説明

ラベル、粘着ラベル及び印刷物

【課題】物品に貼り付けられたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制可能とする。
【解決手段】本発明のラベル1は、例えば、或る波長の光を透過させる光学機能層13と、前記光学機能層13と向き合い、前記波長の光を吸収する光吸収パターン14と、前記光学機能層13及び前記光吸収パターン14がそれらの構造を維持する温度範囲内の何れかの温度において流動性を示し、前記波長の光を吸収するインキを含んだインキ層15と、前記光学機能層13及び前記光吸収パターン14の後方に位置し、前記波長の光を反射させる光反射層12とを備え、前記インキ層15は、前記光反射層12の後方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偽造防止に利用可能なラベル並びにそれを含んだ粘着ラベル及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偽造品の流通が大きな社会問題となっている。そこで、例えば、物品に、それが真正品であることを確認可能とするラベルを付されることがある。そのようなラベル、所謂偽造防止ラベルとしては、例えば、蛍光インキ及びOVI(optically variable ink)などの機能性インキによって形成した印刷層を含んだラベル、マイクロ印刷及び凹版印刷などの特殊印刷によって形成した印刷層を含んだラベル、ホログラム又は回折格子を含んだラベル、磁気記録によって情報を書き込んだラベル、並びにIC(integrated circuit)タグを含んだラベルがある。
【0003】
これら偽造防止ラベルの多くは、それ自体の偽造が困難である。但し、偽造防止ラベルの中には、これが貼り付けられた物品から比較的容易に剥がすことができるものがある。そのようなラベルは、使用済みの物品から剥がして偽造品に貼り付けるといった不正行為に使用される可能性がある。
【0004】
偽造防止ラベルの中には、その再使用を不可能とするための対策を講じたものもある。
【0005】
例えば、一部の偽造防止ラベルには、切欠きが設けられている。そのような偽造防止ラベルは、これが貼り付けられた物品から引き剥がそうとすると、切欠きの位置から裂けるように設計されている。
【0006】
また、基材が比較的小さな力で脆性破壊を生じる偽造防止ラベルもある。このようなラベルも、これが貼り付けられた物品から引き剥がそうとすると破壊されるように設計されている。
【0007】
更に、比較的小さな力で脆性破壊を生じる脆性層を含み、この脆性層とその観察者側の面に隣接した層との接着強度が場所によって異なっている偽造防止ラベルもある。このようなラベルを、これが貼り付けられた物品から引き剥がすと、接着強度の分布に対応したパターンで脆性層が破壊される。その結果、例えば、脆性層等の一部は物品上に文字列「VOID」に対応したパターンで残り、偽造防止ラベルの脆性層等には、文字列「VOID」に対応したパターンの欠落部を生じる。
【0008】
これら偽造防止ラベルは、引き剥がすことによって物品から剥離した場合には、再使用は不可能であるか又は困難である。しかしながら、これら偽造防止ラベルは、粘着層又は接着層に有機溶剤を滲み込ませると、ラベル本体の損傷なしに剥離できることがある。
【0009】
これを不可能又は困難とするための技術を採用した偽造防止ラベルもある。
例えば、粘着層の材料として、粘着剤とこれに対して難溶性の添加剤との混合物を使用した偽造防止ラベルがある(例えば、特許文献1参照)。この偽造防止ラベルは、有機溶剤を使用して剥離した場合、粘着剤及び添加剤の有機溶剤に対する溶け易さの相違に起因して、粘着層の表面に凹凸を生じる。
【0010】
また、印刷層が有機溶剤に可溶な染料を含有した偽造防止ラベルもある(例えば、特許文献2参照)。この偽造防止ラベルは、有機溶剤を使用して剥離しようとすると、染料が印刷層から滲み出る。
【0011】
なお、このラベルは、ドライヤ等で表面を温めることによって、ラベル本体の損傷や染料の染み出しなしに剥離することができる。加熱による剥離への対策を施した偽造防止ラベルとしては、例えば、加熱によって発泡する発泡粒子を粘着層に含有させた偽造防止ラベルがある(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
これら偽造防止ラベルは、有機溶剤又は熱を利用して剥離した場合には、再使用が不可能であるか又は困難である。但し、使用期間を終えた物品については、偽造防止ラベルが、これが貼り付けられた物品の表層とともに除去される可能性を考慮しなければならない。上述した対策では、このようにして除去した偽造防止ラベルの再使用を防ぐことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005―266147号公報
【特許文献2】特開平10−204363号公報
【特許文献3】特開2000−293108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、物品に付されたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1側面によると、或る波長の光を透過させる光学機能層と、前記光学機能層と向き合い、前記波長の光を吸収する光吸収パターンと、前記光学機能層及び前記光吸収パターンがそれらの構造を維持する温度範囲内の何れかの温度において流動性を示し、前記波長の光を吸収するインキを含んだインキ層と、任意に、前記光学機能層及び前記光吸収パターンの後方に位置し、前記波長の光を反射させる光反射層とを備えたラベルであって、前記ラベルが前記光反射層を含んでいない場合、前記インキ層は、前記光学機能層の主面への前記インキ層の第1正射影と前記主面への前記光吸収パターンの第2正射影との組み合わせが前記主面の一部のみを占めるように、前記光学機能層又は前記光吸収パターンの後方に位置し、前記ラベルが前記光反射層を含んでいる場合、前記インキ層は、前記光反射層の後方に位置しているか、又は、前記組み合わせが前記主面の一部のみを占めるように前記光学機能層又は前記光吸収パターンの後方に位置しているラベルが提供される。
【0016】
本発明の第2側面によると、前記ラベルは前記光反射層を含み、前記インキ層は前記光反射層の後方に位置している第1側面に係るラベルが提供される。
【0017】
本発明の第3側面によると、前記光学機能層は前記光吸収パターンと前記光反射層との間に介在した第2側面に係るラベルが提供される。
【0018】
本発明の第4側面によると、前記光吸収パターンは前記光学機能層と前記光反射層との間に介在した第2側面に係るラベルが提供される。
