説明

ランプ取付構造

【課題】ランプレンズとランプボデーとの連結部分のシール性を高めると共に、安定的に支持し得るランプ取付構造を得る。
【解決手段】ターンランプTを構成するランプレンズ11とランプボデー12との組み合わせ部の全周を取り囲む状態でシール材15を備えると共に、このシール材15を外方に突出させ、この突出部分を凹部Sの内周面に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ取付構造に関し、詳しくは、自動車等の車輌においてランプを車体等に取付る構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたランプ取付構造として特許文献1には、ランプボデーと前面レンズとを有し、灯室に光源とリフレクタとを備えた車輌用灯具が示されている。この車輌用灯具では、ランプボディの後面側に突出形成したフック状の係止脚を備え、この係止脚を車体側の貫通孔に挿通し、抜け止め状態に係合させる形態でランプが取り付けられている。
【0003】
この特許文献1の車輌用灯具では、ランプボデーの前面にシール溝が形成され、前面レンズの周囲には後方に延びるシール脚が形成され、シール溝にシール剤を充填した状態でシール溝にシール脚が挿入されることで防水性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09‐330602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のランプでは、特許文献1にも記載されるように、前部に配置されるランプレンズと、光源を内部に備えたランプボデーとの間にシール剤等を介在させることにより、ランプレンズとランプボデーとの間の連結部分での防水性を確保することが行われている。また、この種のランプは取付作業の効率を高めることも重要である。
【0006】
しかしながら、ランプの取り付け作業を考えると、特許文献1に記載されるように車体側の貫通孔に対してランプボデーの係止脚を挿入して係止により固定するものでは高い作業効率を得るものであるが、ランプ全体をランプボデーの後端側において係止しているため、ランプボデーの前端側が安定し難く振動を招くことも考えられる。また、特許文献1に記載される構成では、ランプボディを取り付けるための係止脚と、シールを実現する構成(シール溝とシール脚)とを独立して備える必要性があるため構成が複雑化しやすいものであった。
【0007】
本発明の目的は、取付構造が簡略で、ランプレンズとランプボデーとの連結部分のシール性を高め、安定的に支持し得るランプ取付構造を得る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、発光部を内蔵し、ランプボデーとランプレンズとが互いに組み合わされたランプと、車体又は該車体の付加部品に形成され、前記ランプを挿入可能な凹部と、前記ランプボデーと前記ランプレンズとの合わせ部の全周に亘って設けられるとともに、前記ランプを前記凹部に挿入した状態で、前記凹部の内面に当接して前記ランプを保持するシール部と、を備えた点にある。
【0009】
この構成によると、ランプボデーとランプレンズとの組み合わ部に全周に亘ってシール部が備えられるので、この組み合わせ部のシール性が高まりランプの内部への雨水や塵埃の浸入を抑制でき、しかも、ランプを凹部に挿入した状態ではシール部が凹部の内面に接触して、ランプの外周と凹部の内周のとの間をシール性を高め、凹部の内部へ雨水や塵埃の浸入の抑制も可能となる。このように、単一のシール部を備えるものでありながら、このシール部を、ランプの組み合わせ部のシールと、このランプと凹部内面との間のシールとに兼用化できるため、コストの低減が可能になり、2つのシール材を備えるものと比較して生産工程が簡略化して生産性が向上し、軽量化も実現する。更に、シール材によって凹部のシール性を高めた場合には、ランプのバルブのコネクタに防水性能のあるものを使用しなくて済みコストの一層の低減化も実現する。
また、この構成では、組み合わせ部にシール部を備えるだけであるので複雑化を抑制できる。そして、ランプを凹部に挿入した場合にはシール部が凹部の内面に直接当接することや、この凹部の内面に形成された部材に当接してランプを保持するためランプの姿勢が安定し、車体が振動した場合にもランプが凹部の内部で振動することもない。
