説明

リアルタイム診断、治療、および治療薬モニタリングのためのシステムおよび方法

疾患を診断および/または治療するためと共に、疾患の治療をモニターするためのシステムおよび方法。診断の場合、本発明は、ナノ粒子、代理マーカー、および特異的化学実体を検出するための手段を含む、ナノ粒子アセンブリを用いる。特定の態様において、ナノ粒子アセンブリには、疾患の同時診断および治療のためにペイロードが含まれる。さらなる態様において、疾患の治療をモニターするために、治療薬および治療薬マーカーが患者に投与される。センサー技術を用いて生体液試料を分析して、疾患を診断および/または疾患の治療をモニターするために有効かつ正確な手段を提供するために、代理および/または治療薬物マーカーの有無を検出する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本出願の主題は、米国科学財団(助成金番号NSF:EEC 02-10580)の研究助成金によって支援されている。したがって、米国政府は本発明において一定の権利を保有する可能性がある。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年1月22日に提出された米国特許出願第10/054,619号の一部継続出願である、2002年6月24に提出された米国特許出願第10/178,877号の一部継続出願である、2004年2月26日に提出された米国特許出願第10/788,501号の一部継続出願である。本出願はまた、2003年1月16日に提出された米国特許出願第10/345,532号の一部継続出願である、2003年12月23日に提出された米国特許出願第10/744,789号の一部継続出願でもある。本出願はまた、2002年10月21日に提出された米国特許出願第10/274,829号の一部継続出願でもある。本出願はまた、2001年5月23日に提出された米国特許出願第60/292,962号の利益を主張する、2002年5月22日に提出された米国特許出願第10/154,201号の一部継続出願でもある。本出願はまた。1999年11月8日に提出されたが今は取り下げられている米国特許出願第60/164,250号の利益を主張する2000年11月8日に提出された米国特許出願第09/708,789号の継続出願である、2003年11月26日に提出された米国特許出願第10/722,620号の一部継続出願でもある。上記の出願は全て、任意の図面、表、または図面を含む、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本発明は、体液における標的化合物濃度の非侵襲的モニタリングを含む、治療の非侵襲的診断、治療、およびモニタリングに関し、より詳しくは、呼気検出系を利用した疾患および/または治療薬に関連した標的化合物のモニタリングのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
多様な医学的病態、障害、および疾患(本明細書において以降、「疾患」と呼ぶ)の検出、通知、および治療のための有効かつ正確なシステムの開発が非常に求められている。これは、患者における、核酸、タンパク質、不法薬、毒素、薬物、発癌物質、毒、アレルゲン、および感染物質のような、疾患に関連する特定の化学および/または生物学的物質の存在を同定するための有効な手段を必要とする。そのような化学または生物学的物質を検出する現在の方法は、試料(一般的に血液)の有機溶媒への抽出後に、ガス-液体クロマトグラフィーおよび/または質量分析のような、独立型の分析システムを用いる分析を行うことを必要とする。これらの方法は時間がかかり、しばしば高価である。その上、これらの方法には、患者における化学または生物学的物質に関連した疾患の同時治療が含まれない。
【0005】
疾患が診断された後、利用可能な薬物を用いる疾患の有効な治療は、個々の臨床病態のために複雑となりうる。歴史的に、薬学的組成物は、患者の体重に基づく標準用量に従って患者に送達された。1970年代初期に、てんかん患者に関して、薬物の血中濃度に従って調節された用量による薬学的治療が、患者の体重に従って調節された用量による場合よりはるかに有効であることが発見され、より良好に発作が制御されることおよび副作用がより少ないことが証明された。
【0006】
現在では、多くの医薬品に関して、最適な治療薬の効果を確実に得るために、血流中の薬物濃度レベルをモニターすることが必要であることが一般的に承認されている。特定の医薬品は、血中濃度レベルが低すぎると無効である。その上、特定の医薬品は、血液中の濃度レベルが高すぎると生体に対して毒性である。同様に、絶え間ないモニタリングを必要としない薬剤に関して血液中の薬物濃度をモニターする手段を有することが貴重であろう。血清中の薬物レベルをモニターすることによって、薬物の用量を治療的有効範囲内に個別化することができる。
【0007】
例えば、三環系または四環系抗うつ剤(TCA)は、患者の血液中での絶え間ないモニタリングを必要とする。TCAsは、シナプス間隙へのセロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込みを阻害することによって作用する。この群には、そのメンバーである三環系イミプラミン、ノルトリプチリン、およびクロミプラミンが含まれ、四環系には、マプロチリンおよびアモキサピンが含まれる。鎮静、躁病事例、多汗、動悸、血圧上昇、頻脈、舌または上肢のもつれおよび震え、ならびに体重増加が含まれるTCAsの副作用を引き起こすと考えられているのは、ノルエピネフリンの再取り込みの阻害である。現在利用されているセロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)と比較して、TCAは非常に有意な副作用を有し、いくつかは実質的に生命を脅かし、その他は患者が認容することが単に難しい。
【0008】
SSRIはいくつかのTCAより有効ではなく、実際にわずかに有効性が劣ることがあるが、TCAはそれらがSSRIより毒性が強く、過剰投与の危険がより大きいことからあまり魅力的ではない。TCAの過剰投与によって、中枢神経系および心血管毒性が起こり、TCAの過剰投与による死亡の相対的リスクは市販のSSRIであるプロザックの2.5〜8.5倍である。TCAによる危険がより大きいことは、副作用のみならず一定の血液サンプリングのために、患者が治療を継続しなくなる点である。古典的な抗うつ剤(TCAまたはMAOI)を服用した患者が、副作用および絶え間ないモニタリングのために治療を中止する確率がプロザックを服用した患者の3倍であることが、研究によって示されている。
【0009】
このように、血清中薬物レベルのモニタリングを必要とする治療的に有効な薬剤は、絶え間ない採血の不便さおよび患者のコンプライアンスの欠如の点から、医師によって処方されることが少ない。さらに、費用効果の高いヘルスケアという現在の時代において、処方コストの検討は検査術の全ての局面に関する主な問題となっている。薬物療法の個別化は、薬物副作用の検出および消失;個々の代謝に基づく異常な代謝の検出および用量の調節;ならびに疾患に及ぼす効果に基づく異常な代謝の検出および用量の調節を通して費用高価の高い患者の管理に貢献する。
【0010】
薬物レベルの試験は、治療有効性と毒性のあいだの安全域が狭い薬剤を投与される患者の場合、特に重要である。不整脈を治療するために用いられるプロカインアミドまたはジゴキシン;急発作を治療するために用いられるジランチンまたはバルプロ酸;ならびに感染症を治療するために用いられる抗生物質であるゲンタマイシンまたはアミカシンのような薬剤は、投与による安全性と治療有効性との幅が狭い薬剤の例である。
【0011】
治療薬のモニタリングに関して現在利用可能な試験は侵襲性であり、管理が難しく、および/または分析のために長期間を必要とする。そのような試験は一般的に複雑であり、分析を行うために検査室を必要とする。ヘルスケア提供者の診療所が血液試料を分析するための適当な検査技術を有することはまれであり、したがって、試料をその場所以外の検査室に送る、またはその血液を採取するために患者を検査室に行かせなければならない。検査室におよび検査室からの伝達プロセスにおいて、試料が失われるもしくは誤って取り扱われる、または患者の健康および幸福にとって有害となりうる不正確な結果が、ヘルスケア提供者に提供される可能性がより高くなる。さらに、血液中の薬物濃度レベルを評価するために現在利用可能なその場での検査装置は高価である。委託検査室は、ガスクロマトグラフィー-質量分析のような洗練された技術を用いて、典型的に複雑で高価な毒性学的分析を行って、薬物の量を決定する。
【0012】
血液中の薬物濃度は、ほとんどの薬剤がその生物学的作用を発揮する細胞レベルでの濃度を直接反映しない可能性があることが判明した。薬物の薬力学はまた、広い個体間および個体内変動を示す。作用部位での薬物濃度はおそらく、臨床反応と最もよく関連する;しかし、測定することは典型的に難しいまたは不可能である。血漿中の薬物濃度はしばしば、薬物の薬力学を定義するために、有益かつ実現可能な測定を提供するが、それらは、患者における薬物動態の正確な報告については一貫して提供しない。
【0013】
一般的に、それによって薬物動態が起こる四つのプロセスが存在する:吸収、分布、代謝、および排泄。薬物の吸収は一般的に投与経路(すなわち静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮下(SC)、局所塗布、吸入、経口、直腸内、舌下等);薬物要因(すなわち、脂溶性);と共に宿主要因(すなわち、胃内容排出速度)によって左右される。薬物吸収の変化は、薬物の治療有効性に影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
薬物の分布に関連した要因には、体脂肪、タンパク質結合、および膜が含まれる。脂溶性薬剤は脂肪に溶解する傾向があることから、体脂肪の割合が高い患者では、薬物は非常に高いおそらく毒性のレベルまで蓄積しうる。血清タンパク質に対して高い親和性を有する、利用可能ないくつかの薬剤が存在する。タンパク質結合は、薬物の治療有効性を制限する。血液脳関門のような膜は時に、薬物の適切な分布を難しくする。
【0015】
体内の組織は全て、薬物の代謝に関与しうる。例えば、肝臓、腎臓、肺、皮膚、脳、および腸管は、全て薬物の代謝に関与しうる。生理的に、代謝は活性を増加させうる、活性を減少させうる、または薬物の活性に影響を及ぼさない。薬物の代謝は患者によって異なることから、薬物に関して必要な用量は患者によって異なりうる。
【0016】
薬物排泄経路には、腎臓、肝臓、消化管、肺、汗、涙液、および乳汁等が含まれる。これらのプロセス(吸収、分布、代謝、および排泄)は全て、薬物投与後様々な時間で起こりえて、患者における薬理学的に有効な薬物レベルに影響を及ぼす。このように、薬物の血漿中濃度を評価するために血液試料を分析する現在の方法は、薬物の薬力学を定義するための断片を提供するに過ぎず、患者における薬物動態に関する正確な報告を一貫して提供しない。
【0017】
医学における最近の三つの進歩は、化学および/または生物学的物質を検出する可能性を拡大するために、特に治療薬のモニタリングと共に、疾患の診断および治療に関して、ナノテクノロジー、バイオ検出器(バイオセンサー)、および特定の疾患および/または治療薬に関するバイオマーカーの同定に関して特に適切である。ナノ粒子のようなナノテクノロジーは、生体活性物質(すなわち、DNA、AIDS薬、遺伝子治療、免疫抑制剤、化学療法剤)の送達、ならびに薬物の取り込みおよび分解(すなわち、酵素の封入)のような応用のために用いた場合、多くの長所を提供する。例えば、ナノ粒子は、薬物の標的部位への部位特異的分布を提供すると提唱されている。適当な大きさの粒子が提唱されており、そのような粒子を、選択された組織に送達して、その薬物「ペイロード」を制御して持続的に放出させることができる。
【0018】
科学および商業的に重要な分子および化合物に関するおそらく有効なバイオセンサーとして、最近、アプタマーが同定されている(Brody, E.N. and L. Gold, 「Aptamers as therapeutic and diagnostic agents」, J. Biotechnol, 74(1):5〜13(2000)(非特許文献1)およびBrody et al., 「The use of aptamers in large arrays for molecular diagnostics」. Mol. Diagn., 4(4):381〜8(1999)(非特許文献2)を参照されたい)。アプタマーは、抗体に基づく診断技術より大きい特異性および強さを証明した。その同定および産生が完全に動物および/または培養細胞に依存する抗体とは対照的に、アプタマーの同定および産生は、動物または細胞に関する如何なる要件もなくインビトロで起こる。
【0019】
アプタマーの合成はおそらく、抗体に基づく診断試験よりはるかに安く、再現性がよい。アプタマーは固相化学合成によって産生され、これは産生バッチ間で一貫性がある正確かつ再現性のよいプロセスである。アプタマーはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって大量に産生することができ、一度配列が判明すれば、個々の天然に存在するヌクレオチドおよび/または合成ヌクレオチドから構築することができる。アプタマーは、室温で長期間保存に対して安定であり、変性しても、アプタマーは容易に復元することができ、これは抗体にはない特徴である。さらに、アプタマーは、それらの抗体に基づく診断試験より一次数低いリガンド濃度を測定する能力を有する(1兆分の1または1000兆分の1までも)。アプタマーのこれらの固有の特徴により、診断応用にとってそれらは魅力的となる。
【0020】
多くの「分子ビーコン」(蛍光化合物のような)を、標的化学または生物学的物質の有無のシグナル伝達および定量するための手段を提供するために、アプタマーに結合させることができる。例えば、コカインに対して特異的なそのようなシグナル伝達を有するアプタマーが合成されている(Stojanovic, M.N. et al., 「Aptamer-based folding fluorescent sensor for cocaine」, J. Am. Chem. Soc., 123(21):4928〜31(2001)(非特許文献3))。コカインがアプタマーに可逆的に結合すると消光する蛍光ビーコンを、存在するコカインの濃度を定量するために光検出器と共に用いる。アプタマーに基づくバイオセンサーは、繰り返し用いることができ、1回限り用いることができる抗体に基づく試験とは対照的である。
【0021】
ビーコンとして特に重要であるのは、蛍光ポリマー(AFP)を増幅することである。TNTおよびDNTに対して高い特異性を有するAFPが開発されている。TNTおよびDNTに対して高い特異性を有するAFP技術に基づく検出器も同様に、静脈内麻酔薬であるプロポフォルを、極めて低濃度で検出できることが認められている。AFPおよびアプタマー技術の組み合わせは、高い特異性で微細な濃度の化合物を検出することができる強い、再利用可能なバイオセンサーの有望性を有する。
【0022】
体内における薬物の放出を制御、調節、標的、およびモニターすることの必要性は、医科学によっても認識されている。先に記述したように、薬物代謝のメカニズムは極めて複雑であり、タンパク質の競合的結合、および赤血球と他の分子との競合的結合;酵素活性、特に肝臓の酵素活性;タンパク質、および赤血球濃度を含む多数の要因;ならびに無数の他の要因によって影響を受ける。このように、目標は、以下を提供することであった:1)より少ない薬物投与回数、2)全身循環または特異的標的臓器部位における薬物の一定かつ持続的な治療レベル、3)望ましくない副作用の減少、ならびに4)望ましい治療利益を実現するために必要な量および投与濃度の減少。
【0023】
過去10年間に、非常に多様な薬物送達系が設計および評価されており、これには例えば、1)タンパク質、多糖類、合成ポリマー、赤血球、DNA、および封入された薬物を含むリポソーム/ミクロスフェアに基づく薬物担体が含まれる。しかし、特定の医学状態をユーザーにリアルタイムで検出および通知することができると共に、簡便な同時の治療および医学状態の治療のモニタリングを行うことができる、利用できる技術は非常に少ない。
【0024】
したがって、対応する疾患の治療および治療のモニタリングを同時に行いながら、疾患に関連した標的化学化合物に関して正確かつ有効に検出/スクリーニングするシステムおよび方法であって、有意な費用および時間の利益を提供する、医療を拡大させると共に、患者の生活の質を改善するであろうシステムおよび方法を開発することが望ましい。同様に、薬物の治療有効性をモニターするために、遠隔位置および/または非検査の状況で薬物濃度レベルを絶えずモニターすることができる(薬物動態を評価するために)薬物治療およびモニタリングシステムが必要である。
【0025】
【非特許文献1】Brody, E.N. and L. Gold, 「Aptamers as therapeutic and diagnostic agents」, J. Biotechnol, 74(1):5〜13(2000)
【非特許文献2】Brody et al., 「The use of aptamers in large arrays for molecular diagnostics」. Mol. Diagn., 4(4):381〜8(1999)
【非特許文献3】Stojanovic, M.N. et al., 「Aptamer-based folding fluorescent sensor for cocaine」, J. Am. Chem. Soc., 123(21):4928〜31(2001)
【発明の開示】
【0026】
発明の簡単な説明
本発明は、疾患のリアルタイムの同時診断および治療と共に、治療のリアルタイムモニタリングのための非侵襲的システムおよび方法を提供する。特に、本発明は、標的化合物が疾患または治療的治療のいずれかに関連する、液体組成物(ガス様および液体組成物のような)における標的化合物を検出するセンサーを利用する。
【0027】
疾患の診断に関して、標的化合物(疾患の診断のための標的化合物を本明細書において以降、「代理マーカー」と呼ぶ)を放出するナノ構造アセンブリが患者に提供される。本発明のナノ構造アセンブリは、患者の体内で、対象疾患に関連する特異的化学実体(SCE)またはSCEの組み合わせの存在に反応して代理マーカーを放出するように設計される。代理マーカーは、好ましくは、SCEが患者の体内に存在することを示すために、およびSCEに関連した疾患の診断を可能にするために、生体液(呼気、尿、血液等のような)において検出可能である。
【0028】
一つの態様において、異なるタイプの血球を区別することができる、本発明のナノ構造アセンブリが設計される。代理マーカーは、特定の血液タイプの存在および/または量を通知するために、特定のタイプの血球の存在下でナノ構造アセンブリから放出される。この情報を用いて、ユーザーは、患者における異なる血球の濃度を計算することができる。
【0029】
通知/診断を提供する他に、本発明のシステムおよび方法はまた、診断された疾患の実質的に同時の治療を可能にする。一つの態様において、ナノ構造アセンブリが患者に提供され、特定の疾患に対する治療が、疾患に関連したSCEの検出に基づいて局所送達されて、実質的に同時の診断および治療を可能にする。
【0030】
操作において、患者に、本発明のナノ構造アセンブリを含む組成物を投与して、その後、患者の体液試料を採取して本発明のセンサーを用いて分析する。センサーからの結果を、医学疾患のリアルタイム診断において用いるためにユーザーに伝達する。リアルタイムでの同時診断および治療の場合、本発明のナノ構造アセンブリにはさらに、疾患に関連したSCEの検出の際に放出される疾患治療手段が含まれる。
【0031】
好ましい態様において、本発明のナノ構造アセンブリは、以下の成分を含むナノ粒子からなる:(a)SCEを検出するための手段;および(b)代理マーカー。疾患の同時診断および治療の場合、ナノ粒子は好ましくは、さらなる成分、すなわち(c)SCEに関連した疾患を治療するための「ペイロード」を含む。これらの成分の如何なる組み合わせも、ナノ粒子の任意の表面に結合させることができる。
【0032】
本発明のさらなる態様は、疾患の治療のリアルタイムモニタリングを可能にする。治療薬の血中濃度は、呼気における標的化合物(治療薬モニタリングのための標的化合物は、本明細書において「治療薬マーカー」と呼ばれている)を検出、定量、および/または傾向を調べることによってモニターされ、治療薬マーカーは、治療薬に関連する。呼気中の成分を分析するセンサーは、好ましくは、治療薬マーカーを検出するために利用される。
【0033】
関連する態様において、治療薬は、ナノ構造アセンブリによって、または他の投与経路を用いることによって、患者に投与される。治療薬の投与後、本発明のセンサーによって呼気中に検出可能である治療薬マーカーが患者において示される。本発明の特定の態様において、治療薬マーカーは、呼気中に検出可能である治療薬自身またはその代謝物である。他の態様において、治療薬マーカーは、患者に治療薬と共に同時投与される化合物である。
【0034】
本明細書において企図されるように、治療薬の血中濃度および治療薬マーカーの呼気中の濃度は相関しうる。例えば、特定の態様において、治療薬の血中濃度と治療薬マーカーの呼気中濃度とは実質的に比例する。呼気中の治療薬マーカーの濃度を分析するために本発明のセンサーを用いることによって、本発明は、治療薬の血中濃度の非侵襲的で持続的なモニタリングを可能にする。
【0035】
本発明の一つの方法には、疾患を治療するために患者に少なくとも一つの治療薬を投与する段階、およびその後、患者の呼気中の一つまたはそれ以上の治療薬マーカーの濃度を測定する段階が含まれる。次に、これらの測定されるマーカーを用いて、患者の血液中の治療薬濃度を定量すると共に、送達された薬物の傾向を調べ、薬物の薬力学/薬物動態を最終的に決定することができる。
【0036】
本発明は、ポイントオブケア(POC)アプローチを用いて、簡便な非侵襲的のリアルタイムで広範な疾患状態に関する疾患および/または治療的介入の進行を診断、通知、および追跡するために用いることができる。本発明は、臨床の状況(ヘルスケア提供場所のような)または患者に基づく場所(患者の家のような)のいずれかにおいて用いることができる。
【0037】
特定の態様において、本発明のシステムおよび方法には、マーカー濃度(代理マーカーまたは治療薬物濃度マーカーのような)を追跡する、ならびに必要な出力、制御、および警報を提供することができる報告システムが含まれる。追跡システムは、遠隔操作または近位でマーカー濃度を追跡することができる。
【0038】
このように、本発明は、非侵襲的にリアルタイムで以下の利益を可能にすることによって、ヘルスケアの質を改善するための新規システムおよび方法を提供する:1)疾患の早期検出および疾患を発症するリスクを有する患者の同定を可能にする、2)疾患の予後の指標を提供する、3)治療の有効性および薬物コンプライアンスの正確なモニタリングを可能にする、4)疾患の再発の検出を可能にする;および5)疾患、障害、または病態の集中的な治療を可能にする。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、効率的で正確な、そしてリアルタイムでの疾患の同定、通知、および/または処置と共に、送達された治療のリアルタイムでのポイントオブケアモニタリングに向けられる。本発明のシステムおよび方法は、標的化合物の存在および/または濃度を評価するために体液試料にセンサーを適用する。本発明の標的化合物は、好ましくは治療薬マーカーの代理マーカーである。
【0040】
特定の態様において、ナノ構造アセンブリが提供される。ナノ構造アセンブリには、ナノ粒子、疾患に関連した標的特異的化学実体(SCE)を検出する手段、および体液中で検出可能である代理マーカーが含まれる。関連する態様において、ナノ構造アセンブリにはさらに、同定された疾患の局所治療を提供するためにペイロードが含まれる。
【0041】
対象疾患を診断するために、ナノ構造アセンブリを患者に投与する。その後、体液試料を患者から採取して、これにセンサー技術を応用して代理マーカーの有無を評価する。代理マーカーは、ナノ構造アセンブリが標的SCEの存在下である場合に患者に放出される。詳しく述べると、SCE検出器と標的SCEとの生物活性相互作用が、ナノ粒子からの代理マーカーの放出を誘導する。都合がよいことに、放出された代理マーカー濃度は、体液試料に存在するSCE量に相関することができ、これを当技術分野で公知の定量的センサー技術を用いて測定することができる。好ましい態様において、放出された代理マーカー濃度は、体液試料に存在するSCE量と比例する。
【0042】
特定の態様において、実質的に同時および局所治療が疾患の診断と共に送達される。これらの態様において、ナノ構造アセンブリは、ナノ粒子、SCE検出手段、代理マーカー、およびペイロードを含む。操作において、これらのナノ構造アセンブリは患者に投与される。代理マーカーとペイロードはいずれも、ナノ構造アセンブリが標的SCEの存在下である場合に患者に放出される。その後、体液試料を患者から採取して、センサー技術を適用して代理マーカーの存在を検出する。体液試料における代理マーカーの検出および/または定量によって、ユーザーは、SCEに関連した疾患を診断できるのみならず、疾患の治療が送達されたことを確認することができる。
