説明

リガンド官能化基材の製造方法

リガンド官能化基材、リガンド官能化基材の製造方法、及び官能化基材の使用方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リガンド官能化基材及びその調製方法に関する。この官能化基材は、ウィルスなどの生体物質と選択的に結合し、これを生体サンプルから除去するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
ウィルス及び生体高分子(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質及び核酸といった生体細胞の構成成分又は生成物を含む)などの標的生体物質の検出、数量化、単離及び精製は、長期間にわたって研究者の課題であり続けている。検出及び数量化は、診断にとって、例えば、様々な生理学的条件(例えば疾患)の指標として重要である。生体高分子の単離及び精製は、治療及び生理学的研究に重要である。化学反応に触媒作用を及ぼすことが可能なタンパク質の特殊な種類である酵素のような生体高分子も、産業的に有用であり、酵素は単離され、精製されて、甘味料、抗生物質及び様々な有機化合物、例えばエタノール、酢酸、リジン、アスパラギン酸及び生物学上有用な生成物(例えば抗体及びステロイド)の製造のために利用されてきた。
【0003】
生体内の天然状態において、これらの生体高分子の構造及び対応する生物学的活性度は、一般的にpH及びイオン強度のかなりせまい範囲内で維持される。したがって、あらゆる分離及び精製操作は、被処理生体高分子が効能を有するという結果のために、このような要因を考慮しなければならない。
【0004】
クロマトグラフ分離及び精製操作は、気体又は液体であり得る移動相と固定相との間の溶質の交換に基づき、生体生成物混合物上で行うことができる。固定相を有する各溶質の様々な結合相互作用により、混合物溶液の様々な溶質の分離が達成され、すなわち一般的に、移動相の解離又は置換効果を受けたときに、より強い結合相互作用は、より弱く相互作用する溶質と比較してより長い滞留時間を与え、このような方法で分離及び精製が達成され得る。
【0005】
大部分の現在の捕捉又は精製クロマトグラフィーは、従来のカラム技術によって行われる。これらの技術は、この技術を使用した処理能力が低いことから、下流精製における深刻なボトルネックを有する。これらの問題を軽減する試みとしては、クロマトグラフィーカラムの直径を増やすことが挙げられるが、これも、効果的にかつ再現性を持ってカラムを充填することが困難であるため、課題が残る。より大きいカラム直径も、解決の難しいチャネリングの発生を増加させる。また、従来のクロマトグラフカラムでは、所望の生成物の、特定の濃度を超える破過が検出される際に、吸収操作は停止される。これは、吸着媒体の動的能力又は有効能力を、全体容量又は静的容量よりも大幅に低くさせる原因となる。有効性が低下すると経済的に困難な結果となり、クロマトグラフィー樹脂のコストは高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高分子樹脂は様々な目的化合物の分離及び精製に広く用いられる。例えば、高分子樹脂は、イオン基の存在に基づいて、目的化合物の大きさに基づいて、疎水性相互作用に基づいて、親和性相互作用に基づいて又は共有結合の形成に基づいて、目的化合物を精製又は分離するために用いることができる。当該技術分野では、ウィルスに対して生体サンプルからの選択的除去を可能にする強化された親和性を有する高分子基材への必要が存在する。当該技術分野では、拡散及び結合における限界を克服し、高い処理量で及びより小さな圧力低下で操作され得るリガンド官能化膜への更なる必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リガンド官能化基材、好ましくは多孔質基材、及びその製造方法を目的とする。より特定的には、この官能化基材は、ウィルスなどの中性又は負電荷の生体物質に対して必要な親和性を有するグラフト化リガンド基を提供するように改質されたベース基材、好ましくは多孔質ベース基材、を含む。リガンド官能化基材は、基材と、式Iのリガンドモノマーとのグラフト化反応生成物として記載され得る。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、
は、H又はC〜Cアルキルであり、
は、好ましくは1〜20個の炭素を有し、所望によりエステル、アミド、ウレタン又は尿素連結基を含有する、二価アルキレンであり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
は、H、C〜Cアルキル又は−N(Rであり、Xは、−O−又は−NR−である。ベース基材は、本明細書で更に記載されるように、式Iのリガンドモノマーで直接的に又は間接的にグラフト化され得る。
【0010】
リガンド官能化基材の製造方法が提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、
1)ベース基材を提供する工程と、
2)ベース基材を、(a)アクリロイル基と光開始剤基とを有する少なくとも1種のグラフトモノマー(「光開始剤モノマー」)と、(b)1つ以上の式Iのリガンドモノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的なエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、(d)所望により、1種以上の親水性モノマーと、を含む溶液でコーティングする工程と、
3)ベース基材の表面に結合したグラフト化光開始剤基を含む第一官能化基材を形成するために、コーティングされたベース基材を電離放射線、好ましくはe−ビーム又はガンマ線に曝露する工程と、
4)残存するエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を重合させるために、グラフト化光開始剤基を含むベース基材を紫外線に曝露する工程と、を含む。
【0011】
用語「エチレン性不飽和基」は、フリーラジカル重合され得る炭素−炭素二重(又は三重)結合を有する基を指し、これには、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレート、ビニル及びビニルオキシ基、アリル及びアリルオキシ基及びアセチレン基が挙げられる。
【0012】
好ましくは、基材は間隙表面及び外側表面を有する多孔質基材であり、多孔質基材のコーティング工程は、光開始剤モノマーでの第一吸収工程、続いて、その上にグラフト化光開始剤を有する多孔質基材を製造するための電離放射線曝露工程、続いて、リガンドモノマーでの第二吸収工程、続いて、残存するエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を架橋するための紫外線重合工程を含む。所望によるモノマーを電離放射線曝露に先立って第一吸収工程で加えてもよく、又は、第二吸収工程で加えてもよい。
【0013】
別の実施形態では、吸収工程は、光開始剤モノマー及び式Iのリガンドモノマーでの第一吸収工程、続いて、グラフト化光開始剤基とグラフト化リガンド基とを有する多孔質基材を製造するための電離放射線、好ましくはe−ビーム又はガンマ線、曝露工程、続いて、残存するエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を架橋するための紫外線重合工程を含んでもよい。
【0014】
間隙表面及び外側表面を有する多孔質基材とその表面から伸びるグラフト化リガント基とを含む物品が提供され、このリガンド基は式IIを有する。
【0015】
【化2】

