説明

ラベル

【課題】ミシン目開封性が非常に良好な上、きわめて生産性が高く 印刷等の加工時に長手方向に破断し難い熱収縮性ポリエステルフィルムを得て、そのような熱収縮性フィルムからなる引き裂き具合が良好なラベルを提供すること。
【解決手段】フィルム幅方向を主収縮方向として熱収縮する熱収縮性フィルムを基材とし、包装対象物に応じてカットされ、フィルム幅方向の両端が接着された環状体が、包装対象物の外周の少なくとも一部を熱収縮して被覆しているラベルであって、主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の直角引裂強度が100N/mm〜310N/mmであり、かつ、主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の引張破壊強さが50MPa以上300MPa以下であるラベル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルムによって形成されたラベルに関するものであり、詳しくは、被覆された熱収縮性フィルムからなる引き裂き具合が良好なラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶やPETボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルム(所謂、熱収縮性フィルム)が広範に使用されるようになってきている。そのような熱収縮性フィルムの内、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない上、高温で焼却する必要があり、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
【0003】
ところが、従来の熱収縮性ポリエステルフィルムは、主収縮方向と直交する長手方向については、ほとんど延伸されていないため、機械的強度が低く、ラベルとしてペットボトル等に収縮させて被覆させた場合に、ラベルをミシン目に沿ってうまく引き裂くことができない(すなわち、ミシン目開封性が悪い)、という不具合がある。また、熱収縮性ポリエステルフィルムのミシン目開封性を良好なものとすべく、製造時にフィルムを長手方向に延伸すると、機械的強度が高くなり、ミシン目開封性はある程度向上するものの、長手方向に収縮力が発現してしまうため、ラベルとしてペットボトル等に収縮させて被覆させた場合に、非常に見栄え(収縮仕上がり性)が悪くなる、という不具合が露呈する。また従来の熱収縮性ポリエステルフィルムは、主収縮方向と直交する長手方向については、ほとんど延伸されていないため、機械的強度が低く 印刷等の加工時に長手方向に破断し易いという問題や フィルムをボトル等に装着させる時の高速装着時のフィルム腰が不十分という問題がある。
【0004】
それゆえ、熱収縮性ポリエステルフィルムのミシン目開封性を向上させるべく、熱収縮性ポリエステルフィルムの主原料中に非相溶な熱可塑性樹脂を混合する方法(特許文献1)等も提案されている。
【特許文献1】特開平2002−363312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の如き熱収縮性ポリエステルフィルムの主原料中に非相溶な熱可塑性樹脂を混合する方法によれば、熱収縮性ポリエステルフィルムのミシン目開封性がある程度向上するものの、必ずしもミシン目開封性が十分な熱収縮性ポリエステルフィルムが得られているとは言い難い。また、特許文献1の如き方法を採用した場合でも、製造時には幅方向にしか延伸することができないため、効率良く熱収縮性ポリエステルフィルムを製造することはできない。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の熱収縮性ポリエステルフィルムが有する問題点を解消し、ミシン目開封性が非常に良好な上、きわめて生産性が高く 印刷等の加工時に長手方向に破断し難い熱収縮性ポリエステルフィルムを得て、そのような熱収縮性フィルムからなる引き裂き具合が良好なラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. フィルム幅方向を主収縮方向として熱収縮する熱収縮性フィルムを基材とし、包装対象物に応じてカットされ、フィルム幅方向の両端が接着された環状体が、包装対象物の外周の少なくとも一部を熱収縮して被覆しているラベルであって、主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の直角引裂強度が100N/mm〜310N/mmであり、かつ、主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の引張破壊強さが50MPa以上300MPa以下であることを特徴とするラベル。
2. 接着が、有機溶剤によりなされていることを特徴とする上記第1に記載のラベル。3. 主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)のエルメンドルフ引裂荷重と主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重を測定した場合におけるエルメンドルフ比が0.1以上2.0以下であることを特徴とする上記第1又は第2に記載のラベル。
4. 主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の屈折率が1.565以上1.610以下であることを特徴とする上記第1〜第3のいずれかに記載のラベル。
5. 主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)に沿って、ミシン目あるいはノッチが設けられていることを特徴とする上記第1〜第4のいずれかに記載のラベル。
6. 熱収縮性フィルムが、熱収縮性ポリエステル系フィルムであることを特徴とする上記第1〜第5のいずれかに記載のラベル。
【0008】
なお、本発明の熱収縮性フィルムとしては、熱収縮性ポリエステル系フィルム、熱収縮性ポリスチレン系フィルム、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム、熱収縮性ポリ塩化ビニル系フィルム等を挙げることができる。また、ミシン目とは複数のスリットが直線状あるいは曲線状に連続して設けられたものを言うが、1つだけスリットが設けられたものも含まれる。さらに、ミシン目を構成するスリットの形状は特に限定されない。一方、ノッチとはラベルの端縁に設けられた切り込みのことを言い、その形状は特に限定されない。
【発明の効果】
【0009】
本発明のラベルに使用される熱収縮性フィルムは、主収縮方向であるフィルム幅方向への収縮性が高く、主収縮方向と直交するフィルム長手方向における機械的強度も高い上、製造されたロール状のフィルムにおいて巻き締まりが起こらず、フィルムロールにシワが入りにくく、開封性が良好である。したがって、当該熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトル等の容器のラベルとして好適に用いることができ、ボトル等の容器に短時間の内に非常に効率良く装着することが可能となる上、装着後に熱収縮させた場合に、熱収縮によるシワや収縮不足のきわめて少ない良好な仕上がりを発現させることができる。加えて、装着されたラベルは、非常に良好な開封性を発現するものとなる。したがって、本発明のラベルは引き裂き具合が良好であり、被覆されたラベルを適度な力で、主収縮方向と直交する方向に、ミシン目が設けられた場合にはミシン目に沿って綺麗に引き裂くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のラベルは、熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とし、少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させてなるものであり、ラベルの対象物としては、飲料用のペットボトルをはじめ、各種の瓶、缶、菓子や弁当等のプラスチック容器、紙製の箱等を挙げることができる(以下、これらを総称して包装対象物という)。なお、通常、それらの包装対象物に、熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とするラベルを熱収縮させて被覆させる場合には、当該ラベルを約2〜15%程度熱収縮させて包装対象物に密着させる。なお、包装対象物に被覆されるラベルには、印刷が施されていても良いし、印刷が施されていなくても良く、ラベルの主収縮方向と直交する方向にミシン目が設けられていてもよい。
【0011】
また、包装対象物にラベルを被覆させる場合には、予め、主収縮方向が周方向になるように環状体を形成した上で、その環状体を包装対象物に被せて熱収縮させる方法を採用することもできるが、そのように環状体を形成する場合には、各種の接着剤を用いて熱収縮性フィルムを接着する方法の他に、高温発熱体を利用して熱収縮性フィルムを融着させ接着させる方法(溶断シール法)等を利用することも可能である。なお、熱収縮性フィルムを溶断シールする場合には、所定の自動製袋機械(たとえば、共栄印刷機械材料社製−RP500)を用いて、溶断刃の温度、角度を所定の条件(たとえば、溶断刃の温度=240℃、刃角=70°)に調整した上で、所定の速度(たとえば、100個/分)で環状体や袋を形成する方法等を採用することができる。加えて、包装対象物にラベルを被覆させる場合には、包装対象物の周囲にラベルを捲回させて重なった部分を溶断シールすることにより包装対象物の周囲にラベルを被せた後に熱収縮させる方法を採用することも可能である。