【0019】
本発明の第5側面によると、或る波長の光を透過させる光学機能層と、前記光学機能層の背面の一部と向き合い、前記波長の光を反射させる光反射パターンとしての光反射層と、前記光学機能層の背面の他の一部と前記反射層を間に挟んで向き合ったインキ層であって、前記光学機能層及び前記光反射層がそれらの構造を維持する温度範囲内の何れかの温度において流動性を示し、前記波長の光を吸収するインキを含んだインキ層とを備えたラベルが提供される。
【0020】
本発明の第6側面によると、前記光反射層の前方に位置し、前記波長の光を透過させる多孔質層を更に備えた第1乃至第5側面の何れか1つに係るラベルが提供される。
【0021】
本発明の第7側面によると、前記多孔質層は前記光学機能層と前記光反射層との間に介在した第6側面に係るラベルが提供される。
【0022】
本発明の第8側面によると、前記波長は赤外領域内にあり、前記光学機能層は黒色層である第1乃至第7側面の何れか1つに係るラベルが提供される。
【0023】
本発明の第9側面によると、前記波長は近赤外領域内にあり、前記光学機能層の前記波長における透過率は30%以上であり、前記光学機能層は、近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500%の波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上である第8側面に係るラベルが提供される。
【0024】
本発明の第10側面によると、第1乃至第9側面の何れか1つに係るラベルと、前記ラベルの背面と向き合った粘着層とを具備した粘着ラベルが提供される。
【0025】
本発明の第11側面によると、第1乃至第9側面の何れか1つに係るラベルと、前記ラベルの背面と向き合った印刷基材と、前記ラベルと前記印刷基材との間に介在して、前記ラベルを前記印刷基材に貼り付けた粘着層とを具備した印刷物が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、物品に貼り付けられたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制することが可能となる。
【0027】
第1側面に係るラベルが光反射層を含んでいない場合、そのインキ層は、光学機能層の主面へのインキ層の第1正射影と先の主面への光吸収パターンの第2正射影との組み合わせが先の主面の一部のみを占めるように、光学機能層又は光吸収パターンの後方に位置している。第1側面に係るラベルが光反射層を含んでいる場合、そのインキ層は、光反射層の後方に位置しているか、或いは、上記組み合わせが先の主面の一部のみを占めるように光学機能層又は光吸収パターンの後方に位置している。従って、このラベルは、その前面を上記波長(以下、「第1波長」という)の光で照明した場合、光吸収パターンに対応した領域又は第1及び第2正射影の少なくとも一方に対応した領域が暗く、他の領域が明るい第1画像を表示する。
【0028】
このラベルに、必要に応じて加熱しながら、針を突き刺すなどの無効化処理を行って、その前面からインキ層へ至る孔を設けると、インキ層からインキが滲み出る。インキ層から滲み出たインキは、先の孔内に広がり、場合によっては、ラベルの表面に対して平行な方向へ更に広がる。従って、無効化処理後のラベルは、その前面を第1波長の光で照明した場合、光吸収パターンに対応した領域又は第1及び第2正射影の少なくとも一方に対応した領域に加え、滲み出たインキに対応した領域が暗い第2画像を表示する。
【0029】
それ故、例えば、このラベルを貼り付けた物品がその使用期間を終了したときに無効化処理を行うこととすれば、真正品であるかが不明の物品に貼り付けられたラベルが第1波長の光で照明した場合に表示する画像と、第1及び第2画像の少なくとも一方、特には第1画像とを比較することによって、先の物品の真偽を判定することができる。従って、不正行為を行う者を牽制することができ、それ故、物品に貼り付けられたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制することができる。
【0030】
第2側面に係るラベルでは、インキ層は光反射層の後方に位置している。この場合、インキ層をパターニングする必要がなく、光吸収パターンに対するインキ層の位置合わせも不要である。
【0031】
第3側面に係るラベルは、第2側面に係るラベルのうち、光学機能層が光吸収パターンと光反射層との間に介在したものである。それ故、例えば、光学機能層上に光吸収パターンを形成する場合、インキ層と光反射層と光学機能層とを含んだ構造を予め形成しておき、光吸収パターンをオンデマンドで形成することができる。即ち、ラベル毎に光吸収パターンを異なる形状に形成することが容易である。
【0032】
第4側面に係るラベルは、第2側面に係るラベルのうち、光吸収パターンが光学機能層と光反射層との間に介在したものである。それ故、光学機能層の可視光線透過率が低くすることにより、光吸収パターンを隠蔽することができる。その結果、このラベルを利用して真偽判定を行っていることは、不正行為を行う者に悟られ難くなる。
【0033】
第5側面に係るラベルでは、光反射層は、光学機能層の背面の一部と向き合った光反射パターンであり、インキ層は、光学機能層の背面の他の一部と反射層を間に挟んで向き合っている。従って、このラベルは、その前面を第1波長の光で照明した場合、光反射パターンに対応した領域が明るく、他の領域が暗い第3画像を表示する。
【0034】
このラベルに、必要に応じて加熱しながら、針を突き刺すなどの無効化処理を行って、その前面からインキ層へ至る孔を設けると、インキ層からインキが滲み出る。インキ層から滲み出たインキは、先の孔内に広がり、場合によっては、ラベルの表面に対して平行な方向へ更に広がる。従って、無効化処理後のラベルは、その前面を第1波長の光で照明した場合、第3画像と比較して暗く見える領域がより広い第4画像を表示する。
【0035】
それ故、例えば、このラベルを貼り付けた物品がその使用期間を終了したときに無効化処理を行うこととすれば、真正品であるかが不明の物品に貼り付けられたラベルが第1波長の光で照明した場合に表示する画像と、第3及び第4画像の少なくとも一方、特には第3画像とを比較することによって、先の物品の真偽を判定することができる。従って、不正行為を行う者を牽制することができ、それ故、物品に貼り付けられたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制することができる。
【0036】
