説明

リウマチ熱関連ペプチド(PARF)および診断マーカーとしてのその使用

【課題】 本発明は、ヒトコラーゲンとの相関によってリウマチ熱の発症において重要な役割を担うリウマチ熱関連ペプチド(PARF)に指定されている連鎖球菌オクタペプチドAXYLXXLN、好ましくはオクタペプチドAXYLZZLNに関連する。したがってPARFはリウマチ熱関連株のマーカーであり、治療、特に予防的治療の標的を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトコラーゲンとの相関によってリウマチ熱の発症において重要な役割を担うリウマチ熱関連ペプチド(PARF)に指定されている連鎖球菌オクタペプチドAXYLXXLN、特にオクタペプチドAXYLZZLNに関連する。したがってPARFはリウマチ熱関連株のマーカーを表し、治療、特に予防的治療の標的を提供する。
【0002】
本発明の目的として、本明細書に引用した参考文献はすべて参照によりそのまま援用される。
【背景技術】
【0003】
急性リウマチ熱および後続のリウマチ性心疾患は連鎖球菌感染の深刻な後遺症である。ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)感染がこの後遺症の原因であることはこの数十年間で分かっていたが、他の連鎖球菌種もヒトに急性リウマチ熱を発症させることが分かったのはごく最近のことである。
【0004】
急性リウマチ熱(ARF)は連鎖球菌に起因する最も重篤な疾患の1つであり、未処置の、または不適切に処置したS.ピオゲネス咽頭炎に伴う自己免疫後遺症として発症する(A. L. Bisno, N Engl J Med 325, 783 (Sep 12,1991), M. McDonald, B. J. Currie, J. R. Carapetis, Lancet Infect Dis 4, 240 (Apr, 2004))。ARFおよび後続のリウマチ性心疾患(RHD)は今日、依然として循環器疾患の重大な原因である(WHO、「Rheumatic fever and rheumatic heart disease - Report of an Expert Panel」(2004))。最も深刻に影響が及ぶのは小児と働き盛りの若年成人である。近年の概算によれば、毎年1500万を超える人がRHDに罹患し、50万を超える人がARFに罹患し、毎年約25万人がARFまたはRHDに直接起因して死亡している(J. R. Carapetis, M. McDonald, N. J. Wilson. Lancet 366, 155 (JuI 9-15, 2005))。
【0005】
多数の異なる自己免疫機序がARFの病因として提起されてきた(M. W. Cunningham, Clin Microbiol Rev 13, 470 (Jul, 2000))。近年の仮説の1つとして、ARFを引き起こす可能性のあるS.ピオゲネス株はヒトコラーゲンと相互に作用し、自己抗原として作用する凝集複合体を形成することが含まれる。ARFまたはRHDの患者の血清は、健常ドナーの対照血清と比較して抗コラーゲン抗体の力価が有意に高い。S.ピオゲネス表面タンパク質であるM3タンパク質およびヒアルロン酸カプセル(HA)が、コラーゲンと相互に作用してそれを凝集する連鎖球菌成分と同定された。精製M3タンパク質でマウスを免疫すると、抗コラーゲン抗体が産生された。したがって連鎖球菌表面成分へコラーゲンが直接結合することはARF発症の重要な機序の1つであると考えられる(K. Dinklaら、J Clin Invest 11 1, 1905 (Jun. 2003))。
【0006】
ARFの発症率が高い地理上の地域では、C群連鎖球菌(GCS)およびG群連鎖球菌(GGS)が広く伝播している(例えば、M. McDonald, B. J. Currie, J. R. Carapetis, Lancet Infect Dis 4, 240 (Apr, 2004)を参照)。伝統的にこれらの血清群は重要な獣医学的病原と考えられているがヒト感染にも関与している。GCSおよびGGSの伝播がヒトにARFを発症させる可能性があることが近年分かってきている(A. Haidanら、Lancet 356,1167 (Sep 30,2000))。
【0007】
ペニシリンがARFの撲滅に明らかに失敗し、連鎖球菌ワクチンが利用されるのは数年先になるという事実は、新規な規制戦略の必要性を明確に示している(E. L. Kaplan, Heart 91, 3 (Jan, 2005))。
【0008】
S.ピオゲネス株の中には他の株よりARFを発症させやすいものがあることは周知である(G. H. Stollerman, Clin Immunol Immunopathol 61, 131 (Nov, 1991))。
【0009】
国際公開第2004‐071422号にS.ピオゲネス血清不透明性因子(SOF)およびS.ディスガラクティエ(S. dysgalactiae)フィブロネクチン結合タンパク質をベースにしたポリペプチド、ならびに抗体組成物および方法が記載されている。該組成物はS.ピオゲネスおよび/またはS.ディスガラクティエに特異的なオプソニン化抗体および/または防御抗体の誘発に有効であり、したがってS.ピオゲネスおよびS.ディスガラクティエ感染症などの連鎖球菌感染症、S.ピオゲネスおよびS.ディスガラクティエ感染症と関連する疾患ならびに関連の自己免疫神経障害を治療、診断および観察することに有用であると考えられる。
【0010】
国際公開第03/033520号A2に本発明のペプチドとは異なる環状ペプチドが記載されている。
【0011】
日本国特許第10262698号に感染病を診断するプローブとしてS.ピオゲネス由来DNAフラグメントを含むプローブが記載されている。該プローブは咽頭炎、リウマチ熱、腎炎、丹毒、猩紅熱、敗血症等の病原であるS.ピオゲネスの検出および同定に有用であると記述されている。該プローブは、S.ピオゲネス微生物から染色体DNAを抽出し、抽出した染色体DNAを制限酵素HindIIIで完全に切断し、切断したDNAをクローン化し、微生物のDNAとの特異的な反応性を示すフラグメントを選択することで得る。
【0012】
米国特許第6,777,547号にS.ピオゲネス由来のコラーゲン結合タンパク質Cpa1およびCpa49、ならびにS.ピオゲネスなどのA群連鎖球菌に起因する感染症の予防および治療に有用な、対応するアミノ酸および核酸配列が記載されている。これらのタンパク質はコラーゲンに結合することが観察されており、該タンパク質またはそこに生成した抗体の投与などによる方法が提供され、これによりコラーゲンの連鎖球菌結合が阻害可能となり、連鎖球菌感染症を大幅に抑制することができる。特に、該タンパク質はワクチン成分またはその抗体として使用してよく、コラーゲン遮断薬として作用してA群連鎖球菌による重篤な感染症を抑制または予防するために創傷部に投与してもよいし、または生体材料を被覆するために使用してもよいことから、有効であると記述されている。Cpa1およびCpa49は、コラーゲン結合タンパク質である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来CNAおよび腺疫菌(Streptococcus equi)由来CNEの相同体であり、PARFと異なる機序によってコラーゲンに結合する。
【0013】
Kumar Dら(Kumar D, Kaur S, Grover A, Singal PK, Ganguly NK. An easy method for detection of rheumatic antigen(s) in rheumatic fever/rheumatic heart disease patients by dot-ELISA. Can J Cardiol. 1998 Jun;14(6):807-10)はヒトB細胞同種抗原に対して増殖した多様なモノクローナル抗体、例えばニューヨーク出身のリウマチ熱/リウマチ性心疾患患者に100%特異的であるが、北部インド人では62%〜68%に過ぎないことが判明したモノクローナル抗体D8/17について記述している。
【特許文献1】国際公開第2004‐071422号
【特許文献2】国際公開第03/033520号A2
【特許文献3】日本国特許第10262698号
【特許文献4】米国特許第6,777,547号
【非特許文献1】A. L. Bisno, N Engl J Med 325, 783 (Sep 12,1991), M. McDonald, B. J. Currie, J. R. Carapetis, Lancet Infect Dis 4, 240 (Apr, 2004)
【非特許文献2】WHO、「Rheumatic fever and rheumatic heart disease - Report of an Expert Panel」(2004)
【非特許文献3】J. R. Carapetis, M. McDonald, N. J. Wilson. Lancet 366, 155 (JuI 9-15, 2005))。
【非特許文献4】M. W. Cunningham, Clin Microbiol Rev 13, 470 (Jul, 2000)
【非特許文献5】K. Dinklaら、J Clin Invest 11 1, 1905 (Jun. 2003)
【非特許文献6】M. McDonald, B. J. Currie, J. R. Carapetis, Lancet Infect Dis 4, 240 (Apr, 2004)
【非特許文献7】A. Haidanら、Lancet 356,1167 (Sep 30,2000)
【非特許文献8】E. L. Kaplan, Heart 91, 3 (Jan, 2005)
【非特許文献9】G. H. Stollerman, Clin Immunol Immunopathol 61, 131 (Nov, 1991)
【非特許文献10】Kumar D, Kaur S, Grover A, Singal PK, Ganguly NK. An easy method for detection of rheumatic antigen(s) in rheumatic fever/rheumatic heart disease patients by dot-ELISA. Can J Cardiol. 1998 Jun;14(6):807-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
