説明

ラミネート用印刷インキ組成物

【課題】
優れた接着性及びボイル等の加工適性を有し、アルコール可溶性であるラミネート用印刷インキ組成物を提供すること。
【解決手段】
着色剤と、溶剤と、固形基準で、ポリウレタン樹脂80〜98重量%、セルロースアセテートアルキネート樹脂0.5〜5重量%、及びポリビニルブチラール樹脂1.0〜15重量%からなるバインダーとを含み、上記ポリウレタン樹脂は、(A)Mnが1,000〜5,000のポリエーテルジオール化合物、又は該化合物及びMnが1,000〜5,000のポリエステルジオールの混合物と(B)ジイソシアネート化合物との反応生成物を、(C)分子量が50〜300であり、かつ分子内に水酸基を1つ有するヒドロキシルジアルキルアミンと反応させ、さらに(D)鎖延長剤と反応させて得られ、上記成分(C)のOH基が上記(B)のNCO基に対し0.05〜0.35のモル比率であるインキ組成物を調製し使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール可溶性であり、ラミネートフィルムの印刷層をフレキソ印刷によって形成することができるラミネート用印刷インキ組成物に関する。本発明は、より詳細には、プラスチックフィルムに対して優れた印刷適性を有し、耐ボイル性及び耐レトルト性が要求されるラミネートフィルムの用途においても印刷インキとして好適に使用できる、ラミネート用印刷インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、菓子、生活雑貨、ペットフード、あるいは工業製品の包装では、意匠性、経済性、内容物保護性、輸送性などの機能から、各種プラスチックフィルムを使用した包装材料が広く使用されている。また、多くの包装材料には、消費者へアピールする目的で、意匠性及びメッセージ性を付与するためのグラビア印刷やフレキソ印刷が施されている。
【0003】
上記包装材料に適用される印刷の代表的な構成としては、包装材料表面に印刷層を設ける表刷り印刷、あるいは印刷層にさらに必要に応じて接着剤やアンカー剤を塗布し、フィルムのラミネート加工を行う裏刷り印刷が知られている。
【0004】
上記裏刷り印刷では、フィルム基材に印刷層を形成した後、一般に、接着剤を用いるドライラミネート加工や、アンカーコート剤を用いるエクストルージョンラミネート加工等のラミネート加工が実施される。上記ラミネート加工では、機械強度や気密性に優れたポリエステル、ナイロン、アルミニウム箔等の各種フィルムが選ばれる。これらフィルムは、多くの場合、ヒートシールを目的として、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のフィルムと積層化される。また、包装材料としての用途を考慮すると、ラミネートフィルムは、優れたヒートシール加工性及びラミネート強度を有することが望ましい。さらに、包装される内容物が調理用食品である場合、ラミネートフィルムには、ボイル及びレトルト等の加工適性が要求される。このような要求に向けて、各種フィルムに対して優れた接着性を有し、かつ印刷インキにイソシアネート化合物を配合することなく、ボイル及びレトルト等の加工適性に対応することができる印刷インキの開発が進められている。また、上記印刷インキについては、イソシアネート化合物を配合することなく、一液化によって、硬化剤の配合に伴う工数やインキ交換時のロスを低減することについても検討されている。
【0005】
特許文献1(特開2004−175867号公報)では、アルコール可溶性のフレキソインキ用樹脂として、水酸基含有脂肪族ジアミンを使用することによって、水酸基を有するアルコール可溶性のフレキソインキ用ポリウレタン樹脂が提案されている。
【0006】
特許文献2(国際公開2005/005507号パンフレット)では、シュリンクスリーブラベル用印刷インキとして特定のウレタン樹脂と硝化綿樹脂の混合物が提案されている。特許文献3(国際公開2002/38643号パンフレット)では、ラミネート用インキとして特定のウレタン樹脂、並びに硝化綿、ブチラール樹脂からなる印刷インキ組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−175867号公報
【特許文献2】国際公開2005/005507号
【特許文献3】国際公開2002/38643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、包装する内容物が香辛料、芳香剤等の高い移行性を有する場合や、業務用等として重量の重い内容物を包装する場合、ラミネートフィルムに適用される印刷は、そのインキ皮膜によって、化学的耐性や十分な物理的強度を確保する必要がある。そのため、一液型のラミネート用印刷インキであっても、実際のところ、上記印刷インキは、イソシアネート化合物を配合した状態で使用されている。従って、ラミネート用印刷インキの分野では、各種フィルムに対する優れた接着性を有し、一液型の処方であってもボイル及びレトルト等の加工適性を有するインキ組成物が望まれている。また、例えば、芳香剤や香辛料等の特殊な内容物を包装する用途にも適用可能とするために、イソシアネート系硬化剤を配合した後の粘度変化が少なく、貯蔵安定性が良好であり、再利用可能であるインキ組成物が望まれている。
【0009】
さらに、アルコール可溶性であり、高速印刷が可能なフレキソ印刷又はグラビア印刷を効率良く実施することができるインキ組成物が望まれている。特に、印刷層を形成するためにフレキソ印刷を適用する場合、インキ組成物は、曳糸性に優れること、すなわち、曳糸が少ない又はないことが望ましい。インキ組成物の曳糸性が劣る場合、インキ組成物が印刷版からフィルム等の基材に転移した後に、残ったインキによって印刷版のエッジ部に糸状の乾燥物が発生し、印刷効果が低下し、連続印刷を行うことが困難となる傾向がある。
【0010】
したがって、上述の状況に鑑み、本発明は、各種フィルムに対して優れた接着性を有し、かつボイル及びレトルト等の加工適性を有し、さらにイソシアネート系硬化剤配合後のインキの貯蔵安定性に優れるラミネート用印刷インキ組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、アルコール可溶性であり、曳糸性に優れ、高速印刷可能なフレキソ印刷又はグラビア印刷の用途に好適なラミネート用印刷インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく、インキ成分について鋭意検討を重ねた結果、バインダーとして、特定のポリウレタン樹脂、セルロースアセテートアルキネート樹脂及びポリビニルブチラール樹脂の3種の樹脂を組み合わせて使用することによって、ラミネートフィルム用の印刷で所望される各種特性に優れた印刷インキ組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。一般に、ウレタン樹脂を使用した印刷インキをラミネートフィルムの用途で使用する場合、その実用性能の観点からすると、フィルムに対する接着性と耐ブロッキング性とを高度に両立させることが重要である。本発明によれば、バインダーとして特定のウレタン樹脂を使用することによって、所望とする各種特性に加えて、優れた耐ブロック性を有するインキ組成物を提供することが可能である。すなわち、本発明は、以下に記載の事項に関する。
【0012】
本発明の第1の側面は、ラミネート加工されるフィルム基材に印刷層を形成するためのラミネート用印刷インキ組成物に関する。本発明によるラミネート用印刷インキ組成物は、着色剤と、溶剤と、固形分の全重量を基準として、ポリウレタン樹脂80〜98重量%、セルロースアセテートアルキネート樹脂0.5〜5重量%、及びポリビニルブチラール樹脂1.0〜15重量%から構成されるバインダーとを含み、上記ポリウレタン樹脂が、以下に示す成分(A)と成分(B)との反応によって得られる反応生成物を成分(C)と反応させてイソシアネート基含有プレポリマーを生成し、さらに上記プレポリマーを成分(D)と反応させて得られるポリウレタン樹脂であり、上記成分(C)における水酸基の上記(B)におけるイソシアネート基に対するモル比率が0.05〜0.35の範囲であることを特徴とする。
