ラパマイシン炭水化物誘導体
本発明は、変性ラパマイシンを提供し、これらは、リンカーを介して、特定の単糖類、オリゴ糖類、偽糖またはそれらの誘導体が結合されて、薬物動態学的および/または薬力学的なプロフィールを向上させたラパマイシン炭水化物誘導体が作り出される。例えば、このラパマイシン炭水化物誘導体を投与すると、薬物動態が変化し、そして毒性が低下する。それゆえ、本発明は、その種(ラパマイシン)の他の薬剤とは異なるプロフィールを備えた化合物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許出願第60/471,367号(これは、2003年5月16日に出願された)、第60/546,240号(これは、2004年2月20日に出願された)および第60/562,840号(これは、2004年4月16日に出願された)から優先権を主張している。
【0002】
(発明の分野)
本願は、ラパマイシンの炭水化物誘導体(強力な免疫抑制薬)に関し、構造的に確定した炭水化物部分は、連結部分を介して、ラパマイシン構造に結合されている。これらのラパマイシン炭水化物誘導体は、プロドラッグとして作用し得る。すなわち、それらは、実質的に免疫抑制活性それ自体はあり得ないが、インビボで、ラパマイシンに変換され得、これは、次いで、免疫抑制効果を示す。
【0003】
(参考文献)
以下の参考文献は、本明細書の関連部分にて、特許番号または出願番号により、または著者および年度により、関連付けられているか引用されている。
【0004】
C.Vezina,A.Kiudelski,S.N.Sehgal,「Rapamycin(AY−22,989),a new antifungal antibiotic.I.Taxonomy of the producing streptomycete and isolation of the active principle」,J.Antibiot.28,721(1975)。
【0005】
S.N.Sehgal H.Baker,C.Vezina,「Rapamycin(AY−22,989),a new antifungal antibiotic.II.Fermentation,isolation and characterization,」J.Antibiot.28,727(1975)。
【0006】
H.A.Baker,A.Sidorowicz,S.N.Sehgal,C.Vezina,「Rapamycin(AY−22,989),a new antifungal antibiotic.III.In vitro and in vivo evaluation」,J.Antibiot.31,539(1978)。
【0007】
R.Martel,J.Klicius,S.Galet,「Inhibition of the immune response by rapamycin, a new anifungal antibiotic」,Can.J.Physiol.Pharmacol.55,48(1977)。
【0008】
R.Y.Calneら,Lancet 1183(1978)。
【0009】
S.N.Sehgal,K.Molnar−Kimber,T.D.Ocain,B.M.Weichman,「Rapamycin:a novel immunosuppressive macrolide」,Medicinal Research Reviews 14,1(1994)。
【0010】
F.Streit,U.Christians,H.M.Schiebel,A.Meyer,K.F.Sewing,「Structural identification of three metabolites and a degradation product of the macrolide immunosuppressant sirolimus(rapamycin)by electrospria−MS/MS after incubation with human liver microsomes」,Drug Metabol.Disp.,24,1272(1996)。
【0011】
F.Streit,U.Christians,H.M.Schiebel,K.L.Napoli,L.Ernst,A.Linck,B.D.Kahan,K.F.Sewing,「Sensitive and specific quantification of sirolimus(rapamycin)and its metabolites in blood of kidney graft recipients by HPLC/electrospray−mass spectrometry」,Clin.Chem.42,1417(1996)。
【0012】
S.Miura,「Regulation of monosaccharide transporter proteins in the small intestine」,Journal of Gastroenterology 37,491(2002)。
【0013】
Chem Sources USA and Chem Sources International;t e ACD electronic database;およびChemical Abstracts)。
【0014】
Advanced Organic Chemistry,Jerry March,John Wiley & Sons。
【0015】
C.K.Wangら,Proceedings of the 41st ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics,San Francisco,545(1993)。
【0016】
M.J.M.Nickmilder,D.Latinne,R.K.Verbeeck,W.Janssens,D.Swoboda,G.J.Lhoest,「Isolation and identification of new rapamycin dihydrodiol metabolites from dexamethasone−induced rat liver microsomes」,Xenobiotica,27,869(1997)。
【0017】
米国特許第3,929,992号。
【0018】
同第3,993,749号。
【0019】
同第4,885,171号。
【0020】
同第4,401,653号。
【0021】
同第4,316,885号。
【0022】
同第4,650,803号。
【0023】
PCT出願番号WO 92/05179。
【0024】
米国特許第5,118,678号。
【0025】
同第5,260,300号。
【0026】
同第5,118,678号。
【0027】
同第5,118,678号。
【0028】
同第5,100,883号。
【0029】
同第5,151,413号。
【0030】
同第5,120,842号。
【0031】
同第5,120,725号。
【0032】
同第5,120,727号。
【0033】
同第5,258,389号。
【0034】
同第5,672,605号。
【0035】
同第5,583,139号。
【0036】
同第5,527,907号。
【0037】
同第5,457,111号。
【0038】
同第5,955,100号。
【0039】
同第6,146,658号。
【0040】
同第5,935,995号。
【0041】
同第5,665,728号。
【0042】
同第6,146,658号。
【背景技術】
【0043】
(発明の背景)
ラパマイシン(シロリムス(sirolimus)としてもまた公知)は、分子量913.6Daを有する31員のマクロライドラクトン(C5lH79NO13)である。溶液中で、ラパマイシンは、4:1の比で立体配座的なトランス異性体およびシス異性体を形成し、これは、ピペコリン酸アミド結合の周りの回転障害に起因する。これは、水、脂肪族炭化水素およびジエチルエーテルにやや溶けにくく、一方、これは、アルコール、ハロゲン化炭化水素およびジメチルスルホキシドに溶解性である。ラパマイシンは、溶液中で不安定であり;10時間未満の半減期で、血漿において、および37℃で低いpHおよび中性のpHの緩衝液において分解する。
【0044】
Streptomyces hygroscopicusによって産生されたラパマイシンは、多くの価値ある薬理学的性状を有することが示されている。上記化合物は、インビトロおよびインビボの両方において、特にCandida albicansに対して、抗真菌活性を有する大環状トリエン抗生物質である。C.Vezinaら,J.Antibiot.28,721(1975),S.N.Sehgalら,J.Antibiot.28,727(1975),H.A.Bakerら,J.Antibiot.31,539(1978),ならびに米国特許第3,929,992号;および同第3,993,749号を参照のこと。ラパマイシン単独(米国特許第4,885,171号)またはピシバニル(picibanil)(米国特許第4,401,653号)との組合わせはまた、抗腫瘍活性を有することが示されている。さらに、R.MartelらCan.J.Physiol.Pharmacol.55,48(1977)は、ラパマイシンが実験アレルギー性脳脊髄炎モデル(多発性硬化症についてのモデル);アジュバント関節炎モデル(リウマチ様関節炎についてのモデル)において有効であること;およびIgE様抗体の形成を効率的に阻害することを開示した。
【0045】
ラパマイシンの免疫抑制効果は、FASEB 3,3411(1989)に開示されている。ラパマイシン、サイクロスポリンA、FK−506(タクロリムスとしてもまた公知)、および他の大環状分子は、有効な免疫抑制剤であることが示されおり、従って、移植拒絶を防止するのに有用である。FASEB 3,3411(1989),FASEB 3,5256(1989),およびR.Y.Calneら,Lancet 1183(1978)を参照のこと。ラパマイシンは、免疫抑制薬のタクロリムス(FK506)と構造的相同性を共有し、そしてリンパ球において同一の細胞内結合タンパク質へ結合するが、ラパマイシンおよびタクロリムスは、免疫抑制作用の異なる機構を有することが示されている。ラパマイシンは、S6p70−キナーゼを阻害し、一方、タクロリムスは、カルシニュリンを阻害する。ラパマイシンは、いくつかの種で、単独または他の免疫抑制薬と組合わせて、種々の移植の移植片生着を延長することが見出されている。S.N.Sehgalら,Medicinal Research Reviews 14,1(1994)を参照のこと。
【0046】
ラパマイシンはまた、mTORインヒビターとしても公知である。これらのインヒビターは、カルシニュリンインヒビターおよびDNA合成インヒビターのような他の型のインヒビターよりも免疫応答において後期段階でT細胞の活性化を阻害する免疫抑制薬のクラスである。移植において、mTORインヒビターは、代表的に、カルシニュリンインヒビターと組合わせて使用される。
【0047】
残念なことに、mTORインヒビターの副作用(例えば、胃腸作用、高脂血症)は、現在、移植および自己免疫疾患の処置におけるそれらの広い使用を限定している。そして、ラパマイシンが腎毒性を誘導することは、示されていないが、ラパマイシンは、動物モデルにおいて、多くの有毒な副作用を誘導することが示されている。このような有毒作用としては、例えば、グルコースホメオスタシスの欠陥、胃腸管の潰瘍化、体重減少、下痢および血小板減少が挙げられる。
【0048】
多数のラパマイシン誘導体が、ラパマイシンが保持するいくつかの欠点(低いおよび/または可変性のバイオアベイラビリティーおよび溶解度、ならびに高い毒性が挙げられる)を軽減し、改善することを望んで合成されている。ラパマイシンのモノアシル化誘導体およびジアシル化誘導体(28位および43位でエステル化された)は、抗真菌剤として有用であること(米国特許第4,316,885号)および水溶性プロドラッグを作製するために使用されること(米国特許第4,650,803号)が示されている。他の誘導体としては、以下が挙げられる:カルボン酸エステル(PCT公報番号WO 92/05179)、カーバメート(米国特許第5,118,678号)、炭酸塩(米国特許第5,260,300号)、アミドエステル(米国特許第5,118,678号)、フッ化エステル(米国特許第5,100,883号)、アセタール(米国特許第5,151,413)、シリルエーテル(米国特許第5,120,842号)、二環式誘導体(米国特許第5,120,725号)、ラパマイシンダイマー(米国特許第5,120,727号)ならびにO−アリール誘導体、O−アルキル誘導体、O−アルケニル誘導体およびO−アルキニル誘導体(米国特許第5,258,389)。種々のラパマイシンプロドラッグもまた、開発されている(米国特許第5,672,605号、同第5,583,139号、同第5,527,907号、同第5,457,111号、同第5,955,100号、同第6,146,658号、および同第5,935,995).
ラパマイシンは、優れた免疫抑制、抗真菌性、抗腫瘍性、および他の重要な生物学的活性を有することが示されていることから、溶解度を増大し、そしてその毒性を減少させつつ薬物動態学的プロフィールを改善する改善された誘導体に対する必要性が、さらに存在する。本発明は、これらの必要性に取り組む。
【0049】
(発明の要旨)
本発明は、部分的に、パラマイシンの炭水化物誘導体(ここで、ラパマイシン分子は、現在のChemical Abstracts命名法によって定義されるような31位および/または42位で、単糖、オリゴ糖、または偽糖を付加することによって改変される)が、ラパマイシンと比較して同様もしくは増強した薬物動態学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールを有するという認識に基づく。さらに、ラパマイシン炭水化物誘導体の投与は、所望の薬理学的効果の保持を有しつつ毒性の低下をもたらし得る。さらに、ラパマイシン炭水化物誘導体は、ラパマイシンに、単純化した薬物処方を可能とするより水への溶解性を提供する。従って、本発明は、ラパマイシンのようなそのクラスにおける他の薬物とは異なる特徴を有する化合物を提供する。
【0050】
1局面では、本発明は、式(I)の構造を有するラパマイシン炭水化物誘導体に関する:
【0051】
【化2】
ここで、
n=0または1であり、R1およびR2は、独立に、水素または−X−Zであり、ここで、各Xは、リンカーであり、そして各Zは、炭水化物部分であり、該部分は、独立に、単糖類、オリゴ糖類および偽糖からなる群より選択され、ここで、Zは、Zのヒドロキシル酸素原子を介して、Xに結合されるが、但し、R1およびR2は、共に水素にはなることはない。1実施態様では、R1は、水素であり得、そしてR2は、−X−Zであり得、他の実施態様では、Xは、以下からなる群より選択できる:(i)−R3C(O)−;(ii)−C(O)R3−;(iii)−R3S(O)2−;および(iv)−S(O)2R3−;ここで、R3は、以下からなる群より選択される:(a)−(CH2)p−であって、ここで、pは、1〜18の整数である;(b)−(CH2)n−O−(CH2)m−であって、ここで、nおよびmは、それぞれ独立に、2〜6の整数である;および(c)結合。他の実施態様では、Xは、−C(O)−および−SO2−からなる群より選択できる。追加実施態様では、Xは、単一官能基であり得る。他の局面では、Zは、フルクトース、フシトールおよびアロースからなる群より選択できる。さらに他の実施態様では、Zは、単糖類誘導体であり、ここで、該単糖類の水酸基の少なくとも1個は、水素、アルコキシ、アルカノエートまたはハロゲン基で置き換えられる。
【0052】
本発明の範囲内の式Iの構造を有するラパマイシン炭水化物誘導体には、例えば、以下で示したもの(それらの薬学的に受容可能な塩を含めて)が挙げられる:
42−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(メチル−D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルカリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクタリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−スクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ゲントビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ツラノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−パラチノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ロイクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラフィノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロテトラオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオロイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオニルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノネイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン。
【0053】
他の局面では、本発明は、上述のラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物に関する。それに加えて、本発明の1実施態様は、それを必要とする被験体に、前記ラパマイシン炭水化物誘導体の治療有効量を投与することにより、ラパマイシンで治療できる疾患を治療する方法である。
【0054】
本発明のさらに他の局面では、患者における病気(例えば、移植拒絶、宿主対移植片疾患、移植片対宿主疾患、白血病、リンパ腫、過剰増殖血管障害、自己免疫疾患、炎症疾患、固形腫瘍および真菌感染)を治療する方法が提示され、該方法は、それを必要とする被験体に、上述の薬学的組成物の治療有効量を投与する工程を包含する。
【0055】
さらに、本発明は、医療用具を提供し、ここで、該医療用具は、ラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む。1実施態様では、該用具は、ラパマイシン炭水化物誘導体で被覆でされている。
【0056】
また、本発明は、ラパマイシンで治療できる疾患を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする被験体に、サイクロスポリンまたはサイクロスポリン誘導体、ステロイドまたは免疫調節性化合物からなる群より選択される化合物を含有する薬学的組成物と共に、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体の治療有効量を同時投与する工程を包含する。
【0057】
(発明の詳細な説明)
本発明は、請求したラパマイシン炭水化物誘導体が非誘導体化ラパマイシンと比較して改良された薬理学プロフィールを有するという予想外の発見に関する。
【0058】
本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」および、「the」は、特に明記しない限り、複数の指示物を含むに注目しなければならない。それゆえ、例えば、「ラパマイシン炭水化物誘導体」との言及は、複数のこのような誘導体を含む;「薬学的に受容可能なキャリア」との言及は、当業者に公知の1種またはそれ以上のキャリアおよびそれらの等価物を意味するなど。
【0059】
他に定義されていなければ、本明細書中で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術の当業者に一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明を実施または試験する際に、本明細書中で記述したものと類似の任意の方法および物質または等価物が使用できるものの、ここでは、好ましい方法、装置および物質を記述している。
【0060】
本明細書中で言及した全ての出版物および特許の内容は、例えば、これらの出版物で記述された方法論、試薬および用具(これらは、本発明発明と関連して、使用され得る)を記述し開示する目的のために、本明細書中で参考として援用されている。本明細書中のいずれも、従来の発明によって本発明者がこのような開示の日付を早めることができることの承認と解釈するものではない。
【0061】
本発明の実施において、特に明記しない限り、当該技術分野の範囲内の化学、生化学、分子生物学、細胞生物学、免疫学および薬理学の通常の方法が使用される。このような技術は、文献で詳細に説明されている。(例えば、Gennaro,A.R.,ed.(1990)Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing Co.;Colowick,S.et al.,eds.,Short Protocols in Molecular Biology,4th edition,John Wiley & Sons;Ream et al.,eds.(1998)Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course,Academic Pressを参照)。
【0062】
(定義)
ラパマイシン炭水化物誘導体、組成物または方法を述べるとき、以下の用語は、特に明記しない限り、以下の意味を有する。定義していない用語は、当該技術分野で一般に認められた意味を有する。
【0063】
「アルキル」との用語は、1個〜10個の炭素原子、例えば、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、これには、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基の両方が含まれる。この用語は、メチル、t−ブチル、n−ヘプチル、オクチルなどのような基により、例示される。
【0064】
「アルケン」との用語は、少なくとも1地点のアルケン不飽和(すなわち、−C=C−)を有し、さらに1個〜10個の炭素原子、例えば、1個〜6個の炭素原子を有する不飽和アルキル基を意味し、これには、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基の両方が含まれる。
【0065】
「アルキン」との用語は、少なくとも1地点のアルキン不飽和(すなわち、−C≡C−)を有し、さらに1個〜10個の炭素原子、例えば、1個〜6個の炭素原子を有する不飽和アルキル基を意味し、これには、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基の両方が含まれる。
【0066】
「芳香族」との用語は、単環(例えば、フェニル)または複数の縮合環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する6個〜14個の炭素原子の芳香族炭素環基を意味し、この縮合環は、芳香族であり得るかあり得ない(例えば、2−ベンゾキサゾリノン、2H−1,4−ベンゾキサジン−3(4H)−オン−7−イルなど)。
【0067】
「保護基」または「ブロッキング基」との用語は、ラパマイシンまたは糖部分の1個またはそれ以上の水酸基に結合された任意の基を意味し、これは、これらの水酸基で反応が起こるのを防止し、それらの保護基は、通常の化学工程または酵素工程により除去でき、これらの水酸基が再度確立される。使用される特定の除去可能な保護基は、利用される化合物および化学プロセスの性質により、決定される。除去可能なヒドロキシルブロッキング基には、通常の置換基(例えば、アリル、ベンジル、アセチル、クロロアセチル、チオベンジル、ベンジリデン、フェナシル、t−ブチルジメチルシリルおよびトリアルキルシリル(例えば、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメチルシリル、トリブチルシリルなど)、および任意の他の基(これは、ヒドロキシル官能性に化学的に導入でき、後に、その生成物の性質に適合する穏やかな条件で、化学方法または酵素方法のいずれかにより除去できる)が挙げられる。
【0068】
(ラパマイシン炭水化物誘導体)
上述のように、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体は、式(I)の構造を有する化合物である:
【0069】
【化3】
ここで、
n=0または1であり、R1およびR2は、独立に、水素または−X−Zであり、ここで、各Xは、リンカーであり、そして各Zは、炭水化物部分であり、該部分は、独立に、単糖類、オリゴ糖類および偽糖からなる群より選択されるが、但し、R1およびR2は、共に水素にはなることはない。
【0070】
明らかなように、これらのラパマイシン誘導体は、その42−位置、31−位置、または42−位置と31−位置の両方に結合された糖誘導体部分を有し得る。1実施態様では、この糖誘導体は、その42−位置だけで結合され、他の実施態様では、この糖誘導体は、その31−位置だけで結合される。
【0071】
天然に存在するラパマイシンでは、その41−メトキシおよび42−ヒドロキシ置換基は、互いに対してトランス立体配置で存在していることを述べておくことは重要である。本発明の42−O−(グリコシルカルボニル)ラパマイシン化合物は、これらの41−および42−置換基のトランス立体配置を保持するような様式で、調製される。結果的に、そのカーボネート連鎖を加水分解すると、このラパマイシンは、その天然に存在する立体配置にて、放出される。同様に、本発明の31−O−(グリコシルカルボニル)ラパマイシン化合物は、ラパマイシンの31−ヒドロキシル置換基の天然に存在する原子空間配置を保持するような様式で、調製される。
【0072】
(炭水化物部分)
式(I)において「Z」の識別名で表わされる炭水化物(または糖)部分は、反応性官能基(これは、ラパマイシンの31−および42−位置のいずれかまたは両方にある水酸基に直接カップリングできるか、または(ii)活性化ラパマイシン上の反応性官能基にカップリングできて、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体を生じる)を有する単糖類、オリゴ糖類、偽糖またはそれらの誘導体から形成される。この官能基は、必要に応じて、リンカーに結合され、これは、順に、糖に結合されるが、典型的には、必ずしもアノマー中心にはない。このような任意のリンカー基は、以下でさらに述べる。
