説明

リウマチの治療のための糖質コルチコイド受容体調節因子としての(E)−N−{3−[1−(8−フルオロ−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イリデン)プロピル]フェニル}メタンスルホンアミド

本発明は、化合物(I):


または、その薬学的に許容され得る塩;1種以上の薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて、化合物(I)を含む医薬組成物;および炎症性疾患および免疫疾患の処置のための方法であって、その必要のある患者に、化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイド性糖質コルチコイドに反応する炎症性疾患および免疫疾患の処置または予防のための治療薬、その薬剤を含む医薬組成物、患者において炎症性疾患および免疫疾患を処置または予防する方法、およびその治療薬の合成に有用な中間体およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
天然に存在するステロイド性糖質コルチコイドならびに合成ステロイド性糖質コルチコイドは、慢性関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ熱、喘息、アレルギー性鼻炎、全身性エリテマトーデス、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、炎症性腸疾患、および潰瘍性大腸炎のような、急性および慢性の炎症性疾患および免疫疾患の処置のために、50年間にわたって広く使用されてきた。しかしながら、糖質コルチコイドの使用は、骨量の減少/骨粗しょう症、高血糖症、糖尿病、高血圧症、緑内障、筋委縮、クッシング症候群、および精神病のような、重篤でときに不可逆性の副作用としばしば関連する。したがって、ステロイド性糖質コルチコイドの有益な効果を有するが、付随する副作用の可能性または発生率が低減された代替療法の必要性が残る。
【0003】
糖質コルチコイドは、糖質コルチコイド受容体(GR)との複合体の形成後に、遺伝子転写を調節する。糖質コルチコイド結合の後に、GR−糖質コルチコイド複合体は、それが特定の遺伝子のプロモーター領域中の糖質コルチコイドホルモン応答要素(GRE)に結合する細胞核へ移行する。GR−糖質コルチコイド/GRE複合体は、次いで、次々に、近くに配置された遺伝子の転写を活性化(トランス活性化)または阻害する。あるいは、GR−糖質コルチコイド複合体は、DNA結合を含まないプロセスによって遺伝子転写を負に調節し得る。この転写抑制と呼ばれるプロセスにおいて、GR−糖質コルチコイド複合体は核に進入し、(タンパク質間相互作用を介して)他の転写因子と直接的に相互作用し、それらの遺伝子転写およびそれによるタンパク質発現を誘導する能力を抑制する。
【0004】
ステロイド性糖質コルチコイドに替わるものとして好適なGRリガンドの探索は、他の生理学的プロセスを調節する他のステロイドホルモン受容体、例えば、アンドロゲン受容体(AR)、鉱質コルチコイド受容体(MR)、およびプロゲステロン受容体(PR)が、GRに相似するリガンド結合ドメインを有するという事実によって妨げられる。結果として、GRリガンドは、これらの他の受容体との交差反応の可能性を有する。したがって、ステロイド性糖質コルチコイドに替わるものの所望される特性は、それが、他のステロイドホルモン受容体と比べてより大きな親和性でGRに結合することである。
【0005】
最近の見識は、糖質コルチコイドの抗炎症効果がDNAへのGR結合の非存在下で維持されることができることを実証する。結果として、GRタンパク質間相互作用(例えば、転写抑制)によって主に調節される糖質コルチコイド作用の機構は、抗炎症反応を誘導するのに十分であると考えられる。さらに、糖質コルチコイド療法の多くの副作用(例えば、高血糖症、糖尿病、緑内障、および筋委縮)は、今やDNAへのGR結合の後のトランス活性化機構によって主に介在されると考えられる。したがって、GR介在性転写抑制をGR介在性トランス活性化と区別することができる薬剤が、特に望ましい。さらに、他のステロイドホルモン受容体の転写活性を調節する(すなわち、作用する、部分的に作用する、部分的に拮抗する、または拮抗する)限定された能力を示す薬剤もまた、特に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
他のステロイドホルモン受容体に比べてより大きな親和性でGRに結合する薬剤を提供することが、本発明の目的である。より具体的には、AR、MR、およびRPに比べて10倍より大きな親和性でGRに結合する薬剤を提供することが目的である。糖質コルチコイド療法に関連する副作用を含む傾向に比べて、強力な抗炎症特性を持つ薬剤を提供することが、本発明のさらなる目的である。より具体的には、骨量の減少または骨粗しょう症を含む傾向に比べて、強力な抗炎症特性を持つ薬剤を提供することが目的である。他のステロイドホルモン受容体である、AR、MR、およびPRの活性を調節する限定された能力を示す薬剤を提供することまた、本発明のさらなる目的である。
【0007】
GR調節因子は、当該分野において公知である。例えば、WO 04/052847は、鉱質コルチコイド受容体または糖質コルチコイド受容体の調節の影響を受けやすい疾患を処置するのに有用な一種の三環式ステロイドホルモン受容体調節因子を開示する。驚くべきことに、WO 04/052847の範囲内から化合物を選択することによって(本明細書中以下では化合物(I)として提供される)、ステロイド性糖質コルチコイドに反応する炎症性疾患および免疫疾患の処置に特に有用であることを示唆する予想外の活性プロフィールを持つ新規の治療薬が特定されたことが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、化合物(I):
【化1】

