説明

ランタノイド錯体及び常温燐光発光材料

【課題】本発明は、新規なランタノイド錯体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、下記一般式(1);


(式中、Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等を示す。Z〜Zはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等を示す。)
で示される錯体であって、少なくとも1つの配位子の最低励起三重項エネルギーがガドリニウム原子の励起エネルギーよりも低いガドリニウム錯体にかかる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なランタノイド錯体及び常温燐光発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子は、有機化合物の薄膜に正孔及び電子を注入し、有機薄膜中で正孔と電子とが結合することにより生成する励起一重項の有機化合物からの発光(蛍光)を主として利用する。
【0003】
有機EL素子では、正孔と電子の結合により生成する励起状態は、一重項状態が25%、三重項状態が75%であると言われている。従って、生成した励起状態の75%は発光に寄与せず、エネルギーを熱として失い、発光効率の低下及び素子の劣化を引き起こす。
【0004】
そこで、燐光発光が可能な発光体を用いることにより、励起三重項のエネルギーを発光に利用して、発光効率の高い有機EL素子が注目されている。
【0005】
しかしながら、常温で発光する燐光材料は蛍光材料に比べて極めて少ない。そのため、燐光発光を利用できる波長域が限られている。例えば、常温で燐光発光するランタノイド錯体として、中心金属がEu(ユーロピウム)であるEu錯体を利用した発光材料が提供されている(特許文献1〜4)。これらはEu原子そのものが燐光発光するものであり、610nm付近の赤色発光に限られている。このように、従来の希土類錯体を利用した場合は中心金属が発光するものであり、中心金属の固有のエネルギー準位による発光に限られてしまうという問題が生じる。
【0006】
従って、様々な波長域で発光する常温燐光発光材料の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2003−81986号公報
【特許文献2】特開2004−179296号公報
【特許文献3】特開2004−262909号公報
【特許文献4】特開2005−82529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、様々な波長域の燐光を常温で発光する材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するランタノイド錯体を用いることによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記のランタノイド錯体に係る。
項1.下記一般式(1);
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Z〜Zはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。)
で示される錯体であって、少なくとも1つの配位子の最低励起三重項エネルギーがガドリニウム原子の励起エネルギーよりも低いガドリニウム錯体。
項2.前記ガドリニウム錯体が下記一般式(2);
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Z〜Zはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Phはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)
で示される項1に記載のガドリニウム錯体。
3.前記ガドリニウム錯体に配位している全ての配位子が、ガドリニウム原子の励起エネルギーよりも低い励起三重項エネルギーを有する、項1又は2に記載のガドリニウム錯体。
4.前記ガドリニウム錯体の有する配位子のうち少なくとも1つが1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンである項1〜3のいずれかに記載のガドリニウム錯体。
項5.前記ガドリニウム錯体の有する配位子のうち少なくとも1つが2,2’−ビス(ジフェニルホスフィニル)−1,1’−ビナフチルである請求項1〜4のいずれかに記載のガドリニウム錯体。
項6.下記式(3)で示されるガドリニウム錯体。
【0014】
【化3】

【0015】
項7.下記式(4)で示されるガドリニウム錯体。
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、nは1〜5のいずれかの整数を示す。)
項8.下記式(5)で示されるガドリニウム錯体。
【0018】
【化5】

