説明

ランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造

【課題】タービンの損傷を抑制することができるランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造を提供する。
【解決手段】ランキンサイクルシステム(5)の作動媒体供給構造(100)は、ランキンサイクルシステムの蒸発器(50)内の作動媒体をランキンサイクルシステムのタービン(60)に導く第1通路(112)と、蒸発器内の作動媒体を通過させるとともに、内部を通過する作動媒体の熱で第1通路を暖める第2通路(114)と、第1通路内の作動媒体の状態に基づいて第1通路を開閉する開閉機構と、を備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造、特に内燃機関に用いられるランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の廃熱を回収するシステムとして、ランキンサイクルシステムが知られている。このランキンサイクルシステムは、例えば内燃機関の廃熱で過熱されて蒸気状態となった作動媒体をタービンに導いてタービンを回転させ、このタービンの回転力を運動エネルギとして再利用することで、内燃機関の廃熱を回収している。このようなランキンサイクルシステムにおいて、例えば冷間始動時等の場合においてタービンに導かれる作動媒体がタービンに到達する前に凝縮して非蒸気状態になるおそれがある。この場合、タービンに加わる衝撃が大きくなることから、タービンが損傷するおそれがある。
【0003】
特許文献1には、内燃機関を通過した作動媒体が蒸気状態の場合に作動媒体をタービンに導き、内燃機関を通過した作動媒体が非蒸気状態の場合には作動媒体をタービンをバイパスして流通させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−302109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術においても、タービンに導かれる作動媒体がタービンに到達する前に冷却されるおそれがある。その場合、冷却されて非蒸気状態となった作動媒体がタービンに導入されてしまい、タービンが損傷するおそれがある。
【0006】
本発明は、タービンの損傷を抑制することができるランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造は、ランキンサイクルシステムの蒸発器内の作動媒体を前記ランキンサイクルシステムのタービンに導く第1通路と、前記蒸発器内の作動媒体を通過させるとともに、内部を通過する前記作動媒体の熱で前記第1通路を暖める第2通路と、前記第1通路内の前記作動媒体の状態に基づいて前記第1通路を開閉する開閉機構と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る作動媒体供給構造によれば、開閉機構が第1通路内の作動媒体の状態が例えば蒸気状態の場合には第1通路を開にし、第1通路内の作動媒体の状態が蒸気状態でない場合には第1通路を閉にすることができる。この場合、第1通路内の作動媒体の状態が蒸気状態でない場合に第1通路が閉になることで、蒸気状態でない作動媒体がタービンに導かれることを抑制できる。その結果、タービンの損傷を抑制することができる。また、第1通路内の作動媒体の状態が蒸気状態の場合に第1通路が開になることで、蒸気状態の作動媒体をタービンに導くことができる。この場合、第2通路内の作動媒体の熱によって第1通路が暖められることから、第1通路内の作動媒体が冷却されて凝縮することが抑制されている。その結果、タービンの損傷を抑制することができる。
【0009】
上記構成において前記第2通路は前記第1通路の外側に配置されていてもよい。この構成によれば、第2通路内部の作動媒体の熱で第1通路を暖めることができる。また、第2通路を例えば第1通路の内側に配置する場合に比較して、作動媒体供給構造を容易に製造することができる。
【0010】
上記構成において前記第1通路は二重管の内側の管であり、前記第2通路は前記二重管の外側の管であってもよい。この構成によれば、第2通路内部の作動媒体の熱で第1通路を暖めることができる。また、第1通路の外周を全体的に暖めることができるため、第1通路内の作動媒体の冷却抑制効果が高くなる。
【0011】
