説明

リアパーセルシェルフ

【課題】リアパーセルシェルフの変形を防止しつつ、レイアウトの自由度が高いと共に、車両重量の増加を軽減できるリアパーセルシェルフを提供する。
【解決手段】車両の後部に設置され、車室と荷室とを仕切るリアパーセルシェルフ1は、略水平状に形成された水平壁部21を有すると共に、水平壁部21に形成されスピーカが取り付けられるスピーカ取付開口部2aを有するリアパーセルシェルフ本体2と、リアパーセルシェルフ本体2に取り付けられ、スピーカ取付開口部2aの前方に配置されると共に、チャイルドシートに設けられた係止部材を係止するアンカー部材3と、スピーカ取付開口部2aの周縁に沿って取り付けられたパッチ4と、を備える。パッチ4は、当該パッチ4のうちアンカー部材3に近い部位に、車幅方向に沿って延在する前ビード41を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に適用されるリアパーセルシェルフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後部に設置され、車室と荷室とを仕切るリアパーセルシェルフが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2に記載のリアパーセルシェルフは、スピーカが取り付けられるスピーカ取付開口部と、スピーカ取付開口部の前方に配置されると共に、チャイルドシートに設けられた係止部材を係止するアンカー部材と、を有している。
【0003】
ところで、前記リアパーセルシェルフに対して、アンカー部材を介して前方へ向かう引張荷重が加わると、スピーカ取付開口部の周縁(特に車幅方向両側の部分)に局所的に高い応力が加わる。そのため、リアパーセルシェルフに対して、応力に対抗できる剛性を確保させておく必要がある。
しかし、前記特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、応力に対抗できる剛性を確保させる手段が何ら講じられていないため、リアパーセルシェルフに対して、アンカー部材を介して前方へ向かう引張荷重が加わると、スピーカ取付開口部が車幅方向に縮小するように(前後方向に伸長するように)リアパーセルシェルフが変形する虞があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するものとして、特許文献3には、リアパーセルシェルフを段差状(階段状)に形成する発明が開示されている。すなわち、特許文献3には、上部と、上部よりも低い位置に形成されると共に、スピーカ取付開口部を有する底部と、上部と底部との間に形成された段差部と、を備えたリアパーセルシェルフが開示されている。このような構成により、リアパーセルシェルフの剛性が高まるため、リアパーセルシェルフの変形が防止される。
また、前記問題を解決する他の手段として、リアパーセルシェルフの板厚を厚くし、リアパーセルシェルフの剛性を高める方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−10383号公報
【特許文献2】特開2007−45409号公報
【特許文献3】特開2009−35164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献3に記載の発明では、段差部が形成されるため、その分リアパーセルシェルフの高さ寸法が大きくなり、レイアウトの自由度が低下するという弊害があった。
また、リアパーセルシェルフの板厚を厚くする方法では、リアパーセルシェルフの重量が増加するため、車両重量が増加するという弊害があった。
【0007】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、リアパーセルシェルフの変形を防止しつつ、レイアウトの自由度が高いと共に、車両重量の増加を軽減できるリアパーセルシェルフを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明は、車両の後部に設置され、車室と荷室とを仕切るリアパーセルシェルフであって、略水平状に形成された水平壁部を有すると共に、前記水平壁部に形成され、スピーカが取り付けられるスピーカ取付開口部を有するリアパーセルシェルフ本体と、前記リアパーセルシェルフ本体に取り付けられ、前記スピーカ取付開口部の前方に配置されると共に、チャイルドシートに設けられた係止部材を係止するアンカー部材と、前記スピーカ取付開口部の周縁に沿って取り付けられたパッチと、を備え、前記パッチは、当該パッチのうち前記アンカー部材に近い部位に、車幅方向に沿って延在する第1ビードを有することを特徴とする。
