説明

リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質、それらの使用およびそれらの調製方法

特に栄養学的、医学的、美容的または生物学的関連用途のための、例えば物質の成分に関連する欠乏の治療のため、または物質に結合することができる内因性物質の除去のための、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質およびそれらの使用が開示される。本発明はさらに、物質の調製方法ならびにそれらの物理化学的特性およびそれらの医療上の使用を最適化する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に栄養学的、医学的、美容的または生物学的関連用途のための、例えば物質の成分に関連する欠乏の治療のため、または物質に結合することができる内因性物質の除去のための、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質(ligand-modified poly oxo-hydroxy metal ion materials)およびそれらの使用に関する。本発明はさらに、物質の調製方法ならびにそれらの物理化学的特性およびそれらの医療上の使用を最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄欠乏は、今日世界で最も一般的な微量栄養素欠乏であり、40億を超える人に世界的に影響を与えている。世界人口の30%を超える20億人が貧血であると推測されている(WHO、http://www.who.int/nut/ida.htm、2005年12月20日アクセス)。鉄欠乏は、発展途上国にのみ限定される問題ではない。ヨーロッパ諸国で実施された疫学的調査によって、鉄欠乏は、月経中の女性の10〜30%および鉄欠乏性貧血(IDA)1.5〜14%に関係することが示されている(Hercbergら、2001年;Goddardら、2005年)。鉄欠乏性貧血は、知的能力の低下、体力低下、温度調節の変化、妊娠発生の変化、ならびに免疫および代謝機能の低下をもたらす恐れがあり、これらはすべて生活の質および健康経済に影響を及ぼす(Edgertonら、1979年;Hercbergら、2001年;Scholzら、1997年)。簡単で軽度のIDAのための標準的な一次治療は、一般に、経口による硫酸第一鉄の補給である。
【0003】
より複雑または重篤な鉄欠乏は、鉄静注または輸血で治療することができるが、その後の管理には、経口鉄製剤が用いられる。経口鉄製剤の広範な使用にもかかわらず、それらの有効性は低い。これは、(i)変化しやすい吸収特性、および(ii)コンプライアンスの低下をもたらす副作用による。鉄欠乏の予防のための戦略には、鉄強化食品の使用が含まれる。一般に使用される強化剤には、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、EDTA第二鉄ナトリウムおよびピロリン酸第二鉄が含まれる。しかし、強化戦略にもかかわらず、鉄欠乏は依然として一般的な世界的問題であり、したがって安価で効果的な栄養補給剤が必要とされている。
【0004】
WO2005/000210には、新しく沈殿した水酸化鉄が、その後糖分子と凝集して第2の錯体を形成するときに形成される、高分子量の鉄サッカリド錯体の合成が記載されている。これらの錯体は、凝集混合物であることが認知されている。
【0005】
WO03/031635は、グルコン酸カルシウムを調製するための酵素法に関するものであり、その結晶は、純度が高く溶解度が高い。
【0006】
US2005/0209322には、鉄の静脈内投与のためのグルコン酸第二鉄ナトリウム錯体の製造方法が記載されており、該方法は、水酸化第二鉄を調製する最初のステップと、リガンドであるグルコン酸ナトリウムと反応させるその後のステップを必要とする。US2005/0209187は、グルコン酸鉄錯体ではなく鉄スクロース錯体を製造するための類似の方法に関する。
【0007】
US2003/0049284には、物質が改善された栄養補給剤の栄養特性を有するように、α−アミノ酸との反応によってα−ヒドロキシカルボン酸の塩の溶解度を増大する方法が記載されている。
【0008】
US3,679,377は、植物の栄養溶液中の農学的に効果的な鉄の供給源を、可溶性の第二鉄スルファト(sulfato)ヒドロキシル錯体アニオンとして提供することに関する。生成される物質は、従来のリガンド−金属イオン錯体である。
【0009】
DE20 2005 014332U1には、既存の物質の中またはその上へのナノ粉末の噴射噴霧またはコーティングによるポリマー複合体の形成などの、物質工学における金属−有機ナノ粉末の使用が開示されている。
【0010】
Jugdaohsinghら(2004年)には、液相反応を利用する臨界沈殿アッセイが記載されており、その中では有機酸が、中性pH周辺において重合過程中にアルミニウム原子間のオキソ架橋の形成と競合し、ポリヒドロキシアルミニウム種の成長を制限し、その分岐を減少させる(Jugdaohsinghら(2004年);Powellら(2004年))。該アッセイは、この過程を妨害するリガンドの効率が、アルミニウムに対するその親和性に関係することから有用である。この文献では、ポリヒドロキシアルミニウム種の液相成長中に、「競合するリガンド」がポリマー内に取り込まれるようになることも記された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
概して本発明は、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を調製し、それらの物理化学的特性を最適化する方法に関する。その組成物は、一般に、Mが1つまたは複数の金属イオンを表し、Lが1つまたは複数のリガンドを表し、OHがオキソ基またはヒドロキシ基を表す式(M(OH))で表されるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を含み、栄養学的、医学的、美容的または他の生物学的関連用途において使用することができる。これらには、物質自体の送達、または金属イオンなどの物質の成分の送達のための、栄養補給剤もしくは強化剤もしくは食品添加物としての物質の使用、または成分を除去もしくは阻害し、成分が引き起こし得る任意の望ましくない作用を緩和するための物質の使用が含まれる。
【0012】
本明細書に開示のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質は、かかる使用に関して当技術分野でこれまでに説明されておらず、かつ中でも構造上、分光学上または組成上のパラメータを参照して(即ち物質の分析的特徴を使用して)、もしくは物質が得られた方法によって定義することができる新しい形態の物質を構成する。したがって、金属オキソ水酸化物粉末は、無機化学分野では非常によく知られているが、本発明では、新しい物質を生成し、新しい適用に使用するために、それらを生物学的に適合するリガンド(即ちオキソ基またはヒドロキシ基以外)によって修飾して、それらの物理および/または化学特性を変える。物質を最適化し生成するために使用する独特の方法の一部として、(i)物質が、溶液(例えば水溶液)からの沈殿後に固体として回収されること、および(ii)ポリオキソヒドロキシ金属イオン固相へのリガンドの取込みが、関与するリガンドの少なくとも1つについては、正式な識別可能な結合を介することが顕著である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって本発明は、例えばJugdaohsinghら(2004年)に開示の臨界沈殿アッセイとは異なっているが、それはそのアッセイが溶液中で実施され、沈殿物質がその後単離されず、またはさらに使用されなかったことが理由である。それとは対照的に、本発明では、ポリマーの形成がその沈殿点まで継続し、次いで様々な用途において特徴付けられ、使用される固体物質となる。さらに本発明者らは、乾燥した固相物質が、物質の生成に使用される正確な溶液条件、例えばリガンド(複数可)の選択およびそれらの濃度対金属イオンの濃度に敏感に依存する物理化学的特性を示すことを見出した。これらの物質は、予測できるように、微妙に異なる結晶化度、したがって微妙に異なる物質特性を有する金属酸化物/水酸化物であるというだけではなく、リガンド(複数可)が、オキソ基またはヒドロキシ基の置換を介してポリオキソヒドロキシ金属イオン沈殿物のマトリックス内に取り込まれる。これは、一般に非化学量論的であるが、それにもかかわらず正式な結合を介して生じ、固体の化学的性質、結晶化度および物質特性に明確で新規な変化をもたらす。したがって、本発明に従って生成された組成物は、化学的に新規な存在であり、金属酸化物/水酸化物の結晶化度を変化させた単なる結果ではない。驚くべきことに、沈殿条件からでは、固体の再溶解条件などの固体の特性は容易に予測されず、例えばこの系を使用して、pH7で物質を沈殿させることが完全に可能であるが、この物質は、わずかに多量の溶液のみを使用して、または溶液の化学的性質にわずかな変化を起こすことにより、pH7において完全に再水和することもできる。それにもかかわらず、正確に同じ反応条件下で、物質は高い再現性で形成される。したがって、本発明の根本的な考えは、特定の物質特性が必要とされる医療、栄養または化粧などの多様な生体用途に正確に合わせて調整された物理化学的特性を有するM:L:OH固体を生成するために、この方法を使用できるというものである。この手法はこれまでに開示されておらず、驚くべきことには、沈殿過程におけるかかる微妙な変化によって、使用できる固相に適切な変化をもたらすことができ、正確に合わせて調整したかかる物理化学(例えば溶解)特徴または特性が生まれる。
【0014】
したがって第1の態様では、本発明は、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質(M(OH))の生成方法を提供し、ここで、Mは1つまたは複数の金属イオンを表し、Lは1つまたは複数のリガンドを表し、OHはオキソ基またはヒドロキシ基を表し、全体としてのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質は、1つまたは複数の再現可能な物理化学的特性を有し、少なくとも1つのリガンドについて物理学的分析技術によって検出され得るM−L結合を示し、
該方法は、
(a)成分が可溶性を示す第1のpH(A)において、金属イオンMおよびリガンドLを混合するステップ、
(b)pH(A)を第2のpH(B)に変化させて、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の固体沈殿物を形成させるステップ、ならびに
(c)ステップ(b)で生成されたリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を分離し、任意選択で乾燥させるステップ
を含む。
【0015】
例えば、本発明の方法によって生成される物質は、栄養学的、医学的、美容的または他の生物学的関連用途において使用することができる。かかる用途の好ましい一例は、例えば成分中の欠乏を修正するために、または成分が対象に有益な効果をもたらすように物質を使用して、該物質または金属イオンもしくはリガンドなどのその一部を対象に送達することである。一代替例は、物質を使用して、該物質が導入される系に存在し得る成分と結合するか、または該成分を封鎖し、それによってその成分を除去または阻害し、該成分が引き起こし得る任意の望ましくない作用を緩和することである。このことを鑑みると、本方法は、対象に投与するための組成物に、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を配合するさらなるステップを含むことができる。
【0016】
本発明の任意の態様では、本明細書に開示の方法を使用して、物質の物理化学的特性を設計するまたは最適化する、例えば物質の溶解プロファイルもしくは吸着プロファイルまたは類似の特性を制御することができる。本明細書に記載の方法の大きな利点は、それらが、かかる最適化の試験に極めて適していることである。
【0017】
したがってさらなる一態様では、本発明は、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を生成し、該物質の所望の物理化学的特性を最適化して、栄養学的、医学的、美容的または生物学的関連用途に該物質を適合させる方法を提供し、ここでリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質は、Mが1つまたは複数の金属イオンを表し、Lが1つまたは複数のリガンドを表し、OHがオキソ基またはヒドロキシ基を表す式(M(OH))によって表され、全体としてのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質は、1つまたは複数の再現可能な物理化学的特性を有し、少なくとも1つのリガンドについて物理学的分析技術によって検出され得るM−L結合を示し、
該方法は、
(a)反応媒体中、成分が可溶性を示す第1のpH(A)において、金属イオン(複数可)Mおよびリガンド(複数可)Lを混合するステップ、
(b)pH(A)を第2のpH(B)に変化させて、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質の固体沈殿物を形成させるステップ、
(c)ステップ(b)で生成されたリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を分離し、任意選択で乾燥させるステップ、
(d)沈殿したリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の所望の物理化学的特性(複数可)を試験するステップ、ならびに
(e)
(i)ステップ(a)で供給された金属イオン(複数可)(M)および/もしくはリガンド(複数可)(L)の種類または濃度、ならびに/または
(ii)ステップ(a)で供給された金属イオン(複数可)(M)対リガンド(複数可)(L)の比、ならびに/または
(iii)pH(A)、ならびに/または
(iv)pH(B)、ならびに/または
(v)pH(A)からpH(B)への変化速度、ならびに/または
(vi)緩衝剤の有無または濃度
の1つまたは複数を変えることによってステップ(a)〜(d)を必要な限り反復するステップ
を含み、それによって所望の物理化学的特性を有するリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を生成する。
【0018】
可能な金属イオンおよびリガンドの例を以下に提示する。いくつかの実施形態では、本発明の物質は、2つ以上の種類の金属イオンまたはリガンド、例えば2、3、4または5種類の異なる金属イオンまたはリガンドを採用することができる。さらにいくつかの実施形態では、リガンド(複数可)Lは、以下により詳細に記載するように、いくつかの緩衝能力を有することもできる。
【0019】