【0012】
一方、ラベル形成用の熱収縮性フィルムとしては、熱収縮性ポリエステル系フィルム、熱収縮性ポリスチレン系フィルム、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム、熱収縮性ポリ塩化ビニル系フィルム等の各種のプラスチックからなる熱収縮性フィルムを挙げることができるが、その中でも、熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いると、ラベルの耐熱性が高くなり、ラベルが耐溶剤性に優れたものとなる上、ラベルが容易に焼却できるものとなるので好ましい。それゆえ、以下の説明においては、熱収縮性ポリエステル系フィルムを中心に説明する。
【0013】
また、本発明のラベルは、被覆されているラベル(印刷層を除いたフィルム基材)の単位厚み当たりの主収縮方向と直交する方向における直角引裂強度を以下の方法で測定した場合に、当該直角引裂強度が100N/mm以上310N/mm以下であることが好ましい。ここで、ラベルは熱処理されて収縮し、包装対象物に装着されたものであるので、そのもの自体が熱収縮処理前のラベルほどの大きな熱収縮特性を有するものではないが、ラベルが装着される際に主として収縮した方向を主収縮方向と述べている(以下ラベルに関して同じ記載である)。
【0014】
[直角引裂強度の測定方法]
ラベルをJIS−K−7128に準じて所定の大きさの試験片としてサンプリングする。しかる後に、万能引張試験機(たとえば、(株)島津製作所製 オートグラフ)で試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて、ラベルの主収縮方向と直交する方向における引張破壊時の強度の測定を行う。そして、下式1を用いて単位厚み当たりの直角引裂強度を算出する。
直角引裂強度=引張破壊時の強度÷厚み ・・式1
【0015】
ラベルの主収縮方向と直交する方向における直角引裂強度が100N/mm未満であると、運搬中の落下等の衝撃によって簡単に破れてしまう事態が生ずる可能性があるので好ましくなく、反対に、ラベルの主収縮方向と直交する向における直角引裂強度が310N/mmを上回ると、引き裂く際の初期段階におけるカット性(引き裂き易さ)が不良となるため好ましくない。なお、直角引裂強度の下限値は、120N/mm以上であると好ましく、140N/mm以上であるとより好ましく、160N/mm以上であると特に好ましい。また、直角引裂強度の上限値は、290N/mm以下であると好ましく、260N/mm以下であるとより好ましく、270N/mm以下であると特に好ましい。
【0016】
また、本発明のラベルは、被覆されているラベル(印刷層を除いたフィルム基材)のフィルム長手方向における引張破壊強さを以下の方法で測定した場合に、当該引張破壊強さが50MPa以上300MPa以下であることが好ましい。
【0017】
[引張破壊強さの測定方法]
ラベルをJIS−K−7127に準じて、所定の大きさにサンプリングして試験片とし、万能引張試験機(たとえば、(株)島津製作所製 オートグラフ)で試験片の両端(フィルム長手方向)を掴み、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、破断時の応力値(ラベルの印刷層を除いたフィルム基材の応力値)を算出する。
【0018】
ラベルの主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)における引張破壊強さが50MPa未満であると、フィルムからラベルに加工する際 印刷等のフィルム長手方向に張力をかける加工時に 破断しやすくなる欠点がある。なお、引張破壊強さの下限値は、90MPa以上であると好ましく、130MPa以上であるとより好ましく、160MPa以上であると特に好ましい。
【0019】
また、本発明のラベルは、被覆されているラベル(印刷層を除いたフィルム基材)の主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重および主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重を、以下の方法で測定した場合におけるエルメンドルフ比が0.1以上2.0以下であることが好ましい。
【0020】
[エルメンドルフ比の測定方法]
JIS−K−7128に準じて、ラベルを主収縮方向(フィルム幅方向)が長尺な長方形状に切断した後に長手方向の中央に端縁から切り込みを入れることによって試験片を作製し、ラベルの主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重(ラベルの印刷層を除いたフィルム基材のエルメンドルフ引裂荷重)を測定する。また、ラベルを主収縮方向と直交する方向が長尺な長方形状に切断した後に長手方向の中央に端縁から切り込みを入れることによって試験片を作製し、ラベルの主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重(ラベルの印刷層を除いたフィルム基材のエルメンドルフ引裂荷重)を測定する。しかる後、下式2を用いてエルメンドルフ比を算出する。
エルメンドルフ比=主収縮方向(フィルム幅方向)のエルメンドルフ引裂荷重÷主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)のエルメンドルフ引裂荷重 ・・式2
【0021】
ラベルのエルメンドルフ比が0.1未満であると、主収縮方向と直交する方向に、ミシン目がある場合にはミシン目に沿って、真っ直ぐに引き裂きにくいので好ましくない。反対にラベルのエルメンドルフ比が2.0を上回ると、ミシン目とずれた位置で裂け易くなるので好ましくない。なお、ラベルのエルメンドルフ比の下限値は、0.12以上であると好ましく、0.14以上であるとより好ましく、0.16以上であると特に好ましい。また、ラベルの印刷層を除いたフィルム基材のエルメンドルフ比の上限値は、1.8以下であると好ましく、1.6以下であるとより好ましく、1.5以下であると特に好ましい。
【0022】
また、本発明のラベルは、被覆されているラベルの主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の屈折率が1.565以上1.610以下であると好ましい。主収縮方向と直交する方向の屈折率が1.610を上回ると、溶剤接着性が悪くなるので好ましくない。反対に、1.565未満となると、カット性が悪くなるので好ましくない。なお、主収縮方向と直交する方向の屈折率の上限値は、1.605以下であると好ましく、1.600以下であるとより好ましい。また、主収縮方向と直交する方向の屈折率の下限値は、1.570以上であると好ましく、1.575以上であるとより好ましい。
【0023】
本発明で使用するポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0024】
脂肪族ジカルボン酸(たとえば、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、高速装着時のフィルム腰が不十分である。
【0025】
また、3価以上の多価カルボン酸(たとえば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0026】
本発明で使用するポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1−3プロパンジオール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
【0027】
本発明のラベルとして好ましく使用される熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3〜6個を有するジオール(たとえば、1−3プロパンジオール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)のうちの1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を60〜80℃に調整したポリエステルが好ましい。
【0028】
また、熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が15モル%以上であることが好ましく、17モル%以上であることがより好ましく、特に20モル%以上であることが好ましい。ここで、非晶質成分となりうるモノマーとしては、たとえば、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオールやイソフタル酸を挙げることができる
【0029】
熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、炭素数8個以上のジオール(たとえばオクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(たとえば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)を、含有させないことが好ましい。これらのジオール、または多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0030】