【0043】
本発明はまた、血液中の治療薬濃度の非侵襲的モニタリングのためのシステムおよび方法を提供する。好ましくは、対象疾患を治療するために治療薬の患者への投与後、患者の呼気を治療薬マーカーの存在および/または量に関して分析する。したがって、本発明によってユーザーは、毒性のリスクを最小限にしながら、治療薬による最大限の利益を患者に提供することができる。
【0044】
定義
特に明記されていなければ、明細書および請求の範囲において用いられる以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0045】
「特異的化学実体」または「SCE」という用語は、それによって疾患を診断するために、および疾患の影響または進行を測定または示すためにそれらが有用となる特定の分子特性を有する、体内における天然に存在する、または合成化合物を指す。SCEという用語はまた、分析技法において測定することができる任意の物質(分析物、バイオマーカー、および化学および/または生物学的物質)を指すが、これらに限定されない。ヒトの体液(すなわち、呼気、血液、または尿)およびSCEに関連したそれぞれの診断疾患において認められる一般的な特異的化学実体には、アセトアルデヒド(起源:エタノール;診断:中毒)、アセトン(起源:アセトアセテート;診断:食事;ケト原性/糖尿病)、アンモニア(起源:アミノ酸の脱アミノ化;診断:尿毒症および肝疾患)、CO(一酸化炭素)(起源:CH2Cl2、%COHの上昇;診断:室内空気の汚染)、クロロホルム(起源:ハロゲン化化合物)、ジクロロベンゼン(起源:ハロゲン化化合物)、ジエチルアミン(起源:コリン;診断:腸管細菌増殖)、H(水素)(起源:腸管;診断:乳糖不耐性)、イソプレン(起源:脂肪酸;診断:代謝ストレス)、メタンチオール(起源:メチオニン;診断:腸内細菌の過増殖)、メチルエチルケトン(起源:脂肪酸;診断:室内空気の汚染/食事)、O-トルイジン(起源:癌腫代謝物;診断:気管支原性癌腫)、ペンタンスルフィドおよびスルフィド(起源:脂質過酸化;診断:心筋梗塞)、H2S(起源:代謝;診断:歯周病/排卵)、MeS(起源:代謝;診断:肝硬変)、Me2S(起源:感染症;診断:塹壕口内炎)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0046】
「バイオセンサー」という用語は、疾患の様々なタイプのSCEに関する非常に特異的かつ極めて感度のよい検出器として、天然に存在するおよび/または合成化合物を用いることに関する。本発明の特定の態様において、抗体のような天然に存在する化合物を用いて、診断アッセイにおいて標的SCEに関する分子認識を提供する。本発明の他の態様は、標的SCEの検出を促進するために、細胞におけるDNA、RNA、およびタンパク質合成に関する天然に存在するメカニズムを模倣するように製造された合成化合物を用いる。本発明のさらなる態様は、体液試料における代理マーカーまたは治療薬マーカーのような標的化合物を認識するために、バイオセンサーを用いる。
【0047】
本明細書において用いられるように、「アプタマー」という用語は、標的化合物(治療薬マーカー、代理マーカー、または対象SCE)に対して特異的作用を有する天然に存在しないオリゴヌクレオチドを指す。特異的作用には、標的化合物または標的化合物の機能的活性を改変/変化させるように、標的化合物に結合する、標的化合物を触媒的に変化させる、および標的化合物と反応することが含まれるがそれらに限定されるわけではない。本発明のアプタマーは、好ましくはSCEまたはSCEの機能的活性を改変/変化させるように、標的SCEに特異的に結合するおよび/または標的SCEと反応する。
【0048】
アプタマーには、核酸の候補混合物から同定された核酸が含まれる。好ましい態様において、アプタマーには、SELEX法によって単離された核酸リガンドと実質的に相同である核酸配列が含まれる。実質的に相同とは、主な配列相同性が70%を超える、最も好ましくは80%を超える程度であることを意味する。
【0049】
本明細書において用いられるように、「SELEX(商標)」方法論は、望ましい作用で標的SCEと相互作用する、例えばタンパク質に結合する選択された核酸リガンドと、選択された核酸の増幅との組み合わせを含む。選択/増幅段階の任意の繰り返しによって、非常に多数の核酸を含むプールから、標的SCEと最も強く相互作用する一つまたは少数の核酸を選択することができる。選択/増幅技法の繰り返しは、選択された目標に達するまで継続される。SELEX方法論は、以下の米国特許および特許出願に記述されている:米国特許出願第07/536,428号および米国特許第5,475,096号および第5,270,163号。
【0050】
本明細書において用いられる「指標アプタマー」という用語は、米国特許第6,399,302号および第5,989,823号に記述されるような、それに分子ビーコンが結合しているアプタマーを指す。
【0051】
本明細書において用いられる「分子ビーコン」という用語は、予め選択された条件で検出可能となって、バイオセンサーに結合することができる分子または一群の分子(すなわち、エネルギー転移複合体または発色団とハイブリダイズした核酸分子)を指す。例えば、本発明の態様には、(a)標的化合物(治療または代理マーカーのような)またはSCEがアプタマーに可逆的に結合すると消光する、および(b)存在する標的化合物またはSCE濃度を定量するために光検出器によって検出可能である、アプタマー結合蛍光ビーコンが含まれる。
【0052】
本明細書において用いられる「疾患」という用語は、そのいずれか一つまたは組み合わせがヘルスケア提供者に対して重要である、病態(薬物乱用)、疾患状態(すなわち、感染疾患)、障害(すなわち、神経障害)、または患者に起こる正常もしくは病的プロセスを含む。
【0053】
本明細書において用いられる「体液」という用語は、患者から得た分子の混合物を指す。体液には、呼気、全血、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄液、羊水、腺液、喀痰、便、汗、粘液、および脳脊髄液が含まれるがそれらに限定されるわけではない。体液にはまた、便、組織、および生検試料のような、ホモジナイズした固体材料を含む、先の溶液または混合物の全ての実験的分離分画が含まれる。
【0054】
本明細書において用いられる「SCE検出器」または「SCE検出手段」という用語は、様々なタイプのSCEの非常に特異的かつ感度のよい検出器として、天然に存在するおよび/または合成化合物のようなバイオセンサーを用いることに関する。本発明のSCE検出器には、そのいずれもがSCEに関する分子認識を提供することができる抗体、タンパク質、受容体リガンド、および受容体タンパク質のような天然に存在する化合物が含まれうる。または、本発明は、細胞におけるDNA、RNA、およびタンパク質合成の天然に存在するメカニズムを模倣してSCE選択を促進することができるアプタマーのような合成化合物を用いることができる。
【0055】
本明細書において用いられる「代理マーカー」または「治療薬マーカー」という用語は、患者に対して無害であって、その物理的または化学的特性によって検出可能である分子または化合物を指す。そのため、本発明の代理および/または治療薬マーカーは、フローサイトメーター、半導体ガスセンサー;質量分析計;赤外線(IR)、紫外線(UV)、可視、または蛍光分光計;ガスクロマトグラフィー、半導体ポリマーガスセンサー技術;表面音波ガスセンサー技術;イムノアッセイ技術、および増幅蛍光ポリマー(AFP)センサー技術が含まれるがそれらに限定されるわけではない当技術分野で公知の多くのセンサー技術によって検出可能である。本発明の代理または治療薬マーカーには、GRAS(「一般的に安全と認識される」)と呼ばれる米国政府によって承認された製品と共に、本発明のシステムおよび方法に従って検出される適した毒性学的および物理化学的特性を有するが公式にはGRASと呼ばれていない他の化合物が含まれる。好ましい態様において、代理または治療薬マーカーは、体液、特に血液および息において検出可能な揮発性マーカーである。
【0056】
本明細書において用いられる「患者」は、本発明に従う組成物による治療が提供される、哺乳類を含む生物を記述する。開示の治療法によって利益が得られる哺乳類種には、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル;およびイヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターのような家畜動物(例えば、ペット)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0057】
本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される担体」という用語は、組成物の他の成分と一般的に適合性であって、患者に対して有害ではなく、生物学的またはそれ以外でも有害でない、薬学的組成物を調製するために有用である担体を意味し、これにはヒトでの薬学的使用と共に獣医学での使用に関して許容される担体が含まれる。明細書および請求の範囲において用いられる「薬学的に許容される担体」には、一つおよび一つより多いそのような担体の双方が含まれる。
【0058】
本明細書において用いられるように、「生物学的分解性の」物質は、生体物質によって、または生物内での天然の活性によって分解されうる物質を指す。企図される生体分解性のポリマーの例には、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、およびポリヒドロキシブトレートのようなポリエステル;ポリ(無水アジピン酸)およびポリ(無水マレイン酸)のようなポリアンヒドリド;ポリジオキサノン;ポリアミン;ポリアミド;ポリウレタン;ポリエステルアミド;ポリオルトエステル;ポリアセタール;ポリケタール;ポリカーボネート;ポリオルトカーボネート;ポリホスファゼン;ポリ(リンゴ酸);ポリ(アミノ酸);ポリビニルピロリドン;ポリ(メチルビニルエーテル);ポリ(シュウ酸アルキレン);ポリ(コハク酸アルキレン);ポリヒドロキシセルロース;キチン;キトサン;ならびにそのコポリマーおよび混合物、が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0059】
本明細書において用いられるように、「生体適合性」の物質には、生きている生物に対して適合性であって、有意な毒性作用を示さない物質が含まれる。企図される生体適合性のポリマーの例には、PLG(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド))、ポリ(エチレングリコール)、およびポリ(エチレンオキシド)とポリ(L-乳酸)またはポリ(β-ベンジル-L-アスパルテート)とのコポリマーが含まれる。好ましい態様において、生体適合性には、免疫原性適合性が含まれる。免疫原性適合物質には、体内に導入された場合に、液性または細胞性免疫を有意に誘発しない物質が含まれうる。
【0060】
本明細書において用いられるように、「治療する」または「治療」には:(1)疾患を予防すること(すなわち、疾患に対して曝露されているもしくは素因を有するが、まだ疾患の症状を経験していないもしくは示していない哺乳類における疾患の臨床症状の発症を阻害すること);(2)疾患を阻害すること(すなわち、病態の発症もしくはその臨床症状を停止させること)、または(3)疾患を軽減すること(すなわち、疾患もしくはその臨床症状の退縮を引き起こすこと)が含まれる。
【0061】
本明細書において用いられる「ペイロード」または「ペイロード材料」という用語は、疾患の治療のための治療薬を指す。好ましくは、本発明のペイロードは、SCEに関連した疾患を治療する治療薬である。
【0062】
本明細書において用いられるように、「治療薬」または「薬物」という用語は、疾患の診断および/または治療において用いられる物質を指す。特定の態様において、患者の血流中の治療薬の濃度は、治療薬レベルが臨床有効範囲に入っていることを確保するために呼気分析を通してモニターされる。他の態様において、患者の血流中の治療薬濃度は、個々の患者の薬物の薬力学および/または薬物動態を評価するために、呼気分析によってモニターする。
【0063】
本明細書において用いられる「治療的有効量」という用語は、疾患を治療するために哺乳類に投与した場合に、疾患のそのような治療を行うために十分である化合物の量を意味する。「治療的有効量」は、投薬、治療される疾患状態、治療される疾患の重症度、患者の年齢および相対的健康、投与経路および剤形、主治医の判断、ならびに他の要因に応じて変化するであろう。
【0064】
本明細書において用いられる「薬力学」という用語は、患者の体の構成成分と治療薬との相互作用(生化学および物理的)と共に、患者の体に及ぼす薬物作用メカニズム(体に及ぼす薬物作用)を指す。
【0065】
本明細書において用いられるように、「薬物動態」という用語は、正常な生理プロセスと治療薬との相互作用(すなわち、薬物に及ぼす体の作用)の経時的な数学的特徴付けを指す。特定の生理的プロセス(吸収、分布、代謝、および排泄)は、患者における所望の治療効果を提供する薬物の能力に影響を及ぼす。薬物の薬物動態を知ることは、薬物の血流中濃度を解釈する場合に役立ち、薬理学的に有効な薬物用量を決定するために有用である。
【0066】
本明細書において用いられる「同時」投与は、本発明の任意の目的を達成するために(疾患の診断または血流中の治療薬レベルのモニタリングのような)、本発明のシステムおよび方法によって用いるために適したマーカー(代理マーカーまたは治療薬マーカーのような)の投与を指す。例として、治療薬マーカーは、薬学的組成物のように、治療薬と混合して提供することができる;またはマーカーと治療薬とを、例えば連続して、同時に、もしくは異なる時間に投与する異なる薬学的組成物のような、異なる化合物として患者に投与することができる。好ましくは、治療薬マーカーと治療薬とを個別に投与する場合、それらは、呼気中のマーカー濃度が血流中の治療薬濃度の正確な指標となるように、互いに対して十分な期間内に投与される。
【0067】
ナノ粒子
ナノ構造アセンブリは、対象疾患の、時期を得た有効な検出、通知、および治療を提供する。そのようなアセンブリは、体内での選択された部位への検出マーカーおよび/または生物活性治療物質の標的化送達および放出のメカニズムを提供する、ナノ粒子に基づく。
【0068】
本発明に従って、ナノ粒子は、広範囲の大きさおよび形状で産生され、インビボでの投与に関して最適化された、広範囲の材料、または材料の組み合わせからなる。企図される形状には、球形、楕円形、立方体、円柱形、四面体、多面体、不規則なプリズム状、正二十面体、および立方八面体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。インビボでの使用が企図されるナノ粒子は、任意の寸法であるが、好ましくは血流を塞ぐことなく、微小血管レベルで適切な分布が確保されるように最大寸法が500 nm未満である。より好ましくは、本発明のナノ粒子は最大寸法が100〜150 nm未満である。ナノ粒子の「最大寸法」は、ナノ粒子の任意の2点間の最大距離である。好ましい態様において、ナノ粒子は、柱状体の形であり(「ナノチューブ」として知られる)、これは中空または固体のいずれかであり、これには開放末端または一つもしくは双方の閉鎖末端のいずれかが含まれる。
【0069】
本発明に従って、ナノ粒子アセンブリは、生体分解性の物質で構成される。他の態様において、本発明のナノ粒子アセンブリは、生体適合性の物質で構成される。
【0070】
ナノ粒子の調製法は、当技術分野で周知である。例えば、周知のStoberプロセスを用いる単分散ゾル-ゲルシリカナノスフェアの調製は、Vacassy, R. et al., 「Synthesis of Microporous Silica Spheres.」J. Colloids and Interface Science, 227, 302(2000)に記述されている。
【0071】
本発明に従うナノ粒子は、単一の材料または材料の組み合わせから調製することができる。例えば、ナノチューブは、ポリマー、半導体、炭素、またはLi+インターカレーション材料が含まれるがそれらに限定されるわけではない材料の一つまたは組み合わせのいずれかから調製することができる。金属ナノ粒子には、金または銀で構成される粒子が含まれる。半導体ナノ粒子には、シリコンまたはゲルマニウム製の粒子が含まれる。ポリマーナノ粒子には、生体適合性または生体分解性ポリマー製の粒子が含まれる。多様な材料または材料の組み合わせからナノ粒子を作製できることによって、免疫原性適合性および/または生体分解性を含む生物学的適合性のような所望の生化学特性を有するナノ粒子を作製することができる。比較すると、ウイルスベクターのような特定の生物学的送達システムは、有意な免疫原性現象を引き起こしうる。
【0072】
本発明のナノ粒子は、鋳型合成法を用いて合成することができる。例えば、ナノ粒子は、ガラス(Tonucci, R.J., Science 258, 783(1992))、ゼオライト(Beck, J.S. et al., J. Am. Chem. Soc., 114, 10834(1992))、および多様な他の材料(Ozin, G.A., Adv. Mater. 4, 612, 1992)から調製した鋳型を用いて合成することができる。または、ナノ粒子は、Wang, Z.L., 「Structural Analysis of Self-Assembling Nanocrystal Superlattices」, Adv. Mater., 10(1):13〜30(1998)に記述されているように、自己構築プロセスを用いて調製することができる。
【0073】
一つの態様において、本発明のナノ構造アセンブリは、表面にSCE-検出器を結合させるために官能化された一つまたはそれ以上の表面を有するナノ粒子を含む。そのような「官能化」ナノ粒子は、代理マーカー(およびペイロード、利用可能な場合)の定方向(「ベクタリング」とも呼ばれる)送達および/または調節された放出を可能にするように改変された少なくとも一つの表面を有する。特定の態様において、内部空隙を有するナノ粒子が形成される。ナノ粒子の内および/または外表面に異なる化学および/または生化学官能基を適用して、SCE検出器、代理マーカー、および/またはペイロードをナノ粒子表面に結合させることができる。
【0074】
もう一つの態様において、ナノ構造アセンブリは、SCE検出器がそれに結合している代理マーカー、ペイロード、および検出可能な末端キャップを含むように内部空隙が形成されているナノ粒子を含む。標的SCEの存在下で、SCE-検出器は、ナノ粒子から末端キャップを機械的に脱離させて、センサー技術によって分析するために代理マーカーを放出する。同時に、ペイロードは疾患の治療のために放出される。
【0075】
好ましい態様において、ナノ粒子は、中空であって、第一の開放末端および第二の閉鎖末端を有するナノチューブの形である。代理マーカーおよびペイロードは、ナノチューブの中空の内部に封入される。第一の開放末端は、ナノチューブの中空の内部に存在する代理マーカー(およびペイロード、利用できる場合)の意図しない放出を防止するアプタマー結合末端キャップによってブロックされる。標的SCEの存在下で、アプタマーはSCEに結合して、末端キャップをナノチューブから解離させて、代理マーカー(およびペイロード、利用できる場合)を放出させる。
【0076】
末端キャップに結合したアプタマーによって標的SCEが検出されると、代理マーカーおよびペイロードは、ナノ粒子のキャップが外れることによって放出される。キャップが外れるメカニズムは、アクチンに基づくシステム(Dickinson, R.B. and D.L. Purich, 「Clamped filament elongation model for actin-based motors」, Biophys. J., 82:605〜617(2002))のような、しかしこれに限定されないエネルギーを有する生体分子モーターの利用を必要としてもよい。ナノ粒子のキャップが外れた後、放出された代理マーカーを、ガスクロマトグラフィー、電子ノーズ(electronic nose)、代理マーカーの赤外線(IF)、紫外線(UV)、可視吸収もしくは蛍光を検出するための分光光度計、または質量分析計が含まれるがそれらに限定されるわけではない当技術分野で公知のセンサー技術を用いて検出することができる。さらに、ペイロードの放出によって、所望の臓器または組織部位で治療が局所放出されていることが確実となり、それによって所望の治療活性の増強、および用いる投与量の減少を可能にする。
【0077】
ナノチューブ
多くの特許および刊行物が、チューブの形のナノ粒子(ナノチューブ)について記述している。例えば、Ohshimaらに対する米国特許第5,482,601号は、カーボンナノチューブの作成法を記述している。ナノチューブを作製および使用するための他の方法には、Zettlらの米国特許第6,063,243号のノンカーボンナノチューブおよびFisherらの米国特許第6,203,814号の官能化ナノチューブが含まれる。
【0078】
ナノチューブの場合、Charles R. Martin, 「Nanomaterials : A Membrane-Based Synthetic Approach」, Science 266:1961〜1966(1994)に記述されるように、合成は、電気化学または化学的方法を用いて、微小多孔性メンブレンまたは他の固体のメンブレン孔において起こる。用いるメンブレンおよび合成法に応じて、ナノチューブは固体または中空となる可能性がある。鋳型メンブレンの孔の直径は、5 nmもの小さい直径から100 μmもの大きい直径を有するナノチューブを産生するように変化させることができる。同様に、鋳型メンブレンの厚さは、5 nm〜100 μmの長さを有するナノチューブを生成するように変化させることができる。好ましくは、ナノチューブがインビボでの使用のために企図される場合、ナノチューブの長さは500 μm未満で、直径は200 nm未満である。インビボで用いるために特に好ましいナノチューブは、最大寸法100 nm未満である。
【0079】
「トラック-エッチ」ポリマーまたは多孔性アルミナメンブレンを、ナノチューブの調製において用いることができる。ポリカーボネートおよびポリエステルから調製されたトラック-エッチメンブレンは、Osmonics(Minnetonka, MN)およびWhatman(Maidstone, Kent UK)のような供給元から入手可能である。トラック-エッチメンブレンは、メンブレンの厚さ全体に及ぶ均一な直径の無作為に分布した円柱状の孔を含む。10 nmもの小さい孔の直径が、109個/cm2までの孔密度で市販されている。
【0080】
Whatman(Maidstone, Kent UK)から市販されている多孔性のアルミナメンブレンは、アルミニウム金属から電子的に調製される。1011個/cm2もの高い孔密度を有する、直径5 nmもの小さい孔を得ることができる。厚さ100 nm〜100 μmのメンブレンを調製することができる。
【0081】
ナノチューブは、ナノチューブの両末端が開放しているように合成することができる。または、一つまたは二つの開放末端を有するナノチューブを合成することができる。固体ナノチューブも同様に合成することができる。
【0082】
一つの閉鎖末端を有するナノチューブは、上記のように鋳型合成によって生成することができる。例えば、一つの閉鎖末端を有するナノチューブは、アルミナ鋳型における孔を、基質アルミニウム表面からアルミナ鋳型メンブレンを除去する前に、非多孔性のアルミナ障壁層の中で終了させることによって調製することができる(Hornyak, G.L., et al., 「Fabrication, Characterization, and Optical Properties of Gold-Nanoparticle/Porous-Almina Composites : The Non-Scattering Maxwell-Garnett Limit」, J. Phys. Chem. B., 101:1548〜1555(1997))。一般的に、非多孔性アルミナ障壁層は、アルミナメンブレンがアルミニウム表面から剥がれ落ちる際に除去される。しかし、鋳型合成がアルミニウムからアルミナの除去前に終了すれば、ナノチューブの底は閉鎖される。アルミナを溶解させると、一つの末端が閉鎖で一つの末端が開放であるナノチューブが放出される。
【0083】
ナノチューブの開放を閉鎖するために用いられる適した末端キャップには、例えばナノ粒子の開放末端を閉鎖するためにナノ粒子の内部直径よりわずかに大きい直径を有するナノチューブが含まれる。末端キャップは任意の物質片となり、ナノチューブと化学または物理的に類似である(または異なる)材料で構成することができる。末端のキャップは、最大寸法が100 μm未満である粒子となりうる。好ましい態様において、末端キャップは、球形または球状形である。しかし、楕円、円柱、および不規則形状を含む他の形状の末端キャップも同様に用いることができる。
