説明

ラン抽出物を含有する化粧品用又は皮膚科学的組成物及び上記組成物を用いた美容ケア方法

本発明は、バンダ・テレス(Vanda teres)種の少なくとも一部分から得られたラン抽出物を含有する化粧品用又は/皮膚科学的組成物に関する。本発明は、皮膚の構造を、特に、真皮及び表皮の上層の細胞外マトリックスの分解を制限することにより維持し、及び/又は皮膚老化の影響、特にしわの形成を弱め又は遅延させ、及び/又は皮膚に対する保護効果、矯正効果、又は再構築効果を得るための化粧品用又は皮膚科学的薬剤としての、及び/又は抗炎症剤としての、上記組成物及び上記抽出物の使用にも関する。本発明は、特に、皮膚老化の徴候が発生するのを予防する又は阻止する効果を得ることを目的とした、皮膚に対する美容ケア方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラン抽出物を含有する化粧品用又は皮膚科学的組成物及び上記組成物を用いた美容ケア方法に関する。
【0002】
ラン(ラン科)は、薬物分野又は化粧品分野における、都合のよい性質を有する新規化合物の同定を目的とした多数の調査研究の対象である。
【0003】
バンダ(Vanda)属のランは、アジア及びオーストラリアの熱帯林の着生ラン又は岩生ランである。
【0004】
バンダ属のランは、大気湿度の高い低地の森林の単軸性ランである。
【0005】
バンダ属は、多くの雑種を含む約50種で構成される。
【背景技術】
【0006】
現在までのバンダ属の植物に関する調査は、バンダ属の植物に関する地域住民の知識及び使用に基づいている。
【0007】
したがって、Bulpitt(“The uses and misuses of orchids in medicine”,QJM,2005,98(9),625−31)は、バンダ・セルレア(Vanda coeruelea)ランが、インド薬局方に収載されていると思われることを示しているが、引用された参照文献はない。
【0008】
Bulpittは、驚いたことに、植物組織に多種多様なアルカロイドが存在しているにもかかわらず、現在まで医学的用途について全く実証されていないことを示している。
【0009】
Manandharら(Fitoterapia,1994,65(1),7−13)は、ネパールのカスキ地区において、バンダ・クリスタータ(Vanda cristata)をベースにしたペーストが、切傷及び創傷の治療に使用されていることを記載している。
【0010】
Sighらは、インドのウッタルプラデシ州、ナイニタール地区のタール族による薬用植物を用いた伝統的なフィトセラピーを研究している(Int.J.Pharmacogn.,1994 32 1,51−58)。
【0011】
Sighらは、バンダ・テッセラタ(Vanda tessallata)(別名バンダ・ロクスブルギー(Vanda roxburghii))全体から得られ、塩と一緒に骨折部位に塗布される、当該植物ベースのペーストの使用を記載している。
【0012】
このSighらの論文には、同目的で経口投与される同植物の水性抽出物の使用も開示されている。
【0013】
バンダ・ロクスブルギー(Vanda roxburghii)という植物の抽出物を含有するスキンケア用組成物は、特開2006−257056号公報にも記載されており、この抽出物は、皮膚の老化を治療するためのエストロゲン剤としてこの組成物に使用されている。
【0014】
Chawlaら(Ind.J.Pharm.Sci.,1992,54(4),159−61)は、バンダ・ロクスブルギー(Vanda roxburghii)の根から得られた有機溶媒ベースの抽出物の抗炎症性について記載している。
【0015】
これらの抽出物は、それぞれ、エーテル、クロロホルム及びメタノールを用いて得られる。
【0016】
Chawlaらは、エーテル抽出物中に、フェルラ酸アルキル(alkyl ferulate)、より詳細にはフェルラ酸アセチルテトラコシル(acetyltetracosyl ferulate)が存在し、クロロホルム抽出物中に、ベータ−シトステロール−D−グルコシドが存在することを実証している。
【0017】
抗炎症活性は、Indian J.Chem,Chawla et al.,1991,30B,773の論文に記載の方法を用いて測定する。
【0018】
これらの抽出物は、さまざまな強さの抗炎症活性を有し、その抗炎症活性はイブプロフェンよりも低い。
【0019】
ランのバンダ・テレス(Vanda teres)は、科学論文の対象にはほとんどなっていない。しかし、Indian Journal of Environment and Ecoplanning (2007),13(1−2),91−100において、パピリオナンセ・テレス(Papilionanthe teres)(別名バンダ・テレス(Vanda teres))という植物の抽出物が、高熱を出している患者の額に上記抽出物を塗布することにより、衰弱の治療に使用可能であり、さらに、同植物の茎抽出物が、風邪及び咳からの保護に使用可能であることが注目されるであろう。
【0020】
種々のランの核型の分析研究に関する、American Journal of Botany,volume 50,n°1,pages 73−79,1963の“Karyotype analysis of some sarcanthine orchids”と題する論文に、とりわけバンダ・テレス(Vanda teres)について言及されていることも注目されるであろう。
【0021】
ここで本発明者らは、完全に予想外に、バンダ・テレス(Vanda teres)種のランが、注目すべき化粧品としての活性及び皮膚科学的活性、特に、注目すべき抗炎症性に関連付けられる、皮膚老化の徴候の出現を予防する又は遅らせる注目すべき性質を示すことを発見した。
【0022】
したがって、本出願人は、具体的には、バンダ・テレス(Vanda teres)の抽出物が、化粧品分野において特に有利な性質、好適例としては、上記抽出物を使用することにより皮膚の構造の完全性の維持に寄与することができるような活性を示すことを示している。