【0009】
なお、前記第1ビードは、前記スピーカ取付開口部の車幅方向の幅に対応する長さを有する構成とするのが好ましい。
【0010】
本発明によれば、パッチが、スピーカ取付開口部の周縁に沿って取り付けられることによって、スピーカ取付開口部の周縁の剛性が向上する。
また、パッチが、アンカー部材に近い部位に車幅方向に沿って延在する第1ビードを有することによって、リアパーセルシェルフ本体に加わる引張荷重を分散できるため、スピーカ取付開口部の周縁(特に車幅方向両側の部分)における局所的な応力集中を回避できる。
したがって、本発明によれば、スピーカ取付開口部の周縁の剛性が向上すると共に、スピーカ取付開口部の周縁における局所的な応力集中を回避できるため、スピーカ取付開口部が車幅方向に縮小するようにリアパーセルシェルフ本体が変形するのを防止できる。
【0011】
また、本発明は、スピーカ取付開口部の周縁に沿ってパッチを取り付けて、リアパーセルシェルフ本体の補強部分を最小限に抑える構成としたため、リアパーセルシェルフ本体の高さ寸法が大きくならず、レイアウトの自由度が高まる。
更に、リアパーセルシェルフ本体の板厚を厚くする方法に比べて、リアパーセルシェルフ本体の重量増加を軽減できるため、車両の重量増加を軽減できる。
【0012】
また、前記パッチは、スポット溶接で前記リアパーセルシェルフ本体に接合され、前記スポット溶接の溶接点は、前記第1ビードの近傍で前記第1ビードの延在方向に沿って配列されているように構成するのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、第1ビードの近傍において、リアパーセルシェルフ本体とパッチとの間に隙間が形成されるのを抑制できるため、第1ビードの屈曲変形を防止でき、ひいては、スピーカ取付開口部が車幅方向の縮小するようにリアパーセルシェルフ本体が変形することを一層防止できる。
【0014】
また、前記スピーカ取付開口部の中心と前記アンカー部材の中心とは、車幅方向にオフセットされており、前記第1ビードの車幅方向一端部は、車幅方向他端部よりも前記アンカー部材の近くに配置されており、前記車幅方向一端部は、前記車幅方向他端部よりも後方に位置しているように構成するのが好ましい。
【0015】
スピーカ取付開口部の中心とアンカー部材の中心とが、車幅方向にオフセットされると、第1ビードの車幅方向一端部は、車幅方向他端部よりもアンカー部材に近くなるところ、かかる構成によれば、車幅方向一端部は車幅方向他端部よりも後方に位置しているので、第1ビードが車幅方向と平行に設けられる場合に比べて、第1ビードの車幅方向一端部からアンカー部材の中心までの距離と、車幅方向他端部からアンカー部材の中心までの距離との差を小さくできる。したがって、第1ビード全体で引張荷重を受けることができるため、リアパーセルシェルフ本体に加わる引張荷重を効率良く分散できる。
【0016】
また、前記パッチは、前記スピーカ取付開口部を挟んで前記第1ビードと反対側の部位に、車幅方向に沿って延在する第2ビードを有する構成とするのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、リアパーセルシェルフ本体に加わる引張荷重を一層分散できるため、スピーカ取付開口部の周縁における局所的な応力集中を一層回避できる。したがって、リアパーセルシェルフ本体が車幅方向に縮小するように変形するのを一層防止できる。
【0018】
また、前記スポット溶接の溶接点は、前記第2ビードの近傍で前記第2ビードの延在方向に沿って配列されているように構成するのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、第2ビードの近傍において、リアパーセルシェルフ本体とパッチとの間に隙間が形成されるのを抑制できるため、第2ビードの屈曲変形を防止でき、ひいては、スピーカ取付開口部が車幅方向の縮小するようにリアパーセルシェルフ本体が変形することを一層防止できる。
【0020】
また、前記スピーカ取付開口部は、平面視略円形状に形成されており、前記第1ビードは、直線状に形成され、前記第2ビードは、前記スピーカ取付開口部に対応する湾曲形状に形成されているように構成するのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、直線状の第1ビードにより、リアパーセルシェルフ本体に加わる引張荷重を均一に分散できるため、スピーカ取付開口部の周縁に加わる応力を均一化できる。