((E)−N−{3−[1−(8−フルオロ−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イリデン)−プロピル]−フェニル}−メタンスルホンアミド)または、その薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、炎症性疾患または免疫疾患、特に慢性関節リウマチを処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩を投与することを含む方法を提供する。さらに、本発明は、治療における使用のための、化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。本発明はまた、炎症性疾患または免疫疾患、特に慢性関節リウマチの処置または予防における使用のための、化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩も提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、炎症性疾患または免疫疾患、特に慢性関節リウマチを処置するための医薬品の製造のための、化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩の使用を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、1種以上の薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて、化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩を含む医薬組成物を提供する。好ましい実施形態として、本発明は、1種以上の薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて、化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩を含む、慢性関節リウマチの処置または予防のための医薬組成物を提供する。さらに、本発明はまた、化合物(I)の合成のための新規な中間体およびプロセスも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ステロイド性糖質コルチコイドに反応する炎症性疾患および免疫疾患の処置または予防のための、化合物(I)の使用を提供する。そのような疾患は、例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ熱、喘息、アレルギー性鼻炎、全身性エリテマトーデス、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、炎症性腸疾患、および潰瘍性大腸炎を含む。化合物(I)が有用な特定の疾患は、慢性関節リウマチである。慢性関節リウマチ(RA)は、30歳〜50歳の典型的な年齢で開始する、持続性の滑膜関節組織の炎症によって特徴づけられる慢性疾患である。RAは、男性に比べて女性がその疾患を発症する可能性が2倍である、最も一般的な炎症性関節炎の形態である。
【0013】
炎症性疾患および免疫疾患の処置または予防のための化合物(I)の使用はまた、糖質コルチコイド療法と典型的に関連する副作用の低減された傾向、可能性、または発生率と関連するとも考えられる。糖質コルチコイド療法の1つのそのような副作用は、骨量の減少/骨粗しょう症または糖質コルチコイド誘導性骨粗しょう症(GIOP)である。GIOPは、薬物誘導性骨粗しょう症の最も一般的な原因であり、慢性の(すなわち、6カ月以上続く)糖質コルチコイド療法を受けている患者の最大50%に発生すると報告されている。特に、化合物(I)の使用は、骨量の減少または骨粗しょう症の低減された傾向、可能性、または発生率と関連すると考えられる。
【0014】
他のように定義されない限り、本発明は、化合物(I)の薬学的に許容され得る塩、ならびに化合物(I)の遊離塩基の溶媒和物およびその薬学的に許容され得る塩を含む。しかしながら、化合物(I)の遊離塩基が好ましい。本明細書で使用される用語「薬学的に許容され得る塩」は、生物に対して実質的に非毒性である化合物(I)の塩を示す。薬学的に許容され得る塩およびそれらの調製方法の例は、当該分野において確立されている。例えば、Stahlら、「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use」,VCHA/Wiley−VCH,(2002);Gould,P.L.,「Salt selection for basic drugs」,International Journal of Pharmaceutics,33:201−217(1986);およびBastinら、「Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities」,Organic Process Research and Development,4:427−435(2000)を参照のこと。
【0015】
本明細書中で使用される用語「患者」は、イヌ、ネコ、ウシ、サル、ウマ、またはヒツジのようなヒトまたは非ヒト哺乳動物を示す。より具体的には、用語「患者」は、ヒトを示す。本明細書中で使用される用語「処置すること」(あるいは「処置する」または「処置」)は、既存の症状または疾患の進行または重篤度を、妨げること、予防すること、抑えること、遅滞させること、停止させること、または逆転させることを含む。本明細書中で使用される用語「予防すること」(あるいは「予防する」または「予防」)は、症状または疾患の発生または出現を、妨げること、抑えること、または阻害することを示す。
【0016】
化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩は、医薬組成物の一部としての投与のために配合され得る。そのようなものとして、1種以上の薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて、化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩を含む医薬組成物は、本発明の重要な実施形態である。医薬組成物およびそれらの調製方法の例は、当該分野において周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY,A.Gennaroら編、第19版、Mack Publishing(1995)を参照のこと。化合物(I)を含む例示的な組成物は、例えば、1%カルボキシメチルセルロースナトリウム、0.25%ポリソルベート80、および0.05% Antifoam 1510(商標)(Dow Corning)と共に浮遊する化合物(I);および0.01N HCl中の0.5%メチルセルロース、1%ラウリル硫酸ナトリウム、および0.1% Antifoam 1510と共に浮遊する化合物(I)を含む。本発明の好ましい組成物は、カプセルまたは錠剤中に配合された化合物(I)またはその薬学的に許容され得る塩を含む。
【0017】
化合物(I)または化合物(I)を含む組成物は、経口経路または非経口経路を含む、化合物(I)を生物学的に利用可能にするいかなる経路によっても投与されることができる。例えば、化合物(I)、または化合物(I)を含む組成物は、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、鼻内投与、直腸投与、口腔投与などされることができる。あるいは、化合物は、持続注入によって投与され得る。しかしながら、経口投与が好ましい投与の経路であることが理解される。
【0018】
本明細書で使用される用語「有効量」は、患者への単回または複数回の投薬の際に、診断または処置下の患者に所望の効果を提供する、化合物(I)の量または投薬量を示す。有効量は、当業者として、哺乳動物の種;その大きさ、年齢、および一般的健康;関連する特定の疾患;疾患の度合いまたは重篤度;個々の患者の反応;投与された特定の化合物;投与の様式;投与された調製物の生物学的利用能特性;選択された投薬養生法;ならびに何らかの併用薬の使用のような多くの因子を考慮することにより、担当の診断医によって容易に決定されることができる。
【0019】
生物学的活性
