説明

ランプ構造のためのモリブデンフィルムの製造法およびモリブデンフィルムならびにモリブデンフィルムを有するランプ

【課題】本発明は、ランプ構造のためのモリブデンフィルムの製造法ならびにこの種のモリブデンフィルムおよびこの種のモリブデンフィルムを有するランプに関する。
【解決手段】本発明のモリブデンフィルムの製造法は、モリブデンフィルム(21)の表面の少なくとも一部分をサンドブラスト材でのサンドブラスト処理によって粗面化することにより、ランプ構造のためのモリブデンフィルム(21)を製造する方法において、このサンドブラスト材は、酸化アルミニウムおよび/または石英砂ならびに少なくとも1つの他の成分を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.技術分野
本発明は、請求項1の上位概念に記載のランプ構造のためのモリブデンフィルムの製造法ならびにこの種のモリブデンフィルムおよびこの種のモリブデンフィルムを有するランプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモリブデンフィルムは、気密に石英ガラス容器中に埋封されることができ、したがって気密に石英ガラスからなるランプ容器によって包囲されている、発光手段のための電流リード線の構成成分として使用される。モリブデンフィルムの前記使用は、20μm未満の厚さを有するモリブデンフィルムについては、例えば特許文献1に記載されており、厚手のモリブデンフィルムについては、例えば特許文献2に記載されている。モリブデンフィルムの概念では、以下、次に記載された本発明の範囲内で、実際にモリブデンからなる、モリブデンを基礎とする金属フィルムが説明される。即ち、モリブデンフィルムの概念は、モリブデンからなるかまたは添加剤またはドーピング剤を備えたモリブデンからなる金属フィルムを含み、この場合添加剤またはドーピング剤の質量分は、金属フィルム中のモリブデンの質量分よりも明らかに少ない。例えば、モリブデンフィルムの概念は、酸化イットリウムまたはイットリウム−セリウム混合酸化物約1質量%が混和されているモリブデンからなる金属フィルムも含む。
【0003】
II.技術水準
特許文献3には、ランプ構造のためのモリブデンフィルムの製造法が開示されており、この方法によれば、モリブデンフィルムは、サンドブラスト処理によって粗面化され、それによってモリブデンフィルムを包囲する、ランプ容器の石英ガラス中の突起または亀裂は、阻止される。
【0004】
特許文献4には、ランプ容器を通り抜ける電流引込み線の構成成分として使用するためのモリブデンフィルムが記載されており、この場合モリブデンフィルムは、その表面積の5〜60面積百分率で本質的に粗製フィルムとは異なる表面構造を有する物質凝集物および/またはモリブデンまたはその合金、チタン、珪素、または酸化物、混合酸化物および/または酸化物混合物からなる材料組成を有する物質凝集物の関連のない島状範囲をそれぞれ10ミリバール未満の蒸気圧で2000℃で有する。
【0005】
特許文献5には、ランプ構造のためのモリブデンフィルムが開示されており、このモリブデンフィルムの全体の表面には、被覆が設けられている。この被覆は、酸化チタン、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムまたは酸化ハフニウムの群からの金属酸化物からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第573448号明細書
【特許文献2】英国特許第474982号明細書
【特許文献3】米国特許第4587454号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1156505号明細書A1
【特許文献5】米国特許第6815892号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
III.発明の開示
本発明の課題は、ランプ構造のためのモリブデンフィルムの製造法およびこの種のモリブデンフィルムならびにモリブデンフィルムと該モリブデンフィルムを包囲するランプ容器材料との間の改善された付着を可能にするモリブデンフィルムを備えたランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1または請求項8、9もしくは13に記載の特徴により解決される。本発明の特に有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0009】
ランプ構造のためのモリブデンフィルムを製造するための本発明による方法は、モリブデンフィルムの表面の少なくとも一部分、特にモリブデンフィルムの全表面をサンドブラスト処理によって粗面化し、そのために使用されるサンドブラスト用研磨材が、酸化アルミニウムおよび/または石英砂ならびに少なくとも1つの他の成分を含有することを示す。
【0010】
