説明

ラベル付き容器

【課題】ラベル表面に水が付着した状態であっても、自動販売機における多本出の発生を十分に防止できるラベル付き容器を提供することである。
【解決手段】ラベル付き容器10は、容器20と、熱収縮性フィルム基材31を含み少なくとも容器20の最大径部Dを覆って装着された熱収縮性ラベル30とを備え、熱収縮性ラベル30は、容器20の最大径部Dに位置する熱収縮性フィルム基材31の表面の少なくとも一部に、ポリプロピレンワックス33を含有するコーティング層32を有する。そして、コーティング層32は、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種飲料用容器として、所謂ペットボトルなどのプラスチック容器が広く用いられている。該プラスチック容器には、商品名等の表示や装飾性を付与するため、プラスチックラベルを装着する場合が多く、例えば、容器に対する追従性が良好である熱収縮性ラベルが装着される。内容物が充填され熱収縮性ラベルが装着されたプラスチック容器(商品)は、例えば、自動販売機で販売される。
【0003】
一般的に、自動販売機は、サーペンタイン構造と称される縦型蛇状構造の経路(以下、ベンダー経路とする)を有し、商品は当該ベンダー経路内において、商品の上下方向を水平方向に向けた状態で段積みに充填されている。自動販売機は、商品選択釦の操作と連動して、ベンダー経路の下端を塞ぐストッパが回動し、選択された商品が1本だけ商品受け取り口に落下する仕組みである。ところが、ラベル表面の滑り性が不十分であると、ベンダー経路内で商品が引っ掛り易く、例えば、ベンダー経路内で容器が立って、商品詰まりが発生する場合がある。
【0004】
このような状況に鑑み、ラベル表面の滑り性等を向上させたラベル付き容器が幾つか提案されている(特許文献1〜4参照)。例えば、特許文献1には、商品詰まりを改善するために、滑り性の観点に加えてラベル表面の硬さを改良することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006‐337933号公報
【特許文献2】特開2006‐337932号公報
【特許文献3】特開2005‐266747号公報
【特許文献4】特開2002‐196677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動販売機では、商品を冷却することで容器に装着されたラベルの表面に結露水が付着することが多い。結露水が付着すると、ストッパが回動したときに2本以上の商品が同時に落下する所謂多本出が発生し易くなることがわかった。これは、ベンダー経路内で段積みにされた商品の並びに偏り(水平方向に対する荷重の偏り)が発生することが原因である。ペットボトル等の容器では、通常、重心が上下方向の中央にないため、ベンダー経路内で段積みにされた商品の荷重は偏り易いが、この荷重の偏りは、ラベル表面に水が付着することで大きくなり易く、商品の荷重がベンダー経路の下部に位置する商品の一方側に集中して、多本出の発生につながる。
【0007】
また、多本出は、容器が撓み易い場合により発生し易くなる。容器が撓み易い場合は、ベンダー経路内で段積みにされた商品の荷重により容器が変形し易くなる。そして、容器が変形すると、上記荷重の偏りがより顕著になり、多本出がより発生し易くなる。
【0008】
即ち、本発明の目的は、ラベル表面に水が付着した状態であっても、自動販売機における多本出の発生を十分に防止できるラベル付き容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るラベル付き容器は、容器と、熱収縮性フィルム基材を含み、少なくとも容器の最大径部を覆って装着された熱収縮性ラベルとを備えるラベル付き容器であり、熱収縮性ラベルは、容器の最大径部に位置する熱収縮性フィルム基材の表面の少なくとも一部に、ポリプロピレンワックスを含有するコーティング層を有し、該コーティング層は、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7であることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ベンダー経路内で隣り合うラベル付き容器同士が接触し易い最大径部に、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7に調整されたコーティング層を有することで、水濡れ状態において、ベンダー経路内で段積みにされたラベル付き容器の荷重の偏りが大きくなることを防止できる。つまり、上記構成によれば、多本出の発生を防止することができる。
【0011】
本発明に係るラベル付き容器において、コーティング層は、熱収縮性ラベルを筒状体としたときに、該筒状体の外側表面全体に設けられることが好ましい。
【0012】