(A)数平均分子量1,000〜5,000のポリエーテルジオール化合物、又は上記ポリエーテルジオール化合物と数平均分子量1,000〜5,000ポリエステルジオール化合物との混合物。
(B)ジイソシアネート化合物。
(C)分子量が50〜300であり、かつ分子内に水酸基を1つ有するヒドロキシルジアルキルアミン化合物。
(D)鎖延長剤。
【0013】
ここで、上記ラミネート用印刷インキ組成物において、上記セルロースアセテートアルキネート樹脂は、セルロースアセテートプロピオネート樹脂であることが好ましい。また、上記ヒドロキシルジアルキルアミン化合物は、ジエチルアミノエタノール及びジメチルアミノエタノールの少なくとも一方であることが好ましい。また、上記ポリエーテルジオール化合物は、ポリテトラメチレングリコールであることが好ましい。
【0014】
また、上記ラミネート用印刷インキ組成物において、上記ポリエーテルジオール化合物と上記ポリエステルジオール化合物との重量比率は、100/0〜20/80の範囲であることが好ましい。
【0015】
また、上記ラミネート用印刷インキ組成物において、上記ポリウレタン樹脂のアミン価は、0.5〜10の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明の第2の側面は、上記ラミネート用印刷インキ組成物を用いてフレキソ印刷方式でフィルム基材上に印刷層を形成することによって得られるフレキソ印刷物である。
【0017】
本発明の第3の側面は、上記フレキソ印刷物の上に、上記印刷層を介してプラスチックフィルムを積層して得られるラミネートフィルムに関する。
【0018】
本発明の第4の側面は、上記ラミネートフィルムを含む食品用包装材料に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各種フィルムに対して優れた接着性及び耐ブロッキング性を有し、ボイル及びレトルト等の加工適性にも優れる、ラミネートフィルムにおける印刷層形成用インキとして好適なインキ組成物を提供することができる。本発明によるインキ組成物は、アルコール系溶剤に対して良好な溶解性を有し、曳糸性にも優れるため、樹脂版を使用するフレキソ印刷、その他グラビア印刷にも適用可能である。また、本発明によるインキ組成物は、二液化剤としてインキ組成物にイソシアネート系硬化剤を配合した後も、インキ粘度上昇が少なく、貯蔵粘度が安定している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
(印刷インキ組成物)
本発明によるラミネート用印刷インキ組成物は、着色剤と、溶剤と、特定の3種の樹脂成分から構成されるバインダーとを含有する。本発明によるインキ組成物を調製するために使用する各成分の詳細は以下のとおりである。
【0021】
(バインダー成分)
本発明で使用するバインダーは、固形分の全重量を基準として、(i)ポリウレタン樹脂80〜98重量%、(ii)セルロースアセテートアルキネート樹脂0.5〜5重量%、及び(iii)ポリビニルブチラール樹脂1.0〜15重量%から構成される。
【0022】
(i)ウレタン樹脂:
上記ポリウレタン樹脂は、以下に示す成分(A)と成分(B)との反応によって得られる生成物を、引き続き成分(C)と反応させてイソシアネート基含有プレポリマーを生成し、さらに上記プレポリマーを成分(D)と反応させて得られるポリウレタン樹脂であり、上記成分(C)における水酸基の上記(B)におけるイソシアネート基に対するモル比率が0.05〜0.35の範囲であることを特徴とする。
(A)数平均分子量1,000〜5,000のポリエーテルジオール化合物、又は上記ポリエーテルジオール化合物と数平均分子量1,000〜5,000ポリエステルジオール化合物との混合物。
(B)ジイソシアネート化合物。
(C)分子量が50〜300であり、かつ分子内に水酸基を1つ有するヒドロキシルジアルキルアミン化合物。
(D)鎖延長剤。
【0023】
本発明では、バインダー中の固形成分の全重量を基準として、上述の特定のウレタン樹脂を80%以上にした場合、印刷面のボイル耐性及びレトルト耐性、ポリエステルフィルムへの接着性が向上しやすい。一方、上記割合を98%以下にした場合、印刷面の耐ブロッキング性が向上しやすい。
【0024】
ポリウレタン樹脂を製造する一般的な方法として、ポリオール成分とイソシアネート成分とをイソシアネート成分過剰で反応させて第1のイソシアネート基含有プレポリマーを調製する第1の工程、さらに上記第1のプレポリマーと鎖延長剤及び必要に応じて反応停止剤とを反応させる第2の工程から構成される2段階法が知られている。これに対し、本発明では、先に説明したように、プレポリマーの鎖延長反応を行う上記第2の工程に先立ち、上記第1のイソシアネート含有プレポリマーを、分子量が50〜300であり、かつ分子内に水酸基を1つ有するヒドロキシルジアルキルアミン化合物とさらに反応させる工程を経て、第2のイソシアネート基含有プレポリマーを調製することを特徴とする。本発明では、このような第2のプレポリマーと、鎖延長剤及び必要に応じて反応停止剤とを反応させて得られる特定のウレタン樹脂をバインダーの主成分として使用することによって、流動性、接着性及び耐ブロッキング性等の印刷適性に優れたインキ組成物を提供することができる。
【0025】
理論によって拘束するものではないが、上記第2のプレポリマーは、イソシアネート基の一部が上記成分(C)との反応によってキャップされた状態となるため、鎖延長反応時の反応箇所が制限されることになる。また、上記成分(C)との反応によって、上記第2のポリマーには水酸基が導入されることになる。そのため、本発明では、鎖延長反応に先立ち、上記成分(C)を使用する特定の反応工程を経由することによって、さらには上記反応工程時に特定量の上記成分(C)を使用することによって、バインダー成分として好適なウレタン樹脂が得られると推測される。
【0026】
本発明では、上記特定の反応工程において、上記成分(C)における水酸基のモル数(M1)の上記成分(B)におけるイソシアネート基のモル数(M2)に対するモル比率、すなわちM1/M2が、0.05〜0.35の範囲となる量で上記成分(C)を使用して得られるウレタン樹脂を使用する。上記成分(C)の使用量を上記M1/M2で0.05以上にした場合、ウレタン樹脂と他のバインダー成分との相溶性が向上しやすい。また、インキ組成物に硬化剤を配合した際の粘度安定性の低下を抑制することができる。一方、上記成分(C)の使用量を上記M1/M2で0.35以下にした場合、内側にインキ組成物の印刷面を有するラミネート包装材料のボイル性、及び耐ブロッキング性が向上しやすい。以下、ポリウレタン樹脂の調製するために使用する上記成分(A)〜(D)について説明する。
【0027】
成分(A):数平均分子量1,000〜5,000のポリエーテルジオール化合物、又は上記ポリエーテルジオール化合物と数平均分子量1,000〜5,000のポリエステルジオール化合物との混合物
【0028】
本発明で使用する上記ポリエーテルジオール化合物の具体例として、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが挙げられる。これらグリコール類の共重合ポリエーテルジオールを使用してもよい。一例として、エチレングリコールとプロピレングリコールとから誘導される化合物が挙げられる。本発明では、先に例示した上記ポリエーテルジオール化合物の中でも、接着性、ボイル及びレトルト加工適性の観点から、ポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。本発明で使用する上記ポリエーテルジオール化合物の数平均分子量(Mn)は、1,000〜5,000の範囲であり、より好ましくは2,000〜5,000の範囲である。
