説明

ラベルシートの真贋判定システム、基準画像取得装置、真贋判定装置及びそれらに用いるラベルシート

【課題】確実に偽造を防止できるラベルシート及びラベルシートの真贋判定システムを提供する。
【解決手段】可視光とは異なる波長の光の照射により目視可能となる蛍光繊維62Aが含まれた粘着ラベル60Aを備えてなるラベルシート60に可視光とは異なる波長の光を照射して電子的な第1の画像情報を取得する第1の画像情報取得装置40と、第1の画像情報取得装置40によって取得した第1の画像情報のうち、粘着ラベル60Aに対応する領域の基準画像情報を予め記憶するハードディスク装置12と、真贋を判定すべき粘着ラベル60Aに可視光とは異なる波長の光を照射して電子的な第2の画像情報を取得する第2の画像情報取得装置140と、第2の画像情報を、ハードディスク装置12に記録された基準画像情報と比較して両者が一致するか否かを判定するCPU111と、を備えたラベルシート60の真贋判定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルシートの真贋判定システム、基準画像取得装置、真贋判定装置及びそれらに用いるラベルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商品が真正品であることを保証するためのラベルシートとして、例えば特許文献1に記載のホログラム付きラベルが知られている。このようなホログラム付きラベルは、光の干渉を利用した立体的な模様が表示されるもので、製造に高度な技術を要することから、ラベルの偽造を行いにくく、例えば製品のシリアル番号を表示するシリアルラベルなどに用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−86252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホログラム付きラベルは高度な製造技術があれば偽造されてしまう可能性がある。また、製造に高度な技術を要するため、製造コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、より確実に偽造を防止できるラベルシート及びラベルシートの真贋判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可視光とは異なる波長の光の照射により目視可能となる蛍光性物質が含まれた粘着ラベルを備えてなるラベルシートに可視光とは異なる前記波長の光を照射して電子的な第1の画像情報を取得する第1の画像情報取得装置と、前記第1の画像情報取得装置によって取得した前記第1の画像情報のうち、前記粘着ラベルに対応する領域の基準画像情報を予め記憶する記憶装置と、真贋を判定すべき粘着ラベルに可視光とは異なる前記波長の光を照射して電子的な第2の画像情報を取得する第2の画像情報取得装置と、前記第2の画像情報を、前記記憶装置に記録された前記基準画像情報と比較して両者が一致するか否かを判定する画像情報判定装置と、を備えたことに特徴を有する。
【0007】
本発明の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
前記記憶装置には、前記粘着ラベルに設定された視認可能な識別記号が前記基準画像情報と対応づけて記憶され、前記画像情報判定装置は、前記真贋を判定すべき粘着ラベルに設定された前記識別記号に対応する前記基準画像情報と、前記第2の画像情報とを比較して両者が一致するか否かを判定することを特徴とする。このような構成としておけば、画像情報判定装置は真贋を判定すべき粘着ラベルの識別記号に対応した基準画像情報だけを記憶装置から取得して、第2の画像情報との比較を行えばよい。このため判定を容易に行うことができる。
【0008】
前記第1の画像情報取得装置により前記第1の画像情報を取得する前の前記ラベルシートに画像を形成するための画像形成装置を有していてもよい。このような構成としておけば、画像形成装置でラベルシートに画像を形成した後、直ぐに第1の画像情報取得装置にて基準画像情報を取得できる。
【0009】
