説明

ラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙

【課題】本発明の目的は、ラミネーター加工時に優れた接着強度を発現し、製造工程でのカレンダー処理における汚れの発生が少ないラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙を提供するものである。
【解決手段】原紙の少なくとも片面に白色顔料とバインダーを主体とした塗工層を一層以上設けたラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙であり、該塗工層における最表塗工層が白色顔料100質量部に対して金属石鹸を0.1〜0.5質量部配合し、金属石鹸が飽和高級脂肪酸カルシウムと不飽和高級脂肪酸カルシウムの混合物であり、該塗工紙のベック平滑度が800〜4000秒であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷塗工紙に関するものである。更に詳しくは、ラミネーター加工時に優れた接着強度を発現し、製造工程でのカレンダー処理における汚れの発生が少ないラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スナック菓子、冷凍食品、液体容器等の食品分野、医療分野、電子材料分野等で使用される包装材料は、強度や機密性の高性能化のため、片面または両面を樹脂加工、すなわちラミネート加工を施すものが多く、パッケージ・カップ等の成型加工時にラミネート剥離トラブルがないよう、ラミネート接着性の優れたものが要求される。ラミネート加工された材料は、耐久性と光沢感を付与した出版物表紙としても利用される。
【0003】
また、ラミネート加工される包装材料は、顧客の購買意欲をかき立てるよう美粧性を高めることが求められてきた。このことから、ラミネート加工用紙は印刷適性向上のために表面処理を施すことが一般的ではあるが、従来より、ラミネート加工用紙の表面処理は無処理に近いほどラミネート接着性は高まることが良く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来より美粧性向上のため顔料を主体とした塗工液を施すことにより印刷適性を向上させるが、ラミネート接着性が著しく低下する。このため、一般に知られるイミン系やイソシアネート系等のアンカーコート剤を付与した後ラミネート加工することで、ラミネート接着性を保持させることが一般的であり、加工工程が多くアンカーコート剤等を含め高コストの要因となっている。
【0005】
そこで、アンカーコート剤を用いずしてラミネート加工時のラミネート接着性を低下させることなく、印刷時の印刷適性、詳しくは安価でかつインキ着肉ムラのない印刷良好なラミネート加工用紙が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このラミネート加工用紙は、抄紙機工程の表面処理において、通常工程にて顔料を主成分とする塗工層を必要に応じて片面または両面に設け、ラミネート接着性低下を伴わない範囲の表面処理を施すことにより、アンカーコート剤付与工程を省き、印刷適性を低下させることなく、かつラミネート加工時におけるラミネート接着性を低下させることのない、より詳しくは印刷着肉ムラを防止できることから、印刷作業性が向上し、かつアンカーコート剤加工工程が不要となるコスト低減、及びラミネート接着性を低下させないなどの加工操業性が向上し、最終包装材料の加工適性及び美粧性の品質低下を防止するとしているが、ラミネート加工用紙の製造工程ではカレンダー汚れの発生が少なからず起こるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−101190号公報
【特許文献2】特開2006−257583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、オフセット印刷方式を用いた印刷物にラミネーター加工をする際に、優れた接着強度を有するラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙を提供することにある。更にはカレンダー処理における汚れの発生が少ないラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、以下のようなラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙を発明するに至った。
【0010】
すなわち、原紙の少なくとも片面に白色顔料とバインダーを主体とした塗工層を一層以上設けたラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙であり、該塗工層における最表塗工層が白色顔料100質量部に対して金属石鹸を0.1〜0.5質量部配合し、金属石鹸が飽和高級脂肪酸カルシウムと不飽和高級脂肪酸カルシウムの混合物であり、その割合が質量比で(飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)=70:30〜30:70であり、該塗工紙のベック平滑度が800〜4000秒であることを特徴とするラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙である。
【0011】
また、最表塗工層の白色顔料として体積平均径0.2〜0.5μmのカオリンを白色顔料100質量部に対し20〜80質量部配合するのが望ましい。
【0012】
また、最表塗工層の白色顔料として体積平均径0.9〜1.2μm、中空率45〜60%、ガラス転移点90〜110℃のスチレン・アクリル系中空顔料を白色顔料100質量部に対し8〜30質量部配合すると望ましい。
【0013】
また、塗工紙のベック平滑度を調整する際のカレンダー処理温度が30〜80℃であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙はラミネート加工において優れた接着性を示す。また、製造工程におけるカレンダー処理において汚れの発生が少ない優れた作業性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙について詳細に説明する。