前記物質の所望の物理化学的特性を最適化して、それを応用する方法の一部として、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の生成方法に使用される物理学的または化学的反応条件、例えば反応温度、溶液のイオン含有量およびイオン強度、溶液の緩衝能力(例えば、実施例に示すようにMOPSなどの緩衝剤を使用する)、または反応剤を混合するために使用される条件および装置を変化させて、前記物質の1つまたは複数の特性にこれが影響を及ぼすかどうか、およびどのように及ぼすかを決定することが望ましい。
【0020】
さらなる一態様では、本発明は、対象に投与するためのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の生成方法を提供し、該方法は、本明細書に開示の方法に従ってリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を最適化するステップ、バルクとしてリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を製造するさらなるステップ、および/またはリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を組成物に配合するステップを含む。
【0021】
一実施形態では、例えば鉄栄養補給剤、強化剤または治療剤として使用するための第二鉄組成物を、例えば最適化し生成するために、本発明の方法を使用している。当技術分野で一般に使用されるように、栄養補給剤は、無機物または他の食物成分の欠乏を修正し、予防しまたはそれに備えるために、対象によって摂取される栄養組成物である。強化剤は、栄養補給剤といくらか類似しているが、一般には食品の栄養価を改善するために食品に日常的に添加される組成物に適用され、例えば食卓塩へのヨウ化物の添加、朝食のシリアルへのビタミンB群の添加、またはシリアル製品への鉄の添加がある。さらにこれらの組成物は、通常は無機物または他の食物成分の欠乏によって生じる病変または状態の予防または治療に関連して、治療目的で使用することができる。鉄の場合、本明細書に開示の第二鉄組成物は、栄養補給剤、強化剤または治療組成物として、例えば妊娠中または閉経前の女性、癌または炎症性疾患の鉄欠乏の治療に使用することができる。かかる治療は、一般に経口投与または静脈投与される。
【0022】
したがって一態様では、本発明はさらに、対象に投与するための第二鉄組成物を提供し、該組成物は、MがFe3+イオンを含む1つまたは複数の金属イオンを表し、Lが1つまたは複数のリガンドを表し、OHがオキソ基またはヒドロキシ基を表す式(M(OH))によって表され、オキソ基またはヒドロキシ基が実質的にランダムにリガンドLで置換され、1つまたは複数の再現可能な物理化学的特性および物理学的分析を使用して実証可能なM−L結合を有するリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を含む。
【0023】
一般に有用な食品用鉄栄養補給剤は、単なる第一鉄の塩のいくつかの特徴、即ちコストが比較的低く、適度に良好に吸収されるが、同時に比較的酸化還元活性が低く、したがって副作用の発生が少ないという特徴を共有する必要がある。いくつかの第二鉄の塩は、それらが既に酸化されており、したがって酸化還元活性を受けにくいため、上記の欠点がを有していない。これは、胃腸内腔においては、鉄還元の開始よりも鉄酸化の開始の方が起こりやすいためである。さらに、粘膜タンパク質DcytBを介する粘膜内での第二鉄の制御された還元が、鉄が循環系に入るための律速段階となり得るため、循環系の非トランスフェリン結合鉄(NTBI)の生成が低下するであろう。NTBIは、循環系、内皮および更なる脈管系器官における酸化的損傷をもたらす恐れがある。しかし、単なる第二鉄の塩は効率的な栄養補給剤ではない。それらが胃で急速に溶解した後に、小腸でそれらの吸収を阻害する濃度依存性のオキソヒドロキシ重合が生じるからである。したがって第二鉄の塩、一般に塩化第二鉄は、いくつかの食品の強化剤として試されてきたが、小腸への第二鉄イオンの送達がボーラス用量では制御されないため、これらは栄養補給用量または治療用量では吸収されにくい。例えば、マルトールでの第二鉄のキレート化は、ボーラス用量での小腸におけるこの溶解度の問題を克服する一助になり得るが、生成コストにより市販可能であることは証明されていない(WO03/097627)。さらに、マルトールなどのキレート剤の安全性に対する懸念がある。本明細書に開示の組成物は、かかる吸収性、安全性、副作用および生成コストの問題を克服するように設計されている。したがって、これらのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質は、小腸環境と比較して胃の環境において異なる溶解プロファイルを有するように調整することができる。このように、後に小腸における望ましくない鉄のボーラス送達をもたらす、単なる第一鉄および第二鉄を含む塩で生じるような胃での急速な溶解は、これらの物質の設計によって回避することができる。溶解pHおよび溶解速度の両方を、要件に合うように設計することができる。潜在的には、これらの固相リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質は、鉄必要量を「感知する」ように調製することができよう。腸管内腔から循環系への鉄の吸収は、鉄を必要とする個体において生じる。鉄を必要としない人では、ほとんどまたはまったく吸収されず、内腔にさらなる鉄が残存することになろう。これらの固相リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の溶解または脱凝集は、水和鉄が少ない環境では効率的だが、水和鉄が多い環境では非効率的に溶解または脱凝集するように「設定」することができよう。これは、鉄を必要とする人において吸収を損なうことなく副作用を低減する一助にもなろう。胃腸条件下でこれらの物質が溶解または脱凝集するように設計されるかどうかは、可溶性の鉄および非常に小さい水和鉄粒子の両方が吸収され得るような腸内鉄吸収の最適な様式に依存するが、いずれにしてもリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質はそのように設計することができよう。
【0024】
さらなる一態様では、本発明は、対象に金属イオンを治療送達するための医薬品の調製における、本明細書に開示の方法によって得られるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質(M(OH))の組成物の使用を提供する。あるいは、本発明は、対象に金属イオンを送達するための、本明細書に開示の方法によって得られるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質(M(OH))を提供する。
【0025】
本明細書に開示のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の使用の例には、以下に限定されるものではないが、食品用無機物栄養補給剤および強化剤;治療用無機物栄養補給剤(例えば静脈内および経口経路によって投与されるものとして);薬物、栄養剤または化粧品用担体/共錯体(co-complex);リン酸塩結合剤;他の結合剤または封鎖剤用途;食品添加物;制汗剤;日焼け防止剤;ワクチンアジュバント;免疫調節剤;剥離剤を含む直接的な化粧品用途;骨および歯の充填剤/セメント;小線源治療を含むインプラント物質、ならびに造影剤としての使用が含まれる。
【0026】
ここで本発明の実施形態を、添付の図および実施例を参照して、限定することなく例示によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の形成に対する、弱い(コハク酸、黒色の四角)、中程度(リンゴ酸、白色の丸)および強い(マルトール、黒色の三角)リガンドの作用(A)、ならびに「スクリーニングアッセイ」に記載の方法を使用する、pH6(黒色の棒)およびpH4(灰色の棒)における緩衝剤中の湿潤固体物質の脱凝集(B)の例を示す図である。示されている比は、M:L比であり、物質の形成に合わせて選択されたものである。最初の溶液中(沈殿前)の鉄濃度は27mMであった。
【図2】滴定プロトコル:リガンドなし(白色の丸)、酒石酸(黒色の四角)およびリンゴ酸(黒色の三角)として記載される、pHの増大を伴うリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の沈殿の進展に対する、異なるリガンドの作用を示す図である。すべてを50mMのMOPSおよび0.9%w/vのNaCl中で調製した。最初の溶液中(沈殿前)の鉄濃度は27mMであった。
【図3】リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の調製中の、示した緩衝剤中の異なるpHにおけるこれらの湿潤物質の脱凝集に対する、最終溶液のpH変更の作用の例を示す図である。物質、即ちFeOHM−1:2−MOPS50は、0.9%w/vのNaClおよび最終pH6(灰色の棒)、pH7(縞の棒)またはpH8(黒色の棒)で、方法に記載の調製プロトコルに従って調製した。得られた沈殿率(%)は、それぞれ10%、30%および48%であった。最初の溶液中(沈殿前)の鉄濃度は27mMであった。
【図4】リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の調製における電解質の存在が、示した緩衝剤における4つの異なるpHにおいて、物質の脱凝集にどのように影響し得るかの例を示す図である。物質は、方法に記載の調製プロトコルに従って調製し、オーブンで乾燥させた。物質、即ちFeOHT−4:1−MOPS50を、pH6.5の最終溶液にて調製し、電解質の不在下(灰色の棒、n=2)または0.9%w/vのNaClの存在下(縞の棒、n=1)で形成した。得られた沈殿率(%)は、それぞれ97%および98%であった(A)。物質、即ちFeOHT−2:1−ナイアシン50を、pH3.2の最終溶液において、電解質の不在下(灰色の棒、n=2)または0.9%w/vのKClの存在下(黒色の棒、n=2)で調製した。得られた沈殿率(%)は、それぞれ88%および91%であった(B)。最初の溶液中(沈殿前)の鉄濃度は27mMであった。
【図5】リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の乾燥が、示した緩衝剤における4つの異なるpHにおいて、物質の脱凝集にどのように影響し得るかの例を示す図である。物質、即ちFeOHT−4:1−MOPS50を、電解質の不在下、pH6.5の最終溶液で、方法に記載の調製プロトコルに従って調製した。得られた沈殿率(%)は97%であった。固相を3つの一定分量に分割し、オーブン乾燥させ(灰色の棒、n=2)、または冷凍乾燥させ(黒色の棒、n=2)、または湿らせて使用した(縞の棒、n=2)。注記:いくつかの誤差棒は小さすぎて見えない。灰色の棒で示すデータは、既に図4Aに示されている。最初の溶液中(沈殿前)の鉄濃度は27mMであった。
【図6】「リガンドA」、即ち酒石酸の存在下(i)または不在下(ii)、M:L比4:1でpHの増大を伴うリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の沈殿の進展に対する、「リガンドB」の作用の例を示す図である。示した「リガンドB」は、50mMのアジピン酸(四角)または50mMのMOPS(三角)であった。すべての滴定を、方法に記載のプロトコルに従って電解質の不在下で実施した。最初の溶液中(沈殿前)の鉄濃度は27mMであった。
【図7】4つの異なる緩衝剤におけるオーブン乾燥させたリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の脱凝集に対するリガンドBの作用の例を示す図である。酒石酸がリガンドA(L)である、M:L比4:1の酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質を、50mMのMOPS(灰色の棒、n=2)、20mMの安息香酸(黒色の棒、n=3)または50mMのナイアシン(縞の棒、n=3)である異なるリガンドBの存在下、方法に記載の調製プロトコルに従って、電解質の不在下で調製した。得られた沈殿率(%)は、それぞれ97%、94%および100%であった。注記:いくつかの誤差棒は小さすぎて見えない。灰色の棒で示すデータは、既に図4Aおよび5に示されている。
【図8】使用した電解質からCを取り込み、非常に少量のNaおよびClを添加した(Cu信号は支持格子による)、主にFeおよびOである物質の組成を示すリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質(FeOHT−3:1−Ad20)のエネルギー分散X線微量分析(EDX)の図である。
【図9】固体の第二鉄オキソ水酸化物(A)、酒石酸修飾第二鉄オキソ水酸化物(B)(即ちリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質;FeOHT−4:1)および酒石酸(C)の典型的な赤外線スペクトルの図である。酒石酸のC=Oストレッチに対応するバンド(スペクトルCの1712cm−1)は、酒石酸のカルボキシレート基とFeOHT−4:1物質の鉄との間の結合の存在を示す2つのバンド(スペクトルBの1356cm−1および1615cm−1)によって置き換えられる。また、スペクトルAおよびBにおける−OHストレッチによる広いバンド約3350cm−1の存在に留意されたい。
【図10】示した時間の間、胃を模擬通過させた後の、鉄の脱凝集(限外濾過なし、A)および溶解(限外濾過あり、B)のパーセンテージを示す図である。従来技術、即ち第二鉄オキソ水酸化物(黒色の四角)、Maltofer(黒色の丸)、硫酸第一鉄(黒色の三角)を黒い記号で示す。リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質、即ちFeOHT−3:1−Ad20(白色の菱形)およびFeOHM−4:1−Bic25(白色の三角)を白い記号で示す。誤差棒はSTDEVを表している(いくつかの誤差棒は小さすぎて見えないことに留意されたい)。
【図11】組織的な結晶領域が、類似の大きさの未修飾第二鉄オキソ水酸化物(A)におけるよりも、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質(例えばFeOH−TRP15(B)および特にFeOHT−2:1−TRP15(C))において識別頻度が低いことを示す、収差補正された高角度環状暗視野の走査型透過電子顕微鏡法(superSTEM)による高解像度画像である。
【図12】同時沈殿した電解質である塩化ナトリウムは別として、Maltoferにおける鉄オキソ水酸化物結晶構造の明確な存在およびFeOHT−3:1−Ad20における検出可能な結晶構造の明確な不在を示す、Maltofer(A)およびリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質FeOHT−3:1−Ad20(B)のX線回折パターンである。明確にするために、酸化鉄および塩化ナトリウムの基準線を各グラフの下に示す。
