説明

ラッチ装置

【課題】安全性や使い勝ってをより良好にして品質を向上する。
【解決手段】筐体7に出し入れされる引出体8と該引出体の前面側に回動可能に軸支された蓋体9との間に設けた係止機構により該蓋体9を所定位置に保持可能にするラッチ装置1において、筐体7に対する引出体8の収納状態か非収納状態かを認識する認識手段61、及び該認識手段と連携されて係止機構を作動可能ないしは作動不能とする規制手段63からなる自動制御機構6を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ装置のうち、特に引出体と引出体の前面側に回動可能に軸支された蓋体との間に設けた係止機構により該蓋体を所定位置に保持可能にするラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は特許文献1に開示の筐体(キッチンシステム等のキャビネット)と引出体(主収納体)及び蓋体の関係を示している。この筐体7Aは、前開口した空間に対し引出体8Aを出入可能に配置している。引出体8Aは、前開口した副収納部8a及び副収納部8aの上側から前方へ突設された取っ手c1を有している。また、副収納部8aは、引出体8Aの前下側のヒンジ部を介し回動可能に軸支された蓋体9Aにより開閉される。蓋体9Aは、上端側に設けられた取っ手c2を有し、副収納部8aを塞いだ状態で引出体8Aの所定位置にラッチ装置kを介して保持される。ラッチ装置kは、引出体8Aと蓋体9Aとの間に設けられる係止機構として、引出体8Aの前上壁に設けられた不図示のスイッチ板と一体になったストライカmと、前記スイッチ板の変位に伴って移動するストライカmと係合可能なように蓋体9Aに設けられたフックnと、前記スイッチ板の変位位置の少なくとも2つの位置で節度感を付与するための不図示のクリック手段とを有している。そして、前記スイッチ板を操作すると、ストライカmがフックnと係合する係止状態と、係止解除状態とに切り換えられる。クリック手段はその各切り換え時に節度感を付与する。
【0003】
【特許文献1】特開2004−316324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構造は、ラッチ装置を筐体に対する引出体の収納状態で目視されない箇所に設けることで、幼児が不用意に蓋体側の取っ手を引っ張っても、蓋体が開かないようにし、それによりチャイルドロックとしても機能する点で優れているが、次のような要求に対処できなかった。すなわち、安全性や使い勝手などの観点からは、引出体を引き出した非収納状態で蓋体を開閉すると危ないため蓋体の開閉操作を引出体の収納状態でのみ行えるようにしたい。ラッチ装置としては、引出体の非収納状態で係止解除状態への切り換えを不能とし、更にそのような切り換えを使用者がいちいち操作することなく自動で切り換えられるようにしたり、使用者が引出体の非収納状態において作動不能であることを認識したり判断可能にしたい。なお、設計上は、筐体が引出体用の取っ手と蓋体用の取っ手との存在により煩雑感を与えたり、使用者が引出体を開閉移動する操作時に蓋体の取っ手に当たるためそれらも改善容易となる構造にしたい。
【0005】
本発明の目的は、以上のような課題を解決して、特に安全性や使い勝ってをより良好にして、品質などを向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、図1〜図13の形態の例で特定すると、筐体9に出し入れされる引出体8と該引出体の前面側に回動可能に軸支された蓋体9との間に設けた係止機構(2,3,4,5)により該蓋体を所定位置に保持可能にするラッチ装置1において、前記筐体7に対する前記引出体8の収納状態か非収納状態かを認識する認識手段60a、及び前記認識手段と連携されて前記係止機構を作動可能ないしは作動不能とする規制手段63からなる自動制御機構6を備えていることを特徴としている。
これに対し、請求項6の発明は、請求項1に対し上記認識手段を異なる観点から捉えたもので、引出体8と前記引出体の前面側に回動可能に軸支された蓋体9との間に設けた係止機構(2,3,4,5)により該蓋体9を所定位置に保持可能にするラッチ装置1において、前記係止機構が前記蓋体9の保持を解放する係止解除状態へ切換可能か否かを認識する認識手段60a、及び前記認識手段60aと連携されて当該係止機構を作動可能ないしは作動不能とする規制手段63からなる自動制御機構を備えていることを特徴としている。
【0007】