【0016】
式中、
は、H又はC〜Cアルキルであり、
は、好ましくは1〜20個の炭素を有し、所望によりエステル、アミド、ウレタン又は尿素連結基を含有する、二価アルキレンであり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
は、H、C〜Cアルキル又は−N(Rであり、
は、−O−又は−NR−である。
【0017】
上式IIに関して、「〜」は、リガンド基とベース基材の表面との間に介在する共有結合又は有機連結基を表す。物品は、基材の表面から伸びるグラフト化ポリ(オキシアルキレン)基を更に含んでもよく、好ましくは多孔質である基材の表面から伸びるグラフト化エチレン性不飽和重合性基を含んでもよい。
【0018】
物品は、電離放射線(好ましくはe−ビーム又はガンマ線)及び紫外線照射への曝露によるグラフト化において、(c)少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的なエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有するモノマーと、所望により、d)少なくとも1つのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基と親水基とを有するモノマーと、の更なる反応生成物を含んでもよい。e−ビーム曝露後にベース基材にグラフト化されていないままであるあらゆる遊離エチレン性不飽和基は、続く紫外線照射への曝露において重合し得、それゆえに、ベース基材に間接的にグラフト化される。
【0019】
方法及び物品に関して、光開始剤モノマーa)のアクリロイル基の全部又は一部は、電離照射においてベース基材の表面にグラフト化される。未反応の光開始剤モノマーは、続いて、紫外線曝露で成長するポリマー鎖に組み込まれてもよい。残存するb)、c)及びd)モノマーは、直接的に表面にグラフト化されてもよく(例えば、アクリロイル基のグラフト化により)、又は、紫外線曝露で成長するポリマー鎖に組み込まれることにより間接的にグラフト化されてもよい。
【0020】
本発明のこれら及びその他の特徴及び利点は、以下の開示される実施態様の詳細な説明及び添付の請求項を検討すれば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のリガンド官能化多孔質物品を製造するための例示的な方法工程。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の物品及び方法では、リガンド官能化物品は、モノマーのグラフト化(例えば、e−ビームグラフト化による)、及びその後の、遊離したグラフト化されていないエチレン性不飽和重合性基の紫外線架橋からなる二工程プロセスにより提供される。表面改質前の多孔質ベース基材と比較して、リガンド官能化基材は典型的には、宿主細胞タンパク質、DNA、RNA及びウィルスなどの中性又は負電荷の生体物質に対して強化された親和性を有する。このような生体物質に対する親和性は、リガンド官能基に結合していない状態で、抗体などの正電荷物質が精製されるのを可能にする。リガンド官能化基材は、リガンド基による標的生体物質の選択的捕捉又は結合を可能にし、一方、リガンド基に対する親和性を欠く他の物質は通過される。
【0023】
リガンド官能化基材は、(1)ベース基材、及び(2)a)ベース基材の表面から伸びるグラフト化光開始剤基と、(b)1つ以上の式IIのリガンドモノマーと、c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的なフリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、(d)所望により、1種以上の親水性モノマーと、の紫外線開始型反応生成物、が挙げられるがこれらに限定されない多数の構成成分を含む。好ましくは、ベース基材は、間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材である。本明細書で使用するとき、用語「アクリロイル」はアクリレート及びアクリルアミド基を指し、用語「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイル基を指す。
【0024】
ベース基材は、任意の好適な熱可塑性高分子物質から形成されてもよい。好適な高分子物質には、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン)−コ−ポリ(ビニルアルコール))、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
好適なポリオレフィンには、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンとエチレン又はプロピレンのコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)、及びポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
好適なフッ素化ポリマーには、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)など)及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(ポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)など)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0027】
好適なポリアミドには、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)及びポリカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリイミドには、ポリ(ピロメリトイミド)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0028】
好適なポリ(エーテルスルホン)には、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン−コ−ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
好適な酢酸ビニルのコポリマーには、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)及びアセテート基の少なくとも一部が加水分解され各種ポリ(ビニルアルコール)を生成するかかるコポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
ベース基材は、フィルム又はシートなどの任意の形状であってもよい。好ましくはベース基材は、多孔質である。好適な多孔質ベース基材には、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ及び多孔質繊維が挙げられるこれらに限定されない。
【0031】
いくつかの実施形態では、多孔質ベース基材は、プロピレンホモポリマー又はコポリマーから、最も好ましくはプロピレンホモポリマーから形成されている。非毒性、不活性、低コスト、及び、物品へと押し出し、成形、形成され得るような容易性といった特性から、ポリプロピレンポリマーは、多孔質物品、例えば不織布及び微小多孔性フィルムの選択材料となることが多い。しかしながら、ポリプロピレンは疎水性である。ポリプロピレンなどのポリマーをリガンド官能化するのが望ましいが、電離放射線で処理されたポリプロピレンは、照射中又は照射後に劣化、例えば脆化、変色、及び熱感受性化しやすく、したがって、このことは、e−ビームグラフト化によりこのような熱可塑性ポリマーをリガンド官能化する能力を制限する。
【0032】
ポリプロピレンなどの放射線感受性基材に対して、本発明は、低い線量の電離放射線、好ましくはe−ビーム又はガンマ線、を用いて光開始剤基をグラフト化し、所望により、表面の一部の上の他のモノマーをグラフト化し、次いで、任意のグラフト化していない未反応エチレン性不飽和基を紫外線で重合又は架橋することにより、このようなポリマー劣化を克服する。
【0033】
多くの実施形態では、多孔質ベース基材は、サイズ排除分離の最小化、拡散束縛の最小化、並びに、表面積及び標的分子の結合に基づく分離の最大化のために、典型的には約0.2マイクロメートル超の平均孔径を有する。ウィルスの結合に使用されるとき、孔径は、一般に0.1〜10マイクロメートル、好ましくは0.5〜3マイクロメートル、最も好ましくは0.8〜2マイクロメートルの範囲にある。他の標的分子の結合効率は、異なる最適範囲を与え得る。
【0034】
