説明

ラフチジン含有固形製剤

【課題】ラフチジン製剤中のラフチジンの光や熱による分解が有効に抑制され、安定化されたラフチジン含有固形製剤を提供すること。
【解決手段】ラフチジン、及び食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有することを特徴とするラフチジン含有固形製剤、その製造方法、ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とするラフチジンの類縁物質の生成を抑制する方法、並びにラフチジンの光安定化及び熱安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍等の患者の治療に有用なラフチジン含有固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラフチジンは、H受容体拮抗作用を有しており、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、急性胃炎の胃粘膜病変、慢性胃炎急性憎悪期の胃粘膜病変等の治療に使用されている。
【0003】
しかし、ラフチジンには、光や熱により、分解するという問題がある。医薬品の活性成分が分解される場合には、薬効の低下や安全性を損なう可能性があるため、分解をできる限り抑制することが必要である。
【0004】
医薬製剤の光による分解を抑制した製剤としては、例えば、軟カプセル皮膜中に食用黄色5号を均一に分散させて、ニフェジピンの光分解を可及的に防止した光不安定化合物包容用軟カプセル(特許文献1参照)、ソファルコン、ニフェジピン、ビタミンD類、ビタミンK類等の光に不安定な薬物を含有した粉体を、食用黄色4号、5号、食用赤色3号、102号、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等の着色剤を含む結合液で湿式造粒してなる、光安定化した経口固形組成物(特許文献2参照)、アムロジピンと黄色三二酸化鉄等の酸化鉄とを含有する、光安定性の向上した経口固形組成物(特許文献3参照)等が公知である。しかし、これらの製剤には、ラフチジンの光安定化についての記載、示唆は全く無い。
【0005】
一方、白色顔料と黄色酸化鉄及び/又は赤色酸化鉄とを含む軟カプセル剤皮に、活性型ビタミンD類の油性溶液が被包されてなる軟カプセル剤が公知であり、この軟カプセル剤によれば、活性型ビタミンD類の光安定性及び熱安定性に優れることが記載されている(特許文献4参照)。しかしながら、この軟カプセル剤は、活性型ビタミンD類の光安定性の向上は認められるものの、熱安定性の向上は認められない。即ち、特許文献4の表1及び表5から示される通り、軟カプセル剤皮に、白色顔料(酸化チタン)、黄色酸化鉄及び赤色酸化鉄を全く加えていない比較例1が最も1α−ヒドロキシビタミンDの熱安定性が高く、これらのいずれかを加えた実施例1〜5及び比較例2の熱安定性はいずれも低下しており、白色顔料、黄色酸化鉄及び赤色酸化鉄が熱安定性の向上に何ら寄与していないことが明らかである。従って、特許文献4は、医薬製剤の熱による分解を抑制したものとは言えない。勿論、特許文献4には、ラフチジンの光安定化及び熱安定化についての記載、示唆は全く無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−22645号公報
【特許文献2】特開2000−191516号公報
【特許文献3】特開2006−306754号公報
【特許文献4】WO01/015702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ラフチジン製剤中のラフチジンの光や熱による分解が有効に抑制され、安定化されたラフチジン含有固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、ラフチジンと食用黄色5号及び/又は食用赤色102号である着色剤とを含有するラフチジン含有固形製剤、特に、ラフチジンを含有する素錠、素顆粒等の固形物を、上記着色剤を含有する被覆剤で被覆されているラフチジン含有固形製剤によれば、光安定性及び熱安定性のいずれにも優れていることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下のラフチジン含有固形製剤及びその製造方法、ラフチジンの類縁物質の生成を抑制する方法、並びにラフチジンの光安定化及び熱安定化方法を提供するものである。
【0010】
1.ラフチジン、及び食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有することを特徴とするラフチジン含有固形製剤。
【0011】
2.ラフチジンを含有する固形物が、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆されている上記項1に記載のラフチジン含有固形製剤。
【0012】
3.ラフチジンを含有する固形物が、素錠又は素顆粒の形態である上記項2に記載のラフチジン含有固形製剤。
【0013】
4.ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とするラフチジン含有固形製剤の製造方法。
【0014】
5.ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とするラフチジンの類縁物質の生成を抑制する方法。
【0015】