本明細書中で使用される場合、「Kd」は、リガンド−受容体複合体についての平衡解離定数を示し;「Ki」は、薬物−受容体複合体についての平衡解離定数を示し、かつ、平衡状態で結合部位の半数に結合する薬物の濃度の指標であり;「IC50」は、薬剤について考えられうる最大阻害応答の50%を生じる薬剤の濃度、あるいは、受容体へのリガンド結合の50%変位を生じる薬剤の濃度を示し;「EC50」は、薬剤について考えられうる最大応答の50%を生じる薬剤の濃度を示し;そして「ED50」は、薬剤についての最大応答の50%を生じる、投与された治療剤の投薬量を示す。
【0020】
核ホルモン受容体結合アッセイ:
ヒトGR(糖質コルチコイド受容体)、AR(アンドロゲン受容体)、MR(鉱質コルチコイド受容体)、またはPR(プロゲステロン受容体)を過剰発現するヒト胎児腎臓HEK293細胞からの細胞溶解物を、Ki値を決定するための受容体−リガンド競合結合アッセイのために使用する。
【0021】
簡単に言うと、ステロイド受容体競合結合アッセイを、20mM Hepes緩衝液(pH=7.6)、0.2mM EDTA、75mM NaCl、1.5mM MgCl、20%グリセロール、20mMモリブデン酸ナトリウム、0.2mM DTT(ジチオスレイトール)、20μg/mLアプロチニン、および20μg/mLロイペプチンを含有する緩衝液中で行う。典型的には、ステロイド受容体結合アッセイは、1ウェル毎に、放射線標識されたリガンド(例えば、GR結合について0.3nM[H]−デキサメタゾン、AR結合について0.36nM[H]−メチルトリエノロン、MR結合について0.25nM[H]−アルドステロン、およびPR結合について0.29nM[H]−メチルトリエノロン)、および20μg 293−GR溶解物、22μg 293−AR溶解物、20μg 293−MR溶解物、または40μg 293−PR溶解物のいずれかを含む。アッセイは、典型的には96ウェル形式で行う。競合する試験化合物を、約0.01nM〜10μMの範囲の種々の濃度で添加する。非特異的結合を、GR結合について500nMデキサメタゾン、MR結合について500nMアルドステロン、またはARおよびPR結合について500nMメチルトリエノロンの存在下で決定する。結合反応物(140μL)を、4℃で一晩インキュベートし、次いで、70μlの冷チャコールデキストラン緩衝液(50mlのアッセイ緩衝液毎に0.75gの炭と0.25gのデキストランを含有する)を、各反応物に添加する。プレートを、4℃で、オービタルシェーカー上で8分間混合する。プレートを、次いで、10分間4℃で、3,000rpmで遠心分離する。結合反応混合物の120μlのアリコートを、次いで、別の96ウェルプレートに移し、175μlのWallac Optiphase Hisafe 3(商標)シンチレーション液を各ウェルに添加する。プレートを密封し、オービタルシェーカー上で激しく撹拌する。2時間のインキュベーション後、プレートを、Wallac Microbeta計数器で読み取る。
【0022】
データを、推定IC50および10μMでの阻害率を計算するために使用する。GR結合についての[H]−デキサメタゾン、AR結合についての[H]−メチルトリエノロン、MR結合についての[H]−アルドステロン、またはPR結合についての[H]−メチルトリエノロンに対するKdを、飽和結合によって決定する。化合物に対するIC50値を、Cheng−Prusoff方程式を使用してKiに変換する。
【0023】
上記に記載されるプロトコールと類似の結合アッセイプロトコールは、当業者によって容易に設計されることができる。本質的に上記に記載される手順にしたがって、化合物(I)は、約0.2nMのGR結合アッセイにおけるKi;約6.7nMのAR結合アッセイにおけるKi;約9.2nMのMR結合アッセイにおけるKi;および約32nMのPR結合アッセイにおけるKiを示す(値は、n=7の実験の平均値として報告される)。したがって、化合物(I)は、ヒトGRの強力なリガンドであり、さらに、ヒトMR、AR、およびPRの各々と比べて約15倍以上の親和性でGRに結合する。
【0024】
本発明の化合物がステロイドホルモン受容体の活性を調節する(すなわち、作用する、部分的に作用する、部分的に拮抗する、または拮抗する、のいずれか)能力を実証するために、核受容体タンパク質およびホルモン応答エレメント−受容体遺伝子構築物で一時的にトランスフェクトされた細胞における標的遺伝子発現の機能的調節を検出するバイオアッセイを実施する。機能アッセイにおいて利用される溶媒、試薬、およびリガンドは、商業的供給源から容易に利用可能であり、または、当業者によって調製されることができる。
【0025】
核ホルモン受容体機能調節アッセイ:
ヒト胎児腎臓HEK293細胞を、Fugene(商標)トランスフェクション試薬を使用して、ステロイドホルモン受容体およびレポーター遺伝子プラスミドでトランスフェクトする。簡単に言うと、ルシフェラーゼレポーターcDNAの上流のプロバシン(probasin)AREおよびTK(チミジンキナーゼ)プロモーターの2つのコピーを含有するレポータープラスミドを、ウイルス性CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターを使用して、ヒトアンドロゲン受容体(AR)を構成的に発現するプラスミドと共にHEK293細胞中にトランスフェクトする。ルシフェラーゼレポーターcDNAの上流のGREおよびTKプロモーターの2つのコピーを含有するレポータープラスミドを、ウイルス性CMVプロモーターを使用して、ヒト糖質コルチコイド受容体(GR)、ヒト鉱質コルチコイド受容体(MR)、またはヒトプロゲステロン受容体(PR)のいずれかを構成的に発現するプラスミドと共にトランスフェクトする。細胞を、T150cmフラスコにおいて5%活性炭処理済(charcoal−stripped)ウシ胎仔血清(FBS)を有するDulbeccoの改変イーグル培地(DMEM)中でトランスフェクトする。一晩のインキュベーション後、トランスフェクトされた細胞をトリプシン処理し、96ウェル皿において5%活性炭処理済FBSを含有するDMEM培地中に平板培養し、4時間インキュベートし、次いで、約0.01nM〜10μMの範囲の種々の濃度の試験化合物に曝露する。アッセイのためのアンタゴニスト様式において、各々の受容体に対して低濃度のアゴニストを培地に添加する(GRについて0.25nM デキサメタゾン、ARについて0.3nMのメチルトリエノロン、PRについて0.05nMのプロメゲストン、およびMRについて0.05nMアルドステロン)。試験化合物との24時間のインキュベーション後、細胞を溶解させ、標準的な技術を使用してルシフェラーゼ活性を決定する。
【0026】
データを、EC50値を決定するために4パラメータフィットのロジスティック曲線に当てはめる。有効性率(飽和最大応答を有する化合物)または最大刺激率(飽和していない最大応答を有する化合物)を、以下の参照アゴニストで得られた最大刺激と比較して決定する:ARアッセイについて100nMメチルトリエノロン、PRアッセイについて30nMプロメゲストン、MRアッセイについて30nMアルドステロン、およびGRアッセイについて100nMデキサメタゾン。IC50値を、アンタゴニスト様式アッセイのデータを使用して同様に決定することができる。阻害率もまた、上記に記載されるように、アゴニスト単独の存在下での応答と比べて決定され得る。
【0027】
本質的に上記に記載される手順に従って、化合物(I)は、転写活性化において以下のプロフィールを示した:GRについて、約1.8nMのEC50を有する約44%の有効性;ARについて、10μMより大きいEC50を有する約4.4%の有効性;MRについて、10μMより大きいEC50を有する約11%の有効性;およびPRについて、10μMより大きいEC50を有する約54%の有効性(値は、n=4または5の実験の平均値として報告される)。
【0028】
糖質コルチコイド受容体介在性転写抑制アッセイ
1.ヒト皮膚線維芽細胞CCD−39SK細胞におけるIL−1β刺激性IL−6生成:
簡単に言うと、ATCCから得られたヒト皮膚線維芽細胞CCD−39SK細胞(20,000細胞/ウェル)を、10% FBS、100U/mlペニシリン、100ug/mlストレプトマイシン、および2mmol/L L−グルタミンが補充された血清不含成長培地において96ウェルプレートに播種する。細胞を、37℃、5% COで加湿されたチャンバにおいて維持する。試験化合物を、約4.65pM〜4.64μMの最終濃度の範囲の種々の濃度でウェルに加える。0.1μMのデキサメタゾンを、陽性コントロールとして使用する。試験化合物での処理の1時間後に、IL−1βを、1ng/mlの最終濃度で加え;反応混合物を一晩インキュベートする。10μlの上清を各ウェルから取り出し、450nmでの吸光度を読み取ることによってIL−6濃度が定量化されるELISAキットを使用して、IL−6の濃度を決定する。
【0029】
