説明

ラベル、粘着ラベル及び印刷物

【課題】物品に貼り付けられたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制可能とする。
【解決手段】本発明のラベル1は、或る波長の光を透過させる光学機能層13と、前記光学機能層13と向き合い、前記波長の光を吸収する光吸収パターン層14と、前記光吸収パターン層14の前方に位置し、前記波長の光を透過させる光透過層12であって、加熱によって発泡する発泡性材料を含んだ光透過層12とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偽造防止に利用可能なラベル並びにそれを含んだ粘着ラベル及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偽造品の流通が大きな社会問題となっている。そこで、例えば、物品に、それが真正品であることを確認可能とするラベルを付することがある。そのようなラベル、所謂偽造防止ラベルとしては、例えば、蛍光インキ及びOVI(optically variable ink)などの機能性インキによって形成した印刷層を含んだラベル、マイクロ印刷及び凹版印刷などの特殊印刷によって形成した印刷層を含んだラベル、ホログラム又は回折格子を含んだラベル、磁気記録によって情報を書き込んだラベル、並びにIC(integrated circuit)タグを含んだラベルがある。
【0003】
これら偽造防止ラベルの多くは、それ自体の偽造が困難である。但し、偽造防止ラベルの中には、これが貼り付けられた物品から比較的容易に剥がすことができるものがある。そのようなラベルは、使用済みの物品から剥がして偽造品に貼り付けるといった不正行為に使用される可能性がある。
【0004】
偽造防止ラベルの中には、その再使用を不可能とするための対策を講じたものもある。
【0005】
例えば、一部の偽造防止ラベルには、切欠きが設けられている。そのような偽造防止ラベルは、これが貼り付けられた物品から引き剥がそうとすると、切欠きの位置から裂けるように設計されている。
【0006】
また、基材が比較的小さな力で脆性破壊を生じる偽造防止ラベルもある。このようなラベルも、これが貼り付けられた物品から引き剥がそうとすると破壊されるように設計されている。
【0007】
更に、比較的小さな力で脆性破壊を生じる脆性層を含み、この脆性層とその観察者側の面に隣接した層との接着強度が場所によって異なっている偽造防止ラベルもある。このようなラベルを、これが貼り付けられた物品から引き剥がすと、接着強度の分布に対応したパターンで脆性層が破壊される。その結果、例えば、脆性層等の一部は物品上に文字列「VOID」に対応したパターンで残り、偽造防止ラベルの脆性層等には、文字列「VOID」に対応したパターンの欠落部を生じる。
【0008】
これら偽造防止ラベルは、引き剥がすことによって物品から剥離した場合には、再使用は不可能であるか又は困難である。しかしながら、これら偽造防止ラベルは、粘着層又は接着層に有機溶剤を滲み込ませると、ラベル本体の損傷なしに剥離できることがある。
【0009】
これを不可能又は困難とするための技術を採用した偽造防止ラベルもある。
例えば、粘着層の材料として、粘着剤とこれに対して難溶性の添加剤との混合物を使用した偽造防止ラベルがある(例えば、特許文献1参照)。この偽造防止ラベルは、有機溶剤を使用して剥離した場合、粘着剤及び添加剤の有機溶剤に対する溶け易さの相違に起因して、粘着層の表面に凹凸を生じる。
【0010】
また、印刷層が有機溶剤に可溶な染料を含有した偽造防止ラベルもある(例えば、特許文献2参照)。この偽造防止ラベルは、有機溶剤を使用して剥離しようとすると、染料が印刷層から滲み出る。
【0011】
なお、このラベルは、ドライヤ等で表面を温めることによって、ラベル本体の損傷や染料の染み出しなしに剥離することができる。加熱による剥離への対策を施した偽造防止ラベルとしては、例えば、加熱によって発泡する発泡粒子を粘着層に含有させた偽造防止ラベルがある(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
これら偽造防止ラベルは、有機溶剤又は熱を利用して剥離した場合には、再使用が不可能であるか又は困難である。但し、使用期間を終えた物品については、偽造防止ラベルが、これが貼り付けられた物品の表層とともに除去される可能性を考慮しなければならない。上述した対策では、このようにして除去した偽造防止ラベルの再使用を防ぐことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−266147号公報
【特許文献2】特開平10−204363号公報