本発明に係るラベル付き容器において、内容物を充填した状態でラベル付き容器の径方向に対して、58.8Nの垂直荷重をかけたときの撓み量が4.5mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るラベル付き容器によれば、ラベル表面に水が付着した状態であっても、自動販売機における多本出の発生を十分に防止することができる。また、容器が撓み易い場合であっても、多本出の発生を十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態であるラベル付き容器を示す斜視図である。
【図2】図1に示すラベル付き容器を構成する熱収縮性ラベルの概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態であるラベル付き容器の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明に係るラベル付き容器の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施形態であるラベル付き容器10の構成について詳細に説明する。
図1は、ラベル付き容器10を示す斜視図であり、容器20と、熱収縮性フィルム基材31を含み、少なくとも容器20の最大径部Dを覆って装着された熱収縮性ラベル30とを備えるラベル付き容器10を示している。図2は、熱収縮性ラベル30の断面図であり、熱収縮性ラベル30が、容器20の最大径部Dに位置する熱収縮性フィルム基材31の表面の少なくとも一部に(図1参照)、ポリプロピレンワックス33(以下、PPワックス33とする)を含有するコーティング層32を有することを示している。なお、該コーティング層32は、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7である。
【0017】
ここで、「最大径部」とは、容器20の上下方向(首部22を上とする)に直交する方向(以下、径方向とする)の長さが最大となる部分である。なお、「上下方向」とは、後述の胴部21、肩部23、首部22が並ぶ方向である。例えば、容器20の径方向断面が円形である場合には、直径が最大となる部分が最大径部であり、径方向断面が多角形(例えば、八角形)である場合や凹凸(例えば、後述のパネル部26)がある場合には、外接円が最大となる部分(つまり凸状部)が最大径部である。
ベンダー経路内では、上記のように、ラベル付き容器10の上下方向が水平方向に向いた状態で段積みに充填される。ゆえに、ベンダー経路内で隣り合うラベル付き容器10は、断面円形の容器であれば、通常、それぞれの最大径部同士が接触している。
【0018】
図1に示すように、ラベル付き容器10は、容器20と、容器20に装着された熱収縮性ラベル30とで構成されている。容器20は、略円柱形状の胴部21と、胴部21よりも直径が小さく、キャップ24が取り付けられる首部22と、胴部21と首部22との間に位置し、首部22に向かって縮径する部分である肩部23とを含む容器である。熱収縮性ラベル30は、熱収縮性フィルム基材31の熱収縮により、胴部21の側面全体、及び肩部23の下部を覆って装着されている。
ここで、容器20(胴部21)の「側面」とは、容器20の径方向に交差する面、換言すれば容器20の径方向に平行な面以外の面を意味する。なお、容器20において、径方向に平行な面は、胴部21の下面と、キャップ24の上面とがある。
【0019】
容器20の胴部21には、複数のリブ25a,25bが形成されている。リブ25aは、胴部21の上部に形成され、リブ25bは、胴部21の下部に形成されている。当該リブ25a,25bは、胴部21の周方向にリング状に形成された凹部であり、胴部21の剛性を高める機能を有する。
また、胴部21には、複数のパネル部26が形成されている。パネル部26は、上下方向に沿った略小判型の凹部であり、リブ25aとリブ25bとの間に複数設けられる。また、胴部21は、その周方向に沿ってパネル部26と凸状部27とが交互に形成された形状を呈する。つまり、パネル部26が形成される部分の胴部21の径方向断面形状は、パネル部26及び凸状部27による凹凸が繰り返された形状であり、例えば、略多角形状となる。当該パネル部26も、リブ25a,25bと同様に、胴部21の剛性を高める機能を有する。
【0020】
図1に例示する形態では、最大径部Dは、リブ25aの上下所定幅(例えば、10mm程度)の部分、リブ25bの上下所定幅の部分、及び凸状部27である。つまり、容器20の胴部21には、パネル部26が形成される部分を挟んでその上部と下部と、各パネル部26の間に設けられた凸状部27とに最大径部Dが存在する。
【0021】