特に、シール部がランプの外周の大径部分に備えられるものでは、シール部と凹部の内周との当接部分からランプ中心までの距離が長いため、この当接部分に作用する摩擦力に起因するモーメントも大きくなり、ランプの姿勢を変化させる方向に振動等が作用した場合にもランプを安定的に支持する。また、シール部が重心近傍に備えられるものでは、ランプに振動させる力が作用した場合にも、シール部と凹部の内周との当接部分において振動を直接的に受け止めることが可能となりランプを安定的に支持する。
このように、取付構造が簡略で取付も容易となり、ランプレンズとランプボデーとの連結部分のシール性を高めながら、ランプ全体を凹部の内面に安定的に支持し得るランプ取付構造が構成された。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】アウターレンズとターンランプとを示す斜視図である。
【図2】ヘッドランプユニットの断面図である。
【図3】凹部に挿入したターンランプとシール材の部位の断面図である。
【図4】別実施形態(c)のシール材の部位の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔ヘッドランプユニット〕
図1及び図2に示すように、前面のアウターレンズ1と後部のランプハウジング2とを備え、このアウターレンズ1とランプハウジング2とで形成されるハウジング空間に発光体としてのバルブ3と、このバルブ3を支持するリフレクター4と、エクステンション5とを備えてヘッドランプHが構成され、更に、アウターレンズ1を貫通する形態で配置されたターンランプTを備えて車輌用のヘッドランプユニットが構成されている。
【0012】
このヘッドランプユニットは、ヘッドランプHとターンランプTとをユニット化したコンビネーション型に構成され、車輌の外側位置にヘッドランプHが配置され、車輌の中央側に近い位置にターンランプTが配置されている。尚、このヘッドランプユニットが本発明の付加部品に対応する。このヘッドランプユニットでは、車輌の外側に対応する部位ほど車輌の後方に位置するように、平面視でアウターレンズ1の前面が傾斜する姿勢に成形され、このアウターレンズ1の形状に対応してランプハウジング2が成形されている。
【0013】
アウターレンズ1は、透明のガラス材や透明の樹脂材で構成され、ランプハウジング2は樹脂材や金属材で構成されている。このランプハウジング2の外周に形成された嵌合溝に対してアウターレンズ1の外周の嵌合突部を嵌め込み、この嵌合部分にホットメルト等の技術によりシール材6を充填することでアウターレンズ1とランプハウジング2とが密封状態で連結されている。
【0014】
リフレクター4は、樹脂材や金属材で構成されると共に、ランプハウジング2に支持されるものであり、バルブ3からの光線を前方に送り出すように内面がアルミニウムの真空蒸着等で表面処理により鏡面に仕上げられている。バルブ3はハロゲン型等の高輝度のランプが用いられている。エクステンション5は、リフレクター4とランプハウジング2との隙間を塞ぐ位置に配置されるものであり、樹脂材や金属材で構成されると共に、表面には塗膜や金属膜が形成されている。
【0015】
図2に示すように、ランプハウジング2の後面側にはバルブ交換用の孔部が形成されると共に、この孔部の内周の雌ネジ部に螺合するように外周に雄ネジ部を有するキャップ7が備えられている。このランプハウジング2の後面には、バルブ3にバルブコネクタ3Aを介して接続するケーブル3Bと導通する電極(図示せず)を有するハウジングコネクタ8が備えられている。このハウジングコネクタ8はターンランプTのターンバルブ13のバルブコネクタ13Aに接続するケーブル13Bに導通する電極(図示せず)も備えている。尚、ハウジングコネクタ8に対して車体に備えた電力線が接続する。
【0016】
〔ターンランプ〕
このヘッドランプユニットでは、ターンランプTが、前部のランプレンズ11と、後部のランプボデー12と、光源として内部のターンバルブ13とを有した単一のユニットとして構成されると共に、ヘッドランプユニットのアウターレンズ1の前面に形成された凹部Sに嵌め込む形態で着脱自在に備えられている。
【0017】
このターンランプTを凹部Sに挿入する形態で備える構造が、本発明のランプ取付構造である。尚、このヘッドランプユニットではアウターレンズ1に凹部Sを形成していたが、この凹部Sはエクステンション5に形成されるものでも、ランプハウジング2に形成されるものでも良い。
【0018】