【0023】
これは、この抽出物が、とりわけ細胞外マトリックスのコラーゲン繊維の分解の原因であるMMP−2及びMMP−9メタロプロテイナーゼ酵素を阻害し、IL−10遺伝子の発現を増加させることによる。
【0024】
これらの種々の活性により、皮膚老化の徴候出現に対する予防効果及び遅延効果がもたらされる。
【0025】
これらの予想外の性質に加え、本発明の抽出物は、炎症のメディエーター、特にインターロイキン8(IL−8)及びプロスタグランジンE2(PGE)の分泌を阻害することによる抗炎症活性も示す。
【0026】
したがって、バンダ・テレス(Vanda teres)種のランから得られた抽出物は、化粧品として許容される賦形剤を少なくとも1つ含む化粧品用組成物中の活性薬剤として使用することができ、また、皮膚老化の影響を減少又は遅延させるために、顔又は体の皮膚の少なくとも一部に塗布することを目的とすることができる。
【0027】
上記抽出物は、その注目すべき抗炎症性のために、化粧品用又は皮膚科学的組成物に都合よく使用することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の主要な目的は、皮膚老化の影響を、より特定すると、皮膚構造の完全性を維持し、さらには皮膚の炎症と戦うことにより、減少又は遅延させることができる新規の化粧品用又は皮膚科学的薬剤、及び上記活性薬剤を含む化粧品用又は皮膚科学的組成物を提供することである。
【0029】
本発明の目的は、工業規模及び化粧品規模で使用することができる、著しく単純な、比較的安価な解決法により技術的な問題を解決することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
第1の態様によると、本発明は、バンダ・テレス(Vanda teres)種のランの少なくとも一部分から得られた、バンダ(Vanda)属のランの少なくとも1つの抽出物を、皮膚への局所塗布に適合する、化粧品として又は皮膚科学的に許容される担体に溶解又は分散させた形で含有する化粧品用又は皮膚科学的組成物に関する。
【0031】
第2の態様によると、本発明は、皮膚の構造を、特に、真皮及び表皮の上層の細胞外マトリックスの分解を制限することにより維持し、及び/又は皮膚老化の影響、特にしわの形成を減少又は遅延させ、及び/又は皮膚に対する保護効果、矯正効果、又は再構築効果を得るための化粧品用又は皮膚科学的薬剤としての、及び/又は抗炎症剤としての、この抽出物の、化粧品用又は皮膚科学的組成物における使用に関する。
【0032】
第3の態様によると、本発明は、特に、皮膚老化の徴候が出現するのを予防する又は遅らせる効果を得ることを目的とした、皮膚に対する美容ケア方法であって、本発明の第1の態様の対象である化粧品用組成物を体又は顔の少なくとも一部に塗布することを含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
したがって本発明の第1の対象は、バンダ・テレス(Vanda teres)種のランから形成された植物材料から得られた抽出物を含有する化粧品用又は皮膚科学的組成物である。
【0034】
使用する植物材料は、植物体全体であってもよく、又は葉、茎、花若しくは根など植物体の一部分であってもよい。
【0035】
抽出物は、ランの茎及び/又は根及び/又は葉から得ることが好ましく、茎から得ることが好ましい。
【0036】
抽出物は、当業者に公知の種々の抽出方法により調製する。
【0037】
しかし、抽出は、選択した植物材料を極性溶媒又は極性溶媒の混合物と接触させることにより行うことが好ましい。
【0038】
植物体の少なくとも一部分を、少なくとも1つの極性溶媒と接触させるこのステップの前に、場合によって上記植物体の一部分を乾燥及び/又は粉砕してもよい。
【0039】
抽出ステップに使用することができる極性溶媒又は極性溶媒の混合物としては、水、C1〜C4アルコール、例えばエタノール、並びにグリセロール、ブチレングリコール、及びプロピレングリコールから選択されることが好ましいC2〜C6グリコール、並びにそれらの混合物から選択される溶媒又は溶媒の混合物が都合よく選択されよう。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態によると、抽出は、水−アルコール混合物、特に、水とエタノールの混合物、好ましくは水とエタノールの、それぞれ約90/10 v/vの比率である混合物を用いて行う。
【0041】
本発明の他の変形形態によると、抽出は、未臨界状態の極性溶媒を用いたプロセスによって行うこともでき、上記溶媒が未臨界状態の水であることが都合よい。
【0042】
抽出ステップ自体を行う前に、植物材料を乾燥及び/又は粉砕してもよい。
【0043】
抽出の好ましい一実施形態によると、植物材料は、乾燥及び粉砕された状態である。
【0044】
抽出は、場合によって、抽出物の部分的な若しくは完全な脱色、又は精製を目的とした抽出物の処理で構成される付加的なステップをさらに含んでもよい。
【0045】
上記脱色ステップは、例えば、抽出物の極性溶媒又は極性溶媒の混合物の溶液による処理、好ましくは、約70/30 v/vの比率のエタノール/水の溶液による、活性炭素粒子の存在下での処理で構成されてもよい。
【0046】
抽出は、抽出溶媒の部分的又は完全な除去ステップで完結し得る。
【0047】
第1の場合、抽出物は、一般に有機溶媒の量が有意でない濃縮水溶液が得られるまで濃縮し、第2の場合、乾燥残渣が得られるまで濃縮する。
【0048】
あるいは、抽出ステップの生成物は、粉末の形になるように凍結乾燥又は微粒化してもよい。
【0049】
粉末は、本発明による化粧品用又は皮膚科学的組成物にそのまま用いてもよく、又は溶媒若しくは溶媒の混合物中に再分散させてもよい。
【0050】