熱収縮性ラベル30は、胴部21の側面全体を覆って、即ち最大径部Dの全体を覆って装着されている。また、熱収縮性ラベル30は、リブ25a,25b及びパネル部26を覆って装着されており、熱収縮により容器20を締め付けることで容器20の強度アップに寄与している。熱収縮性ラベル30は、例えば、ラベルの両端を有機溶剤や接着剤等で接着(所謂センターシール)することで筒状体とし、該筒状体を容器20に被嵌した後、熱収縮させることで容器20に密着した装着が可能となる。なお、センターシールにより形成される接着部が、所謂センターシール部(図示せず)である。
【0022】
図1及び図2に示すように、容器20に装着された熱収縮性ラベル30は、熱収縮性フィルム基材31と、熱収縮性フィルム基材31の表面に形成されたコーティング層32(図1では、形成範囲をドットで示す)とを有する。そして、コーティング層32は、少なくともPPワックス33を含有する。ここで、熱収縮性フィルム基材31の表面とは、ラベル付き容器10の外側に向いた面を意味する。つまり、熱収縮性ラベル30の上記筒状体は、コーティング層32を筒状体の外側に向けて成形される。
【0023】
図1に例示する形態では、熱収縮性ラベル30は、容器20の最大径部Dに位置する熱収縮性フィルム基材31の表面の略全体に、コーティング層32を有する。さらに、コーティング層32は、最大径部Dに対応する部分だけでなく、熱収縮性フィルム基材31の表面の略全体を覆って形成されている。つまり、熱収縮性ラベル30を筒状体としたときに、コーティング層32は、筒状体の外側表面全体に設けられている。ここで、「略全体」とは、90%以上、より好ましくは95%以上の表面上にコーティング層32が存在することを意味する。熱収縮性フィルム基材31の表面全体を覆うように、コーティング層32を形成してもよいが、センターシール部を避けて形成されることが好ましい。
【0024】
なお、熱収縮性ラベル30には、コーティング層32以外の層が設けられていてもよい。例えば、熱収縮性フィルム基材31の裏面(ラベル付き容器10の内側を向いた面)には、商品名や品質表示、デザイン等を表す印刷層(図示せず)を形成できる。この場合、熱収縮性フィルム基材31及びコーティング層32は、透明であることが好ましい。該印刷層は、熱収縮性フィルム基材31とコーティング層32との間に形成されてもよい。印刷層は、所望のインキを用いて、グラビア印刷、フレキソ印刷、及び凸版印刷等の公知の方法によって形成できる。また、熱収縮性ラベル30には、ラベル切除用のミシン目線(図示せず)が形成されていてもよい。
【0025】
以下、容器20及び熱収縮性ラベル30の構成について、更に詳説する。
【0026】
容器20は、例えば、可撓性を有するプラスチック製の容器である。容器20を構成するプラスチック(樹脂)は、特に限定されないが、一般的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられる。PETから構成される所謂ペットボトル等のプラスチック容器は、例えば、材料コスト低減の観点から、品質等に影響しない範囲で容器が薄肉化され、径方向に対する可撓性が高くなっている。
【0027】
ラベル付き容器10は、径方向に対して58.8Nの荷重をかけたときの撓み量が4.5mm以上であることが好ましい。より詳しくは、ラベル付き容器10は、容器の上下方向が水平となるように寝かせた状態で、容器よりも大きい平板状のプレス板2枚を容器の両側から挟みこんで、径方向に対して58.8Nの荷重をかけたときに、径方向に対して4.5mm以上変位する(凹む)ことが好ましい。なお、ラベル付き容器10の変位量は、圧縮試験機を用いて測定できる。
上記撓み量のラベル付き容器10は、ベンダー経路内で段積みにされたときに変形し易く、多本出が発生し易い容器である。
【0028】
熱収縮性ラベル30を構成する熱収縮性フィルム基材31には、従来公知の樹脂フィルムを用いることができる。熱収縮性フィルム基材31に適用される樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸など)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリスチレン系樹脂(スチレン-ブタジエン共重合体など)、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂から選択される1種単独又は2種以上の混合物からなるフィルムが例示できる。また、2種以上のフィルムを積層した積層フィルム、不織布、金属蒸着層、発泡層等との積層フィルムとすることもできる。これらのうち、柔軟性、伸縮性等の観点から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET系樹脂)、ポリスチレン系樹脂(PS系樹脂)、ポリプロピレン系樹脂(PP系樹脂)、及びこれらの積層体を用いることが好ましく、PET系樹脂、PS系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0029】
