説明

リガンドグラフト官能化基材

ポリエチレンイミンリガンド官能化基材、リガンド官能化基材の製造方法、及び官能化基材の使用方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、(i)3M Innovative Properties Company,U.S.corporation、及び(ii)University of Wisconsin,Wisconsin Alumni Research Foundation,U.S.corporationの名義の国際特許出願として出願され、2008年9月19日出願の米国仮出願第61/098,337号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、リガンド官能化基材、及びその調製方法に関する。この官能化基材は、生体サンプル由来のウイルスなどの生体物質と選択的に結合し、除去するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
ウイルス及び生体高分子(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、及び核酸のような生細胞の構成成分又は生成物を含む)などの標的生体物質の検出、定量化、単離及び精製は、長年にわたって研究者の課題であり続けている。検出及び定量化は、診断にとって、例えば、様々な生理学的条件(例えば疾患)の指標として重要である。生体高分子の単離及び精製は、治療及び生理学的研究に重要である。化学反応に触媒作用を及ぼすことが可能なタンパク質の特殊な部類である、酵素のような生体高分子も、産業的に有用であり、酵素は単離、精製されて、甘味料、抗生物質、及び様々な有機化合物、例えばエタノール、酢酸、リジン、アスパラギン酸、及び生物学上有用な生成物(例えば抗体及びステロイド)の製造のために利用されている。
【0004】
インビボにおける天然の状態では、これらの生体高分子の構造及び対応する生物学的活性は、一般にpH及びイオン強度のかなり狭い範囲内に維持される。したがって、あらゆる分離及び精製操作は、得られる処理された生体高分子が効能を有するために、このような要因を考慮しなければならない。
【0005】
クロマトグラフ分離及び精製操作は、気体又は液体であることができる移動相と固定相との間の溶質の交換に基づき、生体生成物混合物に対して行うことができる。固定相を有するそれぞれの溶質の様々な結合相互作用のため、溶液混合物の様々な溶質の分離が達成され、それ程強く相互に作用しない溶質と比較して、移動相の解離又は置換作用を受けたとき、より強い結合相互作用の滞留時間は一般により長くなり、このような方法で、分離及び精製が達成できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大部分の現在の捕捉又は精製クロマトグラフィーは、従来のカラム技術によって行われる。この技術を使用した処理能力が低いので、これらの技術には、さらなる精製において大きな支障をきたす。これらの問題を軽減する試みには、クロマトグラフィーカラムの直径を大きくすることが挙げられるが、これも、効果的かつ再現的にカラムを充填することが困難であるため、課題が残る。より大きいカラム直径も、問題となるチャネリングの発生を増やす。また、従来のクロマトグラフカラムでは、特定の水準を超える所望の生成物のブレークスルーが検出されると、吸収操作が中断される。これによって、吸着培地の動的又は有効容量が、全体的又は静的な容量より大幅に低くなる。有効性が低下すると経済的に困難な結果となり、クロマトグラフィー樹脂のコストは高くなる。
【0007】
高分子樹脂は、様々な標的化合物の分離及び精製に広く用いられる。例えば、高分子樹脂を用いて、イオン性基の存在、標的化合物の大きさ、疎水性相互作用、特定の受容体リガンド親和性相互作用、若しくは共有結合の形成、又は上述の相互作用の組み合わせに基づいて、標的化合物を精製又は分離することができる。当該技術分野では、ウイルスに対する親和性が強化されて、生体サンプルからウイルスを効率的に除去することができる高分子基材が必要とされている。当該技術分野では、拡散及び結合における限界を克服し、高い処理量かつより小さな圧力低下で操作されることができるリガンド官能化膜が更に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リガンド官能化基材、好ましくは多孔質基材、及びその製造方法に関する。より具体的には、この官能化基材は、ウイルスなどの帯電生体物質に結合するための、必要な特異的結合能を有するグラフトされたリガンド基を提供するように改質されたベース基材、好ましくは多孔質ベース基材を含む。リガンド官能化基材は、基材と式I又はIIのリガンド化合物とのグラフトされた反応生成物として説明される:
【0009】
【化1】

【0010】
式中、それぞれのRは、独立してH、アルキル又はアリールであり、それぞれのRは、独立してアルキレン又はアリーレンであり、cは、ゼロ又は1〜500の整数であってよく、dは、ゼロ又は1であるが、但しdがゼロであるとき、cは、1〜500である、
又は
【0011】
【化2】

【0012】
式中、xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である。
【0013】
リガンド官能化基材の製造方法が提供される。方法は、熱可塑性又は多糖類ポリマーであってよい基材、好ましくは多孔質基材を提供する工程と;求電子性官能基を基材の表面にグラフトさせて、それらの表面(1つ又は複数)から伸長するグラフトされた求電子性官能基を生成する工程と;グラフトされた求電子性基と、式I及び/又はIIのリガンド化合物とを反応させて、基材の表面(1つ又は複数)から伸長するグラフトされたリガンド基を有する基材を作製する工程と、を含んでよい。
【0014】
幾つかの実施形態では、基材ポリマーは、グラフト化化合物が結合する表面官能基を有する。グラフト化化合物は、基材ポリマーの表面官能基と反応する第1の官能基と、リガンド化合物のアミン(又はイミン)と反応する第2の求電子性官能基とを有する。例えば、多糖類基材は、グラフト化化合物との付加、縮合又は置換反応により、グラフト化化合物と反応して、その後リガンド化合物と反応するためのグラフトされた反応性求電子性官能基を提供することができる、ヒドロキシル基を有する。
【0015】
他の実施形態では、基材ポリマーは、このような表面官能基を有さず、あるいはポリプロピレン等のポリマーは、プラズマ放電に曝露されて、グラフト化化合物との反応に用いることができる表面ヒドロキシル基を提供することができる。あるいは、ポリプロピレン等のポリマーは、電離放射線開始グラフト化のためのエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和グラフト化モノマーでグラフトされてよく、ポリマー表面及びその後リガンド化合物と反応するための第2の反応性求電子性官能基にフリーラジカルを提供してよい。
【0016】
格子間及び外表面を有する基材、好ましくは多孔質基材と、それらの表面から伸長するグラフトされたビグアニドリガンド基であって、式Iのリガンド化合物から誘導され、式III〜VIII(式中、R及びaは、既に定義された通りである)の1つ以上に相当するグラフトされたビグアニドリガンド基とを備える物品が提供される。例として、ビグアニド化合物のみを示す。類似の結合が、ビスビグアニド及びポリ(ビグアニド)化合物と形成される。
【0017】
【化3】

【0018】
式Iのビグアニド、ビスビグアニド及びポリ(ビグアニド)化合物の調製は、当該技術分野において既知である。多くのビグアニドの合成について記載している、F.H.S.Curd and F.L.Rose,J.Chem.Soc.,1946,729〜737、O’Malley et al.,J.Appl.Microbiol.103:1158,2007及びEast et al.,Polymer,38:3973,1997を参照してよい。ビスビグアニドの合成は、F.L.Rose and G.Swain,J.Chem.Soc.,1956,4422〜4425で論じられている。アミン及びジシアノアミンを有するビグアニドの調製により、式Iの化合物を含む生成物の複雑な化合物が生成されることが理解される。具体的には、ビグアニドは、末端又はペンダントシアノ基を有してよい。
【0019】
あるいは、格子間及び外表面を有する基材、好ましくは多孔質基材と、それらの表面から伸長するグラフトされたリガンド基であって、式IIのリガンド化合物から誘導され、式IX〜XII(式中、x及びyは、既に定義された通りである)の1つ以上に相当するグラフトされたリガンド基とを備える物品が提供される。
【0020】
【化4】