【0073】
この糖誘導体を含む糖は、多くの様式で、互いとは異なり得る。例えば、それらは、異なる程度まで、ピラノース形状またはフラノース形状で存在できる。ある種の糖(例えば、フシトール)は、もっぱら開鎖形状で存在しているのに対して、多くの他のもの(例えば、グルコース、リボース、アロース)は、主に、環状で存在している。この糖の物理化学的性質(例えば、外形、組成、大きさ、柔軟性または剛直性)および相対的親水性は、全て、このラパマイシン炭水化物誘導体の化学的プロフィールに影響し得る。
【0074】
溶液中では、例えば、フルクトースは、殆ど、6員ピラノースおよび/またはその5員フラノース形状で存在できる(図1を参照)。また、これらの形状の各々は、αまたはβ立体配置で存在できる。それに加えて、フルクトースは、下開鎖形状で存在できる。従って、フルクトースは、図6で示すように、そのα−フルクトピラノース、β−フルクトピラノースまたはβ−フルクトフラノースまたは開鎖形状で存在できる。また、フルクトースは、これらの立体配置のいずれかで、薬剤に結合できる。6員ピラノース形状では、フルクトースは、例えば、単一の第一級アルコール(これは、このピラノース形状にて、その1位置で存在している)を介して、薬剤への結合を形成し易い。その5員フラノース形状では、フルクトースは、2個の第一級アルコールを有し、これらは、その1位置および6位置にある。フラノース形状では、結合は、おそらく、その1位置または6位置で、これらの第一級アルコールのいずれかを介する。
【0075】
身体が特定の糖を吸収し処理する様式は、変わる。例えば、ラクトースを処理するのが困難な人は多い。このようなラクトース不耐性により、ラパマイシン炭水化物誘導体へのラクトースの取り込みは、不適当となる。さらに、オリゴ糖類は、消化管から無傷では吸収されず、まず、それらの単糖類成分に消化されなければならない。しかしながら、単糖類は、腸細胞の刷子縁膜に位置している輸送系により、吸収される。S.Miura,Journal of Gastroenterology 37,491(2002)を参照。例えば、グルコースおよびガラクトースは、SGLT1輸送系により、吸収される。他の輸送体であるGLUT2は、主に、グルコース輸送体を促進し、GLUTSとして知られているさらに他の輸送体は、フルクトースを輸送する。胃腸管において、異なる選択性を備えた異なる単糖類輸送体タンパク質が存在すると、種々のラパマイシン炭水化物誘導体の吸収が変化し得る。すなわち、ある種の誘導体は、胃腸管からのラパマイシン炭水化物誘導体の通過を促進するために、利用可能な輸送体を容易に利用でき、それを血流へと送達し得、この場所で、その炭水化物部分は、開裂でき、それにより、ラパマイシンを放出する。このような促進されたプロセスにより、ラパマイシンへの局在化した暴露に関連した胃腸毒性が低下すると考えられている。
【0076】
上記のことを考慮して、このラパマイシン炭水化物誘導体に取り込まれる炭水化物部分(単糖類、オリゴ糖類または偽糖)の適当な選択は、その誘導体の薬理学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールに対して大きな影響を有し得ることが明らかである。従って、この炭水化物部分は、このラパマイシン炭水化物誘導体の薬理学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールを最適化するように、慎重に選択できる。
【0077】
適当な単糖類には、数種の開鎖または閉鎖単糖(LまたはD立体配置)のいずれかが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、典型的には、7個の炭素(ヘプトース単糖類)だけでなく、5個または6個の炭素(ペントース単糖類またはヘキソース単糖類)を有する。その環酸素原子を炭素、窒素またはイオウで置き換えた糖誘導体、その単糖上のヒドロキシル置換基を2個の隣接炭素原子間で二重結合を有するアミノ基または糖で置き換えたアミノ糖が挙げられる(例えば、グルコサミン、5−チオ−D−グルコース、ノジリマイシン(nojirimycin)、デオキシノジリマイシン(deoxynojirimycin)、1,5−アンヒドロ−D−ソルビトール、2,5−アンヒドロ−D−マンニトール、2−デオキシ−D−ガラクトース、2−デオキシ−D−グルコース、3−デオキシ−D−グルコース、アロース、アラビノース、アラビニトール、フシトール、フコース、ガラクチトール、グルシトール、イジトール、リキソース、マンニトール、レボ−ラムニトール、2−デオキシ−D−リボース、リボース、リビトール、リブロース、ラムノース、キシロース、キシルロース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、左旋糖、マンノース、プシコース、ソルボース、タガトース、タロース、ガラクタール、グルカール、フカール、ラムナール、アラビナール、キシラール、バリエナミン、バリダミン、バリオラミン、バリオール、バリオロン、バリエノール、バリエノン、グルクロン酸、ガラクツロン酸、N−アセチルノイラミン酸、グルコン酸D−ラクトン、ガラクトン酸γ−ラクトン、ガラクトン酸δ−ラクトン、マンノン酸γ−ラクトン、D−アルトロ−ヘプツロース、D−マンノ−ヘプツロース、D−グリセロ−D−マンノ−ヘプトース、D−グリセロ−D−グルコ−ヘプトース、D−アロ−ヘプツロース、D−アルトロ−3−ヘプツロース、D−グリセロ−D−マンノ−ヘプチトール、D−グリセロ−D−アルトロ−ヘプチトールなど)。単糖類上の水酸基は、必要に応じて、水素、アルコキシ(例えば、2−O−メチル−D−フルクトース)、アルカノエートまたはハロゲン基で置き換えられ得る。本明細書中で定義される単糖類の硫酸塩および/またはリン酸塩誘導体は、含まれる。
【0078】
適当なオリゴ糖類には、2個〜10個の単糖類の共に連結した炭水化物が挙げられるが、これらに限定されない。その成分単糖類単位は、例えば、ペントース単糖類、ヘキソース単糖類、または偽糖(偽アミノ糖類を含めて)であり得る。オリゴ糖類は、二環式の基(これらは、単糖類を、ベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環に縮合することにより、形成される)を含まない。
【0079】
本発明で使用され得る偽糖には、環式単糖類の環酸素原子をメチレン基で置き換えた種類の化合物のメンバーがある。偽糖はまた、「カルバ糖類」としても知られている。
【0080】
(リンカー)
上述のように、この炭水化物部分は、リンカー(これは、式Iでは、「X」として示される)を介して、このラパマイシンに共有結合される。その最も簡単な形状では、このリンカーは、この糖誘導体がラパマイシンに共有結合するときに形成されるが、それ自体は、ラパマイシンまたは糖分子のいずれの一部でもない。1実施態様では、このリンカーの性質は、この糖または糖誘導体をラパマイシンに共有結合するのに使用される化学反応により、決定される。例えば、もし、42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(活性化ラパマイシン)が糖と反応されるなら、その結果、ラパマイシン炭水化物誘導体が得られ、ここで、ラパマイシンの42−ヒドロキシル酸素は、カルボニル基に共有結合され、これは、順に、この糖上のヒドロキシル酸素に共有結合される。この例では、こりリンカーは、カルボニル基(C=O)である。本明細書中で定義されるリンカーの一例は、図3で描写されている。リンカーの例には、カルボニル(C=O)およびスルホニル(O=S=O)のような部分が挙げられる。このようなカルボニルまたはスルホニルリンカーは、単一官能基リンカーとして、認識されている。
【0081】
このリンカーは、この糖およびラパマイシンがリンカーに結合する官能基と一緒になって、「連鎖」を形成する。例えば、カルボニルリンカーがそのヒドロキシル酸素原子の1個を介して糖に結合し、次いで、ラパマイシンヒドロキシル酸素に結合するとき、得られる「連鎖」は、カーボネート(すなわち、−OC(O)O−)である。本明細書中で定義される連鎖の一例は、図4で描写されている。連鎖の例には、エステル、エーテル、カーボネート、カーバメート、サルフェートおよびウレタンが挙げられる。
【0082】
これらのリンカーおよびそれに付随した連鎖は、生体適合性で実質的に非免疫原性のラパマイシン炭水化物誘導体を提供するように、選択される。本発明は、糖の存在がラパマイシンの有効性を改善するという認識に基づいているのに対して、その薬理学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールもまた、このリンカーおよび/または連鎖の外形、組成、大きさ、柔軟性または剛直性により、高められ得る。従って、このリンカーまたは連鎖は、このラパマイシン炭水化物誘導体の薬理学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールを最適化するように選択できる。例えば、遊離のラパマイシンの放出を生じる誘導体の酸触媒加水分解または酵素加水分解の速度は、どの連鎖が作られるかに依存して、変わる。このリンカーまたは連鎖は、生物学的に「中性」であり、すなわち、それ自体は、このラパマイシン炭水化物誘導体に対する任意の追加生物活性に寄与し得ないか、この化合物の生物活性をさらに高めるように選択され得る。
【0083】
リンカーおよび連鎖を生じる化学反応は、通常の技術を使用する。これらの技術には、一般に、ラパマイシンまたは活性化ラパマイシンおよび糖または糖誘導体に位置しているコンプリメンタリー反応性官能基の使用を必要とする。コンプリメンタリー官能基および得られる連鎖の例は、表1で見られる。
【0084】
【表1】
もし望ましいなら、このリンカーは、1個より多い官能基を含有し得る。このラパマイシン炭水化物誘導体に異なる化学的プロフィールを与えるために、錯体リンカーが使用され得る。例えば、このリンカーを操作することにより、このラパマイシン炭水化物誘導体には、異なる疎水性/親水性のプロフィールが与えられ得る。同様に、荷電部分もまた導入され得る。このリンカーを変性する技術は、当業者に容易に理解される。例えば、ヘキサメチレンジアミンまたは関連したポリアミンから誘導されたリンカーの疎水性は、そのアルキレン部分をポリ(オキシアルキレン)基で置換することにより、実質的にさらに親水性に変性できる。
【0085】
例えば、グリコシル−Y[−C(=Y)−X−]p−W(R)n−X−C(=Y)−薬剤(ここで、Wは、共役二重結合を備えた芳香族基またはヘテロ芳香族基または脂肪族基であるか、またはグリコシルラジカルの脱離後に環化するアミノ酸誘導ラジカルである)は、米国特許第6,146,658号で開示された。これらの錯体リンカーは、そのグリコシル部分の酵素的な除去に引き続いた環化によって、自己脱離するように設計されている。
【0086】
多種多様なリンカーが本発明で使用するのに適当である。当業者は、カルボニル(C=O)またはスルホニル(O=S=O)リンカー、またはカルボニルまたはスルホニルを単一アルキル鎖またはポリエーテル鎖(例えば、少数のエチレンオキシド繰り返し単位)と組み合わせたものが上記のさらに複雑なリンカーとは異なる性質を有することを認識している。例えば、本発明のリンカーは、環化を受けて自己脱離しないと考えられている。さらに、このリンカー/薬剤化合物の酵素開裂または加水分解開裂に対する感受性は、そのスペーサまたはリンカー部分の性質に大きく依存している。それに加えて、複雑なリンカーを有する化合物は、1個の官能基だけのリンカーを有する化合物(例えば、本発明のもの)よりも、製造が困難かつ高価であり得る。
【0087】
多種多様なリンカーが市販されている(例えば、Chem Sources USA and Chem Sources International;the ACD electronic database;およびChemical Abstracts)。本発明で使用するのに適当なリンカーの多くは、この範疇に入る。他のものは、当該技術分野で公知の方法により、また、上記のように、容易に合成できる。リンカーの例には、脂肪族部分、芳香族部分、ステロイド部分、ペプチドなどが挙げられる。市販のリンカーの具体例には、ペプチドまたはポリアミド、炭化水素、芳香族、複素環、エーテル、脂質、カチオン基またはアニオン基、またはそれらの組み合わせがある。
【0088】
本発明のリンカーのプロフィールは、例えば、多結合化合物の(水、脂肪、脂質、生体液などでの)溶解度、疎水性、親水性、リンカーの柔軟性、抗原性、安定性などを変えるために、補助基を付加または挿入することにより、変性できる。例えば、このリンカーに1個またはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)基を導入すると、このラパマイシン炭水化物誘導体の親水性および水溶性が向上し、分子量および分子の大きさの両方が高まり、また、非PEG化リンカーの性質に依存して、インビボ保持時間が長くなり得る。さらに、PEGは、このリンカーの抗原性を低下させ得、また、その全体的な剛直性を高める可能性がある。
【0089】
このリンカーの溶解性/親水性を高める補助基、従って、得られる化合物は、本発明を実施する際に有用である。それゆえ、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体の水溶性および/または親水性を向上させるために、補助基(例えば、エチレンオキシドの小繰り返し単位、アルコール、ポリオール(例えば、グリセリン、グリセロールプロポキシレートなど)、炭水化物(例えば、グルタミン酸、アクリル酸などの小繰り返し単位)、アミン(例えば、テトラエチレンペンタミン)など)を使用することは、本発明の範囲内である。例えば、水溶性/親水性を高めるために使用される補助基は、少数の繰り返しエチレンオキシド(−CH2CH2O−)単位を含有するポリエーテルであり得る。
【0090】
これらのラパマイシン炭水化物誘導体の親油性および/または疎水性を高めるために、このリンカーの構造内に親油性補助基を取り込むこともまた、本発明の範囲内である。本発明のリンカーと共に有用な親油性基には、低級アルキル、芳香族基、および多環式芳香族基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの芳香族基は、非置換であるか他の基で置換されるか、いずれかであり得るが、少なくとも、このリンカーへの共有結合を可能にする基で置換される。本明細書中で使用する「芳香族基」との用語は、芳香族炭化水素および複素環炭化水素の両方を含む。本発明のリンカーと共に有用な他の親油性基には、脂肪酸誘導体(これらは、水性媒体中にて、ミセルを形成し得るか形成し得ない)および他の特定の親油性基(これらは、この炭水化物ラパマイシン誘導体と生体膜との間の相互作用を調節する)が挙げられる。
【0091】
このリンカーの柔軟性は、嵩張ったおよび/または剛性である補助基を取り込むことにより、操作できる。嵩張った基または剛性基の存在により、このリンカー中の結合、またはリンカーと補助基との間の結合、またはリンカーと官能基との間の結合の周りでの自由な回転が妨げられ得る。剛性基には、例えば、その立体配座の自由度が環および/または結合により束縛される基(例えば、アリール基、ヘテロアリール基および複素環基)が挙げられる。剛性を与え得る他の基には、ポリペプチド基(例えば、オリゴまたはポリプロリン鎖)が挙げられる。
【0092】
剛性はまた、静電気的に与えることができる。それゆえ、もし、この補助基が正または負のいずれかで荷電されているなら、同様に荷電された補助基により、このリンカーは、同じ電荷の各々の間で最大距離を与える立体配置にされる。同様に荷電された基を互いに近づけるエネルギーコストは、これらの基の間の距離の二乗に逆比例しているが、このリンカーを、同様に荷電された補助基の間で分離を維持する立体配置で保持する傾向にある。さらに、反対の電荷を持つ補助基は、反対に荷電された対の片方に引きつけられる傾向にあり、分子間イオン結合および分子内イオン結合の両方に入り得る可能性がある。この非共有結合機構は、このリンカーを、反対に荷電された基の間で結合できる立体配座で保持する傾向にある。潜在電荷(これは、このリンカーに付加に続いて、脱保護、pH変化、酸化、還元または当業者に公知の他の機構により、暴露される)を持つ荷電基あるいは保護基である補助基は、本発明の範囲内である。
【0093】
嵩張った基には、例えば、大きな原子、イオン(例えば、ヨウ素、イオウ、金属イオンなど)、または大きな原子を含む基、多環式基(芳香族基、非芳香族基を含めて)、および1個またはそれ以上の炭素−炭素結合を取り込んだ構造(すなわち、アルケンおよびアルキン)を挙げるとこができる。嵩張った基には、また、分枝種または直鎖種であるオリゴマーおよび重合体を挙げることができる。分枝種は、直鎖種よりも、単位分子量の増加あたりで、構造の剛性を高めると予想されている。
【0094】
上記のことを考慮して、適当な配向、エントロピーおよび物理化学的プロフィールを与えるリンカーの適当な選択は、当該技術の範囲内であることが明らかである。
【0095】
リンカーは、反応性官能基を使用することにより、ラパマイシンまたは糖に結合できる。これらの反応性官能基は、ラパマイシンまたは糖にてカップリングに利用できるかこの目的のためにラパマイシンまたは糖に導入できる官能基に対して選択される。例えば、適当な活性化剤の存在下にて、このリンカーと糖の第一級または第二級アミンとを反応させると、この糖をリンカーに共有結合するアミド部分が形成される。このリンカーのアミン基と糖のハロゲン化スルホニルとの間の反応により、この糖をリンカーに共有結合するスルホンアミド部分が形成される。このリンカーのハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールと糖のアルコールとの間の反応により、この糖をリンカーに共有結合するエーテル部分が形成される。
【0096】
官能基は、欠けている場合、適当な化学反応により作り出すことができ、これらは、標準的な有機化学教本(例えば、Advanced Organic Chemistry,Jerry March,John Wiley &Sons(5th Ed.,2000))で記述されている。リンカーとの用語は、この糖またはラパマイシンの一部であるとは考えられない全てのものを含む。リンカーは、そのリンカーの末端に反応性官能基を有する直鎖化合物から誘導できる。
【0097】
適当な二価リンカーには、例として、ジカルボン酸、ハロゲン化ジスルホニル、ジアルデヒド、ジケトン、ジハロゲン化物、ジイソシアネート、ジアミン、ジオール、以下の混合物が挙げられる:カルボン酸、ハロゲン化スルホニル、アルデヒド、ケトン、ハロゲン化物、イソシアネート、アミンおよびジオール。各場合において、このカルボン酸、ハロゲン化スルホニル、アルデヒド、ケトン、ハロゲン化物、イソシアネート、アミンおよびジオール官能基は、この糖およびラパマイシン上の相補官能性と反応されて、共有結合を形成する。このような相補官能性は、上述の表1で示されているように、当該技術分野で周知である。
【0098】
本発明の実施態様では、リンカー(X)は、以下からなる群より選択される:(i)−R3C(O);(ii)−C(O)R3、(iii)−R3S(O)2;または(iv)−S(O)2R3であって、ここで、R3は、以下からなる群より選択される:(i)−(CH2)p−(ここで、pは、1〜18の整数である、(ii)−(CH2)n−O−(CH2)m−(ここで、nおよびmは、それぞれ独立に、2〜6の整数である)または(iii)結合。リンカー(X)は、各出現例(すなわち、31位置および42位置)で同一または異なり得ること理解できるはずである。本発明の追加実施態様では、リンカー(X)は、カルボニル(C=O)、スルホニル(O=S=O)または単一官能基である。カルボニルリンカーは、31位置、42位置、またはそれらの両方にあり得る。他の実施態様では、R1は、−C(O)−Zであり、そしてR2は、Hであるか、またはR2は、−C(O)−Zであり、そしてR1は、Hである。
【0099】
従って、本発明の範囲内の式Iの構造を有するラパマイシン炭水化物誘導体には、例えば、以下で示したもの(それらの薬学的に受容可能な塩を含めて)が挙げられる:
42−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(メチル−D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルカリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクタリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−スクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ゲントビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ツラノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−パラチノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ロイクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラフィノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロテトラオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオロイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオニルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノネイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン。
【0100】
それに加えて、本発明は、式Iの構造を有するラパマイシン誘導体に関し、ここで、n=1であり、R1は、Hであり、そしてR2は、X−Zであり、ここで、Xは、リンカーであり、そしてZは、炭水化物部分であり、該炭化水素部分は、単糖、オリゴ糖および偽糖からなる群より選択される。
【0101】
本発明はまた、上述のラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物に関する。
【0102】
(ラパマイシン炭水化物誘導体の調製)
本発明のラパマイシン炭水化物誘導体を調製する一般手順は、単糖、オリゴ糖、偽糖または糖誘導体を活性化ラパマイシンの31−および/または42−位置にカップリングする工程を包含する。
【0103】
例えば、図2で描写するように、ラパマイシン(II)は、クロロギ酸p−ニトロフェニルと反応でき、活性化ラパマイシン(III)が得られる。慎重に制御した条件下にて、この反応は、その42−位置で優先的に起こる。その反応条件を変えることにより、その31−水酸基および42−水酸基の両方は、同様に活性化できる。この31−水酸基の選択的な活性化は、まず、その42−ヒドロキシル部分を、例えば、アルキルシリル基(例えば、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリルまたは第三級ブチルジメチルシリル)で保護することにより、次いで、クロロギ酸p−ニトロフェニルまたは他のクロロホルメートと反応させることにより、達成できる。次いで、この保護基を除去すると、その31−ヒドロキシル位置で活性化されたラパマイシンが得られる。それゆえ、その31−位置、42−位置またはそれらの両方で選択的に活性化されるラパマイシン誘導体を調製することが可能となる。
【0104】
その後、第二工程では、糖部分または糖誘導体は、活性化ラパマイシン(III)と反応されて、ラパマイシン炭水化物誘導体が得られる。この糖部分または糖誘導体上の反応性官能基が水酸基であるとき、活性化ラパマイシンとの反応は、第一級水酸基で起こり得、ラパマイシンへのカーボネート連鎖が形成される。得られたリンカーは、カルボニル基である。この糖または糖誘導体上の反応性官能基がアミノ基(これは、その糖に対して任意の位置に置くことができる)であるとき、ラパマイシンとのカーバネート連鎖が得られ、得られたリンカーは、カルボニル基である。アミノ置換糖誘導体(例えば、糖−X−NH2または糖−NH2)は、通常の方法により、前駆体から調製できる。例えば、糖−X−N3の還元または糖−X−NPhth(ここで、Phthは、フタロイルである)の脱フタロイル化により、このアミノ置換誘導体が得られる。これらの前駆体は、適当に活性したグリコシルドナーでリンカー部分をグリコシル化することにより、合成できる。
【0105】
それゆえ、本明細書中で記述された一般的なアプローチを使用して、広範囲のラパマイシン炭水化物誘導体(ここで、その31−および/または42−水酸基は、広範囲の糖または糖誘導体で変性される)を調製することが可能である。
【0106】
ラパマイシンまたはラパマイシン代謝物の水酸基(31−および42−位置以外に位置しているものを含めて)はまた、本明細書中で記述したようにしてグリコシル化でき、得られたラパマイシン炭水化物誘導体はまた、それらの非グリコシル化対応物と比較して、高い水溶性および/または向上した薬物動態学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールを示す。
【0107】
ラパマイシン代謝物は、当該技術分野で公知である。例えば、Streitらは、ヒトの肝臓ミクロソームに由来の数種のラパマイシン代謝物を構造的に同定した。F.Streit et al.,Drug Metabol.Disp.,24,1272(1996)を参照。これらには、41−デメチルラパマイシン、7−デメチルラパマイシン、11−ヒドロキシラパマイシン、およびラパマイシンの24−ヒドロキシエステル加水分解生成物が挙げられる。また、ラパマイシンの代謝物は、エステル加水分解を受け得ることも明らかとなっている。Streitはまた、ジ、トリおよびテトラヒドロキシル化ラパマイシン代謝物を部分的に同定した。Wangらは、ラパマイシン処理ラットの胆汁にて、16ヒドロキシル化および/またはデメチル化代謝物を発見した。C.K.Wang et al.,Proceedings of the 41St ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics,San Francisco,545(1993)を参照。Nickmilderには、ラットの肝臓ミクロソームにて、3,4および5,6ジヒドロジオールラパマイシン代謝物を同定した。M.J.M.Nickmilder et al.,Xenobiotica,27,869(1997)を参照。これらの代謝物は、測定された全ラパマイシン誘導体の56%を占めた。最後に、Leungらは、健康な男性ボランティアにて、[14C]−ラパマイシンの傾向を調べた。彼らは、ラパマイシンが血液中の全放射能の約35%に相当すること、41−デメチル、7−デメチルおよび数種のヒドロキシ、ヒドロキシメチルおよびジデメチルラパマイシン代謝物が、個々に、全放射能の1%と12%の間に相当することを発見した。ラパマイシン代謝物は、多数の種々の原料(血液、尿または糞便の試料が挙げられるが、これらに限定されない)から、肝臓ミクロソームから、または微生物培養液から単離できる。