以上の各発明において、蓋体は引出体に対し回動可能に軸支されるものであればよく、扉やカバーなどを含む。引出体は、前後ないしは左右に引き出されたり押し込まれるものであればよい。筐体は引出体を配置しているものであればよく、各種装置、ボックス、ハウジング、キッチン本体などを含む。各発明の要部は、認識手段及び規制手段からなる自動制御機構を備えている。両者は、認識手段の要件が異なっているが、規制手段が認識手段と連携されて係止機構を作動可能ないしは作動不能とする点で同じ。ここで、請求項1の認識手段は、筐体に対する引出体の収納状態か非収納状態かを認識する。この要件は、例えば、図1(a),(b)において、認識手段が引出体の収納状態で突出量を減じ、引出体の引き出し状態(非収納状態)で突出量を増大する作用から特性したものである。これに対し、請求項6の認識手段は、係止機構が蓋体の保持を解放する係止解除状態へ切換可能か否かを認識する。この要件は、例えば、使用者(引出体を引き出した者や蓋体を操作する者)が図1(b)の引出体を引き出した非収納状態で、係止機構が認識手段の突出した姿勢を見て、係止解除状態へ切換可能か否か認識したり判断可能にする作用から特定したものである。
【0008】
以上の各発明は次のように具体化されることがより好ましい。
(ア)、請求項1において、前記認識手段は、前記引出体に設けられて、前記引出体の収納状態か非収納状態かを前記筐体の対応部に対する接離状態により認識する構成であるる(請求項2)。
(イ)、請求項1又は2において、前記規制手段は、前記引出体の非収納状態で前記係止機構の係止解除状態への切り換えを規制する構成である(請求項3)。
(ウ)、請求項1から3の何れかにおいて、前記規制手段は、付勢力又は自重により前記係止機構の係止解除状態への切り換えを規制し、かつ、該規制状態を前記認識手段が前記筐体の対応部と接触した状態で解放する構成である(請求項4)。
【0009】
(エ)、請求項1から4の何れかにおいて、前記係止機構の係止解除状態への切り換えを手動操作により不能にする手動規制手段を有している構成である(請求項5)。
(オ)、請求項1から6において、前記係止機構は前記蓋体を押込み操作により前記引出体側に保持し、次の押込み操作により前記蓋体の保持を解放するプッシュ・プッシュ式からなると共に、前記引出体及び前記蓋体は一方だけが取っ手を有している構成である(請求項7)。なお、プッシュ・プッシュ式の係止機構は、浮出しラッチ、プッシュロック・プッシュオープン式のラッチと称されることもある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、引出体の収納状態か非収納状態かを認識する認識手段、及び認識手段と連携されて係止機構を作動可能ないしは作動不能とする規制手段からなる自動制御機構を備えているため、形態のごとく規制手段が引出体を引き出した非収納状態で係止機構を作動不能(係止解除状態へ切り換えたり、逆に係止状態に切り換えることが不能になること)となるよう設定するだけで、係止機構が引出体の収納状態でしか係止解除状態に切り換えられなく課題に挙げたような仕様を可能にして、安全性や使い勝手を改善し易くなる。
【0011】
請求項2の発明では、認識手段が引出体の収納状態か非収納状態かを筐体の対応部に対する接離状態により認識することから、簡易で実施容易となる。これに対し、請求項3の発明では、規制手段が引出体の非収納状態で係止機構の係止解除状態への切り換えを規制するため、上記したごとく課題に挙げたような仕様を可能にして安全性や使い勝手を向上できる。
【0012】
請求項4の発明では、規制手段が付勢力又は自重により係止機構の係止解除状態への切り換えを規制し、かつ、該規制状態を認識手段が筐体の対応部と接触した状態で解放することから、規制手段及び認識手段を形態のごとく同じ部材にて実施可能にし、簡易化及び確実性に優れたものを提供できるようにする。
【0013】
請求項5の発明では、係止機構の係止解除状態への切り換えを手動操作により不能にする手動規制手段を有しているため、幼児が蓋体を不用意に開閉できないようにして安全性をより向上できる。
【0014】
請求項6の発明では、蓋体の保持を解放する係止解除状態へ切換可能か否かを認識する認識手段、及び認識手段と連携されて係止機構を作動可能ないしは作動不能とする規制手段からなる自動制御機構を備えているため、請求項1と同様に形態のごとく規制手段が引出体を引き出した非収納状態で係止機構を作動不能となるよう設定するだけで、課題に挙げたような仕様を可能にして、安全性や使い勝手を改善し易くなる。