第6側面に係るラベルは、第1乃至第5側面の何れかに係るラベルのうち、光反射層の前方に位置し、第1波長の光を透過させる多孔質層を更に備えたものである。多孔質層は、インキ層から滲み出たインキを吸収するとともに、上記主面に平行な方向へ拡散させる。従って、インキがラベルの表面に到達して、周囲の物体を汚すのを抑制することができる。
【0037】
第7側面に係るラベルは、第6側面に係るラベルのうち、多孔質層が光学機能層と光反射層との間に介在したものである。この構成によると、多孔質層の表面が最表面となることはなく、従って、インキが周囲の物体を汚すのをより確実に防止することができる。
【0038】
第8側面に係るラベルは、第1乃至第7側面の何れか1つに係るラベルのうち、第1波長が赤外領域内にあり、光学機能層が黒色層であるものである。なお、ここで「黒色」とは、正反射光の強度を測定したときに、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について、反射率が10%以下であることを意味している。
【0039】
この構成を採用した場合、光吸収パターンが黒色であるか若しくは光学機能層の後方に位置しているとき、又は、光反射層が光反射パターンであるときには、光吸収パターン又は光反射パターンの存在を悟られ難くすることができる。即ち、このラベルを利用して真偽判定を行っていることを、不正行為を行う者に悟られ難くすることができる。
【0040】
第8側面に係るラベルは、第8側面に係るラベルのうち、第1波長が近赤外領域内にあり、光学機能層の第1波長における透過率が30%以上であり、前記光学機能層は、近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500%の波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上であるものである。即ち、光学機能層の近赤外領域における透過スペクトルは、第1波長において高い透過率を示し、前記近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500nmの波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以下となる。従って、真偽判定に第1波長の光を利用することを知らない者にとっては、無効化処理を行う前のラベルと無効化処理を行った後のラベルとの相違を判別することは不可能であるか又は困難である。それ故、上記の無効化処理を利用した偽造防止対策を講じていることは、不正行為を行う者に悟られ難い。
【0041】
第10側面に係る粘着ラベルは、第1乃至第9側面の何れか1つに係るラベルを含んでいる。粘着ラベルは、先のラベルを物品に貼り付ける場合に利用可能な一形態である。
【0042】
第11側面に係る印刷物は、第1乃至第9側面の何れか1つに係るラベルを含んでいる。この印刷物は、その使用期間を終了した後にラベルが再使用される可能性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1態様に係るラベルを概略的に示す平面図。
【図2】図1に示すラベルのII−II線に沿った断面図。
【図3】真偽判定に利用可能な画像表示システムの一例を概略的に示す図。
【図4】図1及び図2に示すラベルに記録された情報を、図3に示す画像表示システムによって可視化してなる画像の一例を概略的に示す図。
【図5】図1及び図2に示すラベルの無効化処理法の一例を概略的に示す断面図。
【図6】図1及び図2に示すラベルを無効化処理してなる構造の一例を概略的に示す断面図。
【図7】図5に示す方法によって無効化したラベルに記録された情報を、図3に示す画像表示システムによって可視化してなる画像の一例を概略的に示す図。
【図8】図1及び図2に示すラベルの第1変形例を概略的に示す断面図。
【図9】図1及び図2に示すラベルの第2変形例を概略的に示す断面図。
【図10】図9に示すラベルを無効化処理してなる構造の一例を概略的に示す断面図。
【図11】図1及び図2に示すラベルの第3変形例を概略的に示す断面図。
【図12】図1及び図2に示すラベルの第4変形例を概略的に示す断面図。
【図13】本発明の第2態様に係るラベルを概略的に示す断面図。
【図14】図13に示すラベルの一変形例を概略的に示す断面図。
【図15】粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図16】印刷物の一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
図1は、本発明の第1態様に係るラベルを概略的に示す平面図である。図2は、図1に示すラベルのII−II線に沿った断面図である。
【0046】
図1及び図2に示すラベル1は、基材11と、光反射層12と、光学機能層13と、光吸収パターン14と、インキ層15と、封止層16とを含んでいる。インキ層15、封止層16、光反射層12、光学機能層13及び光吸収パターン14は、この順で基材11上に積層されている。ラベル1は、光吸収パターン14側の面が前面であり、基材11側の面が背面である。
【0047】
光吸収パターン14、光学機能層13、光反射層12、インキ層15及び封止層16は、この順で基材11上に積層されていてもよい。この場合、ラベル1は、基材11側の面が前面であり、封止層16側の面が背面である。
【0048】
基材11は、例えば、樹脂からなるフィルムである。この樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエチレンなどのプラスチックを使用することができる。基材は、典型的には透明であるが、アルミニウム箔のように不透明であってもよい。但し、ラベル1の基材11側の面を前面とする場合、基材11としては、第1波長の光を、典型的には互いに異なる第1及び第2波長の光を透過させるものを使用する。
【0049】
基材11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材11の少なくとも一方の主面は、インキ層15を構成しているインキに対して安定な材料からなる。基材の上記主面には、液だめとして利用可能な凹部が、例えばエンボスによって設けられていてもよい。基材11は省略することができる。
【0050】
インキ層15は、基材11の一方の主面上に設けられている。インキ層はインキからなる。このインキは、光学機能層13及び光吸収パターン14がそれらの構造を維持する温度範囲内の何れかの温度において流動性を示し、第1波長の光を吸収する。例えば、このインキは、少なくとも−20乃至100℃の温度域において液体であり、典型的には5乃至65℃の温度域において液体である。また、このインキは、無効化処理によって得られる膜の第1波長の光に対する吸収率が、例えば70%以上となり、典型的には90%以上となるように調製されている。