前記蛍光性物質は、前記粘着ラベルごとに異なる偶発的な配列をなし、前記粘着ラベルに含まれていることが好ましい。このような構成としておけば、同じ蛍光性物質の配列を意図的に作ろうとしても困難であり、粘着ラベルの偽造を困難にできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、まず、ラベルシートに対して、第1の画像情報取得装置にて第1の画像情報を取得し、この画像情報のうち、粘着ラベルに対応する領域の基準画像情報を記憶装置に記憶しておく。そして、真贋の判定をしたい粘着ラベルを第2の画像情報取得装置にかけて第2の画像情報を取得し、画像情報判定装置にてその第2の画像情報と基準画像情報が一致するか否かを判断し、一致するときに真正と判定する。これにより粘着ラベルの真贋を判定できる。また、可視光では蛍光性物質を視認できないため、粘着ラベルの模倣や偽造が困難である。さらに、粘着ラベルに蛍光性物質を含むといった比較的簡易な製造方法で偽造防止効果を付加したラベルシートを製造できるから、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ラベルシートの断面図
【図2】ラベルシートの正面図
【図3】基準画像取得装置の電気的構成を示すブロック図
【図4】真贋判定装置の電気的構成を示すブロック図
【図5】紫外光が照射された粘着ラベル(シリアルラベル)の画像を示す模式図
【図6】基準画像情報取得の処理を示すフローチャート
【図7】真贋判定の処理を示すフローチャート
【図8】実施形態2の基準画像取得装置の電気的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7によって説明する。
(1)ラベルシートの構成
本実施形態のラベルシート60は、図1に示すように、粘着シート61と剥離シート66との積層構造である。粘着シート61と剥離シート66とは、いずれも方形状(本実施形態においては矩形状)の紙の外縁をそれぞれ合致させることで構成されており、全体として例えばA4サイズの大きさで設定されている(図2)。
【0013】
剥離シート66は剥離基材シート67とその一方の面に積層された剥離層68とからなる。剥離層68は剥離シート66を作成する際に通常使用されるシリコーン等の剥離剤の塗布などによって形成され、剥離基材シート67の表面全体に形成されている。
【0014】
粘着シート61は、文字などを印刷可能な基材シート62と、その一方の面(本実施形態においては裏面)に積層された粘着剤層63とからなる。基材シート62はパルプ繊維に対して、例えば0.05重量%〜1重量%の蛍光繊維62Aを混入して抄造したものである。パルプ繊維に混合された蛍光繊維62Aは基材シート62の抄造工程でその位置分布が不規則に変化しているから、基材シート62内で蛍光繊維62Aは偶発的な配列となる。蛍光繊維62Aはポリエステル繊維又はナイロン繊維を紫外光照射により蛍光発色する蛍光染料又は蛍光顔料によって着色したもので、長さは数ミリから数センチのものが好適である。なお、本実施形態では、紫外光は特許請求の範囲に記載の「可視光とは異なる波長の光」の一例であり、蛍光繊維62Aは特許請求の範囲に記載の「蛍光性物質」の一例である。
【0015】
また、粘着シート61には、基材シート62から粘着剤層63に達する深さの切り込みによって略矩形状に閉じた形態をなすラベル分断スリット64が形成されている。図2に示すように、このラベル分断スリット64に囲まれて、複数枚の粘着ラベル60Aが周囲から切り離し可能に形成されている。粘着ラベル60Aは、ラベルシート60の短辺方向に左右一対が並んで配置されるとともにラベルシート60の長辺方向に複数枚が整列状に並んで配置され、長辺方向に隣接するもの同士および短辺方向に隣接するもの同士は、同一のラベル分断スリット64により間をあけることなく区画されている。粘着剤層63は図1に示すように剥離層68の上に重ね合わされ、両者の境界面で互いに剥離可能とされる。
【0016】
(2)真贋判定システム
本実施形態による真贋判定システムは、基準画像取得装置16及び真贋判定装置17から構成されている。本実施形態では、図2で示すようにラベルシート60の各粘着ラベル60Aに製品のシリアルナンバーS及び各粘着ラベル60Aに設定された識別記号N(後述)といった情報を予め印刷しておく。そして、情報が印刷された状態のラベルシート60(以下シリアルラベルシート70)について基準画像取得装置16にて、各粘着ラベル60A固有の画像情報である基準画像情報(詳しくは後述)を取得する。そして、製品19に貼り付けられた粘着ラベル60A(以下シリアルラベル70A)に対して、真贋判定装置17にて真贋判定を行う。