【0019】
項9.請求項1〜8のいずれかに記載のガドリニウム錯体を具備する有機エレクトロルミネッセンス素子。
項10.下記一般式(6)
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、Lnはランタノイド原子を示す。Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Z〜Z14はそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。)
で示される錯体であって、且つ少なくとも1つの配位子の最低励起三重項エネルギーがランタノイド原子の励起エネルギーよりも低いランタノイド錯体を含み、
当該錯体を励起することにより、配位子のエネルギー準位に対応した波長を常温で燐光発光させるための発光材料。
項11.前記ランタノイド錯体に配位している全ての配位子が、ランタノイド原子の励起エネルギーよりも低い励起三重項エネルギーを有する、項10に記載の発光材料。
項12.前記ランタノイド原子が、励起された配位子から当該ランタノイド原子へのエネルギー移動を生じさせないことにより当該配位子を発光させる原子である、項10又は11に記載の発光材料。
【0022】
ランタノイド錯体
本発明のランタノイド錯体は、下記一般式(6);
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、Lnはランタノイド原子を示す。Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。Z〜Z14はそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。)
で示される錯体であって、且つ少なくとも1つの配位子の最低励起三重項エネルギーがランタノイド原子の励起エネルギーよりも低いランタノイド錯体を含むことを特徴とする。
【0025】
すなわち、本発明のランタノイド錯体は、β−ジケトン系配位子が3個配位し、かつホスフィンオキサイド系配位子が2個(二つのホスフィンオキサイド系配位子が架橋されていることにより1つの二座配位子を形成している場合は、1個)配位してなる。また、本発明のランタノイド錯体は、少なくとも一つの配位子(好ましくは全ての配位子)の最低励起三重項エネルギーが、中心金属であるランタノイド原子の励起エネルギーよりも低い。これらの構造により、励起された配位子からランタノイド原子へのエネルギー移動は起こらない(仮に、ランタノイド原子へのエネルギー移動が起こったとしても、当該ランタノイド原子から、より低い三重項エネルギーを有する配位子へエネルギーが移動する)ため、ランタノイド原子は発光しない。且つランタノイド原子による大きなスピン−軌道相互作用を配位子が受けるため、励起三重項状態から基底状態への遷移の禁制が緩和される。これらの結果、配位子は常温で燐光発光する。よって、本願発明のランタノイド錯体を用いることにより、当該錯体を励起させて、配位子のエネルギー準位に対応した波長の燐光を常温において発光させることができる。ひいては、配位子を適宜設定することにより、所望の波長の燐光を発光することができる。
【0026】
本願発明において、最低励起三重項エネルギーとは、最低励起三重項状態における電子のエネルギーと基底状態における電子のエネルギーとの差を意味する。
【0027】
β−ジケトン系配位子において、Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基、ハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。
【0028】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0029】
アルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらは、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよい。
【0030】
ハロゲン化アルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基であり、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。これらは、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよい。
【0031】
アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基等が挙げられる。
【0032】
ハロゲン化アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2〜10のハロゲン化アルケニル基であり、例えば、トリフルオロビニル基、ペンタフルオロプロペニル基、ヘプタフルオロブテニル基等が挙げられる。
【0033】
芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0034】
ハロゲン化芳香族基としては、例えば、フルオロフェニル基、フルオロナフチル基、フルオロカルバゾリル基、クロロフェニル基、クロロナフチル基、クロロカルバゾリル基、ブロモフェニル基、ブロモナフチル基、ブロモカルバゾリル基、ヨードフェニル基、ヨードナフチル基、ヨードカルバゾリル基等が挙げられる。
【0035】
ヘテロ芳香族基としては、例えば、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン化ヘテロ芳香族基としては、例えば、フルオロカルバゾリル基、クロロカルバゾリル基、ブロモカルバゾリル基、ヨードカルバゾリル基等が挙げられる。
【0037】
及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基、ハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。これらの具体例はXで上述したものが挙げられる。
【0038】
ホスフィンオキサイド系配位子において、Z〜Z14はそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基、ハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。これらの具体例はXで上述したものが挙げられる。
【0039】
一般式(6)のZ〜Z11から選ばれる任意の1つの基とZ12〜Z14から選ばれる任意の1つの基が同一の基であるか互いに結合で結ばれることによって、2つのリン原子が架橋されていてもよい。2つのリン原子を架橋する基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ジフルオロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、ヘキサフルオロプロピレン基、オクタフルオロブチレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ビナフチレン基、フルオロフェニレン基、フルオロビフェニレン基、フルオロナフチレン基、フルオロビナフチレン基、クロロフェニレン基、クロロビフェニレン基、クロロナフチレン基、クロロビナフチレン基、ブロモフェニレン基、ブロモビフェニレン基、ブロモナフチレン基、ブロモビナフチレン基、ヨードフェニレン基、ヨードビフェニレン基、ヨードナフチレン基、ヨードビナフチレン基等が挙げられる。
【0040】
中心金属であるLnは、ランタノイド原子であれば限定的でなく、具体的には、La,Ce,Pr,Nd,Pm、Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu等が挙げられる。この中でも、特にGdが最も好ましい。Gdはランタノイド原子の中で励起エネルギーが最も大きいため、励起された配位子からのエネルギー移動をより一層生じにくくできる結果、燐光発光できる波長の制限が非常に小さくなる。すなわち、赤色の常温燐光発光のほか、緑色、青色といった短波長の燐光を常温で発光できる。
【0041】
すなわち、本願発明は、下記一般式(1)のガドリニウム錯体等が好ましい。
【0042】
【化8】