【0029】
上記ポリエーテルジオールは、後述するポリエステルジオールと混合して使用してもよい。上記ポリエーテルジオールと、上記ポリエステルジオールとの混合比率は、それらの合計重量を基準として、100/0〜20/80の範囲である。上記混合比率は、より好ましくは100/0〜50/50の範囲である。上記ポリエステルジオールの混合比率を80以下にした場合、得られるポリウレタン樹脂のアルコール溶剤への溶解性が良好となり、印刷インキの流動性や光沢が向上しやすい。
【0030】
上記ポリエステルジオールの具体例として、ジカルボン酸とジオールとの縮合反応によって得られるポリエステルジオールが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸及びフマル酸等の脂肪族系ジカルボン酸又はその無水物、並びにフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族系カルボン酸又はその無水物が挙げられる。また、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブチレングリコール、イソブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2−プロピル‐1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−メチル−2,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブチンジオール、1,4−ブテンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール;ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を有するジオールが挙げられる。また、ε−カプロラクトン及びβ−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトン化合物と、ジオールモノマー、ポリエステルポリオール及びポリエーテル等のジオール化合物とを150〜250℃の温度条件下で反応させることによって、数平均分子量が1,000以上のポリエステルジオールを得ることもできる。本発明で使用する上記ポリエステルジオール化合物の数平均分子量(Mn)は、1,000〜5,000の範囲であり、より好ましくは2,000〜5,000の範囲である。
【0031】
成分(B):ジイソシアネート化合物
本発明で使用するジイソシアネート化合物は、芳香族、脂肪族または脂環族の公知の各種ジイソシアネート類であってよい。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4´−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。その他、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートを使用してもよい。本発明では、溶解性及び柔軟性の観点から、イソホロンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0032】
成分(C):分子量が50〜300であり、かつ分子内に水酸基を1つ有するヒドロキシルジアルキルアミン化合物。
本発明で使用する上記ヒドロキシルジアルキルアミン化合物は、例えば、ジメチルアミノメタノール、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノプロパノール、ジメチルアミノブタノール、ジエチルアミノメタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエチルアミノプロパノール、ジエチルアミノブタノール、ジプロピルアミノメタノール、ジプロピルアミノエタノール、ジプロピルアミノプロパノール、ジプロピルアミノブタノール、ジブチルアミノエタノール、ジブチルアミノプロパノール、ジブチルアミノブタノール、1−(2−ヒドロキシメチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−メチル−2−ピペリジンメタノール、2−ヒドロキシエチルモルホリンであってよい。本発明では、上記ヒドロキシルジアルキルアミン化合物として先に例示した化合物を、単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
成分(D):鎖延長剤
本発明で使用する鎖延長剤は、イソシアネート基と反応可能な官能基を分子内に2以上有する当技術分野で周知の化合物であってよい。例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミン等のジアミン化合物を使用することができる。また、アミノエチルエタノールアミン等の水酸基を有するジアミン化合物を使用してもよい。その他、ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等を使用してもよい。
【0034】
ウレタン樹脂の調製:
本発明で使用するウレタン樹脂は、先に説明した成分(A)〜(D)を使用し、成分(A)と成分(B)との反応によって生成物を生成する工程、次いで得られた生成物を成分(C)と反応させてイソシアネート基含有プレポリマーを生成する工程、さらに上記プレポリマーを成分(D)の鎖延長剤を用いて鎖延長反応させる工程を順次実施することによって得られる。各工程における具体的な合成方法は、周知の技術を適用することができる。但し、ポリウレタン樹脂に所望の特性を発現させるためには、上記成分(C)の使用量を、ヒドロキシルジアルキルアミン化合物における水酸基の上記(B)におけるイソシアネート基に対するモル比率が0.05〜0.35の範囲とする必要がある。
【0035】
本発明の一実施形態において、上記イソシアネート基含有プレポリマーの調製は、以下のようにして実施することができる:(1)最初に、フラスコ中で、上記成分(A)のポリオール化合物と上記成分(B)の有機ジイソシアネート化合物とを、60〜120℃の範囲の温度条件下で反応させ、所定のイソシアネート含有量(NCO%)を有する生成物を得る。なお、NCO%は、JIS−K1556に基づく方法によって測定することができる。(2)引き続き、フラスコ内に上記成分(C)の分子量が50〜300であり、かつ分子内に水酸基を1つ有するヒドロキシルジアルキルアミン化合物を加えて、上記生成物と反応させ、所定のイソシアネート含有量を有するポリウレタンプレポリマーが得られるまで反応を続ける。
【0036】
本発明では、ウレタン樹脂を調製する一連の反応を実施する際に、必要に応じて、溶剤及び触媒を使用してもよい。本発明で使用する触媒は、ポリウレタン樹脂のウレタン化反応で通常使用される周知の化合物であってよい。具体例として、オクチル酸第一錫、ジブチル錫アセテート、テトラブトキシチタネートが挙げられる。また、本発明においてウレタン樹脂の調製時に使用する溶剤は、印刷インキの溶剤として通常使用される公知の有機溶剤であってよい。例えば、フレキソ印刷用インキでは、印刷時に使用される樹脂版の耐久性の観点から、希釈溶剤として、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、及びエチレングリコール、プロピレングリコールの水酸基をエーテル化したエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール誘導体が使用される。本発明の一実施形態では、反応を均一に進行させる観点から、このような溶剤をウレタン樹脂の調製時に使用することが好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態において、上記鎖延長反応は、成分(D)として使用するジアミン化合物等の鎖延長剤、溶剤及び必要に応じて反応停止剤を含む混合物に、先に調製したポリウレタンプレポリマーを30〜120℃の範囲の温度条件下で滴下することによって実施することができる。残存イソシアネート基が消失するまで上記鎖延長反応を続行することによって、所望のポリウレタン樹脂が得られる。上記鎖延長反応時に使用する溶剤は、先に説明した通りである。また、反応停止剤としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のジアルキルアミンを使用することができる。鎖延長剤に加えて、反応停止剤を使用することによって、分子量の調整ができ、また得られるウレタン樹脂の末端化学構造を制御することができる。