【0021】
あるいは、式IIのリガンド化合物に関して、グラフトされたリガンド基は、以下の式の繰り返し単位を有すると表されてよく:
【0022】
【化5】

【0023】
式中、x及びyは、それぞれ、ゼロ又は非ゼロの値であってよく、x及び/又はyは、少なくとも2である。示した繰り返し単位は、上記のように、1つ以上の窒素原子を介して基材の表面にグラフトされてよい。ポリアルキレンイミンの調製により、直鎖及び分岐ポリマーの両方を含み、かつ上記単位のランダム、ブロック若しくは交互コポリマー、又はより複雑な分岐混合物であってよい生成物の複雑な混合物が生成することが理解される。
【0024】
上式III〜XIIに関して、「〜」は、リガンド基とベース基材の表面との間に介在する共有結合又は有機連結基を表す。連結基は、グラフト化モノマー又はグラフト化化合物の残基を表す。物品は、基材の表面から伸長するグラフトされたイオン性又は親水性基を更に含んでよい。
【0025】
本発明のこれら及びその他の特徴及び利点は、以下の開示される実施態様の詳細な説明及び添付の請求項を検討すれば明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の物品及び方法では、リガンド−官能化物品は、グラフト化による基材の官能化、並びにその後の、グラフト−官能化基材と式I及びIIのリガンド化合物及び所望によりイオン性若しくは親水性化合物、若しくはイオン性又は親水性グラフト化モノマーとの反応のプロセスにより提供される。表面修飾前のベース基材と比較して、リガンド官能化基材は、典型的には、宿主細胞タンパク質、DNA、RNA及びウイルス等の帯電生体物質に対する強化された結合選択性を有する。このような生体物質に対する結合選択性により、抗体などの正電荷物質はリガンド官能基に結合していないため、通過することが可能である。リガンド官能化基材により、標的生体物質とリガンド基との間のイオン性相互作用により標的生体物質を選択的に捕捉又は結合することが可能になり、一方、リガンド基と特異的結合相互作用しない他の物質は通過する。
【0027】
リガンド官能化基材は、(1)ベース基材、及び(2)(a)ベース基材の表面から伸長するグラフトされた反応性求電子性官能基と(b)式I又はIIの1つ以上のリガンド化合物との反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない多数の成分を含む。反応生成物は、式III〜XIIの1つ以上に相当する。好ましくは、ベース基材は、格子間及び外表面を有する多孔質ベース基材である。基材は、熱可塑性ポリマー又は多糖類ポリマーであってよい。
【0028】
1つの実施形態では、基材は、多糖類を含む。用語「多糖類」は、グリコシド結合により結合された、1分子当たり多くの(数百又は数千の)単糖類単位から構成される化合物を含む。その分子量は、通常、約5,000超であり、最高数百万ダルトンに及ぶ場合もある。それらは、通常、例えば、デンプン、グリコーゲン、セルロース、アラビアゴム、寒天、及びキチン等の、天然に存在するポリマーである。多糖類は、1つ以上の反応性ヒドロキシル基を有するべきである。それは、直鎖又は分岐であってよい。本発明の目的に対して最も有用な多糖は、セルロースである。
【0029】
多糖類は、好ましくは全く保護されておらず、そのヒドロキシル基を全て遊離状態で保有する。例えば、アシル化又はアミノアシル化により、ヒドロキシル基を一部封鎖することも可能である。しかし、多糖類のヒドロキシ基を広範囲にわたって封鎖することは望ましくない、その理由は、ヒドロキシ基の封鎖により多糖類の親水性が失われて、生体物質と適切に化学的適合性相互作用ができなくなるためである。多糖類の疎水性が高くなりすぎた場合、タンパク質等の分子との負の相互作用により、起こり得る非特異的結合及び変性現象が導かれる。また、多糖類のヒドロキシ基の遮蔽が広範囲に及び過ぎた場合、ポリマーの反応性が著しく低下する。これら理由の全てにより、実質的に全てのヒドロキシ基が遊離状態で保持されることが好ましい。多糖類は、本明細書に記載される反応性官能基により化学的に活性化される。
【0030】
セルロースは、好ましい多糖類である。「セルロース」とは、木材パルプ、綿、麻、ラミー、又はレーヨン等の再生形等の、便利かつ市販の形態のセルロースのいずれをも意味することを意図する。セルロースの好適な形態の選択は重要ではない。セルロースは、ベータ1,4結合しているグルコース単位からなる天然に存在する多糖類である。天然の状態では、隣接するセルロース鎖は、広範囲に及び水素結合して、微晶質領域を形成する。これらの領域には、水素結合の少ない非晶質領域が散在している。限定酸加水分解により、主に非晶質領域が失われ、いわゆる微結晶セルロースが得られる。本発明で有用なセルロースは、天然の状態のセルロース又は微晶質状態のいずれかである。また、綿リンターに由来するセルロースは、木材パルプに由来するセルロースよりも好ましい場合がある、これは木材パルプがリグニンを含有するためである。
【0031】
多糖類材料にリガンド基を結合させるための化学反応は、通常、結晶質領域では難航するが、非晶質領域ではより容易に起こる。例えば、官能基のセルロースへの置換は、その構造を崩壊させる作用を有する。完了するまで実施された場合、セルロースマトリクスは破壊され、最終的には、水溶性ポリマーが形成される。この現象の典型的な例は、先行技術のヒドロキシエチルセルロース及びセルロースゴムであり、これらは、水に溶解した後、一般的に用いられている接着剤及び結合剤となる。
【0032】
多糖類分子中のそれぞれの糖単位は、3つ以上の反応性ヒドロキシ基を有してよい。ヒドロキシル基の全て又は一部を、リガンド基で置換することができる。しかし、このような反応の生成物は、3以上の置換度を有し、イオン交換物質の場合、ポリマーを変性させてよい。全てが水に溶解するよりも置換の水準が低い場合でさえも、このような多糖類誘導体は、クロマトグラフィー担体として好適でなくなる恐れがある。したがって、多糖類の置換は、非晶質領域の反応性の高い中心に限定されることが望ましく、糖類ポリマーの乾燥重量1グラム当たり約1mEQの水準を超えて実施されることは稀である。この置換水準では、多糖類構造の天然構造は僅かに修飾されるのみであり、低密度不均一交換部位は、大きな生体分子により容易に接近可能である。
【0033】
したがって、本発明の分子担体の最終構造は、リガンド基を有するこのような鎖に沿った多数の部位において共有結合によりグラフト修飾された多糖類鎖を含む。
【0034】
基材は、フィルム又はシートなどの任意の形状であってよい。好ましくは、基材(例えば、多糖類基材)は、多孔質であり、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ、及び多孔質繊維が挙げられるが、これらに限定されない。基材は、溶媒からの鋳込成形、湿式堆積繊維、又は乾式堆積繊維を含む多数の方法により作製することができる。
【0035】
別の実施形態では、基材は、任意の好適な熱可塑性ポリマー材料から形成されてよい。好適なポリマー材料としては、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー(例えばポリ(エチレン)−コ−ポリ(ビニルアルコール))、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
幾つかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、プラズマ放電等により処理されて、基材の表面に好適な官能基が設けられた表面であってよい。表面処理により、ヒドロキシル基等の官能基が得られ、グラフト化化合物を用いてグラフト化され、その後のリガンド化合物との反応が可能になる。このような有用なプラズマ処理の1つが、米国特許第7,125,603号(Davidら)に記載されている。
【0037】
好適なポリオレフィンとしては、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンとエチレン又はプロピレンのコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)及びポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
好適なフッ素化ポリマーとしては、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンの共重合体(ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)など)、及びクロロトリフルオロエチレンの共重合体(例えばポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
好適なポリアミドとしては、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、及びポリカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリイミドとしては、ポリ(ピロメリトイミド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
好適なポリ(エーテルスルホン)としては、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン−コ−ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
好適な酢酸ビニルのコポリマーとしては、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)及び酢酸基の少なくとも一部が加水分解されて様々なポリ(ビニルアルコール)を生成するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
好ましい基材は、熱誘導相分離(TIPS)膜等の、親水性微小多孔質膜である多孔質基材である。TIPS膜は、多くの場合、熱可塑性材料と、熱可塑性材料の融点を超える第2の材料との溶液を形成することにより調製される。冷却すると、熱可塑性材料は結晶化し、第2の材料から相分離する。結晶化した材料は、多くの場合、伸長される第2の材料は、所望により伸長前又は後のいずれかに除去される。多孔質膜は、米国特許第4,529,256号(Shipman)、同第4,726,989号(Mrozinski)、同第4,867,881号(Kinzer)、同第5,120,594号(Mrozinski)、同第5,260,360号(Mrozinski)、及び同第5,962,544号(Waller,Jr.)に更に開示されている。幾つかの代表的なTIPS膜は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリ(エチレン)又はポリ(プロピレン)などのポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコールコポリマーなどのビニル含有ポリマー又はコポリマー、ブタジエン含有ポリマー又はコポリマー、及びアクリレート含有ポリマー又はコポリマーを含む。幾つかの用途では、PVDFを含むTIPS膜が、特に望ましい。PVDFを含むTIPS膜は、更に、米国特許第7,338,692号(Smithら)に記載される。
【0043】
ベース基材は、フィルム又はシートなどの任意の形状であってよい。好ましくはベース基材は、多孔質である。好適な多孔質ベース基材としては、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ及び多孔質繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
多くの実施形態では、ベース基材は、サイズ排除分離の最小化、拡散束縛の最小化、並びに表面積及び標的分子の結合に基づく分離の最大化のために、典型的には約0.2マイクロメートル超の平均孔径を有する。ウイルスの結合に使用されるとき、孔径は、一般に0.1〜10マイクロメートル、好ましくは0.5〜3マイクロメートル、最も好ましくは0.8〜2マイクロメートルの範囲にある。他の標的分子の結合効率は、異なる最適範囲を与えてよい。
【0045】
熱可塑性であろうと多糖類であろうと、官能化基材は、a)少なくとも1つのリガンド基と、b)所望により1つ以上の親水性基及び/又はイオン性基とを含む、ベース基材の表面に結合しているグラフトされた基を有する。
【0046】
表面上に反応性基を有する基材は、リガンド化合物と更に反応して、基材の表面(1つ又は複数)にグラフトされたリガンド基を提供する。
【0047】
別の実施形態では、リガンド化合物は、式:
【0048】
【化6】

【0049】
式中、それぞれのRは、独立してH、アルキル又はアリールであり、それぞれのRは、独立してアルキレン又はアリーレンであり、cは、ゼロ又は1〜500の整数、好ましくは少なくとも5、より好ましくは5〜500であってよく、dは、ゼロ又は1であるが、但しdがゼロであるとき、cは、1〜500である、
又は
【0050】
【化7】

