説明

ランプ

【課題】放熱性能及び電気的な絶縁性能の両方を高めることができるランプを提供すること。
【解決手段】LED基板16に実装されたLED15の発熱を筐体35に伝導して放熱するLEDランプ1において、前記LED基板16を所定の絶縁が得られる厚みの樹脂基板で形成し、前記LED15の実装面と前記筐体35に伝熱する裏面とのそれぞれに、導電性を有する材料から成る放熱層としての銅箔83を設け、前記LED15の実装面では、前記銅箔83に電源を接続するとともにスリット84を形成して導電エリア85に分割し、前記スリット84を跨いで前記LED15を配置して各導電エリア85に電気的に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLEDや有機EL等の発光素子を光源に備え、既設のソケットに装着可能なランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの高出力化、及び低コスト化に伴い、電球の代替として使用可能な電球型のLEDランプが普及している。この種のLEDランプは、一般に、LEDを実装したLED基板を平円板に載置し、この平円板の裏面に、電源回路等の回路基板を収めた筒状の胴体部を接続し、この胴体部の終端に絶縁部を挟んで口金を設けて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
また、この種のLEDランプでは、平円板及び胴体部を熱伝導性材で形成するとともに、当該胴体部に放熱フィンを設け、LEDの発熱を平円板及び胴体部に伝導させて放熱フィンから放熱する放熱構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−10134号公報
【特許文献2】特開2009−206104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記放熱構造において、LED基板を熱伝導性の高い例えばアルミニウム材等の金属材で構成し、熱伝導性シートを挟んで上記平円板に設ける構成とすれば、LEDの発熱を効率良く平円板に伝えることができ放熱性能が向上する。
しかしながら、LED基板を金属基板とすると電気的な絶縁性能が低下してしまう、という問題がある。一方、LEDランプの絶縁性能は、LED基板に樹脂基板を採用することで高めることが可能になるものの、そうすると放熱性能が低下し、光出力の高出力化の妨げになる、という問題がある。
なお、かかる問題は、LEDに限らず、他の発光素子を光源に備えたランプに共通するものである。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、放熱性能及び電気的な絶縁性能の両方を高めることができるランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、基板に実装された発光素子の発熱を筐体に伝導して放熱するランプにおいて、前記基板を所定の絶縁が得られる厚みの樹脂基板で形成し、前記発光素子の実装面と前記筐体に伝熱する裏面とのそれぞれに、導電性を有する材料から成る放熱層を設け、前記発光素子の実装面では、前記放熱層に電源を接続するとともにスリットを形成して導電エリアに分割し、前記スリットを跨いで前記発光素子を配置して各導電エリアに電気的に接続したことを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記ランプにおいて、前記実装面側の放熱層には、前記スリットを放射状に形成し、各スリットに前記発光素子を設けたことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記ランプにおいて、前記筐体は、前記基板を載置する平板部と、前記平板部の裏面に一体に設けられ、一端が前記平板に開口し当該開口から電気回路基板が収められる筒状の胴体部とを有し、前記基板の裏面に設けた放熱層のうち、前記電気回路基板に対向する箇所には前記基板が露出する露出部を設けたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記ランプにおいて、前記電気回路基板と前記基板の裏面との間には、前記基板の露出部に押されて前記電気回路基板に当接し、前記基板の熱を前記胴体部に伝熱するブッシュを設けたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記ランプにおいて、前記胴体部には、前記電気回路基板の下端部を挟み込む固定用溝部と、この下端部と対向する側の1辺が突き当てられる突き当て片とを設けて前記電気回路基板を固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板を所定の絶縁が得られる厚みの樹脂基板で形成したため、十分な絶縁性能が得られる。これに加え、基板の実装面側と裏面との表面に放熱層を設けているため、基板の放熱性能が高められる。特に、発光素子の実装面側では、放熱層に絶縁用のスリットを形成して導電エリアに分割し、前記スリットを跨いで前記発光素子を配置して発光素子を各導電エリアに電気的に接続する構成としたため、実装面側では発光素子の実装時でも放熱層の面積が大きく確保されることとなり放熱性能が損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るLEDランプの外観構成を示す斜視図であり、(A)は上方からみた外観斜視図、(B)は下方からみた外観斜視図である。
【図2】LEDランプの外観構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
【図3】LEDランプを分解して示す斜視図である。
【図4】LEDランプの内部構成を示す断面図である。
【図5】LEDランプと防水ソケットとの係合構造を示す図である。
【図6】絶縁筒部の終端の拡大図である。
【図7】ベース板の平面図である。
【図8】絶縁シートの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は胴体部への装着状態時の平面図、(C)は胴体部への装着状態時の側面図である。
【図9】電気回路基板、固定ブッシュ及びLED基板の係合関係を示す図である。
【図10】固定ブッシュの構成を示す図であり、(A)は全体斜視図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は平面図、(E)は底面図である。
【図11】LED基板の構成を示す図であり、(A)はLED実装面側をみた平面図、(B)は側面図、(C)は裏面側をみた底面図である。
【図12】他の態様のLED基板の構成を示す図である。
【図13】LEDランプ装置の外観構成を示す分解斜視図である。
【図14】LEDランプ装置の断面図である。
【図15】ランプホルダーに既存の電球ランプを装着した状態を示す断面図である。
【図16】環状防水パッキンを示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のIX−IX断面図である。
