説明

ランキンサイクル装置

【課題】車両に搭載のランキンサイクル用凝縮器の凝縮効率を向上する。
【解決手段】車両10のフロントバンパ31の後側には凝縮器17及びサブクーラ19が配設されている。サブクーラ19は、凝縮器17の直上に配設されている。凝縮器17及びサブクーラ19は、ラジエータ13よりも前方に配置されている。フロントバンパ31の下側及びフロントバンパ31の上側にはフロントグリル32,33が配設されている。サブクーラ19の中心191は凝縮器17の中心171よりもフロントバンパ31の上下方向の中心311に対して近い位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、作動流体を冷却する凝縮器とサブクーラとが上下方向に並設されていると共に、フロントバンパの上下方向の少なくともいずれか一方に設けられるフロントグリルからの冷却風により前記凝縮器及び前記サブクーラで作動流体が冷却されるランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両エンジンの廃熱を利用するランキンサイクル装置は、例えば特許文献1,2に開示されている。ランキンサイクル装置は、ポンプ、ボイラ、膨張機、発電機及び凝縮器を備えている。凝縮器を通過した液作動流体は、ポンプによってボイラへ送られる。
【0003】
特許文献2に開示のランキンサイクル装置では、過冷却用のサブクーラが設けられている。凝縮器及びサブクーラは、車両の走行による空冷作用を受けるために前端部に設けられ、一般的にはサブクーラは、凝縮器の直下に配置される。車両の前端部に設けられた凝縮器及びサブクーラを流通する作動流体は、前進走行する車両の前から流入する風によって冷却されて液化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−152827号公報
【特許文献2】特開2011−196338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車両の前端部にフロントバンパがあり、このフンロントバンパの存在が前進走行する車両の前からの風の流入を妨げる。つまり、風量がフンロントバンパの存在によって低減されるが、サブクーラの直上にある凝縮器は、フンロントバンパの直後に位置することになる。そのため、サブクーラよりも高い冷却能力を必要とする凝縮器内の作動流体における放熱効果が低く、凝縮器における凝縮効率が低下する。
【0006】
本発明は、車両搭載のランキンサイクル用凝縮器の凝縮効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に搭載され、作動流体を冷却する凝縮器とサブクーラとが上下方向に並設されていると共に、フロントバンパの上下方向の少なくともいずれか一方に設けられるフロントグリルからの冷却風により前記凝縮器及び前記サブクーラで作動流体が冷却されるランキンサイクル装置を対象とし、請求項1の発明では、前記サブクーラが前記凝縮器よりも前記フロントバンパに対して近い位置に配置されている。
【0008】
凝縮器がサブクーラよりもフロントバンパに対して遠い位置、すなわちフロントグリルからの冷却風に近い位置となり、凝縮器を冷却するための風量の増加に寄与し、車両搭載のランキンサイクル用凝縮器の凝縮効率が向上する。
【0009】
好適な例では、前記サブクーラは、前後方向に見て全てが前記フロントバンパと重なり合うように配置されている。
このような構成は、凝縮器の受風面積を増す上で好適である。受風面積が増えると、凝縮器の冷却能力が増大する。
【0010】
好適な例では、前記凝縮器は、前後方向に見て一部が前記フロントバンパと重なり合うように配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、車両搭載のランキンサイクル用凝縮器の凝縮効率を向上することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態のランキンサイクル装置の模式図。
【図2】第1の実施形態の部分拡大背面図。
【図3】第1の実施形態の模式図。
【図4】第2の実施形態の模式図。
【図5】第3の実施形態の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。なお、以下において方向を表すのに用いられる前及び後は、車両の前後方向のことである。
図1に示すように、車両10〔図3参照〕のエンジン11には冷却水循環経路12が接続されており、冷却水循環経路12にはラジエータ13が配設されている。ラジエータ13は、その長さ方向が車幅方向に延びるように車両10に搭載されており、ラジエータ13の後方にはファン14が配設されている。エンジン11を冷却した冷却水は、主に車両10の前進走行時にはその前進走行に伴う車速風(冷却風)によってラジエータ13で冷却され、車両10の停止時にはファン14の作動による冷却風によってラジエータ13で冷却される。
【0014】
車両10にはランキンサイクル装置15が搭載されている。ランキンサイクル装置15は、膨張機16、ランキンサイクル用の凝縮器17、ランキンサイクル用のレシーバ18、ランキンサイクル用のサブクーラ19、ポンプ20及び熱交換器21を環状に接続して構成されている。
【0015】
