説明

ラップアラウンド式の梱包箱

【課題】利用者が収納品を取り出しやすい状態に容易に開くことができ、かつ、開かれた状態であっても収納品の収納状態を維持できるラップアラウンド式の梱包箱を提供することを課題とする。
【解決手段】横方向Siに直線状に延びる天面折り曲げ線L3と、天面1aに備わる天面フラップ10aと隣接するサイドフラップ10cの間のスリットから天面折り曲げ線L3まで延伸する天面破断線L2と、が天面1aに形成され、底面1bに備わる底面フラップ10bと2つのサイドフラップ10cの間のスリットからそれぞれ切り込み部を形成するための2つの底面破断線L4が底面1bに形成される、ラップアラウンド式の梱包箱1とする。そして、2つの底面破断線L4の縦方向Lnの長さが天面破断線L2の縦方向Lnの長さより短く、天面1aが天面折り曲げ線L3で折り曲げられた状態で全ての収納品の収納状態を維持できる梱包箱1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品を包み込んで梱包するラップアラウンド式の梱包箱に関する。
【背景技術】
【0002】
保管や輸送のためにビールなどの缶入り製品を収納して包装する梱包箱として、例えば特許文献1、2に開示されるようなダンボール素材のラップアラウンド式の梱包箱が知られている。
【0003】
このような梱包箱は組み立て形状が略直方体形状を呈する。そして、収納される缶入り製品の底部側の面を底面、底面に対向する面を天面とし、底面と天面の対向する2辺が側面で連結されて形成される。
また側面が形成されない天面および底面の2辺は、それぞれ互いの方向に折れ曲がってフラップを形成し、利用者はフラップを開いて収納された缶入り製品を取り出すように構成される。
しかしながら、収納された缶入り製品が輸送途中などに梱包箱内で揺れ動かないように、缶入り製品は互いに接近して隙間なく梱包箱に収納されるため、利用者がフラップを開いた開口部から缶入り製品を取り出しにくいという問題がある。
【0004】
そこで、缶入り製品を取り出しやすくするため、例えば特許文献1、2に示されるように、フラップとともに天面あるいは底面の一部が大きく開くように形成されるラップアラウンド式の梱包箱が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−076588号公報
【特許文献2】特開2004−250016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1に開示される梱包箱(ラップアラウンドケース)はフラップの中央部とともに天面の一部が開くように構成される。この構成によると、利用者はフラップを破断するように梱包箱を開くためフラップを破断する力が必要になる。このため、フラップを破断するための破断線(ミシン目等)が形成されていても、利用者が梱包箱を開きにくいという問題がある。
また、フラップ同士の糊付けを剥がさないようにフラップを抑えながらフラップの中央部を破断して開く必要があり、この点においても利用者が梱包箱を開きにくい。
また、複数の缶入り製品が1つにまとめられたマルチパックが梱包箱に収納されている場合、フラップの中央部のみが開く構造ではマルチパックを取り出すことができない。
【0007】
また特許文献2に開示される梱包箱(包装材)は、フラップとともに広面部が大きく切り裂かれるように開くため、収納される缶入り製品を広面部でホールドできなくなって缶入り製品を好適に収納できず、さらに、広面部が開いた後の梱包箱は強度が低下することから梱包箱としての機能が喪失するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、利用者が収納品を取り出しやすい状態に容易に開くことができ、かつ、開かれた状態であっても収納品の収納状態を維持できるラップアラウンド式の梱包箱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、天面フラップを備える天面と、前記天面と対向して底面フラップを備える底面と、サイドフラップを備える1対の側面と、が稜線で折り曲げられ、前記天面と1つの前記側面の間の稜線が接合部となるように形成されるラップアラウンド式の梱包箱とする。