【0051】
ここでは、一例として、第1波長は、近赤外線領域のうち、発色又は変色によって吸収率が高まる波長域内にあることとする。また、「近赤外線領域」は、700乃至1500nmの波長域を意味することとする。
【0052】
このインキとしては、例えば、プロセス墨インキ、具体的には、カーボンブラックなどの炭素材料粉末とバインダとしての樹脂と任意に溶媒とを含んだインキを使用することができる。無効化処理の際に適度な粘性と適度な流動性とを示し、第1波長の光を高い効率で吸収するものであれば、他のインキを使用してもよい。ここでは、一例として、上記インキとして、黒色のインキを使用することとする。
【0053】
インキ層15は、例えば、印刷法によって形成することができる。インキ層15として溶媒を含んだ層を形成する場合、溶媒を含んだインキからなる塗膜を形成した後、塗膜中に十分な量の溶媒が残留するように、速やかに封止層16を形成する。
【0054】
インキ層15は、上記のインキを樹脂からなる膜でカプセル化してなるマイクロカプセルで構成してもよい。そのようなインキ層15は、例えば、マイクロカプセルと分散媒とを含んだインキを用いた印刷法によって形成することができる。
【0055】
封止層16は、インキ層15上に設けられている。封止層16は、その周縁部全体に亘って基材11と接触している。即ち、封止層16は、基材11とともに、インキ層15を封止している。
【0056】
封止層16の材料は、上記のインキに対して安定であれば、どのようなものを使用しても構わない。封止層16としては、例えば、基材11について例示した樹脂からなるフィルムを使用することができる。但し、基材11との接着性の観点から、封止層16の材料は、基材11の封止層16側の主面の材料と同一であることが望ましい。
【0057】
ラベル1の製造においては、例えば、まず、インキ層16を形成した基板11の主面上に、インキ層16を取り囲むように接着剤層を設ける。次に、この基板11と封止層16として使用するフィルムとを、インキ層16及び接着剤層を間に挟んで重ね合わせる。そして、この積層体に熱及び圧力を加える。これにより、封止層16と基材11とがインキ層15を間に挟んで貼り合わされた構造を得る。
【0058】
この構造は、他の方法で得ることも可能である。例えば、上述した方法において、接着剤を使用する代わりに、超音波接着法により封止層16及び基材11の周縁部同士を接着してもよい。
【0059】
インキ層15をマイクロカプセルで構成する場合、封止層16は省略することができる。また、反射層12に封止層16の役割を担わせる場合も、封止層16は省略することができる。
【0060】
光反射層12は、封止層16上に設けられている。
光反射層12は、第1波長の光を反射させる。第1波長の光に対する光反射層12の反射率は、例えば、50乃至100%の範囲内にあり、典型的には50乃至80%の範囲内にある。
【0061】
光反射層12は、鏡面反射体であってもよく、光散乱体であってもよい。光反射層12に光透過性は要求されないため、光反射層12として、金属又は合金からなる金属材料層を使用してもよい。金属材料層の材料としては、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、亜鉛、銀、金、錫又はそれらの合金を使用することができる。金属材料層は、例えば真空蒸着などのドライコーティング法によって形成することができる。光反射層12は、バインダとしての樹脂と鉄粉など粒子との混合物を含んだ層であってもよい。そのような光反射層12は、ウェットコーティング法で形成することができる。
【0062】
光学機能層13は、光反射層12上に設けられている。光学機能層13は、第1波長の光を透過させる。第1波長の光に対する光学機能層13の透過率は、例えば30%以上であり、典型的には30乃至60%の範囲内にある。
【0063】
光学機能層13は、典型的には着色している。光学機能層13が着色している場合、特に、光学機能層13が黒色に着色している場合、肉眼による観察で光学機能層13の背後の構造を知覚することは不可能となるか又は困難となる。また、光学機能層13が光吸収パターン14と同色である場合、光吸収パターン14の存在を気付かれ難くすることができる。そして、光学機能層13と光吸収パターン14とインキ層15を構成しているインキとが同色である場合、無効化処理が行われたことを肉眼による観察で知覚することは不可能となるか又は困難となる。ここでは、一例として、光学機能層13は黒色を呈していることとする。
【0064】
第1波長が近赤外領域内にある場合、光学機能層13として、第1波長における透過率が30%以上であり、前記光学機能層は、近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500%の波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上であるものを使用してもよい。即ち、光学機能層13は、近赤外領域における透過スペクトルが、第1波長において高い透過率を示し、前記近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500nmの波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以下となる。こでは、一例として、光学機能層13は、このような光学特性を有していることとする。また、ここでは、第2波長も近赤外領域内にあり、第2波長における光学機能層13の透過率は、第1波長における光学機能層13の透過率と比較してより低いこと、例えば、第1波長における光学機能層13の透過率の80%以下であることとする。
【0065】
上記の光学特性、即ち、近赤外領域内の光のうち、一部の波長域の光を選択的に透過させ、残りの光を吸収する光学特性を有している光学機能層13は、例えば、所定の近赤外線吸収剤と樹脂とを含んでいる。この近赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、ジイモニウム化合物、及びシアニン化合物からなる群より選択される少なくとも1つを使用することができる。また、樹脂としては、例えば、プロセスインキにおいて一般に使用されているものを使用することができる。
【0066】
