説明

ランプ用電流導入端子部材及びランプ

【課題】傾斜機能部材の導電性部分の発熱を抑制して大電流であっても信頼性の高いランプ用電流導入端子部材及びランプを提供することを目的とする。
【解決手段】第1端部を含む導電性部分と、第2端部を含む絶縁性部分と、を有し、前記第1端部と前記第2端部とを結ぶ第1軸に沿って導電性無機物質の濃度が傾斜的に変化する傾斜機能部材を備え、前記傾斜機能部材には、前記第1軸に沿って前記第2端部の位置から前記導電性部分の途中まで孔が設けられ、前記孔が設けられた部分における前記第1軸と直交する第2軸に沿った前記導電性部分の肉厚は、前記孔の内径よりも小さいことを特徴とするランプ用電流導入端子部材が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、傾斜機能部材を用いたランプ用電流導入端子部材及びランプに関する。
【背景技術】
【0002】
メタルハライドランプ等の高輝度放電灯は、酸化シリコン(SiO)や透光性セラミックス等からなる発光管内にアマルガム、金属ハロゲン化物、キセノン等の発光物質を封入し、発光管に設けられた開口を電極付きの封止部材で閉塞したものである。
【0003】
この封止部材であるランプ用電流導入端子部材には、発光管内に配置される電極(内部電極)との導通性を確保するほか、発光管の開口を確実に密閉して発光管内を所定の圧力に保つための密閉特性が要求される。
【0004】
このような封止部材としてモリブデン箔を用いた端子部材がある。しかし、この封止部材では、導通性及び密封特性について十分な信頼性を得ることができない。そこで、傾斜機能部材を用いた閉塞構造が適用されるようになっている。
【0005】
特許文献1には、傾斜機能部材を用いたランプ用電流導入端子部材が開示されている。このランプ用電流導入端子部材では、傾斜機能部材を用いた閉塞体の導電性部分及び絶縁性部分のそれぞれに電極軸棒が挿入されている。電極軸棒には一般的にタングステンが用いられる。
【0006】
しかしながら、この電極軸棒に電流を受け渡す傾斜機能部材の導電性部分は、モリブデン等の導電性の金属と、SiO等の絶縁物質とのコンポジットであり、完全な金属の単一組成ではない。このため、傾斜機能部材の導電性部分において、電流の流れる距離を考慮せずに大きな電流を傾斜機能部材に流そうとすると、導電性部分は電気抵抗によるジュール熱で発熱し、局所的な温度上昇を起こす可能性がある。このような局所的な温度上昇は、傾斜機能部材の信頼性を低下させる原因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−260394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、傾斜機能部材を用いたランプ用電流導入端子部材において、傾斜機能部材の導電性部分の発熱を抑制して大電流であっても信頼性の高いランプ用電流導入端子部材及びランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、第1端部を含む導電性部分と、第2端部を含む絶縁性部分と、を有し、前記第1端部と前記第2端部とを結ぶ第1軸に沿って導電性無機物質の濃度が傾斜的に変化する傾斜機能部材を備え、前記傾斜機能部材には、前記第1軸に沿って前記第2端部の位置から前記導電性部分の途中まで孔が設けられ、前記孔が設けられた部分における前記第1軸と直交する第2軸に沿った前記導電性部分の肉厚は、前記孔の内径よりも小さいことを特徴とするランプ用電流導入端子部材である。
【0010】
このランプ用電流導入端子部材によれば、傾斜機能部材の孔に電極軸棒を挿入して電流を流した場合、導電性部分がジュール熱による異常加熱することなく大電流を傾斜機能部材に流すことができるようになる。また、傾斜機能部材の導電性部分の電気抵抗に固体間のばらつきがあっても、十分に低い抵抗値を持つ部分はその傾斜機能部材の一部に存在するため、その十分に低い抵抗値を持つ部分が導電性部分になるようにすれば、安定的に大電流を流すことができる部材を提供できるようになる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記第2軸に沿った前記絶縁性部分の外径は、前記第2軸に沿った前記導電性部分の外径よりも大きいことを特徴とするランプ用電流導入端子部材である。
【0012】
このランプ用電流導入端子部材によれば、絶縁性部分の熱伝導率が導電性部分の熱伝導率よりも小さいため、外部に逃げようとする熱を通しにくくなり、導電性部分の外径を小さくできる分だけ傾斜機能部材の熱容量を小さくすることができ、ランプの温度の上昇速度を速くすることができる。これにより、ランプの点灯における立ち上がり時間を早めることができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、前記孔が設けられた部分における第2軸に沿った前記絶縁性部分の肉厚は、前記孔が設けられた部分における前記第2軸に沿った前記導電性部分の肉厚よりも厚いことを特徴とするランプ用電流導入端子部材である。
【0014】
このランプ用電流導入端子部材によれば、導電性部分及び絶縁性部分の孔の内径を一定にしたまま、絶縁性部分の外径を導電性部分の外径よりも大きくすることができ、絶縁性部分の肉厚を導電性部分の肉厚よりも厚くすることができる。これにより、電極軸棒を挿入する孔の内径を一定にして、絶縁性部分の外周部と発光管とのシール強度を確保しつつ、大電流を流すことができるようになる。
【0015】
第4の発明は、第1または第3の発明において、前記第1軸に沿った前記導電性部分の肉厚は、前記孔の内径よりも小さいことを特徴とするランプ用電流導入端子部材である。
【0016】
このランプ用電流導入端子部材によれば、傾斜機能部材の孔に挿入した電極軸棒の太さよりも短い距離で電極軸棒から導電性部分に電流を流すことができる。これにより、導電性部分の異常加熱を抑制でき、大電流を傾斜機能部材に流すことができるようになる。