酸化アルミニウムおよび/または石英砂ならびに少なくとも1つの他のサンドブラスト材成分の本発明による組合せにより、ランプ容器材料、殊に石英砂へのモリブデンフィルムの改善された付着が達成される。試験は、放電容器が本発明によるモリブデンフィルムまたは本発明による方法により製造されたモリブデンフィルムで密閉された高圧放電ランプの場合に放電容器が従来の方法でサンドブラスト処理されたモリブデンフィルムで密閉された高圧放電ランプよりも長い寿命を有することを示した。殊に、本発明により製造されたモリブデンフィルムを有する高圧放電ランプの場合、放電室に対向した、放電容器の石英砂のフィルム縁部が取り除かれることは、従来法で製造されたモリブデンフィルムを装備した高圧放電ランプの場合よりも希有なことであった。
【0011】
本発明によるサンドブラスト処理により、モリブデンフィルムの表面上には、サンドブラスト用研磨材の微細な粒子の堆積、即ち酸化アルミニウム粒子および/または石英砂粒子ならびにモリブデンフィルムの粗面化された表面と一緒にモリブデンフィルムとランプ容器材料との間の良好な付着に寄与する少なくとも1つの他のサンドブラスト材成分の粒子が形成される。
【0012】
僅かな平面被覆密度により、モリブデンフィルムの表面上に堆積されたサンドブラスト用研磨材粒子の均一に分布された量は、閉鎖された層または島状の凝集物をモリブデンフィルム表面上に形成させるには不十分である。本発明によるサンドブラスト処理によりモリブデンフィルム表面上に僅かな量で形成された堆積物は、該堆積物が別の電流供給部材とのモリブデンフィルムの溶接を妨害しないという利点を有する。殊に、本発明による方法により製造された、僅かな過渡抵抗を有するモリブデンフィルムは、簡単に放電室内に突入する、タングステンからなるガス放電電極および放電容器から突出する電流供給線と、例えば欧州特許出願公開第1066912号明細書A1に記載の抵抗溶接または欧州特許第1604号明細書に記載のレーザー(LASER)溶接により溶接されることができる。好ましくは、サンドブラスト用研磨材の主要成分は、酸化アルミニウムまたは石英砂、または酸化アルミニウムと石英砂との混合物よって形成される。即ち、酸化アルミニウムまたは石英砂、または酸化アルミニウムと石英砂との混合物は、サンドブラスト用研磨材中の最大の質量分を有する。サンドブラスト用研磨材中の前記主要成分により、モリブデンフィルムの表面の粗面化およびモリブデンフィルムの緊密化が達成される。
【0013】
本発明の好ましい実施例によれば、サンドブラスト用研磨材中の酸化アルミニウムおよび/または石英砂の質量分は、99質量%より大きく、サンドブラスト用研磨材中の他の成分の少なくとも1つの質量分は、1質量%より小さい。
【0014】
良好な結果は、酸化アルミニウムおよび/または石英砂ならびに酸化チタンからなり、酸化チタンの質量分が0.1質量%〜0.25質量%の範囲内にあるサンドブラスト用研磨材で達成される。
【0015】
酸化チタンの代わりに、または酸化チタン以外に、他の成分としては、酸化アルミニウムおよび/または石英砂と共に、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化タンタルの群からの1つ以上の酸化物が使用されてもよい。更に、酸化チタンの代わりに、ルテニウムは、他の成分として酸化アルミニウムおよび/または石英砂と共にサンドブラスト用研磨材中に使用されてもよい。
【0016】
サンドブラスト用研磨材中の他の成分の少なくとも1つの粒度は、好ましくは1μm以下であり、粗いモリブデンフィルム表面に対して他の成分の少なくとも1つの粒子の十分に良好な付着が保証される。サンドブラスト用研磨材の酸化アルミニウムおよび/または石英砂によって形成された主要成分の平均粒度は、好ましくは100μm以下であり、モリブデンフィルム表面の前記粗面化およびモリブデンフィルムの緊密化が達成される。
【0017】
本発明によるモリブデンフィルムは、特にガラス、殊に石英ガラスまたは極めて高い二酸化珪素含量を有するガラスからなるランプ容器を通り抜ける電流引込み線の構成成分として適している。殊に、本発明によるモリブデンフィルムは、石英ガラスからなるランプ容器中に気密に埋設され、したがってモリブデンフィルムの一端は、ランプ容器から突出している電流供給線と結合されており、該モリブデンフィルムの他端は、ランプ容器の内部空間内に突入している電極または渦巻き型フィラメント分岐線(Gluehwendelabgang)と結合されている。従って、本発明によるモリブデンフィルムは、石英ガラスまたは極めて高い、通常95質量%を上廻る二酸化珪素含量を有するガラスからなるランプ容器を通り抜ける気密な電流引込み線を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ランプ構造のための本発明によるモリブデンフィルムの部分的に断面を示す略図。
【図2】図1に図示されたモリブデンフィルムの2枚のモリブデンフィルムを有する、本発明によるハロゲン金属蒸気高圧放電ランプの略図。
【図3】高圧放電ランプの動作時間に亘ってなお機能能力を有する試験されたハロゲン金属蒸気高圧放電ランプの百分率での割合を示す略図。
【図4】高圧放電ランプの動作時間に亘ってなお機能能力を有する試験された水銀不含のハロゲン金属蒸気高圧放電ランプの百分率での割合を示す略図。
