説明

リアクトル

【課題】放熱性に優れるリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル1は、巻線2wを螺旋状に巻回してなる一つのコイル2と、筒状のコイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3とを具える。磁性コア3のうち、コイル2の外周側に設けられた外側コア部32は、磁性体粉末と樹脂とを含む複合材料から構成されている。非磁性材料から構成され、螺旋状の冷却管5がコイル2の周方向に沿って配置されている。冷却管5は、外側コア部32を構成する複合材料に覆われている。リアクトル1は、コイル2の外周面に冷却管5が配置されることで、冷却管5を流通する冷媒によって、コイル2をその外周面側から効率よく冷却することができ、放熱性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC-DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトル、このリアクトルを具えるコンバータ、及びこのコンバータを具える電力変換装置に関するものである。特に、放熱性に優れるリアクトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。例えば、特許文献1は、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルを開示している。このリアクトルは、筒状のコイルと、コイルの内外に配置される磁性コアと、コイルと磁性コアとを収納する有底筒状のケースとを具える。特許文献1では、磁性コアのうち、コイルの外周面及び端面を覆う箇所が磁性体粉末と樹脂との複合材料からなる形態を開示している。
【0003】
車載部品に利用されるリアクトルでは、一般に、通電時に発熱するコイルなどを冷却するために、冷却ベースといった設置対象に固定されて利用される。上記ケースは、アルミニウムなどの熱伝導性に優れる材料から構成され(特許文献1の明細書0039など)、当該ケースの外底面が設置対象に接するように固定されて、放熱経路として利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-124310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁性コアの少なくとも一部が上述の樹脂を含む複合材料で構成される形態のリアクトルに対して、更なる冷却効率の向上が望まれる。
【0006】
上記複合材料のうち、樹脂は、一般に、上述のケースを構成する金属に比較して熱伝導率が小さく、放熱性に劣る。そのため、通電によって発熱するコイルの外周面や端面が上記複合材料で覆われた形態では、コイルの熱が篭り易い。特許文献1に記載されるように、例えば、ケースの底面にコイルを支持する台座部を設け、台座部をアルミニウムなどにより構成することで、台座部を放熱経路に利用でき、放熱性を高められる。しかし、この場合でも、コイルにおいて直接的に冷却される領域が、台座部に接触するコイルの一端面のみである。従って、コイルをより効率よく冷却可能で、放熱性に優れるリアクトルの開発が望まれる。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、放熱性に優れるリアクトルを提供することにある。また、本発明の他の目的は、放熱性に優れるリアクトルを具えるコンバータ、このコンバータを具える電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コイルを囲むように冷却管を配置することで上記目的を達成する。
【0009】
本発明のリアクトルは、筒状のコイルと、上記コイルの内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアと、非磁性材料から構成され、冷媒が流通される冷却管とを具える。上記磁性コアのうち、上記コイルの外周側に配置される箇所の少なくとも一部は、磁性体粉末と樹脂とを含む複合材料から構成されている。そして、本発明リアクトルは、上記冷却管が上記コイルの周方向に沿って配置され、当該冷却管の少なくとも一部が前記複合材料に覆われている。
【0010】
本発明リアクトルは、コイルの周方向に沿って冷却管が配置されていることで、コイルのより広い領域を冷却することができる。かつ、この冷却管には、冷媒が流通されることで、上述の台座部よりも冷却能力が高い。従って、本発明リアクトルは、冷却管による冷却能力(冷却管の材質や大きさ、冷媒の温度や流速、流量など)によっては、冷却機能を有しない対象や冷却能力に劣る対象にケースの底部が設置された場合やケースを有しない場合でも、当該冷却管によってコイルを効果的に冷却することができる。また、本発明リアクトルが冷却ベースといった冷却機能を有する設置対象に固定されて、当該リアクトルにおける設置対象との接触面が当該設置対象によって冷却される場合には、冷却管による冷却に加えて、設置対象による冷却をもなされることで、コイルや磁性コアをより効果的に冷却することができる。更に、本発明リアクトルがアルミニウムなどの熱伝導性に優れる材料から構成されるケースを具え、このケースが上述の設置対象によって冷却される場合には、コイルや磁性コアを更に効果的に冷却することができる。以上の点から、本発明リアクトルは、放熱性に優れる。また、冷却管は、非磁性材料から構成されることで、コイルに接触して又は近接して配置されていても、コイルがつくる磁束に影響を与え難く、本発明リアクトルは、所望のインダクタンスを有することができる。
【0011】
本発明において「冷却管がコイルの周方向に沿って配置される」とは、コイルの外周を少なくとも一周するように冷却管が存在することをいう。
【0012】
本発明の一形態として、上記コイルの外周面において上記冷却管が配置される領域を冷却領域とするとき、上記冷却領域は、上記コイルの外周面の80%以上を満たす形態が挙げられる。
【0013】
上記形態は、コイルにおける冷却管が配置される領域が十分に広く、コイルを十分に冷却でき、放熱性により優れる。
【0014】
本発明の一形態として、上記冷却管が非磁性金属から構成されており、上記コイルと上記冷却管との間に絶縁材が介在された形態が挙げられる。
【0015】
上記形態は、一般に熱伝導性に優れる金属によって冷却管が構成されていることで、放熱性に優れる。かつ、上記形態は、コイルの外周面と冷却管との間に絶縁材が介在されるため、コイルと冷却管との間の絶縁性を高められる。特に、コイルと冷却管との間には実質的に絶縁材のみが存在する形態とすると、放熱性を高め易く、絶縁材を薄くしたり、絶縁材を放熱性に優れる材質としたりすることで、放熱性に更に優れる。
【0016】
上記絶縁材を具える形態として、当該絶縁材が絶縁性樹脂から構成され、上記コイルの外周が上記絶縁性樹脂で覆われて、当該コイルの形状が保持されている形態が挙げられる。
【0017】
上記形態は、絶縁材:絶縁性樹脂によってコイルの形状が保持されていることでコイルを取り扱い易い上に、絶縁材をコイルと一体に具えることで部品点数が少なく、組立作業性に優れる。また、絶縁性樹脂を射出成形などすることで、コイルの外周を容易に覆うことができ、上記形態は、生産性にも優れる。更に、上記形態は、コイルと磁性コアとの間に絶縁材が介在されることで、上述のように両者間の絶縁性を高めることができる。
【0018】
本発明の一形態として、上記コイルは、上記リアクトルが設置対象に固定されたとき、その軸が上記設置対象の表面に直交するように配置される形態(以下、この形態を縦型配置形態と呼ぶ)が挙げられる。
【0019】
コイルの軸方向の長さがコイルの端面の最大長さ(例えば、コイルの端面形状が円形の場合、外径)に比較して長いコイル、端的にいうと細長いコイルでは、縦型配置形態とすると、コイルの軸が設置対象の表面に平行するように設置される形態(以下、この形態を横型配置形態と呼ぶ)に比較して、リアクトルの設置面積を小さくし易い。従って、縦型配置形態は、小型にでき、小型であることが望まれる車載部品などに好ましい。また、縦型配置形態は、設置対象との接触面積が小さく、設置対象からの冷却効果が得られ難い場合があるものの、上記形態は、コイルの外周面を冷却管によって冷却できるため、放熱性に優れる。
【0020】