【0017】
第5の発明は、第4の発明において、前記第1軸に沿った前記導電性部分の肉厚は、前記孔が設けられた部分における前記第2軸に沿った前記導電性部分の肉厚以下であることを特徴とするランプ用電流導入端子部材である。
【0018】
このランプ用電流導入端子部材によれば、傾斜機能部材の強度を維持しつつ、傾斜機能部材の孔に挿入した電極軸棒から第1軸の方向に大電流を流すことできるようになる。
【0019】
第6の発明は、発光管と、前記発光管に挿入された第1〜第5のいずれか1つの発明のランプ用電流導入端子部材と、を備えたことを特徴とするランプである。
【0020】
このランプによれば、シール強度、機械的強度を確保し、またランプの点灯の立ち上がり時間を早め、照度等のランプ性能に影響を与えない傾斜機能部材を使用した大電流対応のランプを実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、傾斜機能部材を用いたランプ用電流導入端子部材及びランプにおいて、傾斜機能部材の導電性部分の発熱を抑制して大電流であっても信頼性の高いランプ用電流導入端子部材及びランプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材の適用例を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材の構成を例示する模式図である。
【図3】傾斜機能材料の製造方法を例示する模式図である。
【図4】他の傾斜機能材料を例示する模式図である。
【図5】他の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材を例示する模式図である。
【図6】他の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材を例示する模式図である。
【図7】他の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材を例示する模式図である。
【図8】他の構成例に係るランプ用電流導入端子部材を示す模式図である。
【図9】ランプ用電流導入端子部材と電極線との接続例を示す模式図である。
【図10】実験に用いた構成の接続関係を例示する模式図である。
【図11】軸部の外径と電流との関係を例示した図である。
【図12】ランプ用電流導入端子部材の各サンプルについての赤熱率を示す図である。
【図13】ランプ用電流導入端子部材の各サンプルについての赤熱率を示す図である。
【図14】導電性部分の外形と立ち上がり時間との関係を示す図である。
【図15】導電性部分及び絶縁性部分の外形の比とシール部破壊率との関係を示す図である。
【図16】導電性部分の第1軸方向の肉厚と孔内径との比と赤熱率との関係を示す図である。
【図17】第1軸方向の肉厚と第2軸方向の肉厚との比と赤熱率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0024】
(第1実施形態)
図1(a)〜(b)は、本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材の適用例を示す模式図である。
図2(a)〜(b)は、本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材の構成を例示する模式図である。
本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材110は、傾斜機能部材10を備える。傾斜機能部材10は、第1端部10aと、第2端部10bと、を有する。傾斜機能部材10には導電性無機物質が含まれる。導電性無機物質の濃度は、第1端部10aと第2端部10bとを結ぶ第1軸に沿って傾斜的に変化する。
ここで、実施形態では、第1軸をX軸、第1軸と直交する第2軸をY軸として説明する。
【0025】
傾斜機能部材10においては、導電性無機物質の濃度のX軸に沿った傾斜的な変化によって、第1端部10a側に導電性部分11が設けられ、第2端部10b側に絶縁性部分12が設けられる。第1端部10aは、導電性部分11に含まれる。第2端部10bは、絶縁性部分12に含まれる。
傾斜機能部材10には、例えばモリブデン(Mo)とSiOとが含まれる。Moは導電性無機物質の一例である。傾斜機能部材10は、第1端部10aから第2端部10bに向けてSiOに対するMoの組成比が連続的に減少する。これにより、傾斜機能部材10は、X軸に沿って導電性等の機能が傾斜的に変化する。実施形態にかかる傾斜機能部材10の導電率は、第1端部10aで最も高く、第2端部10bで最も低くなる。導電率は、第1端部10aから第2端部10bにかけて徐々に低くなる。
【0026】
また、傾斜機能部材10には、X軸に沿って第2端部10bから導電性部分11の途中まで孔10hが設けられる。この孔10hには、電極軸棒20の軸部20aが挿入され、導通を確保することができる。
【0027】
ここで、本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材110が適用されるランプ210について説明する。
図1(a)はランプの全体を例示する模式的断面図、図1(b)はランプが適用される光源装置を例示する模式的断面図である。
図1(a)に表したように、ランプ210は、発光管211と、その両側に接続された封止管213と、を有する。封止管213の内部には、封止管213と溶着されたランプ用電流導入端子部材110が挿入されている。
【0028】
