説明

ラップフィルム

【課題】 密着性、柔軟性、カット性に優れるのみならず、可塑剤のブリードアウトや寸法変化等の経時変化が極めて少なく、さらには、ポリ乳酸樹脂の加水分解による物性変化も極めて少ない、食品包装用等に好適に使用可能なラップフィルムを提供すること。
【解決手段】 1又は2以上のフィルム層を備え、カットエネルギーが50mJ以下のラップフィルムであって、上記フィルム層の少なくとも1つが、ポリ乳酸系樹脂(A)、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有し、分子量が200〜3000であるジカルボン酸エステルからなる可塑剤(B)及びカルボジイミド化合物(C)を含有し、少なくとも1方向に延伸されたフィルム層(a)であることを特徴とするラップフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装用のラップフィルムは、食品又は食品の入った皿若しくは容器を包み、冷蔵庫や冷凍庫内等で食品を保存する用途、電子レンジ等で加熱する用途、等に使用される。その他にも、食卓等で一時的に食品を置いておく場合、埃よけの用途でも使用される。
【0003】
食品包装用のラップフィルムには、一般に熱可塑性の樹脂が使用されており、主なものとして、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でもポリ塩化ビニリデンのラップは、密着性、柔軟性、カット性等、ラップに必要とされる複数の特性を有しており、さらに、経時的な物性の変化、ブリードアウト、フィルム幅の収縮等がほとんどない為、食品包装用フィルムとして多用されている。
【0004】
一方、近年、使用済みのプラスチック等を焼却する際に生じる二酸化炭素の排出により、大気中の二酸化炭素濃度が増加し、これに伴う地球温暖化問題が重要視されている。
【0005】
そこで、カーボンニュートラルである植物由来樹脂を主原料としたラップフィルムが提案されている。
【0006】
植物由来樹脂として汎用化しているものの一つに、ポリ乳酸樹脂が挙げられる。ポリ乳酸樹脂は、トウモロコシ等の澱粉を発酵させてできる乳酸を重合させた樹脂であるが、それ自身は剛性が高く、硬く脆い樹脂である。そこで、これをラップフィルムのような密着性や柔軟性を要するフィルムとするには、数種の可塑剤や添加剤を加えてラップフィルムの組成を設計し、さらにラップフィルムの特徴であるカット性を与える必要がある。その為、ラップに必要な密着性、柔軟性、カット性を保持しながら、ブリードアウトやフィルム幅の収縮等の経時変化を抑制することは非常に難しい。さらに、ポリ乳酸樹脂をラップフィルムとして用いる場合、樹脂由来の経時的な加水分解に伴う、物性の変化も制御する必要がある。
【0007】
ポリ乳酸樹脂を主体として使用したラップフィルムとしては、例えば、特許文献1〜5に、ポリ乳酸樹脂と可塑剤を含むラップフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−321913号公報
【特許文献2】特開2006−27113号公報
【特許文献3】特開2006−16605号公報
【特許文献4】特開2006−69146号公報
【特許文献5】特開2006−131687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のポリ乳酸樹脂を主体として使用したラップフィルムでは、可塑剤分子がラップフィルムを構成しているポリ乳酸樹脂の高分子鎖間から抜け出し、その結果、可塑剤がブリードアウトし、それによりラップ手触り感の悪化や、フィルムの寸法変化等が引き起こされる場合があった。
【0010】
また、未延伸であるラップフィルムでは、カット性や、フィルムの引張強度等が十分ではない場合があり、加水分解抑制剤が未添加であるラップフィルムでは、ポリ乳酸樹脂の加水分解によってラップの引張強度や引張伸度等の機械物性が劣る場合があった。
【0011】
そこで本発明は、密着性、柔軟性、カット性に優れるのみならず、可塑剤のブリードアウトや寸法変化等の経時変化が極めて少なく、さらには、ポリ乳酸樹脂の加水分解による物性変化も極めて少ない、食品包装用等に好適に使用可能なラップフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)1又は2以上のフィルム層を備え、カットエネルギーが50mJ以下のラップフィルムであって、上記フィルム層の少なくとも1つが、ポリ乳酸系樹脂(A)、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有し、分子量が200〜3000であるジカルボン酸エステルからなる可塑剤(B)及びカルボジイミド化合物(C)を含有し、少なくとも1方向に延伸されたフィルム層(a)であることを特徴とするラップフィルム。
(2)上記フィルム層(a)は、上記ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、2〜35質量部の上記可塑剤(B)及び0.1〜5質量部の上記カルボジイミド化合物(C)を含有し、少なくとも1方向に3〜10倍延伸されたフィルム層であることを特徴とする、(1)に記載のラップフィルム。
(3)上記可塑剤(B)が、アジピン酸エステルであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のラップフィルム。
(4)上記フィルム層の少なくとも1つが、ワックスを含有するフィルム層であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のラップフィルム。
(5)上記フィルム層の少なくとも1つが、板状フィラーを含有するフィルム層であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のラップフィルム。
(6)上記フィルム層(a)が、ワックス及び/又は板状フィラーを含有するフィルム層であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のラップフィルム。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載のラップフィルムを巻芯に巻き取ってなる、ラップフィルムロール。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、密着性、柔軟性及びカット性に優れ、ブリードアウトや寸法変化等の経時変化及び加水分解による物性変化が極めて少なく、植物由来樹脂により製造可能で、且つ、食品包装用として好適な、ラップフィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】紙管巻き用巻き取り機による巻き取り状態を横から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本実施形態に係るラップフィルムは、1又は2以上のフィルム層を備え、カットエネルギーが50mJ以下のラップフィルムであって、上記フィルム層の少なくとも1つが、ポリ乳酸系樹脂(A)、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有し、分子量が200〜3000であるジカルボン酸エステルからなる可塑剤(B)及びカルボジイミド化合物(C)を含有し、少なくとも1方向に延伸されたフィルム層(a)であることを特徴とするラップフィルムである。
【0017】
ポリ乳酸系樹脂(A)は、モノマー単位として乳酸を80質量%以上含む樹脂を示し、例えば、ポリ乳酸、ポリ乳酸とポリ乳酸以外のポリエステルとのブロック共重合体、乳酸、ジオール及びジカルボン酸の共重合体、乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との共重合体、等が挙げられる。
【0018】
上記ポリ乳酸は、L−乳酸の重合体、D−乳酸の重合体、又は、L−乳酸及びD−乳酸の共重合体である。上記ポリ乳酸が、L−乳酸及びD−乳酸の共重合体である場合、L−乳酸由来の単位構造の含有量は、ポリ乳酸の総量に対して、90質量%以上又は10質量%以下であることが好ましい。L−乳酸由来の単位構造の割合が90質量%以上又は10質量%以下であることで、ポリ乳酸の結晶化度が向上し、ラップフィルムの耐熱性及び寸法安定性が向上する傾向にある。
【0019】
上記ポリ乳酸としては、例えば、Natureworks社の「Natureworks4042D(登録商標、以下同様)」、「Natureworks4032D(登録商標、以下同様)」等が挙げられる。
【0020】
ポリ乳酸系樹脂(A)がポリ乳酸である場合、本実施形態に係るラップフィルムは、ポリ乳酸以外のポリエステルをさらに含有しても良い。このとき、ラップフィルム中のポリ乳酸の含有量は、ポリ乳酸とポリ乳酸以外のポリエステルの総質量に対して、80質量%以上であることが好ましい。ポリ乳酸以外のポリエステルとしては、例えば、BASF社の「Ecoflex(登録商標、以下同様)」が挙げられる。
【0021】
上記ポリ乳酸以外のポリエステルとしては、ジオールとジカルボン酸との共重合体、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸の重合体、等が挙げられる。ここでジオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオール等の炭素数2〜20の飽和脂肪族ジオール等が挙げられる。これらのジオールは、単独でも複数組み合わせても使用することができる。また、ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等の炭素数3〜20の飽和脂肪族ジカルボン酸、並びに、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸は単独でも複数組み合わせても使用することができる。また、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸は単独でも複数組み合わせても使用することができる。