本発明の一形態として、上記冷却管が螺旋状に形成された形態が挙げられる。
【0021】
上記形態は、冷却管が十分に長く、低温の冷媒を十分に流通できるため、放熱性に優れる。また、上記形態は、コイルの外周形状に対応して冷却管を配置し易く、上述したコイルにおける冷却管が配置される領域:冷却領域を大きくし易いため、効率よく冷却することができる。
【0022】
本発明リアクトルは、コンバータの構成部品に好適に利用することができる。本発明のコンバータは、スイッチング素子と、上記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、上記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するものであり、上記リアクトルが本発明リアクトルである形態が挙げられる。この本発明コンバータは、電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。本発明の電力変換装置は、入力電圧を変換するコンバータと、上記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、上記コンバータが本発明コンバータである形態が挙げられる。
【0023】
本発明コンバータや本発明電力変換装置は、放熱性に優れる本発明リアクトルを具えることで、放熱性に優れ、車載部品などに好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明リアクトルは、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)は、実施形態1に係るリアクトルの概略斜視図、(B)は、(A)における(B)-(B)断面図である。
【図2】(A)は、実施形態1に係るリアクトルに具えるコイル成形体と冷却管との組物の概略斜視図、(B)は、(A)における(B)-(B)断面図である。
【図3】実施形態1に係るリアクトルの分解斜視図である。
【図4】ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す概略構成図である。
【図5】本発明コンバータを具える本発明電力変換装置の一例を示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0027】
《実施形態1》
図1〜図3を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。リアクトル1は、巻線2wを螺旋状に巻回してなる一つのコイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3とを具え、コイル2と磁性コア3とは、有底筒状のケース4に収納されている。リアクトル1は、代表的には、冷却ベースなどの設置対象にケース4が設置されて使用される。冷却ベースは、代表的には、冷却水などの流動性のある冷媒が循環される循環経路などといった冷却機構を具える。磁性コア3は、コイル2内に配置される柱状の内側コア部31と、コイル2の外周側に配置された外側コア部32とを具える。リアクトル1の特徴とするところは、コイル2の周方向に沿って冷却管5を具える点にある。以下、各構成を詳細に説明する。
【0028】
[コイル]
コイル2は、図2,図3に示すように1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる筒状体である。巻線2wは、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁材料(代表的にはポリアミドイミドといったエナメル材料)からなる絶縁被覆を具える被覆線が好適である。導体は、横断面形状が長方形状である平角線、円形状である丸線、多角形状である異形線などの種々の形状のものを利用できる。ここでは、コイル2は、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメルからなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにして形成されたエッジワイズコイルとしている。エッジワイズコイルは、占積率を高めて小型なコイルとし易く、リアクトルの小型化に寄与する。
【0029】
コイル2の端面形状(=コイル2の軸に直交する方向の断面形状)は、図2,図3に示すように円形状が代表的である。円筒状のコイルは、巻線に平角線を用いた場合でも巻回し易く、コイルの製造性に優れる上に、小型なコイルにし易い。その他、コイル2の端面形状は、非円形状とすることができる。例えば、楕円などの実質的に曲線のみからなる形状、多角形(例えば、長方形など)の各角部を丸めた形状や直線と円弧とを組み合わせてなるレーストラック状といった直線と曲線とを組み合わせてなる形状などが挙げられる。
【0030】
コイル2の端面の最大長さ:Ldやコイルの軸方向の長さ:Laは、適宜選択することができる。コイルの軸方向の長さ:Laが端面の最大長さ:Ldよりも長い形態、つまり細長いコイルとしてもよいし、LaとLdとが同等の形態、LaがLdよりも短い形態のいずれも利用できる。例えば、端面の最大長さ:Ldに対するコイルの軸方向の長さ:Laの比:La/Ldが0.5以上2以下である形態、特に1以上の形態とすることができる。ここでは、端面の最大長さ:Ldをコイル2の外径とすると、コイル2のLa/Ldは約1.2(≧1)である。
【0031】
コイル2を形成する巻線2wの両端部は、図1などに示すようにターン部分から適宜引き延ばされて絶縁被覆が剥がされ、露出された導体に、銅やアルミニウムなどの導電性材料からなる端子部材(図示せず)が接続される。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示せず)が接続され、通電可能となる。巻線2wの導体と端子部材との接続には、TIG溶接などの溶接、圧着などが利用できる。なお、巻線2wの両端部の引き出し方向は一例であり、適宜変更することができる。また、図1では、巻線2wの両端部をケース4から露出させているが、ケース4内に収納することもできる。
【0032】
リアクトル1は、設置対象に固定したとき、設置対象においてリアクトル1が固定された領域の表面に対して、コイル2の軸が直交するようにコイル2が配置される縦型配置形態である。ここでは、リアクトル1は、図1(B)に示すようにケース4において平面で構成された外底面40oにコイル2の軸が実質的に直交するようにコイル2がケース4内に収納されている。縦型配置形態は、設置対象に対する接触面積を小さくし易く、小型化を図ることができる。ケース4を具える場合には、コイル2の端面の大きさに応じてケース4の外底面40oの面積を選択するとよい。
【0033】
[絶縁性樹脂]
コイル2は、そのままでも利用できるが、ここでは、コイル2の表面を絶縁性樹脂21によって覆ったコイル成形体20としている。絶縁性樹脂21は、コイル2を一定の形状に保持する機能を有しており、絶縁性樹脂21によってコイル2が伸縮することが無く、組立時などでコイル2を取り扱い易い。また、絶縁性樹脂21は、コイル2とその周辺部材(磁性コア3や冷却管5)との間の絶縁性を高める機能を有する。
【0034】
ここでは、絶縁性樹脂21は、図3に示すように、コイル2を構成する巻線2wにおいてターン部分から引き延ばされた箇所(図3において、上述した端子部材が接続される箇所を含む直線状に延びた箇所)を除いて、コイル2のターン部分全体(内周面及び外周面、並びに一対の端面)を覆う。絶縁性樹脂21によるコイル2の被覆領域は適宜選択することができる。例えば、コイル2のターン部分の一部が絶縁性樹脂21によって覆われず、露出された形態とすることができる。しかし、本例のように、コイル2のターン部分の表面の実質的に全部を被覆する形態とすると、コイル2と、コイル2内に配置される内側コア部31との間や、コイル2とコイル2の外周に配置される後述の冷却管5との間に絶縁性樹脂21を確実に介在させることができ、コイル2に対する絶縁性を高められる。
【0035】