光学機能層13は、例えば、印刷法により形成する。この印刷法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、及びフレキソ印刷法が挙げられる。光学機能層13の厚さは、例えば0.5乃至10μmの範囲内とし、典型的には1乃至5μmの範囲内とする。
【0067】
光吸収パターン14は、光学機能層13上に設けられている。光吸収パターン14は、光学機能層13を間に挟んで光反射層12の一部と向き合っている。図1及び図2に示す例では、光吸収パターン14は、一次元コードを構成している。光吸収パターン14は、二次元コードを構成していてもよい。或いは、光吸収パターン14は、文字、記号、模様及び図形などの他のパターンを構成していてもよい。
【0068】
光吸収パターン14は、第1波長の光を吸収する。具体的には、光吸収パターン14の第1波長における吸収率は、光反射層12の第1波長における吸収率及び光学機能層13の第1波長における吸収率と比較してより大きい。第1波長の光に対する光吸収パターン14の吸収率は、例えば70%以上であり、典型的には90%以上である。
【0069】
第1波長が近赤外領域内にある場合、光吸収パターン14は、例えば、近赤外線吸収剤と樹脂とを含有している。この樹脂としては、例えば、プロセスインキにおいて一般に使用されているものを使用することができる。
【0070】
ここで使用する近赤外線吸収剤は、典型的には、光学機能層13において使用する近赤外線吸収剤とは、近赤外線領域の吸収スペクトルが異なっている。例えば、ここで使用する近赤外線吸収剤は、光学機能層13において使用する近赤外線吸収剤と比較して、第1波長の光に対する吸収率がより大きい。この近赤外線吸収剤としては、例えば、プロセス墨インキに用いられているカーボンブラックを使用することができる。或いは、この近赤外線吸収剤として、光学機能層13の近赤外線吸収剤として例示した化合物を使用してもよい。
【0071】
光吸収パターン14は、光学機能層13と同色にするか、又は、第1波長の光に対して十分な吸収率を示す限り、薄い色にすることが好ましい。こうすると、ラベル1を肉眼で観察した場合に、光吸収パターン14の存在が分かり難くなる。
【0072】
光吸収パターン14は、光反射層12に対応した領域のほぼ全体に亘って分布していることが望ましい。こうすると、光学機能層13の分光特性の解析を困難とすることができる。
【0073】
光吸収パターン14は、例えば、印刷法により形成する。この印刷法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、及びフレキソ印刷法が挙げられる。或いは、光吸収パターン14は、熱転写リボン、インクジェット印字、又はレーザー印字を用いて形成してもよい。光吸収パターン14の厚さは、例えば0.5乃至10μmの範囲内とし、典型的には0.5乃至2μmの範囲内とする。
【0074】
次に、このラベル1を利用した真偽判定方法について説明する。
まず、このラベル1を偽造防止ラベルとして使用した場合に真偽判定に利用可能な画像表示システムについて説明する。
【0075】
図3は、真偽判定に利用可能な画像表示システムの一例を概略的に示す図である。
図3に示すシステムは、2つの光源31と、撮像装置32と、画像表示装置36と、光学フィルタ38とを含んでいる。
【0076】
光源31は、例えば、赤外線LED(light-emitting diode)である。光源31は、図示しない載置台上に前面が上向きになるように載置されたラベル1に対して斜め上方に設置されている。光源31の一方は省略してもよい。また、3つ以上の光源31を設けてもよい。複数の光源31を設ける場合、それら光源31が放射する光のスペクトルは、同一であってもよく、異なっていてもよい。後者の場合、例えば、第1波長の光を放射する光源31と、第2波長の光を放射する光源32とを配置し、それらを交互に点灯可能な構成を採用してもよい。
【0077】
撮像装置32は、例えば、CCD(charge-coupled device)カメラである。撮像装置32は、ラベル1の前面と正対するように設置されている。
【0078】
画像表示装置36は、撮像装置32に接続されている。画像表示装置36は、撮像装置32が撮影した画像を表示する。
【0079】
光学フィルタ38は、第1及び第2波長の光を透過させ、他の波長の少なくとも一部を吸収する。例えば、光学フィルタ38は、可視光を吸収し、赤外光の少なくとも一部を透過させる可視光カットフィルタである。光学フィルタ38は、ラベル1と撮像装置32との間に設置されている。
【0080】
図4は、図1及び図2に示すラベルに記録された情報を、図3に示す画像表示システムによって可視化してなる画像の一例を概略的に示す図である。
【0081】
製造直後のラベル1の前面を肉眼で観察した場合、例えば、その全体が黒色に見える。これに対し、図3に示すシステムを用いて、製造直後のラベル1を、光源31が放射する第1波長の光で照明しながら撮像装置32で撮影すると、画像表示装置36は、光吸収パターン14に対応した領域が黒く、ラベル1の他の部分に対応した領域が白い画像I1を表示する。即ち、この場合、潜像を可視化すること、例えばPCS(print contrast signal)値が0.75以上の可視像を表示することができる。
【0082】
なお、第1波長の光を放射する光源31を消灯し、第2波長の光を放射する光源31を点灯すると、画像表示装置36は、例えば、全体が黒い画像を表示するか、又は、画像I1をより低いコントラスト比で、例えば0.75未満のPCS値で表示する。
【0083】
次に、ラベル1の無効化処理について説明する。
図5は、図1及び図2に示すラベルの無効化処理法の一例を概略的に示す断面図である。図6は、図1及び図2に示すラベルを無効化処理してなる構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0084】
図5に示す無効化処理法では、破壊装置51を使用する。図5に示す破壊装置51は、ニードルアレイを含んだスタンパである。破壊装置51は、ヒータを内蔵していてもよい。また、破壊装置51は多数の針を含んでいるが、針の数は1つ以上であればよい。更に、図5に示す破壊装置51を使用する代わりに、剃刀などの刃を含んだ装置を破壊装置として使用してもよい。
【0085】
この無効化処理法では、破壊装置51をラベル1の前面に押し当てて、破壊装置51の針をラベル1に突き刺す。これにより、図6に示すように、ラベル1の前面からインキ層15へ至る孔を形成し、インキ層15からインキを滲み出させる。インキの流動性が低い場合は、破壊装置51をラベル1の前面に押し当てる前に、ラベル1の前面に押し当てるのと同時に、又は、ラベル1に孔を形成した後に、ラベル1を加熱してもよい。
【0086】
