ケース10は、図2や図3及び図6に示されるごとく、上面開口した横長矩形容器状をなし、上開口が取付兼用のカバー15により閉じられる。ケース10には、位置合わせ用の上フランジ部10aと、両側の係合孔10bと、ガイド用壁部11と、ガイドレール12と、軸受用ボス部13と、出入用開口14が設けられている。このうち、上フランジ部10aは、ケース10の上端面に沿って複数箇所に設けられており、カバー対応部と嵌合することでケース10に対するカバー15の装着精度を保つ。係合孔10bは、ケース両側部にスリットを介して区画された揺動部に設けられている。壁部11は、ケース内底面にあって略左右中間から一方側壁の手前まで延びている横壁部分11a及び該横壁部分から直角に屈曲されて後壁部に接続されている縦壁部分11bとからなる。横壁部分11aは、ストライカ5の出退方向と略直交した状態に設けられており、ケース後壁部との間に係止部材2を摺動可能に配置すると共に、ストライカ5の出退方向への摺動を阻止する壁部である。
【0021】
また、横壁部分11aとケース後壁部には、図6(b)のごとく爪部11d,11dが対向した状態に設けられている。縦壁部分11bには後述するラッチユニット4を装着する係合孔11cが設けられている。ガイドレール12は、横壁部分11aとケース後壁部との間のケース内底面に突設された断面凸状からなり、横壁部分11aと平行でかつ短くなっている。ボス部13は、カム部材3を枢支する箇所で、ケース前壁部側でかつケース前壁部に設けられた矩形の出入用開口14の片側に位置している。
【0022】
これに対し、カバー15は、図2から推察されるごとく、ケース10より一回り大きな矩形板状であり、ケース10の上開口に挿入される枠部16と、枠部16の左右側壁に設けられた係止爪17と、枠部16の外両側に下設された取付用ボス部18と、枠部16の前側に下設されたガイド片部19と、下面に設けられてケース側の各上フランジ部10aと係合する凹部15a(図2(c)を参照)とを有している。そして、以上のカバー15は、ケース10に係止部材2、カム部材3、ラッチユニット4を組み入れた状態で、枠部16がケース内に押し込まれることにより、各係止爪17と係合孔10bとの係合、前記凹部と上フランジ部10aとの係合を介してケース1に精度良く装着される。
【0023】
係止部材2は、図3及び図7に示されるごとく矩形ブロック状の板部20と、該板部後端に突設されている係止片部21と、板部前片側に設けられた嵌合凹部22と、板部前端の片側に突設された係合部23と、板部両側面に設けられた爪部25と、板部下面に設けられて前後方向に延びているガイド溝26とを一体に有している。係止片部21は、先端がラッチユニット4に係脱される膨出部21aとなっている。
【0024】
以上の係止部材2は、ケース10内にあって横壁部分11aとケース後壁部との間に押し込めると、両側の爪部25が上記した対応する爪部11dを弾性的に乗り越えることで抜け止めされると共に、ガイド溝26とガイドレール12の嵌合を介してケース左右に摺動可能に配置される。この形態では、係止部材2が図4(b)のごとく縦壁部分11bに最も近づく位置から、同(c)のごとく縦壁部分11bから最も離れる位置まで自在に摺動される。
【0025】
カム部材3は、概略L形状からなり、L形の長片30及び短片31の交差部分にあって上下に突設された軸部32,32と、下側軸部32及び短片31に連設されている入力部33と、長片30の下面先端側に突設された軸状の伝達部34とを有している。入力部33は後述するストライカ5の基部51の前端対応部と当接する箇所である。伝達部34は、係止部材2の嵌合凹部22に差し込まれて、カム部材3のカム作用つまり、長片30と短片31のレバー比に応じた増幅率で係止部材2を摺動可能にする。
【0026】
以上のカム部材3は、伝達部34を嵌合凹部22に挿入すると共に下側軸部32をボス部13に嵌合した状態で、カバー15がケース10に装着されることで回動可能に保持される。なお、カバー15は、ボス部13に対応する不図示のボス部を有し、ケース10に装着された状態で、前記上側軸部32がそのボス部と嵌合するようになっている。
【0027】
