説明

ランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその成形物

成形物比重が小さく且つバラツキがなく、表面平滑性、耐熱性、機械的強度、剛性、寸法精度、成形性等の成形物物性に優れたランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物及び成形物を得る。不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤100質量部に対して、平均粒子径0.5〜15μmの範囲の炭酸カルシウムなどの無機充填材40〜210質量部と、耐圧強度2100×10N/m以上であり且つ
真比重0.3〜0.7の範囲にあるガラスバルーンなどの中空フィラー30〜160質量部とを、無機充填材:中空フィラー=2:8〜8:2の範囲の添加質量比率で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその成形物に関し、特に自動車用ヘッドランプに代表されるランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその成形物に関する。
【背景技術】
従来、不飽和ポリエステル樹脂成形材料(バルクモールディングコンパウンド:BMC)はその優れた機械的強度、剛性、表面平滑性、寸法精度、耐熱性、成形性によりOA機器、事務機器のシャーシ、自動車用ヘッドランプに代表されるランプリフレクター用途などに広く使用されている。
しかしながら、従来の不飽和ポリエステル樹脂成形材料は機械的強度、剛性、表面平滑性、寸法精度、耐熱性に優れた成形物を硬化成形により得られる一方で、これらの優れた特性を保つための含まれる無機充填材及び繊維補強材の量によって、成形物比重が高くなるという問題点が見られた。また、熱可塑性樹脂に比べても成形物比重が高くなる事から、これまで利用範囲が制限されてきた。
これを解決するために、種々の低比重化が図られており、代表的な低比重化の手法としては、充填材、補強材の低減、さらには水酸化アルミニウム等の比較的比重の小さいフィラーの添加や、ガラスバルーン、シリカバルーンに代表される中空フィラーの添加が挙げられる(例えば、特開2001−261954号公報参照)。
ところが、特にランプリフレクター用に限定した場合、このような比較的比重の小さいフィラーを添加すると、耐熱性が低下し、成形物への塗装、蒸着時にフクレ、クラックが発生し、また経年的に蒸着面のフクレが発生し、変色が大きくなることがある。さらには、光沢度、レベリング等の表面平滑性が著しく低下する、成形物の機械的強度物性が大幅に低下する、射出成形時に巣、くもり、ヒケが発生するなど、成形性が低下するといった多くの問題点が見られた。
また、一般的な中空フィラーを単純に添加しただけでは、射出成形における計量時、射出時に中空フィラーの破壊がおこり、成形物の部位による比重のバラツキ、個体間での比重のバラツキが生じ、成形物の歪みや変形に繋がる。さらに、この歪みや変形からランプリフレクターの配光の歪みを生じる。また、耐熱性の低下によるフクレ、クラックの発生、表面平滑性の低下、繊維強化材の表面への浮き、成形性の低下といった問題点があり、自動車用ヘッドランプに代表されるランプリフレクター用途へは使用されなかった。
本発明の目的は、成形物比重が小さく且つバラツキがなく、表面平滑性、耐熱性、機械的強度、剛性、寸法精度、成形性に優れたランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその成形物を提供することである。
【発明の開示】
本発明者らは上記の目的を達成せんがため、鋭意研究を重ねた結果、不飽和ポリエステル樹脂に特定の無機充填材と特定の中空フィラーを特定の割合で添加することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル組成物は、不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤100質量部に対して、少なくとも0.5μmの平均粒子径を有する無機充填材40〜210質量部と、少なくとも2100×10N/mの耐圧強度を有する中空フィラー30〜160質量部とを、無機充填材:中空フィラー=2:8〜8:2の範囲の添加質量比率で含むことを特徴としている。
その際、無機充填材が、15μm以下の平均粒子径であることが好ましい。
また、本発明の成形物は、上記ランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形することによって得られたことを特徴としている。
その際、−0.15〜+0.05%の成形収縮率、1.0〜2.5×10−5/Kの線膨張係数、5〜25の180℃熱時のバーコル硬度及び1.00〜1.60の成形物比重を有するものであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例で用いたテストボックスの平面図である。
図2は、図1のA−A’線の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤100質量部に対して、少なくとも0.5μmの平均粒子径を有する無機充填材40〜210質量部と少なくとも2100×10N/mの耐圧強度を有する中空フィラー30〜160質量部とを、無機充填材:中空フィラー=2:8〜8:2の範囲の添加質量比率で含むものである。