【0108】
従って、31−および42−に加えて、特に重要な水酸基には、ラパマイシンの27−、41−、3−、4−、5−、6−、7−、11−および24−位置にあるもの、およびラパマイシン代謝物が挙げられる。
【0109】
(薬学的組成物および有用性)
本発明の化合物は、それを必要とする動物(例えば、温血動物(特に、ヒト))にそのまままたは薬学的キャリアと共に投与され得る。これらの薬学的組成物はまた、他の薬剤(特に、異なる作用機構を有することが知られている薬剤)を含有し得る。それゆえ、これらの薬学的組成物は、本発明の化合物に加えて、他の種類の少なくとも1種の薬剤(例えば、カルシニュリン阻害剤、ステロイドまたは他の免疫調節化合物(これらは、細胞内または細胞間の情報伝達プロセスまたは他の細胞プロセスを妨害し得る))を含有し得る。カルシニュリン阻害剤の例には、サイクロスポリンA(これは、Sandimmune(登録商標)およびNeoral(登録商標)として、Novartisから入手できる)およびFK506(これはまた、タクロリムスとして、またはFujisawaから入手できるPrograf(登録商標として、知られている)が挙げられる。サイクロスポリン誘導体の例には、W099/18120で開示されたものがある。ステロイドの例としては、プレジソン(predisone)、プレドニソロン(prednisolone)またはメチルプレドニソロンが挙げられる。これらの免疫調節性化合物の例としては、以下が挙げられる:アゾチオプリン(azothioprine)、ミコフェノール酸(ミコフェノレートモフィチル(mycophenolate mofitil)またはRocheから市販されているCellcept(登録商標))、Aventisから市販されているレフルノミド(leflunomide)、ブレキナー(Brequinar)、ミゾリビン、抗体(α−LFA−1、およびα−ICAM−1を含む)、チモグロブリン(thimoglobuline)、IL2Rアンタゴニスト(バシリキシマブ(basiliximab)(Stimulect(登録商標))、およびダクリズマブ(daclizumab)(Zenapax(登録商標))を含む)、アレムツズマブ(alemtuzumab)(Campath 1H(登録商標)、CD52を認識するヒト化モノクローナル抗体)、Orthoclone OKT3(登録商標)またはムロモナブ(muromonab)(CD3)、Atgam(R)リンパ球免疫グロブリン、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、および他の化合物。個々の薬物およびラパマイシン炭水化物誘導体は、薬学的組成物の別の成分として別個に処方され得、そして一緒にかまたは別個に投与され得る。
【0110】
この薬学的に有効なキャリアは、固形または液状であり得る。固形キャリアは、香味料、潤滑剤、可溶化剤、懸濁液、充填剤、グライダント、圧縮助剤、結合剤または錠剤崩壊剤としても作用し得る1種またはそれ以上の物質を挙げることができる;それはまた、カプセル化材料でもあり得る。粉末中では、このキャリアは、細かく分割された固体であり、これは、細かく分割された活性成分と混合されている。錠剤中では、その活性成分は、適当な割合で必要な圧縮プロフィールを有し所望の形状および大きさで緻密化された必要な圧縮プロフィールを有するキャリアと混合される。これらの粉末および錠剤は、99%までの活性成分を含有し得る。適当な固形キャリアには、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低融解性ワックスおよびイオン交換樹脂が挙げられる。
【0111】
液状キャリアは、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル剤および加圧組成物を調製する際に、使用される。この活性成分は、薬学的に受容可能な液状キャリア(例えば、水、有機溶媒、両者の混合物または薬学的に受容可能なオイルまたは脂肪)に溶解または懸濁できる。この液状単体は、他の薬学的に受容可能な添加剤(例えば、可溶化剤、乳化剤、界面活性剤、緩衝液、防腐剤、甘味料、香味料、懸濁剤、増粘剤、着色料、粘度調整剤、安定化剤または浸透圧調整剤)を含有できる。経口投与および非経口投与に適当な液状キャリアの例には、水(これは、部分的に、上記添加剤(例えば、セルロース誘導体(おそらく、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液))、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール(例えば、グリコール)を含めて)およびそれらの誘導体およびオイル(例えば、分別したやし油および落花生油))が挙げられる。非経口投与には、このキャリアはまた、油性エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピル)であり得る。無菌液状キャリアは、非経口投与用の無菌液状組成物中で有用である。加圧組成物用の液状キャリアは、ハロゲン化水素または他の薬学的に受容可能な推進剤であり得る。
【0112】
無菌溶液または懸濁液である液状薬学的組成物は、筋肉内注射、腹腔内注射および皮下注射に適当である。無菌溶液はまた、静脈内に投与できる。この化合物はのまた、液状または固形組成物のいずれかで、経口投与できる。肺投与もまた、考慮される。
【0113】
この薬学的組成物は、単位財形(例えば、錠剤またはカプセル剤)であり得る。このような剤形では、この組成物は、適当な量の活性成分を含有する単位用量に細分される;この単位剤形は、包装した組成物(例えば、パケット粉末、バイアル、アンプル、予め充填した注射器または液体含有におい袋)であり得る。この単位剤形は、例えば、カプセルまたは錠剤それ自体であり得、または包装形状の適当な数の任意のこのような組成物であり得る。治療で使用される投薬量は、担当医により、主観的に決定されなければならない。
【0114】
それに加えて、本発明の化合物は、患部に投与される薬学的に受容可能なビヒクルと処方することにより、溶液、クリームまたはローションとして、使用され得る。
【0115】
本発明の化合物はまた、医療用具と併用できる。例えば、薬剤を被覆または含浸した細胞内ステントの1成分としてのラパマイシン炭水化物誘導体は、新内膜組織増殖を阻止するのに使用され得、それにより、再狭窄を防止する(例えば、米国特許第5,665,728号を参照)。ラパマイシン炭水化物誘導体はまた、他の薬剤を被覆または含浸した医療用具(例えば、カテーテル、ポンプまたは薬剤送達医療用具(例えば、薬剤を含有するビーズまたはディスク))の1成分として、使用できる。ラパマイシン(強力な免疫抑制薬)の存在により、体内で移植可能な医療用具が存在することに対する炎症、拒絶または他の免疫応答が低下し得る。
【0116】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されており、いずれの様式でも本発明の範囲を限定するとは解釈されない。
【実施例】
【0117】
以下の実施例では、以下の略語は、以下の意味を有する。略語は、もし定義されていないなら、一般に受け入れられている意味を有する。
【0118】
g=グラム
mg=ミリグラム
kg=キログラム
mmol=ミリモル
M=モル
N=ノルマル
mL=ミリリットル
min=分
BzCl=塩化ベンゾイル
DMAP=4−ジメチルアミノピリジン
DMS=硫酸ジメチル
Py=ピリジン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
Me=メチル
HOAt=1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBT=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
TBDMSiCl=塩化第三級ブチルジメチルシリル
AcOH=酢酸
THE=テトラヒドロフラン
LC/MSまたはLCMS=液体クロマトグラフィー/質量分析法
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
cone.=濃
eq.=当量
以下の実施例および手順にて、出発物質は、Aldrich Chemical Company,Inc.,Milwaukee,WI 53233 USA;Lancaster Synthesis,Inc.,NH 03087 USA;Sigma,St.Louis MO63178 USA;Maybridge Chemical Co.Trevillett,Tintagel,Cornwall PL34 OHW United Kingdom;TCI America,Portland OR 97203;Frontier Scientific,Utah,USA;and Bachem,Torrance,California,USAから市販されている。
【0119】
(実施例1)
(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成)
図3は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを合成する方法を描写している。詳細な手順は、以下で記述する:
(42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン)
ラパマイシン10.0gのジクロロメタン50mLおよび無水ピリジン10mL溶液を、窒素雰囲気下にて、−78℃まで冷却した。この溶液に、クロロギ酸4−ニトロフェニル3.31gを加え、その反応混合物を、−78℃で、1時間撹拌し、次いで、直接室温にした。2時間後、反応が完結した。その混合物を水で希釈し、そしてジクロロメタンで抽出した。その有機相を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン−酢酸エチル、2:1)にかけると、黄色がかった固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、9.66gの42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシンが得られた。C58H82N2O17、M=1078.6;MS(ES+):m/z=1101.7(M+Na)+
(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン)
D−フルクトース(2.025g、11.24mmol)およびDMAP(250mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(25mL)溶液に、42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(4.05g、3.757mmol)を加え、その反応混合物を、室温で、24時間撹拌した。高真空下にて溶媒を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムでフラッシュカラムクロマトグラフィー(これは、溶媒として、ジクロロメタン−メタノール(9:1)を使用する)にかけた。得られた生成物を分取HPLCカラム(80%メタノール〜20%水、流速10mL/分)で再精製すると、白色固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、1.461gの42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンが得られた。C58H89NO10、M=1119.6;MS(ES+):m/z=1142.7(M+Na)+。代替的には、実施例3で開示したように、DMAPに代えて、HOBT(またはHOAT)が使用され得る。
【0120】
(実施例2)
実施例1で概説したものと類似の手順に従い、適当な糖類または糖誘導体を使用して、以下の化合物を得た:
42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−マルツロシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−イソマルトリオシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン
(実施例3)
(31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成)
図4は、31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを合成する方法を描写している。その詳細な手順は、以下で記述する:
(42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)ラパマイシン)
ラパマイシン(10g)およびイミダゾール(2.2g)のN,N−ジメチルホルムアミド(40mL)溶液に、塩化第三級ブチルジメチルシリル(1.76g)を加え、その反応混合物を、室温で、窒素下にて、5日間撹拌した。高真空下にて溶媒を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン−酢酸エチル、3:2)にかけると、灰白色発泡体として、5.84gの42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)ラパマイシンが得られた。C57H93NO13Si、M=1027.6;MS(ES+):m/z=1050.7(M+Na)+。
【0121】
(42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)−31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン)
42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)ラパマイシン(5.84g)をジクロロメタン(30mL)およびピリジン(6mL)に溶解し、クロロギ酸4−ニトロフェニル(2.582g)を加え、その反応混合物を、窒素下にて、室温で、2時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムで精製した。ヘキサン−酢酸エチル(3:1)で溶出すると、黄色がかった発泡体(5.4g)として、表題化合物が得られた。C64H96N2O17Si、M=1192.6;MS(ES+):m/z=1215.6(M+Na)+。
【0122】
(31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン)
42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)−31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(5.4g)を、酢酸(30mL)、テトラヒドロフラン(10mL)および水(10mL)の混合物に溶解した。それを、室温で、20時間撹拌した。この混合物を水で希釈し、そして酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。その有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン−酢酸エチル、3:2)にかけると、黄色がかった固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、2.1gの31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシンが得られた。C58H82N2O17、M=1078.6;MS(ES+):m/z=1101.6(M+Na)+。
【0123】
(31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン)
無水ピリジン(20mL)中の31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(1.3g)、D−フルクトース(0.434g)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(0.325g)の混合物を、室温で、3日間撹拌した。次いで、減圧下にて溶媒を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけた。ジクロロメタン−メタノール(10:1)で溶出すると、白色固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン(0.625g、46%)が得られた。C58H89NO20、M=1119.6;MS(ES+):m/z=1142.7(M+Na)+。
【0124】
類似の様式で、31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシンも調製した。それに加えて、実施例1で開示したように、HOBTに代えて、DMAPが使用され得る。
【0125】
(実施例4)
(42−O−(2−O−メチル−β−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成)
(1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−β−D−フルクトピラノース)
無水ピリジン(52mL)、塩化ベンゾイル(51.5mL、0.444mmol)および無水ジクロロメタン(125mL)の混合物を、−10℃まで冷却した。細かく粉末化したフルクトース(20g、0.111mmol)を少しずつ加え、その反応混合物を、−10℃で、18時間撹拌した。この反応混合物を氷水でクエンチし、ジクロロメタンで希釈し、そして分液漏斗に移した。有機層を分離し、そして5%クエン酸、飽和炭酸水素ナトリウム、水で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。それを濾過し、そして溶媒を蒸発させた。その残留物をジエチルエーテル(75mL)に溶解し、次いで、ヘキサン(300mL)にゆっくりと加えて、白色固形物を得、これを、乾燥すると、58.9g(89%)の1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−β−D−フルクトピラノースが得られた。
【0126】
(1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−2−O−メチル−β−D−フルクトピラノース)
1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−β−D−フルクトピラノース(10.00g、16.8mmol)のアセトン(40mL)溶液に、硫酸ジメチル(2.4ml、25.16mmoles、1.5当量)を加え、続いて、炭酸カリウム(3.48g、25.16mmoles)を加え、その反応混合物を、50℃で、窒素下にて、18時間撹拌した。真空下にて溶媒を除去し、得られた残留物を酢酸エチル(150ml)に溶解し、5%クエン酸、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして油性固形物に濃縮した。シリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル、4:1)で精製すると、白色発泡体として、10.0g(98%)の表題化合物が得られた。
【0127】
(2−O−メチル−β−D−フルクトピラノース)
1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−2−O−メチル−p−D−フルクトピラノース(10.0g、16.4mmol)の激しく撹拌した無水メタノール溶液に、ナトリウムメトキシドの溶液(メタノール中で0.5M、10.0mL)を加えた。室温で1.5時間撹拌した後、この反応は完結した。そのpHを、Amberlite IRC−50(約4.0g)で、7.0に調節した。濾過により固形物を除去し、その濾液を真空中で濃縮した。シリカゲルカラム(メタノール:ジクロロメタン、4:1および3:1)で精製すると、白色発泡体2.70g(81%)として、この生成物が得られた。
【0128】
(42−O−(2−O−メチル−β−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン)
無水ピリジン(60mL)中の42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(10.0g、9.3mmol)、2−O−メチル−β−D−フルクトピラノース(6.2g、28mmol、3当量)および1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)(2.5g、2当量)の混合物を、室温で、4日間撹拌した。次いで、減圧下にて溶媒を蒸発させ、その残留物を酢酸エチルに再溶解し、水で洗浄した。有機層を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけた。ジクロロメタン−メタノール(100:5)で溶出すると、白色固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、42−O−(2−O−メチル−β−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン(4.7g、)が得られた。C59H91NO20、M=1133.7;MS(ES+):m/z=1156.7(M+Na)+。
【0129】
(実施例5)
(酸性媒体中での加水分解に対するラパマイシン炭水化物誘導体の安定性)
酸性媒体中での種々のラパマイシン炭水化物誘導体の加水分解に対する安定性は、それらの化合物を70/30 メタノール/0.1N HCl(pH 1.5)に溶解することにより、次いで、1時間で試料中での遊離ラパマイシンの量をHPLCで測定して加水分解の程度を決定することにより、調べた。これらの結果は、表2で要約する。
【0130】
【表2】
表2で分かるように、全ての化合物は、酸性媒体中にて、殆どまたは全く加水分解が観察されず、良好な安定性を示した。
【0131】
(実施例6)
(ヒト全血中でのラパマイシン炭水化物誘導体の加水分解)
種々のラパマイシン炭水化物誘導体が全血中にて加水分解によって遊離ラパマイシンを放出する安定性は、これらの化合物をヒト全血中にてスパイクすることにより、次いで、1時間で試料中での遊離ラパマイシンの量をHPLCで測定して加水分解の程度を決定することにより、調べた。これらの結果は、表3で要約する。
【0132】
【表3】
図3で示すように、ヒト全血中での加水分解の程度は、その炭水化物部分の性質に依存して、大きく変わった。糖類のカーボネート連鎖(例えば、D−フルクトース、L−フシトールまたはD−アロース)を介した取り込みにより、一般に、D−グルコース、D−マルツロースおよびD−ラクタールを使用したときに観察されたよりも高い程度の加水分解が引き起こされた。これらの結果はまた、適当な糖を選択するとき、全血中で遊離ラパマイシンを放出する際に、31−O−および42−O−ラパマイシンの両方が有効であることを示している。さらに、カーバメート連鎖を備えたラパマイシン炭水化物誘導体の全血中での加水分解を調べた先の類似の実験から、表3におけるカーボネート連鎖を備えた化合物の多くと対照的に、殆どまたは全く加水分解がないことが明らかとなった。
【0133】
(実施例7)
(炭酸塩連鎖およびカーバメート連鎖を有するラパマイシン炭水化物誘導体のインビトロ免疫抑制活性の比較)
ラパマイシン(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよび42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのカーバメート連結アナログ(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの非加水分解性形態))の免疫抑制活性を、細胞増殖の検出としてアラマーブルー(alamar blue)を使用して初代血液リンパ球培養(PBMC)において評価した。42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのカーバメートアナログは、アミノ糖から形成され、ここで、この炭水化物部分が、アミノ糖のアミノ窒素元素を介したカルボニルリンカーに結合され、それによって、カーバメート連鎖が形成される。図5は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンは、ラパマイシンと同等の細胞増殖の阻害を示すが、非加水分解性のカーバメート連結アナログは、いかなる内因性免疫抑制活性も有さないことを例示する。このデータは、活性種は、3日の培養の過程で42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの加水分解から生じるラパマイシンであり、非加水分解性の42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンではないことを示す。すなわち、上記プロドラッグは、いかなる内因性の免疫抑制活性も有さないようであり、所望の薬理学的効果を示すためにラパマイシンに加水分解されなけらればならない。この実験はまた、炭水化物部分とラパマイシンとの間の連鎖の選択の重要性を実証する。なぜなら、この実施例において、炭酸塩連鎖は、所望の加水分解が生じることを可能とし、一方、カーバメート連鎖は、インタクトなままであり、ほとんどないか無しかのラパマイシンが放出されるからである。
【0134】
(実施例8)
(ラットにおけるラパマイシンおよびラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールの比較)