そして、前記天面には、前記接合部となる前記稜線から、対向する他の前記稜線に向かって前記天面フラップに沿った横方向に延びて当該天面を折り曲げ容易にする天面折り曲げ線と、前記他の稜線側で隣接する前記天面フラップと前記サイドフラップの間に形成されるスリットから前記天面折り曲げ線まで切り込み部を形成するための天面破断線と、が形成され、前記底面には、前記底面フラップと、隣接する2つの前記サイドフラップの間と、の間に形成される2つのスリットからそれぞれ切り込み部を形成するための2つの底面破断線が形成され、2つの前記底面破断線と前記天面破断線は、前記稜線に沿った縦方向において同じ側に形成され、前記天面破断線に沿った切り込み部が形成された前記天面が前記天面折り曲げ線に沿って折り曲げられ、前記底面に2つの前記底面破断線に沿った2つの切り込み部が形成された状態で、全ての収納品の収納状態を維持できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、利用者が収納品を取り出しやすい状態に容易に開くことができ、かつ、開かれた状態であっても収納品の収納状態を維持できるラップアラウンド式の梱包箱を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)はマルチパックが収納された梱包箱を示す図、(b)は梱包箱にマルチパックを収納する工程を示す図である。
【図2】梱包箱の展開図である。
【図3】(a)は天面開口部が開いた状態の天面を示す図、(b)は底面破断線に沿って切り込み部が形成された底面を示す図である。
【図4】は、スリットに連続して形成される天面破断線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1の(a)に示すように、本実施形態に係るラップアラウンド式の梱包箱1は、缶入り製品2(缶ビールなど)が、包装材3aで包装されて、例えば6缶まとめられたマルチパック3を収納品として収納する梱包箱であり、一例として4つのマルチパック3が収納される梱包箱1とする。
マルチパック3が収納されて組み立てられた梱包箱1は略直方体形状であり、缶入り製品2の底部側の平面を底面1bとし、底面1bと対向する平面を天面1aとする。そして、底面1bと天面1aのそれぞれ対向する2辺が1対の対向する側面1cで接続されて形成される。
【0013】
なお、梱包箱1の収納品であるマルチパック3は、缶ビールなど缶入り製品2のマルチパック3に限定されず、容器に製品が封入されている容器入り製品が包装材3aで1つにまとめられたマルチパック3であればよい。
また、1つのマルチパック3に含まれる缶入り製品2の数および梱包箱1に収納されるマルチパック3の数は限定されるものではない。
例えば、4つの缶入り製品2が包装材3aで包装されたマルチパック3が梱包箱1に6個収納される形態や、2つの缶入り製品2が包装材3aで包装されたマルチパック3が梱包箱1に12個収納される形態などであってもよく、マルチパック3に含まれる缶入り製品2の数や梱包箱1に収納されるマルチパック3の数は限定されない。
【0014】
天面1aおよび底面1bと側面1cの間を稜線とし、天面1aと2つの側面1cの間を第1稜線11a、第2稜線11bと称し、底面1bと側面1cの間を底面側稜線11cと称する。なお、第2稜線11bは天面1aと1つの側面1cが折れ曲がって形成される稜線とし、第1稜線11aは天面1aと1つの側面1cが接合する接合部が形成される稜線とする。また、底面側稜線11cは底面1bと2つの側面1cがそれぞれ折れ曲がって形成される2つの稜線とする。
【0015】
また、側面1cが接続されない天面1aの端辺(つまり、第1稜線11aおよび第2稜線11bと直交する端辺)には、底面1bの側に折れ曲がる天面フラップ10aが接続されて備わる。以下、第1稜線11aおよび第2稜線11bと直交して天面フラップ10aが接続されて備わる端辺を天面横方向端辺12aと称する。そして、天面フラップ10aは天面横方向端辺12aを折れ線として底面1bの側に折れ曲がるように形成される。
同様に、側面1cが接続されない底面1bの端辺(つまり、2つの底面側稜線11cと直交する端辺)には、天面1aの側に折れ曲がる底面フラップ10bが接続されて備わる。以下、2つの底面側稜線11cと直交して底面フラップ10bが接続されて備わる端辺を底面横方向端辺12bと称する。そして、底面フラップ10bは底面横方向端辺12bを折れ線として天面1aの側に折れ曲がるように形成される。
【0016】
そして、天面フラップ10aと底面フラップ10bは互いに観音開きに開いて、例えば、梱包箱1に収納された缶入り製品2(マルチパック3)を取り出すための開口部となる。
なお、符号10cは、側面1cの端部がそれぞれ対向する側面1cの側に折れ曲がって形成されるサイドフラップである。また、マルチパック3の符号3bは、利用者がマルチパック3を持つときに指等を差し込む手持用孔(フィンガーホール)である。フィンガーホール3bは、例えば、D型の穴が中央部を挟んで対称に2つ並んで開口する形状が知られている。
