説明

ランフラット用中子およびその装着方法

【課題】 最小限の部品点数で、リムへの安定した装着状態を維持でき、しかも装着作業を楽にすることができるランフラット用中子を提供する。
【解決手段】
ランフラット用中子は、円弧形状をなす第1、第2、第3の3つの中子ピース40A,40B,40Cを備えるとともに、第1中子ピース40Aと第2、第3中子ピース40B,40Cをそれぞれ連結する2つの軸方向連結手段50と、第2、第3中子ピース40B、40C同士を連結する1つの周方向連結手段60とを備えている。軸方向連結手段50は、第1中子ピース40Aに形成された連結鍔45と、第2中子ピース40B(第3中子ピース40C)に形成された連結鍔47と、これら連結鍔45,47を軸方向に貫通する軸方向ボルト51と、この軸方向ボルト51に螺合されるナット52を含む。周方向連結手段60は、第2、第3中子ピース40B,40Cに形成された連結壁46と、これら連結壁46を周方向に貫通する周方向ボルト61と、この周方向ボルト61と螺合するナット62を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤパンク後にも車両の走行を可能にするために、車両ホイールに装着されるランフラット用中子およびその装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ランフラット用中子は、円弧形状をなす複数の中子ピースを連結することにより、車両ホイールのリム外周に円環状をなして装着される。
特許文献1に開示されているランフラット用中子は、等しい周長を有し120°の角度範囲をそれぞれ占める3つの中子ピースを備えている。これら中子ピースは、断面I字形をなして周方向に延びている。中子ピースの周方向両端には連結板が溶接により固定されている。隣接する中子ピースの連結板にボルトが通され、このボルトとナットにより連結板同士が連結され、ひいては隣接する中子ピースが連結されるようになっている。
【0003】
特許文献1の中子の3つの連結箇所のボルトは周方向に配置されており、これらボルトとナットを締め付けることにより、3つの中子ピースが互いに近づくとともにリムに近づき、その結果、中子の径が小さくなってリムの外周を締め付けるので、中子を安定して装着することができる。
特許文献1の各連結手段は、一対の連結板とボルトとナットにより構成されている。本明細書では、上記のように周方向に配置されたボルトを含む連結手段を、周方向連結手段と称する。
【0004】
特許文献2のランフラット用中子は、5つの断面I字形をなす中子ピースを備えている。隣接する中子ピースの端部間に一対の側板を掛け渡し、これら側板と中子ピースの端部を軸方向に貫通するボルトとナットで連結している。
特許文献2の各連結手段は、一対の側板とボルトとナットにより構成されている。本明細書では、上記のように軸方向に配置されたボルトを含む連結手段を、軸方向連結手段と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−251305号公報
【特許文献2】特開昭58−180307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の中子の場合、3つの周方向連結手段による中子ピースの締め付け作業が煩雑であり、ひいてはリムへの装着作業性が悪かった。その理由はボルトの配置方向にある。以下、説明する。
中子の組立に際して、上記3つの中子ピースを緩く連結したアッセンブリの状態でタイヤ内に収容し、タイヤとともに車両ホイールのリム外周に装填し、その後でタイヤの一部を変形させて口開きさせた状態で工具を差し込み、上記ボルトとナットの締め付け作業を行う。上記ボルトは周方向に配置されているので、ボルトまたはナットを工具で回す場合、工具の首振りのためにタイヤの口開き量を大きく確保する必要があった。しかも、このような締め付け作業を3箇所で行う必要があった。
【0007】
また、特許文献1の中子の場合、リムへの締め付けを均等にするために、3つの周方向連結手段で順に少しずつ締め付ける作業を繰り返すため、各周方向連結手段において締め付け作業を複数回にわたって行う必要があり、この点からも作業性が悪かった。
【0008】
他方、特許文献2のランフラット用中子の場合、中子ピースを軸方向連結手段により連結するため、作業性が良い。軸方向連結手段ではボルトが軸方向に配置されているので、ボルトまたはナットに係合した工具をその軸線の周りに回すことができ、タイヤの口開き量を少なくすることができるからである。