【0043】
(式中Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基若しくはハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。Z〜Zはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基等を示す。)
で示される錯体であって、少なくとも1つの配位子の最低励起三重項エネルギーがガドリニウム原子の励起エネルギーよりも低いことを特徴とするガドリニウム錯体である。
【0044】
、Y、Y及びZ〜Zは、それぞれ上述したX、Y、Y及びZ〜Z14で上述したものが挙げられる。また、上記一般式(6)と同様に、Z〜Zから選ばれる任意の1つの基とZ〜Zから選ばれる任意の1つの基が同一の基であるか互いに結合で結ばれることによって、2つのリン原子が架橋されていてもよい。
【0045】
上記ガドリニウム錯体として、さらに好ましくは、下記一般式(2)で示されるものが挙げられる。
【0046】
【化9】

【0047】
(式中、Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Z〜Zはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Phはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)
としては一般式(6)で上述したものが挙げられ、好ましくは、水素原子、重水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基等である。
【0048】
及びZとしては上記一般式(6)で上述したものが挙げられ、好ましくは、フェニル基、ナフチル基、カルバゾリル基等である。
【0049】
及びZは同一の基であるか互いに結合で結ばれることによって、2つのリン原子が架橋されていてもよい。例えば、上記一般式(6)で上述したものが挙げられ、好ましくは、炭素数1〜5までのアルキレン基、ビナフチル基等等が挙げられる。
【0050】
及びYとしては上記一般式(6)で上述したものが挙げられ、好ましくは、トリフルオロメチル基等である。
【0051】
また、配位子として好ましいものは、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン及び2,2’−ビス(ジフェニルホスフィニル)−1,1’−ビナフチルである。すなわち、上記一般式(1)(2)及び(6)の錯体について、当該錯体の有する配位子のうち少なくとも1つが、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン及び2,2’−ビス(ジフェニルホスフィニル)−1,1’−ビナフチルの少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
本発明のガドリニウム錯体の最も好ましいものとして、下記一般式(3)、(4)及び(5)で示されるガドリニウム錯体が挙げられる。
【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
(式中、nは1〜5のいずれかの整数を示す。)
【0056】
【化12】