【0015】
請求項7の発明では、係止機構がプッシュ・プッシュ式であるため、図14の従来構造に比べて、以上の利点を具備しながら、引出体側の取っ手か蓋体側の取っ手の一方を省いて煩雑性などを解消でき、設計自由度を拡大できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の形態例について添付図面を参照しながら説明する。図1は使用例を示し、図2〜図10はラッチ装置の細部を示し、図11〜図13は主な作動を示している。以下の説明では、概要、装置特徴、作動特徴の順に詳述する。
【0017】
(概要)図1は形態例のラッチ装置の使用例を示している。図1において、符号7はシステムキッチンを構成している筐体、7aはシンク等を保持する支持フレーム、7bは支持フレーム7aの下側に設けられている空間、8は該空間7bに配置された引出体、8aは該引出体8の前側に設けられた小収納部、9は該小収納部8aの前開口を開閉する蓋体である。ここで、引出体8は、従来品の取っ手が省略されていると共に、不図示のスライド機構により前後に所定距離だけ摺動可能に支持されている。小収納部8aは、包丁等の小物類を収容する箇所であり、引出体8の前側に一体的に設けられると共に前開口している。蓋体9は、下側ヒンジ部9aを支点として回動される前面板であり、上縁に沿って設けられた取っ手9bを有している。なお、取っ手9bは、蓋体9に設けず、引出体8側に設けるようにしてもよい。
【0018】
以上の使用例において、ラッチ装置1は、小収納部8aの上面側に固定されると共に、ラッチ装置の係止機構に係脱されるストライカ5が蓋体9の上内面側にベース55を介して取り付けられている。また、ラッチ装置1は、係止機構がプッシュ・プッシュ式であり、蓋体9を最初の押込み操作により小収納部8a側、つまり小収納部8aの前開口を塞ぐ閉位置に保持し、次の押込み操作により前記保持を解除して蓋体9を開方向へ切換可能にするものである。但し、使用態様は、ラッチ装置1を蓋体9等の蓋体側に設けると共に、ストライカ5を小収納部8a等の引出体側に設けるようにしてもよい。
【0019】
(装置特徴)上記したラッチ装置1は、従来のプッシュ・プッシュ式の係止機構に比べ、特にケース10内にラッチユニット4と共に配置された係止部材2及びカム部材3を有している点と、ケース10に装着されるカバー15に手動規制手段35と共に配置された自動制御機構6を有している点と、それに関連する構成が相違している。なお、ラッチユニット4は従来のプッシュ・プッシュ式の係止機構に相当している。以下、これらの構成を明らかにする。説明では各部材が図5の配置において左右・前後方向とする。
【0020】
ここで、ケース10は、図5及び図7に示されるごとく、上面開口した容器状をなし、上開口がカバー15により閉じられる。ケース10には、上フランジ部10aと、両側の係合孔10bと、ガイド用壁部11と、ガイドレール12と、軸受用ボス部13と、出入用開口14が設けられている。このうち、壁部11は、横壁部分11a及び該横壁部分から屈曲されて後壁部に接続されている縦壁部分11bとからなる。横壁部分11aは、ストライカ5の出退方向と略直交した状態に設けられ、係止部材2を摺動可能かつ開口14側へずれないようガイドする。また、横壁部分11a及びケース後壁部には、爪部11d,11dが対向した状態に設けられている。縦壁部分11bには後述するラッチユニット用係合孔11cが設けられている。ボス部13は、カム部材3を枢支する箇所で、ケース前壁部に設けられた矩形の出入用開口14の片側に位置している。
【0021】
これに対し、カバー15は、図2及び図3と図6に示されるごとく、略矩形板状からなり、ケース内に挿入される枠部16と、枠部16の左右側壁に設けられた係止爪16aと、下面両側に下設された取付用ボス部17aと、枠部16の前側に下設されたガイド片部17bと、下面に設けられて上フランジ部10aと係合する凹部15aと、手動規制手段用凹部18と、自動制御機構用凹部19とを有している。凹部18は、左右に長くなっており、内底面にあって左側に設けられた窓18a及び右側で前後に対向した状態で貫通された孔18b,18b、並びに窓18aと孔18bとの間に位置して凹部の対向した内面に設けられた溝及び該溝の下端からカバー内に貫通された軸孔18c,18cを有している。凹部19は、前後に長くなっており、内底面にあって後側に設けられた窓19aと、前後略中間に位置して凹部の対向した内面に設けられた溝及び該溝の下端からカバー内に貫通された軸孔19b,19bと、前側に一段高く形成されている部分19cとを有している。
