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ランフラットタイヤ
説明

ランフラットタイヤ

【課題】ランフラット耐久性能の向上したランフラットタイヤを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィラメントを撚り合わせて接着剤組成物で処理したコードを用いた補強コード層が配設されている。ポリエステルフィラメントが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする特定の固有粘度のポリエステルからなる繊維であって、繊維中の末端カルボキシ基量およびX線小角回折による長周期が特定範囲で、表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着したポリエステル繊維よりなる。接着剤組成物が特定の熱可塑性高分子重合体と、特定の水溶性高分子と、ジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤との反応生成物等から選択される化合物と、脂肪族エポキシド化合物とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はランフラットタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、補強コード層の補強材として用いるポリエステルコードの改良に係るランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は重量当たりの強度が高く、また、廉価であるため、汎用コードとしてタイヤの補強材等に用いられている。PET等の有機繊維からなるコードをタイヤの補強材として用いる際には、一般に、コードに対し、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系接着剤等の接着剤による浸漬処理を施した後に、ゴムを被覆して、ゴム−コード複合体としてタイヤに適用する。しかし、PET等のポリエステル繊維の表面には、その化学構造上、反応活性点が少ないため、コードとゴムとの複合工程において、フィラメントと接着剤との間の接着力を確保することが困難であった。
【0003】
PETとゴムとの接着性をより向上させる技術として、例えば、特許文献1には、PETをエポキシ系接着剤に一度浸漬した後、RFL系の接着剤に再度浸漬させる2浴処理が開示されている。また、エポキシ系接着剤の改良についても検討がなされており、例えば、特許文献2には、水溶性高分子と、芳香族類をメチレン結合した構造を含有する有機ポリイソシアネート類、複数の活性水素を有する化合物および熱解離性ブロック化剤を含む成分を反応させて得られる水性ウレタン化合物と、を含むエポキシ系接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−355875号公報
【特許文献2】特開2001−98245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ランフラットタイヤのランフラット耐久性を向上させる手法の一つとして、トレッドのショルダー部からサイド部にかけて補強コード層を適用することが提案されている。しかしながら、この補強コード層のコード材質としてポリエステル繊維を使用すると、ランフラット走行時に補強コードの剥離破壊が発生して、タイヤが早期故障してしまう場合があった。この原因は、ポリエステル繊維とゴムとの間の接着力不足にあるものと考えられる。
【0006】
上記特許文献1において提案されている2浴処理、および特許文献2において提案されているエポキシ系接着剤組成物によれば、PETとゴムとの接着性を向上させることができるが、高速環境や高負荷環境でタイヤを用いる場合には十分なものではなく、ポリエステル繊維とゴムとの間において、動的歪の入力下でのより強固な接着性を実現して、ランフラット耐久性能を向上したランフラットタイヤを実現することが求められていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、補強コード層の補強材として用いるポリエステルコードを改良することで、ランフラット耐久性能の向上したランフラットタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定のポリエステルフィラメントを撚糸してコードとした後、所定のエポキシ系接着剤組成物を用いて接着剤処理をすることで、従来は得られなかった動的接着性(耐熱接着性)の飛躍的な向上が実現でき、これを補強コード層の補強材として用いることで、ランフラットタイヤのランフラット耐久性能が向上できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のランフラットタイヤは、左右一対のビード部と、該ビード部から夫々タイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部と、該一対のサイドウォール部間に跨って延び接地部を形成するトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強する1枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスのクラウン部タイヤ半径方向外側に配置された少なくとも1層のベルトと、前記サイドウォール部において該カーカスの内側に配置された断面三日月状のサイド補強ゴム層と、を備えるランフラットタイヤにおいて、
少なくともタイヤ最大幅位置における、前記カーカスのタイヤ幅方向外側に、一枚以上の補強コード層が配設され、
前記補強コード層が、ポリエステルフィラメントを撚り合わせた後に接着剤組成物で接着剤処理されてなるポリエステルコードのゴム引き層からなり、
前記ポリエステルフィラメントが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、固有粘度が0.85以上のポリエステルからなる繊維であって、繊維中の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上であり、X線小角回折による長周期が9〜12nmであり、繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着してなるポリエステル繊維よりなり、かつ、
前記接着剤組成物が、(A)2−オキサゾリン基若しくは(ブロックド)イソシアネート基を含有するエチレン性付加重合体、または、ヒドラジノ基を含有するウレタン系高分子重合体からなる熱可塑性高分子重合体と、(B)無水マレイン酸単位およびイソブチレン単位を含んでなる共重合体またはその誘導体からなる水溶性高分子と、(C)ジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤との反応生成物、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、エポキシクレゾールノボラック樹脂からなる化合物、または、芳香族類をメチレン結合した構造を有する有機ポリイソシアネート類、複数の活性水素を有する化合物およびイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤を反応させて得られる水性ウレタン化合物と、(D)脂肪族エポキシド化合物と、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、「タイヤ最大幅位置」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会) YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation) STANDARDS MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)YEAR BOOK等に規定されたリムにタイヤを組み付けて、JATMA等の規格においてタイヤサイズに応じて規定された最高空気圧を充填した状態での、タイヤ幅方向断面内の最大幅位置をいうものとする。
【0011】
本発明のタイヤにおいては、前記ポリエステルコードが、さらに、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス系接着剤組成物で接着剤処理されてなることが好ましい。また、本発明において、前記接着剤組成物は、さらに、(E)金属塩と、(F)金属酸化物と、(G)ゴムラテックスと、からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものとすることができる。さらに、本発明においては、前記ポリエステル繊維の繊維表面の末端カルボキシ基量が10当量/ton以下であることが好ましく、前記ポリエステル繊維の繊維横軸方向の結晶サイズが35〜80nmであることも好ましい。さらにまた、前記ポリエステル繊維の繊維中の末端メチル基量は、好適には2当量/ton以下であり、前記ポリエステル繊維の繊維中の酸化チタン含有量は、好適には0.05〜3.0質量%であり、前記ポリエステル繊維の繊維表面のエポキシ指数は、好適には1.0×10−3当量/kg以下である。
【0012】
さらにまた、本発明においては、前記補強コード層のコード角度が、タイヤ半径方向に対し10°未満であることが好ましい。さらにまた、前記補強コード層は、少なくとも前記ベルトの端部から、前記カーカスに沿って、前記ビードコアのタイヤ半径方向外側端まで延在するものとすることが好ましく、少なくとも前記ベルトの端部から、前記カーカスに沿って、該ビードコアのタイヤ幅方向外側まで延在するものとすることも好ましい。さらにまた、本発明において、前記ポリエステルコードの下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (1)
(式中、Nは撚り数(回/10cm)であり、ρはコードの比重(g/cm)であり、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である)で定義される撚り係数Ntが、0.20以上0.55以下であることが好ましく、前記ポリエステルコードの総繊度が2000dtex以上5100dtex以下であることが好ましく、前記カーカスプライが、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはセルロース系繊維からなるコードのゴム引き層からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、ランフラット耐久性能の向上したランフラットタイヤを実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のランフラットタイヤの一例を示す幅方向片側断面図である。
【図2】本発明のランフラットタイヤの他の例を示す幅方向片側断面図である。
【図3】本発明のランフラットタイヤのさらに他の例を示す幅方向片側断面図である。
【図4】本発明のランフラットタイヤのさらに他の例を示す幅方向片側断面図である。
【図5】本発明のランフラットタイヤのさらに他の例を示す幅方向片側断面図である。
【図6】実施例におけるタイヤ補強用コードの作製方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、詳細に説明する。
図1に、本発明のランフラットタイヤの一例の幅方向片側断面図を示す。図示するように、本発明のランフラットタイヤは、左右一対のビード部1と、ビード部1から夫々タイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部2と、一対のサイドウォール部2間に跨って延び接地部を形成するトレッド部3とを有する。また、本発明のランフラットタイヤは、一対のビード部1間にトロイド状に延在してこれら各部1,2,3を補強する1枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、サイドウォール部2においてカーカス4の内側に配置された断面三日月状のサイド補強ゴム層5と、を備えている。
【0016】
また、図示するタイヤにおいては、ビード部1内に夫々埋設されたリング状のビードコア6のタイヤ半径方向外側にビードフィラー7が配置されており、カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側には、2枚のベルト層からなるベルト8が配置されている。さらに、ベルト8のタイヤ半径方向外側には、ベルト8の全体を覆うベルト補強層9Aと、このベルト補強層9Aの両端部のみを覆う一対のベルト補強層9Bとが配置されている。
【0017】
本発明のランフラットタイヤにおいては、少なくともタイヤ最大幅位置における、カーカス4のタイヤ幅方向外側に、1枚以上、好適には1〜2枚の補強コード層10が配設されている。少なくともタイヤ最大幅位置において補強コード層10を配置することで、ランフラット走行時におけるタイヤサイド部の撓みを抑制することができ、ランフラット耐久性能を向上することが可能となる。
【0018】
補強コード層10は、図示する例では1層にて配設しているが、2層以上としてもよく、層数には特に制限はない。また、補強コード層10のコード角度は、タイヤ半径方向に対し10°未満とすることが好ましい。コード角度が10°を超えると、通常内圧時における縦バネが悪化して、乗り心地を損なうおそれがある。また、補強コード層10におけるコードの打込み数は、35〜60本/50mmとすることができる。
【0019】