好適な多孔質ベース基材には、多孔質及び微小多孔性の、膜、不織布ウェブ及び繊維が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、多孔質ベース基材は、熱誘起相分離(TIPS)膜などの微小多孔性膜である。TIPS膜は、熱可塑性物質とその熱可塑性物質の融点を超える第二の物質との均質溶液を形成することによって調製される場合が多い。冷却と同時に熱可塑性材料は結晶化し、相が第二物質から分離する。多くの場合、結晶化した熱可塑性材料を延伸する。第二物質は、適宜に延伸前又は後のいずれかで除かれる。微小多孔性膜は、全て3M Company(St.Paul,MN)に譲渡された、米国特許第4,539,256号(Shipman)、同第4,726,989号(Mrozinski)、同第4,867,881号(Kinzer)、同第5,120,594号(Mrozinski)、同第5,260,360号(Mrozinski et al.)及び同第5,962,544号(Waller)に更に開示されている。更に、微小多孔性フィルムは、米国特許第5,962,544号(Waller)に記載されるように、エチレン−ビニルアルコールコポリマーから調製できる。
【0035】
いくつかの例示的なTIPS膜は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリエチレンホモポリマー若しくはコポリマー、又は、ポリプロピレンホモポリマー若しくはコポリマーなどのポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、及びブタジエン含有ポリマー若しくはコポリマーなどのビニル含有ポリマー若しくはコポリマー、並びにアクリレート含有ポリマー若しくはコポリマーを含む。いくつかの用途では、PVDFを含むTIPS膜が、特に望ましい。PVDFを含むTIPS膜は、更に、米国特許第7,338,692号(Smith et al.)に記載される。
【0036】
別の例示的な実施形態では、多孔質ベース基材は、米国特許第6,056,529号(Meyering et al.)、同第6,267,916号(Meyering et al.)、同第6,413,070号(Meyering et al.)、同第6,776,940号(Meyering et al.)、同第3,876,738号(Marinacchio et al.)、同第3,928,517号、同第4,707,265号(Knight et al.)及び同第5,458,782号(Hou et al.)に記載のものなどのナイロン微多孔性フィルム又はシートを含む。
【0037】
別の実施形態では、多孔質ベース基材は不織布ウェブであり、不織布ウェブの製造のための周知のプロセスのいずれかにより製造される不織布ウェブを含んでよい。本明細書で使用するとき、用語「不織布ウェブ」は、マット状の層間に、不規則に及び/又は一定方向に入れられた個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地を意味する。
【0038】
例えば、繊維状不織布ウェブを、毛羽立て、エアレイド、スパンレース、スパンボンド、又はメルトブロー技術、又はこれらの組み合わせにより製造できる。スパンボンド繊維は、典型的には、押し出される繊維の直径を持つ微細で通常は円形をした複数個の紡糸口金の毛管から、溶融した熱可塑性ポリマーをフィラメントとして押し出し、急激に縮小させることにより形成された小径繊維である。メルトブロー繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性物質を、融解した糸又はフィラメントとして、微細で通常は円形をした複数個の金型(die)毛管を通して、溶融した熱可塑性物質のフィラメントを弱めてその直径を縮小させる高速の、通常は加熱されたガス(例えば、空気)の流れの中に押し出すことによって形成されている。その後、高速ガス流によって、メルトブロー繊維は移動され収集面上に堆積し、無作為に分散されたメルトブロー繊維のウェブを形成する。任意の不織布ウェブは、熱可塑性ポリマーの種類及び/又は厚さが異なる単一の繊維又は2つ以上の繊維から製造されてよい。
【0039】
本発明の不織布ウェブの製造方法についての更なる詳細は、Wente,Superfine Thermoplastic Fibers,48 INDUS.ENG.CHEM.1342(1956)又はWente et al.,Manufacture Of Superfine Organic Fibers(Naval Research Laboratories Report No.4364,1954)に見出され得る。
【0040】
官能化基材は、a)少なくとも1つの光開始剤基(又はその反応生成物)を、(b)1種以上のリガンドモノマーと、c)所望により、すくなくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的なフリーラジカル重合性基と、(d)所望により、1種以上の親水性モノマーと共に、含むベース基材の表面に結合したグラフト化基を有する。
【0041】
ベース基材の表面にグラフト化されるモノマーは、通常、(a)e−ビームによりグラフト化するためのアクリロイル基、及び、b)その上にある少なくとも1つの追加的な官能基、の両方を有し、a)紫外線への曝露で重合化を開始するための光開始基と、b)式IIのモノマーから誘導されるリガンド基と、所望により、c)「c)」モノマーから誘導されるその後の重合のための(メタ)アクリロイル又は非(メタ)アクリロイルのフリーラジカル重合性エチレン性不飽和基と、所望により、d)「d」モノマーから誘導されるイオン性基などの親水基と、を含む。
【0042】
アクリレート及びアクリルアミド基などのアクリロイル基は、e−ビーム照射などの電離放射線への曝露におけるこのようなアクリロイル基のより大きな反応性に起因して、基材表面へのモノマーの直接的なグラフト化に好ましい。しかしながら、このようなアクリロイル基全てが、「直接的にグラフト化」され得るわけではない、すなわち、基材表面と共有結合を形成し得るわけではない。一部は遊離したままであり得、その後、紫外線への曝露でポリマー鎖の中に組み込むことにより、「間接的にグラフト化」される。他のエチレン性不飽和基、例えばメタクリルアミド、メタクリレート、ビニル及びビニルオキシ基、アリル及びアリルオキシ基、並びにアセチレン基は、e−ビームグラフト化中の反応性はより低く、ベース基材に直接グラフト化される可能性はより低い。したがって、このような非アクリロイル基の一部は直接グラフト化される場合があるが、その大部分は未反応のまま残存し、紫外線開始型重合の際にポリマー鎖に組み込まれることにより、基材に間接的にグラフト化される。
【0043】
光開始剤「a)」モノマーは、アクリロイル基を介して必要なグラフト化光開始剤基を提供するために多孔質ベース基材の間隙表面及び外側表面を含むベース基材の表面上に直接的にグラフト化されてもよい。リガンド「b)」(式Iの)モノマーは、直接的にグラフト化するためのアクリロイル基、又は、その後の紫外線開始型重合の際にポリマー鎖の中に組み込む(間接的にグラフト化する)ためのメタクリレート基などの非アクリロイル基を有してもよい。アクリロイル基に加えて、モノマー「c)」のフリーラジカル重合性基は、典型的には(メタ)アクリルアミド、メタクリレート、ビニル基、及びアセチレン基などの、グラフト化中に低い反応性を有する他のエチレン性不飽和基であり、したがって、その後の紫外線開始型重合及び架橋のために遊離し、かつ未反応である。
【0044】
「c)」モノマーのアクリロイル基は、典型的には、電離放射線、好ましくはe−ビーム又はガンマ線、に曝露されると、ベース基材の表面に直接的にグラフト化する(すなわち、共有結合を形成する)ことができる。つまり、電子ビームの存在下におけるc)モノマーのアクリロイル基の、多孔質ベース基材の表面との反応は、エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基がアクリレート基を介してベース基材に直接的にグラフト化される反応を生じる。
【0045】
第四のグラフト化親水性モノマー「d)」もまたアクリロイル基を介してグラフト化されてもよく、ベース基材の表面に親水基又はイオン基を提供してもよい。いくつかの実施形態では、イオン基を有する親水性モノマーは、官能化基材の二次イオン相互作用を提供するために基材表面に直接的又は間接的にグラフト化されてもよい。例えば、イオン基は、基材表面から種々の生体物質を妨害又は反発するために、正電荷(選択されたpHにおいて)を有するように選択されてもよい。他の実施形態では、第四のモノマーはグラフト化工程中に反応性が低いエチレン性不飽和基を有してもよいが、その後、紫外線硬化工程においてフリーラジカル重合により組み込まれる(間接的にグラフト化される)。
【0046】
グラフト光開始剤モノマーはアクリロイル基及び光開始剤基を含み、この光開始剤基は水素引抜き型又はα開裂型光開始剤基であり、次式で表され得る。
【0047】
【化3】