【図13】硫酸第一鉄、第二鉄オキソ水酸化物または異なるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の摂取後の、人ボランティアの血清鉄増加(A)および鉄吸収率(%)(B)の例を示す図である。A:硫酸第一鉄(白色の三角、n=30);FeOHT−3:1−Ad20(+記号、n=4);FeOHT−2:1−TRP15(−記号、n=4);FeOHアジピン酸100(×記号、n=2);FeOHヒスチジン100(黒色の四角、n=2);FeOHM−4:1−Bic25(白色の四角、n=3);FeOHグルコン酸20(黒色の三角、n=3);FeOHT−2:1−ナイアシン50(白色の丸、n=3);FeOH(黒色の丸、n=2)。B:同じ群の試験参加者に対して、硫酸第一鉄からの鉄の推定吸収量(白色の棒)と比較した、第二鉄オキソ水酸化物またはリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質からの鉄吸収率(%)(0.80で割った58Feの赤血球取込みとして算出)(黒色の棒)。誤差棒はSEMを表す。1であったFeOHヒスチジン100群の硫酸第一鉄を除き、各対の数は2から4まで変わる。
【図14】胃および十二指腸を模擬通過させる間の、(A)従来技術の化合物、ピロリン酸第二鉄(黒色の菱形)、塩化第二鉄(黒色の四角)、第二鉄トリ−マルトール(黒色の三角)、ビスグリシン酸第一鉄(白色の四角)、ならびに(B)図13の本発明者等のインビボ試験における選択試験化合物、硫酸第一鉄(白色の四角)、FeOHT−3:1−Ad20(白色の菱形)およびFeOHM−4:1−Bic25(黒色の丸)からの鉄の脱凝集を示す図である。プロトコルの詳細については、方法のインビトロ胃腸内消化アッセイを参照。
【図15】pH1.2の胃における30分のインキュベーション(黒色の棒、n=3)またはpH7.0の小腸における60分のインキュベーション(白色の棒、n=3)後の、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の鉄脱凝集率(%)(A)および鉄溶解率(%)(B)に対する、様々なM:L比における様々なリガンドの作用の例を示す図である。誤差棒は標準偏差を表す。
【図16】方法の滴定プロトコルに記載され、出発溶液中の鉄総量に対するパーセンテージとして表現される、pHの増大に伴うリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質、即ちFeOHT−2:1−Ad20の形成の進展を示す図である。凝集物質における鉄比率(%)を黒色の三角によって示し、凝集物質、水和粒子物質両方の鉄比率(%)を黒色の四角によって示す。注記:残りの鉄(即ち凝集または水和粒子形態でない鉄)は、可溶相にある。
【図17】方法に記載のインビトロ胃腸内消化の改変アッセイによる、酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の脱凝集に対する、リガンド、M:L比および最終溶液形成のpHの作用の例を示す図である。各棒は、脱凝集した物質の粒径分布を、固相中の鉄総量の比率(%)として表す。決定された大きさの範囲は、<5nm(縞の部分)、5〜20nm(灰色の部分)、20〜300nm(黒色の部分)、および1〜10μm(白色の部分)であった。
【発明を実施するための形態】
【0028】
金属イオン(M)
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質は、Mが1つまたは複数の金属イオンを表す式(M(OH))によって表すことができる。通常、金属イオンは、元々塩の形態で存在するものであり、その塩は物質の調製において溶解することができ、次いでリガンド(L)と共にポリオキソヒドロキシ共錯体を形成するように誘発されるが、その共錯体のいくつかは、正式(formal)なM−L結合を介して固相に取り込まれ、即ちリガンド(L)のすべてがバルク物質に簡単に捕捉または吸着されるとは限らない。物質中の金属イオンの結合は、赤外線分光法などの物理学的分析技術を使用して決定することができるが、そのスペクトルは、金属イオンとリガンド(L)との結合のピーク特性、ならびにM−O、O−Hおよびリガンド種(L)の結合などの物質に存在する他の結合のピーク特性を有することになる。好ましい金属イオン(M)は、物質が使用される条件下で生物学的に適合性を示すものであり、オキソ水酸化物の形成によって水溶液から容易に沈殿できるものである。金属イオンの例には、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅、マンガン、クロムおよびアルミニウムのイオンが含まれる。特に好ましい金属イオンは第二鉄(Fe3+)である。
【0029】
本明細書に開示の第二鉄組成物を参照すると、正式な結合の存在は、粒子状結晶の鉄オキソ水酸化物が、マルトースから形成された糖の殻で取り囲まれ、したがってナノレベルの鉄オキソ水酸化物および糖の混合物にすぎない「鉄ポリマルトース」(Maltofer)などの他の生成物から、該物質を主に区別する一局面である(Heinrich(1975年);GeisserおよびMuller(1987年);Nielsenら(1994年;米国特許第3,076,798号);US20060205691)。さらに、本発明の物質は、非化学量論のリガンド取込みによって修飾された金属ポリオキソヒドロキシ種であり、したがって当技術分野で十分に報告されている数々の金属リガンド錯体と混同すべきではない(例えば、WO03/092674、WO06/037449参照)。一般には可溶性であるが、かかる錯体、例えば第二鉄トリマルトール(Harveyら(1998年)、WO03/097627);クエン酸第二鉄(WO04/074444)、および酒石酸第二鉄(BobtelskyおよびJordan(1947年))は、過飽和点において溶液から沈殿することができ、時には、ヒドロキシ基の化学量論的結合を含むことさえもある(例えば水酸化第二鉄サッカリド、米国特許第3,821,192号)。当然のことながら、金属−リガンド錯体の電荷および形状の平衡を保つためのヒドロキシ基の使用は、当技術分野で十分に報告されており(例えば、鉄ヒドロキシ−リンゴ酸、WO04/050031)、本明細書で報告されるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質とは無関係である。
【0030】
修飾なしでは、物質の一次粒子は、金属酸化物の核および金属水酸化物の表面を有し、様々な分野において、金属酸化物または金属水酸化物と呼ぶことができる。「オキソヒドロキシ」または「オキソ水酸化物」という用語の使用は、オキソ基またはヒドロキシ基の割合に言及することなく、これらの事実を認識することを意図している。したがって、ヒドロキシ酸化物も同様に使用することができよう。上記のように、本発明の物質は、金属オキソ水酸化物の一次粒子のレベルにおいて、少なくとも部分的に該一次粒子の構造内に導入されたリガンドLによって変化するものであり、即ちリガンドLによる一次粒子のドープまたは汚染が生じる。これは、一次粒子の構造がそのように変えられていない、鉄サッカリド錯体などの金属オキソ水酸化物および有機分子のナノ混合物の形成と対照的である。
【0031】
本明細書に記載のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質の一次粒子は、沈殿と呼ばれる過程によって生成される。沈殿という用語の使用は、しばしば沈降または遠心分離によって溶液から実際に分離される物質の凝集物の形成を指す。ここで「沈殿」という用語は、すべての固相物質の形成を説明するものであり、上記の凝集物および凝集しないが懸濁液に溶解しない部分として残る固体物質(それらが粒子状のコロイドであろうとサブコロイド(ナノ粒子)であろうと)を含む。かかる後者の固体物質は、水和粒子固体と呼ぶこともできる。
【0032】
本発明では、一般に臨界沈殿pHを超えて形成するポリマー構造を有する修飾金属オキソ水酸化物に言及することができる。本明細書で使用される場合、これは、物質の構造が一定の反復モノマー単位を有するという厳密な意味でポリマー状であることを示すと解釈されるべきではなく、というのは先に述べたように、リガンドの取込みは、偶然を除いて非化学量論的であるからである。リガンド種は、オキソ基またはヒドロキシ基の置換によって導入され、その結果、固相の規則性が変化する。いくつかの場合、例えば本明細書に例示の第二鉄物質の生成では、固相物質全体の規則性を低減するように、リガンド分子でオキソ基またはヒドロキシ基を置換することによって、リガンド種Lを固相構造内に導入することができる。これによってさらに、1つまたは複数の再現可能な物理化学的特性をすべての形態で有するリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質が生成されるが、該物質は、例えば対応する金属オキソ水酸化物の構造と比較して、より非晶質の性質を有する。より無秩序なまたは非晶質の構造の存在は、当技術分野で周知の技術を使用して当業者によって容易に決定され得る。例示的な一技術は、X線を回折し、パターンを生成する原子の一定の配列に依存するX線回折(XRD)であり、これはLまたはMO/MOHに対して識別しにくいピークを有する、本明細書に例示の第二鉄物質のX線回折パターンをもたらす。
【0033】
あるいはまたはさらに、物質構造の結晶化度の低減は、高分解能透過電子顕微鏡法によって決定することができる。高分解能透過電子顕微鏡法は、物質の結晶パターンを視覚的に評価できるようにする。それは初期の粒径および構造(d間隔など)を示し、非晶質物質と結晶性物質との間の分布についていくらかの情報を与えることができる。この技術を使用することによって、リガンドを取り込んでいない対応する物質と比較して、上記の化学的性質が本発明に記載の物質の非晶質相を増大することが明らかとなる。このことは、収差補正された高角度環状暗視野走査型透過電子顕微鏡法を使用して、解像度を維持しながら高いコントラストを達成することによって、したがって物質の一次粒子の表面ならびにバルクを可視化することで、特に明らかにすることができる。
【0034】
本発明の物質の再現可能な物理化学的特性または特徴は、企図する物質の用途に依存して決まることになる。本発明を使用して有効に調節することができる特性の例には、溶解(速度、pH依存性およびpM依存性)、脱凝集、吸着および吸収特性、反応性−不活性、融点、温度耐性、粒径、磁性、電気的特性、密度、光の吸収/反射特性、剛性−柔軟性、色および封入特性が含まれる。特に栄養補給剤、強化剤および無機物治療分野に関連する特性の例は、溶解プロファイル、吸着プロファイルまたは再現可能な元素比の1つまたは複数から選択される物理化学的特性である。この文脈では、反復実験が、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±2%の範囲内の標準偏差以内で再現可能である場合、特性または特徴が再現可能であるといえる。
【0035】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の溶解プロファイルは、本方法の様々な段階によって、即ち脱凝集および溶解によって表すことができる。溶解という用語は、固相から可溶相への物質の移行を説明するために使用される。より具体的には、脱凝集は、固体凝集相から、可溶相と水和粒子相の和(即ち溶液相と懸濁液相)である水和相への物質の移行を説明することを意図している。したがって、脱凝集と異なり、溶解という用語は、より具体的には、任意の固相(凝集または水和している)から可溶相への移行を表す。
【0036】
金属イオン(M)の好ましい特定の例には、以下に限定されるものではないが、周期表の2、3および5族の金属、遷移金属、重金属およびランタノイドが含まれる。例には、以下に限定されるものではないが、Ag2+、Al3+、Au3+、Be2+、Ca2+、Co2+、Cr3+、Cu2+、Eu3+、Fe3+、Mg2+、Mn2+、Ni2+、Sr2+、V5+、Zn2+、Zr2+が含まれる。さらに、これらの金属カチオンの多くは、異なる酸化状態をとるので、これらの例は、示される酸化状態に限定されないことも理解されよう。多くの場合、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質は、単一の金属イオン種、例えばFe3+を含む。
【0037】
リガンド(L)
式(M(OH))によって表される固相リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン種では、Lは、初めはそのプロトン化またはアルカリ金属形態などの形態にある1つまたは複数のリガンドまたはアニオンを表しており、これらのリガンドまたはアニオンは固相リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質に取り込むことができる。一般にこれは、例えば、リガンドが欠如しているポリオキソヒドロキシル化金属イオン種に対して、前記固体物質の物理化学的特性を変化させることの助けとなる。本発明のいくつかの実施形態では、リガンド(複数可)Lは、いくらかの緩衝能力を有することもできる。本発明で使用できるリガンドの例には、まったく以下に限定されるものではないが、アジピン酸、グルタル酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、アスパラギン酸、ピメリン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸または安息香酸などのカルボン酸;マルトール、エチルマルトールまたはバニリンなどの食品添加物;重炭酸塩、硫酸塩およびリン酸塩などのリガンド特性を備える「従来のアニオン」;ケイ酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩およびセレン酸塩などの無機リガンド;トリプトファン、グルタミン、プロリン、バリンまたはヒスチジンなどのアミノ酸;ならびに葉酸塩、アスコルビン酸塩、ピリドキシンまたはナイアシンなどの栄養素系リガンドが含まれる。一般に、リガンドは、溶液中の特定の金属イオンに対して高親和性を有するものとして、またはごくわずかな親和性を有するものとして当技術分野で十分に認識され得るものであり、あるいは所与の金属イオンに対するリガンドとしては一般にはまったく認識され得ないものである。しかし本発明では、リガンドが溶液中で活性を明らかに欠くにもかかわらず、ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質中では、一役割を担い得ることが見出された。一般に、これらの物質の生成には、金属イオンに対して異なる親和性を示す2種類のリガンドが使用されるが、特定の用途においては1、2、3、4種類またはそれ以上の種類のリガンドが有用となり得る。
【0038】