また、湾曲形状の第2ビードにより、リアパーセルシェルフ本体に加わる多方向からの荷重を均一に分散できるため、スピーカ取付開口部の周縁に加わる多方向からの応力を均一化できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、リアパーセルシェルフの変形を防止しつつ、レイアウトの自由度が高いと共に、車両重量の増加を軽減できるリアパーセルシェルフを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るリアパーセルシェルフを示す斜視図である。
【図2】リアパーセルシェルフを示す底面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図2のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、本実施形態では、「前後」、「上下」、「左右」は、車両の「前後」、「上下」、「左右」を基準にする。また、「車幅方向」とは「左右方向」と同義である。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るリアパーセルシェルフ1を示す斜視図であり、図2は、リアパーセルシェルフ1を示す底面図である。また、図3は、図2の部分拡大図であり、図4は、図3の部分拡大図であり、図5は、図2のA−A線断面図である。なお、図2−図5においては、説明の便宜上、スピーカ6を省略して描いている。
はじめに、図5を参照して、リアパーセルシェルフ1の周辺構成について説明する。
【0026】
図5に示すように、リアパーセルシェルフ1は、車両の後部に設置され、車室CRと荷室CLとを仕切る部材である。リアパーセルシェルフ1は、リアシート70の後方に配置されると共に、荷室CLの上方に配置されている。また、リアパーセルシェルフ1は、前クロスメンバ76と、前クロスメンバ76に対して後方に離間する後クロスメンバ78との間に配置されている。リアパーセルシェルフ1の後端には、トランクリッド72が開閉自在に設けられると共に、リアガラス74が設けられている。なお、リアシート70には、図示しないチャイルドシートが設置される。
【0027】
次に、図1−図5を適宜参照して、リアパーセルシェルフ1の具体的な構成について説明する。
図1−図3に示すように、リアパーセルシェルフ1は、リアパーセルシェルフ本体2と、アンカー部材3と、パッチ4(図3参照)と、シーラー5(図3参照)と、を主に備えて構成されている。
【0028】
リアパーセルシェルフ本体2は、図1に示すように、金属製の板状部材である。リアパーセルシェルフ本体2は、略水平状に形成された水平壁部21と、水平壁部21の前端から斜め下方に向かって延出形成された段差部22と、段差部22の前端から前方に向かって延出形成された略水平状の横壁部23と、横壁部23の前端から斜め下方に向かって延出形成された傾斜壁部24と、を有している。
【0029】
水平壁部21には、図1及び図2に示すように、スピーカ6,6が取り付けられる一対のスピーカ取付開口部2a,2aが形成されている。スピーカ取付開口部2a,2aは、車幅方向に互いに間隔を空けて設けられている。スピーカ取付開口部2aは、図3に示すように、略円形状に形成されており、詳しくは、円弧形状の縁に2つの突部2b,2bを有する形状に形成されている。水平壁部21には、スピーカ6の係止爪(図示省略)を係止する複数の係止孔2c,2cが形成されている。係止孔2c,2cは、平面視略矩形状に形成され、スピーカ取付開口部2aの周縁2e(突部2b付近)に設けられている。
【0030】
段差部22には、図1に示すように、後記するアンカー部材3の被係止部材32が挿通される複数のアンカー挿通孔2d,2dが形成されている。アンカー挿通孔2d,2dは、正面視略矩形状に形成され、車幅方向に互いに等しい間隔を空けて設けられている。
【0031】
なお、図5に示すように、水平壁部21には、後クロスメンバ78の前端及び後端が溶接等で固定されており、中空断面が形成されている。また、段差部22には、前クロスメンバ76の後端が溶接等で固定され、傾斜壁部24には、前クロスメンバ76の前端が溶接等で固定されており、中空断面が形成されている。
【0032】
アンカー部材3は、図3に示すように、ブラケット31と、被係止部材32と、を有している。
【0033】
ブラケット31は、平面視略矩形状の金属製の板状部材である。ブラケット31の適所には、図3及び図5に示すように、リアパーセルシェルフ本体2のアンカー挿通孔2dと連通するアンカー挿通孔3aが形成されている。ブラケット31は、図5に示すように、水平壁部21の裏面(下面)であってアンカー挿通孔2dの周縁に溶接等で固定されている。