一般に、抽出ステップの生成物は、本発明の化粧品用又は皮膚科学的組成物中の活性薬剤として使用するために、溶媒又は溶媒の混合物中に溶解又は分散させることができる。
【0051】
抽出物を溶解又は分散させる溶媒又は溶媒の混合物は、抽出の際に役立った溶媒又は溶媒の混合物と同一であってもよく、又は異なってもよい。
【0052】
本発明の抽出物は、多孔質若しくは非多孔質のナイロン粉末、及びマイカ、又は任意の層状の無機物質から都合よく選択される支持体に吸着させることもできる。
【0053】
この場合、使用する抽出物は、水性抽出物であることが好ましい。
【0054】
本発明による化粧品用又は皮膚科学的組成物は、所望の効果を得るために、有効量の本発明の抽出物を含む。
【0055】
したがって本発明による組成物は、乾燥質量で0.001%〜5%、好ましくは0.01%〜1%のバンダ・テレス(Vanda teres)抽出物を含む。
【0056】
本発明者らが行った試験により、本発明の組成物の、バンダ・テレス(Vanda teres)抽出物の存在に関連する性質は、本発明の抽出物と類似の及び/又は補完的な化粧品用効果を有する他の活性薬剤と上記抽出物を組み合わせる、化粧品用又は皮膚科学的組成物においても得ることができる又は改善することができることが示された。
【0057】
したがって、本発明の抽出物は、単独又は皮膚構造の完全性の維持に寄与する他の活性薬剤との組み合わせで、UVA及び/又はUVB遮断剤、フリーラジカル捕捉物質、鎮静物質、顔色を明るくするための物質及び/又は皮膚の色素障害を調節するための物質、及び加湿効果のある物質から選択される1つ又は複数の活性薬剤と都合よく組み合わせることもできる。
【0058】
本発明者らは、バンダ・テレス(Vanda teres)という植物の少なくとも一部分の抽出物が組成物中に存在することに関連する注目すべき化粧品用又は皮膚科学的性質は、かなり多くの場合、上記組成物が、ラン科(Orchidaceae)に属する少なくとも1種の他の植物の少なくとも1つの抽出物をさらに含有する場合に、さらに大幅に改善されることも発見した。
【0059】
この付加的な、ラン科に属する他の植物の抽出物は、特に、バンダ(Vanda)属の少なくとも1種のランの抽出物とすることができ、最大限特定すると、バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)種のランの少なくとも一部分の抽出物及び/又はバンダ・セルレア(Vanda coeruela)種のランの少なくとも一部分の抽出物とすることができる。
【0060】
本発明の組成物は、同時に、バンダ・テレス(Vanda teres)という植物の少なくとも一部分の抽出物を、上記に記載のバンダ(Vanda)属の他のランの少なくとも一部分の抽出物の少なくとも1つと、及び場合によってラン科に属する他の植物の少なくとも1つの他の抽出物と、組み合わせて含んでもよい。
【0061】
ある特定の都合のよい変形形態によると、本発明の組成物は、少なくとも1つのバンダ・テレス(Vanda teres)茎抽出物及び/又は1つのバンダ・テレス(Vanda teres)根抽出物を、バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)茎抽出物及び/又はバンダ・セルレア(Vanda coeruela)茎抽出物と組み合わせて含む。
【0062】
本発明者らが行った試験により、実際、少なくとも1つのバンダ・テレス(Vanda teres)抽出物が、バンダ(Vanda)属の他のランの少なくとも1つの抽出物と組み合わせて同一組成物中に存在することにより、多くの場合、化粧品用又は皮膚科学的性質が改善されることが示された。
【0063】
本発明者らは、さらに、特定の場合において、少なくとも1つのバンダ・テレス(Vanda teres)抽出物と、バンダ(Vanda)属の少なくとも1種の他のランの少なくとも一部分の少なくとも1つの他の抽出物を混合することにより観察される真の相乗効果を実証することができた。
【0064】
したがって、本発明者らが行った試験により、バンダ・テレス(Vanda teres)の根抽出物が、根の部分自体はバンダ・テレス(Vanda teres)の最も活動的な部位ではないにもかかわらず、バンダ(Vanda)属の植物の抽出物に見られる、皮膚老化の徴候の出現を予防する若しくは遅らせる性質、又は抗炎症性を相当改善することの実証が可能になった。
【0065】
以下の実施例からわかる通り、著しい改善を引き起こす、又はさらに真の相乗効果を生じる組み合わせの例として、バンダ・テレス(Vanda teres)茎抽出物と、バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)茎及び/又は根抽出物、及び/又はバンダ・セルレア(Vanda coeruela)茎抽出物の組み合わせが挙げられる。
【0066】
皮膚老化の徴候の出現を予防する又は遅らせる活性に関して、及び抗炎症活性に関して、バンダ・テレス(Vanda teres)茎抽出物、バンダ・テレス(Vanda teres)根抽出物、バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)茎抽出物、及びバンダ・セルレア(Vanda coeruela)茎抽出物を、大幅に変動可能な比率で、組成物中に混合して入れることにより、真の相乗効果を観察することができたことが特に注目されよう。
【0067】
上記化粧品用又は皮膚科学的組成物は、本発明の抽出物に加え、化粧品として又は皮膚科学的に許容される賦形剤を少なくとも1つ含み、その賦形剤は、顔料、染料、ポリマー、表面活性剤、レオロジー剤、芳香剤、電解質、pH調整剤、抗酸化物質及び保存料、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0068】