本発明に用いる不飽和ポリエステル樹脂については、その種類は特に限定されるものではない。多価アルコールと不飽和多塩基酸及び飽和多塩基酸を重縮合させたもので、成形材料として通常使用されているものであれば、適宜なものを用いることができる。また不飽和ポリエステルの一部としてビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂をブレンドしてもよい。
不飽和ポリエステルを形成する多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンタンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、グリセリン等が示される。
不飽和多塩基酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等が、また飽和多塩基酸としては無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が例示される。
架橋剤については、上記の不飽和ポリエステルと重合可能な重合性二重結合を有しているものであれば適宜なものを用いることができる。このようなものとしては、例えばスチレンモノマー、ジアリルフタレートモノマー、ジアリルフタレートプレポリマー、メタクリル酸メチル、トリアリルイソシアヌレート等が例示される。その使用量は、作業性、重合性、成形品の収縮性及び量調整の自由度の観点から、不飽和ポリエステル100質量部中、25質量部以上、好ましくは35質量部以上であって、70質量部以下、好ましくは65質量部以下である。
本発明における無機充填材は、少なくとも0.5μm以上の平均粒子径を有するものである。0.5μm未満であると、粘度が高くなり、或いは中空フィラーの破壊を引き起こし成形物比重が高くなり、成形可能な樹脂を得ることができない。成形性の観点から、無機充填材の平均粒子径は0.7μm以上が好ましく、1.8μm以上であることが最も好ましい。一方、この平均粒子径は、成形物の表面平滑性、機械的特性から、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。15μmを超えると、成形物の表面平滑性、機械的強度が著しく低下し、或いは材料の流動性が悪く成形性が悪くなるため、好ましくない。
またここで用いられる無機充填剤は、樹脂組成物の表面平滑性の観点から炭酸カルシウムであることが好ましい。
無機充填材の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤100質量部に対して、40質量部以上、好ましくは50質量部以上であって、210質量部以下、好ましくは160質量部以下である。配合量が40質量部より少ないと成形性が悪くなり、成形物に巣、繊維強化材の浮きなどが発生し、十分な表面平滑性を得る事が出来ず、また、機械的強度が著しく低下する。配合量が210質量部より多いと成形物比重が高くなる。
このような無機充填材としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ワラストナイト、クレー、タルク、マイカ、無水ケイ酸等の粉末状物が必要に応じて用いることができる。
本発明における中空フィラーとしては、少なくとも2100×10N/mの耐性強度を有するものであれば特に制限はなく、ガラスバルーン、シリカバルーン、アルミナバルーン等を例示することができる。耐圧強度が2100×10N/m未満であると、耐熱性及び機械的強度に劣り、製造時や成形時に破壊されて成形物比重が小さくならない。耐圧強度は、2800×10N/m以上であることが好ましい。
この中空フィラーはまた、真比重が0.3〜0.7の範囲のものが好ましい。真比重が0.3未満であると粘度が上昇するため無機充填材の添加量を減らすこととなり、成形性が悪くなり、成形物の表面平滑性、機械的強度が著しく低下するため、好ましくなく、逆に真比重が0.7を超えると比重が小さくならないため、好ましくない。
また中空フィラーは、樹脂組成物の表面平滑性の観点から平均粒子径が80μm以下であることが好ましい。
中空フィラーの配合量としては、不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤100質量部に対して、30質量部以上、好ましくは40質量部以上であって、160質量部以下、好ましくは150質量部以下である。160質量部を超えると粘度が上昇するため無機充填材の添加量を減らすこととなり、成形性が悪くなり、成形物の表面平滑性、機械的強度が著しく低下する。逆に20質量部より少ない場合は成形物比重が高くなる。
無機充填材と中空フィラーとは、無機充填材:中空フィラー=2:8〜8:2の範囲の添加質量比率で不飽和ポリエステル樹脂に含まれる。この質量比率を外れ、中空フィラーが多く添加されると機械的強度が著しく低下する。また、繊維強化材の浮きなどが発生し、十分な表面平滑性を得ることができない。無機充填材が多く添加されると成形物比重が高くなる。機械的強度の観点から、上記添加質量比率は、4:6〜7.5:2.5であることが好ましい。
本発明における不飽和ポリエステル樹脂組成物としては、上記の各成分に加えて、低収縮剤、硬化剤、離型剤、増粘剤、繊維強化材、顔料、減粘剤等を必要に応じて用いることができる。これらの成分を使用する場合には、各成分は、それぞれの目的に応じて通常用いられる配合量で本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に配合される。
低収縮剤としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、飽和ポリエステル、スチレン−ブタジエン系ゴム等低収縮剤として一般に使用されている熱可塑性ポリマーを一種又は二種以上使用することができる。