多くの用途に関しては、リガンドは、使用条件下で生物学的に適合し、一般に、反応の時点で孤立電子対を備える1つまたは複数の原子を有する必要がある。リガンドには、アニオン、弱いリガンドおよび強いリガンドが含まれる。リガンドは、反応中にいくらか固有の緩衝能力を有することができる。特定の説明に拘泥するものではないが、本発明者らは、リガンドが、(a)ヒドロキシ基の置換、即ち、物質内への強力な共有結合性の取込み、および(b)非特異的吸着(イオン対の形成)の2つの態様の
相互作用を示すと考えている。これらの2つの態様は、様々な金属リガンド親和性(即ち、前者に対する強いリガンドおよび後者に対する弱いリガンド/アニオン)に関係する可能性が高い。本発明者らの現在の取組みでは、2つのタイプのリガンドが、相乗的に物質の溶解特性を調節し、したがってことによると、物質の他の特性を決定するといういくらかの証拠がある。この場合、リガンドの2つのタイプが使用され、少なくとも一方(タイプ(a))が、物質内で金属結合を示すことを実証できる。リガンド、おそらく特にタイプ(b)リガンドの有効性は、その系の他の成分、特に電解質によって影響を受けるであろう。
【0039】
金属イオン(複数可)対リガンド(複数可)(L)の比は、固相リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属鉄物質のパラメータでもあり、これを本明細書に開示の方法に従って変更して、物質の特性を変えることができる。一般に、M:Lの有用な比は、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1および1:1と、1:2、1:3、1:4、1:5または1:10との間になる。
【0040】
ヒドロキシ基およびオキソ基
本発明は、これらのポリオキソヒドロキシ物質の形成において、表面ヒドロキシ基およびオキソ架橋を提供できる濃度で水酸化物イオンを形成する任意の方法を使用することができる。以下に限定されるものではないが、例には、ML混合物中の[OH]を増大するために添加される水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび重炭酸ナトリウムなどのアルカリ溶液、またはML混合物中の[OH]を低下させるために添加される無機酸もしくは有機酸などの酸溶液が含まれる。
【0041】
本方法で使用される条件
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を混合し沈殿させる正確な条件は、固体物質の所望の特徴に依存して変わることになる。典型的な変数は、以下のものである。
(1)出発pH(即ち、MおよびLが混合されるpH)。これは、オキソヒドロキシ重合が開始するpHと常に異なるpHである。出発pHは、好ましくはより酸性のpHであり、より好ましくはpH2未満である。
(2)オキソヒドロキシ重合が開始するpH。これは、出発pHと常に異なるpHである。オキソヒドロキシ重合が開始するpHは、好ましくは酸性のより弱いpHであり、最も好ましくはpH2を超える。
(3)最終pH。これは、通常沈殿を促進し、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の凝集を促進することができ、好ましくはオキソヒドロキシ重合が開始するpHよりも高いpHとなるであろう。オキソヒドロキシ重合の開始点と最終pH値の間にpH差が存在する場合、最終pH値に達する前に、さらなるM、L、OH、H、賦形剤または他の物質を添加してもよいことを、当業者は理解するであろう。
(4)オキソヒドロキシ重合の開始から反応の完了までのpH変化速度。これは、24時間以内、好ましくは1時間以内、最も好ましくは20分以内で生じることになる。
MおよびLの濃度。OH濃度は、オキソヒドロキシ重合中のpHによって定まるが、系に含まれるのすべてのMおよびすべてのLの濃度は、ML混合物の出発量および溶液の最終体積によって決定されることになる。一般に、これはMおよびLの両方について10−6モルを超え、より好ましくは10−3モルを超えよう。MおよびLの濃度は独立であり、最終物質の1つまたは複数の所望の特徴に合わせて選択され、特にMの濃度は、オキソヒドロキシ重合速度があまりに急速に生じ、Lの取込みを妨げるほど高すぎないように選択される。同様に、Lの濃度は、金属オキソヒドロキシ重合を防止するほど高くはない。例えば、Mが第二鉄であるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ物質は、好ましくは300mM未満、最も好ましくは200mM未満の最初の溶液の鉄濃度で生成され、1mMと300mMとの間、より好ましくは20mMと200mMとの間、最も好ましくは約40mMの第二鉄濃度範囲をもたらす。
(5)液相。本方法にとって好ましい溶液は水性であり、最も好ましくは水である。
(6)緩衝剤。溶液は、オキソヒドロキシ重合のpH範囲の安定化を助けるために緩衝剤が添加されていてもよい。緩衝剤は、無機物であっても有機物であってもよく、いくつかの実施形態では、固相物質の金属イオン(複数可)Mとの正式な結合には関与しない。あるいは、固相物質の金属イオン(複数可)Mとの正式な結合に関与する1つまたは複数のリガンドLが、最終物質の所望の組成を実現するためにさらに好ましい何らかの緩衝能力を有していてもよい。緩衝剤濃度は、500mM未満、好ましくは200mM、最も好ましくは100mM未満である。
(7)温度。好ましい温度は、0℃を超え100℃未満、一般に室温(20〜30℃)と100℃との間、最も一般には室温である。
(8)イオン強度。以下に限定されるものではないが、本方法では塩化カリウムおよび塩化ナトリウムなどの電解質を使用することができる。したがって、溶液のイオン強度は、先の(1)〜(8)に説明される成分および条件のみから導かれる範囲であってもよく、またはさらなる電解質の追加(それは最大10%(w/v)、好ましくは最大2%、最も好ましくは<1%)によって得られる範囲であってもよい。
(9)成分の混合の程度。この問題は、主に攪拌度に関係し、好ましくは出発溶液(即ちM、Lおよび緩衝剤)が、急速に混合され、その中で均質に維持されるように攪拌が行われる。
【0042】
上記の変数は、すべて沈殿物の物理化学的性質を制御することができるが、凝集の意図的阻害を伴い得る、沈殿物の回収に使用される収集系および/または賦形剤、その乾燥およびその粉砕などのさらなる変数も、その後の物質特性に影響を与え得ることを、当業者は理解するであろう。しかしこれらは、液相から固体を抽出するためのかかる任意の系に対する一般的な変数である。沈殿した物質は分離された後、さらなる配合に用いる前に、任意選択で乾燥させてもよい。しかし乾燥させた生成物は、いくらかの水を保持していてもよく、水和固相リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質の形態であってもよい。本明細書に記載のいずれの固相回収段階においても、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質と混ざるが、一次粒子を変化させず、物質の目的の機能に合わせて配合を最適化するために使用される賦形剤を添加してもよいことは、当業者には明らかであろう。これらの例は、以下に限定されるものではないが、糖脂質、リン脂質(例えばホスファチジルコリン)、糖類および多糖類、糖アルコール(例えばグリセロール)、ポリマー(例えばポリエチレングリコール(PEG))およびタウロコール酸であってよい。
【0043】
配合および使用
本発明の固相物質は、医薬、栄養、美容または個人衛生用組成物として使用するための配合を含む、広範囲な生物関連用途での使用するために配合することができる。本発明の組成物は、本発明の固相物質の1つまたは複数に加えて、医薬的に許容できる賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の物質を含むことができる。かかる物質は非毒性であるべきであり、目的の用途に用いる固相物質の有効性を妨害するものであってはならない。
【0044】
担体または他の成分の正確な性質は、組成物の投与方法または投与経路に関係し得る。これらの組成物は、以下に限定されるものではないが、経口および経直腸を含む消化管送達;注射を含む非経口送達;パッチ、クリーム等を含む経皮送達;経鼻、吸入および経ペッサリーを含む粘膜送達;またはこの目的のため、もしくは他の目的ではあるが、上記の利益をもたらす目的のために使用できる人工装具を含む、特定部位におけるインプラントによるものを含む、広範囲な送達経路によって送達することができる。
【0045】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉剤、ゲル剤または液剤の形態であり得る。錠剤は、ゼラチンなどの固体担体または助剤を含むことができる。カプセル剤は、腸溶コーティングなどの特殊な特性を有することができる。液体医薬組成物は、一般に、水、石油、動物または植物油、鉱物油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水、デキストロースもしくは他のサッカリド溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールも含まれ得る。例えば、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質が、該物質の成分の送達を制御するために固体形態に維持される必要がある場合、例えば該物質の液体配合物を製造する際などには、配合物の成分を選択しなければならない場合もある。
【0046】
静脈内、皮内もしくは皮下注射、または苦痛部位における注射に関して、活性成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口投与に許容可能な水溶液または懸濁液の形態となろう。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射、リンガー液注射、乳酸加リンガー液注射などの等張性ビヒクルを使用して、適切な溶液を調製することができよう。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤を含めることができる。
【0047】
個体に与えられる本発明に従って使用される物質および組成物は、好ましくは「予防上有効な量」または「治療上有効な量」(場合によっては、予防が治療とみなされ得るが)で投与されるが、これらの量は、個体に対する利益(例えばバイオアベイラビリティ)を示すのに十分な量である。投与される実際の量、ならびに投与率および経時的変化は、治療されるものの性質および重篤度に依存することになる。治療の処方、例えば投与量等の決定は、一般医および他の分野の医師の責任の範囲内であり、一般には治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および担当医に公知の他の因子が考慮される。前述の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、20版、2000年、Lippincott、Williams & Wilkinsに見ることができる。組成物は、治療される状態に応じて、単独で、または他の治療と組み合わせて同時にもしくは逐次的に投与することができる。
【0048】
本明細書に開示のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の使用の例には、以下に限定されるものではないが、食品用無機物栄養補給剤および強化剤;治療用無機物栄養補給剤(例えば静脈内および経口経路によって投与されるものとして);薬物、栄養剤または美容品用担体/共錯体;リン酸塩結合剤;他の結合剤または封鎖剤用途;食品添加物;制汗剤;日焼け防止剤;ワクチンアジュバント;免疫調節剤;剥離剤を含む直接的な美容品用途;骨および歯の充填剤/セメント;小線源治療を含むインプラント物質、ならびに造影剤としての使用が含まれる。
【0049】
リガンド修飾ポリオキソ水酸化物物質は、栄養上または医療上の利益のために、栄養補給剤として使用することができる。この分野では、3つの主な例がある。
(i)一般に、鉄欠乏性貧血、鉄欠乏および慢性疾患の貧血を含む適応症の治療に合わせて、経口または静脈内経路によって投与される治療用(処方用)栄養補給剤。本発明の物質の治療投与は、他の治療剤と共用してもよく、特にエリトロポエチンと併用することができる。
(ii)通常経口的に送達される栄養剤(自己処方/購入栄養補給剤)。
(iii)強化剤。これらは、購入前に食品に添加されるという点で従来の形態でもよく、または摂取時に食品に添加される(塩または胡椒のような)「振りかけ」のような最近の強化剤形態でもよい。
【0050】
すべての形式においてであるが、とりわけ強化剤に関しては、物質を目的の使用法に適合させるために、保護用コーティング(例えば脂質)の添加といった後の配合が必要となり得る。さらに、これらの栄養補給剤の形態のいずれかは、リガンド(複数可)として共に配合される物質(複数可)を使用して物質内に取り込むことによって、あるいは前記物質の捕捉/封入によって、または単に前記物質との同時送達によって、共に配合することができる。
【0051】
本明細書に記載されるように、本発明のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の特定の一用途は、無機物欠乏、例えば鉄欠乏を治療するためのものである。代替の一用途では、前記物質は、個体に存在する成分と結合するか、または該成分を封鎖するために使用することができる。例えば、本明細書に開示の第二鉄組成物を使用して、標準の血液学的および臨床化学的技術によって疑われ得るまたは診断され得る鉄欠乏または鉄欠乏性貧血の予防または治療に使用するために、個体に鉄を送達することができる。鉄欠乏および鉄欠乏性貧血は、例えば栄養不良によりもしくは鉄の過剰喪失により単独で生じることがあり、またはそれらは妊娠もしくは泌乳などのストレスに関連することがあり、またはそれらは、炎症性障害、癌および腎不全などの疾患に関連することがある。さらに、慢性疾患の貧血に関連する赤血球生成の減少は、鉄の効果的な全身送達によって改善または修正することができ、鉄とエリトロポエチンまたはその類似体との同時送達は、エリトロポエチン活性の低下を克服するのに特に有効となり得るという証拠がある。したがってさらなる例として、本明細書に開示の第二鉄組成物を使用して、慢性疾患の貧血などにおける不十分なエリトロポエチン活性の治療に使用するために、個体に鉄を送達することができる。慢性疾患の貧血は、腎不全、癌および炎症性障害などの状態に関連し得る。上記のように、鉄欠乏はこれらの障害においても一般に生じ得るものであり、したがって鉄の栄養補給による治療は、鉄欠乏単独および/または慢性疾患の貧血に対処し得るということになる。鉄栄養補給剤の医療上の使用についての上記例は限定的ではまったくないことが、当業者には認識されよう。
【0052】
実験の説明
導入