また、図1に示す例では、補強コード層10は、ベルト8の端部からタイヤサイド部の最大幅部を超える位置まで、カーカス4の折返し部4bのタイヤ幅方向外側を覆うように配置されているが、少なくともタイヤ最大幅位置に配置されているものであれば、補強コード層10の配置領域は、これに限定されない。例えば、図2に示すように、補強コード層20を、ベルト8の端部から、タイヤサイド部の最大幅部における、カーカス4の折返し部4bの端部まで配置することもでき、この場合、特に、サイド補強ゴム層5の屈曲に対する補強効果を得ることができる。また、図3に示すように、補強コード層30を、ベルト8の端部から、カーカス4の本体部4aおよび折返し部4bに沿って、ビードコア6のタイヤ幅方向外側まで延在させることもでき、この場合、特に、カーカス4の本体部4aおよびサイド補強ゴム層5の屈曲に対する補強効果を得ることができる。さらに、図4に示すように、補強コード層40を、ベルト8の端部から、カーカス4の本体部4aに沿ってビードコア6のタイヤ半径方向外側端まで延在させることもでき、この場合、特に、サイドウォール部におけるカーカス4の本体部4aおよびサイド補強ゴム層5の屈曲に対する補強効果を得ることができる。さらにまた、図5に示すように、補強コード層50,60を、ベルト8の端部から、タイヤサイド部の最大幅部における、カーカス4の折返し部4bの端部までの領域と、ビードフィラー7のタイヤ幅方向内側に沿う領域との両方に配置することもでき、この場合、特に、サイド補強ゴム層5およびビード部1の屈曲に対する補強効果を得ることができる。
【0020】
本発明のタイヤは、上記補強コード層が、特定のポリエステルフィラメントを撚り合わせた後に特定の接着剤組成物で接着剤処理されてなるポリエステルコードのゴム引き層からなる点に特徴を有する。具体的には、本発明のタイヤにおいては、補強コード層に用いるポリエステルフィラメントとして、繊維表面に特定のエポキシ系表面処理剤が付着した特定のポリエステルフィラメントを用いるとともに、接着剤組成物として、特定のエポキシ系接着剤組成物を用いる。このような構成としたことで、従来は確保しにくかったゴムとの間の接着性を向上したポリエステルコードを得ることができ、特に、高負荷の動的歪を繰り返し入力した際の高発熱時のゴム−ポリエステルコード間の接着性を、飛躍的に向上することが可能となったものである。よって、本発明においては、このポリエステルコードを補強コード層に適用したことで、ランフラット走行時における剥離破壊の発生を抑制することができ、これにより、耐久性の向上したランフラットタイヤを実現することが可能となった。本発明においては、特定のポリエステルフィラメントと特定の接着剤組成物との組合わせを用いたことで、本発明の所期の効果が得られることを見出したものであり、本発明に係る特定のポリエステルフィラメントと従来一般的な接着剤との組合わせ、または、従来一般的なポリエステル繊維と本発明に係る特定の接着剤組成物との組合わせにおいては、ランフラット走行時における補強コード層の剥離破壊の発生を抑制する効果は、十分には得られない。
【0021】
まず、本発明において用いるポリエステルフィラメントについて説明する。
本発明において用いるポリエステルフィラメントは、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、固有粘度が0.85以上のポリエステルからなる繊維であって、繊維中の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上であり、X線小角回折による長周期が9〜12nmであり、繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着してなるポリエステル繊維よりなるものである。
【0022】
上記ポリエステル繊維の固有粘度としては、0.85以上であることが必要であり、1.10以下であることが好ましい。より好適には、固有粘度が0.90〜1.00の範囲のポリエステル繊維を用いる。固有粘度が0.85未満であると、ポリエステル繊維の強度が十分ではなく、特に、タイヤ加硫工程における強力低下を十分に抑制することができない。
【0023】
また、上記ポリエステル繊維においては、そのポリマー全体の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上であって、その繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着していることが必要である。従来、タイヤ補強用に用いられるポリエステル繊維においては、その耐熱劣化性を向上させる目的等のために、ポリマーのカルボキシ基を15当量/ton以下に保つことが一般的な手法であった。しかし、タイヤ補強用のポリエステル繊維には、繊維の強力維持以外にゴムとの接着性維持の必要性が高いので、本発明に係るポリエステル繊維のようにX線小角回折による長周期が9〜12nmと小さく、かつ、表面にエポキシ処理が施されている場合には、20当量/ton以上のカルボキシ基量が、タイヤ補強用として最も適していることを本発明者らは見出したものである。ポリマー中のカルボキシ基量の上限は、好適には40当量/ton以下であり、より好適には、21〜25当量/tonの範囲のカルボキシ基量とする。
【0024】
ここで、上記ポリエステル繊維の表面に付着させるエポキシ基を有する表面処理剤としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物の1種または2種以上の混合物であるエポキシ化合物を含有するものが好適である。より具体的には、ハロゲン含有のエポキシ類が好ましく、例えば、エピクロルヒドリン多価アルコールまたは多価フェノールとの合成によって得られるものを挙げることができ、グリセロールポリグリシジルエーテルなどの化合物が好ましい。このようなエポキシ化合物を含む表面処理剤の繊維表面への付着量としては、0.05〜1.5質量%、好適には0.10〜1.0質量%の範囲である。表面処理剤には、平滑剤、乳化剤、帯電防止剤、その他の添加剤等を必要に応じて混合してもよい。
【0025】
さらに、上記ポリエステル繊維においては、X線小角回折による長周期が9〜12nmであることが必要である。ここでいうX線小角回折による長周期とは、繊維縦軸方向のポリエステルポリマーにおける結晶と結晶との間隔を意味する。本発明に係るポリエステル繊維におけるこの長周期は、短い点に特徴があり、結晶と結晶とを結ぶタイ分子の数が多くなり、結果として、タイヤ補強用繊維として用いた場合の協力維持率を高く保つことができるのである。また、長周期を上記範囲とすることにより、繊維の物性を、高モジュラスかつ低収縮率のタイヤ補強用繊維に適した物性とすることができる。一般的には、長周期の範囲としては、9nmが下限となる。好適には、上記ポリエステル繊維のX線小角回折による長周期は、10〜11nmの範囲とする。
【0026】
本発明において、上記ポリエステル繊維の繊維表面(原糸表面)の末端カルボキシ基量としては、10当量/ton以下が好ましい。本発明に係るポリエステル繊維におけるポリマー全体のカルボキシ基量は、前述のとおり20当量/ton以上とすることが必要であるが、繊維表面のカルボキシ基量については、繊維表面に付着しているエポキシ化合物との反応により、それより少ない10当量/ton以下となっていることが好ましい。このようにポリマー中のカルボキシ基が繊維表面においてエポキシ基と反応することにより、本発明に係るポリエステル樹脂は、極めて優れた接着性能を有するものとなる。このとき、繊維表面の末端カルボキシ基量が多く残存しすぎると、耐熱性や接着性が低下する傾向となる。
【0027】
また、上記ポリエステル繊維は、繊維横軸方向の結晶サイズが35〜80nmの範囲であることが好ましい。本発明に係るポリエステル繊維は、その繊維縦軸の結晶の間隔である長周期が12nm以下と短いが、高強力繊維とするためには結晶の大きさも必要であり、本発明においては、繊維の横軸方向の結晶サイズが35nm以上に成長することが好ましい。但し、結晶サイズが大きすぎても繊維が剛直となり疲労性が低下するので、好適には、結晶サイズは80nm以下とする。また、繊維横軸方向の結晶サイズは、より好適には、40〜70nmの範囲とする。このように、繊維の横軸方向に結晶が成長することにより、タイ分子が繊維横軸方向へも発達しやすくなるので、繊維の縦横方向に3次元的な構造が構築され、タイヤ補強用に特に適した繊維となる。さらに、このような3次元構造をとることにより、繊維の損失係数tanδが低くなる。その結果、繰返し応力下での発熱量を抑制でき、繰返し応力を与えた後の接着性能を高く保つことが可能となり、タイヤ補強用途に特に好ましい繊維となる。
【0028】
さらに、上記ポリエステル繊維においては、その繊維中の末端メチル基量が2当量/ton以下であることが好ましく、より好ましくは、末端メチル基が含まれていないものとする。ポリエステルポリマー中のメチル基は、反応性が低く、エポキシ基とまったく反応しないために、接着性の向上に有効なカルボキシ基とエポキシ基との反応を阻害する傾向にあるためである。繊維を構成するポリマー中に、末端メチル基がないか、または、少ない場合には、表面処理剤中のエポキシ基との高い反応性が確保され、高い接着性や表面保護性能を確保することが可能となる。
【0029】
さらにまた、上記ポリエステル繊維においては、繊維中の酸化チタン含有量が0.05〜3.0質量%であることが好ましい。酸化チタン含有量が0.05質量%より少ないと、延伸工程等でローラと繊維との間に働く応力を分散させるための平滑効果が不十分となる傾向にあり、最終的に得られる繊維の高強度化に不利となるおそれがある。一方、酸化チタンの含有量が3.0質量%より多い場合には、酸化チタンがポリマー内部において異物として作用して延伸性を阻害し、最終的に得られる繊維の強度も低下する傾向にある。
【0030】
さらにまた、上記ポリエステル繊維においては、その繊維表面におけるエポキシ指数が1.0×10−3当量/kg以下であることが好ましい。特には、ポリエステル繊維1kgあたりのエポキシ指数が0.01×10−3〜0.5×10−3当量/kgであることが好ましい。繊維表面のエポキシ指数が高い場合には、未反応のエポキシ化合物が多い傾向にあり、例えば、撚糸工程で粘性を帯びたスカムがガイド類に大量に発生するなど、繊維の工程通過性が低下するとともに、撚糸斑等の製品品質の低下を招く問題が発生する。
【0031】
上記ポリエステル繊維の強度としては、4.0〜10.0cN/dtexの範囲であることが好ましい。強度が低すぎる場合はもちろん、高すぎる場合も、結果的には、ゴム中中での耐久性に劣る傾向となる。例えば、ぎりぎりの高強度での生産を行うと、製糸工程での断糸が発生しやすい傾向となり、工業繊維としての品質安定性に問題が生ずる傾向となる。また、繊維の180℃における乾熱収縮率は、1〜15%の範囲であることが好ましい。乾熱収縮率が高すぎる場合、加工時の寸法変化が大きくなる傾向にあり、繊維を用いた成形品の寸法安定性に劣るものとなりやすい。
【0032】
本発明に用いるポリエステルコードは、撚糸後に、特定のエポキシ系接着剤組成物により接着剤処理されている。次に、本発明において用いる接着剤組成物について説明する。
本発明に用いる接着剤組成物としては、(A)2−オキサゾリン基若しくは(ブロックド)イソシアネート基を含有するエチレン性付加重合体、または、ヒドラジノ基を含有するウレタン系高分子重合体からなる熱可塑性高分子重合体と、(B)無水マレイン酸単位およびイソブチレン単位を含んでなる共重合体またはその誘導体からなる水溶性高分子と、(C)ジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤との反応生成物、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、エポキシクレゾールノボラック樹脂からなる化合物、または、芳香族類をメチレン結合した構造を有する有機ポリイソシアネート類、複数の活性水素を有する化合物およびイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤を反応させて得られる水性ウレタン化合物と、(D)脂肪族エポキシド化合物と、を含むものが挙げられる。
【0033】
(A)熱可塑性高分子重合体は、主鎖がアクリル系重合体、酢酸ビニル系重合体、酢酸ビニル・エチレン系重合体などのエチレン性付加重合体、または直鎖構造を主体とするウレタン系高分子重合体のものである。また、熱可塑性高分子重合体の主鎖がエチレン性付加重合体からなる場合、実質的に炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体由来の単位からなり、共役ジエン単量体等により導入される硫黄反応性のあるアリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合が、単量体組成比で10%以下であることが好ましい。また、熱可塑性高分子重合体のペンダント基としての架橋性を有する官能基としては、オキサゾリン基、または(ブロックド)イソシアネート基である。また、熱可塑性高分子重合体は、好ましくは直鎖状構造を主体とする比較的高分子量領域の高分子重合体であり、特に好ましくは、ポリスチレン換算による重量平均分子量が10,000以上である。さらに、熱可塑性高分子重合体は、好ましくは比較的低〜中分子量領域の分子であり、特に好ましくは、分子量9,000以下である。さらにまた、熱可塑性高分子重合体は、ペンダント基として2−オキサゾリン基を含有するエチレン性付加重合体からなることが好ましい。さらにまた、熱可塑性高分子重合体の主鎖が直鎖状構造を主体とするポリウレタン系重合体からなり、ペンダント基としてヒドラジノ基を含有するポリウレタン重合体である。