【0051】
式中、x及びyは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、である。基材の表面にグラフトされたとき、グラフトされたリガンド基は、式III〜XII(上記)により表すことができる。
【0052】
上記リガンド官能化基材は、プロセス工程の組み合わせを使用して調製されてよい。幾つかの実施形態では、方法は、熱可塑性又は多糖類ポリマーであってよい基材、好ましくは多孔質基材を提供する工程と、グラフト化化合物又はグラフト化モノマーを用いて、求電子性官能基を基材の表面にグラフトし、基材の表面(1つ又は複数)から伸長するグラフトされた求電子性官能基を有する基材を作製する工程と、グラフトされた求電子性官能基と式I又はIIのリガンド化合物とを反応させて、式III〜XIIに記載されているような基材の表面(1つ又は複数)から伸長するグラフトされたリガンド基を有する基材を作製する工程と、を含む。
【0053】
1つの実施形態では、方法は、1)格子間表面及び外表面を有する多糖類基材、好ましくは多孔質ベース基材を提供する工程と、2)多糖類基材のヒドロキシル基と反応する第1の官能基及び第2の官能基を有するグラフト化化合物と接触させることにより、多糖類ベース基材をグラフトして、グラフトされた第2の官能基を有する表面修飾多糖類基材を作製する工程であって、その第2のグラフトされた官能基が、求電子性官能基、又は求電子性官能基に変換されることのできる基である工程と、3)その後、グラフトされた求電子性官能基を有する表面修飾多糖類基材と、式I及び/又はIIのリガンド化合物とを接触させる工程と、を含む。
【0054】
1つの実施形態では、工程2のグラフト化化合物は、リガンド化合物のアミン(又はイミン)基と反応する第2の求電子性官能基を有する。第2の実施形態では、グラフト化化合物は、リガンド化合物のアミン基と反応する求電子性官能基に変換されることができる官能基を有する。例えば、多糖類基材は、先ずアリルグリシジルエーテルと反応することができ、ここで、エポキシ基は、多糖類ポリマーのヒドロキシ基と反応する。しかし、得られたグラフトされたアリル基は、リガンド化合物のアミン基と反応しないが、N−ブロモスクシンイミド又は臭素水と反応して、求電子性でありかつ式I及びIIのリガンド化合物のアミン(又はイミン)基と(求核置換により)反応する末端ブロモ基を作製することができる。
【0055】
1つの実施形態では、グラフト化化合物は、共有結合の形成とともに、多糖類のヒドロキシ基と反応できる基を有する。化学基は、水溶液中で多糖類が分解又は脱重合し始めるまでの温度、例えば、0℃〜120℃でヒドロキシ基と反応して、ヒドロキシ基と共有結合を形成することができる。水は、多糖類のヒドロキシ基に対して遥かに過剰に存在するため、例えば、イソシアナト基等の、水と自発的に反応する化学基は、あまり好ましくない。
【0056】
グラフト化化合物のヒドロキシ反応性基は、ペプチド化学から既知である活性化カルボキシ基、又はアルキルハライド又はエポキシド基等のO−アルキル化剤であってよい。O−アルキル化コモノマーの代表例は、アクリル及びメタクリル酸無水物、アクリロイル又はメタクリロイルN−ヒドロキシスクシンイミド、アルキル基が一般に2〜6個の炭素原子を含むアクリル又はメタクリル酸のΩ−ハロ−アルキルエステル、アリルハライド、クロロメチルスチレン、クロロアセトキシアリルエーテル、及びグリシジル基を有する化合物である。後者は、グリシジルアルコールと、それぞれ不飽和アルコール又は不飽和カルボン酸との間に形成されるエーテル又はエステルである。グリシジルアルコールは、α、β−不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸若しくはメタクリル酸でエステル化される、又はオレフィン性若しくはアセチレン性不飽和アルコールでエーテル化される、3〜18個の炭素原子を有する脂肪族及び脂環式アルコール並びにエーテルアルコールである。典型的な化合物は、グリシジルアクリレート及びメタクリレート、4,5−エポキシ−ペンチルアクリレート、4−(2,3−エポキシ−プロピル)−N−ブチル−メタクリレート、9,10−エポキシ−ステアリルアクリレート、4−(2,3−エポキシプロピル)−シクロヘキシルメチルアクリレート、エチレングリコール−モノグリシジルエーテルアクリレート、及びアリルグリシジルエーテルである。
【0057】
多糖類基材の表面のグラフトに用いることができる他の有用なグラフト化化合物としては、塩化シアヌル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、米国特許第7,402,678号(Bensonら)に記載されている末端アシルスルホンアミド基を有する多官能性化合物、米国特許出願公開第2005/0142296A号(Lakshmiら)に記載されているハロホスホニトリル化合物、米国特許出願公開第2007/0065490号(Schabergら)に記載されているトリアジン化合物、米国特許第7,361,767号及び同第7,169,933号(Bensonら)に記載されているN−スルホニルジカルボキシミド化合物が挙げられる。
【0058】
幾つかの実施形態では、多糖類基材は、四級アンモニウム基等のグラフトされたイオン性基を更に含む。このような基は、多糖類基材をエピクロロヒドリン及び塩基と接触させ、三級アミン、又は二級アミンと反応させ、続いてアルキル化することによりグラフトすることができる。あるいは、四級アンモニウム基は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドとの反応により、基材の表面にグラフトすることができる。幾つかの実施形態では、多糖類基材は、ポリ(エチレンオキシド)基等の、グラフトされた親水性基を更に含み、これは、ポリ(エチレンオキシド)一酸又は二酸等の化合物と基材との反応によりグラフトされてよい。
【0059】
多糖類のヒドロキシル基等の官能基を有さない他のポリマーは、電離放射線グラフト化技術を用いて有利に官能化される。この実施形態では、ポリプロピレン又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の熱可塑性ポリマーは、先ずグラフト化モノマーでグラフトされ、次に式I又はIIのリガンド化合物と反応する。グラフト化モノマーは、エチレン性不飽和基を有し、これは、基材の存在下で電離放射線に曝露されたとき、基材の表面にラジカル開始共有結合を導く。結果として、基材は、グラフト化モノマーで官能化される。
【0060】
官能化基材は、グラフトされた種である、ベース基材の表面に結合するグラフト化モノマーを有する。グラフト化モノマーの多孔質ベース基材の表面へのグラフトにより、式I及びIIのリガンド化合物のアミン(又はイミン)基と反応する官能基が結合する。このアミン基は、一級アミン等のリガンド化合物の末端に存在することができ、又は二級アミン、若しくは分岐部分の一級アミン等としてリガンド化合物の内部に存在することができる。グラフト化モノマーは、(a)フリーラジカル重合性基と、(b)その上に少なくとも1つの更なる第2の官能基の両方を有する。グラフト化モノマーの更なる第2の官能基は、求電子性基、又は求電子性基に変換されることができる別の官能基であってよい。
【0061】
フリーラジカル重合性基は典型的に、(メタ)アクリロイル基又はビニル基のようなエチレン性不飽和基である。フリーラジカル重合性基は、典型的には、電子ビーム又は他の電離放射線に曝露されたとき、多孔質ベース基材の表面と反応できる。即ち、電子ビームの存在下における、グラフト化モノマーのフリーラジカル重合性基と多孔質ベース基材の表面との反応により、多孔質ベース基材に結合するグラフトされた種が形成される。1つ以上のグラフト化モノマーは、多孔質ベース基材の格子間及び外表面にグラフトされてよい。
【0062】
フリーラジカル重合性基を有することに加えて、好適なグラフト化モノマーは、リガンド化合物のアミン基と反応する、又は更に活性化されてアリル基等のリガンド化合物のアミン基と反応することができる、エポキシ基、アズラクトン基、イソシアナト基、ハロ基等の更なる官能基を有する。即ち、フリーラジカル重合性基の関与する反応によりグラフト化モノマーを多孔質ベース基材に結合させた後、生成したグラフトされた種の更なる官能基をリガンド化合物と更に反応させることができる。
【0063】
加えて、任意のグラフト化モノマーは、イオン性基、第2のエチレン性不飽和基、アルキレンオキシド基、又は疎水性基等の、特定の分析物に対する更なる反応性、又は結合特異性を提供する(又は他の分析物の結合を抑制する)ために用いられる官能基を有してよい。これらの例では、追加の官能基は、官能化基材に、特定の種類の化合物に対する親和性などの所望の表面特性を付与できる。グラフトされた種がイオン性基を含む場合、官能化基材は、多くの場合、反対電荷を有する化合物に対して親和性を有することになる。即ち、負に帯電した基を有する化合物は、カチオン基を含むグラフトされた種を有する官能化基材に引き付けられることができ、正に帯電した基を有する化合物は、アニオン基を含むグラフトされた種を有する官能化基材に引き付けられることができる。更に、グラフトされた種は、グラフトされた種で表面修飾する前に、疎水性表面を有する多孔質ベース基材を含む官能化基材に親水性表面を付与できる。即ち、アルキレンオキシド基を含むグラフトされた種は、生成した官能化基材に親水性の特徴を付与できる。
【0064】
幾つかのグラフト化モノマーは、a)基材の表面にグラフトする第1のエチレン性不飽和基及びb)エポキシ基である更なる官能基を有する。この部類内の好適なグラフト化モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。このグラフト化モノマーの部類は、更なる反応に利用することができる少なくとも1個のエポキシ基を有する官能化基材を提供することができる。エポキシ基は、リガンド化合物と反応することができ、これにより、エポキシ環が開環し、多孔質ベース基材にリガンド化合物を結合させる機能を有する連結基が形成される。エポキシ基の開環によって形成された連結基は、エポキシがリガンド化合物の一級アミノ基と反応するとき、−C(OH)HCHNH−基を含む場合が多い。エポキシ基は、別の求核性化合物等の他の反応物質と反応し、ベース基材に所望の表面特性(例えば、特定の化合物又は異なる反応性を有する官能基に対する結合特異性)を付与できる。
【0065】
他のグラフト化モノマーは、(a)エチレン性不飽和基であるフリーラジカル重合性基及び(b)アズラクトン基又はアズラクトン基の前駆体である更なる官能基を有する。好適なグラフト化モノマーとしては、2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトン及びN−アクリロイル−2−メチルアラニン等のビニルアズラクトンが挙げられるが、これらに限定されない。このグラフト化モノマーの部類は、リガンド化合物と更に反応するために利用可能な、少なくとも1つのアズラクトン基(又はアズラクトン基の前駆体)を有する官能化基材を提供できる。多孔質ベース基材に望ましい表面特性(例えば、特定の化合物又は異なる反応性を有する官能基に対する結合特異性)を付与するために、アズラクトン基は、別のモノマーのような他の反応物質と又は求核性化合物と反応できる。アズラクトン基とリガンド化合物との反応は、例えば、アズラクトン環が開環し、求核性化合物を多孔質ベース基材に結合させる機能を有する連結基の形成をもたらす。アズラクトン基の開環により形成される連結基は、基CH=CH−(CO)NHC(R(CO)−(式中、Rは、メチル等のアルキルである)を含むことが多い。
【0066】
幾つかの実施形態では、アズラクトン基は、アリルアミン等の一官能性アミンと反応することができ、ここで、アミン基は、アズラクトン基と開環反応により反応し、以下の基CH=CH−(CO)NHC(R(CO)NH−CH−CH=CHを含む連結を形成することができる。次いで、グラフトされたアリル基は、式I及びIIのリガンド化合物と更に反応するための求電子性官能基に変換されてよい。例えば、末端アリル基は、N−ブロモスクシンイミド等の好適な臭素化剤により臭素化されて、末端求電子性臭素を提供し、これは、次いで式I及びIIのリガンド化合物の求核性窒素原子と反応して、式III〜XIIのペンダントリガンド基を生成してよい。
【0067】
幾つかの実施形態では、アズラクトン基は、2個の一級アミノ基を有するジアミン又は3個の一級アミノ基を有するトリアミンなどの多官能アミンと反応することができる。アミノ基の1つは、アズラクトン基との開環反応により反応でき、求核化合物とベース基材の間に−(CO)NHCR(CO)−基を含有する連結を形成することができる。第2のアミノ基、又は第2及び第3のアミノ基は、官能化基材に親水性特性を付与できる。幾つかの例では、多官能性アミンは、ポリアルキレングリコールジアミン又はポリアルキレングリコールトリアミンであり、アズラクトン基との反応は、ポリアルキレングリコール基(即ち、ポリアルキレンオキシド基)を有するグラフトされた種の結合をもたらす。ポリアルキレングリコール基並びに任意の末端一級アミノ基は、親水性の特徴を官能化基材に付与する傾向がある。
【0068】