インビボにおいて遊離のラパマイシンを血流中へ輸送する誘導体の能力を評価するために、選択されたラパマイシン炭水化物誘導体のラットにおける薬物動態学的プロフィールを決定した。簡単には、Sprague Dawleyラットに2.5mg/kgまたは10mg/kgでラパマイシンおよび誘導体を経口投与した。24時間にわたり頚静脈出血を介して全血を採取し、分析するまで−20℃で凍結した。ラパマイシンの存在について、全血を液体クロマトグラフィー質量分析により分析した。その結果を図6、7および8にまとめている。
【0135】
図6および7に示されるように、ラパマイシンを経口投与すると、血中のラパマイシン濃度の急上昇が観察され、最大濃度は、約30分で達した。次いで、ラパマイシンレベルは、さらに数時間にわたってかなり迅速に降下した。同様のプロフィールが、42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシンについて観察された。しかしながら、驚くべきことに、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンまたは42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシンを経口投与した場合、血中のラパマイシンのレベルは、約3時間で最大濃度に達するまで徐々に上昇し、その後、時間が経つと徐々に低下した(図6)。同様のプロフィールは、31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよび31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシンの両方(図7)ならびに42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン、42−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシンおよび42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン(図8)について観察される。選択した化合物について観察された遅延性の動態は、ラパマイシンに典型的である投薬よりもより少ない頻度の投薬を可能とする利点を提供し得る。さらに、選択したラパマイシン炭水化物誘導体と関連するラパマイシン濃度の漸進的な上昇は、ラパマイシン自体を経口投与する場合、薬物濃度の急上昇と関連する有毒作用を寛解させ得る。
【0136】
図6、7および8からの第二の観察は、ラパマイシンの濃度の可変性は、グラフに示される標準的な誘導体によって実証されるように、ラパマイシン自体よりもラパマイシン炭水化物誘導体の方がかなり小さいことである。従って、本発明の化合物はまた、より定常で予想可能投薬を可能とし得る、減少した個体間の可変性という利点を有し得る。
【0137】
これらの実験は、グリコシル置換の注意深い選択は、ラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールに対する著明な影響を有すること、および本発明の化合物は、ラパマイシン自体よりもかなりの利点(薬物動態学的利点を含む)を有し得ることを実証した。
【0138】
(実施例9)
(イヌモデルにおけるラパマイシンおよび42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのGI管毒性の比較)
ビーグル犬は、ラパマイシンに関連する胃腸管毒性の過敏性モデルであると考えられている。S.N.Sehgalら,Medicinal Research Reviews 14,1(1994)を参照のこと。イヌに経口的に与えた低用量のラパマイシンの短い曝露でさえ、口から壊死性フィブリン様脈管炎の次の結腸まで生じる潰瘍化による迅速な体重減少をもたらすことが公知である。表4にまとめるように、2匹のビーグル犬に、単回経口用量のラパマイシンを10mg/kgで与えた場合、両方のイヌが、嗜眠性になり、減少した食糧摂取量によって、1週間未満で30%を超える体重減少が生じた。この動物は、回復しなかった。同用量の42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを与えた別のビーグル犬は、明らかな身体的変化を示さず、正常な食糧摂取量を維持した。3匹全てのイヌは、LCMSによって測定される場合、同様のラパマイシンの血中レベルを有した。第4のイヌにおいて、1mg/kgの42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの用量により、わずかな嗜眠を生じたが、このイヌは、急速に回復した。1週間後のラパマイシン(lmg/kg)のその後の投薬は、深刻な嗜眠および体重減少をもたらし、これにより、この動物は、回復しなかった。
【0139】
【表4】
この実験は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの経口投与が、過敏性イヌモデルにおいて、深刻な毒性の徴候に導くラパマイシンと比較してほとんどないかまたは無しの胃腸の毒性の明らかな徴候をもたらしたことを明白に実証する。この結果は、さらに、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体が、ラパマイシンの薬力学的プロフィールを改善するという可能性を実証する。
【0140】
(実施例10)
(ラパマイシンおよび42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンで処置されたラットの血清コレステロールレベルの比較)
コレステロールレベルの変化について、Sprague−Dawleyラットにおいて42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよびラパマイシンを直接比較試験した。等用量(2.5mg/kg/日)のラパマイシンまたは42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのいずれかをラット(n=12)に1日1回12日間投薬した。11日目に24時間の底値レベルで、コレステロールレベルを測定した。結果(図9)は、ラパマイシンで処置したラットは、ビヒクルコントロール群に比較して、コレステロールレベルの有意な上昇を提示することを示す。一方、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン群におけるコレステロールレベルは、ラパマイシン群よりも有意に低く(p<0.01)、上記ビヒクルとは有意に異ならなかった。両方の化合物が、この研究(実施例12)で使用した同一の2.5mg/kg/日の用量で、異所性ラット心臓移植モデルにおいて同等の効力を示したことに注目することが重要である。この実験は、ラパマイシン炭水化物誘導体が抗力を維持しつつ、ラパマイシンの副作用プロフィールを改善する能力を実証する。
【0141】
(実施例11)
(洗浄したヒト血小板凝集アッセイにおけるラパマイシンおよび42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンに起因する血小板凝集の比較)
血小板凝集が、ラパマイシンの副作用であると疑われ、慢性的な拒絶および移植におけるラパマイシンの使用の他の長期副作用の増大に関係している(Ann Babinskaら,Enhancement of Human Platelet Aggregation and Secretion Induced by Rapamycin.(1998)Nephrology Dialysis Transplantation 第13巻 3153−3159頁)。2μM ADPで刺激した新しい洗浄したヒト血小板を使用してこれらの実験を行い、0時間で、ラパマイシンまたは42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのいずれかでスパイクした。ChronoLogTM血小板凝集計で、8〜10分の期間にわたって処理した血小板凝集を連続的に読み取った。
【0142】
図10は、ラパマイシン1μg/mlおよび25μg/mlの2つの濃度について血小板凝集% 対 時間のプロットを示す。図10は、ラパマイシンが、用量依存的様式で血小板凝集を誘導することを例示する。1μg/ml用量でのラパマイシンは、8分後に約20%まで血小板凝集を誘導した。25μg/ml用量でのラパマイシンは、8分後に約70%まで血小板凝集を誘導した。図11は、25μg/mlラパマイシンまたは25μg/ml 42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを投薬し、2μM ADPで刺激した洗浄したヒト血小板について、血小板凝集% 対 時間のプロットを示す。図11は、ラパマイシンは、8分後にほぼ80%の血小板凝集を誘導し、一方、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンは、同時間において血小板凝集に対して測定可能な効果は示さないことを示す。
【0143】
(実施例12)
(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン(2.5mg/kg/日および10mg/kg/日)、ラパマイシン(2.5mg/kg/日)、またはビヒクルを経口で受けているラットにおける異所性心臓同種異系移植の移植片生着)
Wistar FurthラットからLewisラットに、遺伝的に不適合な(同種異系の)心臓の腹大動脈および下大静脈に局所性移植片を与えた。移植の3日前に開始し、そして移植後30日間連続して、移植レシピエント(1群あたりラット6匹)に、コントロール(ビヒクルおよび2.5mg/kg/日でのラパマイシン)または2.5mg/kg/日および10mg/kg/日での42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを1日1回経口栄養によって投与した。移植片機能不全が、移植後30日の期間の間、示される場合、その動物を屠殺した。上記動物が、移植後30日より長く生存した場合、試験およびコントロール物を、中止し、この動物に、移植片機能不全までまたは移植の100日後まで存続させた。各群のレシピエント動物についての平均生存率を、表5および図12にまとめた。表5に示されるように、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンは、2.5mg/kg/日および10mg/kg/日の投薬レベルで、ビヒクルコントロールよりも214および341%まで移植片の生着を延長した。これは、2.5mg/kg/日でのラパマイシンで示された延長した生着と同様である。図12は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンが、2.5mg/kg/日の投薬レベルでのラパマイシンのように、上記ビヒクルよりも上記移植片の生着を延長したことを図示する。これらのデータは、移植片拒絶の防止における42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの免疫抑制活性を実証する。
【0144】
【表5】
本発明の一部の実施態様のみが具体的に開示され上で記述されているものの、上記教示に照らして、本発明の精神および意図した範囲から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明の多くの改良および変更が可能であることが理解できる。
【0145】
上記刊行物の全てだけでなく以後述べるいずれの他の参考文献の内容も、各個々の刊行物が具体的かつ個々に本明細書中で参考として援用されているように、同じ範囲まで、本明細書中で参考として援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、フルクトースが溶液においていくつかの立体配置で存在する場合のフルクトースを示す。
【図2】図2は、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体の調製の一般的方法を示す。「RAPA−OH」は、ラパマイシンを示し、ここで、水酸基(−OH)は、ラパマイシンの任意の水酸基であり得る。
【図3】図3は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成についての反応経路を示す。
【図4】図4は、31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成についての反応経路を示す。
【図5】図5は、ラパマイシン、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン、および、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのカーバメート連結アナログのインビトロ免疫抑制活性を示す。
【図6】図6は、ラットにおける選択したラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールを示す。
【図7】図7は、ラットにおける選択したラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールを示す。
【図8】図8は、ラットにおける選択したラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールを示す。
【図9】図9は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよびラパマイシンを用いた処置後のラットにおける血清コレステロールレベルを示す。
【図10】図10は、血小板凝集に対する2つの異なる用量のラパマイシンの効果を示す。
【図11】図11は、血小板凝集に対する42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよびラパマイシンの効果を比較する。
【図12】図12は、ラット心臓移植モデルにおける生存ラットに対する42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよびラパマイシンの効果を例示する。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許出願第60/471,367号(これは、2003年5月16日に出願された)、第60/546,240号(これは、2004年2月20日に出願された)および第60/562,840号(これは、2004年4月16日に出願された)から優先権を主張している。
【0002】
(発明の分野)
本願は、ラパマイシンの炭水化物誘導体(強力な免疫抑制薬)に関し、構造的に確定した炭水化物部分は、連結部分を介して、ラパマイシン構造に結合されている。これらのラパマイシン炭水化物誘導体は、プロドラッグとして作用し得る。すなわち、それらは、実質的に免疫抑制活性それ自体はあり得ないが、インビボで、ラパマイシンに変換され得、これは、次いで、免疫抑制効果を示す。
【0003】
(参考文献)
以下の参考文献は、本明細書の関連部分にて、特許番号または出願番号により、または著者および年度により、関連付けられているか引用されている。
【0004】
C.Vezina,A.Kiudelski,S.N.Sehgal,「Rapamycin(AY−22,989),a new antifungal antibiotic.I.Taxonomy of the producing streptomycete and isolation of the active principle」,J.Antibiot.28,721(1975)。
【0005】
S.N.Sehgal H.Baker,C.Vezina,「Rapamycin(AY−22,989),a new antifungal antibiotic.II.Fermentation,isolation and characterization,」J.Antibiot.28,727(1975)。
【0006】
H.A.Baker,A.Sidorowicz,S.N.Sehgal,C.Vezina,「Rapamycin(AY−22,989),a new antifungal antibiotic.III.In vitro and in vivo evaluation」,J.Antibiot.31,539(1978)。
【0007】
R.Martel,J.Klicius,S.Galet,「Inhibition of the immune response by rapamycin, a new anifungal antibiotic」,Can.J.Physiol.Pharmacol.55,48(1977)。
【0008】
R.Y.Calneら,Lancet 1183(1978)。
【0009】
S.N.Sehgal,K.Molnar−Kimber,T.D.Ocain,B.M.Weichman,「Rapamycin:a novel immunosuppressive macrolide」,Medicinal Research Reviews 14,1(1994)。
【0010】
F.Streit,U.Christians,H.M.Schiebel,A.Meyer,K.F.Sewing,「Structural identification of three metabolites and a degradation product of the macrolide immunosuppressant sirolimus(rapamycin)by electrospria−MS/MS after incubation with human liver microsomes」,Drug Metabol.Disp.,24,1272(1996)。
【0011】
F.Streit,U.Christians,H.M.Schiebel,K.L.Napoli,L.Ernst,A.Linck,B.D.Kahan,K.F.Sewing,「Sensitive and specific quantification of sirolimus(rapamycin)and its metabolites in blood of kidney graft recipients by HPLC/electrospray−mass spectrometry」,Clin.Chem.42,1417(1996)。
【0012】
S.Miura,「Regulation of monosaccharide transporter proteins in the small intestine」,Journal of Gastroenterology 37,491(2002)。
【0013】
Chem Sources USA and Chem Sources International;t e ACD electronic database;およびChemical Abstracts)。
【0014】
Advanced Organic Chemistry,Jerry March,John Wiley & Sons。
【0015】
C.K.Wangら,Proceedings of the 41st ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics,San Francisco,545(1993)。
【0016】
M.J.M.Nickmilder,D.Latinne,R.K.Verbeeck,W.Janssens,D.Swoboda,G.J.Lhoest,「Isolation and identification of new rapamycin dihydrodiol metabolites from dexamethasone−induced rat liver microsomes」,Xenobiotica,27,869(1997)。
【0017】
米国特許第3,929,992号。
【0018】
同第3,993,749号。
【0019】
同第4,885,171号。
【0020】
同第4,401,653号。
【0021】
同第4,316,885号。
【0022】
同第4,650,803号。
【0023】
PCT出願番号WO 92/05179。
【0024】
米国特許第5,118,678号。
【0025】
同第5,260,300号。
【0026】
同第5,118,678号。
【0027】
同第5,118,678号。
【0028】
同第5,100,883号。
【0029】
同第5,151,413号。
【0030】
同第5,120,842号。
【0031】
同第5,120,725号。
【0032】
同第5,120,727号。
【0033】
同第5,258,389号。
【0034】
同第5,672,605号。
【0035】
同第5,583,139号。
【0036】
同第5,527,907号。
【0037】
同第5,457,111号。
【0038】
同第5,955,100号。
【0039】
同第6,146,658号。
【0040】
同第5,935,995号。
【0041】
同第5,665,728号。
【0042】
同第6,146,658号。
【背景技術】
【0043】
(発明の背景)
ラパマイシン(シロリムス(sirolimus)としてもまた公知)は、分子量913.6Daを有する31員のマクロライドラクトン(C5lH79NO13)である。溶液中で、ラパマイシンは、4:1の比で立体配座的なトランス異性体およびシス異性体を形成し、これは、ピペコリン酸アミド結合の周りの回転障害に起因する。これは、水、脂肪族炭化水素およびジエチルエーテルにやや溶けにくく、一方、これは、アルコール、ハロゲン化炭化水素およびジメチルスルホキシドに溶解性である。ラパマイシンは、溶液中で不安定であり;10時間未満の半減期で、血漿において、および37℃で低いpHおよび中性のpHの緩衝液において分解する。
【0044】
Streptomyces hygroscopicusによって産生されたラパマイシンは、多くの価値ある薬理学的性状を有することが示されている。上記化合物は、インビトロおよびインビボの両方において、特にCandida albicansに対して、抗真菌活性を有する大環状トリエン抗生物質である。C.Vezinaら,J.Antibiot.28,721(1975),S.N.Sehgalら,J.Antibiot.28,727(1975),H.A.Bakerら,J.Antibiot.31,539(1978),ならびに米国特許第3,929,992号;および同第3,993,749号を参照のこと。ラパマイシン単独(米国特許第4,885,171号)またはピシバニル(picibanil)(米国特許第4,401,653号)との組合わせはまた、抗腫瘍活性を有することが示されている。さらに、R.MartelらCan.J.Physiol.Pharmacol.55,48(1977)は、ラパマイシンが実験アレルギー性脳脊髄炎モデル(多発性硬化症についてのモデル);アジュバント関節炎モデル(リウマチ様関節炎についてのモデル)において有効であること;およびIgE様抗体の形成を効率的に阻害することを開示した。
【0045】
ラパマイシンの免疫抑制効果は、FASEB 3,3411(1989)に開示されている。ラパマイシン、サイクロスポリンA、FK−506(タクロリムスとしてもまた公知)、および他の大環状分子は、有効な免疫抑制剤であることが示されおり、従って、移植拒絶を防止するのに有用である。FASEB 3,3411(1989),FASEB 3,5256(1989),およびR.Y.Calneら,Lancet 1183(1978)を参照のこと。ラパマイシンは、免疫抑制薬のタクロリムス(FK506)と構造的相同性を共有し、そしてリンパ球において同一の細胞内結合タンパク質へ結合するが、ラパマイシンおよびタクロリムスは、免疫抑制作用の異なる機構を有することが示されている。ラパマイシンは、S6p70−キナーゼを阻害し、一方、タクロリムスは、カルシニュリンを阻害する。ラパマイシンは、いくつかの種で、単独または他の免疫抑制薬と組合わせて、種々の移植の移植片生着を延長することが見出されている。S.N.Sehgalら,Medicinal Research Reviews 14,1(1994)を参照のこと。
【0046】
ラパマイシンはまた、mTORインヒビターとしても公知である。これらのインヒビターは、カルシニュリンインヒビターおよびDNA合成インヒビターのような他の型のインヒビターよりも免疫応答において後期段階でT細胞の活性化を阻害する免疫抑制薬のクラスである。移植において、mTORインヒビターは、代表的に、カルシニュリンインヒビターと組合わせて使用される。
【0047】
残念なことに、mTORインヒビターの副作用(例えば、胃腸作用、高脂血症)は、現在、移植および自己免疫疾患の処置におけるそれらの広い使用を限定している。そして、ラパマイシンが腎毒性を誘導することは、示されていないが、ラパマイシンは、動物モデルにおいて、多くの有毒な副作用を誘導することが示されている。このような有毒作用としては、例えば、グルコースホメオスタシスの欠陥、胃腸管の潰瘍化、体重減少、下痢および血小板減少が挙げられる。
【0048】
多数のラパマイシン誘導体が、ラパマイシンが保持するいくつかの欠点(低いおよび/または可変性のバイオアベイラビリティーおよび溶解度、ならびに高い毒性が挙げられる)を軽減し、改善することを望んで合成されている。ラパマイシンのモノアシル化誘導体およびジアシル化誘導体(28位および43位でエステル化された)は、抗真菌剤として有用であること(米国特許第4,316,885号)および水溶性プロドラッグを作製するために使用されること(米国特許第4,650,803号)が示されている。他の誘導体としては、以下が挙げられる:カルボン酸エステル(PCT公報番号WO 92/05179)、カーバメート(米国特許第5,118,678号)、炭酸塩(米国特許第5,260,300号)、アミドエステル(米国特許第5,118,678号)、フッ化エステル(米国特許第5,100,883号)、アセタール(米国特許第5,151,413)、シリルエーテル(米国特許第5,120,842号)、二環式誘導体(米国特許第5,120,725号)、ラパマイシンダイマー(米国特許第5,120,727号)ならびにO−アリール誘導体、O−アルキル誘導体、O−アルケニル誘導体およびO−アルキニル誘導体(米国特許第5,258,389)。種々のラパマイシンプロドラッグもまた、開発されている(米国特許第5,672,605号、同第5,583,139号、同第5,527,907号、同第5,457,111号、同第5,955,100号、同第6,146,658号、および同第5,935,995).