【0022】
上記ポリ乳酸とポリ乳酸以外のポリエステルとのブロック共重合体としては、例えば、DIC(株)社製の「プラメート(登録商標、以下同様)」が挙げられる。ポリ乳酸とブロック共重合体を生成する「ポリ乳酸以外のポリエステル」としては、上述した「ポリ乳酸以外のポリエステル」を用いることができる。
【0023】
上記乳酸、ジオール及びジカルボン酸の共重合体において、ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオール等の炭素数2〜20の飽和脂肪族ジオール等を使用することができる。これらのジオールは、単独でも複数組み合わせても使用することができる。また、ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等の炭素数3〜20の飽和脂肪族ジカルボン酸、並びに、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸は単独でも複数組み合わせても使用することができる。
【0024】
上記乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との共重合体において、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等を使用することができる。これらのヒドロキシカルボン酸は単独でも複数組み合わせても使用することができる。
【0025】
ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、8万〜40万であることが好ましく、10万〜30万であることがより好ましく、15万〜25万であることがさらに好ましい。ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量が8万以上であると、実用に耐えうる機械強度が充分に得られる傾向にあり、重量平均分子量が40万以下であると、適度な溶融粘度(3000〜30000poise、樹脂温度:195℃、share rate:1.00E−02の場合)による成形が可能となる。ここで重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と記載する場合がある。)により測定された値を示し、具体的には、実施例に記載する方法により測定することができる。
【0026】
可塑剤(B)は、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有するジカルボン酸エステルからなり、上記ジカルボン酸エステルの分子量は200〜3000である。上記ジカルボン酸エステルは、ジカルボン酸とアルコールとがエステル結合した構造を有する。上記ジカルボン酸エステル中、ベンゼン環は、ジカルボン酸由来の分子構造中に含まれていても良く、アルコール由来の分子構造中に含まれていても良い。なお、分子量は、相対分子質量であり、分子の相対質量を表した値である。すなわち、炭素12の原子1個の質量を正確に12とし、これを基準とした単位で分子の質量を表した数値である。
【0027】
可塑剤(B)が上記構成を有することにより、ブリードアウトが抑制されて寸法安定性に優れるラップフィルムを得ることができる。また、ラップフィルムの手触り感を良好に保つことが可能となる。このような効果が奏される理由としては、可塑剤(B)中のベンゼン環の極性が、ポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖と強く相互作用し、可塑剤(B)がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖の間から抜け出しにくくなるためと考えられる。
【0028】
上記ジカルボン酸エステルの分子量が200以上であることで、可塑剤分子がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖から抜け出しにくくなり、ブリードアウトが一層抑制される。また、3000以下であることで、可塑剤分子がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖間に入り込みやすく、可塑剤(B)とポリ乳酸系樹脂(A)を混練する際、可塑剤(B)とポリ乳酸系樹脂(A)の分離が起こりにくくなる。
【0029】
また、可塑剤(B)は可塑化効率が高く、分子構造中にベンゼン環を有しない可塑剤のみを使用した場合と比較して、可塑剤の総添加量を低減することができる。このため、ラップフィルムのカット性を好適に維持することができる。
【0030】
可塑剤(B)としては、飽和脂肪族ジカルボン酸と、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有するアルコールとのエステルであることが好ましい。このような可塑剤(B)を含むラップフィルムは、上述の効果が一層顕著に奏される傾向にある。これは、アルコール由来の分子構造中にベンゼン環が位置している場合、可塑剤分子中の他の極性基等が、ベンゼン環がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖と相互作用する際の立体障害になりにくいためと考えられる。
【0031】
上記飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等の炭素数3〜20の飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、上記分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有するアルコールとしては、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ヒドロシンナミルアルコール等が挙げられる。
【0032】
可塑剤(B)としては、ブリードアウトを抑制し、寸法安定性に優れるラップフィルムを得る観点から、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有し、分子量が200〜3000であるアジピン酸エステルがより好ましい。このようなアジピン酸エステルとしては、例えば、大八化学工業(株)社製「DAIFATTY−101(登録商標、以下同様)」が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係るラップフィルムは、可塑剤(B)以外に、さらに公知の可塑剤(以下、可塑剤(D)と記載する場合がある。)を含有しても良い。このとき、ラップフィルム中の可塑剤(B)の含有量は、可塑剤全量に対して、40質量%以上であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係るラップフィルムに添加される可塑剤(D)は、分子量が200〜3000であることが好ましい。分子量が200以上であると、可塑剤分子がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖から抜け出しにくく、ブリードアウトが一層抑制される。また、3000以下であると、可塑剤分子がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖間に入り込みやすく、可塑剤(D)とポリ乳酸系樹脂(A)を混練する際、可塑剤(D)とポリ乳酸系樹脂(A)の分離が起こりにくくなる。なお、分子量は、相対分子質量であり、分子の相対質量を表した値である。炭素12の原子1個の質量を正確に12とし、これを基準とした単位で分子の質量を表した数値である。
【0035】
本実施形態に係るラップフィルムに添加される可塑剤(D)のSP値は、6〜13であることが好ましい。SP値が6〜13の範囲内である可塑剤(D)は、ポリ乳酸のSP値(10.2)と近似した値となることに起因して、ポリ乳酸系樹脂(A)とよく混ざり合う傾向にある。なお、上記SP値は、下記式(I)により算出することができる(J.Appl.Chem.,3,71(1953)を参照。)。
SP値=dΣG/M (I)
[dは密度を示し、Gはモル牽引力定数を示し、Mは分子量を示す。]
【0036】
このような可塑剤(D)としては、例えば、理研ビタミン(株)社製「リケマールPL019」(分子量:約360、SP値:9.8)、日油(株)社製「ニューサイザー510R」(分子量:約1000、SP値:8.1)等が挙げられる。
【0037】
また、可塑剤(D)が分子構造中に酸素原子や窒素原子を含んだ極性基を有すると、可塑剤分子がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖と強く相互作用し、可塑剤分子がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖間から抜け出しにくくなり、その結果、可塑剤(D)のブリードアウトが抑制される傾向にある。
【0038】
