説明

ラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤及び皮膚損傷回復促進剤

【課題】天然物の中からラミニン5産生促進作用を有する物質を見出し、それを有効成分として含有するラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤、皮膚損傷回復促進剤を提供する。
【解決手段】本発明のラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤又は皮膚損傷回復剤に、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物を有効成分として含有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物等からの抽出物を含有するラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤及び皮膚損傷回復促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は角層、表皮、基底膜及び真皮から構成されている。基底膜は、表皮と真皮との境界部に存在し、表皮と真皮とを繋ぎ止めるだけでなく、皮膚機能の維持に重要な役割を果たしている(非特許文献1参照)。基底膜の主要骨格は、IV型コラーゲンからなる網目構造をしている。基底膜と表皮との境界に存在し、基底膜と表皮とを繋ぎとめているのがラミニン5を主成分とする各種糖蛋白質で、かかるラミニン5は、表皮に存在する表皮角化細胞より産生される。若い皮膚においては、基底膜の働きにより表皮、真皮の相互作用が恒常性を保つことで水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
【0003】
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、基底膜の主要構成成分であるラミニン5は分解・変質を起こし、基底膜構造が破壊される(非特許文献2参照)。その結果、皮膚は保湿機能や弾力性が低下し、角質は異常剥離を始めるから、肌は張りや艶を失い、荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、即ち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等には、基底膜成分の減少、基底膜の構造変化が関与しており、ラミニン5の産生を促進することにより、皮膚の老化症状を予防・改善することができると考えられる。
【0004】
ラミニンは、α鎖、β鎖及びγ鎖の種々の組み合わせからなり、現在のところ15種類(ラミニン1〜ラミニン15)が知られている。これらのα鎖、β鎖及びγ鎖が長鎖(long arm)と呼ばれる部位でコイル状3本鎖構造を形成することで、巨大なラミニン分子が構成されている。その中でラミニン5(α3β3γ2)は、皮膚、消化器、腎臓、肺等の上皮組織の基底膜に多量に存在する。ラミニン5の各鎖をコードする遺伝子の先天的な異常に起因する遺伝子疾患(致死型先天性表皮水疱症,Herlitz junctional epidermolysis bullosa)においては、全身の表皮が剥離する致死性の症状を示すことが知られている。そして、ラミニン5は、他の細胞外マトリックス分子と比べ、強度に細胞を接着させ(細胞接着活性が高く)、細胞運動を強く促進する(細胞運動活性が高い)ことが知られている(非特許文献3参照)。
【0005】
このように、ラミニン5は、細胞運動活性が高いことから、損傷皮膚中の細胞移動を促進し、損傷治癒を促すことが知られている(特許文献1参照)。すなわち、ラミニン5の産生を促進することは、基底膜の構造が破壊されるような皮膚損傷の治癒を促す上で重要である。
【0006】
従来、ラミニン5を含有する皮膚外用剤(特許文献2参照)が知られており、また、ラミニン5産生促進作用を有するものとして、大豆抽出物(特許文献3参照)、フェニルプロパノイド類(特許文献4参照)、パントテン酸(特許文献5参照)、リゾホスファチジルコリン又はリゾホスファチジン酸(特許文献6参照)、コエンザイムQ10(特許文献7参照)等が知られている。
【特許文献1】特開2006−63033号公報
【特許文献2】特開平10−147515号公報
【特許文献3】特開2004−217618号公報
【特許文献4】特開2007−77169号公報
【特許文献5】特開2005−179243号公報
【特許文献6】特開2000−226308号公報
【特許文献7】特開2007−63160号公報
【非特許文献1】Marinkovich MP et al.,「J. Cell. Biol.」,1992年,第199巻,p.695-703
【非特許文献2】Lavker et al.,「J. Invest. Dermatol.」,1979年,第73巻,p.59-66
【非特許文献3】宮崎 香,「細胞接着分子ラミニン5の機能解析と応用」,[on line],横浜市立大学第3回産学連携セミナー,[平成19年8月1日検索],インターネット<URL:http://www.yokohama-cu.ac.jp/sangaku/seminar3/summary_miyazaki.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のラミニン5を有効成分として含有する皮膚外用剤は、ラミニン5が非常に高分子の糖タンパク質であるため、安定性、皮膚浸透性等に問題があり、十分な皮膚賦活効果を得ることができないものであった。
【0008】
そこで、本発明は、天然物の中からラミニン5産生促進作用を有する物質を見出し、それらを有効成分として含有するラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤及び皮膚損傷回復促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤及び皮膚損傷回復促進剤は、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れたラミニン5産生促進作用を有する、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物を有効成分として含有するラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤及び皮膚損傷回復促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤、及び皮膚損傷回復促進剤は、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物を有効成分として含有する。
【0012】
ここで、本発明において「抽出物」には、各天然物等を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0013】
本発明において使用する抽出原料は、クマザサ、アシタバ、ローヤルゼリー、シナノキ、オニイチゴ、アスパラガス、キンギンカ、ドクダミ、シイタケ、ワレモコウ、ウイキョウ又はナツメである。
【0014】
クマザサ(学名:Sasa veitchii RERD.)は、近畿地方、中国地方、九州地方等に自生しているイネ科ササ属に属する植物であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0015】
アシタバ(学名:Angelica keiskei Koidzumi)は、房総半島、伊豆半島、伊豆諸島等に自生しているセリ科シシウド属に属する多年草であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部、茎部である。
【0016】
ローヤルゼリーは、ミツバチ科ヨーロッパミツバチ(学名:Apis melifera L.)のうちの若い働き蜂の咽頭腺からの分泌物であり、女王蜂となる幼虫や成虫となった女王蜂に給餌されるものである。
【0017】