【0038】
本発明で使用するポリウレタン樹脂は、上述の一連の工程を経て調製される樹脂であるため、一般的な2段階法で得られるポリウレタン樹脂と比較して、分子量及びアミン基等の官能価数を容易に調整することができる。特に限定するものではないが、本発明のポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、30,000〜80,000の範囲、より好ましくは40,000〜70,000の範囲である。また、本発明で使用するポリウレタン樹脂のアミン価は、0.5〜10の範囲、より好ましくは3〜8の範囲である。ポリウレタン樹脂のアミン価が0.5以上の場合、例えば、コロナ処理を施したOPPフィルムヘの接着性を容易に向上させることができる。一方、アミン価が10以下の場合、耐レトルト性を容易に向上させることができる。なお、本明細書で記載する「アミン価」とは、塩酸溶液を使用する周知の滴定方法によって得た値である。
【0039】
本発明による印刷インキ組成物は、バインダー成分として、上述の(i)ポリウレタン樹脂の他に、後述する(ii)セルロースアセテートアルキネート樹脂と、(iii)ポリビニルブチラール樹脂とを含む。
【0040】
(ii)セルロースアセテートアルキネート樹脂:
上記(ii)セルロースアセテートアルキネート樹脂の配合量は、上記バインダーの固形分の全重量を基準として、0.5〜5重量%とする。上記成分(ii)の配合量を0.5重量%以上にした場合、得られる印刷インキ組成物の耐ブロッキング性を容易に向上させることができる。一方、上記成分(ii)の配合量を5重量%以下にした場合、印刷インキ組成物の貯蔵安定性及び接着性を容易に向上させることができる。印刷インキ組成物の耐ブロッキング性を向上させる観点では、上記成分(ii)に該当する多くの化合物が効果的である。しかし、上記成分(i)として使用するポリウレタン樹脂との相溶性を考慮すると、上記成分(ii)として、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)の少なくとも一方を使用することが好ましく、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を使用することがより好ましい。
【0041】
本発明のバインダー中に使用するセルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートは、セルロースと有機酸又は酸無水物との反応によって得られる。より具体的には、セルロースを有機酸又は酸無水物及び触媒と混合し、トリエステルが形成されるまで反応させる。セルロースが完全にアシル化された後、所望の水酸基の水準になるまで加水分解を行う。
【0042】
セルロースアセテートプロピオネートは、酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後、加水分解することによって得られる。一般的には、アセチル化が0.6〜2.5重量%、プロピオネート化が42〜46重量%、水酸基が1.8〜5%の樹脂が市販されている。本発明の一実施形態では、ポリウレタン樹脂との相溶性の観点から、プロピオニル基含有量が40〜50重量%(中心値45%)、アセチル基含有量が0.5〜3重量%(中心値2.5%)、水酸基含有量が2〜6重量%(中心値2.5%)、粘度が0.05〜0.2Pa・s(ASTM Method D1343)のセルロースアセテートプロピオネート樹脂を使用することが好ましい。
【0043】
セルロースアセテートブチレートは、酢酸及び酪酸でトリエステル化した後、加水分解することによって得られる。一般的には、アセチル化が2〜30重量%、ブチリル化が17〜53重量%、水酸基が1〜5%の樹脂が市販されている。ニトロセルロースはセルロースの水酸基を一部または大部分を硝酸でエステル化することにより得られる。ニトロセルロースはいろいろな重合度の樹脂があり、一般的には、平均重合度35〜480の製品が市販されている。
【0044】
(iii)ポリビニルブチラール樹脂:
上記(iii)ポリビニルブチラール樹脂の配合量は、上記バインダーの固形分の全重量を基準として、1.0〜15重量%とする。上記成分(iii)の配合量を1.0重量%以上にした場合、得られる印刷インキの耐ブロッキング性やポリエステルフィルムへの接着性を容易に向上させることができる。一方、上記成分(iii)の配合量を15.0重量%以下にした場合、印刷インキ組成物の貯蔵安定性を容易に向上させることができる。
【0045】
上記成分(iii)は、耐ブロッキング性の向上効果は緩慢であるが、バインダーとして使用する他の樹脂成分との相溶性は良好である。そのため、本発明では、上記成分(iii)として様々なポリビニルブチラール樹脂を使用することができる。例えば、本発明では、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒド又はホルムアルデヒドと反応させて、次いでアセタール化して得られるポリビニルブチラール樹脂を使用することができる。特に限定するものではないが、ラミネートフィルム用印刷インキ組成物としての用途を考慮すると、本発明で使用するポリビニルブチラール樹脂は、アセチル基が3モル%以下、ブチラール化度が60〜80の範囲であり、水酸基を36%程度で含み、数平均分子量が10,000〜50,000の範囲、好ましくは10,000〜20,000程度である。
【0046】
本発明によるインキ組成物は、上述のバインダーに加えて、着色剤及び溶剤とを必須成分とする。以下、着色剤及び溶剤について説明する。
(着色剤)
本発明では、着色剤として、印刷インキ又は塗料の技術分野で通常使用される、公知の有機顔料、無機顔料及び体質顔料といった顔料を使用することができる。
【0047】
本発明で使用できる顔料の具体例として、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー63、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー106、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー121、ピグメントイエロー126、ピグメントイエロー127、ピグメントイエロー136、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー188、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ16、ピグメントオレンジ34、ピグメントレッド2、ピグメントレッド9、ピグメントレッド38、ピグメントレッド41、ピグメントレッド42、ピグメントレッド112、ピグメントレッド170、ピグメントレッド146、ピグメントレッド210、ピグメントレッド238、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、ピグメントバイオレット23、ピグメントブラック7、ピグメントホワイト6、カーボンブラックが挙げられる。
【0048】