「リウマチ原性株」の初期診断は一次感染のリスク評価に不可欠なものである。診断および予防アプローチの開発の必須条件はARFの基礎となる発症機序を理解することである。上記の進歩にもかかわらず、Mタンパク質またはM様タンパク質を含有する細菌、特に連鎖球菌、に起因する感染症を治療および診断するためのさらに多くの、かつ有効な選択肢が求められている。したがって本発明の目的はこれらのニーズを実現させるために効果的な手段を提供することである。本発明の他の目的、特徴および利点は以下にある好ましい実施態様の詳細な明細書で説明することとし、部分的には明細書から明らかとなるが、そうでなければ本発明を実施することで確認してもよい。本発明のこれらの目的および利点は、記述した明細書およびこれに関する請求項で特に示された方法および組成物により実現し、達成することとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にしたがって、本発明の目的は配列AXYLXXLN(配列番号1)を含むコラーゲン結合ペプチドを提供して解決するものであり、ここでは該ペプチドが無傷細菌Mタンパク質またはM様タンパク質でないという条件で、すなわち該ペプチドがアミノ酸配列が由来する無傷細菌ポリペプチド(すなわち文献に記述している複数の全長配列Mタンパク質またはM様タンパク質のうちの1つ)でないという条件で、Xは任意の天然アミノ酸であることが可能である。配列AXYLZZLN(配列番号2)を含むコラーゲン結合ペプチドが好ましく、ここではペプチドが無傷細菌Mタンパク質またはM様タンパク質でなないという条件で、XおよびZは任意の天然アミノ酸であることが可能であり、Zの少なくとも1つは塩基性アミノ酸、好ましくはリジンまたはアルギニンまたは化学修飾したその変異型によって占められている。
【0016】
本発明にしたがったコラーゲン結合ペプチドがさらに好ましく、ここでは該ペプチドは配列番号3〜配列番号15にしたがったアミノ酸配列または化学修飾したその変異型のみからなり、または本質的にそれらのみからなる。以下の表に本発明の好ましいPARFペプチド、ならびにその起源(全長タンパク質ならびにデータベースアクセッション番号)を示す。配列から分かるとおり、位置1はやや柔軟性があると思われ、一方、位置3、4、7および8は高度に保存されており、コラーゲンの効率的な結合に重要である:
【0017】
タンパク質データベース
アクセッション番号 配列 配列番号 菌種
FOG
AAT99868 ARYLQKLN 配列番号3 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス(equisimilis)
M3B
AA03311 AEYLKGLN 配列番号4 ストレプトコッカス・ピオゲネス
emmLC1903
AY686728 AEYLQRLN 配列番号5 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
emmLC1904
AAU26048 AEYLQRLN 配列番号6 ストレプトコッカス・コンステラータス(constellatus)
st4545
AAC27085 AWYLKELN 配列番号7 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
NS31
AAY30314 ARYLETLN 配列番号8 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
NS15
AAY30313 AEYLKALN 配列番号9 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
M55
CAA50980 ATYLKELN 配列番号10 ストレプトコッカス・ピオゲネス
emmG1
AAA26928 AQYLRELN 配列番号11 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
g0emmL
AAA67071 EAYLKRLN 配列番号12 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
stC2sk.0
ABE77389 TQYLKRLN 配列番号13 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
AAC84045 TQYLKRLN 配列番号14 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
G40M
ARYLKRLN 配列番号15 ストレプトコッカス・ディスガラクティエ亜種エキシミリス
【0018】
「本質的に〜のみからなる」とは、本発明にしたがったペプチドが、配列番号1〜配列番号15のいずれかにしたがった配列または化学修飾したその変異型に加えて、本明細書で定義されたコラーゲン結合配列として機能するペプチドの形成部分では必ずしもないアミノ酸の付加的なNおよび/またはC末端に位置する伸長部位をも含むことを意味する。
【0019】
本発明において、根本的なメカニズムを理解し、関連する細菌成分を同定するために、本発明者らはコラーゲンと相互作用してそれを凝集させる異なる連鎖球菌種の可能性を調査した。64株を動物感染体から、70株をヒト感染者から単離した合計134株のGCSおよびGGS株が本研究に含まれた。リウマチ原性の可能性が高いS.ピオゲネス株を正の対照として含まれた(J. R. Carapetis, M. McDonald, N. J. Wilson. Lancet 366, 155 (JuI 9-15, 2005))。放射活性コラーゲンへの結合について全株を試験した。
【0020】
動物分離株19%およびヒト分離株38%がコラーゲンへの結合能を有していた(図1A)。コラーゲン結合能の割合が最も高かった(48%)のはヒトGGSであった。しかし、動物GGSのどれもコラーゲンとまったく相互作用しなかった。高度に保存された配列のプライマーを使用し、PCRにより、コラーゲン結合に関して陽性であった全分離株をemmまたはemm様遺伝子の存在について試験した。
【0021】
米国特許第6,280,997号は最も短いペプチドが30アミノ酸長である1166個のタンパク質配列のコレクションを開示している。これらのペプチドがコラーゲン結合活性を有するという報告はまったくなかった。
【0022】
Dinklaら(2003) Clin Invest 111, 1905-1912はS.ピオゲネスのM3タンパク質がコラーゲンIV型の凝集に関与していることを開示している。しかしPARFはS.ピオゲネスのM3のみならずS.ディスガラクティエのFOG、および他のMまたはM様タンパク質にも存在することが分かった。Dinklaらはさらに、コラーゲン中の構造再構成が免疫応答の理由であるという仮説を立てている。しかし、コラーゲンとPARFモチーフを担持するタンパク質との相互作用が必要であることが本発明では証明されている。
【0023】
ヒト分離株すべてがemmまたはemm様遺伝子を有し、一方、動物分離株では1株しか陽性ではなかった(図1B)。この分離株では、その特異的分解がコラーゲンとの相互作用を破壊することから、HAカプセルはコラーゲン結合に関与していた。コラーゲンと相互に作用する全株において、S.ピオゲネス由来HAカプセル、S.エキシミリス由来コラーゲン結合タンパク質CNE(J. Lannergard, L. Frykberg, B. Guss, FEMS Microbial Lett 222, 69 (May 16, 2003))およびM様たんぱく質FOG(GGSのフィブリノーゲン結合タンパク質)(H. M. Johansson, M. Morgelin, I. M. Frick, Microbiology 150, 421 1 (Dec, 2004), D. P. Nitsche, H. M. Johansson, I. M. Frick, M. Morgelin, J Biol Chem 281, 1670 (Jan 20, 2006))などのコラーゲン結合因子の存在を調査した。HAは30パーセントの分離株に見られ、ヒトGGS、ヒトGCSおよび動物GCSに均等に分布していた。CNEは動物GCSにのみ見られ、一方FOGはヒトGGS分離株のみによって発現し(図1B)、これは先行の報告(W. J. Simpson, J. C. Robbins, P. P. Cleary, Microb Pathog 3, 339 (Nov, 1987))に一致している。連鎖球菌とコラーゲンとの相互作用も走査電子顕微鏡法により分析した。この分析により、FOG陽性ヒト分離株がコラーゲンに結合し、しかもそれを凝集させるという興味深い所見がもたらされた。コラーゲンと相互に作用する動物分離株はまったく凝集を誘発しなかった(図2A、2B)。さらなる調査では、3種の異なる組み換えタンパク質FOGf1(aa1〜557),FOG1‐B(aa1〜278)およびFOG1‐A(aa1〜134)を使用した(図2C)。
【0024】
短フラグメントFOG1‐BおよびFOG1‐Aの結合を表面プラズモン共鳴(SPR)測定法で試験したところ、固定化コラーゲンIVとの相互作用は濃度依存性であることが示された(図2Dおよび2E)。コラーゲンIに関するデータ(D. P. Nitsche, H. M. Johansson, I. M. Frick, M. Morgelin, J Biol Chem 281, 1670 (Jan 20, 2006))との整合性から、FOGのN末端領域はヒトGCSおよびGGSの主要なコラーゲン結合成分であることが示された。
【0025】
S.ピオゲネスの場合、表面タンパク質M3はコラーゲンに結合し、それを凝集させ、コラーゲンIV自己抗原性が生じる(K. Dinklaら、J Clin Invest 11 1, 1905 (Jun. 2003))。したがって本発明者らはM3タンパク質のN末端領域(M3.5、aa1〜aa186)ならびにFOGフラグメント1‐Aおよび1‐Bでマウスに免疫を与えた。M3タンパク質およびFOGフラグメントで免疫したマウスから得た血清を用いたELISAでは、抗コラーゲン抗体の力価はバッファー対照と比較して実質的に高いことが観察された(図3A)。抗体の特異性を判定するため、コラーゲンIV反応性マウス血清をプールし、コラーゲンIVおよびFOG1‐Aに対する抗体を、FOGタンパク質での事前吸収の前後で測定した。コラーゲンIVに対する血清力価は事前吸収の後、ほとんど変化しないままであり、抗FOG抗体と抗コラーゲン抗体との間の交差反応性が欠如していたことを示唆している(図3B)。FOGコラーゲン複合体の自己免疫原性をさらに確認するため、ARFの患者および健常対照由来の血清を、M3タンパク質ならびにFOG1‐AのN末端に対する反応性について試験した。同じ地理上の地域出身の健常ドナー由来の対照血清と比較して、患者の血清ではFOG1‐Aに対する血清力価が6〜8倍増加していることが観察された(図3C)。
【0026】
コラーゲンとの相互作用に関与するFOGタンパク質のドメインを位置付けるため、FOGI‐Aの配列を表す3アミノ酸シフトを構成する15merのペプチドを膜上で合成した(R. Frank, Tetrahedron 48, 9217 (1992))。可溶リガンドとしての放射標識したコラーゲンIVを膜結合ペプチドへの結合について試験した。通常の配列ARYLQKを含むペプチド17〜20で強いシグナルを得た(図4A、4B)。膜上での合成に先だって異なるアミノ酸を置換する、突然変異解析でペプチド19の配列を選択した(図4C)。結合の分析から、配列ARYL‐Kは合成ペプチドとコラーゲンIVとの相互作用に必須のものであることが示された(図4D)。配列の比較により、FOG1‐AおよびM3タンパク質のN末端の相同性は高いことが明らかになった(25.4%相同性、118aaオーバーラップ)。顕著にFOGのコラーゲン結合ペプチドは、全15種のM3の公知のサブタイプに存在する保存アミノ酸(図4E)のパッチに属している。