発光管211は、SiOや透光性セラミックス等によって中空の内部空間211aを有する球体状に形成されている。封止管213は、発光管211の内部空間211aと連通するように発光管211の両側に接続されている。封止管213の材料は、発光管211の材料と同じであることが望ましい。ランプ210の点灯中、発光管211や封止管213は高温になる。発光管211の材料と、封止管213の材料とを同じにして互いの熱膨張率を合わせることで、両者の熱膨張の違いによるクラック発生等の不具合を防止することができる。図1に表した例では、発光管211を中心に、2つの封止管213が対向して設けられている。
【0029】
発光管211の内部空間211aには、水銀、アマルガム、金属ハロゲン化物、キセノン等の発光物質が封入される。すなわち、内部空間211aに発光物質を入れた状態で封止管213内に本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材110を挿入し、封止管213と溶着することによって、発光物質を内部空間211aに密封することができる。
【0030】
ランプ用電流導入端子部材110は、傾斜機能部材10における絶縁性部分12において封止管213と溶着される。絶縁性部分12は、封止管213との溶着によってランプ用電流導入端子部材110を保持する機能を有する。溶着は、発光管211と傾斜機能部材10の絶縁材料の比率が大きい部分との間、すなわち材料の主成分が同じ部分で行われる。これにより、発光管211と傾斜機能部材10との確実な溶着が行われる。
【0031】
ランプ用電流導入端子部材110には電極軸棒20が挿入される。電極軸棒20には、例えばタングステンが用いられる。電極軸棒20の軸部20aは、ランプ用電流導入端子部材110の傾斜機能部材10に設けられた孔10hに挿入される。孔10hは、第2端部10bから導電性部分11の途中まで設けられている。電極軸棒20の軸部20aは孔10hの導電性部分11に接触する位置まで挿入される。例えば、軸部20aは、孔10hの底部10aに接触する位置まで挿入される。これにより、電極軸棒20と孔10hの底部10aとの導通を確保することができる。
【0032】
対向する2つの封止管213のそれぞれには、ランプ用電流導入端子部材110が溶着される。それぞれのランプ用電流導入端子部材110に電極軸棒20が挿入されることで、2つの電極軸棒20の先端部20bが内部空間211a内において所定の間隔で向かい合い、2極を構成する。
【0033】
ランプ210の外部から2つのランプ用電流導入端子部材110のそれぞれの導電性部分11に電圧を印加することによって、2つの電極軸棒20のあいだに所定の電圧が印加され、内部空間211aに封入された発光物質の発光が行われる。
【0034】
図1(b)に表したように、光源装置310には、ランプ210に電流を供給する安定器313が設けられている。ランプ210は、必要に応じて設けられた例えば凹型の反射鏡311の内側に配置される。ランプ210には、2つのランプ用電流導入端子部材110のそれぞれの導電性部分11に接続された電極線219が設けられている。ランプ210から延出する電極線219は、配線315に接続され、この配線315が安定器313と接続されている。したがって、安定器313から供給される電流は、配線315を介して2つの電極線219に送られ、ここからランプ210の2つのランプ用電流導入端子部材110を介して2つの電極軸棒20に送られる。これにより、2つの電極軸棒20のあいだに所定の電圧が印加されることになる。
【0035】
次に、本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材110を図2に基づき説明する。
図2(a)は、本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材を例示する模式的断面図である。図2(a)に表したように、本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材110においては、傾斜機能部材10の孔10hが設けられた部分におけるY軸に沿った導電性部分11の肉厚t1の寸法が、孔10hの内径C3よりも小さい。すなわち、t1<C3の関係になっている。
【0036】
ここで、傾斜機能部材10のX軸に沿った導電率は、第1端部10aで最も高く、第2端部10bに向けて連続傾斜して(徐々に)変化し、第2端部10bで最も低くなる。反対に、傾斜機能部材10のX軸に沿った絶縁性は、第1端部10aで最も低く、第2端部10bに向けて連続傾斜して(徐々に)変化し、第2端部10bで最も高くなる。
【0037】
導電性部分11は第1端部10aを含む領域であり、絶縁性部分12は第2端部10bを含む領域である。
導電性部分11と絶縁性部分12との境界BLは、例えば、傾斜機能部材10のX軸に沿った全長の中心や、傾斜機能部材10のX軸に沿った導電率の中心(第1端部10aの導電率と第2端部10bの導電率との平均)である。実施形態では、説明の便宜上、傾斜機能部材10のX軸に沿った全長の中心を境界BLとして、境界BLに対して第1端部10a側を導電性部分11、境界BLに対して第2端部10b側を絶縁性部分12、ということにする。
【0038】
図2(a)に表した例では、傾斜機能部材10の外径が一定であり、孔10hの内径C3も一定である。Y軸に沿ってみて、孔10hが傾斜機能部材10の外径の中心に設けられている場合、孔10hの部分における導電性部分11のY軸に沿った肉厚t1は、X軸に沿ったどの位置でも同じになる。
【0039】
図2(b)は、孔の底部に丸みが設けられた例を示す模式的断面図である。
図2(b)に表したランプ用電流導入端子部材111のように、傾斜機能部材10に孔10hを設けた場合、孔10hの底部BT側には丸み部分CVが設けられることもある。孔10hが設けられた部分におけるY軸に沿った導電性部分11の肉厚は、丸み部分CVではX軸に沿った位置によって変化する。実施形態において、肉厚t1とは、丸み部分CVを除き、導電性部分11の肉厚がほぼ一定になった部分の厚さのことをいう。