ラッチユニット4は、図5では一部省略しているが、特許第3126992号公報に開示のものと実質的に同じく、ケーシング40と、保持手段であるラッチボディ41と、付勢手段であるコイルばね44と、概略コ形状のトレース用摺動ピン45とを備えている。ケーシング40は、対向側壁に設けられた弾性爪40a,40aと、内底面に設けられてコイルばね44を支持する軸部40bと、不図示のピン用取付部を有している。ラッチボディ41は、両側(紙面前後)に設けられたハート形島43a及び該島43aの周囲に設けられた循環カム43と、先端の左右側に設けられて係止片部側膨出部21aを係脱する一対の弾性係止爪42,42と、後端面から先端側に向かって設けられたガイド穴とを有している。そして、ラッチボディ41は、前記ガイド穴に軸部40b及びコイルばね44の対応部を差し込んだ状態でケーシング40に組み込まれ、通常はコイルばね44の付勢力により突出方向へ付勢移動されている。摺動ピン45は、コ形の中間部がケース内底面に支持され、コ形の両端を内側に折り曲げた先端が対応する循環カム43の対応部に突出している。
【0028】
以上のラッチユニット4は、上記した縦壁部分側係合孔11cに対しケーシング4を後端から挿入し、かつ両側の弾性爪40aを介して抜け止めされた状態で固定されている。そして、ラッチボディ41は、図5(a)のごとく接近する係止部材2の係止片部(の膨出部21a)により押されると、コイルばね44の付勢力に抗し、かつ、両弾性爪42を弾性変位しつつケーシング4内に押し込まれる。最終的には、両弾性爪42が係止片部の膨出部21aを係合抜け止めし、摺動ピン45の両先端が循環カム43を構成している係止溝に係止される。該係止は、ラッチボディ41が再び図5(a)の矢印方向に押されると、摺動ピン45の両先端が同図の矢印方向、つまり循環カム43を構成している係止溝から解除用誘導溝、更に復帰溝に入って係止解除される。すると、ラッチボディ41は、図5(b)のごとくコイルばね44の付勢力でケーシング40から突出する方向へ摺動され、その摺動により係止部材2が図5(b)の矢印方向へ摺動されることになる。なお、循環カム43は、従来と同じため細部を省略したが、図5(a)において、左下側から左上側へ延びる住路溝と、該住路溝の上側に位置して左右に別れている係止用誘導溝及び解除用誘導溝と、これら両誘導溝の間に設けられた係止溝と、解除用誘導溝から下側へ延びる復路溝とを有している。
【0029】
これに対し、ストライカ5は、細長い矩形状の固定部50と、固定部50の中央部に突設された板状の基部51と、基部51の前端片側より前方へ突出したアーム部52と、アーム部52の前端左側へ突出した係止爪部53とを一体に有している。基部51の上下面には爪部51が設けられている。アーム部52の上下面には、中央長手方向に沿って、かつ先端が拡開した凹溝54が形成されている。
【0030】
以上のストライカ5は、図1から推察されるごとく固定部50が上記した蓋体9の内壁にベース6を介して固定される。ベース6には、両側の取付孔6aと、中央に設けられて基部51及びアーム部52を余裕を持って挿通する不図示の貫通孔と、後面ないしは取付面側にあって固定部50を所定距離だけ摺動可能に嵌合する凹部6bとが設けられている。また、この形態では、上記した凹溝52の先端が拡開しており、また、固定部50がベース6に対して上記した貫通孔及び凹部6bを介して若干量だけ移動可能に取付けられている。これらは、ストライカ5が左右の取付位置に誤差があっても該誤差を吸収して、開口14からケース1内に入ったり出る過程で、凹溝54が上記ガイド片部19と嵌合した状態で精度よく挿通されるようにする。
【0031】
(作動特徴)上記ラッチ機構の作動特徴を図4及び図5を参照しながら明らかにする。
(ア)図4(a)は、ラッチユニット4が係止部材2を係止し、それにより係止部材2をストライカ5と係合解除した解除位置に保持している。具体的には、図1(a)の例だと、蓋体9が開から閉方向へ回動操作されたり、逆に、ストライカ5がラッチ本体1から係合解除された後、蓋体9を閉から開方向へ回動する直前の状態に対応している。この状態において、ラッチユニット4は、図5(a)のごとくラッチボディ41がコイルばね44の付勢力に抗しケーシング40内に押し込まれることで係止爪42同士の間に膨出部21aを係合抜け止めし、その状態を循環カム43の係止溝に摺動ピン45を係止することで保持している。
【0032】