【0027】
本来の構造的環境にあるこのモチーフのコラーゲン結合特性を試験するため、FOGとM3との間で保存されたアミノ酸を部位特異的に置換し、全長タンパク質FOGf1の突然変異型を生成した。ドットブロットおよび表面プラズモン共鳴分析にて、該突然変異型のコラーゲン結合を野生型タンパク質と比較した。A58、Y60、L64、N65、LND66およびYL61(aa数はFOGf1全長配列に基づく)を置換するとコラーゲン結合は完全に破壊される(図4F)。スポット膜および部位特異的突然変異誘発の結果として、オクタペプチドAXYLXXLN、好ましくはAXYLZZLNがコラーゲンの結合および凝集成分として同定されることとなった(図4G)。公開されているデータベースで調査したところ、これらのタイプG1、stg4545、emmLC1903、ならびにGGS由来emmLC1904およびGAS由来M55の間で、このような配列を含む数種の他のMタンパク質が見つかった。本発明者らの予測を検討するため、emmタイプのemmLC1903(AEYLQRLN)のGCS株を検査し、コラーゲン結合に陽性であることが判明した。FOGおよびM3の両方では、Zで示される位置の1つはリジンによって占められ(図4E)emmLC1903ではリジンは類似した性質を有するアルギニンによって置換されている。アラニン置換により、合成ペプチド19の効率的な相互作用にK63が重要であることが明らかになり(図4CおよびD)、Z位置の1つにあるリジンがコラーゲン結合モチーフに有益であることが示唆された。コラーゲンIVがGCSタイプemmLC1903に結合することから、コラーゲン結合を失わないでリジンはアルギニンにより置換可能であることが示された。
【0028】
上記のモチーフは、コラーゲンが自己抗原になり、次いでリウマチ熱が発症する状況で重要な役割を担っている。したがって該ペプチドは指定のPARF(リウマチ熱関連ペプチド)であった。PARFがA群連鎖球菌の表面タンパク質のみならずCおよびG群連鎖球菌にも存在することから、リウマチ熱におけるGCSおよびGGSの役割は理解可能である。この試験の結果から、リウマチ熱の誘発はA群連鎖球菌感染症に一意的に関連することはあり得ず、他の連鎖球菌種がリウマチ熱の発症に同等の、またはそれ以上の役割を担っていることが明らかになっている。これらの結果は重要な診断的かつ治療的結論を出している。
【0029】
本発明にしたがったペプチドは8〜100、好ましくは8〜30、最も好ましくは8〜12個のアミノ酸全長を有することが可能である。さらに、配列番号1〜配列番号15のいずれかにしたがった少なくとも1つのペプチドは非ペプチド結合を含むことが可能である。さらに、それぞれの核酸は8〜100、好ましくは8〜30、最も好ましくは8〜12個のアミノ酸をコードすることが可能である。配列番号3〜配列番号15にしたがったペプチド、または化学修飾したその変異型が最も好ましい。
【0030】
本発明の文脈では、「化学修飾された変異型」は配列のアミノ酸が付加的化学部分を含むように修飾されている、ペプチドを意味するものとする。通常この修飾はインビトロで行われ、(固相へのカップリングまたは色素による反応などの)ペプチドの取扱いを改良でき、またはもっと効果的に(ポリリジン部分などを有する)抗体を生成できる、色素、リンカー、スペーサー、酵素等の化学基を導入する。本発明にしたがったペプチドの化学修飾した変異型は、本発明にしたがった非修飾ペプチドと同様の立体構造および/または機能を実質的に有する(すなわちコラーゲン結合を付与する)こととなる。
【0031】
そのさらに好ましい実施態様では、本発明は非ペプチド結合を含むコラーゲン結合ペプチドを提供する。
【0032】
「ペプチド」に関しては、本発明者らはアミノ酸残基がペプチド(‐CO‐NH‐)結合により接合している分子のみならず、ペプチド結合が反転した分子をも包含している。このようなレトロインベルソ(retro-inverso)型のペプチド模倣物質は例えば、参照により本明細書に援用されるMeziereら、(1997) J. Immunol. 159,3230-3237に記述している方法などの当技術分野で公知の方法を使用して作製してよい。このアプローチには、骨格が関与する変化は含むが側鎖の配向は含まない擬ペプチド作製が含まれる。CO‐NHペプチド結合の代わりにNH‐CO結合を含むレトロインバース(retro-inverse)型のペプチドの方がはるかにタンパク質分解に耐性がある。
【0033】
ペプチド(少なくともアミノ酸残基間のペプチド結合を含むペプチド)はLuら、(1981) J. Org. Chem. 46, 3433-3436およびそこに引用した参考文献により開示された固相ペプチド合成のFmoc‐ポリアミド形態により合成してもよい。一時的なNアミノ基保護は9‐フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基で可能となる。この高度に塩基に不安定な保護基はN,N‐ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを使用することにより反復的に切断可能となる。側鎖機能性はその(セリン、トレオニンおよびチロシンの場合)ブチルエーテル、(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)ブチルエステル、(リジンおよびヒスチジンの場合)ブチルオキシカルボニル誘導体、(システインの場合)トリチル誘導体、および(アルギニンの場合)4‐メトキシ‐2,3,6‐トリメチルベンゼンスルホニル誘導体として保護してよい。グルタミンまたはアスパラギンがC末端残基である場合、側鎖アミド機能性の保護には4,4'‐ジメトキシベンズヒドリル基を使用する。固相支持体は3種のモノマー;ジメチルアクリルアミド(骨格‐モノマー)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(クロスリンカー)およびアクリロイルサルコシンメチルエステル(機能化剤)から構成されるポリジメチル‐アクリルアミドポリマーに基づいている。ペプチドから樹脂まで切断可能である結合された使用の薬剤は酸に不安定な4‐ヒドロキシメチル‐フェノキシ酢酸誘導体である。アミノ酸誘導体はすべて、その事前形成された左右対称の無水物誘導体として添加するが、逆N,N‐ジシクロヘキシル‐カルボジイミド/1ヒドロキシベンゾトリアゾール媒介カップリング手法を使用して添加されるアスパラギンおよびグルタミンは例外である。全カップリングおよび脱保護反応はニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸またはイサチン試験手法により観察する。合成の完了時に、50%スカベンジャー混合物を含有する95%トリフルオロ酢酸での処理により側鎖保護基を同時除去し、ペプチドを樹脂支持体から切断する。通常使用するスカベンジャーはエタンジチオール、フェノール、アニソールおよび水であり、合成するペプチドの構成要素であるアミノ酸によって正確に選択する。
【0034】
トリフルオロ酢酸を真空下蒸発により除去し、ジエチルエーテルでのその後の研和により粗ペプチドがもたらされる。水相の凍結乾燥の際にスカベンジャーのない粗ペプチドをもたらす簡単な抽出手技により、存在するスカベンジャーすべてを除去する。ペプチド合成用試薬は一般的にCalbiochem-Novabiochem (UK) Ltd, Nottingham NG7 2QJ, UK.から購入可能である。
【0035】
精製はサイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび(通常)逆相高性能液体クロマトグラフィーなどの技術のいずれか1つ、またはそれらの組み合わせにより、達成し得る。
【0036】
ペプチド解析は薄層クロマトグラフィー、逆相高性能液体クロマトグラフィー、酸加水分解後のアミノ酸解析および高速原子衝撃(FAB)質量分析、ならびにMALDIおよびESI‐Q‐TOF質量分析を使用して実施し得る。
【0037】
そのさらに好ましい実施態様では、本発明は、融合タンパク質であるコラーゲン結合ペプチドを提供する。融合タンパク質およびそれを構成するための方法は最先端技術で周知であり、ペプチドと、酵素群(例えば発色シグナルの生成)、精製用タグ(例えばHis‐タグ)、キレート化するペプチド等との遺伝子融合を含むことが可能である。
【0038】
本発明の別の態様では、本発明のコラーゲン結合ペプチドと免疫学的に反応する抗血清および抗体またはそれらのフラグメントも提供される。これらはコラーゲン結合ペプチドのコラーゲンへの付着を阻害することを含む治療法でも利用可能である。特に、コラーゲン結合ペプチドに対して特異的なポリクローナル抗血清もしくは抗体またはそれらのフラグメントが生成可能であり、これらは例えばウエスタン免疫ブロット法およびELISAアッセイにおいてコラーゲン結合ペプチドと反応し、ペプチドのコラーゲンへの結合を干渉する。したがってこの抗血清もしくは抗体またはそれらのフラグメントはコラーゲン結合ペプチドを発現する細菌を検出する特異的な凝集アッセイに使用可能である。本発明のコラーゲン結合ペプチドに選択的に(特異的に)結合し、さらに詳しく、好ましくは配列番号1〜配列番号15に記載の配列のいずれかにしたがったペプチドに選択的に結合するモノクローナル抗体が本発明において好ましい。配列番号1〜配列番号15に記載の配列のすべてを免疫学的に認識する、好ましくは配列番号1〜配列番号15に記載の配列のすべてを特異的に認識する、モノクローナル抗体が最も好ましい。
【0039】
リガンドの「フラグメント」、特に抗体のフラグメントは、それぞれの細胞マーカー(例えばコラーゲン結合ペプチド)に結合し続けることが可能なリガンドに由来する部分を意味するものとする。抗体の特定の例として、それぞれの細胞マーカーに結合可能なscFV‐フラグメントおよび他の抗体由来ペプチドが含まれる。好ましい実施態様では、フラグメントが結合すると、全長(または完全サイズ)リガンドの結合、好ましくは本発明にしたがったペプチドのコラーゲン結合の阻害と同様の生物学的効果(単数または複数)がもたらされる。
【0040】
本発明のペプチド、およびそれらをコードし、望ましい性質を有するタンパク質またはペプチドをコードする機能的分子をさらに得るDNAセグメント、の構造を修飾および変更してもよい。DNA配列のコドンを変更することによりアミノ酸を変化させてもよい。例えば抗体の抗原結合領域または基質分子の結合部位などの構造と相互作用的結合能を大幅に失うことなく、タンパク質構造内で他のアミノ酸のかわりに特定のアミノ酸を置換できる可能性がある。それはそのタンパク質の生物学的機能活性を特徴付けるタンパク質の相互作用能および相互作用的性質であることから、特定のアミノ酸配列はタンパク質配列、および当然にその基礎をなすDNAコード配列中で置換可能であるが同様の特性を有するタンパク質が得られる。したがって開示された組成物のペプチド配列または前記ペプチドをコードする対応DNA配列では、その生物学的用途または活性を大幅に失うことなく、様々な変化が起こる可能性があることを本発明者らは意図している。
【0041】