【0084】
適した末端キャップを、共有結合によってナノチューブに結合させることができる。例えば、シリカナノチューブと粒子とをジスルフィド結合によって結合させることができる。最初、シリカナノチューブの末端の表面を-SHリンカーによって官能化させる。これは、ナノチューブがまだ鋳型メンブレンの孔に埋もれているあいだに行うことができる。これによって、ナノチューブの外表面の化学特性を変化させることなく、末端表面の活性化を行うことができる。
【0085】
必要であれば、ナノチューブの内表面を、例えば(Me-O)3-(CH2)3-OHのようなシラン基によって保護する。保護段階の後、ナノチューブの口でのシリカ表面層を除去して新たなシリカを露出する。新たに露出したシリカを、(Me-O)3-Si-(CH2)3-SHのようなシランと反応させて、必須の-SHリンカーをナノチューブの口に結合させる。このシランにおけるアルキル鎖の長さは、-SHリンカーをナノチューブの口から任意の所望の距離離れて配置するように変更することができる。次に、これらの-SH官能基を、ナノチューブの末端で活性化ジスルフィド結合を有するナノチューブを得るためにピリジンジスルフィドと反応させる。
【0086】
末端キャップの表面を、ナノチューブの口において用いられるシランを含む同じ-SH含有シランによって官能化する。したがって、その口で活性化ジスルフィドを有し、その表面で-SH基を有する末端キャップを有するナノチューブが、ジスルフィド結合形成による結合のために利用可能である。
【0087】
他のタイプの共有結合、例えばアミドおよびエステル結合を用いて、ナノチューブに末端キャップを結合させることができる。シロキサンに基づく結合も同様に用いることができる。これは、シリカ表面上のシラノール部位が、シロキサンと自然に反応して酸素-シリコン共有結合を形成することから、キャップがシリカで構成されている場合には特に有用であろう。金属に基づくナノチューブまたは末端キャップの場合、チオールリンカーを結合のために用いることができる。例えば、分子(Me-O)3-Si-(CH2)3-SHをシリカナノチューブに結合させることができ、この分子の-SH末端を用いて、金ナノ粒子を末端キャップとして結合させることができるであろう。そのようなチオールが金表面と自然にAs-S結合を形成することは周知である。
【0088】
本発明の企図される末端キャップには、Miller, S.A. and C.R., Martin, 「Electroosmotic Flow in Carbon Nanotube Membranes」, J. Am. Chem. Soc., 123(49):12335〜12342(2001)に記述されるように、ナノチューブとナノ粒子のあいだにジスルフィド結合が形成された場合にナノチューブの口全体が塞がれるように、ナノチューブの口の中に電気泳動によって配置することができるナノ粒子が含まれる。
【0089】
例えば、ナノチューブを含むメンブレンをU-チューブセルに入れて、白金電極をメンブレンのいずれかの側に緩衝液溶液に浸した。-SH官能化末端キャップを陽極のハーフセルに加える。末端キャップ上の-SH基の小さい部分が脱プロトン化されるように、緩衝液溶液をpH 7に維持する。これらの陰性荷電粒子を、白金電極を用いることによって電気泳動によってナノチューブの口に押し出してメンブレンの中に一定電流を流す。したがって、電気泳動力によって末端キャップはナノチューブの口に落ち着き、そこでジスルフィド結合の形成が起こるであろう。
【0090】
電気泳動アセンブリ法の代わりに、-SH標識末端キャップを、活性化ジスルフィド標識ナノチューブと共に溶液中に懸垂することができる。この場合、ナノ粒子のキャップは自然に自己構築してナノチューブを形成する。金ナノスフェアおよびラテックス粒子の鋳型調製ポリマーおよび金属ナノワイヤへの自己構築は、Sapp, S.A. et al., 「Using Template-Synthesized Micro- and Nanowires as Building Blocks for Self-Assembly of Supramolecular Architectures」, Chem. Mater., 11:1183〜1185(1999)によって記述されている。
【0091】
-SH結合の他に、他の共有結合法を用いてナノチューブと末端キャップとを結合させることができる。非共有結合法を用いることができる。これらには、例えばDNAハイブリダイゼーション(Mirkin, C.A.,「Programming the Self-Assembly of Two and Three-Dimensional Architectures with DNA and Nanoscale Inorganic Building Blocks」, Inorg, Chem., 39:2258〜2272(2000))、ビオチン/アビジン相互作用(Connolly, S. and D. Fitzmaurice,「Programmed Assembly of Gold Nanocrystals in Aqueous Solution」, Adv. Mater., 11:1202〜1205(1999))、および抗原/抗体相互作用(Shenton, W. et al.,「Directed Self-Assembly of Nanoparticles into Macroscopic Materials Using Antibody-Antigen Recognition」, Adv. Mater., 11:449(1999))が含まれる。
【0092】
好ましいナノチューブは、シリカまたはポリマーを含むナノチューブである。シリカナノチューブは、Lakshmi, B.B. et al., 「Sol-Gel Template Synthesis of Semiconductor Oxide Micro-and Nanostructures」Chem. Mater., 9:2544〜2550(1997);Lakshmi, B.B. et al., 「Sol-Gel Template Synthesis of Semiconductor Nanostructures」Chem. Mater., 9:857〜862(1997)に記述されているように、ゾルゲル鋳型合成を用いて調製することができる。鋳型メンブレンを、ゾルが孔を満たすように、標準的なテトラエチルオルトシリケートに浸す。望ましいemersion時間の後、メンブレンを除去して、空気中で乾燥させ、150℃で硬化させた。これによって、メンブレンの双方の表面上でメンブレンプラスシリカ表面被膜の孔の壁に沿ったシリカナノチューブが得られる。アルミナ粒子のスラリーによって簡単に研磨することによって、表面被膜を除去する。次に、鋳型メンブレンを溶解して濾過によって回収することによってナノチューブを放出させる。
【0093】
ナノチューブの外径は、鋳型メンブレンの孔の直径を変化させることによって制御することができ、ナノチューブの長さは、鋳型メンブレンの厚さを変化させることによって制御することができ、ナノチューブの内径は、ゾルにおける浸漬時間を変化させることによって制御することができる。
【0094】
ポリマーナノチューブは、モノマー単位で構成される多くの物質から調製することができる。本明細書において用いられる「モノマー単位」は、「ポリマー」を形成するために繰り返される個々の部分を指す。多数のモノマー単位は、ポリマー骨格の形で共有結合する。少なくとも二つの異なるタイプのモノマー単位で構成されるポリマーは、「コポリマー」と呼ばれる。重合化または共重合させることは、多数のモノマーが反応してポリマーまたはコポリマーをそれぞれ形成する共有結合モノマー単位を形成するプロセスを記述する。ポリマー、モノマー単位、およびそれらが形成されるモノマーに関する考察は、Stevens,「Polymer Chemistry : An Invitation」3rd Ed. Oxford University Press(1999)に認められるであろう。
【0095】
ポリマーナノチューブは、Depak, V.M. and C.R. Martin,「Preparation of Polymeric Micro- and Nanostructures Using a Template-Based Deposition Methods 」Chem. Mater., 11:1363〜1367(1999)に記述されているように溶液沈着法を用いて調製することができる。この方法は、鋳型メンブレンの孔内に所望のポリマーの溶液を沈着させる段階、および溶媒を蒸発させる段階を含む。さらに、ポリマーナノチューブは、Martin, C.R.「Template Synthesis of Electronically Conductive Polymer Nanostructures」Acc. Chem. Res. 28:61〜68(1995)によって記述されるように、孔内でモノマーを重合化させることによって調製することができる。
【0096】
好ましいポリマーには、ポリスチレン、ポリオルガノシロキサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ乳酸、および他の生体分解性ポリマー、アクリル酸ラテックス、ポリオルガノシロキサン、セルロース、ポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(4-ヨードスチレン/ジビニルベンゼン)、ポリ(4-ビニルピリジン/ジビニルベンゼン)、ポリ(スチレン/ジビニルベンゼン)、クロスリンクしたメラミン粒子、フェノールポリマーコロイド、ポリアミド6/6、天然ゴム、アルギネート、コラーゲンまたはその混合物のような天然に存在するバイオポリマーが含まれる。
【0097】
ナノチューブを患者に導入する場合、例えば、疾患の検出、通知、および治療のためのナノ構造アセンブリとして用いる場合、生体分解性のポリマーおよび生体適合性のポリマーが特に好ましい。有用な生体分解性ポリマーの例には、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、およびポリ(ヒドロキシブチレート)のようなポリエステル;ポリ(無水アジピン酸)およびポリ(無水マレイン酸)のようなポリアンヒドリド;ポリジオキサノン;ポリアミン;ポリアミド;ポリウレタン;ポリエステルアミド;ポリオルトエステル;ポリアセタール;ポリケタール;ポリカーボネート;ポリオルトカーボネート;ポリホスファゼン;ポリ(リンゴ酸);ポリ(アミノ酸);ポリビニルピロリドン;ポリ(メチルビニルエーテル);ポリ(シュウ酸アルキレン);ポリ(コハク酸アルキレン);ポリヒドロキシセルロース;キチン;キトサン;ならびにそのコポリマーおよび混合物が含まれる。
【0098】
好ましくは、生体適合性は免疫原性適合性を特徴とする。本発明のナノチューブの製造において用いることができる生体適合性ポリマーの例には、PLG[ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)]、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(L-乳酸)またはポリ(β-ベンジル-L-アスパルテート)とのコポリマーが含まれる。さらに、多くのアプローチを用いてナノチューブ表面を生体適合性および「stealthy」にすることができる。例えば、これは、ナノチューブの外表面での鎖末端のチオールにPEG-マレイミドを結合させることによって行うことができる。ナノチューブがAuまたは類似の金属製である場合、PEG鎖は、Yu, S., Lee, S.B., Kang, M., Martin, C.R.「Size-Based Protein Separations in Poly(ethylene glycol)-Derivatized Gold Nanotubule Membranes」Nano Letters, 1:495〜498(2001)に記述されるようにチオールリンカーによって結合させることができる。生体適合性ポリマーおよび表面処理の他の例は、その内容物が参照により本明細書に組み入れられる、Majeti N.V. Ravi Kumar,「Nano and Microparticles as Controlled Drug Delivery Devices」J. Pharm. Pharmaceut. Sci.3(2):234〜258(2000)において認められうる。
【0099】
本発明の一つの態様において、ナノ構造アセンブリには、代理マーカーおよび/またはペイロード材料を含む中空の内部を有するナノチューブが含まれる。ナノチューブは、2002年10月21日に提出された米国特許出願第10/274,829号に開示される方法のような、公知の方法を用いて構築される。ナノチューブにはさらに、ナノ構造アセンブリを標的SCEに配置するためのSCE検出手段が含まれる。代理マーカー(およびペイロード、存在する場合)材料は、標的SCEの存在下でナノ構造アセンブリから放出される。
【0100】
関連する態様において、中空間隙における代理マーカーおよび/またはペイロード材料の放出は、ナノチューブの「キャップを外す」ことによって得られる。末端キャップは、その内容物(すなわち、代理マーカーおよび/またはペイロード材料)の放出を制御するための手段として機能するように空隙に対する開口部の上に配置される。末端キャップをナノ粒子に結合させる方法には、静電引力、水素結合、末端キャップ/ナノ粒子に存在する酸および/または塩基部位、共有結合、および他の化学結合を用いることが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0101】
好ましい態様において、検出手段は、ナノ粒子のキャップを外すことによって代理マーカーおよび/またはペイロード材料の放出に影響を及ぼすように、末端キャップに結合する。例えば、キャップを外すメカニズムは、例えば、細胞タイプ(すなわち、癌細胞)上の表面マーカー、血液中のタンパク質(すなわち、前立腺癌に関するPSA)、または体内の薬物(すなわち、不法薬物または治療薬)を含む特定のSCEの検出手段による検出に基づく。キャップを外すメカニズムは、アクチンに基づくシステム(Dickinson, R.B. and D.L. Purich,「Clamped filament elongation model for actin-based motors」Biophys. J., 82:605〜617(2002))のような、しかしこれらに限定されないエネルギーを有する生体分子モーターを用いることを必要としてもよい。
【0102】
次に、放出された代理マーカーを、ガスクロマトグラフィー、電子ノーズ、検出マーカーの赤外線(IF)、紫外線(UV)、可視吸収もしくは蛍光を検出するための分光光度計、または質量分析計が含まれるがそれらに限定されるわけではない当技術分野で公知のセンサー技術を用いて検出することができる。
【0103】
ナノ粒子の官能化
本発明に従って、SCE検出手段、代理マーカー、および/またはペイロードを結合させるために、異なる化学または生化学官能化表面を有するナノ粒子を調製することができる。ナノ粒子表面を官能化するために用いられる方法は、ナノ粒子の組成に依存し、当技術分野で公知である。例えば、シリカナノ粒子の官能化は、シラン化学を用いて行われる。シラン化学によって、ナノ粒子が鋳型の孔内に埋もれているあいだに官能基をナノ粒子表面に結合させることによって、異なる官能基をナノ粒子の表面に結合させることができる。次に、加水分解に不安定なシランをナノ粒子の表面シラノール部位と反応させて、表面とシランとのあいだに酸素/シリコン共有結合を得る。鋳型を溶解した後に、さらなる官能基をナノ粒子表面に結合させることができる。
【0104】
ポリマーナノ粒子の表面はまた、周知の化学法を用いて官能化することができる。例えば、ポリラクチド合成のために用いられる方法によって、異なる末端官能化が得られる。その酸素との結合が有意な共有結合特徴を有するSn2+のようなルイス酸によって媒介される挿入メカニズムによって、重合が起こる。金属イオンと錯体を形成したアルコールは重合化を開始し、これはラクチドモノマーの段階的開環によって鎖を成長させることができる新たなアルコキシド-金属錯体を生成することによって継続する。ポリマーの分子量は、最初のアルコール対ラクチドモノマーのモル比によって制御することができる。得られたポリエステルは、ヒドロキシル末端(第一のモノマーからの)および開始アルコールの構造によって決定されるエステル末端での官能基によって方向性を有する。後者は、検出手段、代理マーカー、および/またはペイロードのナノ粒子表面への結合を可能にするために、多様な官能基を含みうる。
【0105】
または、官能基を共重合によって導入することができる。天然のアミノ酸は乳酸と立体的に類似であるが、その側鎖上に多様な官能基(-OH、-CO2H、-NH2、-SH等)を提供する。その上、アミノ酸は全ての細胞タイプにおいて認められることから、ポリマー分解産物は非毒性である。アミノ酸および乳酸に由来するモノマーは、標準的な方法によって合成することができ、ラクチドとのランダム共重合のために用いることができる。本発明に従って、ナノ粒子は、SCE検出手段、代理マーカー、および/またはペイロードを結合させるために任意の表面上において官能基を有しうる。そのような官能基によって、ナノ構造アセンブリを、特定の疾患の検出、通知の提供、および治療のような、特定の機能を達成するために生物学的に操作することができる。
【0106】
さらに、検出手段、代理マーカー、および/またはペイロードを、キトサン、PEG化PLGA(ポリ(ラクチック-コ-グリコール酸))または他のPEG化化合物を含みうるナノ粒子のフレームワークに組み入れることができる。例えば、市販のPEG-マレイミドを、ナノ粒子の外表面上の鎖の末端のチオールに組み入れることができる。または、検出手段、代理マーカー、および/またはペイロードを例えば、上記のようなポリラクチドに基づくポリマーを含む生体分解性および/または吸収性の材料で構成されるナノ粒子のフレームワークに組み入れることができる。
【0107】
代理マーカーを含むことができる中空の間隙を含むナノ粒子の場合、電気泳動力を用いて代理マーカーを空隙に充填することができる。(Miller, S.A. and C.R., Martin, 「Electroosmotic Flow in Carbon Nanotube Membranes」, J. Am. Chem. Soc., 123(49):12335〜12342(2001)を参照されたい)。または、代理マーカーを含む溶液の合成メンブレンを通しての真空濾過によって、合成メンブレンに埋もれたナノ粒子に代理マーカーを充填することができる。(Parthasarathy, R, and C.R. Martin, Nature 369:298(1994))。基礎となるアルミニウム表面からアルミナを除去する前のアルミナ鋳型内での形成によって調製されたナノ粒子の場合、それらを、単に代理マーカーを含む溶液を被膜の表面(中空間隙の開口部が存在する)に適用すること、および溶媒を蒸発させることによって充填することができる。必要であれば、多数の応用を用いることができる。
【0108】
一つの態様において、上記の任意の官能基によって、検出手段をナノ粒子の外表面に結合させる。代理マーカーおよび存在する場合はペイロードの放出の制御は、化学的に不安定な結合によってナノ粒子を結合する末端キャップの放出によって行われる。
【0109】
さらにもう一つの態様は、ナノ粒子の外側の露出表面に適用された、検出手段、代理マーカー、およびペイロード(存在する場合)を有するナノ粒子を提供する。これらの成分は全て、特定の条件下で(SCEがSCE検出器によって同定された後の代理マーカーの放出のような)これらの成分の放出させる化学的に不安定な結合によってナノ粒子の表面に結合する。
【0110】
関連する態様において、アプタマーをSCE検出器として用いることができる。アプタマーは、当技術分野で周知の方法を利用してタンパク質に結合させることができる(Brody, E.N. and L. Gold, 「Aptamers as therapeutic and diagnostic agents」J. Biotechnol, 74(1):5〜13(2000)、およびBrody, E.N. et al.,「The use of aptamers in large arrays for molecular diagnostics」, Mol. Diagn. 4(4):381〜8(1999)を参照されたい)。例えば、光クロスリンク可能なアプタマーによって、アプタマーをタンパク質に共有結合させることができる。そのようなアプタマー結合タンパク質をナノ粒子の官能化表面に固定することができる。
【0111】
例えば、アプタマー結合タンパク質を、表面の官能化によるアプタマー結合タンパク質の結合を含む、ナノ粒子の末端キャップまたは外部ナノ粒子表面に共有結合させることができる。または、アプタマー結合タンパク質をリンカー分子を通してナノ粒子の表面に共有結合させることができる。非共有結合は、ナノ粒子表面にアプタマー結合タンパク質を導入するためのもう一つの方法を提供する。例えば、アプタマー結合タンパク質を、疎水性結合による吸収によって、またはファンデルワールス力、水素結合、酸/塩基相互作用、および静電力によって、ナノ粒子表面に結合させてもよい。
【0112】
SCE検出手段によるSCEの同定は、ナノ粒子からの代理マーカーの放出に影響を及ぼす。代理マーカーはSCEの存在下に限ってナノ粒子から放出されることから、体液試料における代理マーカーの検出は、SCEが患者に存在することの通知を提供し、その結果SCEに関連した特異的疾患の診断が可能となる。
【0113】
さらに、SCEの検出はまた、提供される場合にペイロードと、代理マーカーとの実質的に同時の放出を引き起こしうる。ペイロードは、SCEに関連した特定の疾患を予防、軽減、および/または治癒するように設計される。このように、ペイロード物質の所望の臓器または組織部位への濃縮された送達によって、最小の副作用で特異的治療効果を実現することができ、それによって所望の治療活性の増強および減少した投与量の使用が可能となる。このように、ペイロードがナノ構造アセンブリに含まれる態様において、体液試料における代理マーカーの検出はまた、ペイロードが放出されていることの指標として役立つであろう。
【0114】
特定の態様において、本発明のナノ構造アセンブリは、患者における異なるタイプの血球の識別能を有し、異なるタイプの血球およびその濃度に関するシグナルを提供する。例えば、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、および血小板のレベルを本発明のシステムおよび方法を用いて評価して、白血病のような造血異常を診断および/または治療する、または細胞含有量(例えば、RBC含有量)の変化を評価することができる。したがって、本発明は、出血素因(すなわち、血友病、フォンウィルブラント病、アレキサンダー病、テルハ病、オーレンパラ血友病、プロトロンビン欠損);非出血経産婦凝固障害(すなわち、フレッチャー因子欠損、Flaujeac因子欠損);血栓形成性凝固障害(すなわち、ラトノフ病、トロンボモジュリン欠損);血小板減少症;貧血;および白血球の変化(すなわち、ペルゲル-ヒュエト異常(PHA);チェディアック-東症候群(CHS);ヘグリン-メイ異常(HMA))が含まれるがこれらに限定されない血液に基づく疾患または障害を診断および/または治療するために有用である。
【0115】
特異的化学実体(SCE)
SCEは、1)異なるタイプの細胞(すなわち、疾患または正常細胞の表面マーカー)に結合することができる、または2)血液のような様々な体液(すなわち、炎症障害または癌の循環中のマーカー;治療薬または不法薬)に存在しうる。このように、SCEには、タンパク質、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、抗体、または多様な低分子治療薬および/または不法薬分子標的のような、バイオマーカーまたは分析物が含まれうるがそれらに限定されるわけではない。
【0116】
細胞表面上での重要な抗原の多くのタイプは、癌、炎症障害および感染症から心血管疾患に至るまで広範囲の疾患状態が存在することを示す。表面細胞マーカーは、疾患を有する細胞(すなわち、悪性疾患)を二つの方法で:1)独自に発現させることによって(正常細胞の表面には通常存在しない)、または2)大きく変化した密度で発現させることによって(すなわち、細胞表面マーカーの顕著な過剰発現によって)同定するために役立ちうる。例えば、リンパ腫および白血病のような血液悪性疾患の場合、独自のマーカーおよび表面マーカーのクラスターを用いて、血液の癌を正確に同定することができる。したがって、本発明のSCEには、免疫表現型タイピングによって白血病およびリンパ腫を同定するために公知である表面マーカーを含む、疾患状態を同定する表面マーカーが含まれうるがそれらに限定されるわけではない。