【0048】
式中、
は、−O−又は−NR−であり、
は、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
はアクリレート基をPI基と結合している二価結合基であり、
PIは以下の式で表される光開始剤である。
【0049】
【化4】

【0050】
式中、Rは以下のものである。
【0051】
【表1】

【0052】
式中、RはH又はC〜Cアルキル基であり、
各Rは、独立して、ヒドロキシル基、フェニル基、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルコキシ基である。このような光開始剤モノマーは、例えば、米国特許第5,902,836号(Babu et al.)及び同第5,506,279号(Babu et al.)に記載されている。結合R基に関する更なる詳細は、本明細書の光開始剤グラフトモノマーの調製方法、及び引用文献を参照すると記載されている。
【0053】
ある好ましい実施形態では、光開始剤モノマーは、以下の一般式で表される水素引抜き型であってもよい。
【0054】
【化5】

【0055】
は、O又はNHであり、
pは0又は1であり、
oは0又は1〜5の整数であり、
a、b、及びcは独立して0又は1であり、
はCH又はSi(Rであり、
はC(R又はSi(Rであり、
は、−O−、−NH−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)NH−、又は−OC(O)NH−であり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキル基であり、
Gは共有結合、−(CH−、又は−(CHO−であり、ここでdは1〜4、好ましくは1〜2の整数であり、
PIは、以下の一般式を有する放射線感受性水素引き抜き基であり、
【0056】
【化6】

【0057】
式中、Arは6〜12個の炭素原子を有する置換アレーン、好ましくはベンゼントリイル基であり、
12は、水素、C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシ基、又はフェニル基であり、
13は、C〜Cアルキル基、3〜14個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は
【0058】
【化7】

【0059】
であり、ここでR14及びR15は、独立して、水素、C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシ基、及びフェニル基から選択される。
【0060】
式XIIIに包含される水素引抜き光開始剤モノマーに含まれるものに、PIが、以下の化合物(又はその置換誘導体)、ベンゾフェノン(benzopheneone)、アントラキノン、5,12−ナフタセンキノン、アセアントラセンキノン(aceanthracenequinone)、ベンゾ(A)アントラセン−7,12−ジオン、1,4−クリセンキノン、6,13−ペンタセンキノン、5,7,12,14−ペンタセンテトロン、9−フルオレノン、アントロン、キサントン、チオキサントン、アクリドン、ジベンゾスベロン、アセトフェノン及びクロモン、のうちの1つから誘導される部分であるものがあり、Gへの結合は、架橋カルボニル基に対して好ましくはパラに位置する。式XIIIのモノマーの合成は、米国特許第5,773,485号(Bennett et al)に記載されている。
【0061】
吸収する溶液中の式XII又はXIIIの光開始剤モノマーの重量パーセントは、他のモノマー(すなわち、「b)」、「c)」及び「d)」モノマー)の総重量に対して少なくとも約0.15%、一般に約10%未満であり得る。光開始剤モノマーの全部又は一部は、e−ビーム照射に曝露されるとベース基材の表面に直接グラフトされ得ることが理解される。未反応のグラフト化していない光開始剤モノマーは、紫外線に曝露されると成長するポリマー鎖中に組み込まれ、これにより、多孔質ベース基材に対しモノマーが間接的にグラフトされる。複数の吸収工程が使用される場合、いっそう多くの吸収する溶液のうちの1つは光開始剤モノマーを全く含有しなくてもよいことが更に理解される。
【0062】
様々な光開始剤グラフトモノマーは、1)第一反応性官能基を含むアクリロイルモノマーと、2)放射線感受性基(光開始剤基)及び第二反応性官能基を含む化合物と、を反応させることにより製造でき、2つの官能基は互いに共反応性である。好ましい共反応性化合物は、最大36個の炭素原子、任意の1つ以上の酸素原子及び/又は窒素原子、及び少なくとも1つの反応性官能基を有する、エチレン性不飽和脂肪族、脂環式、及び芳香族化合物である。第一及び第二官能基が反応するとき、共有結合を形成し、共反応性化合物を結合する。
【0063】
有用な反応性官能基の例には、ヒドロキシル、アミノ、オキサゾリニル、オキサゾロニル、アセチル、アセトニル、カルボキシル、イソシアナート、エポキシ、アジリジニル、ハロゲン化アシル、及び環式無水物基が挙げられる。第一反応性官能基がイソシアナート官能基の場合、第二共反応性官能基は、好ましくはアミノ、カルボキシル、又はヒドロキシル基を含む。第一反応性官能基がヒドロキシル基を含む場合、第二共反応性官能基は、好ましくはカルボキシル、イソシアナート、エポキシ、無水物、ハロゲン化アシル、又はオキサゾリニル基を含む。第一反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、第二共反応性官能基は、好ましくはヒドロキシル、アミノ、エポキシ、ビニルオキシ又はオキサゾリニル基を含む。
【0064】
反応性官能基を有するアクリレート化合物の代表例には、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート;3−アミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート;2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オン及び2−プロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オンなどのオキサゾロニル化合物;アクリル酸及び4−カルボキシベンジルアクリレートなどのカルボキシ置換化合物;イソシアナートエチルアクリレート及び4−イソシアナートシクロヘキシルアクリレートなどのイソシアナート置換化合物;グリシジルアクリレートなどのエポキシ置換化合物;N−アクリロイルアジリジンなどのアジリジニル置換化合物;及び、ハロゲン化アクリロイルが挙げられる。
【0065】
共反応性化合物の代表例として、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジメトキシエタノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノン、(4−イソシアナートフェニル)−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタノン、1−{4−[2−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]}−2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエタノン、1−[4−(2−アミノエトキシ)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノン、及び1−[4−(カルボメトキシ)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノンなどの官能基置換化合物が挙げられる。
【0066】
光開始剤モノマーのアクリレート基の全部又は一部は、照射されるとベース基材の表面に直接的にグラフト化され得ると理解される。グラフト化されていない遊離アクリロイル基は、紫外線開始型重合でポリマー鎖の中に組み込まれることにより、この後、基材に間接的にグラフト化されてもよい。
【0067】
「b)」リガンドモノマーの第二のグラフト化は、アクリロイル基と、中性又は負電荷の生体物質に対して親和性を有するリガンド基と、を含む。リガンドモノマーは、先述したように、次の一般式を有する。
【0068】
【化8】