しかし、これら軸方向連結手段による締め付け作業では、中子をリム外周に締め付けることができず、中子を安定して装着することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、円弧形状をなす3つ以上の中子ピースを周方向に並べて互いに連結することにより、円環状をなしてホイールのリムに装着されるランフラット用中子において、隣接する中子ピースの連結手段は、1箇所のみを周方向連結手段で構成し、残りの全ての箇所を軸方向連結手段で構成し、上記軸方向連結手段は、隣接する中子ピースの対向する端部のそれぞれに軸方向と直交して一体に形成された連結鍔と、これら連結鍔を軸方向に貫通する軸方向ボルトと、この軸方向ボルトと螺合する螺合部とを含み、上記周方向連結手段は、隣接する中子ピースの対向する端部のそれぞれに周方向と直交して一体に形成された連結壁と、これら連結壁を周方向に貫通する周方向ボルトと、この周方向ボルトと螺合する螺合部とを含むことを特徴とする。
特に最小限の部品点数にするために第1、第2、第3の3つの中子ピースを用いる場合には、上記第1中子ピースと上記第2、第3中子ピースをそれぞれ連結する2つの軸方向連結手段と、上記第2、第3中子ピース同士を連結する1つの周方向連結手段とを備えている。
【0010】
上記構成によれば、全ての中子ピースをリム外周に並べて連結した状態で、周方向連結手段での締め付け作業により、全ての中子ピースをリムに向かわせて、リムへの締め付けを一挙に行うことができる。また、作業が煩雑な周方向連結手段での締め付け作業は1箇所で済む。その結果、中子のリムへの装着作業の効率を向上させることができる。
【0011】
好ましくは、上記軸方向連結手段は、螺合部としてナットを有するとともに、上記軸方向ボルトの頭部を隣接する中子ピースの少なくともいずれか一方に対して回り止めする回り止め手段を有し、全ての軸方向連結手段において、上記軸方向ボルトの頭部が中子の一方側に配置され、上記ナットが、中子の他方側に配置されている。
この構成によれば、2つの軸方向連結手段のナットをタイヤの片側から挿入した工具で回すことにより軸方向連結手段での締め付けを行うことができ、作業性が良い。
【0012】
上記ランフラット用中子を組み立てる方法において、第1、第2中子ピースを一方の軸方向連結手段により相対回動可能に緩く連結し、これら第1、第2中子ピースをリム装着状態より互いに狭めた状態でタイヤ内に収容し、次に第3中子ピースをタイヤ内で他方の軸方向連結手段により第1中子ピースに相対回動可能に緩く連結するとともに、第2、第3中子ピースを周方向連結手段により緩く連結し、次に、第2、第3中子ピースの連結壁同士を互いに離すとともに、第1中子ピースに対して第2、第3中子ピースをリム装着状態より互いに広げることにより、これら第1、第2、第3中子ピースのアッセンブリの内接円径を拡大させた状態で、当該アッセンブリをタイヤとともにホイールのリムに横装填し、次に、タイヤ内に挿入した工具を用いて周方向連結手段の周方向ボルトとナットの間の締め付けを行うことにより、第2、第3中子ピースの連結壁同士を当接させるとともに第1〜第3中子ピースをリムに向かって締め付け、次に、タイヤ内に挿入した他の工具を用いて2つの軸方向連結手段の軸方向ボルトとナットとの間の締め付けを行うことにより、第1中子ピースの連結鍔と第2、第3中子ピースの連結鍔同士を当接させる。
上記ランフラット用中子を組み立てる方法の他の態様では、タイヤ内で第1中子ピースに対して第2、第3中子ピースを2つの軸方向連結手段により相対回動可能に緩く連結するとともに、第2、第3中子ピース同士を周方向連結手段により緩く連結し、次に、第2、第3中子ピースの連結壁同士を互いに離すとともに、第1中子ピースに対して第2、第3中子ピースをリム装着状態より互いに広げることにより、これら第1、第2、第3中子ピースのアッセンブリの内接円径を拡大させた状態で、当該アッセンブリをタイヤとともにホイールのリムに横装填し、次に、タイヤ内に挿入した工具を用いて周方向連結手段の周方向ボルトとナットの間の締め付けを行うことにより、第2、第3中子ピースの連結壁同士を当接させるとともに第1〜第3中子ピースをリムに向かって締め付け、次に、タイヤ内に挿入した他の工具を用いて2つの軸方向連結手段の軸方向ボルトとナットとの間の締め付けを行うことにより、第1中子ピースの連結鍔と第2、第3中子ピースの連結鍔同士を当接させる。