【0034】
上記熱可塑性高分子重合体は、脂肪族エポキシド化合物と水溶性高分子または水性ウレタン化合物とを含み硬くなりがちな接着剤組成物マトリックスの可撓性を高める目的で、接着剤組成物に含有させる熱可塑性樹脂である。硫黄を含むゴム物品等では、熱可塑性高分子重合体の主鎖骨格に硫黄反応性があると硫黄架橋に伴う接着の熱劣化が大きくなるので、本発明においては、熱可塑性高分子重合体が、アリル位に水素原子を有する炭素−炭素二重結合を実質的に有しないものとしている。また、熱可塑性高分子重合体の主鎖骨格に、ペンダント基として結合する架橋性のある官能基、特に、合成樹脂表面の活性水素やカルボニル基に架橋性のある基が適度に含まれると、接着剤組成物の被覆層と合成樹脂表面の結合が得られるほか、分子内架橋などにより高温時の分子流動が抑制され、高温時接着力が向上するため好ましい。なお、過度な架橋基量になると、化学的耐熱性が低下するので好ましくない。熱可塑性高分子重合体に含ませる架橋性のある官能基量は、熱可塑性高分子重合体の主鎖骨格の分子量、ペンダント基としての架橋性のある官能基の種類や分子量などに依存する。一般的には、かかる架橋性のある官能基量が、熱可塑性高分子重合体の乾燥総重量に対し、0.01mmol/g〜6.0mmol/gの範囲にあることが好ましい。
【0035】
上記熱可塑性高分子重合体は、上述したように、接着剤や粘着剤、塗料、バインダー、樹脂改質剤、コーティング剤等として各種用途で広く用いられる熱可塑性有機重合体を主骨格とし、主鎖構造に硫黄などの架橋剤の反応点となるアリル位に水素原子を有する炭素−炭素二重結合を実質的に含有せず、かつ、ペンダント基として架橋性の官能基を有するものである。なお、熱可塑性高分子重合体は、側鎖など、主鎖以外の構造がある場合には、炭素−炭素二重結合を持つことができるが、この二重結合は硫黄との反応性が低い、例えば、共鳴構造により安定的な、芳香性の炭素−炭素二重結合などが好ましい。特に、工業的には、熱可塑性高分子重合体としては、アクリル系重合体、酢酸ビニル系重合体、酢酸ビニル・エチレン系重合体などのエチレン性付加重合体を好ましく用いることができる。また、直鎖状構造を主体とする比較的高分子量領域のウレタン系高分子重合体などの熱可塑性有機重合体も、分子内に存在する凝集エネルギーの大きいウレタン結合やウレタン結合による分子間2次結合による凝集破壊抗力が高く、耐久性が良好になるため、好ましく用いることができる。
【0036】
以下、熱可塑性高分子重合体の主鎖が、(i)エチレン性付加重合体の場合、および、(ii)ウレタン系高分子重合体の場合に分けて説明する。
(i)熱可塑性高分子重合体の主鎖がエチレン性付加重合体からなる場合には、炭素−炭素二重結合を1つ有するエチレン性不飽和単量体および炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体由来の単位からなり、好ましくは、付加反応性のある炭素−炭素二重結合が、全単量体の仕込み量を基準として単量体組成比で10mol%以下である重合体であり、好ましくは0mol%である。
【0037】
主鎖がエチレン性付加重合体からなる熱可塑性高分子重合体の場合、主鎖骨格を構成する単量体で、炭素−炭素二重結合を1つ有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、スチレン、スルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族単量体類;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性カルボン酸類およびその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチエレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル等の不飽和カルボン酸のエステル類;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のモノエステル類;イタコン酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のジエステル類;アクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、マレイン酸アミド等のα,β−エチレン性不飽和酸のアミド類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリルニトリル等の不飽和ニトリル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルケトン;ビニルアミド;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の含ハロゲンα,β−不飽和単量体類;酢酸ビニル、吉草酸ビニル、カプリル酸ビニル、ビニルピリジン等のビニル化合物;2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどの付加重合性オキサゾリン類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;ビニルエトキシシラン、α−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物などが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの単量体のラジカル付加重合により、熱可塑性高分子重合体を得ることが好ましい。
【0038】
また、主鎖骨格を構成する単量体で、炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどのハロゲン置換ブタジエンなどの共役ジエン系単量体などが挙げられ、また、非共役ジエン系単量体としては、ビニルノーボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン系単量体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
主鎖骨格がエチレン性付加重合体からなる熱可塑性高分子重合体は、炭素−炭素二重結合1つ有するエチレン性不飽和単量体および炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体由来の単位からなり、好ましくは、硫黄反応性のある炭素−炭素二重結合が、全単量体の仕込み量を基準として単量体組成比で10mol%以下である重合体で、好ましくは0mol%である。
【0040】
上記の単量体をラジカル付加重合させて得られる熱可塑性高分子重合体のガラス転移温度は、−90℃以上180℃以下が好ましく、より好ましくは−50℃以上120℃以下、更に好ましくは0℃以上100℃以下である。この理由は、熱可塑性高分子重合体のガラス転移温度が、−90℃未満であると高温使用時のクリープ性が大きくなり、180℃以上では硬くなりすぎるため、軟質な熱可塑性樹脂特有の応力緩和性が小さくなり、また、タイヤ使用時などの高歪下でのコード疲労性が低下するからである。
【0041】
ラジカル付加重合により得られる熱可塑性高分子重合体に、ペンダント基として導入する架橋性を有する官能基としては、オキサゾリン基、エポキシ基、アジリジン基、カルボジイミド基、ビスマレイミド基、ブロックドイソシアネート基、ヒドラジノ基、エピチオ基が挙げられる。架橋性の官能基を導入する理由は、熱可塑性高分子重合体に接する他の接着剤組成物成分や被着体成分との間で架橋反応することにより、接着性が向上するからである。
【0042】
ラジカル付加重合により得られる重合体に、架橋性を有する官能基を導入して、熱可塑性高分子重合体とする方法としては、特に限定されない。例えば、オキサゾリンを有する付加重合性単量体、エポキシ基を有する付加重合性単量体、マレイミドを有する付加重合性単量体、ブロックドイソシアネート基を有する付加重合性単量体、エピチオ基を有する付加重合性単量体等を、上記ラジカル付加重合により得られる重合体を重合する際に共重合させる方法等を採用することができる。(特開2001−98245 [0061])
【0043】
ペンダント基としてオキサゾリンを有する付加重合性単量体は、下記の一般式、

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、アルキル、アラルキル、フェニルまたは置換フェニルであり、Rは付加重合性不飽和結合を持つ非環状有機基である)により表される。
【0044】
オキサゾリンを有する単量体としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。これらのうち、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが、工業的にも入手し易いため好適である。
【0045】
ペンダント基としてブロックドイソシアネート基を有する付加重合性単量体としては、下記の一般式、

(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Xは−OBO−(但し、Bはハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数2〜10のアルキレン基である)または−NH−であり、Yは芳香族ジイソシアネートのイソシアネート残基であり、Zはケトオキシムの水素残基である)で表される化合物が好ましい。
【0046】
ペンダント基としてブロックドイソシアネート基を有する付加重合性単量体は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基を有する重合性単量体に、公知のブロック剤を付加反応させることで得られる。イソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤としては、例えば、フェノール、チオフェノール、クロルフェノール、クレゾール、レゾルシノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−sec−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等のフェノール類;イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等の第2級または第3級のアルコール;ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類;フタル酸イミド類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム等のラクタム類;ε−カプロラクタム等のカプロラクタム類;マロン酸ジアルキルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステルなどの活性メチレン化合物;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;3−ヒドロキシピリジンなどの塩基性窒素化合物および酸性亜硫酸ソーダ等が挙げられる。
【0047】
上記の熱可塑性高分子重合体としては、長期貯蔵時における架橋性官能基の保存安定性が良好であるオキサゾリン基を有する熱可塑性高分子重合体等が好適に用いられる。
【0048】
なお、上記のエチレン性付加重合体からなる熱可塑性高分子重合体は、水分散性もしくは水溶性であると、環境への汚染が少ない水を溶剤に用いることができるので好ましい。特に好ましくは、水分散性樹脂である。
【0049】
(ii)熱可塑性高分子重合体がウレタン系高分子重合体からなる場合には、本発明では、熱可塑性高分子重合体の主構造は、主に、ポリイソシアネートと、2個以上の活性水素を有する化合物とを重付加反応させて得られるウレタン結合や、ウレア結合などのイソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合を、分子内に多数有する高分子重合体である。なお、イソシアネート基と活性水素との反応に起因する結合のみならず、活性水素化合物分子内に含まれるエステル結合、エーテル結合、アミド結合、および、イソシアネート基同士の反応で生成するウレトジオン、カルボジイミド等をも含む重合体であることは言うまでもない。
【0050】
また、上記重付加重合により得られるウレタン系高分子重合体に導入するペンダント基としての架橋性官能基としては、ヒドラジノ基が挙げられる。ヒドラジノ基は接着力が良好となるので好ましい。
【0051】
なお、上記のウレタン系高分子重合体からなる熱可塑性高分子重合体は、水性であると、環境への汚染が少ない水を溶剤に用いることができるので好ましい。
【0052】
本発明におけるウレタン系高分子重合体の合成に用いられるポリイソシアネートとしては、従来より一般に用いられる芳香族、脂肪族、脂環族の有機ポリイソシアネートを使用でき、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’‐ジメチルジフェニル、4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リジンイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、ウレタン変性トルエンジイソシアネート、アロファネート変性トルエンジイソシアネート、ビュウレット変性トルエンジイソシアヌレート、イソシアヌレート変性トルエンジイソシアネート、ウレタン変性ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、アシル尿素変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明におけるウレタン系高分子重合体の合成に用いられる、2個以上の活性水素を有する化合物としては、分子末端または分子内に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基またはメルカプト基等を有するもので、一般に公知のポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリチオエーテル、ポリアセタール、ポリシロキサン等であり、好ましくは、分子末端に2個以上のヒドロキシル基を有するポリエーテルまたはポリエステルである。これら2個以上の活性水素を有する化合物は、好ましくは分子量50〜5,000とする。