【0069】
式中、
は、H又はC〜Cアルキルであり、
は、好ましくは1〜20個の炭素を有し、所望によりエステル、アミド、ウレタン又は尿素連結基を含有する、二価アルキレンであり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
は、H、C〜Cアルキル又は−N(Rであり、Xは、−O−又は−NR−である。
【0070】
このようなリガンドモノマーは、(メタ)アクリロイル化合物の、典型的にはメタ(アクリロイル)ハロゲン化物の、次式の化合物との縮合により製造され得る。
【0071】
【化9】

【0072】
及びR〜Rは、先に定義した通りである。
【0073】
特定の好ましい実施形態では、リガンドモノマーは、次の一般式を有する。
【0074】
【化10】

【0075】
式中、
は、H又はC〜Cアルキルであり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
は、H、C〜Cアルキル又は−N(Rであり、
は、−O−又は−NR−であり、ここで、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
及びRは、各々独立してC〜C10アルキレンであり、
Zは、エステル、アミド、尿素又はウレタン基である。好ましくは、R及びR内の炭素原子の合計は、2〜10である。
【0076】
式XIIの光開始剤モノマーについて記載したのと同様の方法で、式Iaのリガンドモノマーは、1)第一反応性官能基を含むアクリロイルモノマーと、2)リガンド基及び第二反応性官能基(式IVのものなど)を含む化合物と、の反応により製造することができ、これら2つの官能基が互いに共反応性である。第一及び第二の官能基が反応するとき、これらは共有結合を形成し、表記「Z」基により共反応性化合物を連結する。いくつかの実施形態では、式Iaのリガンドモノマーは、アルケニルオキサゾリノンの、式IVの化合物との反応により調製されてもよい。
【0077】
リガンドモノマーI又はIaのアクリロイル基の全部又は一部は、第一吸収工程の中に組み込まれている場合、電離放射線の曝露で基材の表面に直接的にグラフト化されてもよく、又は、その後、紫外線開始型重合でポリマー鎖の中に組み込むことにより、基材に間接的にグラフト化されてもよいことが理解される。
【0078】
直接的にグラフト化される場合、ベース基材の表面は、それに結合した次式のリガンド基を含んでもよい。
【0079】
【化11】

【0080】
及びR〜Rは、先に定義した通りである。
【0081】
間接的にグラフト化される場合、リガンドモノマーは、光開始剤の残基を介してグラフト化され、ベース基材はそれに結合した次式のリガンド基を有する。
【0082】
【化12】

【0083】
式中、
、R、R、R、R及びXは先に定義したとおりであり、
PIは、基材表面にグラフト化された光開始剤の残留物である。例えば、2−プロペノイルアミノエタン酸、2−(4−(2−ヒドロキシ−2メチルプロパノイル)フェノキシ)エチルエステルなどのグラフト化光開始剤モノマーを、e−ビームエネルギーなどの電離放射線を用いて基材表面にグラフトさせてよい。紫外線の存在下では、光開始剤はα開裂を経て2つのラジカルになる。式VIに示され、以下のスキームIに図示されるように、リガンドモノマー又は他のモノマーの存在下では、ラジカルはエチレン性不飽和基(例えば、記載するアクリロイル基)を付加し、光開始剤の残留物を介して基材表面にリガンドモノマーを間接的にグラフト化してもよい。リガンドモノマーのラジカル付加生成物が、そこから懸垂するリガンド基を有するグラフト化ポリマーを製造するために、追加的なリガンドモノマー及び他の任意のモノマーで更に共重合し得ることが理解される。
【0084】
【化13】