また、導電性部分11の肉厚として厚さが一定になる部分がない場合(例えば、肉厚がX軸の位置によって徐々に変化する場合)には、最も薄い部分の肉厚を肉厚t1とする。
【0040】
同様に、孔10hの内径も、丸み部分CVではX軸に沿った位置によって変化する。実施形態において、内径C3とは、丸み部分CVを除き、孔10hの内径がほぼ一定になった部分の内径のことをいう。
また、孔10hの内径が一定になる部分がない場合(例えば、内径がX軸の位置によって徐々に変化する場合)には、最も大きい内径を内径C3とする。
【0041】
このようなランプ用電流導入端子部材110及び111では、孔10hに挿入される電極軸棒20の軸部20aの外径によって流せる電流量が決まる。すなわち、軸部20aの外径が大きいほど多くの電流を流すことができる。
【0042】
傾斜機能部材10の導電性部分11の電気抵抗は、タングステン等の電極軸棒20の電気抵抗より大きいため、例えば30アンペア(A)以上の大電流を傾斜機能部材10に流す場合、電気の流れる距離を電極軸棒20の軸部20aの外径よりも小さくする。すなわち、上記説明した、t1<C3の関係を満たすようにする。これにより、例えば30A以上の大電流を流しても傾斜機能部材10の導電性部分11における異常加熱を抑制することができる。
【0043】
また、肉厚t1の寸法が内径C3よりも小さいため、傾斜機能部材10の導電性部分11の電気抵抗に固体間のばらつきがあっても、ばらつきの影響を比較的小さくすることができ、安定的に大電流を流すことができるようになる。これにより、傾斜機能部材10の導電性部分11における異常加熱を抑制することの信頼性が高くなる。
【0044】
ここで、傾斜機能材料10の製造方法の一例について説明する。
図3は、傾斜機能材料の製造方法を例示する模式図である。
先ず図3(a)に表したように、石膏型500の上にアクリル管502を立設し、このアクリル管502内にSiOとMoとの混合スラリーを流し込む。すると、SiOとMoとの比重差によって傾斜機能材料10が鋳込み成形される。ここで、混合スラリーの調合割合は、例えば、SiOを10(グラム)g以上30g以下、Moを10g以上30g以下、純水を15g以上45g以下とする。ただし、SiOは石英を基準としており、アモルファスを用いる場合には上記の分量を2.2/2.6倍にする。
【0045】
そして、図3(b)に表したように、所定の厚さに形成したのち、脱型し、例えば40℃以上50℃以下で約2日間乾燥し、生加工した後、例えば1100℃以上1250℃以下で約1時間仮焼し、仮焼体に電極挿入用の孔10h等を穿設した後、例えば1740℃で約10分間本焼して、図3(c)に表したような傾斜機能材料10を得る。
【0046】
上記の製造方法によって形成される傾斜機能材料10は、第1端部10aと第2端部10bとのあいだで機能が自然変化する。すなわち、この傾斜機能材料10は、第1端部10aから第2端部10bに向けてSiOに対するMoの組成比が連続的に減少する。
【0047】
図4は、他の傾斜機能材料を例示する模式図である。
すなわち、図4に例示した傾斜機能材料10は、複数のシート状材料150が積層された構成を有する。図4に例示した傾斜機能材料10では、n(nは2以上の整数)層のシート状材料150(1)、150(2)、…、150(n)が積層されている。各シート状材料150(1)、150(2)、…、150(n)は、シート状材料ごとに導電材料(例えば、Mo)と絶縁材料(例えば、SiO)との存在比率が順に変化している。
【0048】
この傾斜機能材料10では、第2端部10bから第1端部10aに向けてシート状材料150(1)、150(2)、…、150(n)の順に導電材料の存在比率が増加する。これにより、図4に表した傾斜機能材料10では、第2端部10bから第1端部10aに向けて導電材料の存在比率が段階的に増加する。
【0049】
本実施形態に係るランプ用電流導入端子部材110では、図3(c)及び図4のいずれに表した傾斜機能材料10であっても適用可能である。
【0050】
次に、他の実施形態について説明する。
図5(a)〜図7(b)は、他の実施形態を例示する模式図である。
【0051】
(第2実施形態)
図5(a)は、第2の実施形態を例示する模式図である。
図5(a)では、第2の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材120の模式的な側面を例示している。
このランプ用電流導入端子部材120においては、Y軸に沿った絶縁性部分12の外径C1が、Y軸に沿った導電性部分11の外径C1よりも大きい。すなわち、C1>C2の関係を満たしている。
ここで、絶縁性部分12の外径C1とは、絶縁性部分12のX軸の位置に応じた外径のうち最も大きい外径をいう。また、導電性部分11の外径C2とは、導電性部分11のX軸の位置に応じた外径のうち最も大きい外径をいう。
【0052】
このランプ用電流導入端子部材120によれば、傾斜機能部材10の熱容量を小さくすることができ、ランプ210の温度の上昇速度を速くすることができる。これにより、ランプ210の点灯における立ち上がり時間を早めることができる。
【0053】
ここで、ランプ210の立ち上がり時間とは、ランプ211aの発光空間において封入されている発光物質の温度が徐々に高くなり、定常的に発光をはじめ、状態方程式による分圧の原理から、ある一定の分圧を維持した状態になるまでの時間である。なお、通常は、ランプ210への通電の開始から所定の安定した照度になるまでの時間のことを言う。
【0054】
さらに、このランプ用電流導入端子部材120によれば、傾斜機能部材10の熱容量を小さくすることができ、点灯状態にあるランプ210を消灯した際の冷却速度を速めることができる。これによりランプ消灯後からの再点灯までの時間を短くすることができる。
【0055】