(イ)図4(b)は、ストライカ5が蓋体9の更なる閉方向への回動操作によりケース1内へ最大まで押し入れられた状態である。この状態では、ストライカ5がカム部材側短片31と一体化されている不図示の入力部33を基部51の前端対応部で押し、その結果、カム部材3が軸部32を支点として逆時計回りに回動され、その回動と同期して、長片30と一体化されている不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁を押し、その押し力で係止部材2がラッチユニット4側へ摺動される。
【0033】
(ウ)すると、ラッチユニット4としては、上記した図5(a)のごとく摺動ピン45が循環カム43の係止溝に係止して係止部材2を拘束している状態から、ラッチボディ41が係止部材2により同図の矢印方向へ押される結果、摺動ピン45が循環カム43の係止溝から係止解除されて同図の矢印方向、つまり解除用誘導溝から復路溝へトレースする。すると、図5(b)のごとくラッチボディ41は、コイルばね44の付勢力で突出方向へ摺動される。同期して、係止部材2は、そのラッチボディ41を介して同図の矢印方向、つまり図4(c)のごとくストライカ5側へ摺動され、それにより係合部23がストライカの係止爪部53と係合する。この係合により、蓋体9は、引出体側小収納部8aの前開口を塞ぐ閉位置に保持される。なお、カム部材3は、係止部材2が図4(c)の状態まで摺動される過程で、不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁で押される結果、軸部32を支点として時計回りに回動されて、短片31と一体化されている不図示の入力部33を基部51の前端対応部に軽く接している。
【0034】
(エ)蓋体9を閉位置から開に切り換える場合は、蓋体9を再び押込み操作する。すると、ストライカ5は、蓋体9の更なる閉方向への回動操作により上記した図4(b)のごとくケース1内へ最大まで押し入れられ、カム部材側短片31と一体化されている不図示の入力部33をストライカ側基部51の前端対応部で押し、その結果、カム部材3が軸部32を支点として逆時計回りに回動される。この回動により、係止部材2は、長片30と一体化されている不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁を押し、その押し力でラッチユニット4側へ摺動され、係止爪部53に対する係合部23の係合を解除して、ストライカ5の引き抜きを許容する。同時に、ラッチユニット4は、上記した図5(a)のごとくラッチボディ41が係止部材2の押圧力によりコイルばね44の付勢力に抗しケーシング40内に押し込まれることで係止爪42同士の間に膨出部21aを係合抜け止めし、その状態を循環カム43の係止溝に摺動ピン45を係止することで保持することになる。
【0035】
(オ)以上のラッチ機構は従来機構に比べて次のような点で特に優れている。
第1に、従来ラッチ機構(上記形態のラッチユニット4に対応している)では、ストライカがラッチユニットに直接作用する関係で蓋体等の移動体に対する保持力を増大しようとしても循環カムと摺動ピンの関係から制約される。これに対し、以上のラッチ機構では、ストライカ5がラッチユニット4に対し直接作用することなくカム部材3及び係止部材2を介して作用すること、ストライカ5がラッチユニット4ではなく係止部材2に対して係合したり係合解除すること、係止部材2に対しストライカ5から加わる負荷加重はガイド用壁部11のうち横壁部分11aで専ら受け止められる。従って、蓋体等の移動体に対する抜去力や保持力は、係止部材2及び横壁部分11aの強度や剛性を確保するだけでよいことから、例えば、従来と同じラッチユニットを使用しても壁部11、係止部材2、カム部材3を補強するだけで保持荷重を従来の数百倍にも増大できる。
【0036】
第2に、従来ラッチ機構では、ストライカがラッチユニットに直接作用する関係で蓋体等の移動体を固定体側に保持したり保持解除するための押しストロークが循環カムと摺動ピンの関係から制約されてストロークの短縮化が難しい。この問題は、例えば、移動体が固定体側開口を開閉する場合だと、閉位置において、移動体が更に解除用の押しストローク分だけ閉方向へ移動可能に配置しなければならず用途的な制約要因となる。これに対し、以上のラッチ機構では、ストライカ5がラッチユニット4に対しカム部材3及び係止部材2を介して、つまりストライカ5の移動量をカム部材3により増幅し、かつ係止部材2を介して伝達することにより、上記した押しストロークを従来より大幅に小さくでき、その結果、上記した用途的な制約要因を解消したり、ラッチ機構としての応答性ないしは操作性を向上できる