【0117】
本発明のSCEの例には、(1)急性白血病表面抗原プロフィールを形成する、T細胞マーカー(CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、およびCD8);B細胞マーカー(CD19およびCD20);骨髄/単球マーカー(CD13、CD14、CD15、およびCD33);急性白血病表面抗原プロフィールを形成する成熟状態マーカー(CD34、HLA-DR、およびCD10=CALLA);(2)慢性リンパ球性白血病(CLL)およびリンパ腫プロフィールを形成する、汎T細胞マーカー:CD2、CD3、CD5;CD4(ヘルパー)およびCD8(サプレッサー);汎BマーカーCD19およびCD20;CD5およびCD20(共発現はしばしば生物増殖を示す);(3)ヘアリーセル白血病(HCL)、前リンパ球性白血病(PLL)またはマントル細胞リンパ腫/白血病を診断するために役立つ、ヘアリーセルマーカーCD11c(補体受容体)、CD25(IL-2受容体)、CD103、前リンパ球/ヘアリーセルマーカーFMC-7;B-リンパ様マーカーCD23(CLL対MCLの異なる診断に関してCD5発現に関連して評価する);ならびに(4)未分化型リンパ腫およびホジキン病を示すCD1、CD15、およびCD30(Ki-1)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0118】
本発明のさらなるSCEには、アセトアルデヒド(起源:エタノール;診断:中毒)、アセトン(起源:アセトアセテート;診断:食事またはケト原性/糖尿病)、アンモニア(起源:アミノ酸の脱アミノ化;診断:尿毒症および肝疾患)、CO(一酸化炭素)(起源:CH2Cl2、%COHbの上昇;診断:室内空気の汚染)、クロロホルム(起源:ハロゲン化化合物)、ジクロロベンゼン(起源:ハロゲン化化合物)、ジエチルアミン(起源:コリン;診断:腸管細菌増殖)、H(水素)(起源:腸管;診断:乳糖不耐性)、イソプレン(起源:脂肪酸;診断:代謝ストレス)、メタンチオール(起源:メチオニン;診断:腸内細菌の過増殖)、メチルエチルケトン(起源:脂肪酸;診断:室内空気の汚染/食事)、O-トルイジン(起源:癌腫代謝物;診断:気管支原性癌腫)、ペンタンスルフィドおよびスルフィド(起源:脂質過酸化;診断:心筋梗塞)、H2S(起源:代謝;診断:歯周病/排卵)、MeS(起源:代謝;診断:肝硬変)、Me2S(起源:感染症;診断:塹壕口内炎)、αII-スペクトリン切断産物および/またはイソプロスタン(起源:脳脊髄液、血液;診断:外傷または他の脳損傷);前立腺特異抗原(起源:前立腺細胞;診断:前立腺癌);およびGLXA(クラミジア(Chlamydia)における糖脂質;診断:クラミジア)が含まれるがそれらに限定されるわけではない、体液中に一般的に認められる代謝物または化合物が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0119】
本発明はまた、以下のSCEの任意の組み合わせを検出することができる:ゲノムまたはcDNAライブラリにおいて提供される任意のヌクレオチド配列;ファージディスプレイライブラリにおける任意のペプチド;薬物乱用を含む不法、非合法、および/または管理物質(すなわち、アンフェタミン、鎮痛剤、バルビツレート、クラブドラッグ、コカイン、クラックコカイン、抑制剤、デザイナードラッグ、エクスタシー、γヒドロキシブチレート-GHB、幻覚誘発物質、ヘロイン/モルヒネ、吸入剤、ケタミン、リゼルグ酸ジエチルアミド-LSD、マリファナ、メトアンフェタミン、オピエート/麻薬、フェンシクリジン-PCP、処方薬、サイケデリック薬、ロヒプノール、ステロイドおよび刺激物質);アレルゲン(すなわち、花粉、胞子、鱗屑、ピーナッツ、卵、および貝);毒物(すなわち、水銀、鉛、他の重金属、およびクロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium Difficile)毒素);発癌物質(すなわち、アセトアルデヒド、ベリリウム化合物、クロム、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DTT)、エストロゲン、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、およびラドン);感染物質(すなわち、気管支敗血症菌(Bordettella bronchiseptica)、シトロバクター(Citrobacter)、大腸菌、肝炎ウイルス、ヘルペス、免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、リステリア(Listeria)、ミクロコッカス(micrococcus)、マイコバクテリウム(mycobacterium)、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、サルモネラ(Salmonella)および黄熱病ウイルス)、疾患の細胞マーカー(すなわち、T細胞マーカー、B細胞マーカー、骨髄/単球マーカー、白血病、未分化型リンパ腫、ホジキン病の成熟状態マーカー;肝細胞癌および非精上皮腫精巣癌の指標としてのα-フェトプロテイン(AFP);活動型疾患、細胞代謝回転、腫瘍の存在、および炎症疾患の指標としてのβ2-ミクログロブリン(b2-M);およびβヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(bHCG))は、妊娠性絨毛性疾患および卵巣または精巣の生殖細胞腫瘍の腫瘍マーカーである)。
【0120】
体液に存在して、細胞に結合していないSCEは、本発明の特定の態様によって検出される。そのようなSCEには、疾患細胞から放出されたバイオマーカーのみならず、体に存在する治療薬および/または不法薬が含まれる。
【0121】
そのような非結合SCEの例には、以下が含まれるがそれらに限定されるわけではない:肝細胞癌および非精上皮腫精巣癌の診断および管理のために有用な腫瘍マーカーであるαフェトプロテイン(AFP);その高濃度が活動型疾患、腫瘍の代謝回転、腫瘍の存在、炎症疾患(すなわちリウマチ性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、クローン病)の存在を示す、または様々なリンパ増殖疾患(白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫)の二次指標であるβ2-ミクログロブリン(b2-M);妊娠性絨毛性疾患および卵巣または精巣の生殖細胞腫瘍、乳癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、腎臓癌および脳癌の腫瘍マーカーであって、精巣腫瘍を有する患者における治療の有効性を評価するために非常に有用である、βヒト絨毛膜性性腺刺激ホルモン(bHCG);臓器特異的ではないが、多様な腺癌(膵臓、胃、および肝胆管)のマーカーである炭水化物抗原19-9(CA19-9);ならびに卵巣のほとんどの漿液性類子宮内膜および明細胞癌において認められるCA 125。
【0122】
異なるタイプの悪性疾患(すなわち、卵巣癌)に対して特異的な非常に新規の細胞表面マーカーを同定するために、ファージディスプレイライブラリの示差スクリーニングのような新しい技術の出現を仮定して、広範な疾患プロセスを検出、通知、およびモニターするために本発明のナノ構造アセンブリを利用することは、次の10年間に顕著に増加するであろう。表1は、本発明を用いて検出することができる重要なヒト疾患に対する特定の新しいおよび古いSCEを示す。
【0123】
特異的化学実体(SCE)を検出する手段
本発明のナノ構造アセンブリは、標的SCE、代理マーカー、および特定の態様においてペイロードを検出する手段を含むナノ粒子を含む。好ましい態様において、SCE検出器は標的SCEを検出するように設計される。
【0124】
本発明のSCE検出手段は、当業者に公知であるバイオセンサーから選択することができる。そのようなバイオセンサーには、対象となる化学および/または生物学的化合物に対して高い特異性および感受性を有する天然に存在するおよび/または合成化合物が含まれる。本発明の適したバイオセンサーには、抗体、タンパク質、およびアプタマーが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0125】
本発明の特定のSCE検出器は、標的SCEの生物学的機能を変化させるように設計される。他のSCE検出器は、ペイロード(または代理マーカー)を最適に放出するために標的細胞の近位、または標的細胞にナノ構造アセンブリを配置するように設計することができる。関連する態様において、検出手段はまた、細胞に局在(すなわち、ナノ構造アセンブリを癌細胞に送達する)、または細胞下に局在(すなわちナノ構造アセンブリを癌細胞内の核に送達する)させることができる。
【0126】
本発明の検出手段は、特異的SCEの局在または固定(すなわち、ベクタリング)を必要とする応用を可能にすることができる。Langer, R.,「Tissue Engineering」Mol. Ther, 2:12〜15(2000)を参照されたい。例えばタンパク質、抗体、ペプチド、RNA、またはDNAアプタマー、細胞レポーターまたは細胞リガンドを含む検出手段を、ナノ粒子表面に結合させて、標的SCEに対するナノ構造アセンブリのベクタリング手段を提供することができる。そのようなSCE検出手段は、ナノ粒子表面に共有結合させてもよい。特定の関連する態様において、SCE検出手段を、リンカー分子によってナノ粒子表面に結合させる。SCE検出手段はまた、非共有結合、例えば疎水性結合による吸収またはファンデルワールス力、水素結合、酸/塩基相互作用、および静電力によって、ナノ粒子表面に結合させることができる。
【0127】
一つの態様において、SCE検出器は、標的SCEに対して特異的な抗体である。抗体は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖を含む認識された構造を有する。重鎖および軽鎖には、N-末端可変領域(V)およびC-末端定常領域(C)が含まれる。重鎖可変領域はしばしば、「VH」と呼ばれ、軽鎖可変領域は「VL」と呼ばれる。VHおよびVL鎖は、F(v)と呼ばれる結合ポケットを形成する。一般的にDavis, 3:537, Ann. Rev. of Immunology(1985);および「Fundamental Immunology」3rd Ed., W. Paul, Ed. Raven Press LTD, New York(1993)を参照されたい。結合ポケットF(v)の形状は、効率的および特異的結合のために標的SCEの形状と相補的である。一般的に、結合は抗体と標的SCEとのあいだの弱い非共有結合による。抗体は、当業者に公知の方法を用いてナノ粒子に結合させることができる。
【0128】
または、組換え型二重特異的抗体(bsFv)分子をSCE検出器として用いることができる。好ましい態様において、「CD3」と呼ばれるT-細胞タンパク質およびTAAに結合するbsFv分子を、本発明に従ってSCE検出器として用いる。関連する態様において、bsFv分子は、標的SCEに対して特異的に結合させるのみならず、免疫系の反応を促進するために用いられる。Jost, C.R., 33:211, Mol.Immunol(1996);Lindhofer, H. et al., 88:465 1, Blood(1996);Chapoval, A.I. et al., 4:571, J. of Hematotherapy(1995)を参照されたい。
【0129】
本発明の他の態様によって、SCE検出手段はアプタマーの形である。アプタマーは、低分子と共に大きい分子を含む広範囲の標的の認識能を有する(Gold et al., 上記;Osborne and Ellington, 「Nucleic acid selection and the challenge of combinatorial chemistry」Chem. Rev., 97:349〜370(1997))。
【0130】
SELEX(商標)方法論に由来するアプタマーを、本発明において利用することができる。SELEX(商標)方法論は、そのそれぞれが独自の配列を有し、所望の標的化合物または分子に対して特異的に結合する特性を有するアプタマーの産生を可能にする。SELEX(商標)方法論は、核酸が多様な二次元および三次元構造を形成するために十分な能力を有する、およびモノマーまたはポリマーのいずれであってもよい実質的に任意の化学化合物との配位子として作用する(特異的結合対を形成する)ようにそのモノマー内で利用できる十分な化学的汎用性を有するという洞察に基づいている。如何なる大きさまたは組成の分子も標的として作用しうる。Jayasena, S., 「Aptamers : An Emerging Class of Molecules That Rival Antibodies for Diagnostics」Clinical Chemistry, 45:9, 1628〜1650(1999)も同様に参照されたい。
【0131】
本発明においてSCE検出器として用いることができるアプタマーには、アセンブリ鋳型としての合成オリゴヌクレオチドの長所を開示する米国特許第5,656,739号(以降、'739号特許と呼ぶ)に記述のアプタマーが含まれる。'739号特許は、それらが高い親和性で非オリゴヌクレオチド標的分子に特異的に結合するように選択できることから(例えば、Tuerk and Gold(1990)、上記)、およびそれらが相補的塩基対形成によってハイブリダイズできることから、特に有用なアセンブリ鋳型としての核酸を記述する。いずれの型の認識も単一の分子においてプログラム可能に合成することができ、または単一の個別の構造にハイブリダイズさせることができる。
【0132】
代理マーカー
本発明の代理マーカーは、放射標識または蛍光化合物、裸眼での検出のために体液の色を変化させる化合物、またはセンサー技術を用いて体液中で容易に同定される化合物を含む、体液中で同定することができる任意の化合物となりうる。好ましくは、体液中での代理マーカーの検出は、患者に標的SCEが存在することを示し、標的SCEに関連した疾患の診断を可能にする。
【0133】
例えば、代理マーカーは、尿中で検出可能なベンゾジアゼピンまたはベンゾジアゼピン代謝物となりうる。ベンゾジアゼピンおよびその代謝物は、腎臓のシステムを容易に尿まで通過して、それによってベンゾジアゼピンおよび類似の特性を有する物質はコンプライアンスマーカーとして特に適している。本発明において用いることができるベンゾジアゼピンまたはベンゾジアゼピン代謝物の例には、ジアゼパムおよびアルプラゾラムが含まれる。
【0134】
本明細書において企図されるさらなる代理マーカーには、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アニス、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、桂皮酸ベンジル、カジネン、カンフェン、カンフル、シナモン、ニンニク、シトロネラール、クレゾール、シクロヘキサン、ユーカリプトール、およびオイゲノール、オイゲニルメチルエーテルが含まれるがそれらに限定されるわけではない。そのようなマーカーは、呼気における検出に用いるために特に有用である。
【0135】
本発明の代理マーカーには、また米国政府によって承認され、GRAS(「一般的に安全と認識される」)と分類されている添加剤が含まれ、これらは米国食品医薬品局の食品安全性応用栄養学センターによって維持されるデータベースにおいて利用可能である。GRASとして分類され、体液において容易に検出可能である代理マーカーには、硫酸水素ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリグリセロールポリリシノール酸、カゼインペプトンカルシウム-燐酸カルシウム、植物(すなわち、キク;甘草;jellywort、スイカズラ;ササクサ、桑の葉;アカソケイ;ウツボグサ;エンジュの花芽)、ビスグリシン酸第一鉄キレート、海藻由来カルシウム、DHASCO(ドコサヘキサエン酸濃縮単細胞油)、およびARASCO(アラキドン酸濃縮単細胞油)、フルクトオリゴ糖、トレハロース、γシクロデキストリン、フィトステロールエステル、アラビアゴム、硫酸水素カリウム、ステアリルアルコール、エリスリトール、D-タガトース、およびミコプロテインが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0136】
ペイロード材料
本明細書において企図されるペイロード材料は、疾患の予防、治癒、または軽減のために用いられる治療的生物活性物質である。
【0137】
例として、本発明の一つの態様は、ペイロードとして抗酸化剤遺伝子(MnSOD、HO-1、およびPON1)を含むナノ粒子アセンブリを利用する。抗酸化剤遺伝子は、患者においてアテローム性動脈硬化症を治療することができるように、前アテローム形成性遺伝子の存在下で放出される。
【0138】
本発明のペイロード材料は、遺伝子材料(すなわち、DNA);RNA;オリゴヌクレオチド;ペプチド;タンパク質(すなわち、酵素)、化学療法剤(抗癌製剤);抗生物質;抗真菌剤;麻酔薬;免疫調節物質(すなわち、インターフェロン、シクロスポリン)、抗炎症剤および他のタイプの疼痛軽減剤;自律神経作用薬;心血管-腎臓薬;内分泌薬;造血増殖因子;血中脂質低下剤;AIDS薬;平滑筋機能調節剤;抗発作剤;精神活性薬;および末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、synoptic部位、神経効果器接合部、内分布およびホルモン系、代謝系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、栄養排泄系、ヒスタミン系、および中枢神経系に作用する薬剤から選択することができるがこれらに限定されるわけではない。適した物質は、例えば、タンパク質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、ヌクレオタンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、抗炎症性コルチコステロイド、眼科用剤、およびこれらの種の合成類似体から選択してもよい。
【0139】
ナノ構造アセンブリによるペイロードとして送達される薬物の例には、prochlorperzineエディシレート、硫酸第一鉄、アミノカプロン酸、塩酸メカミルアミン、塩酸プロカインアミド、硫酸アンフェタミン、塩酸メトアンフェタミン、塩酸ベンズアンフェタミン、硫酸イソプロテレノール、塩酸フェンメトラジン、塩化ベタネコール、塩化メタコリン、塩酸ピロカルピン、硫酸アトロピン、臭化スコポラミン、ヨウ化イソプロパミド、塩化トリジヘキセチル、塩酸フェンホルミン、塩酸メチルフェニデート、コリンテオフィリン、塩酸セファレキシン、ジフェニドール、塩酸メクリジン、マレイン酸プロクロルペラジン、フェノキシベンザミン、マレイン酸チエチルペルジン、アニシンドン、ジフェナジオンerthyrityl四硝酸塩、ジゴキシン、インタール(クロモグリク酸ナトリウム)、コデイン、モルヒネ、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸、塩酸メペリジン(DEMEROL)、塩酸クロフェジアノール、エピネフリン、イソプロテレノール、サルブタモール、テルブタリン、エフェドリン、アミノフィリン、アセチルシステイン、スルファニルアミド、スルファジアジン、テトラサイクリン、リファンピン(リファマイシン)、ジヒドロストレプトマイシン、p-アミノサリチル酸、血糖降下薬トルブタミド(ORINASE)、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレドニソロンメタスフホベンゾエート、クロラムブシル、ブスルファン、アルカロイド、抗代謝剤、6-メルカプトプリン、チオグアニン、5-フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、イソフルロフェート、アセタゾールアミド、メタゾールアミド、ベンドロフルメチアジド、クロロプロマイド、トラザミド、酢酸クロロマジノン、フェナグリコドール、アロプリノール、アスピリンアルミニウム、メソトレキセート、アセチルスルフイソキサゾール、エリスロマイシン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、デキサメタゾンおよびベタメタゾンのようなその誘導体、トリアムシノロン、メチルテストステロン、17-S-エストラジオール、エチニルエストラジオール3-メチルエーテル、17-α-ヒドロキシgrogesteroneアセテート、19-ノルプロゲステロン、ノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチエデロン、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノルエチノドレル、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、サリンダック、インドプロフェン、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、クリメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロルプロマジン、メチルドーパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック、乳酸第一鉄、ビンカミン、フェノキシベンザミン、ジルチアゼム、ミルリノン、マンドール、quanbenz、ヒドロクロロサイアジド、ラニチジン、フルビプロフェン、フェヌフェン、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナク、メフェナム酸、フルフェナム酸、ジフイナール、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミール、ガロパミール、アムロジピン、ミオフラジン、リシノルプリル、エナラプリル、エナラプリラート、カプトプリル、ラミプリル、ファモチジン、ニザチジン、スクラルファート、エチンチジン、テトラトロール、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリン、およびイミプラミンが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0140】
ペイロード材料のさらなる例は、タンパク質およびペプチドであり、これには、骨形態形成タンパク質、インスリン、コルヒチン、グルカゴン、甲状腺刺激ホルモン、副甲状腺および下垂体ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロピン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性性腺刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ウシソマトトロピン、ブタソマトトロピン、オキシトシン、バソプレッシン、GRF、ソマトスタチン、リプレシン、パンクレオザイミン、黄体形成ホルモン、LHRH、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト、リュープロリド、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2bおよびコンセンサスインターフェロンのようなインターフェロン、インターロイキン、ヒト成長ホルモンならびにメチオニンヒト成長ホルモンおよびデスフェニルアラニンヒト成長ホルモンのようなその誘導体、ウシ成長ホルモン、ならびにブタ成長ホルモンのような成長ホルモン、プロスタグランジンのような受精能阻害剤、受精促進因子、インスリン様増殖因子のような増殖因子、凝固因子、ヒト膵臓ホルモン放出因子、これらの化合物の類似体および誘導体、ならびにこれらの化合物の薬学的に許容される塩、またはその類似体もしくは誘導体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0141】
本発明のナノ構造アセンブリによって送達されうるさらなるペイロード材料には、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、BCNU、ビンクリスチン、カンプトテシン、エトポシドのような化学療法剤、サイトカイン、リボザイム、インターフェロン、腫瘍遺伝子の翻訳または転写を阻害するオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド配列、前述の機能的誘導体、および米国特許第5,651,986号に記述される物質のような一般的に公知の化学療法剤が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0142】
特定の態様において、ペイロード材料は本発明によって提供される治療薬である。