【特許文献3】特開2000−293108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、物品に付されたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1側面によると、或る波長の光を透過させる光学機能層と、前記光学機能層と向き合い、前記波長の光を吸収する光吸収パターン層と、前記光吸収パターン層の前方に位置し、前記波長の光を透過させる光透過層であって、加熱によって発泡する発泡性材料を含んだ光透過層とを具備したラベルが提供される。
【0016】
本発明の第2側面によると、前記波長は近赤外線領域内にあり、前記光学機能層の前記波長における透過率は30%以上であり、前記光学機能層は、近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500nmの波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上である第1側面に係るラベルが提供される。
【0017】
本発明の第3側面によると、前記光吸収パターン層と前記光学機能層とは同じ色である第1又は第2側面に係るラベルが提供される。
【0018】
本発明の第4側面によると、第1乃至第3側面の何れか1つに係るラベルと、前記ラベルの前記光吸収パターン層側の主面と向き合った粘着層とを具備した粘着ラベルが提供される。
【0019】
本発明の第5側面によると、第1乃至第3側面の何れか1つに係るラベルと、前記ラベルの前記光吸収パターン層側の主面と向き合った印刷基材と、前記ラベルと前記印刷基材との間に介在して、前記ラベルを前記印刷基材に貼り付けた粘着層とを具備した印刷物が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、物品に貼り付けられたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制することが可能となる。
【0021】
第1側面に係るラベルでは、光透過層の少なくとも一部について、加熱により発泡性粒子を発泡させる処理(以下、「無効化処理」という)を行うと、その箇所において、光透過層の上記波長(以下、「第1波長」という)における透過率が低くなる。その結果、このラベルでは、上記の無効化処理によって、光吸収パターン層の観察が不可能となるか、又は、その観察が困難となる。よって、この変化を肉眼で及び/又は機械読み取りで検出することにより、無効化処理の有無を判別することができる。
【0022】
第2側面に係るラベルは、第1側面に係るラベルのうち、第1波長が近赤外線領域内にあり、光学機能層の第1波長における透過率が30%以上であり、前記光学機能層は、近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500nmの波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上であるものである。即ち、光学機能層の近赤外線領域における透過スペクトルは、第1波長において高い透過率を示し、前記近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500nmの波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上となる。従って、真偽判定に第1波長の光を利用することを知らない者にとっては、無効化処理を行う前のラベルと無効化処理を行った後のラベルとの相違を判別することは不可能であるか又は困難である。それ故、上記の無効化処理を利用した偽造防止対策を講じていることは、不正行為を行う者に悟られ難い。
【0023】
第3側面に係るラベルは、第1又は第2側面に係るラベルのうち、光吸収パターン層と光学機能層とが同じ色のものである。この場合、無効化処理を行う前において、光吸収パターン層の存在が悟られ難い。よって、このような構成を採用すると、ラベル自体の偽造を抑止することが可能となる。
【0024】
第4側面に係る粘着ラベルは、第1乃至第3側面の何れか1つに係るラベルを含んでいる。粘着ラベルは、先のラベルを物品に貼り付ける場合に利用可能な一形態である。
【0025】
第5側面に係る印刷物は、第1乃至第3側面の何れか1つに係るラベルを含んでいる。この印刷物は、その使用期間を終了した後にラベルが再使用される可能性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一態様に係るラベルを概略的に示す平面図。
【図2】図1に示すラベルのII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示すラベルの無効化処理法の一例を概略的に示す図。