【0054】
具体的には例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2‐ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2‐ヘキサンジオール、1,5‐ヘキサンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、2,5‐ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7‐ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2‐オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4‐トリメチル−1,3−ペンタンジオール、プロピレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物などの低分子ポリオール類;2,2‐ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,5,6−トリメトキシ−3,4−ジヒドロキシヘキサン酸、2,3−ジヒドロキシ−4,5−ジメトキシペンタン酸などのカルボキシ基含有ポリオール類などの低分子ポリオール類が挙げられる。
【0055】
高分子量ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合物、THF/エチレンオキサイド共重合物、THF/プロピレンオキサイド共重合物などのポリエーテルポリオール類;ジメチロールプロピオン酸、ポリエチレンアジペート、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ−ε−カプロラクトン、およびこれらの共重合物であるポリエステルポリオール類;ポリエーテルエステルポリオール、ポリ炭酸エステル化合物等のポリカーボネートポリオール、炭化水素骨格ポリオールや、これらの重付加体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記ポリウレタン系高分子重合体に用いられる、2個以上の活性水素を有する化合物としては、少なくとも1種以上が、芳香族類もしくは芳香族類をメチレン結合した構造を含む化合物を含有することが好ましい。これは、芳香族類をメチレン結合した構造を含むことで、ポリエステル素材などに対する密着性が得られるからである。また、芳香族類をメチレン以外の結合で結ばれた構造を含む化合物も、同様な効果により好ましい。
【0057】
ペンダント基としてヒドラジノ基を有するウレタン系高分子重合体の具体的な合成方法については、特に限定されない。具体的には例えば、まず、2個以上の活性水素を有する化合物と、過剰量のポリイソシアネートを重付加反応等により反応させ得られた末端イソシアネートを有するウレタン系高分子重合体を製造し、3級アミンなどの中和剤によって中和した後、水を加え転相させ、多官能カルボン酸ポリヒドラジドにより鎖延長と、末端イソシアネート封鎖の処理を行えばよい。
【0058】
上述の2個以上の活性水素を有する化合物と、過剰量のポリイソシアネートとの反応は、従来から公知の一段式又は多段式イソシアネート付加反応法により、室温または40〜120℃程度の温度条件下で行うことができる。上記反応では、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、トリエチルアミン等の公知の触媒、リン酸、アジピン酸、ベンゾイルクロライド等の反応制御剤、および、イソシアネート基と反応しない有機溶媒を使用してもよい。上記溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;トルエン;キシレン等が挙げられる。
【0059】
上記反応で使用される中和剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルモルホリン、モルホリン、2,2−ジメチルモノエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミンなどのアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。上記反応で使用される多官能カルボン酸ポリヒドラジドとしては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリメシン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(VDH)、エノコ酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド、アクリルアミド−アクリル酸ヒドラジド共重合体などである。これらの中でもアジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドと1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(VDH)が好ましく使用される。
【0060】
また、必要に応じて、ジアミン、ポリアミン、N−メチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン;ジヒドラジド化合物などの公知の鎖伸長剤も使用できる。
【0061】
以上のポリイソシアネートと、2個以上の活性水素を有する化合物とを重付加反応させて得られる高分子重合体は、そのガラス転移温度が、−90℃以上180℃以下であることが好ましく、より好ましくは−50℃以上120℃以下、更に好ましくは0℃以上100℃以下である。これは、ウレタン系高分子重合体のガラス転移温度が、−90℃未満であると高温使用時のクリープ性が大きくなり、180℃以上では硬くなりすぎるため、軟質な熱可塑性樹脂特有の応力緩和性が小さくなるためである。また、タイヤ使用時などの高歪下でのコード疲労性が低下することからも、好ましくない。
【0062】
このようにして得られたウレタン系熱可塑性高分子重合体の分子量としては、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算値でMw(重量平均分子量)=10,000以上、より好ましくは20,000以上である。この理由は、分子量が小さいと、ウレタン系高分子重合体の接着剤組成物での接着による歪を吸収する改善効果が得られなくなるからである。なお、得られたウレタン系高分子重合体の水分散液中に有機溶媒が含有される場合、必要に応じて減圧、加熱条件下で留去することができる。
【0063】
(B)水溶性高分子は、水または電解質を含む水溶液に溶解するものである。水溶性高分子は、分子内にカルボキシル基を含有する。カルボキシル基を有する水溶性高分子の主鎖は、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体またはその誘導体である。さらに、本発明に係る水溶性高分子は、上記化合物の塩であってもよい。なお、水溶性高分子は水に溶解させて使用することができるが、塩基性物質による中和物である塩として溶解させて使用することもできる。具体的な水溶性高分子の例としては、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、または、これらの塩基性物質による中和物である。
【0064】
水溶性高分子を中和する塩基性物質としては、塩基性物質であれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのアルカリ金属の酢酸塩;リン酸三ナトリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩が挙げられ、これらの中では水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましく用いられる。特に好ましくは、ポリエステルなどの樹脂材料を加水分解させ劣化させる作用のあるアルカリ金属成分を含む塩基より、樹脂材料に塗布した後の加熱工程などで飛散する、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンなど、沸点が150℃以下、特には100℃以下である揮発性塩基が好ましい。
【0065】
また、水溶性高分子は、その構造には特に制限はなく、直鎖であっても、分岐していても、あるいは二次元、三次元に架橋していてもよいが、性能の点から、直鎖あるいは分岐鎖の構造のみの重合体であると好ましい。この重合体の特徴としては、接着剤組成物の水溶液などでブレンドする際に、主鎖がなるべくゴムまり状にならず、広がることが好ましい。このように主鎖が広がることで、カルボキシル基と接着剤マトリックスの相互作用で、接着剤組成物の耐熱変形性を向上することが可能となる。なお、水溶性高分子が部分的に水溶する場合により、例えば、コロイダルディスパージョンなどのように、十分広がらなくても、接着剤組成物マトリックスと部分的に相溶されれば、効果を得ることができる。また、水溶性高分子は、実質的に炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体由来の単位からなることが好ましい。この理由は、主鎖骨格に硫黄反応性があると、硫黄架橋に伴う接着の熱劣化が大きくなる他、水溶時に分子鎖が広がり相溶性が向上するためである。また、水溶性高分子は、比較的高分子量領域の高分子重合体であることが好ましく、好ましくは重量平均分子量が3,000以上、特に好ましくは10,000以上、更に好ましくは80,000以上である。
【0066】
(C)化合物は、主に接着剤組成物の一方の被着体である樹脂材料への接着を促進する作用を目的として、接着剤組成物中に含ませる。このような化合物を接着剤組成物に含有させる理由は、以下のとおりである。基材となるポリエステル樹脂などの合成樹脂素材は、扁平線状な高分子鎖からなり、この高分子鎖は、これに含まれる芳香族などに由来するπ電子的雰囲気を有している。従って、接着剤組成物の成分中に、分子側面に芳香族性π電子を有する分子構造が含まれると、この分子構造部分と前記樹脂の高分子鎖のπ電子的雰囲気部分との間のπ電子的な相互作用により、接着剤組成物の樹脂表面への密着性や、樹脂の高分子鎖間への拡散などの効果も得られやすくなるのである。
【0067】
また、(C)化合物の極性官能基は、接着剤組成物中に含まれるカルボキシル基、架橋性成分であるエポキシ基、(ブロックド)イソシアネート基などと反応する基であることが好ましい。具体的には、エポキシ基、(ブロックド)イソシアネート基などの架橋性官能基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などを挙げることができる。
【0068】
(C)化合物の分子構造としては、分岐などせず直鎖状であることが好ましい。この分子構造は、メチレンジフェニル、または、比較的に線状な分子構造のポリメチレンポリフェニルの構造が好ましい。なお、芳香族類をメチレン結合された分子構造部分の分子量は、特に規制されないが、好ましくは6,000以下、より好ましくは2,000以下である。この理由は、分子量が6,000超過になると高分子量となり過ぎ、投錨効果がほとんど一定であるにもかかわらず、基材への拡散性が小さくなるからである。また、極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を有する化合物としては、比較的低〜中分子量領域の分子で、分子量9,000以下であることも好ましい。さらに、極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を有する化合物は、水性(水溶性あるいは水分散性)であることが好ましい。
【0069】
かかる(C)化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した反応生成物、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノール・レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、または、エポキシ基を有するクレゾールノボラック樹脂である。
【0070】
ジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤との反応生成物としては、イソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤でブロックした反応物が挙げられる。具体的には、エラストロンBN69や、DELION PAS−037などの市販のブロックドポリイソシアネート化合物を用いることができる。
【0071】