【0143】
治療薬
本明細書において企図されるように、本発明に従ってモニターされる治療薬には、精神病薬(すなわち、抗うつ剤、抗精神病薬、抗不安薬、抑制剤)、鎮痛剤、刺激剤、生物反応改変剤、NSAIDs、コルチコステロイド、DMARD、アナボリックステロイド、制酸剤、抗不整脈剤、抗菌剤、抗生物質、抗凝固剤および血栓溶解剤、抗痙攣剤、下痢止め薬、制吐剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗炎症剤、抗新生物剤、抗発熱剤、抗ウイルス剤、バルビツレート、β-遮断剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、細胞障害剤、うっ血除去剤、利尿剤、去痰薬、ホルモン、免疫抑制剤、血糖低下剤、緩下剤、筋弛緩剤、鎮静剤、精神安定剤、およびビタミンが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0144】
例えば、本発明は、治療薬の以下の非制限的な一覧の血中濃度を有効にモニターすることができる:リウマチ性関節炎またはその症状、全身性紅斑性狼瘡またはその症状、変形性関節炎、血管炎、炎症疾患、アンギナ、肝動脈疾患、末梢血管疾患;潰瘍性大腸炎およびクローン病を治療するための薬物;抗臓器拒絶薬;抗てんかん薬;および抗不安薬。
【0145】
その血中濃度が本発明に従ってモニターされうる治療薬には、以下が含まれるがそれらに限定されるわけではない:α-ヒドロキシ-アルプラゾラム;アセカイニド(NAPA);アセトアミノフェン(Tylenol);アセチルモルヒネ;アセチルサリチル酸(サリチレートとして);α-ヒドロキシ-アルプラゾラム;アルプラゾラム(Xanax);アマンタジン(Symmetrel);Ambien(ゾルピデム);アミカシン(Amikin);アミオダロン(Cordarone);アミトリプチリン(Elavil)&ノルトリプチリン;アモバルビタール(Amytal);Anafranil(クロミプラミン)&デスメチルクロミプラミン;Ativan(ロラゼパム);Aventyl(ノルトリプチリン);Benadryl(デフェンヒドラミン(Dephenhydramine));Benziodiazepines;ベンゾイルエクゴニン;ベンズトロピン(Cogentin);ブピバカイン(Marcaine);ブプロピオン(Wellbutrin)およびヒドロキシブプロピオン;ブタバルビタール(Butisol);ブタルビタール(Fiorinal);カルバマゼピン(Tegretol);Cardizem(ジルチアゼム);Carisoprodol(ソマ)&メプロバメート;およびCelexa(シタロプラム&デスメチルシタロプラム)。
【0146】
本発明に従ってその血中濃度レベルをモニターすることができるさらなる治療薬には、Celontin(メトスクシミド)(デスメチルメトスクシミドとして);Centrax(プラゼパム)(デスメチルジアゼパムとして);クロラムフェニコール(Chloromycetin);クロロジアゼポキシド;クロルプロマジン(Thorazine);クロルプロパミド(Diabinese);クロナゼパム(Klonopin);クロラゼペート(Tranxene);クロザピン;コカエチレン;コデイン;Cogentin(ベンズトロピン);Compazine(プロクロルペラジン);Cordarone(アミオダロン);Coumadin(ワルファリン);シクロベンザプリン(Flexeril);シクロスポリン(Sandimmune);Cylert(ペモリン);Dalmane(フルラゼパム)&デスアルキルフルラゼパム;Darvocet;Darvon(プロポキシフェン)&ノルプロポキシフェン;Demerol(メペリジン)&ノルメペリジン;Depakene(バルプロ酸);Depakote(ジバルプロ酸)(バルプロ酸として測定);デシプラミン(Norpramin);デスメチルジアゼパム;Desyrel(トラゾドン);ジアゼパム&デスメチルジアゼパム;ジアゼパム(Valium);デスメチルジアゼパム;ジエルドリン;ジゴキシン(Lanoxin);Dilantin(フェニトイン);ジソピラミド(Norpace);Dolophine(メタドン);Doriden(グルテチミド);Doxepin(サイネクアン);およびデスメチルドキセピン;Effexor(ベンラファキシン);エフェドリン:Equanil(メプロバメート)エタノール;エトスクシミド(Zarontin);エトトイン(Peganone);フェルバメート(Felbatol);フェンタニル(Innovar);Fioricet;フィプロニル;フルニトラゼパム(Rohypnol);フルオキセチン(Prozac)&ノルフルオキセチン;フルフェナジン(Prolixin);フルボキサミン(Luvox);ガバペンチン(Neurontin);γ-ヒドロキシ酪酸(GHB);ガラマイシン(Gentamicin);ゲンタミシン(Garamycin);ハラゼパム(Paxipam);Halcion(トリアゾラム);Haldol(ハロペリドール);ヒドロコドン(Hycodan);ヒドロキシジン(Vistaril);イブプロフェン(Advil、Motrin、Nuprin、Rufen);イミプラミン(Tofranil)およびデシプラミン;Inderal(プロプラノロール);Keppra(レベチラセタム);ケタミン;ラモトリジン(Lamictal);Lanoxin(ジゴキシン);リドカイン(Xylocaine);Lindane(γ-BHC);リチウム;Lopressor(メトプロロール);ロラゼパム(Ativan);およびLudiomilが含まれる。
【0147】
本発明に従ってモニターすることができる以下の治療薬の血中濃度には、マプロチリン;Mebaral(メフォバルビタール)&フェノバルビタール;Mellaril(チオリダジン)&メソリダジン;メフェニトイン(Mesantoin);メプロバメート(Miltown、Equanil);Mesantoin(メフェトイン);メソリダジン(Serentil);メタドン;メソトレキセート(Mexate);メトスクシミド(Celontin)(デスメトスクシミドとして);メキシレチン(Mexitil);ミダゾラム(Versed);ミルタザピン(Remeron);Mogadone(ニトラゼパム);モリンドン(Moban);モルヒネ;Mysoline(プリミドン)&フェノバルビタール;NAPA&プロカインアミド(Pronestyl);NAPA(N-アセチル-プロカインアミド);Navane(チオチキセン);Nebcin(トブラマイシン);ネファゾドン(Serzone);Nembutal(ペントバルビタール);ノルジアゼパム;オランザピン(Zyprexa);オピエート;Orinase(トルブタミド);オキサゼパム(Serax);10-ヒドロキシカルバゼピンとしてオキシカルバゼピン(Trileptal);オキシコドン(Percodan);オキシモルホン(Numorphan);Pamelor(ノルトリプチリン);パロキセチン(Paxil);Paxil(パロキセチン);Paxipam(ハラゼパム);Peganone(エトトイン);PEMA(フェニルエチルマロンアミド);ペントタール(Thiopental);ペルフェナジン(Trilafon);Phenergan(プロメタジン);フェノチアジン;フェンテルミン;フェニルグリコキシル酸;プロカインアミド(Pronestyl)&NAPA;プロマジン(Sparine);プロパフェノン(Rythmol);プロトリプチリン(Vivactyl);シュードエフェドリン;クエチアピン(Seroquel);Restoril(テマゼパム);Risperdal(リスペリドン)およびヒドロキシリスペリドン;セコバルビタール(Seconal);セルトラリン(Zoloft)&デスメチルセルトラリン;Stelazine(トリフルオペラジン);Surmontil(トリミプラミン);トカイニド(Tonocard);およびTopamax(トピラメート)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0148】
本発明の治療薬は、薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従って調製することができる。製剤は、多くの起源で記述されており、それらは当業者に周知であり容易に入手可能である。例えば、Remington's Pharmaceutical Science(Martin EW[1995]Easton Pennsylvania, Mack Publishing Company, 19th ed.)は、本発明に関連して用いることができる製剤を記述している。非経口投与に適した製剤には、例えば、意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および溶質が含まれてもよい、滅菌注射用水溶液、ならびに懸濁剤および濃化剤が含まれてもよい水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。
【0149】
製剤は、単位用量または多数回用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルに入れてもよく、使用前に滅菌液体担体、例えば注射用水の条件のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時調製注射溶液および懸濁剤は、滅菌粉末、顆粒剤、錠剤等から調製してもよい。特に先に言及した成分の他に、本発明の製剤には、疑問となる製剤のタイプに関して当技術分野において通常である他の物質が含まれうると理解すべきである。
【0150】
本発明に従う治療薬の投与は、当業者に現在または今後公知である任意の適した方法および技術によって行うことができる。好ましい態様において、治療薬は、丸剤、ロゼンジ、錠剤、ガム、飲料等のような特許を有する容易に消費可能な経口製剤に調製される。
【0151】
本発明に従って、治療薬は制御された供給手段(すなわち、ナノ構造アセンブリ、丸剤ディスペンサー、IV用バッグ等)から送達することができる。治療薬の患者の送達時に、本発明のセンサーは患者の呼気を分析して、治療薬の少なくとも一つの標的マーカーを検出する。標的マーカーが検出されると、血液中の治療薬濃度を、患者に次に送達される治療薬の適当な用量の誘導に用いるために、決定することができる。一つの態様において、システム制御装置は、呼気の分析に基づいて誘導した適当な用量を利用して、供給手段から患者への適当な用量の投与を行う。
【0152】
さらなる態様も同様に本明細書において想像される。薬剤の肺内送達は、特に喘息および慢性閉塞性肺疾患のような病態の場合には周知である。これらの状況において、薬剤(すなわち、コルチコステロイド、気管支拡張剤、抗コリン作動薬等)はしばしば、噴霧またはエアロゾル化されて、口から肺へと直接吸入される。これによって、罹患臓器(肺)への直接送達が可能となり、経腸(経口)送達の場合に一般的な副作用を減少させる。定用量吸入器(MDI)またはネブライザーは、この経路によって薬剤を送達するために一般的に用いられる。最近、乾燥粉末吸入器は、CFCsのような噴射剤の使用を必要としないことから、ますます一般的となっている。噴射剤は、喘息発作の悪化に関与していると共に、オゾン層の枯渇にも関与している。乾燥粉末吸入器はまた、インスリン、ペプチド、およびホルモンのような、他の経路に限ってこれまで投与されていた薬物のためにも用いられている。
【0153】
嗅覚マーカーも同様に、これらの送達システムに添加することができる。装置は肺内経路によって薬剤を送達するように設計されていることから、センサーアレイを装置に組み入れることができ、患者はドキュメンテーションが起こるために装置に息を吐くだけでよい。
【0154】
最後に、装置は、鼻腔内経路によって薬剤を送達するために利用できる。この経路はしばしばウイルス感染症またはアレルギー性鼻炎を有する患者のために用いられるが、同様にペプチドおよびホルモンを送達するためにもますます用いられている。この場合も、センサーアレイをこれらの装置に組み入れることは単純であり、または患者はマーカー感知システムによって検出するために鼻から息を吐き出すことができる。
【0155】
治療薬マーカー
本発明に従って、血液中の治療薬濃度の指標として有用な治療薬マーカーには、以下の嗅覚マーカーが含まれるがそれらに限定されるわけではない:ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトアルデヒド、アセトフェノン、トランス-アネソール(1-メトキシ-4-プロペニルベンゼン)(アニス)、ベンズアルデヒド(安息香酸アルデヒド)、ベンジルアルコール、桂皮酸ベンジル、カジネン、カンフェン、カンフル、シナムアルデヒド(3-フェニルプロペナル)、ニンニク、シトロネラール、クレゾール、シクロヘキサン、ユーカリプトール、およびオイゲノール、オイゲニルメチルエーテル、ブチルイソブチレート(n-ブチル2-メチルプロパノエート)(パインアップル)、シトラール(2-トランス-3,7-ジメチル-2,6-アクタジエン-1-オール)、メントール(1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキサン-3-オール)、およびα-ピネン(2,6,6-トリメチルビシクロ-(3,1,1)-2-ヘプテン)。これらのマーカーは、着香料成分として食品産業において用いられており、米国食品医薬品局によって許可されていることから、好ましい。先に示したように、本発明において用いるための嗅覚マーカーは、非常に多数の利用可能な化合物から選択することができ(「Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients」, 4th edition, CRC Press, 2001を参照されたい)、そのような他の応用可能なマーカーを用いることは本明細書において企図される。
【0156】
本発明のマーカーにはまた、連邦政府によって承認され、GRAS(「一般的に安全と認識される」)として分類されている添加剤が含まれ、これらは米国食品医薬品局食品安全性応用栄養学センターによって維持されるデータベースにおいて利用可能である。呼気において容易に検出可能なGRASと分類されるマーカーには、硫酸水素ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリグリセロールポリリシノール酸、カゼインペプトンカルシウム-燐酸カルシウム、植物(すなわち、キク;甘草;jellywort、スイカズラ;ササクサ、桑の葉;アカソケイ;ウツボグサ;エンジュの花芽)、ビスグリシン酸第一鉄キレート、海藻由来カルシウム、DHASCO(ドコサヘキサエン酸濃縮単細胞油)、およびARASCO(アラキドン酸濃縮単細胞油)、フルクトオリゴ糖、トレハロース、γシクロデキストリン、フィトステロールエステル、アラビアゴム、硫酸水素カリウム、ステアリルアルコール、エリスリトール、D-タガトース、およびミコプロテインが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0157】
先に述べたように、治療薬マーカーは、その自身のマーカーとして所望の治療薬自身を用いることを除外しないその物理的および/または化学的特性によって検出される。本明細書において企図される治療薬マーカーにはまた、本発明のセンサーを用いて検出を増強するために投与される産物および化合物が含まれる。その上、治療薬マーカーには、検出/定量における差を増強するために所望の治療薬療法に加えることができる多様な産物または化合物が含まれうる。一般的に、本発明に従って、治療薬マーカーは水に難溶性であり、これは呼気におけるその揮発性および検出を増強する。
【0158】
本発明に従って、治療薬を投与すると(治療薬がマーカーである場合)、または治療薬とマーカーとを同時投与すると、いくつかの状況においてマーカーの検出が起こりうる。薬物が経口投与される一つの例において、マーカーは、摂取された後、口、食道および/または胃において「コーティング」または持続することができ、呼気によって検出することができる(ブレスミントを食べた後に口内に残っている味または香りと類似)。
【0159】
第二の場合において、図3Aおよび3Bに示したように、薬物(およびマーカー)が経口投与される場合、薬物は口または胃において酸または酵素と反応して、マーカーを産生または放出し、これを呼気の際に検出することができる。第三に、薬物および/またはマーカーは、消化管において吸収されて、肺に排泄されうる(すなわち、アルコールは急速に吸収されて、呼気分析器によって検出される)。一般的に、本発明の治療薬マーカーは、薬物の薬力学および薬物動態を決定するための手段を提供する。
【0160】
一つの態様において、治療薬マーカーは、治療薬と同時に投与される(すなわち、マーカーは薬学的に許容される担体において提供される−急速に溶解するグルコースおよび/または蔗糖からなる医薬品コーティングにおけるマーカー)。好ましい態様において、治療薬は、丸剤の形で提供され、そのコーティングには、空気によって凝集する糖の結晶において少なくとも一つのマーカーが含まれる。これは、唾液分泌を刺激して、口腔周囲にマーカーを広げるように作用し、口腔における寿命を増強する。喉および食道はまた、薬剤が摂取されるとマーカーによってコーティングされ、マーカーの検出はさらに増強される。
【0161】
このように、薬物を患者に投与する場合、本発明の好ましい態様は、センサー(すなわち電子ノーズ)を用いて、患者の呼気においてほぼ即時に治療薬マーカーを検出および定量する(またはおそらく、患者に故意にげっぷを出すように要請することによって)。特定の薬物組成物は、呼気において検出可能ではない可能性がある。他の組成物は、薬剤が胃において溶解しないようにコーティングを有してもよい。双方の場合において、代わりの態様として、非毒性の嗅覚マーカー(すなわち、揮発性の有機蒸気)を薬学的に許容される担体(すなわち、丸剤のコーティング、丸剤における異なる急速に溶解する成分において、または薬物が液体または懸濁剤の場合、溶液)に添加して、呼気中のマーカーを同定/定量するための手段を提供して、このように血液中の薬物濃度を決定することができる。
【0162】
好ましくは、マーカーは、しばらくのあいだ、口腔、食道または胃をコーティングして、呼気(またはげっぷ)中に排泄される。丸剤、カプセル剤、および急速溶解錠の形で投与される薬剤の場合、マーカーは、コーティングとして適用することができ、または治療薬に物理的に配合もしくは添加することができる。マーカーはまた、液体型(すなわち、シロップ剤、インヘラーを通して、または他の投与手段)で投与される治療薬と共に含まれてもよい。
【0163】
本発明のマーカーは、特異的薬剤またはあるクラスの薬剤を示すために用いることができるであろう。例えば、患者は抗うつ剤(ノルトリプチリンのような三環系抗うつ剤)、抗生物質、抗高血圧剤(すなわち、クロニジン)、鎮痛剤、および抗逆流剤を服用してもよい。一つのマーカーを、エリスロマイシンのような、あるクラスの抗生物質またはサブクラスの抗生物質のために用いることができるであろう。もう一つのマーカーを、カルシウムチャンネル遮断剤のような、あるクラスの抗高血圧剤のために、または特異的サブクラスの抗高血圧剤のために用いることができるであろう。同じことが抗逆流剤にも当てはまるであろう。さらに、マーカー物質の組み合わせを用いることができ、それによってかなり少数のマーカーが多数の薬剤を特異的に同定することができるであろう。
【0164】
治療薬の薬力学および薬物動態
治療薬を本発明に従って患者に投与する場合、薬物の薬力学および薬物動態に影響を及ぼす多くの要因が存在する。例えば、薬物の親和性(すなわち、患者の体内における薬物と標的受容体との引力の程度)、薬物分布(すなわち、血液中で循環するタンパク質に対する薬物の結合、薬物の脂肪への吸収)、薬物代謝および排泄(すなわち、腎クレアランス)、または「遊離」型の薬剤の存在は、患者における薬物の薬力学および薬物動態に影響を及ぼす可能性がある。
【0165】
タンパク質に結合したまたは脂肪に吸収された薬物は、所望の薬理学的作用を発揮せず、非結合薬との平衡に存在する。タンパク質上での結合部位の他の薬剤との競合、体における脂肪の量、産生されたタンパク質の量を含む多数の要因が、結合および未結合薬の平衡を左右する。
【0166】
未結合薬は、直接薬理作用に関与しうる、または所望の効果を生じる薬剤に代謝されうる。活性薬の代謝はしばしば、血流からのその除去およびその効果の終了に至る。薬物作用は、遊離の薬物の排泄によって終了しうる。遊離の薬物または代謝物は、尿、消化管、または呼気において排泄されうる。そのような治療薬の血液(または血漿もしくは血清)中の濃度は、物質の臨床効果に関連する。
【0167】
先に記述したように、治療薬に関する血中濃度試験は、血中濃度の測定が、タンパク質もしくは膜に結合した薬物の量、または薬物間の相互作用および競合を説明しないことから、患者に及ぼす治療薬の影響の正確な指標を提供しない可能性がある。この理由から、血漿中の遊離の薬物のみを測定することが都合がよい可能性がある。血漿中の遊離の薬物の濃度は通常低く、測定のために洗練された高価な分析技術を必要とする。対照的に、呼気に存在する治療薬マーカーは、本発明に従って血液中の遊離の薬物濃度の指標である。このように、本発明のシステムおよび方法は、薬物動態作用に関与する遊離の薬剤の実際の濃度に関する有効な指標を提供する。
【0168】
さらに、血液を直接試験すること(すなわち、試料分析のために採血する)は、侵襲的で、時間がかかり、高価であり、不正確となる傾向がある。対照的に、患者の呼気における治療薬マーカーを分析することによって、本発明のシステムおよび方法は、非侵襲性で迅速かつ正確である。治療薬マーカーが呼気に排泄される場合、呼気における濃度は、血液中の遊離の治療薬濃度と比例して、このように、薬物の吸収、分布、代謝、および/または排泄速度を示す。
【0169】
特定の態様において、代謝物は、代謝物が活性薬の産物である場合、呼気において測定するための治療薬マーカーとして作用してもよい。活性薬と呼気に排泄された代謝物とのあいだで平衡が存在する限り、活性薬の活性を、本発明に従って分析することができる。
【0170】
本発明の方法は、そのような比例濃度を考慮に入れて、未結合の物質、マーカー、および患者の呼気における薬物に関連した活性代謝物の濃度を測定することによって、治療薬の吸収、分布、代謝および排泄速度を決定することができる。このように、そこから適切な投与療法を決定することができる。
【0171】
センサー技術
センサー技術は本発明によって、体液試料中の代理マーカーの有無を検出するために用いられる。代理マーカーの検出は、標的SCEの存在および/または量を示す。特定の態様において、代理マーカーの検出はまた、ペイロード/治療の放出を示すことができる。
【0172】
本発明のセンサーは、米国特許第6,010,459号、第5,081,871号、第5,042,501号、第4,202,352号、第5,971,937号、および第4,734,777号に記述されるセンサーが含まれるがこれらに限定されるわけではない広範なセンサー技術、「人工」または「電子」ノーズまたはタング、半導体ガスセンサー技術、導体ポリマーガスセンサー技術、表面音波ガスセンサー技術、イムノアッセイ、金属-絶縁体-金属集合体(MIMIE)センサー、交叉反応光学マイクロセンサーアレイ、蛍光ポリマー被膜、および表面増強ラマン分光法(SERS)から選択することができる。
【0173】
本発明は、表面音波(SAW)センサーに基づくセンサー技術を用いることを企図する。これらのセンサーは、高周波で振動し、特定の分子の質量負荷に比例した摂動に反応する。これは、センサー表面の蒸気相で起こる。得られた周波数のシフトは、コンピューターによって検出および測定される。通常、センサーのアレイ(センサー4〜6個のような)を用い、それぞれが特定のクラスの分子に選択的に結合しておよび/またはその蒸気を吸収する異なる化学選択的ポリマーによってコーティングされる。得られたアレイまたは「サイン」は、特定の化合物を同定する。アレイの感度は、ポリマーコーティングの均一性および厚みに依存する。
【0174】
表面-音波(SAW)ガスセンサーには、一般的に、代理マーカーを選択的に吸収することができるポリマーコーティングによって覆われた圧電特徴を有する基質が含まれる。得られた質量の変動によってその共鳴周波数の変動が起こる。このタイプのセンサーは、代理マーカーに関して非常に良好な質量-容積測定値を提供する。SAW装置において、代理マーカーは、互いに組み合わさった電極の組のあいだに表面音波を伝搬するために用いられる。化学選択的材料を、変換器の表面にコーティングする。代理マーカーが、基質上でコーティングされた化学選択的材料と相互作用する場合、相互作用によって、伝搬された音波の振幅または速度のようなSAW特性の変化が起こる。音波の特徴の検出可能な変化は、代理マーカー(および対応する標的SCE)の存在および濃度を示している。
【0175】