本発明による化粧品用又は皮膚科学的組成物は、例えば、セラム、ローション、乳液、クリーム、特に、薄く色を付けたクリーム、そうでなければヒドロゲル、好ましくはマスクであってよく、又はスティック、そうでなければパッチの形であってもよい。
【0069】
本発明の組成物は、皮膚老化の影響を減少又は遅延させるために特に望ましい効果を有し、顔又は体の皮膚に上記組成物を塗布した際、特に保護効果、矯正効果、再構築効果を得ることを可能にする。
【0070】
本発明は、前に記載した通り、皮膚の構造を、特に、真皮及び表皮の上層の細胞外マトリックスの分解を制限することにより維持し、及び/又は皮膚老化の影響、特にしわの形成を減少又は遅延させ、及び/又は皮膚に対する保護効果、矯正効果、又は再構築効果を得るための化粧品用又は皮膚科学的薬剤としての、及び/又は抗炎症剤としての、上記で定義した抽出物の使用に関する。
【0071】
以下の実施例から明らかにわかる通り、本出願人は、バンダ・テレス(Vanda teres)という植物の、場合によって、下記に列挙された活性を改善するために他のバンダ(Vanda)抽出物とさらに組み合わせた抽出物の利点を実証した。
【0072】
炎症メディエーターであるIL−8及びPGEの分泌を阻害することによる抗炎症活性、
酸化ストレスによって引き起こされる損傷から皮膚を保護するフリーラジカル捕捉性、
皮膚の構造を維持するための細胞外マトリックスの繊維であるフィブロネクチン繊維及びI型コラーゲン繊維の合成、
細胞外マトリックスの繊維を分解するMMP−2及びMMP−9酵素の阻害。
【0073】
したがって、本発明は、上記に記載のバンダ・テレス(Vanda teres)抽出物の、化粧品用又は皮膚科学的薬剤としての使用、又は皮膚の構造を、特に、真皮及び表皮の上層の細胞外マトリックスの分解を制限することにより維持し、そのようにして皮膚老化の影響、特にしわの形成を減少又は遅延させ、そうでなければ保護効果、矯正効果、又は再構築効果を得るための化粧品用組成物を作製するための使用にも関する。
【0074】
本発明の対象はさらに、特に、フィブロネクチン合成を刺激すること、コラーゲン繊維分解の原因であるMMP−2及びMMP−9酵素を阻害すること、及びインターロイキンIL−10をコードする遺伝子の発現を増加させることにより、皮膚構造の完全性の維持に寄与するための、有効量の上記抽出物を含む化粧品用組成物を用いた美容ケア方法でもある。
【0075】
上記美容ケア方法は、上記に記載の抽出物を含む、上記の組成物を、懸念対象の顔又は体の皮膚の少なくとも1つの部位に塗布することを含む。
【0076】
実施例において、他に指定がない限り、全ての割合は質量によるものであり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧である。
【0077】
バンダ(Vanda)属のランに加え、本発明の抽出物の調製に用いる植物材料は、他の植物の1種又は複数種の抽出物を、植物体全体の抽出物又は植物体の一部分の抽出物の形で含んでもよい。
【0078】
これらの植物は、バンダ(Vanda)属のランで実証された性質と類似の又は補完的な性質を有することが知られている、バンダ(Vanda)属以外の属のランか、他の科の植物のいずれかとすることができる。
【0079】
その抽出物が、皮膚の構造の完全性を維持すること又はしわへの作用など種々の機構によって皮膚老化の影響を遅らせる又は予防することが知られている植物が特に選択される。
【0080】
本発明の他の目的、特性及び利点は、以下の、単に例示のために示し、したがって本発明の範囲を決して限定できない、抽出物の調製の実施例及びそのような抽出物を用いた化粧品用組成物の実施例に関連して示した説明のための記述に照らして明らかにわかるであろう。
【実施例】
【0081】
I.抽出物の調製
実施例1:バンダ・テレス(Vanda teres)茎抽出物(本発明による抽出物番号1)の調製
【0082】
乾燥した状態の植物材料(植物の茎)を下準備なしで粉砕する。
【0083】
粉砕した植物体10gを、エタノール/水混合物(90/10 v/v)150mLが導入された250mLの丸底フラスコに導入する。
【0084】
磁気撹拌器を備えたボール冷却器(ball condenser)を載せた丸底フラスコを、恒温槽に設置し、次いで加熱して溶媒を還流させる。
【0085】
撹拌しながら還流を30分維持する。
【0086】
加熱を停止したら、丸底フラスコを放置して槽の外の周囲温度まで冷却する。
【0087】
次いで混合物を、Whatman 70μm GF/Fフィルター及び風袋計量済みのフラスコを用いてブフナー漏斗を通して真空ろ過し、ろ液1を得る。
【0088】
固形物をブフナー漏斗上、抽出溶媒50mLで洗浄し、ろ液2を得る。
【0089】
2つのろ液を合わせて秤量する。
【0090】
そのようにして得られたろ液を、あらかじめ風袋計量済みの丸底フラスコに導入し、次いで最大温度50℃で水槽中に設置したロータリーエバポレーターで濃縮して乾燥させる。
【0091】
乾燥残渣を得、最初に導入した乾燥植物の質量に対して表わした質量による抽出収率を決定するために定量化する。
【0092】
乾燥粉砕した状態の出発植物材料100g当たりで得られた、乾燥抽出物の質量として表わされた抽出収率は、12.4である。
【0093】
実施例2:バンダ・テレス(Vanda teres)根抽出物(本発明による抽出物番号2)の調製
【0094】
実施例1の抽出物番号1の調製に用いたものと同じプロトコルを使用するが、植物材料はバンダ・テレス(Vanda teres)の根からなる。
【0095】
以下、本発明の抽出物番号2と表示する抽出物を、抽出収率14.8で得た。
【0096】
実施例3:バンダ(Vanda)属の植物の一部分を用いた他の抽出物の調製
実施例1に記載のものと同じ抽出プロトコルを用いて、バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)及びバンダ・セルレア(Vanda coerulea)の種々の抽出物を調製する。
【0097】
バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)茎抽出物(抽出収率10.6)
バンダ・セルレア(Vanda coerulea)茎抽出物(抽出収率8.9)
バンダ・セルレア(Vanda coerulea)根抽出物
【0098】
これらの種々の抽出物は、以下の実施例において、別々に、又は混合物として、並びに実施例1の抽出物及び/又は実施例2の抽出物を種々の比率で組み合わせて使用する。
【0099】
II.活性試験のプロトコル及び材料及び方法
抽出物の使用用量を、2種の細胞株、HaCaT細胞(in vitroで不死化したケラチノサイド株)及び正常なヒト線維芽細胞(NHF)の細胞培養物についてのXTT試験(試薬:テトラゾリウム塩)により、あらかじめ決定する。
【0100】
1.炎症マーカー
1−1)インターロイキン−8(IL−8)のアッセイ
【0101】
炎症は、任意の機械的な又は感染性の自然の力による攻撃に対する、正常且つ即時の生理学的応答である。
【0102】
酸素フリーラジカル(ROS)の過剰産生は、炎症性の現象の原因である特定のサイトカインの放出をもたらし、それによって皮膚の老化が加速される。
【0103】
次いでインターロイキン−8(IL−8)の増加を、表皮、炎症に関与する細胞を誘引する走化性勾配を作り出すIL−8を含むサイトカインを分泌することにより免疫防御に活発に関与するケラチノサイト、Tリンパ球、好中球などで観察することができる。ケラチノサイトは、インターロイキン−1βに刺激されるとIL−8を発現し、放出することが実証されている。
【0104】
・プロトコル
HaCaT細胞を、細胞10000個/ウェルの比率で96ウェルのマイクロプレートに播種する(補充KSFM培地、Gibco)。プレートをインキュベーター内に24時間置く(37℃、CO5%)。
【0105】
XTT試験によってあらかじめ決定した使用用量の被試験抽出物を、培地で適切に希釈した後、細胞と接触させる。
【0106】
同時に、細胞をIL−1β25ng/mL(R&D Systems)で刺激する。
【0107】
カラムの1つをコレカルシフェロール0.39μg/mL(Sigma)で処理し、刺激し(陽性対照を得るため)、カラムの1つは無処理でIL−1βを用いて刺激する。
【0108】
無処理の細胞カラムを可溶化溶媒DMSOと接触させる(対照条件)。
【0109】
陽性対照及び無処理対照それぞれの生成物の濃度を、正常なヒトケラチノサイト(NHK)の4ウェルで評価した。
【0110】
処理の24時間後、培養液の上澄みを試料採取し、−20℃で保管する。
【0111】
アッセイを「Human IL−8/NAP−1 ELISA」キット(Abcys)に記載のプロトコルに従って行う。
【0112】
この試験により、上澄み中に存在するIL−8の量を、450nmにおける分光光度測定によってアッセイすることが可能になり、ここで上澄み中に存在するIL−8の量は測定される吸光度に比例する。
【0113】
1−2)プロスタグランジンE2(PGE2)のアッセイ
PGE2レベルの増加は、炎症又は特定の癌などの、特定の病理学的な条件下で起こり得る。
【0114】
PGE2は、組織が損傷している間に起こる炎症性応答現象の主要なメディエーターである。
【0115】
・プロトコル
HaCaT細胞を、細胞10000個/ウェルの比率で96ウェルのマイクロプレートに播種する(補充KSFM培地、Gibco)。
【0116】
プレートをインキュベーター内に24時間置く(37℃、CO5%)。
【0117】
被試験抽出物を、培地で適切に希釈した後、細胞と接触させる。
【0118】
カラムの1つを、陽性対照を得るためにインドメタシン1μg/mL(Sigma)で処理し、カラムの1つは、無処理で、DMSOと接触させる。
【0119】
陽性対照及び無処理対照それぞれの生成物の濃度を、NHK4ウェルで評価する。
【0120】
処理の24時間後、培養液の上澄みを試料採取し、−20℃で保管する。
【0121】
アッセイを、R&D SystemsのPGE2アッセイキットに記載のプロトコルに従って行う。
【0122】
この技法により、上澄み中に存在するPGE2の量を、450nmにおける分光光度測定によってアッセイすることが可能になり、ここで上澄み中に存在するPGE2の量は、測定される吸光度に反比例する。
【0123】
2.インターロイキン−10(IL−10)メッセンジャーの発現測定
Th1リンパ球によるサイトカイン産生及び単球/マクロファージのエフェクター機能を阻害する因子であるとされるIL−10は、実際、多くの標的に対して作動するサイトカインである。
【0124】
IL−10の主要な機能は、炎症性応答の阻害だと思われる。
【0125】
IL−10は、特定の炎症細胞又はケラチノサイトの増殖及び分化の調節も行う。
【0126】
・プロトコル
ラン抽出物の効果を、適切な型式、低カルシウム濃度及び補充なしのSFM培地中、正常な集密(分子生物学の標準集密)の単層のヒトケラチノサイト(NHEK)についてRT−QPCR法を行うことによって評価する。
【0127】
抽出物及び対照培地を24時間試験し、次いで全RNA抽出を行い、その後標準プロトコルに従ってDNAse処理及び逆転写を行う。
【0128】
3連の定量PCRにより、G3PDH参照マーカーに関連するIL−10マーカーの発現を測定することが可能になった。
【0129】
3.皮膚の構造維持のためのマーカー
皮膚の構造維持を促進する真皮細胞である正常なヒト線維芽細胞(NHF)について試験を行う。
【0130】
NHFを、細胞5000個/ウェル、及びグルタミン(Gibco Invitrogen、最終濃度2mM)及び10%のFCS(ウシ胎児血清)を補充したMEM培地(Gibco Invitrogen)200μL/ウェルの密度で96ウェルのマイクロプレート(Falcon)に播種する。
【0131】
プレートのふちには細胞が少しも含有されないようにし、80%の細胞集密を得るために培養プレートを24時間、インキュベーター内に置く。