可塑剤(D)としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸エステル、脂肪族アジピン酸エステル、エポキシ化植物油等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上を同時に使用しても良い。本実施形態に係るラップフィルムが可塑剤(B)以外の可塑剤(D)を含有する場合、ラップフィルム中の可塑剤(D)の含有量は、可塑剤全量に対して、60質量%以下であることが好ましい。
【0039】
可塑剤(B)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、5〜35質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。可塑剤(B)の含有量が5質量部以上であると、ポリ乳酸系樹脂(A)を充分に可塑化することができ、柔軟性に優れるラップフィルムを得ることができる。また、可塑剤(B)の含有量が35質量部以下であると、ラップフィルムから可塑剤がブリードアウトする可能性が低くなるとともに、ポリ乳酸系樹脂(A)と可塑剤(B)がフィルム押し出し時に良好に混ざり合う為、安定して製膜を行うことができる。
【0040】
本実施形態において、カルボジイミド化合物(C)は、ポリ乳酸系樹脂(A)の末端カルボキシル基と反応して封鎖し、カルボキシル基が酸触媒としてエステル結合の加水分解を促進することを抑制する。エステル結合の加水分解が進行すると、ポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖が低分子量化し、その結果、ラップフィルムが脆弱化し、引張強度や引張伸度等の物性が損なわれる場合がある。また、本実施形態に係るラップフィルムロールから、ラップフィルムを引き出す際に、破断が起こり、安定して引き出すことが困難になる場合がある。
【0041】
カルボジイミド化合物(C)としては、下記一般式(II)で表される基本構造を有するものが挙げられる。
【0042】
【化1】

【0043】
上記式中、nは1以上の整数を示し、Rは2価の有機基を示す。nとしては、1〜50の間が好ましく、Rとしては、脂肪族2価有機基、脂環族2価有機基、芳香族2価有機基等が挙げられる。
【0044】
カルボジイミド化合物(C)としては、具体的には、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、及び、これらの単量体が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、単独で使用しても、2種類以上を同時に使用しても良い。
【0045】
カルボジイミド化合物(C)としては、ポリカルボジイミド化合物が好ましい。カルボジイミド化合物(C)がポリカルボジイミド化合物であると、ポリカルボジイミド化合物の熱安定性に起因して、ラップフィルムの耐熱性が向上する。また、ポリカルボジイミド化合物は、1分子中に複数のカルボジイミド基を有しており、このカルボジイミド基がポリ乳酸系樹脂(A)のカルボン酸と反応して封鎖を行う。すなわち、カルボジイミド化合物(C)がポリカルボジイミド化合物であると、ポリカルボジイミド化合物を介してポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖が繋がるため、高分子鎖の鎖長延長が生じる。高分子鎖を延長することで、高分子鎖の低分子量化を遅延させることができ、ラップフィルムの引張強度や引張伸度を長期間にわたり、好適な範囲に維持することができる。
【0046】
ポリカルボジイミド化合物は、ポリ乳酸のカルボキシル基以外にも、活性な極性基と反応することができる。そのため、可塑剤が極性基を含有する場合、可塑剤の極性基と反応し、ポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖と可塑剤とを繋ぎ合わせ、可塑剤のブリードアウトを抑制することができる。ブリードアウトの抑制により、ラップフィルム中に可塑剤が保持されると、ラップフィルム中の柔軟性を長期間維持することができる。すなわち、ポリカルボジイミド化合物は、ラップフィルムを柔軟に維持するための添加剤としても働く。
【0047】
このようなポリカルボジイミド化合物としては、例えば、日清紡(株)社製「カルボジライトLA−1(登録商標、以下同様)」が挙げられる。
【0048】
カルボジイミド化合物(C)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.3〜3質量部であることがより好ましく、0.5〜2質量部であることがさらに好ましい。カルボジイミド化合物(C)の含有量が0.1質量部以上であると、フィルムを押し出しする際に、ポリ乳酸系樹脂(A)の末端カルボキシル基と効率良く反応し、加水分解速度の促進を抑制することができる。5質量部以下であると、適度な溶融粘度(3000〜30000poise、樹脂温度:195℃、share rate:1.00E−02の場合)によってフィルムを成形することができる。
【0049】
本実施形態において、引張弾性率は、ラップフィルムを扱った時の柔らかさや、ハリ・コシ感を示す指標である。ポリ乳酸はそれ自身では剛性が高く、硬く脆い樹脂であり、ラップフィルムとして機能しない。そこで、ポリ乳酸に可塑剤を添加することにより、ポリ乳酸を柔らかくする、つまりポリ乳酸の引張弾性率を低下させる必要がある。また、引張弾性率はラップフィルムに必要な密着性にも影響を与えるものである。引張弾性率が低下すると、ラップフィルムの被包装体への形状追従性が良くなり、ラップフィルムと被包装体の接触面積が増加し、その結果、密着性が増加する。
【0050】
ラップフィルムの引張弾性率は、特に限定するものではないが、適度な密着力及び使いやすさの観点から、300〜1500MPaであることが好ましく、400〜1000MPaであることがより好ましい。引張弾性率が300MPa以上であると、ラップフィルムロールからラップフィルムを引き出してカットした後、ラップフィルム同士がくっつき、くしゃくしゃになり、皺等が入り食品を包装するのが困難になることや、紙管巻きラップフィルムを収納箱付属の鋸刃で切断する際にラップフィルムが伸びて、鋸刃が食い込まず、カット性が損なわれるようなことが起きにくい。また、引張弾性率が1500MPa以下であると、ラップフィルムが硬くなりすぎて被包装体への形状追従性が悪くなり、密着性が損なわれるようなことが起きにくい。なお、ここでラップフィルムの引張弾性率は、MD方向における引張弾性率とTD方向の引張り弾性率との平均を示す。MD方向とはフィルム製膜時の流れ方向であり、TD方向とはMD方向と直交する方向である。
【0051】
本実施形態において、引張強度は、ラップフィルムを扱った時のハリ・コシ感や破断に至るまでの耐久度を示す指標である。ポリ乳酸のフィルムは未延伸では引張強度が十分ではなく、ラップフィルムとして機能する耐久性に乏しい。フィルムを構成する組成物を、フィルム状に押し出し、結晶化温度以下に冷却し、再度、加熱・延伸することにより、フィルム内の高分子鎖を配向結晶化させ、引張強度を上昇させることができる。
【0052】
ラップフィルムの引張強度は、特に限定するものではないが、50〜200MPaであることが好ましく、80〜150MPaであることがより好ましい。引張強度が50MPa以上であると、ラップフィルムロールからラップフィルムを引き出してカットした後、ラップフィルム同士がくっつき、くしゃくしゃになり、皺等が入り食品を包装するのが困難になることや、フィルムを引っ張った際、鋸刃と接触している箇所以外での破断が起きにくくなる。また、200MPa以下であると、ラップフィルムが硬くなりすぎて被包装体への形状追従性が悪くなり、密着性が損なわれるようなことが起きにくい。なお、ここでラップフィルムの引張強度は、MD方向における引張強度とTD方向における引張強度の平均を示す。MD方向とはフィルム製膜時の流れ方向であり、TD方向とはMD方向と直交する方向である。
【0053】
本実施形態において、密着仕事量は、ラップフィルムの被包装体への密着性を示す指標である。ラップフィルムには、食品を包み込んだ後に剥がれない為に、また容器・皿等を覆って貼り付き、容器・皿等に入っている食品を密閉する為に、密着性が重要である。ポリ乳酸は剛性が高く、またポリ乳酸の高分子鎖には極性基があまり多くない為、それ自身では密着性に乏しい。本実施形態にはおいては、ポリ乳酸を柔らかくし、被包装体への形状追従性を上げること、及び、ポリ乳酸の高分子鎖間に極性基を多くもった成分を添加することで密着性を上げることを目的として、可塑剤(B)、可塑剤(D)、その他極性基をもった添加剤をポリ乳酸に加えて密着仕事量を調節できる。なお、密着仕事量の測定方法は、詳細は後述するが、ラップフィルム面同士を接触させ、剥がす時に要したエネルギーとする。
【0054】
可塑剤(B)は、ポリ乳酸を柔軟化させる可塑剤として優れた効果を示すことに加え、その分子構造に極性基を多く持つことから、ポリ乳酸の高分子鎖間に保持されて、被包装体表面の極性基と相互作用し密着性を発現する作用をもつ。つまり、可塑剤(B)は、可塑性に加えて、密着性も付与する効果をもつ添加剤である
【0055】
ラップフィルムの密着仕事量は、特に限定するものではないが、0.5〜2.5mJであることが好ましく、0.7〜2.0mJであることがより好ましい。密着仕事量が0.5mJ以上であると、食品や容器・皿等を包んだ時にラップフィルムがしっかりくっつくため、ラップフィルムが食品から剥がれ食品が露出することや、容器・皿等から剥がれ落ちること等の問題が発生しにくくなる。また、密着仕事量が2.5mJ以下であれば、ラップフィルムロールからラップフィルムを引き出すことが困難になることや、ラップフィルムロールからラップフィルムを引き出しカットした後、ラップフィルム同士がくっつき、くしゃくしゃになり、皺等が入ること等の問題が発生しにくくなる。