そして、マルチパック3は2穴で形成されるフィンガーホール3bが天面1aに向けられた状態で、かつ、各稜線(第1稜線11a、第2稜線11b、底面側稜線11c)の方向に2穴が並ぶように梱包箱1に収納される。
【0017】
以下、天面1aにおける第1稜線11a、第2稜線11bおよび底面1bにおける2つの底面側稜線11cに沿った方向、つまり稜線に沿った方向を縦方向Ln、天面フラップ10aが備わる天面横方向端辺12aおよび底面フラップ10bが備わる底面横方向端辺12bに沿った方向、つまり天面フラップ10a(底面フラップ10b)に沿った方向を横方向Si、天面1aと底面1bの間の方向を高さ方向Htとする。
つまり本実施形態において、マルチパック3は2穴で形成されるフィンガーホール3bが天面1aに向けられた状態で縦方向Lnに並ぶように梱包箱1に収納される。
【0018】
図1の(b)に示すように、缶入り製品2の箱詰め工程においては所定数(例えば4つ)のマルチパック3が押し込み機構100によって、平面状に展開している梱包箱1の底面1bに載せられる。このとき、例えば、マルチパック3は横方向Siに2列、縦方向Lnに2段に配置されて底面1bに載せられる。
その後、図示しない梱包装置によって、天面1aがマルチパック3の上方に重なるように、平面状に展開している梱包箱1が折り曲げられて箱型状に形成され、マルチパック3が梱包箱1に収納される。
さらに、天面フラップ10a、底面フラップ10b、サイドフラップ10cが各折れ線で適宜折り曲げられて、マルチパック3が収納された梱包箱1が形成される。
なお、天面1aに接続される側面1cの端部には貼り合せ面1dが形成され、貼り合せ面1dと天面1aが重なって糊付け等によって貼着される。この場合、貼り合せ面1dは、天面1aに対して梱包箱1aの内側となる位置で重なる構成が好ましい。
また、天面フラップ10a、底面フラップ10bおよびサイドフラップ10cは適宜糊付け等によって貼着される。
【0019】
本実施形態に係るラップアラウンド式の梱包箱1はダンボールを素材とし、図2に示すように展開するダンボール材が適宜折り曲げられて形成される。なお、図2は、例えば梱包箱1の外側となる面から見た図である。
【0020】
天面1aとなる平面S1と底面1bとなる平面S2は同型の略矩形(長方形)であり、便宜上、長辺を縦方向Lnとし短辺を横方向Siとする。なお、梱包箱1に収納されるマルチパック3の大きさや数によって縦方向Lnと横方向Siは適宜設定可能とする。
そして、平面S1と平面S2の一方の長辺側が延長して連続した平面S3Aが形成される。この平面S3Aは、梱包箱1の一方の側面1cとなる。また、例えば平面S2の他方の長辺側は延長して連続した平面S3Bが形成される。この平面S3Bは、梱包箱1の他方の側面1cとなる。
つまり、梱包箱1(図1の(a)参照)を展開すると、図2に示すように右方から、平面S1(天面1a)、平面S3A(側面1c)、平面S2(底面1b)、平面S3B(側面1c)の順に連続して配置される。
【0021】
また、平面S3Bにおいて、平面S2の長辺と平行に形成される端辺側には貼り合せ面1dとなる平面S4が連続して形成される。平面S4(貼り合せ面1d)は天面1aとなる平面S1と重なるように折り曲げられ、塗布された貼着剤(糊など)によって平面S1に貼着される。
【0022】
平面S1の2つの短辺側はそれぞれ延長して、天面フラップ10aとなる平面S1Fが形成され、平面S2の2つの短辺側はそれぞれ延長して、底面フラップ10bとなる平面S2Fが形成される。
また、平面S3A、S3Bにおいて、平面S1、S2の短辺の延長上の端辺側は延長して、サイドフラップ10cとなる平面S3Fが形成される。
なお、梱包箱1(図1の(a)参照)において、天面フラップ10aおよび底面フラップ10bは折り曲げられたサイドフラップ10cと重なるように折り曲げられて適宜貼着される。
【0023】
そして、連続する各平面の間には折り曲げ線L1(破線)が形成される。折り曲げ線L1は、例えば梱包箱1(図1の(a)参照)の素材となるダンボール材の厚み方向が線状に薄くなるように形成された凹部であり、缶入り製品2(図1の(a)参照)の箱詰め工程において容易に折り曲げられるように構成される。
なお、符号L1aは平面S1と平面S3Aの間の折り曲げ線、符号L1bは平面S3Aと平面S2の間の折り曲げ線、符号L1cは平面S2と平面S3Bの間の折り曲げ線、符号L1dは平面S3Bと平面S4の間の折り曲げ線、符号L1eは平面S1と平面S1Fの間の折り曲げ線、符号L1fは平面S2と平面S2Fの間の折り曲げ線、をそれぞれ示している。