再点灯までの時間を短くできることは次の理由に基づく。すなわち、点灯時の現象としてグロー放電からアーク放電へ移行して正規の点灯状態となる。アーク放電に移行するときには比較的大量の電流が必要となる。電流が流れやすくなるためには電極軸棒20の抵抗値が小さくなっている方がよい。消灯直後の熱い状態では抵抗が大きいため、再点灯の時間を短くするためには、早く冷却できて、電極軸棒20の抵抗が少しでも小さくなっていることが望ましい。ランプ用電流導入端子部材120では、冷却速度が速いことから、再点灯までの時間を短縮することにつながる。
【0056】
例えば、30A以上の大電流を流すランプ210では、タングステン等の金属を含む電極軸棒20の外径が大きくなるため、電極軸棒20の重量も重くなる。
傾斜機能部材10の絶縁性部分12はランプ210の封止管213との溶着によってランプ用電流導入端子部材120及び電極軸棒20を支持する役目を有する。このため、大きな(重い)電極軸棒20をしっかりと支えるために、絶縁性部分12の外径を導電性部分11の外径よりも大きくする場合がある。
絶縁性部分12の外径を大きくすることで、封止管213と傾斜機能部材10との溶着部分(シール部分)での保持強度を確保し、かつ、例えば30A以上の大電流を傾斜機能部材10に流すことが可能になる。
【0057】
一般的に、ランプ210は、高温状態で水銀や金属ハロゲン等の発光物質が蒸発して照度等の光としての性能を発揮する。傾斜機能部材10の熱容量が大きいと、ランプ210の温度が上がりにくくなり、ランプ210の点灯の立ち上がり時間(電源投入から所定の照度に達するまでの時間)が遅くなる。
導電性部分11の外径C2を、絶縁性部分12の外径C1よりも小さくすることにより、傾斜機能部材10の全体が絶縁性部分12の外径C1と同じ外径になっている場合に比べて熱容量を小さくすることができる。
その結果、ランプ210の温度の上昇速度を速くすることができ、ランプ210の点灯の立ち上がり時間を短くすることができる。
【0058】
(第3実施形態)
図5(b)は、第3の実施形態を例示する模式図である。
図5(b)では、第3の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材130の模式的な断面を例示している。
このランプ用電流導入端子部材130においては、孔10hが設けられた部分におけるY軸に沿った絶縁性部分12の肉厚t2が、孔10hが設けられた部分におけるY軸に沿った導電性部分11の肉厚t1よりも厚い。すなわち、t2>t1の関係を満たしている。
ここで、絶縁性部分12のY軸に沿った肉厚t2とは、絶縁性部分12のX軸の位置に応じた肉厚のうち最も厚い部分の厚さをいう。
【0059】
一般的に、タングステン等の金属を含む電極軸棒20の軸部20aの外径は、長さ方向(X軸方向)に一定であり、傾斜機能部材10に設けられる孔10hの内径C3も長さ方向(X軸方向)に一定であることが望ましい。
このランプ用電流導入端子部材130によれば、導電性部分11及び絶縁性部分12の孔10hの内径を一定にしたまま、絶縁性部分12の外径C1を導電性部分11の外径C2よりも大きくすることができ、絶縁性部分12の肉厚t2を導電性部分11の肉厚t1よりも厚くすることができる。これにより、電極軸棒20の軸部20aを挿入する孔10hの内径C3を一定にして、封止管213と傾斜機能部材10との溶着部分(シール部分)での保持強度を確保し、例えば30A以上の大電流を傾斜機能部材10に流すことが可能になる。
【0060】
(第4実施形態)
図6(a)は、第4の実施形態を例示する模式図である。
図6(a)では、第4の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材140の模式的な断面を例示している。
このランプ用電流導入端子部材140においては、X軸に沿った導電性部分11の肉厚t3の寸法が、孔10hの内径C3よりも小さい。すなわち、t3<C3の関係を満たしている。
ここで、導電性部分11のX軸に沿った肉厚t3とは、導電性部分11の孔10hの設けられていない部分のでX軸に沿った肉厚のうち、Y軸の位置に応じた最も薄い部分の厚さをいう。
【0061】
ランプ用電流導入端子部材140では、孔10hに挿入される電極軸棒20の軸部20aの外径によって流せる電流量が決まる。すなわち、軸部20aの外径が大きいほど多くの電流を流すことができる。
このランプ用電流導入端子部材140によれば、傾斜機能部材10の孔10hに挿入した電極軸棒20の軸部20aの外径よりも短い距離で電極軸棒20から導電性部分11の第1端部10aに向けて電流を流すことができる。これにより、外径の大きな軸部20aを有する電極軸棒20を用いる場合でも、軸部20aから第1端部10aに低抵抗で電流を流すことができ、導電性部分11での異常加熱を抑制することができる。これにより、例えば30A以上の電流を傾斜機能部材10に流すことが可能になる。
【0062】
(第5実施形態)
図6(b)は、第5の実施形態を例示する模式図である。
図6(b)では、第5の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材150の模式的な断面を例示している。
このランプ用電流導入端子部材150においては、X軸に沿った導電性部分11の肉厚t3が、孔10hが設けられた部分におけるY軸に沿った導電性部分11の肉厚t1以下である。すなわち、t3≦t1の関係を満たしている。
【0063】
ランプ用電流導入端子部材150では、傾斜機能部材10と電極軸棒20との電気の受け渡しが重要である。第1端部10aに電極線219が接続される場合、電極軸棒20の軸部20aにおける端部からX軸方向への電流の受け渡しが特に重要になる。ランプ用電流導入端子部材150では、導電性部分11のX軸に沿った肉厚t3を、導電性部分11のY軸に沿った肉厚t1以下にしているため、例えば30A以上の電流であっても電極軸棒20から第1端部10aに向けて低抵抗で電流を流すことができる。これにより、傾斜機能部材10の強度を維持しつつ、傾斜機能部材10の孔10hに挿入した電極軸棒20からX軸の方向に大電流を流すことできるようになる。