シナノキ(学名:Tilia cordata Mill.,Tilia platyphyllos Scop.)は、特に長野県に自生しているシナノキ科シナノキ属に属する落葉高木であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは花部である。
【0018】
ここで、「花」とは、一般に、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体をいい、葉の変形である花葉と茎の変形である花軸とから構成され、花葉には、萼、花弁、雄しべ、心皮等の器官が含まれる。本発明において抽出原料として使用する「花部」には、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体の他、その一部、例えば、花葉、花被(萼と花冠)、花冠、花弁等も含まれる。
【0019】
オニイチゴ(学名:Rubus ellipticus,中国名:切頭懸鉤子,別名:ヒマラヤンラズベリー)は、バラ科キイチゴ属に属する常緑低木であり、新鮮な果実は香りがあり、食用にされている。オニイチゴは、ヒマラヤから東南アジア、中国東南部等で自生し又は栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、根部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは根部である。
【0020】
アスパラガス(学名:Asparagus officinalis)は、南ヨーロッパ、地中海沿岸等に自生するユリ科アスパラガス属に属する多年生草本であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、根部、花部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部である。
【0021】
キンギンカ(学名:Lonicera japonica Thunberg.,別名:スイカズラ)は、日本全国、東アジア一帯等に自生しているスイカズラ科スイカズラ属に属する常緑つる性木本であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、地上部、全草、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部、茎部、花部、つぼみ部である。
【0022】
ドクダミ(学名:Houttuynia cordata Thunberg.)は、本州、四国、九州、台湾、中国、ヒマラヤ、東アジア等に自生しているドクダミ科ドクダミ属に属する多年生草本であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、地上部、全草、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは開花期の地上部(生薬名:ジュウヤク)である。
【0023】
シイタケ(学名:Lentinula edodes (Berk.) Pegler,Cortinellus shiitake P. Henn.)は、日本、中国、韓国等において栽培されているキシメジ科シイタケ属に属する食用の担子菌類であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、子実体等が挙げられる。
【0024】
ワレモコウ(学名:Sanguisorba officinalis L.)は、北海道から九州地方、中国からシベリア、ヨーロッパ等に自生しているバラ科ワレモコウ属に属する多年草であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、果実部、根部、根茎部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは根部及び根茎部(生薬名:ジユ)である。
【0025】
ウイキョウ(学名:Foeniculum vulgare Miller)は、インド、中国、エジプト等において栽培されているセリ科ウイキョウ属に属する多年生草本であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、根部、果実部、果皮部、果核部、地上部、全草、又はこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは果実部である。
【0026】
ナツメ(学名:Zizyphus jujuba Miller var. inermis)は、中国等に自生しているクロウメモドキ科ナツメ属に属する落葉低木であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは成熟した果実部(生薬名:タイソウ)である。
【0027】
クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物に含まれるラミニン5産生促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、天然物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、これらの天然物からラミニン5産生促進作用を有する抽出物を得ることができる。
【0028】
例えば、上記抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより、ラミニン5産生促進作用を有する抽出物を得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0029】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0030】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0031】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0032】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90質量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40質量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して多価アルコール1〜90質量部を混合することが好ましい。
【0033】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を溶出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0034】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでもラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤又は皮膚損傷回復促進剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0035】
上記各抽出物は、特有の匂いと味とを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0036】
以上のようにして得られる上記各抽出物は、ラミニン5産生促進作用を有しているため、その作用を利用してラミニン5産生促進剤の有効成分として用いることができるとともに、ラミニン5産生促進作用を通じて、皮膚の基底膜の再構築を誘導し、皮膚の基底膜の構造を正常化することができ、また皮膚の損傷の回復を促進することができるため、皮膚基底膜正常化剤又は皮膚損傷回復促進剤の有効成分として用いることができる。
【0037】
本発明のラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤又は皮膚損傷回復促進剤は、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物のみからなるものでもよいし、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物を製剤化したものでもよい。