上記構成は前記第2通路を通過した前記作動媒体を前記蒸発器に戻す第3通路をさらに備えていてもよい。この構成によれば、第2通路を通過した作動媒体を蒸発器に戻して再利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タービンの損傷を抑制することができるランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は実施例1に係る作動媒体供給構造を備えるランキンサイクルシステムの一例を示す模式図である。
【図2】図2は実施例1に係る作動媒体供給構造を説明するための模式的断面図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、開閉弁、アクチュエータ、負圧発生装置および三方弁の詳細を説明するための模式的断面図であり、図3(a)は開閉弁が閉の状態を示し、図3(b)は開閉弁が開の状態を示している。
【図4】図4は実施例1に係る制御装置のフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1に係るランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造(以下、作動媒体供給構造と略称する)について説明する。まず、作動媒体供給構造を備えるランキンサイクルシステムの一例について説明し、次いで作動媒体供給構造の詳細について説明する。図1は、作動媒体供給構造を備えるランキンサイクルシステムの一例であるランキンサイクルシステム5の模式図である。ランキンサイクルシステム5は、タンク10、ポンプ20、内燃機関30、気液分離器40、蒸発器50、タービン60、動力回収器70、凝縮器80および作動媒体供給構造100(作動媒体供給機構110および制御装置130)を備えている。
【0016】
タンク10は作動媒体を貯留するための装置である。作動媒体は、ランキンサイクルシステムに用いられる作動媒体であれば特に限定されるものではない。本実施例においては作動媒体の一例として、水を主成分とする作動媒体を用いる。
【0017】
ポンプ20は、作動媒体を内燃機関30に圧送する装置である。本実施例においてはポンプ20の一例としてウォータポンプを用いる。内燃機関30としては特に限定されず、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等、種々の内燃機関を用いることができる。
【0018】
ポンプ20から内燃機関30に圧送された作動媒体は、内燃機関30との間で熱交換を行う。それにより内燃機関30は冷却される。また、内燃機関30を通過した作動媒体は内燃機関と熱交換することで液体と蒸気(すなわち気体)とが混合した気液混合状態になる。気液混合状態となった作動媒体は気液分離器40に流入する。
【0019】
気液分離器40は、気液混合状態の作動媒体を液体状態の作動媒体と気体状態(すなわち蒸気状態)の作動媒体とに分離する装置である。気液分離器40を通過後の液体状態の作動媒体は、内燃機関30に再び供給される。気液分離器40を通過後の気体状態の作動媒体は、蒸発器50に流入する。
【0020】
蒸発器50は、内燃機関30の廃熱を利用して作動媒体を過熱する装置である。本実施例に係る蒸発器50は、内燃機関30の廃熱として排気ガスの熱を利用することで作動媒体を過熱する。蒸発器50において過熱されることで、作動媒体のエネルギは高められる。蒸発器50を通過後の作動媒体は、作動媒体供給構造100に流入する。
【0021】
作動媒体供給構造100は、作動媒体供給機構110と作動媒体供給機構110を制御する制御装置130とを備えている。作動媒体供給機構110は、蒸発器50から供給された蒸気状態の作動媒体をタービン60に導くための機構である。なお本実施例に係る作動媒体供給機構110は、蒸発器50からの作動媒体の一部を蒸発器50に戻している。制御装置130は、演算部としてのCPU(Central Processing Unit)131と、記憶部としてのROM(Read Only Memory)132およびRAM(Random Access Memory)133とを備えるマイクロコンピュータである。作動媒体供給構造100の詳細は後述する。
【0022】
タービン60は、作動媒体供給機構110から供給された作動媒体のエネルギを受けて回転する。動力回収器70はタービン60に接続されている。動力回収器70はタービンの回転力を運動エネルギとして回収するための装置である。動力回収器70が作動することで、ランキンサイクルシステム5は内燃機関30の廃熱を回収している。動力回収器70は、特に限定されないが、本実施例では一例として発電機を用いる。
【0023】
タービン60を通過した作動媒体は凝縮器80に流入する。凝縮器80は、タービン60を通過した作動媒体を凝縮して液体状態に戻す装置である。凝縮器80を通過後の作動媒体はタンク10に貯留される。