上記2つの方法では、中子のリムへの装着作業、締め付け作業を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、中子をリムに締め付け状態で装着でき、しかもその装着のための作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係わるランフラット中子を装着した車両用ホイールの正断面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【図3】同中子の構成要素である第1中子ピースを拡大して示す正面図である。
【図4】同中子の構成要素である第2中子ピースを、拡大し一部断面にして示す正面図である。
【図5】同第1、第2の中子ピースを連結するための軸方向連結手段を拡大して示す正面図である。
【図6】同第2,第3中子ピースを連結するための周方向連結手段を拡大し一部断面にして示す正面図である。
【図7】(A)は同軸方向連結手段の平面図であり、(B)は図7(A)中B−B線に沿う断面図であり、(C)は同連結手段で用いられるボルトの平面図である。
【図8】中子の組み立て工程を順を追って示す概略正面図であり、(A)は連結された第1、第2中子ピースをタイヤに挿入する工程、(B)はタイヤ内で、第3中子ピースを第1、第2中子ピースに連結する工程、(C)はタイヤ内の中子ピースをリムに対して締め付ける工程をそれぞれ示す。
【図9】図8(A)の工程での第1、第2中子ピースの連結状態(互いの間隔を狭めた連結状態)を示す要部拡大正面図である。
【図10】図8(B)の工程での第1、第2中子ピースの連結状態(互いの間隔を広めた連結状態)を示す要部拡大正面図である。
【図11】図8(B)の工程での第2、第3中子ピースの連結状態を一部断面にして示す要部拡大正面図である。
【図12】図8(B)の工程と図8(C)の工程との間で実行される中子およびタイヤのリムへの装填工程を示す縦断面図である。
【図13】図12の装填工程の後で実行される、周方向連結手段の締め付け工程を示す縦断面図である。
【図14】図13の締め付け工程の後に実行される、軸方向連結手段の締め付け工程を示す縦断面図である。
【図15】軸方向連結手段の他の態様を示すもので、(A)は平断面図、(B)は図15(A)においてB−B線に沿う断面図である。
【図16】軸方向連結手段のさらに他の態様を示すもので、(A)は平断面図、(B)は図16(A)においてB−B線に沿う断面図、(C)はストッパプレート付ボルトの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係わるランフラット用中子を組み込んだ車両ホイールについて、図面を参照しながら説明する。
図2に示すように、車両ホイールは横装填式と称されるもので、ホイール本体1と、このホイール本体1に対して軸方向に横移動させて装填されるタイヤ2とを備えている。
【0016】
上記ホイール本体1は、ディスク部11と、このディスク11と鋳造又は鍛造により一体に成形されるか、あるいはディスク11の周縁部に溶接された円筒形状のリム12と、サイドリング13を有している。
【0017】
上記リム12はディスク11とは反対側の側縁部にビードシート部12aとフランジ部12bとを有している。リム12のディスク11側の側縁部には上記サイドリング13が装着され、適宜の係止手段によりその装着状態を維持されるようになっている。サイドリング13はビードシート部13aとフランジ部13bとを有している。
【0018】
上記タイヤ2は、トレッド部21と一対のサイドウォール部22とを有して断面U字形をなしており、これらサイドウォール部22の内周縁部すなわちビード部23が上記ビードシート部12a,13aに乗るようにしてリム12に装着されている。
【0019】
上記リム12の幅方向中央部は中子装着部12xとして提供され、この中子装着部12xの外周にゴムまたは樹脂製の環状の緩衝パッド3を介して、円環形状のランフラット用中子4(以下、単に中子と称す)が装着されている。
【0020】
図1に示すように、上記中子4は、等しい周長(周長の定義は後述する)を有する第1、第2、第3の3つの中子ピース40A、40B、40Cを互いに連結することにより構成されている。