【図17】図16における環状防水パッキンの近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、発光素子を光源に備えるランプとして、LEDを光源に備えたLEDランプを例示するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば有機EL等の他の発光素子を光源に備えるランプにも適用可能である。
【0013】
図1は本実施形態に係るLEDランプ1の外観構成を示す斜視図であり、図1(A)は上方からみた外観斜視図、図1(B)は下方からみた外観斜視図である。また、図2はLEDランプ1の外観構成を示す図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は側面図、図2(C)は底面図である。図3はLEDランプ1を分解して示す斜視図である。図4はLEDランプ1の内部構成を示す断面図である。
これらの図に示すように、LEDランプ1は、既存の電球と形状及び光学特性が略同じになるように構成されており、既存の電球の代替として使用可能となっている。
【0014】
すなわち、LEDランプ1は、図1に示すように、高熱伝導性を有する材料から形成された略円筒状の胴体部2を有し、この胴体部2の先端2Cに発光部12が設けられ、終端2Aに絶縁性を有する材料から形成された筒状の絶縁筒部10が設けられており、この絶縁筒部10の終端10A(図3、図4)に口金3が冠着されている。口金3は、ソケット58(図5)に螺合するネジ山が切られた筒状のシェル5と、このシェル5の端部の頂部に絶縁部6を介して設けられたアイレット7とを備え、シェル5及びアイレット7が既存のソケット58(例えばE26型ソケット)に装着可能な形状寸法に構成されている。これにより、当該LEDランプ1は、天井や壁面に既設のソケット58や、既存の電球を装着して使用するランプホルダーのソケットに装着でき、既存の電球の代替として使用できる。なお、図3において、符号70はランプホルダーにLEDランプ1を装着する場合に使用する環状防水パッキンである。
【0015】
発光部12は、複数のLED15(図2)を光源に備え、図3及び図4に示すように、LED15の点灯に要するドライバ回路や電源回路等の電気回路を搭載した電気回路基板8が胴体部2及び絶縁筒部10に配設されている。電気回路基板8の電源回路と、口金3のシェル5、及びアイレット7とは、それぞれリード線9A、9Bにより電気的に接続されており、これらシェル5、及びアイレット7を通じてソケット58からの電力が電気回路基板8の電源回路に供給される。
【0016】
上述のように、シェル5と胴体部2とは絶縁筒部10によって電気的に絶縁されていることから、胴体部2の放熱性を高めるべく導電性を有する材料で構成しても、口金3のシェル5と胴体部2との間の絶縁が良好に維持される。
このとき、胴体部2にアルミニウム等の金属材料を用いることで高い放熱性能が得られるものの当該胴体部2を含む筐体35(図4)が重くなることから、既設のソケット58では強度が不足することがあり、また胴体部2が金属材であるのに対し絶縁筒部10が非金属材となることから、胴体部2と絶縁筒部10の接合が弱くなる、という問題がある。
そこで本実施形態では、胴体部2の材料に熱伝導性樹脂を用いるとともに、絶縁筒部10の材料に絶縁性樹脂を用い、胴体部2及び絶縁筒部10をインサート成形することで、これらを二色成型により形成している。
【0017】
胴体部2を熱伝導性樹脂から形成することで、アルミニウム等の金属材料でベース板13及び胴体部2を形成したときよりもLEDランプ1の軽量化が図られ、電球の代替としてLEDランプ1を既存のソケット58や既存のランプホルダーに装着する場合でも、当該LEDランプ1の重量を支えるために既存のソケット58や既存のランプホルダーを補強する作業や部材が必要なく、そのまま代替使用することができる。また軽量化により、後述の放熱フィン25の枚数を増やすことができるので、表面積が増え、より効率的に放熱性を高めることができる。このような熱伝導性樹脂としては、熱伝導率が2W/mK以上の熱伝導性に優れた樹脂材が好ましく、例えば高熱伝導性のカーボン繊維(本実施形態では帝人(株)製ラヒーマ(登録商標))を混入したポリカーボネイト樹脂を好適に用いることができる。
【0018】
また胴体部2と絶縁筒部10とを樹脂材のインサート成形により一体に形成することで接合が強固なものとなる。しかしながら、経年劣化により、胴体部2と絶縁筒部10との接合面(合わせ面)に隙間が生じ防水性が損なわれるおそれがある。そこで、図4及び図5に示すように、胴体部2の終端2Aには、胴体部2の径方向内側に突出する係合凸部2Bを形成するとともに、絶縁筒部10の開口端手前の外周面には、内面側に窪んだ環状の係合凹部10Bを形成し、また絶縁筒部10の開口端には胴体部2の内周面及び係合凸部2Bに当接する当接部10Cを形成している。
この係合凸部2Bが係合凹部10Bに係合するとともに当接部10Cが胴体部2に当接することで、胴体部2と絶縁筒部10との接合部が、いわゆるラビリンス状に構成され、また、この接合部の面積が大きくなって接合強度が高められている。このラビリンス状の構成により、胴体部2と絶縁筒部10との接合部に経年劣化によるひび割れ等によりインサート成形面に隙間が生じた場合でも防水性が維持され、LED15の寿命に見合った耐久性が得られる。
なお、胴体部2の終端2Aと絶縁筒部10の開口端(挿入端)との接合面の形状は、上記ラビリンス状に限らず、防水性と接合強度の向上が得られる形状であれば例えば楔状等の任意の形状とできる。
【0019】
また、図5(A)に示すように、既設のソケット58には口金3の挿入開口端58Aに防水用のソケットパッキン59を装着して設けて防水ソケットとしたものがある。ソケットパッキン59は、ソケット58とLEDランプ1との結合箇所を覆う筒状部材であって、LEDランプ1が挿入されるランプ挿入開口端59A側の内面にラビリンス構造59Bを有する。LEDランプ1をソケット58に装着したときにはソケットパッキン59のランプ挿入開口端59Aが胴体部2の終端2A側の外側面に密着し、これにより、ソケット58とLEDランプ1との結合箇所からの水の浸入が防止される。
特に、胴体部2の終端2Aが絶縁筒部10に入り込むことで、これら胴体部2と絶縁筒部10の外部に露出する接合箇所57が上記ソケットパッキン59に覆われることから、この接合箇所57にひび割れ等が生じた場合でも、ソケットパッキン59により水の浸入が防止される。
【0020】
図5(B)には別態様のソケットパッキン159を示す。このソケットパッキン159は、図5(A)に示したソケットパッキン159よりも高さが低く、ランプ挿入開口端159A側の内面にラビリンス構造を備える代わりに、当該ランプ挿入開口端159Aの縁部が胴体部2に隙間無く密着することでソケット58への浸水を防止する。