硬化剤は、過酸化物から適宜なものを用いることができる。例えばt−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1ジt−ブチルパーオキシ3,3,5トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド等を例示することができる。
離型剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、カルナバワックス等を適宜な割合で使用することができる。
増粘剤としては酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等の金属酸化物及びイソシアネート化合物が例示される。増粘剤は必ずしも使用しなくてもよい。
繊維強化材としては繊維長1.5〜25mm程度に切断したチョップドストランドガラスを使用することができる。またパルプ繊維、テトロン(登録商標)繊維、ビニロン繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ワラストナイト等の有機無機繊維を使用することができる。
以上のような成分によって構成される本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、通常行われる方法、例えばニーダー等を用いて混練することによって得ることができる。
本発明における成形物は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物から得られたものである。本成形物は、上述の通り優れた成形物物性を有するので、成形物比重が小さく且つバラツキがなく、その上、優れた機械的強度、剛性、表面平滑性、寸法精度、耐熱性等の成形物物性を示し、ランプリフレクター用として要求される特性を高いレベルで備えたものである。
本成形物は、−0.15〜+0.05%の成形収縮率、1.0〜2.5×10−5/Kの線膨張係数、5〜25の180℃熱時のバーコル硬度及び1.00〜1.60の成形物比重を有していることが好ましい。このような成形物では、加熱時及び経年における変形が小さくなる。
ここで、成形収縮率は、JIS・K6911に従って成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分の条件で測定されたものである。成形物の成形収縮率が−0.15未満になると成形時に金型からの脱型が困難となってしまい、一方、+0.05を超えると表面平滑性が悪化してしまうので好ましくない。また、本成形物は、表面平滑性及び成形性の観点から、好ましくは−0.12〜0.00の成形収縮率を有する。
線膨張係数は、JIS・K6911に従って成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分の条件で測定されたものである。成形物の線膨張係数が2.5×10−5/Kを超えると加熱時に成形品の変形及びクラックが起こってしまうので好ましくない。また、本成形物は、寸法安定性の観点から、好ましくは1.1〜2.0×10−5/Kの線膨張係数を有する。
バーコル硬度は、JIS・K6911に従って、成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分の条件下で、BARBAER−COLMAN COMPANY社製バーコル硬度計GYZJ934−1で測定されたものである。成形物のバーコル硬度が5より低いと加熱時に成形品のレベリング低下及び変形が起こってしまい、一方、25を超えると成形品の後加工が困難となってしまうので好ましくない。また本成形物は、耐熱性の観点から、好ましくは5.5〜22、より好ましくは6.0〜22のバーコル硬度を有する。
成形物比重は、JIS・K6911に従って測定された圧縮成形物及び射出成形物の双方の成形物比重の数値によるものである。成形物比重が1.00よりも低いと射出成形性及び機械的強度が低下してしまい、一方、1.6を超えると従来のBMCの比重と差がなくなり、成形品の軽量化ができないので好ましくない。また、成形性、機械的強度及び比重の観点から好ましくは、1.01〜1.45である。
これらの成形物物性は、BMCの配合比率を変化させることによって、容易に調整することができる。
また本発明による成形物は、5〜20のレベリング(平滑性)を有することが好ましい。この範囲のレベリングを示す成形物は、表面平滑性に優れている。
このレベリングは、BYK Gardner社製ウェーブ−スキャンDO1を使用し、短波長の数値によるものである。成形物のレベリングが20を超えると表面平滑性が悪化してしまうので好ましくない。また、本成形物のレベリングは、好ましくは7〜15である。
本発明による成形物では、上記の成形収縮率、線膨張係数、バーコル硬度、成形物比重及びレベリングのすべてにおいて上記範囲を満たすものであることが特に好ましい。
本発明において成形物は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を通常の方法によって成形することによって容易に得ることができる。このような成形方法には、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形などを挙げることができる。
【実施例】