【0037】
(第1変形例)図10及び図11は、上記したストライカ5と係止部材2との係合構造を変更した一例を示している。この説明では、上記形態と同一部材及び作用的に同じ部位に同じ符号を付し、変更した箇所だけ述べて重複した記載を極力省く。
【0038】
図10は要部外観を示し、図11(a)は図4(a)に対応し、図11(b)は図4(c)に対応して示されている。各図において、ストライカ5のアーム部52には、先端部55が先細りになっていると共に、該先端部55の下側に係止爪部55aが設けられている。これに対し、係止部材2の板部20前側には、一段低くなった平板部27が一体に設けられていると共に、該平板部27が前記係止爪部55aに係合される上向き係合部26を有している。換言すると、この変形例は、係止爪部55aが上記係止爪部53に対応し、係合部26が上記係合部23に対応している。そして、上記(ア)〜(オ)の作動では、係止爪部53を係止爪部55aに代え、係合部23を係合部26に代えるだけでのまま当てはまる。
【0039】
(第2変形例)図12及び図13は、係止部材2がストライカ5と係合しているときラッチユニット4に対し係止され、ストライカ5と係合解除しているときラッチユニット4に対し係止解除されるようにした一例を示している。この説明でも、上記形態と同一部材及び作用的に同じ部位に同じ符号を付し、変更点だけ述べる。
【0040】
図12は要部外観を示し、図13(a)は図12(a)に対応し、図13(b)は図12(c)に対応して示されている。各図において、ストライカ5のアーム部52には、上記形態例とは逆向き(図に向って右側)の鈎形の係止爪部56が突設されている。これに対し、係止部材2の板部20前側(右側)には、ケース10の後側内壁に沿って平行でその先端がL字形に屈曲した延長部28が設けられている。延長部28の先端側には、前記した係止爪部56に係合する鉤形の係止爪部28aが形成されている。また、ケース10の内底面には、延長部28の屈曲先端を案内するガイド用壁部10dが設けられている。
【0041】
以上の第2変形例は、上記形態例及び第1変形例に対し、係止部材2及びストライカ5の係脱関係と、係止部材2及びラッチユニット4の係脱関係が逆になっている。換言すると、上記形態例及び第1変形例では、ラッチユニット4がラッチボディ41及びコイルばね44を介して係止部材2をストライカ5と係合する方向に付勢すると共に、係止部材2をストライカ5と係合解除した位置に保つ構成である。これに対し、第2変形例では、ラッチユニット4がラッチボディ41及びコイルばね44を介して図13(a)のごとく係止部材2をストライカ5と係合解除する方向に付勢すると共に、ラッチユニット4が図13(b)のごとく係止部材2をストライカ5と係合(ストライカ側係止爪部56と係止部材側係止爪部28aとが係合)した位置に保つ構成である。そして、この変形例でも、上記(ア)〜(オ)の作動は係止部材2及びストライカ5の係脱関係と、係止部材2及びラッチユニット4の係脱関係を逆にすれば実質的に当てはまる。
【0042】
(第3変形例)図14は、上記したラッチユニット4を簡素化した一例を示している。この説明でも、上記形態と同一部材及び作用的に同じ部位に同じ符号を付し、変更点だけ述べる。
【0043】
図14(a)は図12(a)に対応し、図14(b)は図12(c)に対応して示されている。すなわち、第3変形例では、第1変形例に対し、ラッチユニット4を省くと共に、係止部材2に循環カム29を形成している点、係止部材2を付勢手段であるコイルばね47により直にストライカ5と係合する方向へ付勢している点、循環カム29をトレースする摺動ピン48を図示を省いたカバー15の内面側に支持している点で変更されている。
【0044】