6.ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とするラフチジンの光安定化及び熱安定化方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のラフチジン含有固形製剤によれば、ラフチジンと食用黄色5号及び/又は食用赤色102号である着色剤とを含有すること、特に、ラフチジンを含有する素錠、素顆粒等の固形物を、上記着色剤を含有する被覆剤で被覆したことによって、以下の如き格別顕著な効果を得ることができる。
【0017】
(1)ラフチジン含有固形製剤中のラフチジンの光による分解および熱による分解が、長期間に渡って、有効に抑制されるので、安定化されたラフチジン含有固形製剤が提供される。また、ラフチジンの類縁物質の生成を抑制する方法、並びにラフチジンの光安定化及び熱安定化方法が提供される。
【0018】
(2)上記ラフチジン含有固形製剤は、光及び熱による分解が抑制されているため、ラフチジンの類縁物質等の不純物が少なく、薬効の低下や安全性が損なわれることを、長期間に渡って防止できる。
【0019】
(3)また、本発明のラフチジン含有固形製剤の製造方法によれば、ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号及び/又は食用赤色102号である着色剤を含有する被覆剤で被覆するという簡便な方法で、光安定化及び熱安定化されたラフチジン含有固形製剤を容易に調製できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施例1、実施例2及び比較例1〜4で得たラフチジン含有錠剤の光安定性試験の結果を示したグラフである。
【図2】図2は、実施例1、実施例2及び比較例1〜4で得たラフチジン含有錠剤の熱安定性試験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ラフチジン含有固形製剤
本発明のラフチジン含有固形製剤は、ラフチジンと食用黄色5号及び/又は食用赤色102号である着色剤とを含有するものであり、ラフチジンと、該着色剤と、製薬分野において通常使用される薬理学的に許容される各種添加剤、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤等を、混合し、含有する錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤等の固形製剤であってもよいし、又ラフチジンを含有する素錠、素顆粒等の固形物を、上記着色剤を含有する被覆剤で被覆することによって得られるラフチジン含有被覆固形製剤であってもよい。
【0022】
ラフチジンを含有する固形物
当該固形物としては、ラフチジンと、賦形剤、崩壊剤、結合剤等の添加剤とで構成されている素錠、素顆粒等が好ましいものとして、包含される。
【0023】
ラフチジン
ラフチジンは、本発明固形製剤の薬効成分であり、化学名が(±)−2−(フルフリルスルフィニル)−N−〔4−〔4−(ピペリジノメチル)−2−ピリジル〕オキシ−(Z)−2−ブテニル〕アセタミドである。ラフチジンは、前記の通り、H受容体拮抗作用を有しており、胃潰瘍等の治療薬として有用である。
【0024】
添加剤
ラフチジンは、通常、賦形剤、崩壊剤及び結合剤の少なくとも1種の薬理学的に許容可能な添加剤と組み合わせて用いられる。
【0025】
賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、トウモロコシデンプンなどのデンプン類;乳糖、粉糖、グラニュー糖、ブドウ糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、タルク、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
崩壊剤としては、例えば、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋化ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン類などが挙げられる。これらの崩壊剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
結合剤としては、慣用の結合剤、例えば、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、α化デンプンなどが挙げられる。これらの結合剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
これらの賦形剤、崩壊剤及び結合剤の少なくとも1種である添加剤の割合は、ラフチジン100重量部に対して、200〜3000重量部程度の範囲から選択でき、通常、300〜2500重量部程度であるのが好ましく、500〜2000重量部程度であるのがより好ましい。
【0029】
ラフチジンには、賦形剤、崩壊剤、結合剤などの薬理学的に許容可能な添加剤の他に、さらに、薬理学的に許容可能な慣用の他の添加剤、例えば、滑沢剤、流動化剤、帯電防止剤、界面活性剤、矯味剤、湿潤剤、充填剤、増量剤、吸着剤、保存剤(例えば防腐剤など)、緩衝剤、崩壊延長剤、着色剤などを加えてもよい。
【0030】
上記滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウムなどを挙げることができる。帯電防止剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸などを挙げることができる。界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体などの非イオン系界面活性剤などを挙げることができる。矯味剤としては、例えば、ショ糖、乳糖、マンニトール、キシリトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオシドなどの甘味剤;香料などを挙げることができる。湿潤剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、グリセリン、プロピレングリコールなどを挙げることができる。