【0022】
以上のカバー15は、以下に述べるごとくプッシュ・プッシュ式の係止機構として係止部材2とカム部材3及びラッチユニット4を予め組み入れたケース10に対し、枠部16がケース内に押し込まれることにより、各係止爪16aと係合孔10bとの係合、前記凹部15aと上フランジ部10aとの係合を介してケース1に精度良く装着される。また、その前後の段階で、カバー15には、手動規制手段35が凹部18に組み付けられると共に、自動制御機構6が凹部19に組み付けられる。
【0023】
まず、ケース側を説明する。係止部材2は、図3及び図5に示されるごとくブロック状の板部20と、該板部左端に突設されている係止片部21と、板部後片側に設けられた嵌合凹部22と、板部前端の片側前方へ突設された係合部23と、板部両側面に設けられた爪部25と、板部下面に設けられて左右方向に延びているガイド溝26と、板部20の上面左側に突設された当接部27とを一体に有している。係止片部21は、先端がラッチユニット4に係脱される膨出部21aとなっている。そして、この係止部材2は、ケース10内にあって横壁部分11aとケース後壁部との間に押し込めると、両側の爪部25が上記した対応する爪部11dを弾性的に乗り越えることで抜け止めされると共に、ガイド溝26とガイドレール12の嵌合を介してケース左右に摺動可能に配置される。この例では、係止部材2が図10(b)のごとく縦壁部分11bに最も近づく左位置から、同(c)のごとく縦壁部分11bから最も離れる右位置まで自在に摺動される。当接部27は、後述する自動制御機構6の作動部材60が作動不能態様に切り換えられたときに対応部との係合を確実にする箇所であるが、省略してもよい。
【0024】
カム部材3は、概略L形状からなり、L形の長片30及び短片31の交差部分にあって上下に突設された軸部32,32と、下側軸部32及び短片31に連設されているストライカ側と当接する入力部33と、長片30の下面先端側に突設された軸状の伝達部34とを有している。伝達部34は、係止部材2の嵌合凹部22に差し込まれて、カム部材3のカム作用、つまり長片30と短片31のレバー比に応じた増幅率で係止部材2を摺動可能にする。そして、このカム部材3は、伝達部34を嵌合凹部22に挿入すると共に下側軸部32をボス部13に嵌合した状態で、カバー15がケース10に装着されることで回動可能に保持される。なお、カバー15は、ボス部13に対応する不図示のボス部を有し、ケース10に装着された状態で、前記上側軸部32がそのボス部と嵌合するようになっている。
【0025】
ラッチユニット4は、図11では一部省略しているが、特許第3126992号公報に開示のものと実質的に同じく、ケーシング40と、ラッチボディ41と、コイルばね44と、略コ形状のトレース用摺動ピン45とを備えている。ケーシング40は、対向側壁に設けられた弾性爪40a,40a、内底面に設けられてコイルばね44を支持する軸部40b、不図示のピン用取付部などを有している。ラッチボディ41は、両側(紙面前後)に設けられたハート形島43a及び該島43aの周囲に設けられた循環カム43と、先端の左右側に設けられて膨出部21aを係脱する一対の弾性係止爪42,42と、後端面から先端側に向かって設けられたガイド穴とを有している。そして、ラッチボディ41は、前記ガイド穴に軸部40b及びコイルばね44の対応部を差し込んだ状態でケーシング40に組み込まれ、通常はコイルばね44の付勢力により突出方向へ付勢移動されている。摺動ピン45は、コ形の中間部がケース内底面に支持され、コ形の両端を内側に折り曲げた先端が対応する循環カム43の対応部に突出している。
【0026】
以上のラッチユニット4は、上記ケース側係合孔11cに対しケーシング4を後端から挿入し、かつ両弾性爪40aを介して抜け止めされた状態で固定されている。そして、ラッチボディ41は、図11(a)のごとく係止部材2の膨出部21aにより押されると、コイルばね44の付勢力に抗し、かつ、両弾性爪42を変位しつつケーシング4内に押し込まれる。最終的には、両弾性爪42が膨出部21aを係合抜け止めし、摺動ピン45の両先端が循環カム43の係止溝に係止される。該係止は、ラッチボディ41が再び図11(a)の矢印方向に押されると、摺動ピン45の両先端が同図の矢印方向、つまり循環カム43の係止溝から解除用誘導溝、更に復帰溝に入って係止解除される。すると、ラッチボディ41は、図11(b)のごとくコイルばね44の付勢力でケーシング40から突出する方向へ摺動され、該摺動により係止部材2が同図の矢印方向へ摺動される。なお、循環カム43は従来と同じため細部を省略した。