上記中子ピース40A、40B、40Cは、軽量化を目的にそれぞれアルミ合金製(アルミ製、軽合金製)の押し出し成形品からなる。
【0021】
図3に示すように、第1中子ピース40Aは略120°の角度範囲の断面円弧形状の押し出し型材を、押し出し方向と直交する切断面で所定幅に切断した後、両端部を切削することにより得られる。以下、詳述する。
【0022】
上記押し出し成形により、外周壁41と、内周壁42と、これら周壁41,42の両端に形成され両端間を連ねる一対の端壁43と、これら周壁41,42の中間を連ねる複数の中間壁44が得られる。
上記外周壁41の外周面と内周壁42の内周面は、互いの曲率半径の中心が一致した円筒面をなしている。
【0023】
図示しないが、上記押し出し成形により両端壁43には円柱部が成形される。この円柱部を押し出し方向の両側から切削することにより、連結鍔45が得られる。この連結鍔45は第1中子ピース40Aの他の部位と一体をなし、押し出し方向(すなわち中子4の軸方向)と直交する円形の板形状をなしており、その中央には軸方向に貫通する貫通穴45aが形成されている。
【0024】
上記第1中子ピース40Aの両端にある一対の貫通穴45aの中心と第1中子ピース40Aの曲率半径の中心とがなす角度Θ(図1参照)は120°をなしている。本明細書において第1中子ピース40Aの周長は、一対の貫通穴45aの中心間の周長を言う。
【0025】
図3に示すように、各貫通穴45aの中心と第1中子ピース40Aの曲率半径の中心とを通る平面Pに対して、対応する端壁43の内側部43a(連結鍔45より径方向内側の部位)と、外側部43b(連結鍔45より径方向外側の部位)は、後退している。
【0026】
上記第2中子ピース40Bと第3中子ピース40Cは同一形状をなし、略120°の角度範囲の断面円弧形状の押し出し型材を、押し出し方向と直交する切断面で所定幅に切断した後、一端部を切削することにより得られる。以下、図4を参照しながら第2中子ピース40Bについて詳述する。
【0027】
第2中子ピース40Bは、上記押し出し成形により、外周壁41と、内周壁42と、これら周壁41,42の両端に形成され両端間を連ねる一対の端壁43、46と、これら周壁41,42の中間を連ねる複数の中間壁44が得られる。上記押し出し成形の後、第1中子ピース40Aの場合と同様に切削することにより連結鍔47が得られる。この連結鍔47の貫通穴47aと端壁の内側部43a,外側部43bの位置関係も第1中子ピース40Aと同じである。
【0028】
他方の端壁46は後述の作用をなす連結壁として提供されるものであり、この連結壁46は周方向と直交しており、その平坦な端面は、第2中子ピース40Bの曲率半径の中心を通る平面上に位置している。連結壁46には周方向に貫通する貫通穴46aが形成されている。
【0029】
上記第2中子ピース40Bにおいて、上記貫通穴47aの中心と上記連結壁46の端面および第2中子ピース40Bの曲率半径の中心とがなす角度Θ(図1参照)は120°をなしている。なお、前述した中子ピース40Bの周長は、この貫通穴47aの中心と連結壁46の端面間の周長を言う。
なお、第3中子ピース40Cにおいて、第2中子ピース40Bに対応する構成部には図中同番号を付してその説明を省略する。
【0030】
図1に示すように、上記中子ピース40A、40B、40Cは、2つの軸方向連結手段50と、1つの周方向連結手段60によって連結されている。以下、詳述する。
上記第1中子ピース40Aと第2中子ピース40Bを連結するための軸方向連結手段50は、図5、図7に示すように、上記中子ピース40A,40Bの連結鍔45,47と、これら連結鍔45,47の貫通穴45a,47aを軸方向に貫通するボルト51(軸方向ボルト)と、ナット52(螺合部)と、上記ナット52と連結鍔47との間に介在されたスプリングワッシャ53とを有している。
なお、上記ボルト51の軸部51bを連結鍔47の貫通穴47aに圧入するか接着することにより、ボルト51の抜け止めがなされている。
【0031】
本実施形態では、軸方向連結手段50のボルト51が回り止めされており、ナット52を締め付けることにより、連結鍔45,47同士が面接触状態で連結されるようになっている。詳述すると、図7に示すように、上記ボルト51の頭部51aにはストッパピン54が貫通しており、その両端部のいずれか一方が、端壁43に係止することにより、ボルト51の回り止めがなされる。
【0032】