また、熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールをできるだけ含有させないことが好ましい。特に、ジエチレングリコールは、ポリエステル重合時の副生成成分のため、存在し易いが、本発明で使用するポリエステルでは、ジエチレングリコールの含有率が4モル%未満であることが好ましい。
【0031】
また、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式3により算出したフィルムの幅方向(主収縮方向)の熱収縮率(すなわち、90℃の湯温熱収縮率)が、40%以上80%以下であることが好ましい。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) ・・式3
【0032】
90℃における幅方向の湯温熱収縮率が40%を下回ると、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルにシワやタルミが生じてしまうので好ましくなく、反対に、90℃における幅方向の湯温熱収縮率が80%を上回ると、ラベルとして用いて場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなったり、いわゆる“飛び上がり”が発生してしまうので好ましくない。なお、90℃における幅方向の湯温熱収縮率の下限値は、45%以上であると好ましく、50%以上であるとより好ましく、55%以上であると特に好ましい。また、90℃における幅方向の湯温熱収縮率の上限値は、75%以下であると好ましく、70%以下であるとより好ましく、65%以下であると特に好ましい。
【0033】
また、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、上式3により算出したフィルムの長手方向(主収縮方向と直交する方向)の熱収縮率(すなわち、90℃の湯温熱収縮率)が、0%以上15%以下であることが好ましく、0%以上13%以下であるとより好ましく、0%以上12%以下であると更に好ましく、0%以上11%以下であると一層好ましく、0%以上9%以下であると特に好ましい。
【0034】
90℃における長手方向の湯温熱収縮率が0%未満であると(すなわち、収縮率が負の値であると)、ボトルのラベルとして使用する際に良好な収縮外観を得ることができないので好ましくなく、反対に、90℃における長手方向の湯温熱収縮率が15%を上回ると、ラベルとして用いた場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなるので好ましくない。なお、90℃における長手方向の湯温熱収縮率の下限値は、1%以上であると好ましく、2%以上であるとより好ましく、3%以上であると特に好ましい。
【0035】
また、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力が3MPa以上20MPa以下であると好ましい。90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力が3MPaを下回ると、ボトルのラベルとして使用する際に良好な収縮外観を得ることができないので好ましくなく、反対に、90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力が20MPaを上回ると、ラベルとして用いた場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなるので好ましくない。なお、90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力の下限値は、4MPa以上であるとより好ましく、5MPa以上であると一層好ましく、6MPa以上であると特に好ましい。また、90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力の上限値は、18MPa以下であるとより好ましく、16MPa以下であると一層好ましく、14MPa以下であるとさらに好ましく、12MPa以下であると特に好ましい。
【0036】
さらに、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定するものではないが、ラベル用熱収縮性フィルムとして5〜200μmが好ましく、10〜70μmがより好ましい。
【0037】
加えて、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ヘイズ値が4.0%以上13.0%以下であることが好ましい。ヘイズ値が13.0%を超えると、透明性が不良となり、ラベル作成の際に見栄えが悪くなる可能性があるので好ましくない。なお、ヘイズ値は、11.0%以下であるとより好ましく、9.0%以下であると特に好ましい。また、ヘイズ値は、小さいほど好ましいが、実用上必要な滑り性を付与する目的でフィルムに所定量の滑剤を添加せざるを得ないこと等を考慮すると、4.0%程度が下限になる。
【0038】
さらに、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、溶剤接着強度が4(N/15mm)以上であることが好ましい。溶剤接着強度が4(N/15mm)未満であると、ラベルが熱収縮した後に溶剤接着部から剥れ易くなるので好ましくない。なお、溶剤接着強度は、6(N/15mm)以上であるとより好ましく、8(N/15mm)以上であると特に好ましい。なお、溶剤接着強度は高いほど好ましいが、当該溶剤接着強度の上限は、製膜装置の性能上から15(N/15mm)程度が限界であると考えている。
【0039】
また、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、動摩擦係数(熱収縮性ポリエステル系フィルムの表面と裏面とを接合させた場合の動摩擦係数)が0.1以上0.55以下であることが好ましい。動摩擦係数が0.1を下回ったり0.55を上回ったりすると、ラベルに加工する際の加工特性が悪くなるので好ましくない。なお、動摩擦係数の下限値は、0.15以上であるとより好ましく、0.2以上であると特に好ましい。また、動摩擦係数の上限値は、0.50以下であるとより好ましく、0.45以下であると特に好ましい。
【0040】
また、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す所定の方法により二軸延伸して熱処理することによって得ることができる。
【0041】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0042】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
【0043】
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で長手方向に延伸し、その縦延伸後のフィルムを急冷した後に、一旦、熱処理し、その熱処理後のフィルムを所定の条件で冷却した後に、所定の条件で幅方向に延伸し、再度、熱処理することによって本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製膜方法について、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製膜方法との差異を考慮しつつ詳細に説明する。
【0044】
[本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製膜方法]
上述したように、通常、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、未延伸フィルムを収縮させたい方向(すなわち、主収縮方向、通常は幅方向)のみに延伸することによって製造される。本発明者らが従来の製造方法について検討した結果、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造においては、以下のような問題点があることが判明した。
・単純に幅方向に延伸するだけであると、上述の如く、長手方向の機械的強度が小さくなり、ラベルとした場合のミシン目開封性が悪くなる。その上、製膜装置のライン速度を上げることが困難である。
・幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法を採用すると、どのような延伸条件を採用しても、幅方向の収縮力を十分に発現させることができない。さらに、長手方向の収縮力が同時に発現してしまい、ラベルとした際に収縮装着後の仕上がりが悪くなる。
・長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法を採用すると、幅方向の収縮力は発現させることができるものの、長手方向の収縮力が同時に発現してしまい、ラベルとした際に収縮装着後の仕上がりが悪くなる。
【0045】
さらに、上記従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造における問題点に基づいて、本発明者らが、ミシン目開封性が良好で生産性の高い熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることについてさらなる考察を進めた結果、次のような知見を得るに至った。