この無効化処理を行うと、インキ層15から滲み出たインキは、先の孔内に広がり、場合によっては、ラベル1の表面に対して平行な方向へ更に広がる。例えば、インキ層15から滲み出たインキは、ラベル1の前面に、図6に示すインキ層15aを形成する。
【0087】
なお、ここでは、インキ層15を構成しているインキ、光学機能層13及び光吸収パターン4は、何れも黒色である。従って、この無効化処理後のラベル1の前面を肉眼で観察した場合、その全体が黒色に見える。
【0088】
図7は、図5に示す方法によって無効化したラベルに記録された情報を、図3に示す画像表示システムによって可視化してなる画像の一例を概略的に示す図である。
【0089】
図3に示すシステムを用いて、無効化処理後のラベル1を、光源31が放射する第1波長の光で照明しながら撮像装置32で撮影すると、画像表示装置36は、ラベル1の光吸収パターン14又はインキ層15aに対応した領域が黒く、ラベル1の他の部分に対応した領域が白い画像I2を表示する。即ち、この場合、画像表示装置36は、図4の画像I1とは異なる画像I2を表示する。
【0090】
画像I2のうち、光吸収パターン14に対応した第1領域と、インキ層15aの光吸収パターン14と向き合っていない部分に対応した第2領域とは、明るさが等しくてもよく、異なっていてもよい。後者の場合、画像I1のうち、第1領域に対応した領域を第3領域とし、第2領域に対応した領域を第4領域とすると、第1及び第2領域のコントラスト比が、第3及び第4領域のコントラスト比と比較してより小さければよい。
【0091】
上述したラベル1には、様々な変形が可能である。
図8は、図1及び図2に示すラベルの第1変形例を概略的に示す断面図である。
図8に示すラベル1は、光吸収パターン14が光反射層12と光学機能層13との間に介在していること以外は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と同様である。
【0092】
図1及び図2に示すラベル1では、光吸収パターン14は、光学機能層13上に設けられている。それ故、例えば、基材11上にインキ層15と封止層16と光反射層12と光学機能層13とがこの順に積層された積層体を予め形成しておき、この積層体上に光吸収パターン14をオンデマンドで形成することができる。即ち、ラベル毎に光吸収パターン14を異なる形状に形成することが容易である。
【0093】
これに対し、図8にラベル1では、光吸収パターン14は、光学機能層13と光反射層12との間に介在している。それ故、光学機能層13の可視光線透過率が低くすることにより、光吸収パターン14を隠蔽することができる。その結果、このラベル1を利用して真偽判定を行っていることは、不正行為を行う者に悟られ難くなる。
【0094】
図9は、図1及び図2に示すラベルの第2変形例を概略的に示す断面図である。図10は、図9に示すラベルを無効化処理してなる構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0095】
図9に示すラベル1は、光反射層12と光学機能層13との間に多孔質層17を更に含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と同様である。
【0096】
多孔質層17は、例えば、多孔質シリカ及び多孔質炭酸カルシウムなどのフィラーを多量に含み、バインダとして少量の樹脂を更に含んだ混合物からなる。このような多孔質層17は、例えば、塗布法によって形成することができる。
【0097】
多孔質層17として、紙などの繊維質シートを使用してもよい。特に、厚めの上質紙は近赤外域の光を反射及び散乱させる能力が高いため、これを多孔質層17として用いた場合、光反射層12の効果を補強することができる。繊維質シートとしての多孔質層17は、例えば、接着剤を用いて光反射層12に固定することができる。
【0098】
このラベル1を無効化処理すると、インキ層15から滲み出たインキは、多孔質層17によって吸収され、多孔質層17内で、その主面に平行な方向へ拡散する。その結果、多孔質層17内に、インキが浸透していない任意の未浸透部17aと、インキが浸透した浸透部17bとが生じる。浸透部17bは、図3に示すシステムを用いた線像の可視化を行った場合に、図16に示すインキ層15aと同様の役割を果たす。従って、図9の構造を採用した場合も、図1及び図2を参照しながら説明した構造を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、図9の構造を採用した場合、インキがラベル1の表面に到達して、周囲の物体を汚すのを抑制することができる。
【0100】
図11は、図1及び図2に示すラベルの第3変形例を概略的に示す断面図である。
図11に示すラベル1は、光反射層12と光吸収パターン14との間に多孔質層17を更に含んでいること以外は、図8を参照しながら説明したラベル1と同様である。
【0101】
図11の構造を採用した場合、図8を参照しながら説明した構造を採用した場合と同様の効果を得ることができる。また、図11の構造を採用した場合、インキがラベル1の表面に到達して、周囲の物体を汚すのを抑制することができる。
【0102】
図12は、図1及び図2に示すラベルの第4変形例を概略的に示す断面図である。
図12に示すラベル1は、以下の構成を採用したこと以外は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と同様である。即ち、このラベル1は、封止層16を含んでいない。また、このラベル1では、インキ層15は、光学機能層13の主面へのインキ層15の第1正射影と先の主面への光吸収パターン14の第2正射影との組み合わせが先の主面の一部のみを占めるように、光学機能層13と光吸収パターン14との間に位置している。そして、このラベル1では、インキ層15は、マイクロカプセルからなる。
【0103】
図12の構造を採用した場合も、図1及び図2を参照しながら説明した構造を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0104】
なお、インキ層15と光吸収パターン14とは、完全に重なり合っていてもよく、一部のみ重なり合っていてもよい。また、インキ層15は、光反射層12と光学機能層13との間に介在していてもよい。
【0105】
次に、本発明の第2態様を説明する。
図13は、本発明の第2態様に係るラベルを概略的に示す断面図である。
【0106】