【0016】
<原紙>
本発明に用いられるラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙の原紙としては、木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフ等の植物繊維をシート状にしたものが使用できる。
【0017】
また、これらの繊維には、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、有機顔料等の各種填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、紙力増強剤等の各種配合剤を好適に含有することができる。
【0018】
繊維をシート状にして原紙を得る方法としては、一般的な湿式の抄紙方法が用いられる。その坪量は特に限定されるものではないが、30〜450g/mが望ましい。
【0019】
本発明に係る原紙は、必要とするサイズ性、表面強度、透気性を得るために表面サイズプレスを施すことができる。表面サイズプレス液の成分としては、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、アクリル、スチレン・アクリル、アクリル・酢酸ビニル等のアクリル系表面サイズ剤、スチレン・マレイン酸、スチレン・オレフィン、オレフィン・マレイン酸、ジイソブチレン・マレイン酸等のオレフィン系表面サイズ剤等が挙げられ、その他に後述する塗工層に用いられる全ての材料が適宜使用できる。
【0020】
<塗工層>
本発明において、原紙の少なくとも片面に一層以上設ける塗工層は白色顔料とバインダーを主体とする。塗工量は特に限定されるものではないが、単層の場合は片面あたり合計で5〜40g/mが好ましい。二層以上設ける場合は、最表塗工層の塗工量は5〜40g/mであり、その他の塗工層との合計で上限は50g/mであるのが好ましい。
【0021】
白色顔料としては、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、合成シリカ、タルク、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、有機顔料、またはこれらをカチオン変性したもの、あるいはこれら二種以上の複合体が挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用することができる。
【0022】
バインダーとしては、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル等の各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン等のホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、エピクロルヒドリン等の水溶性合成物が挙げられる。更には、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の天然多糖類及びそのオリゴマー、更にはその変性体が挙げられる。また、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲン等の天然タンパク質及びその変性体、ポリ乳酸、ペプチド等の合成高分子やオリゴマーが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用することができる。また、バインダーはカチオン変性を施して使用することができる。白色顔料100質量部に対してバインダーは5〜30質量部であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る塗工層には、必要に応じて、増粘剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、耐水化剤、着色剤等の通常使用されている各種助剤を含有することができる。
【0024】
本発明において、塗工する方法は特に限定されるものではなく、メタリングサイズプレス、ゲートロール、シムサイザー等の各種フィルムトランスファー方式やロッド、ブレードコーター、カーテン(ダイレクトファウンテン)、エアナイフ、スプレーコーター、キャスト等の各方法を適宜使用する。
【0025】
<最表塗工層>
本発明に係る最表塗工層は、白色顔料100質量部に対して金属石鹸を0.1〜0.5質量部配合し、金属石鹸が飽和高級脂肪酸カルシウムと不飽和高級脂肪酸カルシウムの混合物であり、その割合が質量比で(飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)=70:30〜30:70であり、該塗工紙のベック平滑度が800〜4000秒である。
【0026】
金属石鹸の白色顔料100質量部に対する配合量が0.1質量部未満であると、印刷塗工紙の製造工程にあるカレンダー処理において汚れが発生する頻度が多くなる。また、0.5質量部を超えると、ラミネーター加工において樹脂フィルムと印刷塗工紙の接着強度が劣ってしまう。
【0027】
本発明に係る金属石鹸である飽和高級脂肪酸カルシウムは、炭素数14以上の飽和高級脂肪酸のカルシウム塩であり、飽和高級脂肪酸部分としてはミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられるが、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸が望ましい。これら飽和高級脂肪酸カルシウムは、単一種で用いても良いし、複数種を併用しても良い。また、不飽和高級脂肪酸カルシウムは炭素数16以上の不飽和高級脂肪酸のカルシウム塩であり、不飽和高級脂肪酸部分としてはパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸が挙げられるが、オレイン酸及びリノール酸が望ましい。これら不飽和高級脂肪酸カルシウムは、単一種で用いても良いし、複数種を併用しても良い。
【0028】