【0017】
ここで、識別記号Nは例えば、印刷されるラベルシート60に固有に設定された識別番号と、ラベルシート60内の各粘着ラベル60Aに設定された識別番号を組み合わせて設定される。識別番号50番のラベルシート60にシリアルナンバーSを印刷した場合を例にとると、このシリアルラベルシート70における7枚目の粘着ラベル60A(例えば図2の右上の粘着ラベル)の識別記号Nは00050−07と設定される。
【0018】
(2−1)基準画像取得装置の構成
図3に示すように、基準画像取得装置16は管理コンピュータ10に画像読取装置20を接続して構成されている。画像読取装置20内には、モータ21によって駆動される複数本の搬送ローラ22が並べられ、図示しない用紙挿入口から挿入したシリアルラベルシート70を図面中左側から右側に向かって搬送し、装置右側の図示しない排出口から排出するようになっている。搬送ローラ22によるラベルシート60の搬送路に近接して、第1の画像情報取得装置40がその搬送路に沿って設けられている。
【0019】
第1の画像情報取得装置40は、紫外光を照射する光源41と、搬送されるシリアルラベルシート70からの光を受光する第1のCCDセンサ42とを備える。光源41は線状光源であって、シリアルラベルシート70の搬送方向に対して直交する方向に延びるように設置されている。また、第1のCCDセンサ42はシリアルラベルシート70の搬送方向に対して直交する方向に延びるラインセンサにより構成されており、可視光の波長領域を受光して画像信号を出力する。なお、第1のCCDセンサ42が紫外光に対しても受光特性がある場合には、受光窓に紫外線カットフィルタを設けておくことが望ましい。また、光源41はランプ電源51により点灯駆動される。
【0020】
管理コンピュータ10は、CPU11及び、CPU11と電気的に接続されたハードディスク装置12、表示装置13、入力装置18(例えばキーボード)を備える。また、CPU11の入力ポートには、前記画像読取装置20のCCDセンサ42からの画像信号をA/D変換するA/D変換器14が設けられ、各画像信号がデジタル化されてCPU11に出力される。そして、CPU11の出力ポートは、ランプ電源51及びモータ21の制御端子に接続されて、それらを制御することができる。また、記憶装置であるハードディスク装置12には、画像読取装置20と連係してシリアルラベルシート70の基準画像情報を取得するためのプログラム(後述)が格納されている。
【0021】
(2−2)真贋判定装置の構成
真贋判定装置17は図4に示すように管理コンピュータ110に第2の画像情報取得装置140を接続して構成されている。第2の画像情報取得装置140は、紫外光を照射する線状光源である光源141と、粘着ラベルからの光を受光する第2のCCDセンサ142とを備える。第2のCCDセンサ142は例えば、ユーザが手に持って動かすことによりシリアルラベル70Aを走査する手持ち式のハンドスキャナであり、可視光の波長領域を受光して画像信号を出力する。なお、第2のCCDセンサ142が紫外光に対しても受光特性がある場合には、受光窓に紫外線カットフィルタを設けておくことが望ましい。なお、光源141はランプ電源151により点灯駆動される。
【0022】
管理コンピュータ110は、CPU111及び、CPU11と電気的に接続されたハードディスク装置112、表示装置113、入力装置118(例えばキーボード)を備える。また、CPU111の入力ポートには、第2のCCDセンサ142からの画像信号をA/D変換するA/D変換器114が設けられ、各画像信号がデジタル化されてCPU111に与えられる。そして、CPU111の出力ポートは、ランプ電源151の制御端子に接続されて、これを制御することができる。記憶装置であるハードディスク装置112には、第2の画像情報取得装置140と連係してシリアルラベル70Aの画像情報を取得するためのプログラムが格納されている。
【0023】