また、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物としては、具体的には、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物として、WO97/13818公報の実施例に記載のノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物として、ナガセ化成工業(株)のデナボンド、デナボンド−AL、デナボンド−AFなどを用いることができる。
【0072】
エポキシクレゾールノボラック樹脂としては、旭チバ(株)のアラルダイトECN1400、ナガセ化成工業(株)のデナコールEM−150などの市販の製品を用いることができる。このエポキシノボラック樹脂はエポキシド化合物でもあるため、接着剤組成物の高温での流動化を抑制する接着剤分子の分子間架橋成分としても作用する。フェノール類とホルムアルデヒド縮合物をスルホメチル化変性した化合物は、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応の、反応の前、反応中、あるいは反応の後にスルホメチル化剤を加熱反応させた化合物である。スルホメチル化剤としては亜硫酸、重亜硫酸と塩基性物質の塩が挙げられる。具体的には、特願平10−203356号公報の実施例に記載のフェノール類とホルムアルデヒド縮合物のスルホメチル化変性物などを用いることができる。
【0073】
(C)化合物としては、芳香族類をメチレン結合した構造(分子構造)(以下、「芳香族類メチレン結合構造」とも称する)を有する有機ポリイソシアネート類と、複数の活性水素を有する化合物と、イソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤とを反応させて得られる水性ウレタン化合物を用いてもよい。この水性ウレタン化合物は、主に接着剤組成物の合成樹脂への接着を促進する目的で含ませるものであり、接着性改良剤としてだけでなく、可撓性のある架橋剤として、接着剤組成物分子鎖の高温時流動化を抑止する作用も期待できる。水性ウレタン化合物は、芳香族類がメチレン結合された様式の構造をもつ有機ポリイソシアネート化合物を反応させたウレタン反応物であり、芳香族類がメチレン結合された様式の構造を分子内に2つ以上有することが好ましい。
【0074】
水性ウレタン化合物がベンゼン環、または、芳香族類をメチレン結合された様式の構造を分子内に含むことが好ましい理由としては、以下のとおりである。基材となるポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂素材は、扁平線状な高分子鎖からなり、この高分子鎖間もしくは表面は、高分子鎖に含まれる芳香族などに由来するπ電子的雰囲気を有している。従って、水性ウレタン化合物中に、側面に芳香族性π電子を有する分子構造が含まれると、この分子構造部分で、π電子的な相互作用により、基材の樹脂の表面への密着や、高分子鎖間への分散するなどの効果が得られやすくなるのである。
【0075】
この芳香族類メチレン結合構造としては、メチレンジフェニル、または、比較的線状の分子構造であれば、ポリメチレンポリフェニルの構造が好ましい。なお、芳香族類メチレン結合構造部分の分子量は、特に限定されないが、好ましくは分子量6,000以下であり、より好ましくは2,000以下である。この理由は、分子量が6,000超過と高分子量になると、投錨効果がほとんど一定にもかかわらず、基材への拡散性が小さくなるからである。
【0076】
なお、ブロックドメチレンジフェニルジイソシアネートなど、分子内に1つの芳香族類メチレン結合構造を有するイソシアネート化合物は、基材と接着剤層間の投錨効果を期待するには、基材に作用した水性ウレタン化合物と他の接着剤組成物成分との間で架橋させることが必要となる。しかし、分子内の複数箇所に芳香族類メチレン結合構造部を有し結合させている水性ウレタン化合物は、基材に作用する芳香族類メチレン結合構造部分以外の箇所で架橋もしくは接着剤組成物に機械的投錨し、比較的ロスの少ない接着促進効果が得られるので好ましい。勿論、水性ウレタン化合物に、これら分子内に1つの芳香族類メチレン結合構造を有する化合物接着促進剤を本発明の接着剤組成物に添加することもできる。
【0077】
また、接着性改良剤である水性ウレタン化合物は、2個以上の熱解離性のブロックされたイソシアネート基を分子内に有することが好ましい。この理由は、基材となるポリエチレンテレフタレートなどの樹脂素材の表面近傍や他の接着剤組成物成分、または被着ゴムにある活性水素と反応し、架橋により接着を促進できるためである。また、水性ウレタン化合物には、塩を生成しうる基または親水性ポリエーテル鎖などの親水性の基を有することが好ましい。この理由は、衛生上有利である水を溶媒として使用できるためである。
【0078】
熱解離性のブロックされたイソシアネート基のブロック化剤化合物としては、前述のイソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤を挙げることができる。
【0079】
塩を生成しうる基もしくは親水性ポリエーテル鎖などの親水性の基の導入方法として、例えば、アニオン系親水性の基の導入方法としては、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させた後、その末端イソシアネート基の一部にタウリン、N−メチルタウリン、N−ブチルタウリン、スルファニル酸等のアミノスルホン酸のナトリウム塩など、活性水素を有する有機酸の塩類を反応させる方法、および、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させる段階で、あらかじめN−メチル−ジエタノールアミン等を添加するなどによって三級窒素原子を導入しておき、その三級窒素原子をジメチル硫酸などで四級化しておく方法が挙げられる。また、例えば、親水性ポリエーテル鎖などの親水性の基の導入方法としては、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させた後、その末端イソシアネート基の一部に350〜3,000の分子量をもつ単官能性ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類(例えば、Brox 350、550、750(BPChemicals社製))などの、少なくとも1つの活性水素と親水性ポリエーテル鎖とを有する化合物を反応させる方法が挙げられる。これらの化合物の親水性ポリエーテル鎖は、少なくとも80%、好ましくは100%のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド単位を含む。
【0080】
また、水性ウレタン化合物に用いる有機ポリイソシアネート類は、芳香族類メチレン結合構造を含み、例えば、メチレンジフェニルポリイソシアネート、または、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。好ましくは、分子量6,000以下のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが好ましく、より好ましくは分子量40,000以下のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである。(特開2001−98245 [0093])
【0081】
水性ウレタン化合物は、芳香族類をメチレン結合した構造、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートやポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートなどの芳香族含有有機ポリイソシアネートとブロック化剤を含むことが好ましい。また、水性ウレタン化合物は、好ましくは比較的低〜中分子量領域の分子で、好ましくは分子量9,000以下、より好ましくは5,000以下である。芳香族ポリイソシアネートのブロック化剤を含む化合物としては、公知のイソシアネートブロック化剤を含むブロックドイソシアネート化合物が好ましい。
【0082】
また、水性ウレタン化合物は、官能基数が3〜5の有機ポリイソシアネート化合物と、分子量5,000以下で2〜4個の活性水素を有する化合物とを反応させて得られる遊離イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、イソシアネート基をブロックする熱解離性ブロック化剤、および、少なくとも1つの活性水素および少なくとも1つのアニオン性、カチオン性もしくは非イオン性の親水性基を有する化合物を処理することで得られる、一分子中に2個以上の熱解離性のブロックされたイソシアネート基と親水性基を有する水性樹脂であることが好ましい。
【0083】
より好ましくは、水性ウレタン化合物は、分子量2,000以下で、かつ、官能基数が3〜5の有機ポリイソシアネート化合物(α)40〜85質量%と、分子量5,000以下で2〜4個の活性水素を有する化合物(β)5〜35質量%と、熱解離性のイソシアネート基ブロック化剤(γ)5〜35質量%と、少なくとも1つの活性水素および少なくとも1つのアニオン性、カチオン性もしくは非イオン性の親水基を有する化合物(δ)5〜35質量%と、これら以外の活性水素を含む化合物(ε)0〜50質量%との反応生成物をベースとする水溶性樹脂であって、(α)〜(ε)の重量百分率の合計が(α)〜(ε)の重量を基準にして100であり、これらの成分の量が、熱解離性のブロックドイソシアネート基(NCO、分子量=42として計算)が0.5〜11質量%となるように選択される水分散性もしくは水溶性の水性樹脂であることが好ましい。
【0084】
さらに好ましくは、水性ウレタン化合物は、下記の一般式、

(式中、Aは官能基数3〜5の有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート残基を示し、Yは熱処理によりイソシアネート基を遊離するブロック化剤化合物の活性水素残基を示し、Zは分子中、少なくとも1個の活性水素原子および少なくとも1個の塩を生成しうる基もしくは親水性ポリエーテル鎖を有する化合物の活性水素残基を示し、Xは2〜4個の水酸基を有し平均分子量が5,000以下のポリオール化合物の活性水素残基であり、nは2〜4の整数であり、p+mは2〜4の整数(m≧0.25)である)で示される熱反応型水溶性ポリウレタン化合物であることが好ましい。
【0085】
上記平均分子量が5,000以下で2〜4個の活性水素を有する化合物としては、下記(i)〜(vii)からなる群から選ばれる化合物が挙げられる。
(i)2〜4個の水酸基を有する多価アルコール類、
(ii)2〜4個の第一級および/又は第二級アミノ基を有する多価アミン類、
(iii)2〜4個の第一級および/又は第二級アミノ基と水酸基を有するアミノアルコール類、
(iv)2〜4個の水酸基を有するポリエステルポリオール類、
(v)2〜4個の水酸基を有するポリブタジエンポリオール類およびそれらと他のビニルモノマーとの共重合体、
(vi)2〜4個の水酸基を有するポリクロロプレンポリオール類およびそれらと他のビニルモノマーとの共重合体、
(vii)2〜4個の水酸基を有するポリエーテルポリオール類であって、多価アミン、多価フェノールおよびアミノアルコール類のC2〜C4のアルキレンオキサイド重付加物、C3以上の多価アルコール類のC2〜C4のアルキレンオキサイド重付加物、C2〜C4のアルキレンオキサイド共重合物、またはC3〜C4のアルキレンオキサイド重合物。
本発明では、2〜4個の水酸基を有し平均分子量が5,000以下のポリオール化合物の活性水素残基を用いることができるが、特に、上記(i)〜(vii)からなる群から選ばれる化合物であれば限定されない。
【0086】
また、上記2〜4個の水酸基を有し平均分子量が5,000以下のポリオール化合物としては、平均分子量が5,000以下であれば、熱可塑性高分子重合体で前述したポリオール類等が挙げられる。これらのうちビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物など、芳香族類をメチレン結合した構造を含むポリオール化合物であれば、水性ウレタン化合物の有機イソシアネートの残基のみならず、ポリオール類の活性水素残基にも芳香族類をメチレン結合した構造を導入することができる。(特開2001−98245 [0095])
【0087】
さらに、上記熱処理によりイソシアネート基を遊離するブロック剤化合物としては、公知のイソシアネートブロック化剤が挙げられる。
【0088】
水性ウレタン化合物の合成方法としては、具体的には、特公昭63−51474公報に記載の方法など、公知の方法で製造できる。また、これらの方法に基づき合成した熱反応型水性ウレタン樹脂のほか、第一工業製薬(株)製エラストロンBN27などの商品を用いることもできる。
【0089】
(D)脂肪族エポキシド化合物は、接着剤組成物の架橋剤として含ませる。脂肪族エポキシド化合物は、1分子中に好ましくは2個以上、より好ましくは4個以上のエポキシ基を含む化合物である。この理由は、エポキシ基が多官能であるほど、接着剤組成物の高温領域での応力によるクリープやフローを抑制効果が高く、高温での接着力が高くなるからである。
【0090】
また、上記2個以上のエポキシ基を含む化合物としては、多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物であることが好ましい。脂肪族エポキシド化合物としては、脂肪酸のグリシジルエステル類、脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル類、環状脂肪族エポキシド化合物類などが挙げられる。このエポキシド化合物は、特に前述の可撓性エポキシ樹脂である、長鎖脂肪酸のグリシジルエステルや多価アルコールのグリシジルエーテルなどが好ましく用いられる。