ポンプ20の吐出側には熱交換器21の流入側が第1流路22を介して接続されており、熱交換器21は、エンジン11に接続された排気通路34に設けられている。ポンプ20から吐出されたランキンサイクル用作動流体(以下においては単に作動流体と記す)は、熱交換器21においてエンジン11からの排気との熱交換により加熱される。
【0016】
熱交換器21の流出側には膨張機16の流入側が第2流路23を介して接続されており、熱交換器21で加熱された作動流体が膨張機16で膨張する。膨張機16の流出側には凝縮器17の流入側が第3流路24を介して接続されている。
【0017】
膨張機16で膨張した作動流体は、車両10の前進走行時には主にその前進走行に伴う車速風によって凝縮器17で冷却され、車両10停止時にはファン14の作動による冷却風によって凝縮器17で冷却される。作動流体は、凝縮器17での冷却により凝縮されて液化される。
【0018】
凝縮器17の流出側にはレシーバ18の流入側が第4流路25を介して接続されており、レシーバ18の流出側にはサブクーラ19の流入側が第5流路26を介して接続されている。凝縮器17で冷却して液化された作動流体は、レシーバ18を経由してサブクーラ19に流入する。
【0019】
レシーバ18では、ランキンサイクル装置15での機械的エネルギーの出力状態に応じて作動流体をポンプ20に供給できるように一時的に貯えられる。又、レシーバ18には凝縮器17で液化されなかった作動流体が気体として流入する場合がある。このため、レシーバ18では、液体状の作動流体を底側(下側)に貯え、気体状の作動流体を天井側(上側)に貯えることで、作動流体を気液分離するようになっている。第5流路26は、液体状の作動流体を流出させるためにレシーバ18の底側に接続されている。第5流路26は、サブクーラ19の吸入側に接続されている。サブクーラ19の流出側は、第6流路27を介してポンプ20の流入側に接続されている。
【0020】
サブクーラ19は、凝縮器17で液化された作動流体をさらに冷却(過冷却)してキャビテーションの発生を防止するものである。キャビテーションが発生すると、ポンプ20による作動流体の供給効率が低下する。
【0021】
膨張機16及びポンプ20は、廃熱回収機器28のハウジング内に設けられており、該ハウジング内にはモータ・ジェネレータ29が設けられている。モータ・ジェネレータ29にはバッテリ30が電気的に接続されており、モータ・ジェネレータ29で生じた電力は、バッテリ30に蓄電される。
【0022】
バッテリ30の電気がモータ・ジェネレータ29に供給されると、モータ・ジェネレータ29が電動機として駆動されてポンプ20が駆動される。ポンプ20から吐出された作動流体は、熱交換器21にてエンジン11からの排気との熱交換により加熱される。加熱後の作動流体は、膨張機16で膨張し、この膨張により膨張機16が機械的エネルギー(駆動力)を出力する。この駆動力によってモータ・ジェネレータ29及びポンプ20が駆動される。このとき、エンジン11からの廃熱量に応じてモータ・ジェネレータ29の回転数が制御され、ポンプ20の駆動分を差し引いた膨張機16の発生駆動力が電力に変換されてバッテリ30に蓄電される。
【0023】
膨張を終えて圧力が低下した作動流体は、凝縮器17で冷却されて液化され、液化された作動流体がレシーバ18に一時的に貯留される。レシーバ18に貯留された作動流体は、膨張機16の出力に応じてサブクーラ19を経由してポンプ20に吸入される。以後、作動流体は、膨張機16、凝縮器17、レシーバ18、サブクーラ19、ポンプ20及び熱交換器21を流れて、ランキンサイクル装置15の回路を循環する。
【0024】
図2及び図3に示すように、車両10のフロントバンパ31の後側には凝縮器17及びサブクーラ19が配設されている。サブクーラ19は、凝縮器17の直上に配設されている。
【0025】
図3に示すように、凝縮器17及びサブクーラ19は、ラジエータ13よりも前方に配置されている。フロントバンパ31の下側及びフロントバンパ31の上側にはフロントグリル32,33が配設されている。車両10の前進走行時の車速風及びファン14の作動による冷却風は、フロントグリル32,33を通ってラジエータ13に向かう。
【0026】
サブクーラ19は凝縮器17よりもフロントバンパ31に対して近い位置に配置されている。つまり、サブクーラ19の中心191は凝縮器17の中心171よりもフロントバンパ31の上下方向の中心311に対して近い。本実施形態では、中心191は、中心311よりも下側にある。
【0027】
サブクーラ19は、前後方向に見て全てがフロントバンパ31と重なり合うように配置されており、凝縮器17は、前後方向に見て一部(上部)がフロントバンパ31と重なり合うように配置されている。
【0028】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
フロントグリル32,33を通過した冷却風の一部は、サブクーラ19へ向かい、サブクーラ19を通過する冷却風がサブクーラ19内の作動流体を更に冷却(過冷却)する。又、フロントグリル32を通過した冷却風の一部は、凝縮器17内の作動流体を冷却して液化する。
【0029】
凝縮器17において作動流体を冷却して液化するのに必要な冷却能力は、サブクーラ19において作動流体を過冷却するのに必要な冷却能力よりも大きい。つまり、凝縮器17における冷却のための風量は、サブクーラ19における冷却のための風量よりも多く必要となる。そのため、フロントグリル32を通過した冷却風をサブクーラ19よりも凝縮器17へ優先的に多く送ることが必要となる。