基準画像取得装置16及び真贋判定装置17とは、例えば、互いに異なる場所に設置され、ケーブル又はネットワーク(インターネットを含む)を介して相互に接続されている。これにより、真贋判定装置17が基準画像取得装置16に記憶されたシリアルラベルシート70の基準画像情報(後述)を取得可能な構成となっている。
【0024】
(2−3)基準画像取得装置の処理
基準画像取得装置16のハードディスク装置12に格納されているプログラムを起動させると、図6に示すフローチャートに従って基準画像情報の取得が行われる。まず、ユーザは入力装置18を操作して、基準画像情報を登録したいシリアルラベルシート70の各シリアルラベル70Aに設定された識別記号Nを入力する(S10)。次に管理コンピュータ10からの信号によってランプ電源51が駆動され、光源41が点灯駆動されると共に、モータ21が駆動されることで搬送ローラ22が回転する(S20)。
【0025】
そこで、シリアルラベルシート70を画像読取装置20の用紙挿入口から差し込むと、シリアルラベルシート70は搬送ローラ22によって画像読取装置20内の搬送路を図3の左側から右側に向かって搬送され、第1の画像情報取得装置40を通過することになる。
【0026】
第1の画像情報取得装置40にシリアルラベルシート70が搬送されると、光源41(紫外光)に照らされたシリアルラベルシート70は、セキュリティペーパーの中に混入されている蛍光繊維が紫外光を受けて蛍光(可視光)を発光するため、第1のCCDセンサ42によってその光が受光される。
【0027】
ところで、シリアルラベルシート70を構成している通常の紙繊維は紫外光を受けても、その一部を反射するだけであって蛍光を発しないから、紫外光に受光特性がない第1のCCDセンサ42によっては認識されない。このため、仮に、印刷がされていないシリアルラベルシート70を第2の画像情報取得装置40に通した場合には、第1のCCDセンサ42によって取得される画像は、蛍光繊維がシート全域に無秩序に散らばって光る画像となる。
【0028】
一方、本実施形態では、このシリアルラベルシート70にシリアルナンバーS及び識別記号Nを示す文字を印刷しているから、無秩序に散らばる蛍光繊維62Aの上にこれらの文字が重なっている。蛍光繊維62Aの上に文字が重なっている場合、紫外光は文字によって遮られて局部的に蛍光繊維62Aに照射されないことになる。このため、実際に第1のCCDセンサ42によって取得される画像は、無秩序に散らばった蛍光繊維62Aが発光してはいるが、蛍光繊維62Aに重ねて文字が印刷されている部分では、その文字によって蛍光繊維62Aは発光しない。
【0029】
このため、第1のCCDセンサ42の情報は、このシリアルラベルシート70に使用された蛍光繊維62Aの分散状態に依存したそのラベルシート固有の画像情報と、その上に印刷された内容(文字等)特有の画像情報とが混合した情報となる。なお、紫外光を照射した際のシリアルラベルシート70のシリアルラベル70Aの画像を図5の模式図にて示す。同図は、蛍光による発光部分を黒く図示してあり、図中の円形の拡大部分では蛍光繊維62Aの発光が文字(ここでは印刷されたシリアルナンバーSの一部)により局所的に遮られた状態を示している。
【0030】
第1の画像情報取得装置40によって、シリアルラベルシート70から上述のように、紫外光光源による第1の画像情報が取得されると(S30)、シリアルラベルシート70は装置右側の図示しない排出口から排出され、その後ランプ電源51をOFFさせて光源41を消灯させると共にモータ21を停止させることで搬送ローラ22を停止させる(S40)。
【0031】
次に、CPU11は取得された第1の画像情報(ラベルシート全体の画像)について画像処理を行い各粘着ラベル60Aに対応した領域(例えば粘着ラベル60Aの全体領域)をそれぞれ切り出す。切り出された各粘着ラベル60Aに対応する領域の画像は所定形式の画像ファイル(基準画像情報)として、先に入力された各識別記号Nと対応付けられてデータベースを構成し、ハードディスク装置12に記録される(S50)。なお、第1の画像情報から各粘着ラベル60Aに対応した領域を切り出す際には、例えば、ラベルシート60のサイズ、及びラベルシート60に形成されたラベル分断スリット64の形成箇所の座標データを予めハードディスク装置12に記憶しておき、これらに基づいて各ラベル60Aの領域を特定すればよい。また、データベースを構成するレコードは画像情報の登録毎に1つ作成され、各レコード毎に基準画像情報を記録するフィールドと、対応する識別記号Nを記録するフィールドとが含められている。