更に、ここでは、絶縁性樹脂21は、コイル2と内側コア部31とを一体に保持する機能を有する。従って、コイル成形体20は、コイル2と内側コア部31とを絶縁性樹脂21によって一体に保持する成形体である。このようなコイル成形体20を利用することで、リアクトル1の組み立てにあたり、部品点数を低減でき、組立作業性に優れる。また、この形態では、コイル2の内周面と内側コア部31の外周面との間に介在される絶縁性樹脂21の厚さを調整することで、絶縁性の向上の他、コイル2に対する内側コア部31の位置決めも行える。ここでは、コイル2と内側コア部31との間に介在される絶縁性樹脂21の厚さが均一的であり、この絶縁性樹脂21によって、コイル2と内側コア部31とが同軸に配置されている。また、コイル2の外周面や端面を覆う絶縁性樹脂21の厚さも概ね均一的である(図2(B)参照)。
【0036】
絶縁性樹脂21の厚さは、適宜選択することができ、例えば、0.1mm〜10mm程度が挙げられる。絶縁性樹脂21の厚さが厚いほど、絶縁性の向上を図ることができ、薄いほど、放熱性を高められ、0.1mm〜3mm程度が好ましい。ここでは、絶縁性樹脂21の外形をコイル2の外形に沿った形状、つまり、コイル2と相似形状としており、絶縁性樹脂21は、コイル成形体20の全体に亘って、実質的に均一な厚さで存在する。なお、所望の機能(絶縁特性、形状保持など)を満たせば、絶縁性樹脂21の厚さが部分的に異なっていてもよい。例えば、コイル2が円筒状で、絶縁性樹脂21の外形を角柱状などとすることができる(この場合、角部を構成する樹脂の厚さが厚くなり易い)。
【0037】
更に、ここでは、絶縁性樹脂21は、コイル2を自由長よりも圧縮した状態に保持する機能を有する。そのため、コイル2の長さは自然長よりも短く、小型である。
【0038】
その他、ここでは、内側コア部31の両端面31e及びその近傍が絶縁性樹脂21に覆われず露出され、両端面31eが外側コア部32に接する形態としているが、内側コア部31の少なくとも一方の端面31eが絶縁性樹脂21によって覆われた形態とすることができる。このとき、内側コア部31の端面31e上の絶縁性樹脂21は、ギャップとして機能する。
【0039】
絶縁性樹脂21は、コイル2と磁性コア3や冷却管5との間を十分に絶縁可能な程度の絶縁特性と、リアクトル1の使用時における最高到達温度に対して軟化しない程度の耐熱性とを有し、トランスファー成形や射出成形などが可能な樹脂が好適に利用できる。例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの熱可塑性樹脂が好適に利用できる。また、絶縁性樹脂21には、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスからなるフィラーを混合したものを利用すると、絶縁性に優れる上に放熱性にも優れる。例えば、熱伝導率が1W/m・K以上、更に2W/m・K以上を満たすものが放熱性に優れて好ましい。ここでは、絶縁性樹脂21は、フィラーを含有したエポキシ樹脂(熱伝導率:2W/m・K)を利用している。
【0040】
絶縁性樹脂21を具えるコイル成形体の製造には、例えば、特開2009-218293号公報に記載される製造方法を利用することができ、射出成形やトランスファー成形、注型成形などの種々の成形方法を利用することができる。成形用金型には、コイル2と共に内側コア部31を配置することで、コイル2及び内側コア部31を具えるコイル成形体20を製造することができる。なお、内側コア部31を有していないコイル成形体、つまり、コイル2と絶縁性樹脂21とを具えるコイル成形体とすることができる。この場合、内側コア部31に代わって中子を利用して、コイル成形体を製造するとよい。このコイル成形体では、コイル2の内側に設ける樹脂の厚さを調整することで、上述のように当該樹脂を内側コア部31の位置決めに利用できる。
【0041】
コイル2においてターン部分から延ばされた巻線2wの引出箇所には、ターン部分に比較して、高電圧が加わる場合がある。従って、巻線2wの引出箇所のうち、少なくとも磁性コア3(外側コア部32)との接触部分は、絶縁性樹脂21で覆ったり、絶縁紙や絶縁テープ(例えば、ポリイミドテープ)、絶縁フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)などの絶縁材を適宜巻き付けたり、絶縁材をディップコーティングしたり、絶縁性チューブ(熱収縮チューブ及び常温収縮チューブのいずれでもよい)を配置したりすると、コイル2と磁性コア3(特にここでは外側コア部32)との間の絶縁性を高められる。
【0042】
[冷却管]
リアクトル1では、図2に示すようにコイル2の外周に沿って、冷却管5が配置されている。特に、冷却管5は、コイル2の外周面(複数のターンによってつくられる面)を少なくとも1周するように配置されている。また、ここでは、冷却管5は、絶縁性樹脂21においてコイル2の外周面を覆う箇所に接して配置されている。つまり、冷却管5は、コイル2の外周面に絶縁性樹脂21を介して接し、ここでは、コイル2と冷却管5との間には、実質的に絶縁性樹脂21のみが介在する。
【0043】
冷却管5は、磁束をつくるコイル2に近接して配置されることから、その構成材料は、磁束に影響を与え難いように非磁性材料とする。また、冷却管5は、使用時に高温になるコイル2に近接して配置されて、コイル2の冷却に利用することから、その構成材料は、熱伝導性に優れる材料が好ましい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金などの非磁性金属が好ましい。アルミニウムやマグネシウム、その合金は、軽量であり、軽量化が望まれる車載部品の構成材料に好適である。冷却管5がアルミニウムやその合金から構成されると、熱伝導率が高いことから、放熱性に優れる。冷却管5がマグネシウムやその合金から構成されると、更に軽量な上に強度に優れる。
【0044】
冷却管5を構成する素材管は、その断面形状が図1(A)に示す円形状である丸パイプが挙げられる。丸パイプは、冷媒の流通損失を低減できる。その他、断面形状が矩形状などの少なくとも一部に平面を有する形状とし、コイル2を覆う絶縁性樹脂21の外形を角柱状などの平面を有する形状とする場合、冷却管5とコイル2(絶縁性樹脂21)との接触面積を大きく確保することができ、放熱性を高められる。
【0045】
冷却管5の断面積(開口径)及び長さは、適宜選択することができる。断面積が大きいと、冷媒を流通し易く損失を低減でき、長さが長いと、冷媒の温度上昇を低減して、低温の冷媒を流通させ易い。
【0046】
そして、冷却管5は、コイル2(ここでは絶縁性樹脂21)の外周を1周以上囲むことが可能な長さを有する素材管によって構成されている。ここでは、冷却管5は、上記素材管を螺旋状に巻回した螺旋管であり、素材管がつくる各ターンは、コイル2の外形に沿った円形状である。冷却管5を、複数のターンを有する螺旋管とすることで、素材管の断面積が小さい場合(細い素材管である場合)でも、コイル2の外周面を十分に囲むことができる。螺旋管のターン数は、素材管の断面積などに応じて適宜選択することができる。また、螺旋管とする場合、ターン間の間隔が狭いほど、コイル2の外周を流れる冷媒量を多くできるため、放熱性を高められて好ましい。従って、ターン同士が接触した螺旋管とすることができる。更に、螺旋管は、筒状体であるため、コイル2の外周に配置させ易い。特に、リアクトル1では、コイル2の外周面が絶縁性樹脂21によって覆われていることで、コイル2の各ターンがつくる凹凸が絶縁性樹脂21によって滑らかな面になっており、このことからも、螺旋管を配置し易い。螺旋管のターン径をコイル2(ここでは絶縁性樹脂21)の周囲長さ(外径)よりも大きくすると、コイル2の外周に冷却管5を配置し易いが、冷却管5とコイル2(ここでは絶縁性樹脂21)との間に隙間が生じて、冷却効率を低下させる。従って、冷却管5とコイル2との間には、実質的に絶縁材(ここでは絶縁性樹脂21)のみが存在するように、螺旋管のターン径を選択することが好ましい。例えば、螺旋管のターン径をコイル2(ここでは絶縁性樹脂21)の外径よりも若干小さくし、コイル2の外周に螺旋管を嵌め込むことで、コイル2(絶縁性樹脂21)と冷却管5とを密着させることができる。
【0047】
コイル2の外周面において、冷却管5が配置される冷却領域A5(図2(B))が大きいほど、放熱性に優れて好ましい。具体的には、コイル2の外周面A2(図2(B))におけるコイル2の軸方向に沿った長さをL2、冷却領域A5におけるコイル2の軸方向に沿った長さをL5とするとき、コイル2の外周面A2の長さ:L2×80%≦冷却領域A5の長さ:L5を満たすように冷却管5を配置することが好ましい。コイル2の外周面の全域に冷却管5を具えると、放熱性により優れて好ましい。ここでは、L2×80%≦L5を満たす。なお、冷却管5における冷却領域A5は、ターン間の空間を含むものとする。