抗体層がSAWセンサーの表面に結合しているSAW蒸気感知装置が開示されている(Stubbs, DD. et al., 「Investigation of Cocaine Plumes Using Surface Acoustic Wave Immunoassay Sensors」Anal. Chem., 75:6231〜6235(2003)を参照されたい)。標的抗原が抗体と反応する場合、音波の速度が変化して、SAWの振動周波数を異なる値にシフトさせる。本発明は、そのようなSAW装置を用いることと共に、アプタマー(指標アプタマーを含む)、分子ビーコン、および他の公知のバイオセンサーがSAWセンサーの表面をコーティングするために利用されているSAW感知装置を企図する。
【0176】
特定の態様は、米国特許第4,312,228号および第4,895,017号、ならびにGroves W.A. et al., 「Analyzing organic vapors in exhaled breath using surface acoustic wave sensor array with preconcentration : Selection and characterization of the preconcentrator adsorbent」, Analytica Chimica Acta, 371:131〜143(1988)を含む、多数の特許および刊行物において記述される公知のSAW装置を利用する。
【0177】
本発明の操作に応用可能な化学選択的コーティングを用いる他のタイプの化学センサーには、バルク音波(BAW)装置、プレート音波装置、交互嵌合微小電極(IME)装置、光導波管(OW)装置、電気化学センサー、および電気伝導センサーが含まれる。
【0178】
もう一つの態様において、本発明は、「人工ノーズ」、「電子ノーズ」または「電子タング」として知られる市販の装置のような液体センサー技術を利用する。これらの装置は、単純または複雑なガス、蒸気、臭い、液体、または溶液の定性的および/または定量的分析を行うことができる。液体センサー技術を記述する多くの特許および特許出願には、以下が含まれる:米国特許第5,945,069号、第5,918,257号、第5,891,398号、第5,830,412号、第5,783,154号、第5,756,879号、第5,605,612号、第5,252,292号、第5,145,645号、第5,071,770号、第5,034,192号、第4,938, 928号、および第4,992,244号、ならびに米国特許出願第2001/0050228号。Cyrano Sciences, Inc.(「CSI」)によって提供されるもののような(すなわち、臭いの感知のためのCSI携帯型電子ノーズおよびCSIノーズチップ(商標)集積回路−米国特許第5,945,069号)、特定の感度のよい市販の既製の電子ノーズは、体液試料における検出可能な(代理および/または治療薬)マーカーの存在を検出するために、好ましくは本発明において用いられる(図2)。
【0179】
本発明の他の態様は、半導体ガスセンサー:質量分析計;およびIR、UV、可視、または蛍光分光光度計から選択されるセンサー技術を利用する。これらのセンサーによって、代理または治療薬マーカーは、その電気抵抗を変化させることによって、半導体の電気的特性を変化させ、これらの代用物の測定によって、試料中に存在する検出可能なマーカーの濃度を定量することができる。(代理および/または治療薬)マーカーを検出するために用いられる方法および装置は、一般的に数秒間の短い検出期間を有する。
【0180】
本発明に含まれるさらなる最近のセンサー技術には、導体-ポリマーガスセンサー(「ポリマー」)、アプタマーバイオセンサー、および増幅蛍光ポリマー(AFP)センサーを有する装置が含まれる。
【0181】
導体-ポリマーガスセンサー(「化学抵抗器」とも呼ばれる)を、特定の検出可能なマーカー分子に対して感受性がある被膜によってコーティングする。分子に接触すると、センサーの電気抵抗が変化して、この抵抗の変化の測定によって、検出される物質の濃度(すなわち、血液中の代理マーカーおよび対応する標的SCEまたは治療薬マーカーおよび関連する治療薬濃度)を決定することができる。このタイプのセンサーの長所は、それが室温に近い温度で機能する点である。異なる検出マーカーを検出するための異なる感受性を、代わりの電導ポリマーを改変または選択することによって得ることができる。
【0182】
ポリマーガスセンサーを、センサーアレイに構築することができ、それぞれのセンサーは、異なるガスに反応して、(代理または治療薬)マーカーの選択性を増強する。
【0183】
アプタマーに基づくバイオセンサーは、本発明において、体液試料における代理および/または治療薬マーカーの存在を検出するために利用することができる。アプタマーバイオセンサーは、結合または解離事象に起因する振動システムの質量の調節により、共鳴振動数の微細な変化を検出することができる共鳴振動クオーツセンサーである。
【0184】
同様に、増幅蛍光ポリマー(AFP)センサーは、体液試料において検出可能なマーカーの存在を検出するために本発明において利用してもよい。AFPセンサーは、増幅蛍光ポリマーを利用する極めて感度のよい非常に選択的な化学センサーである。蒸気がポリマーの薄膜に結合すると、被膜の蛍光が減少する。単分子結合事象は、多くのポリマー反復単位の蛍光を消光して、それによって消光の増幅が起こる。被膜に対する標的マーカーの結合は可逆的であり、したがって被膜は再利用することができる。
【0185】
本発明に従って、競合的結合イムノアッセイを用いて、(代理および/または治療薬)マーカーの存在に関して体液試料を試験することができる。イムノアッセイ試験には一般的に、小片の特定の領域に組み入れられた一つまたはそれ以上の試薬を有する吸収性の繊維性小片が含まれる。体液試料を小片に沈積させて、毛細管作用によって、試料は小片に沿って移動し、特異的試薬領域に入り、そこで化学反応が起こるであろう。対象マーカーの少量の存在下で検出可能な反応、例えば色の変化を示す少なくとも一つの試薬が含まれる。イムノアッセイ技術を記述する特許には以下が含まれる:米国特許第5,262,333号および第5,573,955号。
【0186】
本発明の他の態様は、標的化合物の体液試料を分析するためにフローサイトメーターを利用する。フローサイトメトリーは、粒子の特定の光学特性を感知することによって、顕微鏡的生物学的粒子の特定の物理化学特性を決定するために用いられる技術である。これを行うために、粒子をシース液内で流体力学的フォーカシングを用いて単一のファイルに整列させる。次に粒子に光線によって個々に信号を送る。それぞれの粒子は光線を散乱し、散乱プロフィールを生成する。散乱プロフィールはしばしば、異なる散乱核で光の強度を測定することによって同定される。各粒子の特定の物理および/または化学特性を、散乱プロフィールから決定することができる。フローサイトメトリー技術を記述する特許には以下が含まれる:米国特許第6,597,438号、第6,097,485号、第6,007,775号、および第5,716,852号。
【0187】
本発明のセンサーには、ポリマーコーティングのパルスレーザー沈着のために改変真空室において製造された集積回路(チップ)が含まれる。これは、同時の薄膜沈着波形検出を行い、SAWセンサーの高い感度に関する最適な条件を得るであろう。バイオセンサーコーティングの形態学および微小構造は、プロセスパラメータの関数として特徴が示されるであろう。
【0188】
体液が呼気である場合、本発明において用いられるセンサーは、呼気採取装置を必要とすることなく、患者がセンサーに直接息を吹きかけることができるように改変してもよい。例えば、呼気をセンサーに容易に伝搬するための装置に患者を接触させるためのマウスピースまたはノーズピースが提供されるであろう(すなわち、米国特許第5,042,501号を参照されたい)。センサーがニューラルネットワークに接続している関連する態様において、同じ患者が装置に直接息を吹きかけた場合と、センサーがそれらを採取する前に呼気が乾燥した場合、ニューラルネットワークからの出力は類似である。
【0189】
呼気における湿度は、「乾燥」ガスの場合に限って作動する特定の電子ノーズ装置にとって問題となる(SAWセンサーではこの限りでない)。そのような湿度感受性装置を用いる場合、本発明は、そのような電子ノーズ技術を、試料の湿度を除去する手段を有する装置に患者が直接息を吹き付けることができるように、適合させてもよい。これは、乾燥ガスによる換気の際に気道の乾燥を防止するために設計された装置である市販の減湿剤または熱水分交換器(HME)を含めることによって行われる。
【0190】
または、患者は、通常の呼吸の際の脱水を防止するために解剖学的生理学的減湿体であるその鼻から息を吐いてもよい。または、センサー装置を、GCカラムの特性の一部を有する前濃縮器に接続することができる。気体試料を、センサーアレイの上に通過させる前に前濃縮器の中を通す。気体を加熱および揮発させることによって、湿度を除去して、測定されるマーカーを、可能性がある干渉物質から分離することができる。
【0191】
好ましくは、操作において、センサーは、必要であれば薬物投与の前に患者に関する基準値スペクトルを同定するために用いられるであろう。これは、患者が一つより多い薬物を同時に投与されて、胃、口、食道、および肺において異なる食品および臭いによる起こりうる干渉がある場合に、一つより多い治療薬を検出するために有用となるであろう。
【0192】
報告手段およびデータのモニター/アナライザー
体液試料のセンサー技術分析からの結果は、報告手段によってユーザー(または患者)に任意で提供される。一つの態様において、センサー技術には報告手段が含まれる。企図される報告手段には、電子結果または印刷された結果を提供することができるセンサー技術に接続したコンピュータープロセッサーが含まれる。または、報告手段には、デジタルディスプレイパネル、別の機械に輸送してそこで読み取ることができるコンピューターディスクおよびテープのような輸送可能な読み/書きができる磁気媒体、ならびに印刷された報告書を作成するための熱転写、レーザー、インクジェットプリンターのようなプリンターが含まれうる。
【0193】
報告手段は、結果をファクシミリ、電子メール、郵便、もしくは急使サービスによって、または報告書を患者に安全かつ確実に送付する他の任意の手段によってユーザー(または患者)に提供することができる。対話式音声反応システム、対話式コンピューター報告システム、対話式電話タッチトーンシステム、または他の類似のシステムのような、対話式報告手段も同様に本発明によって企図される。ユーザー(または患者)に提供される報告書は、特定の期間に行われた分析の概要、または特定の体液試料分析に関する詳細な情報を含む、多くの形であってもよい。結果はまた、患者に請求書を送るための財政的データベースを配置するために、または臨床データベースもしくは統計学的データベースを配置するために用いてもよい。
【0194】
データモニター/アナライザーは、公知のマーカーからの既に測定されたおよび特徴が示された反応に対して、反応パターンを比較することができる。それらのパターンのマッチングは、ニューラルネットワークを含む多数の技術を用いて行うことができる。ポリマー32個のそれぞれからの類似体出力を、例えば「ブランク」または対照と比較することによって、ニューラルネットワークは、そのマーカーに独自のパターンを確立して、その後そのマーカーを認識するように学習する。特定の抵抗器幾何学を、感知される標的マーカーに対する所望の反応を最適にするように選択する。本発明のセンサーは好ましくは、多様な治療薬マーカーを同時に評価および/またはモニターするために、気相生物学的溶液においてマーカーを検出および定量するために適した自己較正ポリマーシステムである。
【0195】
本発明に従って、センサーには、投与における任意の不規則性、危険な薬物相互作用等に関して医療スタッフおよび/または患者に通知することができる、それと連絡することができるコンピューターが含まれる。このシステムは、患者に治療薬の薬理学的有効量を投与したか否かに関する決定を行うことができるであろう。装置はまた、投与される治療薬の間隔および/または用量に関して患者(またはユーザー)に警告を発することができるであろう。したがって、本明細書において、本発明のセンサーは携帯型となりうると企図される。
【0196】
体液試料
ナノ構造アセンブリおよび/または治療薬を患者に投与した後、体液試料を分析のために患者から採取する。体液試料を、代理マーカーおよび/または治療薬マーカーの存在に関して分析する。代理マーカーが検出されれば、患者にSCEが存在することを示し、非侵襲性のポイントオブケア疾患診断を可能にする。
【0197】
ペイロードおよび/または治療薬マーカーがナノ構造アセンブリにおいて提供される場合、疾患の実質的に同時の治療および診断と共に、治療薬血中濃度のモニタリングが提供される。特に、呼気における代理マーカーの検出および/または定量によって、疾患診断および局所治療送達の通知が可能となる。治療薬マーカーの検出は、血液中の治療薬の濃度を示す。
【0198】
本発明に従って、体液試料には、呼気(咳、くしゃみを含む)、血液、尿、汗、粘液、精液、胆汁、便、唾液、リンパ液、血漿、羊水、腺液、喀痰、および脳脊髄液が含まれるがそれらに限定されるわけではない。本発明の好ましい態様は、呼気試料を分析する。
【0199】
一般的に、呼気流は、連続または段階を含む。呼気の最初では、初期段階が存在して、これを代表する気体は呼吸器系の解剖学的に不活性な(デッドスペース)部分に由来する、言い換えれば口および上部呼吸器に由来する。この後に平衡段階が続く。平衡段階の初期では、気体はデッドスペースと代謝的に活性な気体との混合物である。呼気の最後の部分は、深部肺の気体、いわゆる肺胞気体のみを含む。肺胞に由来するこの気体は、呼気終末ガスと呼ばれる。
【0200】
好ましい態様において、呼気試料を呼吸終末期に採取する。呼気終末二酸化炭素モニタリングのために用いられる技術と類似の技術を用いて、試料が採取された時期を決定することができる。気道圧の測定のための公知の方法は、呼吸サイクルの適当な相で試料を採取するためのもう一つの手段を提供する。公知の側流法によって採取した単一または多数の試料が好ましいが、センサー取得時間が短い場合、インラインサンプリングを用いてもよい。前者の場合、試料は、気管内(ET)チューブの近位末端でアダプターを通して採取され、孔径の細いチューブを通して本発明のセンサーに吸い込まれる。
【0201】
試料の大きさおよびセンサー反応時間に応じて、呼気を連続サイクルで採取してもよい。インラインサンプリングの場合、本発明のセンサーをガス流においてETチューブに直接近位に配置する。試料の呼気終末ガスの代わりに、試料を、呼吸の呼気相を通して採取して、平均値を決定して、血中濃度に相関させることができる。
【0202】
図1を参照して、上の枠は、1回の呼吸サイクルのカプノグラムを示す。正確な血液レベル相関のために、肺におけるCO2濃度を反映する「呼気終末PCO2」と表示された時点で、試料を採取する。下の枠は、閉塞性肺疾患患者からの数回の呼吸のカプノグラムを示す。この場合も、呼気終末試料は血中濃度と良好に相関した。
【0203】
一つの態様において、VaporLab(商標)ブランドの機器を用いて、呼気試料を採取して分析する。VaporLab(商標)機器は、本発明に従って呼気試料における成分を検出するために適した、携帯型のバッテリー式のSAWに基づく化学蒸気同定機器である。この機器は、より大きい精度および識別のために直交蒸気反応を提供する、非常に安定性の高いSAWセンサーアレイを用いて揮発性および半揮発性の化合物に対して感受性を有する。関連する態様において、この機器は、コンピューターと交信して、増強されたパターン分析および報告書作成を提供する。好ましい態様において、この機器には、「訓練」目的での、すなわち迅速な「オンザフライ」分析に関して化学蒸気サインパターンを記憶させるために、ニューラルネットワークが含まれる。
【0204】
もう一つの態様において、試料を、異なる採取口を有するチューブを通して、ETチューブの遠位末端で採取する。これは、各呼吸サイクルのあいだにより大きい試料を採取することによってサンプリングを改善する可能性がある。
【0205】
特定の場合、患者の体における治療薬の濃度は、所定の期間において投与された薬物の量および物質が体から排泄される(代謝)速度によって調節される。本発明は、治療薬を患者に投与する段階、および適した時間の後に、治療薬に関連した未結合の物質、活性代謝物、または不活性代謝物のような治療薬マーカーの濃度に関して患者の呼気を分析する段階を提供する。本発明の特定の態様において、マーカー濃度は、患者における薬物の代謝の特徴を示す。
【0206】
本発明の方法にはさらに、呼気の開始および終了を検出するためにフローセンサーを用いることが含まれてもよい。方法にはさらに、分析からの結果を提供する段階、および治療薬の血中濃度をユーザーまたは患者に交信する段階が含まれる。好ましい態様において、分析結果を、呼気のサンプリング時に直ちに交信することができる。
【0207】
特定の態様において、本発明は、患者の血流における治療薬レベルの即時モニタリングを可能にする。本明細書において企図されるように、即時モニタリングは、治療薬の投与後(すなわち、一般的に数分から約24時間以内)短期間において、実質的に完全に標的マーカーに関して患者からの呼気のサンプリングおよび分析を指す。
【0208】
または、特定の場合において、一定期間が進行してから初めて、血流中の治療薬濃度レベルを検出することができる。したがって、本発明のシステムおよび/または方法は、血流中の治療薬濃度の間欠的または連続的モニタリングのために治療薬を服用する患者に提供することができる。特定の態様において、本発明のモニタリングシステムおよび方法は、毎時間、毎日、毎週、毎月、または毎年、治療薬を服用する患者に行うことができる。さらに、さらなる治療薬が処方された場合には、さらなるモニタリングを患者に行うことができる。
【0209】
その上、呼気のサンプリングを制御するためにフローセンサーからのシグナルを自動的に検出するためのデータ処理/制御単位として、CPUを提供してもよい。CPUはさらに、治療薬の血中濃度における傾向の分析に基づいて送達される治療薬の適当な用量をユーザー/患者に提供してもよい。
【0210】
治療薬投与の様式に応じて、本発明は、血中濃度レベルに基づいて治療薬の適当な用量を自動的に調節して、患者に投与するための手段を提供する。特定の態様において、CPUは、用量調節および投与手段の分析および制御のために提供される。治療薬が静脈内投与される一つの態様において、注入ポンプが用いられ、CPUは注入ポンプの分析および制御を提供する。
【0211】
本発明に従う呼気分析によって測定された治療薬マーカーの血液中の濃度は、治療薬の高用量(すなわち、毒性量)、低用量(すなわち、無効量)または有効(すなわち、適当な)量を患者が投与されている時期を示してもよい。代謝における広い変動、または治療薬に対する反応が存在する場合、呼気濃度に関する知識があれば、ユーザーに薬物が血液中に蓄積されて、おそらく薬物の危険な毒性レベルに至るか否か、または濃度が低下して、おそらく薬物の不適切な用量に至るかどうかを知らせる。したがって、本発明に従う治療薬血中濃度の変化のモニタリングは有用である。
【0212】
もう一つの態様において、呼気は、連続的または定期的にマーカー濃度に関して測定される。呼気から、少なくとも一回の測定されたマーカー濃度値を抽出する。多数のタイプの呼気サンプリング装置を用いて、本発明の方法を行うことができる。
【0213】
一つの態様において、呼気サンプリング装置には、呼気が流れる通常のフローチャンネルが含まれる。フローチャンネルは、マーカー濃度を測定するために本発明のセンサーと共に提供される。さらに、必要であれば、少なくとも測定された濃度結果をユーザーに送達するための呼気サンプリング装置と共に必要な出力要素が含まれてもよい。
【0214】
警告メカニズムも同様に提供してもよい。類似のタイプの機器を、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,971,937号の図1および2に示す。
【0215】
もう一つの態様において、濃度のレベルを測定した後、数値(例えば、1から100の尺度で50)が得られる。濃度がその値より低下すれば、新しい値は濃度の低下を示すであろう。濃度がその値より増加すれば、新しい値は濃度の増加を示すであろう。この数的尺度は、濃度の変化のより容易なモニタリングを可能にするであろう。数的尺度はまた、警告、出力、チャート作製、および外部装置(例えば、注入ポンプ)の制御に関する制御シグナルへのより容易な変換を可能にする。上限および下限は、無効から危険な治療薬レベルまでの閾値を示すように設定することができるであろう。
【0216】
本発明に従うナノ構造アセンブリを含む組成物は、当業者に公知の方法を利用して投与することができる。本発明の一つの局面において、薬学的に許容される担体、および任意で他の治療および/または予防的成分と混合した組成物が調製される。
【0217】
一般的に、本発明の薬学的組成物を経口または鼻腔内(すなわち、吸入)投与型で投与することが好ましいが、製剤は、非経口、静脈内、筋肉内、経皮(すなわち、局所)、口腔内、皮下、経粘膜、坐剤または他の経路によって投与してもよい。静脈内および筋肉内組成物は、好ましくは滅菌生理食塩液において投与される。当業者は本発明の組成物を改変してもよく、それらも本発明の組成物の治療活性を不安定にするまたは損なうことなく、特定の投与経路に関して多数の製剤を提供するために本明細書の教示に含まれる。特に、例えば、所望の化合物をより水または他の溶媒に溶解するように改変することを、通常の改変(塩の調製、エステル化)によって容易に行ってもよい。
【0218】
本発明に従って、組成物は患者に非経口的に(すなわち、静脈内、筋肉内に)送達することができる。そのような投与剤形の場合、組成物を溶液もしくは懸濁液に調製する、または使用前に溶液もしくは懸濁液に変換するための凍結乾燥製剤に調製することができる。滅菌水、生理食塩液(すなわち、燐酸緩衝生理食塩液(PBS))は、薬学的に許容される担体または希釈剤として簡便に用いることができる。通常の溶媒、界面活性剤、安定化剤、pH緩衝剤、抗菌剤、キレート剤、および抗酸化剤は全てこれらの製剤において用いることができ、これらには酢酸塩、クエン酸塩、または燐酸塩緩衝液、塩化ナトリウム、デキストロース、固定油、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、アスコルビン酸、硫酸水素ナトリウム等が含まれるがそれらに限定されるわけではない。これらの製剤は、バイアル、アンプル、およびシリンジのような任意の通常の容器において保存することができる。
【0219】
本発明の組成物の滅菌注射溶液は、必要であれば濾過滅菌後、適当な溶媒において必要量のナノ構造アセンブリを、成分の一つまたは組み合わせと共に組み入れることによって調製することができる。一般的に、分散剤は、基礎分散媒体および他の必要な成分を含む滅菌媒体にナノ構造アセンブリを組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液のための滅菌粉末の調製には、滅菌溶液を形成するために、活性成分と任意の所望の成分とを含む粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥が含まれる。
【0220】
本発明の組成物はまた、封入ゼラチンカプセルまたは圧縮錠で経口送達することができる。カプセル剤および錠剤は、任意の通常の技術で調製することができる。例えば、活性化合物を製剤に組み入れることができ、これには、賦形剤(すなわち、デンプン、乳糖)、結合剤(すなわち、ゼラチン、セルロース、トラガカントゴム)、崩壊剤(すなわち、アルギネート、プリモゲル、およびコーンスターチ)、潤滑剤(すなわち、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素)、および甘味料または着香料(すなわち、ブドウ糖、蔗糖、サッカリン、サリチル酸メチル、およびペパーミント)のような薬学的に許容される担体が含まれる。カプセル剤および錠剤の香り、味、色、および形状を改変するために、カプセル剤および錠剤に関して様々なコーティングを調製することができる。さらに、脂肪酸のような液体担体も同様にカプセル剤に含めることができる。
【0221】
本発明のナノ構造アセンブリは、治療的薬剤の製剤または溶液を通してそれらを均一に混合することによって、医薬品製剤に添加することができる。または、ナノ構造アセンブリは、治療的薬剤を含む錠剤またはカプセル剤に皮膜またはコーティングとして形成される。一つより多い薬剤が処方されている場合、異なる第一および/または第二の検出マーカーを、それぞれの投薬に関連して用いることができる。好ましくは、本発明の第一および/または第二のマーカーは、それらが患者から採取した体液試料において出現するであろう24〜48時間の生物学的半減期を有する。
【0222】
遠隔通信システム