【0031】
これら慣用の他の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの成分は、特に、最終製剤中の含量に制限はない。
【0032】
本発明において、ラフチジンを含有する素錠、素顆粒等の固形物は、薬学分野において公知の方法に従って、製造することができる。例えば、ラフチジンと、賦形剤、崩壊剤、結合剤等の添加剤とを、通常使用される溶媒を用いて、混合、造粒、乾燥、整粒、崩壊剤・滑沢剤混合、製錠等の各操作を、当該分野で周知の方法に従って行うことによって、素錠を製造できる。また、これらの操作の内、整粒操作迄の操作によって、素顆粒を製造できる。これらの操作の内、造粒操作は、例えば、撹拌造粒機、流動層造粒機、ブラベンダー、双軸造粒機等の装置を使用して行えばよい。また、製錠は、市販の打錠機を使用して、行うことができる。
【0033】
食用黄色5号及び/又は食用赤色102号である着色剤を含有する被覆剤
本発明で用いる食用黄色5号及び/又は食用赤色102号である着色剤を含有する被覆剤としては、種々の形態を取りうるが、一般にその適用にあたっては、当該着色剤に、必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、白糖等の当該分野で周知のコーティング剤を配合してなるものを、水性溶液、水性分散液、有機溶媒溶液あるいは有機溶媒分散液の形態としたものを使用し得る。ここで、被覆剤における食用黄色5号及び/又は食用赤色102号である着色剤の含有量は、通常、0.02〜2.0重量%程度であるのが好ましく、0.06〜1.5重量%程度であるのがより好ましい。
【0034】
本発明においては、食用黄色5号及び/又は食用赤色102号である特定の着色剤を被覆剤として用いることが必須であり、かかる特定の着色剤によって、薬効成分であるラフチジンの光安定性及び熱安定性を著しく向上せしめることができる。この食用黄色5号の化学名は2−ヒドロキシ−6−スルホナートナフタレン−1−アゾ−(4’−ベンゼンスルホン酸)二ナトリウムであり、又食用赤色102号の化学名は2−ヒドロキシアゾナフタレン−4’,6,8−トリスルホン酸三ナトリウムである。
【0035】
上記被覆剤を、素錠、素顆粒等にコーティングする場合、フィルムコーティング機、流動層造粒機等の手段により実施するのが好ましい。
【0036】
被覆剤の被覆量は、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤として、ラフチジンを含有する素錠、素顆粒等の固形物100重量部に対して、3〜12重量部程度が好ましく、5〜10重量部程度がより好ましい。
【0037】
上記被覆剤を、素錠、素顆粒等にコーティングするに当たって、素錠、素顆粒等に予めプレコーティングを施しておいてもよく、または上記被覆剤を被覆した製剤にオーバーコーティングを施してもよい。プレコーティング及びオーバーコーティングには、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、白糖等の当該分野で周知のコーティング剤を用いることができる。
【0038】
本発明のラフチジン含有固形製剤は、種々の使用形態(例えば、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、ドライシロップ剤等)に使用できるが、錠剤の形態で使用するのが好ましい。
【0039】
本発明のラフチジン含有固形製剤を使用する場合、ヒトに、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、急性胃炎の胃粘膜病変、慢性胃炎急性憎悪期の胃粘膜病変等の治療の有効量を投与すればよい。患者の年令、体重、症状、性別などにより投与量は変わりうるが、通常、1日当たり、1回または数回に分けて、ラフチジンに換算して、例えば5〜160mg程度を経口的に投与することができる。
【0040】
本発明固形製剤は、例えば、60℃の条件で4週間保存後の類縁物質の総量が、0.4重量%未満である。ここで、類縁物質としては、2−(フルフリルスルフォニル)−N−〔4−〔4−(ピペリジノメチル)−2−ピリジル〕オキシ−(Z)−2−ブテニル〕アセタミド等が挙げられる。
【0041】
本発明固形製剤は、PTP(プレススルーパッケイジ)包装またはボトル包装(例:ポリ瓶、ガラス瓶、アルミ缶)されていてもよい。また、包装中には脱臭剤、乾燥剤、脱酸素剤等を同封しても良い。
【0042】
本発明は、ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とする、当該ラフチジンの類縁物質の生成を抑制する方法を提供する。ラフチジン、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤、被覆方法等は、前述した通りである。
【0043】
また、本発明は、ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とする、当該ラフチジンの光安定化及び熱安定化方法をも提供する。ラフチジン、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤、被覆方法等は、前述した通りである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0045】
実施例1
(1)素錠の調製