他のグラフト化モノマーは、(a)エチレン性不飽和基であるフリーラジカル重合性基及び(b)イソシアネート基である追加の官能基を有する。好適なグラフト化モノマーとしては、2−イソシアナトエチルメタクリレート及び2−イソシアナトエチルアクリレートなどのイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。このグラフト化モノマーの部類は、更なる反応に利用することができる少なくとも1個のイソシアナト基を有する官能化基材を提供できる。イソシアナト基は、リガンド化合物などの他の反応物質と又は求核化合物と反応し、多孔質ベース基材に所望の表面特性(例えば、特定の化合物又は異なる反応性を有する官能基に対する親和性)を付与することができる。イソシアナト基とリガンド化合物のアミン基との反応により、尿素結合を形成することができる。
【0069】
更に他の任意のグラフト化モノマーは、(a)エチレン性不飽和基であるフリーラジカル重合性基及び(b)更なるイオン性官能基を有する。イオン基は、正電荷、負電荷、又はそれらの組み合わせを有することができる。幾つかの好適なイオンモノマーの場合、イオン性基は、pH条件により中性又は帯電されていてよい。このモノマーの部類は、典型的には、1つ以上の逆帯電した化合物に対する望ましい表面結合特異性を付与するために、又は1つ以上の同様に帯電した化合物に対する親和性を低下させるために用いられる。
【0070】
幾つかの代表的な負電荷を有するイオン性グラフト化モノマーとしては、N−アクリルアミドメタンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、及び2−メタクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性モノマーの塩も使用することができる。塩に対する対イオンは、例えば、アンモニウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、又はナトリウムイオンであってよい。
【0071】
負電荷を有する他の好適なイオングラフト化モノマーとしては、ビニルスルホン酸及び4−スチレンスルホン酸などのスルホン酸;(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸(例えば、2−アクリルアミドエチルホスホン酸及び3−メタクリルアミドプロピルホスホン酸)などの(メタ)アクリルアミドホスホン酸;アクリル酸及びメタクリル酸;並びに2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−カルボキシプロピルアクリレート、及び3−カルボキシプロピルメタクリレートなどのカルボキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。更に他の好適な酸性モノマーとしては、本明細書に参照として組み込まれる米国特許第4,157,418号(Heilmann)に記載されるもののような(メタ)アクリロイルアミノ酸が挙げられる。代表的な(メタ)アクリロイルアミノ酸としては、N−アクリロイルグリシン、N−アクリロイルアスパラギン酸、N−アクリロイル−β−アラニン、及び2−アクリルアミドグリコール酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸モノマーの任意の塩も用いることができる。
【0072】
正電荷を与えることのできる幾つかの代表的なイオン性グラフト化モノマーは、アミノ(メタ)アクリレート又はアミノ(メタ)アクリルアミドあるいはそれらの四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩の対イオンは、多くの場合、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩等である。代表的なアミノ(メタ)アクリレートとしては、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−t−ブチルアミノプロピルメタクリレート、N−t−ブチルアミノプロピルアクリレートなどが挙げられる。代表的なアミノ(メタ)アクリルアミドとしては、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(2−イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)アクリルアミド、及びN−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)メタクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
イオン性モノマーの例示的な四級塩としては、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)及び(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、及び2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
基材の表面に正に帯電した基を提供することができる他のグラフト化モノマーとしては、アルケニルアズラクトンのジアルキルアミノアルキルアミン付加物(例えば、2−(ジエチルアミノ)エチルアミン、(2−アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロライド、及びビニルジメチルアズラクトンの3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン付加物)並びにジアリルアミンモノマー(例えば、ジアリルアンモニウムクロライド及びジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が挙げられる。
【0075】
本発明の官能化基材は、上記グラフト化モノマーの1種又は上記グラフト化モノマーの2種以上の混合物を用いて調製され、リガンド化合物と更に反応するため及び/又はベース基材の表面特性を変化させるための官能基を提供してよい。上記グラフト化モノマーの2種以上を用いて多孔質ベース基材の表面特性を変化させる場合、モノマーは、単一反応工程(即ち、2種以上のグラフト化モノマーが電子ビームへの曝露時全て存在する)又は逐次反応工程(即ち、第1のグラフト化モノマーは、電子ビームへの最初の曝露時に存在し、第2のグラフト化モノマーは、電子ビームへの2回目の曝露時に存在する)で多孔質ベース基材にグラフトされてよい。
【0076】
グラフト化モノマーは、基材の表面上で重合して、ペンダント求電子性官能基を有するグラフトされたポリマーを生成することができることが理解される。次いで、これらペンダント求電子性官能基は、式I及びIIのリガンドモノマーと更に反応し、ペンダントリガンド基を有するグラフトされたポリマーを生成することができる。このようなポリマーは、基材〜(Mリガンド(式中、Mリガンドは、ペンダントリガンド基を有する重合したグラフトされたモノマーを表し、mは、少なくとも2である)として表すことができる。このようなポリマーは、他の任意のグラフト化モノマーを更に含んでよい。
【0077】
放射線グラフト化では、方法の1つの実施形態は、1)格子間及び外表面を有する基材、好ましくは多孔質ベース基材を提供する工程と、2)(a)少なくとも1つのアクリロイル基及び少なくとも1つの第2の求電子性官能基、又は求電子性官能基に変換されることができる第2の官能基を有する1つ以上のグラフト化モノマーを含む第1の溶液を、多孔質基材に吸収させる工程と、3)表面(1つ又は複数)に結合するグラフトされた求電子性官能基(グラフト化モノマー由来)を有するベース基材を含む第1の官能化基材を形成するために、電離放射線、好ましくは電子線又はガンマ線に、吸収多孔質ベース基材を曝露する工程と、4)グラフトされた求電子性官能基を有する基材を、式I又はIIのリガンド化合物と接触させて、式III〜XIIに示すような、基材の表面(1つ又は複数)に結合するグラフトされたリガンド基を有する基材を作製する工程と、を含む。
【0078】
別の実施形態では、吸収工程2は、求電子性官能基を有するグラフト化モノマーを基材に吸収させることを含んでよい。この求電子性官能基は、求電子性官能基、及び求電子性基に変換されることができる第2の非求電子性基を有する化合物で更に官能化されてよい。例えば、ビニルジメチルアズラクトン等のグラフト化モノマーは、基材の表面にグラフトされてよい。これは、言い換えると、アリルアミン等の求電子性化合物と反応することができ、アリルアミンのアリル基は、リガンド化合物と反応しないが、N−ブロモスクシンイミド又は臭素水との反応によりブロモ基等の求電子性基に変換されることができる。
【0079】
幾つかの実施形態では、吸収溶液は、基材の表面にグラフトされたイオン性又は親水性基を付与することができる任意のグラフト化モノマーを含んでよい。例えば、任意のグラフト化モノマーは、ポリ(エチレンオキシド)の親水性モノ及びジアクリレートを含んでよい。
【0080】
別の実施形態では、方法は、1)格子間及び外表面を有する多孔質ベース基材を提供する工程と、2)多孔質ベース基材に第1の溶液を吸収させて、吸収多孔質ベース基材を形成する工程であって、第1の溶液が、(a)アクリレート基及び光重合開始剤基を有する少なくとも1つのグラフト化モノマー及び(b)少なくとも1つのアクリレート基と、少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマー、及び所望によりc)少なくとも1つのフリーラジカル重合性基及び求電子性基を有する1つ以上の追加のモノマーを含む工程と、3)多孔質ベース基材の表面に結合するグラフトされた光重合開始剤基を含む第1の官能化基材を形成するために、吸収多孔質ベース基材を、制御された量の電子ビーム照射に曝露する工程と、4)所望により、グラフトされた光重合開始剤基を含む基材に、求電子性基を有するグラフト化モノマーを含む吸収溶液を吸収させる工程と、5)グラフトされた光重合開始剤基を含む多孔質ベース基材を、制御された量の紫外線に曝露して、残りのエチレン性不飽和、フリーラジカル重合性基を重合又は架橋し、求電子性基を有するグラフト化モノマーを組み込む工程と、6)グラフトされた求電子性基を有する基材を、式I及び/又はIIのリガンド化合物と接触させる工程と、を含み、ここで、工程2又は4の少なくとも1つが、求電子性基を有するグラフト化モノマーを含む。
【0081】
この方法に関する更なる参照は、同一出願人の同時係属出願である米国特許出願公開第2009/0098359号中に見出すことができ、これは、全文を参照することにより本明細書に援用される。
【0082】
電離放射線グラフト化法は、基材の表面に電離放射線を照射して、モノマーがグラフトされた表面上にフリーラジカル反応部位を調製することを含む。「電離放射線」とは、ベース基材の表面(1つ又は複数)にフリーラジカル反応部位を形成するのに十分な線量及びエネルギーの放射線を意味する。電離放射線には、ベータ、ガンマ、電子ビーム、X線及び他の形態の電磁放射線を挙げることができる。場合によっては、コロナ放射線は十分に高いエネルギー放射線であってよい。放射線は、十分に高エネルギーであり、そのため、ベース基材の表面により吸収されると、十分なエネルギーがその支持体に移動して、支持体内の化学結合の開裂を生じ、結果として支持体上にフリーラジカル部位が形成される。
【0083】
高エネルギー放射線量は、キログレイ(kGy)で測定される。線量は、所望のレベルの単一線量で、又は累積すると所望のレベルになる複数線量で、管理されることができる。線量は、放射線源によって累積的に約1kGy〜約100kGyの範囲であってよい。一般的に、電子線の線量は、ガンマ線よりも高い。好ましくは、累積線量は、電子線を用いるとき、放射線障害に対して抵抗性である基材では、30kGyを超える。3〜7kGyの範囲の線量は、通常、ガンマ線を用いるとき、全てのポリマーで許容可能である。
【0084】
市販の供給元の利用が容易であることにより、このグラフト化の方法の場合、電子ビーム及びガンマ線が好ましい。電子ビーム発生器は、Energy Sciences,Inc.(Wilmington,MA)製のESI「ELECTROCURE」EBシステム及びPCT Engineered Systems,LLC(Davenport,IA)製のBROADBEAM EB PROCESSORを含む種々の供給源から市販されている。ガンマ照射源は、コバルト−60高エネルギー源を使用してMDS Nordionから市販されている。いかなる所定の種類機器及び照射試料位置であろうとも、放出される線量は、「放射線フィルム照射線量測定装置の使用に関する基準」と題するASTM E−1275により測定することができる。線源強度及び広がる面積を変化させることにより、種々の線量率を得ることができる。
【0085】
放射線グラフト化法の更なる詳細は、同一出願人の米国特許出願公開第2007/0154703号(Wallerら)に見出すことができ、これは、全文を参照することにより本明細書に援用される。
【0086】
1つの実施形態では、方法は、グラフトされた官能基と1つ以上のリガンドモノマーとの反応生成物を含む、グラフトされたリガンド官能化表面を有する物品を提供する。リガンド官能化基材の製造方法は、グラフトされた種がリガンド基を含むので、多孔質ベース基材の従来の性質を変化させる。本発明は、ベース基材の多くの利点(例えば、機械的及び熱的安定性、多孔性)を有するが、ウイルスなどの生体物質に対して強化された結合特異性を有するリガンド官能化基材の形成を可能にし、これは所与の官能化基材を形成するために使用されるモノマー及び工程から生じる。本発明は、親水性ポリマーから形成された多孔質ベース基材に関連する既知の問題の多く(湿度により膨張するという問題、加湿のない場合の脆弱性、機械的強度の低さ、並びに耐溶媒性、耐苛性及び/又は耐酸性の低さが挙げられるが、これらに限定されない)を軽減又は解消する。