【0024】
続いて作動媒体供給構造100の詳細について説明する。図2は作動媒体供給構造100を説明するための模式的断面図である。図2には、作動媒体供給構造100に加えて、蒸発器50、タービン60等の作動媒体供給構造100に関連する他の構成も図示されている。作動媒体供給構造100の作動媒体供給機構110は、第1通路112、第2通路114、第3通路116、温度センサ118、開閉弁120、アクチュエータ122、負圧発生装置124、三方弁126および配管128を備えている。
【0025】
第1通路112は、蒸発器50内の作動媒体をタービン60に導く通路である。ここで作動媒体は、蒸発器50の内部において、蒸気状態と、液体状態等の非蒸気状態とに分かれている。本実施例では、蒸発器50の上方部に蒸気状態の作動媒体が存在し、蒸発器50の下方部に非蒸気状態の作動媒体が存在している。第1通路112は、上流端が蒸発器50の上方部に接続し、下流端がノズル112a形状となってタービン60の近傍に配置されている。第1通路112の上流端が蒸発器50の上方部に接続することで、蒸発器50内の下方部に存在する非蒸気状態の作動媒体が第1通路112に流入することが抑制されている。
【0026】
なお、蒸発器50内の非蒸気状態の作動媒体は、内燃機関30の排気ガスが流動する排気通路31によって過熱されて蒸気状態となることができる。また本実施例のタービン60は、タービンケース61内に収容されている。ノズル112aから排出された作動媒体は、タービン60を回転させた後に、タービンケース61の出口から排出されて凝縮器80へ流入する。
【0027】
第2通路114は、蒸発器50内の作動媒体を通過させる通路である。また第2通路114は、その内部を通過する作動媒体の熱で第1通路112を暖める通路である。このような通路であれば第2通路114の構造は特に限定されるものではない。本実施例において第2通路114は、第1通路112の外側に配置されている。
【0028】
具体的には、第2通路114と第1通路112とは、二重管の構造を形成している。第1通路112は二重管の内側の管であり、第2通路114は二重管の外側の管である。第2通路114は、上流端が蒸発器50の上方部に接続している。第2通路114は、第1通路112のノズル112a近傍に至るまで第1通路の外表面に沿って伸びている。なお、第2通路114の下流端は閉塞しており、第2通路114を通過した作動媒体がタービン60に供給されないようになっている。
【0029】
第3通路116は、第2通路114を通過した作動媒体を蒸発器50に戻す通路である。本実施例において第3通路116は、上流端が第2通路114の下流端近傍に接続し、下流端が蒸発器50の下方部に接続している。但し第3通路116の第2通路114および蒸発器50への接続箇所は、これに限定されるものではない。
【0030】
温度センサ118は、第1通路112内の作動媒体の温度を検出し、検出結果を制御装置130に伝える。それにより制御装置130は、第1通路112内の作動媒体の状態を取得することができる。具体的には制御装置130は、温度センサ118の検出結果に基づいて、第1通路112内の作動媒体が蒸気状態か否かを取得する。すなわち、本実施例に係る温度センサ118は第1通路112内の作動媒体の状態を検出する検出手段、具体的には第1通路112内の作動媒体の状態が蒸気状態か否かを検出する検出手段としての機能を有している。
【0031】
なお、温度センサ118は第1通路112内の作動媒体の温度を検出するにあたり、第1通路112内部の温度を直接検出してもよく、第1通路112の壁部の温度を検出することで第1通路112内の作動媒体の温度を間接的に検出してもよい。第1通路112の壁部の温度は第1通路112の内部の温度と相関関係を有するため、第1通路112の壁部の温度を検出することによっても第1通路112内の作動媒体の温度を間接的に検出することができるからである。
【0032】
開閉弁120は第1通路112を開閉するための装置である。本実施例に係る開閉弁120は第1通路112の上流端部を開閉している。但し開閉弁120が開閉する第1通路112の部位は上流端部に限られるものではない。
【0033】
アクチュエータ122は開閉弁120を駆動するための装置である。アクチュエータ122としては、電気駆動式のアクチュエータ、空圧駆動式のアクチュエータ等、種々のアクチュエータを用いることができる。本実施例においてはアクチュエータ122の一例として、空圧駆動式のアクチュエータを用いる。
【0034】