・ラベルとした際のミシン目開封性を良好なものとするためには、長手方向へ配向した分子をある程度残しておく必要があると考えられること
・ラベルとした際の収縮装着後の仕上がりを良好なものとするためには、長手方向への収縮力を発現させないことが不可欠であり、そのためには長手方向へ配向した分子の緊張状態を解消する必要があると考えられること
【0046】
そして、本発明者らは、上記知見から、良好なミシン目開封性と収縮仕上がり性を同時に満たすためには、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム中に存在させる必要がある、と考えるに至った。そして、どのような延伸を施せば“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム中に存在させることができるかに注目して試行錯誤した。その結果、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する所謂、縦−横延伸法によるフィルム製造の際に、以下の手段を講じることにより、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム中に存在させることを実現し、良好なミシン目開封性と収縮仕上がり性を同時に満たす熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となり、本発明を案出するに至った。
(1)縦延伸条件の制御
(2)縦延伸後における中間熱処理
(3)中間熱処理と横延伸との間における自然冷却(加熱の遮断)
(4)自然冷却後のフィルムの強制冷却
(5)横延伸条件の制御
以下、上記した各手段について順次説明する。
【0047】
(1)縦延伸条件の制御
本発明において好ましく採用される縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、本発明のフィルムロールを得るためには、縦延伸を二段で行うのが好ましい。すなわち、実質的に未配向のフィルムを、Tg以上Tg+30℃以下の温度で2.2倍以上3.0倍以下の倍率となるように縦延伸し(一段目の延伸)、Tg以下に冷却することなく、Tg+10以上Tg+40℃以下の温度で1.2倍以上1.5倍以下の倍率となるように縦延伸する(二段目の延伸)ことにより、トータルの縦延伸倍率(すなわち、一段目の縦延伸倍率×二段目の縦延伸倍率)が2.8倍以上4.5倍以下となるように縦延伸するのが好ましく、トータルの縦延伸倍率が3.0倍以上4.3倍以下となるように縦延伸するとより好ましい。
【0048】
また、上記の如く二段で縦延伸する際には、縦延伸後のフィルムの長手方向の屈折率が1.600〜1.630の範囲内となり、縦延伸後のフィルムの長手方向の熱収縮応力が10MPa以下となるように、縦延伸の条件を調整するのが好ましい。そのような所定の条件の縦延伸を施すことにより、後述する中間熱処理、横延伸、最終熱処理時にフィルムの長手方向・幅方向への配向度合い、分子の緊張度合いをコントロールすることが可能となり、ひいては、最終的なフィルムのミシン目開封性を良好なものとすることが可能となる。
【0049】
上記の如く縦方向に延伸する際に、トータルの縦延伸倍率が高くなると、長手方向の収縮率が高くなってしまう傾向にあるが、上記の如く縦方向に二段で延伸することにより、長手方向の延伸応力を小さくすることが可能となり、長手方向の収縮率を低く抑えることが可能となる。また、トータルの縦延伸倍率が高くなると、幅方向の延伸時の応力が高くなってしまい、最終的な横方向の収縮率のコントロールが難しくなる傾向にあるが、二段で延伸することにより、横方向の延伸応力も小さくすることができ、横方向の収縮率のコントロールが容易なものとなる。
【0050】
さらに、トータルの縦延伸倍率が高くなると、直角引裂強度が低くなり、長手方向の引張強さが高くなる。また、トータルの縦延伸倍率を横延伸倍率に近づけることによって、エルメンドルフ比を1.0に近づけることが可能となり、ラベルとした際のミシン目開封性を良好なものとすることができる。さらに、縦方向に二段で延伸することにより、横方向の延伸応力を低下できることに起因して、長手方向の配向を高くすることが可能となり、直角引裂強度が一層低くなり、長手方向の引張強さがより大きなものとなる。したがって、縦方向に二段で延伸し、トータルの縦延伸倍率を高くすることによって、非常にミシン目引裂性の良好なラベルを得ることが可能となる。
【0051】
一方、トータルの縦延伸倍率が4.5倍を上回ると、長手方向の配向が高くなって溶剤接着強度が低くなってしまうが、トータルの縦延伸倍率を4.5倍以下にコントロールすることによって、幅方向への配向を抑えて、溶剤接着強度を高く保持することが可能となる、また、トータルの縦延伸倍率が4.5倍を上回ると、表層の粗さが少なくなるため、動摩擦係数が高くなってしまうが、トータルの縦延伸倍率を4.5倍以下にコントロールすることによって、表層の粗さの減少を抑えて、動摩擦係数を低く保持することが可能となる。
【0052】
また、縦方向に二段で延伸することにより、長手方向の延伸応力が小さくなるため、長手方向の厚み斑および幅方向の厚み斑が大きくなる傾向にあるが、トータルの縦延伸倍率が高くすることにより、長手方向の厚み斑を小さくすることができ、それに伴ってヘイズも低減することができる。加えて、トータルの縦延伸倍率を高くすることによって、横延伸時の応力が高くなるため、幅方向の厚み斑も低減することができる。
【0053】
加えて、トータルの縦延伸倍率が高くすることにより、長手方向への配向を高くすることができ、二軸延伸後のフィルムを最終的にロールに巻き取る際のスリット性を向上させることができる。
【0054】
(2)縦延伸後における中間熱処理
上述の如く、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させるためには、長手方向に配向した分子を熱緩和させることが好ましいが、従来、フィルムの二軸延伸において、一軸目の延伸と二軸目の延伸との間において、高温の熱処理をフィルムに施すと、熱処理後のフィルムが結晶化してしまうため、それ以上延伸することができない、というのが業界での技術常識であった。しかしながら、本発明者らが試行錯誤した結果、縦−横延伸法において、ある一定の条件で縦延伸を行い、その縦延伸後のフィルムの状態に合わせて中間熱処理を所定の条件で行い、さらに、その中間熱処理後のフィルムの状態に合わせて所定の条件で横延伸を施すことによって、横延伸時に破断を起こさせることなく、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させ得る、という驚くべき事実が判明した。
【0055】
すなわち、本発明において好ましく採用される縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、未延伸フィルムを縦延伸した後に、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、130℃以上190℃以下の温度で1.0秒以上9.0秒以下の時間に亘って熱処理(以下、中間熱処理という)することが必要である。かかる中間熱処理を行うことによって、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させることが可能となり、ひいては、ラベルとした場合にミシン目開封性が良好で収縮斑が生じないフィルムを得ることが可能となる。なお、どのような縦延伸を行った場合でも、“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させることが可能となるわけではなく、前述した所定の縦延伸を実施することによって、中間熱処理後に、初めて“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”をフィルム内に存在させることが可能となる。そして、後述する所定の自然冷却、強制冷却、横延伸を施すことによって、フィルム内に形成された“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”を保持したまま、幅方向へ分子を配向させて幅方向への収縮力を発現させることが可能となる。
【0056】
なお、中間熱処理の温度の下限は、140℃以上であると好ましく、150℃以上であるとより好ましい。また、中間熱処理の温度の上限は、180℃以下であると好ましく、170℃以下であるとより好ましい。一方、中間熱処理の時間は、1.0秒以上9.0秒以下の範囲内で原料組成に応じて適宜調整する必要があり、3.0秒以上7.0秒以下に調整するのが好ましい。
【0057】
また、上記の如く中間熱処理する際には、中間熱処理後のフィルムの長手方向の屈折率が1.595〜1.625の範囲内となり、中間熱処理後のフィルムの長手方向の熱収縮応力が0.5MPa以下となるように、中間熱処理の条件を調整するのが好ましい。さらに、中間熱処理後のフィルムの長手方向の引張破壊伸びが100%以上170%以下となるように、中間熱処理の条件を調整するのが好ましい。そのような所定の条件の中間熱処理を施すことにより、横延伸、最終熱処理時にフィルムの長手方向・幅方向への配向度合い、分子の緊張度合いをコントロールすることが可能となり、ひいては、最終的なフィルムのミシン目開封性を良好なものとすることが可能となる。なお、中間熱処理後のフィルムの長手方向の引張破壊伸びが100%を下回ると、フィルムが脆いために横延伸性が悪く、横延伸時に破断が起こり易くなってしまう。反対に、中間熱処理後のフィルムの長手方向の引張破壊伸びが170%を上回ると、横延伸、最終熱処理の条件を調整しても、ミシン目開封性の良好なフィルムを得ることが困難となる。