図2及び図3に示すように、ランプレンズ11は、オレンジ色に着色されたガラス材や透明の樹脂材で有底円筒状に構成され、前面(底壁に対応)に光線を送り出すプリズム面11Aが形成されている。また、ランプボデー12は、光線を殆ど透過しない樹脂材や金属材で有底円筒状に構成され、このランプボデー12の底壁12Aにターンバルブ13が支持され、このランプボデー12の底壁12Aから後方に向けて固定ボス部14が突設されている。このランプレンズ11とランプボデー12とは組み合わせ構造により連結可能に構成され、この組み合わせ部の全周に亘ってシール材15が設けられ、このシール材15の外周部が凹部Sの内面1Sに当接することでターンランプTを保持する機能を有している。
【0019】
組み合わせ部は、ランプレンズ11に形成された筒状の外筒状部11Bと、この外筒状部11Bに内嵌するようにランプボデー12に形成された筒状の内筒状部12Bとを有すると共に、内筒状部12Bの外周面には外方に突出する嵌合突起12Cが形成され、これと対応する位置の外筒状部11Bの内周面には嵌合凹部11Cが形成されている。
【0020】
外筒状部11Bの突出側の端部には、この外筒状部11Bの外周径より小さい外周径となる突出端部11Dが形成され、内筒状部12Bのうち前後方向での中間位置には外筒状部11Bの突出端部11Dに外嵌する套嵌部12Dが形成されている。外筒状部11Bの外周面と套嵌部12Dの外周面とは略同じ半径に形成されるため、突出端部11Dは外筒状部11Bより薄く形成されている。この突出端部11Dと外筒状部11Bとの境界部分には外挟圧面11Pが段状に形成され、套嵌部12Dの前端に内挟圧面12Pが形成されている。
【0021】
この組み合わせ部では前述した突出端部11Dに外嵌する位置で、外筒状部11Bの外挟圧面11Pと套嵌部12Dの内挟圧面12Pとに挟まれる位置に、例えばゴムや樹脂のように弾性的に変形可能なリング状のシール材15(シール部を構成する部材の一例)を全周に亘って外嵌している。このシール材15は、ランプボデー12とランプレンズ11とが互いに連結した状態で、外挟圧面11Pと内挟圧面12Pとに挟まれることで一部が圧縮されるため、外周がターンランプTの外周から外方に突出すると共に、突出端部11Dの外周に密着し、外挟圧面11Pと内挟圧面12Pとに密着する結果、密封性を高めるシールとしての機能を有する。
【0022】
このような構成から、ターンランプTを組み立てる場合には、外筒状部11Bの突出端部11Dにシール材15を外嵌した状態で、ランプレンズ11の外筒状部11Bに対してランプボデー12の内筒状部12Bを内嵌し、プリズム面11Aと底壁12Aとを接近させる方向に夫々に押圧力を作用させることで、嵌合突起12Cが弾性的に変位した状態で嵌合凹部11Cに送り込まれ、この嵌合凹部11Cに嵌合突起12Cが弾性的に嵌合する状態に達し、ランプレンズ11とランプボデー12とが一体化する。
【0023】
また、このよう連結した場合には、前述したように、外挟圧面11Pと内挟圧面12Pとにシール材15が挟まれることで内周側の一部が圧縮され、これにより、ランプレンズ11とランプボデー12との組み合わせ部分が良好にシールされ、内部への雨水や塵埃の浸入が阻止される。また、シール材15の内周側の一部が圧縮されることで外周がターンランプTの外周から外方に突出する。
【0024】
尚、ランプレンズ11とランプボデー12とが連結した状態では、内筒状部12Bの前端縁12Tがランプレンズ11のプリズム面11Aの近傍位置に達するように位置関係が設定され、これによりターンバルブ13の光線がランプレンズ11の外筒状部11Bの方向に透過して漏出する不都合を内筒状部12Bが抑制してプリズム面11Aから前方に送り出される光線の光量の増大が図られている。
【0025】
更に、連結操作を容易に行わせるためランプボデー12の内筒状部12Bの前端縁12Tから底壁12Aの方向に切り込むようにランプボデー12の内筒状部12Bに複数のスリットを形成することで嵌合突起12Cの変位を容易に行わせるように構成して良く、嵌合突起12Cを内筒状部12Bの外周の複数箇所に形成するように構成しても良い。ランプボデー12の内面はアルミニウムの真空蒸着等の表面処理により鏡面に仕上げることや、光線を良好に反射する塗膜で仕上げることが望ましい。
【0026】
〔取付構造〕
凹部SはターンランプTの外周より少し大きい内径となるシリンダ状の内面1Sを有しており、この内面1Sにはシール材15(シール部の一例)の外周が嵌り込むように全周に亘って2条の係止突部20が突出形成され、夫々の係止突部20の間に溝状部21が形成されている。
【0027】
このような構造から、ターンランプTをヘッドランプユニットに取り付ける場合には、ターンランプTを凹部Sに挿入することで、シール材15が弾性変形して溝状部21に嵌り込むことになり、このシール材15が弾性的な復元力により溝状部21に強く嵌り込んで圧接されるため良好なシール状態を得る。この状態で固定ボス部14の突出端部にビス16を螺合させることで、この固定ボス部14をランプハウジング2に連結固定されることになる。尚、本発明の構成として固定ボス部14を省略した構造を採用しても良い。