【0132】
3−1)MMP−2及びMMP−9酵素のアッセイ
「マトリックス・メタロプロテイナーゼ」(MMP)酵素の機能は、細胞外マトリックスのタンパク質を分解することである。
【0133】
MMP酵素は、胚発生、形態形成及び組織修復など多くの正常な生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たす。
【0134】
MMP−2はゼラチナーゼAとも呼ばれ、発生及び組織再生の間に間充織の細胞(主に線維芽細胞)によって発現される。この発現は、好中球、マクロファージ及び単球種の細胞に密接に関連する。
【0135】
MMP−9タンパク質については、基底膜及びゼラチン(変性コラーゲン)の主要化合物であるIV型コラーゲンを分解する。
【0136】
MMP−9は、他の型のコラーゲン(V、VII及びX)、エラスチン及びフィブロネクチンも分解する。
【0137】
MMP−9は、ゼラチナーゼBとも呼ばれ、3つのII型フィブロネクチンドメイン及び1つのV型コラーゲン相同ドメインを有する。
【0138】
Pro−MMP−9は、MMP−3又は特定の細菌性プロテイナーゼによって活性化することができる。
【0139】
MMP−9に対する基質は、天然のIV型、V型、VII型、X型及びXI型コラーゲン、フィブロネクチンなどであり得る。
【0140】
・プロトコル
XTT試験によりあらかじめ決定した使用用量の抽出物を、培地で適切に希釈した後、細胞と接触させる。
【0141】
カラムの1つを、アノゲリン25μg/mLで処理し、カラムの1つを、可溶化溶媒DMSOと接触させる(対照条件)。
【0142】
陽性対照及び無処理対照それぞれの生成物の濃度をNHK4ウェルで評価する。
【0143】
処理の48時間後、培養液の上澄みを試料採取し、−20℃で保管する。
【0144】
MMP−2及びMMP−9のアッセイを、R&D SystemsのQuantikineキットに記載のプロトコルに従って行い、それにより、上澄みに存在するMMP−2及びMMP−9の量をそれぞれ、450nmにおける分光光度測定によってアッセイすることが可能になる。
【0145】
3−2)I型コラーゲン及びフィブロネクチン繊維のアッセイ
・プロトコル
【0146】
前と同様、抽出物を、培地で適切に希釈した後、細胞と接触させる。
【0147】
カラムの1つを、ビタミンC(アスコルビン酸、Sigma)0.1μMで処理し、カラムの1つを、可溶化溶媒DMSOと接触させる(対照条件)。
【0148】
陽性対照及び無処理対照それぞれの生成物の濃度をNHK4ウェルで評価する。
【0149】
処理の48時間後、培養液の上澄みを試料採取し、−20℃で保管する。
【0150】
TakaraのEIAキットに記載のプロトコルに従ってアッセイを行う。
【0151】
これらの2つの試験は、それぞれ、上澄みに存在するコラーゲン繊維及びフィブロネクチン繊維の量の、450nmにおける分光光度測定によるアッセイのために、免疫酵素法を使用する。
【0152】
4.フリーラジカル捕捉性
培養液中の細胞の膜脂質の保護の程度を測定するTBAR試験を、抽出物に対して行う。
【0153】
67継代のHaCaT細胞を、24ウェルプレートに、1ウェルごと細胞75000個及び1mLの比率で播種する。インキュベーター内で24時間インキュベートし(37℃、CO5%)、80%集密に相当した後、細胞をラン抽出物と接触させる。
【0154】
ラン抽出物で処理していない細胞のプレートからなる対照も調製する。
【0155】
処理は、3連及び1%(試料1μL/mL)で、24時間行う(37℃、CO5%)。
【0156】
抽出物で処理したプレート及び対照のプレートに対し、それぞれ2つのプレートを、2つの内1つのプレートを12J/cmの割合でUVAに照射するために、同様のプロセスに供す(2つのプレートについて培地をPBSに変更する)。
【0157】
照射の最後に、2つのプレートの上澄みを取り除き、0.8%SDS500μLをそれぞれの細胞のウェルに加える。
【0158】
接触させた5分後、ウェルを削ることにより細胞を回収する。
【0159】
細胞250μLを、栓をしたパイレックス管内で0.8%チオバルビツール酸375μL及び20%酢酸375μLと接触させ、水槽中で1時間、95℃にする。
【0160】
最終の遠心分離ステップの後、上澄みの532nmにおける吸光度を読み取るために、上澄みを回収する。
【0161】
UV照射に供した試料、及び非照射試料についても、吸光度を測定し、以下のように補正する。
【0162】
補正吸光度=(測定された吸光度−水の吸光度)
【0163】
脂質過酸化阻害の割合について、以下のように計算する。
【0164】
補正吸光度(対照)=(補正吸光度(UV溶媒)−補正吸光度(溶媒))
【0165】
各試料に対する阻害の割合は、式:(補正吸光度(UV試料)−補正吸光度(無処理試料))/補正吸光度(対照)から得られる。
【0166】
III.本発明の抽出物の活性
1.抗炎症活性
炎症(HaCat)−IL−8及びPGEのアッセイ
【0167】
抽出物を、XTT試験によってあらかじめ決定した使用用量で試験する。抽出物それぞれの使用用量は、
植物の根25μg/mL
植物の茎50μg
葉12.5μg
である。
【0168】
IL−8及びPGE放出阻害の割合を、ラン抽出物による各処理について、未処理培養液の上澄みに存在するIL−8の基本量と比較して計算する。
【0169】
結果を以下の表に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
IL−8及びPGEマーカー放出の有意な減少が見られる。
【0172】
これらの炎症マーカーの放出阻害に対する効果は、試験した抽出物の抗炎症活性を反映している。
【0173】
この抗炎症活性は、フリーラジカルの過剰生成によって引き起こされる炎症前の現象を遮断し、それによって皮膚老化の加速を予防する。
【0174】