【0048】
或いは、冷却管5は、素材管をコイル2の軸方向に振幅させると共に、コイル2の外周面を1周以上させるように形成した蛇行管とすることができる。蛇行管は、素材管の両端の開口部を近接させ易く、冷媒の導入・排出機構の接続作業が行い易い。蛇行管も螺旋管と同様に冷媒の流通距離を長くできるため、低温の冷媒をより多く流通させることができ、放熱性に優れる。蛇行管の振幅が上述の冷却領域A5に相当することから、コイル2の外周面A2の長さ:L2×80%≦冷却領域A5の長さ:L5を満たすように上記振幅を選択することが好ましい。或いは、コイル2の外周面を覆うように中空の環状体を配置し、この環状体に冷媒の導入口・排出口を設けたものを冷却管5として利用することができる。この場合、上述の螺旋管や蛇行管よりも単純な形状の冷却管とすることができる。
【0049】
冷却管5は、接着剤や粘着テープなどを利用して、コイル2(ここでは絶縁性樹脂21)の外周面に接触した状態を維持させると、長期に亘り、放熱性に優れて好ましい。冷却管5の少なくとも一部がケース4内に設けた支持部材や外側コア部32などにより支持されたり、上述のように冷却管5をコイル2に嵌め込むことによる締め付け力によって、コイル2(ここでは絶縁性樹脂21)と冷却管5との接触が維持される場合、上述のように接着剤などによる固定を行わなくてもよい。コイル2と冷却管5との間の間隔が小さいほど、放熱性を高められることから、コイル2と冷却管5とが接している場合、放熱性により優れる。上記接着剤などをコイル2と冷却管5との間に介在させる場合、その厚さを薄くすると、放熱性に優れて好ましい。この例では、コイル2と冷却管5との間に絶縁性樹脂21が介在するが、当該樹脂21の厚さを薄くするほど放熱性を高められる。
【0050】
冷却管5を流通する冷媒は、リアクトル1を設置する設置対象が上述の冷却機構を具える場合、設置対象に流通される冷媒を流用することができる。この場合、設置対象に流れる冷媒が冷却管5に導入されるように導入部(図示せず)を設けると共に、冷却管5から排出された冷媒が設置対象側に戻されるように排出部(図示せず)を設けるとよい。勿論、冷媒の供給機構を別途設けることができる。具体的には、冷媒を貯留するタンクと、タンクの冷媒を一定の温度に冷却する冷却手段と、タンクと冷却管5の導入口・排出口とを連結する配管と、冷媒を圧送するポンプとを具える形態が挙げられる。
【0051】
冷却管5は、高温になるコイル2に近接して配置されることから、冷却管5内に流通させる冷媒には、使用時の最高到達温度によって形態が変化しないもの(例えば、液体では気化しないもの)が好適に利用できる。例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)といったオイル、フロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体、HCFC-123やHFC-134aなどのフロン系冷媒、メタノールやアルコールなどのアルコール系冷媒、アセトンなどのケトン系冷媒などが挙げられる。
【0052】
冷却管5における冷媒の流通方向は適宜選択することができる。縦型配置形態では、図1,図2に示すように、螺旋状の冷却管5において、ケース4の開口側(図1,図2では上方側)からケース4の底部40側に向かって冷媒を流通させることが好ましい。つまり、少なくとも冷媒の導入口は、冷却管5におけるケース4の開口側に設けることが好ましい。ここでは、冷却管5の一方の端部がケース4の開口側に配置され、冷却管5の中間部がケース4の開口側からケース4の底部40側に向かって巻回され、他方の端部をケース4の底部40側から開口側に引き出している。つまり、冷却管5の両端部がケース4の開口部から引き出された形態としている。そして、冷却管5の一方の開口部を導入口とし、底部40側から延びる他方の開口部を排出口とする(図2(A))。縦型配置形態では、ケース4の底部40から遠いケース4の開口側の領域(=設置対象から遠い領域)が底部40側の領域に比較して高温になり易い。上述のようにケース4の開口側から底部40側に向って冷媒を流すと、この高温部分は、コイル2などの熱を吸収しておらず低温状態にある冷媒によって冷却できることから、効果的な冷却を行える。なお、図1に示すように冷媒の導入口・排出口と、巻線2wの端部(端子部材との接続箇所)とを離れた位置に配置すると、巻線2wと冷媒とが接触する危険を回避できる。
【0053】
[磁性コア]
磁性コア3は、図1(B),図2(B)に示すように、筒状のコイル2内に挿通された柱状の内側コア部31と、内側コア部31の少なくとも一方の端面31e(ここでは両端面)、及びコイル2の外周側に配置されて、コイル2の外周面の一部及び冷却管5を覆う外側コア部32とを具え、コイル2を励磁した際に閉磁路を形成する。リアクトル1では、少なくともコイル2の外周側に配置される外側コア部32は、磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料から構成されている。
【0054】
(内側コア部)
ここでは、内側コア部31は、コイル2の内周形状に沿った円柱体である。図1(B)に示すように内側コア部31は、コイル2の軸方向の長さよりも若干長く、コイル2内に挿通配置された状態において内側コア部31の両端面31e及びその近傍の外周面がコイル2の端面から若干突出しており、この状態が絶縁性樹脂21によって維持されている。内側コア部31においてコイル2の各端面から突出する長さ(以下、突出長さと呼ぶ)は、適宜選択することができる。ここでは、突出長さを等しくしているが、異ならせてもよいし、コイル2のいずれか一方の端面からのみ突出部分が存在するように、内側コア部の長さやコイルに対する内側コア部の配置位置を調整することができる。例えば、内側コア部31の一端面側の突出長さを長くして、この一端面がケース4の内底面や設置対象に接する形態とすることができる。内側コア部の長さとコイルの長さとが等しい形態、内側コア部の長さがコイルの長さよりも短い形態とすることもできるが、図1(B)に示すように内側コア部31の長さがコイル2の長さと同等以上であると、コイル2がつくる磁束を内側コア部31に十分に通過させることができて好ましい。
【0055】
磁性コア3はその全体が一様な材質から構成された形態とすることができるが、ここでは、部分的に材質が異なる形態としている。ここでは、内側コア部31は、圧粉成形体から構成されている。
【0056】
圧粉成形体は、代表的には、軟磁性材料(例えば、鉄基材料(鉄族金属や鉄合金)、希土類金属など)からなる軟磁性粒子の表面に絶縁材料(例えば、シリコーン樹脂やリン酸塩など)からなる絶縁被覆を具える軟磁性粉末や、この軟磁性粉末に加えて適宜結合剤(例えば、熱可塑性樹脂などの樹脂や高級脂肪酸など)を混合した混合粉末を加圧成形後、適宜熱処理を施すことで製造することができる。熱処理によって成形時に軟磁性粒子に導入された歪みを除去することができ、低損失な圧粉成形体とすることができる。熱処理温度は、高いほど歪みを除去できるが、絶縁被覆を熱により損傷しない温度以下が好ましい。上記結合剤は、この熱処理により消失したり、シリカなどの絶縁物に変化したりする。上記製造方法によって、軟磁性粒子の周囲が絶縁被覆(例えば、リン酸化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、硼素化合物など)で覆われ、当該粒子間に絶縁物が介在する圧粉成形体が得られる。絶縁被覆を具える圧粉成形体は、絶縁性に優れ、渦電流損を低減することができる。軟磁性材料をフェライトとする場合、絶縁被覆を具えていなくても、絶縁性に優れる。
【0057】
圧粉成形体は、複雑な立体形状であっても比較的容易に成形可能である上に、外側コア部32を構成する複合材料よりも飽和磁束密度を高め易い。例えば、軟磁性材料の材質や、軟磁性粉末と結合剤との混合比、絶縁被覆を含む種々の被膜の量などを調整したり、成形圧力を調整したりすることで、圧粉成形体の磁気特性(特に、飽和磁束密度)を変化させることができる。飽和磁束密度が高い軟磁性粉末(フェライトよりも鉄基材料が好ましい)を用いたり、結合剤の配合量などを低減して軟磁性材料の割合を高めたり、成形圧力を高くしたりすることで、飽和磁束密度が高い圧粉成形体が得られる。その他、圧粉成形体は、公知のものを利用することができる。