ラパマイシンは、優れた免疫抑制、抗真菌性、抗腫瘍性、および他の重要な生物学的活性を有することが示されていることから、溶解度を増大し、そしてその毒性を減少させつつ薬物動態学的プロフィールを改善する改善された誘導体に対する必要性が、さらに存在する。本発明は、これらの必要性に取り組む。
【0049】
(発明の要旨)
本発明は、部分的に、パラマイシンの炭水化物誘導体(ここで、ラパマイシン分子は、現在のChemical Abstracts命名法によって定義されるような31位および/または42位で、単糖、オリゴ糖、または偽糖を付加することによって改変される)が、ラパマイシンと比較して同様もしくは増強した薬物動態学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールを有するという認識に基づく。さらに、ラパマイシン炭水化物誘導体の投与は、所望の薬理学的効果の保持を有しつつ毒性の低下をもたらし得る。さらに、ラパマイシン炭水化物誘導体は、ラパマイシンに、単純化した薬物処方を可能とするより水への溶解性を提供する。従って、本発明は、ラパマイシンのようなそのクラスにおける他の薬物とは異なる特徴を有する化合物を提供する。
【0050】
1局面では、本発明は、式(I)の構造を有するラパマイシン炭水化物誘導体に関する:
【0051】
【化2】
ここで、
n=0または1であり、R1およびR2は、独立に、水素または−X−Zであり、ここで、各Xは、リンカーであり、そして各Zは、炭水化物部分であり、該部分は、独立に、単糖類、オリゴ糖類および偽糖からなる群より選択され、ここで、Zは、Zのヒドロキシル酸素原子を介して、Xに結合されるが、但し、R1およびR2は、共に水素にはなることはない。1実施態様では、R1は、水素であり得、そしてR2は、−X−Zであり得、他の実施態様では、Xは、以下からなる群より選択できる:(i)−R3C(O)−;(ii)−C(O)R3−;(iii)−R3S(O)2−;および(iv)−S(O)2R3−;ここで、R3は、以下からなる群より選択される:(a)−(CH2)p−であって、ここで、pは、1〜18の整数である;(b)−(CH2)n−O−(CH2)m−であって、ここで、nおよびmは、それぞれ独立に、2〜6の整数である;および(c)結合。他の実施態様では、Xは、−C(O)−および−SO2−からなる群より選択できる。追加実施態様では、Xは、単一官能基であり得る。他の局面では、Zは、フルクトース、フシトールおよびアロースからなる群より選択できる。さらに他の実施態様では、Zは、単糖類誘導体であり、ここで、該単糖類の水酸基の少なくとも1個は、水素、アルコキシ、アルカノエートまたはハロゲン基で置き換えられる。
【0052】
本発明の範囲内の式Iの構造を有するラパマイシン炭水化物誘導体には、例えば、以下で示したもの(それらの薬学的に受容可能な塩を含めて)が挙げられる:
42−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(メチル−D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルカリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクタリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−スクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ゲントビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ツラノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−パラチノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ロイクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラフィノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロテトラオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオロイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオニルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノネイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン。
【0053】
他の局面では、本発明は、上述のラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物に関する。それに加えて、本発明の1実施態様は、それを必要とする被験体に、前記ラパマイシン炭水化物誘導体の治療有効量を投与することにより、ラパマイシンで治療できる疾患を治療する方法である。
【0054】
本発明のさらに他の局面では、患者における病気(例えば、移植拒絶、宿主対移植片疾患、移植片対宿主疾患、白血病、リンパ腫、過剰増殖血管障害、自己免疫疾患、炎症疾患、固形腫瘍および真菌感染)を治療する方法が提示され、該方法は、それを必要とする被験体に、上述の薬学的組成物の治療有効量を投与する工程を包含する。
【0055】
さらに、本発明は、医療用具を提供し、ここで、該医療用具は、ラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む。1実施態様では、該用具は、ラパマイシン炭水化物誘導体で被覆でされている。
【0056】
また、本発明は、ラパマイシンで治療できる疾患を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする被験体に、サイクロスポリンまたはサイクロスポリン誘導体、ステロイドまたは免疫調節性化合物からなる群より選択される化合物を含有する薬学的組成物と共に、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体の治療有効量を同時投与する工程を包含する。
【0057】
(発明の詳細な説明)
本発明は、請求したラパマイシン炭水化物誘導体が非誘導体化ラパマイシンと比較して改良された薬理学プロフィールを有するという予想外の発見に関する。
【0058】
本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」および、「the」は、特に明記しない限り、複数の指示物を含むに注目しなければならない。それゆえ、例えば、「ラパマイシン炭水化物誘導体」との言及は、複数のこのような誘導体を含む;「薬学的に受容可能なキャリア」との言及は、当業者に公知の1種またはそれ以上のキャリアおよびそれらの等価物を意味するなど。
【0059】
他に定義されていなければ、本明細書中で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術の当業者に一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明を実施または試験する際に、本明細書中で記述したものと類似の任意の方法および物質または等価物が使用できるものの、ここでは、好ましい方法、装置および物質を記述している。
【0060】
本明細書中で言及した全ての出版物および特許の内容は、例えば、これらの出版物で記述された方法論、試薬および用具(これらは、本発明発明と関連して、使用され得る)を記述し開示する目的のために、本明細書中で参考として援用されている。本明細書中のいずれも、従来の発明によって本発明者がこのような開示の日付を早めることができることの承認と解釈するものではない。
【0061】
本発明の実施において、特に明記しない限り、当該技術分野の範囲内の化学、生化学、分子生物学、細胞生物学、免疫学および薬理学の通常の方法が使用される。このような技術は、文献で詳細に説明されている。(例えば、Gennaro,A.R.,ed.(1990)Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing Co.;Colowick,S.et al.,eds.,Short Protocols in Molecular Biology,4th edition,John Wiley & Sons;Ream et al.,eds.(1998)Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course,Academic Pressを参照)。
【0062】
(定義)
ラパマイシン炭水化物誘導体、組成物または方法を述べるとき、以下の用語は、特に明記しない限り、以下の意味を有する。定義していない用語は、当該技術分野で一般に認められた意味を有する。
【0063】
「アルキル」との用語は、1個〜10個の炭素原子、例えば、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、これには、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基の両方が含まれる。この用語は、メチル、t−ブチル、n−ヘプチル、オクチルなどのような基により、例示される。
【0064】
「アルケン」との用語は、少なくとも1地点のアルケン不飽和(すなわち、−C=C−)を有し、さらに1個〜10個の炭素原子、例えば、1個〜6個の炭素原子を有する不飽和アルキル基を意味し、これには、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基の両方が含まれる。
【0065】
「アルキン」との用語は、少なくとも1地点のアルキン不飽和(すなわち、−C≡C−)を有し、さらに1個〜10個の炭素原子、例えば、1個〜6個の炭素原子を有する不飽和アルキル基を意味し、これには、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基の両方が含まれる。
【0066】
「芳香族」との用語は、単環(例えば、フェニル)または複数の縮合環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する6個〜14個の炭素原子の芳香族炭素環基を意味し、この縮合環は、芳香族であり得るかあり得ない(例えば、2−ベンゾキサゾリノン、2H−1,4−ベンゾキサジン−3(4H)−オン−7−イルなど)。
【0067】
「保護基」または「ブロッキング基」との用語は、ラパマイシンまたは糖部分の1個またはそれ以上の水酸基に結合された任意の基を意味し、これは、これらの水酸基で反応が起こるのを防止し、それらの保護基は、通常の化学工程または酵素工程により除去でき、これらの水酸基が再度確立される。使用される特定の除去可能な保護基は、利用される化合物および化学プロセスの性質により、決定される。除去可能なヒドロキシルブロッキング基には、通常の置換基(例えば、アリル、ベンジル、アセチル、クロロアセチル、チオベンジル、ベンジリデン、フェナシル、t−ブチルジメチルシリルおよびトリアルキルシリル(例えば、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメチルシリル、トリブチルシリルなど)、および任意の他の基(これは、ヒドロキシル官能性に化学的に導入でき、後に、その生成物の性質に適合する穏やかな条件で、化学方法または酵素方法のいずれかにより除去できる)が挙げられる。
【0068】
(ラパマイシン炭水化物誘導体)
上述のように、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体は、式(I)の構造を有する化合物である:
【0069】
【化3】
ここで、
n=0または1であり、R1およびR2は、独立に、水素または−X−Zであり、ここで、各Xは、リンカーであり、そして各Zは、炭水化物部分であり、該部分は、独立に、単糖類、オリゴ糖類および偽糖からなる群より選択されるが、但し、R1およびR2は、共に水素にはなることはない。
【0070】
明らかなように、これらのラパマイシン誘導体は、その42−位置、31−位置、または42−位置と31−位置の両方に結合された糖誘導体部分を有し得る。1実施態様では、この糖誘導体は、その42−位置だけで結合され、他の実施態様では、この糖誘導体は、その31−位置だけで結合される。
【0071】
天然に存在するラパマイシンでは、その41−メトキシおよび42−ヒドロキシ置換基は、互いに対してトランス立体配置で存在していることを述べておくことは重要である。本発明の42−O−(グリコシルカルボニル)ラパマイシン化合物は、これらの41−および42−置換基のトランス立体配置を保持するような様式で、調製される。結果的に、そのカーボネート連鎖を加水分解すると、このラパマイシンは、その天然に存在する立体配置にて、放出される。同様に、本発明の31−O−(グリコシルカルボニル)ラパマイシン化合物は、ラパマイシンの31−ヒドロキシル置換基の天然に存在する原子空間配置を保持するような様式で、調製される。
【0072】
(炭水化物部分)
式(I)において「Z」の識別名で表わされる炭水化物(または糖)部分は、反応性官能基(これは、ラパマイシンの31−および42−位置のいずれかまたは両方にある水酸基に直接カップリングできるか、または(ii)活性化ラパマイシン上の反応性官能基にカップリングできて、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体を生じる)を有する単糖類、オリゴ糖類、偽糖またはそれらの誘導体から形成される。この官能基は、必要に応じて、リンカーに結合され、これは、順に、糖に結合されるが、典型的には、必ずしもアノマー中心にはない。このような任意のリンカー基は、以下でさらに述べる。
【0073】
この糖誘導体を含む糖は、多くの様式で、互いとは異なり得る。例えば、それらは、異なる程度まで、ピラノース形状またはフラノース形状で存在できる。ある種の糖(例えば、フシトール)は、もっぱら開鎖形状で存在しているのに対して、多くの他のもの(例えば、グルコース、リボース、アロース)は、主に、環状で存在している。この糖の物理化学的性質(例えば、外形、組成、大きさ、柔軟性または剛直性)および相対的親水性は、全て、このラパマイシン炭水化物誘導体の化学的プロフィールに影響し得る。
【0074】
溶液中では、例えば、フルクトースは、殆ど、6員ピラノースおよび/またはその5員フラノース形状で存在できる(図1を参照)。また、これらの形状の各々は、αまたはβ立体配置で存在できる。それに加えて、フルクトースは、下開鎖形状で存在できる。従って、フルクトースは、図6で示すように、そのα−フルクトピラノース、β−フルクトピラノースまたはβ−フルクトフラノースまたは開鎖形状で存在できる。また、フルクトースは、これらの立体配置のいずれかで、薬剤に結合できる。6員ピラノース形状では、フルクトースは、例えば、単一の第一級アルコール(これは、このピラノース形状にて、その1位置で存在している)を介して、薬剤への結合を形成し易い。その5員フラノース形状では、フルクトースは、2個の第一級アルコールを有し、これらは、その1位置および6位置にある。フラノース形状では、結合は、おそらく、その1位置または6位置で、これらの第一級アルコールのいずれかを介する。
【0075】
身体が特定の糖を吸収し処理する様式は、変わる。例えば、ラクトースを処理するのが困難な人は多い。このようなラクトース不耐性により、ラパマイシン炭水化物誘導体へのラクトースの取り込みは、不適当となる。さらに、オリゴ糖類は、消化管から無傷では吸収されず、まず、それらの単糖類成分に消化されなければならない。しかしながら、単糖類は、腸細胞の刷子縁膜に位置している輸送系により、吸収される。S.Miura,Journal of Gastroenterology 37,491(2002)を参照。例えば、グルコースおよびガラクトースは、SGLT1輸送系により、吸収される。他の輸送体であるGLUT2は、主に、グルコース輸送体を促進し、GLUTSとして知られているさらに他の輸送体は、フルクトースを輸送する。胃腸管において、異なる選択性を備えた異なる単糖類輸送体タンパク質が存在すると、種々のラパマイシン炭水化物誘導体の吸収が変化し得る。すなわち、ある種の誘導体は、胃腸管からのラパマイシン炭水化物誘導体の通過を促進するために、利用可能な輸送体を容易に利用でき、それを血流へと送達し得、この場所で、その炭水化物部分は、開裂でき、それにより、ラパマイシンを放出する。このような促進されたプロセスにより、ラパマイシンへの局在化した暴露に関連した胃腸毒性が低下すると考えられている。
【0076】
上記のことを考慮して、このラパマイシン炭水化物誘導体に取り込まれる炭水化物部分(単糖類、オリゴ糖類または偽糖)の適当な選択は、その誘導体の薬理学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールに対して大きな影響を有し得ることが明らかである。従って、この炭水化物部分は、このラパマイシン炭水化物誘導体の薬理学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールを最適化するように、慎重に選択できる。
【0077】
適当な単糖類には、数種の開鎖または閉鎖単糖(LまたはD立体配置)のいずれかが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、典型的には、7個の炭素(ヘプトース単糖類)だけでなく、5個または6個の炭素(ペントース単糖類またはヘキソース単糖類)を有する。その環酸素原子を炭素、窒素またはイオウで置き換えた糖誘導体、その単糖上のヒドロキシル置換基を2個の隣接炭素原子間で二重結合を有するアミノ基または糖で置き換えたアミノ糖が挙げられる(例えば、グルコサミン、5−チオ−D−グルコース、ノジリマイシン(nojirimycin)、デオキシノジリマイシン(deoxynojirimycin)、1,5−アンヒドロ−D−ソルビトール、2,5−アンヒドロ−D−マンニトール、2−デオキシ−D−ガラクトース、2−デオキシ−D−グルコース、3−デオキシ−D−グルコース、アロース、アラビノース、アラビニトール、フシトール、フコース、ガラクチトール、グルシトール、イジトール、リキソース、マンニトール、レボ−ラムニトール、2−デオキシ−D−リボース、リボース、リビトール、リブロース、ラムノース、キシロース、キシルロース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、左旋糖、マンノース、プシコース、ソルボース、タガトース、タロース、ガラクタール、グルカール、フカール、ラムナール、アラビナール、キシラール、バリエナミン、バリダミン、バリオラミン、バリオール、バリオロン、バリエノール、バリエノン、グルクロン酸、ガラクツロン酸、N−アセチルノイラミン酸、グルコン酸D−ラクトン、ガラクトン酸γ−ラクトン、ガラクトン酸δ−ラクトン、マンノン酸γ−ラクトン、D−アルトロ−ヘプツロース、D−マンノ−ヘプツロース、D−グリセロ−D−マンノ−ヘプトース、D−グリセロ−D−グルコ−ヘプトース、D−アロ−ヘプツロース、D−アルトロ−3−ヘプツロース、D−グリセロ−D−マンノ−ヘプチトール、D−グリセロ−D−アルトロ−ヘプチトールなど)。単糖類上の水酸基は、必要に応じて、水素、アルコキシ(例えば、2−O−メチル−D−フルクトース)、アルカノエートまたはハロゲン基で置き換えられ得る。本明細書中で定義される単糖類の硫酸塩および/またはリン酸塩誘導体は、含まれる。
【0078】
適当なオリゴ糖類には、2個〜10個の単糖類の共に連結した炭水化物が挙げられるが、これらに限定されない。その成分単糖類単位は、例えば、ペントース単糖類、ヘキソース単糖類、または偽糖(偽アミノ糖類を含めて)であり得る。オリゴ糖類は、二環式の基(これらは、単糖類を、ベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環に縮合することにより、形成される)を含まない。
【0079】
本発明で使用され得る偽糖には、環式単糖類の環酸素原子をメチレン基で置き換えた種類の化合物のメンバーがある。偽糖はまた、「カルバ糖類」としても知られている。
【0080】
(リンカー)
上述のように、この炭水化物部分は、リンカー(これは、式Iでは、「X」として示される)を介して、このラパマイシンに共有結合される。その最も簡単な形状では、このリンカーは、この糖誘導体がラパマイシンに共有結合するときに形成されるが、それ自体は、ラパマイシンまたは糖分子のいずれの一部でもない。1実施態様では、このリンカーの性質は、この糖または糖誘導体をラパマイシンに共有結合するのに使用される化学反応により、決定される。例えば、もし、42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(活性化ラパマイシン)が糖と反応されるなら、その結果、ラパマイシン炭水化物誘導体が得られ、ここで、ラパマイシンの42−ヒドロキシル酸素は、カルボニル基に共有結合され、これは、順に、この糖上のヒドロキシル酸素に共有結合される。この例では、こりリンカーは、カルボニル基(C=O)である。本明細書中で定義されるリンカーの一例は、図3で描写されている。リンカーの例には、カルボニル(C=O)およびスルホニル(O=S=O)のような部分が挙げられる。このようなカルボニルまたはスルホニルリンカーは、単一官能基リンカーとして、認識されている。
【0081】
このリンカーは、この糖およびラパマイシンがリンカーに結合する官能基と一緒になって、「連鎖」を形成する。例えば、カルボニルリンカーがそのヒドロキシル酸素原子の1個を介して糖に結合し、次いで、ラパマイシンヒドロキシル酸素に結合するとき、得られる「連鎖」は、カーボネート(すなわち、−OC(O)O−)である。本明細書中で定義される連鎖の一例は、図4で描写されている。連鎖の例には、エステル、エーテル、カーボネート、カーバメート、サルフェートおよびウレタンが挙げられる。
【0082】
これらのリンカーおよびそれに付随した連鎖は、生体適合性で実質的に非免疫原性のラパマイシン炭水化物誘導体を提供するように、選択される。本発明は、糖の存在がラパマイシンの有効性を改善するという認識に基づいているのに対して、その薬理学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールもまた、このリンカーおよび/または連鎖の外形、組成、大きさ、柔軟性または剛直性により、高められ得る。従って、このリンカーまたは連鎖は、このラパマイシン炭水化物誘導体の薬理学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールを最適化するように選択できる。例えば、遊離のラパマイシンの放出を生じる誘導体の酸触媒加水分解または酵素加水分解の速度は、どの連鎖が作られるかに依存して、変わる。このリンカーまたは連鎖は、生物学的に「中性」であり、すなわち、それ自体は、このラパマイシン炭水化物誘導体に対する任意の追加生物活性に寄与し得ないか、この化合物の生物活性をさらに高めるように選択され得る。
【0083】
リンカーおよび連鎖を生じる化学反応は、通常の技術を使用する。これらの技術には、一般に、ラパマイシンまたは活性化ラパマイシンおよび糖または糖誘導体に位置しているコンプリメンタリー反応性官能基の使用を必要とする。コンプリメンタリー官能基および得られる連鎖の例は、表1で見られる。
【0084】
【表1】
もし望ましいなら、このリンカーは、1個より多い官能基を含有し得る。このラパマイシン炭水化物誘導体に異なる化学的プロフィールを与えるために、錯体リンカーが使用され得る。例えば、このリンカーを操作することにより、このラパマイシン炭水化物誘導体には、異なる疎水性/親水性のプロフィールが与えられ得る。同様に、荷電部分もまた導入され得る。このリンカーを変性する技術は、当業者に容易に理解される。例えば、ヘキサメチレンジアミンまたは関連したポリアミンから誘導されたリンカーの疎水性は、そのアルキレン部分をポリ(オキシアルキレン)基で置換することにより、実質的にさらに親水性に変性できる。
【0085】
例えば、グリコシル−Y[−C(=Y)−X−]p−W(R)n−X−C(=Y)−薬剤(ここで、Wは、共役二重結合を備えた芳香族基またはヘテロ芳香族基または脂肪族基であるか、またはグリコシルラジカルの脱離後に環化するアミノ酸誘導ラジカルである)は、米国特許第6,146,658号で開示された。これらの錯体リンカーは、そのグリコシル部分の酵素的な除去に引き続いた環化によって、自己脱離するように設計されている。
【0086】
多種多様なリンカーが本発明で使用するのに適当である。当業者は、カルボニル(C=O)またはスルホニル(O=S=O)リンカー、またはカルボニルまたはスルホニルを単一アルキル鎖またはポリエーテル鎖(例えば、少数のエチレンオキシド繰り返し単位)と組み合わせたものが上記のさらに複雑なリンカーとは異なる性質を有することを認識している。例えば、本発明のリンカーは、環化を受けて自己脱離しないと考えられている。さらに、このリンカー/薬剤化合物の酵素開裂または加水分解開裂に対する感受性は、そのスペーサまたはリンカー部分の性質に大きく依存している。それに加えて、複雑なリンカーを有する化合物は、1個の官能基だけのリンカーを有する化合物(例えば、本発明のもの)よりも、製造が困難かつ高価であり得る。
【0087】