【0058】
さらに、上記の如く中間熱処理する際には、中間熱処理後のフィルムの長手方向の直角引裂強度が260N/mm以下となるように、中間熱処理の条件を調整するのが好ましい。そのような所定の条件の中間熱処理を施すことにより、横延伸時における長手方向の直角引裂強度の急激な増加を抑えることが可能となり、最終的なフィルムのミシン目開封性を良好なものとすることが可能となる。
【0059】
上記の如く中間熱処理する際に、処理温度を130℃以上に保つことにより、長手方向へ収縮する応力を低減することが可能となり、長手方向の収縮率をきわめて低くすることが可能となる。また、中間熱処理の温度を190℃より高くすると、横方向の収縮率のバラツキが大きくなってしまうが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、横方向の収縮率のバラツキを低減することが可能となる。
【0060】
また、処理温度を130℃以上に保つことにより、長手方向の配向を高くすることが可
能となり、直角引裂強度を低く保つことが可能となるとともに、長手方向のエルメンドルフ比を1.0に近づけることができる。また、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムが結晶化して、長手方向の引張強さが低下してしまうが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムの結晶化を抑えて長手方向の引張強さを高く保つことが可能となる。
【0061】
また、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムの表層が結晶化して溶剤接着強度が低くなってしまうが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムの表層の結晶化を抑えて溶剤接着強度を高く保つことが可能となる。加えて、処理温度を130℃以上に保つことにより、表層の表面粗度を適度に高くすることによって、摩擦係数を低くすることが可能となる。
【0062】
さらに、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムに収縮斑が生じることにより、長手方向の厚み斑および幅方向の厚み斑が大きくなる傾向にあるが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、長手方向の厚み斑を小さく保つことが可能となる。加えて、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムが結晶化してしまい、横延伸時の応力がばらつくことに起因して、幅方向の厚み斑が大きくなる傾向にあるが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムの結晶化を抑えて幅方向の厚み斑を小さく保つことが可能となる。
【0063】
また、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムに収縮斑が生じることに起因して、製造中にフィルムのスリット性が悪化したり、フィルムの破断が生じ易くなったりするが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムの破断を抑えて、良好なスリット性を保つことが可能となる。
【0064】
加えて、中間熱処理する際に、処理温度が190℃を上回ると、フィルムが結晶化することに起因して、フィルムのヘイズが高くなる傾向にあるが、中間熱処理の温度を190℃以下にコントロールすることによって、フィルムのヘイズを低く抑えることが可能となる。
【0065】
(3)中間熱処理と横延伸との間における自然冷却(加熱の遮断)
本発明において好ましく採用される縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、上記の如く、縦延伸後に中間熱処理を施す必要があるが、その縦延伸と中間熱処理との間において、0.5秒以上3.0秒以下の時間に亘って、積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させる必要がある。すなわち、横延伸用のテンターの横延伸ゾーンの前方に中間ゾーンを設けておき、縦延伸後のフィルムをテンターに導き、所定時間をかけて当該中間ゾーンを通過させた後に、横延伸を実施するのが好ましい。加えて、その中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、フィルムの流れに伴う随伴流および冷却ゾーンからの熱風を遮断するのが好ましい。なお、中間ゾーンを通過させる時間が0.5秒を下回ると、横延伸が高温延伸となり、横方向の収縮率を十分に高くすることができなくなるので好ましくない。反対に中間ゾーンを通過させる時間は3.0秒もあれば十分であり、それ以上の長さに設定しても、設備のムダとなるので好ましくない。なお、中間ゾーンを通過させる時間の下限は、0.7秒以上であると好ましく、0.9秒以上であるとより好ましい。また、中間ゾーンを通過させる時間の上限は、2.8秒以下であると好ましく、2.6秒以下であるとより好ましい。
【0066】
(4)自然冷却後のフィルムの強制冷却
本発明において好ましく採用される縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、上記の如く自然冷却したフィルムをそのまま横延伸するのではなく、フィルムの温度が80℃以上120℃以下となるように急冷することが必要である。かかる急冷処理を施すことによって、ラベルとした際のミシン目開封性が良好なフィルムを得ることが可能となる。なお、急冷後のフィルムの温度の下限は、85℃以上であると好ましく、90℃以上であるとより好ましい。また、急冷後のフィルムの温度の上限は、115℃以下であると好ましく、110℃以下であるとより好ましい。
【0067】
上記の如くフィルムを急冷する際に、急冷後のフィルムの温度が120℃を上回ったままであると、フィルムの幅方向の収縮率が低くなってしまい、ラベルとした際の収縮性が不十分となってしまうが、冷却後のフィルムの温度が120℃以下となるようにコントロールすることによって、フィルムの幅方向の収縮率を高く保持することが可能となる。
【0068】
また、フィルムを急冷する際に、急冷後のフィルムの温度が120℃を上回ったままであると、フィルムが結晶化してしまい、ヘイズが高くなり、長手方向の引張強さが低下し、溶剤接着強度が低下する傾向にあるが、冷却後のフィルムの温度が120℃以下となるような急冷を施すことによって、ヘイズを低く保持し、長手方向の引張強さおよび溶剤接着強度を高く保持することが可能となる。
【0069】
さらに、フィルムを急冷する際に、急冷後のフィルムの温度が120℃を上回ったまま
であると、冷却後に行う横延伸の応力が小さくなり、幅方向の厚み斑が大きくなり易い傾向にあるが、冷却後のフィルムの温度が120℃以下となるような急冷を施すことによって、冷却後に行う横延伸の応力を高めて、幅方向の厚み斑を小さくすることが可能となる。
【0070】
加えて、フィルムを急冷する際に、急冷後のフィルムの温度が120℃を上回ったままであると、フィルムが結晶化することに起因して、フィルムの破断が生じ易くなってしまうが、冷却後のフィルムの温度が120℃以下となるような急冷を施すことによって、フィルムの破断を抑えることが可能となる。
【0071】
(5)横延伸条件の制御
本発明において好ましく採用される縦−横延伸法によるフィルムの製造においては、縦延伸、中間熱処理、急冷後のフィルムを所定の条件で横延伸する必要がある。すなわち、横延伸は、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、80℃以上120℃以下の温度で2.0倍以上6.0倍以下の倍率となるように行う必要がある。かかる所定条件での横延伸を施すことによって、縦延伸および中間熱処理によって形成された“長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子”を保持したまま、幅方向へ分子を配向させて幅方向の収縮力を発現させることが可能となり、ラベルとした際のミシン目開封性が良好なフィルムを得ることが可能となる。なお、横延伸の温度の下限は、85℃以上であると好ましく、90℃以上であるとより好ましい。また、横延伸の温度の上限は、115℃以下であると好ましく、110℃以下であるとより好ましい。一方、横延伸の倍率の下限は、2.5倍以上であると好ましく、3.0倍以上であるとより好ましい。また、横延伸の倍率の上限は、5.5倍以下であると好ましく、5.0倍以下であるとより好ましい。
【0072】
上記の如く横方向に延伸する際に、横方向に延伸する際に、延伸温度を高くすると、長手方向の引張強さが大きくなり、エルメンドルフ比が1.0に近づき、長手方向の直角引裂強度が低くなり、ラベルとした際のミシン目開封性が良好なものとなる。
【0073】