【0058】
柱状の内側コア部31は、所望の形状の金型を用いて成形した一体物としたり、圧粉成形体からなる複数のコア片を積層した積層体としたりすることができる。積層体は、接着剤や接着テープなどで固定して一体物とすることができる。ここでは、内側コア部31は、ギャップ材やエアギャップが介在していない中実体としている。ギャップを有さないことで小型にできる上に、ギャップ部分の漏れ磁束がコイル2に影響を及ぼさないため、コイル2と内側コア部31とを近接でき(絶縁性樹脂21の厚さを薄くでき)、この点からもリアクトル1を小型にできる。更に、ギャップの省略により、損失の低減や、大電流の通電時におけるインダクタンスの低下の低減を図ることができる。なお、磁性コア3は、アルミナ板などの非磁性材料からなるギャップ材やエアギャップを介在した形態とすることができる。
【0059】
(外側コア部)
ここでは、外側コア部32は、コイル成形体20の実質的に全て(より具体的には、コイル2の端面を覆う絶縁性樹脂21から構成される両端面及びコイル2の外周面を覆う絶縁性樹脂21から構成される外周面、内側コア部31の両端面31e及びその近傍)と、コイル成形体20の外周に配置されている冷却管5とを覆っている。また、外側コア部32は、ケース4の内周面と、ケース4に収納されたコイル成形体20と冷却管5との組物の外周面とがつくる空間に沿った形状である。外側コア部32の一部が内側コア部31の両端面31eに連結するように設けられていることで、磁性コア3は閉磁路を形成する。
【0060】
ここでは、外側コア部32は、その全体が磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料により構成されている。
【0061】
複合材料は、代表的には、射出成形、トランスファー成形、MIM(Metal Injection Molding)、注型成形、磁性体粉末と粉末状の固体樹脂とを用いたプレス成形などにより製造することができる。射出成形は、磁性体粉末と樹脂とを含む混合物を所定の圧力をかけて成形型に充填して成形した後、上記樹脂を硬化することで複合材料が得られる。トランスファー成形やMIMも原料を成形型に充填して成形を行う。注型成形では、上記混合物を、圧力をかけることなく成形型又はケース4に注入して成形・硬化することで複合材料が得られる。
【0062】
成形型を利用して複合材料を別途形成する場合、原料の充填時間が短く、複合材料を大量生産でき、生産性に優れる。この場合、離型した複合材料をコイル成形体20と冷却管5との組物に組み付けることで、ケースを有しない形態のリアクトルを製造することでき、組み付けたものをケース4に収納することでリアクトル1を製造することができる。この場合、内側コア部31と外側コア部32との両者とは、適宜、接着剤によって接合することができる。更に、この場合、外側コア部32とケース4の壁部41の内面との間に接着剤などを充填して、両者の密着性を高めることができる。複合材料を別途構成する場合、例えば、断面]状の部材を複数作製し、これらの部材を組み合わせることで、コイル成形体20と冷却管5との組物を覆うことが挙げられる。断面]状の部材の内面形状は、上記組物に沿った形状とすると、当該部材によって冷却管5の支持などを確実に行える。一方、上記断面]状の部材の内面形状を上記組物に正確に沿った形状でなく、大まかに沿った単純な形状(例えば、上記部材を組み合わせて形成される内部空間が直方体状、など)とすると、複合材料の成形性に優れる。
【0063】
一方、ケース4に複合材料の原料を直接充填して複合材料を形成する場合、(1)上述の組み付け工程や磁性コア3の接合工程を省略できる、(2)コイル成形体20と冷却管5との組物がつくる複雑な形状に沿って外側コア部32を容易に成形できる、(3)ケース4と複合材料とを密着させ易い、特に、ケース4の内面を後述するように粗面化すると、ケース4と外側コア部32との接触面積を増大して、放熱性を高められる、といった利点を有する。特に、この場合、注型成形を利用すると、ケース4に収納した組物の配置状態を崩し難く好ましい。
【0064】
外側コア部32を構成する複合材料中の磁性体粉末は、上述した内側コア部31を構成する軟磁性粉末と同様の組成でも異なる組成でもよい。複合材料は、非磁性材料である樹脂を含有することから、複合材料中の軟磁性粉末と圧粉成形体を構成する軟磁性粉末とが同じ組成であっても、当該圧粉成形体よりも飽和磁束密度が低く、かつ透磁率も低くなる。従って、外側コア部32の透磁率を内側コア部31よりも低くすることができる。
【0065】
複合材料中の磁性体粉末は、単一種でも、材質の異なる複数種の粉末を混合したものでもよい。外側コア部32を構成する複合材料中の磁性粉末は、純鉄粉や鉄合金粉末といった鉄基材料からなるものが好ましい。鉄基材料などのように、複合材料中の磁性体粉末も金属材料で構成される場合には、圧粉成形体の場合と同様に上述した絶縁被覆を具える被覆粉末であると、軟磁性粒子間の絶縁性を高められ、渦電流損を低減できる。
【0066】
複合材料中の磁性体粉末の平均粒径は、1μm以上1000μm以下、特に10μm以上500μm以下が挙げられる。この磁性体粉末は、粒径が異なる複数種の粉末を含んでいてもよい。磁性体粉末が微細粉末と粗大粉末とを含む複合材料を磁性コアに用いることで、飽和磁束密度が高く、低損失なリアクトルが得られ易い。なお、複合材料中の磁性体粉末と原料に用いる粉末とは、その大きさが実質的に同じであり(維持されており)、平均粒径が上記範囲を満たす粉末を原料に用いると、流動性に優れて、複合材料の製造性に優れる。
【0067】
外側コア部32を構成する複合材料中の磁性体粉末の含有量は、複合材料を100%とするとき、体積割合では40体積%以上60体積%以下、質量割合では80質量%以上90質量%以下が挙げられる。磁性体粉末が40体積%以上、或いは80質量%以上であることで、磁性成分の割合が十分に高いため磁性コア3全体の飽和磁束密度といった磁気特性を高め易い。磁性体粉末が60体積%以下、或いは90質量%以下であると、複合材料の製造性に優れる。
【0068】
複合材料中のバインダとなる樹脂は、代表的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。その他、バインダとなる樹脂として、熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、或いは低温硬化性樹脂を利用することができる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0069】
その他、複合材料の一形態として、磁性体粉末及びバインダとなる樹脂に加えてフィラー、代表的には、アルミナやシリカなどのセラミックスといった非磁性体からなる粉末を混合した形態が挙げられる。磁性体粉末に比較して比重が小さいフィラーを混合すると、磁性体粉末の偏在を抑制して、複合材料の全体に亘って磁性体粉末が均一的に分散した複合材料とすることができる。或いは、フィラーが熱伝導性に優れる材料から構成される場合、放熱性の向上に寄与することができる。フィラーの含有量は、複合材料を100質量%とするとき、0.2質量%以上、更に0.3質量%以上、特に0.5質量%以上とすると、上述の偏在の抑制効果や放熱性の向上効果を得易く、20質量%以下、更に15質量%以下、特に10質量%以下とすると、磁性体粉末の割合の低下を抑制できる。フィラーは、磁性体粉末よりも微粒にすると磁性体粒子間に介在させ易く、当該フィラーの含有による磁性体粉末の割合の低下を抑制し易い。
【0070】
ここでは、外側コア部32は、平均粒径75μm以下の鉄基材料(純鉄)からなる粒子の表面に絶縁被膜を具える被覆粉末とエポキシ樹脂との複合材料から構成されている(複合材料中の純鉄粉の含有量:40体積%)。また、外側コア部32もギャップ材やエアギャップを介在していない。従って、磁性コア3は、その全体に亘ってギャップ材を有さない形態である。
【0071】