【0030】
サブクーラ19が凝縮器17よりもフロントバンパ31に対して近い位置となる配置では、フロントグリル32を通過した冷却風がサブクーラ19よりも凝縮器17へ優先的に多く送られる。
【0031】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)サブクーラ19が凝縮器17よりもフロントバンパ31に対して近い位置となる配置では、サブクーラ19が凝縮器17よりもフロントバンパ31に対して遠い位置となる配置に比べて、凝縮器17を冷却するための冷却風の風量が多くなる。そのため、車両10に搭載のランキンサイクル用の凝縮器17の凝縮効率が従来に比べて向上する。
【0032】
(2)サブクーラ19が高い位置にあるほど凝縮器17の最上位位置を高くすることができる。この場合、凝縮器17の最下位位置の高さが同じであるとすると、凝縮器17の最上位位置が高くなるほど凝縮器17の上下長さが増し、凝縮器17における受風面積が増える。前後方向に見てサブクーラ19の全てがフロントバンパ31と重なり合うように配置した構成は、凝縮器17における受風面積を増やすのに寄与する。
【0033】
(3)前後方向に見て凝縮器17の一部(上部)がフロントバンパ31と重なり合う構成は、凝縮器17における受風面積を増やすのに寄与する。
本発明では以下のような実施形態も可能である。
【0034】
○図4に示す第2の実施形態のように、サブクーラ19の直上に凝縮器17を配設してもよい。サブクーラ19は凝縮器17よりもフロントバンパ31の上下方向の中心311に対して近い位置となる。サブクーラ19は、前後方向に見て全てがフロントバンパ31と重なり合うように配置されており、凝縮器17は、前後方向に見て一部(下部)がフロントバンパ31と重なり合うように配置されている。
【0035】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
○図5に示す第3の実施形態のように、一対の凝縮器17A,17Bの間にサブクーラ19を配設してもよい。凝縮器17Aと凝縮器17Bとは、直列又は並列の関係にある。凝縮器17Aの中心171A及び凝縮器17Bの中心171Bは、フロントバンパ31の中心311に対してサブクーラ19の中心191よりも遠い位置にある。
【0036】
凝縮器17Aと凝縮器17Bとが直列関係にある場合には、サブクーラ19の流入側がレシーバ18〔図1参照〕を介して凝縮器17Bの流出側に接続されており、サブクーラ19の流出側が流路を介してポンプ20〔図1参照〕に接続されている。
【0037】
凝縮器17Aと凝縮器17Bとが並列関係にある場合には、凝縮器17Aの流出側と凝縮器17Bの流出側とが流路を介してレシーバ18〔図1参照〕に接続されている。
第3の実施形態は、凝縮器17A,17B全体の受風面積を増す上で特に好適である。
【0038】
○サブクーラ19の一部(下部又は上部)がフロントバンパ31から上下方向にはみ出していてもよい。
○第1の実施形態において、サブクーラ19の中心191がフロントバンパ31の中心311よりも上側にあってもよい。
【0039】
○第2の実施形態において、サブクーラ19の中心191がフロントバンパ31の中心311よりも下側にあってもよい。
○フロントグリルがフロントバンパ31の下側にのみ、又はフロントバンパ31の上側にのみ設けられて車両に本発明を適用してもよい。
【0040】
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
(イ)前記サブクーラの上下方向の中心が前記凝縮器の上下方向の中心よりも前記フロントバンパの上下方向の中心に対して近い位置となる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のランキンサイクル装置。
【0041】
(ロ)前記サブクーラは、前記凝縮器よりも上にある請求項1乃至請求項3、前記(イ)項のいずれか1項に記載のランキンサイクル装置。
(ハ)前記サブクーラは、前記凝縮器よりも下にある請求項1乃至請求項3、前記(イ)項のいずれか1項に記載のランキンサイクル装置。
【符号の説明】
【0042】
10…車両。15…ランキンサイクル装置。17,17A,17B…凝縮器。19…サブクーラ。31…フロントバンパ。32,33…フロントグリル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、作動流体を冷却する凝縮器とサブクーラとが上下方向に並設されていると共に、フロントバンパの上下方向の少なくともいずれか一方に設けられるフロントグリルからの冷却風により前記凝縮器及び前記サブクーラで前記作動流体が冷却されるランキンサイクル装置において、
前記サブクーラが前記凝縮器よりも前記フロントバンパに対して近い位置に配置されているランキンサイクル装置。
【請求項2】
前記サブクーラは、前後方向に見て全てが前記フロントバンパと重なり合うように配置されている請求項1に記載のランキンサイクル装置。
【請求項3】
前記凝縮器は、前後方向に見て一部が前記フロントバンパと重なり合うように配置されている請求項2に記載のランキンサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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