熱収縮性フィルム基材31は、良好な熱収縮性を発現するために、少なくとも一方向に延伸(一軸延伸)されていることが好ましい。延伸温度は、フィルムを構成する樹脂の種類によっても異なるが、例えば、70〜100℃の温度範囲である。延伸倍率は、例えば、フィルムの主延伸方向に2〜6倍程度であることが好ましい。主延伸方向と直交する方向の収縮、膨張を抑えるために、場合によっては、当該方向にも1.01〜2倍程度の倍率で延伸(二軸延伸)することができる。熱収縮性フィルム基材31の熱収縮率は、主延伸方向に対して、20〜80%であることが好ましく、30〜80%であることが特に好ましい(加熱処理条件:90℃の温水に10秒間浸漬)。主延伸方向に直交する方向に対しては、好ましくは−3〜15%、さらに好ましくは−1〜10%、特に好ましくは−1〜5%である(加熱処理条件:同上)。延伸方式は、ロール方式、テンター方式及びチューブ方式等を使用できる。
なお、熱収縮性ラベル30の上記筒状体は、主延伸方向がを筒状体の周方向となるように成形されることが好ましい。
【0030】
熱収縮性フィルム基材31の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは15〜80μm、特に好ましくは20〜60μmである。
【0031】
熱収縮性ラベル30を構成するコーティング層32は、少なくともPPワックス33を含有する樹脂層である。コーティング層32は、例えば、PPワックス33と、ベース樹脂34とで構成され、ベース樹脂34からなる硬化皮膜中にPPワックス33が分散した形態を有する。PPワックス33の含有量は、コーティング層32の全重量に対して、例えば、5〜40重量%であり、より好ましくは10〜30重量%である。
【0032】
コーティング層32は、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7であり、好ましくは、0.4〜0.6、より好ましくは0.4〜0.5である。コーティング層32の表面の水濡れ状態での静摩擦係数が、この範囲であれば、水濡れ状態における多本出の発生を防止できる。
コーティング層32の水濡れ状態の静摩擦係数は、例えば、サイズ80mm×200mmの測定試料の略中心のコーティング層面に水0.5ccをスポイトで滴下して、同サイズのサンプルのコーティング層面を重ね合わせて、滴下した水が端縁から漏れでない状態で、JIS K‐7125に準拠して測定できる。
【0033】
コーティング層32の乾燥状態での静摩擦係数は、ベンダー経路内での詰まり防止の観点から、0.4未満であることが好ましく、0.1〜0.35であることがより好ましい。コーティング層32の乾燥状態の静摩擦係数は、水を滴下することなく、2枚のサンプルのコーティング層同士を重ね合わせて、JIS K‐7125に準拠して測定される。
【0034】
コーティング層32の水濡れ状態の静摩擦係数及び乾燥状態の静摩擦係数は、最大径部Dに対応する位置にある熱収縮性ラベル30のコーティング層32の表面の静摩擦係数である。このため、装着された熱収縮性ラベル30を切り出した測定試料を用いて当該静摩擦係数を測定でき、サンプルサイズが足りない場合にはサイズ80mm×200mmの測定試料とは異なるサンプルサイズで測定してもよい。
また、装着された熱収縮性ラベル30を用いるのではなく、最大径部Dに対応する位置に装着された熱収縮性ラベル30と同程度に熱収縮された測定試料を用いて当該静摩擦係数を測定してもよい。
さらに、最大径部Dに対応する部分は比較的に熱収縮量の少ない部分であるため、収縮前と収縮後との静摩擦係数があまり変わらない場合がある。この場合には、未収縮の測定試料を用いて、静摩擦係数を測定してもよい。
【0035】
コーティング層32は、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7を満たす範囲で、PPワックス33以外のワックスを含んでいてもよい。例えば、パラフィンワックスやアマイドワックス、ポリエチレンワックス、エチレン‐アクリル酸共重合体ワックス等が、ワックスの全重量の50%未満、好ましくは10%未満で含まれていてもよい。
また、コーティング層32は、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7を満たす範囲で、各種添加剤(例えば、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、消泡剤、充填剤)を含んでいてもよい。
【0036】
コーティング層32の厚みは、特に限定されないが、PPワックス33が突出しない部分では、好ましくは1〜10μmである。また、PPワックス33がベース樹脂34からなる硬化皮膜よりも突出した部分では、2〜30μmが好ましく、3〜20μmがより好ましい。
【0037】