【0056】
本実施形態において、引出力は、ラップフィルムを紙管等の巻芯に巻き取ってラップフィルムロールとした際、ラップフィルムロールからラップフィルムを引き出すのに必要な力を示す指標である。引出力はラップフィルム同士がくっつく力が大きく関わる為、密着仕事量が重要な因子となる。また、引出力を増加させる因子としてブロッキングが挙げられる。ブロッキングとは、フィルムを2枚重ねた際、2枚のフィルム間界面をフィルムの非晶部分の分子鎖が越えて移動し、フィルム間の界面が一部消失して、発生すると考えられる。つまり、引出力を制御するには、密着仕事量を調節すること、及びブロッキングを発生させないことが挙げられる。本実施形態において、可塑剤(B)は、ブリードアウトし難くフィルム内で可塑剤分子がフィルム表面方向へ移動する傾向少ない。そのため、フィルム表面付近の可塑剤濃度が上昇して分子鎖が動き易くなることが無い。すなわち、従来の可塑剤を用いた場合と比較して、ブロッキングの発生を抑制することができる。
【0057】
本実施形態において、密着仕事量は、可塑剤、添加剤の種類と添加量を選択することで適宜調整することが好ましい。また、ブロッキングの抑制方法としては、延伸後に熱処理を行うことで、配向結晶化を促進させ、非晶部分を減らし抑制する方法がある。
【0058】
ラップフィルムの引出力は、特に限定するものではないが、5〜100cNであることが好ましく、5〜60cNであることがより好ましい。なお、引出力の測定方法の詳細は後述するが、ラップフィルム端部を固定し、紙管巻きラップフィルムの紙管部を回転させながら引っ張り、ラップフィルムを引き出す際に要した力とする。引出力が5cN以上であると、引き出し時の力が軽過ぎてラップフィルムを引き出す為にかけた力で必要以上のラップフィルムが引き出さるという問題が起きにくくなる。また、100cN以下であると、ラップフィルムを引き出す為の力が大き過ぎて引き出し中にラップフィルムが破断することや、紙管巻きラップフィルムを収納箱等に納めて引き出しを行っている際、紙管巻きラップフィルムに力がかかり過ぎて収納箱から飛び出すこと等が、起きにくい。
【0059】
本実施形態において、カットエネルギーは、ラップフィルムのカット性、つまり切り易さを示す指標である。カット性が悪いと、ラップフィルムが収納箱付属の鋸刃に沿って切れず、意図しない箇所で切れ、切断端部を見失うことや、ラップフィルムをカットするのに過大な力が必要となり、ラップフィルムの切断作業が困難となる場合がある。
【0060】
カット性はラップフィルムを構成している高分子鎖の配向及び配向結晶が大きく関わっている。つまり、ラップフィルムのカット性には、ラップフィルムの組成及びラップフィルム作成時の延伸条件が重要であり、組成の結晶性、延伸時の倍率、温度、延伸後の応力緩和率、熱処理工程の温度、時間等により適宜調整することができる。また、ラップフィルムのカット性には、高分子鎖の配向及び配向結晶以外にも、ラップフィルムの引張弾性率、引張強度、引張伸度等の物性も関わっており、これらの物性バランスを調節することも必要である。
【0061】
ラップフィルムのカットエネルギーは、特に限定するものではないが、5〜50mJであることが好ましく、10〜30mJであることがより好ましい。カットエネルギーの測定方法の詳細は後述するが、ラップフィルムを紙管巻きラップフィルムとし、収納箱に納め、収納箱に付属している鋸刃に沿ってカットする際に必要であるエネルギーをカットエネルギーとする。カットエネルギーが5mJ以上であると、フィルムが鋸刃と接触している箇所以外で破断しにくくなり、鋸刃での切れ目を起点に破断が伝播するため、ラップフィルムが斜めに裂けにくくなる。また、50mJ以下であると、ラップフィルムが伸びて鋸刃が食い込まずカット性が不良となることが起こりにくくなり、フィルムカット面が鋸刃の形に沿わず引きちぎったような形になることも起こりにくくなる。
【0062】
本実施形態において、ブリードアウトは、ラップフィルム表面から可塑剤や、ポリ乳酸系樹脂の低分子量成分等が滲出することを意味する。ブリードアウトが起こると、フィルムの手触り感の悪化、さらに酷い場合は被包装物にブリード物が付着する場合がある。ブリードアウトを抑制する方法としては、ポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖と親和性が高い極性基を分子構造中に有する可塑剤を選択することや、ポリ乳酸の加水分解を抑制して低分子量成分の発生を抑えること等が挙げられる。
【0063】
カルボジイミド化合物(C)は、加水分解抑制により低分子量成分の発生を抑える効果をもつ。また、ポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖と極性基を有する可塑剤を繋ぎ合わせ、極性基を有する可塑剤のブリードアウトを抑える効果をもつ。
【0064】
ブリードアウト量は、1000mm×1000mmのガラス板にラップフィルムを隙間があかないように、皺なく、空気等が入らないように貼り付け、温度23℃、湿度50%の雰囲気下に24時間置き、その後ラップフィルムを剥がした際に、ガラス板に残ったブリード物の重量で評価する。本実施形態に係るラップフィルムのブリードアウト量は、特に限定するものではないが、100mg以下であることが好ましく、70mg以下であることがより好ましい。ブリードアウト量が100mg以下であると、フィルムの手触り感が良好に保たれ、被包装物にブリード物が付着しにくい。
【0065】
本実施形態において、フィルムの幅収縮は、紙管巻き状態のラップフィルムを温度40℃、湿度90%の雰囲気下に24時間置いた後に、雰囲気下へ置く前に比べてラップフィルムの幅が縮んだ割合を示す。幅収縮が起こると、ブリードアウトが発生しやすくなる、紙管巻きフィルムの端部が不揃いになり外観が不良となる等の問題がある。
【0066】
ラップフィルムの幅収縮は、特に限定するものではないが、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。幅収縮が3%以下であると、ブリードアウトが発生しにくく、またラップフィルム端部もほぼ一様に揃っており、寸法を安定して維持することができる。
【0067】
本実施形態において、ラップフィルムの厚みは、特に限定するものではないが、5〜15μmであることが好ましく、7〜13μmであることがより好ましい。ラップフィルム厚みは、ラップフィルムの柔軟性、密着性、カット性、手触り感等に大きく関わるものである。ラップフィルムの厚みが5μm以上であると、ラップフィルムの強度が弱すぎて破断することや、紙管巻きラップフィルムからラップフィルムを引き出しカットした後、ラップフィルム同士がくっつき、くしゃくしゃになり、皺等が入り食品を包装するのが困難となること等の問題が起こりにくくなる。また、15μm以下であると、ラップフィルムが厚くなったことに起因する柔軟性の低下、被包装物への形状追従性の悪化、密着性の低下、カット性の不良等の問題が起こりにくくなる。
【0068】
ラップフィルムは、1又は2以上のフィルム層を備え、カットエネルギーが50mJ以下のラップフィルムであって、上記フィルム層の少なくとも1つが、ポリ乳酸系樹脂(A)、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有し、分子量が200〜3000であるジカルボン酸エステルからなる可塑剤(B)及びカルボジイミド化合物(C)を含有し、少なくとも1方向に延伸されたフィルム層(a)であることを特徴とするラップフィルムである。
【0069】
ラップフィルムは、フィルム層(a)からなる単層フィルムであっても良く、1又は2以上のフィルム層(a)を含む多層フィルム、すなわち、対向する2の表層の間に1又は2以上の芯層を備える多層フィルムであっても良い。ラップフィルムが多層フィルムである場合、密着性の観点及び可塑剤のブリードアウトを抑制する観点から、多層フィルムの表層がフィルム層(a)であることが好ましい。可塑剤がブリードアウトする可能性が高い層を、フィルム層(a)でコートすることにより、ブリードアウトを効率的に抑制することができる。
【0070】
可塑剤(B)は分子構造中にベンゼン環を有する。このベンゼン環がポリ乳酸系樹脂(A)の高分子鎖と強く相互作用をするため、可塑剤(B)はブリードアウトしにくいと考えられる。よって、フィルム層(a)に含まれる可塑剤全量に対する可塑剤(B)の比率が高いほど、ブリードアウトが起き難い。例えば、可塑剤がブリードアウトする可能性が高い層を、可塑剤(B)の含有比率が高いフィルム層(a)でコートすることにより、ブリードアウトをより効率的に抑制することができる。
【0071】
また、上記多層フィルムは、フィルム層(a)を複数含んでも良く、多層フィルムを構成する層の全てがフィルム層(a)であっても良い。このとき、複数のフィルム層(a)は、それぞれ、ポリ乳酸系樹脂(A)、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有し、分子量が200〜3000であるジカルボン酸エステルからなる可塑剤(B)及びカルボジイミド化合物(C)の含有割合が異なっていても良い。
【0072】
上記多層フィルムは、層構成が対称でも非対称でも良い。
【0073】
上記多層フィルムは、多層フィルム全体の厚さに対して、フィルム層(a)の厚さが10%以上であることが好ましい。
【0074】