【図5】モリブデンフィルムの表面上の微粒状の酸化アルミニウム粒子および酸化チタン粒子の分布を示す略図。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を好ましい実施例につき詳細に説明する。
【0020】
V.好ましい実施例の記載
図1は、本発明によるモリブデンフィルム21の部分的に断面を示す略図である。このモリブデンフィルム21は、レンズ状またはランセット状またはクッション状に湾曲している。約35ワットの電気効率の評価を有するハロゲン金属蒸気高圧放電ランプの放電容器中でパッキングフィルムとして使用するために、このモリブデンフィルム21は、25μmの最大の厚さDを有する。このモリブデンフィルムの長手伸張方向での長さLは、6.5mmであり、その幅Bは、2mmである。モリブデンフィルム21は、通常、貯蔵ロール上に巻き付けられているモリブデンテープによって切り離される。この場合、切断面は、モリブデンフィルム21の長手伸張方向に対して垂直方向に延在している。モリブデンフィルムを包囲するランプ容器材料中での亀裂形成の危険を減少させるために、例えば欧州特許出願公開第0884763号明細書A2に開示されているように、モリブデンフィルム21の切断縁部は、平坦化されていてよいか、または圧延されていてよい。
【0021】
本発明によるモリブデンフィルム21は、公知の冶金学的灼熱法および冶金学的焼結法ならびに圧延法によって型内に圧縮されたモリブデン粉末から製造される。モリブデン粉末には、ドーピング剤または添加剤、例えば上記の酸化物の酸化イットリウムまたはイットリウム−セリウム混合酸化物が混和されていてよい。
【0022】
こうして完成されたモリブデンフィルム21は、本発明の最初の特に好ましい実施態様により、両面で酸化アルミニウムと酸化チタンとの均一な混合物でサンドブラスト処理され、この場合サンドブラスト用研磨材中の酸化チタンの質量分は、0.1質量%であり、残分は、コランダムとも呼称される酸化アルミニウムである。酸化アルミニウム粒子の平均粒度は、100μmであり、酸化チタン粒子の平均粒度は、0.5μmである。
【0023】
サンドブラスト処理の終結後に、サンドブラスト用研磨材の微粒分は、モリブデンフィルム21の表面上に付着したままであることが判明した。即ち、サンドブラスト処理により、モリブデンフィルム21の表面だけが粗面化されるのではなく、モリブデンフィルム21の表面上には、酸化アルミニウム粒子(コランダム粒子)および酸化チタン粒子も形成される。図5には、モリブデンフィルム21の表面が縮尺の記載(1μm)で略示されている。モリブデンフィルムの表面上には、単位面積当たりの僅かな被覆密度で微粒状の酸化チタン粒子および酸化チタン粒子の均一に分布された堆積物が付着している。微粒状の酸化チタン粒子は、酸化アルミニウム粒子よりもモリブデンフィルム表面に対する良好な付着力を有する。従って、モリブデンフィルムに付着する酸化チタン粒子の含量は、サンドブラスト用研磨材中での混合比に対応しない。モリブデンフィルム21の表面に付着する酸化アルミニウム粒子および酸化チタン粒子の量を決定するために、多数の本発明によりサンドブラスト処理されたモリブデンフィルム21を酸中に溶解した。分析により、22.5mg/cm2のモリブデンフィルムの平均質量および0.247mg/cm2のモリブデンフィルム上に付着する酸化アルミニウム粒子の平均質量ならびに0.062mg/cm2のモリブデンフィルム上に付着する酸化チタン粒子の平均質量が判明した。
【0024】
本発明の第2の実施例により、モリブデンフィルム21を両面で酸化アルミニウムと酸化チタンとからなる均一な混合物でサンドブラスト処理し、この場合サンドブラスト用研磨材中の酸化チタンの質量分は、0.25%であり、残分は、酸化アルミニウムである。コランダム粒子の平均粒度は、100μmであり、酸化チタン粒子の平均粒度は、0.5μmである。このモリブデンフィルムの分析により、18.2mg/cm2のモリブデンフィルムの平均質量および0.197mg/cm2のモリブデンフィルム上に付着する酸化アルミニウム粒子の平均質量ならびに0.117mg/cm2のモリブデンフィルム上に付着する酸化チタン粒子の平均質量が判明した。
【0025】
図2は、約35ワットの電気効率の評価を有するハロゲン金属蒸気高圧放電ランプを示す。この高圧放電ランプは、内部空間10を有する石英ガラスと、正反対の位置に配置された、密閉された2個の端部11、12とからなる放電容器1を有し、この場合これら端部は、それぞれ1つの電流引込み線2、3を有する。内部空間10内には、正反対の位置に配置された2個の電極4、5が突入しており、これらの電極は、それぞれ電流引込み線2または3の一方と結合しており、これらの電流引込み線の間には、ランプの動作中にガス放電が形成される。放電容器1の内部空間10には、イオン化可能な充填物が封入されており、この充填物は、キセノンおよび複数の金属ハロゲン化物ならびに場合によっては水銀から成る。放電容器1は、外側カバー6によって包囲されており、この外側カバーは、紫外線を吸収するドーピング剤を備えている石英ガラスから成る。更に、このランプは、プラスチックソケット7を有し、このプラスチックソケットは、2個のランプ容器1、6を支持し、およびランプの電気的接続部8を装備している。放電容器1のソケットから遠く離れた端部11の電流引込み線2は、電流返送線(Stromrueckfuehrung)9を介して第1の電気的接続部8と結合しており、一方で別の電流引込み線5は、ランプの第2の電気的接続部(図示されていない)と結合している。ランプソケット7中には、ランプの完全な動作機器または動作機器の一部分、例えば点火装置が配置されていてよい。