上記胴体部2の終端2A側には、ソケットパッキン159のランプ挿入開口端159Aの径に合わせて絶縁筒部10が縮径することで段部11が形成され、当該ランプ挿入開口端159Aが隙間無く胴体部2に隙間無く密着する。
胴体部2と絶縁筒部10の上記接合箇所57は、ソケットパッキン159のランプ挿入開口端159Aが接触して覆われる位置に設けられており、これにより、接合箇所57にひび割れ等が生じた場合でも水の浸入が防止される。
【0021】
図4に示すように、絶縁筒部10の軸方向の中間部には、絶縁筒部10内を胴体部2とアイレット7とに仕切るように補強板部30が設けられている。補強板部30は、絶縁筒部10の軸方向に略直交する板状に形成され、補強板部30には、補強板部30を貫通する配線孔31A、31Bが形成されている。配線孔31A、31Bにおける胴体部2側の面には、胴体部2側ほど拡径する導入穴部32が形成されている。
リード線9A、9Bは、電気回路基板8における口金3側の端に接続され、配線孔31A、31Bを通ってシェル5、及びアイレット7にそれぞれ接続される。
【0022】
絶縁筒部10に口金3を取り付ける際には、シェル5を絶縁筒部10のねじ部33に係合させた状態で、このシェル5を補強板部30の外周側から絶縁筒部10にかしめて固定する。このかしめ位置には補強板部30が設けられているため、かしめ時に加わる絶縁筒部10の径方向の押圧力に対して十分な強度が得られており、シェル5のかしめによる絶縁筒部10の変形を防止できるとともに、シェル5に大きなかしめ力をかけることができ、シェル5を確実にかしめることができる。
絶縁筒部10の側面には、図3に示すように、口金3のかしめの下穴56が設けられており、この下穴56の箇所で口金3のシェル5をかしめることで、下穴56に入り込むようにシェル5が変形することから、シェル5の変形量が大きくなり強度を高めることができる。
【0023】
補強板部30の配線孔31Aから引き出されたリード線9Aは、絶縁筒部10の終端10Aで外側に屈曲して絶縁筒部10の外側面に沿って延びシェル5に接続される。一方、配線孔31Bから引き出されたリード線9Bは、そのまま直線的に延びてアイレット7に接続される。このように、リード線9Aを外側に屈曲させる手前にリード線9A、9Bを引き出す配線孔31A、31Bをそれぞれ設けていることから、リード線9A、9B同士が絡み、並びに、当該絡みによるリード線9A、9Bの短絡を防止できる。また、配線孔31A、31Bには、リード線9A、9Bの導入側に導入穴部32を設けたため、リード線9A、9Bを簡単に配線孔31A、31Bに通すことができる。特に、配線孔31A、31Bの径をリード線9A、9Bと略同程度として隙間が生じない構成とした場合でも、これらリード線9A、9Bを簡単に通すことができる。
【0024】
図6は絶縁筒部10の終端10Aの拡大図である。
絶縁筒部10の終端10Aの外周面には、シェル5の内周面が係合するねじ部33が形成されている。また、終端10Aの外周面には、絶縁筒部10の軸方向に延びる配線溝34が形成されており、この配線溝34はねじ部33の一部に彫り込まれるようにして設けられている。絶縁筒部10の内部から屈曲して外側に延びるリード線9Aは、配線溝34内に埋め込まれて胴体部2側に延びる。すなわち、絶縁筒部10にシェル5が取り付けられた状態では、リード線9Aはシェル5より内側の配線溝34を通り、シェル5の開口端の近傍でシェル5の外周面に接合される。
また、リード線9Aが通る配線溝34は、絶縁筒部10の内部に繋がっており、絶縁筒部10の内部は配線孔31A、31Bを介して、アイレット7と胴体部2とが連通している。このため、配線溝34及び配線孔31A、31Bを介して胴体部2内に空気が出入りでき、これにより胴体部2内の結露が防止される。
【0025】
次いでLEDランプ1の発光部12について詳述する。
発光部12は、上述の通り、胴体部2における口金3と逆側の先端2Cに設けられている。発光部12は、板状のベース板13を有し、このベース板13の上面に、複数のLED15が設けられている。ベース板13は、胴体部2よりも大きな径の上面視略円板状の部材であり、裏面には上記胴体部2の先端2Cが連接されている。ベース板13、及び胴体部2は同一の材料、すなわち熱伝導性樹脂材から一体に成型されており、これらベース板13、胴体部2、及び絶縁筒部10により、LEDランプ1の筐体35が構成されている。
【0026】
図7はベース板13の平面図である。
同図に示すように、ベース板13の面内には、当該胴体部2の連接箇所に対応して、電気回路基板8を胴体部2に挿入するための上面視略円形(胴体部2と略同径)の挿入開口14が形成されている。電気回路基板8は、図4に示すように、胴体部2の先端2Cから絶縁筒部10の補強板部30にかけて延びる長さで、この胴体部2の中空形状に係合する正面視形状を有して形成されている。
【0027】
図4に示すように、胴体部2の直径Rは、電気回路基板8の横幅と略同程度に形成されており、胴体部2の内側には、図7に示すように、胴体部2の終端2A側に電気回路基板8の角部8B(図9)を挟み込む固定用溝部51Aが設けられ、また、この固定用溝部51Aに対向する位置に胴体部2の先端2C側から終端2A側に延びる突き当て片51Bが設けられている。
電気回路基板8を挿入開口14から挿入すると、電気回路基板8の下端の角部8Bが固定用溝部51Aに挟み込まれるとともに、この角部8Bと対向する側の1辺が突き当て片51Bの側面に突き当てられることで、この電気回路基板8が胴体部2内に固定される。
また、この電気回路基板8は、図3に示すように、上端部8Cが固定ブッシュ27を介して後述するLED基板16によって押圧されて強固に固定される。なお、図4では固定ブッシュ27の図示を省略している。また、胴体部2の中には電気回路基板8を取り囲むように巻かれた絶縁シート28が設けられており、当該絶縁シート28により、胴体部2と電気回路基板8との間が電気的に絶縁されている。
特に、電気回路基板8の下端の角部8Bを固定用溝部51Aで挟み込みつつ、この角部8Bと対向する側の1辺を突き当て片51Bの側面に突き当てて固定することで、この電気回路基板8が胴体部2内にしっかりと固定されることから、胴体部2と電気回路基板8との間の絶縁距離を確実に確保することができる。
【0028】
LED15は、例えばLED素子をパッケージ化してなるものである。本実施形態では、LED15に白色LEDが用いられている。なお、LED15に白色以外の他の発光色のLEDを用いても良いことは勿論である。LED15は、図2に示すように、円板状の回路基板である上記LED基板16の上に複数配置されている。
【0029】
LED基板16は、図2に示すように、上記ベース板13にネジ止め固定され、その略中央には、リード線引出開口17が形成されている。胴体部2に挿着された電気回路基板8から電力供給用の陽極及び陰極のリード線(図示せず)がリード線引出開口17を通じて引出されて、このLED基板16の上面に形成されている回路パターン80に電気的に接続され、当該回路パターンを通じて各LED15に電力が供給される。回路パターン80については後に詳述する。