また、置換により元の配列とかなり近い特性を有するアミノ酸が生ずるのであれば、本発明の単離ペプチドのコラーゲン結合能に影響を及ぼすことなく、アミノ酸の置換も可能である。
【0042】
したがって、許容されるアミノ酸置換は概して、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズ等に基づいている。上述の多様な特徴を考慮した置換例は当業者に周知であり、アルギニンとリジン;グルタミン酸塩とアスパラギン酸塩;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリン、ロイシンとイソロイシンが含まれる。本発明の単離ペプチドは、ポリペプチド配列を調製する典型的な化学的合成プロセスなど当技術分野で公知である多数の好適な方法で調製可能である。
【0043】
本発明のさらなる態様は本発明のペプチドをコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を提供する。本発明にしたがった核酸はDNA、cDNA、PNA、CNA、RNAまたはこれらの組み合わせでよく、それがペプチドをコードする限りイントロンを含んでも含まなくてもよい。当然ながら、天然ペプチド結合により接合した天然アミノ酸残基を含むペプチドのみがポリヌクレオチドによりコード可能である。本発明のいっそうさらなる態様は本発明にしたがったポリペプチドを発現できる発現ベクターを提供する。
【0044】
例えば相補的接着性終端を介してポリヌクレオチド、特にDNAをベクターに操作可能に結合する多様な方法が開発されている。例えば、相補的ホモポリマー領域はDNAセグメントに添加し、ベクターDNAに挿入することが可能である。該ベクターとDNAセグメントをその後、相補的ホモポリマー尾部(tails)間の水素結合により接合し、組み換えDNA分子を形成する。
【0045】
1つ以上の制限部位を含む合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに接合する代替的方法を提供する。3'‐5'エキソヌクレアーゼ活性を有する突出した3'単鎖末端を除去し、重合活性により陥凹3'末端を満たす酵素バクテリオファージT4DNAポリメラーゼまたは大腸菌DNAポリメラーゼIを使用し、前述のようにエンドヌクレアーゼ制限消化により生成したDNAセグメントを処理する。
【0046】
したがってこれらの活性の組み合わせによって、平滑末端DNAセグメントが生成する。その後平滑末端セグメントを、バクテリオファージT4DNAリガーゼなどの平滑末端DNA分子のライゲーションを触媒することができる酵素の存在下で大幅に過剰モルのリンカー分子と共にインキュベートする。よって反応生成物は、末端でポリマーリンカー配列を有するDNAセグメントである。次いでこれらのDNAセグメントを適切な制限酵素で切断し、DNAセグメントの末端と適合する末端を生成する酵素で切断してある発現ベクターにライゲーションする。
【0047】
多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を持つ合成リンカーはInternational Biotechnologies Inc, New Haven, CN, USA.など多数の販売元から市販されている。
【0048】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを修飾する望ましい方法はSaikiら、(1988) Science 239,487-491に開示されたポリメラーゼ連鎖反応を使用する方法である。この方法は、例えば好適な制限部位の操作によりDNAを好適なベクターに導入するために使用するか、または当技術分野で公知の他の有用な方法でDNAを修飾するために使用してよい。この方法では、酵素的に増殖させるDNAの両側に、増殖したDNAに自身が組み入れられる2つの特異性プライマーが配置している。該特異性プライマーは、当技術分野で公知の方法を使用して発現ベクターにクローン化するために使用可能な、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含んでいてもよい。
【0049】
次いでDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)を好適な宿主内で発現させ、本発明の化合物を含むポリペプチドを生成する。よって本発明の化合物を構成するポリペプチドをコードするDNAは、本明細書に含まれる教示を考慮して適切に改変された公知の技術にしたがって使用し、本発明のポリペプチドの発現および生成に適した宿主細胞を形質転換するためにその後使用される発現ベクターを構築してもよい。このような技術には1984年4月3日Rutterらが取得した米国特許第4,440,859号、1985年7月23日Weissmanが取得した第4,530,901号、1986年4月15日Crowlが取得した第4,582,800号、1987年6月30日Markらが取得した第4,677,063号、1987年7月7日Goeddelが取得した第4,678,751号、1987年11月3日Itakuraらが取得した第4,704,362号、1987年12月1日Murrayが取得した第4,710,463号、1988年7月12日Toole, Jr.らが取得した第4,757,006号、1988年8月23日Goeddelらが取得した第4,766,075号、および1989年3月7日Stalkerが取得した第4,810,648号に開示される技術が含まれる。
【0050】
本発明の化合物を構成するポリペプチドをコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)は適切な宿主への導入のための多様な他のDNA配列に結合させてよい。片方のDNAは宿主の性質、DNAを宿主に導入する方式、およびエピソームの維持または統合の必要性に依存することとなる。
【0051】
一般的にDNAは、適切な配向および発現のための正しいリーディングフレームでプラスミドなどの発現ベクターへ挿入される。必要であれば、DNAは、望ましい宿主によって認識される適切な転写および翻訳調整制御ヌクレオチド配列に結合してよいが、このような制御は概して発現ベクター中で実行可能である。次いで標準的技術によりベクターを宿主へ導入する。概して、すべての宿主がベクターにより形質転換されるわけではない。したがって、形質転換宿主細胞のための選択が必要となる。選択技術の1つとして、必要な任意の制御要素と共に抗生物質耐性などの形質転換細胞の選択的特性をコードする、DNA配列を発現ベクターに組み込む技術が含まれる。また、このような選択的特性に対する遺伝子を、目的とする宿主細胞を同時形質転換するために使用されるもう1つのベクター上にあることが可能である。
【0052】
次いで本発明の組み換えDNAによって形質転換されている宿主細胞を、十分な時間および本明細書に開示された教示の観点から当業者に公知の適切な条件下で培養し、その後に回収可能なポリペプチドの発現を可能にする。
【0053】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドベクター構築物で形質転換した宿主細胞に関する。宿主細胞は原核細胞または真核細胞のどちらでも可能である。細菌細胞は状況次第では原核宿主細胞であることが好ましい場合があり、一般的には、例えばBethesda Research Laboratories Inc., Bethesda, MD, USAから購入可能な大腸菌株DH5、およびAmerican Type Culture Collection (ATCC) of Rockville, MD, USA (No ATCC 31343)から購入可能なRR1などの大腸菌株である。好ましい真核宿主細胞には酵母、昆虫および哺乳動物細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒト線維芽細胞および腎細胞系由来細胞などの脊椎動物細胞が含まれる。酵母宿主細胞には、Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA 92037, USAから一般的に購入可能なYPH499、YPH500およびYPH501が含まれる。好ましい哺乳動物宿主細胞には、CCL61としてATCCから購入可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CRL1658としてATCCから購入可能なNIHスイスマウス胎仔細胞NIH/3T3、CRL1650としてATCCから購入可能なサル腎臓由来COS‐1細胞およびヒト胎児腎臓細胞である293細胞が含まれる。昆虫細胞はバキュロウイルス発現ベクターでトランスフェクト可能なSf9細胞が好ましい。
【0054】
本発明のDNA構築物による適切な細胞宿主の形質転換は、使用されるベクターのタイプに一般的に依存している周知の方法により達成する。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えばCohenら、(1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69,2110およびSambrookら、(1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい。酵母細胞の形質転換はShermanら、(1986) Methods In Yeast Genetics, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NYに記述されている。Beggs (1978) Nature 275,104-109の方法もまた有用である。脊椎動物細胞に関して、そのような細胞のトランスフェクトに有用な試薬、例えばリン酸カルシウムおよびDEAE‐デキストランまたはリポソーム製剤はStratagene Cloning SystemsまたはLife Technologies Inc., Gaithersburg, MD 20877, USAから購入可能である。エレクトロポレーションもまた細胞の形質転換および/またはトランスフェクトに有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞および脊椎動物細胞の形質転換用として当技術分野で周知である。
【0055】
形質転換に成功した細胞、すなわち本発明のDNA構築物を含む細胞は周知の技術で同定することが可能である。例えば、本発明の発現構築物を導入して得た細胞は成長して、本発明のポリペプチドを生成することが可能である。細胞は回収し、溶解することが可能であり、そのDNA内容物はSouthern (1975) J. Mol. Biol. 98, 503またはBerentら、(1985) Biotech. 3, 208が記述したような方法によりDNAの存在について試験することが可能である。また、その上清にあるタンパク質の存在を、以下に記述された抗体を使用して検出することが可能である。
【0056】