【0085】
更に、グラフト化プロセスは、リガンドモノマー又は式Iのカルボニルに対してα炭素上にラジカルを有するラジカル種が生じ、いっそう多くの追加のリガンド「b)」モノマーのうちの1つ、いっそう多くの光開始剤「a)」モノマーのうちの1つ、1種以上の「c)」モノマーと更に重合されてもよく、以下に簡潔に示すような、ポリマー鎖から懸垂されるこれらの基を有するグラフト化ポリマーをもたらすと理解される。グラフト化ポリマー鎖の形成により、所望のリガンド基の密度、及び結合効率が著しく上昇する。
【0086】
基材−(MPI)−(M−(M−(M
この式において、−(MPI)−は、グラフト化光開始剤モノマーの残留物(スキームIに示される)を表し、−(Mは、「x」個の重合モノマー単位を有する重合したリガンドモノマーを表し、ここで、xは少なくとも1であり、好ましくは2であり、−(Mは、y個の重合モノマー単位を有する重合したモノマー「c)」を表し、ここで、yは0であってもよく、好ましくは少なくとも1であり、−(Mは、z個の重合モノマー単位を有する重合したモノマー「d)」を表し、ここで、zはゼロであってもよく、好ましくは少なくとも1である。ポリマーはランダム型又はブロック型であってもよく、2つの重合性基を有する「c)」モノマーはポリマー鎖間に架橋をもたらすことができる。ポリマーは、スキームIに示されるように、光開始剤の残基を介して直接的にグラフト化されてもよく、又は、本明細書に記載のように、式Vに示されるようなリガンド「b)」モノマー、「c)」モノマー若しくは「d)」モノマーを介して直接的にグラフト化されてもよい。ポリマーは、未反応のグラフト化していない光開始剤モノマー由来の重合した光開始剤モノマー単位を更に含むことができる。
【0087】
第三グラフトモノマー「c)」は、(a)グラフト化のための1つ以上のアクリロイル基と、(b)続く架橋のための1つ以上の第二エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基と、を含む。第二エチレン性不飽和基はアクリレート又は非アクリレートであってもよく、すなわち、e−ビームグラフト化工程中、アクリレート基と比較して低い反応性を有する他のエチレン性不飽和基であってもよい。好ましくは第二エチレン性不飽和基は非アクリレート基であり、この後の紫外線架橋のために、グラフト化工程中は大部分が遊離かつ未反応の状態のままである。有用な第二非アクリレートエチレン性不飽和基には、メタクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル基、ビニルオキシ、アセチレン基、アリル及びアリルオキシ基が挙げられる。
【0088】
有用な第三グラフトモノマー「c)」は、次の一般式を有し得る。
【0089】
[CH=CH−C(O)−X−R10−Q−Z、VII
式中、Zは、アクリロイル又は非アクリロイルのエチレン性不飽和重合性基であり、
は、−O−又は−NRであり、ここで、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
Qは、共有結合「−」、−O−、−NR−、−CO−、及び
−CONR−から選択される二価結合基であり、ここでRは、H又はC〜Cアルキルであり、
10は価数a+bのアルキレン基であり、好ましくは1〜20個の炭素原子を有し、所望により1つ以上のカテナリー酸素原子及び/又は1つ以上のヒドロキシル基を含有し、a及びbは各々少なくとも1である。好ましくは、Z基は、紫外線開始型重合の際、ポリマー鎖の中に間接的にグラフト化される反応性が低い非アクリロイルである。
【0090】
特定の実施形態では、R10は、官能化基材に親水性を提供するためにポリ(アルキレンオキシド基)であり、次式を有する。
【0091】
Z−Q−(CH(R)−CH−O)−C(O)−CH=CH、VIII
式中、Zは、アクリロイル又は非アクリロイルの、重合性エチレン性不飽和基であり、
は、H又はC〜Cアルキル基であり、nは2〜100、好ましくは5〜20であり、Qは、共有結合「−」、−O−、−NR−、−CO−、及び−CONR−から選択される二価結合基であり、ここでRは、H又はC〜Cアルキルである。好ましくは、Z基は、紫外線開始型重合の際、ポリマー鎖に間接的にグラフトされる反応性が低い非アクリレートである。
【0092】
一実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)基((CH(R)−CH−O)−で表される)は、ポリ(エチレンオキシド)(コ)ポリマーである。別の実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)コポリマーである。かかるコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、又はグラジエントコポリマーであってもよい。
【0093】
グラフト化のための第一アクリロイル基と、続く紫外線架橋のための第二エチレン性不飽和基と、を有する好適なモノマーには、ポリエチレングリコールから誘導されるものを含むポリアルキレングリコールアクリレートメタクリレート、及びポリプロピレングリコールアクリル化モノマーが挙げられるが、これらには限定されない。
【0094】
別の実施形態では、第三「c)」モノマーは、少なくとも1つのアクリレート基と、少なくとも1つの他のエチレン性不飽和重合性基(好ましくはアクリレート基ではなく、メタクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル基、ビニルオキシ、アセチレン基、アリル、及びアリルオキシ基から選択できる)と、を有する部分的にアクリル化したポリオールである。かかる部分的にアクリル化したポリオールは、1つ以上の遊離ヒドロキシル基を有してもよい。
【0095】
本発明で有用なポリオール類としては、約2〜18個の炭素原子及び2〜5個、好ましくは2〜4個のヒドロキシル基を有する、脂肪族、脂環式、又はアルカノール置換アレーンポリオール又はそれらの混合物が挙げられる。
【0096】
有用なポリオールの例には、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、及びポリアルコキシ化ビスフェノールA誘導体が挙げられる。最も好ましくは、「c)」モノマーは、遊離ヒドロキシル基と、3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのメタクリレート基と、を有するグリセロールのモノアクリレートである。
【0097】
いくつかの好ましい実施形態では、リガンド「b)」及びエチレン性不飽和「c)」モノマー及び親水性「d)」モノマーのエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基は、互いに効率的に共重合できるように選択される。つまり、「b)」、「c)」及び「d)」の各モノマーが同一の重合性基を有することが好ましい。
【0098】
一例示的実施形態では、グラフト化された種は、電離放射線、好ましくはe−ビーム又はガンマ線、への曝露で、式VII又はVIIIのポリエチレングリコールアクリレートモノマーと、ベース基材と、の反応から生じる。これらのグラフトモノマーは、ポリ(アルキレンオキシド)基の存在により疎水性多孔質ベース基材を親水性官能化基材に変化させるために使用することができる。生じる親水性基材は、即時湿潤性などの所望の特性を多数有することができる。ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)から調製されるものなどのいくつかの疎水性基材の場合、リガンド官能化に先立って基材を親水性にするために、光開始剤a)モノマー及びリガンドb)モノマーでの吸収及びグラフト化に先立って、まず、式VII又はVIIIの親水性「c)」モノマーで吸収及びグラフト化することが好ましい。
【0099】
所望による第四の親水性モノマー「d)」は、基材に親水性を提供するために、又は、ウィルスを結合するときに基材に対してより大きな選択性を提供するために、少なくとも1つのアクリロイル又は反応性の低い他の非アクリロイル基と、ポリ(オキシアルキレン)及びイオン基などの親水基とを含む。第四のモノマーがアクリロイル基を含有する場合、これはベース基材の表面に直接的にグラフト化されてもよい。非アクリロイルのエチレン性不飽和基を含有する場合、グラフト化工程中に大部分が未反応のまま残存してもよく、これらは紫外線重合工程中に組み込まれる。アクリロイル基の全部又は一部は、多孔質基材に直接的にグラフト化されてもよく、一部は未反応であるが、紫外線開始型照射によりポリマー内に間接的にグラフト化されると理解される。逆に、反応性が低い他のエチレン性不飽和基の一部は直接的にグラフト化されてもよいが、一般にこのような基は、グラフト化工程中大部分が未反応のまま残存し、紫外線開始型照射によりポリマーに間接的にグラフト化される。
【0100】
親水性イオン基は中性であってもよく、正電荷、負電荷、又はこれらの組み合わせを有することができる。いくつかの好適なイオンモノマーの場合、イオン基は、pH条件により中性であっても又は帯電されていてもよい。c)モノマーに加えて、典型的にはこの種のモノマーを用い、多孔質ベース基材に所望の親水性を付与する。ウィルス捕捉への応用では、選択されたpHにおいて正電荷を有するグラフトイオン性モノマーの付加は、抗体などの正電荷の生体物質を反発する一方で、ウィルスの選択的結合を可能にし得る。
【0101】
いくつかの好ましい実施形態では、第三モノマーは、アクリレート基又は反応性の低い他のエチレン性不飽和基と、ポリ(アルキレンオキシド)基とを有してもよく、例えば、モノアクリル化ポリアルキレンオキシド化合物であり、ここで、末端はヒドロキシ基又はアルキルエーテル基である。
【0102】
いくつかの実施形態では、負電荷を有するイオン性モノマーには、式IXの(メタ)アクリロイルスルホン酸又はその塩が挙げられる。
【0103】
【化14】