【0087】
1つの実施形態では、任意の親水性基を有するグラフト化モノマーを用いて、PVDF基材等の疎水性ベース基材に親水性を付与することができる。これらのグラフト化モノマーは、親水性ポリ(アルキレンオキシド)基を有してよい。
【0088】
あるいは、任意のグラフト化モノマーは、所望によりイオン性基を含んでよい。これらの場合、グラフト化アクリレート基又は非アクリレート重合性基と、四級アンモニウム基などの親水性基と、を含有してよいモノマーを用いて、親水性が付与される。このようなイオン性基は、好適なpHにてイオン性基と同様の電荷を有する生物学的種を避けることにより、官能化基材に対して強化された選択性を更に付与できる。
【0089】
リガンド官能化多孔質基材は、生物学的サンプルから、内因性又は外来ウイルス等のウイルスを選択的に結合及び除去するための、濾材として特に好適である。リガンドがベース基材に(直接的に又は間接的にのいずれかで)グラフトされているので、リガンド官能化基材は耐久性がある。次に、本開示は、サンプルを本明細書に記載されるようなリガンド官能化基材に接触させることを含む、生体サンプルなどのウイルス含有サンプルからウイルスを除去するための方法を提供する。
【0090】
溶液が0〜約50mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウイルスに対する少なくとも1.0の収率log減少値(LRV)を、好ましくは、溶液が0〜約100mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウイルスに対する少なくとも1.0の収率log減少値(LRV)を、より好ましくは、溶液が0〜約150mMの塩を含むとき溶液中に配置された中性ウイルスに対する少なくとも1.0の収率log減少値(LRV)を得るのに十分な時間にわたって、ウイルス捕捉膜にサンプルを接触させる。溶液は、溶液が0〜約50mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウイルスに対する少なくとも5.0の収率log減少値(LRV)を、好ましくは、溶液が0〜約100mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウイルスに対する少なくとも5.0の収率log減少値(LRV)を、より好ましくは、溶液が0〜約150mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウイルスに対する少なくとも5.0の収率log減少値(LRV)を得るのに十分な時間にわたって、溶液をウイルス捕捉膜に接触させることが更により好ましい。用語「中性ウイルス」は、約7、又は所望により名目上6〜8の等電点(pI)を有する任意のウイルスを示すために使用される。あるいは、用語「中性付近」を用いてよい。サンプル溶液のpHは、ウイルスが負に帯電しているpHである。
【0091】
「耐塩性」として知られている、塩の存在下でのウイルスクリアランスの重要性は、バイオ医薬品製造業で使用される多くのプロセス溶液が、15〜30mS/cmの範囲の導電率を有することである。耐塩性は、従来のQリガンド(AETMA、2−アミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド)と比較して測定され、標的範囲よりも3〜6倍低い導電率では一部のウイルス(例えば、φ X174)に対する能力が急速に失われ、例えば、NaClを0mMから50mMにすると、ウイルスクリアランスは6log減少値(LRV)から1log減少値(LRV)に低下する。φ X174及びPM2等のウイルスは、7に近いpIを有し(φ X174のpI:6.6;PM2のpI:7.3;ポリオウイルス型のpI 1:7.5(Brunhilde株)、中性又は中性付近である。
【0092】
多くの実施形態では、基材は、他のタンパク質がリガンド官能化基材から排除又は忌避されるように官能化されることができるが、ウイルス、及び宿主細胞タンパク質、DNA等の他の負に帯電している種は、リガンド官能基に結合する。加えて、先述したように、基材は1種以上のイオン性モノマーで直接的に又は間接的にグラフトされてよい。特に、多孔質基材は、その多くが中性pHにて正電荷であるモノクローナル抗体などのタンパク質の静電荷斥力を生じるように、生体サンプル溶液の選択されたpHにて正に帯電しているグラフトされたイオン基を含んでよい。
【0093】
mAb結合などのタンパク質結合の防止は、リガンドのpKaを上昇させるか、又は充填中にmAbとリガンドとが両方とも正に帯電するように、追加の正電荷官能基をグラフト化し、溶液のpHを調整することにより、達成することができる。これは、リガンド及び基材の表面からのmAbの静電荷斥力を生じさせる。対照的に、ウイルスは、通常負に帯電しており、リガンドに結合する。ほとんどの治療用mAbは、8〜10のpIを有する傾向がある。それゆえに、mAbは中性pHにて正に帯電しており、これは、mAbが基材の表面に結合するのを防止する。一方、ウイルスは、様々なpIを有し、多くは7未満のplを有する。したがって、サンプル溶液のpHは、対象のタンパク質(mAbなど)の等電点よりも低く、かつウイルスの等電点よりも高く維持されるべきである。
【0094】
本明細書のリガンド及び他のグラフトされた官能基は、上記基準及び結果に基づいて選択される、即ち、耐塩性であり、かつmAbの静電荷斥力を生じさせる高いpKa(例えば、>10)を有する。リガンドは多孔質膜上に固定され、ウイルス含有流体は膜を通過するが、ウイルスはリガンドにより捕捉される。
【0095】
幾つかの実施形態では、結合したウイルスを有するグラフトされた物品は使い捨てである。このような実施形態では、濾材へのウイルスの結合は、好ましくは本質的に不可逆的であるが、それは、結合したウイルスを再生する必要がないためである。それにもかかわらず、溶出溶液のイオン強度を上昇させることにより、ウイルスの結合を無効にすることができる。対照的に、多くのタンパク質結合の例においては、結合現象は必然的に可逆性であるか、又は所望のタンパク質はカラムから溶出できない。
【0096】
ウイルス捕捉のための基材は、先述のいずれであってもよいが、好ましくは微小多孔性膜である。望ましい膜孔径は、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜3μm、最も好ましくは0.8〜2μmである。内側の孔構造のために大きな表面積を有する膜が所望され、これは典型的には微細孔径に相当する。しかしながら、孔径が小さ過ぎる場合、膜は、サンプル溶液中に存在する微細粒子で塞がれる傾向がある。
【0097】
所望される場合、ウイルス結合及び捕捉の効率は、フィルタ要素として複数の積層されたリガンド官能化多孔質基材を使用することにより、改善されてよい。それゆえに、本開示は、1つ以上の層の多孔質リガンド官能化基材を含むフィルタ要素を提供する。個々の層は、同一であっても又は異なっていてもよく、異なる多孔性及び上記グラフト化モノマーによるグラフト度を有してよい。フィルタ要素は、上流プレフィルタ及び下流支持層を更に含む。個々のフィルタ要素は、所望されるように、平面的であっても又はひだ状であってもよい。
【0098】
好適なプレフィルタ及び支持層の材料の例には、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、樹脂結合した又は結合剤を含まない繊維(例えば、ガラス繊維);及び他の合成繊維(織布又は不織布フリース構造);ポリオレフィン、金属、及びセラミックスなどの焼結材料;糸;特殊な濾紙(例えば、繊維とセルロースとポリオレフィンと結合剤との混合物);ポリマー膜;並びに他のもの、の任意の好適な多孔質膜が挙げられる。
【0099】
別の実施形態では、上記フィルタ要素を含むフィルタカートリッジが提供される。更に他の実施形態では、フィルタ要素とフィルタハウジングとを含むフィルタ組立品が提供される。更なる実施形態では、本発明は、a)1層以上の、本開示のリガンド官能化ベース基材を含むフィルタ要素を提供する工程と、b)ウイルスを含有する生物学的溶液を移動させて、ウイルスを結合させるのに十分な時間、フィルタ要素の上流表面に作用させる工程と、を含む、ウイルスの捕捉方法に関する。
【0100】
本発明を上記で説明し、更に下記に実施例により説明するが、それは、いかなる方法においても発明の範囲に限定を課すと解釈されるものではない。それとは逆に、本明細書を読んだ後、本発明の趣旨及び/又は添付した請求項の範囲から逸脱することなくそれら自身を当業者に示唆できる種々の他の実施形態、修正及びその等価物に対して手段を有してもよいことが明瞭に理解される。
【実施例】
【0101】
材料:
約25,000のポリエチレンイミンは、Alpha Aesar(Ward Hill,MA)から購入した。
【0102】
約25,000のポリヘキサメチレンビグアニドは、Arch Chemical(South Plainfield,NJ)から購入した。
【0103】
孔径0.45μm、直径25mm及び平均厚さ180μmの再生セルロース(RC)ディスクは、184型としてSartorius,Germanyから購入した。
【0104】
PVDFフィルム;TIPS(熱誘導相分離)多孔質フィルム、厚さ5mil(127マイクロメートル)、Gurley(空気流)約4.5秒/50cc空気、泡立ち点孔径約1.9マイクロメートル、平均孔径1.4μm、多孔率72%、及び水分流動時間約10秒(100mLの水、47mmのPall Gelman濾過用漏斗4238を用いて、Hg真空23において)。米国特許第7,338,692号(Smithら)を参照してよい。
【0105】
「VAZPIA」は、米国特許第5,506,279号(Babuら)の実施例1に従って調製される、2−プロペノイルアミノエタン酸、2−(4−(2−ヒドロキシ−2メチルプロパノイル)フェノキシ)エチルエステルを指す。
【0106】
「PEG 400ジアクリレート」は、ポリエチレングリコールのジアクリレートエステル、分子量400、Aldrich Chemical Co.製である。
【0107】
膜の試験:
染料アッセイ:
アミンリガンドで誘導体化したRC膜を、負に帯電しているオレンジ染料との反応により、比色分析で相対イオン容量について試験した。Tropaeolin O(Acros,Geel,Belgium)を、66%(v/v)エタノールに溶解させて、0.5mg/mLの濃度にした。RC膜を20%エタノールですすぎ、次いで22℃で4時間Tropaeolin O溶液中でインキュベートした。次いで、膜を染料溶液から取り出し、20%エタノールで十分洗浄して、結合していない染料を除去した。ブランクRC膜を対照として用いて、任意の起こり得る非特異的結合の作用を排除した。最後に、染色した膜の色(a)を、ColorQuest比色計(HunterLab,Reston,VA)を用いて測定した。
【0108】
ウシ血清アルブミンの結合:
AKTAクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare,NY)に取り付けられた直径25mmのホルダー内に定置された、直径25mmのディスクに打ち抜いた膜の6層積層体に試験検体の溶液を通すことにより、タンパク質の結合について膜を分析した。ウシ血清アルブミン(BSA)を、50mMのビストリス緩衝液(pH 6)に溶解させて、280nmの吸光度により測定したときの濃度を0.2mg/mLにすることにより、供給溶液を調製した。BSA供給溶液を、280nmの吸光度により完全なブレークスルーが観察されるまで、5mL/分の流速で、膜吸着器を通して送り出した。標準的クロマトグラフィー技術を使用して、膜の動的結合能力を評価した。
【0109】
ウイルス捕捉の決定:
PDA Technical Report 41(TR41)、Virus Filtrationに記載のように、米国食品医薬品局において開発された標準プロトコルを使用して、ウイルス捕捉を測定した。試験ウイルスは、バクテリオファージφX174であった。pH 7.5にて10mMのTRIS−HCl緩衝液中に10〜1012pfu/mL(溶菌斑形成単位)を含有する標準原液を、0、50及び150mMのNaCl濃度で、調製した。この原液を先述のように膜積層体を通して流した。充填中、50mLのチャレンジ溶液を、5mL/分の流速で膜吸着器を通して送り出し、貫流サンプルを10mLずつ回収した。画分回収器を使用して、流出液を1mL画分として回収した。膜を通過した10mL、20mL、30mL、40mL及び50mLの総流量に対応する画分を取っておき、これらを幾つかの十進法希釈した。ウイルス原液もまた同様の希釈系列にかけた。次に、希釈した画分を大腸菌溶液中でインキュベートし、トリプチックソイブロスから構成される成長培地とともに寒天プレート上に塗り付けた。反転させたプレートを一晩インキュベートし、溶菌斑の数を計数した。対応する希釈係数及びファージの初期濃度の情報から、LRV(又はウイルス負荷におけるlog減少)を評価し、等式(1)を用いて算出した。
【0110】
【数1】