負圧発生装置124は、配管128を介してアクチュエータ122に接続されている。配管128のアクチュエータ122と負圧発生装置124との間には、三方弁126が配置されている。三方弁126は制御装置130によって制御される。三方弁126の三つの弁のうち一つの弁は大気圧に開放されている(以下、この三方弁126の大気圧に開放された弁を開放弁と称する)。
【0035】
図3(a)および図3(b)は、開閉弁120、アクチュエータ122、負圧発生装置124および三方弁126の詳細を説明するための模式的断面図である。図3(a)は開閉弁120が閉の状態を示し、図3(b)は開閉弁120が開の状態を示している。開閉弁120は、第1通路112内に配置されて第1通路112を開閉する弁部120aと、弁部120aを回転させる弁軸120bとを備えている。本実施例において、弁軸120bの弁部120aとは反対側の端部は、第2通路114の上方に突き抜けている。また、弁軸120bの弁部120aとは反対側の端部は平板形状になっている。
【0036】
アクチュエータ122は、シリンダ122aとピストン122bとを備えている。ピストン122bのシリンダ122aとは反対側の端部は、弁軸120bの平板形状の部分に接続している。このピストン122bの弁軸120bへの接続態様は、ピストン122bが前後方向に移動したときに弁軸120bが回転できるような態様であれば特に限定されるものではない。
【0037】
シリンダ122aの内部は、シリンダ122a内のピストン122bによって、弁軸120b側の前室122cと、弁軸120bとは反対側の後室122dとに区画されている。後室122dには配管128が接続されている。ピストン122bの後室122dには、スプリング122eが配置されている。ピストン122bは、前室122c側から受ける力と後室122d側から受ける力の差によって駆動する。本実施例においては開閉弁120が閉の場合、前室122cの圧力は大気圧となり、後室122dの圧力も大気圧となっている。
【0038】
図2において前述したように、配管128の上流には負圧発生装置124が接続されている。本実施例においては、負圧発生装置124は、開閉弁120が閉のときの前室122cの圧力(本実施例では大気圧)よりも負圧の圧力を発生する。負圧発生装置124としては特に限定されないが、本実施例では一例としてポンプを用いる。
【0039】
図3(a)の状態から制御装置130が三方弁126を制御することで、シリンダ122aと負圧発生装置124とが連通状態となりかつ三方弁126の開放弁(大気圧に開放された弁)が閉に変化した場合、後室122dの圧力は負圧になる。この場合、図3(b)に示すように、ピストン122bは後室122d側に移動する。ピストン122bが後室122d側に移動することで、弁軸120bは回転する。弁軸120bが回転することで弁部120aも回転する。その結果、第1通路112は開になる。
【0040】
一方、図3(b)の状態から制御装置130が三方弁126を制御することで、シリンダ122aと負圧発生装置124とが非連通状態となりかつ三方弁126の開方弁が開に変化した場合、後室122dの圧力は大気圧になる。この場合、図3(a)に示すように、ピストン122bは、スプリング122eからの力を受けて、前室122c側に移動する。それにより、弁軸120bが回転して弁部120aも回転する。その結果、第1通路112は閉になる。
【0041】
このようにして第1通路112は開閉する。すなわち、本実施例においてアクチュエータ122、三方弁126および負圧発生装置124は、開閉弁120を駆動する駆動手段としての機能を有しており、制御装置130は駆動手段を制御する制御手段としての機能を有している。また、開閉弁120、アクチュエータ122、三方弁126、負圧発生装置124および制御装置130は、第1通路112を開閉する開閉機構としての機能を有している。但し、第1通路112を開閉できる機構であれば、開閉機構はこれらの構成に限られない。例えばアクチュエータ122が電気駆動式のアクチュエータの場合、三方弁126および負圧発生装置124は不要となり、また制御装置130は電気駆動式のアクチュエータを制御する。
【0042】
続いて作動媒体供給構造100の動作について説明する。まず、制御装置130は、第1通路112内の作動媒体の状態に基づいて三方弁126を制御することで、第1通路112を開閉する。本実施例に係る制御装置130は、一例として、温度センサ118の検出結果に基づいて第1通路112内の作動媒体の状態を取得する。具体的には制御装置130は、温度センサ118の検出結果に基づいて第1通路112内の作動媒体が蒸気状態であるか否かを判定することで、第1通路112内の作動媒体の状態を取得する。
【0043】