PPワックス33は、PPを主成分とするワックスであり、例えば、PPホモポリマー(単独重合体)からなるワックスが好適である。PPホモポリマーからなるPPワックス33を、例えば、10〜30重量%含有するコーティング層32が好ましい。PPワックス33としては、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7を満たす範囲で、PP以外の成分を含んでいてもよく、例えば、PPとPE(例えば、10mol%以下)との共重合体からなるワックスであってもよい。
【0038】
PPワックス33は、常温で固定であり(例えば、融点160℃)、粉体の形態で用いられる。PPワックス33の粉体は、例えば、1〜20μmの粒径(メディアン径)を有し、より好ましくは5〜12μmの粒径を有する。該粉体(粒子)の形状としては、特に限定されず、例えば、球状、紡錘状、針状、燐片状(板状又はフレーク状)であり、表面凹凸を有していてもよい。PPワックス33は、ベース樹脂34中に完全に溶融混和せず(一部が溶融混和していてもよい)、ベース樹脂34との間に界面を残して均一に分散していることが好適である。勿論、コーティング層32の表面にもPPワックス33が存在する。
【0039】
PPワックス33としては、市販品を用いることができる。例えば、ビックケミー社製の「マイクロナイズドポリプロピレンワックス CERAFLOUR 970」が好適である。
【0040】
ベース樹脂34は、熱収縮性フィルム基材31の熱収縮温度で溶融せず、PPワックス33を均一に分散可能な樹脂であれば特に限定されず、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、一般的なラベルのコーティング層を形成する樹脂(例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂)が使用でき、コーティング層32を形成するインキの硬化方法に応じて適切な樹脂が選択できる。
【0041】
コーティング層32は、PPワックス33を含むインキ(以下、PPワックス含有インキとする)を熱収縮性フィルム基材31上に印刷することで形成できる。コーティング層32は、PPワックス含有インキの硬化皮膜からなる。PPワックス含有インキは、PPワックス33と、ビヒクルとを含む。ビヒクルは、樹脂成分(ベース樹脂34)を含み、必要に応じて、溶媒及び各種添加剤を含む。ビヒクルは、その硬化メカニズムに従った分類によれば、蒸発乾燥型と、紫外線硬化型等の反応硬化型とに大別できる。
【0042】
蒸発乾燥型の場合、ベース樹脂34としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、ニトロセルロースやセルロース・アセテート・ブチレート等のセルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。蒸発乾燥型インキでは、これら樹脂成分を有機溶剤に溶解してビヒクルを調製できる。
反応硬化型の場合、ベース樹脂34としては、アクリレート系などの光重合性樹脂(モノマー、オリゴマー)などが挙げられる。反応硬化型インキは、例えば、有機溶剤を含まず、光重合性樹脂と重合開始剤とを混合してビヒクルを調製できる。
【0043】
PPワックス含有インキの溶媒としては、アルコール類、炭化水素類、エステル類、ケトン類等の一般的な有機溶剤が例示できる。各種添加剤としては、鉱油や植物油等の油成分、アセチルクエン酸トリブチルやアジピン酸ジオクチル、フタル酸ジフェニル等の可塑剤、PPワックス33以外のワックス、界面活性剤(例えば、ワックス分散剤)、酸化防止剤、消泡剤、充填剤などが例示できる。また、PPワックス含有インキは、PPワックス33の効果を損ねない範囲で、着色剤(顔料又は染料)を含んでいてもよい。
【0044】
PPワックス含有インキは、それを印刷することで形成されるコーティング層32において、PPワックス33が、例えば、10〜30重量%の含有量となるように、各インキ成分の配合量が調製される。PPワックス含有インキの流動性が悪い場合には、粘度調整のため、溶剤が適宜加えられる。コーティング層32は、PPワックス含有インキを用いて、上記印刷層と同様の印刷方法で形成できる。
【0045】
ここで、ラベル付き容器10の製造方法を例示する。
【0046】
まず、熱収縮性ラベル30の両端をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶剤やウレタン樹脂系等の接着剤にてセンターシールして筒状体とする。熱収縮性ラベル30の筒状体は、熱収縮性フィルム基材31の主延伸方向が周方向となるように形成される。具体的には、一軸又は二軸延伸した長尺状の熱収縮性フィルム基材31の一方の面にコーティング層32を、他方の面に印刷層をそれぞれ形成し、所定幅(1つのラベルの幅)にスリットして長尺状の熱収縮性ラベル30を得る。そして、長尺状の熱収縮性ラベル30の主延伸方向が筒状体の周方向となり、コーティング層32が筒状体の外側に向くように、幅方向両端同士を重ね合わせてセンターシールすることで、長尺状の熱収縮性ラベル30の筒状体(以下、筒状熱収縮性ラベル30とする)を作製する。