【0024】
折り曲げ線L1a、L1dは、梱包箱1(図1の(a)参照)として組み立てられたときに、それぞれ第2稜線11b、第1稜線11aとなり、折り曲げ線L1b、L1cはそれぞれ底面側稜線11cとなる。
また、平面S1と平面S1F(天面フラップ10a)の間の折り曲げ線L1eは天面横方向端辺12aとなり、平面S2と平面S2F(底面フラップ10b)の間の折り曲げ線L1fは底面横方向端辺12bとなる。
【0025】
また、図2に示すように、展開した梱包箱1(図1の(a)参照)において、平面S1F(天面フラップ10a)、平面S3F(サイドフラップ10c)、平面S2F(底面フラップ10b)、平面S3F(サイドフラップ10c)は横並びに形成され、平面S1Fと平面S3Fの間および平面S2Fと平面S3Fの間には、適宜な幅のスリットSLが形成される。
スリットSLは、平面S1と平面S3A、平面S3Aと平面S2、平面S2と平面S3Bの間にそれぞれ形成される折り曲げ線L1の延長上に形成され、天面フラップ10aおよび底面フラップ10bがサイドフラップ10cに干渉することなく折り曲げられるように構成される。
【0026】
そして、本実施形態に係る梱包箱1(図1の(a)参照)には、図2に示すように、天面1aとなる平面S1に、ミシン目で形成される破断線(天面破断線L2)および天面破断線L2と接続される折り曲げ線(天面折り曲げ線L3)が形成される。
【0027】
天面破断線L2は、天面横方向端辺12aとなる折り曲げ線L1eと、第2稜線11bとなる折り曲げ線L1aと、の交点におけるスリットSLの端部から平面S1上に延びる直線であり、折り曲げ線L1aと所定の角度(この角度を第1角度θ1と称する)をなしていることが好ましい。つまり、天面破断線L2は、縦方向Ln(第2稜線11b)に対して所定の第1角度θ1をなして形成されることが好ましい。
【0028】
また、天面破断線L2と接続される天面折り曲げ線L3は、接合部が形成される端辺(長辺)から、当該端辺と対抗する折り曲げ線L1aに向かって、天面フラップ10aの折り曲げ線L1eと略平行に延びるように形成されることが好ましい。図1の(a)に示すように組み立てられた梱包箱1において、図2に示す平面S1は天面1aとなり、天面1aと側面1cの間の第1稜線11aは接合部が形成される稜線となる。また、平面S1と平面S3Aの間の折り曲げ線L1aは、第1稜線11aと対向し、接合部が形成されない他の稜線(第2稜線11b)となる。このことから、天面折り曲げ線L3は、接合部が形成される第1稜線11aから、第1稜線11aと対向して接合部が形成されない他の稜線(第2稜線11b)に向かって、天面フラップ10a(天面横方向端辺12a)と略平行に延びるように形成され、天面1aを折り曲げ容易にする。
また、天面破断線L2は、接合部が形成されない他の稜線(第2稜線11b)で隣接するサイドフラップ10cと天面フラップ10aの間のスリットSLから天面折り曲げ線L3まで天面1aに切り込み部を形成するための破断線となる。
【0029】
天面1aは、対向した2つの天面横方向端辺12aを有するが、天面破断線L2は、天面横方向端辺12aの一方の側に形成されていればよい。以下、天面破断線L2に沿って切り込み部が形成された天面1aが天面折り曲げ線L3に沿って折り曲げられて形成される開口部を天面開口部16(図3の(a)参照)と称し、天面破断線L2が形成される側、つまり、天面開口部16の側を「開口側」と称する。
なお、対向する2つの天面横方向端辺12aの両方に天面破断線L2および天面折り曲げ線L3が形成されて天面開口部16が開口する構成であってもよい。
【0030】
ちなみに、第1稜線11aとなる天面1aの端辺側は、貼り合せ面1d(平面S4)と天面1a(平面S1)との貼着を剥がすことによって、利用者が容易に天面開口部16(図3の(a)参照)を開くことができるため破断線は不必要となる。
【0031】
また、天面破断線L2は、第2稜線11bとなる折り曲げ線L1aと天面横方向端辺12aとなる折り曲げ線L1eとの交点でスリットSLと連続するように形成されること(つまり、天面フラップ10aとなる平面S1Fを通らないで形成されること)が好ましいが、製造誤差として、天面フラップ10aとなる平面S1Fをわずかに通ってスリットSLと連続するように形成されていてもよい。
例えば、利用者が天面開口部16(図3の(a)参照)を容易に開くことができ、マルチパック3(図3の(a)参照)を容易に取り出すことができる範囲であれば、平面S1Fをわずかに通る天面破断線L2であってもよい。