以下、実施例、比較例によって本発明を詳細に説明する。勿論、この発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜8は、第1表に示す配合組成でそれぞれの配合成分を、30℃下で双碗型ニーダーを用いて混練し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。ここで使用した不飽和ポリエステルは、フマル酸/プロピレングリコール/水素化ビスフェノールA=100モル/80モル/20モルの配合比の物で、架橋剤としてのスチレンモノマー含有量が40質量%であった。
この組成物について成形収縮率、線膨張係数、バーコル硬度、比重、耐熱性、機械的強度、成形性、表面平滑性、製造可否の評価を行った。試験、評価の方法は次の通りである。
(1)成形収縮率
JIS・K6911・5・7に規定される収縮円盤を、成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形を行い、JIS・K6911・5・7に基づいて成形収縮率を算出した。
(2)線膨張係数
JIS・K6911・5・17に規定される曲げ強さ及び曲げ弾性率試験片を、成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形を行い、4×4×20mmの試験片を切り出して、株式会社リガク製サーモプラスTMA8310を用いて、2℃/minの昇温速度、40℃〜80℃の測定温度で昇温速度線膨張係数を測定した。
(3)180℃熱時のバーコル硬度
JIS・K6911に規定される収縮円盤を、成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形を行って試験片とした。熱風循環乾燥機180℃雰囲気下に前記試験片を30分間放置し、取り出した直後にBARBAER−COLMAN COMPANY社製バーコル硬度計GYZJ934−1にて熱時のバーコル硬度を測定した。
(4)比重
1)圧縮成形物の比重
成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形によりJIS・K6911に規定される収縮円盤を成形、試験片を切り出し、JIS・K6911に基づいて比重を測定した。
2)射出成形物の比重
第1図及び第2図に示すような、テストボックス(360×120×25mm、壁の厚み:長辺側4mm、短辺側5mm、底面3mm)を、成形温度160℃、射出圧力30MPa、成形時間2分で新潟鉄工所製射出成形機NNT250PSCH 7000を用いて射出成形を行なった。得られたテストボックス成形物のゲート部(ゲート側)及び最終充填部(反ゲート側)試験片を切り出し、JIS・K6911に基づいて比重を測定した。
(5)耐熱性(加熱後の外観)
JIS・K6911に規定される加熱後の外観測定用円盤を成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形を行い、JIS・K6911加熱後の外観試験に基づいて180℃での外観変化評価を行なった。評価方法は、表中の記号として、○:変化なし、△:フクレ発生、×:クラック発生、で行った。
(6)機械的強度
JIS・K6911に規定される曲げ強さ及び曲げ弾性率試験片を、成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形を行い、JIS・K6911に基づいて曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。
(7)成形性
第1図及び第2図に示すような、テストボックス(360×120×25mm、壁の厚み:長辺側4mm、短辺側5mm、底面3mm)を、成形温度160℃、射出圧力30MPa、成形時間2分で新潟鉄工所製射出成形機NNT250PSCH 7000を用いて射出成形を行い、充填性を目視で評価した。評価方法は、表中の記号として、◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:不良、で行った。
(8)表面平滑性
1)表面外観
第1図及び第2図に示すような、テストボックス(360×120×25mm、壁の厚み:長辺側4mm、短辺側5mm、底面3mm)を、成形温度160℃、射出圧力30MPa、成形時間2分で新潟鉄工所製射出成形機NNT250PSCH 7000を用いて射出成形を行い、表面外観を目視で評価した。評価方法は、表中の記号として、◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:不良、で行った。
2)レベリング
第1図及び第2図に示すような、テストボックス(360×120×25mm、壁の厚み:長辺側4mm、短辺側5mm、底面3mm)を、成形温度160℃、射出圧力30MPa、成形時間2分で新潟鉄工所製射出成形機NNT250PSCH 7000を用いて射出成形を行い、BYK Gardner社製ウェーブ−スキャンDOIを用いて長波長(Long Wave)、短波長(Short Wave)の測定を行ないレベリングを評価した。長波長10以下、短波長20以下で良好なレベリング評価として行った。
3)光沢度
第1図及び第2図に示すような、テストボックス(360×120×25mm、壁の厚み:長辺側4mm、短辺側5mm、底面3mm)を、成形温度160℃、射出圧力30MPa、成形時間2分で新潟鉄工所製射出成形機NNT250PSCH 7000を用いて射出成形を行い、日本電色工業株式会社製HANDY GLOSS METER PG−1Mを用い、JIS・Z8741鏡面光沢度測定方法3に基づいて光沢度を測定した。
これらの測定評価の結果を第1表に示した。

この第1表に示した通り、いずれの実施例においても、製造時、成形時における中空フィラーの破壊が極めて少なく、安定して1.6以下の成形物比重で、しかも成形物の部位におけるバラツキもほとんどない。また、優れた成形物物性を有する成形物が得られた。