2.PMA分化性U937細胞におけるLPS刺激性TNF−α生成:
ATCCから得られたヒトU937プレ単球細胞を、10%FBSを含有する完全RPMI 1640培地において増殖させる。単球を、接着性のマクロファージに分化させ、U937細胞をカルシウム、マグネシウム不含中で洗浄し、20nMホルボール 12−ミリスチン酸−13−酢酸(PMA)を含有する新しいRPMI培地に一晩再懸濁させる。分化の後、試験化合物を、96ウェルプレート中の細胞に、約4.65pM〜4.64μMの範囲の種々の濃度で加える。試験化合物での処理の1時間後に、LPSを、100ng/mlの最終濃度で加え、反応混合物を一晩インキュベートする。25μlの細胞不含上清を各ウェルから別の96ウェルプレートに移し、TNF−α生成を、450nmでの吸光度を読み取ることによってTNF−αが定量化されるELISAキットを使用して測定する。
【0030】
本質的に上記で記載される手順に従って、化合物(I)は、それぞれ約8.5nMおよび21nMのIC50値で、約90%またはそれより大きいIL−6およびTNF−αの内因性発現の最大阻害を誘導する(値は、n=15の実験(IL−6アッセイ)およびn=4の実験(TNF−αアッセイ)の平均値として報告される)。
【0031】
したがって、化合物(I)は、炎症性タンパク質IL−6およびTNFαの内因性生成の強力かつ完全な(約90%またはそれより大きい最大阻害の)転写抑制因子である。さらに、化合物(I)は、GR/GRE介在性遺伝子転写の誘導において(約50%またはそれより小さい最大有効率の)部分的なアゴニスト活性のみを示す。したがって、化合物(I)は、完全なGR介在性転写抑制を誘導し、さらにGR/GRE介在性トランス活性化を部分的にのみ誘導することによって、分化したプロフィールを示す。さらに、他のステロイド受容体の機能調節に対する効果を試験するアッセイにおいて、化合物(I)は、AR、MR、およびPRによって介在される遺伝子発現の活性化において限られた活性のみを示す。
【0032】
動物モデル:
1.カラゲニン誘導性足浮腫(CPE)モデル
カラゲニン類は、多糖類の1つのグループであり、それは、動物において急性の炎症反応を誘導することができる。浮腫、痛覚過敏、および紅斑を含む炎症の主要な兆候は、注射の直後に、注射部位において発症する。CPEモデルは、炎症の広く認められているモデルであり、糖質コルチコイド受容体リガンドの抗炎症効果を評価するために使用されることができる。
【0033】
化合物(I)の抗炎症効果を評価するために、化合物を、0.5%カルボキシメチルセルロース、および0.25% Tween 80を含む賦形剤中に配合し、次いで、雄性Sprague−Dawleyラット(180g〜200g)に強制栄養法を介して経口的に投与する。比較のために、プレドニゾロンを、同じ賦形剤において経口的に投与し得る。2時間後、50μlの0.9%発熱物質不含生理食塩水中の1%カラゲニンを、右後肢の足底下(subplantar)領域中に注射する。ラットをカラゲニン注射の3時間後に、COによって麻酔する。肢を除去し、次いで、微量天秤を使用して重さを量る。肢を、次いで、肢表面にいくつかの切り込みを作成し、すぐに、凍結するまで液体窒素中に漬けることによって解剖する。凍結した肢を、次いで、遠心分離して滲出物を抽出する。炎症反応の間に生成されたサイトカインであるIL−1β滲出レベルを、次いで、メーカーの使用説明書に従ってELISAによって測定する。全肢タンパク質もまた、タンパク質アッセイキットを使用して測定し、IL−1βの絶対レベルを、全タンパク質の1mgあたりのIL−1βのng濃度値を出すために正規化する。
【0034】
化合物(I)は、カラゲニン誘導性肢重量の増加を、約2.8mg/kgのED50で阻害した。化合物(I)はまた、IL−1βの肢滲出レベルを、約3.2mg/kgのED50で低減させた。逆に、このモデルにおけるプレドニゾロン処理は、肢重量の増加を、約6.6mg/kgのED50で阻害し、IL−1βレベルを、約1mg/kg未満のED50で(5個体の測定の平均を表すED50値で)低減させた。
【0035】
2.血清オステオカルシンアッセイ
骨量の減少/骨粗しょう症、および結果として生じる骨折の危険性の増加は、糖質コルチコイド療法から生じる一般的かつ顕著な悪影響である。糖質コルチコイド誘導性骨粗しょう症は、少なくとも部分的に、骨形成の阻害から生じると考えられる。骨合成の生物学的マーカーである血清オステオカルシンの測定は、骨に対する糖質コルチコイド療法の悪影響を評価するための広く認められるツールである。
【0036】
骨形成に対する化合物(I)の効果を評価するために、化合物(I)を、5%カルボキシメチルセルロースおよび0.25% Tween 80を含む賦形剤中に配合し、16週齢の雄性Swiss−Websterマウス(Harlan Industries,Indianapolis)に7日間、強制栄養法を介して経口的に投与する。比較のために、プレドニゾロンを、同じ賦形剤において経口的に投与する。血清を、最後の投薬から24時間後に採取し、オステオカルシンレベルを、96ウェル形式に変更した競合的放射免疫測定を使用して決定する。簡単に言うと、2.5μlマウス血清、2.5μlヤギ抗マウスオステオカルシン、0.625μl正常ヤギ血清、および119.375μl RIA 緩衝液(0.1225M NaCl、0.01M NaHPO、pH 7.4、0.025MテトラナトリウムEDTA、0.1%(w/v)BSA、および0.1%(w/v)Tween−20)を含有するMultiscreen(商標)プレートの各ウェルを、80rpmのオービタルシェーカー上で、18時間4℃でインキュベートする。25μl RIA緩衝液中の0.2μCi/ml[125I]マウスオステオカルシンの各ウェルへの添加後に、プレートを、80rpmのオービタルシェーカー上で、4℃で24時間インキュベートする。複合体を、ウェルあたり125μlの0.2M NaHPO、pH 7.4、5%(w/v)ポリエチレングリコール中のロバ抗ヤギIgG(1:30)の添加により、25℃で2時間沈降させる。沈殿物を、真空濾過によって採取し、100μl/ウェルdHOで1回洗浄する。濾過材に穴をあけ、放射能をγカウンターで定量化する。試験サンプルからの濾過材上で検出される放射能は、血清オステオカルシン濃度に反比例する。精製されたマウスオステオカルシンの標準曲線を使用して、試験サンプル中の血清オステオカルシン濃度を計算する。
【0037】
ラットCPEモデルにおいて決定されたED50値に近似する1日投与量(化合物(I)については3mg/Kg/日、およびプレドニゾロンについては10mg/Kg/日)で比較すると、化合物(I)は、プレドニゾロンよりも、血清オステオカルシンレベルを低減させなかった。
【0038】
化合物(I)を調製するための方法は、当該分野において公知である。例えば、WO 04/052847は、利用され得る一般的手順を提供する。さらに、WO 05/066161は、利用され得るさらなる一般的手順を提供する。以下のスキーム、中間体、および実施例は、本発明をさらに説明し、化合物(I)の典型的な合成を表す。試薬および出発物質は、当業者に容易に利用可能であり、または当業者によって容易に合成され得る。例として記載されるスキーム、中間体、および実施例が限定されていないこと、および当業者によって変更がなされ得ることは理解されるべきである。本発明の化合物の名前は、ChemDraw Ultra(商標)バージョン7.0.1から一般的に得られる。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを示し;「DIAD」は、ジイソプロピルジアゾジカルボン酸を示し;「ADDP」は、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジンを示し;「THF」は、テトラヒドロフランを示し;「DMF」は、ジメチルホルムアミドを示し;「TMSCN」は、シアン化トリメチルシリルを示し;「TEA」または「EtN」は、トリエチルアミンを示し;「DME」は、1,2−ジメトキシエタンを示し;「AcOEt」は、酢酸エチルを示し;「pyr」は、ピリジンを示し;「MsCl」は、塩化メタンスルホニルを示し;「EtNH」は、ジエチルアミンを示し;「MeOH」は、メタノールを示し;「PhCH」は、トルエンを示し;「PhH」は、ベンゼンを示し;「PBu」は、トリブチルホスフィンを示し;「PPh」は、トリフェニルホスフィンを示し;「dppf」は、1,1’−ビス(ジフェニルホスファニル)フェロセンを示し;「NaO−t−Bu」は、ナトリウムtert−ブトキシドを示す。
【実施例】
【0040】
【化2】