【0032】
そして、図3の(a)に示すように、利用者が開口側の天面フラップ10aを開くときに縦方向Lnに力を加えることによって、天面折り曲げ線L3まで天面破断線L2に沿って容易に切り込み部を形成することができ、さらに、第1稜線11a側は天面1aと貼り合せ面1dの貼着が容易に剥がせる構成とすれば、利用者は天面1aを天面折り曲げ線L3で外方に向かって容易に折り曲げて天面開口部16を開くことができる。そして、天面1aの側にマルチパック3を露出して取り出すことができる。
【0033】
このとき、本実施形態においては、図2に示すように天面破断線L2が天面フラップ10aとなる平面S1Fを通っていないため天面フラップ10aは破断されない。したがって、利用者は天面フラップ10aを破断するための力が不要となる。また、接合部が形成されている第1稜線11a側は、天面1aと貼り合せ面1d(側面1c)との糊付け(貼着)を剥がすだけであって切り込み部を形成する必要はない。したがって、利用者は1つの天面破断線L2で天面フラップ10aを破断することなく天面1aの側に切り込み部を形成するだけで容易に天面開口部16を開くことができる。
【0034】
また、図2に示す、天面破断線L2と折り曲げ線L1aのなす第1角度θ1が大きいと天面破断線L2が横方向Si側に傾斜した構成となる。この場合、利用者は天面破断線L2に沿って切り込み部を形成するときには天面フラップ10aを横方向Siにねじるように動作することになり、天面破断線L2に沿った切り込み部を天面1aに容易に形成できない。特に第1角度θ1が45度以上になると、天面フラップ10aを縦方向Lnに引く動作量より横方向Siにねじる動作量が多くなり、天面破断線L2に沿って切り込み部を形成する作業の容易性が低くなる。
【0035】
したがって、天面破断線L2と折り曲げ線L1aのなす第1角度θ1は45度以下であることが好ましく、その第1角度θ1は小さいほうが好ましい。
【0036】
また、天面破断線L2と折り曲げ線L1aがなす第1角度θ1が0度以上であると、図3の(a)に示すように、天面破断線L2に沿った天面折り曲げ線L3までの切り込み部が天面1aに形成されたとき、側面1cは、天面1aの側に折れ曲がる、第1角度θ1を頂角とするリブ状部1eで補強される。この構成によって、天面開口部16が開いた状態であっても側面1cがリブ状部1eによって補強されることになり、ひいては、梱包箱1が補強される。
以上のことから、天面破断線L2と折り曲げ線L1aがなす第1角度θ1は0度より大きく45度より小さいことが好ましい。例えば、実験計測等によって第1角度θ1が30度より小さいとき、より好適には25度のとき、更に好適には20度のとき、利用者が天面1aに切り込み部を容易に形成できることがわかった。
【0037】
また、前記したようにマルチパック3の包装材3aには2穴のフィンガーホール3bが開口しており、フィンガーホール3bが天面1aに向けられた状態で、かつ、2穴のフィンガーホール3bが縦方向Lnに並ぶようにマルチパック3が梱包箱1に収納される。したがって、フィンガーホール3bの少なくとも1つが天面1aの側に露出するように天面開口部16が開く構成とすれば、利用者は露出したフィンガーホール3bに指を掛けてマルチパック3を梱包箱1から容易に取り出すことができる。
【0038】
例えば、縦方向Lnに並ぶ2つのフィンガーホール3bのうち、開口側に配置される1穴の少なくとも一部が露出するように天面開口部16が開く構成とすれば、利用者は天面開口部16を開いて容易にマルチパック3を取り出すことができる。
天面開口部16が開いたときにマルチパック3の天面1a側の全面が露出する構成とすればフィンガーホール3bを天面1aの側に露出できる。しかしながら、天面1aの側にマルチパック3の全面が露出すると当該マルチパック3は天面1aによって支持されなくなり、当該マルチパック3は梱包箱1に好適に収納されなくなる。したがって、天面開口部16はマルチパック3の天面1a側の全面が露出しない程度に開くことが好ましい。
【0039】
前記したように、4つのマルチパック3が収納される梱包箱1の場合、縦方向Lnに2段、横方向Siに2列に収納されることが一般的である。
例えば、開口側に配置されるマルチパック3は縦方向Lnの略中央部に重心があるため、天面横方向端辺12aから当該マルチパック3の中央部を超えて天面開口部16が開くと、そのマルチパック3の重心が天面1aで支持されず不安定な状態になる。換言すると、当該マルチパック3が梱包箱1(図1の(a)参照)によって好適に収納されない状態となる。