【図4】無効化処理が施されたラベルの一例を概略的に示す平面図。
【図5】図4に示すラベルのV−V線に沿った断面図。
【図6】図1及び図2に示すラベルの他の変形例を概略的に示す断面図。
【図7】粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図8】印刷物の一例を概略的に示す平面図。
【図9】図8に示す印刷物のIX−IX線に沿った断面図。
【図10】無効化処理の前後における分光特性の変化の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、ここで「近赤外線領域」とは、700nm乃至1500nmの波長域を意味している。
【0028】
図1は、本発明の一態様に係るラベルを概略的に示す平面図である。図2は、図1に示すラベルのII−II線に沿った断面図である。
【0029】
図1及び図2に示すラベル1は、基材11と、光学機能層13と、光吸収パターン層14と、光透過層12とを含んでいる。光学機能層13、光吸収パターン層14及び光透過層12は、この順で基材11上に積層されている。ラベル1は、光透過層12側の面が前面であり、基材11側の面が背面である。
【0030】
光透過層12、光吸収パターン層14及び光学機能層13は、この順で基材11上に積層されていてもよい。この場合、ラベル1は、基材11側の面が前面であり、光学機能層13側の面が背面である。
【0031】
基材11は、例えば、樹脂からなるフィルムである。この樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエチレンなどのプラスチックを使用することができる。基材は、典型的には透明であるが、アルミニウム箔のように不透明であってもよい。但し、ラベル1の基材11側の面を前面とする場合、基材11としては、第1波長の光を、典型的には互いに異なる第1及び第2波長の光を透過させるものを使用する。
【0032】
基材11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材11としては、後述する光学機能層13と比較して高い反射率を有しているものを用いることが好ましい。なお、基材11は省略することができる。
【0033】
光学機能層13は、基材11の上に設けられている。光学機能層13は、第1波長の光を透過させる。第1波長の光に対する光学機能層13の透過率は、例えば30%以上であり、典型的には30乃至60%の範囲内にある。
【0034】
光学機能層13は、着色していてもよい。光学機能層13は、典型的には、黒色層である。なお、ここで「黒色」とは、正反射光の強度を測定したときに、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について、反射率が10%以下であることを意味している。
【0035】
第1波長が近赤外領域内にある場合、光学機能層13として、第1波長における透過率が30%以上であり、前記光学機能層は、近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500nmの波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上であるものを使用してもよい。即ち、光学機能層13は、近赤外領域における透過スペクトルが、第1波長において高い透過率を示し、他の多くの波長で低い透過率を示すものであってもよい。ここでは、一例として、光学機能層13は、このような光学特性を有していることとする。また、ここでは、第2波長も近赤外領域内にあり、第2波長における光学機能層13の透過率は、第1波長における光学機能層13の透過率と比較してより低いこと、例えば、第1波長における光学機能層13の透過率の80%以下であることとする。
【0036】
上記の光学特性、即ち、近赤外領域内の光のうち、一部の波長域の光を選択的に透過させ、残りの光を吸収する光学特性を有している光学機能層13は、例えば、所定の近赤外線吸収剤と樹脂とを含んでいる。この近赤外線吸収剤は、例えば、上記第2波長の光を吸収する。この近赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、ジイモニウム化合物、及びシアニン化合物からなる群より選択される少なくとも1つを使用することができる。また、樹脂としては、例えば、プロセスインキにおいて一般に使用されているものを使用することができる。
【0037】