スキームIにおいて、ピリジン中間体(5)および(6)の調製を記載する。スキーム1の工程1において、3−ブロモピリジン(1)を、3−ブロモ−ピリジン−N−オキシド(2)に酸化する。スキームIの工程2において、シアン化物の添加は、3−ブロモ−ピリジン−2−カルボニトリル(3)を生じる。式(3)のニトリルをカルボン酸に加水分解し、式(4)のエステルに酸触媒作用によりエステル化する。スキームIの工程4において、エステルは、水素化ホウ素ナトリウムを使用して式(5a)のピリジルメタノールに還元する。
【0041】
Hal=Iの式(5b)のピリジニルメタノールに、ピコリン酸(7)のジアニオンを形成し、その後ヨウ素での求電子的急冷によって3−ヨードピコリン酸(8)を得ることによって、スキームIの工程5に示されるようにアクセスする。工程6において、式(8)の酸を、水素化ジイソブチルアルミニウムを使用して還元して、式(5b)のピリジルメタノールを提供する。
【0042】
スキームIの工程7において、式(5a、b)のアルコールを、塩化チオニルを使用して式(6a、b)の塩化ピリジルメチルに合成する。
【0043】
【化3】

スキームIIにおいて、重要な中間体(13a、b)を合成するための種々の方法を記載する。スキームIIの工程1において、5−フルオロ−3−ブロモ−フェノール(9)を保護して、式(10)のメトキシメチル(MOM)エーテルを得る。スキームIIの工程2において、式(10)の保護されたブロモフェノールと1−ブチンとの間の薗頭カップリングは、式(11)のアリールアルキンを提供する。反応を、ジエチルアミンまたはトリエチルアミンのいずれかで実行することができる。臭化アリールは、高温(70℃)で結合し、ヨウ化アリールは、室温で結合する。フェノールを、スキームIの工程3に示されるように、HCl−アセトンを使用して脱保護して、式(12)のフェノールを得る。あるいは、フェノールをTHPエーテルとして保護し、メタノール中のp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)を使用して脱保護して、式(12)のフェノールを得る。
【0044】
スキームIIの工程4において、式(12)のアルキニルフェノールと式(5)または(5b)のピリジンメチルアルコールとの間の光延反応は、式(13a、b)のハロピリジルアリールアルキンを得る。他の好適な試薬は、DIADおよびTHF中のトリフェニルホスフィンを含む。あるいは、工程5において、式(13a、b)のハロピリジルアリールアルキンを、アセトニトリル中の炭酸カリウムを使用する、式(6a)または(6b)の塩化ピリジンメチルでの式(12)のフェノールのアルキル化によってアクセスする。
【0045】
式(13a)のブロモピリジルアリールアルキンへの別の経路を、工程6および7に示す。スキームIIの工程6において、5−フルオロ−2−ヨードフェノール(Morice,C.ら、Tetrahedron Lett.2001,42,6499−6502)を、光延反応において、式(5a)のピリジルメタノールと結合させて、式(15)のヨードアリールエーテルを得る。スキームII、工程7において、ヨードアリールエーテルに1−ブチンとの薗頭カップリングを受けさせて、式(13a)のハロピリジルアリールアルキンを得る。
【0046】
【化4】