【0057】
式(3)及び(4)で示されるガドリニウム錯体は、ガドリニウム錯体に励起光(波長340nm〜360nm程度の光)を照射すると、配位子による青色の常温燐光(波長440nm〜530nm程度のブロードの光)が発光する。
【0058】
式(5)で示されるガドリニウム錯体は、ガドリニウム錯体に励起光(波長340nm〜360nm程度の光)を放射すると、配位子による緑色の常温燐光(波長500nm〜550nm程度のブロードの光)が発光する。
【0059】
これらの短波長の常温燐光発光は、1)中心金属であるガドリニウムの励起エネルギーよりも配位子の最低励起三重項エネルギーの方が低いため、配位子からガドリニウム錯体へのエネルギー移動が起こらないこと、2)ガドリニウム原子による重原子効果により配位子に大きなスピン−軌道相互作用を与えることができること等が理由と考えられる。
【0060】
本発明のランタノイド錯体は、常温の燐光発光用材料として用いることができるが、特に常温に限らず、低温においても発光できる。例えば、−196〜40℃程度という広い範囲において高い量子効率で燐光発光できる。
【0061】
配位子の燐光発光の量子収率(−196℃)は0.001以上であることが好ましく、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.1以上である。
【0062】
有機EL素子
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子は、通常、基板、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極を順次積層してなる。この有機EL素子の一例を図1に示す。
【0063】
本発明の有機EL素子は、本発明のランタノイド錯体を具備すればよい。すなわち、発光層中に本発明のランタノイド錯体を含んでいればよい。発光層には、その他の発光材料、ホスト材料、正孔輸送材料等が含まれていてもよい。なお、本発明のランタノイド錯体は発光材料として用いるだけでなく、当該錯体自身の励起エネルギーを移動させることによって他の化合物を発光させるホスト材料として用いることも可能である。
【0064】
ホスト材料は公知又は市販のものが使用でき、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0065】
発光層の厚みは特に制限されず、通常5nm〜100nm程度、好ましくは10nm〜500nm程度とすればよい。
【0066】
基板の材料としては公知又は市販のものが使用でき、例えば、ガラス基板、シリコン基板、プラスティック基板等が挙げられる。
【0067】
陽極としては、公知又は市販のものが使用でき、例えば、ITO(錫インジウム酸化物)等が挙げられる。
【0068】
正孔輸送層の材料としては、公知又は市販のものが使用でき、例えば、N,N´−ジフェニル−N,N´−ジ(m−トリル)ベンジジン(TPD)、N,N´−ジ(1−ナフチル)−N,N´−ジフェニルベンジジン(αNPD)等が挙げられる。
【0069】
電子輸送層の材料としては、公知又は市販のものが使用でき、例えば、2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)等が挙げられる。
【0070】
陰極の材料としては、公知又は市販のものが使用でき、例えば、アルミニウム、リチウム等が挙げられる。
【0071】
発光層は、真空蒸着等の公知の蒸着方法により正孔輸送層、電子輸送層等に成膜することができる。
【0072】
また、スピンコーティング、インクジェット印刷等の公知の塗布方法によっても成膜することができる。この塗布方法を採用する場合は、上記ガドリニウム錯体をポリビニルカルバゾール等のポリマーに分散することにより得られる分散体、上記ガドリニウム錯体にビニル基等の重合性置換基を導入した錯体を重合することにより得られる高分子錯体等の形態にして成膜すればよい。
【0073】
発光方法
本発明の発光方法は、下記一般式(6);
【0074】
【化13】