【0104】
式中、Yは直鎖又は分枝鎖アルキレン(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン)であり、Lは−O−又は−NR−であり、ここでRは、H又はC〜Cアルキルである。例示的な式IXによるイオン性モノマーには、N−アクリルアミドメタンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、及び2−メタクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性モノマーの塩も使用することができる。塩に対する対イオンは、例えば、アンモニウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン又はナトリウムイオンであってもよい。式IXに関して、続く紫外線開始型重合の際の組み込み(間接的なグラフト化)のために、グラフトアクリロイル基は、反応性が低い別のエチレン性不飽和基に置換されると理解される。
【0105】
(選択されたpHで)負電荷を有する他の好適なイオン性グラフトモノマーには、ビニルスルホン酸及び4−スチレンスルホン酸などのスルホン酸;(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸(例えば、2−(メタ)アクリルアミドエチルホスホン酸及び3−(メタ)アクリルアミドプロピルホスホン酸)などの(メタ)アクリルアミドホスホン酸;アクリル酸及びメタクリル酸;並びに、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート及び3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレートなどのカルボキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。好適な更なる他の酸モノマーには、米国特許第4,157,418号明細書(ヘイルマン(Heilmann))に記載されたものなどの(メタ)アクリロイルアミノ酸が挙げられる。代表的な(メタ)アクリロイルアミノ酸としては、N−アクリロイルグリシン、N−アクリロイルアスパラギン酸、N−アクリロイル−b−アラニン、及び2−アクリルアミドグリコール酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸モノマーの任意の塩も用いることができる。
【0106】
(選択されたpHで)正電荷を提供可能であるいくつかの例示的なイオン性グラフトモノマーは、式Xのアミノ(メタ)アクリレート又はアミノ(メタ)アクリルアミド、又はそれらの四級アンモニウム塩である。四級アンモニウム塩の対イオンは、多くの場合、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩及びこれらに類するものである。
【0107】
【化15】