上記多層フィルムに含まれるフィルム層(a)以外のフィルム層としては、ポリ乳酸樹脂の単体からなる層、脂肪族ポリエステル樹脂に(B)や公知の添加剤を配合した組成物からなる層等、多様な形態が挙げられるが、フィルムの生分解性を維持する観点からは、脂肪族ポリエステル樹脂を主体とする樹脂組成物からなる層が好ましい。
【0075】
ラップフィルムは、ラップフィルムを構成するフィルム層の1又は2以上が、ワックス及び/又は板状フィラーを含有しても良い。フィルム層にワックスや板状フィラーが含有されると、ラップフィルムの水蒸気透過度が低下する。ワックスや板状フィラーが層内で微分散すると、水分子が層内を通過するのを妨げ、その結果、ラップフィルムの水蒸気透過度が下がると考えられる。
【0076】
ラップフィルムの水蒸気透過度は、特に限定するものではないが、温度40℃、湿度90%の雰囲気下において、500g/m/day以下であることが好ましく、300g/m/day以下であることがより好ましい。水蒸気透過度が500g/m/day以下であると、被包装体(例えば食品)の水分を長期間保持することができる。
【0077】
上記ワックスとしては、特に限定されるものではないが、一般に天然に産出するワックス、例えば、モンタンワックス、カルナウバワックス、綿蝋、蜜蝋、木蝋、羊毛蝋等や、鉱物系或いは合成系のワックス類が、単独又は2種類以上の組み合わせで使用される。また、ワックスが含まれるフィルム層には、機械的性質、水蒸気透過度、分解性等の性質を調節する為にワックスと共に他の成分を加えることができる。
【0078】
フィルム層を構成する組成物中の上記ワックスの含有量は、特に限定されるものではないが、フィルム層を構成する組成物全量基準で、2〜60質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。含有量が2質量%以上であると、水蒸気透過度を十分に下げることができる。60質量%以下であると、良好な製膜性及びフィルム層の透明性を維持しつつ、水蒸気透過度を下げることができる。
【0079】
上記板状フィラーとしては、特に限定されるものではないが、有機あるいは無機の充填材や顔料が使用され、例えば天然あるいは合成の鉱物、セラミックス、金属、樹脂あるいはこれらの複合体が使用される。無機の板状フィラーとしては、天然あるいは合成の雲母(マイカ)、タルク、シリカ等が挙げられる。
【0080】
フィルム層を構成する組成物中の上記板状フィラーの含有量は、特に限定されるものではないが、フィルム層を構成する組成物全量基準で、0.01〜50質量%であることが好ましい。0.01質量%以上であると、十分に水蒸気透過度を下げることができる。また、50質量%以下であると、製膜性及びラップフィルムの透明性を維持しつつ、水蒸気透過度を下げることができる。
【0081】
フィルム層を構成する組成物には、適宜相溶化剤を添加しても良い。相溶化剤としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、本発明で用いる上記ワックスの脂肪族カルボン酸変性物や、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。相溶化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、フィルム層を構成する組成物全量基準で、0.01〜50質量%であることが好ましい。含有量が0.01質量%以上であると、相溶化効果を十分に得ることができ、50質量%以下であると、ラップフィルムの製膜性を維持しつつ十分な相溶化効果を得ることができる。
【0082】
ラップフィルムは、密着力を付与する為に、フィルム層に密着付与剤を添加しても良い。ラップフィルムが多層の場合は全層に密着付与剤を添加することもできるが、表層のみに添加するだけで十分な効果が得られる。
【0083】
上記密着付与剤としては、特に限定されるものではないが、天然物系密着付与剤、石油由来樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などが挙げられ、その中でも好ましくは、天然系密着付与剤である天然ゴム系の樹脂である。
【0084】
上記密着付与剤の使用量は、添加するフィルム層全体に対して、1〜15質量%であることが好ましい。1質量%以上であると、ラップフィルムに必要な密着仕事量を付与することができ、15質量%以下であると、過度に密着仕事量が上がるのを抑え、ラップフィルムの引出性等を維持できる。
【0085】
[ラップフィルムの製造方法]
以下、本実施形態に係るラップフィルムの製造方法について、詳細に説明する。なお、本実施形態に係るラップフィルムの製造方法は、以下の記載に限定されるものではない。
【0086】
ラップフィルムを製膜する方法としては、柔軟性、密着性、カット性の好適な範囲を実現するべく、特定の組成と併せて特定の製造条件を選択することが好ましい。その特定条件は、主として、押出成形工程、延伸工程及び熱処理工程における、設定条件の範囲や操作法に関するものである。概略としては、例えば、Tダイ成形法により単層若しくは多層の溶融シートを冷却ロールによって冷却固化した後、逐次二軸延伸若しくは同時二軸延伸によりフィルムを得るフラット延伸法や、環状スリットダイより筒状の押出フィルムを押出し、これを例えば、空冷若しくは水冷にて冷却固化した後、バブルを形成して多軸延伸によりフィルムを得るチューブラー延伸法等の延伸法による製膜方法を選択することが好ましい。ここで、フィルムを得る為に延伸工程を含まない製膜法、例えばTダイより押出した溶融物をそのまま、キャスティングロールなどで引き取りながら薄い未延伸フィルムとする方法では、延伸配向にとぼしい為か、収納箱に付属の鋸刃によるカット性が悪い傾向があることから、本実施形態で求めるラップフィルムを得難い。
【0087】
ラップフィルムは、例えば、ポリ乳酸系樹脂(A)と可塑剤(B)とカルボジイミド化合物(C)とその他の成分を溶融混練して得られた樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と略称する場合がある。)を押し出しした後、一旦冷却固化させた後に再加熱し、少なくとも1方向に延伸する工程を経ることによって製造することができる。また、得られるラップフィルムのブリードアウトや寸法変化等の経時変化を調節する為に熱固定をすることが好ましい。
【0088】
本実施形態において、上記樹脂組成物を得る為の溶融混練法としては、同方向回転2軸押出機、異方向回転2軸押出機、単軸押出機等を使用することができるが、混練能力の点から同方向回転2軸押出機を使用することが好ましい。ここでは、樹脂組成物をよく混練して均一に混ぜ合わせることが重要であり、混練が均一でない場合はラップフィルムを得たときの密着仕事量や引出力等物性のバラツキが発生する場合がある。また二軸押出機は単軸押出機に比べてスクリューにおける原料の搬送性に優れるとともに、混練性にも優れるため樹脂組成物を均一に混ぜるのに適している。
【0089】
なお、ポリ乳酸系樹脂(A)と可塑剤(B)とカルボジイミド化合物(C)を事前に別の押出機等でペレット化して、これを押出機に供給する方法もあるが、カルボジイミド化合物(C)の鎖長延長効果が過度に起こり、スクリュートルクや樹脂粘度が不安定化して押出を行うことができない場合もある。従って、ポリ乳酸系樹脂(A)を押出機内で溶融させる際、可塑剤(B)、カルボジイミド化合物(C)、添加剤、ワックス、板状フィラー等必要な物を添加して、そのままダイなどにより成形し、次の工程に進むという連続的な方法が好ましい。
【0090】
ラップフィルムが多層構造である場合、樹脂組成物からなる少なくとも一層を表層として用いることが好ましい。このとき、他の層の溶融押出の為に、公知の範囲で、例えば各層に対応した押出機、及び各層の合流用部品等を用いてダイなどに供給することや、層状合流部をもつダイ内で共押出させることを行ってもよい。
【0091】
共押出とは、溶融混練して得られた上記樹脂組成物を、フィードブロック法若しくはマルチマニホールド法又はこれらを組み合わせた方法等により、溶融状態でフィルム状に重ね合わせて、冷却固化させる積層方法である。
【0092】
ラップフィルムの製造においては、押出機の先端のTダイや環状スリットダイなどにより、所定の形状に樹脂組成物を押し出した後、冷水に浸漬するか冷却したキャスティングロールなどに接触させるなどの方法で、結晶が成長しない温度、すなわち組成物の結晶化温度以下に急冷することが好ましい。例えば、ポリ乳酸樹脂(L体−D体のコポリマーでD体の含量が4質量%の場合)100質量部に、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を含むアジピン酸エステルを20質量部添加した系では、この急冷の為のキャスティングロール等の温度は45℃以下であることが好ましい。この温度は樹脂組成物のガラス転移温度等を参考に、上述のように結晶成長を防止するように決定される。ここで冷却の温度が高い場合には、結晶が成長しその為に後の延伸工程で、破れや裂けなどの原因となり延伸を困難にする傾向が見られる。
【0093】
本実施形態において、延伸とは、共押出等によって得られたフィルム層を、該フィルム層を構成する樹脂組成物中の化合物のガラス転移温度以上の温度に再加熱し、引き伸ばすことによって、分子を配向させる工程である。
【0094】
ラップフィルムがフラット状フィルムであれば、ロールや拘束具を用いて引き伸ばすフラット延伸法を採用することができ、チューブ状のフィルムであれば、冷却固化されたチューブをロールで挟んだ後、空気による圧力によって膨らますことでフィルムを引き伸ばすチューブラー延伸法を採用することができる。
【0095】