【0038】
クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化して提供することができ、他の組成物(例えば、皮膚化粧料等)に配合して使用できるほか軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。
【0039】
なお、本発明のラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤又は皮膚損傷回復促進剤は、必要に応じてラミニン5産生促進作用を有する他の天然抽出物等を、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0040】
本発明のラミニン5産生促進剤は、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物が有するラミニン5産生促進作用を通じて、ラミニン5の産生を促進することができる。これにより、基底膜構造の再構築を誘導し、しわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防又は改善することができる。ただし、本発明のラミニン5産生促進剤は、これらの用途以外にもラミニン5産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができ、例えば、ラミニン5の欠乏(欠損)に起因する疾患(表皮水疱症等)の予防又は治療剤として用いることができる。
【0041】
本発明の皮膚基底膜正常化剤は、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物が有するラミニン5産生促進作用を通じて、ラミニン5の産生を促進することができ、これにより、基底膜構造の再構築を誘導し、しわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防又は改善することができる。ただし、本発明の皮膚基底膜正常化剤は、これらの用途以外にもラミニン5産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0042】
本発明の皮膚損傷回復促進剤は、クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物が有するラミニン5産生促進作用を通じて、皮膚の損傷の回復を促進することができ、これにより、しわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防又は改善することができるとともに、皮膚における創傷を治療・改善することができる。ただし、本発明の皮膚損傷回復促進剤は、これらの用途以外にもラミニン5産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができ、例えば、皮膚創傷治療等の用途に用いることができる。
【0043】
なお、本発明の、ラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤及び皮膚損傷回復促進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0044】
以下、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の試験例に何ら制限されるものではない。
なお、本試験例において、被験試料(試料1〜12)として表1に示す製品の凍結乾燥品を使用した。
【0045】
【表1】

【0046】
〔試験例1〕ラミニン5産生促進作用試験
上記各抽出物(試料1〜12)について、以下のようにしてラミニン5産生促進作用を試験した。
【0047】
正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)を80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞培地(KGM)を用いて37℃、5%CO−95%airの条件下にて培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10個/mLの細胞密度となるようにKGMからBPEを除いた培地(KGM−BPE)で希釈した後、24ウェルプレートに1ウェルあたり500μLずつ播種し、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。
【0048】
培養終了後、培地を抜き、KGM−BPEで溶解した試料溶液(試料濃度は表1を参照)を各ウェルに500μLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で48時間培養した。培養終了後、上清100μLをELISAプレートに移し換え、37℃で2時間プレートに吸着させた後、溶液を捨て、0.05%のTween20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて洗浄を行った。
【0049】
その後、1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸生理緩衝液で、ブロッキング操作を行った。溶液を捨て、0.05%Tween20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて洗浄を行い、抗ヒトラミニン5抗体(マウスIgG,ケミコン社製)を反応させた。溶液を捨て、0.05%Tween−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて洗浄を行い、アビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体と反応させた後、同様の洗浄操作を行い、発色反応を行った。得られた測定結果から、下記式によりラミニン5産生促進率(%)を算出した。
【0050】
ラミニン5産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時の波長405nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加時の波長405nmにおける吸光度」を表す。
結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2に示すように、上記各抽出物(試料1〜12)は、優れたラミニン5産生促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のラミニン5産生促進剤、皮膚基底膜正常化剤、及び皮膚損傷回復促進剤は、しわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状の予防又は改善に有用である。特に本発明の皮膚損傷回復促進剤は、皮膚の創傷の治療又は改善に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするラミニン5産生促進剤。
【請求項2】
クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚基底膜正常化剤。
【請求項3】
クマザサ抽出物、アシタバ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、シナノキ抽出物、オニイチゴ抽出物、アスパラガス抽出物、キンギンカ抽出物、ドクダミ抽出物、シイタケ抽出物、ワレモコウ抽出物、ウイキョウ抽出物及びナツメ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚損傷回復促進剤。

【公開番号】特開2009−40757(P2009−40757A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210452(P2007−210452)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】