図5に示すように、軸方向連結手段50により中子ピース40A,40Bが連結され、リム12の中子装着部12xに正常に装着された状態では、中子ピース40A,40Bの外周面、内周面はリム12の中心軸線を中心とする共通の仮想円筒面上にある。この状態では、中子40A、40Bの端壁43の内側部43a間には間隙G1が形成され、外周部43b間にも間隙G2が形成されている。本実施形態では間隙G1は間隙G2より大きい。
【0033】
第1中子ピース40Aと第3中子ピース40Cも、上記と同様の構成をなす他の軸方向連結手段50により連結される。2つの軸方向連結手段50のナット52は、ホイール1、タイヤ2に対して一方側(例えばディスク11側)に位置している。
【0034】
第2中子ピース40Bと第3中子ピース40Cを連結するための周方向連結手段60は、図6に示すように、中子ピース40B、40Cの連結壁46と、これら連結壁46の貫通穴46aを周方向に貫通するボルト61(周方向ボルト)と、ナット62(螺合部)とスプリングワッシャ63を有している。ボルト61に対してナット62を回して締め付けることにより、連結壁46同士が面接触した状態で連結される。
【0035】
各連結手段50、60において、ボルト51、61は1つであり、これらボルト51,61は、図5、図6に示すように、中子ピース40A〜40Cの高さ(径方向寸法)の中央を通る円Lより径方向内側に位置している。
上記ボルト51,61は、この実施形態よりさらに径方向内側に位置してもよい。具体的には、中子ピース40A〜40Cの高さ(径方向寸法)の1/3の高さより径方向内側に位置していてもよい。
【0036】
次に、ランフラット用中子4のリム12への装着方法について説明する。
まず、第1中子ピース40Aと第2中子ピース40Bを軸方向連結手段50により緩く連結する。そのため、これら中子ピース40A,40Bは、軸方向連結手段50のボルト51を中心として、相対回動可能となっている。
【0037】
次に、図8(A)、図9に示すように、上記連結状態の中子ピース40A,40Bを互いの間を狭めるように回動させた状態で、タイヤ2の内部空間に挿入する。前述したように、リム12への正常な装着状態において中子ピース40A,40Bの端壁43の内側部43a間には間隙G1が形成されているので、中子ピース40A,40Bは、この間隙G1分だけ相対回動して互いの間隔を狭めることができる。その結果、タイヤ2を変形することなく、または最小限の変形で挿入することができる。
【0038】
次に、図8(B)に示すように、タイヤ2内において第3中子ピース40Cを、軸方向連結手段50により第1中子ピース40Aに連結するとともに、周方向連結手段60により第2中子ピース40Bに連結する。
【0039】
上述したように、中子ピース40A,40Bは軸方向連結手段50により緩く連結されており、しかも前述したようにリム12への正常な装着状態において中子ピース40A,40Bの端壁43の外側部43b間に間隙G2が形成されているため、図8(B)、図10に示すように中子ピース40A,40Bは、この間隙G2分だけ相対回動して互いの間隔を広めることができる。
【0040】
同様に第1中子ピース40Aと第3中子ピース40Cも軸方向連結手段50により緩く連結されているので、タイヤ2内において正常な装着状態より上記間隙G2分だけ相対回動して互いの間隔を広めることができる。
【0041】
また、図11に示すように、タイヤ2内において第2中子ピース40Bと第3中子ピース40Cの連結壁46同士も、周方向の間隔を有するように周方向連結手段60により緩く連結されているので、連結壁46同士を離すことができる。その結果、図8(B)に示すように、中子ピース40A,40B,40Cのアッセンブリ4’の内接円の径は、リム12への装着状態での中子4の内径より大きく、タイヤ2のビード部23の内径よりも大きくすることができる。
【0042】
上記のようにして組み立てられた大径のアッセンブリ4’を、図12に示すようにタイヤ2とともに軸方向に横移動させて、リム12に装填する。これにより、当該アッセンブリ4’は緩衝パッド3を介しての中子装着部12xの外周に配置され、タイヤ20はその一対のビード部23がアッセンブリ4'を間に挟むようにして、リム12の外周に配置される。
【0043】