2.フリーラジカル捕捉試験
バンダ・テレス(Vanda teres)の茎抽出物について試験を行い、その結果は、41%の過酸化阻害を示す。
【0175】
3.I型プロコラーゲン、フィブロネクチンのアッセイ及びMMP−2及びMMP−9の活性(NHF)
抽出物を、25μ/mLの用量で試験する。
【0176】
結果を以下の表に示す。
【0177】
【表2】

【0178】
試験した各抽出物による細胞の処理の結果、細胞外マトリックス、特にコラーゲンの分解の原因であるメタロプロテイナーゼ酵素の合成が大幅に減少する。
【0179】
抽出物は、メタロプロテイナーゼに対する阻害活性を示し、それにより、細胞外マトリックスの分解を遅らせることにより皮膚老化を予防する化粧品としての効果がもたらされる。
【0180】
茎抽出物が、コラーゲン及びフィブロネクチンの合成に対して有意な作動を示し、葉抽出物が、コラーゲンの合成に特に有意な活性を示すことも注目されよう。
【0181】
4.IL−10をコードする遺伝子の発現(NHK)
バンダ・テレス(Vanda teres)茎抽出物により、IL−10をコードする遺伝子の発現が、未処理の対照における発現に比べて1000%有意に増加する。
【0182】
試験の結論
上記の試験から、種々のマーカーで得られる結果を考慮すると、茎抽出物が、皮膚老化の徴候の出現を予防する又は遅らせる全般的な生物学的活性に関して素晴らしい可能性を示すことがわかる。
【0183】
IV.バンダ(Vanda)属の抽出物の混合物の生物学的活性
本実施例において、以下の4種の抽出物の数多くの混合物の、皮膚老化の徴候が出現するのを予防する又は遅らせる活性、及び抗炎症活性についての系統的な試験を行った。
【0184】
バンダ・テレス(Vanda teres)根抽出物
バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)茎抽出物
バンダ・セルレア(Vanda coerulea)茎抽出物
バンダ・テレス(Vanda teres)茎抽出物
【0185】
種々の混合物の有効性を、単独で用いた各種の抽出物で得られた有効性と比較するために、各試験における抽出物の総濃度を25μg/mLにして、種々の試験を行った。
【0186】
本試験を行うために、2つの生物学的モデルをより具体的に保持した。
【0187】
NHF培養上澄み液中のMMP−2の発現
HaCaT培養上澄み液中のPGE2の発現
【0188】
試験する各混合物又は抽出物を、25μg/mLに相当する濃度が得られるように調製する。
【0189】
各実験について、陽性対照の値と抽出物の値を、スチューデント検定を用いて比較する。陽性対照の値と抽出物の値との差は、値が0.05以下である場合に有意であるとする。
【0190】
実施した試験により、2つの試験モデルのそれぞれに対して有意な活性を示す、そうでなければ真の相乗効果を示す、いくつかの特に有利な混合物を特徴付けることが可能になる。
【0191】
都合のよい混合物として、バンダ・テレス(Vanda teres)根抽出物、バンダ・テレス(Vanda teres)茎抽出物、及びバンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)茎抽出物を同比率(各抽出物が1/3)で含有する混合物、及びバンダ・テレス(Vanda teres)根抽出物とバンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)茎抽出物の同比率(50/50)の混合物も挙げられよう。
【0192】
上記の4つの抽出物を同比率(25%)で含有する混合物及び以下の組成を有する混合物についても挙げられよう。
【0193】
バンダ・テレス(Vanda teres)の根:12.5%
バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)の茎:62.5%
バンダ・セルレア(Vanda coerulea)の茎:12.5%
バンダ・テレス(Vanda teres)の茎:12.5%
【0194】
これらの混合物は全て、2つのモデルのそれぞれにおいて特に都合がよいことがわかる。
【0195】
V.本発明の化粧品用組成物
実施例4 本発明の抽出物を含む化粧品用組成物
【0196】
本実施例の化粧品用組成物に活性薬剤として使用するラン抽出物を、バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)の茎、バンダ・テレス(Vanda teres)の茎、及びバンダ・セルレア(Vanda coerulea)の茎の混合物を、乾燥及び粉砕した状態で、これら3種の植物の比を1/1/1に準じて適用し、実施例1の方法を再生することにより得る。
【0197】
そのようにして得られた乾燥抽出物を、次いでグリセロール/水の60/40 v/vの混合物中に1%w/wで溶解させる。
【0198】
この溶液を、以下の化粧品用組成物を調製するための活性薬剤として使用する(%はw/wとして表わされる)。
【0199】
A相
1%のラン抽出物を含有する溶液 0.3%
フェノキシエタノール 0.5%
キサンタンガム 0.2%
アクリル酸/C20〜30のアクリル酸アルキルクロスポリマー 0.15%
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム 0.1%
水 適量
【0200】
B相
水素化ポリイソブテン 4%
スクアラン 3%
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 3%
ペンチレングリコール 3%
ステアリン酸グリセリル 3%
ステアリン酸PEG−100 2.5%
蜜蝋 1.5%
炭酸ジカプリリル 1.5%
セチルアルコール 1%
ステアリルアルコール 1%
ジメチコン 1%
【0201】
C相
水酸化ナトリウム 0.04%
水 100%まで適量
【0202】