光学機能層13は、例えば、印刷法により形成する。この印刷法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、及びフレキソ印刷法が挙げられる。光学機能層13の厚みは、例えば0.5乃至10μmの範囲内とし、典型的には2乃至5μmの範囲内とする。
【0038】
光吸収パターン層14は、光学機能層13上に設けられている。光吸収パターン層14は、光学機能層13を間に挟んで光透過層12の一部と向き合っている。図1及び図2に示す例では、光吸収パターン層14は、一次元コードを構成している。光吸収パターン層14は、二次元コードを構成していてもよい。或いは、光吸収パターン層14は、文字、記号、模様及び図形などの他のパターンを構成していてもよい。
【0039】
光吸収パターン層14は、第1波長の光を吸収する。具体的には、光吸収パターン層14の第1波長における吸収率は、ラベル1の製造直後における光透過層12の第1波長における吸収率及び光学機能層13の第1波長における吸収率と比較してより大きい。第1波長の光に対する光吸収パターン層14の吸収率は、例えば50%以上であり、典型的には80%以上である。
【0040】
第1波長が近赤外領域内にある場合、光吸収パターン層14は、例えば、近赤外線吸収剤と樹脂とを含有している。この樹脂としては、例えば、プロセスインキにおいて一般に使用されているものを使用することができる。
【0041】
ここで使用する近赤外線吸収剤は、典型的には、光学機能層13において使用する近赤外線吸収剤とは、近赤外線領域の吸収スペクトルが異なっている。例えば、ここで使用する近赤外線吸収剤は、光学機能層13において使用する近赤外線吸収剤と比較して、第1波長の光に対する吸収率がより大きい。この近赤外線吸収剤としては、例えば、プロセス墨インキに用いられているカーボンブラックを使用することができる。或いは、この近赤外線吸収剤として、光学機能層13の近赤外線吸収剤として例示した化合物を使用してもよい。
【0042】
光吸収パターン層14は、光学機能層13と同色にするか、又は、第1波長の光に対して十分な吸収率を示す限り、薄い色にすることが好ましい。こうすると、ラベル1を肉眼で観察した場合に、光吸収パターン層14の存在が分かり難くなる。
【0043】
光吸収パターン層14は、後述する光透過層12に対応した領域のほぼ全体に亘って分布していることが望ましい。こうすると、光学機能層13の分光特性の解析を困難とすることができる。
【0044】
光吸収パターン層14は、例えば、印刷法により形成する。この印刷法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、及びフレキソ印刷法が挙げられる。或いは、光吸収パターン層14は、熱転写リボン、インクジェット印字法、レーザー印字法を用いて形成してもよい。光吸収パターン層14の厚みは、例えば0.5乃至10μmの範囲内とし、典型的には0.5乃至2μmの範囲内とする。
【0045】
光透過層12は、光吸収パターン層14を間に挟んで光学機能層13と向き合っている。即ち、光透過層12は、光吸収パターン層14に対して前方に位置している。
【0046】
光透過層12は、第1波長の光を透過する。即ち、光透過層12は、少なくともラベル1の完成から無効化処理が施されるまでの期間に亘り、第1波長の光を透過させる。
【0047】
光透過層12は、加熱することによって発泡する発泡性材料を含んでいる。そして、この光透過層12は、上記の発泡性材料を発泡させる処理を行うことにより、当該処理が施された位置において、第1波長における透過率が低下するように構成されている。光透過層12の第1波長における透過率が低下すると、その後方に位置している光吸収パターン層14及び光学機能層13に起因した光学効果が視認又は検出し難くなる。このような光学効果の差異を視認又は検出することにより、無効化処理の有無を判断し、その判断に基づいて、ラベル1の真偽を判定することができる。
【0048】
ラベル1の製造直後において、第1波長の光に対する光透過層12の透過率T1は、例えば、30乃至60%の範囲内にあり、無効化処理後において、第1波長の光に対する光透過層12の透過率T2は、例えば、40乃至80%の範囲内にある。そして、透過率T2と透過率T1との比は、例えば、0.25乃至0.6の範囲内にあり、典型的には0.3乃至0.5の範囲内にある。
【0049】
光透過層12は、典型的には、上記発泡性粒子と、これらを保持するバインダ樹脂とを含んでいる。
【0050】
この発泡性粒子は、例えば、熱可塑性プラスチックを外殻に含んだ中空粒子と、それに内包された液状ガスとを含んでいる。この中空粒子は、例えば略球状であり、典型的には球状である。この中空粒子を構成している熱可塑性プラスチックとしては、例えば、ポリスチレン、ポリオレフィン及びポリ塩化ビニルが挙げられる。また、上記液状ガスとしては、例えば、低沸点炭化水素が挙げられる。