無機ミネラル系物質は、食品用栄養補給剤、リン酸塩結合剤、制酸剤、免疫アジュバント(カリミョウバン)および制汗剤(カリミョウバン)を含む、広範な生体用途を有する。これらはしばしば、溶解および/または脱凝集率などの無機物の物理化学的特性が、それらの有効性を改善する試みによって穏やかに変えられるように共に配合される。しかし本発明者らは、一次粒子(格子構造内の初期単位)のレベルにおいて、実際の構造を酸化/水酸化無機物内で修飾できる一手順を開発した。このナノ構造は、無機物の特徴に著しい変化をもたらすことができ、正確に特定された物理化学的特性を有する無機物を提供するように調整することができる。さらにその方法は安価で済み、必要に応じて大規模で適用することができる。修飾剤は、新規物質をヒトの対象に急速に導入することを可能にする、生物学的にすべて適合性のある食品用リガンドである。これらの物質の一例は、非経口および経口治療用途、ならびに強化剤および食品用栄養補給剤としての広範な役割を有することができる、新規なクラスの鉄栄養補給剤の生成物である。
【0053】
栄養補給剤に関して、本発明者らは、その栄養吸収率が食事で摂取される場合と同じ栄養素に対して見られる吸収率と類似しているということが、1つの望ましい特性であると考えている。例えば鉄では、食事による鉄吸収率は鉄の溶解率によって制御され得る。以下の実施例では、本発明者らは、制御された方式で鉄を放出する組成物を同定する目的で、本発明の方法を使用して、いくつかの異なるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を生成した。この目的は、そのどちらもが望ましくない内腔またはボーラスでの循環系への吸収において鉄が蓄積するのを防止する方式で、溶解率によって粘膜還元酵素(DcytB)に第二鉄が提供されるようにすることである。したがって本発明の第二鉄組成物は、それらが腸内で容易に酸化還元循環を受けないため、消化管での副作用が少ないはずである。さらに、前記組成物を胃のpH対腸のpHで異なって溶解するように設計する余地がある。組成物が、その環境の鉄必要量、したがって個体の鉄必要量を「感知する」ことができるように、局所体液(例えば腸管内腔)中の鉄濃度に応じて異なる速度で溶解するように該組成物を調製する可能性もある。残存した未吸収の内腔の鉄は、内腔内の望ましくない酸化還元反応性では殆ど利用されず、無害なまま糞便へと移動することになろう。
【0054】
物質の名称
実施例を通して、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の調製を述べるために、FeOHL−i:j−Lkという名称を採用した。ここでLは、鉄に対して高い溶液親和性を有するリガンドを指し、Lは、低い溶液親和性を有するリガンドを指す。i:j比は、鉄(Fe)とリガンドA(L)とのモル比を指し、kは、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の沈殿前のリガンドB(L)の溶液濃度(mM)を指す。弱いリガンド(リガンドB)のみが存在する場合、名称はFeOH Lkを使用した。例えば、FeOHT−3:1−Ad20と定義される物質は、モル比が3対1のFeと酒石酸および20mMの濃度のアジピン酸を使用して調製した。溶液中の鉄濃度は、図面の説明で別段指定されない限り40mMであった。
【0055】
材料
別段の指定がない限り、すべての化学物質を、Sigma−Aldrich、英国、ドーセットから購入した。すべての実験器具はポリプロピレン製であった。Chemgas、フランス、ブーローニュから購入した58Fe塩化第二鉄の調製に使用した58Fe元素鉄を除き、インビボ試験でのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の調製で使用した物質もSigma−Aldrich製の食品用化学物質または医薬品用化学物質で調製した。
【0056】
方法
スクリーニングアッセイ
一連の食品用リガンドを、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の形成に対するそれらの作用について、スクリーニングアッセイで試験した。簡潔には、遠心管中、固定体積の第二鉄のストック溶液(400mMのFeClと50mMのMOPS、pH1.4)を、様々な体積のリガンドのストック溶液(マルトール(200mM)を除いて400mM、ならびに50mMのMOPSおよび0.9%のNaCl)と混合して、所望の金属:リガンド比を得た。次いで、各体積を50mMのMOPSおよび0.9%のNaClの溶液と同等になるように等しく調節した。この段階で得られたすべての溶液は、pH<2.0で完全に可溶性であった。少量の一定分量を取って鉄の出発濃度を確認し、次いで濃NaOHを滴加することによってpHを〜6.5に上昇させて多量変化を回避した。2500rpmで10分間遠心分離にかけた後、一定分量の上清を取って、溶液に残存している鉄を分析した。残りの上清を廃棄し、次いでpH6(10mMのMOPS)またはpH4(10mMの酢酸)における固体体積の溶解緩衝剤を、各試験管の湿潤固体に添加し、終夜室温でインキュベートした。次いでそれらの試験管を遠心分離にかけ(2500rpmで10分間)、一定分量の上清を取って、脱凝集した鉄を測定した。各一定分量における鉄濃度を、ICPOES分析によって測定した。
【0057】
滴定実験
鉄(塩化第二鉄として)の酸性濃縮原液を、リガンドA、リガンドB、またはリガンドAとBの両方のいずれかを含有する溶液に適切な濃度で添加して、所望のM:L比を得た。いくつかの場合、電解質(例えばNaClまたはKCl)0.9%w/vも添加した。溶液を完全に混合し、「出発鉄」濃度の分析のために一定分量を収集した。溶液のpHは、常に<2.0であり、鉄は完全に可溶化した。次いで、混合物が塩基性のpH(一般に>8.0)に達するまで、常に攪拌しながらNaOHの濃縮溶液を滴加することによって、pHをゆっくり上昇させた。滴定中の異なる時点に、混合物の均質な一定分量(1mL)を収集し、エッペンドルフチューブに移した。形成したいずれの凝集も、遠心分離(13000rpmで10分)によって溶液から分離させた。上清の鉄濃度を、ICPOESによって評価した。いくつかの場合、水和粒子鉄の存在について上清を分析し、粒径分布を測定した(以下参照)。水和粒子鉄が存在した場合、その上清を限外濾過にかけ(Vivaspinカットオフ分子量3,000Daのポリエーテルスルホン膜、Sartorius Stedium Biotech GmbH、ドイツ、ゲッティンゲン)、濾液の鉄濃度、即ち「可溶性の鉄」をICPOESによって分析した。
【0058】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の調製
物質を、上記の滴定実験と同様のプロトコルに従って調製した。簡潔に述べれば、鉄の酸性濃縮原液を、リガンドA、リガンドB、またはリガンドAとBの両方のいずれかを含有する溶液に添加した。いくつかの場合、電解質0.9%w/vも添加した。溶液の「出発pH」は、通常<2.0であり、鉄は完全に可溶化した。次いで、所望の最終pHに達するまで、常に攪拌しながらNaOHの濃縮溶液を滴加することによって、pHをゆっくり上昇させた。
【0059】
固体物質をペレットとして調製する場合、すべての混合物を遠心管に移し、4500rpmで15分間回転させた。上清を廃棄し、凝集した固相をペトリディッシュに回収した。次いで必要な場合には、固体を、オーブン中45℃で最低8時間乾燥させた。あるいは、混合物(沈殿物および上清)を−20℃および0.4mbarで凍結乾燥させた。
【0060】
固体物質を水和粒子物質として調製する場合、すべての混合物を先のように凍結乾燥させ、または限外濾過(Vivaspinカットオフ分子量3000Daのポリエーテルスルホン膜、Sartorius Stedium Biotech GmbH、ドイツ、ゲッティンゲン)によって濃縮し、次いでオーブン中45℃で最低8時間空気乾燥させた。いくつかの場合、混合物を水中で透析して(1,000Daの再生成したセルロース膜Spectra/pro 7、Cole−Parmer、英国、ロンドン)、上記の乾燥過程の1つにかける前に、過剰の鉄、リガンドおよび電解質を除去した。
【0061】
重炭酸塩をリガンドBとして使用する場合、このプロトコルに変更を加えたものを使用して、酸性pHにおける重炭酸塩の変質からのCOの放出を回避した。リガンドA(適用可能な場合)および重炭酸塩を含有する出発溶液を、pH8.5で調製した。次いで、常にpH>7.5を維持するために、NaOHペレット(必要に応じて漸次混合物に添加する)と共に、鉄の適切な体積の酸性濃縮原液を滴加した。調製物の最終pHは8.5であった。
【0062】
脱凝集アッセイ
公知の量のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質を、試験管に添加した(試験管1本当たり鉄約3mg)。次いで、緩衝剤(以下参照)3mLを添加し、試験管を激しく振とうし、終夜室温でインキュベートした。水和相から凝集固相を分離するために、4500rpmで15分間遠心分離にかけた後、一定分量の上清を収集して、凝集鉄濃度を測定した。残りの上清を廃棄した。残りの物質の質量(即ち湿潤ペレット)を記録した。濃HNOをこのペレットに添加し、新しい質量を記録した。各試験管を、すべてのペレットが溶解するまで室温に静置し、ICPOES分析のために一定分量を収集して、湿潤ペレット中の鉄濃度を測定した。
【0063】
緩衝剤は、pH7.0における50mMのMOPSと0.9%のNaCl;pH5.8〜6.0および1.8〜2.2における50mMのマレイン酸と0.9%のNaCl;pH4.0〜4.5における50mMの酢酸ナトリウム/50mMの氷酢酸と0.9%のNaClのいずれかであった。
【0064】
インビトロ胃腸内消化アッセイ
60mgの元素鉄に相当する量のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質またはコントロールとしての鉄物質、即ち硫酸第一鉄、塩化第二鉄、または非修飾第二鉄オキソ水酸化物を、合成胃液(50mL:2g/LのNaCl、0.15MのHClおよびブタのペプシン0.3mg/mL)に添加し、37℃で30分間、放射状に振とうしながらインキュベートした。次いで、得られた胃の混合物5mLを、合成十二指腸液(pH9.5の50mMの重炭酸塩緩衝液中にパンクレアチン10g/LおよびNaCl2g/Lを含有)30mLに添加した。最終体積は35mLであり、最終pHは7.0であった。混合物を、放射状に振とうしながら37℃で60分間インキュベートした。均質な一定分量(1mM)を、この過程の間の様々な時点で収集し、13,000rpmで10分間遠心分離にかけて、凝集相と水和相を分離した。上清を鉄含量についてICPOESによって分析した。実験の最後に、残りの溶液を4,500rpmで15分間遠心分離にかけ、上清をFe含量についてICPOESによって分析した。残りの物質の質量(即ち湿潤ペレット)を記録した。濃HNOをこの湿潤ペレットに添加し、新しい質量を記録した。各試験管を、すべてのペレットが溶解するまで室温に静置し、ICPOES分析のために一定分量を収集して、脱凝集/溶解しなかった鉄の量を測定した。鉄の出発量は、湿潤ペレット中の鉄と上清の鉄から算出した。
【0065】
各時点の上清中の可溶性の鉄と水和粒子鉄とを区別するために、この画分も限外濾過にかけ(Vivaspinカットオフ分子量3,000Daのポリエーテルスルホン膜、Sartorius Stedium Biotech GmbH、ドイツ、ゲッティンゲン)、再度ICPOESによって分析した。
【0066】
また、市販の鉄調製物の胃腸内消化を、このアッセイを用いて、製造者によって推奨された用量の鉄総量:ピロリン酸第二鉄14mg(Lipofer、Boots);ビスグリシン酸第一鉄20mg(Gentle iron、Solgar);水酸化第二鉄ポリマルトース錯体80mg(Maltofer、Ferrum Hausmann);第二鉄トリマルトール30mg(Trimaltol、Iron Unlimited)を使用して試験した。
【0067】
インビトロ胃腸内消化の改良アッセイ
胃および小腸の模擬条件下のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の粒径は、溶液中にタンパク質がまったく存在しない、適合させた「インビトロ胃腸内消化アッセイ」を使用して測定した。タンパク質が測定の妨害をすることから、粒径を測定するためにタンパク質が存在しないことが必要であったが、その手順はそれ以外「インビトロ胃腸内消化アッセイ」と同じであり、粒径を測定するために追加の一定分量を様々な時点で収集した。
【0068】
誘導結合プラズマ発光分析(ICPOES)
溶液または固体(湿潤固体を含む)の鉄含量は、JY2000−2 ICPOES(Horiba Jobin Yvon Ltd.、英国、スタンモア)を使用して、鉄に特異的な波長である259.940nmで測定した。分析の前に溶液を5%の硝酸で希釈し、固体を濃HNOで消化した。溶液中または固相中の鉄比率(%)は、出発鉄含量と、アッセイに応じて可溶相中の鉄または固相中の鉄のいずれかとの差によって決定した。
【0069】
粒径の測定
ミクロンサイズの粒子の粒径は、Hydro−μP分散装置を備えるMastersizer 2000(Malvern Instruments Ltd、英国、マルバーン)を使用して測定し、ナノサイズの粒子は、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd、英国、マルバーン)で測定した。Mastersizer測定は、サンプルの前処理を必要としないが、Zetasizer測定では、事前に大きな粒子を除去するために、遠心分離を必要とした。
【0070】
構造分析
透過電子顕微鏡法およびエネルギー分散X線分析(EDX)
まず粉末をメタノール中に分散させ、次いで標準の孔のある炭素TEM支持膜でドロップキャスティングすることによって粉末サンプルを分析した。市販の錠剤を同様に分析したが、最初に粉砕して粉末にした。分析は、Institute for Material Research、英国、リーズ大学で行った。
【0071】
走査型透過電子顕微鏡法
まず粉末をメタノール中に分散させ、次いで標準の孔のある炭素TEM支持膜でドロップキャスティングすることによって粉末サンプルを分析した。市販の錠剤を同様に分析したが、最初に粉砕して粉末にした。分析は、収差補正した走査型透過電子顕微鏡法(Daresbury;superSTEM)によって行った。
【0072】
赤外分析法(IR)
IRスペクトルは、Nicolet Avatar 360スペクトロメータを備えるDurasamplIRダイヤモンドATRアクセサリーを使用して、波長範囲4000〜650cm−1および解像度4cm−1で収集した。分析は、ITS Testing Services(UK)Ltd、英国、サンベリーオンテムズで行った。
【0073】
X線回折分析
サンプルを、乾燥粉末として分析した。市販の錠剤を粉砕して粉末にした。分析は、X線回折分析によって、ケンブリッジ大学においてPhilips X’Pert PW3020(θ/2θ、モーター2台)を使用して、最大14時間の走査時間およびCuKαに対して5〜70°の2θで行った。
【0074】
インビトロ吸収の試験
対象