外側コア部32は、閉磁路が形成できればよく、その形状は特に問わない。上述のようにコイル成形体20と冷却管5との組物の実質的に全周が複合材料によって覆われる形態では、当該複合材料(外側コア部32)によって、(1)コイル2などの外部環境からの保護や機械的保護の強化、(2)冷却管5の支持、を図ることができる。また、リアクトル1は、コイル2だけでなく、外側コア部32も冷却管5に接することができるため、冷却管5によって外側コア部32も冷却することができる。
【0072】
コイル成形体20の一部や冷却管5の一部が複合材料に露出された形態とすることができる。より具体的には、例えば、ケース4の内側にコイル成形体20の支持部や位置決め部、後述する横型配置形態では冷却管5が収納される冷却管溝などを設けた場合、コイル成形体20において位置決め部などに接する領域や冷却管5において冷却管溝に接する領域が複合材料に覆われない領域とすることができる。位置決め部や支持部は、ケース4と一体でも別部材でもよい。ケース4と一体とすると、ケース4とコイル2(コイル成形体20)との接触面積を増大して、放熱性を高められる。位置決め部などが導電性材料から構成され、コイル2と接触する場合には、コイル2との接触領域に絶縁紙や絶縁シート、絶縁性接着剤などの絶縁材を介在させると、絶縁性を高められる。本例のようにコイル2が絶縁性樹脂21に覆われている場合には、上記絶縁材は省略することができる。或いは、位置決め部や支持部は、絶縁材料や上記複合材料によって構成することができる。外側コア部32となる複合材料を上述のように別途作製し、コイル成形体20と冷却管5との組物に当該複合材料を組み付ける場合には、位置決め部や支持部を省略してもよい。
【0073】
(磁気特性)
上述のように構成材料が異なることで、磁性コア3は、部分的に磁気特性が異なっている。具体的には、内側コア部31は、外側コア部32よりも飽和磁束密度が高く、外側コア部32は、内側コア部31よりも透磁率が低い。より具体的には、内側コア部31は、飽和磁束密度:1.6T以上、かつ外側コア部32の1.2倍以上、比透磁率:100〜500、外側コア部32は、飽和磁束密度:0.5T以上内側コア部31の飽和磁束密度未満、比透磁率:5〜30、内側コア部31及び外側コア部32からなる磁性コア3全体の比透磁率は10〜100である。一定の磁束を得る場合、内側コア部の飽和磁束密度の絶対値が高いほど、また、内側コア部の飽和磁束密度が外側コア部よりも相対的に大きいほど、内側コア部の断面積を小さくし易い。そのため、内側コア部の飽和磁束密度が高い形態は、全体の飽和磁束密度が均一的な磁性コアと同じ磁束を得る場合、内側コア部の断面積を小さくできるため、リアクトルの小型化に寄与することができる。内側コア部31の飽和磁束密度は、1.8T以上、更に2T以上が好ましく、外側コア部32の飽和磁束密度の1.5倍以上、更に1.8倍以上が好ましく、いずれも上限は設けない。圧粉成形体に代えて、珪素鋼板に代表される電磁鋼板の積層体を利用すると、内側コア部の飽和磁束密度を更に高め易い。一方、外側コア部32の透磁率を内側コア部31よりも低くすると、磁性コア3の漏れ磁束を低減したり、磁気飽和を抑制できるためギャップレス構造の磁性コア3としたりすることができる。
【0074】
[ケース]
リアクトル1は、冷却管5を具えることから、ケース4を具えていない形態、つまり、外側コア部32が露出された形態としても、放熱性に優れる。ここでは、リアクトル1は、ケース4を具える。ケース4は、代表的には、板状の底部40(図1(B))と、底部40から立設される枠状の壁部41とで構成される容器であり、底部との対向側が開口したものが挙げられる。底部40の外側の面:外底面40oは、リアクトル1が冷却ベースといった設置対象に設置されたとき、その少なくとも一部が設置対象に接して冷却される。図1に示すように外底面40oが平面から構成され、冷却ベースといった設置対象に設置される場合、外底面40oの全面が設置対象に接し、冷却面となる。外底面40の一部に設置対象に接触しない領域(平面でも曲面でもよい)が存在することを許容する。なお、図1では、外底面40oが下方に配置された形態を示すが、側方(図1において左右)や上方に配置される場合がある。
【0075】
ケース4の形状は、適宜選択することができる。ここでは、円筒状のコイル2の外形に合わせて、底部40が円板から構成され、壁部41が円筒状であるが、コイル2の外形と非相似形状、例えば、底部40が矩形板から構成され、壁部41が矩形枠状である矩形箱状とすることができる。
【0076】
ケース4の大きさは、ケース4に収納するコイル2と磁性コア3と冷却管5との合計容積に応じて設定するとよい。縦型配置形態では、ケース4の高さをコイル2の軸方向の長さ及び外側コア部32のサイズに応じて選択することが好ましい。
【0077】
ケース4は、主たる収納物:コイル2及び磁性コア3の外部環境(粉塵や腐食など)からの保護や機械的保護を図る他、放熱経路として利用することができる。そのため、ケース4の構成材料は、熱伝導性に優れる材料、好ましくは鉄などの磁性体粉末よりも熱伝導率が高い材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金といった金属を好適に利用できる。アルミニウムやマグネシウム、その合金は、軽量であることから、軽量化が望まれる車載部品の構成材料にも好適である。また、アルミニウムやマグネシウム、その合金は、非磁性材料かつ導電性材料であることから、ケース4外部への漏れ磁束も効果的に防止できる。金属から構成される場合、ケース4は、鋳造や切削加工、塑性加工などにより、容易に製造できる。ここでは、ケース4は、アルミニウム合金から構成している。
【0078】
底部40は、図1(B)に示すように、その表裏面(内底面及び外底面40o)を平面としてもよい。その他、底部40の内側は、上述した位置決め部や支持部などを具える凹凸形状とすると、コイル2や内側コア部31の熱をケース4に伝え易く、放熱性を高められる。
【0079】
ケース4を成形型として、注型成形によって外側コア部32を構成する複合材料を成形する場合などでは、ケース4の内面の少なくとも一部、好ましくは50面積%以上、より好ましくは80面積%以上の領域に微細な凹凸を有する形態とすることができる。この形態は、外側コア部32を構成する複合材料とケース4との接触面積を増大でき、樹脂の硬化時に当該樹脂が収縮しても複合材料がケース4から剥離し難い。従って、ケース4と複合材料との両者の密着性を高められ、ケース4の壁部41に外側コア部32(複合材料)の熱を効率よく伝えられ、ケース4からの冷却効果を高められる。微細な凹凸は、例えば、最大高さが1mm以下、好ましくは0.5mm以下が挙げられる。微細な凹凸を設けるための粗面化処理は、ショットブラストやサンドブラスト、水酸化ナトリウムによる艶消し処理、ケース4がアルミニウムやマグネシウム、その合金で構成されている場合には、アルマイト処理などの陽極酸化処理を利用することができる。
【0080】
その他、ケース4は、リアクトル1を設置対象に固定するための取付部(図示せず)を具える形態とすることができる。取付部は、例えば、壁部41の径方向外方に突出する突片とし、この突片にボルトなどの固定部材が挿通される孔を有する形態が挙げられる。取付部を具えることで、リアクトル1を設置対象に容易に固定できる。
【0081】
[用途]
上記構成を具えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用できる。
【0082】
[リアクトルの大きさ]
リアクトル1を車載部品とする場合、リアクトル1は、ケース4を含めた容量が0.2リットル(200cm3)〜0.8リットル(800cm3)程度であることが好ましい。より具体的には、端面形状が円形状のコイルの場合、内径:20mm〜80mm、巻き数:30〜70、円筒状の内側コア部の場合、直径:10mm〜70mm、高さ(コイルの軸方向に沿った長さ):20mm〜120mm、円筒状のケースの外底面の直径:30mm〜120mmが挙げられ、本例では、ケース4を含めて約740cm3である。また、冷却管5を断面円形状の素材管とする場合、素材管は、内径:0.5mm〜10mm、外径:2mm〜15mmであると、外側コア部32やケース4を小型にでき、設置スペースが小さくて済む。
【0083】
[リアクトルの製造方法]