次に、図13に示すように、タイヤ2のディスク11側のビード部23を弾性変形させるようにしてめくり(口開きし)、このめくれたビード部23とリム12との間にレンチ等の工具100を差し込み、この工具100を首振りさせながら周方向連結手段60のナット62を回わして締め付ける。この際、ボルト61の頭部を他の工具(図示しない)で把持して回り止めする。なお、中子ピース40B,40Cの一方にボルト61の頭部を回り止めする部位を形成してもよい。
これにより、隣接する中子ピース40B,40Cの連結壁46同士が互いに近づき、やがて面接触した状態で当たる。この際、第1中子ピース40Aに対して第2、第3中子ピース40B,40Cが、軸方向連結手段50のボルト51を中心にして回動する。その結果、中子ピース40A,40B,40Cは径方向、内向きにリム12に向かって若干量移動し、図8(C)に示すように円環形状となり、緩衝パッド50を弾性変形させつつリム12の外周を締め付けるようにして固定される。
【0044】
次に、図14に示すように、タイヤ2のディスク11側のビード部23を口開きした状態で、ソケットレンチ等の工具101をタイヤ2内に差し込んで、2つの軸方向連結手段50のナット52を締め付ける。この際、ボルト51はストッパピン54(図7参照)により回り止めされているので、タイヤ2の片側からの作業で締め付け作業を行うことができる。また、上記工具101はボルト51の軸を中心として回すだけで締め付けを行うことができ、首振りが不要であるので、周方向連結手段60の場合に比べてタイヤ2の変形量(口開き量)は小さくて済む。
【0045】
また、図5、図6に示すように、連結手段50、60のボルト51、61がリム12寄りに配置されており、この点からも上記工具100,101の差し入れ時のタイヤ2のめくれ量を小さくすることができる。
【0046】
最後に、サイドリング13をリム12に装着した後、タイヤ2にエアを供給することにより、図2の状態になり、タイヤ2のビード部23がビードシート部12a,13aに乗るととともに、フランジ部12b、13bによってホイール本体1に固定され、エア漏れも防止される。
【0047】
車両走行中にパンク等によりタイヤ2の内圧が低下して、タイヤ2が潰れた時には、中子ピース40A,40B,40Cの外周壁41がタイヤ2を支え、車両の走行を可能にする。
【0048】
以下、本発明の他の実施形態について図を参照しながら説明する。これら実施形態において先行する実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
図15には、軸方向連結手段50の回り止め手段の他の態様が示されている。詳述すると、第1中子ピース40Aと第2中子ピース40B(または第3中子ピース40C)の連結鍔45,47に段差45a,47aが形成されており、上述した締め付け作業側とは反対側の連結鍔47の段差47aに、ボルト51の頭部51aの側面が係止されることにより、ボルト51の回り止めがなされている。
【0050】
なお、ナット52と連結鍔45との間にはスプリングワッシャ53の他にスペーサ55を介在させたので、ナット52が連結鍔45の段差45aと干渉することはない。
上記のように、連結鍔45にも段差45aが形成されているので、連結鍔45側にボルト51の頭部51aを配置する場合でもボルト51の回り止めを行うことができる。
【0051】
図16には、軸方向連結手段50のさらに他の態様が示されている。この態様では、回り止め手段として、ストッパプレート56が用いられる。このストッパプレート56は、ボルト51を貫通させるとともにボルト51の頭部51aと連結鍔47との間に介在される基板部56aと、この基板部56aの一端で折り曲げられボルト51の頭部51aの側面に係止される係止板部56bと、基板部56aの他端で折り曲げられ連結鍔47の先端の平坦面47bに係止される係止板部56cとを有している。
この態様において、連結鍔45の先端にも平坦面を形成してストッパプレート56を係止可能にしてもよい。
【0052】
本発明は、上記実施例に制約されず、種々の態様を採用することができる。例えば、第1〜第3中子ピースは、鋳造又は鍛造により得てもよい。この場合、連結鍔を得るための切削工程は不要になる。鋳造又は鍛造の場合でも第2、第3中子ピースを同形状にすれば、製造コストを低減することができる。
中子ピースの分割数は、上記実施例のような3のみならず、4以上例えば4〜6であってもよい。
中子ピースを鋳造する場合、中空箱型形状にしてもよい。
第1中子ピースと第2、第3中子ピースは、異なる周長を有していてもよい。ただし、第1中子ピースは最大でも180°未満とする。