【0047】
次に、容器20と、長尺状の筒状熱収縮性ラベル30とを自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給する。シュリンクラベラーにおいて、長尺状の筒状熱収縮性ラベル30を個々の容器20に装着可能な筒状熱収縮性ラベル30にカットした後、該筒状体を容器20に外嵌する。そして、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネル(例えば、80〜100℃のスチーム)を通過させる等の加熱処理を行ってラベルを熱収縮させ、容器20に熱収縮性ラベル30が装着されたラベル付き容器10を得る。
【0048】
上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜設計変更できる。
ここで、設計変更(変形例)の一例を示す。
【0049】
図1では、胴部21全体が熱収縮性ラベル30に覆われているが、胴部21の一部を覆っているものでもよく、例えば、熱収縮性ラベル30がリブ25aからリブ25bまでを覆う形態でもよい。
【0050】
上記実施形態では、リブ25a,25bの上下と、パネル部26の間の凸状部27とが最大径Dであり、コーティング層32が、最大径部Dに位置する表面を含む熱収縮性フィルム基材31の表面の略全体に形成されるものとして説明したが、図3に示すように、最大径部Dに対応する部分のみにコーティング層32が設けられてもよい。また、容器20としては、胴部21の上下方向中央部にくびれ部28を有し、くびれ部28の上下に分かれて最大径部Dが存在するものであってもよい。
【0051】
図3に例示する形態では、熱収縮性ラベル30は、最大径部D及びその周辺に位置する熱収縮性フィルム基材31の表面に、胴部21の周方向に沿って帯状のコーティング層32を有する。この場合も、センターシール部には、コーティング層32を設けないことが好ましい。
ここで、コーティング層は、上下一方の最大径部Dのみに対応して設けられてもよい。また、コーティング層32は、胴部21の周方向に連続せず、所定間隔をあけて断続的に設けられてもよい。
【0052】
また、上記では、容器20はプラスチック製の容器として説明したが、プラスチック製の容器と同様の可撓性を有するアルミ製容器であってもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例におけるラベル付き容器10の構成材料や評価結果を表1及び表2に示す。
【0054】
<実施例1>
[ラベル付き容器10の構成材料]
表1に示すように、容器20として、プラスチック容器(内容物として水が500ml入っている図1に示す形態の500ml用PETボトル)を用いた。熱収縮性ラベル30には、厚みが30μmの熱収縮性フィルム基材31(東洋紡績社製「スペースクリーンS7042」)の表面全体にコーティング層32を形成したラベルを用いた。コーティング層32は、21重量%のPPワックス33と、79重量%のベース樹脂34とを含み、ベース樹脂34中にPPワックス33が均一に分散した層である。PPワックス33には、粒径が9μm、融点160℃のPPホモポリマーのワックス粉体(ビックケミー社製「CERAFLOUR 970」)を用いた。ベース樹脂34には、アクリル系樹脂(三菱樹脂社製「LR‐1941」)を用いた。
【0055】
[ラベル付き容器10の作製]
まず、熱収縮性フィルム基材31の一方の面にコーティング層32を形成する。コーティング層32は、PPワックス33を分散したベース樹脂34の溶液(イソプロピルアルコール、酢酸エチル、及び酢酸プロピルの混合溶液)からなるインキを用いて、熱収縮性フィルム基材31の一方の面にグラビア印刷(塗工)して乾燥することで形成した。得られた熱収縮性ラベル30を、主延伸方向が筒状体の周方向となり、コーティング層32が筒状体の外側に向くように、センターシールして筒状熱収縮性ラベル30を作製した。筒状熱収縮性ラベル30の周長/容器20の最大径部Dの周長が、100/90となるように、筒状熱収縮性ラベル30の周長を設計する。そして、筒状熱収縮性ラベル30を容器20の肩部23から胴部21の下端までの側面を覆うように被嵌して、90℃で加熱処理することにより図1に示すラベル付き容器10を得た。このラベル付き容器10は、容器20の最大径部Dに10%熱収縮されたラベルが装着されている。コーティング層32の厚みは、PPワックス33がベース樹脂34の硬化被膜から突出した部分では7μm,PPワックス33が突出しない部分では2μmであった。
【0056】
[水濡れ状態での静摩擦係数の測定]
上記ラベル付き容器10の最大径部Dに対応する部分の熱収縮性ラベル30と同程度に熱収縮された静摩擦係数測定用サンプル(10%熱収縮品)を準備した。当該サンプルについて、水濡れ状態での静摩擦係数の測定を、JIS K‐7125に準拠して行い、測定結果を表1に示した。測定条件等を以下に示す。