このうち、循環カム29は、上記したラッチボディ41に設けられている循環カム43と同様な構成であり、図14のごとくハート形島29aの周囲に設けられて、左下側から右上側へ延びる住路溝と、該住路溝の上側に位置して左右に別れている係止用誘導溝及び解除用誘導溝と、これら両誘導溝の間に設けられた係止溝と、解除用誘導溝から下側へ延びる復路溝とを有している。コイルばね47は、壁部11の縦壁部分11b内面に突設された軸部11cに支持された状態で配置され、通常は係止部材2をストライカ5と係合する方向へ付勢している。摺動ピン48は、図示を省いたが、略L形からなり、L形の短片部が循環カム29をトレースするようカバー15に組み付けられる。この場合、摺動ピン48は、カバー15の内面に設けられた取付部に対し揺動可能で、かつ板ばねによりL形の長片部を押圧した状態に保持されている。そして、この変形例でも、上記(ア)〜(オ)の作動はラッチユニット4と関係する記載を循環カム29、コイルばね47、摺動ピン48にて置き換えることで実質的に当てはまる。
【0045】
以上のように本発明は、請求項で特定される構成を実質的に備えておればよく、細部はこの形態及び各変形例を参考にして更に変更したり展開可能なものである。また、名称としては、要部を分かり易くしたり従来のラッチ装置と区別するためラッチ機構としたが、ラッチ装置ないしはラッチ組立体と称しても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)は本発明形態の用途例を示す模式図、(b)は発明形態のラッチ機構を装置化した際の外観を示す模式斜視図である。
【図2】(a)は図1(b)の正面図、(b)は側面図、(c)はA−A線断面図である。
【図3】上記ラッチ機構の主構成部品を示す模式分解斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は上記ラッチ機構の動作を示す平面図である。
【図5】(a)と(b)上記ラッチ機構のラッチユニットの作動を示す模式断面図である。
【図6】(a)は上記ラッチ機構を組み込んでいるケースを示す平面図、(b)はB−B線断面図である。
【図7】(a)は上記ラッチ機構の係止部材を示す平面図、(b)はC−C線断面図である。
【図8】(a)は上記ラッチ機構のカムを示す平面図、(b)は右側面図、(c)はD−D線拡大断面図である。
【図9】(a)は上記ラッチ機構を構成しているストライカの平面図、(b)は右側面図である。
【図10】第1変形例のラッチ機構を示す模式斜視図である。
【図11】(a),(b)は上記図10のラッチ機構の動作を示す平面図である。
【図12】第2変形例のラッチ機構を示す模式斜視図である。
【図13】(a),(b)は上記図12のラッチ機構の動作を示す平面図である。
【図14】(a),(b)は第3変形例のラッチ機構を図11に対応して示す平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…ラッチ本体(10はケース、15はカバー、11ガイド用壁部)
2…係止部材(21は係止片部、21aは膨出部、22は嵌合凹部、24は係合部)
3…カム部材(30は長片、31は短片、33は入力部、34は伝達部)
4…ラッチユニット
5…ストライカ(51は基部、52アーム部、53,55a,56は係止爪部)
6…べース
7…キッチン本体
8…引出体(固定体)
9…蓋体(移動体)
29…循環カム
40…ケーシング(ラッチユニット)
41…ラッチボディ(ラッチユニット、42は係止爪、43は循環カム)
44…コイルばね(付勢手段)
45…摺動ピン(ラッチユニット)
47…コイルばね(付勢手段)
48…摺動ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体もしくは移動体の何れか一方にラッチ本体を設けると共に、他方に該ラッチ本体に係脱されるストライカを設け、前記移動体を押込み操作により前記固定体側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するラッチ機構において、
前記ラッチ本体は、前記ストライカと異方向に摺動可能であると共に、該ストライカと係合して該ストライカの抜け方向への移動を阻止する係止部材と、前記ストライカからの入力方向を変換して前記係止部材に伝達するカム部材とを備えていることを特徴とするラッチ機構。
【請求項2】
前記係止部材を前記ストライカと係合する方向に付勢する付勢手段と、前記係止部材を前記ストライカと係合解除した位置に保つ保持手段とを有していることを特徴とする請求項1記載のラッチ機構。
【請求項3】
前記係止部材を前記ストライカと係合解除する方向に付勢する付勢手段と、前記係止部材を前記ストライカと係合した状態に保つ保持手段とを有していることを特徴とする請求項1記載のラッチ機構。