混合の割合が質量比で(飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)=70:30〜30:70の範囲にあることで、ラミネーター加工における樹脂フィルムと印刷塗工紙の接着強度が優れ、かつカレンダー処理における汚れの発生も少なくなる。飽和高級脂肪酸カルシウムの割合がこの範囲から外れて多い場合は、カレンダー処理での汚れ発生が増加し、不飽和高級脂肪酸カルシウムの割合がこの範囲から外れて多い場合は、ラミネーター加工での接着強度が十分に発揮できなくなり望ましくない。
【0029】
本発明において、印刷塗工紙のベック平滑度は800〜4000秒である。高いベック平滑度は、樹脂フィルムと印刷塗工紙の密着性を高めて優れた接着強度を発揮する。800秒未満ではラミネーター加工での優れた接着強度を発揮できなくなり望ましくない。4000秒を超えると印刷塗工紙の密度増加によりオフセット印刷におけるオフセットインク乾燥性低下の恐れがあるため、望ましくない。
【0030】
また本発明において、最表層の白色顔料として体積平均径0.2〜0.5μmのカオリンを白色顔料として20〜80質量部配合することは更に望ましい。微細で板状のカオリンはカレンダー処理によって平坦化され、樹脂フィルムと印刷塗工紙の密着性を更に高める。体積平均径0.2μm未満のカオリンは微細すぎることでカレンダー処理における汚れ発生の原因になる場合があり、体積平均径0.5μmを超えると樹脂フィルムと印刷塗工紙の密着性を高める効果が減少する。配合量が20質量部未満ではこの効果が薄れ、80質量部を超えるとカレンダー処理における汚れ発生が増える場合がある。
【0031】
また本発明において、最表層の白色顔料として体積平均径0.9〜1.2μm、中空率45〜60%、ガラス転移点90〜110℃のスチレン・アクリル系中空顔料を8〜30質量部配合すると更に望ましい。このような性状を有するスチレン・アクリル系中空顔料はカレンダー処理によって変形して平坦な面を形成し、樹脂フィルムと塗工紙の密着性を更に高める。中空顔料の体積平均径が0.9μm未満であったり、中空率が45%未満であったり、ガラス転移点が110℃を超えたりすると、カレンダー処理によって変形する能力が低下し平坦な面を形成しにくくなる。また中空顔料の体積平均径が1.2μmを超えたり、中空率が60%を超えたり、ガラス転移点が90℃未満であったりするとカレンダー処理における粒子の変形が進みすぎてしまい、形状が破壊されてしまう恐れがある。配合量が8質量部未満ではラミネーター加工での接着強度向上の効果が薄れ、30質量部を超えるとカレンダー処理における汚れ発生が増える場合がある。
【0032】
本発明において、体積平均径とはレーザー回折・散乱法の粒度分布測定装置を用いて測定したものである。代表的には日機装社(Microtrac.Inc)製の装置が挙げられ、好適なものとしてMT3000IIシリーズがある。
【0033】
<仕上げ>
本発明におけるラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙は必要とする平滑度、密度、透気度、インキ受理性、光沢度を得るためにカレンダー処理を施す。装置としては弾性ロールと硬質ロールを組み合わせたものであり、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等と呼ばれている。また、ベルトとロールの組み合わせからなる装置も使用でき、シューカレンダー、メタルベルトカレンダー等と呼ばれている。ロール表面の微視的な形状は平滑性を重視するため、鏡面が望ましく、艶消しのものやエンボス用に凹凸加工したものは適切でない。
【0034】
本発明においてカレンダー処理の温度は30〜80℃であることが望ましい。この温度範囲で処理することで、ラミネーター加工での樹脂フィルムと印刷塗工紙の接着強度を非常に優れたレベルに保ちながら、カレンダー処理時に発生する汚れの発生を大きく減らすことが可能となる。30℃未満では十分なベック平滑を得ることが難しく、80℃を超えるとカレンダー汚れの発生が増加する恐れがある。
【0035】
最終的に得られたラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙は用途に合わせて、大小のシート状またはロール状に加工されて製品となる。保存の際は、吸湿を避けるために防湿の包装を施すのが好ましい。製品の坪量は特に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」は、特に明示しない限り、質量部を示す。
【0037】
(実施例1)〜(実施例8)及び(比較例1)〜(比較例7)
下記の内容に従って、ラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙を作製した。
【0038】
<パルプスラリーの調製>
LBKP(濾水度420mlcsf) 80部
NBKP(濾水度450mlcsf) 20部
軽質炭酸カルシウム填料(原紙中灰分で表示) 9部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
市販アルキルケテンダイマー系内添サイズ剤 0.05部
市販硫酸バンド 1.0部
<表面サイズプレス液の調製>
酸化澱粉 100部
<原紙の作製>
上記パルプ、内添薬品を上記の配合でパルプスラリーを調製し、長網抄紙機で100.0g/mの坪量で原紙を抄造した。原紙は表面サイズプレス液を固形分で両面2.0g/m塗布した。
【0039】
<塗工液の調製>
顔料 配合部数は表1、2に記載
市販スチレン・ブタジエン系ラテックスバインダー 配合部数は表1、2に記載
市販ポリビニルアルコール(完全ケン化、重合度400) 配合部数は表1、2に記載
市販りん酸エステル化澱粉 配合部数は表1、2に記載
金属石鹸(A、B、C、D) 配合部数は表1、2に記載
市販印刷適性向上剤 0.3部
市販合成保水剤(アルカリ増粘タイプ) 0.1部
表1、2中に略称で示した顔料は、市販微粒カオリン(体積平均径0.4μm)、市販1級カオリン(体積平均径2.3μm)、市販デラミネーティッドカオリン(体積平均径3.3μm)、市販重質炭酸カルシウム(体積平均径1.2μm)、市販スチレン・アクリル系中空顔料(体積平均径1.2μm、ガラス転移点100℃、中空率50%)である。
<金属石鹸>
金属石鹸A (飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)