【0026】
本発明による電流引込み線2、3は、それぞれ各端部11または12中に気密に埋設された本発明によるモリブデンフィルム21または31を有する。図1には、モリブデンフィルム21または31が略示されている。放電容器1の内部空間10から離反した、それぞれのモリブデンフィルム21または31の側は、それぞれモリブデン線材22または32と溶接されており、これらのモリブデン線材は、対応する密閉された端部11または12から突出している。放電容器1の内部空間10に対向した、それぞれのモリブデンフィルム21または31の側は、それぞれタングステンからなるロッド状の電極4または5と溶接されており、これらの電極は、放電空間10内に突入している。
【0027】
図3は、図1に図示された例に記載の構造を有するが、しかし、異なるモリブデンフィルムを装備した、数多くの水銀含有ハロゲン金属蒸気高圧放電ランプに対する寿命の測定結果を示す。図3中の測定曲線1に記載のランプは、公知技術水準によりサンドブラスト処理されたモリブデンフィルムを装備していた。2000時間の動作時間で前記ランプの第1のランプは、故障した。図3中の測定曲線2または3によるランプは、欧州特許出願公開第1156505号明細書A1に記載の被覆を有するモリブデンフィルムを装備していた。図3中の測定曲線2によれば、2500時間の動作時間後にランプの20%が故障し、一方で図3中の測定曲線3によるランプの場合には、既に1200時間だけの動作時間後に前記ランプの20%が故障した。これとは異なり、本発明によるモリブデンフィルムを装備したランプは、3000時間の動作時間になるまで、図3中の測定曲線4から明らかなように唯一の故障も示さなかった。殊に、本発明によるモリブデンフィルムを有するランプの場合だけ、3000時間の動作時間後になおフィルムが取り除かれる兆候は、全く見られなかった。
【0028】
図4は、図1に図示された例に記載の構造を有するが、しかし、異なるモリブデンフィルムを装備した、数多くの水銀含有ハロゲン金属蒸気高圧放電ランプに対する特殊な高速スイッチ切換試験(spezieller Schnellschalttest)の測定結果を示す。図4中の測定曲線1に記載のランプは、公知技術水準によりサンドブラスト処理されたモリブデンフィルムを装備していた。約1100時間の動作時間後、既に前記ランプの40%は、故障し、1500時間の動作時間後、前記ランプのなお20%だけ機能能力を有し、1700時間の動作時間後、被覆されていないモリブデンフィルムを有する全てのランプは、故障した。図4中の測定曲線2または3によるランプは、欧州特許出願公開第1156505号明細書A1に記載の被覆を有するモリブデンフィルムを装備していた。図4中の測定曲線2または3に相応して、800時間だけの動作時間後または950時間だけの動作時間後、モリブデンフィルムが欧州特許出願公開第1156505号明細書A1に記載の被覆を有する全てのランプは、故障した。これとは異なり、本発明によるモリブデンフィルムを装備した水銀不含の高圧放電ランプは、1800時間の動作時間になるまで、図4中の測定曲線4から明らかなように唯一の故障も示さなかった。殊に、本発明によるモリブデンフィルムを有するランプの場合、1800時間の動作時間後になおフィルムが取り除かれる兆候は、全く見られなかった。
【0029】
前記のランプの故障は、全ての故障が放電容器の石英ガラスからモリブデンフィルムが剥離されたことによって必然的に誘発されたものであった。
【0030】
図3および図4に図示された測定結果は、上記の第1の実施例および第2の実施例により完成されたかまたは処理された、モリブデンフィルムを有する高圧放電ランプについて達成されたものである。
【0031】
本発明は上記において詳述した実施例に制限されるものではない。殊に、本発明によるモリブデンフィルムは、別のランプ型、例えばハロゲングローランプの気密に閉鎖された容器を通り抜ける電流供給線に対しても使用されることができる。モリブデンフィルムの寸法は、使用目的に適合されていなければならない。殊に、モリブデンフィルム21の厚さDおよび幅Bは、ランプの電気効率の評価またはランプ電流の最大電流強さに適合させることができる。酸化アルミニウムと酸化チタンとの混合比は、2つの実施例に制限されるものではなく、変動可能である。特に、モリブデンフィルムの表面積に対する堆積物の量は、電流供給線および電極での発汗可能性による損傷が生じる程には大きくならないように選択される。酸化チタンの代わり、上記の酸化物およびルテニウムは、他の成分として酸化アルミニウムと共にサンドブラスト用研磨材中に使用されてもよい。更に、酸化アルミニウムは、部分的または完全に石英砂によって代替されることができ、したがってサンドブラスト用研磨材の主要成分は、もはや酸化アルミニウムによって形成されるのではなく、その代わりに石英砂または石英砂と酸化アルミニウムとの混合物によって形成される。