リアクトル1は、以下のようにして製造することができる。ここでは、まず、図3に示すようにコイル2と内側コア部31とを絶縁性樹脂21によって一体に成形したコイル成形体20を作製する。次に、コイル成形体20におけるコイル2の外周に沿って螺旋状の冷却管5を組み付けて、コイル成形体20と冷却管5との組物(図2(A))を作製する。そして、外側コア部32を注型成形によって製造する場合には、成形型となるケース4を用意して、ケース4に上記組物を収納する。外側コア部32の原料となる磁性体粉末及び樹脂、適宜結合剤や非磁性体粉末を用意して混合物を作製し、上記組物が収納されたケース4にこの混合物を充填した後、樹脂を硬化する。外側コア部32を別途作製した複合材料とする場合には、上記組物と、所定の形状の複合材料とを用意して、上記組物の外周に複合材料を組み付けることで、ケースを有しないリアクトルが得られ、得られた組合体をケース4に収納することで、リアクトル1が得られる。
【0084】
[効果]
リアクトル1は、磁性コア3の一部(ここでは外側コア部32)が磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料から構成されているものの、高温となるコイル2の外周に、コイル2の周方向に沿って冷媒が流通される冷却管5を具えることで、コイル2を効率よく冷却することができる。
【0085】
特に、実施形態1のリアクトル1は、縦型配置形態であるため、設置面積が小さく、小型である。但し、縦型配置形態では、冷却ベースといった設置対象に設置された場合、コイル2の一端面のみが当該設置対象に近接して、コイル2の外周面の大部分は、設置対象から遠い。従って、この形態は、設置対象によるコイル2の冷却効果を十分に得られない恐れがある。しかし、リアクトル1は、上述のように冷媒が流通される冷却管5をコイル2(ここではコイル成形体20)に接して具えて、冷却管5によってコイル2の外周面側から積極的に冷却している。そのため、リアクトル1Aは、設置対象によるコイル2の冷却効果が十分に得られない場合でも、コイル2を十分に冷却することができる。特に、リアクトル1では、冷却管5が配置される冷却領域A5とコイル2の外周面A2との関係がL2×80%≦L5を満たすように冷却管5を具えることから、コイル2をその外周面側から効率よく冷却できる。
【0086】
従って、リアクトル1は、放熱性に優れる上に、小型である。冷却ベースといった設置対象に取り付けられた場合には、リアクトル1は、ケース4の底部40側からも冷却されることで、放熱性に更に優れる。
【0087】
また、リアクトル1では、冷却管5を螺旋管としていることで、コイル2を広範囲に亘って容易に覆うことができる。更に、冷却管5が螺旋管であることで、コイル2(ここではコイル成形体20)の周囲長さ(外径)と冷却管5のターン径とを調整して、冷却管5をコイル2(ここではコイル成形体20)に十分に密着させることができる。
【0088】
加えて、リアクトル1では、冷却管5が非磁性金属から構成されることから、コイル2に近接して冷却管5が配置されていても磁気特性に悪影響を及ぼし難く、かつ、冷却管5自体が熱伝導性に優れることから、放熱性により優れる。また、リアクトル1では、コイル2の外周が絶縁性樹脂21によって覆われていることで、非磁性金属から構成された冷却管5とコイル2との間の絶縁性にも優れる。更に、リアクトル1は、絶縁性樹脂21によってコイル2の形状を保持することでコイル2を取り扱い易い上に、内側コア部31をも一体に具えるコイル成形体20とすることで、組立作業性にも優れる。
【0089】
その他、リアクトル1では、磁性コア3の少なくとも一部(ここでは外側コア部32)が上述の複合材料であることで、以下の効果を奏する。
(1)コイル2や内側コア部31、冷却管5の一部を覆うといった複雑な形状であっても、外側コア部32を容易に形成できる。
(2)注型成形とすると、外側コア部32の形成と同時に磁性コア3を形成でき、その結果リアクトル1を製造できるため、製造工程が少なく、生産性に優れる。
(3)外側コア部32の構成樹脂により内側コア部31と外側コア部32とを接合したり、コイル成形体20と冷却管5とを接合することができる。
(4)外側コア部32の磁気特性を容易に変更可能である。
(5)コイル2の外周を覆う材料が磁性体粉末を含有するため、樹脂だけの場合よりも熱伝導率が高く放熱性に優れる。
(6)外側コア部32の構成材料が樹脂を含むことで、ケース4が開口していても、コイル2や内側コア部31の外部環境からの保護・機械的保護を図ることができる。
【0090】
≪変形例1≫
上記実施形態1では、コイル2の外周が絶縁性樹脂21で覆われたコイル成形体20を具え、絶縁性樹脂21によって、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性、及びコイル2と冷却管5との間の絶縁性を高めた形態を説明した。その他、例えば、コイル2の外周面や内周面に絶縁テープを貼り付けたり、コイル2の外周面や内周面を絶縁紙や絶縁シートで覆ったりすることでも、上述の絶縁性を高める効果が得られる。或いは、内側コア部31の外周やコイル2の外周に筒状のインシュレータを配置した形態とすることができる。インシュレータの構成材料には、PPS樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの絶縁性樹脂が好適に利用できる。このインシュレータは、内側コア部31やコイル2の径方向に分割可能な分割片とすると、内側コア部31の外周やコイル2の外周に容易に配置でき、組立作業性に優れる。内側コア部31の外周に配置する筒状体として、両端の周縁から外方に突出する環状のフランジを具える形態とすると、このフランジによりコイル2の端面を覆うことができる。
【0091】
≪変形例2≫
上記実施形態1では、設置対象の表面(ケース4の外底面40o)に対してコイル2の軸が直交に配置される縦型配置形態を説明した。その他、設置対象の表面(ケースの外底面)に対してコイルの軸が平行するようにコイルが配置される形態:横型配置形態とすることができる。横型配置形態は、コイルの外周面から設置対象までの距離が短く、設置対象に近接した領域を増大し易い。そのため、横型配置形態は、冷却ベースといった設置対象に固定された場合、コイルの外周面において設置対象寄りの領域を設置対象によって冷却し易くなる。従って、本発明リアクトルが横型配置形態である場合、コイルの外周面を冷却管によって冷却できるだけでなく、設置対象による冷却効果も得られ、放熱性により優れる。また、横型配置形態は、縦型配置形態に比較して嵩が小さく、小型である。
【0092】
横型配置形態においてケースを具える場合には、ケースの底部に冷却管の一部が配置される冷却管溝を設け、冷却管においてケース寄りの領域を、外側コア部を構成する複合材料から露出させ、この露出部分を冷却管溝に配置する構成とすることができる。この場合、ケースによって冷却管を冷却して冷媒を低温にし易く、放熱性を更に高められる。冷却管とケースとを接着剤によって接合することができる。接着剤は、熱伝導性に優れるものであると(好ましくは熱伝導率が1W/m・K以上)、放熱性をより高められる。例えば、アルミナなどの熱伝導性及び電気絶縁性に優れるフィラーを含有する接着剤を利用すると、絶縁性、放熱性、密着性にも優れる。
【0093】
その他、横型配置形態では、コイルや冷却管において設置対象から遠い領域(ケースを具える場合、ケース開口側の領域)が外側コア部を構成する複合材料から露出された形態とすると、放熱性を高められる。ケースを具える場合、ケースの開口部を覆う蓋を具えると、複合材料から露出された部分の機械的保護・環境からの保護を図ることができる。この蓋は、金属といった導電性材料(ケースと同じ材質でもよい)により構成すると、コイルにおける露出部分から外部への漏れ磁束を抑制できる。また、この蓋を放熱経路にも利用できる。
【0094】
《変形例3》
上記実施形態1は、内側コア部31が圧粉成形体から構成され、外側コア部32のみが複合材料から構成された形態を説明した。その他、内側コア部も磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料により構成された形態とすることができる。この場合、内側コア部と外側コア部とは、磁性体粉末の材質や含有量が異なる複合材料により構成され、実施形態1と同様に内側コア部の飽和磁束密度が高く、外側コア部の透磁率が低い形態とすることができる。磁性体粉末の配合量を多くすると、飽和磁束密度が高い複合材料が得られ易く、上記配合量を少なくすると、透磁率が低い複合材料が得られ易い。所望の組成の原料によって、柱状の複合材料を別途作製しておき、この柱状の複合材料を内側コア部に利用するとよい。