【0111】
(実施例1及び2)
A部:グラフトされた求電子性基を有する基材膜の調製:
アミン含有リガンドのRC基膜へのグラフト化を、以下の方法により行った。先ず、セルロース基材上のヒドロキシル基を、22℃で一晩、アリルグリシジルエーテル(グラフト化化合物として)の30%水酸化ナトリウム5%溶液中で膜と反応させることにより活性化した。N−ブロモスクシンイミドの10g/L溶液を用いて、2時間臭素化することにより、共有結合したアリル基を求電子性臭素基に変換した。
【0112】
B部:活性化膜上における官能基のグラフト化:
A部で作製した膜上でグラフトされたブロモ基を、求核置換を介してアミンリガンドで置換し、ここで、臭素化膜を22℃で2日間アミンリガンド溶液と反応させて、高度なアミン置換を確実にした。リガンド溶液は以下の通りであった:ポリエチレンイミン(PEI)及びポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)の、10%(w/w)固形分溶液(pH 11)。3種の塩濃度におけるBSA容量、及びΦX174LRVクリアランスを表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
(実施例3)
PVDF多孔質基材に、Sartomer Inc.(Exton)からPA SR−344(商標)として入手可能な10.0重量%のPEG 400ジアクリレートモノマー、及び90.0重量%のメタノールを含有する溶液を吸収させた。次に、被覆された多孔質基材を約100マイクロメートルの厚さを有するPETフィルムの2層(第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で置いた。除去可能な第1の層及び除去可能な第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に任意の過剰な溶液とともにそれぞれ置き、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。この多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物に、ESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により、電圧300 keVで20kGyの線量を照射した。照射の2分後、親水性官能化多孔質基材を、第1及び第2のPET層から取り外した。この膜を水のトレイ中に漬け、DI水を3回交換して、未反応モノマー膜を洗浄し、次いで空気乾燥させた。
【0115】
親水性PVDF多孔質基材を、10.0%のビニルジメチルアズラクトン−アリルアミン付加物、20%のDI水、及び70%のメタノールを含有する溶液でコーティングした。溶液で満たされた膜を、電圧300keVに設定された40kGyの電子線に再度供し、このモノマーをPVDF基材の表面にグラフトする。2分後、PET挟み込み体を開き、グラフトされたPVDF膜を水のトレイに浸漬し、DI水を3回交換して、未反応モノマーの膜を洗浄し、次いで空気乾燥させた。グラフトされたPEGジアクリレートに加えて、ビニルジメチルアズラクトン−アリルアミン付加物、CH=CH−(CO)NHC(CH(CO)NH−CH−CH=CHは、基材;即ち、基材−CHCH−(CO)NHC(CH(CO)NH−CH−CH=CHの表面に直接グラフトされることができ、末端アリル基を、求電子性末端ブロモ基(−CHCHCHBr及び/又は−CHCHBrCH)に変換し、リガンド化合物とのその後の反応を可能にすると考えられる。グラフト化の際、ジメチルアズラクトン−アリルアミン付加物はまた、重合して、複数のペンダント−(CO)NHC(CH(CO)NH−CH−CH=CH基を有するグラフトされたアクリレートポリマーを作製することができ、これらはまた、末端ブロモ基にも変換されてよい。ジメチルアズラクトン−アリルアミン付加物はまた、PEGジアクリレートからの任意の未反応アクリレート基と重合することができる。
【0116】
6インチ(15cm)×7インチ(18cm)の、アリル官能性PVDF膜のサンプルを、500mLのポリエチレン製の瓶に入れ、10グラム/LのN−ブロモスクシンイミドの脱イオン水溶液500mLで被覆した。瓶を封止し、混合物を室温で一晩静置した。過剰の溶液を捨て、膜を脱イオン水流下で30分間洗浄した。次いで、瓶に10重量%のポリエチレンイミン(PEI)の脱イオン水溶液を入れ、瓶を封止し、混合物を周囲温度で4日間転倒させながら混転した。過剰の溶液をデカントし、瓶に脱イオン水を入れて、30分間静置させ、再度デカントした。このプロセスを更に4回繰り返して、誘導体化された膜を十分洗浄し、次いで膜を空気乾燥させた。
【0117】
(実施例4)
一般的な手順を用いた以下の実施例は、同一出願人の同時係属出願である米国特許出願公開第2009/0098359号に記載されており、これは、全文を参照することにより本明細書に援用される。
【0118】
PVDF多孔質基材に、Sartomer Inc.(Exton)からPA SR−344(商標)として入手可能な10.0重量%のPEG 400ジアクリレートモノマー、及び90.0重量%のメタノールを含有する溶液を吸収させた。次に、被覆された多孔質基材を約100マイクロメートルの厚さを有するPETフィルムの2層(第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で置いた。除去可能な第1の層及び除去可能な第2の層を、被覆された多孔質基材の相対する面上に任意の過剰な溶液とともにそれぞれ置き、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。この多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により、電圧300keVで20kGyの線量で照射した。照射の2分後、親水性官能化多孔質基材を、第1及び第2のPET層から取り外した。膜を水のトレイに浸漬し、DI水を3回交換して、未反応モノマーの膜を洗浄し、次いで空気乾燥させて、グラフトされた親水性ポリ(エチレンオキシド)基を有する基材を得た。
【0119】
1%のVAZPIA光開始剤及び5%の3−(アクリロイル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(Ac−Mac)を含む2つの官能性重合性フリーラジカル活性モノマーをメタノール中で組み合わせてコーティング溶液を作製し、同じ手順を用いて工程1の親水性PVDF膜に吸収させた。溶液で満たされた膜を、電圧300keVに設定された40kGyの電子線に再度供し、これらのモノマーをPVDF基材の表面にグラフトする。2分後、PET挟み込み体を開き、次いでグラフトされたPVDF膜を空気乾燥させ、洗浄せずに、グラフトされた光開始基及びグラフトされたメタクリレート基を有する膜を作製する。
【0120】
より速やかに反応するアクリレートモノマー部分を有するAc−Macが、電子線プロセスを用いて、支持表面に優先的にグラフトされる。これは、後にUVプロセスで重合させるために、Ac−Macのより緩徐なメタクリレート部分のほとんどを遊離させる。光開始剤VAZPIAも、工程2でグラフトされる。したがって、これらグラフトされた鎖は、同じ鎖に、フリーラジカル活性部分と光開始部分とを有する。第3の官能化工程では、10.0%のビニルジメチルアズラクトン−アリルアミン付加物、20%のDI水、及び70%のメタノールを含有するコーティング溶液を、工程1及び2のグラフトされたTIPS PVDF多孔質膜に吸収させた。再度多孔質フィルムを、PETフィルム間に「濡れた状態で」挟み、任意の過剰の溶液で閉鎖し、又はローラを用いて捕捉された気泡を除去した。次に、UVAランプを用いるQuantum Technologies(Quant 48)システムを使用して、サンプルに紫外線照射し、1分当たり約1フィート(30.4cm)(4フィート(1.2メートル)の曝露長、31mW/cmにて片面)の速度でUVプロセッサの下を移動させた。サンプル挟み込み体を反転し、再び同一速度で移動させた。UV照射後、グラフトされた多孔質膜を挟み込み体から取り出し、トレイの水に浸漬させ、これを清浄な水と3回交換することにより、洗浄した。官能化膜を空気乾燥させた。得られた膜は、基材の表面上にグラフトされた、グラフトされたジメチルアズラクトン−アリルアミン付加物を有する。このようなグラフト化は、グラフトされた光開始剤モノマー、又はグラフトされたAcMacモノマーのメタクリレート基から生じるフリーラジカルにより開始されてよい。再び、ジメチルアズラクトン−アリルアミン付加物は、それぞれのアクリレートポリマー単位からペンダント−(CO)NHC(CH(CO)NH−CH−CH=CH基を有するグラフトされたアクリレートポリマーを生成することができる。
【0121】
6インチ(15cm)×7インチ(18cm)の、アリル官能性PVDF膜のサンプルを、実施例3の手順に従ってPEIを用いてグラフトした。
【0122】
(実施例5〜6)
PVDF多孔質基材に、SR−344(商標)として入手可能な10.0重量%のPEG 400ジアクリレートモノマー、及び90.0重量%のメタノールを含有する溶液を吸収させた。次いで、コーティングされた多孔質基材を、約100マイクロメートルの厚さの2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(第1の層及び第2の層)の間に「濡れた状態で」置いた。除去可能な第1の層及び除去可能な第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に任意の過剰な溶液とともにそれぞれ置き、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。この多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により、電圧300keVで20kGyの線量で照射した。照射の2分後、親水性官能化多孔質基材を、第1及び第2のPET層から除去した。この膜を水のトレイ中に漬けて、脱イオン水を2回交換し、未反応モノマーの膜を洗浄し、引き続いて風乾した。
【0123】
次いで、得られた親水性膜を、2種の代替手順のそれぞれにより2回目のグラフトをした。
【0124】
直接膜を再度挟み、20%のグリシジルメタクリレートのメタノール溶液を吸収させ、電子ビームに通し、加速電圧300kVで、40kGyの線量を受けさせた。グラフトされた膜を除去し、イソプロパノールで2回洗浄し、乾燥させた。
【0125】
間接膜を、グローブボックス中のジップロック袋に入れ、40ppm未満の酸素雰囲気下で封止した。封止した袋は、グローブボックスから取り出され、電子ビームに通し、電圧300kVの40kGyの線量を受けさせた。封止した袋をグローブボックスに再度入れ、40ppm未満の酸素雰囲気下で開き、膜を取り出し、別の未照射ジップロック袋に入れ、十分な20%グリシジルメタクリレート(GMA)メタノール溶液を吸収させて、膜を湿潤させた。袋を封止して蒸発を防ぎ、吸収した膜を4時間静置し、次いで取り出し、イソプロパノールで2回洗浄し、乾燥させた。
【0126】
約6インチ(15cm)×7インチ(18cm)のオキシラン官能性PVDF膜のサンプルを、10重量%のPEI脱イオン水溶液と24時間反応させることにより、PEIと反応させ、次いで実施例3で指示したように洗浄し、空気乾燥させた。
【0127】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面から伸長するグラフトされたポリエチレンイミンリガンド基とを備える物品。
【請求項2】
前記ポリエチレンイミンリガンド基が、以下の式のうちの1つ以上である、請求項1に記載の物品:
【化1】