【0040】
縦方向Lnに2段にマルチパック3が配置される場合、開口側に配置されるマルチパック3(第1段とする)の、縦方向Lnの中央部は天面横方向端辺12aから天面1aの縦方向Lnの長さの1/4に位置する。
このことから、天面開口部16が天面1aの縦方向Lnの長さの1/4の長さまで開く構成とすると、縦方向Lnに開口側と反対側に収納されるマルチパック3(第2段とする)は周囲を天面1a、底面1b、2つの側面1cで支持されて好適に収納される。また、天面開口部16が開いた状態であっても、第1段目のマルチパック3は、底面1b、2つの側面1cで支持され、さらに、天面1aの側は縦方向Lnの長さの1/2の位置(重心の位置)が天面1aで支持されて好適に収納される。
【0041】
つまり、天面折り曲げ線L3が、天面横方向端辺12a(天面フラップ10aが備わる天面1aの端辺)から、天面1aの縦方向Lnの長さの1/4以下となる位置に形成されている構成が好ましい。
この構成によると、天面開口部16が開いた状態であっても、第1段目、第2段目ともマルチパック3の重心は天面1a、底面1b、2つの側面1cで周囲から支持されて安定した状態でマルチパック3が梱包箱1に収納される。
つまり、天面開口部16が開いた状態であっても、梱包箱1は4つのマルチパック3の全てを好適に安定した状態で収納でき、梱包箱1に収納されるマルチパック3の収納状態を維持できる。
【0042】
また、6缶の缶入り製品2が1つにまとめられたマルチパック3の場合、缶入り製品2は、梱包箱1への収納時に天面1aの縦方向Lnとなる方向に3段に配置されることが多い。フィンガーホール3bは缶入り製品2と缶入り製品2の間に形成されるため、包装材3aにおいては、梱包箱1への収納時に縦方向Lnとなる方向の1/3の位置にフィンガーホール3bが形成される。そして、縦方向Lnに2段にマルチパック3が配置される場合、第1段目に配置されるマルチパック3の、縦方向Lnに1/3の位置は天面横方向端辺12aから天面1aの縦方向Lnの長さの1/6に位置する。このことから、天面開口部16が天面1aの縦方向Lnの長さの1/6以上開く構成とすると、第1段目に収納された包装材3aに形成されるフィンガーホール3bの少なくとも一部を天面1aの側に露出できる。
つまり、縦方向Lnの長さの1/6以上1/4以下となる位置に天面折り曲げ線L3が形成される構成であることが好ましい。この構成によって、天面開口部16が開いたときに、第1段目に配置されるマルチパック3のフィンガーホール3bの少なくとも一部を梱包箱1の天面1aの側に好適に露出でき、さらに、第1段目に配置されるマルチパック3を天面1aで好適に支持できる。
【0043】
なお、マルチパック3が縦方向Lnに3段以上に収納される場合や、収納品がマルチパック3でない場合は、最も開口側に配置されるマルチパック3(収納品)の重心の位置が天面1aで支持される構成とすればよい。
【0044】
以上のことから、本実施形態に係る梱包箱1(図1の(a)参照)においては縦方向Lnに2段のマルチパック3が収納され、天面開口部16が天面横方向端辺12a(図2参照)から天面1aの縦方向Lnの長さの1/4以下となる位置まで開く構成が好ましい。
つまり、開口側の天面横方向端辺12aから、天面1a(梱包箱1)の縦方向Lnの長さの1/4以下の長さとなる距離に天面折り曲げ線L3が形成され、天面破断線L2の縦方向Lnの長さが、天面1aの縦方向Lnの長さの1/4以下に形成されることが好ましい。また、天面破断線L2の縦方向Lnの長さが天面1aの縦方向Lnの長さの1/6以上に形成され、第1段目のマルチパック3の包装材3aに開口しているフィンガーホール3bの少なくとも一部が天面1aの側に露出するように天面開口部16が開く構成がさらに好ましい。
【0045】
また、図2に示すように、底面1bとなる平面S2にも開口側から延びるミシン目からなる2本の破断線(底面破断線L4)が形成されることが好ましい。つまり、底面破断線L4は縦方向Lnにおいて天面破断線L2と同じ側に形成されることが好ましい。
底面破断線L4は、底面横方向端辺12bとなる折り曲げ線L1fと、底面側稜線11cとなる折り曲げ線L1b、L1cと、の交点におけるスリットSLの端部から平面S2上に延びる2本の直線であり、それぞれ折り曲げ線L1b、L1cと所定の角度(この角度を第2角度θ2と称する)をなしていることが好ましい。つまり、底面破断線L4は、縦方向Ln(底面側稜線11c)に対して所定の第2角度θ2をなして形成されることが好ましい。
【0046】