本発明のさらなる態様には、センサー技術に接続される自宅(または他の遠隔位置)における伝達装置が含まれる。自宅の伝達装置は、直ちにまたは既定の間隔でデータモニター/アナライザー装置によって回収されたデータを、標準的な電話線によって直接伝達することができるであろう。データの通信によって、ユーザー(すなわち、医師)は、治療薬の適当な用量が患者に投与されたか否かを遠隔で確認することができる。自宅から伝達されたデータを、薬物の血中レベルがデータベースに保存されるコンピューターにダウンロードすることも可能であり、薬理学的有効性から外れる如何なる変動も、ユーザー(すなわち、患者、医師、看護師)が、センサーに接続したコンピューター処理単位によって提供される提案当たりの薬物用量、またはヘルスケア担当者(すなわち、医師)によって提供された用量提案当たりの用量を適切に調節することができるように、自動的に表示される(すなわち警告される)であろう。
【0223】
実施例1−ヘロインの使用を試験するためのシステムおよび方法
一つの態様において、ヘロイン中毒の患者に、本発明のナノ粒子アセンブリを含む組成物を投与する。ナノ粒子アセンブリは、薬物ヘロインを検出するように設計される。一つの態様において、ナノ粒子アセンブリは、ナノ粒子、代理マーカー、およびSCE検出器を含む。好ましくは、SCE検出器は、ヘロインに対して特異的となるように設計されたアプタマー(ヘロイン-アプタマー)である。ヘロイン-アプタマーおよび代理マーカー(ヘロイン-代理マーカー)を、ナノ粒子の表面に結合させる。
【0224】
好ましい態様において、ヘロイン-アプタマーを、その中にヘロイン-代理マーカーを含む中空のナノ粒子の末端キャップに結合させる。ヘロイン-アプタマーは、ヘロインとの相互作用時に、末端キャップがナノ粒子から放出されて、ヘロイン-代理マーカーを放出するように設計される。ヘロイン-代理マーカーは、患者から採取した体液試料において容易に検出可能である。
【0225】
ヘロインの使用に関して試験するために、ナノ粒子アセンブリを患者に投与した後、患者の体液試料(すなわち、尿、呼気、血液)を得る。ヘロインが患者に存在する場合、ヘロインは、ヘロイン-アプタマーと相互作用して、ナノ粒子の「キャップを外し」、このように、体液試料における同定のためにヘロイン-代理マーカーを放出する。次に、これまでに開示された多数の任意の一つのセンサー技術を用いて、ヘロイン-代理マーカーを検出し、ヘロイン-代理マーカーがあれば患者の体にヘロインが存在することを示す。
【0226】
実施例2−アテローム性動脈硬化症の治療
本発明のもう一つの態様において、アテローム性動脈硬化症を診断および治療するために、アテローム性動脈硬化症を有する患者に、ナノ粒子アセンブリを含む組成物を投与する。ナノ粒子アセンブリは、ナノ粒子;代理マーカー;ペイロード;およびSCE検出器を含む。アテローム性動脈硬化症(ペイロード)の治療は、アテローム性動脈硬化症疾患の進行を相殺するために患者自身のホルモンの変化を利用する抗酸化剤遺伝子(MnSOD、HO-1およびPON1)を含む。SCE検出器は、アテローム性動脈硬化症のバイオマーカー(すなわち、ICAM-1、VCAM-1、またはLOX-1)を検出するように設計される。ICAM-1、VCAM-1、およびLOX-1は、サイトカインレベル(IL-1、TNF-1、IL-6)で調節されるヒト冠血管内皮細胞における前アテローム形成性遺伝子である。
【0227】
SCE検出器が、アテローム性動脈硬化症バイオマーカーの存在下である場合、これは、抗酸化剤遺伝子と代理マーカーの放出を引き起こす。抗酸化剤遺伝子は、アテローム性動脈硬化症の発症を変化させるのみならず、アテローム性動脈硬化症の発症を予防するために血管内皮に細胞保護治療を与える。代理マーカーは、体液試料において、前アテローム形成性のバイオマーカーが患者に存在することの指標であると共に、抗酸化剤遺伝子が患者に投与されている指標である。
【0228】
実施例3−糖原病障害の診断および治療
グリコーゲンは、本発明のナノ粒子アセンブリを用いて体液(すなわち血液)において容易に検出可能である。本発明に従って、ナノ粒子アセンブリはナノ粒子、代理マーカー、およびSCE検出器を含み、SCE検出器はグリコーゲンに結合して、筋ホスホリラーゼと類似のようにグリコーゲンに作用して、グリコーゲンを安全に分解するように設計される。このように、本発明によって、患者における特定の疾患/病態を診断するのみならず、それを治療して、患者を治療レジメに確実に従うようにすることが可能である。さらに、本発明の方法は、個人における薬物介入に関する薬力学および薬物動態を評価することができる。
【0229】
実施例4−血液の評価および血液に基づく疾患の診断/治療
一つの態様において、本発明のナノ構造アセンブリを用いて、患者における血球を区別して、血球のタイプおよびその濃度のシグナルを送ることができる。例えば、白血病のような造血異常を診断および/または治療するために、または細胞含有量(例えば、RBC含有量)の変化を評価するために、本発明のシステムおよび方法を用いて、赤血球(RBCs)、白血球(WBC)、および血小板のレベルを評価することができる。
【0230】
したがって、本発明は、出血性素因(すなわち、血友病、フォンウィルブラント病、アレキサンダー病、テルハ病、オーレンパラ血友病、プロトロンビン欠損);非出血経産婦凝固障害(すなわち、フレッチャー因子欠損、Flaujeac因子欠損);血栓形成性凝固障害(すなわち、ラトノフ病、トロンボモジュリン欠損);血小板減少症;貧血;および白血球の変化(すなわち、ペルゲル-ヒュエト異常(PHA);チェディアック-東症候群(CHS);ヘグリン-メイ異常(HMA))が含まれるがそれらに限定されるわけではない血液に基づく疾患または障害を診断および/または治療するために有用である。
【0231】
実施例5−本発明のSAWに基づくセンサーシステムによる呼気プロポフォルの測定による静脈内投与の際の遊離のプロポフィルの血中濃度の推定
静脈内麻酔剤であるプロポフォルは、集中治療室(ICU)において患者に鎮静を与えるために、持続的注入によってしばしば投与される。プロポフォルは、極めて脂溶性が高く、タンパク質および赤血球にも強く結合する。血漿中で遊離であるのは、プロポフォルの1〜3%に過ぎないと推定される。所望の治療効果に関与するのは、プロポフォルのこの遊離の分画である。
【0232】
しばしば臨床技法の際に、患者、特に脳の損傷を有する患者に対して神経学的検査を行うために、プロポフォルの注入を定期的に中止することが望ましい。残念なことに、個々の患者におけるプロポフォルの薬力学に応じて、遊離の血中濃度は、集団の薬力学および薬物動態によって推定される値より高くまたは低くなりうる。これによって、それによって激昂およびさらなる脳の障害が起こりうる不適切な鎮静が起こりえて、またはそれによって持続的な鎮静もしくは麻酔さえ起こる、脂肪組織におけるプロポフォルの蓄積が起こりえて、その結果適切な神経学的検査が妨害される。
【0233】
本発明は、プロポフォルの使用におけるこれらの欠陥を克服する。呼気終末プロポフィル濃度を絶えずモニターすることによって、正確な呼気を維持し、このようにプロポフォルの血中濃度を維持するように、注入ポンプをプログラムおよび調節することができる。これによって、ヘルスケア提供者は、鎮静または麻酔の正確な平面において患者を維持することが可能となり、脂肪組織に蓄積する可能性があるおよび/またはタンパク質および赤血球上の結合部位に関して競合する可能性がある、長期間プロポフォルを使用することに関連した多くの合併症を克服することができるであろう。
【0234】
実施例6−代理として呼気測定を用いる抗生物質血中濃度の推定
重篤な感染症のために抗生物質の静脈内投与を必要とする患者はしばしば、抗生物質濃度を得るために、頻繁な採血を必要とする。しばしば「ピーク」および「谷」レベルを得て、薬物の血中濃度が次の投与の直前に適切であることを保証する。不適切な血中レベルは薬物耐性を得た細菌に対して素因となりうる。呼気において抗生物質マーカーを分析するためのセンサーは、ピークおよび谷レベルで較正することができ、血液中の抗生物質レベルを測定するための代理として用いられる全てのその後の測定に関して、およびその後の直接治療に関して較正することができる。
【0235】
実施例7−血中濃度の代理としての呼気中の抗発作剤レベル
抗発作剤を服用している患者は、その血液中の薬剤の濃度を決定するために、頻繁な試験および分析を必要とする。多くの抗発作剤は、治療域が狭く、低い血中レベルでは発作の回数の増加が起こりうるが、高いレベルでは有意な毒性が起こりうる。呼気中の抗発作剤マーカーを検出するセンサーを、血液中の抗発作剤濃度に対して較正することができ、これを用いて患者は採血のために医師または検査室を訪れる必要なく血液レベルをモニターすることができる。薬物の用量を調節する必要がある場合には、呼気濃度は医師に警告を発するであろう。
【0236】
本明細書に記述の実施例および態様は説明する目的に限られ、それに照らした様々な改変または変更が、当業者に提案されるがそれらも本出願の趣旨および範囲ならびに添付の請求の範囲の範囲に含まれると理解すべきである。詳しく述べると、本発明のマーカー検出法は、電子ノーズ技術を利用する装置によって、患者による呼気を通しての検出のみならず、ガスクロマトグラフィー、経皮/経皮検出、半導体ガスセンサー、質量分析計、IR、UV、可視光、または蛍光分光光度計のような他の適した技術による検出を含むことを意図する。
【0237】
本明細書において引用した、または優先権の利益の主張が行われている全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明白な教示と不一致でない程度にその全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】閉塞性肺疾患を有する患者の1回呼吸サイクルのカプノグラムおよび数回呼吸のカプノグラムを示す。
【図2】本発明のセンサーとして利用してもよいガスセンサーチップを示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、本発明の態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、病態、疾患、または障害を診断するための方法:
(a)ナノ粒子、代理マーカー、および特異的化学実体(SCE)を検出するための手段を含む、少なくとも一つのナノ粒子アセンブリを含む組成物を患者に投与する段階。;
(b)患者の体液試料を得る段階;
(c)代理マーカーの存在を検出するために、体液試料にセンサー技術を適用する段階。
【請求項2】
ナノ粒子がナノチューブである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
SCE検出手段が抗体、タンパク質、およびアプタマーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
代理マーカーが、DMSO、ベンゾジアゼピン、ベンゾジアゼピン代謝物、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アニス、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、桂皮酸ベンジル、カジネン、カンフェン、カンフル、シナモン、シトロネラール、クレゾール、シクロヘキサン、ユーカリプトール、およびオイゲノール、オイゲニルメチルエーテルからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
代理マーカーが、硫酸水素ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリグリセロールポリリシノール酸、カゼインペプトンカルシウム-燐酸カルシウム、植物(すなわち、キク;甘草;jellywort、スイカズラ;ササクサ、桑の葉;アカソケイ;ウツボグサ;エンジュの花芽)、ビスグリシン酸第一鉄キレート、海藻由来カルシウム、DHASCO(ドコサヘキサエン酸濃縮単細胞油)、およびARASCO(アラキドン酸濃縮単細胞油)、フルクトオリゴ糖、トレハロース、γシクロデキストリン、フィトステロールエステル、アラビアゴム、硫酸水素カリウム、ステアリルアルコール、エリスリトール、D-タガトース、およびミコプロテインからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
体液試料が、呼気、全血、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄液、羊水、腺液、喀痰、便、汗、粘液、および脳脊髄液からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
体液試料が、便、組織、および生検試料からなる群より選択されるホモジナイズ固体材料を含む溶液または混合物の分離された分画である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
SCE検出手段が、アセトアルデヒド、アセトン、アンモニア、一酸化炭素、クロロホルム、ジエチルアミン、水素、イソプレン、メタンチオール、メチルエチルケトン、O-トルイジン、硫化ペンタンおよびスルフィド、H2S、MeS、Me2S、αII-スペクトリン切断産物および/またはイソプロスタン、前立腺特異抗原、ならびにGLXAからなる群より選択される化合物に対して特異的作用を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
SCE検出手段が、不法薬、非合法薬、または管理物質;アレルゲン;毒素;発癌物質;感染物質;および疾患の細胞マーカーからなる群より選択される化合物に対して特異的作用を有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
SCE検出手段が、アンフェタミン、鎮痛剤、バルビツレート、クラブドラッグ、コカイン、クラックコカイン、抑制剤、デザイナードラッグ、エクスタシー、γヒドロキシブチレート-GHB、幻覚誘発物質、ヘロイン/モルヒネ、吸入剤、ケタミン、リゼルグ酸ジエチルアミド、マリファナ、メトアンフェタミン、オピエート、麻薬、フェンシクリジン、処方薬、サイケデリック薬、ロヒプノール、ステロイド、刺激物質、花粉、胞子、鱗屑、ピーナッツ、卵、貝、水銀、鉛、他の重金属、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium Difficile)毒素、アセトアルデヒド、ベリリウム化合物、クロム、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DTT)、エストロゲン、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、ラドン、気管支敗血症菌(Bordettella bronchiseptica)、シトロバクター(Citrobacter)、大腸菌、肝炎ウイルス、ヘルペス、免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、リステリア(Listeria)、ミクロコッカス(Micrococcus)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、サルモネラ(Salmonella)、黄熱病ウイルス、T細胞マーカー、B細胞マーカー、骨髄/単球マーカー、成熟状態マーカー、α-フェトプロテイン、β2-ミクログロブリン、およびβヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βHCG)からなる群より選択される化合物に対して特異的作用を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ナノ粒子が、内部間隙に対するアクセスを提供するために少なくとも一つの開口部を有する、代理マーカーを含む内部間隙と共に形成される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
内部間隙がペイロードも同様に含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ナノ粒子が開放末端を塞ぐための末端キャップをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
末端キャップが100μm未満の最大寸法を有する粒子である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
末端のキャップが共有結合によってナノ粒子に結合している、請求項13記載の方法。
【請求項16】
ナノ粒子が円柱状体の形であって、SCE検出手段が末端キャップに結合している、請求項13記載の方法。
【請求項17】
ナノ粒子がシリカからなる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ナノ粒子がポリマーからなる、請求項1記載の方法。
【請求項19】
SCE検出手段が共重合化を用いてナノ粒子の表面に結合される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ポリマーナノ粒子が、ポリスチレン、ポリオルガノシロキサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ乳酸、および他の生体分解性ポリマー、アクリル酸ラテックス、ポリオルガノシロキサン、セルロース、ポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(4-ヨードスチレン/ジビニルベンゼン)、ポリ(4-ビニルピリジン/ジビニルベンゼン)、ポリ(スチレン/ジビニルベンゼン)、クロスリンクしたメラミン粒子、フェノールポリマーコロイド、ポリアミド6/6、天然ゴム、天然に存在するバイオポリマーからなる群より選択されるポリマーからなる、請求項18記載の方法。
【請求項21】
ポリマーナノ粒子が、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸),ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(無水アジピン酸)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリジオキサノン、ポリアミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(シュウ酸アルキレン)、ポリ(コハク酸アルキレン)、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、およびコポリマーからなる群より選択される生体分解性ポリマーで構成される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
ポリマーナノ粒子が、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(L-乳酸)またはポリ(β-ベンジル-L-アスパルテート)とのコポリマーからなる群より選択される生体適合性ポリマーで構成される、請求項18記載の方法。
【請求項23】
SCE検出手段がナノ粒子に組み入れられる、請求項1記載の方法。
【請求項24】
ナノ粒子が、球形、楕円形、立方体、円柱形、四面体、多面体、不規則なプリズム状、正二十面体、および立方八面体からなる群より選択される形状で生成される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
ナノ粒子が寸法500 nm未満を有する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
ナノ粒子の表面がstealthyである、請求項1記載の方法。
【請求項27】
以下を含む、病態、疾患、または障害を診断および治療するための方法:
(a)ナノ粒子、代理マーカー、特異的化学実体(SCE)検出手段、およびペイロードを含む、少なくとも一つのナノ粒子アセンブリを含む組成物を患者に投与する段階;
(b)患者の体液試料を得る段階;
(c)代理マーカーの存在を検出するために、体液試料にセンサー技術を適用する段階。
【請求項28】
ナノ粒子がナノチューブである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
SCE検出手段が抗体、タンパク質、およびアプタマーからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
代理マーカーが、ベンゾジアゼピン、ベンゾジアゼピン代謝物、アセトアルデヒド、DMSO、アセトフェノン、アニス、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、桂皮酸ベンジル、カジネン、カンフェン、カンフル、シナモン、シトロネラール、クレゾール、シクロヘキサン、ユーカリプトール、およびオイゲノール、オイゲニルメチルエーテルからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
代理マーカーが、硫酸水素ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリグリセロールポリリシノール酸、カゼインペプトンカルシウム-燐酸カルシウム、植物(すなわち、キク;甘草;jellywort、スイカズラ;ササクサ、桑の葉;アカソケイ;ウツボグサ;エンジュの花芽)、ビスグリシン酸第一鉄キレート、海藻由来カルシウム、DHASCO(ドコサヘキサエン酸濃縮単細胞油)、およびARASCO(アラキドン酸濃縮単細胞油)、フルクトオリゴ糖、トレハロース、γシクロデキストリン、フィトステロールエステル、アラビアゴム、硫酸水素カリウム、ステアリルアルコール、エリスリトール、D-タガトース、およびミコプロテインからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項32】
体液試料が、呼気、全血、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄液、羊水、腺液、喀痰、便、汗、粘液、および脳脊髄液からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項33】
体液試料が、便、組織、および生検試料からなる群より選択されるホモジナイズ固体材料を含む溶液または混合物の分離された分画である、請求項27記載の方法。
【請求項34】
SCE検出手段が、アセトアルデヒド、アセトン、アンモニア、一酸化炭素、クロロホルム、ジエチルアミン、水素、イソプレン、メタンチオール、メチルエチルケトン、O-トルイジン、硫化ペンタンおよびスルフィド、H2S、MeS、Me2S、αII-スペクトリン切断産物および/またはイソプロスタン、前立腺特異抗原、ならびにGLXAからなる群より選択される化合物に対して特異的作用を有する、請求項27記載の方法。
【請求項35】
SCE検出手段が、不法薬、非合法薬、または管理物質;アレルゲン;毒素;発癌物質;感染物質;および疾患の細胞マーカーからなる群より選択される化合物に対して特異的作用を有する、請求項27記載の方法。
【請求項36】
SCE検出手段が、アンフェタミン、鎮痛剤、バルビツレート、クラブドラッグ、コカイン、クラックコカイン、抑制剤、デザイナードラッグ、エクスタシー、γヒドロキシブチレート-GHB、幻覚誘発物質、ヘロイン/モルヒネ、吸入剤、ケタミン、リゼルグ酸ジエチルアミド、マリファナ、メタンフェタミン、オピエート/麻薬、フェンシクリジン、処方薬、サイケデリック薬、ロヒプノール、ステロイド、刺激物質、花粉、胞子、鱗屑、ピーナッツ、卵、貝、水銀、鉛、他の重金属、クロストリジウム・ディフィシレ毒素、アセトアルデヒド、ベリリウム化合物、クロム、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、エストロゲン、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、ラドン、気管支敗血症菌、シトロバクター、大腸菌、肝炎ウイルス、ヘルペス、免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、リステリア、ミクロコッカス、マイコバクテリウム、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、サルモネラ、黄熱病ウイルス、T細胞マーカー、B細胞マーカー、骨髄/単球マーカー、成熟状態マーカー、α-フェトプロテイン、β2-ミクログロブリン、およびβヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βHCG)からなる群より選択される化合物に対して特異的作用を有する、請求項27記載の方法。
【請求項37】
ナノ粒子が、内部間隙に対するアクセスを提供するために少なくとも一つの開放末端を有する、代理マーカーを含む内部間隙と共に形成される、請求項27記載の方法。
【請求項38】
内部間隙がペイロードも同様に含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
ナノ粒子が開放末端を塞ぐための末端キャップをさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