また、延伸温度が120℃を上回ると、長手方向の収縮率が高くなるとともに、幅方向の収縮率が低くなってしまうが、延伸温度を120℃以下にコントロールすることによって、長手方向の収縮率を低く抑えるとともに、幅方向の収縮率を高く保持することが可能となる。
【0074】
さらに、横延伸における延伸温度が高くなると、横方向の配向が低くなって、溶剤接着強度が高くなるとともに、滑剤の圧潰を防止することが可能となり、摩擦係数を低く保つことが可能となる。加えて、横延伸における延伸温度が高くなると、フィルムの内部のボイドが減少することによって、フィルムのヘイズが低くなる。
【0075】
また、延伸温度が120℃を上回ると、幅方向の厚み斑が大きくなり易い傾向にあるが、延伸温度を120℃以下にコントロールすることによって、幅方向の厚み斑を小さくすることができる。
【0076】
一方、延伸温度が80℃を下回ると、幅方向への配向が高くなりすぎて、横延伸時に破断し易くなったり、二軸延伸後のフィルムを最終的にロールに巻き取る際のスリット性が悪くなったりするが、延伸温度を80℃以上にコントロールすることによって、横延伸時における破断を低減し、巻き取り時のスリット性を改善することが可能となる。
【0077】
[製造工程の相互作用がフィルム特性に与える影響]
本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造に当たっては、縦延伸工程、中間熱処理工程、自然冷却工程、強制冷却工程、横延伸工程の内の何れかの工程のみが、単独でフィルムの特性を良好なものとすることができるものではなく、縦延伸工程、中間熱処理工程、自然冷却工程、強制冷却工程、横延伸工程のすべてを所定の条件にて行うことにより、非常に効率的にフィルムの特性を良好なものとすることが可能となるものと考えられる。また、フィルムの特性の中でも、エルメンドルフ比、長手方向の直角引裂強度、長手方向の引張破壊強さ、幅方向の厚み斑、動摩擦係数、長手方向の厚み斑といった重要な特性は、特定の複数の工程同士の相互作用によって大きく数値が変動する。
【0078】
すなわち、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、長手方向の直角引裂強度を100N/mm以上310N/mm以下に調整する必要があるが、当該長手方向の直角引裂強度には、縦延伸工程と中間熱処理工程との相互作用が非常に大きく影響する。
【0079】
また、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、長手方向の引張破壊強さを50MPa以上300MPa以下に調整する必要があるが、当該長手方向の引張破壊強さには、縦延伸工程、中間熱処理工程、および横延伸工程という3つの工程の相互作用が非常に大きく影響する。
【0080】
また、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エルメンドルフ比を0.1以上2.0以下に調整する必要があるが、当該エルメンドルフ比は、縦延伸工程と中間熱処理工程との相互作用が非常に大きく影響する。
【0081】
加えて、本発明に好ましく用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、動摩擦係数を0.1以上0.55以下に調整すると好ましいが、当該動摩擦係数には、縦延伸工程と中間熱処理工程との相互作用が非常に大きく影響する。
【0082】
したがって、熱収縮性ポリエステル系フィルムの長手方向の直角引裂強度、引張破壊強さ、エルメンドルフ比、動摩擦係数を本発明の範囲内に調整するためには、上記した工程同士の相互作用を考慮しつつ、上記のようなデリケートな条件調整が必要となる。
【0083】
本発明のラベルは、前記の熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材を少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させてなるものであり、ラベルの対象物としては、飲料用のペットボトルをはじめ、各種の瓶、缶、菓子や弁当等のプラスチック容器、紙製の箱等を挙げることができる。なお、通常、それらの包装対象物に、熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とするラベルを熱収縮させて被覆させる場合には、当該ラベルを約2〜15%程度熱収縮させて包装体に密着させる。なお、包装対象物に被覆されるラベルには、印刷が施されていても良いし、印刷が施されていなくても良い。
【0084】
ラベルを作成する方法としては、長方形状のフィルムの片面の端部から少し内側に有機溶剤を塗布し、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着してラベル状にするか、あるいは、ロール状に巻き取ったフィルムの片面の端部から少し内側に有機溶剤を塗布し、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着して、チューブ状体としたものをカットしてラベル状とする。接着用の有機溶剤としては、1,3−ジオキソランあるいはテトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。この他、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素やフェノール等のフェノール類あるいはこれらの混合物が使用できる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。
【0086】
フィルムの評価方法は下記の通りである。
【0087】
[熱収縮率(湯温熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下式3にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。当該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) ・・式3
【0088】
[最大熱収縮応力値]
フィルムを、主収縮方向(幅方向)×主収縮方向と直交する方向(長手方向)=200mm×15mmのサイズにカットした。しかる後、(株)ボールドウィン社製 万能引張試験機 STM−50を温度90℃に調整した上で、カットしたフィルムをセットし、10秒間保持したときの主収縮方向の応力値を測定した。
【0089】
[直角引裂強度]
80℃に調整された湯温中にてフィルムを主収縮方向に10%収縮させた後に、JIS−K−7128に準じて、図1に示す形状にサンプリングすることによって試験片を作製した(なお、サンプリングにおいては、試験片の長手方向をフィルムの主収縮方向とした)。しかる後に、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ)で試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて、引張破壊時の強度の測定を行い、下式1を用いて単位厚み当たりの直角引裂強度を算出した。
直角引裂強度=引張破壊時の強度÷厚み ・・式1
【0090】
[エルメンドルフ比]
フィルムを矩形状の枠に予め弛ませた状態で装着し(フィルムの両端を枠によって把持させ)、弛んだフィルムが枠内で緊張状態となるまで(弛みがなくなるまで)、約5秒間に亘って80℃の温水に浸漬させることによって、フィルムを主収縮方向に10%収縮させた(以下、予備収縮という)。しかる後に、JIS−K−7128に準じて、主収縮方向×直交方向=75mm×63mmのサイズに切り取り、長尺な端縁(主収縮方向に沿った端縁)の中央から当該端縁に直交するように20mmのスリット(切り込み)を入れることによって試験片を作製した。そして、作製された試験片を用いて主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重の測定を行った。また、上記方法と同様な方法でフィルムを主収縮方向に予備収縮させた後に、フィルムの主収縮方向と直交方向とを入れ替えて試験片を作製し、主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重の測定を行った。そして、得られた主収縮方向および主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重から下式4を用いてエルメンドルフ比を算出した。
エルメンドルフ比=主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重÷主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重 ・・式4
【0091】
[ヘイズ]
JIS−K−7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0092】
[溶剤接着強度]
フィルムに1,3−ジオキソランを塗布して2枚を張り合わせることによってシールを施した。しかる後、シール部をフィルムの主収縮方向と直交する方向(以下、直交方向という)に15mmの幅に切り取り、それを(株)ボールドウィン社製 万能引張試験機 STM−50にセットし、引張速度200mm/分の条件で180°ピール試験を行った。そして、そのときの引張強度を溶剤接着強度とした。
【0093】