【0051】
上記の構成を有した発泡性粒子が加熱されると、中空粒子に内包された液状ガスの気化が生じる。その結果、中空粒子の内圧が上昇して、その外殻を構成している熱可塑性プラスチックが軟化する。その結果、発泡性粒子の体積膨張が生じる。なお、典型的には、この体積膨張と共に、光透過層12の白濁が生じる。
【0052】
バインダ樹脂としては、一般的なものを使用することができる。使用可能なバインダ樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0053】
光透過層12は、例えば、塗布法により形成する。この塗布は、例えば、エアーナイフコータ、ロールコータ、スプレーコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ、又はバーコータを用いておこなうことができる。光透過層12の膜厚は、例えば3乃至30μmの範囲内とし、典型的には5乃至10μmの範囲内とする。
【0054】
以上において説明したラベル1の真偽判定は、典型的には、機械読み取りにより行う。例えば、この真偽判定は、特定の波長域の光を検出可能なセンサー、又は、所定の波長域の光を透過するバンドパスフィルタを備えたCCD(Charge Coupled Device)カメラを用いて行うことができる。或いは、ラベル1の真偽判定は、目視により行うこともできる。或いは、機械読み取りによる判定と、目視による判定とを組み合わせて行ってもよい。
【0055】
図1及び図2に示すラベル1を第1波長の光で照明した場合、この光は、光透過層12を透過する。よって、この場合、ラベル1は、第1波長の光で照明すると、光吸収パターン層14及び光学機能層13に特有の分光特性を示す。この分光特性は、ラベル1の具体的な構成に対応した特異的なものである。よって、この分光特性を測定することにより、ラベル1の真偽を判定することができる。
【0056】
加えて、このラベル1には、以下で説明する無効化処理を施すことができる。このような処理を施すことにより、ラベル1の不正な再利用を抑止することができる。
【0057】
図3は、図1及び図2に示すラベルの無効化処理法の一例を概略的に示す図である。図4は、無効化処理が施されたラベルの一例を概略的に示す平面図である。図5は、図4に示すラベルのV−V線に沿った断面図である。
【0058】
図3に示す無効化処理法では、サーマルヘッド41をラベル1に対して接触あるいは走査させて、光散乱層12の少なくとも一部を加熱する。これにより、光透過層12の加熱された部分が含んでいる発泡性粒子の少なくとも一部が発泡する。
【0059】
この無効化処理を行うと、サーマルヘッド41がラベル1と接触したあるいは走査した位置で、光透過層12の体積が膨張し、光透過層12が白濁すると共に、第1波長における光透過層12の透過率が低下する。その結果、図5に示すように、光散乱層12内に、第1波長における光透過層12の透過率が無効化処理前のままである第1領域12aと、第1波長における光透過層12の透過率が無効化処理前と比較してより低い第2領域12bとが生じる。
【0060】
ラベル1のうち第2領域12bに対応した部分では、第1波長における光透過層12の透過率が低下するため、光吸収パターン層14及び光学機能層13に基づいた光学効果が視認又は検出できなくなるか、又は、その視認又は検出がより困難となる。即ち、無効化処理の前後における当該部分の分光特性は、互いに異なっている。
【0061】
このように、上述した無効化処理を行うと、光透過層12の第1波長における透過率が低下すると共に、典型的には、可視光領域における透過率も低下する。それゆえ、典型的には、第1波長において機械読み取りを行った場合、及び、肉眼で観察した場合の双方において、ラベル1の光学効果が変化する。より具体的には、ラベル1のうち第2領域12bに対応した部分において、光透過層12の後方に位置している光吸収パターン層14及び光学機能層13に起因した光学効果が検出又は視認し難くなる。よって、このような光学効果の差異に基づいて、ラベル1に上記処理が施されているか否かを判定することができる。
【0062】
光透過層12における発泡は、不可逆変化である。したがって、いったん無効化処理を施されたラベル1を、処理前の状態に戻すことは不可能である。それ故、ラベル1に上記処理を施すことにより、ラベル1の不正な再利用を確実に抑止することが可能となる。
【0063】