軽度鉄欠乏性貧血(10〜11.9g/dLの間のヘモグロビンと、20μg/L未満の血清フェリチンまたは10%未満のトランスフェリン飽和率と定義される);または明白な鉄欠乏(12μg/L未満の血清フェリチンと定義される)の健康な若い女性(年齢18〜45歳)が採用され、試験に参加した。排除基準は、妊娠もしくは泌乳、および公知のセリアック病、中程度/重篤な貧血(ヘモグロビン濃度<10g/dL)、心疾患、慢性呼吸器疾患、慢性肝疾患、腎疾患、慢性感染症、または慢性炎症とした。他の排除基準は、過去3カ月以内の手術、過去10年以内の癌の診断、遺伝性ヘモクロマトーシスまたは異常ヘモグロビンの公知の病歴、鉄代謝を変える恐れがある現在の投薬、最近の献血/大量の失血(過去3カ月以内)であった。ビタミンおよび無機栄養補給剤を定期的に消費している対象には、本試験のスクリーニング前2週間は栄養補給を中止するよう求めた。書面によるインフォームドコンセントを、すべての対象から得た。本試験のプロトコルは、Suffolk Local Research Ethics Committeeによって承認された。
【0075】
試験設計
実験的な治療は、単回用量の58Fe標識化リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質(鉄総量:60mg)または硫酸第一鉄(鉄総量:65mg)であった。吸収しにくい個体(硫酸第一鉄摂取後の血漿鉄についての有意な総濃度曲線下面積(AUC)をもたない個体と定義される)を制御するための参照用量として、硫酸第一鉄を使用する。各ボランティアが自身のコントロールを務める交差試験設計を用いた。
【0076】
Feの吸収は、標識化鉄試験化合物摂取の14日後の、安定な58Fe同位体標識物の赤血球の取込み量をベースとした。試験化合物および参照化合物(硫酸第一鉄)は、14日間隔で一終夜絶食した後に、厳密に標準化した条件および綿密な管理の下で摂取された(朝食と共にまたは朝食抜きで)。鉄化合物の摂取後4時間は、食物または流体(水以外)の摂取は許可されなかった。
【0077】
2回の訪問のそれぞれの間に10個の血液サンプル(12mL)を採取して、以下の時間:摂取前および鉄化合物摂取から30、60、90、120、180、210および240分後のFe吸収量を測定した。ベースライン時(摂取前)にさらなる血液サンプルを採取して、鉄の状態(総血球数、フェリチン、可溶性トランスフェリン受容体、トランスフェリン飽和率)を確認し、赤血球による58Fe取込み量を測定した。
【0078】
全血清鉄濃度を、Smithらの方法を基にした標準臨床化学的手順によって、発色団であるFerene(登録商標)を使用して分析した。
【0079】
58FeのRBC取込み量は、Elan DRC Plus誘導結合プラズマ質量分析装置(Perkin Elmer Sciex、英国、ビーコンズフィールド)を使用して測定した。サンプル導入系は、V型の溝のネブライザ、二重通路(double-pass)スプレーチャンバ、取外し可能な石英トーチ、および石英注入器(内径2mm)から構成されていた。白金が先端に付いた円錐型サンプラーおよび円錐型スキマー(Perkin Elmer Sciex、英国、ビーコンズフィールド)を、すべての分析に使用した。ベースラインとなる全血サンプルを、58Fe2mgで標識化した経口用Fe栄養補給剤60mgの投与直前に試験の参加者から採取し、第2の血液サンプルを投与の14日後に採取した。全血を、0.5%のTriton X−100、1%のブタン−1−オール、0.5%のアンモニア、および0.007%の硝酸を含有する水溶液で100倍に希釈した。装置の状態を、最適な信号感度(24Mg、115Inおよび238U同位体の測定を介する)、最小酸化物形成(m/z=155におけるCeO形成度を監視可能にするために140Ceおよび155Gd同位体の測定を介する)および最小二重荷電イオン形成(m/z=69における138Ba2+の形成度を監視可能にするために138Baおよび69Ga同位体信号の測定を介する)に合わせて調整した。次いで、58Feと57Feとの間の質量の偏り(約5%)を低減するために、さらなる調節を実施した。検出器の電圧を、それぞれアナログおよびパルス段階について、一般的な−2400Vおよび1550Vから−1725Vおよび1050Vに下げた。
【0080】
58Fe標識化塩化第二鉄溶液の調製
凝縮器に接続した梨型のガラスフラスコ中、58Fe100mgに富んだ元素鉄(Chemgas、フランス、ブーローニュ)を37%のHCl4mLに溶解することによって、58Fe標識化塩化第二鉄の溶液を調製し、ウォーターバス中で48℃で加熱した。塩素濃度が低下するため、温度を経時的に徐々に上昇させて、溶液の沸騰を続けた。元素鉄粉末が溶解すると、30%の過酸化水素0.5mLを添加して、第一鉄を第二鉄に酸化させた。次いで酸化反応が終了したら、即ちOの気泡の形成が停止した時点でフラスコを封止した。最終溶液中の鉄濃度をICPOESによって測定し、フェロジンアッセイを使用して、第一鉄の不在を確認した。
【0081】
58Fe標識化リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の調製
58Feに富んだ選択したリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質は、先に論じた58Fe標識化塩化第二鉄から、58Fe3.5%w/w(摂取された固体物質中の鉄総量60mg当たり58Fe2mg)を含有する塩化第二鉄原液を使用して、上記のプロトコル(リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の調製を参照)に従って調製した。
【0082】
結果および議論
リガンドAの作用
一連のリガンド、即ちマルトール、コハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジンおよびグルタミンについて、溶液からの第二鉄ポリオキソ水酸化物の沈殿に対するそれらの作用を試験した。
【0083】
まず、リガンドを1:1〜1:5の比で上記のスクリーニングアッセイを使用してすべて試験し、3群に分類した。第1群「強いリガンド」は、1:1の比で80%の固体物質の形成を阻害することが見出されたリガンドであり、それにはグルコン酸、クエン酸およびマルトールが含まれていた。第2群「弱いリガンド」は、形成される固体物質の量にはほとんど作用しない(試験したすべての比において<10%)ことが見出されたリガンドであり、それにはアスパラギン酸、コハク酸、乳酸、グルタミン酸およびヒスチジンが含まれていた。第3群「中程度のリガンド」は、試験した比の少なくとも1つにおいて、形成される固体物質の量に対して、強いリガンドと弱いリガンドとの間で影響を有することが見出されたリガンドであり、それにはリンゴ酸、酒石酸およびグルタミンが含まれていた。
【0084】
第2の例では、上記の3群からの6つのリガンドを、様々なM:L比における第二鉄ポリオキソ水酸化物沈殿物の形成と、形成される固体物質のpH6およびpH4における緩衝剤への溶解(先のスクリーニングアッセイ参照)の両方に対するそれらの作用について、再びスクリーニングした。予想通りリガンドは、(a)リガンドが属する群および(b)M:L比に依存して、沈殿したポリオキソヒドロキシ鉄の比率(%)に対して様々な作用を有していた。しかし、形成された固体物質は、沈殿挙動からは予測できなかった様々な再水和特性を示した。強い親和性のリガンド、即ちマルトール、弱い親和性のリガンド、即ちコハク酸、および中程度の親和性のリガンド、即ちリンゴ酸を使用する結果の例を、図1AおよびBに示す。再溶解は、明らかにリガンドおよびその鉄に対する比に依存するが、それは予測できるものである。予想されなかったのは、pH6.0で可溶性鉄−マルトール錯体が形成され得るという事実にもかかわらず(少なくとも一部分の鉄について)、強いリガンドであるマルトールが、このpHでは鉄の再溶解を促進しなかったということである。さらに、中程度のリガンドであるリンゴ酸は、各比が一致した場合でも(1:1参照)、pH6.0において、強いリガンドであるマルトールよりも固相から鉄を多く溶解させた。他のリガンドまたは比に関するさらなる結果の例を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
スクリーニングアッセイにおいて最も大きな作用を示した2つのリガンド、即ちリンゴ酸および酒石酸を、さらに詳細に試験するために選択した。4つの異なる緩衝剤において、より詳細に定義されたアッセイを使用して(方法の脱凝集アッセイ参照)再溶解プロファイルを試験した。緩衝剤は0.9%w/vの電解質を含有しており、したがって得られた結果は、生物学的イオン強度環境における物質の挙動を反映することになった。またpH環境は、胃(pH1.8)から腸(pH7.0)の消化管の様々な部分を反映するように選択した。第1に、表2に示す結果によって、2つのリガンドが、先のスクリーニングアッセイに見られる第二鉄ポリオキソ水酸化物物質の調製に使用した比に依存して、沈殿だけでなく脱凝集プロファイルにも影響を及ぼしたことが確認された。一般に、リガンド比の増大は、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の形成を低減し、脱凝集プロファイルを増大した。しかし、表2にリンゴ酸および酒石酸を用いた結果で示すように、あるリガンドに見られた作用の範囲は、別のリガンドに見られた作用の範囲を反映するものではなかった。観測された結果は、表2にM:L比1:2でリンゴ酸を用いた結果として示すように、再現可能であった。
【0087】
【表2】

【0088】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質を、50mMのMOPSおよび0.9%のNaCl中、pH6.5で調製した。出発鉄濃度は26.7mMであった。沈殿ステップは、個々の試験管内で(a)スクリーニングアッセイに記載の沈殿手順により、またはバッチとして(b)リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の調製により実施した(方法参照)。すべての物質の脱凝集は、脱凝集アッセイに概説の方法に従って実施した(方法参照)。
【0089】
第2に、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の形成率に対するリガンドの作用を、方法部分に記載の滴定プロトコルを使用して試験した。図2は、pHの増大に伴う固体物質の形成率を示している。リンゴ酸の添加は、リガンドなしと比較して固体物質の形成を遅延することが見出された。この状況は、リガンドが固体物質の形成をもたらすポリオキソヒドロキシ第二鉄の存在の重合と競合する場合に予測されよう。しかし意外にも、酒石酸は、低いpHで固体物質の形成に対して促進作用を有することが見出された。このことは、上記の競合の状況と相関しない。この場合、リガンドである酒石酸は、沈殿を促進するものと思われる。別の観測は、塩基性のpH(>7.5)の酒石酸が、この物質の脱凝集を促進したことである。実際に図16は、方法の項目に記載した滴定プロトコルに従ってpHを増大させた場合に生じる、2つの固相の形成の典型的なプロファイル、即ち、酒石酸修飾第二鉄ポリオキソ水酸化物の凝集および水和を示している。これらの結果は、他のリガンドAおよびリガンドBでも観測された(結果は示さず)。
【0090】
リンゴ酸について図3に示すように、異なるpHで形成した場合、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の脱凝集プロファイルは変化することが示された。物質の調製のpHが増大するにつれ、脱凝集プロファイルは低減する。このことは、pHの増大に伴う重合およびオキソ架橋形成の増大と一致しており、おそらくは物質に対するリガンドの修飾作用を制限するものである。
【0091】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の調製における塩化ナトリウム(NaCl)または塩化カリウム(KCl)としての0.9%w/vの電解質の存在についても試験した。図4Aは、0.9%のNaClの存在が、NaClなしで調製された同じ物質と比較して、M:L比4:1における酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の脱凝集プロファイルに影響を及ぼさなかったことを示している。同様に図4Bは、0.9%のKClの存在が、M:L比2:1(50mMのナイアシンを含有する溶液)における酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の脱凝集プロファイルを確かに変化させたことを示している。
【0092】
最後に、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の乾燥作用を、脱凝集に関して試験した。物質の乾燥は一般に、図5に示したM:L比4:1における酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質によって例示されるように、その脱凝集をわずかに低下させた。オーブン乾燥法および凍結乾燥法の間では、一貫性のない小さな差異が観測された(図5)。
【0093】
リガンドBの作用
上記の試験のほとんどすべてを、MOPS緩衝剤中で生成されたリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質を用いて実施した。MOPSは、しばしば大部分の金属イオンとの非常に弱いその相互作用により、金属の化学種試験に使用されるものであり、したがって金属錯体の形成にはめったに干渉しない。しかし、MOPSは7.2のpKaを有し、したがって中性pH周囲で緩衝能力を有する。したがって、MOPSは鉄とは直接的に相互反応せず、または固体物質の形成を妨害しないが、環境のpHにおける変化速度を制御することによって、固体の形成に間接的に影響を及ぼす場合がある。さらに、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の調製に使用される緩衝剤は、ヒトの消費に対して安全であるべきだが、MOPSはそうでない。したがって、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の形成および再溶解特性に対する、緩衝剤またはリガンドBの影響を試験するために、本発明者らは、様々なpH範囲において緩衝能力を有する一連の化合物、即ちアジピン酸、重炭酸塩、酢酸、グルタル酸、グルタル酸ジメチル、ピメリン酸、コハク酸、バニリン、トリプトファン、安息香酸、プロピオン酸、ホウ酸、ナイアシンおよび塩酸ピリドキシンを選択した。図6は、M:L比4:1における酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の形成率に対する、アジピン酸でのMOPSの交換の作用(図6(i))、ならびにその他の非修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質に対するその作用(図6(ii))を示している。どちらの場合も、アジピン酸は固体物質の形成率に対して促進作用を有していた。