スキームIIIの工程1および2において、式(13a、b)のハロピリジルアリールアルキンの白金触媒によるジボロン化は、希釈条件(約0.01M)下での分子内Suzukiカップリングの際に式(17)のビニルボロン酸を形成する、式(16a、b)のジボロン酸を得る。ジボロン化が、Hal=Brである(13a)について最適であることに注意するべきである。
【0047】
スキームIIIの工程3において、ビニルボロン酸(17)と3−ヨードアニリンとの間の分子間Suzukiカップリングは、式(18)のアニリンベンゾピリジル−10−オキセピンを提供する。工程4において、式(18)のアニリンを、塩化メタンスルホニルでスルホニル化して、最終の式(19)のベンゾピリジル−10−オキセピンを得る。あるいは、スキームIIIの工程5において、式(19)のベンゾピリジル−10−オキセピンを、N−(3−ヨード−フェニル)−メタンスルホンアミドでSuzukiカップリングすることによって、直接的にアクセスする。
【0048】
【化5】

スキームIVにおいて、式(19)のベンゾピリジル−10−オキセピンを得るためのさらに別の方法を示す。スキームIVの工程1において、3−ニトロベンゼンボロン酸での式(13a、b)のハロピリジルアリールアルキンの連続的分子内HeckおよびSuzuki反応を実行して、式(20)のニトロフェニルベンゾピリジルオキセピンを得る。Hal=Iのときに、アリールアルキンへのボロン酸のゆっくりとした添加を行う場合に、収率を改善する。工程2〜3において、(19)が式(20)のニトロ類似物を還元して、式(21)のアニリンを得、その後、スルホニル化することによって誘導されることが当業者によって認識されるだろう。
【0049】
【化6】

スキームVの工程1において、スキーム2の工程2と類似の様式で、式(5a)の2−ブロモピリジンと1ブチンとの間に薗頭カップリングが起こり、式(22)のアルキニルピリジルメチルアルコールを得る。スキームVの工程2において、式(22)のピリジルメチルアルコールと式(14)の5−フルオロ−2−ヨードフェノールとの間の光延反応は、式(23)のピリジンを生じる。工程3において、分子内Heck反応、その後のN−[3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェニル]−メタンスルホンアミドでのSuzuki交差カップリングは、式(24)のベンゾピリジル−11−オキセピンを提供し、それを、式(19)のベンゾピリジル−10−オキセピンに光異性化する。
【0050】
【化7】