多種多様なリンカーが市販されている(例えば、Chem Sources USA and Chem Sources International;the ACD electronic database;およびChemical Abstracts)。本発明で使用するのに適当なリンカーの多くは、この範疇に入る。他のものは、当該技術分野で公知の方法により、また、上記のように、容易に合成できる。リンカーの例には、脂肪族部分、芳香族部分、ステロイド部分、ペプチドなどが挙げられる。市販のリンカーの具体例には、ペプチドまたはポリアミド、炭化水素、芳香族、複素環、エーテル、脂質、カチオン基またはアニオン基、またはそれらの組み合わせがある。
【0088】
本発明のリンカーのプロフィールは、例えば、多結合化合物の(水、脂肪、脂質、生体液などでの)溶解度、疎水性、親水性、リンカーの柔軟性、抗原性、安定性などを変えるために、補助基を付加または挿入することにより、変性できる。例えば、このリンカーに1個またはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)基を導入すると、このラパマイシン炭水化物誘導体の親水性および水溶性が向上し、分子量および分子の大きさの両方が高まり、また、非PEG化リンカーの性質に依存して、インビボ保持時間が長くなり得る。さらに、PEGは、このリンカーの抗原性を低下させ得、また、その全体的な剛直性を高める可能性がある。
【0089】
このリンカーの溶解性/親水性を高める補助基、従って、得られる化合物は、本発明を実施する際に有用である。それゆえ、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体の水溶性および/または親水性を向上させるために、補助基(例えば、エチレンオキシドの小繰り返し単位、アルコール、ポリオール(例えば、グリセリン、グリセロールプロポキシレートなど)、炭水化物(例えば、グルタミン酸、アクリル酸などの小繰り返し単位)、アミン(例えば、テトラエチレンペンタミン)など)を使用することは、本発明の範囲内である。例えば、水溶性/親水性を高めるために使用される補助基は、少数の繰り返しエチレンオキシド(−CH2CH2O−)単位を含有するポリエーテルであり得る。
【0090】
これらのラパマイシン炭水化物誘導体の親油性および/または疎水性を高めるために、このリンカーの構造内に親油性補助基を取り込むこともまた、本発明の範囲内である。本発明のリンカーと共に有用な親油性基には、低級アルキル、芳香族基、および多環式芳香族基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの芳香族基は、非置換であるか他の基で置換されるか、いずれかであり得るが、少なくとも、このリンカーへの共有結合を可能にする基で置換される。本明細書中で使用する「芳香族基」との用語は、芳香族炭化水素および複素環炭化水素の両方を含む。本発明のリンカーと共に有用な他の親油性基には、脂肪酸誘導体(これらは、水性媒体中にて、ミセルを形成し得るか形成し得ない)および他の特定の親油性基(これらは、この炭水化物ラパマイシン誘導体と生体膜との間の相互作用を調節する)が挙げられる。
【0091】
このリンカーの柔軟性は、嵩張ったおよび/または剛性である補助基を取り込むことにより、操作できる。嵩張った基または剛性基の存在により、このリンカー中の結合、またはリンカーと補助基との間の結合、またはリンカーと官能基との間の結合の周りでの自由な回転が妨げられ得る。剛性基には、例えば、その立体配座の自由度が環および/または結合により束縛される基(例えば、アリール基、ヘテロアリール基および複素環基)が挙げられる。剛性を与え得る他の基には、ポリペプチド基(例えば、オリゴまたはポリプロリン鎖)が挙げられる。
【0092】
剛性はまた、静電気的に与えることができる。それゆえ、もし、この補助基が正または負のいずれかで荷電されているなら、同様に荷電された補助基により、このリンカーは、同じ電荷の各々の間で最大距離を与える立体配置にされる。同様に荷電された基を互いに近づけるエネルギーコストは、これらの基の間の距離の二乗に逆比例しているが、このリンカーを、同様に荷電された補助基の間で分離を維持する立体配置で保持する傾向にある。さらに、反対の電荷を持つ補助基は、反対に荷電された対の片方に引きつけられる傾向にあり、分子間イオン結合および分子内イオン結合の両方に入り得る可能性がある。この非共有結合機構は、このリンカーを、反対に荷電された基の間で結合できる立体配座で保持する傾向にある。潜在電荷(これは、このリンカーに付加に続いて、脱保護、pH変化、酸化、還元または当業者に公知の他の機構により、暴露される)を持つ荷電基あるいは保護基である補助基は、本発明の範囲内である。
【0093】
嵩張った基には、例えば、大きな原子、イオン(例えば、ヨウ素、イオウ、金属イオンなど)、または大きな原子を含む基、多環式基(芳香族基、非芳香族基を含めて)、および1個またはそれ以上の炭素−炭素結合を取り込んだ構造(すなわち、アルケンおよびアルキン)を挙げるとこができる。嵩張った基には、また、分枝種または直鎖種であるオリゴマーおよび重合体を挙げることができる。分枝種は、直鎖種よりも、単位分子量の増加あたりで、構造の剛性を高めると予想されている。
【0094】
上記のことを考慮して、適当な配向、エントロピーおよび物理化学的プロフィールを与えるリンカーの適当な選択は、当該技術の範囲内であることが明らかである。
【0095】
リンカーは、反応性官能基を使用することにより、ラパマイシンまたは糖に結合できる。これらの反応性官能基は、ラパマイシンまたは糖にてカップリングに利用できるかこの目的のためにラパマイシンまたは糖に導入できる官能基に対して選択される。例えば、適当な活性化剤の存在下にて、このリンカーと糖の第一級または第二級アミンとを反応させると、この糖をリンカーに共有結合するアミド部分が形成される。このリンカーのアミン基と糖のハロゲン化スルホニルとの間の反応により、この糖をリンカーに共有結合するスルホンアミド部分が形成される。このリンカーのハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールと糖のアルコールとの間の反応により、この糖をリンカーに共有結合するエーテル部分が形成される。
【0096】
官能基は、欠けている場合、適当な化学反応により作り出すことができ、これらは、標準的な有機化学教本(例えば、Advanced Organic Chemistry,Jerry March,John Wiley &Sons(5th Ed.,2000))で記述されている。リンカーとの用語は、この糖またはラパマイシンの一部であるとは考えられない全てのものを含む。リンカーは、そのリンカーの末端に反応性官能基を有する直鎖化合物から誘導できる。
【0097】
適当な二価リンカーには、例として、ジカルボン酸、ハロゲン化ジスルホニル、ジアルデヒド、ジケトン、ジハロゲン化物、ジイソシアネート、ジアミン、ジオール、以下の混合物が挙げられる:カルボン酸、ハロゲン化スルホニル、アルデヒド、ケトン、ハロゲン化物、イソシアネート、アミンおよびジオール。各場合において、このカルボン酸、ハロゲン化スルホニル、アルデヒド、ケトン、ハロゲン化物、イソシアネート、アミンおよびジオール官能基は、この糖およびラパマイシン上の相補官能性と反応されて、共有結合を形成する。このような相補官能性は、上述の表1で示されているように、当該技術分野で周知である。
【0098】
本発明の実施態様では、リンカー(X)は、以下からなる群より選択される:(i)−R3C(O);(ii)−C(O)R3、(iii)−R3S(O)2;または(iv)−S(O)2R3であって、ここで、R3は、以下からなる群より選択される:(i)−(CH2)p−(ここで、pは、1〜18の整数である、(ii)−(CH2)n−O−(CH2)m−(ここで、nおよびmは、それぞれ独立に、2〜6の整数である)または(iii)結合。リンカー(X)は、各出現例(すなわち、31位置および42位置)で同一または異なり得ること理解できるはずである。本発明の追加実施態様では、リンカー(X)は、カルボニル(C=O)、スルホニル(O=S=O)または単一官能基である。カルボニルリンカーは、31位置、42位置、またはそれらの両方にあり得る。他の実施態様では、R1は、−C(O)−Zであり、そしてR2は、Hであるか、またはR2は、−C(O)−Zであり、そしてR1は、Hである。
【0099】
従って、本発明の範囲内の式Iの構造を有するラパマイシン炭水化物誘導体には、例えば、以下で示したもの(それらの薬学的に受容可能な塩を含めて)が挙げられる:
42−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(メチル−D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルカリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクタリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−スクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ゲントビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ツラノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−パラチノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ロイクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラフィノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロテトラオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオロイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオニルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノネイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン。
【0100】
それに加えて、本発明は、式Iの構造を有するラパマイシン誘導体に関し、ここで、n=1であり、R1は、Hであり、そしてR2は、X−Zであり、ここで、Xは、リンカーであり、そしてZは、炭水化物部分であり、該炭化水素部分は、単糖、オリゴ糖および偽糖からなる群より選択される。
【0101】
本発明はまた、上述のラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する薬学的組成物に関する。
【0102】
(ラパマイシン炭水化物誘導体の調製)
本発明のラパマイシン炭水化物誘導体を調製する一般手順は、単糖、オリゴ糖、偽糖または糖誘導体を活性化ラパマイシンの31−および/または42−位置にカップリングする工程を包含する。
【0103】
例えば、図2で描写するように、ラパマイシン(II)は、クロロギ酸p−ニトロフェニルと反応でき、活性化ラパマイシン(III)が得られる。慎重に制御した条件下にて、この反応は、その42−位置で優先的に起こる。その反応条件を変えることにより、その31−水酸基および42−水酸基の両方は、同様に活性化できる。この31−水酸基の選択的な活性化は、まず、その42−ヒドロキシル部分を、例えば、アルキルシリル基(例えば、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリルまたは第三級ブチルジメチルシリル)で保護することにより、次いで、クロロギ酸p−ニトロフェニルまたは他のクロロホルメートと反応させることにより、達成できる。次いで、この保護基を除去すると、その31−ヒドロキシル位置で活性化されたラパマイシンが得られる。それゆえ、その31−位置、42−位置またはそれらの両方で選択的に活性化されるラパマイシン誘導体を調製することが可能となる。
【0104】
その後、第二工程では、糖部分または糖誘導体は、活性化ラパマイシン(III)と反応されて、ラパマイシン炭水化物誘導体が得られる。この糖部分または糖誘導体上の反応性官能基が水酸基であるとき、活性化ラパマイシンとの反応は、第一級水酸基で起こり得、ラパマイシンへのカーボネート連鎖が形成される。得られたリンカーは、カルボニル基である。この糖または糖誘導体上の反応性官能基がアミノ基(これは、その糖に対して任意の位置に置くことができる)であるとき、ラパマイシンとのカーバネート連鎖が得られ、得られたリンカーは、カルボニル基である。アミノ置換糖誘導体(例えば、糖−X−NH2または糖−NH2)は、通常の方法により、前駆体から調製できる。例えば、糖−X−N3の還元または糖−X−NPhth(ここで、Phthは、フタロイルである)の脱フタロイル化により、このアミノ置換誘導体が得られる。これらの前駆体は、適当に活性したグリコシルドナーでリンカー部分をグリコシル化することにより、合成できる。
【0105】
それゆえ、本明細書中で記述された一般的なアプローチを使用して、広範囲のラパマイシン炭水化物誘導体(ここで、その31−および/または42−水酸基は、広範囲の糖または糖誘導体で変性される)を調製することが可能である。
【0106】
ラパマイシンまたはラパマイシン代謝物の水酸基(31−および42−位置以外に位置しているものを含めて)はまた、本明細書中で記述したようにしてグリコシル化でき、得られたラパマイシン炭水化物誘導体はまた、それらの非グリコシル化対応物と比較して、高い水溶性および/または向上した薬物動態学的プロフィールおよび/または薬力学的プロフィールを示す。
【0107】
ラパマイシン代謝物は、当該技術分野で公知である。例えば、Streitらは、ヒトの肝臓ミクロソームに由来の数種のラパマイシン代謝物を構造的に同定した。F.Streit et al.,Drug Metabol.Disp.,24,1272(1996)を参照。これらには、41−デメチルラパマイシン、7−デメチルラパマイシン、11−ヒドロキシラパマイシン、およびラパマイシンの24−ヒドロキシエステル加水分解生成物が挙げられる。また、ラパマイシンの代謝物は、エステル加水分解を受け得ることも明らかとなっている。Streitはまた、ジ、トリおよびテトラヒドロキシル化ラパマイシン代謝物を部分的に同定した。Wangらは、ラパマイシン処理ラットの胆汁にて、16ヒドロキシル化および/またはデメチル化代謝物を発見した。C.K.Wang et al.,Proceedings of the 41St ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics,San Francisco,545(1993)を参照。Nickmilderには、ラットの肝臓ミクロソームにて、3,4および5,6ジヒドロジオールラパマイシン代謝物を同定した。M.J.M.Nickmilder et al.,Xenobiotica,27,869(1997)を参照。これらの代謝物は、測定された全ラパマイシン誘導体の56%を占めた。最後に、Leungらは、健康な男性ボランティアにて、[14C]−ラパマイシンの傾向を調べた。彼らは、ラパマイシンが血液中の全放射能の約35%に相当すること、41−デメチル、7−デメチルおよび数種のヒドロキシ、ヒドロキシメチルおよびジデメチルラパマイシン代謝物が、個々に、全放射能の1%と12%の間に相当することを発見した。ラパマイシン代謝物は、多数の種々の原料(血液、尿または糞便の試料が挙げられるが、これらに限定されない)から、肝臓ミクロソームから、または微生物培養液から単離できる。
【0108】
従って、31−および42−に加えて、特に重要な水酸基には、ラパマイシンの27−、41−、3−、4−、5−、6−、7−、11−および24−位置にあるもの、およびラパマイシン代謝物が挙げられる。
【0109】
(薬学的組成物および有用性)
本発明の化合物は、それを必要とする動物(例えば、温血動物(特に、ヒト))にそのまままたは薬学的キャリアと共に投与され得る。これらの薬学的組成物はまた、他の薬剤(特に、異なる作用機構を有することが知られている薬剤)を含有し得る。それゆえ、これらの薬学的組成物は、本発明の化合物に加えて、他の種類の少なくとも1種の薬剤(例えば、カルシニュリン阻害剤、ステロイドまたは他の免疫調節化合物(これらは、細胞内または細胞間の情報伝達プロセスまたは他の細胞プロセスを妨害し得る))を含有し得る。カルシニュリン阻害剤の例には、サイクロスポリンA(これは、Sandimmune(登録商標)およびNeoral(登録商標)として、Novartisから入手できる)およびFK506(これはまた、タクロリムスとして、またはFujisawaから入手できるPrograf(登録商標として、知られている)が挙げられる。サイクロスポリン誘導体の例には、W099/18120で開示されたものがある。ステロイドの例としては、プレジソン(predisone)、プレドニソロン(prednisolone)またはメチルプレドニソロンが挙げられる。これらの免疫調節性化合物の例としては、以下が挙げられる:アゾチオプリン(azothioprine)、ミコフェノール酸(ミコフェノレートモフィチル(mycophenolate mofitil)またはRocheから市販されているCellcept(登録商標))、Aventisから市販されているレフルノミド(leflunomide)、ブレキナー(Brequinar)、ミゾリビン、抗体(α−LFA−1、およびα−ICAM−1を含む)、チモグロブリン(thimoglobuline)、IL2Rアンタゴニスト(バシリキシマブ(basiliximab)(Stimulect(登録商標))、およびダクリズマブ(daclizumab)(Zenapax(登録商標))を含む)、アレムツズマブ(alemtuzumab)(Campath 1H(登録商標)、CD52を認識するヒト化モノクローナル抗体)、Orthoclone OKT3(登録商標)またはムロモナブ(muromonab)(CD3)、Atgam(R)リンパ球免疫グロブリン、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、および他の化合物。個々の薬物およびラパマイシン炭水化物誘導体は、薬学的組成物の別の成分として別個に処方され得、そして一緒にかまたは別個に投与され得る。
【0110】
この薬学的に有効なキャリアは、固形または液状であり得る。固形キャリアは、香味料、潤滑剤、可溶化剤、懸濁液、充填剤、グライダント、圧縮助剤、結合剤または錠剤崩壊剤としても作用し得る1種またはそれ以上の物質を挙げることができる;それはまた、カプセル化材料でもあり得る。粉末中では、このキャリアは、細かく分割された固体であり、これは、細かく分割された活性成分と混合されている。錠剤中では、その活性成分は、適当な割合で必要な圧縮プロフィールを有し所望の形状および大きさで緻密化された必要な圧縮プロフィールを有するキャリアと混合される。これらの粉末および錠剤は、99%までの活性成分を含有し得る。適当な固形キャリアには、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低融解性ワックスおよびイオン交換樹脂が挙げられる。
【0111】
液状キャリアは、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル剤および加圧組成物を調製する際に、使用される。この活性成分は、薬学的に受容可能な液状キャリア(例えば、水、有機溶媒、両者の混合物または薬学的に受容可能なオイルまたは脂肪)に溶解または懸濁できる。この液状単体は、他の薬学的に受容可能な添加剤(例えば、可溶化剤、乳化剤、界面活性剤、緩衝液、防腐剤、甘味料、香味料、懸濁剤、増粘剤、着色料、粘度調整剤、安定化剤または浸透圧調整剤)を含有できる。経口投与および非経口投与に適当な液状キャリアの例には、水(これは、部分的に、上記添加剤(例えば、セルロース誘導体(おそらく、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液))、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール(例えば、グリコール)を含めて)およびそれらの誘導体およびオイル(例えば、分別したやし油および落花生油))が挙げられる。非経口投与には、このキャリアはまた、油性エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピル)であり得る。無菌液状キャリアは、非経口投与用の無菌液状組成物中で有用である。加圧組成物用の液状キャリアは、ハロゲン化水素または他の薬学的に受容可能な推進剤であり得る。
【0112】
無菌溶液または懸濁液である液状薬学的組成物は、筋肉内注射、腹腔内注射および皮下注射に適当である。無菌溶液はまた、静脈内に投与できる。この化合物はのまた、液状または固形組成物のいずれかで、経口投与できる。肺投与もまた、考慮される。
【0113】
この薬学的組成物は、単位財形(例えば、錠剤またはカプセル剤)であり得る。このような剤形では、この組成物は、適当な量の活性成分を含有する単位用量に細分される;この単位剤形は、包装した組成物(例えば、パケット粉末、バイアル、アンプル、予め充填した注射器または液体含有におい袋)であり得る。この単位剤形は、例えば、カプセルまたは錠剤それ自体であり得、または包装形状の適当な数の任意のこのような組成物であり得る。治療で使用される投薬量は、担当医により、主観的に決定されなければならない。
【0114】
それに加えて、本発明の化合物は、患部に投与される薬学的に受容可能なビヒクルと処方することにより、溶液、クリームまたはローションとして、使用され得る。
【0115】
本発明の化合物はまた、医療用具と併用できる。例えば、薬剤を被覆または含浸した細胞内ステントの1成分としてのラパマイシン炭水化物誘導体は、新内膜組織増殖を阻止するのに使用され得、それにより、再狭窄を防止する(例えば、米国特許第5,665,728号を参照)。ラパマイシン炭水化物誘導体はまた、他の薬剤を被覆または含浸した医療用具(例えば、カテーテル、ポンプまたは薬剤送達医療用具(例えば、薬剤を含有するビーズまたはディスク))の1成分として、使用できる。ラパマイシン(強力な免疫抑制薬)の存在により、体内で移植可能な医療用具が存在することに対する炎症、拒絶または他の免疫応答が低下し得る。
【0116】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されており、いずれの様式でも本発明の範囲を限定するとは解釈されない。
【実施例】
【0117】
以下の実施例では、以下の略語は、以下の意味を有する。略語は、もし定義されていないなら、一般に受け入れられている意味を有する。
【0118】
g=グラム
mg=ミリグラム
kg=キログラム
mmol=ミリモル
M=モル
N=ノルマル
mL=ミリリットル
min=分
BzCl=塩化ベンゾイル
DMAP=4−ジメチルアミノピリジン
DMS=硫酸ジメチル
Py=ピリジン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
Me=メチル
HOAt=1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBT=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
TBDMSiCl=塩化第三級ブチルジメチルシリル
AcOH=酢酸
THE=テトラヒドロフラン
LC/MSまたはLCMS=液体クロマトグラフィー/質量分析法
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
cone.=濃
eq.=当量
以下の実施例および手順にて、出発物質は、Aldrich Chemical Company,Inc.,Milwaukee,WI 53233 USA;Lancaster Synthesis,Inc.,NH 03087 USA;Sigma,St.Louis MO63178 USA;Maybridge Chemical Co.Trevillett,Tintagel,Cornwall PL34 OHW United Kingdom;TCI America,Portland OR 97203;Frontier Scientific,Utah,USA;and Bachem,Torrance,California,USAから市販されている。
【0119】
(実施例1)
(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成)
図3は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを合成する方法を描写している。詳細な手順は、以下で記述する:
(42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン)
ラパマイシン10.0gのジクロロメタン50mLおよび無水ピリジン10mL溶液を、窒素雰囲気下にて、−78℃まで冷却した。この溶液に、クロロギ酸4−ニトロフェニル3.31gを加え、その反応混合物を、−78℃で、1時間撹拌し、次いで、直接室温にした。2時間後、反応が完結した。その混合物を水で希釈し、そしてジクロロメタンで抽出した。その有機相を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン−酢酸エチル、2:1)にかけると、黄色がかった固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、9.66gの42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシンが得られた。C58H82N2O17、M=1078.6;MS(ES+):m/z=1101.7(M+Na)+