【0030】
ベース板13は、図2及び図4に示すように、周縁に沿って側壁19を有したトレー状を成し、この側壁19の内周面にLED基板16を覆うグローブとしてのカバー22が螺合して取り付けられている。このカバー22とベース板13の間にはOリング26が設けられており、カバー22を側壁19にねじ込むに伴い、Oリング26がカバー22とベース板13の間に挟み込まれる。このように、カバー22のベース板13への取付構造をネジ構造とするとともに、カバー22とベース板13との間にOリング26を挟み込むことで発光部12の防水性が高められている。
【0031】
カバー22には、図示を省略するが、LEDランプ1の銘番を内面に印刷や刻印等で設けている。これにより、LEDランプ1が風雨に晒されても銘番が消えることがなく、また擦れによって消えたりすることもない。
【0032】
図4に示すように、発光部12には、各LED15から側壁19に向かって遮光される光線成分Saをカバー22から取り出して照明に利用可能にすべく、環状の反射体21が設けられ、環状の反射体21には、各LED15を取り囲むようにベース板13の円周に沿って配置され、LED15から入射する光線成分Saをカバー22に向けて反射する反射面21Aが形成されている。かかる反射体21を備えることで、LEDランプ1の効率が向上し、また、水平方向(LED基板16の面に平行な方向)への光の拡がりが抑えられる。
なお、各LED15から側壁19に向かって遮光される光線成分Saをカバー22から取り出して照明に利用可能にすべく、反射体21の反射面21Aは、高い反射率が得られるように高反射グレード素材を使用しているが、アルミニウム蒸着等仕様でも良い。また、反射面21Aを限定させても配光が変わらないようにするためカバーには拡散材を添加しているが、ショットを上記カバーに施してもよい。
【0033】
ここで、LEDランプ1は、各LED15に高出力型のものを使用することで高出力型のランプとして構成されている。このため、何ら対策を施さなければ、各LED15の発熱によりLED温度が上昇し、LED15の寿命低下や光量低下を招くことなる。そこで本実施形態のLEDランプ1においては、次のようにして放熱性を高めることとしている。
すなわち、本実施形態では、LED基板16を載置するベース板13を、当該LED基板16を載置可能な大きさの円板状に構成することで、例えばLED基板16の縁部のみを支持するような構成に比べてベース板13との接触面積を大きくしている。これにより、上記挿入開口14の分を差し引いても、接触面積を例えばLED基板16の50%以上とすることができ、LED基板16からベース板13への十分な伝熱量が確保される。
【0034】
このLED基板16とベース板13の間には、図3及び図4に示すように、LED基板16と同等の面積かそれ以下の大きさのLED基板用放熱シート20が挟まれており、LED15の発熱がLED基板16からLED基板用放熱シート20を通じてベース板13に効率良く導かれ、このベース板13を含む筐体35の全体から外気に放熱される。なお、LED基板用放熱シート20を用いることなく、LED基板16の裏面に放熱性能を有する弾性材質からなる樹脂を所要の厚さコートし一体化する構成としても良い。LED基板用放熱シート20またはLED基板16の裏面のコートに絶縁性能を持たせても良い。
すなわち、ベース板13及び上記胴体部2は共に高熱伝導性を有する材料から一体に形成されていることから、ベース板13と胴体部2の間の熱抵抗は小さく、ベース板13に導かれた熱が胴体部2にロスを少なくして伝えられる。
胴体部2の外周面には、先端2Cから終端2Aに延びる板状の放熱フィン25が胴体部2の軸線を中心にして放射状に多数立設されており、胴体部2に導かれた熱が各放熱フィン25から放熱される。各放熱フィン25は、フィン端部25Aがベース板13の裏面13Aに連接されるとともに、これら放熱フィン25、胴体部2及びベース板13が一体に形成されている。これにより、胴体部2に伝わった熱がロスなく放熱フィン25から放熱されるとともに、ベース板13からも直接放熱フィン25に熱が伝えられることから、放熱フィン25への伝熱量が増加して高い放熱性能が得られる。
【0035】
また胴体部2の直径Rは、上述の通り、内蔵の電気回路基板8が収まる程度(電気回路基板8の幅程度)に小さく形成されているため、LED基板16とベース板13の接触面積を確保できLED基板16とベース板13間での伝熱量を多くできる。これに加え、ベース板13と胴体部2の径の差も大きくなるため、放熱フィン25のフィン端部25Aを胴体部2からベース板13の縁部(側壁19)まで延びる長さとすることで、このフィン端部25Aと裏面13Aの接触面積も大きくなり、より多くの発熱を放熱フィン25に導き放熱できる。このようにして放熱フィン25への伝熱量が確保されるため、放熱フィン25の厚みを例えば2.5mm以下まで薄くしても十分は放熱性能が維持でき、これにより、放熱フィン25の薄型化の分だけ軽量化が図られる。
【0036】
なお、放熱フィン25は、それぞれ口金3側のフィン端部25Bが口金3からベース板13側に距離Lだけ離れた(手前の)位置に配置されている。これにより、口金3から胴体部2及び絶縁筒部10に沿った距離Lの区間(以下、「フィン無し区間」と言う)45には放熱フィン25が無いため、このフィン無し区間45では放熱フィン25の熱が伝わり難くなる。
また電気回路基板8にあっては、絶縁筒部10の補強板部30から胴体部2の先端2Cにかけて延びる長さに形成されているため、胴体部2に装着した状態では、図4に示すように、電気回路基板8の下端部8Aが口金3の近傍に位置する。
したがって、例えば、この状態において、胴体部2及び絶縁筒部10のフィン無し区間45に対応する箇所に電気回路基板8の電気回路のうち、熱的な影響を受け易い(熱から保護すべき)電気回路部品を配置する構成として、電気回路部品を放熱フィン25の熱から保護するという使い方もできる。
【0037】
ここで、胴体部2の素材には、高熱伝導性のカーボン繊維(以下、「熱伝導性繊維」と言う)を混入した樹脂材が用いられているが、この樹脂材にあっては、熱伝導性繊維の配向によって熱伝導率に異方性が生じることが知られている。
本実施形態では、胴体部2及びベース板13から放熱フィン25への熱伝導率が高くなるように熱伝導繊維を配向させることで、胴体部2の放熱能力を高めることとしている。かかる熱伝導繊維の配向は、樹脂成形時に樹脂の流す向きによって制御される。
【0038】
また放熱フィン25には、例えば図1に示すように、落下防止用のワイヤを通すためのワイヤ孔89が設けられており、このワイヤ孔89によって放熱フィン25の強度が低下しないように熱伝導性繊維の配向を変えても良い。
【0039】
なお、胴体部2及びベース板13を絶縁性塗料を用いて表面塗装することで、筐体35への漏電をより確実に防止できる。ただし、ベース板13表面には塗装を施さずに表面の粗さがこまかい方が胴体部2の熱伝導が良いことから、十分な絶縁性が確保されている場合には、ベース板13表面への塗装による絶縁は必ずしも必要ではない。