【0027】
カバー側を説明する。手動規制手段35は、係止機構の係止解除状態への切り換えを手動操作により不能にするものであり、図6及び図8に示されるごとく左右断面が略ヘ字形に形成された操作板36を有している。該操作板36は、凹部18内で揺動可能な大きさからなり、前後壁にあって左右略中間にそれぞれ突設された軸部36a,36a及び、軸部36aより左側にそれぞれ下向きに突設された弾性片37,37と、両弾性片37の外面先端にそれぞれ突設された凸部37a,37aと、左端の下側に突設された係止部38とを一体に有している。以上の操作板36は、凹部18に対し、各弾性片37が凹部内の対応する孔18bに挿入するようにして、押圧操作されることにより、図6(c)のごとく各弾性片の凸部37aが凹部底面の孔18bを弾性的に通過してケース内に入ると共に、各軸部36aが上記した対応する溝から軸孔18cに挿入嵌合された状態に組み付けられる。
【0028】
カバー側凹部18に組み付けられた状態において、操作板36は、右側が前記したごとく各弾性片の凸部37aが凹部底面の孔18bからケース10内に弾性的に通過し、かつ左側(係止部38を突出している側)が図12(a)のごとく凹部18内に退避したフリー態様又は上記ラッチ装置1の作動に影響を与えない作動可能態様である。そして、操作板36は、左側が下方の凹部底面側に押圧操作されると、略中間の軸部36aを支点としてシーソ式に揺動されて、右側の各凸部37aがケース10内から孔18bを弾性的に通過して凹部18内へ移行し、左側の係止部38が窓18abを通ってケース10内に入って上記したカム部材3の長片30と短片31との内側に突出する。この態様は、操作板36を介してレバー部材3の回動を阻止することによりラッチ装置1(ラッチユニット4或いは係止機構を構成している係止部材2)の係止解除状態への切り換えを強制的に不能にする作動不能態様である。すなわち、以上の手動規制手段35は、使用者が必要に応じて操作板36を手動で操作して、ラッチ装置1(ラッチユニット4或いは係止機構を構成している係止部材2)を作動可能態様から作動不能にする、いわゆるチャイルドロック機能として利用される。
【0029】
自動制御機構6は、ラッチ装置1(ラッチユニット4或いは係止機構を構成している係止部材2)を自動的に作動可能ないしは作動不能とするため、図6及び図9に示されるごとく作動部材60及び該作動部材を一方向に付勢する付勢ばね65を有している。作動部材60は、凹部19内で揺動可能な大きさからなり、下面の両側にあって、前後略中間から後側部分を下側に突出した壁部61,61と、前後略中間それぞれ突設された軸部62,62と、一方壁部61の一部を切り欠いて軸部62の基部回りを深く形成したばね用配置部63と、両軸部62よりも前側を構成している認識部60aと、両壁部61のうち配置部63が設けられていない側の壁部61の後端を更に下へ突出した規制部64とを一体に有している。
【0030】
以上の作動部材60は、配置部63に対応した一方軸部62にコイル形の付勢ばね65を挿通した状態で、凹部19に対し、各軸部62を対応する軸孔19bに一致させるようにして押圧操作されることにより、各軸部62が上記した対応する溝から軸孔19bに挿入嵌合された状態に組み付けられる。この取付状態において、作動部材60は、付勢ばね65の付勢力で軸部62を支点として回動され、認識部60aが凹部19から外へ大きく突出し、規制部64が凹部底面の窓19aからケース内に突出する。また、作動部材60は、認識部60aが下向きの応力を受けると、付勢ばね65の付勢力に抗して軸部62を支点として前記とは逆向きに回動され、認識部60aが凹部の部分19cに接近し、規制部64がケース内から凹部19内に退避される。
【0031】
ところで、以上の認識部60aは、本発明の認識手段に相当し、図1(a)のごとく筐体7の対応部に接離することにより上記した筐体7に対する引出体8の収納状態か非収納状態かを認識したり、図1(b)のごとく引出体8が引き出された非収納状態においてラッチ装置1(ラッチユニット4或いは係止機構を構成している係止部材2)が蓋体9の保持を解放する係止解除状態へ切換可能か否かを目視などによって認識ないしは判断可能にする。これに対し、規制部64は、本発明の規制手段に相当し、図13のごとく前記認識部60aと連携されて上記係止機構を構成している係止部材2を作動可能ないしは作動不能とする。