延伸を行うと、フィルムの高分子鎖が配向及び配向結晶化し、ラップフィルムのカット性を良くする反面、柔軟性を損なうことや、可塑剤がブリードアウトする可能性がある。従って、カット性を良くしつつ、柔軟性の維持及びブリードアウトの抑制を達成する為に、フィルム層に、ブリードアウトしづらく可塑化効果の高い可塑剤(B)及びブリードアウト抑制剤としての機能を有するカルボジイミド化合物(C)を添加し、延伸する必要がある。このような可塑剤(B)として、例えば、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を含むアジピン酸エステルが挙げられる。
【0096】
延伸時における加熱方法としてはロール加熱、熱風加熱、赤外線加熱等を好適に使用することができる。
【0097】
延伸は、フィルムの流れ方向(MD方向)及び/又はそれと直行する方向(TD方向)に延伸することが好ましい。延伸工程は、縦一軸延伸法、チューブラー延伸法、逐次二軸延伸法等の方法で行われる。
【0098】
延伸が一軸である場合は、MD方向又はTD方向に、3倍以上10倍以下の倍率で延伸することが好ましく、4倍以上7倍以下の倍率で延伸することがより好ましい。一軸方向に3倍以上の倍率で延伸することで、配向結晶化による耐熱性を十分に得ることができる。また、一軸方向への延伸倍率を10倍以下とすることで、過度な結晶化によるフィルムの破断等が起こりにくくなる。
【0099】
二軸に延伸される場合は、MD方向及びTD方向のそれぞれについて、2倍以上5倍以下の倍率で延伸することが好ましく、2.5倍以上4.5倍以下の倍率で延伸することがより好ましい。二軸の各方向に2倍以上の倍率で延伸することで、配向結晶化による耐熱性を十分に得ることができる。また、二軸の各方向への延伸倍率を5倍以下とすることで、過度な結晶化によるフィルムの破断等が起こりにくくなる。
【0100】
延伸倍率は、ロールの回転速度やテンター内におけるフィルム拘束具の幅によって調節することができ、チューブラー法延伸では圧力空気によるブローアップ比や、延伸工程の前後におけるフィルムの引き取り速度を変更することで調節できる。
【0101】
延伸温度は35〜90℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。35℃以上であると、延伸が容易に可能であり、樹脂組成物中の結晶性ポリ乳酸の配向結晶化が起こりやすい。また90℃以下であると、予熱または延伸時にフィルムのたるみや破れが発生しにくく、良好に延伸することが可能である。
【0102】
チューブラー延伸法を用いて延伸する場合、フィルムを冷却固化させる工程と、圧力空気によって延伸する工程とを分離する為に、冷却固化後にピンチロールで挟む必要がある。この時、フィルムの皺、破れ等の不具合を防止する為には、樹脂組成物のガラス転移温度をTgとした時に、冷却水の温度をTg−10℃〜Tg+10℃とすることが好ましく、Tg−5℃〜Tg+5℃とすることがより好ましい。冷却水の温度をTg−10℃以上とすることで、フィルムのガラス化による皺や破れの発生を抑制することができる。また、Tg+10℃以下とすることで、フィルムを固化させることなくチューブ状に成形することができる。
【0103】
冷却固化後に再加熱して圧力空気を吹き込み延伸を行う場合、表面に密着性のある樹脂組成物からなる層を有するという特徴がある為、ロールで挟んだフィルム同士が固着してしまい空気がフィルム間に入り込めず、安定した延伸ができなくなる場合がある。これを防ぐ為には、冷却固化したフィルムをロールで挟む際に、固着防止剤を、ロールで挟まれるフィルム内側に封入及び滞留させることによってフィルム上に塗布することが有効である。より具体的には、円筒形のダイから鉛直下向きにフィルムを押出し、水中にフィルムを導き冷却固化させ、ダイの中心部に設けられた空洞を通じて上方より固着防止剤を導入することができる。
【0104】
上記固着防止剤としては、特に限定されるものではないが、フィルム表面に良く濡れ広がるように、表面張力が15〜40mN/mであるものが好ましい。表面張力が15mN/m以上であると、冷却固化したチューブ状フィルムをロールで挟む際、ロールにより固着防止剤が搾り取られてフィルムの開口性が不良となるという問題が起こりにくい。また、40mN/m以下であれば、固着防止剤がフィルム表面に良く濡れ広がる。
【0105】
また、上記固着防止剤としては、濡れ性が粘度にも大きく関わる為、25℃における粘度が5〜20000mPa・sであるものが好ましい。粘度が5mPa・s以上であれば、冷却固化したチューブ状フィルムをロールで挟む際、ロールにより固着防止剤が搾り取られてフィルムの開口性が不良となるという問題が起こりにくい。また、16000mPa・s以下であれば固着防止剤が流動的に動きフィルム表面へ一様に塗布できる。
【0106】
上記固着防止剤としては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコール等の多価アルコール類、脂肪酸とのエステル、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス及びスクワラン等の炭化水素類、大豆油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油、アボガド油及びオリーブ油等の油脂類、そのエポキシ化物、アセチル化クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、ステアリン酸イソブチル、アジピン酸ジイソノニル、ポリ(プロピレングリコール・アジピン酸、ラウリン酸)エステル及びエポキシ化ステアリン酸(2−エチルヘキシル)等の脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸とのエステル、にそのエポキシ化物等が挙げられる。これらの固着防止剤は単独で用いても良く、複数組み合わせて用いても良い。
【0107】
本実施形態において上記固着防止剤は、加工助剤として用いられる。そのため固着防止剤のフィルム表面への塗布量は、フィルムが固着せず、かつ表面の密着性を阻害しない程度の量とすることが好ましい。フィルム表面への塗布量を制御する為には、水溶性化合物であれば、水溶液として濃度を希釈したものを用いる方法、非水溶性であれば、水をチューブ内に封入した後に固着防止剤をその上部に油膜又は油層として浮遊させる方法、あるいはエマルジョン化して用いる方法等を好ましく用いることができる。このような方法で塗布量を制御することで固着防止剤の塗布量を制御し、フィルム内部への浸み込み及び/又は熱処理による揮発等によって、固着防止剤をフィルム表層から取り除くことができる。
【0108】
上記固着防止剤の塗布量は、フィルムの全質量に対して100〜5000ppmとなるように塗布することが好ましく、300〜3000ppmとなるように塗布することがより好ましく、500〜1500ppmとなるように塗布することがさらに好ましい。100ppm以上の割合で塗布することでフィルムの固着が充分に防止され、5000ppm以下の割合で塗布することで、固着防止剤のフィルム内部への移行、熱風処理による揮発等により表面から取り除くことが容易となり密着性を阻害しにくくなる。
【0109】
本実施形態において、熱処理工程は、加熱ロール、熱風、赤外線等を用いてフィルムを所定の温度以上に加熱し、延伸工程で生成した延伸配向結晶化を、ある程度、促進助長することや、延伸によって生じた分子鎖の過度な緊張を取り除く工程である。この結晶化促進と過度な緊張を取り除くことにより、経時変化の抑制とカット性、耐ブロッキング性の付与を行っている
【0110】
フィルムを加熱する方法は、特に限定はされないが、表層を構成する樹脂組成物のガラス転移温度を超え、融点未満であることが好ましい。例えば、表層を構成する樹脂組成物が、ポリ乳酸(PLA)/芳香族アジピン酸(DAF−101)/エポキシ化大豆油(ESO)/カルボジイミド化合物(LA−1)=77/20/2/1(質量%)の場合、ガラス転移温度は17℃となる。樹脂組成物の詳細に関しては、実施例に示す。
【0111】
加熱条件としては、70〜140℃であることが好ましく、80〜130℃であることがより好ましい。加熱条件が70℃以上であると、分子鎖の過度な緊張を取り除くことができ、140℃以下であると、熱処理工程中のフィルムの溶断を防ぐことができる。上記加熱条件による熱固定の時間としては、1〜30秒であることが好ましく、2〜20秒であることがより好ましい。
【0112】
温度が低い、加熱時間が短い等の原因による加熱不足があると、十分な物性の固定が行われず、製造後も物性変化が起こりやすくなる。これは結晶化度の増大が熱処理工程後も極めて緩やかに進行するためであると考えられる。製造後の物性変化により、特に紙管巻きした後の巻締まりが誘発され、引出性が悪化し、さらには硬くブロッキングしてラップフィルムを引出すことが困難になる場合がある。引出性が悪化したもの、つまり引出力が非常に大きいものはブロッキング気味のフィルム同士の固着状態部分をなかば破壊しながら強制的に剥がして引出していることになり、ラップフィルムの表面が荒れ、その結果として、密着仕事量の値も低下する。
【0113】
温度が高い、加熱時間が長い等の原因による加熱過多があると、フィルムの破れや裂けが発生し、安定性に優れたラップフィルムの製造が困難となる。
【0114】