【0040】
ところで、胴体部2にあっては直径Rを電気回路基板8の幅程度まで小さくすると、胴体部2に電気回路基板8が近接し、胴体部2と電気回路基板8との間の電気的な絶縁性能が劣化する。そこで、上述の通り、胴体部2の中には、電気回路基板8を囲むように巻いた絶縁シート28を設けることにより、胴体部2の内側面の全体を絶縁シート28で覆い、電気回路基板8と胴体部2の間の絶縁性能を高めることとしている。
【0041】
図8は絶縁シート28の構成を示す図であり、図8(A)は平面図、図8(B)は胴体部2への装着状態時の平面図、図8(C)は胴体部2への装着状態時の側面図である。
同図に示すように、絶縁シート28は可撓性及び絶縁性を有する1枚のシートを帯状に形成したものであって、胴体部2への装着時には、胴体部2の内側面の突き当て片51Bに係合する凹部28Cを折り曲げによって形成した後、両端28A、28B同士が重なるように環状に巻いた状態でベース板13の挿入開口14から挿入される。
胴体部2の中では絶縁シート28が巻き戻りによって拡がり、このときの巻き戻る力によって胴体部2の内側面を覆うように装着される。
このように、絶縁シート28を帯状に形成し、巻いた状態でベース板13の挿入開口14に挿入し、絶縁シート28の巻き戻りによって胴体部2の中に装着する構成としたため、胴体部2の内側面の全面を覆うように絶縁シート28を簡単に装着することができる。
【0042】
電気回路基板8には、上述の通り、ソケット58から供給される電力をLED15の点灯用の電力に変換する電源回路が搭載されており、この電源回路の発熱によって胴体部2の内部の温度が上昇し、他の電気回路に熱的影響を与える。そこで本実施形態では、電源回路や他の発熱部品の発熱を胴体部2に伝導させ、放熱フィン25から放熱させることで、内部を適切な温度に維持する構成としている。以下、かかる構成について説明する。
【0043】
図9は電気回路基板8、固定ブッシュ27及びLED基板16の係合関係を示す図である。また図10は固定ブッシュ27の構成を示す図であり、図10(A)は全体斜視図、図10(B)は正面図、図10(C)は側面図、図10(D)は平面図、図10(E)は底面図である。
上述の通り、電気回路基板8の胴体部2への組み付け時には、上端部8Cが固定ブッシュ27を介してLED基板16によって押圧される。この固定ブッシュ27は、ゴム等の樹脂材から形成されている。この樹脂材は熱伝導率が高いものがより好ましい。さらに、固定ブッシュ27には、電気回路基板8の回路部品のうち、冷却を要する回路部品を覆うように密着する冷却用片27Aが一体に形成されている。本実施形態では、電気回路基板8に搭載されている上記電源回路と、この電源回路に同じ高さで並設された発熱部品82とを冷却することとし、それぞれを覆う冷却用片27Aが固定ブッシュ27に一体に設けられている。各冷却用片27Aは冷却対象の回路部品の形状に応じた形状とされる。本実施形態では、電源回路に金属製の断面コ字状の冷却用片保持部材81を密着状態で取り付け、この冷却用片保持部材81の凹部分に角柱状の冷却用片27Aを差し込むことで、冷却用片27Aの側面全体に電源回路の熱を伝えるようにしている。
【0044】
冷却用片27Aの外周面36は、電気回路基板8の胴体部2への挿入に伴って内側面に密着する。このとき冷却用片27Aに生じる胴体部2の内側面からの押圧力が、電気回路基板8の一辺を支持する上記突き当て片51Bで受け止められることで、電気回路基板8と内側面との間で冷却用片27Aが押し潰された状態で保持される。これにより冷却用片27Aと、電源回路及び発熱部品82、並びに胴体部2の内側面とが密着して伝熱経路の熱抵抗を小さくできるとともに、胴体部2内での電気回路基板8のぐらつきを抑えることができる。
【0045】
上述の通り、胴体部2の内側面は絶縁シート28が覆うが、この絶縁シート28には高熱伝導性を有するものが用いられており、固定ブッシュ27の冷却用片27Aから胴体部2への伝熱を阻害しないようになっている。
このように、絶縁シート28が高熱伝導性を有し、電気回路基板8の回路部品と絶縁シート28との間に、これらを熱的に繋ぐ熱伝導性部材たる冷却用片27Aを設けることで、電気回路基板8の絶縁性と放熱性との両方を高めることができる。
また固定ブッシュ27に冷却用片27Aを一体に形成しているため、電気回路基板8の固定と冷却とを簡単に行うことができる。
【0046】
電源回路や発熱部品82等の冷却を要する回路部品は、電気回路基板8のうち、放熱フィン25が位置する高さ範囲X(図9)に配置されている。すなわち、これら電源回路や発熱部品82を覆う冷却用片27Aは、放熱フィン25が位置する高さ範囲Xに配置されることから、冷却用片27Aに伝わった熱が放熱フィン25からスムーズに放熱されることとなり冷却性能を高めることができる。
これに加え、電源回路や発熱部品82等の発熱が放熱フィン25に直接的に伝えられるため、上記フィン無し区間45に配置された回路部品への熱的影響も抑制される。
【0047】
次いでLED15の放熱構造について説明する。
LED15の放熱構造においては、LED基板16を熱伝導性の高い例えばアルミニウム材等の金属材で構成することで、LED15の発熱を効率良くベース板13に伝えて放熱フィン25から放熱することができる。しかしながら、LED基板16を金属基板とすると電気的な絶縁性能が低下してしまう、という問題がある。
そこで本実施形態では、LED基板16に電気的絶縁性の高い樹脂基板を用い、その厚みを、いわゆる2重絶縁構造と同じ絶縁性能が得られる程度の厚みとし、高い絶縁性能を実現している。
【0048】
ただし、樹脂材から成るLED基板16は、何ら対策を施さなければ、金属基板に比べて放熱性能が低いために、光出力の高出力化の妨げになる。
そこで本実施形態においては、LED基板16の表裏面のそれぞれを放熱層としての銅箔で覆うことでLED基板16の放熱性を高めることとしている。以下、かかる構成について詳述する。
【0049】
図11はLED基板16の構成を示す図であり、図11(A)はLED実装面側をみた平面図、図11(B)は側面図、図11(C)は裏面側をみた底面図である。
LED基板16は、略円板状に形成され、表裏面のそれぞれに、導電性及び熱伝導性を有する放熱層として略円形の銅箔83が表面を覆って設けられている。各銅箔83は、LED基板16を囲む上記ベース板13の側壁19との間で電気的な絶縁が図れる程度の隙間、及び、LED基板16をネジ止めする際のネジとの間の絶縁を図るための切り欠き83Aだけを除き、極力、LED基板16の全面を大きさに形成されている。
【0050】
LED基板16の一方の面(以下、LED実装面と言う)には、複数のLED15が同心円状に実装されており、各LED15の回路パターン80が上記銅箔83を用いて形成されている。