【0064】
(第6実施形態)
図7(a)は、第6の実施形態を例示する模式図である。
図7(a)では、第6の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材160の模式的な側面を例示している。
このランプ用電流導入端子部材160においては、絶縁性部分12に設けられた縮径部に補強部13が設けられている。補強部13は、絶縁性部分12の外径の大きな第1部分12aと、外径の小さな第2部分12bと、の間に設けられている。補強部13は、第2部分12bの外周面と、第1部分12aの端面と、を繋ぐように、例えば曲面状に設けられている。
【0065】
このような補強部13が設けられたランプ用電流導入端子部材160では、補強部13が設けられていない場合に比べて、傾斜機能部材10の外径の異なる部分の強度を高めることができる。このような補強部13は、例えば、第2実施形態に係るランプ用電流導入端子部材120及び第3実施形態に係るランプ用電流導入端子部材130に適用される。
【0066】
(第7実施形態)
図7(b)は、第7の実施形態を例示する模式図である。
図7(b)では、第7の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材170の模式的な側面を例示している。
このランプ用電流導入端子部材170においては、傾斜機能部材10の縮径部がテーパ形状になっている。ランプ用電流導入端子部材170では、絶縁性部分12の第2部分12bから導電性部分11にかけて連続的なテーパ形状になっている。これにより、導電性部分11の外径C2は、第2端部10b側から第1端部10a側に向けて除去に小さくなる。ランプ用電流導入端子部材170において、孔10hの内径C3は一定である。
【0067】
これにより、孔10hが設けられた部分における導電性部分11のY軸に沿った肉厚は、第2端部10b側から第1端部10a側に向けて除去に薄くなる。ランプ用電流導入端子部材170において、肉厚t1は、Y軸に沿った導電性部分11の肉厚のうち最も薄い部分の厚さとなる。
【0068】
このようにランプ用電流導入端子部材170では、傾斜機能部材10の外径の異なる部分の強度を高めることができる。さらに、孔10hの内径C3を一定にしても、第1端部10a近傍の肉厚t1を薄くできるため、例えば30A以上の大電流を傾斜機能部材10に流すことが可能になる。
【0069】
図8(a)〜(b)は、他の構成例を示す模式図である。
図8(a)は他の構成例の組立前の状態を示す模式的側面図、図8(b)は他の構成例の組立後の状態を示す模式的側面図である。
図8に表した他の構成例では、外径が一定のランプ用電流導入端子部材(例えば、ランプ用電流導入端子部材110、111、140及び150)に、絶縁性リング400を組み合わせたものである。
【0070】
例えば、ランプ用電流導入端子部材110、111、140及び150の傾斜機能部材10の外径C4は一定である。絶縁性リング400の外径C5は、傾斜機能部材10の外径C4よりも大きい。絶縁性リング400の孔400hの内径C6は、傾斜機能部材10の外径C4とほぼ一致している。これにより、傾斜機能部材10の絶縁性部分12側を、絶縁性リング400の孔400hに挿入し、両者を固定する。
【0071】
絶縁性リング400は、例えば石英リングである。石英リングを用いることで、傾斜機能部材10と絶縁性リング400とを確実に溶着することができる。傾斜機能部材10の絶縁性部分12側に絶縁性リング400が取り付けられることで、ランプ用電流導入端子部材110、111、140及び150の絶縁性部分12側の外径は、絶縁性リング400の外径C5になり、封止管213と傾斜機能部材10との溶着部分(シール部分)の強度が増加する。また、封止管213の材料に石英が用いられる場合、同じ材料の絶縁性リング400を溶着することで、シール部分のシール性を向上させることが可能になる。
【0072】
図9(a)〜(c)は、ランプ用電流導入端子部材と電極線との接続例を示す模式図である。
なお、以下に説明する接続例では、上記説明したランプ用電流導入端子部材110、111、120、130、140、150、160及び170のいずれかを適用することができる。これらのランプ用電流導入端子部材110、111、120、130、140、150、160及び170を総称して、ランプ用電流導入端子部材100ということにする。
【0073】
図9(a)に表した接続例は、導通リング50を用いた接続を行う例である。ランプ用電流導入端子部材100の傾斜機能部材10の第1端部10a側には、導通リング50が接続されている。導通リング50は、筒状の金属である。導通リング50は、筒状の金属の一部にスリットが設けられたC型リング形状であってもよい。
【0074】
導通リング50の外周面50sには、電極線219が接続されている。このような接続例においては、傾斜機能部材10の外周面10sと導通リング50とが接触しているため、電極線219と電極軸棒20との間の電流の経路上に、傾斜機能部材10の導電性部分11側の外周面10sが含まれる。したがって、この接続例で用いられるランプ用電流導入端子部材100としては、肉厚t1を規定したランプ用電流導入端子部材110、111及び130が特に適している。
すなわち、電流経路である導電性部分11の肉厚t1が薄いため、電流経路上に含まれる傾斜機能部材10の長さを短くして、電気抵抗の抑制を図ることができる。
これにより、例えば30A以上の電流を傾斜機能部材10に流すことが可能になる。
【0075】
図9(b)に表した接続例は、導通リング50及び棒状電極線219aを用いた接続を行う例である。ランプ用電流導入端子部材100の傾斜機能部材10の第1端部10a側には、導通リング50が接続されている。すなわち、傾斜機能部材10は、導通リング50の一方の開口に接続される。