【0028】
このようにターンランプTが取り付けられた状態では、シール部として機能するシール材15の全周が溝状部21に嵌り込んで圧接されることになり、この部位から雨水や塵埃の浸入を効果的に阻止できることになる。つまり、ランプレンズ11とランプボデー12とをシールするシール材15を組み合わせ部との内面1Sとのシール部として兼用しているので、それぞれのシール部をシールするシール材を設ける場合と比べて構造の簡素化を図ることができる。これと同時に、弾性的に変形可能なシール材15を介して支持されるため、外部から振動が伝わる状況においても、ターンランプTの振動を抑制してターンランプTを安定的に支持できる。
【0029】
特に、凹部Sの内部に対する雨水や塵埃の浸入が阻止されることから、ターンランプTのターンバルブ13に接続するバルブコネクタ13Aに防水能力のある性能のものを使用しなくて済み、コストの低減が実現する。
【0030】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0031】
(a)実施形態では、ターンランプTをヘッドランプハウジングに備えるための構成を示しているが、これに代えて、例えば、ランプ(ターンランプT)をバンパーやフェンダーやサイドミラー等に形成した凹部Sに挿入する形態で取り付ける際に適用しても良い。これらバンパーやフェンダーやサイドミラー等が本発明の付加部品に相当するものである。また、本発明の取付構造は、ターンランプTに限るものではなく、フォッグランプやブレーキランプ等に適用することも可能である。
【0032】
(b)本発明の取付構造として、凹部Sの内面1Sを単純なシリンダ状の内周面と同様に凹凸のない平らな面に形成することでシール材15(シール部の一例)の外周が圧接するように構成しても良い。このように構成することで凹部Sの内周面に溝部を形成しないで済み、凹部Sを形成する金型の構造が単純化する。
【0033】
(c)本発明の取付構造として、図4に示すように、凹部Sの内周面のうち、シール材15(シール部の一例)の外周に位置する部位の全周に突出部25を形成し、この突出部25の突出端部をシール材15の外周に圧接するように構成しても良い。この構成においてシール材15の外周は凹凸のない平らな面に形成して良く、このシール材15の表面に突出部25が嵌り込む凹部を形成しても良い。このように構成したものでも、ターンランプTの自体のシール性と、凹部Sのシール性を良好に維持する。
【0034】
(d)本発明は、凹部Sの内周面に形成される溝状部21や突出部25を全周に形成する必要はなく、部分的に複数箇所(例えば、3箇所)に形成することや、一部が開いた環状に構成されるものであっても良い。このように構成されることにより、ターンランプTを安定的に支持しながら凹部Sの水抜きも実現する。また、溝状部21や突出部25を3箇所に形成したものでは、これら溝状部21や突出部25に多少の寸法誤差があっても、こられにシール材15を当接させることが可能となり、凹部SとターンランプTとの製造の精度を高めずとも安定的に支持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、車輌に備えられるランプ全般の取付構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
11 ランプレンズ
12 ランプボデー
13 発光部(ターンバルブ)
15 シール部(シール材)
S 凹部
T ランプ(ターンランプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を内蔵し、ランプボデーとランプレンズとが互いに組み合わされたランプと、
車体又は該車体の付加部品に形成され、前記ランプを挿入可能な凹部と、
前記ランプボデーと前記ランプレンズとの合わせ部の全周に亘って設けられるとともに、前記ランプを前記凹部に挿入した状態で、前記凹部の内面に当接して前記ランプを保持するシール部と、を備えたランプ取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−209082(P2012−209082A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72932(P2011−72932)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】