すなわち、LED実装面では、図11(A)に示すように、銅箔83に放射状に複数のスリット84が形成されており、各スリット84によって銅箔83が複数の略扇形の導電エリア85に分割(区画)される。各スリット84は、導電エリア85の間の電気的な絶縁を得るに十分な幅を有し、各スリット84には、LED15の裏面に設けられた正極端子及び負極端子(不図示)をそれぞれ隣り合う導電エリア85に接続するようにスリット84を跨いでLED15が設けられている。また、これらの導電エリア85のうち、少なくとも、隣接する2つの導電エリア85は、それぞれ電気回路基板8の電源回路に電気的に接続されており、これにより、各LED15が、各導電エリア85によって直列に接続された直列回路が形成される。
【0051】
このように、LED実装面を覆う銅箔83をスリット84によって、電源回路に電気的に接続する面状の導電エリア85に区画し、このスリット84を跨いでLED15を各導電エリア85に電気的に接続して、当該LED15を点灯するための回路パターン80を構成したため、LED実装面に高い放熱性を持たせることができる。
特に、銅箔83にスリット84を放射状に設けたため、各導電エリア85が略扇形に形成されることとなり、各導電エリア85では径方向外側に向かうほど熱抵抗が小さくなることから、LED15の発熱を効率良く外側に伝達して拡散させることができる。
【0052】
LED基板16の裏面側では、図11(C)に示すように、銅箔83のうち、胴体部2の挿入開口14に対応する箇所に、絶縁樹脂製のLED基板16を露出させた露出部16Aが設けられている。
これにより、挿入開口14に挿入された電気回路基板8に対向する箇所が露出部16Aとなるため、電気回路基板8との間の電気的な絶縁性が損なわれることがない。
【0053】
また銅箔83に露出部16Aを設ける分だけ、放熱性能が低くなるものの、この露出部16Aには、LED基板16で押されて電気回路基板8を胴体部2の底部に押しつける上記固定ブッシュ27が密着するように構成されている。この固定ブッシュ27は、上述の通り、胴体部2に密着する冷却用片27Aが一体に形成されていることから、露出部16Aの熱は、固定ブッシュ27の冷却用片27Aを通じて胴体部2に伝熱され、露出部16Aの過度な温度上昇を防止できる。
【0054】
なお、放熱層として銅箔83を例示したが、これに限らず、熱伝導性と、電気配線として機能し得る導電性を有する材料であれば、任意のものを用いることができる。ただし、LED基板16の表裏面の放熱層の材料が同一である必要はない。
【0055】
また回路パターン80はLED15の直列回路に限らず、並列回路等の任意の回路とすることができる。例えば図12に示すように、略円形の銅箔83に同心円状のスリットAを設けて、この銅箔83を内周側83Iと、外周側83Oとに区画し、それぞれに放射状にスリット84Aを形成してLED15の上述の直列回路を形成することで、2つの直列回路を内周側83Iと外周側83Oとに並列に設けることもできる。
【0056】
さて、LEDランプ1にあっては、例えば図2に示すように、放熱フィン25のフィン端部25Bの形状が胴体部2の軸線に対して略垂直な直線状に形成されているとともに、各フィン端部25Bは、胴体部2の軸方向において略同一な位置にある。したがって、LEDランプ1を、図13に示すようなランプホルダー60に装着した場合には、各フィン端部25Bがランプホルダー60のホルダ筐体62の開口縁部66に当接することとなる。また放熱フィン25の側面視形状は、ベース板13の裏面13Aからホルダ筐体62の開口縁部66に向かって緩やかな弧を描く略扇形状に形成されており、ランプホルダー60にLEDランプ1を装着した状態において、これらの一体感を高め、意匠性が高められている。
【0057】
図13に示すLEDランプ装置100は、屋外の看板照明等に用いられる照明器具であって、LEDランプ1と、LEDランプ1を支持するランプホルダー60と、LEDランプ1とランプホルダー60との間に介装される環状防水パッキン70とを備えて構成されている。
ランプホルダー60は、既存の電球、及びLEDランプ1のいずれも装着可能なランプホルダーである。すなわち、図13及び図14に示すように、ランプホルダー60は、筒状のホルダ筐体62と、このホルダ筐体62の終端部62Aに図示せぬ支持アームが回動自在に取り付けられるアーム取付部64とを備えて概略構成されている。ランプホルダー60は、既存の電球を装着するために設置されていたものであり、既存の電球を装着できるように、一端側が大きく開口しており、この開口の開口縁部66は、筒状のホルダ筐体62の径と略同一径となっている。開口縁部66の下方の外周面には、LEDランプ1を覆って保護する網状のガード部材(図示せず)を固定するための突起68が複数設けられている。
また、ホルダ筐体62の中には、LEDランプ1の終端に設けられた口金3或いは既存の電球ランプ90(図15)の口金92が螺合されるソケット65が終端部62A側に配設されている。このソケット65には、アーム取付部64から引き込まれた電力供給線が接続されており、ソケット65を通じて口金3からLEDランプ1に、或いは、既存の電球ランプ90に電力が供給される。
【0058】
図15は、ランプホルダー60に既存の電球ランプ90を装着した状態を示す断面図である。
電球ランプ90は、ガラス製の電球部91と、終端に口金92を備える筒部93とを備えている。電球ランプ90は、口金92がソケット65に係合されることでランプホルダー60に装着され、この状態では、筒部93の近傍の電球ランプ90の基部90Aとホルダ筐体62の開口縁部66との間に、円環状の電球用パッキン94が介装されている。このように、電球ランプ90は、基部90Aが開口縁部66に当接する大きさを有しランプホルダー60の開口を塞ぐため、開口縁部66に沿う円環状の電球用パッキン94を介装することで、電球ランプ90とランプホルダー60との間を防水することができる。
【0059】
さて、このランプホルダー60は、屋外に設置されることから、ソケット65とLEDランプ1との接続部分を保護するために、開口縁部66からホルダ筐体62に水が入らないように防水する必要がある。図15に示すように、装着対象が電球ランプ90であれば、電球ランプ90と開口縁部66との間に電球用パッキン94を介装することで防水できる。
これに対してLEDランプ1にあっては、板状の放熱フィン25が胴体部2の外周面に放射状に立設されているため、各放熱フィン25の間に隙間があり、開口縁部66に沿って電球用パッキン94を設けるだけではホルダ筐体62の内部に水が入り込んでしまう。そこで本実施形態では、図13に示すように、LEDランプ1の放熱フィン25のフィン端部25B側に、ランプホルダー60の開口を塞ぐ環状防水パッキン70を設けている。
【0060】
図14に示すように、胴体部2の外周面は、先端2Cから終端2Aにかけて口金3側に向かって先細る円錐状に形成されており、この外周面において放熱フィン25と口金3との間の中間部は、口金3側に向かって先細るテーパー状の円錐部40(中間部)を有しており、環状防水パッキン70は、円錐部40に嵌合して取り付けられる。
【0061】