【0032】
すなわち、規制部64は、図13(a)のごとく認識部60aが引出体8を引き出して筐体7と非接触状態になると、作動部材60が付勢ばね65の付勢力で軸部62を支点として回動され、それにより係止部材の板部20の後端面に係合して係止部材2のラッチユニット4側への摺動を阻止する。また、規制部64は、引出体8を収納状態にすると、認識部60aが筐体7の対応部と接触し、該接触の応力で、作動部材60が付勢ばね65の付勢力に抗して軸部62を支点として突出量を減じる方向へ回動し、それにより前記係合を解放つまり係止部材2に対する規制を解放する。
【0033】
これに対し、ストライカ5は、図5に示されるごとく矩形状の固定部50と、固定部50の中央部に突設された板状の基部51と、基部51の前端片側より前方へ突出したアーム部52と、アーム部52の前端横側へ突出した係止爪部53とを一体に有している。基部51の上下面には爪部51が設けられている。アーム部52の上下面には、中央長手方向に沿って、かつ先端が拡開した凹溝54が形成されている。そして、このストライカ5は、図4のごとく固定部50が上記した蓋体9の内壁にベース55を介して保持される。ベース55には、両側の取付孔55aと、基部51及びアーム部52を余裕を持って中央から挿通する不図示の貫通孔と、取付面側にあって固定部50を所定距離だけ摺動可能に嵌合する凹部55bとが設けられている。また、この例では、上記凹溝52の先端が拡開しており、また、固定部50がベース55に対して上記貫通孔及び凹部55bを介して若干量だけ移動可能に取付けられている。これらは、ストライカ5が左右の取付位置に誤差があっても該誤差を吸収し、開口14からケース1内に入るとき、凹溝54が上記ガイド片部19と嵌合した状態で精度よく挿通されるようにする。
【0034】
(作動特徴)上記ラッチ装置の作動特徴を図10〜図13を参照しながら明らかにする。
(ア)まず、図1(a)のごとく引出体8の収納状態において、自動制御機構6は、作動部材60が筐体7の対応部から認識部60aに加わる下向きの応力により付勢ばね65の付勢力に抗して軸部62を支点として回動され、認識部60aが凹部の部分19cに接近し、規制部64がケース内から凹部9内に退避され、ラッチ装置1(ラッチユニット4或いは係止機構を構成している係止部材2)に影響を与えない作動可能な態様となっている。図10(a)は、引出体8の収納状態において、例えば、ラッチユニット4が係止部材2を係止し、それにより係止部材2をストライカ5と係合解除した解除位置に保持している。このため、使用者は蓋体9を開から閉方向へ回動操作したり、逆に、蓋体9を閉から開方向へ回動することも可能となる。
【0035】
(イ)図10(b)は、ストライカ5が図10(a)から蓋体9の更なる閉方向への回動操作によりケース1内へ最大まで押し入れられた状態である。この状態では、ストライカ5がカム部材側短片31と一体化されている不図示の入力部33を基部51の前端対応部で押し、その結果、カム部材3が軸部32を支点として逆時計回りに回動され、その回動と同期して、長片30と一体化されている不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁を押し、その押し力で係止部材2がラッチユニット4側へ摺動される。すると、ラッチユニット4は、図11(a)のごとく摺動ピン45が循環カム43の係止溝に係止して係止部材2を拘束している状態から、ラッチボディ41が係止部材2により同図の矢印方向へ押されて、摺動ピン45が循環カム43の係止溝から係止解除されて同図の矢印方向、つまり解除用誘導溝から復路溝へトレースする。すると、図11(b)のごとくラッチボディ41は、コイルばね44の付勢力で突出方向へ摺動される。同期して、係止部材2は、そのラッチボディ41を介して同図の矢印方向、つまりストライカ5側へ摺動され、それにより係合部23がストライカの係止爪部53と係合する。この係合により、蓋体9は、引出体側小収納部8aの前開口を塞ぐ閉位置に保持される。なお、カム部材3は、係止部材2がストライカ側まで摺動される過程で、不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁で押され、軸部32を支点として時計回りに回動されて、短片31と一体化されている上記の入力部33を基部51の前端対応部に軽く接している。