多くの発現系が公知であり、細菌(例えば大腸菌および枯草菌(Bacillus subtilis))、酵母(例えば出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae))、糸状菌(たとえばコウジカビ(Aspergillus))、上記の植物細胞、動物細胞および昆虫細胞が含まれる。
【0057】
プロモーターはRNAポリメラーゼの結合および転写が起こることを可能にするDNA配列により形成される発現制御要素である。例示した細菌宿主と適合可能なプロモーター配列は、本発明のDNAセグメントを挿入するための便利な制限部位を含むプラスミドベクターに一般的に組み込む。典型的な原核細胞ベクタープラスミドはBiorad Laboratories,(Richmond, CA, USA)から購入可能なpUC18、pUC19、pBR322およびpBR329、ならびにPharmacia, Piscataway, NJ, USAから購入可能なpTrc99AおよびpKK223‐3である。
【0058】
本発明の別の態様では、本発明は、本発明にしたがったコラーゲン結合ペプチドのリガンドをスクリーニングするための改良方法を提供するものであり、該方法は:a)推定リガンドと共に該ペプチドをインキュベートする工程、b)該ペプチドと該推定リガンド間の結合を測定する工程、およびc)該リガンドを同定する工程を含む。リガンドは該ペプチドのコラーゲン結合を阻害、または実質的に阻害することが好ましい。
【0059】
1つの実施態様では、これらのリガンドはコラーゲン結合ペプチドと他のタンパク質との構造的類似性に基づいて同定することが可能である。このようなリガンドの生成の例は(本明細書でも記述)文献に記載しており、当業者に周知である。
【0060】
本発明にしたがった方法のアッセイの過程中では、リガンドは初めコラーゲン結合ペプチドに結合または付着することとなる。リガンドはコラーゲン結合ペプチドに直接または間接的に結合可能であり、すなわちコラーゲン結合ペプチドにリガンドが付着することを促進し、よってリガンドの機能を助ける特定の鉄またはタンパク質因子などの存在可能な補助因子を介して結合することが可能である。「結合」はコラーゲン結合ペプチドへのリガンドまたはリガンド群の共有または非共有結合を介して起こり得る。スクリーニングしたリガンドの結合特性に基づき、リガンドの最初の事前選択が実行可能であり、ここでは非結合リガンドは1組の補助因子を使用したスクリーニングの第2「手順」でスクリーニングする。結合が依然として起こらなければ、リガンドは「非結合」と分類され、その後のスクリーニングでは注意を払われない。このような事前選択は本発明の全体的な文脈にある用語「スクリーニング」、「測定」および/または「判定」によって包含されるものとする。インビトロで作用を示すリガンドは、例えば患者または試験生物の血流、肺および/または心臓内で、患者または試験(モデル)生物体の成分とインビボでさらに相互作用しないことが好ましい。
【0061】
概して、(コラーゲン結合ペプチドの場合)特定の標的に対するリガンドの結合および生物学的効果を判定するアッセイは当業者に周知であり、例えばスクリーニングリガンドとのインキュベーション後の細胞表現型変化に関するHouseyが取得した米国特許第4,980,281号、第5,266,464号および第5,688,655号に見られる。さらに、Kriegerらが取得した米国特許第5,925,333号には、脂質取り込みの調節法および関連するスクリーニング法が記述されている。
【0062】
コラーゲン結合ペプチドに対するリガンドの生物学的効果を確認する好適な試験には、細胞外コンパートメントに放出された細胞内容物(尿酸、カリウム、リン)を測定する溶解アッセイ、蛍光ベースのアッセイ(例えば共焦点蛍光顕微鏡法の利用)、生存細胞計数法、BrdU増殖アッセイなどの細胞増殖アッセイまたは細胞カルシウムの測定等が含まれる。
【0063】
本発明にしたがったスクリーニング法はいくつかの異なる形式で実行することが可能である。1つの実施態様は、アッセイがインビトロで行われる方法である。本発明のスクリーニングアッセイは(上述の)宿主細胞系および他の細胞の使用を含むことが好ましいが、但しこれらの細胞がコラーゲン結合ペプチドを発現する場合に限る。このような組み換え細胞の生成法は当業者に周知であり、上記で、またそれぞれの文献でさらに述べられている。
【0064】
本発明のさらなる実施態様はアッセイがインビボで行われる方法に関する。アッセイはマウスまたはラットで行うことが好ましい。概して、インビボアッセイは上述のインビトロアッセイとは実質的に変わらないものである。概して、コラーゲン結合ペプチドのリガンドのためのスクリーニングアッセイは、試験するリガンド(単数/または複数)をマウスまたはラットに投与する形で行うこととなる。その後、試験すべきリガンドが存在しない場合と比較して、該リガンドがコラーゲン結合活性を阻害することになるのであれば、その差異によりコラーゲン結合活性を阻害または抑制することになるリガンドが同定されたと判定する。当然ながら、これらのアッセイは他の非ヒト哺乳動物でも実行可能である。
【0065】
本発明のさらなる実施態様は本発明にしたがった方法に関しており、該方法では、コラーゲン結合ペプチドへの結合について無作為に試験される天然または合成化合物のライブラリーから該リガンドが選択される。このようなライブラリーおよびこのようなライブラリーを構築する方法、ならびに候補リガンドをスクリーニングするためのこれらのライブラリーの使用法は当業者に周知であり、それぞれの文献でさらに記述している。さらに、これらのライブラリーによっては市販されているものもある。本発明はコラーゲン結合ペプチド用のリガンドのハイスループットスクリーニングを企図している。上述のリガンドおよび類似体、誘導体、フラグメント、活性部分等の該リガンドの改変型は本発明の方法および系を使用してスクリーニングしてよい。
【0066】
本発明にしたがったスクリーニング法のさらに好ましい実施態様では、該リガンドは、上述のコラーゲン結合ペプチドと免疫学的に反応する抗体またはそのフラグメントである。
【0067】
本発明の別の好ましい態様では、該コラーゲン結合ペプチドまたはその活性フラグメントは、連鎖球菌の宿主分子へのコラーゲン結合を阻害する化合物を同定するための化合物をスクリーニングする方法において有用である。該方法にしたがって、対象となる化合物は1種以上のコラーゲン結合ペプチドまたはそのフラグメントと結合し、コラーゲンまたは他の細胞外マトリックスタンパク質へのタンパク質の結合の程度を測定または観察する。たとえば、該化合物の存在によりタンパク質‐コラーゲン結合が阻害されることになれば、該化合物はインビボまたはインビトロでの連鎖球菌の阻害に有用である可能性がある。該方法は同様に、連鎖球菌と宿主分子との相互作用を促進する化合物を同定することに使用できる可能性がある。該方法は静菌または殺菌特性を有する化合物の同定に特に有用である。
【0068】
例えば、連鎖球菌アゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングするため、合成反応混合物、1種以上のコラーゲン結合ペプチドまたはそのフラグメントを含む細胞内コンパートメント(膜、細胞表層または細胞壁など)およびタンパク質の標識化基質またはリガンドを、調査中の化合物の非存在下または存在下でインキュベートする。タンパク質を刺激する、またはそれに拮抗する化合物の能力は、標識化リガンドの結合の減少または基質産物の生成の減少によって分かる。良好に結合し、基質からの産物形成速度を増加させる化合物はアゴニストである。基質からの産物生成速度またはレベルの検出は、生成物に変換される比色標識基質などのレポーター系の使用、コラーゲン結合ペプチド核酸またはタンパク質の活性変化に対応するレポーター遺伝子の使用、および当業者に公知の結合アッセイの使用によって向上し得る。競合阻害アッセイも使用可能である。
【0069】
有望なアンタゴニストとしては、コラーゲン結合ペプチド核酸分子、またはタンパク質もしくはその一部に結合し、それによりその活性を阻害するか、または(コラーゲン結合ペプチド核酸分子またはたんぱく質のリガンドへの結合を妨げるコラーゲンなどの)結合分子に結合する、小型の有機分子、ペプチド、ポリペプチドおよび抗体が含まれる。例えば、コラーゲン結合ペプチド活性を阻害する化合物は、コラーゲン結合ペプチドの結合部位に結合し、その部位を占領し、そうすることで細胞結合分子に結合して正常な生物活性を妨げる小型分子であってもよい。小型分子の例として小型有機分子、ペプチドまたはペプチド様分子が含まれるがこれらに限定されない。他の有望なアンタゴニストとしてはアンチセンス分子が含まれる。好ましいアンタゴニストとして、コラーゲン結合ペプチドまたはその一部に関連する化合物、およびそれらの変異型または誘導体が含まれる。本明細書に記載の核酸分子はまた、抗細菌活性について化合物をスクリーニングするために使用してもよい。
【0070】
本発明の別の好ましい実施態様は医薬製剤の生成法に関しており、該方法は:a)上記のスクリーニング法を行う工程、ならびにb)同定されたリガンドを医薬的に許容される担体および/または賦形剤と共に製剤化する工程を含む。したがってこのような製剤にはリガンド/抗体以外に生理学的に許容される担体または希釈剤が、場合により他の抗体または抗生物質などの医薬品といった1種以上の他の薬剤との混合物の状態で含まれる。好適な担体として生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水グルコースおよび緩衝生理食塩水が含まれるがこれらに限定されない。また、リガンド、例えば抗体は上述の水性緩衝液の添加に必要な場合に使用するため凍結乾燥(フリーズドライ)し、再構成してもよい。投与経路は静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内注射または送達などの通常の非経口投与である。全身および/または局所投与が可能である。
【0071】
本発明にしたがった好ましい医薬組成物は、本発明にしたがった少なくとも1種のペプチド、本発明にしたがった抗体、本発明にしたがった核酸または本発明にしたがった発現ベクター、および上述の医薬的に許容される担体を含む。
【0072】
本発明の目的はまた、リウマチ熱に対して有効な医薬製剤を、好ましくはワクチンの形態で提供することにより解決されるものであり、該製剤は本発明にしたがった有効量のペプチド、またはそのようなペプチドをコードする核酸を含む。ワクチンは本明細書で説明したように、より有効な付加的ペプチドおよび/または賦形剤をさらに含むことが可能である。
【0073】
本発明のワクチンは本発明のペプチドの突然変異型を含むことが好ましく、該ペプチドのインビボでのコラーゲン結合を回避する、または実質的に回避するために、ペプチドはコラーゲン結合活性、好ましくはヒトコラーゲンに対する結合活性が不活化されている。当然ながら、該ペプチド(単数または複数)は、PARF含有細菌タンパク質およびペプチドに対しても効果的である抗ペプチド抗体の生成を可能にするエピトープ構造を保持し続けることとなる。不活化されたペプチドの例として、本実施例および以下の図面、特に図4F(置換基A58、Y60、L64、N65、LND66およびYL61)で記述および試験したこれらの突然変異型が挙げられる。不活化ペプチドはワクチンの改良に使用可能である。アミノ酸置換を介してPARF配列を不活化すれば、コラーゲンに対する自己免疫反応が誘発されるリスクを当然減少させるであろう。ワクチンの保護性(protectivity)を確実にするため、不活化形態はPARF配列とできる限り相同性であり続けるべきである。AXYLZZLNの位置3、7または8での単置換は有効であると思われ、好ましい。位置1は比較的耐性であることが判明した。