【符号の説明】
【0032】
1 放電容器
2,3 電流引込み線
4,5 電極
6 外側カバー
7 プラスチックソケット
8 第1の電気的接続部
9 電流返送線
10 内部空間
11,12 放電容器の端部
21,31 モリブデンフィルム
22,32 モリブデン線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンフィルム(21)の表面の少なくとも一部分をサンドブラスト材でのサンドブラスト処理によって粗面化することにより、ランプ構造のためのモリブデンフィルム(21)を製造する方法において、このサンドブラスト材は、酸化アルミニウムおよび/または石英砂ならびに少なくとも1つの他の成分を含有することを特徴とする、ランプ構造のためのモリブデンフィルム(21)を製造する方法。
【請求項2】
サンドブラスト材中の酸化アルミニウムおよび/または石英砂の質量分は、99質量%より大きく、サンドブラスト材中の他の成分の少なくとも1つの質量分は、1質量%より小さい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの他の成分は、ルテニウムである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの他の成分は、酸化チタンである、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの他の成分は、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化タンタルの群からの1つ以上の酸化物によって形成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
サンドブラスト材中の少なくとも1つの他の成分の平均粒度は、1μm以下である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
酸化アルミニウムおよび/または石英砂によって形成された、サンドブラスト材の成分の平均粒度は、100μm以下である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法により製造されたランプ構造に使用するためのモリブデンフィルム。
【請求項9】
モリブデンフィルム(21)がサンドブラスト処理によって粗面化された表面を有し、サンドブラスト材の粒子がモリブデンフィルムの表面上に堆積されている、ランプ構造に使用するためのモリブデンフィルムにおいて、モリブデンフィルム(21)の表面上に堆積された、サンドブラスト材の粒子が酸化アルミニウム粒子および/または石英砂粒子ならびにサンドブラスト材の少なくとも1つの他の成分の粒子であることを特徴とする、ランプ構造に使用するためのモリブデンフィルム。
【請求項10】
サンドブラスト材の少なくとも1つの他の成分の粒子がルテニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム粒子、酸化ランタン粒子、酸化セリウム粒子および酸化タンタル粒子の群からの粒子である、請求項8または9記載のモリブデンフィルム。
【請求項11】
サンドブラスト材の他の成分の粒子の平均粒度は、1μm以下である、請求項8、9または10記載のモリブデンフィルム。
【請求項12】
酸化アルミニウムおよび/または石英砂によって形成された、サンドブラスト材の成分の平均粒度は、100μm以下である、請求項8から11までのいずれか1項に記載のモリブデンフィルム。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の少なくとも1つのモリブデンフィルム(21、31)を有するランプ。
【請求項14】
少なくとも1つのモリブデンフィルム(21、31)が、ランプ容器(1)の内部に配置された発光手段(4、5)のための電流引込み線(2、3)の構成成分として形成されている、請求項13記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8705(P2013−8705A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226993(P2012−226993)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2010−504683(P2010−504683)の分割
【原出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508096703)オスラム アクチエンゲゼルシャフト (92)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM AG
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Str. 1, 81543 Muenchen Germany
【Fターム(参考)】