【0036】
(ウ)蓋体9を閉位置から開に切り換える場合は、蓋体9を再び押込み操作する。すると、ストライカ5は、蓋体9の更なる閉方向への押込み操作により図10(b)のごとくケース1内へ最大まで押し入れられ、短片31と一体化されている不図示の入力部33をストライカ側基部51の前端対応部で押し、その結果、カム部材3が軸部32を支点として逆時計回りに回動される。この回動により、係止部材2は、長片30と一体化されている不図示の伝達部34が嵌合凹部22の内壁を押し、その押し力でラッチユニット4側へ摺動され、係止爪部53に対する係合部23の係合を解除して、ストライカ5の引き抜きを許容する。同時に、ラッチユニット4は、図11(a)のごとくラッチボディ41が係止部材2の押圧力によりコイルばね44の付勢力に抗しケーシング40内に押し込まれることで係止爪42同士の間に膨出部21aを係合抜け止めし、その状態を循環カム43の係止溝に摺動ピン45を係止することで保持することになる。なお、以上のラッチ装置1は、特に、耐久性や係止機構として保持力を従来装置よりも高くするため、ストライカ5と係脱する係止部材2、及びストライカ5から受ける力を入力方向を変換して係止部材2に伝達するカム部材3を有している。係止部材2は、ストライカ5と異方向に摺動されてストライカ5と係脱することで、ストライカ5を介して過大な抜去力が加わった際の破壊や無理抜きに対し改善可能にする。カム部材3は、ストライカ5の移動量をカム作用により係止部材2に増幅して伝達可能し、それによりラッチ装置としての応答性ないしは操作性を改善可能にする。
【0037】
(エ)次に、図1(b)のごとく引出体8が少しでも引き出される非収納状態において、自動制御機構6は、作動部材60が引出体8の引き出し移動により筐体7と非接触となり、その結果、付勢ばね65の付勢力で軸部62を支点として回動され、認識部60aが凹部19から外へ大きく突出し、規制部64が凹部底面の窓19aからケース内に突出して図13(a)のごとく係止部材の板部20の後端面に係合して係止部材2のラッチユニット4側への摺動を阻止する。すなわち、自動制御機構6は、規制部64と係止部材の板部20との係合によりラッチ装置1の係止解除状態への切り換えを不能にする。これにより、この構造では、引出体8を少しでも引き出した非収納状態だと自動的に蓋体9を開操作できなくなり、蓋体9の開閉時期が制約される反面、従来構造に比べて安全性を向上できる。加えて、この構造では、ラッチ装置1がプッシュ・プッシュ式の係止機構からなるため、引出体8及び蓋体9の何れかの取っ手を省略して簡素化とデザインの自由度を拡大できる。
【0038】
(オ)また、以上の構造では、上述した手動規制手段35を有しているため、使用者が幼児などに蓋体9を不用意に開閉させないようにしたい場合、操作板36を手動で操作して、ラッチ装置1を作動可能態様から作動不能にする、いわゆるチャイルドロック機能を自動制御機構6とは独立して利用できる。この構造特徴は、手動規制手段35が凹部18及び操作板36だけの簡易な構成で、かつ、凸部37aが孔18bを弾性通過することに伴うクリック音が上記作動可能から作動不能態様に切り換えるときと、上記作動不能から作動可能態様に切り換えるときに共に得られることである。
【0039】
なお、本発明は、以上の形態例に何ら制約されるものではなく、細部はこの形態を参考にして種々変更したり展開可能なものである。その一例としては、作動部材60に作用する付勢ばね65を省く構成である。この場合、作動部材60は、重心をずらした状態に枢支しておき、図1(a)の作動不能態様から図1(b)の作動態様に自重で切り換えられるようにする。また、用途はキッチン関係以外でもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明形態の使用例を示し、(a)は引出体の収納状態を示す模式図、(b)は引出体を引き出した非収納状態を示す模式図である。
【図2】上記形態のラッチ装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(b)は底面図である。
【図3】上記形態のラッチ装置を示し、(a)は拡大側面図、(b)は図2のA−A線拡大断面図、(c)は図2のB−B線拡大断面図である。
【図4】上記ラッチ装置の外観を示す概略斜視図である。
【図5】上記ラッチ装置の下側構成部材を示す下側分解図である。