また、熱処理工程では、加熱時に縦および横方向にフィルムの収縮応力に見合った範囲で応力緩和操作を行うことについては特に制限はない。この応力緩和操作は実際には延伸直後のフィルム幅よりもやや狭い幅にフィルム幅を固定(例えばテンター装置の熱処理加熱ゾーンで、延伸後のフィルム幅よりも狭い幅にフィルム両端を固定する)するのが良い。緩和率の好ましい範囲は3〜15%である。3%以上であると、延伸時に生じた分子鎖の過度な緊張を緩和させることができ、ラップフィルムを収納箱付属の鋸刃でカットする際、鋸刃に沿った切断が可能となる。15%以下なら、フィルムの収縮応力の範囲を超えずにフィルムが収縮し、厚み斑や物性のバラツキ等が発生しにくい。
【0115】
本実施形態において、熱処理工程後のフィルムは、巻取機などで皺等の入らない様にロール状に巻き取られる。ここで、熱処理工程ではフィルムの結晶化を進行させているので、この結晶化が進行している状態のままで巻取ると、フィルム同士がブロッキングを起こし固着状態となってしまう場合がある。これを防ぐ為に、巻き取り前にフィルムの冷却を行うことが好ましい。この冷却は通常、室温付近の空気流に曝すことが行われるが、好ましくはガラス転移温度以下の冷風を吹付けて、十分にフィルムを冷却してから、連続的に巻取ることが好ましい。このようにすると、巻取ったロール状フィルムの固着状態を防ぐことが可能となる。
【0116】
得られたラップフィルムは所望の幅にスリットされ、紙管等の巻芯に所望の長さが巻きつけられラップフィルムロールとする。これらは収納箱に収納して使用できる。
【0117】
スリットした後のラップフィルムは、図1に示される紙管巻き用巻き取り機等で、皺等が入らないように紙管巻き状に巻き取ることができる。この時、フィルムにかかる張力としては、繰出点であるAとピンチローラで押圧されている点であるBまでの張力と、Bから巻取ローラで巻き取られる点であるCまでの張力の2つがある。それぞれにかかる張力としては、特に限定されるものではないが、AからBまで、BからCまで、ともに0.5〜5kgであることが好ましい。0.5kg以上であると、皺なく紙管にラップフィルムを巻き取ることができ、5kg以下であれば、巻き取り中にラップフィルムが破断しにくい。
【実施例】
【0118】
以下、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態を具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられている評価方法及び測定方法は以下の通りである。
【0119】
(1)密着仕事量
密着仕事量は以下の方法により測定した。まず、底面全面にろ紙を貼り付けた底面積が25cmの円筒状測定冶具を2つ準備する。底面にラップフィルムを皺が入らないように被せ、緊張状態で固定した。次に、ラップフィルム面同士が当接するように円筒状測定冶具を上下に合わせ、上側の冶具に500gの重りを載せて1分間、ラップフィルム当接面に荷重をかけた。その後、静かに重りを除去しラップフィルムを当接面に垂直方向に引張試験機で5mm/分の引張速度で引き剥がす際に必要となるエネルギーを密着仕事量とした。測定は温度23℃、湿度50%の恒温恒湿下で行い、5回の測定の平均値を測定値とした。
【0120】
(2)引出力
引出力は、以下の方法により測定した。始めに、幅300mmに調製したラップフィルムを、外径37mm、内径34mmの紙管に巻き取り、外径32mm/内径24mmのアクリル製円筒と直径12mmのスチール棒とをベアリングを介して連結させた回転可能な固定具にはめ込み、スチール棒を引張試験機に固定し、アクリル円筒部及び紙管巻きラップフィルムは自由に回転できる状態にした。ラップフィルムの端を引張試験機のロードセルに直結する幅330mmのプレートに固定し、1000mm/分の速度でラップフィルムを引き出した際に発生する荷重を引出力とした。測定は温度23℃、湿度50%の恒温恒湿下で行い、5回の測定の平均値を測定値とした。
【0121】
(3)引張弾性率
引張弾性率は、ASTM−D882に準拠した方法で測定した。ラップフィルム片の寸法はMD、TD方向に沿うように、それぞれ幅10mm、長さ100mmに切り出して試験片とし、5mm/分の引張速度にて測定を行った。得られた応力−歪のグラフに接線を引き、2%伸長時の応力値をサンプルフィルムの厚みに換算した値を算出し、5回の測定の平均値を測定値とした。測定には、商品名「AUTOGRAPH AG−IS」(島津製作所社製)を用いた。
【0122】
(4)引張強度
引張強度は、ASTM−D882に準拠した方法で測定した。ラップフィルム片の寸法はMD、TD方向に沿うように、それぞれ幅10mm、長さ100mmに切り出して試験片とし、300mm/分の引張速度にて測定を行い、5回の測定の平均値を測定値とした。測定には、商品名「AUTOGRAPH AG−IS」(島津製作所社製)を用いた。
【0123】
(5)カットエネルギー
カットエネルギーは以下の方法により測定した。始めに、幅300mmに調製したラップフィルムを、外径37mm、内径34mm、長さ307mmの紙管に巻き取り、高さ44mm、奥行き44mm、長さ317mmの収納箱に入れ、収納箱を引張試験機に固定した。この時、ラップフィルムの引き出し方向に対して収納箱の幅方向が25°傾斜するように、さらにラップフィルムと収納箱の付属鋸刃のなす角度が90°(収納箱の蓋体は閉じた状態で、)となるように設定した。引き出したラップフィルムの先端部は全幅を5mm幅の両面テープを介して引張試験機のロードセルに直結する幅330mmのプレートに固定し、500mm/分の速度で動作し、ラップフィルムの切断終了までに必要となったエネルギーをカットエネルギーとした。測定には、商品名「AUTOGRAPH AG−IS」(島津製作所社製)を用いた。測定は温度23℃、湿度50%の恒温恒湿下で行い、5回の測定の平均値を測定値とした。
【0124】
(6)ブリードアウト
ラップフィルムを、1000mm×1000mmのガラス板に隙間が空かないよう、皺なく貼り付け、温度23℃、湿度50%の雰囲気下に24時間置いた。その後、ラップフィルムをガラス板から剥がし、ガラス板に残ったブリード物の重量を評価した。
【0125】
(7)幅収縮率
幅300mm×長さ20mに調製したラップフィルムを紙管に巻き取り、その時のフラップィルム幅を測定した。その後、温度40℃、湿度90%の雰囲気下で24時間放置し、再度ラップフィルム幅を測定し、放置する前のラップフィルム幅に比べ縮んでいるフィルム幅の割合を計測した。
【0126】
(8)重量平均分子量
幅300mm×長さ20mに調製したラップフィルムを紙管に巻き取り、ラップフィルムを温度60℃、湿度80%の雰囲気下に15日間保管した後、ラップフィルムのポリ乳酸系樹脂成分の重量平均分子量を測定した。この重量平均分子量が8万以上なら、目標とする製品の性能を十分発現することができる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPC)で測定した値である。細かく切断したフィルム20mgをクロロホルム10mlに溶解させ、出来た溶液をPVDF製、0.45μmのフィルムでろ過し、サンプルを作成する。これをGPC(装置:alliance2695、検出器:RI waters2414、分析カラム:LF−804×1本、LF−G×1本)を用いて重量平均分子量を測定する。この時、測定条件として温度は40℃、流速は1ml/分、標準サンプルはポリスチレンとする。
【0127】
実施例及び比較例に用いた各成分は下記表1及び表2の通りである。なお、表1及び表2中、PLAはポリ乳酸(D体含量4質量%、Natureworks社製、商品名「Natureworks」)を示し、PD150は乳酸−セバシン酸−1,2プロパンジオール共重合体(DIC(株)社製、商品名「プラメート150」)を示し、NF500はマレイン酸変性ポリエチレン(三井化学(株)社製、商品名「アドマーNF500」)を示し、DAF101は芳香族−脂肪族−アジピン酸エステル(大八化学工業(株)社製、商品名「DAIFATTY−101」、分子量338)を示し、PX−884は脂肪族アジピン酸エステル(旭電化(株)社製、商品名「PX−884」、分子量650)を示し、LA−1はカルボジイミド化合物(日清紡(株)社製、商品名「カルボジライトLA−1」)を示し、SBXはカルボジイミド化合物(ラインケミー社製、商品名「スタバクゾールP」)を示し、ESOはエポキシ化大豆油(日油(株)社製、商品名「ニューサイザー510R」、分子量946)を示し、DACGはアセチル化モノグリセライド(理研ビタミン(株)社製、商品名「リケマールPL019」、分子量330)を示し、WAX155はパラフィンワックス(日本精鑞(株)社製、商品名「パラフィンワックス155」)を示し、MAEは合成膨潤性フィラー(コープケミカル(株)社製、商品名「ソマシフMAE」)を示す。また、表中、数値は組成物中の含有比率(質量%)を示す。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
[実施例1]
表1に示される組成物を、押出機混練部分の樹脂温度を約200℃にして、同方向2軸押出機によって十分に溶融混練した。液状可塑剤であるダイファティー101は押出機のシリンダーに設けられた液注入部より、定量送液ポンプを利用して注入した。混練された組成物は押出機先端に設けたTダイから樹脂組成物としてシート状に押出した。次いで、鏡面仕上げした平滑な表面をもち、Tダイのダイリップから3mm以内の位置にロール表面が存在するように設置された表面温度30℃のキャストロール上に、押出シートを導き該ロール表面に均一に接触させることでこれを急速に冷却した。次に、十分冷却された押出シートを、ロール式縦延伸機に導入した。延伸ゾーンのロール表面温度は50℃であり、延伸ゾーンに配置されたロールの上流側と下流側のロールの回転速度差により3倍に延伸した。縦延伸後の延伸フィルムをすぐに表面温度120℃のロールに導き、配向結晶化を促進させ、熱処理工程を行った。次に、熱処理を行ったラップフィルムを速やかに表面温度30℃の冷却ロールに導き、冷却を行った。十分冷却されたラップフィルムを所望の幅にスリットし、紙管に巻きつけて紙管巻きラップフィルムとし、これを収納箱に収納した。