【0075】
(式中、Lnはランタノイド元素を示す。Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Z〜Z14はそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。)
で示される錯体であって、且つ少なくとも1つの配位子の最低励起三重項エネルギーがランタノイド元素の励起エネルギーよりも低いランタノイド錯体を励起することにより、配位子のエネルギー準位に対応した波長の燐光を常温で発光させることを特徴とする。
【0076】
Lnは上述したものが挙げられるが、発光させる波長の幅が広い観点から、Gdが好ましい。すなわち、上記式(6)が上記一般式(1)であることが好ましく、さらに好ましくは上記一般式(2)である。なお、各配位子も上述したものと(好ましいものも含めて)同様である。また、配位している全ての配位子が、ランタノイド錯体の励起エネルギーよりも低い最低励起三重項エネルギーを有することが好ましい。
【0077】
ランタノイド錯体を励起する方法は限定的でなく、例えば、所望の波長の光を照射する方法、所望の電界をかける方法、他の励起分子(例えば、発光層中に含まれるホスト材料)から当該錯体へエネルギーを移動させる方法等が挙げられる。
【0078】
例えば、所望の波長の光を照射する場合では、励起光の波長は限定的でなく、配位子等に応じて適宜設定すればよいが、通常は、200〜1000nm程度、好ましくは250nm〜780nm程度である。
【0079】
放射する光は燐光つまり、配位子における最低励起三重項状態からの遷移によるものである。配位子による発光のため、赤色のほか、青色、緑色といった短波長の燐光発光も常温で可能とする。発光する波長は、励起光の波長、配位子の種類等に応じて適宜決定されるが、通常は、300nm〜1000nm程度、好ましくは380nm〜780nm程度である。
【0080】
製造方法
本発明のランタノイド錯体は、例えば、ガドリニウム元素等のランタノイド元素並びに配位子(ホスフィンオキサイド系配位子及びβ−ジケトン系配位子)を同時又は別個に水又は有機溶媒に混合することにより、製造することができる。
【0081】
ガドリニウム錯体を例に挙げて具体的に説明する。
【0082】
酢酸ガドリニウムを溶解させた水溶液に、所望のβ−ジケトンのアンモニウム塩等を溶解させた水溶液を滴下し、混合・攪拌することにより、ガドリニウムのβ−ジケトン錯体水和物を沈殿させる。次いで、当該水和物及び所望のホスフィンオキサイドをメタノール等の有機溶媒に添加することにより、当該水和物中の水和水をホスフィンオキサイドで置換し、本発明のガドリニウム錯体が得られる。
【0083】
上記ガドリニウム水溶液及びβ−ジケトン水溶液の濃度等は限定されず、幅広い範囲から適宜選択できる。また、上記水和物沈殿及びホスフィンオキサイドの混合割合も特に限定されない。
【0084】
必要に応じて、得られたガドリニウム錯体を還流、濾過、再結晶等により、回収及び洗浄を行えばよい。
【発明の効果】
【0085】
本発明のランタノイド錯体を用いれば、従来発光できなかった波長の燐光をも常温で発光できる。
【0086】
本発明の発光方法によれば、適宜配位子を選択することにより、さまざまな波長域での燐光を容易に常温で発光することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところを一層明確にする。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
実施例1(Gd(HFA)・(TPPO)錯体の製造)
5.84gの28wt%アンモニア水を水118mlで希釈し、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン20.00gを室温で10分間で滴下後10分間攪拌し、アンモニウム塩の溶液を調製した。酢酸ガドリニウム四水和物12.60gを水126mlに溶解し、調製したアンモニウム塩の溶液を室温(25℃)で20分間で滴下した。室温で16時間攪拌後、生成した固体を濾過及び水洗し、トリス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ガドリニウム(III)二水和物(Gd(HFA)・2HO)18.25gを得た。
【0089】
Gd(HFA)・2HO5.00gとトリフェニルホスフィンオキサイド3.42gとをメタノール150mlに溶解し、16時間還流した。反応液を濃縮後、メタノールにより再結晶することにより、実施例1のガドリニウム錯体(Gd(HFA)・(TPPO)錯体)14.42gを得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C45.58 H2.52
理論値:C45.88 H2.49
【0090】
350nmで励起した実施例1のガドリニウム錯体の発光スペクトルを図2に示す。なお、本発明の実施例に挙げた全ての錯体について発光スペクトルの測定には粉末状の試料を用い、空気中及び/又は窒素中で測定した。ガドリニウムは紫外光に相当する励起エネルギーを持つが、実施例1のガドリニウム錯体は青色に発光した。従って、この発光は配位子由来の発光であると考えられる。また、空気中よりも窒素中の方が発光強度が高かった。これは酸素によって消光を受けることを示しており、実施例1のガドリニウム錯体の発光が燐光であることを示す。
【0091】
実施例2(Gd(HFA)・(DPPMO)錯体の製造)
ビス(ジフェニホスフィノ)メタン3.02gをテトラヒドロフラン40mlに溶解し、0℃に冷却した。これに34.5wt%過酸化水素水1.74gを20分間で滴下した後、室温で15時間攪拌した。反応混合物を濃縮後、生成した固体を濾過、エーテル洗浄し、ビス(ジフェニホスフィニル)メタン(DPPMO)2.52gを得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C71.57 H4.93
理論値:C72.11 H5.33
【0092】
Gd(HFA)・2HO2.00gとDPPMO1.02gとをメタノール63ml中に溶解し、16時間還流した。反応混合物を濃縮後、メタノールにより再結晶することにより、実施例2のガドリニウム錯体(Gd(HFA)・(DPPMO)錯体)を2.63g得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C39.10 H2.67
理論値:C40.21 H2.11
【0093】
350nmで励起した実施例2のガドリニウム錯体の発光を空気中及び窒素中で測定した。図3に発光スペクトルを示す。青色に発光したことから実施例1のガドリニウム錯体と同様に配位子由来の発光であり、酸素によって消光を受けることから実施例2のガドリニウム錯体の発光は燐光である。
【0094】