スキームVIの工程1において、式(25)のラクトンを、式(26)のハロフェノールのナトリウム塩と反応させて、式(27)の酸を提供する。スキームVIの工程2において、Friedel−Crafts反応を式(27)の安息香酸で実行して、式(28)のベンゾピリジルオキセピノンを得る。スキームVIの工程3において、式(28)のケトンを、Wittigオレフィン化またはアルキルセリウム添加/脱水シーケンスを介して、幾何異性体の混合物として式(29)のアルケニルベンゾピリジルオキセピンに変換する。工程4において、式(29)のアルケニルベンゾピリジルオキセピンおよびその異性体を、ブロミンまたは4−(ジメチルアミノ)ピリジニウムトリブロミドのいずれかと反応させて、式(30)および(31)の幾何学的臭化ビニルを得る。臭化ビニルを、分離し、工程5および6に示されるように、典型的な条件下でN−[3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェニル]−メタンスルホンアミドでのSuzuki交差カップリングを介して、各々のスルホンアミド(19)または(24)に変換する。式(24)のスルホンアミドを、スキームVIの工程7において、式(19)のベンゾピリジル−10−オキセピンに光異性化する。
【0051】
中間体1
1−ブロモ−4−フルオロ−2−メトキシメトキシ−ベンゼン
【化8】

2−ブロモ−5−フルオロフェノール(30g、0.16mol)を、ジクロロメタン(170mL)中に溶解させ、0℃まで冷却する。この溶液に、注射器を介してジイソプロピルエチルアミン(36mL、0.20mol)を加え、その後、添加漏斗を介してクロロメチルメチルエーテル(16mL、0.20mol)を加える。溶液を撹拌し、室温まで温める。2時間後、混合物を飽和含水NHCl、水、および塩水で洗浄する。有機部分を、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。生じた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage(登録商標) Si65M、20% AcOEt/ヘキサン)によって精製して、透明な無色の油として26.1g(71%)の標題の化合物を得る。H NMR 400MHz(CDCl)δ7.46−7.53(m,1H),6.92−6.99(m,1H),6.63−6.70(m,1H),5.26(s,2H),3.55(s,3H).
【0052】
中間体2
1−ブタ−1−イニル−4−フルオロ−2−メトキシメトキシ−ベンゼン
【化9】

1−ブロモ−4−フルオロ−2−メトキシメトキシ−ベンゼン(7.6g、32mmol)を、耐圧フラスコ(pressure flask)中に入れ、ジエチルアミン(65mL)中に溶解させ、窒素で15分間脱気する。過剰のブチンを、溶液を通してバブリングし、CuI(1.9g、10mmol)およびPdCl(PPh(2.3g、3.3mmol)を加え、フラスコを70℃まで44時間加熱する。混合物をエーテルで希釈し、次いで、飽和含水NHClおよび塩水で洗浄する。有機部分を、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。生じた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage(登録商標) Si65M、3% THF/ヘキサン)によって精製して、橙色の固体として6.12g(91%)の標題の化合物を得る。GCMS m/e 208 [M]
【0053】
中間体3
2−ブタ−1−イニル−5−フルオロ−フェノール
【化10】

1−ブタ−1−イニル−4−フルオロ−2−メトキシメトキシ−ベンゼン(6.1g、29mmol)を、アセトン中の250mLの濃塩酸の10%溶液中に溶解させる。溶液を、室温で5時間撹拌する。反応物を、エーテルで希釈し、飽和含水NaHCOおよび塩水で洗浄する。有機部分を、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。生じた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage(登録商標) Si65M、5% AcOEt/ヘキサン)によって精製して、橙色の油として3.52g(73%)の標題の化合物を得る。GCMS m/e 164[M]
【0054】
中間体4
3−ブロモ−ピリジン 1−オキシド
【化11】

メチルトリオキソレニウム(100mg、0.401mmol)を、ジクロロメタン(40mL)中に溶解させ、3−ブロモピリジン(15.8g、100mmol)を加え、その後、30%含水H(22.7mL)を加える。二相性の混合物を室温で撹拌する。18時間後、MnO(25mg、0.29mmol)を加え、混合物を室温で2時間撹拌する。混合物をジクロロメタンで抽出し、合わせた抽出物を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、橙色の油として9.52g(55%)の標題の化合物を得る。GCMS m/e 174 [M−H]
【0055】
中間体5
3−ブロモ−ピリジン−2−カルボニトリル
【化12】

3−ブロモ−ピリジン 1−オキシド(9.4g、54mmol)を、アセトニトリル(60mL)中に溶解させ、トリエチルアミン(15mL)を加え、その後、シアン化トリメチルシリル(21.7mL、163mmol)を加える。混合物を100℃まで加熱し、16時間撹拌する。混合物を0℃に冷却し、250mLの5M含水NaOH中に注ぎ、ジクロロメタンで抽出する。合わせた抽出物を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。生じた物質を、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage(登録商標) Si65M、20% AcOEt/ヘキサン)を使用して精製して、黄色の固体として7.8g(79%)の標題の化合物を得る。GCMS m/e 182 [M−H]
【0056】
中間体6
3−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステル
【化13】

3−ブロモ−ピリジン−2−カルボニトリル(14.7g、80.3mmol)を、濃HCl(50mL)中に溶解させ、110℃まで18時間加熱する。混合物を0℃に冷却し、濾過して、少量のエーテルで洗い流し、減圧下でオーブンにおいて乾燥する。生じた褐色の固体を、メタノール(80mL)中に溶解させ、濃HSO(6.6mL)を滴下して加え、溶液を90℃まで16時間加熱する。メタノールを減圧下で除去し、飽和含水重炭酸ナトリウムを加えて、基本pHを得、混合物をAcOEtで抽出する。合わせた抽出物を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色の固体として12.8g(74%)の標題の化合物を得る。GCMS m/e 215 [M−H]
【0057】
中間体7
(3−ブロモ−ピリジン−2−イル)−メタノール
【化14】