ラフチジン420g、乳糖水和物1541.4gを、ハンマーミル(商品名「アトマイザー」、不二パウダル(株)製)にて混合粉砕し、混合粉砕末を得た。得られた混合粉砕末1868g、結晶セルロース720g、トウモロコシデンプン80g、クロスカルメロースナトリウム160gを、流動層造粒機(商品名「FLO−5B」、フロイント社製)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名「HPC−L」、日本曹達(株)製)の5.0重量%水溶液2080gを噴霧することにより、流動層造粒した。得られた造粒末を整粒機(商品名「パワーミル」、ダルトン社製)にて整粒し、整粒末を得た。得られた整粒末800g、乳糖水和物241.2g、結晶セルロース87.3g、トウモロコシデンプン69.9g、クロスカルメロースナトリウム52.4g、ヒドロキシプロピルセルロース28.4g、軽質無水ケイ酸8.7g、ステアリン酸マグネシウム21.8gを、混合機(商品名「VM−5」、不二パウダル(株)製)にて混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機(商品名「VIRGO−512」、菊水製作所(株)製)で、直径5.5mmの臼、曲率半径7mmのR面杵にて、1錠当たりの重量60.0mg、厚み2.45mmとなるように製錠し、素錠を得た。
【0046】
(2)素錠の被覆
上記(1)で得た素錠100gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「AW−4」、サムスンケミカル(株)製)20g、マクロゴール(PEG6000)2g、タルク3g、食用黄色5号0.3gを精製水175gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(商品名「HC−LABO」、フロイント社製)にて、素錠重量に対して8.3%(w/w)コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0047】
実施例2
実施例1の(1)で得た素錠100gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「AW−4」、サムスンケミカル(株)製)20g、マクロゴール(PEG6000)2g、タルク3g、食用赤色102号0.3gを精製水175gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(商品名「HC−LABO」、フロイント社製)にて、素錠重量に対して8.3%(w/w)コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0048】
比較例1
実施例1の(1)で得た素錠100gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「AW−4」、サムスンケミカル(株)製)20g、マクロゴール(PEG6000)2g、タルク3gを精製水175gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(商品名「HC−LABO」、フロイント社製)にて、素錠重量に対して8.3%(w/w)コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0049】
比較例2
実施例1の(1)で得た素錠100gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「AW−4」、サムスンケミカル(株)製)17g、マクロゴール(PEG6000)2g、タルク3g、酸化チタン3gを精製水175gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(商品名「HC−LABO」、フロイント社製)にて、素錠重量に対して8.3%(w/w)コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0050】
比較例3
実施例1の(1)で得た素錠100gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「AW−4」、サムスンケミカル(株)製)20g、マクロゴール(PEG6000)2g、タルク3g、黄色三二酸化鉄0.3gを精製水175gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(商品名「HC−LABO」、フロイント社製)にて、素錠重量に対して8.3%(w/w)コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0051】
比較例4
実施例1の(1)で得た素錠100gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「AW−4」、サムスンケミカル(株)製)20g、マクロゴール(PEG6000)2g、タルク3g、三二酸化鉄0.3gを精製水175gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(商品名「HC−LABO」、フロイント社製)にて、素錠重量に対して8.3%(w/w)コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0052】
表1に、素錠1錠(60.0mg)当たりの被覆成分の処方を示した。表中、HPMCは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを示す。
【0053】
【表1】

【0054】
次に、実施例1、実施例2及び比較例1〜4で得たラフチジン含有被覆錠剤の光安定性試験及び熱安定性試験を行った。光安定性試験は、白色蛍光灯照射下(2000Lux)に14日間、28日間及び42日間、非包装開放下に保存して、行った。また、熱安定性試験は、60℃の保存条件下に14日間及び28日間、非包装開放下に保存して、行った。