実施例3(Gd(HFA)・(DPPEO)錯体の製造)
1,2−ビス(ジフェニホスフィノ)エタン7.53gをテトラヒドロフラン96mlに溶解し0℃に冷却した。これに34.5wt%過酸化水素水4.19gを20分間で滴下した後、室温で16時間攪拌した。反応混合物を濃縮後、生成した固体を濾過、エーテル洗浄し、1,2−ビス(ジフェニホスフィニル)エタン「DPPEO」6.87gを得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C72.29 H5.18
理論値:C72.55 H5.62
【0095】
Gd(HFA)・2HO6.00g及びDPPEO3.17gをメタノール150mlに混合し、24時間還流した。反応混合物を濃縮後、メタノールにより再結晶することにより、実施例3のガドリニウム錯体(Gd(HFA)・(DPPEO)錯体)を4.32g得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C40.37 H2.36
理論値:C40.74 H2.25
【0096】
350nmで励起した実施例3のガドリニウム錯体の発光を空気中で測定した。図4に発光スペクトルを示す。
【0097】
実施例4(Gd(HFA)・(DPPPO)錯体の製造)
1,3−ビス(ジフェニホスフィノ)プロパン4.70gをテトラヒドロフラン58mlに溶解し0℃に冷却した。これに34.5wt%過酸化水素水2.53gを20分間で滴下した後、室温で16時間攪拌した。テトラヒドロフランを留去した後酢酸エチルより再結晶し、1,3−ビス(ジフェニホスフィニル)プロパン(DPPPO)4.54gを得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C72.95 H5.32
理論値:C72.97 H5.90
【0098】
Gd(HFA)・2HO5.00gとDPPPO2.73gをメタノール125mlに溶解し、20時間還流した。反応混合物を濃縮後、メタノールより再結晶することにより、実施例4のガドリニウム錯体(Gd(HFA)・(DPPPO)錯体)を3.70g得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C41.89 H2.53
理論値:C41.25 H2.39
【0099】
350nmで励起した実施例4のガドリニウム錯体の発光を空気中で測定した。図5に発光スペクトルを示す。
【0100】
実施例5(Gd(HFA)・(DPPBO)錯体の製造)
1,4−ビス(ジフェニホスフィノ)ブタン3.35gをテトラヒドロフラン40mlに溶解し0℃に冷却した。これに34.5wt%過酸化水素水1.74gを20分間で滴下した後、室温で16時間攪拌した。反応混合物を濃縮後、生成した固体を濾過、エーテル洗浄し、1,4−ビス(ジフェニホスフィニル)ブタン(DPPBO)3.55gを得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C74.10 H5.73
理論値:C73.35 H6.16
【0101】
Gd(HFA)・2HO2.00g及びDPPBO1.13gをメタノール63mlに溶解し、18時間還流した。反応混合物を濃縮後、メタノールより再結晶することにより、実施例5のガドリニウム錯体(Gd(HFA)・(DPPBO)錯体)を2.08g得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C42.17 H2.23
理論値:C41.76 H2.53
【0102】
350nmで励起した実施例5のガドリニウム錯体の発光を空気中で測定した。図6に発光スペクトルを示す。
【0103】
実施例1〜5のガドリニウム錯体の発光スペクトルはほぼ一致した。これは、発光が共通の配位子であるヘキサフルオロアセチルアセトン由来であり、実施例2〜5のガドリニウム錯体の発光も燐光であることを示している。
【0104】
実施例6(Gd(HFA)・(BINAPO)錯体の製造)
rac−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル2.50gにテトラヒドロフラン20mlを加え0℃に冷却した。これに34.5%過酸化水素水0.89gを10分間で滴下した後、室温で16時間攪拌した。反応混合物を濃縮後、生成した固体を濾過、エーテル洗浄し、粗生成物2.05gを得た。これをメタノールより再結晶し、rac−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィニル)−1,1’−ビナフチル(BINAPO)1.54gを得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C80.70 H4.52
理論値:C80.72 H4.93
【0105】
Gd(HFA)・2HO1.87g及びBINAPO1.50gをメタノール59mlに混合し、18時間還流した。反応混合物を濃縮後、メタノールより再結晶することにより、実施例6のガドリニウム錯体(Gd(HFA)・(BINAPO)錯体)を2.13g得た。元素分析の結果を次に示す。
分析値:C49.30 H2.55
理論値:C49.45 H2.46
【0106】
350nmで励起した実施例6のガドリニウム錯体の発光を空気中及び窒素中で測定した。図7に発光スペクトルを示す。実施例1〜5のガドリニウム錯体とは異なり、緑色に発光した。これより実施例6のガドリニウム錯体の発光はBINAPO由来であると考えられる。また、空気中よりも窒素中の方が発光強度が高かった。これは酸素によって消光を受けることを示しており、実施例6の発光が燐光であることを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の断面模式図の一例である。
【図2】実施例1のガドリニウム錯体の発光スペクトルである。
【図3】実施例2のガドリニウム錯体の発光スペクトルである。
【図4】実施例3のガドリニウム錯体の発光スペクトルである。
【図5】実施例4のガドリニウム錯体の発光スペクトルである。
【図6】実施例5のガドリニウム錯体の発光スペクトルである。
【図7】実施例6のガドリニウム錯体の発光スペクトルである。
【符号の説明】
【0108】
1・・・基板
2・・・陽極
3・・・正孔輸送層
4・・・発光層
5・・・電子輸送層
6・・・陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Z〜Zはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。)
で示される錯体であって、少なくとも1つの配位子の最低励起三重項エネルギーがガドリニウム原子の励起エネルギーよりも低いガドリニウム錯体。
【請求項2】
前記ガドリニウム錯体が下記一般式(2);
【化2】