3−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステル(12.8g、59.2mmol)をメタノール(150mL)中に溶解させ、0℃まで冷却する。混合物に、NaBH(11.2g、296mmol)を、1.0gずつ加える。混合物を室温まで温め、3時間撹拌する。メタノールを減圧下で除去し、AcOEtを加え、溶液を飽和した含水塩化アンモニウムおよび塩水で洗浄する。有機部分をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色の固体として6.8g(62%)の標題の化合物を得る。GCMS m/e 187 [M−H]
【0058】
中間体8
3−ブロモ−2−(2−ブタ−1−イニル−5−フルオロ−フェノキシメチル)−ピリジン
【化15】

ジクロロメタン(162mL)中の(3−ブロモ−ピリジン−2−イル)−メタノール(3.09g、16.43mmol)、2−ブタ−1−イニル−5−フルオロ−フェノール(2.70g,16.43mmol)、およびトリフェニルホスフィン(6.46g、24.64mmol)の溶液を、−5℃〜0℃に冷却する。ジイソプロピルアゾジカルボン酸(DIAD)(4.85mL、24.64mmol)を15分間にわたって滴下して加える。1時間後に、溶媒を蒸発させ、粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(SiO;4%ヘキサン:AcOEt)によって直接的に精製し、3.5g(64%)の標題の化合物を得る。LCMS m/e 334 [M+H]
【0059】
中間体9
8−フルオロ−5−[1−(3−ニトロ−フェニル)−プロピリデン]−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン
【化16】

Pd(OAc)(0.18g、5%)およびo−トリルホスフィン(0.32g、1.05mmol)を、4:1のジオキサン:水(101mL)中の3−ブロモ−2−(2−ブタ−1−イニル−5−フルオロ−フェノキシメチル)−ピリジン(3.50g、10.5mmol)、炭酸ナトリウム(3.39g、31.5mmol)、および3−ニトロベンゼンボロン酸(2.27g、13.6mmol)の溶液に加える。窒素を、混合物を通して15分間バブリングし、次いで、反応物を75℃で一晩撹拌する。混合物を室温まで冷却し、固体をCelite(登録商標)を通して濾過する。水およびAcOEtを加えて、相を静かに移す。水層をAcOEtで抽出し、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。生じた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、20% AcOEt:ヘキサン)によって精製して、1.49g(38%)の標題の化合物を提供する。LCMS m/e 377 [M+H]
【0060】
中間体10
3−[1−(8−フルオロ−11H−10 オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イリデン)−プロピル]−フェニルアミン
【化17】

8−フルオロ−5−[1−(3−ニトロ−フェニル)−プロピリデン]−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン(1.49g、3.96mmol)を、エタノール(20ml)中に溶解させ、窒素でパージする。Pd/C(0.15g、10%)を混合物に加え、1気圧の水素で2時間水素化する。混合物を窒素でパージし、Celite(登録商標)を通して濾過し、固体をエタノールで洗浄する。濾液を減圧下で濃縮して、1.37g(99%)の標題の化合物を得る。LCMS m/e 347 [M+H]
【0061】
実施例1
N−{3−[1−(8−フルオロ−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イリデン)−プロピル]−フェニル}−メタンスルホンアミド
【化18】

塩化メタンスルホニル(0.34mL、4.36mmol)を、ジクロロメタン(10mL)中の3−[1−(8−フルオロ−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イリデン)−プロピル]−フェニルアミン(1.37g、3.96mmol)およびピリジン(0.35mL、4.36mmol)の溶液に、0℃で滴下して加える。2時間後に、7%含水重炭酸ナトリウム(20mL)を加え、混合物を30分間撹拌し、静かに移し、層を分離させる。水相をジクロロメタン(2×20mL)で洗浄する。有機相を採取し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濾過および濃縮して、1.98gの粗生成物を得る。物質を、Biotage(登録商標)を使用し、ヘキサン:エタノール(9:1)で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、1.35g(80%)の標題の化合物を提供する。LCMS m/e 425 [M+H]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(E)−N−{3−[1−(8−フルオロ−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イリデン)−プロピル]−フェニル}−メタンスルホンアミドである化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
(E)−N−{3−[1−(8−フルオロ−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イリデン)−プロピル]−フェニル}−メタンスルホンアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
治療における使用のための、請求項1または2のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項4】
慢性関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ熱、喘息、アレルギー性鼻炎、全身性エリテマトーデス、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、炎症性腸疾患、または潰瘍性大腸炎の処置における使用のための、請求項1または2のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項5】
慢性関節リウマチの処置における使用のための、請求項4に記載の化合物または塩。
【請求項6】
慢性関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ熱、喘息、アレルギー性鼻炎、全身性エリテマトーデス、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、炎症性腸疾患、または潰瘍性大腸炎を処置する方法であって、その必要のある患者に、請求項1または2のいずれかに記載の化合物または塩の有効量を投与することを含む方法。
【請求項7】
1種以上の薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて、請求項1または2のいずれかに記載の化合物または塩を含む医薬組成物。
【請求項8】
1種以上の薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて、請求項1または2のいずれかに記載の化合物または塩を含む、慢性関節リウマチの処置のための医薬組成物。

【公表番号】特表2011−525474(P2011−525474A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542329(P2010−542329)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/030374
【国際公開番号】WO2009/089312
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】