底面破断線L4が折り曲げ線L1b、L1cとなす第2角度θ2は、天面破断線L2が折り曲げ線L1aとなす第1角度θ1と同じであってもよいし、異なる角度であってもよいが、第1角度θ1と同じ理由によって0度より大きく45度より小さいこと、好適には30度より小さいこと、より好適には20度であることが好ましい。
また、底面破断線L4は、底面側稜線11cとなる折り曲げ線L1b、L1cと底面横方向端辺12bとなる折り曲げ線L1fとの交点でスリットSLと連続するように形成されること(つまり、底面フラップ10bとなる平面S2Fを通らないで形成されること)が好ましいが、製造誤差として、底面フラップ10bとなる平面S2Fをわずかに通ってスリットSLと連続するように形成されていてもよい。例えば天面破断線L2と同様に、利用者が底面1bを容易に開くことができ、マルチパック3(図3の(a)参照)を容易に取り出すことができる範囲であれば、平面S2Fをわずかに通る底面破断線L4であってもよい。
【0047】
また、底面1bの側にマルチパック3のフィンガーホール3b(図3の(a)参照)は形成されず、底面1bは縦方向Lnにフィンガーホール3bの位置まで開かれる必要はない。つまり、マルチパック3の包装材3aの端部が底面1bの側で露出する程度に底面1bが開く構成とすれば、利用者は底面1bの側から露出した包装材3aをつかむことでマルチパック3を梱包箱1から容易に取り出すことができる。このことから、底面1bとなる平面S2に形成される底面破断線L4の縦方向Lnの長さは、天面1aとなる平面S2に形成される天面破断線L2の縦方向Lnの長さより短くてよい。
またこのように、底面1bとなる平面S2に形成される底面破断線L4の縦方向Lnの長さが天面破断線L2の縦方向Lnの長さより短いことによって底面1bの開口量が少なくなり、梱包箱1の強度を好適に維持できる。
【0048】
また、図1の(b)に示すように、缶入り製品2の箱詰め工程においてマルチパック3は、押し込み機構100によって押し込まれて底面1b上を滑るように進行する。したがって底面1bにミシン目が形成されると、このミシン目がマルチパック3の進行に対する抵抗となって包装材3aが破損する場合がある。
本実施形態においては、図2に示すように、底面1b(平面S2)に形成される底面破断線L4の長さを短くすることによって、缶入り製品2の製造工程における包装材3aの進行に対する抵抗を小さくすることができる。
【0049】
また、底面1bの縦方向Lnへの開口が少ないため、マルチパック3と底面1bとの接触面積を大きくすることができ、マルチパック3が好適に収納される。つまり、マルチパック3の収納状態が好適に維持される。
【0050】
以上のように本実施形態に係る梱包箱1は、図3の(a)に示すように、天面1aの開口側に、第2稜線11bの側から第1稜線11aに至るまで、横方向Siに沿って直線状に形成される天面折り曲げ線L3と、天面フラップ10aと第2稜線11b側のサイドフラップ10cの間に形成されるスリットSL(図2参照)から天面折り曲げ線L3まで、切り込み部を形成するための天面破断線L2と、を有することを特徴とする。
【0051】
この構成によると、利用者は、天面フラップ10aを破断することなく、天面折り曲げ線L3まで天面破断線L2に沿った切り込み部を天面1aに形成することができる。そして、利用者は天面折り曲げ線L3で天面1aを容易に折り曲げて天面開口部16を開くことができ、第1段目に収納されているマルチパック3を天面1aの側に露出させて容易に梱包箱1から取り出すことができる。
また、天面破断線L2の縦方向Lnの長さを、収納されるマルチパック3の縦方向Lnの長さの1/2より短くすることによって、天面開口部16が開いた状態であっても全てのマルチパック3の収納状態を好適に維持することができる。
さらに、第1段目に収納されるマルチパック3の包装材3aに形成されるフィンガーホール3bの少なくとも一部が天面1aの側に露出するように天面開口部16が開く構成とすれば、利用者は天面1aを折り曲げて天面開口部16を開き、フィンガーホール3bに指等を差し込んで容易にマルチパック3を梱包箱1から取り出すことができる。
【0052】
また、底面1b(図3の(b)参照)の開口側にも底面破断線L4が形成されており、利用者は底面破断線L4に沿って底面1bに切り込み部を容易に形成でき、マルチパック3を底面1bの側に容易に露出させることができる。この構成によって、利用者は底面1bの側からもマルチパック3の包装材3aを容易につかむことができ、マルチパック3を梱包箱1から、さらに容易に取り出すことができる。
【0053】