【0091】
脂肪族エポキシド化合物の具体例としては、ジエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレン・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、グリセロール・ポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ペンタエリチオール・ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテルなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの反応生成物が挙げられる。
【0092】
多価アルコール類とエピクロルヒドリンの反応生成物のうち、特に好ましくは、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテルである。この理由は、これら化合物が、エポキシ基が多官能で高温時の接着剤層の応力によるフロー、クリープによる高温接着力低下が少なく、また長鎖状で柔軟な主骨格構造で可撓性があるため、架橋による接着剤層の硬化・収縮の発生が小さく、内部歪応力による接着力低下が小さくなるためである。これらソルビトール・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂としては、市販の薬品を用いることができる。
【0093】
かかる脂肪族エポキシド化合物は、水に溶解するか、または、乳化により水に分散させて使用できる。乳化液とするには、例えば、かかるポリエポキシド化合物をそのまま水に溶解するか、または、必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを、公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて水に乳化できる。
【0094】
本発明に用いる接着剤組成物は、さらに、(E)金属塩と、(F)金属酸化物と、(G)ゴムラテックスと、からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。このうち金属塩や金属酸化物は、接着剤組成物の充填剤として含ませることで、安価な充填剤でコスト性を良好にするとともに、接着剤組成物に延性や強靭性を付与する目的で用いることができる。
【0095】
(E)金属塩および(F)金属酸化物としては、多価金属塩や多価金属酸化物が好ましい。なお、ここでいう「金属」とは、ホウ素や、珪素などの類金属をも含包する。多価金属塩や多価金属酸化物は、水酸化ナトリウムなど1価のアルカリなどと比較して、ポリエステルなどの基材となる樹脂材料をアルカリ加水分解でさせるなどの劣化作用が小さく好ましいほか、接着剤組成物中のカルボキシル基を含むポリマー間をイオン結合的な相互作用で架橋する効果も期待できる。多価金属塩としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの2価以上の、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物、水酸化物、珪酸塩などの塩が挙げられる。多価金属酸化物としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ホウ素、珪素、ビスマス、マンガン、鉄、ニッケルの酸化物、または、これら酸化物がその構成要素となっている、ベントナイト、シリカ、ゼオライト、クレー、タルク、サテン白、スメクタイトなどが挙げられる。これら金属塩および金属酸化物の充填物は、微細粒子として接着剤組成物に添加することが好ましく、平均の粒子径は好ましくは20μm以下、特に好ましくは1μm以下である。また、金属塩および金属酸化物は、既知の界面活性物質あるいは水溶性高分子により、水に分散して用いることができる。本発明においては、水溶性高分子をその保護コロイドとして利用して比較的安定な水分散体を得ているが、水分散できるものであれば、特にこの方法には限定されない。
【0096】
(G)ゴムラテックスとしては、公知のゴムラテックスを用いることができる。例えば、ビニルピリジン−共役ジエン化合物系共重合体ラテックスおよびその変性ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよびその変性ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスおよびその変性ラテックス、天然ゴムラテックス等であり、これらを1種または2種以上にて含有させることが可能である。変性ラテックスとしては、カルボキシル化変性やエポキシ変性などを行うことができる。
【0097】
本発明に用いる接着剤組成物の配合比率としては、(A)成分の含有量が接着剤組成物の乾燥重量の10〜75質量%、特には15〜65質量%、さらには20〜55質量%、(B)成分の含有量が接着剤組成物の乾燥重量の5〜75質量%、特には15〜60質量%、さらには18〜45質量%、(C)成分の含有量が接着剤組成物の乾燥重量の15〜77質量%、特には15〜55質量%、さらには18〜55質量%、(D)成分の含有量が接着剤組成物の乾燥重量の9〜70質量%、特には10〜45質量%、さらには15〜30質量%、となるよう選定することが好ましい。
【0098】
また、任意成分である(E)成分の含有量は、接着剤組成物の乾燥重量の50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3〜40質量%である。また、(F)成分の含有量は、接着剤組成物の乾燥重量の50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3〜40質量%である。さらに、(G)成分の含有量は、接着剤組成物の乾燥重量の18質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0099】
本発明に用いる接着剤組成物には、上記の(A)〜(G)成分に加えて、水や有機溶剤などの溶剤や、水溶性および/または水分散性ポリエステル樹脂、水溶性および/または水分散性ナイロン樹脂、架橋基を有さない水性ウレタン樹脂、水溶性のセルロース系共重合体等の水溶性樹脂や水分散性樹脂を含んでもよい。これらの水溶性樹脂や水分散性樹脂は、一般的に接着剤組成物の乾燥重量の30質量%以下で含有させることが好ましいが、これには限定されない。
【0100】
上記接着剤組成物は、合成繊維などの合成樹脂材料の被着体と、硫黄を含むゴム組成物の被着体間の接着など、いずれかの被着体に含まれる加硫剤が接着剤組成物へ移行して、接着剤組成物が加硫剤により架橋される接着方法において、効果が得られる。
【0101】
上記加硫剤としては、硫黄;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイドなどのチウラムポリサルファイド化合物、4,4−ジチオモルフォリン、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾキノンジオキシム、環式硫黄イミドなど有機加硫剤が挙げられる。
【0102】
上記接着剤組成物を用いた接着剤処理は、常法に従い行うことができ、特に制限されるものではない。コードに接着剤組成物を被覆する方法としては、接着剤組成物にコードを浸漬する方法、接着剤組成物をハケで塗布する方法、接着剤組成物をスプレーする方法等があるが、必要に応じて適当な方法を選択することができる。接着剤組成物をコード表面に被覆させる方法としては、特に限定されないが、接着剤組成物をコード表面に被覆させる際には、接着剤組成物を種々の溶剤に溶解して粘度を下げると、塗布が容易になるため、好ましい。また、かかる溶剤は、主として水からなるものであると、環境的に好ましい。
【0103】
接着剤組成物の被覆後のコードは、例えば、100℃〜210℃の温度で乾燥させることができる。その後、引き続いて行う熱処理は、コードを構成する樹脂材料のポリマーのガラス転移温度以上、好ましくは、かかるポリマーの〔融解温度−70℃〕以上〔融解温度−10℃〕以下の温度で施すことが好ましい。その理由は、ポリマーのガラス転移温度未満ではポリマーの分子運動性が悪く、接着剤組成物のうちの接着を促進する成分とポリマーとが十分な相互作用を行えないため、接着剤組成物と樹脂材料との結合力が得られないためである。かかる樹脂材料には、あらかじめ電子線やマイクロ波、コロナ放電、プラズマ処理等により前処理加工が施されていてもよい。また、コードを被覆する接着剤組成物の乾燥重量は、好適には、コード重量に対し0.5〜6.0質量%とする。
【0104】
本発明においては、上記エポキシ系接着剤組成物による処理後のコードに、さらに、RFL系接着剤組成物による接着剤処理を施すことが好ましい。撚糸後に、上記エポキシ系接着剤組成物で接着剤処理を施した後、さらに、RFL系接着剤による処理を施すことで、より優れた動的接着性を発現させることができる。通常、接着剤処理工程の回数を増やすと、その途中過程の熱入れ工程による影響によりコード物性が変化してしまい、好ましくないと考えられていたが、本発明によれば、上記特定のポリエステルフィラメントを用いたコードに対するエポキシ系接着剤組成物での接着剤処理およびRFL系接着剤による接着剤処理を組み合わせることで、ゴムに対する動的接着性に優れたポリエステルコードを得ることができるものである。
【0105】
上記RFL系接着剤による接着剤処理は、常法に従い実施することができ、特に制限されるものではない。RFL系接着剤処理液としては、例えば、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物/ゴムラテックス(例えば、スチレンブタジエンラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスなどの30〜60%エマルジョン)=1:2〜1:20(重量比)を用いることができ、これらの成分に加えて、必要に応じ、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルマリン縮合物やメチレンジフェニルジポリイソシアネートを含むブロックドイソシアネート水分散体、芳香族類をメチレン結合された様式の構造の接着性改良剤などを配合することができる。RFL系接着剤処理液でコードを処理する際には、コードを被覆するRFL系接着剤組成物の乾燥重量が、コード重量に対し0.5〜6.0質量%、好ましくは2〜6質量%となるようにする。処理後のコードは、例えば、温度100〜150℃での乾燥後に、例えば、200〜250℃の温度で熱処理することができる。
【0106】
上述のようにして、上記コードに対し、上記エポキシ系接着剤組成物と、好適にはさらにRFL系接着剤による接着剤処理を施して得られるポリエステルコードを、未加硫ゴムに埋設して加硫する等の方法により、コードとゴムとが強固に接着したトリートを得ることができ、これを上記補強コード層に適用することで、本発明のタイヤを得ることができる。
【0107】
本発明においては、上記補強コード層に適用する上記ポリエステルコードの下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (1)
(式中、Nは撚り数(回/10cm)であり、ρはコードの比重(g/cm)であり、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である)で定義される撚り係数Ntが、0.20以上0.55以下であることが好ましい。撚り係数Ntが0.20未満であると、コード収束性が低くなり、ランフラット耐久性能が悪化するおそれがあり、0.55を超えるとコード引張り剛性が低下して、やはりランフラット耐久性能が悪化するおそれがあるため、いずれにおいても好ましくない。
【0108】
また、本発明において、上記ポリエステルコードの総繊度は、2000dtex以上5100dtex以下であることが好ましい。総繊度が2000dtex未満であるとコード強力が不足し、5100dtexを超えると、タイヤサイド部に凹凸が生ずるため、いずれにおいても好ましくない。
【0109】
本発明のランフラットタイヤにおいては、上記補強コード層に用いるポリエステルコードに係る条件を満足する点のみが重要であり、それ以外のタイヤ構造の詳細や各部材の材質などについては特に制限されず、従来公知のもののうちから適宜選択して構成することができる。
【0110】
例えば、図示する例では、カーカス4は、平行に配列された複数の補強コードをコーティングゴムで被覆してなるカーカスプライ1枚から構成され、ビード部1内に夫々埋設した一対のビードコア6間にトロイド状に延在する本体部4aと、各ビードコア6の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けてタイヤ半径方向外方に巻上げられた折返し部4bとからなる。図示するタイヤのカーカス4は1枚のカーカスプライからなるが、本発明においては、カーカス4を構成するカーカスプライの枚数はこれに限られるものではなく、2枚以上であってもよい。また、その構造も特に限定されるものではない。ビード部におけるカーカス4の係止構造についても、図示するようにビードコアの周りに巻き上げて係止した構造に限られず、カーカスの端部を2層のビードコアで挟み込んだ構造でもよい(図示せず)。なお、本発明においては、カーカスプライを構成するコードとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)コードおよびセルロース系繊維コードを好適に用いることができる。
【0111】