式中、
「〜」は、前記基材の表面及び前記ポリエチレンイミンリガンド基にグラフトされた二価連結基であり、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜50である。
【請求項3】
前記基材の表面上にグラフトされた四級アンモニウム基を更に備える、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記基材が、多孔質基材である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記多孔質基材が、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ、又は多孔質繊維から選択される、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記基材が、熱可塑性及び多糖類ポリマーから選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記ポリ(エチレンイミン)基が、式−(CHCHNH)−、式中、yは、少なくとも2である、のy個の繰り返し単位を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
a)前記基材の表面から伸長するグラフトされた求電子性官能基を有する置換基材と、b)リガンド化合物:
【化2】

式中、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、との反応生成物を含む物品。
【請求項9】
格子間及び外表面を有する多孔質ベース基材と、前記多孔質ベース基材の表面から伸長するグラフトされたリガンド基と、を備える物品であって、前記グラフトされたリガンド基が、グラフトされた求電子性官能基と、リガンド化合物:
【化3】

式中、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、との反応生成物を含む物品。
【請求項10】
前記グラフトされた求電子性官能基が、(i)エポキシ基又は開環エポキシ連結基、(ii)アズラクトン基又は開環アズラクトン連結基、(iii)イソシアナト基、又は(iv)ハロ基から選択される、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
グラフトされたイオン性又は親水性基を更に含む、請求項9に記載の物品。
【請求項12】
前記グラフトされたイオン性基が、グラフトされた四級アンモニウム基である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記多孔質ベース基材が、微小多孔性である、請求項9に記載の物品。
【請求項14】
前記物品が、グラフトされた親水性基を更に備える、請求項9に記載の物品。
【請求項15】
前記多孔質ベース基材が、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ、又は多孔質繊維を含む、請求項9に記載の物品。
【請求項16】
前記グラフトされた種が、(a)エポキシ基、イソシアナト基、又はアズラクトン基を含む第1のグラフトされた求電子性官能基と、(b)リガンド化合物:
【化4】