制御装置130は第1通路112内の作動媒体が蒸気状態であると判定した場合、第1通路112が開になるように三方弁126を制御する。それにより、蒸発器50内にある蒸気状態の作動媒体は第1通路112を通過して、ノズル112aの先端からタービン60に供給される(図2)。その結果、タービン60が回転し、動力回収器70によって内燃機関30の廃熱が回収される(図1)。またこの場合、蒸発器50の上方部の作動媒体は、第2通路114にも流入する(図2)。第2通路114に流入した作動媒体は、第1通路112の作動媒体を暖める。それにより、第1通路112の作動媒体が冷却されて凝縮することが抑制される。第2通路114を通過した作動媒体は、第3通路116に流入する。第3通路116を通過した作動媒体は、蒸発器50の下方部に貯留される。
【0044】
一方、制御装置130は第1通路112内の作動媒体が蒸気状態であると判定しなかった場合、第1通路112が閉になるように三方弁126を制御する。それにより、作動媒体のタービン60への導入が停止される。なお、この場合においても、蒸発器50の上方部の作動媒体は、第2通路114および第3通路116を通過して蒸発器50の下方部に貯留される。
【0045】
図4は制御装置130のフローチャートの一例を示す図である。制御装置130は図4のフローチャートを所定の周期で繰り返し実行する。まず、制御装置130は、温度センサ118の検出結果に基づいて、第1通路112内の作動媒体が蒸気状態であるか否かを判定する(ステップS10)。
【0046】
具体的には制御装置130は、第1通路112内の作動媒体が蒸気状態であるか否かを判定するための温度センサ118の検出温度の閾値を、例えばROM132に記憶しておく。制御装置130は、ステップS10において、温度センサ118の検出した温度(温度Ts)が閾値以上であるか否かを判定する。制御装置130は、温度Tsが閾値以上であると判定した場合、第1通路112内の作動媒体が蒸気状態であると判定する。
【0047】
ステップS10において第1通路112内の作動媒体が蒸気状態であると判定された場合、制御装置130は第1通路112が開になるように三方弁126を制御する(ステップS20)。具体的には制御装置130は、アクチュエータ122のシリンダ122aの後室122dと負圧発生装置124とが連通状態となりかつ三方弁126の開放弁が閉になるように、三方弁126を制御する(図2、図3(a)、図3(b))。それにより、シリンダ122aの後室122dが負圧になる。その結果、開閉弁120の弁部120aが開になり、第1通路112も開になる。第1通路112が開になることで、タービン60に蒸気状態の作動媒体が導入される。次いで制御装置130はフローチャートの実行を終了する。
【0048】
ステップS10において温度Tsが閾値以上であると判定されなかった場合、すなわち第1通路112内の作動媒体が蒸気状態であると判定されなかった場合、制御装置130は第1通路112が閉になるように三方弁126を制御する(ステップS30)。具体的には制御装置130は、アクチュエータ122のシリンダ122aの後室122dと負圧発生装置124とが非連通状態となりかつ三方弁126の開方弁が開になるように、三方弁126を制御する(図2、図3(a)、図3(b))。それにより、シリンダ122aの後室122dが大気圧になる。その結果、開閉弁120の弁部120aが閉になり、第1通路112も閉になる。第1通路112が閉になることで、タービン60に非蒸気状態の作動媒体が導入されることが抑制される。次いで制御装置130はフローチャートの実行を終了する。
【0049】
以上のように本実施例に係る作動媒体供給構造100は、第1通路112と第2通路114とを備え、制御装置130は第1通路112内の作動媒体の状態に基づいて第1通路112を開閉している。作動媒体供給構造100によれば、第1通路112内の作動媒体の状態が蒸気状態の場合には第1通路112を開にし、第1通路112内の作動媒体の状態が蒸気状態でない場合には第1通路112を閉にすることができる。この場合、第1通路112内の作動媒体の状態が蒸気状態でない場合に第1通路112が閉になることで、蒸気状態でない作動媒体がタービン60に導かれることを抑制できる。その結果、タービン60の損傷を抑制できる。また、第1通路112内の作動媒体の状態が蒸気状態の場合に第1通路112が開になることで、蒸気状態の作動媒体をタービン60に導くことができる。この場合、第2通路114内の作動媒体の熱によって第1通路112が暖められることから、第1通路112内の作動媒体が冷却されて凝縮することが抑制されている。その結果、タービン60の損傷が抑制されている。また、第1通路112が閉の場合において第1通路112内の作動媒体が第2通路114内の作動媒体によって暖められることで、作動媒体をタービン60に供給できる状態に早期にすることができる。