体質顔料の一例として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、沈降性硫酸バリウム等の硫酸塩、シリカ、タルク、マイカ等の珪酸塩が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用して使用することができる。インキ組成物の耐ブロッキング性及びラミネート強度を向上させるために、当技術分野で周知の充填剤を添加することもでき、このような目的で上述の体質顔料を使用してもよい。
【0049】
本発明によるインキ組成物の色相は、特に限定するものではなく、使用する着色剤の種類に応じて調整することができる。本発明の一実施形態では、プロセス基本色を、黄、紅、藍、墨、白の5色とし、プロセスガマット外色を赤(橙)、草(緑)、紫の3色とする。さらに、透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、及び色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)等をベース色として準備する。ボイル加工及びレトルト加工に供されるラミネートフィルムへの印刷を想定した場合、顔料は、マイグレーション性及び耐熱性を考慮して適切に選定されることが好ましい。各色相のベースインキは、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0050】
本発明によるインキ組成物の一実施形態において、顔料は、インク組成物中の固形成分の全重量を基準として5〜50重量%の範囲、より好ましくは8〜45重量%の範囲で使用される。
【0051】
(溶剤)
本発明で使用する溶剤は、当技術分野において通常使用される公知の溶剤であってよい。具体例を以下に挙げる:メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノールなどのものアルコール類。酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル等のエステル類。トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類。エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエステル類。
【0052】
グラビア印刷では、金属製の凹版が使用される。グラビア印刷は、高速で多量に印刷を行う場合に適した印刷方式として知られている。一方、フレキソ印刷では、一般に、樹脂製の凸版が使用されることが多い。従って、印刷を付与する基材が同じであっても、グラビア印刷のためには、より乾燥性の速い溶剤を選択することが好ましい。一方、フレキソ印刷のためには、樹脂版に対して膨潤性の無い溶剤を選択することが好ましい。即ち、フレキソ印刷用インキでは、芳香族系溶剤やケトン系溶剤ではなく、アルコール系溶剤を主体として使用することが好ましい。フレキソ印刷用インキでは、アルコール系溶剤を主体として、樹脂版の耐久性や印刷速度に影響しない範囲で、多用な溶剤を組み合わせて使用することもできる。フレキソ印刷用インキでは、一般的に顔料濃度の高いインキが使用される。
【0053】
インキ組成物は、印刷作業に先立ち、有機溶剤によって適切な粘度が得られるまで希釈される。一般に、グラビア印刷用インキは、ザーンカップ#3で15秒〜23秒の粘度範囲に調整される。フレキソ印刷用のインキはザーンカップ#3で18秒〜30秒の粘度範囲に調整される。このように、印刷方式に応じて、適切なインキ処方となるように、溶剤を選択し、その使用量を適切に調整することが好ましい。特に限定するものではないが、本発明によるインキ組成物の一実施形態において、溶剤は、インク組成物の全重量を基準として30〜80重量%の範囲、より好ましくは40〜70重量%の範囲で使用される。
【0054】
本発明によるインキ組成物は、上述のバインダー、着色剤及び溶剤に加えて、必要に応じて、さらにブロッキング防止剤、可塑剤、及びワックス等の当技術分野で周知の各種添加剤を含有してもよい。また、追加のバインダー成分として、ポリウレタン樹脂と相溶性を有し、かつ貯蔵安定性を損じない範囲で、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、塩素化オレフィン樹脂、繊維素系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、ケトン樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂を併用してもよい。さらに、インキ組成物を調製する際に、インキの流動性および分散性を改良するために適宜配合される顔料分散剤等の周知の添加剤を含有してもよい。
【0055】
(インキ組成物の調製)
本発明によるインキ組成物は、バインダー及び着色剤、さらに必要に応じて使用される各種添加剤を有機溶剤中に溶解及び/又は分散させることによって調製することができる。本発明の一実施形態では、顔料とバインダーを有機溶剤中に分散させた顔料分散体を予め調製し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の追加成分を配合することによってインキ組成物を調製することができる。
【0056】
インキ組成物を調製する場合、当技術分野で通常使用される公知の顔料分散機を使用することが好ましい。例えば、分散機として、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを使用することができる。上記顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適切に調整することによって調節することができる。インキ組成物の調製時には、インキの流動性及び分散性を改良するために顔料分散剤等の各種添加剤を配合してもよい。また、得られたインキ中に気泡や予期せずに粗大粒子等が含まれる場合は、印刷物の品質低下を防止するため、濾過等の方法によってそれらを取り除くことが好ましい。濾過器は、従来公知のものを使用することができる。
【0057】
上述の方法によって調製されたインキ組成物の粘度は、10mPa・s〜1000mPa・sの範囲であることが好ましい。粘度を10mPa・s以上に調整することで、顔料の沈降を防ぎ、適度な分散性を維持することが容易となる。一方、1000mPa・s以下の粘度に調整することによって、インキ製造時や印刷時の作業性効率を高めることができる。なお、上記粘度は、トキメック社製B型粘度計で25℃において測定して得た値である。インキの粘度は、原料として使用する各成分の種類、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、有機溶剤などを適切に選択し、その配合量を適切に調整することによって調節することができる。インキの粘度は、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調整することによっても調節することができる。
【0058】
(ラミネートフィルム)
本発明のインキ組成物は、アルコール可溶性であるため、フレキソ印刷に適したインキ処方を提供することができる。また、本発明のインキ組成物は、流動性、接着性及び耐ブロッキング性等の各種特性に優れている。そのため、本発明によれば、ウレタン樹脂を含むインキ組成物をフレキソ印刷方式による印刷時に適用した場合であっても、作業性に優れ、高速印刷が可能となる。また、フレキソ印刷によって、プラスチックフィルム等の基材に対して優れた接着性を有する印刷層を備えたフレキソ印刷物を効率良く提供することができる。本発明の一実施形態として、上記フレキソ印刷物の上に印刷層を介して各種プラスチックフィルムを積層させたラミネートフィルムを提供することができる。このようなラミネートフィルムは、食品包装用材料として好適に使用することができる。特に、本発明によるインキ組成物からなる印刷層が所望の各種特性を有するため、耐ボイル性及び耐レトルト性が要求される特定の用途を想定した食品用包装材料としても好適に使用することができる。
【0059】