=100:0
金属石鹸B (飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)
=80:20
金属石鹸C (飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)
=50:50
金属石鹸D (飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)
=20:80
金属石鹸E (飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)
=70:30
金属石鹸F (飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)
=30:70
ここで飽和高級脂肪酸カルシウムはステアリン酸カルシウム、不飽和高級脂肪酸カルシウムはオレイン酸カルシウムである。
上記、固形分質量部で配合し、水に分散・撹拌し、水酸化ナトリウムにてpH9.6とし、水によって塗工液の固形分濃度を調整した。
【0040】
これらの塗工液をブレード塗工法にて両面を塗工、乾燥した後、平滑化のためのカレンダー処理を行った。塗工量は固形分として片面当たり15g/mとした。カレンダーは弾性ロールと金属ロールからなる装置であり、ロール温度は表1、2に示した。
【0041】
上記実施例及び比較例により得られたラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙について、下記の測定方法により測定し、その評価結果を表1、2に掲げた。
【0042】
<ベック平滑度>
JIS P 8119(1998)紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法により、印刷塗工紙サンプルのベック平滑度を測定した。
【0043】
<ラミネーター接着強度>
印刷塗工紙サンプルを市販ラミネーター用樹脂フィルムで挟み、アイリスオーヤマ製事務用ラミネーターを用いてラミネーター加工サンプルを作製した。このサンプルを用いて剥離試験機によって剥離強度を測定した。品質判定基準は以下の通りである。ただし、各段階の中間的な評価、例えば5と4の間については4.5と記した。
5:剥離強度が非常に強い。
4:剥離強度が強い。
3:剥離強度が実用レベル。
2:剥離強度が弱い。
1:剥離強度が非常に弱い。
【0044】
<カレンダー汚れ>
カレンダー処理した後、カレンダーレベルの汚れの程度を目視で判定した。品質判定基準は以下の通りである。
5:カレンダーロールの汚れがほとんどない。
4:カレンダーロールの汚れが若干ある。
3:カレンダーロールの汚れがあるが問題ないレベル。
2:カレンダーロールの汚れが目立つ。
1:カレンダーロールの汚れが非常に目立つ。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
<評価結果>
実施例1〜3、6、7は優れたラミネーター接着強度を発現しカレンダー汚れも少なく良好な結果を得た。実施例4は微粒カオリンを多く配合することで、実施例1〜3と比較して更に優れたラミネーター接着強度を示した。実施例5はスチレン・アクリル系中空顔料を配合することで、実施例1〜3と比較して更に優れたラミネーター接着強度を示した。実施例8はカレンダーロール温度がやや高めであったため、実施例1と比較するとカレンダー汚れの発生がやや増えた。比較例1〜3はベック平滑度や金属石鹸の配合部数が適切でないため、ラミネーター接着強度に劣った。比較例4は金属石鹸を配合しなかったため、カレンダー汚れの発生が増えた。比較例5〜7は配合した金属石鹸の飽和高級脂肪酸カルシウムと不飽和高級脂肪酸カルシウムの割合が適切でないため、優れたラミネーター強度とカレンダー汚れの抑制が高いレベルで両立できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明におけるラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙は、オフセット印刷塗工紙としての使用に留まらず、適性が伴えばグラビア、インクジェット、電子写真等の他の印刷方式に使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも片面に白色顔料とバインダーを主体とした塗工層を一層以上設けたラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙であり、該塗工層における最表塗工層が白色顔料100質量部に対して金属石鹸を0.1〜0.5質量部配合し、金属石鹸が飽和高級脂肪酸カルシウムと不飽和高級脂肪酸カルシウムの混合物であり、その割合が質量比で(飽和高級脂肪酸カルシウム):(不飽和高級脂肪酸カルシウム)=70:30〜30:70であり、該塗工紙のベック平滑度が800〜4000秒であることを特徴とするラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙。
【請求項2】
最表塗工層の白色顔料として体積平均径0.2〜0.5μmのカオリンを白色顔料100質量部に対し20〜80質量部配合する請求項1記載のラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙。
【請求項3】
最表塗工層の白色顔料として体積平均径0.9〜1.2μm、中空率45〜60%、ガラス転移点90〜110℃のスチレン・アクリル系中空顔料を白色顔料100質量部に対し8〜30質量部配合する請求項1記載のラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙。
【請求項4】
塗工紙のベック平滑度を調整する際のカレンダー処理温度が30〜80℃である請求項1記載のラミネーター加工用オフセット印刷塗工紙。

【公開番号】特開2013−104149(P2013−104149A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248959(P2011−248959)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】