【0034】
被係止部材32は、チャイルドシートに設けられるフック等の係止部材(図示省略)を係止する金属製の部材である。被係止部材32は、図1及び図3に示すように、金属製の棒状部材を略コ字状に折り曲げて形成されている。被係止部材32の後端(両端)は、図5に示すように、ブラケット31を介して、水平壁部21の裏面に固定されている。すなわち、被係止部材32の後端は、リアパーセルシェルフ本体2のアンカー挿通孔2d及びブラケット31のアンカー挿通孔3aに挿通された状態で、ブラケット31に溶接等で固定されている。
【0035】
図3に戻り、パッチ4は、スピーカ取付開口部2aの周縁2eの剛性を高める平面視環状の金属製の部材である。パッチ4は、アンカー部材3と干渉しない位置に配置され、スピーカ取付開口部2aの周縁2eに沿って水平壁部21の裏面にスポット溶接で固定されている。図3の符号P1−P11は、スポット溶接の溶接点を示す。
パッチ4は、車幅方向に沿って延在する前ビード41と、スピーカ取付開口部2aを挟んで前ビード41と反対側に配置され、車幅方向に沿って延在する後ビード42と、を有している。
【0036】
第1ビードである前ビード41は、直線状に形成されており、スピーカ取付開口部2aの車幅方向の幅に対応する長さを有する。前ビード41は、パッチ4のうちアンカー部材3の近傍部位に配置されている。換言すると、前ビード41は、スピーカ取付開口部2aの前方に設けられ、スピーカ取付開口部2aとアンカー部材3との間に配置されている。前ビード41の一端部41aは、他端部41bよりもアンカー部材3の近傍に配置されると共に、他端部41bよりも後方に位置している。前ビード41は、図5に示すように、下方に向かって突出形成されている。
なお、前ビード41は、スピーカ取付開口部2aの車幅方向の幅寸法と同一の長さを有してもよいし、スピーカ取付開口部2aの車幅方向の幅寸法よりも大きい又は小さい長さを有してもよい。換言すると、前ビード41は、リアパーセルシェルフ本体2に加わる引張荷重を好適に分散できる長さを有していればよい。
【0037】
ここで、図3及び図4を参照して、一端部41aと他端部41bとの関係について説明する。
本実施形態では、アンカー部材3の車幅方向の中心点を通る前後方向に沿う中心線C2は、図3に示すように、スピーカ取付開口部2aの車幅方向の中心点を通る前後方向に沿う中心線C1に対して、車幅方向内側にオフセットされている。中心線C2が中心線C1に対してオフセットされると、前ビード41の一端部41aは、他端部41bよりもアンカー部材3に近くなる。逆に言えば、中心線C2が前ビード41の一端部41aに近付いた状態となる。
そこで、一端部41aが他端部41bよりも後方に位置するように構成すると、図4に示すように、一端部41aから中心線C1までの距離L1と、他端部41bから中心線C1までの距離L2との差(L2−L1)は、前ビード41が車幅方向と平行に設けられた場合(図4の二点鎖線参照)における、一端部から中心線C1までの距離L3と、他端部から中心線C1までの距離L4との差(L4−L3)よりも小さくできる。
したがって、本実施形態によれば、前ビード41が車幅方向と平行に設けられた場合に比べて、前ビード41全体で引張荷重を受けることができるため、リアパーセルシェルフ本体2に加わる引張荷重を効率良く分散できる。
【0038】
図3に戻り、第2ビードである後ビード42は、スピーカ取付開口部2aに対応する湾曲形状(円弧形状)に形成されている。すなわち、後ビード42は、スピーカ取付開口部2aの円弧形状と略同じ曲率の曲線形状に形成されている。後ビード42は、パッチ4のうちアンカー部材3の遠方部位に配置されている。換言すると、後ビード42は、スピーカ取付開口部2aの後方に配置され、スピーカ取付開口部2aを挟んでアンカー部材3と反対側に配置されている。後ビード42は、図5に示すように、下方に向かって突出形成されている。
【0039】
ここで、図3を参照して、リアパーセルシェルフ1とパッチ4との突き合わせ部分に施されるスポット溶接の溶接点P(P1−P11)について説明する。
スポット溶接の溶接点P1−P4は、前ビード41の近傍で前ビード41の延在方向に沿って配列されている。また、溶接点P5−P8は、後ビード42の近傍で後ビード42の延在方向に沿って配列されている。
【0040】