上記ラミネートフィルムにおいて、基材として使用するプラスチックフィルムの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)、延伸ポリプロピレン(OPP)等の合成樹脂からなるフィルムが挙げられる。一方、フィルム基材上に印刷層を介して積層させるプラスチックフィルムとして、ポリエチレン(PE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)等の合成樹脂からなるフィルムが挙げられる。各々のプラスチックフィルムの積層化は、一般的な溶剤型又は無溶剤型接着剤、例えばポリウレタン接着剤を使用して、ヒートシール性を有する樹脂フィルムを貼り合わせるドライラミネーション、及びポリオレフィン樹脂等のヒートシール性を有する樹脂を溶融、押出ししてラミネートする押出しラミネーション等の方法によって実施することができる。特に、高品質のラミネートフィルムが要求される食品用包装材料の用途では、ドライラミネーション方式によって得られたラミネートフィルムが汎用されている。ラミネート加工時に基材フィルム上に積層する各々のフィルムは単独で使用しても、複数種のフィルムを多層化して使用してもよい。印刷層の上にヒートシール性に優れたフィルムを設けた場合、ヒートシール加工により上記ラミネートフィルムからなる袋状の包装材料を容易に作製することができる。特に限定するものではないが、本発明の好ましい一実施形態として、延伸ポリプロピレン(OPP)を基材として使用し、このような基材上に本発明のインキ組成物を使用してフレキソ印刷によって印刷層を形成し、さらにその上にポリエチレン(PE)フィルムを積層して得られるラミネートフィルムが挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において広範に異なる実施形態を構成することができることは明白である。なお、実施例で記載した各用語は、以下のとおりである。
(1)「部」は、「重量部」を表す。
(2)「分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた値である。
(3)「粘度」は、B型粘度計を用いて25℃で測定を行って得た値である。
(4)「アミン価」は、塩酸溶液を用いる周知の滴定方法によって得た値である。
【0061】
最初に、インキ組成物の調製に先立ち、バインダー成分として使用する各種樹脂成分の調製を行った。
【0062】
(合成例1)
ポリウレタン樹脂(a)の合成:
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール219.6部、イソホロンジイソシアネート56.6部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90℃まで徐々に昇温し、NCO%が4.4%になるまで反応を行った。次に、得られた反応生成物にジエチルアミノエタノール11.6部を加え、更に90℃で3時間にわたって反応を行い、プレポリマーを得た。酢酸エチル115部を使用して、上記プレポリマーを、滴下槽に移した。
次に、反応槽にイソホロンジアミン12.2部、ジブチルアミン0.002部、イソプロピルアルコール345.0部、酢酸エチル240.0部を仕込み、上記プレポリマーを滴下槽から反応槽に30分間にわたって滴下した。滴下終了後、40℃で1時間にわたって反応を行うことによって、ポリウレタン樹脂(a)を得た。ポリウレタン樹脂(a)は、固形分30%、アミン価9.5、重量平均分子量51,000であった。
【0063】
(合成例2)
ポリウレタン樹脂(b)の合成:
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペタンタンジオールからなる数平均分子量2,000のポリエステルジオール122.6部、数平均分子量2,000のポリオキシテトラメチレングリコール132.9部、イソホロンジイソシアネート37.6部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90℃まで徐々に昇温し、NCO%が1.2%になるまで反応を行った。次に、得られた反応生成物にジメチルアミノエタノール0.399部を加え、更に90℃で3時間にわたって反応を行い、プレポリマーを得た。酢酸エチル115.0部を使用して、上記プレポリマーを滴下槽に移した。
次に、反応槽にイソホロンジアミン6.5部、ジブチルアミン0.05部、イソプロピルアルコール345.0部、酢酸エチル240.0部を仕込み、上記プレポリマーを滴下槽から反応槽に30分間にわたって滴下した。滴下終了後、40℃で1時間にわたって反応を行い、ポリウレタン樹脂(b)を得た。ポリウレタン樹脂(b)は、固形分30%、アミン価0.6、重量平均分子量71,000であった。
【0064】
(合成例3]
ポリウレタン樹脂(c)の合成:
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペタンタンジオールからなる数平均分子量2000のポリエステルジオール177.3部、数平均分子量2,000のポリオキシテトラメチレングリコール53.0部、イソホロンジイソシアネート50.0部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90℃まで徐々に昇温し、NCO%が3.3%になるまで反応を行った。次に、得られた反応生成物にジエチルアミノエタノール4.05部を加え、更に90℃で3時間にわたって反応を行い、プレポリマーを得た。酢酸エチル115部を使用して、上記プレポリマーを滴下槽に移した。
次に、反応槽にイソホロンジアミン15.5部、ジブチルアミン0.12部、イソプロピルアルコール345.0部、酢酸エチル240.0部を仕込み、プレポリマーを滴下槽から反応槽に30分間にわたって滴下した。滴下終了後、40℃で1時間にわたって反応を行い、ポリウレタン樹脂(c)を得た。ポリウレタン樹脂(c)は、固形分30%、アミン価5.9、重量平均分子量47,000であった。
【0065】
(合成例4)
ポリウレタン樹脂(d)の合成:
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリオキシテトラメチレングリコール236.5部、イソホロンジイソシアネート47.3部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90℃まで徐々に昇温し、NCO%が2.8%になるまで反応を行い、プレポリマーを得た。次に、酢酸エチル115部を使用して、上記プレポリマーを滴下槽に移した。
次に、反応槽にイソホロンジアミン16.1部、ジブチルアミン0.122部、イソプロピルアルコール345.0部、酢酸エチル240.0部を仕込み、プレポリマーを滴下槽から反応槽に30分間にわたって滴下した。滴下終了後、40℃で1時間にわたって反応を行いポリウレタン樹脂(d)を得た。ポリウレタン樹脂(d)は、固形分30%、アミン価0、重量平均分子量29,000であった。
【0066】
(合成例5)
ポリウレタン樹脂(e)の合成:
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール236.5部、イソホロンジイソシアネート47.3部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90℃まで徐々に昇温し、NCO%が2.8%になるまで反応を行い、プレポリマーを得た。次に、酢酸エチル115部を使用して、上記プレポリマーを滴下槽に移した。
次に、反応槽にイソホロンジアミン16.1部、ジメチルアミノエタノール0.08部、イソプロピルアルコール345.0部、酢酸エチル240.0部を仕込み、上記プレポリマーを滴下槽から反応槽に30分間にわたって滴下した。滴下終了後、40℃で1時間にわたって反応を行い、ポリウレタン樹脂(e)を得た。ポリウレタン樹脂(e)は、固形分30%、アミン価0、重量平均分子量27000であった。