(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン)
D−フルクトース(2.025g、11.24mmol)およびDMAP(250mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(25mL)溶液に、42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(4.05g、3.757mmol)を加え、その反応混合物を、室温で、24時間撹拌した。高真空下にて溶媒を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムでフラッシュカラムクロマトグラフィー(これは、溶媒として、ジクロロメタン−メタノール(9:1)を使用する)にかけた。得られた生成物を分取HPLCカラム(80%メタノール〜20%水、流速10mL/分)で再精製すると、白色固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、1.461gの42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンが得られた。C58H89NO10、M=1119.6;MS(ES+):m/z=1142.7(M+Na)+。代替的には、実施例3で開示したように、DMAPに代えて、HOBT(またはHOAT)が使用され得る。
【0120】
(実施例2)
実施例1で概説したものと類似の手順に従い、適当な糖類または糖誘導体を使用して、以下の化合物を得た:
42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−マルツロシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−イソマルトリオシルカルボニル)ラパマイシン
42−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン
(実施例3)
(31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成)
図4は、31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを合成する方法を描写している。その詳細な手順は、以下で記述する:
(42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)ラパマイシン)
ラパマイシン(10g)およびイミダゾール(2.2g)のN,N−ジメチルホルムアミド(40mL)溶液に、塩化第三級ブチルジメチルシリル(1.76g)を加え、その反応混合物を、室温で、窒素下にて、5日間撹拌した。高真空下にて溶媒を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン−酢酸エチル、3:2)にかけると、灰白色発泡体として、5.84gの42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)ラパマイシンが得られた。C57H93NO13Si、M=1027.6;MS(ES+):m/z=1050.7(M+Na)+。
【0121】
(42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)−31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン)
42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)ラパマイシン(5.84g)をジクロロメタン(30mL)およびピリジン(6mL)に溶解し、クロロギ酸4−ニトロフェニル(2.582g)を加え、その反応混合物を、窒素下にて、室温で、2時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムで精製した。ヘキサン−酢酸エチル(3:1)で溶出すると、黄色がかった発泡体(5.4g)として、表題化合物が得られた。C64H96N2O17Si、M=1192.6;MS(ES+):m/z=1215.6(M+Na)+。
【0122】
(31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン)
42−O−(第三級ブチルジメチルシリル)−31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(5.4g)を、酢酸(30mL)、テトラヒドロフラン(10mL)および水(10mL)の混合物に溶解した。それを、室温で、20時間撹拌した。この混合物を水で希釈し、そして酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。その有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン−酢酸エチル、3:2)にかけると、黄色がかった固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、2.1gの31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシンが得られた。C58H82N2O17、M=1078.6;MS(ES+):m/z=1101.6(M+Na)+。
【0123】
(31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン)
無水ピリジン(20mL)中の31−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(1.3g)、D−フルクトース(0.434g)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(0.325g)の混合物を、室温で、3日間撹拌した。次いで、減圧下にて溶媒を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけた。ジクロロメタン−メタノール(10:1)で溶出すると、白色固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン(0.625g、46%)が得られた。C58H89NO20、M=1119.6;MS(ES+):m/z=1142.7(M+Na)+。
【0124】
類似の様式で、31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシンも調製した。それに加えて、実施例1で開示したように、HOBTに代えて、DMAPが使用され得る。
【0125】
(実施例4)
(42−O−(2−O−メチル−β−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成)
(1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−β−D−フルクトピラノース)
無水ピリジン(52mL)、塩化ベンゾイル(51.5mL、0.444mmol)および無水ジクロロメタン(125mL)の混合物を、−10℃まで冷却した。細かく粉末化したフルクトース(20g、0.111mmol)を少しずつ加え、その反応混合物を、−10℃で、18時間撹拌した。この反応混合物を氷水でクエンチし、ジクロロメタンで希釈し、そして分液漏斗に移した。有機層を分離し、そして5%クエン酸、飽和炭酸水素ナトリウム、水で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。それを濾過し、そして溶媒を蒸発させた。その残留物をジエチルエーテル(75mL)に溶解し、次いで、ヘキサン(300mL)にゆっくりと加えて、白色固形物を得、これを、乾燥すると、58.9g(89%)の1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−β−D−フルクトピラノースが得られた。
【0126】
(1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−2−O−メチル−β−D−フルクトピラノース)
1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−β−D−フルクトピラノース(10.00g、16.8mmol)のアセトン(40mL)溶液に、硫酸ジメチル(2.4ml、25.16mmoles、1.5当量)を加え、続いて、炭酸カリウム(3.48g、25.16mmoles)を加え、その反応混合物を、50℃で、窒素下にて、18時間撹拌した。真空下にて溶媒を除去し、得られた残留物を酢酸エチル(150ml)に溶解し、5%クエン酸、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして油性固形物に濃縮した。シリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル、4:1)で精製すると、白色発泡体として、10.0g(98%)の表題化合物が得られた。
【0127】
(2−O−メチル−β−D−フルクトピラノース)
1,3,4,5−テトラ−O−ベンゾイル−2−O−メチル−p−D−フルクトピラノース(10.0g、16.4mmol)の激しく撹拌した無水メタノール溶液に、ナトリウムメトキシドの溶液(メタノール中で0.5M、10.0mL)を加えた。室温で1.5時間撹拌した後、この反応は完結した。そのpHを、Amberlite IRC−50(約4.0g)で、7.0に調節した。濾過により固形物を除去し、その濾液を真空中で濃縮した。シリカゲルカラム(メタノール:ジクロロメタン、4:1および3:1)で精製すると、白色発泡体2.70g(81%)として、この生成物が得られた。
【0128】
(42−O−(2−O−メチル−β−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン)
無水ピリジン(60mL)中の42−O−(4−ニトロフェニルオキシカルボニル)ラパマイシン(10.0g、9.3mmol)、2−O−メチル−β−D−フルクトピラノース(6.2g、28mmol、3当量)および1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)(2.5g、2当量)の混合物を、室温で、4日間撹拌した。次いで、減圧下にて溶媒を蒸発させ、その残留物を酢酸エチルに再溶解し、水で洗浄した。有機層を蒸発させ、その残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけた。ジクロロメタン−メタノール(100:5)で溶出すると、白色固形物(これは、ベンゼンから凍結乾燥した)として、42−O−(2−O−メチル−β−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン(4.7g、)が得られた。C59H91NO20、M=1133.7;MS(ES+):m/z=1156.7(M+Na)+。
【0129】
(実施例5)
(酸性媒体中での加水分解に対するラパマイシン炭水化物誘導体の安定性)
酸性媒体中での種々のラパマイシン炭水化物誘導体の加水分解に対する安定性は、それらの化合物を70/30 メタノール/0.1N HCl(pH 1.5)に溶解することにより、次いで、1時間で試料中での遊離ラパマイシンの量をHPLCで測定して加水分解の程度を決定することにより、調べた。これらの結果は、表2で要約する。
【0130】
【表2】
表2で分かるように、全ての化合物は、酸性媒体中にて、殆どまたは全く加水分解が観察されず、良好な安定性を示した。
【0131】
(実施例6)
(ヒト全血中でのラパマイシン炭水化物誘導体の加水分解)
種々のラパマイシン炭水化物誘導体が全血中にて加水分解によって遊離ラパマイシンを放出する安定性は、これらの化合物をヒト全血中にてスパイクすることにより、次いで、1時間で試料中での遊離ラパマイシンの量をHPLCで測定して加水分解の程度を決定することにより、調べた。これらの結果は、表3で要約する。
【0132】
【表3】
図3で示すように、ヒト全血中での加水分解の程度は、その炭水化物部分の性質に依存して、大きく変わった。糖類のカーボネート連鎖(例えば、D−フルクトース、L−フシトールまたはD−アロース)を介した取り込みにより、一般に、D−グルコース、D−マルツロースおよびD−ラクタールを使用したときに観察されたよりも高い程度の加水分解が引き起こされた。これらの結果はまた、適当な糖を選択するとき、全血中で遊離ラパマイシンを放出する際に、31−O−および42−O−ラパマイシンの両方が有効であることを示している。さらに、カーバメート連鎖を備えたラパマイシン炭水化物誘導体の全血中での加水分解を調べた先の類似の実験から、表3におけるカーボネート連鎖を備えた化合物の多くと対照的に、殆どまたは全く加水分解がないことが明らかとなった。
【0133】
(実施例7)
(炭酸塩連鎖およびカーバメート連鎖を有するラパマイシン炭水化物誘導体のインビトロ免疫抑制活性の比較)
ラパマイシン(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよび42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのカーバメート連結アナログ(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの非加水分解性形態))の免疫抑制活性を、細胞増殖の検出としてアラマーブルー(alamar blue)を使用して初代血液リンパ球培養(PBMC)において評価した。42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのカーバメートアナログは、アミノ糖から形成され、ここで、この炭水化物部分が、アミノ糖のアミノ窒素元素を介したカルボニルリンカーに結合され、それによって、カーバメート連鎖が形成される。図5は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンは、ラパマイシンと同等の細胞増殖の阻害を示すが、非加水分解性のカーバメート連結アナログは、いかなる内因性免疫抑制活性も有さないことを例示する。このデータは、活性種は、3日の培養の過程で42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの加水分解から生じるラパマイシンであり、非加水分解性の42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンではないことを示す。すなわち、上記プロドラッグは、いかなる内因性の免疫抑制活性も有さないようであり、所望の薬理学的効果を示すためにラパマイシンに加水分解されなけらればならない。この実験はまた、炭水化物部分とラパマイシンとの間の連鎖の選択の重要性を実証する。なぜなら、この実施例において、炭酸塩連鎖は、所望の加水分解が生じることを可能とし、一方、カーバメート連鎖は、インタクトなままであり、ほとんどないか無しかのラパマイシンが放出されるからである。
【0134】
(実施例8)
(ラットにおけるラパマイシンおよびラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールの比較)
インビボにおいて遊離のラパマイシンを血流中へ輸送する誘導体の能力を評価するために、選択されたラパマイシン炭水化物誘導体のラットにおける薬物動態学的プロフィールを決定した。簡単には、Sprague Dawleyラットに2.5mg/kgまたは10mg/kgでラパマイシンおよび誘導体を経口投与した。24時間にわたり頚静脈出血を介して全血を採取し、分析するまで−20℃で凍結した。ラパマイシンの存在について、全血を液体クロマトグラフィー質量分析により分析した。その結果を図6、7および8にまとめている。
【0135】
図6および7に示されるように、ラパマイシンを経口投与すると、血中のラパマイシン濃度の急上昇が観察され、最大濃度は、約30分で達した。次いで、ラパマイシンレベルは、さらに数時間にわたってかなり迅速に降下した。同様のプロフィールが、42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシンについて観察された。しかしながら、驚くべきことに、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンまたは42−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシンを経口投与した場合、血中のラパマイシンのレベルは、約3時間で最大濃度に達するまで徐々に上昇し、その後、時間が経つと徐々に低下した(図6)。同様のプロフィールは、31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよび31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシンの両方(図7)ならびに42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン、42−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシンおよび42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン(図8)について観察される。選択した化合物について観察された遅延性の動態は、ラパマイシンに典型的である投薬よりもより少ない頻度の投薬を可能とする利点を提供し得る。さらに、選択したラパマイシン炭水化物誘導体と関連するラパマイシン濃度の漸進的な上昇は、ラパマイシン自体を経口投与する場合、薬物濃度の急上昇と関連する有毒作用を寛解させ得る。
【0136】
図6、7および8からの第二の観察は、ラパマイシンの濃度の可変性は、グラフに示される標準的な誘導体によって実証されるように、ラパマイシン自体よりもラパマイシン炭水化物誘導体の方がかなり小さいことである。従って、本発明の化合物はまた、より定常で予想可能投薬を可能とし得る、減少した個体間の可変性という利点を有し得る。
【0137】
これらの実験は、グリコシル置換の注意深い選択は、ラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールに対する著明な影響を有すること、および本発明の化合物は、ラパマイシン自体よりもかなりの利点(薬物動態学的利点を含む)を有し得ることを実証した。
【0138】
(実施例9)
(イヌモデルにおけるラパマイシンおよび42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのGI管毒性の比較)
ビーグル犬は、ラパマイシンに関連する胃腸管毒性の過敏性モデルであると考えられている。S.N.Sehgalら,Medicinal Research Reviews 14,1(1994)を参照のこと。イヌに経口的に与えた低用量のラパマイシンの短い曝露でさえ、口から壊死性フィブリン様脈管炎の次の結腸まで生じる潰瘍化による迅速な体重減少をもたらすことが公知である。表4にまとめるように、2匹のビーグル犬に、単回経口用量のラパマイシンを10mg/kgで与えた場合、両方のイヌが、嗜眠性になり、減少した食糧摂取量によって、1週間未満で30%を超える体重減少が生じた。この動物は、回復しなかった。同用量の42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを与えた別のビーグル犬は、明らかな身体的変化を示さず、正常な食糧摂取量を維持した。3匹全てのイヌは、LCMSによって測定される場合、同様のラパマイシンの血中レベルを有した。第4のイヌにおいて、1mg/kgの42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの用量により、わずかな嗜眠を生じたが、このイヌは、急速に回復した。1週間後のラパマイシン(lmg/kg)のその後の投薬は、深刻な嗜眠および体重減少をもたらし、これにより、この動物は、回復しなかった。
【0139】
【表4】
この実験は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの経口投与が、過敏性イヌモデルにおいて、深刻な毒性の徴候に導くラパマイシンと比較してほとんどないかまたは無しの胃腸の毒性の明らかな徴候をもたらしたことを明白に実証する。この結果は、さらに、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体が、ラパマイシンの薬力学的プロフィールを改善するという可能性を実証する。
【0140】
(実施例10)
(ラパマイシンおよび42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンで処置されたラットの血清コレステロールレベルの比較)
コレステロールレベルの変化について、Sprague−Dawleyラットにおいて42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよびラパマイシンを直接比較試験した。等用量(2.5mg/kg/日)のラパマイシンまたは42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのいずれかをラット(n=12)に1日1回12日間投薬した。11日目に24時間の底値レベルで、コレステロールレベルを測定した。結果(図9)は、ラパマイシンで処置したラットは、ビヒクルコントロール群に比較して、コレステロールレベルの有意な上昇を提示することを示す。一方、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン群におけるコレステロールレベルは、ラパマイシン群よりも有意に低く(p<0.01)、上記ビヒクルとは有意に異ならなかった。両方の化合物が、この研究(実施例12)で使用した同一の2.5mg/kg/日の用量で、異所性ラット心臓移植モデルにおいて同等の効力を示したことに注目することが重要である。この実験は、ラパマイシン炭水化物誘導体が抗力を維持しつつ、ラパマイシンの副作用プロフィールを改善する能力を実証する。
【0141】
(実施例11)
(洗浄したヒト血小板凝集アッセイにおけるラパマイシンおよび42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンに起因する血小板凝集の比較)
血小板凝集が、ラパマイシンの副作用であると疑われ、慢性的な拒絶および移植におけるラパマイシンの使用の他の長期副作用の増大に関係している(Ann Babinskaら,Enhancement of Human Platelet Aggregation and Secretion Induced by Rapamycin.(1998)Nephrology Dialysis Transplantation 第13巻 3153−3159頁)。2μM ADPで刺激した新しい洗浄したヒト血小板を使用してこれらの実験を行い、0時間で、ラパマイシンまたは42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのいずれかでスパイクした。ChronoLogTM血小板凝集計で、8〜10分の期間にわたって処理した血小板凝集を連続的に読み取った。
【0142】
図10は、ラパマイシン1μg/mlおよび25μg/mlの2つの濃度について血小板凝集% 対 時間のプロットを示す。図10は、ラパマイシンが、用量依存的様式で血小板凝集を誘導することを例示する。1μg/ml用量でのラパマイシンは、8分後に約20%まで血小板凝集を誘導した。25μg/ml用量でのラパマイシンは、8分後に約70%まで血小板凝集を誘導した。図11は、25μg/mlラパマイシンまたは25μg/ml 42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを投薬し、2μM ADPで刺激した洗浄したヒト血小板について、血小板凝集% 対 時間のプロットを示す。図11は、ラパマイシンは、8分後にほぼ80%の血小板凝集を誘導し、一方、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンは、同時間において血小板凝集に対して測定可能な効果は示さないことを示す。
【0143】
(実施例12)
(42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン(2.5mg/kg/日および10mg/kg/日)、ラパマイシン(2.5mg/kg/日)、またはビヒクルを経口で受けているラットにおける異所性心臓同種異系移植の移植片生着)
Wistar FurthラットからLewisラットに、遺伝的に不適合な(同種異系の)心臓の腹大動脈および下大静脈に局所性移植片を与えた。移植の3日前に開始し、そして移植後30日間連続して、移植レシピエント(1群あたりラット6匹)に、コントロール(ビヒクルおよび2.5mg/kg/日でのラパマイシン)または2.5mg/kg/日および10mg/kg/日での42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンを1日1回経口栄養によって投与した。移植片機能不全が、移植後30日の期間の間、示される場合、その動物を屠殺した。上記動物が、移植後30日より長く生存した場合、試験およびコントロール物を、中止し、この動物に、移植片機能不全までまたは移植の100日後まで存続させた。各群のレシピエント動物についての平均生存率を、表5および図12にまとめた。表5に示されるように、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンは、2.5mg/kg/日および10mg/kg/日の投薬レベルで、ビヒクルコントロールよりも214および341%まで移植片の生着を延長した。これは、2.5mg/kg/日でのラパマイシンで示された延長した生着と同様である。図12は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンが、2.5mg/kg/日の投薬レベルでのラパマイシンのように、上記ビヒクルよりも上記移植片の生着を延長したことを図示する。これらのデータは、移植片拒絶の防止における42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの免疫抑制活性を実証する。