特に、平均粒子径15.0μm以下の無機充填材を用いた場合には、機械的強度、成形性、表面外観が著しく向上した。また、圧縮成形物比重及び射出成形物比重のいずれも1.00〜1.60の範囲内にある場合には、機械的強度において特に優れていた。
一方、比較例1〜9については、実施例1〜8と同様にして、第2表に示す配合組成でそれぞれの配合成分を、双碗型ニーダーを用いて混練し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得、同様に成形収縮率、線膨張係数、バーコル硬度、比重、耐熱性、機械的強度、成形性、表面平滑性、製造可否の評価を行った。
これらの測定評価の結果を第2表に示した。

第2表から明らかなように、無機充填材の配合量、中空フィラーの配合量、無機充填材と中空フィラーの添加質量比率が上記の特定範囲を外れ、中空フィラー量が多く添加された不飽和ポリエステル樹脂組成物では、耐熱性、表面平滑性、機械的強度、成形性、成形物外観の著しく低下するか、製造ができない。逆に不足した場合は成形物比重において満足したものが得られなかった。また、同様に上記特定範囲を外れ、無機充填材の添加量が多く添加された不飽和ポリエステル樹脂組成物は成形物比重において満足したものが得られず、逆に不足した場合は機械的強度、成形性、成形物外観が著しく低下した。
また中空フィラーの耐圧強度が上記特定値に満たない不飽和ポリエステル樹脂組成物では、製造時や成形時に中空フィラーが破壊されて成形物比重が大きく、また耐熱性が低下する。中空フィラーの配合量を増量した不飽和ポリエステル樹脂組成物では耐熱性、表面平滑性、機械的強度、成形性において満足したものが得られなかった。
一方、無機充填材の平均粒子径が上記の特定値未満である不飽和ポリエステル樹脂組成物では、材料粘度が高くなり製造ができなかった。
さらに、圧縮成形物比重、バーコル硬度が所定範囲を逸脱するものでは、耐熱性に劣ることも明らかであった。
従って、本発明による無機充填材と中空フィラーを含むことを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂組成物から得られた成形物は、従来のものとは異なり、バランスがよく且つ低い比重と優れた耐熱性、表面平滑性、機械的特性、成形性等の成形物物性を有することが明らかである。
これにより、本不飽和ポリエステル樹脂組成物から得られる本発明の成形物は、自動車用ヘッドランプなど、高い耐熱性、表面平滑性及び機械的特性が要求されるランプリフレクター分野に極めて有用であり、広範囲に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、特定の無機充填剤及び中空フィラーを特定量で含むことによって、成形物の成形物比重が小さく且つバラツキがなく、その上、優れた表面平滑性、耐熱性、機械的強度、剛性、寸法精度、成形性を有するランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその成形物を提供することができる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤100質量部に対して、少なくとも0.5μmの平均粒子径を有する無機充填材40〜210質量部と、少なくとも2100×10N/mの耐圧強度を有する中空フィラー30〜160質量部とを、無機充填材:中空フィラー=2:8〜8:2の範囲の添加質量比率で含むことを特徴とするランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填材が、15μm以下の平均粒子径であることを特徴とする請求項1記載のランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記中空フィラーが、さらに真比重0.3〜0.7の範囲にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物の成形物が、−0.15〜+0.05%の成形収縮率、1.0〜2.5×10−5/Kの線膨張係数、5〜25の180℃熱時のバーコル硬度及び1.00〜1.60の成形物比重を有することを特徴とする請求項1記載のランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物の成形物が、5〜20のレベリングを有することを特徴とする請求項1記載のランプリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1記載のランプリフレクター用低比重不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形することによって得られた成形物。
【請求項7】
前記成形物が、−0.15〜+0.05%の成形収縮率、1.0〜2.5×10−5/Kの線膨張係数、5〜25の180℃熱時のバーコル硬度及び1.00〜1.60の成形物比重を有することを特徴とする請求項6記載の成形物。

【国際公開番号】WO2005/103152
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【発行日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516824(P2006−516824)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004586
【国際出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】