[屈折率]
アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用いて、各試料フィルムを23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した後に測定した。
【0094】
また、被覆後のラベルの評価方法は下記の通りである。
【0095】
[引張破壊強さの測定方法]
包装対象物に装着されたラベルを引き剥がし、そのラベルに印刷が施されている場合には、印刷層を酢酸エチルをしみ込ませた布を使用して拭き取った。印刷が施されていないか又は印刷層を除いたラベルについて、JIS−K−7127に準じて、主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の長さ50mm×主収縮方向(フィルム幅方向)の長さ20mmの長方形状にサンプリングして試験片とし、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ)を利用して、試験片の両端(長尺方向の両端)を掴み、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、破断時の応力値を引張破壊強さとして算出した。
【0096】
[直角引裂強度]
包装対象物に装着されたラベルを引き剥がし、そのラベルに印刷が施されている場合には、印刷層を酢酸エチルをしみ込ませた布を使用して拭き取った。印刷が施されていないか又は印刷層を除いたラベルについて、JIS−K−7128に準じて、図1に示す形状にサンプリングすることによって試験片を作製した(なお、サンプリングにおいては、試験片の長手方向をラベルの主収縮方向とした)。しかる後に、万能引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフ)を利用して、試験片の両端を掴み、引張速度200mm/分の条件にて、ラベルの主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)における引張破壊時の強度の測定を行い、上式1を用いて単位厚み当たりの直角引裂強度を算出した。
【0097】
[エルメンドルフ比]
包装対象物に装着されたラベルを引き剥がし、そのラベルに印刷が施されている場合には、印刷層を酢酸エチルをしみ込ませた布を使用して拭き取った。印刷が施されていないか又は印刷層を除いたラベルについて、JIS−K−7128に準じて、主収縮方向×主収縮方向と直交する方向=37.5mm×31.5mmのサイズに切り取り、主収縮方向に沿った端縁の中央から当該端縁に直交するように10mmのスリット(切り込み)を入れることによって試験片を作製した。そして、ミシン目方向(=主収縮方向と直交する方向=長手方向)のエルメンドルフ引裂荷重を測定した。また、フィルムの主収縮方向と直交する方向と主収縮方向とを入れ替えて試験片を作製し、ミシン目と直交する方向(=主収縮方向=幅方向)のエルメンドルフ引裂荷重を測定した。そして、得られた主収縮方向および主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重から上式2を用いてエルメンドルフ比を算出した。
【0098】
[屈折率]
包装対象物に装着されたラベルを引き剥がし、そのラベルの表面に施された印刷を溶剤(酢酸エチル、メチルエチルケトン等)を含ませた布で拭取ることにより取り除き(印刷がなければ溶剤による拭取り作業は不要)、インクが落ち透明になったラベルを65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した後に、アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用いて測定した。なお、上記した方法により屈折率を測定した。
【0099】
[落下時の開封率]
ラベルを装着したペットボトル等の包装対象物に水を500ml充填し、そのペットボトルを約5℃に調整された冷蔵庫内で8時間以上放置した後、1mの高さからミシン目を設けた部分を下にして落下させ、ミシン目が引き裂かれたものの割合(%)を算出した(n=100)。
【0100】
[収縮仕上り性]
包装対象物の周囲に装着されたラベルの仕上がり状態を、目視によって下記の基準により評価した。
◎:シワ,飛び上り、収縮不足の何れも未発生で、かつ色の斑も見られない
○:シワ,飛び上り、または収縮不足が確認できないが、若干、色の斑が見られる
△:飛び上り、収縮不足の何れも未発生だが、ネック部の斑が見られる
×:シワ、飛び上り、収縮不足が発生
【0101】
[ラベル密着性]
装着されたラベルと包装対象物とを軽くねじったときのラベルのズレ具合を官能評価した。ラベルが動かなければ○、すり抜けたり、ラベルとボトルがずれたりした場合には×とした。
【0102】
[ミシン目開封性]
ラベルを装着したペットボトル等の包装対象物に水を500ml充填し、5℃に冷蔵し、冷蔵庫から取り出した直後のボトルのラベルのミシン目を指先で引裂き、縦方向にミシン目に沿って綺麗に裂け、ラベルをボトルから外すことができた本数を数え、全サンプル50本に対する割合(%)を算出した。
【0103】
また、実施例、比較例で使用したポリエステル原料の性状、組成、実施例、比較例におけるフィルムの製造条件(延伸・熱処理条件等)を、それぞれ表1、表2に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
<ポリエステル原料の調製>
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、二塩基酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)を用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)添加し、280℃で26.6Pa(0.2トール)の減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/gのポリエステル(A)を得た。このポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。なお、上記ポリエステル(A)の製造の際には、滑剤としてSiO(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して8,000ppmの割合で添加した。また、上記と同様な方法により、表1に示すポリエステル(A2,B,C,D)を合成した。なお、表中、NPGがネオペンチルグリコール、CHDMが1,4−シクロヘキサンジメタノール、BDが1,4−ブタンジオールである。それぞれのポリエステルの固有粘度は、Bが0.72dl/g、Cが0.80dl/g、Dが1.15dl/gであった。なお、各ポリエステルは、適宜チップ状にした。
【0107】
[実施例1]
上記したポリエステルAとポリエステルA2とポリエステルBとポリエステルDとを重量比5:5:80:10で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが582μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは67℃であった。
【0108】
そして、上記の如く得られた未延伸フィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、ロールの回転速度差を利用して、縦方向に二段階で延伸した。すなわち、未延伸フィルムを、予熱ロール上でフィルム温度が78℃になるまで予備加熱した後に、表面温度78℃に設定された低速回転ロールと表面温度78℃に設定された中速回転ロールとの間で回転速度差を利用して2.6倍に延伸した。さらに、その縦延伸したフィルムを、表面温度95℃に設定された中速回転ロールと表面温度30℃に設定された高速回転ロールとの間で回転速度差を利用して1.4倍に縦延伸した(したがって、トータルの縦延伸倍率は、3.64倍であった)。
【0109】
上記の如く縦延伸直後のフィルムを、表面温度30℃に設定された冷却ロール(二段目の縦延伸ロールの直後に位置した高速ロール)によって、40℃/秒の冷却速度で強制的に冷却した後に、冷却後のフィルムをテンターに導き、中間熱処理ゾーン、第一中間ゾーン(自然冷却ゾーン)、冷却ゾーン(強制冷却ゾーン)、第二中間ゾーン、横延伸ゾーン、最終熱処理ゾーンを連続的に通過させた。なお、当該テンターにおいては、第一中間ゾーンの長さを、約40cmに設定し、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの間、第一中間ゾーンと冷却ゾーンとの間、冷却ゾーンと第二中間ゾーンとの間、第二中間ゾーンと横延伸ゾーンとの間に、それぞれ遮蔽板を設けた。さらに、第一中間ゾーンおよび第二中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、中間熱処理ゾーンからの熱風、冷却ゾーンからの冷却風および横延伸ゾーンからの熱風を遮断した。加えて、フィルムの通紙時には、フィルムの流れに伴う随伴流の大部分が、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの間に設けられた遮蔽板によって遮断されるように、フィルムと遮蔽板との距離を調整した。加えて、フィルムの通紙時には、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの境界、および、冷却ゾーンと第二中間ゾーンとの境界においては、フィルムの流れに伴う随伴流の大部分が遮蔽板によって遮断されるようにフィルムと遮蔽板との距離を調整した。