また、ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して10°〜40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、2枚のベルト層は、ベルト層を構成するコードが互いに赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト8を構成する。図示する例では、ベルト8は2枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいて、ベルト8を構成するベルト層の枚数はこれに限られるものではない。さらに、ベルト補強層9A,9Bは、通常、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなり、図示する例では、ベルト8の全体を覆う1層のベルト補強層9Aと、その両端部のみを覆う二対のベルト補強層9Bとから構成されて、いわゆるキャップ・レイヤー構造をなしているが、本発明においては、ベルト補強層9A,9Bの配設は必須ではなく、別の構造および層数のベルト補強層を配設することもできる。
【0112】
さらにまた、本発明のタイヤにおいて、トレッド部3の表面には適宜トレッドパターンが形成されており、最内層にはインナーライナー(図示せず)が形成されている。また、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を変えた空気、もしくは窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0113】
以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。
<実施例1>
(ポリエステル繊維の製造)
固有粘度1.03の高カルボキシ基末端を有するポリエチレンテレフタレートチップを用い、溶融紡糸法により高速紡糸、多段延伸を行って、表面にエポキシ処理を施すことにより、下記のようなポリエステル繊維を準備した。なお、エポキシ処理に用いた油剤は、繊維100質量部に対して0.2質量部付着しており、エポキシ化合物成分であるポリグリセロールポリグリシジルエーテルの繊維表面付着量は0.12質量%であった。
【0114】
このポリエステル繊維は、固有粘度が0.91、繊度が1130dtex、384フィラメント、強度が6.9cN/dtex、伸度が12%、乾熱収縮率が10.5%の力学特性を有し、末端カルボキシ基量が22当量/tonであり、X線小角回折による長周期が10nm、繊維表面の末端カルボキシ基量が7当量/ton、繊維横軸方向の結晶サイズが45nm、末端メチル基量が0当量/ton、酸化チタン含有量が0.05質量%、表面エポキシ基量(エポキシ指数)が0.1×10−3当量/kgであった。
【0115】
ここで、上記ポリエステル繊維の固有粘度、強度および伸度、乾熱収縮率、末端カルボキシ基量、X線小角回折による長周期および繊維横軸方向の結晶サイズ、繊維表面の末端カルボキシ基量、末端メチル基量、酸化チタン含有量、表面エポキシ基量は、それぞれ、下記に従い測定した。以下において同様である。
【0116】
(固有粘度)
ポリエステルチップ、ポリエステル繊維を、100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
【0117】
(末端カルボキシ基量)
粉砕機を用いて粉末状にしたポリエステルサンプル40.00gおよびベンジルアルコール100mlをフラスコに加え、窒素気流下で215±1℃の条件下、4分間にてポリエステルサンプルをベンジルアルコールに溶解させた。溶解後、室温までサンプル溶液を冷却させた後、フェノールレッドのベンジルアルコール0.1質量%溶液を適量添加し、N規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液によって、速やかに滴定し、変色が起こるまでの滴下量をAmlとした。ブランクとして、100mlのベンジルアルコールにフェノールレッドのベンジルアルコール0.1質量%溶液を同量添加し、N規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液によって、速やかに滴定し、変色が起こるまでの滴下量をBmlとした。それらの値から、下記式によって、ポリエステルサンプル中の末端COOH基含有量を計算した。
末端COOH基含有量(eq/10g)=(A−B)×10×N×10/40
なお、ここで使用したベンジルアルコールは、試薬特級グレードのものを蒸留し、遮光瓶内で保管したものである。N規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液としては、定法により事前に濃度既知の硫酸溶液によって滴定し、規定度Nを正確に求めたものを使用した。
【0118】
(末端メチル基量)
ポリエステルを加水分解して酸成分、グリコール成分にした後、ガスクロマトグラフィーにてメチルエステル成分を定量し、この値から算出した。
【0119】
(酸化チタン含有量)
各元素の含有量は、蛍光X線装置((株)リガク製,3270E型)を用いて測定し、定量分析を行った。この蛍光X線分析の際には、圧縮プレス機にて、ポリエステル繊維樹脂ポリマーサンプルを2分間260℃にて加熱しながら、7MPaの加圧条件下で平坦面を有する試験成形体を作製し、測定を実施した。
【0120】
(X線回折)
ポリエステル組成物・繊維のX線回折については、X線回折装置((株)リガク製,RINT−TTR3,Cu−Kα線,管電圧50kV,電流300mA,平行ビーム法)を用いて行った。長周期間隔はX線小角散乱測定装置を用いて、従来公知の方法、すなわち、波長1.54ÅのCu−Kα線を線源とし、繊維軸に直角に照射して得られる子午線干渉の回折線より、ブラッグの式を用いて算出した。結晶サイズはX線広角回折から赤道線走査の(010)(100)強度分布曲線の半価幅より、シエラーの式を用いて求めた。
【0121】
(繊維表面の末端カルボキシ基量)
JIS K0070−3.1項 中和滴定法に準じて、繊維表面のカルボキシ基量(酸価)を求めた。すなわち、繊維試料約5gにジエチルエーテル/エタノール=1/1溶液50mlを加え、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴添加し、室温で15分間超音波振とうした。この溶液に、0.1ml水酸化カリウムエタノール溶液(ファクター値f=1.030)で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点として指示薬滴下量を測定し、以下の式から酸価を算出した。
酸価A(eq/ton)=(B×1.030×100)/S
(ここで、Bは0.1ml水酸化カリウムエタノール溶液滴定量(ml)、Sは試料量(g)を表す)
【0122】
(繊維の強度および伸度)
引張荷重測定器((株)島津製作所製オートグラフ)を用いて、JIS L−1013に従って測定した。
【0123】
(乾熱収縮率)
JIS−L1013に従い、20℃、65%RHの温湿度管理された部屋で、24時間放置後、無荷重状態で、乾燥機内で180℃×30分間熱処理し、熱処理前後の試長差より算出した。
【0124】
(エポキシ指数(EI))
加温処理後のポリエステル繊維について、JIS K−7236に従ってエポキシ指数(EI:繊維1kgあたりのエポキシ当量数)を測定した。
【0125】
(接着剤組成物の調製)
下記表中に示す配合でエポキシ系接着剤組成物(1)を調製した。
エポキシ系接着剤組成物には、以下の成分を使用した。熱可塑性重合体(A)としては以下のものを用いた。
(A−1)エポクロスK1010E,(株)日本触媒製,固形分濃度40%,(2−オキサゾリン基を含有するアクリル・スチレン系共重合体エマルジョン),ポリマーTg:−50℃、オキサゾリン基量: 0.9 (mmol/g,solid)の品
(A−2)エポクロスK1030E ,(株)日本触媒製, 固形分濃度40%,(2−オキサゾリン基を含有するアクリル・スチレン系共重合体エマルジョン),ポリマーTg:50℃,オキサゾリン基量: 0.9 (mmol/g,solid)の品
(A−3)下記合成例により得られた重合体,(ヒドラジノ基を含有するウレタン系共重合体エマルジョン)
【0126】
(合成例)(A−3)の調整法
特開平10−139839公報に記載された合成例1の記載に従い、ヒドラジノ基含有水性ウレタン樹脂を製造した。すなわち、還流冷却器、温度計およびスターラーを取り付けた四つ口フラスコに、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製,分子量2,000)80質量部、イソホロンジイソシアネート99.9質量部、ジメチロールプロピオン酸30質量部、ポリエステルポリオール(ユニチカ(株)製,エリーテル3320,分子量2,000)100質量部、プロピレングリコールジクリシジルエーテル−アクリル酸付加物(共栄社化学(株)製)28.1質量部、N−メチルピロリドン30質量部、および、酢酸エチル150質量部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら、90℃まで昇温し、この温度で1時間ウレタン化反応を行った。その後、40℃まで冷却し、NCO末端のプレポリマーを得た。次いで、このプレポリマーにトリエチルアミン20質量部を加えて、中和した後、イオン交換水600質量部を添加した。次いで、反応系に12.0質量部のアジピン酸ジヒドラジドを添加し、50℃にて1時間攪拌を続けた後、酢酸エチルを減圧留去し、その後、固形分濃度30%になるように水希釈を行い、ヒドラジン末端のウレタン系共重合体エマルジョンを得た。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mw=35,000であった。
【0127】
水溶性高分子(B)としては以下のものを用いた。
(B−1)イソバン10,(株)クラレ,固形分濃度100%,(イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物),分子量:160,000〜170,000
(B−2)イソバン04,(株)クラレ,固形分濃度100%,(イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物),分子量:55,000〜65,000
(B−3)イソバン110,(株)クラレ,固形分濃度100%,(イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物の、無水マレイン酸単位をアンモニアと反応させて、マレイン酸のモノアミド単位とした後、加熱により閉環させてマレイミド単位とした誘導体),分子量:190,000〜200,000
【0128】
化合物(C)としては以下のものを用いた。
(C−1)DELION PAS−037,竹本油脂(株)製,(ジフェニルメタンビス(4,4’−カルバモイル−ε−カプロラクタム):ジフェニルメタンジイソシアネートの分子構造とブロック化剤を含む),固形分濃度27.5%
(C−2) Penacolite R−50,Indspec Chem.Co.製,(ノボラック化反応によるレゾルシンとホルムアルデヒド縮合物),固形分濃度50%
(C−3)エラストロンBN77,第一工業製薬(株)製,(メチレンジフェニルの分子構造を含む熱反応型水性ウレタン樹脂),固形分濃度31%
【0129】
脂肪族エポキシド化合物(D)としては以下のものを用いた。
(D−1) デナコールEX614B ,ナガセ化成工業(株)製,(ソルビトールポリグリシジルエーテル)
【0130】
【表1】

【0131】
上記で得られたポリエステル繊維からなるポリエステルフィラメントを、下記表中に示す条件に従い撚り合わせてコードとした後、このコードに、上記エポキシ系接着剤組成物(1)を用いて接着剤処理を施した。次いで、このコードに、さらに、RFL系接着剤組成物で接着剤処理を施して、タイヤ補強用ポリエステルコードを得た。
【0132】
得られたタイヤ補強用ポリエステルコードをゴム被覆して、打込み数50本/50mmのトリートを作製し、これをタイヤサイズ245/45R19のランフラットタイヤの補強コード層に適用して、実施例1の供試タイヤを作製した。この供試タイヤは、左右一対のビード部と、ビード部から夫々タイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部と、一対のサイドウォール部間に跨って延び接地部を形成するトレッド部とを有し、一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強する2層のカーカスプライからなるカーカス(材質:レーヨン)と、サイドウォール部においてカーカスの内側に配置された断面三日月状のサイド補強ゴム層と、を備えていた。また、カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側には、タイヤ周方向に対し±40°の角度で互いに交錯配置される2層のベルト層からなるベルト(材質:スチール)と、ベルトの全体を覆う1枚のキャップ層およびベルトの両端部のみを覆う一対のレイヤー層(材質:ナイロン)とを有していた。なお、補強コード層のコード角度はタイヤ半径方向に対し0°とし、図1に示す位置に配置した。
【0133】
<実施例2>
接着剤組成物として、上記表中に示すエポキシ系接着剤組成物(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の供試タイヤを作製した。
【0134】
<実施例3>