図13に示すラベル1は、以下の構成を採用したこと以外は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と同様である。即ち、このラベル1は、光吸収パターン14を含んでいない。そして、このラベル1では、光反射層12が、光吸収パターン14と同様にパターニングされている。即ち、このラベル1では、光反射層12は、光吸収パターン14と同様の形状の光反射パターンを構成している。
【0107】
光反射パターンとしての光反射層12は、例えば、封止層16上に、マスクを用いた真空蒸着によってアルミニウムなどの金属又は合金を堆積させることにより得られる。或いは、光反射パターンとしての光反射層12は、封止層16上にマスク層を印刷し、それらの上に真空蒸着によってアルミニウムなどの金属又は合金を堆積させ、その後、マスク層をその上の金属材料層とともに除去することにより得られる。或いは、樹脂中に鉄粉などの金属粉を高濃度に含有したインキを封止層16上に印刷することによって得られる。
【0108】
このラベル1は、肉眼で観察した場合に、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と同様の画像を表示する。そして、図3に示すシステムを用いて、このラベル1を、光源31が放射する第1波長の光で照明しながら撮像装置32で撮影すると、画像表示装置36は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と同様の画像を表示する。
【0109】
また、このラベル1は、無効化処理後に肉眼で観察した場合に、図6を参照しながら説明した無効化処理後のラベル1とほぼ同様の画像を表示する。そして、図3に示すシステムを用いて、無効化処理後のラベル1を、光源31が放射する第1波長の光で照明しながら撮像装置32で撮影すると、画像表示装置36は、図6を参照しながら説明した無効化処理後のラベル1とほぼ同様の画像を表示する。
【0110】
即ち、図13の構造を採用した場合も、図1及び図2を参照しながら説明した構造を採用した場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0111】
このラベル1には、様々な変形が可能である。
図14は、図13に示すラベルの一変形例を概略的に示す断面図である。
【0112】
図14に示すラベル1は、光反射層12と光学機能層13との間に多孔質層17を更に含んでいること以外は、図13を参照しながら説明したラベル1と同様である。
【0113】
図14の構造を採用した場合、図13を参照しながら説明した構造を採用した場合と同様の効果を得ることができる。また、図14の構造を採用した場合、インキがラベル1の表面に到達して、周囲の物体を汚すのを抑制することができる。
【0114】
次に、上述したラベル1を含んだ粘着ラベル及び印刷物を説明する。
【0115】
図15は、粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。
図15に示す粘着ラベル10は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と、粘着層2とを含んでいる。粘着層2は、ラベル1の背面上に設けられている。
【0116】
この粘着ラベル10は、例えば、真正品であることを確認可能であることが望まれる物品に貼り付ける。なお、粘着ラベル10は、粘着層2の表面を剥離可能に被覆した剥離紙を更に含んでいてもよい。
【0117】
図16は、印刷物の一例を概略的に示す断面図である。
図16に示す印刷物100は、図1及び図2を参照しながら説明したラベル1と、粘着層2と、印刷物本体3とを含んでいる。ラベル1は、粘着層2を介して印刷物本体3に貼り付けられている。
【0118】
印刷物本体3は、印刷基材3aと印刷層3bとを含んでいる。
【0119】
印刷基材3aは、例えば、紙、プラスチック、木材、ガラス又は樹脂からなる。印刷基材3aは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。印刷基材3aは、層形状を有していてもよく、他の形状を有していてもよい。
【0120】
印刷層3bは、印刷基材3a上に設けられている。印刷層3bは、印刷基材3aの全体を被覆していてもよく、一部のみを被覆していてもよい。
【0121】
この印刷物100について、その使用期間終了後に上記の無効化処理を行うこととする。こうすると、真正品であるかが未知の印刷物について、例えば図3を参照しながら説明した画像表示システムを利用することにより、ラベル1が再使用されたものであるか否かを判別することができる。即ち、真正品であるかが未知の印刷物の真偽判定が可能である。従って、不正行為を行う者を牽制することができ、それ故、物品に貼り付けられたラベルが、その物品の使用期間を終了した後に再使用されるのを抑制することができる。その結果、印刷物100の偽造を抑制することができる。
【実施例1】
【0122】
以下に、本発明の例を記載する。
【0123】
図9を参照しながら説明したラベル1を、以下の方法により製造した。
まず、封止層16として、厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートシートを準備した。この封止層16の一方の主面上に、真空蒸着法により、光反射層12として、厚さが500オングストロームのアルミニウム層を形成した。
【0124】
次に、光反射層12上にポリオレフィン系の接着剤をグラビア印刷法で塗工し、この接着剤層を介して、光反射層12に多孔質層17を重ね合わせ、適度な熱及び圧力を加えてそれらを貼り合わせた。なお、多孔質層17としては、坪量が52g/m2の上質紙を使用した。
【0125】
次いで、多孔質層17上に、オフセット印刷法により、以下に組成を示すインキBを乾燥膜厚が1μmになるように印刷した。更に、この塗膜に紫外線を照射した。これにより、光学機能層13を得た。
【0126】
その後、光学機能層13上に、オフセット印刷法により、プロセス墨インキを乾燥膜厚が1μmになるように印刷して、二次元コードパターンとしての光吸収パターン14を形成した。プロセス墨インキとしては、東洋インキ製造社製のFD カルトンACE スミ ロを使用した。以下、このようにして得られた構造を、「第1構造」と呼ぶ。
【0127】
上述した方法で第1構造を形成する一方で、以下の方法により第2構造を形成した。
まず、基材11として、厚さが25μmのポリエチレンシートを準備した。この基材11には、エンボス加工を行って、一方の主面に凹部を形成した。この凹部内に、グラビア印刷法により、インキを乾燥膜厚が約5μmになるように塗工して、インキ層15を形成した。このインキとしては、東洋インキ製造社製のJW250 アクワエコール 911を使用した。その後、基材11の先の主面のうち、凹部を取り囲んでいる部分に、スクリーン印刷方法によってポリオレフィン系の接着剤を約2μmの厚さに塗工した。以下、このようにして得られた構造を、「第2構造」と呼ぶ。