【0110】
そして、テンターに導かれた縦延伸フィルムを、まず、中間熱処理ゾーンにおいて、160℃の温度で5.0秒間に亘って熱処理した後に、その中間熱処理後のフィルムを第一中間ゾーンに導き、当該ゾーンを通過させることによって(通過時間=約1.0秒)自然冷却した。しかる後に、自然冷却後のフィルムを冷却ゾーンに導き、フィルムの表面温度が100℃になるまで、低温の風を吹き付けることによって積極的に冷却し、その冷却後のフィルムを第二中間ゾーンに導き、当該ゾーンを通過させることによって(通過時間=約1.0秒)再度自然冷却した。さらに、その第二中間ゾーンを通過した後のフィルムを横延伸ゾーンに導き、フィルムの表面温度が95℃になるまで予備加熱した後に、95℃で幅方向(横方向)に4.0倍に延伸した。
【0111】
しかる後、その横延伸後のフィルムを最終熱処理ゾーンに導き、当該最終熱処理ゾーンにおいて、85℃の温度で5.0秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、約40μmの二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0112】
[実施例2]
上記したポリエステルA,ポリエステルA2,ポリエステルB,ポリエステルC,ポリエステルDを、重量比が5:5:15:65:10となるように混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を実施例1と同様の条件で溶融押し出しすることによって未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを、実施例1と同様な条件で製膜することによって、約40μmの二軸延伸フィルムを幅500mmで連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0113】
[実施例3]
上記したポリエステルA,ポリエステルA2,ポリエステルC,ポリエステルDを、重量比が5:5:80:10となるように混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を実施例1と同様の条件で溶融押し出しすることによって未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを、実施例1と同様な条件で製膜することによって、約40μmの二軸延伸フィルムを幅500mmで連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0114】
[実施例4]
吐出量を調整し、厚み649.6μmの未延伸フィルムを得て、縦延伸の1段目の延伸倍率を2.9倍とし(トータルの縦延伸倍率は、4.06倍)、中間熱処理ゾーンにおいて、170℃の温度で8.0秒間に亘って熱処理した他は実施例1と同様にして約40μmの二軸延伸フィルムを幅500mmで連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0115】
[実施例5]
上記したポリエステルA2,ポリエステルB,ポリエステルDを、5:70:25となるように混合して押出機に投入した。しかる後、実施例1に対して吐出量を変更して厚み515μmの未延伸フィルムを得た。その後、縦延伸の1段目の延伸倍率を2.3倍とし(トータルの縦延伸倍率は、3.22倍)、中間熱処理ゾーンにおいて、155℃の温度で熱処理した他は実施例1と同様にして約40μmの二軸延伸フィルムを幅500mmで連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0116】
[実施例6]
上記したポリエステルA,ポリエステルA2,ポリエステルB,ポリエステルDを、30:5:55:10となるように混合して押出機に投入した。しかる後、実施例1に対して吐出量を変更して厚み470μmの未延伸フィルムを得た。その後、縦延伸の1段目の延伸倍率を2.2倍とし、縦延伸の2段目延伸倍率を1.34(トータルの縦延伸倍率は、2.94倍)とし、中間熱処理ゾーンにおいて、155℃の温度で熱処理した他は実施例1と同様にして約40μmの二軸延伸フィルムを幅500mmで連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0117】
[比較例1]
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しする際に、未延伸フィルムの厚みが160μmとなるように押出機の吐出量を調整した。それ以外は実施例1と同様にして未延伸フィルムを得た。そして、未延伸フィルムを、長手方向には延伸せずに フィルム温度を90℃まで昇温後 75℃でフィルム幅方向に4倍延伸して 約40μmの一軸延伸フィルムを幅500mmで連続的に製造した。そして、得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0118】
【表3】

【0119】
表3から明らかなように、実施例1〜6で得られたフィルムは、いずれも、主収縮方向である幅方向への収縮性が高く、主収縮方向と直交する長手方向への収縮性は非常に低かった。また、実施例1〜6で得られたフィルムは、いずれも、溶剤接着強度が高く、ラベル密着性が良好で収縮斑もなく、収縮仕上がり性が良好であった。さらに、実施例1〜6の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ミシン目開封性が良好である上、製造されたフィルムロールにシワが発生することがなかった。そして、各実施例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるラベルを包装した包装体は、いずれもラベルのミシン目開封性が良好であり、ラベルをミシン目に沿って適度な力で綺麗に引き裂くことが可能であった。
【0120】
それに対して、比較例1で得られた熱収縮性フィルムからなるラベルを包装した包装体は、ラベルのミシン目開封性が不良であり、ラベルをミシン目に沿って適度な力で綺麗に引き裂くことができなかったものの比率が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の包装体は、上記の如く優れた特性を有しているので、各種の物品の包装用用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】直角引裂強度の測定における試験片の形状を示す説明図である(なお、図中における試験片の各部分の長さの単位はmmである)。
【符号の説明】
【0123】
F・・フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム幅方向を主収縮方向として熱収縮する熱収縮性フィルムを基材とし、包装対象物に応じてカットされ、フィルム幅方向の両端が接着された環状体が、包装対象物の外周の少なくとも一部を熱収縮して被覆しているラベルであって、主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の直角引裂強度が100N/mm〜310N/mmであり、かつ、主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の引張破壊強さが50MPa以上300MPa以下であることを特徴とするラベル。
【請求項2】
接着が、有機溶剤によりなされていることを特徴とする請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)のエルメンドルフ引裂荷重と主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重を測定した場合におけるエルメンドルフ比が0.1以上2.0以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラベル。
【請求項4】
主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)の屈折率が1.565以上1.610以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラベル。
【請求項5】
主収縮方向と直交する方向(フィルム長手方向)に沿って、ミシン目あるいはノッチが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラベル。
【請求項6】
熱収縮性フィルムが、熱収縮性ポリエステル系フィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のラベル。

【図1】
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【公開番号】特開2009−163195(P2009−163195A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47442(P2008−47442)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】