接着剤組成物として、上記表中に示すエポキシ系接着剤組成物(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の供試タイヤを作製した。
【0135】
<比較例1>
低カルボキシ基末端を有する汎用のタイヤコード用のポリエチレンテレフタレートチップを用い、繊維表面に対するエポキシ処理を行わず、物性値を揃えるために延伸条件を微調整した以外は実施例1と同様のポリエステル繊維を準備した。
【0136】
このポリエステル繊維は、固有粘度が0.91、繊度が1130dtex、384フィラメント、強度が6.9cN/dtex、伸度が12%、乾熱収縮率が10.5%、X線小角回折による長周期が10nm、繊維横軸方向の結晶サイズが45nmと、実施例1で用いたポリエステル繊維と同様の力学特性を有していた。但し、末端カルボキシ基量は18当量/ton、繊維表面の末端カルボキシ基量は11当量/ton、表面エポキシ基量(エポキシ指数)は0.0×10−3当量/kgであり、使用ポリマーの違いから、末端メチル基量は5当量/ton、酸化チタン含有量は0.00質量%であった。
【0137】
また、下記表中に示す配合で接着剤液(4)を調製し、この接着剤液を希釈して、上記比率で20質量%の接着剤水溶液となるように調整した。なお、ブロックドイソシアネート化合物は、RFL接着剤液を配合し、20℃で24時間熟成させた後、使用直前に添加した。使用したブロックドイソシアネート化合物は、第一工業製薬(株)製:エラストロンBN69(ブロック剤乖離温度120℃)およびBN27(ブロック剤乖離温度180℃)である。ラテックスは乳化重合により試作した。
【0138】
【表2】

【0139】
ポリエステル繊維からなるポリエステルフィラメントを、下記表中に示す条件に従い撚り合わせてコードとした後、このコードに、図2に示す工程にて、接着剤液(4)を用いて接着剤処理を施した以外は実施例1と同様にして、比較例1の供試タイヤを作製した。具体的には、巻き出し装置101から送り出されたコード102を接着剤液103に通し、接着剤液103をコード102に含浸させ(含浸工程)、含浸後のコード102を乾燥ゾーン104に送ってコード102を乾燥させ(乾燥工程)、乾燥したコード102をヒートセットゾーン105およびノルマライジングソーン106に通した後(熱処理工程)、コード102を冷却して、巻き取り装置107にて巻き取った。乾燥工程における乾燥ゾーン104の乾燥温度は下記表中に示す温度であり、乾燥時間は2分間とした。その後の、ヒートセットゾーン105およびノルマライジングゾーン106からなる熱処理工程は、処理温度を250℃、処理時間を1分間とした。この際、コード張力は1kg/本とした。
【0140】
<比較例2>
実施例1で用いたのと同様のポリエステルフィラメントを撚り合わせてコードとした後、このコードに、比較例1で用いたのと同様の接着剤組成物を用いて接着剤処理を施した以外は実施例1と同様にして、比較例2の供試タイヤを作製した。
【0141】
<比較例3>
比較例1で用いたのと同様のポリエステルフィラメントを撚り合わせてコードとした後、このコードに、実施例1で用いたのと同様の接着剤組成物を用いて接着剤処理を施し、さらに、RFL系接着剤組成物で接着剤処理を施した以外は比較例1と同様にして、比較例3の供試タイヤを作製した。
【0142】
<比較例4>
低カルボキシ基末端を有する汎用のタイヤコード用のポリエチレンテレフタレートチップを用い、物性値を揃えるために延伸条件を微調整した以外は実施例1と同様のポリエステル繊維を準備した。
【0143】
このポリエステル繊維は、固有粘度が0.91、繊度が1130dtex、384フィラメント、強度が6.9cN/dtex、伸度が12%、乾熱収縮率が10.5%、X線小角回折による長周期が10nm、繊維横軸方向の結晶サイズが45nmと、実施例1で用いたポリエステル繊維と同様の力学特性を有していた。また、表面エポキシ基量(エポキシ指数)も0.1×10−3当量/kgと同一であった。但し、末端カルボキシ基量は18当量/ton、繊維表面の末端カルボキシ基量は9当量/tonであり、使用ポリマーの違いから、末端メチル基量は5当量/ton、酸化チタン含有量は0.00質量%であった。このポリエステル繊維からなるポリエステルフィラメントを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4の供試タイヤを作製した。
【0144】
<実施例4〜10>
ポリエステルコードの条件を下記表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、実施例4〜10の供試タイヤを作製した。
【0145】
<実施例11>
補強コード層のコード角度をタイヤ半径方向に対し30°とした以外は実施例1と同様にして、実施例11の供試タイヤを作製した。
【0146】
得られた各供試タイヤについて、下記に従い、乗り心地性、ランフラットドラム耐久性、サイド部の凹凸およびカット性を評価した。得られた結果を下記表中に併せて示す。
【0147】
<乗り心地性>
各供試タイヤにつき、内圧230kPaを充填して、荷重−撓み曲線を測定し、得られた荷重−撓み曲線上のある荷重における接線の傾きを、この荷重に対する縦バネ定数として算出した。結果は、比較例4のタイヤの縦バネ定数の値を100として指数表示した。指数値が大きい程、縦バネ定数が大きく、乗り心地性が悪いことを示す。
【0148】
<ランフラットドラム耐久性>
各供試タイヤに内圧を充填することなく、荷重4.17kN、速度89km/h、温度38℃の環境下でドラム試験を行い、タイヤが故障に至るまでの走行距離を測定して、比較例4のタイヤの故障に至るまでの走行距離を100として指数表示した。指数値が大きいほど、故障に至るまでの走行距離が長く、ランフラット耐久性に優れることを示す。また、併せて、故障の際の破壊の形態を観察した。
【0149】
<サイド部の凹凸>
各供試タイヤについて、内圧180kPa時に、レーザーでタイヤサイド部の凹凸を測定して、ピーク値を数値化することにより、凹みを評価した。結果は、比較例4を100として指数表示した。数値が大きいほど、凹みが大きく悪い結果といえる。
【0150】
<カット性>
各供試タイヤを規定リムにリム組みし、規定内圧を充填して、そのサイド部に、先端の曲率半径R=10である凸状突起を押し当て、サイド部がカットするまでに必要な仕事量を測定した。結果は、比較例4のタイヤのサイドカットに至るまでに必要な仕事量を100とする指数にて示した。数値が大きいほど、サイドカット性能が良好である。
【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
【表5】

【0154】
上記表中に示すように、各実施例の供試タイヤにおいては、他性能を損なうことなく、ランフラット走行時において補強コード層の剥離破壊の発生が防止されており、これにより、ランフラット耐久性能が向上していることが確かめられた。
【符号の説明】
【0155】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカス
5 サイド補強ゴム層
6 ビードコア
7 ビードフィラー
8 ベルト
9A,9B ベルト補強層
10,20,30,40,50,60 補強コード層
101 巻き出し装置
102 コード
103 接着剤液
104 乾燥ゾーン
105 ヒートセットゾーン
106 ノルマライジングソーン
107 巻き取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のビード部と、該ビード部から夫々タイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部と、該一対のサイドウォール部間に跨って延び接地部を形成するトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強する1枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスのクラウン部タイヤ半径方向外側に配置された少なくとも1層のベルトと、前記サイドウォール部において該カーカスの内側に配置された断面三日月状のサイド補強ゴム層と、を備えるランフラットタイヤにおいて、
少なくともタイヤ最大幅位置における、前記カーカスのタイヤ幅方向外側に、一枚以上の補強コード層が配設され、
前記補強コード層が、ポリエステルフィラメントを撚り合わせた後に接着剤組成物で接着剤処理されてなるポリエステルコードのゴム引き層からなり、
前記ポリエステルフィラメントが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、固有粘度が0.85以上のポリエステルからなる繊維であって、繊維中の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上であり、X線小角回折による長周期が9〜12nmであり、繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着してなるポリエステル繊維よりなり、かつ、
前記接着剤組成物が、(A)2−オキサゾリン基若しくは(ブロックド)イソシアネート基を含有するエチレン性付加重合体、または、ヒドラジノ基を含有するウレタン系高分子重合体からなる熱可塑性高分子重合体と、(B)無水マレイン酸単位およびイソブチレン単位を含んでなる共重合体またはその誘導体からなる水溶性高分子と、(C)ジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤との反応生成物、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、エポキシクレゾールノボラック樹脂からなる化合物、または、芳香族類をメチレン結合した構造を有する有機ポリイソシアネート類、複数の活性水素を有する化合物およびイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤を反応させて得られる水性ウレタン化合物と、(D)脂肪族エポキシド化合物と、を含むことを特徴とするランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記ポリエステルコードが、さらに、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス系接着剤組成物で接着剤処理されてなる請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記接着剤組成物が、さらに、(E)金属塩と、(F)金属酸化物と、(G)ゴムラテックスと、からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ポリエステル繊維の繊維表面の末端カルボキシ基量が10当量/ton以下である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ポリエステル繊維の繊維横軸方向の結晶サイズが35〜80nmである請求項1〜4のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ポリエステル繊維の繊維中の末端メチル基量が2当量/ton以下である請求項1〜5のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ポリエステル繊維の繊維中の酸化チタン含有量が0.05〜3.0質量%である請求項1〜6のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ポリエステル繊維の繊維表面のエポキシ指数が1.0×10−3当量/kg以下である請求項1〜7のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項9】
前記補強コード層のコード角度が、タイヤ半径方向に対し10°未満である請求項1〜8のうちいずれか一項記載のランフラットタイヤ。
【請求項10】
前記補強コード層が、少なくとも前記ベルトの端部から、前記カーカスに沿って、前記ビードコアのタイヤ半径方向外側端まで延在する請求項1〜9のうちいずれか一項記載のランフラットタイヤ。
【請求項11】
前記補強コード層が、少なくとも前記ベルトの端部から、前記カーカスに沿って、該ビードコアのタイヤ幅方向外側まで延在する請求項1〜9のうちいずれか一項記載のランフラットタイヤ。
【請求項12】
前記ポリエステルコードの下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (1)
(式中、Nは撚り数(回/10cm)であり、ρはコードの比重(g/cm)であり、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である)で定義される撚り係数Ntが、0.20以上0.55以下である請求項1〜11のうちいずれか一項記載のランフラットタイヤ。
【請求項13】
前記ポリエステルコードの総繊度が2000dtex以上5100dtex以下である請求項1〜12のうちいずれか一項記載のランフラットタイヤ。
【請求項14】
前記カーカスプライが、ポリエチレンテレフタレートまたはセルロース系繊維からなるコードのゴム引き層からなる請求項1〜13のうちいずれか一項記載のランフラットタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−214138(P2012−214138A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81086(P2011−81086)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】