ラベル1の真偽判定は、複数の波長の光を用いて行ってもよい。例えば、ラベル1の真偽判定は、第1波長の光と、第1波長とは異なった第2波長の光とを用いて行ってもよい。或いは、ラベル1の真偽判定は、第1波長の光と、第1波長とは異なった2つ以上の波長の光とを用いて行ってもよい。真偽判定に用いる波長の数は、例えば1乃至5の範囲内とし、好ましくは2乃至5の範囲内とする。真偽判定に用いる波長の数が多すぎると、ラベル1の真偽判定に要する時間が過度に長くなる可能性がある。
【0064】
上述したラベル1には、様々な変形が可能である。
図6は、図1及び図2に示すラベルの一変形例を概略的に示す断面図である。図6に示すラベル1は、光吸収パターン層14と光学機能層13との積層順が逆転していることを除いては、図1乃至図5を参照しながら説明したラベルと同様の構成を有している。
【0065】
図6に示すラベル1も、例えば第1波長の光で照明したときに、上述した無効化処理の前後において、互いに異なった分光特性を示す。それ故、例えばこの分光特性の差異を検出することにより、真偽判定を行うことができる。
【0066】
次に、上述したラベル1を含んだ粘着ラベル及び印刷物を説明する。
図7は、粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。
図7に示す粘着ラベル10は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と、粘着層2とを含んでいる。粘着層2は、ラベル1の背面上に設けられている。
【0067】
この粘着ラベル10は、例えば、真正品であることを確認可能であることが望まれる物品に貼り付ける。なお、粘着ラベル10は、粘着層2の表面を剥離可能に被覆した剥離紙を更に含んでいてもよい。
【0068】
図8は、印刷物の一例を概略的に示す平面図である。図9は、図8に示す印刷物のIX−IX線に沿った断面図である。
【0069】
図8及び図9に示す印刷物100は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と、粘着層2と、印刷物本体3とを含んでいる。
【0070】
印刷物本体3は、印刷基材3aと印刷層3bとを含んでいる。ラベル1は、粘着層2を介して印刷基材3aに貼り付けられている。
【0071】
印刷基材3aは、例えば、紙、プラスチック、木材、ガラス又は樹脂からなる。印刷基材3aは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。印刷基材3aは、層形状を有していてもよく、他の形状を有していてもよい。
【0072】
印刷層3bは、印刷基材3a上に設けられている。印刷層3bは、印刷基材3aの全体を被覆していてもよく、一部のみを被覆していてもよい。
【0073】
この印刷物100について、その使用期間終了後に上記の無効化処理を行うこととする。こうすると、真正品であるかが未知の印刷物について、ラベル1が再使用されたものであるか否かを判別することができる。即ち、真正品であるかが未知の印刷物の真偽判定が可能である。従って、不正行為を行う者を牽制することができ、それ故、物品に貼り付けられたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制することができる。その結果、印刷物100の偽造を抑制することができる。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明の例を記載する。
【0075】
<例1>
図1及び図2を参照しながら説明したラベル1を、以下の方法により製造した。
【0076】
まず、基材11として、白色のポリエチレンテレフタレート(PET)シートを準備した。次いで、この基材11の一方の主面の一部に、下記に示す組成のインキAを、オフセット印刷法により塗布した。更に、この塗膜に紫外線を照射した。このようにして、光学機能層13を形成した。
【0077】
光学機能層13の上に、下記に示す組成のインキBを、オフセット印刷法を用いて、一次元コード状に印刷した。このようにして、光吸収パターン層14を形成した。
【0078】
次いで、この光吸収パターン層14の上に、下記に示す組成のインキCを、スクリーン印刷法により塗布し、これを自然乾燥させた。このようにして、光透過層12を形成し、ラベル1を完成させた。以下、このラベルを「ラベルA1」と呼ぶ。
【0079】
これとは別に、インキCを塗布した後に、150℃で10秒間に亘る加熱乾燥を行ったこと以外は、先と同様にして、ラベル1を製造した。このラベル1は、発泡性粒子が発泡した状態の光透過層12を備えていた。即ち、このラベル1は、無効化処理後の状態に対応した構成を有していた。以下、このラベルを「ラベルB1」と呼ぶ。
【0080】
[インキAの組成]
有機系青色顔料(御国色素社製) 5質量部
有機系赤色顔料(御国色素社製) 7質量部
有機系黄色顔料(御国色素社製) 8質量部