図16は、環状防水パッキン70を示す図であり、図16(A)は平面図、図16(B)は図16(A)のIX−IX断面図である。図17は、図16における環状防水パッキン70の近傍の拡大図である。
環状防水パッキン70は、ホルダ筐体62の開口縁部66を全体に亘って覆う大きさの円板状に形成され、フィン端部25Bとホルダ筐体62の開口縁部66との間に介装されるパッキン本体71と、環状防水パッキン70の中央に設けられ、胴体部2が挿通される円錐孔72(内周部)とを有している。環状防水パッキン70はゴム製であり、ここではシリコンゴムが用いられている。
パッキン本体71は、その外周部78に、開口縁部66の端面に当接するフランジ部71Aと、フランジ部71Aに連続し、開口縁部66の内周面に当接する外周面71Bとを有している。また、パッキン本体71は、フィン端部25Bに面する上面71Cを有している。
【0062】
上面71Cには、パッキン本体71の外縁の内側でパッキン本体71を一周する環状溝部73が形成されている。また、上面71Cには、径方向の外側に延びて環状溝部73をパッキン本体71の外周面に連通させる排水溝74(排水部)が形成されている。排水溝74は、パッキン本体71の周方向に略等間隔をあけて複数設けられている。また、パッキン本体71において上面71Cとは反対側の面には、軽量化用凹部77が形成されており、これにより、環状防水パッキン70の軽量化が図られている。
外周面71Bには、径方向に突出した環状の外周側リップ部75が複数設けられており、シール性が向上されている。
【0063】
円錐孔72の内周面は、ホルダ筐体62に組み付けられた状態においてソケット65側に先細りのテーパーとなる円錐状に形成されている。円錐孔72の内周面には、径方向内側に突出する環状のリップ部76が形成され、リップ部76は、円錐孔72の軸方向に複数形成されており、円錐孔72の内周面の表面は蛇腹状になっている。この円錐孔72と胴体部2の円錐部40とは、略等しいテーパー角度に設定されている。ここで、図17では、外周側リップ部75及びリップ部76は変形してその当接面に接するため、変形前の形状を2点鎖線で示している。
【0064】
LEDランプ1をランプホルダー60に取り付ける際には、まず、胴体部2の円錐部40に円錐孔72を介して環状防水パッキン70を嵌合させておき、その後、LEDランプ1をランプホルダー60に挿入し、環状防水パッキン70をホルダ筐体62の開口縁部66に嵌め込むとともに、口金3をソケット65にセットし、LEDランプ1を回転させて締め込むことで口金3をソケット65に螺合させれば良い。
このように、胴体部2の終端2Aに向けて先細る円錐部40と環状防水パッキン70の円錐孔72とが嵌合するため、円錐部40のテーパー状の斜面によって環状防水パッキン70をランプホルダー60の開口縁部66側に押さえ付けることができ、環状防水パッキン70がランプホルダー60から外れることを防止でき、LEDランプ1とランプホルダー60との間の防水性を向上できる。
また、環状防水パッキン70の円錐孔72を円錐部40に嵌合させることで、LEDランプ1をランプホルダー60の径方向に位置決めでき、専用の位置決め部材を用いない簡単な構成で、LEDランプ1を位置決めすることができる。
【0065】
LEDランプ1は、口金3がソケット65に完全に螺合された状態では、円錐部40がリップ部76を含む円錐孔72を径方向外側に若干変形させる深さまで入り込み、この状態では、パッキン本体71は、外周面71Bがホルダ筐体62の内周面に押し付けられるとともに、フランジ部71Aが開口縁部66に押し付けられることになる。このように、円錐部40が円錐孔72を径方向外側に若干変形させる深さまで嵌合するため、円錐部40と円錐孔72の間のシール性を向上でき、胴体部2とパッキン本体71との間の防水性を向上できる。また、円錐部40によって、パッキン本体71のフランジ部71Aが開口縁部66に押し付けられるとともに、外周側リップ部75を含む外周面71Bがホルダ筐体62の内周面に押し付けられるため、パッキン本体71とホルダ筐体62との間のシール性を向上でき、環状防水パッキン70とランプホルダー60との間の防水性を向上できる。
さらに、LEDランプ1は、口金3がソケット65に完全に螺合された状態では、パッキン本体71が、口金3とソケット65との締結力によってフィン端部25Bと開口縁部66との間で押圧されるように設定されている。このため、放熱フィン25と開口縁部66との間でパッキン本体71を潰すようにして密着させることができ、環状防水パッキン70とランプホルダー60との間の防水性を向上できる。
【0066】
各放熱フィン25の間に侵入した液体は、環状防水パッキン70によってランプホルダー60内への侵入を阻まれ、環状防水パッキン70の上面71Cに形成された環状溝部73を流れ、排水溝74を通って外部に排出される。このように、環状防水パッキン70の上面の環状溝部73に流れた液体が複数の排水溝74から外部に排出されるため、液体やごみが環状防水パッキン70に溜まることを防止でき、長期間に亘って環状防水パッキン70の防水性を良好に保つことができる。
【0067】
なお、環状防水パッキン70の外周面71Bがフィン端部25Bによってランプホルダー60の開口縁部66に押し付けられて潰れるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、フィン端部25Bを環状防水パッキン70に当接させないように上方に逃がし、円錐部40のみで円錐孔72を介して環状防水パッキン70を開口縁部66に押し付けることで、環状防水パッキン70を固定しても良い。
【0068】
以上説明した実施形態によれば次のような効果を奏する。
すなわち、本実施形態のLEDランプ1によれば、胴体部2の内側面を絶縁シート28で覆う構成としたため、電気回路基板8と胴体部2とを電気的に十分に絶縁することができ、また胴体部2を電気回路基板8に電気的な絶縁が得られる程度まで近づけることができるため、LEDランプ1の小型化、及び軽量化が可能になる。なお、絶縁シート28と、胴体部2と電気回路基板8の間の距離とによって、胴体部2と電気回路基板8との二重絶縁が得られる。
【0069】
また本実施形態のLEDランプ1によれば、可撓性を有する絶縁シート28を帯状に形成し、当該絶縁シート28を巻いて胴体部2に挿入開口14から挿入し、絶縁シート28の巻き戻しによって胴体部2の内側面に装着する構成とした。
これにより、胴体部2の内側面の全面を覆うように絶縁シート28を簡単に装着することができる。
【0070】
また本実施形態のLEDランプ1によれば、絶縁シート28を、高熱伝導性を有するシートで形成し、絶縁シート28と電気回路基板8との間に熱伝導材としての冷却用片27Aを設け、電気回路基板8の熱を絶縁シート28を介して前記胴体部2に伝導させる構成としたため、電気回路基板8の絶縁性と放熱性との両方を簡単な構成で高めることができる。
【0071】