【請求項4】
前記ラッチ本体は、前記付勢手段及び前記保持手段をケーシングに配設したラッチユニットを有し、前記係止部材が前記ラッチユニットの前記保持手段に係脱されることを特徴とする請求項2又は3に記載のラッチ機構。
【請求項5】
前記保持手段は、循環カム及び該循環カムをトレースする摺動ピンを有していることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載のラッチ機構。
【請求項6】
前記カム部材は、前記ストライカから力を受ける入力部及び前記係止部材に力を伝達する伝達部とを有していることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のラッチ機構。
【請求項7】
前記カム部材は、短片及び長片からなる略L形状であり、前記短片及び長片の略交差部分を枢支した状態で、前記短片を前記入力部として、前記長片を前記伝達部として用いられることを特徴とする請求項6に記載のラッチ機構。
【請求項8】
前記ラッチ本体は、前記係止部材を配置しているケースと、前記ケースに設けられて前記係止部材を摺動可能で、かつ前記ストライカの出退方向への摺動を阻止する壁部を有していることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のラッチ機構。
【請求項1】
固定体もしくは移動体の何れか一方にラッチ本体を設けると共に、他方に該ラッチ本体に係脱されるストライカを設け、前記移動体を押込み操作により前記固定体側に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除するラッチ機構において、
前記ラッチ本体は、前記ストライカと異方向に摺動可能であると共に、該ストライカと係合して該ストライカの抜け方向への移動を阻止する係止部材と、前記ストライカからの入力方向を変換して前記係止部材に伝達するカム部材とを備えていることを特徴とするラッチ機構。
【請求項2】
前記係止部材を前記ストライカと係合する方向に付勢する付勢手段と、前記係止部材を前記ストライカと係合解除した位置に保つ保持手段とを有していることを特徴とする請求項1記載のラッチ機構。
【請求項3】
前記係止部材を前記ストライカと係合解除する方向に付勢する付勢手段と、前記係止部材を前記ストライカと係合した状態に保つ保持手段とを有していることを特徴とする請求項1記載のラッチ機構。
【請求項4】
前記ラッチ本体は、前記付勢手段及び前記保持手段をケーシングに配設したラッチユニットを有し、前記係止部材が前記ラッチユニットの前記保持手段に係脱されることを特徴とする請求項2又は3に記載のラッチ機構。
【請求項5】
前記保持手段は、循環カム及び該循環カムをトレースする摺動ピンを有していることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載のラッチ機構。
【請求項6】
前記カム部材は、前記ストライカから力を受ける入力部及び前記係止部材に力を伝達する伝達部とを有していることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のラッチ機構。
【請求項7】
前記カム部材は、短片及び長片からなる略L形状であり、前記短片及び長片の略交差部分を枢支した状態で、前記短片を前記入力部として、前記長片を前記伝達部として用いられることを特徴とする請求項6に記載のラッチ機構。
【請求項8】
前記ラッチ本体は、前記係止部材を配置しているケースと、前記ケースに設けられて前記係止部材を摺動可能で、かつ前記ストライカの出退方向への摺動を阻止する壁部を有していることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のラッチ機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−221728(P2009−221728A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66824(P2008−66824)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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