【0032】
S50の処理が完了した後、基準画像情報の登録を終了するか否かが表示装置13に表示され、登録を終了しないことが選択された場合にはS10に戻って次のシリアルラベルシート70について基準画像情報の登録が繰り返し行われ、登録を終了することが選択されると、この基準画像情報取得のプログラムが終了する。
【0033】
(2−4)真贋判定装置の処理
真贋判定装置17にて、製品19に貼り付けられたシリアルラベル70Aに対して真贋判定を行うには次のようにする。システムを起動させると図7のフローチャートに示す真贋判定プログラムが実行される。
【0034】
まず、ユーザは入力装置118により、シリアルラベル70Aに印刷された識別記号Nを入力する(S70)。次に、CPU111は光源141を稼動させ、紫外光をシリアルラベル70Aに照射する。この状態でユーザは第2のCCDセンサ142をシリアルラベル70Aに対して走査させることで第2の画像情報を取得する(S90)。
【0035】
次に、CPU111は、基準画像取得装置16のハードディスク装置12に記憶されているデータベース情報を読み取り、データベースを構成するレコード群の中から、S70の処理により入力された識別記号Nに対応するシリアルラベル70Aの基準画像情報を取得する。そして、第2の画像情報と基準画像情報とを比較して、両者が一致するかどうかを判定する(S100)。両者が一致する場合は表示装置13に「真正」との表示がされる(S110)。なお、ここで、画像情報の一致は、完全一致ではなく、シリアルラベル70Aに付着する汚れや光源41、141やCCDセンサ42、142の劣化度合い等を考慮して、ある範囲内の相違を許容した同一性を見ることとする。
【0036】
第2の画像情報と基準画像情報とが一致しない場合は、表示装置113に「偽」の表示がなされる(S120)。このような判定がされる例としては、シリアルラベル70Aに印刷されているシリアルナンバーS又は識別記号Nがオリジナルとは異なるように改ざんされている場合や、シリアルラベル70Aとは異なるシリアルラベルに対してオリジナルと同じシリアルナンバーS及び識別記号Nが印刷されている場合などがある。
【0037】
以上のように、本実施形態では、シリアルラベル70Aに対して、紫外光による基準画像情報を取得し、これを記憶しておく。そして、判定すべきシリアルラベルに対して、紫外光による画像情報を取得し、基準画像情報と一致するか否かを判定することでその真贋を判定することができる。また、可視光では蛍光性物質を視認できないため、シリアルラベル70Aの模倣や偽造が困難である。
【0038】
また、シリアルラベル70Aには、蛍光繊維62Aが抄きこまれているから、紫外光による基準画像はシリアルラベル70A毎に異なった蛍光性物質の偶発的配列が反映された画像となる。このため、同じ蛍光性物質の配列を有するシリアルラベルを意図的に作ることは困難であり、シリアルラベルの偽造を困難にできる。
【0039】
また、基材シート62はパルプ繊維に蛍光繊維62Aを混入して抄造するといった比較的簡易な製造方法で偽造防止効果を付加したラベルシートを製造できるから、製造コストを低減できる。
【0040】
また、ハードディスク装置12には、各シリアルラベル70Aに対応した識別記号N及び基準画像情報とが対応づけて記憶されている。このような構成としておけば、真贋判定装置17のCPU111は真贋を判定すべきシリアルラベル70Aの識別記号Nに対応した基準画像情報だけをハードディスク装置12から取得して、第2の画像情報との比較を行えばよい。このため判定を容易に行うことができる。
【0041】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図8によって説明する。実施形態1と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところについてのみ説明する。実施形態2における真贋判定システムは、実施形態1の基準画像取得装置16に加えて画像形成装置としての周知のレーザ印刷装置91と、そのレーザ印刷装置91に印刷用紙を供給する用紙トレイ92とを設けており、実施形態1の管理コンピュータ10を含めて全体が一つの筐体に納められている。なお、ハードディスク装置12には、上記レーザ印刷装置91を制御して用紙に所望の文字・画像を形成するための印刷制御プログラムが格納されている。また、用紙トレイ92には予めラベルシート60が複数枚セットされている。