A相のゲル化剤を水に分散させ、次いでその混合物を80〜85℃で加熱した後に、ラン抽出物の溶液を含む他の全ての化合物を可溶化する。
【0203】
B相の化合物を、均一な相を形成させるために85℃で加熱する。
【0204】
Ystral mixerを用いてA相をB相中に乳化させる。
【0205】
そのようにして得られた油/水エマルジョンを最終的に%w/wの水酸化ナトリウム溶液で中和し、次いで冷却する。
【0206】
得られた組成物は、顔又は顔の一部に塗布することを企図したクリームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンダ・テレス(Vanda teres)種のランの少なくとも一部分の少なくとも1つの抽出物を、化粧品として又は皮膚科学的に許容される担体に溶解又は分散させた形で含有する、皮膚への局所塗布に適合する、化粧品用又は皮膚科学的組成物。
【請求項2】
前記抽出物が、バンダ・テレス(Vanda teres)種のランの茎、根及び/又は葉から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抽出物が、茎抽出物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抽出物が、場合により乾燥及び/又は粉砕した、前記ランの少なくとも一部分を、少なくとも1つの極性溶媒と接触させることにより得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記極性溶媒が、水、C〜Cアルコール、特にエタノール、並びにC〜Cグリコール、特にグリセロール、ブチレングリコール及びプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒が、水−エタノール混合物、好ましくは、10体積%のエタノールに対して約90体積%の水を含む混合物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記極性溶媒が、未臨界状態の溶媒、特に未臨界状態の水である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記抽出物が、少なくとも1つの脱色及び/又は精製ステップに供される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抽出物が、支持体、特に、多孔性若しくは非多孔性のナイロン粉末、マイカ、又は層状無機物質を含む支持体に吸収された後に、前記組成物中に導入される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記抽出物が、水性抽出物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記抽出物を、0.001質量%〜5質量%、好ましくは乾燥質量で0.01質量%〜1質量%含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ラン科(Orchidaceae)に属する少なくとも1つの他の植物の少なくとも1つの抽出物をさらに含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
バンダ(Vanda)属の少なくとも1つの他のランの少なくとも1つの抽出物、特に、バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)種のランの少なくとも一部分の抽出物、及び/又はバンダ・セルレア(Vanda coerulea)種のランの少なくとも一部分の抽出物をさらに含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つのバンダ・テレス(Vanda teres)茎抽出物及び/又は1つのバンダ・テレス(Vanda teres)根抽出物を、バンダ・デニソニアナ(Vanda denisoniana)茎抽出物及び/又はバンダ・セルレア(Vanda coerulea)茎抽出物と組み合わせて含有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
バンダ・テレス(Vanda teres)根抽出物を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
セラム、ローション、乳液、クリーム、特に、薄く色を付けたクリーム、ヒドロゲル、マスク、スティック又はパッチフィルムの剤形である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
皮膚の構造を、特に、真皮及び表皮の上層の細胞外マトリックスの分解を制限することにより維持し、及び/又は皮膚老化の影響、特にしわの形成を減少若しくは遅延させ、及び/又は皮膚に対する保護効果、矯正効果若しくは再構築効果を得るための化粧品用又は皮膚科学的薬剤としての、及び/又は抗炎症剤としての、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抽出物の、化粧品用又は皮膚科学的組成物における使用。
【請求項18】
特に、皮膚老化の徴候が出現するのを予防する又は遅らせる効果を得ることを目的とした、皮膚に対する美容ケア方法であって、請求項1〜16のいずれか一項に記載の化粧品用組成物を体又は顔の少なくとも一部に塗布することを含む、方法。

【公表番号】特表2011−504922(P2011−504922A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535436(P2010−535436)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/FR2008/052154
【国際公開番号】WO2009/071855
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】