なお、図4に示すように、天面破断線L2は、天面フラップ10aとサイドフラップ10cの間に形成されるスリットSLの、天面横方向端辺12a側の端部と連続して形成されることが好ましい。
スリットSLの端部はダンボール材が薄く形成される折り曲げ線L1(L1a、L1e)が集中する部分であって強度が低くなっているため、この部分に連続して天面破断線L2が形成されると、利用者は天面1aに、天面破断線L2に沿った切り込み部を容易に形成できる。
同様に、底面破断線L4(図2参照)も、底面フラップ10b(図2参照)とサイドフラップ10cの間に形成されるスリットSLの、底面横方向端辺12b側の端部と連続して形成されることが好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1 梱包箱(ラップアラウンド式の梱包箱)
1a 天面
1b 底面
1c 側面
3 マルチパック(収納品)
3a 包装材
3b フィンガーホール(手持用孔)
10a 天面フラップ
10b 底面フラップ
10c サイドフラップ
11a 第1稜線(接合部となる稜線)
11b 第2稜線(他の稜線)
11c 底面側稜線
16 天面開口部
L1 折り曲げ線
L2 天面破断線
L3 天面折り曲げ線
L4 底面破断線
SL スリット
θ1 第1角度
θ2 第2角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面フラップを備える天面と、前記天面と対向して底面フラップを備える底面と、サイドフラップを備える1対の側面と、が稜線で折り曲げられ、前記天面と1つの前記側面の間の稜線が接合部となるように形成されるラップアラウンド式の梱包箱であって、
前記天面には、
前記接合部となる前記稜線から、対向する他の前記稜線に向かって前記天面フラップに沿った横方向に延びて当該天面を折り曲げ容易にする天面折り曲げ線と、
前記他の稜線側で隣接する前記天面フラップと前記サイドフラップの間に形成されるスリットから前記天面折り曲げ線まで切り込み部を形成するための天面破断線と、が形成され、
前記底面には、
前記底面フラップと、隣接する2つの前記サイドフラップの間と、の間に形成される2つのスリットからそれぞれ切り込み部を形成するための2つの底面破断線が形成され、
2つの前記底面破断線と前記天面破断線は、前記稜線に沿った縦方向において同じ側に形成され、
前記天面破断線に沿った切り込み部が形成された前記天面が前記天面折り曲げ線に沿って折り曲げられ、前記底面に2つの前記底面破断線に沿った2つの切り込み部が形成された状態で、全ての収納品の収納状態を維持できることを特徴とするラップアラウンド式の梱包箱。
【請求項2】
2つの前記底面破断線の前記縦方向の長さが前記天面破断線の前記縦方向の長さより短いことを特徴とする請求項1に記載のラップアラウンド式の梱包箱。
【請求項3】
前記天面フラップが備わる前記天面の端辺から当該天面の前記縦方向の長さの1/4以下となる位置に前記天面折り曲げ線が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のラップアラウンド式の梱包箱。
【請求項4】
前記天面フラップが備わる前記天面の端辺から当該天面の前記縦方向の長さの1/6以上となる位置に前記天面折り曲げ線が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のラップアラウンド式の梱包箱。
【請求項5】
前記天面破断線が直線状に、かつ、前記他の稜線側で隣接する前記天面フラップと前記サイドフラップの間に形成されるスリットから前記縦方向に対して0度より大きい第1角度をなして斜めに形成され、
2つの前記底面破断線のそれぞれが直線状に、かつ、前記底面フラップと隣接する2つの前記サイドフラップの間に形成される2つのスリットのそれぞれから、前記縦方向に対して0度より大きい第2角度をなして斜めに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のラップアラウンド式の梱包箱。
【請求項6】
前記第1角度および前記第2角度が30度より小さいことを特徴とする請求項5に記載のラップアラウンド式の梱包箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49480(P2013−49480A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189761(P2011−189761)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】