また、導通リング50の他方の開口には、棒状電極線219aが接続される。
導通リング50内において、傾斜機能部材10と棒状電極線219aとは、直接接触していても、直接接触していなくてもよい。
【0076】
導通リング50内において、傾斜機能部材10と棒状電極線219aとが直接接触していない場合、傾斜機能部材10の導電性部分11側の外周面10sが、電極線219と電極軸棒20との間の電流の経路になる。この場合、ランプ用電流導入端子部材100としては、肉厚t1を規定したランプ用電流導入端子部材110、111及び130が特に適している。
【0077】
導通リング50内において、傾斜機能部材10と棒状電極線219aとが直接接触している場合、傾斜機能部材10の導電性部分11側の外周面10s及び第1端部10aが、電極線219と電極軸棒20との間の電流の経路になる。この場合、ランプ用電流導入端子部材100としては、肉厚t1や肉厚t3を規定したランプ用電流導入端子部材110、111、130、140及び150が特に適している。
【0078】
図9(c)に表した接続例は、電極線219を傾斜機能部材10に直接接続した例である。この接続例では、傾斜機能部材10の第1端部10aに、電極線219が溶接等によって直接接続されている。
この場合、傾斜機能部材10の第1端部10aが、電極線219と電極軸棒20との間の電流の経路になる。したがって、この接続例では、ランプ用電流導入端子部材100として、肉厚t3を規定したランプ用電流導入端子部材140及び150が特に適している。
【0079】
なお、図示しないが、傾斜機能部材10の外周面10sに電極線219を溶接等で直接接続してもよい。この場合には、ランプ用電流導入端子部材100として、肉厚t1を規定したランプ用電流導入端子部材110、111及び130が特に適している。
【0080】
図10〜図17は、実験例を示す図である。
図10は、実験に用いた構成の接続関係を例示する模式図である。
本実験では、第1の実施形態に係るランプ用電流導入端子部材110を用いている。ランプ用電流導入端子部材110において、孔10hには電極軸棒20が挿入される。傾斜機能部材10の導電性部分11には、クリップ603が接続される。クリップ603は、導電性部分11における傾斜機能部材10の外周面10sを挟むように接続される。クリップ603は、配線611を介して直流電源601と接続される。
【0081】
電極軸棒20には配線612が接続される。電極軸棒20は、配線612を介して電流計602に接続される。直流電源601と電流径602とは、配線613を介して接続される。このような接続構成によって、直流電源601、電流計602、電極軸棒20及びランプ用電流導入端子部材110が直列に接続される。
【0082】
本実験では、ランプ用電流導入端子部材110の肉厚t1と内径C3とを変化させて、図10に表した接続関係を構成し、直流電源601からランプ用電流導入端子部材110に電流を流す。そして、導電性部分11が赤熱するかどうかを目視によって確認する。
【0083】
本実験では、電極軸棒20の軸部20aの外径、すなわち孔10hの内径C3に対応して電流値を決定している。
図11(a)〜(b)は、軸部の外径と電流との関係を例示した図である。
図11(a)は、軸部20aの外径(mm)と電流(A)との関係を例示する表を表している。図11(b)は、軸部20aの外径(mm)と電流(A)との関係を例示するグラフを表している。
軸部20aの外径が6mmの場合には、約100Aの電流を流すことができる。他の外径については、外径6mmを基準にして軸部20aの軸方向にみた断面積の比率に応じて電流を計算している。
【0084】
本実験では、肉厚t1及び内径C3を変化させたランプ用電流導入端子部材110のサンプルを作製した。同じ肉厚t1及び同じ内径C3については、各5つのサンプルを作製した。そして、同じ肉厚t1及び同じ内径C3の5つのサンプルについて、内径C3(軸部20aの外径)に応じた電流を流し、導電性部分11の赤熱があったか否かを判断した。
【0085】
図12〜図13には、ランプ用電流導入端子部材の各サンプルについての赤熱率(%)が示されている。
図12では、内径C3が2mm、3mm、3.5mm、4mm及び5mmのサンプルの例、図13では、内径C3が6mm、8mm及び10mmのサンプルの例を示している。
赤熱率(%)とは、同じ肉厚t1及び同じ内径C3の5つのサンプルのうち、電流を流した際に導電性部分11の赤熱が確認されたサンプルの割合を表している。すなわち、5つのサンプル全てで赤熱が確認された場合、赤熱率は100%、4つのサンプルで赤熱が確認された場合、赤熱率は80%、同様に、3つの場合は60%、2つの場合は40%、1つの場合は10%、5つのサンプル全てで赤熱が確認されない場合は0%になる。
【0086】
図12に表したように、内径C3が2mm及び3mmでは、いずれについても赤熱率は0%であった。このときの電流値は、30Aよりも小さかった。
また、図12に表した内径C3が3.5mm、4mm及び5mmの場合、図13に表した内径C3が6mm、8mm及び10mmの場合、いずれについても肉厚t1の寸法が内径C3よりも小さい場合には赤熱率は0%であった。一方、肉厚t1の寸法が内径C3と同じ場合には、一部のサンプルに赤熱が確認され、肉厚t1の寸法が内径C3を超えると、全てのサンプルで赤熱が確認された。このときの電流値は30A以上であった。
【0087】
本実験の結果から、電流を30A以上流そうとすると、肉厚t1の寸法を内径C3よりも小さくすれば、導電性部分11に赤熱を発生させずに傾斜機能部材10に十分な電流を流すことができることが分かった。
【0088】
図14は、ランプ用電流導入端子部材の各サンプルについての立ち上がり時間を示す図である。