測定機器; 圧縮引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ」)
サンプル; 熱収縮性ラベル30の10%熱収縮品
(ラベル付き容器10に装着された状態を想定)
サンプルサイズ; 80×200mm
重り; 200g(=1.96Nの法線力Fpが生じる)
手順; サンプルの略中心のコーティング層面に水0.5ccをスポイトで滴下して、同サイズのサンプルのコーティング層面を重ね合わせて、滴下した水が端縁から漏れでない状態で、JIS K‐7125に準拠して測定する。
なお、計測される最大荷重のピーク値が静摩擦力Fs(N)であり、(式1)により静摩擦係数(μs)を求めることができる。
(式1)μs=Fs/Fp
【0057】
[乾燥状態での静摩擦係数の測定]
上記ラベル付き容器10の最大径部Dに対応する部分の熱収縮性ラベル30と同程度に熱収縮された静摩擦係数測定用サンプル(10%熱収縮品)を準備した。当該サンプルについて、乾燥状態での静摩擦係数の測定を、JIS K‐7125に準拠して行い、測定結果を表1に示した。測定条件等を以下に示す。
測定機器; 圧縮引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ」)
サンプル; 熱収縮性ラベル30の10%熱収縮品
(ラベル付き容器10に装着された状態を想定)
サンプルサイズ; 80×200mm
重り; 200g(=1.96Nの法線力Fpが生じる)
手順; 水を滴下しない以外は、水濡れ状態での静摩擦係数の測定と同様にして、JIS K‐7125に準拠して測定する。
なお、上記(式1)により静摩擦係数(μs)を求めることができる。
【0058】
[撓み量の測定]
得られたラベル付き容器10を用いて、径方向に対する撓み量を測定した。なお、撓み量の測定は、ラベル付き容器10に水500mlを充填した状態で行った。測定条件等を以下に示す。
測定機器; 圧縮引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ」)
サンプル; ラベル付き容器10
温度・湿度; 常温・常湿
手順; ラベル付き容器10よりも大きい平板状のプレス板2枚を容器の両側から挟み、容器の上下方向が水平となるように寝かせた状態で、径方向に対して58.8Nの荷重をかけ、そのときのラベル付き容器10の変位量を測定する。プレス板の移動速度は10mm/分とした。
【0059】
[ベンダー排出適性の評価]
得られたラベル付き容器10をサーペンタイン構造のベンダー経路(三菱電機社製「G5F6‐AK3標準00年製)に充填して、結露水がラベル付き容器10に付着し熱収縮性ラベル30の表面を一様に濡らす条件下(水をはった水槽にラベル付き容器10の全体を浸漬してからベンダー経路に投入)で評価を行った。ベンダー経路の下端に位置するラベル付き容器10には、58.8Nの荷重がかかるように充填量を調整した。当該評価条件において、ベンダー経路の下端を塞ぐストッパを回動させ、多本出の有無を評価した。なお、当該評価は、充填したラベル付き容器10を全て排出することを1サイクルとして、10サイクル実施した。
なお、表1及び表2に示す評価結果(○又は×)は、以下の基準に基づく。
○:多本出が発生せず
×:多本出が発生(10サイクル中1回でも多本出が発生した場合)
【0060】
表1に示すように、実施例1では、熱収縮性ラベル(コーティング層)表面の水濡れ状態での静摩擦係数は0.45、乾燥状態での静摩擦係数は0.38であった。また、ラベル付き容器10の変位量は4.5mmであった。ベンダー排出適性の評価結果は○であり、多本出の発生は確認されなかった。
【0061】
<実施例2>
熱収縮性フィルム基材31の厚みを50μm(東洋紡績社製「スペースクリーンS7042」)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ラベル付き容器10を得ると共に、上記測定・評価を行った。
表1に示すように、コーティング層表面の水濡れ状態での静摩擦係数は0.45、乾燥状態での静摩擦係数は0.38であった。また、ラベル付き容器10の変位量は4.5mmであった。ベンダー排出適性の評価結果は○であり、多本出の発生は確認されなかった。
【0062】
<実施例3,4>
コーティング層32におけるPPワックス33とベース樹脂34との含有比率(重量%)を、PPワックス33:ベース樹脂34=13:87(実施例3)、29:71(実施例4)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、ラベル付き容器10を得ると共に、上記測定・評価を行った。
表1に示すように、コーティング層表面の水濡れ状態での静摩擦係数は、いずれも0.43、乾燥状態での静摩擦係数は、いずれも0.38であった。また、ラベル付き容器10の変位量は、いずれも4.5mmであった。ベンダー排出適性の評価結果は、いずれも○であり、多本出の発生は確認されなかった。