【0144】
【表5】
本発明の一部の実施態様のみが具体的に開示され上で記述されているものの、上記教示に照らして、本発明の精神および意図した範囲から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明の多くの改良および変更が可能であることが理解できる。
【0145】
上記刊行物の全てだけでなく以後述べるいずれの他の参考文献の内容も、各個々の刊行物が具体的かつ個々に本明細書中で参考として援用されているように、同じ範囲まで、本明細書中で参考として援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、フルクトースが溶液においていくつかの立体配置で存在する場合のフルクトースを示す。
【図2】図2は、本発明のラパマイシン炭水化物誘導体の調製の一般的方法を示す。「RAPA−OH」は、ラパマイシンを示し、ここで、水酸基(−OH)は、ラパマイシンの任意の水酸基であり得る。
【図3】図3は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成についての反応経路を示す。
【図4】図4は、31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンの合成についての反応経路を示す。
【図5】図5は、ラパマイシン、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン、および、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンのカーバメート連結アナログのインビトロ免疫抑制活性を示す。
【図6】図6は、ラットにおける選択したラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールを示す。
【図7】図7は、ラットにおける選択したラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールを示す。
【図8】図8は、ラットにおける選択したラパマイシン炭水化物誘導体の薬物動態学的プロフィールを示す。
【図9】図9は、42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよびラパマイシンを用いた処置後のラットにおける血清コレステロールレベルを示す。
【図10】図10は、血小板凝集に対する2つの異なる用量のラパマイシンの効果を示す。
【図11】図11は、血小板凝集に対する42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよびラパマイシンの効果を比較する。
【図12】図12は、ラット心臓移植モデルにおける生存ラットに対する42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシンおよびラパマイシンの効果を例示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造:
【化1】
を有するラパマイシン炭水化物誘導体であって、ここで、
R1およびR2は、独立に、水素または−X−Zであり、
ここで、n=0または1であり;そして
ここで、各Xは、リンカーであり、そして各Zは、炭水化物部分であり、該部分は、独立に、単糖類、オリゴ糖類および偽糖からなる群より選択され、ここで、Zは、Zのヒドロキシル酸素原子を介して、Xに結合されるが、但し、R1およびR2は、共に水素にはなることはない、
ラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項2】
R1が、水素であり、そしてR2が、−X−Zである、請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項3】
請求項2に記載のラパマイシン炭水化物誘導体であって、Xが、以下:
(i)−R3C(O)−;
(ii)−C(O)R3−;
(iii)−R3S(O)2−;および
(iv)−S(O)2R3−;
からなる群より選択され、
ここで、R3は、以下:
(a)−(CH2)p−であって、ここで、pは、1〜18の整数である;
(b)−(CH2)n−O−(CH2)m−であって、ここで、nおよびmは、それぞれ独立に、2〜6の整数である;および
(c)結合
からなる群より選択される、ラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項4】
Xが、−C(O)−および−SO2−からなる群より選択される、請求項3に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項5】
Xが、単一官能基である、請求項2に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項6】
Zが、フルクトース、フシトールおよびアロースからなる群より選択される、請求項2に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項7】
Zが、D−フルクトースである、請求項6に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項8】
Zが、単糖類誘導体であり、ここで、該単糖類の水酸基の少なくとも1個が、水素、アルコキシ、アルカノエートまたはハロゲン基で置き換えられる、請求項3に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項9】
R1が、−X−Zであり、そしてR2が、水素である、請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項10】
請求項9に記載のラパマイシン炭水化物誘導体であって、Xが、以下:
(i)−R3C(O)−;
(ii)−C(O)R3−;
(iii)−R3S(O)2−;および
(iv)−S(O)2R3−;
からなる群より選択され、
ここで、R3は、以下:
(a)−(CH2)p−であって、ここで、pは、1〜18の整数である;
(b)−(CH2)n−O−(CH2)m−であって、ここで、nおよびmは、それぞれ独立に、2〜6の整数である;および
(c)結合
からなる群より選択される、ラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項11】
Xが、−C(O)−および−SO2−からなる群より選択される、請求項10に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項12】
Xが、単一官能基である、請求項9に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項13】
Zが、フルクトース、フシトールおよびアロースからなる群より選択される、請求項9に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項14】
Zが、D−フルクトースである、請求項13に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項15】
Zが、単糖類誘導体であり、ここで、該単糖類の水酸基の少なくとも1個が、水素、アルコキシ、アルカノエートまたはハロゲン基で置き換えられる、請求項9に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項16】
以下:
42−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(メチル−D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フシトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルカリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクタリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−スクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ゲントビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ツラノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−パラチノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ロイクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラフィノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロテトラオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオロイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオニルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノネイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン。
からなる群より選択される、ラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項17】
請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する、薬学的組成物。
【請求項18】
ラパマイシンで処置できる疾患を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に、請求項17に記載の薬学的組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項19】
前記疾患が、移植拒絶、宿主対移植片疾患、移植片対宿主疾患、白血病、リンパ腫、過剰増殖血管障害、自己免疫疾患、炎症疾患、固形腫瘍および真菌感染からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む、医療用具。
【請求項21】
前記医療用具が、請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体で被覆されている、医療用具。
【請求項22】
前記医療用具が、ステント、移植片およびインプラントからなる群より選択される、請求項21に記載の医療用具。
【請求項23】
前記医療用具が、ステント、移植片およびインプラントからなる群より選択される、請求項20に記載の医療用具。
【請求項24】
ラパマイシンで治療できる疾患を治療するための方法であって、それを必要とする被験体に、請求項17に記載の薬学的組成物の治療有効量と、サイクロスポリンまたはサイクロスポリン誘導体、ステロイドまたは免疫調節性化合物からなる群より選択される化合物を含有する薬学的組成物とを同時投与する工程を包含する、方法。
【請求項1】
式(I)の構造:
【化1】
を有するラパマイシン炭水化物誘導体であって、ここで、
R1およびR2は、独立に、水素または−X−Zであり、
ここで、n=0または1であり;そして
ここで、各Xは、リンカーであり、そして各Zは、炭水化物部分であり、該部分は、独立に、単糖類、オリゴ糖類および偽糖からなる群より選択され、ここで、Zは、Zのヒドロキシル酸素原子を介して、Xに結合されるが、但し、R1およびR2は、共に水素にはなることはない、
ラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項2】
R1が、水素であり、そしてR2が、−X−Zである、請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項3】
請求項2に記載のラパマイシン炭水化物誘導体であって、Xが、以下:
(i)−R3C(O)−;
(ii)−C(O)R3−;
(iii)−R3S(O)2−;および
(iv)−S(O)2R3−;
からなる群より選択され、
ここで、R3は、以下:
(a)−(CH2)p−であって、ここで、pは、1〜18の整数である;
(b)−(CH2)n−O−(CH2)m−であって、ここで、nおよびmは、それぞれ独立に、2〜6の整数である;および
(c)結合
からなる群より選択される、ラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項4】
Xが、−C(O)−および−SO2−からなる群より選択される、請求項3に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項5】
Xが、単一官能基である、請求項2に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項6】
Zが、フルクトース、フシトールおよびアロースからなる群より選択される、請求項2に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項7】
Zが、D−フルクトースである、請求項6に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項8】
Zが、単糖類誘導体であり、ここで、該単糖類の水酸基の少なくとも1個が、水素、アルコキシ、アルカノエートまたはハロゲン基で置き換えられる、請求項3に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項9】
R1が、−X−Zであり、そしてR2が、水素である、請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項10】
請求項9に記載のラパマイシン炭水化物誘導体であって、Xが、以下:
(i)−R3C(O)−;
(ii)−C(O)R3−;
(iii)−R3S(O)2−;および
(iv)−S(O)2R3−;
からなる群より選択され、
ここで、R3は、以下:
(a)−(CH2)p−であって、ここで、pは、1〜18の整数である;
(b)−(CH2)n−O−(CH2)m−であって、ここで、nおよびmは、それぞれ独立に、2〜6の整数である;および
(c)結合
からなる群より選択される、ラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項11】
Xが、−C(O)−および−SO2−からなる群より選択される、請求項10に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項12】
Xが、単一官能基である、請求項9に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項13】
Zが、フルクトース、フシトールおよびアロースからなる群より選択される、請求項9に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項14】
Zが、D−フルクトースである、請求項13に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項15】
Zが、単糖類誘導体であり、ここで、該単糖類の水酸基の少なくとも1個が、水素、アルコキシ、アルカノエートまたはハロゲン基で置き換えられる、請求項9に記載のラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項16】
以下:
42−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(メチル−D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(2−O−メチル−L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−アロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−アロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フルクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フルクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−フシトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−フシトリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−フシトリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルカリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−グルコシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルカリルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−グルコシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(L−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ソルボシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(L−ソルボシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクタリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラクタリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−スクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−スクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ゲントビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ゲントビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロビオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ツラノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ツラノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−パラチノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−パラチノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
42−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−マルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−マルトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラクトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(メチル−D−ラクトシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−メリビオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ロイクロシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ロイクロシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−ラフィノシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−ラフィノシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−イソマルトシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−イソマルトトリオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−セロテトラオシルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(D−セロテトラオシルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリオロイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリオニルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリオロイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノリルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノリルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−[2−(D−バリエノネイルカルボニルオキシ)エチル]ラパマイシン;
31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン;
42−O−(2−ヒドロキシエチル)−31−O−(バリエノネイルカルボニル)ラパマイシン。
からなる群より選択される、ラパマイシン炭水化物誘導体。
【請求項17】
請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩と薬学的に受容可能なキャリアとを含有する、薬学的組成物。
【請求項18】
ラパマイシンで処置できる疾患を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に、請求項17に記載の薬学的組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項19】
前記疾患が、移植拒絶、宿主対移植片疾患、移植片対宿主疾患、白血病、リンパ腫、過剰増殖血管障害、自己免疫疾患、炎症疾患、固形腫瘍および真菌感染からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む、医療用具。
【請求項21】
前記医療用具が、請求項1に記載のラパマイシン炭水化物誘導体で被覆されている、医療用具。
【請求項22】
前記医療用具が、ステント、移植片およびインプラントからなる群より選択される、請求項21に記載の医療用具。
【請求項23】
前記医療用具が、ステント、移植片およびインプラントからなる群より選択される、請求項20に記載の医療用具。
【請求項24】
ラパマイシンで治療できる疾患を治療するための方法であって、それを必要とする被験体に、請求項17に記載の薬学的組成物の治療有効量と、サイクロスポリンまたはサイクロスポリン誘導体、ステロイドまたは免疫調節性化合物からなる群より選択される化合物を含有する薬学的組成物とを同時投与する工程を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−503452(P2007−503452A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529489(P2006−529489)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000724
【国際公開番号】WO2004/101583
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(500132720)アイソテクニカ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000724
【国際公開番号】WO2004/101583
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(500132720)アイソテクニカ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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