(式中、Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Z〜Zはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Phはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)
で示される請求項1に記載のガドリニウム錯体。
【請求項3】
前記ガドリニウム錯体に配位している全ての配位子が、ガドリニウム原子の励起エネルギーよりも低い励起三重項エネルギーを有する、請求項1又は2に記載のガドリニウム錯体。
【請求項4】
前記ガドリニウム錯体の有する配位子のうち少なくとも1つが1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンである請求項1〜3のいずれかに記載のガドリニウム錯体。
【請求項5】
前記ガドリニウム錯体の有する配位子のうち少なくとも1つが2,2’−ビス(ジフェニルホスフィニル)−1,1’−ビナフチルである請求項1〜4のいずれかに記載のガドリニウム錯体。
【請求項6】
下記式(3)で示されるガドリニウム錯体。
【化3】

【請求項7】
下記式(4)で示されるガドリニウム錯体。
【化4】

(式中、nは1〜5のいずれかの整数を示す。)
【請求項8】
下記式(5)で示されるガドリニウム錯体。
【化5】

【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のガドリニウム錯体を具備する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
下記一般式(6)
【化6】

(式中、Lnはランタノイド原子を示す。Xは水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。Z〜Z14はそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、芳香族基、ハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基又はハロゲン化ヘテロ芳香族基を示す。)
で示される錯体であって、且つ少なくとも1つの配位子の最低励起三重項エネルギーがランタノイド原子の励起エネルギーよりも低いランタノイド錯体を含み、
当該錯体を励起することにより、配位子のエネルギー準位に対応した波長を常温で燐光発光させるための発光材料。
【請求項11】
前記ランタノイド錯体に配位している全ての配位子が、ランタノイド原子の励起エネルギーよりも低い励起三重項エネルギーを有する、請求項10に記載の発光材料。
【請求項12】
前記ランタノイド原子が、励起された配位子から当該ランタノイド原子へのエネルギー移動を生じさせないことにより当該配位子を発光させる原子である、請求項10又は11に記載の発光材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−210945(P2007−210945A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32622(P2006−32622)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】