図14(a)には導電性部分の外径C2と立ち上がり時間との関係が表され、図14(b)には図14(a)に示す関係のグラフが表されている。
図14(a)及び(b)に表したように、導電性部分の外径C2が小さくなるほど立ち上がり時間は早くなることが分かった。
【0089】
図15は、ランプ用電流導入端子部材の各サンプルについてのシール部の破壊率を示す図である。
図15(a)には導電性部分と絶縁性部分との外径の比(C1/C2)と、シール部の破壊率との関係を表され、図15(b)には図15(a)に示す関係のグラフが表されている。
【0090】
ここで、シール部の破壊率は、シール性能を比較するために設定した指標である。シール部の破壊率は、ランプの一方側だけ傾斜機能部材の絶縁性部分をシール封止した後、シール封止していない他方側から水圧を徐々にかけていき、ランプ自体やシール部が破壊したときの水圧を測定して、最初に設定した圧力に達するまでに破裂した個数を率で表したものである。今回設定した圧力は、30MPaである。
【0091】
図15(a)及び(b)に表したように、導電性部材の外径C2に対する絶縁性部材の外径C1の比(C1/C2)が大きいほど、シール部の破壊率が低下し、シール部の強度が高くなることが分かった。
【0092】
図16及び図17には、ランプ用電流導入端子部材の各サンプルについての赤熱率が示されている。
図16は、導電性部分の第1軸方向の肉厚と孔内径との比(t3/C3)と、赤熱率との関係を示す図である。
図16(a)には比(t3/C3)と赤熱率との関係が表され、図16(b)には図16(a)に示す関係のグラフが表されている。
図17は、第1軸方向の肉厚と第2軸方向の肉厚との比(t3/t1)と、赤熱率との関係を示す図である。
図17(a)には比(t1/t3)と赤熱率との関係が表され、図17(b)には図17(a)に示す関係のグラフが表されている。
【0093】
図16及び図17に表した例では、導電性部分の第2軸方向の肉厚t1を1mmとし、孔の内径C3を2mmとした例であるが、導電性部分の第2軸方向の肉厚t3を変化させることで、赤熱率が変化することが確認された。
【0094】
図16に表したように、導電性部分の第2軸方向の肉厚t3が孔の内径C3よりも大きくなると、赤熱率が高くなることが分かった。
また、図17に表したように、導電性部分の第2軸方向の肉厚t3が第1軸方向の肉厚t1以上になると、赤熱率が高くなることが分かった。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、傾斜機能部材10を用いたランプ用電流導入端子部材100及びランプ210において、傾斜機能部材10の導電性部分の発熱を抑制して大電流であっても信頼性の高いランプ用電流導入端子部材100及びランプ210を提供することができるようになる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ランプ用電流導入端子部材100及びランプ210が備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0097】
10…傾斜機能部材、10a…第1端部、10b…第2端部、10h…孔、10s…外周面、11…導電性部分、12…絶縁性部分、12a…第1部分、12b…第2部分、13…補強部、20…電極軸棒、20a…軸部、50s…外周面、100、110、111、120、130、140、150、160、170…ランプ用電流導入端子部材、210…ランプ、211…発光管、213…封止管、310…光源装置、311…反射鏡、313…安定器、C1…外径、C2…外径、C3…内径、C4…外径、C5…外径、C6…内径、t1…肉厚、t2…肉厚、t3…肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部を含む導電性部分と、第2端部を含む絶縁性部分と、を有し、前記第1端部と前記第2端部とを結ぶ第1軸に沿って導電性無機物質の濃度が傾斜的に変化する傾斜機能部材を備え、
前記傾斜機能部材には、前記第1軸に沿って前記第2端部の位置から前記導電性部分の途中まで孔が設けられ、
前記孔が設けられた部分における前記第1軸と直交する第2軸に沿った前記導電性部分の肉厚は、前記孔の内径よりも小さいことを特徴とするランプ用電流導入端子部材。
【請求項2】
前記第2軸に沿った前記絶縁性部分の外径は、前記第2軸に沿った前記導電性部分の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のランプ用電流導入端子部材。
【請求項3】
前記孔が設けられた部分における第2軸に沿った前記絶縁性部分の肉厚は、前記孔が設けられた部分における前記第2軸に沿った前記導電性部分の肉厚よりも厚いことを特徴とする請求項2記載ランプ用電流導入端子部材。
【請求項4】
前記第1軸に沿った前記導電性部分の肉厚は、前記孔の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1または3に記載のランプ用電流導入端子部材。
【請求項5】
前記第1軸に沿った前記導電性部分の肉厚は、前記孔が設けられた部分における前記第2軸に沿った前記導電性部分の肉厚以下であることを特徴とする請求項4記載のランプ用電流導入端子部材。
【請求項6】
発光管と、
前記発光管に接続された封止管と、
前記封止管に挿入された請求項1〜5のいずれか1つに記載のランプ用電流導入端子部材と、
を備えたことを特徴とするランプ。

【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−84585(P2013−84585A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207250(P2012−207250)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】