【0042】
この実施形態2の真贋判定システムは、印刷機能を有する複合機として構成されている。これによれば、レーザ印刷装置91によってラベルシート60に例えばシリアルナンバーS、識別記号N等を印刷し、その後、直ちに第1の画像情報取得装置40によってそのラベルシート60(シリアルラベルシート70)の基準画像情報を取得して自動的にハードディスク装置12に記憶することができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
(1)上記実施形態では、蛍光性物質として、紫外光によって蛍光を発する物質を例示したが、これに限らず、赤外線によって蛍光を発する蛍光性物質を用いても良く、要するに可視光とは異なる波長の光(電磁波)によって蛍光を発するものであればよい。
【0045】
(2)上記実施形態では、粘着ラベル60AにシリアルナンバーSを印刷し、シリアルラベルとして使用する例を示したが、これに限定されない。例えば、粘着ラベル60Aを再接着不能なセキュリティシールとして用いてもよい。具体的には、粘着ラベル60Aの粘着剤層63と基材シート62の間にフィルムを挟み込み、基材シート62とフィルムは剥離可能に設定し、粘着剤層63とフィルムとを剥離不能に設定しておく。このようにしておけば、一度貼り付けた粘着ラベル60Aを剥がした場合、フィルム及び粘着剤層63が貼付対象に残るため再接着不能となる。
【0046】
この粘着ラベル60Aで封止されている封筒などに対して、第3者が粘着ラベル60Aを剥がし不正に開封した場合、不正開封を隠蔽するために同じ種類の粘着ラベル60Aを貼りなおすことが想定される。しかし、粘着ラベル60A内の蛍光繊維の配列は粘着ラベル60Aごとに異なっているから、元々貼られていた粘着ラベル60Aでないことを判別可能である。このため、不正開封を抑止できる。
【0047】
(3)上記実施形態では、真贋判定システムを基準画像取得装置16と真贋判定装置17との2台の装置から構成したが、これに限定されない。例えば、基準画像取得装置16に真贋判定のプログラムを格納しておけば、基準画像取得装置16だけで、基準画像情報の取得及び真贋の判定を行うことが可能である。
【0048】
(4)上記実施形態では、粘着ラベル60Aの全体領域を切り出して基準画像情報としたが、粘着ラベル60Aの一部の領域だけを切り出して基準画像情報としてもよい。例えば、粘着ラベル60Aの非印字領域だけを切り出して基準画像情報とし、真贋判定装置では同領域について第2の画像情報を取得すればよい。このようにすれば、基準画像情報に対応する領域では、蛍光繊維62Aに重ねて文字が印刷されることがないから、印刷前のラベルシート60に対して基準画像情報を取得し、印刷後の第2の画像情報との真贋の判定を行うことが可能である。
【0049】
(5)上記実施形態では、基準画像情報を記憶するための記憶装置としてハードディスク装置12を使用したが、代わりの記憶装置として、例えばフレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード等を使用してもよい。
【0050】
(6)上記実施形態では、シリアルラベルシート70に紫外光を照射して取得した画像情報によって真贋の判定を行った。この紫外光による判定に加えて、シリアルラベルシート70に可視光を照射して取得した画像情報による真贋の判定を行ってもよい。具体的には、基準画像取得装置16に可視光源を設置し、可視光を照射して取得した基準画像情報を識別記号Nと対応づけてハードディスク装置12に記憶させておく。一方、真贋判定装置17にも可視光源を設置し、真贋を判定すべきシリアルラベル70Aに可視光を照射して画像情報を取得する。そして、取得した画像情報とハードディスク装置12に記憶した基準画像情報とで真贋の判定を行う。
【0051】