【0094】
これらの観測に従って、様々なM:L比を使用して酒石酸修飾オキソヒドロキシ第二鉄固体物質の形成および脱凝集プロファイルを試験した。アジピン酸は、MOPS(表2)と比較して、両方の緩衝剤について低い脱凝集能力を示した胃のpH(pH1.8)を除き、形成された物質の脱凝集能力を低減した(表3)。それとは反対に、リンゴ酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の場合、重炭酸塩は、物質の沈殿率(%)および脱凝集能に対して悪影響を及ぼした(表2および3)。これらの作用は、重炭酸塩ではなく、低濃度のアジピン酸を用いた場合に減少した(表3、太字のデータ)。
【0095】
酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の脱凝集プロファイルに対するリガンドBの影響は、ナイアシンおよび安息香酸塩を用いた結果として図7にさらに例示されている。
【0096】
【表3】

【0097】
酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質は、電解質の存在なしに、50mMのアジピン酸(Ad50)または20mMのアジピン酸(Ad20)中pH4.0で、プロトコル「リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の調製」に従って調製した(方法参照)。リンゴ酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質は、電解質の存在なしに、100mMの重炭酸塩(Bic100)または25mMの重炭酸塩(Bic25)中pH8.5で、同じ手順に従って調製した。物質の脱凝集は、FeOHT−Ad50およびFeOHM−Bic100については非乾燥物質を使用し、FeOHT−Ad20およびFeOHM−Bic25についてオーブン乾燥物質を使用して、脱凝集アッセイに概説の方法に従って実施した(方法参照)。
【0098】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の構造分析
上記で調製したリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質は、それらが単なる無機第一鉄イオン塩(例えば硫酸第一鉄)でも、金属が有機リガンド(例えば第二鉄トリマルトール)で配位されている鉄錯体でも、有機リガンドでコーティングした鉄ミネラル粒子(例えば鉄ポリマルトースまたは「Maltofer」)でもないという点で、現在利用可能な鉄配合物とは異なっている。
【0099】
エネルギー分散X線分析(EDX)によって測定される本発明のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質からの粒子の元素分析は、鉄含有粒子および酸素含有粒子内の炭素の存在を明示している(一例を図8に示す)。さらに、物質の赤外線スペクトルは、ヒドロキシ基の豊富な存在に加えて、リガンドと金属との共有結合類似の結合の存在を示している(図9)。このことは、リガンドが単に吸着または「捕捉」ではなく、正式な結合を介して金属オキソ水酸化物格子の構造に取り込まれることを示している。物質の溶解特性の変化は、リガンドが金属オキソ水酸化物格子を変える方法によって容易に説明することができる。新しく沈殿した鉄オキソ水酸化物では、フェリハイドライト様の構造が、いくつかの明白な結晶領域と共に観測され、リガンドB、この場合はトリプトファンの添加によって、結晶化度の程度が低減し、リガンドAおよびB、この場合はトリプトファンおよび酒石酸の添加によって、結晶化度がほとんど完全に打ち消される(図11)。有機リガンドでコーティングした鉄ミネラル粒子であるMaltoferは、新しく沈殿した鉄オキソ水酸化物との類似性がより高く見えたが、このことはリガンドがその一次構造をさほど変化させなかったことを示す。この比較は、X線回折を使用して最も良好に観測されており、その場合、水酸化鉄ピークはリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質については検出されないが、Maltoferにおいては、一次粒子の非常に小さなサイズ(数ナノメートル)による広幅でノイズの多いピークではあるが認められる(図12)。
【0100】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の胃腸内消化
本発明者らは、胃腸の模擬条件下で、いくつかの従来技術の市販の鉄化合物の脱凝集を、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の脱凝集と比較した(方法参照)。硫酸第一鉄、第二鉄オキソ水酸化物および鉄ポリマルトース(Maltofer)と比較した、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質2種の胃での脱凝集(pH1.2)および胃での溶解プロファイルを、図10に示す。金属塩で予測されるように、硫酸第一鉄は、酸性pHにおいて非常に良好に脱凝集し溶解する。逆に、Maltoferは胃の条件下で非常に急速に脱凝集するが(5分後にほぼ80%の鉄が脱凝集する)、水和粒子形態で残存する(一般に直径約20nm。結果は示さず)(図10)。Maltoferからの鉄の溶解率(%)は5%未満であったが、限外濾過膜との結合により、最大10%の鉄が喪失し得ることに留意されたい。それに対し、2つの新規リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質は、第二鉄オキソ水酸化物および硫酸第一鉄と比較して、中程度の脱凝集プロファイルを有していた。さらに、これらの物質の溶解は、胃の条件下での脱凝集プロファイルと密接に平行しているが、このことはこれらの新規物質の場合には必要ない。これらのデータは、非修飾第二鉄オキソ水酸化物、Maltofer、硫酸第一鉄と、本発明のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質との明確な差異を示している。
【0101】
胃および腸の条件下での本発明の新規リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質のいくつかの脱凝集も、他の市販の鉄化合物、即ちピロリン酸第二鉄、塩化第二鉄、第二鉄トリマルトールおよびビスグリシン酸第一鉄の脱凝集と比較した。市販化合物はいずれも適切に脱凝集せず(例えばピロリン酸第二鉄)、またはそれらは急速に脱凝集した(図14)。この急速な脱凝集は、溶解が並行して起こる場合、腸管内腔内の鉄イオンのボーラス送達を生じ、したがって副作用の発生を生じる可能性が高いと考えられる。新規リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質は、ある程度の制御放出を示したが、新規物質の脱凝集率には明確な差異を見ることができ、このことは、必要に応じてそれらの特性が調整され得ることを示している(図14)。pH7.0において溶液中に鉄が残存するかしないかは、単にキレート剤/リガンドが存在するかどうかの関数である(それらは必然的に腸内に存在することになるので)ことが図14に示されているはずであり、したがって、硫酸第一鉄および塩化第二鉄についてのデータ(化合物中にリガンドが存在しない場合)は、過剰に解釈すべきではないことに留意されたい。
【0102】
ヒトのボランティアでさらに試験したいくつかのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の胃および腸両方の条件下での鉄の脱凝集および溶解(以下参照)を、図15に提示する。本発明者らは再度、必要に応じてそれらを調整することが可能であることを示す、新規物質の様々な脱凝集および溶解プロファイルを示す。
【0103】
いくつかの酒石酸修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質の胃腸消化改変アッセイを通過した後の粒径分布の試験を図17に示す。M:L比の変化(第1対第2の棒)、調製のpH(第2対第3の棒)およびリガンドBのタイプ(第4の棒)は、得られる粒径、したがって脱凝集/溶解プロファイルに明らかに影響を及ぼす。特に、酒石酸濃度の増大に伴って小さい粒径が増大するが、このことは、L含量の増大に伴って一次粒子の凝集が少なくなることを示している。さらに、調製のpHが上昇するにつれ、得られる粒径は小さくなる。
【0104】
ヒトにおけるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の鉄吸収
7つのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質を、ヒトのボランティアにおけるそれらの吸収についてさらに評価し、結果を非修飾第二鉄オキソ水酸化物と比較した。結果の概要を表4に示す。
【0105】
【表4】

【0106】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄固体物質の摂取3時間後の血清鉄の増大および鉄吸収率(%)(58Feの赤血球取込み量を0.80で割った値として算出)。平均±SEM(nは2〜4の範囲をとる);*180分におけるFeOHでは、ベースラインの血清鉄値よりも減少していた。
【0107】
化合物の血清の吸収プロファイル(図13)は、新規リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ第二鉄物質が硫酸第一鉄よりもはるかに低い鉄吸収率を有することを示すが、この特徴は有益となるであろう。これに特徴によって、一次的に高いレベルの鉄からの全身曝露および潜在的損害が防止されるからである。すべての配合物から、明らかな鉄の吸収が見られたが(図13)、少なくとも1つの調製物に関して硫酸第一鉄と等価であると推測される。文献よって、第二鉄ポリマルトースが摂取後に検出可能な血清鉄の上昇をもたらさず、鉄の吸収が非常に少ないことが報告されているが(Kaltwasserら、1987年)、この報告と第二鉄オキソ水酸化物に関する本発明のデータと一致することは、特に注目に値する。
【0108】
化合物FeOHT−2:1−TRP15およびFeOHグルコン酸20は、これらの新規物質の組成を変化させることにより、鉄吸収率(%)を維持を維持したままそれらの血清鉄プロファイルをどれ程変化させるかを示す例であるが(図13)、これらは、該物質を調整することによって所望の結果が得られることを再度示すものである。
【0109】
参考文献
情報開示陳述書の一部に提示した参照を含む、本明細書に引用され、または本願により提示されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が参照によって組み込まれる。

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質(M(OH))の生成方法であって、ここで、Mが1つまたは複数の金属イオンを表し、Lが1つまたは複数のリガンドを表し、OHがオキソ基またはヒドロキシ基を表し、前記物質がポリマー構造を有し、全体としてのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質が、1つまたは複数の再現可能な物理化学的特性を有し、少なくとも1つのリガンドについて物理学的分析技術によって検出され得るM−L結合を示し、
(a)成分が可溶性を示す第1のpH(A)において、前記金属イオンMおよび前記リガンドLを混合するステップ、
(b)前記pH(A)を第2のpH(B)に変化させて、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の固体沈殿物を形成させるステップ、ならびに
(c)ステップ(b)で生成されたリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を分離し、任意選択で乾燥させるステップ
を含む方法。
【請求項2】
対象に投与するための組成物に、前記リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を配合するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物質を配合するステップが、賦形剤を添加することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、栄養学的、医学的、美容的または他の生物学的用途に適用可能な組成物として使用するためのものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、前記金属イオンまたは前記リガンドを対象に送達するためのものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を使用して対象中に存在する成分を封鎖または阻害するためのものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記pH(A)が、対応する金属オキソ水酸化物のオキソヒドロキシ重合が開始するpHを超える、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記pHが、アルカリの添加によってpH(A)からpH(B)へ変化する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリが、ステップ(b)の混合物中のOH濃度を上昇させるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは重炭酸ナトリウム溶液として添加される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
pH(A)がpH2以下であり、pH(B)がpH2以上である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記pHが、酸の添加によってpH(A)からpH(B)へ変化する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸が、ステップ(b)の混合物中のOH濃度を低下させるために、無機酸または有機酸として添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