【0074】
好適な担体として生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水グルコースおよび緩衝生理食塩水が含まれるがこれらに限定されない。また、リガンド、例えば抗体は上述の水性緩衝液の添加によって必要な場合に使用するため凍結乾燥(フリーズドライ)し、再構成してもよい。投与経路は静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内注射または送達などの通常の非経口投与である。全身および/または局所投与が可能である。
【0075】
ワクチンはアジュバントなしで投与してもよい。好ましくは、本発明にしたがった医薬組成物はBCGやミョウバンなどの少なくとも1種の好適なアジュバントをさらに含む。他の好適なアジュバントとして、サポニン由来のAquilaのQS21 stimulon(Aquila Biotech, Worcester, MA, USA)、マイコバクテリア抽出物および合成細菌細胞壁模倣体、ならびにRibiのDetoxなどの独占権のある(proprietory)アジュバントが含まれる。別のサポニン由来アジュバントであるQuil Aも使用してよい(Superfos、デンマーク)。CpGオリゴヌクレオチド、安定化RNA、イミキモド(Imiquimod)(3M Pharma, U.S.A.製のAldara(商標)という商標名で市販)、フロイント不完全アジュバント(Seppic S.A.パリ、フランス製のMontanide ISA-51で市販)、リポソーム製剤などの他のアジュバントもまた有用である可能性がある。キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)と共役したペプチドを、好ましくはアジュバントと共に投与することもまた有用である可能性がある。
【0076】
すでに上記で簡単に述べたように、本発明の目的は、そのさらなる態様では、本発明に記載の配列番号1〜配列番号15にしたがった少なくとも1種のコラーゲン結合ペプチド、本発明にしたがった核酸、本発明にしたがった抗体、または本発明にしたがった発現ベクター、および医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物により解決される。この組成物は皮下、皮内、腹腔内、静脈内、筋肉内などの非経口投与または経口投与に使用する。このため、医薬的に許容され、好ましくは水性の担体中に、ペプチドを溶解し、または懸濁する。また該組成物はバッファー、結合剤、ブラスチング剤(blasting agent)、希釈剤、香料、潤滑剤等の賦形剤を含むことが可能である。ペプチドはサイトカインなどの免疫刺激物質と共に投与することも可能である。このような組成物中で使用可能な賦形剤の広範に及ぶリストは例えば、A. Kibbe, Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3. Ed., 2000, American Pharmaceutical Association and pharmaceutical pressから入手可能である。該組成物は細菌性疾患、特に連鎖球菌感染病の防止、予防および/または治療に使用可能である。
【0077】
配列番号1〜配列番号15を含む少なくとも1つの本発明のペプチド、本発明にしたがった核酸、本発明の抗体または本発明にしたがった発現ベクターを含有する本発明の医薬製剤は細菌性疾患、特に連鎖球菌性疾患、特にリウマチ熱に罹患している患者に投与する。
【0078】
概して本発明にしたがった医薬組成物に存在するペプチドは、配列番号1〜配列番号15を含む本発明のペプチドについて上述したものと同じ特性を有する。したがってそれらの全長は8〜100、好ましくは8〜30、最も好ましくは8〜12個のアミノ酸であることが可能である。さらに、配列番号1〜配列番号15のいずれかにしたがった少なくとも1つのペプチドは非ペプチド結合を含み得る。さらにそれぞれの核酸は8〜100、好ましくは8〜30、最も好ましくは8〜12個のアミノ酸をコードすることが可能である。配列番号1〜配列番号15にしたがったアミノ酸配列のみからなるペプチドを含む本発明にしたがった医薬組成物が最も好ましい。
【0079】
配列番号1〜配列番号15のいずれかを含む本発明の少なくとも1つのペプチドを含有する医薬製剤は、本発明にしたがったそれぞれのペプチドと関連する細菌性疾患に罹患している患者に投与する。こうしてペプチド特異的免疫応答が誘発可能となる。
【0080】
本疾患に罹患している患者に投与するコラーゲン結合ペプチド、好ましくは抗コラーゲン結合モチーフ抗体のリガンドの投薬量は、治療の条件および治療の受け手の明確な性質によって変化することとなる。用量は一般的に成人で約0.1〜約100mgの範囲であり、通常1〜30日間毎日投与することとなる。好ましい日用量は1日当たり1〜10mgであるが、場合により1日40mgまで増量して使用してもよい。リガンドが治療対象の患者においてそのインビボ濃度が0.01mg/kg/日〜1mg/kg/日になる濃度で医薬品中に存在するような方法で、好ましくは投薬量を適用することとなる。
【0081】
本発明の別の態様は本発明にしたがったペプチド、本発明にしたがった抗体、本発明にしたがった核酸、または本発明にしたがった発現ベクター、または薬剤中で使用するための本発明にしたがった医薬組成物、に関する。上述した抗リウマチ熱ワクチンとして本発明にしたがった医薬組成物を使用することが好ましい。
【0082】
本発明の別の態様は本発明にしたがったペプチド、本発明にしたがった抗体、本発明にしたがった核酸、または本発明にしたがった発現ベクター、または連鎖球菌感染症および/もしくはリウマチ熱および/もしくはリウマチ性心疾患の予防および/もしくは治療用医薬品を製造するための本発明にしたがった医薬組成物に関する。
【0083】
本発明のさらに別の重要な態様は連鎖球菌、連鎖球菌感染症、リウマチ熱および/またはリウマチ性心疾患を診断する方法に関しており、該方法はa)診断対象の患者から試料を得る工程、およびb)前記試料中の本発明にしたがったペプチド、本発明にしたがった抗体、ならびに/または本発明にしたがった核酸の有無および/もしくは量を検出する工程を含む。診断に関するさらなる詳細は当業者に周知であり、また以下に記述している。
【0084】
本発明のさらに別の重要な態様は連鎖球菌、連鎖球菌感染症、リウマチ熱および/またはリウマチ性心疾患を診断する診断キットに関しており、該キットは本発明にしたがったペプチド、本発明にしたがった抗体および/または本発明にしたがった核酸を、場合により好適な標識および色素と共に含む。
【0085】
したがって本発明はさらに、本発明の核酸に特異的な1つ以上の核酸プローブを含むキットを企図しており、該キットは試料中の細菌由来コラーゲン結合タンパク質、特にMおよびM様タンパク質の検出用に、または関連する細菌感染症の診断用に使用可能である。このようなキットは、プローブを試料にハイブリダイズし、結合したプローブを検出するために適切な試薬を含むことも可能である。その他の実施態様ではキットは、上述した細菌由来コラーゲン結合タンパク質、特にMおよびM様タンパク質の検出用に使用可能な、本発明にしたがったペプチド(単数)および/またはペプチド(複数)、に特異的な抗体を含む。
【0086】
さらに別の実施態様では、キットは、細菌の検出用に、または試料中のコラーゲン結合細菌タンパク質に対する抗体の有無を調べるために使用可能な1つ以上の、またはすべてのコラーゲン結合タンパク質またはそのフラグメントを含む。本明細書に記述したキットはまた、試料を安全に得るための器具、試薬用容器、時間認証手段、試料希釈用バッファー、および比色計、反射率計または色変化を測定し得る基準物質を追加的に含んでよい。
【0087】
好ましい実施態様では、タンパク質または抗体を含む試薬を、最も好ましくは1つの容器中で凍結乾燥する。容器に水性試料を添加すると、凍結乾燥試薬が揮発し、それらが反応する。最も好ましくは、試料の添加に先だって試薬により反応を最小限にする当業者に周知の方法にしたがって、試薬を1つの容器で連続的に凍結乾燥する。
【0088】
本明細書に記述した共通のアミノ酸モチーフまたはその相補的配列などの、本発明のコラーゲン結合タンパク質をコードする核酸分子またはその一部と選択的にハイブリダイズする、核酸分子の配列もまた本明細書で提供する。「選択的」または「選択的に」とは、他の核酸とハイブリダイズしない配列を意味する。このことは本発明にしたがったコラーゲン結合モチーフの特異的検出を促進することである。したがって核酸をハイブリダイズするという設計に際して、選択性は試料中に存在する他の成分に依存することとなる。ハイブリダイズする核酸は、それがハイブリダイズする核酸セグメントと少なくとも70%の相補性を有することが好ましい。核酸を説明するために本明細書で使用する用語「選択的にハイブリダイズする」には、偶然無作為に核酸とハイブリダイズすることは当てはまらず、したがって「特異的にハイブリダイズする」と同様の意味を有する。本発明の選択的にハイブリダイズする核酸はそれらがハイブリダイズする配列のセグメントと少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%および99%の相補性を有することが可能である。
【0089】
本発明はコードするDNA、または相補的もしくは逆のDNA鎖に選択的にハイブリダイズする配列、プローブおよびプライマーを、本明細書で明確に提供されているものとして企図している。機能的な種特異的ハイブリダイゼーション性能が維持されているかぎり、核酸との特異的なハイブリダイゼーションは核酸における軽微な修飾または置換により起こる。「プローブ」とは、その検出または増幅用の相補的核酸配列との選択的ハイブリダイザーションのためのプローブまたはプライマーとして使用可能である核酸配列を意味し、プローブは約5〜100個のヌクレオチド、好ましくは約10〜50個のヌクレオチド、最も好ましくは約18〜24個のヌクレオチドで長さが変更可能である。したがって本明細書で使用されている用語「プローブ」または「複数のプローブ」は「プライマー」を包含するように定義されている。単離された核酸は本明細書で提供されており、ストリンジェントな条件下で種特異的核酸と選択的にハイブリダイズし、Sambrook et al., 1989 Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載された、対象となる配列に相補的な少なくとも5個のヌクレオチドを有することが好ましい。
【0090】