【0055】
開始時及び各安定性試験後の被覆錠剤について、HPLCを用いて、ラフチジンのピーク面積及び各類縁物質のピーク面積を調べて、ラフチジンのピーク面積に対する各類縁物質のピーク面積の比率の総和を、算出した。HPLC測定方法は、下記の通りである。
【0056】
HPLC測定方法
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:220nm)
カラム:「オクタデシルシリル化シリカゲル」(粒度5μm、カラム内径3mm、カラム長さ250mm、ジーエルサイエンス(株)製)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相A:リン酸二水素カリウム1.36gを水900mlに溶解し、トリエチルアミン1mlを加え、更に水を加えて1000mlとし、リン酸を用いて、pH5.0に調整する。
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相AとBとの混合比を、サンプル注入後0〜5分はA/Bを85/15とし、5〜25分は85/15〜70/30の濃度勾配とし、25〜45分は70/30〜20/80の濃度勾配とし、45〜47分は20/80〜85/15の濃度勾配とし、47分以降は85/15とする。
流量:ラフチジンの保持時間が約20分になるように調整する。
面積測定範囲:60分。
【0057】
表2に、実施例1、実施例2及び比較例1〜4で得たラフチジン含有錠剤について、光安定性試験の試験開始時並びに光安定性試験を14日間、28日間及び42日間行った時のラフチジンのピーク面積に対する総類縁物質ピーク比率(%)を示した。
【0058】
【表2】

【0059】
また、図1に、表2に示した、実施例1、実施例2及び比較例1〜4で得たラフチジン含有錠剤についての光安定性試験結果のグラフを示した。
【0060】
表2及び図1より、ラフチジンを含有する素錠を、食用黄色5号又は食用赤色102号である着色剤を含有する被覆剤で被覆することによって、光照射下での類縁物質の生成が抑えられ、光安定性が顕著に向上することが明らかである。一方、三二酸化鉄(比較例4)である着色剤を用いた場合は、本発明と同程度の光安定性の向上が認められるものの、酸化チタン(比較例2)及び黄色三二酸化鉄(比較例3)である着色剤を用いても光安定性の顕著な向上は認められないことが明らかである。
【0061】
表3に、実施例1、実施例2及び比較例1〜4で得たラフチジン含有錠剤について、熱安定性試験の試験開始時並びに熱安定性試験を14日間及び28日間行った時のラフチジンのピーク面積に対する総類縁物質ピーク比率(%)を示した。
【0062】
【表3】

【0063】
また、図2に、表3に示した、実施例1、実施例2及び比較例1〜4で得たラフチジン含有錠剤についての熱安定性試験の結果のグラフを示した。
【0064】
表3及び図2より、ラフチジンを含有する素錠を、食用黄色5号又は食用赤色102号である着色剤を含有する被覆剤で被覆することによって、高温条件下での類縁物質の生成が抑えられ、熱安定性が顕著に向上することが明らかである。一方、食用黄色5号及び食用赤色102号以外の酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄である着色剤を用いても熱安定性の向上は殆ど認められないことも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のラフチジン含有固形製剤は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、急性胃炎の胃粘膜病変、慢性胃炎急性憎悪期の胃粘膜病変等の治療に有用であり、本発明は製薬分野において有効に利用される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラフチジン、及び食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有することを特徴とするラフチジン含有固形製剤。
【請求項2】
ラフチジンを含有する固形物が、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆されている請求項1に記載のラフチジン含有固形製剤。
【請求項3】
ラフチジンを含有する固形物が、素錠又は素顆粒の形態である請求項2に記載のラフチジン含有固形製剤。
【請求項4】
ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とするラフチジン含有固形製剤の製造方法。
【請求項5】
ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とするラフチジンの類縁物質の生成を抑制する方法。
【請求項6】
ラフチジンを含有する固形物を、食用黄色5号、食用赤色102号又はこれらの混合物である着色剤を含有する被覆剤で被覆することを特徴とするラフチジンの光安定化及び熱安定化方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−41290(P2012−41290A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182772(P2010−182772)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000209049)沢井製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】