シーラー5は、リアパーセルシェルフ本体2とパッチ4との間に形成される隙間を埋める機能を有するものであり、公知のシーラーの中から適宜選択して用いられる。シーラー5は、図3に示すように、スピーカ取付開口部2aを囲むように略円環状に形成され、溶接点P1−P11と干渉しない位置に配置されている。シーラー5は、図3及び図5に示すように、リアパーセルシェルフ本体2の裏面とパッチ4の上面との間の隙間に配置される部分と、パッチ4の下面に配置される部分(外側に露呈する部分)と、を有している。
【0041】
本発明の実施形態に係るリアパーセルシェルフ1は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、リアパーセルシェルフ1の作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態によれば、パッチ4が、スピーカ取付開口部2aの周縁2eに沿って取り付けられることによって、スピーカ取付開口部2aの周縁2eの剛性が向上する。
また、パッチ4が、当該パッチ4のうちアンカー部材3の近傍部位に車幅方向に沿って延在する前ビード41を有することによって、リアパーセルシェルフ本体2に加わる引張荷重を分散できるため、スピーカ取付開口部2aの周縁2e(特に車幅方向両側の部分)における局所的な応力集中を回避できる。
特に、本実施形態では、前ビード41が、スピーカ取付開口部2aの車幅方向の幅に対応する長さを有すると共に、パッチ4が、当該パッチ4のうちスピーカ取付開口部2aを挟んで前ビード41と反対側の部位に、車幅方向に沿って延在する後ビード42を有することによって、リアパーセルシェルフ本体2に加わる引張荷重を一層分散できるため、スピーカ取付開口部2aの周縁2eにおける局所的な応力集中を一層回避できる。
したがって、スピーカ取付開口部2aの周縁2eの剛性が向上すると共に、スピーカ取付開口部2aの周縁2eにおける局所的な応力集中を回避できるため、スピーカ取付開口部2aが車幅方向に縮小するようにリアパーセルシェルフ本体2が変形するのを防止できる。
【0043】
また、スピーカ取付開口部2aの周縁2eに沿ってパッチ4を取り付けて、リアパーセルシェルフ本体2の補強部分を最小限に抑える構成としたため、リアパーセルシェルフ本体2の高さ寸法が大きくならず、レイアウトの自由度が高まる。
更に、リアパーセルシェルフ本体2の板厚を厚くする方法に比べて、リアパーセルシェルフ本体2の重量増加を軽減できるため、車両の重量増加を軽減できる。
【0044】
また、スポット溶接の溶接点P1−P4が、前ビード41の近傍で前ビード41の延在方向に沿って配列されると共に、溶接点P5−P8が、後ビード42の近傍で後ビード42の延在方向に沿って配列されることによって、前ビード41及び後ビード42の近傍において、リアパーセルシェルフ本体2とパッチ4との間に隙間が形成されるのを抑制できるため、前ビード41及び後ビード42の屈曲変形を防止でき、ひいては、スピーカ取付開口部2aが車幅方向の縮小するようにリアパーセルシェルフ本体2が変形することを一層防止できる。
【0045】
また、前ビード41の一端部41aが他端部41bよりも後方に位置するように構成したことにより、前ビード41が車幅方向と平行に設けられた場合に比べて、前ビード41の一端部41aからアンカー部材3までの距離L1と、他端部41bからアンカー部材3までの距離L2との差を小さくできる。したがって、前ビード41全体で引張荷重を受けることができるため、リアパーセルシェルフ本体2に加わる引張荷重を効率良く分散できる。
【0046】
また、前ビード41が直線状に形成されることによって、リアパーセルシェルフ本体2に加わる引張荷重を均一に分散できるため、スピーカ取付開口部2aの周縁2eに加わる応力を均一化できる。
更に、後ビード42がスピーカ取付開口部2aの円弧形状に対応する湾曲形状に形成されることによって、リアパーセルシェルフ本体2に加わる多方向からの荷重を均一に分散できるため、スピーカ取付開口部2aの周縁2eに加わる多方向からの応力を均一化できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、スピーカ取付開口部2a、アンカー部材3、パッチ4、シーラー5の形状等は適宜変更してよい。
【0048】
また、本実施形態では、スピーカ6を2つ設けたが、これに限定されることなく、スピーカ6の数は適宜変更してよい。この場合、スピーカ6の数に合わせてスピーカ取付開口部2aが形成される。
【0049】
また、本実施形態では、アンカー部材3を3つ設けたが、これに限定されることなく、アンカー部材3の数は適宜変更してよい。この場合、アンカー部材3の数に合わせてリアパーセルシェルフ本体2のアンカー挿通孔2dが形成される。