【0067】
(合成例6)
ポリウレタン樹脂(f)の合成:
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペタンタンジオールからなる数平均分子量2000のポリエステルジオール122.6部、数平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール132.9部、イソホロンジイソシアネート37.6部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90℃まで徐々に昇温し、NCO%が1.2%になるまで反応を行った。次に、得られた反応生成物にジメチルアミノエタノール0.2部を加え、更に90℃で3時間にわたって反応を行い、プレポリマーを得た。酢酸エチル115.0部を使用して、プレポリマーを滴下槽に移した。
次に、反応槽にイソホロンジアミン6.5部、ジブチルアミン0.05部、イソプロピルアルコール345.0部、酢酸エチル240.0部を仕込み、上記プレポリマーを滴下槽から反応槽に30分間にわたって滴下した。滴下終了後、40℃で1時間にわたって反応を行い、ポリウレタン樹脂(f)を得た。ポリウレタン樹脂(f)は、固形分30%、アミン価0.4、重量平均分子量73000であった。
【0068】
(合成例7)
ポリウレタン樹脂(g)の合成:
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール219.6部、イソホロンジイソシアネート56.6部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90℃まで徐々に昇温し、NCO%が4.4%になるまで反応を行った。次に、得られた反応生成物にジエチルアミノエタノール12.6部を加え、更に90℃で3時間にわたって反応を行い、プレポリマーを得た。酢酸エチル115部を使用して、上記プレポリマーを滴下槽に移した。
次に、反応槽にイソホロンジアミン12.2部、ジブチルアミン0.002部、イソプロピルアルコール345.0部、酢酸エチル240.0部を仕込み、上記プレポリマーを滴下槽から反応槽に30分間にわたって滴下した。滴下終了後、40℃で1時間にわたって反応を行い、ポリウレタン樹脂(g)を得た。ポリウレタン樹脂(g)は、固形分30%、アミン価9.9、重量平均分子量49000であった。
【0069】
(調製例1)
以下に示す配合割合で、セルロースアセテートプロピオネート樹脂(以下、CAP樹脂と記す)を各溶剤と混合し溶解させることによって、CAPワニスを調製した。CAP樹脂としては、イーストマンケミカル社製の商品名「CAP−504−0.2」を使用した。このCAP樹脂のアセチル基含有量は2.5重量%、プロピオニル基含有率は45重量%、水酸基含有率は2.6重量%、ガラス転移点は142℃であった。
(配合割合)
CAP樹脂 20%
酢酸n−プロピル 40%
イソプロパノール 40%
合計重量 100%
【0070】
(調製例2)
以下に示す配合割合で、セルロースアセテートブチレート樹脂(以下、CAB樹脂と記す)を各溶剤と混合し溶解させることによって、CABワニスを調製した。CAB樹脂としては、イーストマンケミカル社製の商品名「CAB−321−0.1」を使用した。このCAB樹脂のアセチル基含有量は17.5重量%、ブチル基含有率は32.5重量%、水酸基含有率は1.3重量%、ガラス転移点は127℃であった。
(配合割合)
CAB樹脂 20%
酢酸n−プロピル 40%
イソプロパノール 40%
合計重量 100%
【0071】
(調製例3)
以下に示す配合割合で、ポリビニルブチラール樹脂を各溶剤とを混合し溶解させることによって、樹脂溶液を得た。ポリビニルブチラール樹脂としては、積水化学工業社製の商品名「エスレックBL−1」を使用した。この樹脂は、数平均分子量が約19,000、水酸基が約36mol%、アセチル基が約3mol%、ブチラール化度が約61mol%であった。
(配合割合)
ポリビニルブチラール樹脂 20%
酢酸n−プロピル 40%
イソプロパノール 40%
合計重量 100%
【0072】
(実施例1〜5及び比較例1〜8)
表1に示した成分を原料として使用してインキ組成物を調製した。バインダーには、合成例1〜7で調製した各種ポリウレタン樹脂、及び調製例1〜3で得たセルロースアセテートアルキネート樹脂、及びポリビニルブチラール樹脂の溶液を使用した。インキ組成物の調製は、表1に示した成分の所定量を原料として配合し、高速ミキサーを用いて均一な状態が得られるまで予め攪拌及び混合した後、得られた混合物を、2mm径のガラスビーズを充填した卓上サンドミルを用いて分散処理することによって実施した。
【0073】
得られた各インキ組成物について、以下に示すようにして流動安定性及び二液化時粘度安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0074】
(インキの流動安定性)
BM型粘度計を使用し、ロータ回転数3回転で測定した粘度(n1)と、60回転で測定した粘度(n2)との比率(n2/n1)を求め、TI値とした。以下の判定基準に沿って、得られたTI値から流動安定性を評価した。TI値は、その値が高くなるにつれて、インキの粘度が増加しやすいことを意味する。
A:インキの流動性が、TI値で1.1未満。
B:インキの流動性が、TI値で1.1以上、1.3未満。
C:インキの流動性が、TI値で1.3以上、1.8未満。
D:インキの流動性が、TI値で1.8以上。
【0075】
(二液化後のインキの粘度安定性)
先に調製したインキ組成物100重量部に対して、NYB硬化剤(商品名、東洋インキ製造株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系アダクト体、固形分50%酢酸エチル溶液)を3重量部配合した後、酢酸プロピルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤(重量比40:60)で希釈して粘度調整した。粘度調整は、インキ組成物の粘度が、ザーンカップ#3(離合社製)で20秒(25℃)となるように実施した。粘度調整後のインキ組成物を、容器に入れ密栓し、40℃で、24時間にわたって静置した。24時間後にB型粘度計を用いてインキの粘度を測定し、初期粘度に対する粘度変化率を算出した。得られた粘度変化率から、以下の判定基準に沿って、粘度安定性を評価した。
A:インキの粘度変化率が5%未満。
B:インキの粘度変化率が5%以上、15%未満。
C:インキの粘度変化率が15%以上、30%未満。
D:インキの粘度変化率が30%以上。
【0076】
次に、得られた各インキ組成物を用いて基材上に印刷層を形成し、得られた印刷物について、以下に示す各種試験を行い評価した。結果を表2に示す。なお、各インキ組成物は、印刷作業に先立ち、酢酸プロピルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤(重量比40:60)で希釈し、ザーンカップ#3(離合社製)で20秒(25℃)となる粘度に調整した。また、印刷層を設ける基材として使用したフィルムは以下の通りである。
コロナ処理ナイロンフィルム:ユニチカ株式会社製の商品名「エンブレム ON」、厚さ15μm。以下、「NYフィルム」と略記する。
コロナ処理ポリエステルフィルム:東レ株式会社製の商品名「ルミラーP60」、厚さ12μm。以下、「PETフィルム」と略記する。
コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム:東洋紡株式会社製の商品名「パイレンP2161」、以下、「OPPフィルム」と略記する。
【0077】
(テープ接着性)
基材上に、フレキソ印刷機を用いて各々のインキ組成物の印刷層を形成し、印刷物を得た。基材として、OPPフィルム、PETフィルムを使用した。この印刷物を1日放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン社製の粘着テープ)を貼り付け、テープを急速に剥がした。テープ剥離後の印刷面のインキ剥離状態を目視によって判定した。判定基準は以下の通りである。