【図6】上記ラッチ装置の上側構成部材を示し、(a)は上側分解図、(b)は手動規制手段及び自動制御機構を外した平面図、(c)は図2のC−C断面図である。
【図7】上記ラッチ装置のケースを示し、(a)は平面図、(b)はD−D線断面図である。
【図8】上記手動規制手段を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)はE−E線断面図である。
【図9】上記自動制御機構の作動部材を示し、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)はF−F線断面図、(d)はG−G線断面図である。
【図10】(a)〜(c)は上記ラッチ装置の係止機構の作動を示す図である。
【図11】(a)と(b)は上記係止機構のラッチユニットの作動を示す図である。
【図12】(a)と(b)は上記手動規制手段の作動を示す図である。
【図13】(a)と(b)は上記自動制御機構の作動を示す図である。
【図14】(a)と(b)は特許文献1のラッチ装置を示す参考図である。
【符号の説明】
【0041】
1…ラッチ本体(10はケース、15はカバー、18と19は凹部)
2…係止部材(21は係止片部、22は嵌合凹部、24は係合部)
3…カム部材(30は長片、31は短片、33は入力部、34は伝達部)
4…ラッチユニット(41はラッチボディ、43は循環カム、45は摺動ピン)
5…ストライカ(51は基部、52アーム部、53は係止爪部)
6…自動制御機構(60は作動部材、65は付勢ばね)
7…筐体(7aは支持フレーム、7bは空間)
8…引出体(8aは小収納部)
9…蓋体(蓋体、9aはヒンジ部)
35…手動規制手段(36は操作板、37は操作部、38は係止部)
60a…認識部(認識手段)
62…軸部
63…規制部(規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に出し入れされる引出体と該引出体の前面側に回動可能に軸支された蓋体との間に設けた係止機構により該蓋体を所定位置に保持可能にするラッチ装置において、
前記筐体に対する前記引出体の収納状態か非収納状態かを認識する認識手段、及び前記認識手段と連携されて前記係止機構を作動可能ないしは作動不能とする規制手段からなる自動制御機構を備えていることを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
前記認識手段は、前記引出体側に設けられて、前記引出体の収納状態か非収納状態かを前記筐体の対応部に対する接離状態により認識することを特徴とする請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記引出体の非収納状態で前記係止機構の係止解除状態への切り換えを規制することを特徴とする請求項1又は2に記載のラッチ装置。
【請求項4】
前記規制手段は、付勢力又は自重により前記係止機構の係止解除状態への切り換えを規制し、かつ、該規制状態を前記認識手段が前記筐体の対応部と接触した状態で解放する請求項1から3の何れかに記載のラッチ装置。
【請求項5】
前記係止機構の係止解除状態への切り換えを手動操作により不能にする手動規制手段を有している請求項1から4の何れかに記載のラッチ装置。
【請求項6】
引出体と前記引出体の前面側に回動可能に軸支された蓋体との間に設けた係止機構により該蓋体を所定位置に保持可能にするラッチ装置において、
前記係止機構が前記蓋体の保持を解放する係止解除状態へ切換可能か否かを認識する認識手段、及び前記認識手段と連携されて当該係止機構を作動可能ないしは作動不能とする規制手段からなる自動制御機構を備えていることを特徴とするラッチ装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載のラッチ装置において、前記係止機構は前記蓋体を押込み操作により前記引出体側に保持し、次の押込み操作により前記蓋体の保持を解放するプッシュ・プッシュ式からなると共に、前記引出体及び前記蓋体は一方だけが取っ手を有していることを特徴とするラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−228289(P2009−228289A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74428(P2008−74428)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】