【0050】
また、本実施形態では、前ビード41の一端部41aが他端部41bよりも後方に位置するように構成したが、前ビード41が車幅方向と平行に設けられてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、アンカー部材3の車幅方向の中心点を通る前後方向に沿う中心線C2は、スピーカ取付開口部2aの車幅方向の中心点を通る前後方向に沿う中心線C1に対して、車幅方向内側にオフセットされるように構成したが、中心線C2は、中心線C1に対して、車幅方向外側にオフセットされるように構成してもよい。この場合、前ビード41の他端部41bは、一端部41aよりもアンカー部材3の近傍に配置されるため、他端部41bを一端部41aよりも後方に位置するように構成するのが望ましい。
【0052】
また、溶接点の数は、適宜変更してよいし、シーラー5を省略してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 リアパーセルシェルフ
2 リアパーセルシェルフ本体
21 水平壁部
2a スピーカ取付開口部
2e 周縁
3 アンカー部材
31 ブラケット
32 被係止部材
4 パッチ
41 前ビード(第1ビード)
41a 一端部
41b 他端部
42 後ビード(第2ビード)
5 シーラー
6 スピーカ
P1−P11 溶接点
C1 中心線
C2 中心線
CR 車室
CL 荷室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に設置され、車室と荷室とを仕切るリアパーセルシェルフであって、
略水平状に形成された水平壁部を有すると共に、前記水平壁部に形成され、スピーカが取り付けられるスピーカ取付開口部を有するリアパーセルシェルフ本体と、
前記リアパーセルシェルフ本体に取り付けられ、前記スピーカ取付開口部の前方に配置されると共に、チャイルドシートに設けられた係止部材を係止するアンカー部材と、
前記スピーカ取付開口部の周縁に沿って取り付けられたパッチと、を備え、
前記パッチは、当該パッチのうち前記アンカー部材に近い部位に、車幅方向に沿って延在する第1ビードを有することを特徴とするリアパーセルシェルフ。
【請求項2】
前記第1ビードは、前記スピーカ取付開口部の車幅方向の幅に対応する長さを有することを特徴とする請求項1に記載のリアパーセルシェルフ。
【請求項3】
前記パッチは、スポット溶接で前記リアパーセルシェルフ本体に接合され、
前記スポット溶接の溶接点は、前記第1ビードの近傍で前記第1ビードの延在方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリアパーセルシェルフ。
【請求項4】
前記スピーカ取付開口部の中心と前記アンカー部材の中心とは、車幅方向にオフセットされており、
前記第1ビードの車幅方向一端部は、車幅方向他端部よりも前記アンカー部材の近くに配置されており、
前記車幅方向一端部は、前記車幅方向他端部よりも後方に位置していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のリアパーセルシェルフ。
【請求項5】
前記パッチは、前記スピーカ取付開口部を挟んで前記第1ビードと反対側の部位に、車幅方向に沿って延在する第2ビードを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のリアパーセルシェルフ。
【請求項6】
前記スポット溶接の溶接点は、前記第2ビードの近傍で前記第2ビードの延在方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項5に記載のリアパーセルシェルフ。
【請求項7】
前記スピーカ取付開口部は、平面視略円形状に形成されており、
前記第1ビードは、直線状に形成され、
前記第2ビードは、前記スピーカ取付開口部に対応する湾曲形状に形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のリアパーセルシェルフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−111308(P2012−111308A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260815(P2010−260815)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】