A:インキの剥離面積が0%で、全く剥離しない。
B:インキの剥離面積が25%未満。
C:インキの剥離面積が25%以上、50%未満。
D:インキの剥離面積が50%以上。
【0078】
(耐ブロッキング性)
PETフィルム基材上に、フレキソ印刷機を用いて各々のインキ組成物の印刷層を形成し、印刷物を得た。上記印刷物の印刷面と非印刷面とが接触するように、フィルムを重ね合わせ、5kgf/cmの加重をかけ、40℃、80%RHの環境下に12時間にわたって曝した。12時間後、上記環境下からフィルムを取り出し、非印刷面へのインキの転移状態を目視により評価した。判定基準は以下の通りである。
A:非印刷面へのインキの転移量が0%。
B:非印刷面へのインキの転移量が10%未満。
C:非印刷面へのインキの転移量が10%以上、50%未満。
D:非印刷面へのインキの転移量が50%以上。
【0079】
(曳糸性)
OPPフィルム基材上に、フレキソ印刷機を用いて各々のインキ組成物の印刷層を形成し、印刷物を得た。得られた印刷物について、印版のエッジ部に発生する糸状の乾燥物有無を目視によって判定した。目視によって確認された乾燥物の数から、以下の判定基準に沿って曳糸性を評価した。
A:エッジ部に発生する糸状の乾燥物が全く無し。
B:エッジ部に発生する糸状の乾燥物が1〜5個。
C:エッジ部に発生する糸状の乾燥物が6〜10個。
D:エッジ部に発生する糸状の乾燥物が11個以上。
【0080】
次に、得られた各インキ組成物を用いて基材上にフレキソ印刷によって印刷層を形成し、さらにラミネート加工することによって得られるラミネートフィルムについて評価した。結果を表2に示す。なお、印刷層は、先に調製した各インキ組成物100重量部に対して、NYB硬化剤(商品名、東洋インキ製造株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系アダクト体、固形分50%酢酸エチル溶液)を3重量部配合した組成を有するインキを使用して形成した。基材としては、PETフィルム及びNyフィルムを使用した。ラミネートフィルムの作製は、フレキソ印刷によって得た印刷物上に、TM220及びTM−215(東洋モートン社製の商品名、イソシアネート系接着剤)を使用し、次いでCPPフィルム(厚さ25ミクロン)を貼り合わせる、ドライラミネート加工によって実施した。
【0081】
上述のようにして得たラミネートフィルムをヒートシール加工することによって袋状の包装材料を作製し、袋の中に内容物として、水/サラダ油/酢=1/1/1(重量比)の混合物を入れ、密封した。このようにして得た試験サンプルを使用し、包装材料の耐ボイル性及び耐レトルト性について以下のようにして評価した。
(耐ボイル性及び耐レトルト性)
耐ボイル性は、試験サンプルを100℃で、30分間にわたって加熱した後に、ラミネートフィルムの膨れ、浮き等の外観異常の有無を目視によって判定し、評価した。同様にして、耐レトルト性は、120℃で、30分間にわたって加熱した後に、評価した。各々の判定基準は以下のとおりである。
A:デラミネーションやブリスターの発生が無く、外観を保持している。
B:50cm当り、デラミネーションやブリスターが1〜3ケ所発生している。
C:50cm当り、デラミネーション、デラミネーションやブリスターが4〜10箇所発生している。
D:50cm当り、デラミネーションやブリスターが11ケ所以上発生している。
【0082】
【表1】

【0083】
注記:
(1)溶剤を含む重量部である。
(2)プレポリマー調製時のヒドロキシルジアルキルアミンにおける水酸基のジイソシアネートにおけるイソシアネート基に対するモル比率である。比較例3で使用したウレタン樹脂(d)及び比較例6で使用したウレタン樹脂(e)のプレポリマー調製時にはヒドロキシルジアルキルアミンを使用しないため、表では「−」として示した。
【0084】
【表2】

【0085】
表2によれば、本発明によるラミネート用印刷インキ組成物が各種特性に優れることが明らかである。例えば、実施例1〜5と、比較例4及び5との比較から明らかなように、本発明のラミネート用印刷インキ組成物は、バインダーとして、ウレタン樹脂、CAP及び/又はCAB、及びポリビニルブチラールといった3種の樹脂を組み合わせて使用することで、接着性が向上していることが分かる。また、実施例1と比較例6との比較、及び実施例1〜5と比較例7及び8との比較から明らかなように、本発明のラミネート用印刷インキ組成物は、バインダーとして特定のウレタン樹脂を使用することによって、流動性、粘度安定性、曳糸性、耐ボイル性、及び耐レトルト性が向上していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート加工されるフィルム基材に印刷層を形成するためのラミネート用印刷インキ組成物であって、
着色剤と、溶剤と、固形分の全重量を基準として、ポリウレタン樹脂80〜98重量%、セルロースアセテートアルキネート樹脂0.5〜5重量%、及びポリビニルブチラール樹脂1.0〜15重量%から構成されるバインダーとを含み、
前記ポリウレタン樹脂が、以下に示す成分(A)と成分(B)との反応によって得られる反応生成物を成分(C)と反応させてイソシアネート基含有プレポリマーを生成し、さらに前記プレポリマーを成分(D)と反応させて得られるポリウレタン樹脂であり、前記成分(C)における水酸基の前記(B)におけるイソシアネート基に対するモル比率が0.05〜0.35の範囲であることを特徴とする、ラミネート用印刷インキ組成物。
(A)数平均分子量1,000〜5,000のポリエーテルジオール化合物、又は前記ポリエーテルジオール化合物と数平均分子量1,000〜5,000ポリエステルジオール化合物との混合物。
(B)ジイソシアネート化合物。
(C)分子量が50〜300であり、かつ分子内に水酸基を1つ有するヒドロキシルジアルキルアミン化合物。
(D)鎖延長剤。
【請求項2】
前記セルロースアセテートアルキネート樹脂が、セルロースアセテートプロピオネート樹脂であること特徴とする、請求項1に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項3】
前記成分(C)が、ジエチルアミノエタノールおよびジメチルアミノエタノールの少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項4】
前記成分(A)において、前記ポリエーテルジオール化合物が、ポリオキシテトラメチレングリコールであることを特徴とする、請求項1に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項5】
前記成分(A)において、前記ポリエーテルジオール化合物と前記ポリエステルジオール化合物との重量比率が、100/0〜20/80の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂のアミン価が0.5〜10の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のラミネート用印刷インキ組成物を用い、フレキソ印刷方式でフィルム基材上に印刷層を形成することによって得られるフレキソ印刷物。
【請求項8】
請求項7に記載のフレキソ印刷物に、前記印刷層を介してプラスチックフィルムを積層して得られるラミネートフィルム。
【請求項9】
請求項8に記載のラミネートフィルムを含む食品用包装材料。

【公開番号】特開2010−248466(P2010−248466A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228683(P2009−228683)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】