【0095】
《変形例4》
上記実施形態1は、コイル2を一つ具える形態を説明した。その他、巻線を螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子を具える形態とすることができる。一対のコイル素子は、各素子の軸が平行するように横並び(並列)され、巻線の一部を折り返してなる連結部により連結された形態が挙げられる。各コイル素子を別々の巻線によって形成し、両コイル素子を構成する巻線の一端部同士をTIG溶接などの溶接、圧着、半田付けなどで接合した形態、上記一端部同士を別途用意した連結部材を介して接合した形態とすることもできる。そして、横並びしたコイル素子を包絡する輪郭に沿って、冷却管を配置する。或いは、螺旋状に形成した冷却管を二つ用意して、各コイル素子の外周に沿って、各コイル素子の外周面をそれぞれ囲むように各冷却管を配置する(導入口及び排出口が共通していていもよい)。この場合、コイル素子間には、冷却管が配置可能な間隔を設ける。高温になり易いコイル素子間に冷却管が配置された形態は、効率よく冷却でき、放熱性に優れる。一対のコイル素子を具えるこの形態では、各コイル素子の軸が設置対象の表面に平行するようにコイルが配置される横型配置形態とすると、上記連結部が邪魔にならず、コイルをケースに収納し易かったり、リアクトルを設置対象に固定し易かったりする。
【0096】
≪変形例5≫
上記実施形態1では、コイル2の外周に絶縁材を具える形態とした。その他、冷却管5が金属で構成される場合、冷却管5の外周に上述した絶縁性樹脂による被覆層を形成したり、絶縁性チューブを設けたりすることができる。その他、冷却管5がアルミニウムやマグネシウム、その合金で構成される場合、アルマイト層などの陽極酸化層を設けてもよい。この絶縁材も上述のように厚さを薄くするほど放熱性を高められる。
【0097】
(実施形態2)
実施形態1や変形例1〜5のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを具える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
【0098】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、図4に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを具える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを具える。なお、図4では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを具える形態とすることができる。
【0099】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0100】
コンバータ1110は、図5に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを具え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1や変形例1〜5のリアクトルを具える。放熱性に優れるリアクトル1などを具えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110も放熱性に優れる。
【0101】
なお、車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を具える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態1や変形例1〜5のリアクトルなどと同様の構成を具え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1や変形例1〜5のリアクトルなどを利用することもできる。
【0102】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。例えば、複合材料の組成(磁性体粉末の材質・含有量、樹脂の種類など)、磁性体粉末の大きさ、磁性コアの材質、コイルの端面形状、冷却管の形状・大きさなどを変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明リアクトルは、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車といった車両に搭載されるDC-DCコンバータや空調機のコンバータといった電力変換装置の構成部品に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 リアクトル
2 コイル 2w 巻線 20 コイル成形体 21 絶縁性樹脂
3 磁性コア 31 内側コア部 31e 端面 32 外側コア部
4 ケース 40 底部 40o 外底面 41 壁部
5 冷却管
1100 電力変換装置 1110 コンバータ 1111 スイッチング素子
1112 駆動回路 L リアクトル 1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ 1160 補機電源用コンバータ
1200 車両 1210 メインバッテリ 1220 モータ 1230 サブバッテリ
1240 補機類 1250 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のコイルと、
前記コイルの内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアとを具えるリアクトルであって、
前記磁性コアのうち、前記コイルの外周側に配置される箇所の少なくとも一部は、磁性体粉末と樹脂とを含む複合材料から構成されており、
非磁性材料から構成され、冷媒が流通される冷却管を具え、
前記冷却管は、前記コイルの周方向に沿って配置され、当該冷却管の少なくとも一部が前記複合材料に覆われていることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記コイルの外周面において前記冷却管が配置される領域を冷却領域とするとき、前記冷却領域は、前記コイルの外周面の80%以上を満たすことを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記冷却管は、非磁性金属から構成されており、
前記コイルと前記冷却管との間に絶縁材が介在されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記絶縁材は、絶縁性樹脂から構成されており、
前記コイルは、その外周が前記絶縁性樹脂で覆われて、その形状が保持されていることを特徴とする請求項3に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記コイルは、前記リアクトルが設置対象に固定されたとき、その軸が前記設置対象の表面に直交するように配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記冷却管は、螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するコンバータであって、
前記リアクトルは、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリアクトルであることを特徴とするコンバータ。
【請求項8】
入力電圧を変換するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、
前記コンバータは、請求項7に記載のコンバータであることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74063(P2013−74063A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211461(P2011−211461)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【Fターム(参考)】