末端キャップが100μm未満の最大寸法を有する粒子である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
末端キャップが共有結合によってナノ粒子に結合している、請求項39記載の方法。
【請求項42】
ナノ粒子が円柱状体の形であって、SCE検出手段が末端キャップに結合している、請求項39記載の方法。
【請求項43】
ナノ粒子がシリカからなる、請求項27記載の方法。
【請求項44】
ナノ粒子がポリマーからなる、請求項27記載の方法。
【請求項45】
SCE検出手段が共重合化を用いてナノ粒子の表面に結合される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ポリマーナノ粒子が、ポリスチレン、ポリオルガノシロキサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ乳酸、および他の生体分解性ポリマー、アクリル酸ラテックス、ポリオルガノシロキサン、セルロース、ポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(4-ヨードスチレン/ジビニルベンゼン)、ポリ(4-ビニルピリジン/ジビニルベンゼン)、ポリ(スチレン/ジビニルベンゼン)、クロスリンクしたメラミン粒子、フェノールポリマーコロイド、ポリアミド6/6、天然ゴム、天然に存在するバイオポリマーからなる群より選択されるポリマーからなる、請求項44記載の方法。
【請求項47】
ポリマーナノ粒子が、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(無水アジピン酸)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリジオキサノン、ポリアミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(シュウ酸アルキレン)、ポリ(コハク酸アルキレン)、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、およびコポリマーからなる群より選択される生体分解性ポリマーからなる、請求項44記載の方法。
【請求項48】
ポリマーナノ粒子が、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(L-乳酸)またはポリ(β-ベンジル-L-アスパルテート)とのコポリマーからなる群より選択される生体適合性ポリマーからなる、請求項44記載の方法。
【請求項49】
SCE検出手段がナノ粒子に組み入れられる、請求項27記載の方法。
【請求項50】
ナノ粒子が、球形、楕円形、立方体、円柱形、四面体、多面体、不規則なプリズム状、正二十面体、および立方八面体からなる群より選択される形状で生成される、請求項27記載の方法。
【請求項51】
ナノ粒子が寸法500 nm未満を有する、請求項27記載の方法。
【請求項52】
ナノ粒子の表面がstealthyである、請求項27記載の方法。
【請求項53】
ペイロードが、遺伝子材料;RNA;オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ペプチド;タンパク質;酵素;ホルモン;ステロイド;化学療法剤;抗生物質;抗真菌剤;麻酔薬;免疫調節物質;抗炎症剤;疼痛軽減剤;自律神経作用薬;心血管-腎臓薬;内分泌薬;造血増殖因子;血中脂質低下剤;AIDS薬;平滑筋機能調節薬;抗発作薬;精神活性薬;ならびに末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、synoptic部位、神経効果器接合部、内分布ホルモン系、代謝系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、栄養排泄系、ヒスタミン系、および中枢神経系に作用する薬物からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項54】
ペイロードが、prochlorperzineエディシレート、硫酸第一鉄、アミノカプロン酸、塩酸メカミルアミン、塩酸プロカインアミド、硫酸アンフェタミン、塩酸メトアンフェタミン、塩酸ベンズアンフェタミン、硫酸イソプロテレノール、塩酸フェンメトラジン、塩化ベタネコール、塩化メタコリン、塩酸ピロカルピン、硫酸アトロピン、臭化スコポラミン、ヨウ化イソプロパミド、塩化トリジヘキセチル、塩酸フェンホルミン、塩酸メチルフェニデート、コリンテオフィリン、塩酸セファレキシン、ジフェニドール、塩酸メクリジン、マレイン酸プロクロルペラジン、フェノキシベンザミン、マレイン酸チエチルペルジン、アニシンドン、ジフェナジオンerthyrityl四硝酸塩、ジゴキシン、インタール(クロモグリク酸ナトリウム)、コデイン、モルヒネ、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸、塩酸メペリジン(DEMEROL)、塩酸クロフェジアノール、エピネフリン、イソプロテレノール、サルブタモール、テルブタリン、エフェドリン、アミノフィリン、アセチルシステイン、スルファニルアミド、スルファジアジン、テトラサイクリン、リファンピン(リファマイシン)、ジヒドロストレプトマイシン、p-アミノサリチル酸、血糖降下薬トルブタミド(ORINASE)、プレドニゾン、プレドニゾロン、メタスルホ安息香酸プレドニゾロン、クロラムブシル、ブスルファン、アルカロイド、抗代謝剤、6-メルカプトプリン、チオグアニン、5-フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、イソフルロフェート、アセタゾールアミド、メタゾールアミド、ベンドロフルメチアジド、クロロプロマイド、トラザミド、酢酸クロロマジノン、フェナグリコドール、アロプリノール、アスピリンアルミニウム、メソトレキセート、アセチルスルフイソキサゾール、エリスロマイシン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、デキサメタゾンおよびベタメタゾンのようなその誘導体、トリアムシノロン、メチルテストステロン、17-S-エストラジオール、エチニルエストラジオール3-メチルエーテル、17-α-ヒドロキシgrogesteroneアセテート、19-ノルプロゲステロン、ノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチエデロン、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノルエチノドレル、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、サリンダック、インドプロフェン、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、クリメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロルプロマジン、メチルドーパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック、乳酸第一鉄、ビンカミン、フェノキシベンザミン、ジルチアゼム、ミルリノン、マンドール、quanbenz、ヒドロクロロサイアザイド、ラニチジン、フルビプロフェン、フェヌフェン、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナク、メフェナム酸、フルフェナム酸、ジフイナール、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミール、ガロパミール、アムロジピン、ミオフラジン、リシノルプリル、エナラプリル、エナラプリラートカプトプリル、ラミプリル、ファモチジン、ニザチジン、スクラルファート、エチンチジン、テトラトロール、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリン、およびイミプラミンからなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
ペイロードが、骨形態形成タンパク質、インスリン、コルヒチン、グルカゴン、甲状腺刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、下垂体ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロピン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性性腺刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ウシソマトトロピン、ブタソマトトロピン、オキシトシン、バソプレッシン、GRF、ソマトスタチン、リプレシン、パンクレオザイミン、黄体形成ホルモン、LHRH、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト、リュープロリド、インターフェロン、コンセンサスインターフェロン、インターロイキン、成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、受精能阻害剤、受精促進因子、増殖因子、凝固因子、およびヒト膵臓ホルモン放出因子からなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項56】
ペイロードが、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、BCNU、ビンクリスチン、カンプトテシン、エトポシド、サイトカイン、リボザイム、インターフェロン、オリゴヌクレオチド、および腫瘍遺伝子の翻訳または転写を阻害するオリゴヌクレオチドからなる群より選択される化学療法剤である、請求項53記載の方法。
【請求項57】
以下の段階を含む、少なくとも一つの治療薬の投与のあいだ、患者をモニターする方法:
少なくとも一つの治療薬を患者に投与する段階;
患者からの呼気に少なくとも一つのセンサーを曝露する段階;
治療薬からの一つまたはそれ以上の標的マーカーを、該センサーによって検出する段階。
【請求項58】
標的マーカーが、治療薬である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
治療薬マーカーが治療薬を示す治療薬の代謝物である、請求項57記載の方法。
【請求項60】
標的マーカーが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトアルデヒド、アセトフェノン、トランス-アネソール(1-メトキシ-4-プロペニルベンゼン)(アニス)、ベンズアルデヒド(安息香酸アルデヒド)、ベンジルアルコール、桂皮酸ベンジル、カジネン、カンフェン、カンフル、シナムアルデヒド(3-フェニルプロペナル)、ニンニク、シトロネラール、クレゾール、シクロヘキサン、ユーカリプトール、およびオイゲノール、オイゲニルメチルエーテル、ブチルイソブチレート(n-ブチル2,メチルプロパノエート)(パインアップル);シトラール(2-トランス-3,7-ジメチル-2,6-アクタジエン-1-オール);メントール(1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキサン-3-オール);およびα-ピネン(2,6,6-トリメチルビシクロ-(3,1,1)-2-ヘプテン)からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項61】
少なくとも一つの治療薬が患者に経口投与される、請求項57記載の方法。
【請求項62】
少なくとも一つの治療薬が静脈内に送達される、請求項57記載の方法。
【請求項63】
検出段階が、血液中の少なくとも一つの治療薬濃度を決定するために標的マーカーの存在および濃度の双方を検出する段階を含む、請求項57記載の方法。
【請求項64】
患者における治療薬の治療効果のレベルに達すると分析される濃度に数値を割り付けする段階、およびその後その相対的変化に基づく濃度により高い値または低い値を割付する段階をさらに含む、請求項63記載の方法。
【請求項65】
値の変化をモニターすることによって濃度をモニターする段階、および所望の治療効果を維持するために治療薬の投与を調節する段階をさらに含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
呼気において検出された少なくとも一つの標的マーカー濃度に基づいて少なくとも一つの治療薬の適当な用量を決定する段階をさらに含む、請求項63記載の方法。
【請求項67】
段階が、少なくとも一つの治療薬の薬力学および薬物動態を経時的にモニターするために定期的に繰り返される、請求項57記載の方法。
【請求項68】
少なくとも一つの治療薬が抑うつのためである、請求項57記載の方法。
【請求項69】
少なくとも一つの治療薬が鎮痛のためである、請求項57記載の方法。
【請求項70】
少なくとも一つの治療薬が、リウマチ性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、アンギナ、冠動脈疾患、末梢血管疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、臓器拒絶、てんかん、不安、変形性関節炎、血管炎、および炎症からなる群より選択される病態の治療のために選択される、請求項57記載の方法。
【請求項71】
検出する段階が連続的である、請求項57記載の方法。
【請求項72】
検出する段階が定期的である、請求項57記載の方法。
【請求項73】
少なくとも一つの治療薬が、α-ヒドロキシ-アルプラゾラム;アセカイニド(NAPA);アセトアミノフェン(Tylenol);アセチルモルヒネ;アセチルサリチル酸(サリチレートとして);α-ヒドロキシ-アルプラゾラム;アルプラゾラム(Xanax);アマンタジン(Symmetrel);Ambien(ゾルピデム);アミカシン(Amikin);アミオダロン(Cordarone);アミトリプチリン(Elavil)&ノルトリプチリン;アモバルビタール(Amytal);Anafranil(クロミプラミン)&デスメチルクロミプラミン;Ativan(ロラゼパム);Aventyl(ノルトリプチリン);Benadryl(デフェンヒドラミン(Dephenhydramine));Benziodiazepines;ベンゾイルエクゴニン;ベンズトロピン(Cogentin);ブピバカイン(Marcaine);ブプロピオン(Wellbutrin)およびヒドロキシブプロピオン;ブタバルビタール(Butisol);ブタルビタール(Fiorinal);カルバマゼピン(Tegretol);Cardizem(ジルチアゼム);Carisoprodol(ソマ)&メプロバメート;およびCelexa(シタロプラム&デスメチルシタロプラム)からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項74】
少なくとも一つの治療薬は、Celontin(メトスクシミド)(デスメチルメトスクシミドとして);Centrax(プラゼパム)(デスメチルジアゼパムとして);クロラムフェニコール(Chlormycetin);クロロジアゼポキシド;クロルプロマジン(Thorazine);クロルプロパミド(Diabinese);クロナゼパム(Klonopin);クロラゼペート(Tranxene);クロザピン;コカエチレン;コデイン;Cogentin(ベンズトロピン);Compazine(プロクロルペラジン);Cordarone(アミオダロン);Coumadin(ワルファリン);シクロベンザプリン(Flexeril);シクロスポリン(Sandimmune);Cylert(ペモリン);Dalmane(フルラゼパム)&デスアルキルフルラゼパム;Darvocet;Darvon(プロポキシフェン)&ノルプロポキシフェン;Demerol(メペリジン)&ノルメペリジン;Depakene(バルプロ酸);Depakote(ジバルプロ酸)(バルプロ酸として測定);デシプラミン(Norpramin);デスメチルジアゼパム;Desyrel(トラゾドン);ジアゼパム&デスメチルジアゼパム;ジアゼパム(Valium);デスメチルジアゼパム;ジエルドリン;ジゴキシン(Lanoxin);Dilantin(フェニトイン);ジソピラミド(Norpace);Dolophine(メタドン);Doriden(グルテチミド);Doxepin(サイネクアン);およびデスメチルドキセピン;Effexor(ベンラファキシン);エフェドリン:Equanil(メプロバメート)エタノール;エトスクシミド(Zarontin);エトトイン(Peganone);フェルバメート(Felbatol);フェンタニル(Innovar);Fioricet;フィプロニル;フルニトラゼパム(Rohypnol);フルオキセチン(Prozac)&ノルフルオキセチン;フルフェナジン(Prolixin);フルボキサミン(Luvox);ガバペンチン(Neurontin);γ-ヒドロキシ酪酸(GHB);ガラマイシン(Gentamicin);ゲンタミシン(Garamycin);ハラゼパム(Paxipam);Halcion(トリアゾラム);Haldol(ハロペリドール);ヒドロコドン(Hycodan);ヒドロキシジン(Vistaril);イブプロフェン(Advil、Motrin、Nuprin、Rufen);イミプラミン(Tofranil)およびデシプラミン;Inderal(プロプラノロール);Keppra(レベチラセタム);ケタミン;ラモトリジン(Lamictal);Lanoxin(ジゴキシン);リドカイン(Xylocaine);Lindane(γ-BHC);リチウム;Lopressor(メトプロロール);ロラゼパム(Ativan);およびLudiomilからなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項75】
少なくとも一つの治療薬が、マプロチリン;Mebaral(メフォバルビタール)&フェノバルビタール;Mellaril(チオリダジン)&メソリダジン;メフェニトイン(Mesantoin);メプロバメート(Miltown、Equanil);Mesantoin(メフェトイン);メソリダジン(Serentil);メタドン;メソトレキセート(Mexate);メトスクシミド(Celontin)(デスメトスクシミドとして);メキシレチン(Mexitil);ミダゾラム(Versed);ミルタザピン(Remeron);Mogadone(ニトラゼパム);モリンドン(Moban);モルヒネ;Mysoline(プリミドン)&フェノバルビタール;NAPA&プロカインアミド(Pronestyl);NAPA(N-アセチル-プロカインアミド);Navane(チオチキセン);Nebcin(トブラマイシン);ネファゾドン(Serzone);Nembutal(ペントバルビタール);ノルジアゼパム;オランザピン(Zyprexa);オピエート;Orinase(トルブタミド);オキサゼパム(Serax);10-ヒドロキシカルバゼピンとしてオキシカルバゼピン(Trileptal);オキシコドン(Percodan);オキシモルホン(Numorphan);Pamelor(ノルトリプチリン);パロキセチン(Paxil);Paxil(パロキセチン);Paxipam(ハラゼパム);Peganone(エトトイン);PEMA(フェニルエチルマロンアミド);ペントタール(Thiopental);ペルフェナジン(Trilafon);Phenergan(プロメタジン);フェノチアジン;フェンテルミン;フェニルグリコキシル酸;プロカインアミド(Pronestyl)&NAPA;プロマジン(Sparine);プロパフェノン(Rythmol);プロトリプチリン(Vivactyl);シュードエフェドリン;クエチアピン(Seroquel);Restoril(テマゼパム);Risperdal(リスペリドン)およびヒドロキシリスペリドン;セコバルビタール(Seconal);セルトラリン(Zoloft)&デスメチルセルトラリン;Stelazine(トリフルオペラジン);Surmontil(トリミプラミン);トカイニド(Tonocard);およびTopamax(トピラメート)からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項76】
センサーが、金属-絶縁体-金属ensemple(MIME)センサー、交叉反応光学マイクロセンサーアレイ、蛍光ポリマー被膜、表面増強ラマン分光法(SERS)、ダイオードレーザー、選択イオン流チューブ、金属酸化物センサー(MOS)、バルク音波(BAW)センサー、比色管、赤外線分光光度法、ガスクロマトグラフィー、半導体ガスセンサー技術、質量分析計、gluorescent分光光度計、導体ポリマーガスセンサー技術;アプタマーセンサー技術;増幅蛍光ポリマー(AFP)センサー技術;または表面音波ガスセンサー技術からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項77】
センサー技術が、少なくとも一つの標的マーカーの検出および濃度の特徴を示す独自の電子フィンガープリントを生じる、請求項76記載の方法。
【請求項78】
センサーからのデータを記録する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項79】
センサーからのデータを転送する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項80】
既定のサインプロフィールによって検出された少なくとも一つの標的マーカーをさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項81】
センサーを呼気に曝露する前に、呼気の試料を捕獲する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項82】
センサーを呼気に曝露する前に呼気を脱湿する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項83】
患者の呼気のあいだにセンサーを呼気に曝露する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項84】
患者における麻酔作用のレベルに達すると分析される濃度に数値を割付する段階、およびその後その相対的変化に基づく濃度により高いまたはより低い値を割付する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項85】
センサーが携帯型である、請求項57記載の方法。
【請求項86】
少なくとも一つの治療薬が精神病薬である、請求項57記載の方法。
【請求項87】
少なくとも一つの治療薬が、抗うつ剤、抗精神病薬、抗不安薬、および抑制剤からなる群より選択される、請求項86記載の方法。
【請求項88】
患者に治療薬の適当量を送達するための治療薬物送達およびモニタリングシステム:
患者への供給によって提供される治療薬の量を制御するための制御装置を有する少なくとも一つの治療薬供給;
患者の血流における治療薬濃度を示す少なくとも一つの標的マーカーの存在および濃度に関して患者の呼気を分析するため、および患者の血流における治療薬の濃度に関するシグナルを送るための呼気ガスセンサー;ならびに
センサーからのシグナルを受信して分析する、ならびにシグナルに基づいて患者に投与される治療薬の量を制御する、治療薬供給に接続されたシステム制御装置。
【請求項89】
呼気ガスセンサーが、患者の血流における治療薬濃度を示す少なくとも一つの標的マーカーの濃度に関してガスを分析するためのセンサー、および治療薬の濃度に基づいて治療薬の薬力学および薬物動態作用を計算するためのプロセッサーを含む、請求項88記載のシステム。
【請求項90】
センサーが、金属-絶縁体-金属ensemple(MIME)センサー、交叉反応光学マイクロセンサーアレイ、蛍光ポリマー被膜、表面増強ラマン分光法(SERS)、ダイオードレーザー、選択イオン流チューブ、金属酸化物センサー(MOS)、バルク音波(BAW)センサー、比色管、赤外線分光光度法、ガスクロマトグラフィー、半導体ガスセンサー技術、質量分析計、gluorescent分光光度計、導体ポリマーガスセンサー技術;アプタマーセンサー技術;増幅蛍光ポリマー(AFP)センサー技術;または表面音波ガスセンサー技術からなる群より選択される、請求項89記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−525670(P2007−525670A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500789(P2007−500789)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/006355
【国際公開番号】WO2005/098429
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506292284)ザ ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】