【0063】
<実施例5>
PPワックス33を、粒径が18μm、融点160℃のPPのホモポリマー粉体(ビックケミー社製「CERAFLOUR913」)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ラベル付き容器10を得ると共に、上記測定・評価を行った。
表1に示すように、コーティング層表面の水濡れ状態での静摩擦係数は0.45、乾燥状態での静摩擦係数は0.46であった。また、ラベル付き容器10の変位量は4.5mmであった。ベンダー排出適性の評価結果は○であり、多本出の発生は確認されなかった。
【0064】
<比較例1〜3>
PPワックス33の代わりに、変性PPポリマーのワックス粉体(ルーブリゾール社製「Lanco 1362D」)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のワックス粉体(旭硝子社製「Fluon L150J」)、ポリエチレンのワックス粉体(サゾール社製「SPRAY 105」)をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、ラベル付き容器を得ると共に、上記測定・評価を行った。
【0065】
<比較例4>
熱収縮性フィルム基材(東洋紡績社製「スペースクリーンS7042」)の厚みを50μmに変更した以外は、比較例3と同様にして、ラベル付き容器を得ると共に、上記測定・評価を行った。
【0066】
表2に示すように、いずれの比較例でも、コーティング層表面の水濡れ状態での静摩擦係数は0.40未満であり、それぞれ0.28(比較例1)、0.23(比較例2)、0.21(比較例3,4)であった。また、乾燥状態での静摩擦係数は、それぞれ0.22(比較例1)、0.25(比較例2)、0.21(比較例3,4)であった。また、ラベル付き容器10の変位量は、いずれも4.5mmであった。ベンダー排出適性の評価結果は×であり、多本出の発生が確認された。
【0067】
【表1】


【0068】
【表2】

【0069】
以上のように、本実施例における熱収縮性ラベル30は、PPワックス33により水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7に調整されたコーティング層32を有する。上述のように、多本出は、ラベル表面が水に濡れて滑り易くなることで、ベンダー経路内で段積みにされたラベル付き容器10の荷重の偏りが大きくなって発生するが、本実施例のラベル付き容器10によれば、その荷重の偏りが大きくなることを防止できる。つまり、ラベル付き容器10によれば、コーティング層32の効果により、水濡れ状態における多本出の発生を防止することができる。
【0070】
一方、比較例では、水濡れ状態での静摩擦係数が小さい。比較例のラベル付き容器では、水濡れ状態において、ベンダー経路内で段積みにされたラベル付き容器の荷重の偏りが大きくなって、多本出の発生につながる。
【符号の説明】
【0071】
10 ラベル付き容器、20 容器、21 胴部、22 首部、23 肩部、24 キャップ、25a,25b リブ、26 パネル部、27 凸状部、28 くびれ部、D 最大径部、30 熱収縮性ラベル、31 熱収縮性フィルム基材、32 コーティング層、33 ポリプロピレンワックス(PPワックス)、34 ベース樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
熱収縮性フィルム基材を含み、少なくとも容器の最大径部を覆って装着された熱収縮性ラベルと、
を備えるラベル付き容器において、
熱収縮性ラベルは、容器の最大径部に位置する熱収縮性フィルム基材の表面の少なくとも一部に、ポリプロピレンワックスを含有するコーティング層を有し、
該コーティング層は、水濡れ状態での静摩擦係数が0.4〜0.7であるラベル付き容器。
【請求項2】
請求項1に記載のラベル付き容器において、
コーティング層は、熱収縮性ラベルを筒状体としたときに、該筒状体の外側表面全体に設けられたラベル付き容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のラベル付き容器において、
内容物を充填した状態でラベル付き容器の径方向に対して、58.8Nの垂直荷重をかけたときの撓み量が4.5mm以上であるラベル付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−206732(P2012−206732A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72447(P2011−72447)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】