プライマーとして使用するのであれば組成物は、所望の領域を増幅するように標的分子の様々な領域とハイブリダイズする、少なくとも2つの核酸分子を含むことが好ましい。プローブまたはプライマーの長さに依存して、標的領域は、70%相補性塩基と完全相補性との間で動き、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし続ける。例えばS・ピオゲネスの存在を診断する目的に、ハイブリダイズする核酸(プローブまたはプライマー)と、それがハイブリダイズする配列(例えば試料から得たA群連鎖球菌DNA)との間の相補性の程度は他の細菌由来核酸とのハイブリダイゼーションを少なくとも識別するのに十分である。
【0091】
本発明は連鎖球菌感染および/またはリウマチ熱および/またはリウマチ性心疾患に罹患したヒト被検体を予防および/または治療する方法を提供しており、該方法は本発明にしたがったペプチド、本発明にしたがった抗体、本発明にしたがった核酸、本発明にしたがった発現ベクターまたは本発明にしたがった医薬組成物から選択される有効量の薬剤を該被検体に投与することを含む。本発明にしたがったコラーゲン結合ペプチドおよびモチーフを認識する抗体が好ましい。好適な製剤、投与経路および投薬量は上記で示しており、さらに以下の実施例で説明する。抗リウマチ熱ワクチンとしての治療が最も好ましい。
【0092】
S・ピオゲネス以外の連鎖球菌の伝播を根絶することがリウマチ熱の予防に重要であると思われる。さらに、細菌をコロニー形成させる際、PARFの存在は重要なマーカーであると思われ、特異的診断試験によるその同定は急性リウマチ熱およびその後のリウマチ性心疾患を制御する新規な戦略でもある。
【0093】
当然のことながら、本明細書に開示および記述した本発明の特徴は、本発明の目的の範囲から逸脱することなく、示したそれぞれの組み合わせのみならず単独形態でも利用可能である。
【実施例】
【0094】
材料と方法
細菌株およびヒト血清―オーストラリアのNorthern Territoryのヒト分離株に重点を置いて、C群およびG群連鎖球菌株を世界中から収集した。S.ピオゲネス対照株(A60)をTU AachenのInstitute for Medical Microbiologyから入手した。別段記述がない限り、連鎖球菌をトリプシン大豆培養液(TSB; Roth)中、37℃で後期対数期まで静的に培養した。同じ地理上地域で、急性リウマチ熱(ジョーンズ基準で確認)の患者および健常ボランティア由来のヒト血清を収集した。
【0095】
コラーゲン結合アッセイ―連鎖球菌を、細菌10個/mlになるようにPBS中に懸濁した。その後、2.5x10個の細菌を、胎盤から単離した125I標識コラーゲンIV(Sigma、ドイツ)30ng(100,000cpm)と共に室温で45分間インキュベートした。細菌を遠心分離で回収し、0.05%のTween 20(PBST)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、ペレットをガンマ線測定装置で測定した。20μl(60U )のヒアルロニダーゼ(Applichem, Darmstadt、ドイツ)またはわずか20μlのPBSのいずれかと共に細菌を37℃で45分間、前インキュベートしてヒアルロン酸(HA)カプセル(capsule)2.5x10を検出した。放射標識したコラーゲンとのインキュベーションに先だって、細菌を1mlのPBS中で3回洗浄した。実験の各セット内でアッセイを3度行い、別の日に実験を反復した。
【0096】
emmおよびemm様遺伝子のスクリーニングおよび配列決定
推奨(http://www.cdc.gov/ncidod/biotech/strep/doc.htm)にしたがって、記述したプライマー1および2を使用し、全コラーゲン結合分離株の染色体DNAをemmおよびemm様遺伝子の有無についてPCRで試験した。得られたPCR産物をその後、プライマー1を使用して配列決定した。
【0097】
cneの有無に関するスクリーニング
コラーゲン結合に陽性の全分離株の染色体DNAを、(G. H. Stollerman, Clin Immunol Immunopathol 61, 131 (Nov, 1991))に記述されている条件およびプライマーを使用し、cneの有無についてPCRで試験した。
【0098】
電子顕微鏡
500μlのPBSTに懸濁した5x10個のG45(FOG陽性、コラーゲン結合株)およびG50(非コラーゲン結合株)を10μgのコラーゲンIVと共に室温で30分間インキュベートした。試料を洗浄し、固定し、前記電界放射走査電子顕微鏡法(FESEM)で処理した(K. Dinklaら、J Clin Invest 11 1, 1905 (Jun. 2003))。
【0099】
組み換えタンパク質および部位特異的突然変異誘発
FOGおよびM3構築物をクローニングするため、好適なPCR産物を、pGEX‐6P‐1ベクターの、BamHIおよびSalI間、またはBamHIおよびEcoRI切断部位間にクローン化した。FOGf1(アミノ酸残基1‐557)は成熟全長タンパク質である。FOG1‐Bは成熟FOGタンパク質の最初の278個のアミノ酸であり、FOG1‐Aは成熟FOGタンパク質の最初の134個のアミノ酸である(図2C)。プラスミドはアミノ末端GSTタグを担持する融合タンパク質をコードしていた。それらは大腸菌HB101に発現した。
【0100】
GST‐FOGf1融合タンパク質をコードするプラスミドpGEX‐6P‐1‐FOGf1上で部位特異的に突然変異を起こした。メーカーの推奨にしたがってGeneTailor(商標)Site Directed Mutagenesis System(Invitrogen)を使用し、目的どおりに置換されているプラスミドを含む大腸菌クローンを生成した。大腸菌溶解物由来のタグを付けたタンパク質をグルタチオンセファロース4B(GE Healthcare)に結合し、PBSでマトリックスを洗浄した後、10mMの還元L‐グルタチオン(Sigma)を含む50mMのTrisHCl(pH=8.0)で溶出した。また、FOG1‐BおよびFOG1‐AのSPR測定法では、親和性マトリックスに結合させながらGSTタグを、PreScission(商標)プロテアーゼ(GE Healthcare)でタンパク質を消化して除去し、タグを付けていないFOGタンパク質を溶出した。
【0101】
マウスの免疫化
第1、7および14日目に、1日25〜30μgの組み換え精製タンパク質を含む50μlのPBSおよび50μlのフロイント不完全アジュバントの乳剤により無菌の8週齢雌BALB/cマウスを腹膜内経由で免疫した。対照マウスに1回分当たり50μlのPBSおよび50μlのフロイント不完全アジュバントを注入した。第21日目に、各群の血清試料を採取し、ELISAで試験した。FOG反応性抗体を吸収するため、10μlの血清プールをPBS中に1:50で希釈し、グルタチオンセファロース4Bで固定した1mgのGST‐FOGf1タンパク質と共に1時間インキュベートした。親和性マトリックスに結合した抗体を遠心分離により除去した。上清をELISA分析に供した。
【0102】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
抗コラーゲンCIV抗体力価を測定するため、0.1MのNaHCO(pH=9.6)中に1:100で希釈した抗ヒトコラーゲンIVウサギポリクローナル抗体(Progen, Heidelberg、ドイツ)で96ウェルプレート(Greiner, Frickenhausen、ドイツ)を4℃で一晩コートし、2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSTでブロックし、コラーゲンIV(PBS中2μg/ml)と共に37℃で1時間インキュベートした。PBSTで洗浄した後、PBS中に1:50、1:158、1:500および1:1580で希釈したマウス血清またはヒト血清をウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、好適な西洋わさびペルオキシダーゼとカップリングした二次抗血清(ヤギ抗マウスIgG、M、Jackson Laboratories;ウサギ抗ヒトIgG、A、M、Sigma-Aldrich)および基質としての2,2‐アジノ‐ジ‐[3‐エチルベンズチアゾリンスルホン酸]ジアンモニウム塩(ABTS tablets, Boehringer, Mannheim、ドイツ)を使用し、結合した抗体を検出した。吸光度を405nmで測定した。
【0103】
抗M3または抗FOG抗体力価を測定するため、M3.5またはFOG(0.1MのNaHCO(pH=9.6)中、4μg/ml)を4℃で一晩固定し、その後1%BSAを含むPBSTでブロックした。ウェルを洗浄し、その後1%BSAを含むPBS中に1:100、1:316、1:1000および1:3162で希釈したヒト血清をウェルに添加し、37℃で1.5時間インキュベートした。上述と同様に抗体結合を測定した。
【0104】
ドットブロット
精製した組み換えタンパク質(5μg、1μgまたは0.5μg)をニトロセルロースにスポットしてリガンドオーバーレイアッセイを行った。膜を5%スキムミルク含有PBS中で1時間ブロックし、放射標識したコラーゲンIV(200,000cpm)と共にPBST中で1時間インキュベートした。PBST中で5回洗浄した後、ろ紙を乾燥し、オートラジオグラフィー用放射線フィルム(Kodak)に設置した。
【0105】
表面プラズモン共鳴測定法
10mMのHEPES、100mMのNaCl、pH=7.4をランニングバッファーとして使用し、BIAcore 2000 system(BIAcore AB)でタンパク質相互作用を検討した。0.05MのN‐ヒドロキシスクシンイミド、0.2MのN‐エチル‐N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐カルボジイミド塩酸塩水溶液を4分間かけて注入し、CM5センサーチップを活性化した。ヒト胎盤由来コラーゲンIV(Sigma、0.1MのNaAc中1mg/ml)を10mMのNaAc(pH=5.2)中に1:25で希釈した。流速5μl/分で3μlを急速に注入すると、コラーゲンIVは400〜550の反応単位(RU)で固定化した。1Mのエタノールアミン、0.1MのNaHCO、0.5MのNaCl、5mMのEDTA、pH=8.0を6分間かけて注入し、残った反応基を不活化した。FOG1‐AおよびFOG1‐Bでの相互作用測定を流速60μl/分で行い、GST‐FOGf1、突然変異GST‐FOGf1およびGSTでの測定を流速35μl/分で行った。0.2%SDS水溶液の30秒間隔のパルス注入を2回行い、表面を再生した。BIAevaluation 3.0ソフトウエアを使用し、データをさらに分析した。示された曲線は、コラ−ゲンとカップリングした表面とタンパク質を欠き不活化した対照表面とのシグナル間の差異を表している。それらをさらに、バッファーのみを注入した後に得られた曲線を減算することで補正した。バッファーを注入したところ応答は5RU未満となった。
【0106】