【0128】
次に、第1及び第2構造を、基材11と封止層16とがインキ層15を間に挟んで向き合うように重ね合わせた。続いて、この積層体の周縁部に、150℃の熱と10kg/cm2の圧力とを約3秒間に亘って加えて、基材11と封止層16とを接着した。以上のようにして、ラベル1を完成した。
【0129】
[インキBの組成]
有機系青色顔料(御国色素社製) 5質量部
有機系赤色顔料(御国色素社製) 7質量部
有機系黄色顔料(御国色素社製) 8質量部
UV硬化型オフセットインキメジウム(FD カルトンACE メジウム ロ:東洋インキ製造社製) 80質量部
【実施例2】
【0130】
基材11として、厚さ25ミクロンの白色PETを準備し、この基材11上に前記多孔質層17を貼付し、さらに多孔質層17上層に前記[インキBの組成]からなるインキをオフセット印刷法にて膜厚が1μmになるように全面に印刷した。この上層に下記[マイクロカプセルインキの組成]からなるインキを、グラビア印刷法にて2次元コードパターンが形成されるように印刷してラベル2を完成させた。
【0131】
[マイクロカプセルインキの組成]
カーボンブラック分散液内包マイクロカプセル(平均粒子径10μm) 50重量部
PVA樹脂(ポバールPVA−117:クラレ(株)社製 5重量部
水 45重量部
これらラベル1およびラベル2の前面を肉眼で観察したところ、全体が黒色に見えた。
【0132】
また、図3に示すシステムを用いて、ラベル1およびラベル2を、光源31が放射する第1波長の光、ここでは波長が800nmの光で照明しながら撮像装置32で撮影したところ、画像表示装置36は、黒色の二次元コードパターンと白色の背景とからなる画像を表示した。即ち、ラベルは、機械読み取りが可能な画像を表示した。
【0133】
次に、このラベル1に対して無効化処理を行った。具体的には、図5を参照しながら説明したように、ラベル1およびラベル2に、その前面側から破壊装置51を押し当てた。
【0134】
次いで、図3に示すシステムを用いて、ラベル1およびラベル2を、光源31が放射する上記第1波長の光で照明しながら撮像装置32で撮影したところ、いずれのラベルにおいても画像表示装置36は、光吸収パターン14と針で孔を設けた部分及びその近傍との少なくとも一方に対応した領域が黒色に見えた。即ち、二次元コードパターンを正確に読み取ることが不可能となった。
【符号の説明】
【0135】
1…ラベル、2…粘着層、3…印刷物本体、3a…印刷基材、3b…印刷層、10…粘着ラベル、11…基材、12…光反射層、13…光学機能層、14…光吸収パターン、15…インキ層、16…封止層、17…多孔質層、17a…未浸透部、17b…浸透部、31…光源、32…撮像装置、36…画像表示装置、38…光学フィルタ、51…破壊装置、100…印刷物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る波長の光を透過させる光学機能層と、
前記光学機能層と向き合い、前記波長の光を吸収する光吸収パターンと、
前記光学機能層及び前記光吸収パターンがそれらの構造を維持する温度範囲内の何れかの温度において流動性を示し、前記波長の光を吸収するインキを含んだインキ層と、
任意に、前記光学機能層及び前記光吸収パターンの後方に位置し、前記波長の光を反射させる光反射層と
を備えたラベルであって、
前記ラベルが前記光反射層を含んでいない場合、前記インキ層は、前記光学機能層の主面への前記インキ層の第1正射影と前記主面への前記光吸収パターンの第2正射影との組み合わせが前記主面の一部のみを占めるように、前記光学機能層又は前記光吸収パターンの後方に位置し、
前記ラベルが前記光反射層を含んでいる場合、前記インキ層は、前記光反射層の後方に位置しているか、又は、前記組み合わせが前記主面の一部のみを占めるように前記光学機能層又は前記光吸収パターンの後方に位置しているラベル。
【請求項2】
前記ラベルは前記光反射層を含み、前記インキ層は前記光反射層の後方に位置している請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
前記光学機能層は前記光吸収パターンと前記光反射層との間に介在した請求項2に記載のラベル。
【請求項4】
前記光吸収パターンは前記光学機能層と前記光反射層との間に介在した請求項2に記載のラベル。
【請求項5】
或る波長の光を透過させる光学機能層と、
前記光学機能層の背面の一部と向き合い、前記波長の光を反射させる光反射パターンとしての光反射層と、
前記光学機能層の背面の他の一部と前記反射層を間に挟んで向き合ったインキ層であって、前記光学機能層及び前記光反射層がそれらの構造を維持する温度範囲内の何れかの温度において流動性を示し、前記波長の光を吸収するインキを含んだインキ層と
を備えたラベル。
【請求項6】
前記光反射層の前方に位置し、前記波長の光を透過させる多孔質層を更に備えた請求項1乃至5の何れか1項に記載のラベル。
【請求項7】
前記多孔質層は前記光学機能層と前記光反射層との間に介在した請求項6に記載のラベル。
【請求項8】
前記波長は赤外領域内にあり、前記光学機能層は黒色層である請求項1乃至7の何れか1項に記載のラベル。
【請求項9】
前記波長は近赤外領域内にあり、前記光学機能層の前記波長における透過率は30%以上であり、前記光学機能層は、近赤外領域の700乃至800nmの波長域と、近赤外領域の800乃至1500%の波長域でいずれかの波長の透過率差が10%以上である請求項8に記載のラベル。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のラベルと、前記ラベルの背面と向き合った粘着層とを具備した粘着ラベル。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のラベルと、
前記ラベルの背面と向き合った印刷基材と、
前記ラベルと前記印刷基材との間に介在して、前記ラベルを前記印刷基材に貼り付けた粘着層と
を具備した印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−73136(P2013−73136A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213730(P2011−213730)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)