このようにしておけば、可視光と紫外光との2種類の画像情報に基づいてついてそれぞれ同一性の判定を行うことができる。このため、それぞれの判定において、例えばシリアルラベル70Aに付着する汚れや各装置16、17の光源光量やCCDセンサ42、142の感度の変動等を考慮して判定基準を下げたとしても、2種類の判定を行うことで、正確な真贋判定を行うことができる。
【0052】
(7)上記実施形態では、各粘着ラベル60Aに対応した識別記号Nと基準画像情報とを対応付けてハードディスク装置12に記憶させる構成としたが、これに限定されない。例えば、基準画像情報のみをハードディスク装置12に記憶させる構成としてもよい。この構成の場合、真贋判定装置17のCPU111は、ハードディスク装置12に記憶された基準画像情報の中から第2の画像情報と一致する基準画像情報を検索し、一致する画像情報があるか否かを判定すればよい。
【0053】
(8)上記実施形態では、粘着ラベル60Aの基材シート62をパルプ繊維と蛍光繊維62Aとから形成する例を示したが、これに限定されない。例えば、基材シート62を例えばポリオレフィン樹脂等から製造したプラスチックフィルムとし、そのプラスチックフィルムに蛍光性物質を混入させた構成としてもよい。この場合の蛍光性物質としては、繊維や粉粒体として混入してもよい。あるいは、フィルム基材の樹脂とは溶け合わない別種の樹脂を蛍光染料によって染色しておき、プラスチックフィルムの製造時に上記の蛍光性の樹脂を混練しつつフィルム化すれば、蛍光性の樹脂がフィルム基材の樹脂中で偶発的な模様を形成することになる。この項目(8)で述べた製法によれば、次のようなラベルシートが得られる。すなわち、基材シートの一方の面に粘着剤層が形成されてなる粘着ラベルと、剥離層が前記粘着剤層に重ねられた剥離シートとを備えるラベルシートであって、前記基材シートがプラスチックフィルムであって、そのプラスチックフィルムには可視光とは異なる波長の光の照射により目視可能となる蛍光性物質が偶発的な配列をなして含まれているラベルシート。
【0054】
(9)上記実施形態では、粘着ラベル60Aの基材シート62に蛍光繊維62Aを混入した例を示したが、このように蛍光性物質を基材シート自体に含ませるに限らず、基材シートと粘着剤層との間に含ませることができる。そのためには、例えばポリビニルアルコール溶液に所定量の蛍光繊維を混入した塗工液を準備しておき、その塗工液を基材シート(透光性のプラスチックフィルムが好ましい)の一方の面にロールコータ等によって塗工して蛍光繊維が偶発的な配列をなして含まれる層を形成し、その上に粘着剤層を形成する。また、離型性のベースフィルムの表面に粘着剤層を形成し、ついでその粘着剤層の表面に蛍光繊維や蛍光性の粉粒体を散布し、その面に基材シートを重ね合わせて圧着し、ついで前記ベースフィルムを剥がして代わりに剥離シートを重ねる。或いは、例えば、基材シートを帯電させ、静電気によって基材シートに蛍光繊維を吸着させた後、蛍光繊維を覆うように粘着剤層を形成する。
この項目(9)に記載した製法によれば、次のようなラベルシートが得られる。すなわち、基材シートの一方の面に粘着剤層が形成されてなる粘着ラベルと、剥離層が前記粘着剤層に重ねられた剥離シートとを備えるラベルシートであって、前記基材シートと前記粘着剤層との間には、可視光とは異なる波長の光の照射により目視可能となる蛍光性物質が偶発的な配列をなして含まれているラベルシート。
【0055】
(10)また、蛍光性物質は、粘着剤層に混入させても良い。これは例えば、粘着剤に蛍光性物質を混入しておき、これを基材シート表面に塗工するという製法により製造できる。これによれば、次のようなラベルシートが得られる。すなわち、基材シートの一方の面に粘着剤層が形成されてなる粘着ラベルと、剥離層が前記粘着剤層に重ねられた剥離シートとを備えるラベルシートであって、前記粘着剤層内には、可視光とは異なる波長の光の照射により目視可能となる蛍光性物質が偶発的な配列をなして含まれているラベルシート。
【0056】
(11)上記実施形態では、識別記号Nを数字で設定した例を示したが、これに限定されない。識別記号は要するに各粘着ラベル60Aを識別できる固有の記号であればよく、例えばアルファベットやその他の記号又はそれらを組み合わせて設定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