また本実施形態のLEDランプ1によれば、胴体部2の放熱フィン25が延びる範囲Xに、冷却対象の回路部品である電源回路及び発熱部品82と冷却用片27Aとを配置する構成としたため、冷却用片27Aに伝わった熱を放熱フィン25からスムーズに放熱し冷却性能を高めることができる。これに加え、電源回路や発熱部品82等の発熱が直接的に放熱フィン25に伝えられることで上記フィン無し区間45に配置された回路部品への熱的影響を抑制することができる。
【0072】
また本実施形態のLEDランプ1によれば、電気回路基板8の下端の角部8Bを固定用溝部51Aで挟み込みつつ、この角部8Bと対向する側の1辺を突き当て片51Bの側面に突き当てて固定することで、この電気回路基板8が胴体部2内にしっかりと固定されることから、胴体部2と電気回路基板8との間の絶縁距離を確実に確保することができる。
【0073】
また本実施形態のLEDランプ1によれば、LED基板16を、いわゆる2重絶縁が得られる厚みの樹脂基板で形成し、LED15の実装面と筐体35に伝熱する裏面とのそれぞれに、導電性及び熱伝導性を有する材料から成る放熱層としての銅箔83を設け、LED15の実装面では、銅箔83に電源を接続するとともにスリット84を形成して導電エリア85に分割し、このスリット84を跨いでLED15を配置して各導電エリア85に電気的に接続する構成とした。
この構成により、LED基板16に高い絶縁性能を持たせつつも放熱性を高めることができる。
【0074】
また本実施形態のLEDランプ1によれば、LED基板16の実装面側の銅箔83には、スリット84を放射状に形成し、各スリット84にLED15を設ける構成とした。
この構成により、各導電エリア85が略扇形に形成されることとなり、各導電エリア85では径方向外側に向かうほど熱抵抗が小さくなることから、LED15の発熱を効率良く外側に伝達して拡散させることができる。
【0075】
また本実施形態のLEDランプ1によれば、LED基板16の裏面に設けた銅箔83のうち、電気回路基板8が挿入される挿入開口14に対応する箇所に、LED基板16が露出する露出部16Aを設けたため、裏面の銅箔83によって、電気回路基板8との間の電気的な絶縁性が損なわれることがない。
【0076】
また本実施形態のLEDランプ1によれば、電気回路基板8とLED基板16の裏面との間には、LED基板16の露出部16Aに押されて電気回路基板8を押しつけるとともに、LED基板16の熱を胴体部2に伝熱する固定ブッシュ27を設ける構成とした。
この構成により、露出部16Aの熱は、固定ブッシュ27の冷却用片27Aを通じて胴体部2に伝熱され、露出部16Aの過度な温度上昇を防止できる。
【0077】
また本実施形態のLEDランプ装置100によれば、胴体部2の発光部12との連接部に設けられた放熱フィン25と口金3との間の胴体部2の中間部が、胴体部2の終端2Aに向けて先細る円錐部40を有し、環状防水パッキン70の内周部が胴体部2の円錐部40に嵌合可能に円錐孔72を有し、環状防水パッキン70の装着時には円錐孔72が円錐部40に嵌合し、環状防水パッキン70の外周面71Bがランプホルダー60の開口縁部66に係合して防水構造となり、終端2Aに向けて先細る円錐部40と円錐孔72とが嵌合するため、円錐部40によって環状防水パッキン70をランプホルダー60の開口縁部66側に押さえ付けることで、環状防水パッキン70がランプホルダー60から外れることを防止できる。このため、放熱フィン25側から環状防水パッキン70側に流れる液体が環状防水パッキン70とランプホルダー60の開口縁部66及び胴体部2との間に侵入することを防止でき、LEDランプ1とランプホルダー60との間の防水性を向上できる。
【0078】
また、環状防水パッキン70の外周面71Bがフィン端部25Bによってランプホルダー60の開口縁部66に押し付けられて潰れるため、環状防水パッキン70とランプホルダー60との間の防水性を向上できる。
また、環状防水パッキン70の円錐孔72に、径方向内側に突出する円環状のリップ部76を形成したため、円錐孔72と円錐部40との間のシール性を向上でき、防水性を向上できる。
さらに、環状防水パッキン70に流れた液体を環状溝部73及び排水溝74を介して環状防水パッキン70の外周面側に排水でき、環状防水パッキン70の防水性を良好な状態に保つことができる。
【0079】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 LEDランプ
2 胴体部
3 口金
8 電気回路基板
10 絶縁筒部
12 発光部
13 ベース板(平板部)
14 挿入開口
15 LED
16 LED基板
16A 露出部
20 LED基板用放熱シート
25 放熱フィン
27 固定ブッシュ
27A 冷却用片
28 絶縁シート
35 筐体
58、65 ソケット
60 ランプホルダー
70 環状防水パッキン
80 回路パターン
81 冷却用片保持部材
82 発熱部品
83 銅箔(放熱層)
84、84A スリット
85 導電エリア
89 ワイヤ孔
90 電球ランプ
100 LEDランプ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装された発光素子の発熱を筐体に伝導して放熱するランプにおいて、
前記基板を所定の絶縁が得られる厚みの樹脂基板で形成し、前記発光素子の実装面と前記筐体に伝熱する裏面とのそれぞれに、導電性を有する材料から成る放熱層を設け、
前記発光素子の実装面では、前記放熱層に電源を接続するとともにスリットを形成して導電エリアに分割し、前記スリットを跨いで前記発光素子を配置して各導電エリアに電気的に接続したことを特徴とするランプ。
【請求項2】
前記実装面側の放熱層には、前記スリットを放射状に形成し、各スリットに前記発光素子を設けたことを特徴とする請求項1に記載のランプ。
【請求項3】
前記筐体は、前記基板を載置する平板部と、前記平板部の裏面に一体に設けられ、一端が前記平板に開口し当該開口から電気回路基板が収められる筒状の胴体部とを有し、
前記基板の裏面に設けた放熱層のうち、前記電気回路基板に対向する箇所には前記基板が露出する露出部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のランプ。
【請求項4】
前記電気回路基板と前記基板の裏面との間には、前記基板の露出部に押されて前記電気回路基板に当接し、前記基板の熱を前記胴体部に伝熱するブッシュを設けたことを特徴とする請求項3に記載のランプ。
【請求項5】
前記胴体部には、前記電気回路基板の下端部を挟み込む固定用溝部と、この下端部と対向する側の1辺が突き当てられる突き当て片とを設けて前記電気回路基板を固定したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−119281(P2012−119281A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270821(P2010−270821)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】