式中、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、との反応生成物を含む、請求項9に記載の物品。
【請求項17】
リガンド官能基材を調製する方法であって、
1)熱可塑性又は多糖類ポリマー基材を提供する工程と、
2)官能基を基材の表面にグラフト化して、前記基材の表面(1つ又は複数)から伸長するグラフトされた求電子性官能基を有する基材を作製する工程と、
3)前記グラフトされた求電子性官能基とリガンド化合物:
【化5】

式中、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、とを反応させて、
前記基材の表面(1つ又は複数)から伸長するグラフトされたリガンド基を有する基材を作製する工程と、を含む方法。
【請求項18】
1)格子間及び外表面を有する多糖類基材を提供する工程と、
2)前記多糖類ベース基材と、前記多糖類基材のヒドロキシル基と反応する第1の官能基、及び第2の求電子性官能基を有するグラフト化化合物とを接触させて、グラフトされた求電子性基を有する表面修飾多糖類基材を作製する工程と、
3)前記表面修飾多糖類基材と、リガンド化合物:
【化6】

式中、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、とを接触させる工程と、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
リガンド官能基材を調製する方法であって、
1)多糖類多孔質基材を提供する工程と、
2)前記多糖類基材と、前記多糖類基材のヒドロキシル基と反応する第1の官能基、及び第2のエチレン性不飽和基を有するグラフト化化合物とを接触させて、グラフトされたエチレン性不飽和基を有する基材を作製する工程と、
3)グラフトされたエチレン性不飽和基を有する前記基材と、臭素化剤とを接触させて、グラフトされたブロモ基を有する基材を作製する工程と、
4)グラフトされたブロモ基を有する前記基材と、リガンド化合物:
【化7】

式中、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、とを接触させる工程と、を含む方法。
【請求項20】
前記グラフト化化合物が、グリシジルアリルエーテルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
リガンド官能基材を調製する方法であって、
1)熱可塑性ポリマー基材を提供する工程と、
2)電離放射線により、官能基を基材の表面にグラフト化して、前記基材の表面(1つ又は複数)から伸長するグラフトされた求電子性官能基を有する基材を作製する工程と、
3)前記グラフトされた官能基とリガンド化合物:
【化8】

式中、
x及びyは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、とを反応させて、
前記基材の表面(1つ又は複数)から伸長するグラフトされたリガンド基を有する基材を作製する工程と、を含む方法。
【請求項22】
a)多孔質熱可塑性ポリマーベース基材を提供する工程と、
b)前記多孔質熱可塑性ポリマーベース基材に第1の溶液を吸収させて、吸収多孔質ベース基材を形成する工程であって、前記第1の溶液が、(a)フリーラジカル重合性基及び(b)更なる求電子性官能基を有する少なくとも1つのグラフト化モノマーを含む工程と、
c)グラフトされた求電子性官能基を有する第1の官能化基材を形成するために、前記吸収多孔質ベース基材を、制御された量の電子ビーム照射に曝露する工程と、
d)前記グラフトされた求電子性官能基を有する官能化基材を、リガンド化合物:
【化9】

式中、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、と反応させる工程と、を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記吸収溶液が、(a)フリーラジカル重合性基及び(b)イオン性基又は親水性基を有する第2のグラフト化モノマーを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の官能化基材に第2の溶液を吸収させて、第1の吸収官能化基材を形成する工程であって、前記第2の溶液が、(a)フリーラジカル重合性基及び(b)第2の四級アンモニウム基を有する第2のグラフト化モノマーを含む工程と、
多孔質ベース基材の表面に結合したグラフトされた四級アンモニウム基を含む第2の官能化基材を形成するために、第1の吸収官能化基材を、制御された量の電子ビーム照射に曝露する工程と、を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記グラフトされたポリエチレンイミンリガンド基が、以下の式のうちの1つ以上である、請求項21に記載の方法:
【化10】

式中、
「〜」は、前記基材の表面及び前記ポリエチレンイミンリガンド基にグラフトされた二価連結基であり、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜50である。
【請求項26】
前記基材の表面上にグラフトされた四級アンモニウム基を更に備える、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記基材が、多孔質基材である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記多孔質基材が、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ又は多孔質繊維から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリ(エチレンイミン)基が、式−(CHCHNH)−、式中、yは、少なくとも2である、のy個の繰り返し単位を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
グラフトされた親水性基を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記グラフトされた親水性基が、グラフトされたポリ(アルキレンオキシド)基である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記多孔質基材が、微小多孔性基材である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリ(フッ化ビニリデン)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
請求項21に記載の方法により調製される物品。
【請求項35】
格子間及び外表面を有する多孔質熱可塑性ベース基材と、前記多孔質ベース基材の表面から伸長する放射線グラフトされたリガンド基と、を備える物品であって、前記グラフトされたリガンド基が、グラフトされた求電子性官能基と、リガンド化合物:
【化11】

式中、
xは、ゼロであってよく、yは、少なくとも1であり、x+yは、2〜2000である、との反応生成物を含む物品。
【請求項36】
前記グラフトされた求電子性官能基が、(i)エポキシ基又は開環エポキシ連結基、(ii)アズラクトン基又は開環アズラクトン連結基、(iii)イソシアナト基、又は(iv)ハロ基から選択される、請求項35に記載の物品。
【請求項37】
前記多孔質ベース基材が、微小多孔性である、請求項35に記載の物品。
【請求項38】
前記物品が、親水性である、請求項35に記載の物品。
【請求項39】
前記多孔質ベース基材が、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ、又は多孔質繊維を含む、請求項35に記載の物品。
【請求項40】
前記電離放射線グラフトされた求電子性官能基が、エポキシ基、開環エポキシ基、イソシアナト基、アズラクトン基、又は開環アズラクトン基を含む、請求項35に記載の物品。
【請求項41】
グラフトされたイオン性又は親水性基を更に含む、請求項35に記載の物品。
【請求項42】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリ(フッ化ビニリデン)を含む、請求項35に記載の物品。

【公表番号】特表2012−503087(P2012−503087A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527998(P2011−527998)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/057484
【国際公開番号】WO2010/033807
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【出願人】(506097988)ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション (14)
【Fターム(参考)】