12…ハードディスク装置(記憶装置)
16…基準画像取得装置
17…真贋判定装置
40…第1の画像情報取得装置
60…ラベルシート
60A…粘着ラベル
62…基材シート
62A…蛍光繊維(蛍光性物質)
63…粘着剤層
66…剥離シート
68…剥離層
91…レーザ印刷装置(画像形成装置)
111…CPU(画像情報判定装置)
140…第2の画像情報取得装置
N…識別記号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光とは異なる波長の光の照射により目視可能となる蛍光性物質が含まれた粘着ラベルを備えてなるラベルシートに可視光とは異なる前記波長の光を照射して電子的な第1の画像情報を取得する第1の画像情報取得装置と、
前記第1の画像情報取得装置によって取得した前記第1の画像情報のうち、前記粘着ラベルに対応する領域の基準画像情報を予め記憶する記憶装置と、
真贋を判定すべき粘着ラベルに可視光とは異なる前記波長の光を照射して電子的な第2の画像情報を取得する第2の画像情報取得装置と、
前記第2の画像情報を、前記記憶装置に記録された前記基準画像情報と比較して両者が一致するか否かを判定する画像情報判定装置と、を備えたラベルシートの真贋判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のラベルシートの真贋判定システムにおいて、
前記記憶装置には、前記粘着ラベルに設定された視認可能な識別記号が前記基準画像情報と対応づけて記憶され、
前記画像情報判定装置は、前記真贋を判定すべき粘着ラベルに設定された前記識別記号に対応する前記基準画像情報と、前記第2の画像情報とを比較して両者が一致するか否かを判定することを特徴とするラベルシートの真贋判定システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のラベルシートの真贋判定システムにおいて、
さらに、前記第1の画像情報取得装置により前記第1の画像情報を取得する前の前記ラベルシートに画像を形成するための画像形成装置を有するラベルシートの真贋判定システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のラベルシートの真贋判定システムにおいて、
前記蛍光性物質は、前記粘着ラベルごとに異なる偶発的な配列をなし、前記粘着ラベルに含まれていることを特徴とするラベルシートの真贋判定システム。
【請求項5】
可視光とは異なる波長の光の照射により目視可能となる蛍光性物質が含まれた粘着ラベルを備えてなるラベルシートに可視光とは異なる前記波長の光を照射して電子的な画像情報を取得する画像情報取得装置と、
前記画像情報取得装置によって取得した画像情報のうち、前記粘着ラベルに対応する領域の基準画像情報と前記粘着ラベルに対応する識別記号とを、互いに対応づけて記憶する記憶装置と、を備えた基準画像取得装置。
【請求項6】
真贋を判定すべき粘着ラベルに可視光とは異なる波長の光を照射して電子的な画像情報を取得する画像情報取得装置と、
可視光とは異なる前記波長の光の照射により目視可能となる蛍光性物質が含まれた粘着ラベルに可視光とは異なる前記波長の光を照射して予め取得された基準画像情報と前記画像情報とを比較して両者が一致するか否かを判定する画像情報判定装置と、を備えた真贋判定装置。
【請求項7】
基材シートの一方の面に粘着剤層が形成されてなる粘着ラベルと、剥離層が前記粘着剤層に重ねられた剥離シートとを備えるラベルシートであって、
前記粘着ラベルには、可視光とは異なる波長の光の照射により目視可能となる蛍光性物質が偶発的な配列をなして含まれていることを特徴とするラベルシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−182249(P2010−182249A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27499(P2009−27499)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(501244200)株式会社KALBAS (48)
【Fターム(参考)】