こうして得られたラップフィルムについて、密着仕事量、引出力、引張弾性率、カットエネルギー、ブリードアウト量、幅収縮率、重量平均分子量を測定した。これらの結果を表3に示す。
【0131】
[実施例2]
表1に示される組成物を、押出機混練部分の樹脂温度を約200℃にして、同方向2軸押出機によって十分に溶融混練した。液状可塑剤であるダイファティー101、ESOは、押出機のシリンダーに設けられた液注入部より、定量送液ポンプを利用して注入した。混練された組成物を、中心に空洞のある円筒状のダイより円筒状フィルムとして鉛直下向き方向に押出した。得られたフィルムを25℃の冷却水中に導き急冷固化し、折りたたみ幅130mmにて2本のピンチロールで挟んだ。ここで、フィルム同士の固着を防ぐ為、円筒状のダイの中央部に設けられた空洞部分からピンチロールで挟まれた円筒状フィルム内に蒸留水を300cc導入し、さらに固着防止剤として、流動パラフィン(松村石油社製、商品名「スモイルp70」)を50cc導入した。表面に固着防止剤を塗布した折りたたみフィルムを、引き取り速度を調節できる差動ロールに導き、温水によって60℃に加熱する工程を経た後、エアーを注入してチューブを延伸した。加熱後の引き取り速度の調節により、フィルムの流れ方向、すなわちMD方向に3倍に延伸し、エアーの圧力によりチューブの直径、すなわちTD方向の延伸倍率が4倍になるように調製し、延伸フィルムを得た。次いで円筒状の延伸フィルムの両端をスリットすることで2枚の延伸フィルムとし、それぞれの端部を拘束具によって拘束して加熱炉に導き、100℃の熱風を5秒吹き付けることによって熱処理を行い、フィルムを得た。熱処理時の緩和は10%の緩和率となるように調整した。得られたラップフィルムを所望の幅にスリットし、紙管に巻きつけて紙管巻きラップフィルムとし、これを収納箱に収納した。こうして得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0132】
[実施例3]
表1に示される組成物を用いたこと及びESOを押出機のシリンダーに設けられた液注入部より注入したことを除き、縦延伸工程までは実施例1と同様に行った。縦延伸後のフィルムをすぐに表面温度30℃の冷却ロールに導き、ガラス転移温度以下に速やかに冷却した。その後、延伸フィルムをテンター式横延伸機に導入し、延伸温度55℃で横方向、つまりTD方向に4倍に延伸した後、続いて連続的に125℃の熱風を5秒吹き付けることによって熱処理を行い、フィルムを得た。熱処理時の緩和は5%の緩和率となるように調整した。得られたラップフィルムを所望の幅にスリットし、紙管に巻きつけて紙管巻きラップフィルムとし、これを収納箱に収納した。こうして得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0133】
[実施例4]
表1に示される表層及び芯層の組成物を、それぞれ同方向2軸押出機によって樹脂温度200℃で溶融混練した。液状可塑剤であるダイファティー101は押出機のシリンダーに設けられた液注入部より、定量送液ポンプを利用して注入した。混練された組成物をフィードブロックに導き積層し、Tダイより表層/芯層/表層の構成にてシート状に押出した。次いで、鏡面仕上げした平滑な表面をもち、Tダイのダイリップから3mm以内の位置にロール表面が存在するように設置された表面温度30℃のキャストロール上に、押出シートを導き該ロール表面に均一に接触させることでこれを急速に冷却した。
縦延伸工程以降は実施例3と同様に行った。得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0134】
[実施例5]
表1に示される表層及び芯層の組成物を用いた以外は、実施例4と同様にしてラップフィルムを得た。得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0135】
[実施例6]
表1に示される表層及び芯層の組成物を用いたこと、及びDACGを押出機のシリンダーに設けられた液注入部より注入したこと以外は、実施例4と同様にしてラップフィルムを得た。得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0136】
[実施例7〜9]
表1又は表2に示される表層及び芯層の組成物を用いた以外は、実施例4と同様にしてラップフィルムを得た。得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表3又は表4に示す。
【0137】
[比較例1]
表2に示される表層及び芯層の組成物を用いた以外は、実施例4と同様にしてラップフィルムを得た。得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表4に示す。
【0138】
[比較例2]
表2に示される表層及び芯層の組成物を用いた以外は、実施例4と同様にしてラップフィルムを得た。得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表4に示す。
【0139】
[比較例3]
表2に示される表層及び芯層の組成物を用いた以外は、実施例4と同様にしてラップフィルムを得た。得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表4に示す。
【0140】
[比較例4]
表2に示される、表層及び芯層の組成物をそれぞれ同方向2軸押出機によって樹脂温度200℃で溶融混練した。液状可塑剤であるダイファティー101は押出機のシリンダーに設けられた液注入部より、定量送液ポンプを利用して注入した。混練された組成物をフィードブロックに導き積層し、Tダイより表層/芯層/表層の構成にてフィルム状に押出した。次いで、鏡面仕上げした平滑な表面をもち、Tダイのダイリップから3mm以内の位置にロール表面が存在するように設置された表面温度30℃のキャストロール上に、押出フィルムを導き該ロール表面に均一に接触させることでこれを急速に冷却してフィルムを得た。得られたラップフィルムを所望の幅にスリットし、紙管に巻きつけて紙管巻きラップフィルムとし、これを収納箱に収納した。こうして得られたラップフィルムについて、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果を表4に示す。
【0141】
【表3】

【0142】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のラップフィルムは、食品、または食品の入った皿や容器を包み冷蔵庫、冷凍庫内等で食品を保存する用途、また電子レンジ等で加熱する用途など、物品を包装する包装用ラップフィルムとして有用である。
【符号の説明】
【0144】
1…ラップフィルム原反、2…ローラ、3…ピンチローラ、4…巻取ローラ、5…紙管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上のフィルム層を備え、カットエネルギーが50mJ以下のラップフィルムであって、
前記フィルム層の少なくとも1つが、
ポリ乳酸系樹脂(A)、分子構造中に少なくとも1つのベンゼン環を有し、分子量が200〜3000であるジカルボン酸エステルからなる可塑剤(B)及びカルボジイミド化合物(C)を含有し、少なくとも1方向に延伸されたフィルム層(a)であることを特徴とするラップフィルム。
【請求項2】
前記フィルム層(a)は、
前記ポリ乳酸系樹脂(A)100質量部に対して、2〜35質量部の前記可塑剤(B)及び0.1〜5質量部の前記カルボジイミド化合物(C)を含有し、
少なくとも1方向に3〜10倍延伸されたフィルム層であることを特徴とする、請求項1記載のラップフィルム。
【請求項3】
前記可塑剤(B)が、アジピン酸エステルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のラップフィルム。
【請求項4】
前記フィルム層の少なくとも1つが、ワックスを含有するフィルム層であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のラップフィルム。
【請求項5】
前記フィルム層の少なくとも1つが、板状フィラーを含有するフィルム層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラップフィルム。
【請求項6】
前記フィルム層(a)が、ワックス及び/又は板状フィラーを含有するフィルム層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラップフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のラップフィルムを巻芯に巻き取ってなる、ラップフィルムロール。

【図1】
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【公開番号】特開2010−163203(P2010−163203A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8923(P2009−8923)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】