UV硬化型オフセットインキメジウム(FD カルトンACE メジウム ロ:東洋インキ製造社製) 80質量部
[インキBの組成]
FD カルトンACE スミ ロ(東洋インキ製造社製)
[インキCの組成]
アクリル樹脂:ジョンクリル(BASF社製) 100質量部
発泡性粒子:EXPANCEL(日本フィライト株式会社製) 10質量部
ラベルA1及びB1の各々に対して、可視光領域及び近赤外線領域の光を照射して、分光特性を測定した。その結果を図10に示す。
【0081】
図10は、無効化処理の前後における分光特性の変化の一例を示すグラフである。図10から分かるように、可視光領域及び近赤外線領域の双方において、ラベルB1は、ラベルA1と比較して反射率が高かった。
【0082】
また、ラベルA1とラベルB1とで、光吸収パターン層14が形成している一次元コードの読み取りを行った。その結果、ラベルA1では、肉眼での観察及び機械での検出の双方において、一次元コードを正確に読み取ることができた。他方、ラベルB1では、これら双方において、一次元コードを正確に読み取ることができなかった。
【0083】
<例2>
光学機能層13の材料として、上記インキAの代わりに、以下に示す組成のインキDを用いたことを除いては、例1と同様にして、ラベルA2及びB2を製造した。ラベルA2は、無効化処理前のラベル1に対応しており、ラベルB2は、無効化処理後のラベル1に対応している。なお、下記インキDは、第2波長の光を吸収する赤外線吸収剤を含んでいる。
【0084】
[インキDの組成]
有機系青色顔料(御国色素社製) 5質量部
有機系赤色顔料(御国色素社製) 7質量部
有機系黄色顔料(御国色素社製) 8質量部
赤外線吸収剤(YKR−3081:山本化成社製) 5質量部
UV硬化型オフセットインキ用メジウム(FD カルトンACE メジウム ロ:東洋インキ製造社製) 75質量部
このようにして得られたラベルA2及びB2の各々において、機械読み取りの試験を行った。その結果、ラベルA2では、第1波長の光を用いた場合には、光吸収パターン層14によるバーコードを読み取ることができた。しかしながら、第2波長の光を用いた場合には、光吸収パターン層14と光学機能層13とのコントラストが低下したため、バーコードを読み取ることができなかった。他方、ラベルB2では、第1波長及び第2波長の双方について、バーコードを読み取ることができなかった。
【符号の説明】
【0085】
1…ラベル、2…粘着層、3…印刷物本体、3a…印刷基材、3b…印刷層、10…粘着ラベル、11…基材、12…光透過層、12a…第1領域、12b…第2領域、13…光学機能層、14…光吸収パターン層、41…サーマルヘッド、100…印刷物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る波長の光を透過させる光学機能層と、前記光学機能層と向き合い、前記波長の光を吸収する光吸収パターン層と、前記光吸収パターン層の前方に位置し、前記波長の光を透過させる光透過層であって、加熱によって発泡する発泡性材料を含んだ光透過層とを具備したラベル。
【請求項2】
前記波長は近赤外線領域内にあり、前記光学機能層の前記波長における透過率は30%以上であり、前記光学機能層は、近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500nmの波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上である請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
前記光吸収パターン層と前記光学機能層とは同じ色である請求項1又は2に記載のラベル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のラベルと、前記ラベルの前記光吸パターン層側の主面と向き合った粘着層とを具備した粘着ラベル。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のラベルと、
前記ラベルの前記光吸収パターン層側の主面と向き合った印刷基材と、
前記ラベルと前記印刷基材との間に介在して、前記ラベルを前記印刷基材に貼り付けた粘着層と
を具備した印刷物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−73133(P2013−73133A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213727(P2011−213727)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)