上記連結鍔、連結壁は成形によらず溶接により中子ピースと一体をなすようにしてもよい。
上記実施形態の中子装着方法において、第1、第2中子ピースは、タイヤ内で連結してもよい。他の工程は上記実施形態と同様である。
【0053】
軸方向連結手段において、一方の連結鍔の貫通穴にネジを形成することにより螺合部とし、この螺合部にボルトを回して締めこむようにしてもよい。この場合にはナットは不要である。また、ボルトをスタッドボルトにして一方の連結鍔と一体化させてもよい。
軸方向連結手段において、ボルトの頭部を一方の連結鍔に溶着又はカシメ等で固定することにより、ボルトの回り止めを行ってもよい。
軸方向連結手段において、ナットを一方の連結鍔に、溶着又はカシメ等で固定することにより、ナットを回り止めし、ボルトを回して締め付けるようにしてもよい。
周方向連結手段において、上述した軸方向ボルトと同様にして周方向ボルトの回り止めを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、タイヤパンク時に車両を走行可能とするランフラットホイールに適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ホイール
2 タイヤ
4 ランフラット用中子
12 リム
40A〜40C 第1〜第3の中子ピース
45 連結鍔
45a 段差(回り止め手段)
46 連結壁
47 連結鍔
47a 段差(回り止め手段)
50 軸方向連結手段
51 軸方向ボルト
52 ナット(螺合部)
54 ストッパピン(回り止め手段)
56 ストッパプレート(回り止め手段)
60 周方向連結手段
61 周方向ボルト
62 ナット(螺合部)
100、101 工具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧形状をなす3つ以上の中子ピースを周方向に並べて互いに連結することにより、円環状をなしてホイールのリムに装着されるランフラット用中子において、
隣接する中子ピースの連結手段は、1箇所のみを周方向連結手段で構成し、残りの全ての箇所を軸方向連結手段で構成し、
上記軸方向連結手段は、隣接する中子ピースの対向する端部のそれぞれに軸方向と直交して一体に形成された連結鍔と、これら連結鍔を軸方向に貫通する軸方向ボルトと、この軸方向ボルトと螺合する螺合部とを含み、
上記周方向連結手段は、隣接する中子ピースの対向する端部のそれぞれに周方向と直交して一体に形成された連結壁と、これら連結壁を周方向に貫通する周方向ボルトと、この周方向ボルトと螺合する螺合部とを含むことを特徴とするランフラット用中子。
【請求項2】
円弧形状をなす第1、第2、第3の3つの中子ピースを周方向に並べて互いに連結することにより、円環状をなしてホイールのリムに装着されるランフラット用中子において、
上記第1中子ピースと上記第2、第3中子ピースをそれぞれ連結する2つの軸方向連結手段と、上記第2、第3中子ピース同士を連結する1つの周方向連結手段とを備え、
上記軸方向連結手段は、隣接する中子ピースの対向する端部のそれぞれに軸方向と直交して一体に形成された連結鍔と、これら連結鍔を軸方向に貫通する軸方向ボルトと、この軸方向ボルトと螺合する螺合部とを含み、
上記周方向連結手段は、第2、第3中子ピースの対向する端部のそれぞれに周方向と直交して一体に形成された連結壁と、これら連結壁を周方向に貫通する周方向ボルトと、この周方向ボルトと螺合する螺合部とを含むことを特徴とするランフラット用中子。
【請求項3】
上記軸方向連結手段は、螺合部としてナットを有するとともに、上記軸方向ボルトの頭部を隣接する中子ピースの少なくともいずれか一方に対して回り止めする回り止め手段を有し、全ての軸方向連結手段において、上記軸方向ボルトの頭部が中子の一方側に配置され、上記ナットが、中子の他方側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のランフラット用中子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−285050(P2010−285050A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139714(P2009−139714)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)