スポット合成ペプチド―以前に報告された(R. Frank, Tetrahedron 48, 9217 (1992))アミノペグ化セルロース膜(AIMS Scientific Products、ドイツ)上に15merのペプチドを合成した。エタノール(96%)で洗浄し、次いでPBSで洗浄した後、膜をブロッキングバッファー(PBST中、2%のGenosys製ブロッキング液および0.5%のスクロース)と共に室温で1時間インキュベートした。膜を3μgの放射標識コラーゲンIV(1,000,000cpm)と共にPBST中、室温で4時間インキュベートし、結合を試験した。PBSTで1時間洗浄し、非結合リガンドを除去した。X線フィルムを使用し、結合したコラーゲンIVを検出した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
本発明を以下の図、配列表および実施例を参照することにより、より詳細に説明する。以下の実施例は説明することのみを目的にして提供しており、本発明を限定する目的ではない。
配列番号1〜配列番号15は本発明にしたがったコラーゲン結合ペプチドのペプチド配列を示す。
【図1】放射標識したコラーゲンIVの、動物およびヒト感染体から得たGCSおよびGGS分離株への結合を示す。(A)コラーゲン結合株のパーセンテージ。(B)コラーゲン結合に陽性ということが分かった分離株を、高度に保存された配列のプライマーを使用し、PCRによりemmおよびemm様遺伝子の有無について試験し(黒棒)、得られたPCR産物を配列決定してfogの有無を判定した(斜線棒)。図中英文の”% of isolates”は分離株の%、”Animal isolates”は動物分離株、”Human isolates”はヒト分離株を意味する。
【図2】コラーゲン結合物質としての連鎖球菌FOGを示す。可溶コラーゲンIVと共にインキュベートしたFOG発現株G45(A)およびFOG陰性非コラーゲン結合株G50(B)のSEM(走査型電子顕微鏡検査)。(C)そのドメイン組成物および組み換え構築物を図示するFOGの図式。(D+E)コラーゲンIVを固定化リガンドとした、それぞれFOG1‐BおよびFOG1‐Aの異なる濃度(12.5μg/ml;25μg/ml;50μg/ml;100μg/ml)での表面プラズモン共鳴測定。図中英文の”response"は反応、”time"は時間[秒]を意味する。
【図3】FOGおよびM3に誘導されたコラーゲンIVに対する自己免疫応答である―(A)それぞれFOG1‐B、FOG1‐A、M3.5またはPBSで免疫したマウスのコラーゲンIVに対する平均血清力価。(B)FOGf1‐セファロースでの前吸収の前(黒棒)後(斜線棒)に判定したコラーゲンIV反応性マウス血清のプールのコラーゲンIVおよびFOG‐Aに対する血清力価。(C)健常ボランティア(n=15、斜線棒)およびARFの患者(n=7、黒棒)の血清を、それぞれM3.5またはFOG1‐Aに対する反応性について試験した。図中英文の”serum titer"は血清力価、”collagen"はコラーゲンを意味する。
【図4】コラーゲン結合モチーフとしてのPARFの同定である―(A)は放射標識化コラーゲンIVを可溶リガンドとして使用したスポット‐膜実験を図示している。スポット1〜40は、FOG‐タンパク質の最初の132aaを表す3アミノ酸(aa)シフトを構成する15merの固定化ペプチドである。(B)で表示された配列、ペプチド17〜20で強いシグナルが得られた。ボックスは全4個のペプチドに存在するアミノ酸モチーフを示している。ペプチド19に基づく突然変異分析は(C)に図示する。所与のペプチド配列における突然変異は太字と下線文字で示されている。ペプチド50では、aa58〜aa166の配列を任意に再配列した。(D)では、ペプチド19を、成熟タンパク質(上付き文字)におけるその位置と共に示した。スポット膜実験でコラーゲンIV結合に必須であることが判明したアミノ酸を太字で示した。タンパク質FOG1‐AおよびM3の配置により、(E)に示す相同配列が同定される。FOGの各配列はペプチド19に存在する。この領域を部位特異的に突然変異させた。FOGf1において実行された置換ならびにドットブロットおよびSPRを利用した結合実験の結果を(F)の表に示す。これらの実験により(G)に示された共通配列が同定された。図中英文の”protein"はタンパク質、”Dot Blot"はドットブロットを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列AXYLXXLN(配列番号1)を含むコラーゲン結合ペプチドであって、ペプチドが無傷細菌Mタンパク質またはM様タンパク質でなければ、Xは任意の天然アミノ酸または化学修飾したその変異型であることが可能な、コラーゲン結合ペプチド。
【請求項2】
配列AXYLZZLN(配列番号2)を含む請求項1に記載のコラーゲン結合ペプチドであって、ペプチドが無傷細菌Mタンパク質またはM様タンパク質でなければ、XおよびZは任意の天然アミノ酸であることが可能であり、Zの少なくとも1つは塩基性アミノ酸、好ましくはリジンまたはアルギニンまたは化学修飾したその変異型によって占められている、コラーゲン結合ペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが配列番号3〜配列番号15にしたがったアミノ酸配列または化学修飾したその変異型のみからなり、または本質的にそれらのみからなる、請求項1または2に記載のコラーゲン結合ペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが8〜100、好ましくは8〜30、最も好ましくは8〜12個のアミノ酸全長を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のコラーゲン結合ペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが非ペプチド結合を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のコラーゲン結合ペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドが融合タンパク質である、請求項1〜5のいずれかに記載のコラーゲン結合ペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが不活化変異型、好ましくは置換基A58、Y60、L64、N65、LND66またはYL61を有する変異型である、請求項1〜6のいずれかに記載のコラーゲン結合ペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の該コラーゲン結合ペプチドと免疫学的に反応する抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項10】
DNA、cDNA、PNA、CNA、RNAまたはこれらの組み合わせである請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
請求項9または10に記載の核酸を発現することが可能な発現ベクター。
【請求項12】
請求項9もしくは10に記載の核酸または請求項11に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
a)推定リガンドと共に前記ペプチドをインキュベートする工程、b)前記ペプチドと前記の推定リガンド間の結合を測定する工程、およびc)前記リガンドを同定する工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載のコラーゲン結合ペプチドのリガンドをスクリーニングする方法。
【請求項14】
前記リガンドが前記ペプチドのコラーゲン結合を阻害する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リガンドが、コラーゲン結合ペプチドと免疫学的に反応する抗体またはそのフラグメントである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
a)請求項13〜15のいずれかに記載の方法を行う工程、ならびにb)医薬的に許容される担体および/または賦形剤で同定されたリガンドを製剤化する工程、を含む医薬製剤の生成法。
【請求項17】
少なくとも1つの、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド、請求項8に記載の抗体、請求項9もしくは10に記載の核酸、または請求項11に記載の発現ベクター、および医薬的に許容される担体、を含む医薬組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの好適なアジュバントをさらに含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
薬剤に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド、請求項8に記載の抗体、請求項9もしくは10に記載の核酸、または請求項11に記載の発現ベクター、または請求項17もしくは18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
抗リウマチ熱ワクチンとしての、請求項17または18に記載の医薬組成物の使用。
【請求項21】
連鎖球菌感染症および/またはリウマチ熱および/またはリウマチ性心疾患の予防および/または治療用医薬品を製造するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド、請求項8に記載の抗体、請求項9もしくは10に記載の核酸、または請求項11に記載の発現ベクター、または請求項17もしくは18に記載の医薬組成物、の使用。
【請求項22】
a)診断対象の患者から試料を得る工程、b)前記試料中の請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド、請求項8に記載の抗体、および/または請求項9または10に記載の核酸、の有無および/または量を検出する工程を含む、連鎖球菌、連鎖球菌感染症、リウマチ熱および/またはリウマチ性心疾患を診断する方法。
【請求項23】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド、請求項8に記載の抗体、および/または請求項9もしくは10に記載の核酸を、場合により好適な標識および色素と共に含む、連鎖球菌、連鎖球菌感染症、リウマチ熱および/またはリウマチ性心疾患を診断するための診断キット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−539357(P2009−539357A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513581(P2009−513581)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004898
【国際公開番号】WO2007/140953
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(591081310)ヘルムホルツ−ツェントルム フュア インフェクツィオンスフォルシュンク ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】