pH(B)がpH2以下であり、pH(A)がpH2以上である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の再現可能な物理化学的特性が、溶解(速度、pH依存性およびpM依存性)、吸着および吸収特性、反応性−不活性、融点、温度耐性、粒径、磁性、電気的特性、密度、光の吸収/反射特性、剛性−柔軟性、色および封入特性から選択される、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記再現可能な物理化学的特性が、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の範囲内、さらにより好ましくは±2%の範囲内で再現可能である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記M、Lおよびオキソ基またはヒドロキシ基が固相構造内に分布している前記ポリマー構造が、オキソ基またはヒドロキシ基が実質的にランダムに1つまたは複数のリガンドによって置換されたものである、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記金属イオン(M)が、2、3もしくは5族の金属イオン、遷移金属イオン、重金属イオンまたはランタニドイオンである、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記金属イオン(M)が、Ag2+、Al3+、Au3+、Be2+、Ca2+、Co2+、Cr3+、Cu2+、Eu3+、Fe3+、Mg2+、Mn2+、Ni2+、Sr2+、V5+、Zn2+またはZr2+から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属イオン(M)が、F3+である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記リガンド種(L)が、アジピン酸、グルタル酸、酒石酸、アスパラギン酸、リンゴ酸、コハク酸およびクエン酸などのカルボン酸、マルトールおよびエチルマルトールなどの食品添加物、重炭酸塩、硫酸塩およびリン酸塩などのリガンド特性を備えるアニオン、ケイ酸塩、モリブデン酸塩およびセレン酸塩などの無機リガンド、トリプトファン、グルタミンおよびヒスチジンなどのアミノ酸、ならびに葉酸塩、アスコルビン酸塩およびナイアシンなどの栄養素系リガンドから選択される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記リガンドが、緩衝特性を有するか、または緩衝剤が、前記方法を実施するための媒体中に存在する、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記緩衝剤が、ホウ酸塩、ケイ酸塩および重炭酸塩などの無機緩衝剤、MOPS、HEPES、PIPESおよびTRISなどの有機緩衝剤、ならびにアジピン酸、ピメリン酸、トリプトファンおよびヒドロキシメチルセルロースから選択される緩衝剤から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、鉄栄養補給剤として使用するためのものである、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を生成し、前記物質の所望の物理化学的特性を最適化して、栄養学的、医学的、美容的または生物学的関連用途に前記物質を適合させる方法であって、ここで、前記リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質が、Mが1つまたは複数の金属イオンを表し、Lが1つまたは複数のリガンドを表し、OHがオキソ基またはヒドロキシ基を表す式(M(OH))によって表され、前記物質がポリマー構造を有し、全体としてのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質が、1つまたは複数の再現可能な物理化学的特性を有し、少なくとも1つのリガンドについて物理学的分析技術によって検出され得るM−L結合を示し、
(a)反応媒体中、成分が可溶性を示す第1のpH(A)において、前記金属イオン(複数可)Mおよび前記リガンド(複数可)Lを混合するステップ、
(b)前記pH(A)を第2のpH(B)に変化させて、リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン物質の固体沈殿物を形成させるステップ、
(c)ステップ(b)で生成されたリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を分離し、任意選択で乾燥させるステップ、
(d)沈殿したリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の所望の物理化学的特性(複数可)を試験するステップ、ならびに
(e)
(i)ステップ(a)で供給された前記金属イオン(複数可)(M)および/もしくはリガンド(複数可)(L)の種類または濃度、ならびに/または
(ii)(a)で供給された前記金属イオン(複数可)(M)対リガンド(複数可)(L)の比、ならびに/または
(iii)pH(A)、ならびに/または
(iv)pH(B)、ならびに/または
(v)pH(A)からpH(B)への変化速度、ならびに/または
(vi)緩衝剤の有無または濃度
の1つまたは複数を変えることによってステップ(a)〜(d)を必要な限り反復するステップ
を含み、それによって所望の物理化学的特性を有するリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を生成する方法。
【請求項25】
前記リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の生成方法に使用される物理学的または化学的反応条件を変化させるステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記物理学的または化学的反応条件が、反応温度、pH変化速度、または反応剤の使用もしくは反応剤の混合に使用される条件から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第1のpH(A)が、対応する金属オキソ水酸化物のオキソヒドロキシ重合が開始するpHより低いpHである、請求項24から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
pH(A)がpH2以下であり、pH(B)がpH2以上である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記pHが、酸の添加によってpH(A)からpH(B)へ変化する、請求項24から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記酸が、ステップ(b)の混合物中のOH濃度を低下させるために、無機酸または有機酸として添加される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
pH(B)がpH2以下であり、pH(A)がpH2以上である、請求項24から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
pH(A)からpH(B)までのpH変化が、24時間以内、より好ましくは1時間以内、最も好ましくは20分以内で生じる、請求項24から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
全金属イオン(M)の濃度および全リガンド(L)の濃度が、10−6M超、より好ましくは10−3M超である、請求項24から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記反応媒体が水溶液である、請求項24から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
緩衝剤によって、オキソヒドロキシ重合のpH範囲を安定化させる、請求項24から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記緩衝剤が、ホウ酸塩、ケイ酸塩および重炭酸塩などの無機緩衝剤、またはMOPS、HEPES、PIPESおよびTRISなどの有機緩衝剤、ならびにアジピン酸、ピメリン酸、トリプトファンおよびヒドロキシメチルセルロースから選択される緩衝剤から選択される、請求項24から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記緩衝剤濃度が、500mM未満、好ましくは200mM未満、最も好ましくは100mM未満である、請求項24から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記反応温度が、0℃および100℃の間、より好ましくは室温(20〜30℃)および100℃の間である、請求項24から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記反応媒体のイオン強度が、電解質の添加によって変えられる、請求項24から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記成分が、均質な溶液になるまでステップ(a)で混合される、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
請求項24から40のいずれか1項に記載の方法に従ってリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を最適化するステップ、バルクとしてリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を製造し、そして/またはリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を組成物に配合するさらなるステップを含む、対象に投与するためのリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質の生成方法。
【請求項42】
Mが1つまたは複数の金属イオンを表し、Lが1つまたは複数のリガンドを表し、OHがオキソ基またはヒドロキシ基を表す式(M(OH))で表されるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を含み、請求項1から41のいずれか1項に記載の方法によって取得できる組成物である、対象に投与するための組成物。
【請求項43】
前記金属イオンの送達が、対象に治療有益性をもたらす、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記物質が、前記リガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質に結合することができる、対象中に存在する内因性物質の治療目的の除去または阻害に使用するためのものである、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
MがFe3+イオンを含む1つまたは複数の金属イオンを表し、Lが1つまたは複数のリガンドを表し、OHがオキソ基またはヒドロキシ基を表す式(M(OH))によって表され、オキソ基またはヒドロキシ基が実質的にランダムにリガンドLで置換されたポリマー構造を有し、1つまたは複数の再現可能な物理化学的特性および物理学的分析を使用して実証可能なM−L結合を有するリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質を含む、対象に投与するための第二鉄組成物。
【請求項46】
MがFe3+イオンである、請求項45に記載の第二鉄組成物。
【請求項47】
前記リガンドLによるヒドロキシ基またはオキソ基の置換によって生成した物質の実質的にランダムな固相構造が、LまたはMO/MOHの識別可能なピークを有していないX線回折パターンによって決定できる、請求項45または46に記載の第二鉄組成物。
【請求項48】
前記リガンドLによるヒドロキシ基またはオキソ基の置換によって生成した物質の実質的にランダムな固相構造が、高分解能透過電子顕微鏡法によって測定可能な、前記物質の構造の非晶質性の増大である、請求項45から47のいずれか1項に記載の第二鉄組成物。
【請求項49】
前記再現可能な物理化学的特性が、溶解プロファイル、吸着プロファイルまたは再現可能な元素比の1つまたは複数から選択される、請求項45から48のいずれか1項に記載の第二鉄組成物。
【請求項50】
前記再現可能な元素比が、好ましくは±10%の範囲内、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±2%の範囲内で再現可能である、請求項49に記載の第二鉄組成物。
【請求項51】
前記赤外線スペクトルが、M−OもしくはO−Hの間の結合またはL単独を示す1つまたは複数のピークをさらに含む、請求項45から50のいずれか1項に記載の第二鉄組成物。
【請求項52】
前記リガンドLが、酒石酸塩またはアジピン酸塩またはコハク酸塩を含む、請求項48から51のいずれか1項に記載の第二鉄組成物。
【請求項53】
前記リガンドLが、酒石酸塩およびアジピン酸塩を含む、請求項52に記載の第二鉄組成物。
【請求項54】
前記リガンドLが、酒石酸塩およびコハク酸塩を含む、請求項52に記載の第二鉄組成物。
【請求項55】
M:L比が約1:5および5:1の間である、請求項48から54のいずれか1項に記載の第二鉄組成物。
【請求項56】
FeOHアジピン酸100またはFeT−3:1−Ad20である、請求項48から55のいずれか1項に記載の第二鉄組成物。
【請求項57】
栄養補給剤、強化剤または食品添加物である、請求項45から56のいずれか1項に記載の第二鉄組成物。
【請求項58】
請求項1から44のいずれか1項に記載の方法によって得ることができるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質(M(OH))の組成物、または請求項45から57のいずれか1項に記載のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質(M(OH))の組成物の、金属イオンを対象に治療送達する医薬品を調製するための使用。
【請求項59】
金属イオンを対象に治療送達するのに使用するための、請求項1から44のいずれか1項に記載の方法によって得ることができるリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質(M(OH))の組成物、または請求項45から57のいずれか1項に記載のリガンド修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン固体物質(M(OH))。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−520856(P2010−520856A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548736(P2009−548736)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000408
【国際公開番号】WO2008/096130
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(503276997)メディカル リサーチ カウンシル (10)
【Fターム(参考)】