【0050】
なお、本実施例において第2通路114は第1通路112の外側に配置されており、さらに第1通路112と第2通路114とで二重管構造を形成しているが、これに限られない。例えば第2通路114は、第1通路112の内側に配置されていてもよい。しかしながら、第2通路114が第1通路112の内側に配置された状態で第1通路112のみを開閉する場合よりも、第2通路114が第1通路112の外側に配置された状態で第1通路112のみを開閉する場合の方が製造が容易である。したがって、第2通路114が第1通路112の外側に配置されていることによって、作動媒体供給構造100を容易に製造することができる。また、第1通路112と第2通路114とで二重管構造を形成していることにより、第1通路112の外周を全体的に暖めることができる。そのため、第1通路112内の作動媒体の冷却抑制効果が高くなる。
【0051】
また、作動媒体供給構造100は第3通路116を備えているが、これに限られない。作動媒体供給構造100は第3通路116を備えていなくてもよい。但し作動媒体供給構造100が第3通路116を備えることで、第2通路114を通過した作動媒体を蒸発器50に戻して再利用することができる。また、この場合、蒸発器50の温度が第3通路116からの作動媒体で冷却されることから、蒸発器50の温度を第3通路116からの作動媒体で調整することもできる。
【0052】
また、作動媒体供給構造100は第1通路112内の作動媒体の状態を検出する検出手段として温度センサ118を備えているが、これに限られるものではない。作動媒体供給構造100は、第1通路112内の作動媒体の状態を検出できるものであれば、温度センサ118以外の検出手段を備えていてもよい。
【0053】
なお、本実施例においては、開閉弁120によって作動媒体のタービン60への供給を停止していることから、例えばタービン60の過回転を抑制するような制御を行うことも可能である。この場合、ランキンサイクルシステム5は、タービン60の回転数を検出する回転数検出計を備え、制御装置130は回転数検出計の検出した回転数が所定回転以上の場合には開閉弁120を閉にすることで、タービン60の過回転を抑制することができる。
【0054】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
5 ランキンサイクルシステム
30 内燃機関
50 蒸発器
60 タービン
100 作動媒体供給構造
110 作動媒体供給機構
112 第1通路
112a ノズル
114 第2通路
116 第3通路
120 開閉弁
122 アクチュエータ
124 負圧発生装置
126 三方弁
130 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランキンサイクルシステムの蒸発器内の作動媒体を前記ランキンサイクルシステムのタービンに導く第1通路と、
前記蒸発器内の作動媒体を通過させるとともに、内部を通過する前記作動媒体の熱で前記第1通路を暖める第2通路と、
前記第1通路内の前記作動媒体の状態に基づいて前記第1通路を開閉する開閉機構と、を備えることを特徴とするランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造。
【請求項2】
前記第2通路は前記第1通路の外側に配置されている請求項1記載のランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造。
【請求項3】
前記第1通路は二重管の内側の管であり、前記第2通路は前記二重管の外側の管である請求項1または2に記載のランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造。
【請求項4】
前記第2通路を通過した前記作動媒体を前記蒸発器に戻す第3通路をさらに備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のランキンサイクルシステムの作動媒体供給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−154262(P2012−154262A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14584(P2011−14584)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】