【0108】
式中、Lは−O−又は−NR−であり、ここでRは、H又はC〜Cのアルキル−であり、Yはアルキレン(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン)である。各R11は、独立して水素、アルキル、ヒドロキシアルキル(すなわち、ヒドロキシで置換されたアルキル)又はアミノアルキル(すなわち、アミノで置換されたアルキル)である。あるいは、2つのR11基は、それらが結合される窒素原子と共に部分的に不飽和(すなわち、不飽和であるが芳香族でない)若しくは飽和の芳香族である複素環式基を形成することができ、ここで、複素環式基は、所望により部分的に不飽和(例えば、シクロヘキセン)若しくは飽和(例えば、シクロヘキサン)の芳香族(例えば、ベンゼン)である第二環に結合されてもよい。
【0109】
式IX及びXに関して、続く紫外線開始型重合の際の組み込み(間接的なグラフト化)のために、グラフトアクリロイル基は、反応性が低い別のエチレン性不飽和基、例えばメタクリレート、メタクリルアミド、ビニル、ビニルオキシ、アリル(ally)、アリルオキシ(alloxy)、及びアセチレニルに置換されると理解される。
【0110】
式Xのいくつかの実施形態では、R11基は両方とも水素である。他の実施形態では、一方のR11基は水素で、他方は1〜10個、1〜6個又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。更に他の実施形態では、R11基の少なくとも1つは、ヒドロキシ基又はアミノ基がアルキル基の炭素原子のいずれかに位置づけられた状態で1〜10個、1〜6個又は1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル又はアミノアルキルである。更に他の実施形態において、R11基は、それらが結合される窒素原子と結合し複素環式基を形成する。複素環式基は、少なくとも1つの窒素原子を含み、酸素又は硫黄などの他のへテロ原子を含有することができる。代表的な複素環式基としては、イミダゾリルが挙げられるがこれに限定されない。複素環式基は、ベンゼン、シクロヘキセン又はシクロヘキサンなどの追加の環に結合されてもよい。追加の環に結合される代表的な複素環式基としては、ベンゾイミダゾリルが挙げられるがこれに限定されない。
【0111】
例示的なアミノアクリレート(すなわち、式XのLが−O−である)には、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート(acylate)、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−tert−ブチルアミノプロピルメタクリレート、N−tert−ブチルアミノプロピルアクリレート、及びこれらに類するものなどのN,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレートが挙げられる。
【0112】
例示的なアミノ(メタ)アクリルアミド(すなわち、式XのLが−NR−である)には、例えば、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(2−イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)アクリルアミド及びN−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)メタクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
式Xのイオン性モノマーの例示的な四級塩には、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)及び(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0114】
ベース基材に(選択されたpHで)正電荷の基を提供することができる他のモノマーには、アルケニルアズラクトンのジアルキルアミノアルキルアミン付加物(例えば、2−(ジエチルアミノ)エチルアミン、(2−アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロライド及びビニルジメチルアズラクトンの3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン付加物)並びにジアリルアミンモノマー(例えば、ジアリルアンモニウムクロライド及びジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が挙げられる。他には、ポリエーテルアミン(ポリエーテルアミン構造に基づくモノアミン、ジアミン及びトリアミンなど)のアルケニルアズラクトン付加物が挙げられる。これらの化合物の一例は、Huntsman(The Woodlands,TX,USA)からのJeffamine(登録商標)シリーズである。他の例には、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級塩が挙げられる。
【0115】
直接的にグラフト化することにより、又はその後の紫外線重合(間接的なグラフト化)中に組み込まれ得る第四の中性d)モノマーは、(メタ)アクリロイル又は非アクリロイルのエチレン性不飽和基と非重合性末端とを有するポリ(アルキレンオキシド)モノマーである。このような化合物は、次式を有し得る。
【0116】
CH=CR−C(O)−X−(CH(R)−CH−O)−R、XI
式中、各Rは独立してH又はC〜Cアルキルであり、Xは−O−又は−NR−であり、ここで、RはH又はC〜Cアルキルである。
【0117】
更に詳細を以下に記載するように、官能化基材は上記d)モノマーを用いて調製され、ベース基材の表面に親水性又はイオン性を提供することができる。ベース基材の表面特性を改質するために、上記モノマーの2つ以上が使用されるとき、モノマーは、単一反応工程(すなわち、2つ以上のグラフトモノマーは全て、電離放射線への曝露時に存在する)又は逐次反応工程(すなわち、第一グラフト光開始剤モノマー「a)」は、電離放射線への第一曝露時に存在し、第二グラフトモノマー「b)及び/又はc)」は、電離放射線への第二曝露時に存在する)でベース基材にグラフト化されてもよい。同様に、これらのモノマーa)、b)、c)及びd)の全ては、第一グラフト化工程中に存在して直接的にグラフト化されてもよく、又は続く紫外線開始型重合の際に組み込むことにより間接的にグラフト化されてもよい。別の方法としては、かかるモノマーの全部又は一部は、第一工程で、又はその後の吸収工程で吸収されてもよい。別の方法としては、疎水性基材は、式VIII又はXIにより表されるものなどの親水性モノマーでの第一吸収及びグラフト化により親水性にされてもよく、その後、光開始剤a)モノマーで吸収及び直接的にグラフト化され、他のb)、c)及びd)モノマーで吸収及び直接的に又は間接的にグラフト化される。
【0118】
上記リガンド官能化基材は、プロセス工程の組み合わせを使用して調製されてもよい。本方法は、
1)ベース基材、好ましくは間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材、を提供する工程と、
2)ベース基材を、(a)アクリロイル基と式XIIの光開始剤基とを有する少なくとも1種のグラフトモノマーと、(b)式I又はIaの1種以上のリガンドb)モノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの式VII又はVIIIの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有するモノマーと、(d)所望により、1つ以上の式IX、X又はXIの親水性d)モノマーと、を含む溶液でコーティングする(好ましくは多孔質基材に吸収させる)工程と、
3)ベース基材の表面に結合したグラフト化光開始剤基を含む第一官能化基材を形成するために、コーティングされた基材(又は吸収させた多孔質ベース基材)を電離放射線に曝露する工程と、
4)残存するエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を重合させるために、グラフト化光開始剤基を含むベース基材を紫外線に曝露する工程と、を含む。
【0119】
特に好ましい実施形態では、本方法は、
1)ベース基材、好ましくは間隙表面及び外側表面を有する多孔質ベース基材、を提供する工程と、
2)ベース基材を、(a)アクリロイル基と式XIIの光開始剤基とを有する少なくとも1種のグラフトモノマーと、(b)所望により、1つ以上の式I又はIaのリガンドモノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と式VII又はVIIIの少なくとも1つの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、(d)所望により、1つ以上の式IX、X又はXIの親水性モノマーと、を含む第一溶液でコーティングする(好ましくは多孔質基材に吸収させる)工程と、
3)その表面に結合したグラフト化光開始剤基を有するベース基材を含む第一官能化基材を形成するために、コーティングされた基材(又は吸収させた多孔質ベース基材)を電離放射線、好ましくはe−ビーム又はガンマ線、に曝露する工程と、
4)グラフト化光開始剤基を有するベース基材を、(b)1種以上の上記リガンドモノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、(d)所望により、1種以上の親水性モノマーと、を含む第二溶液でコーティングする(好ましくは多孔質基材に吸収させる)工程と、
5)残存するエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を重合させるために、グラフト化光開始剤基を含むベース基材を紫外線に曝露する工程と、を含む。
【0120】
本開示の方法は、電離放射線で多孔質又は非多孔質基材表面を照射して、モノマーがその上にグラフト化されているかかる表面上にフリーラジカル反応部位を調製することを伴う。「電離放射線」は、ベース基材の表面上にフリーラジカル反応部位の形成を引き起こすのに十分な線量及びエネルギーの放射線を意味する。電離放射線には、ベータ、ガンマ、電子ビーム、X線及び他の電磁放射線が挙げられ得る。場合によっては、コロナ放射線は十分に高いエネルギー放射線であり得る。放射線は、十分に高エネルギーであり、そのため、ベース基材の表面により吸収されると、十分なエネルギーがその支持体に移動して、支持体内の化学結合の開裂を生じ、結果として支持体上にフリーラジカル部位が形成される。
【0121】
高エネルギー放射線の線量は、メガラッド(Mrad)、又は、mRadの1/10であるキログレイ(kGy)で測定される。線量は、所望のレベルの単回投与で、又は、累積すると所望のレベルになる複数回投与で、管理され得る。線量は、累積的に約1kGy〜約100kGyの範囲であり得る。好ましくは累積線量は、放射線損傷に耐性のある基材の場合、30kGy(3Mrad)を超える。
【0122】
市販の供給元の利用が容易であることにより、このグラフト化方法の場合、電子ビーム及びガンマ線が好ましい。電子ビーム発生装置は、種々の供給元から市販されており、Energy Sciences,Inc.(Wilmington,MA)からのESI「ELECTROCURE」EB SYSTEM、及び、PCT Engineered Systems,LLC(Davenport,IA)からのBROADBEAM EB PROCESSORが挙げられる。ガンマ照射源は、コバルト−60高エネルギー源を使用してMDS Nordionから市販されている。いかなる特定種類機器及び照射試料位置であろうとも、放出される照射線量は、「Practice for Use of a Radiochromic Film Dosimetry System」と題するASTM E−1275により測定することができる。エキストラクターグリッド電圧を変更することにより、供給源に対するビーム直径及び/又は距離、各種照射線量率を得ることができる。
【0123】
ベース基材は、非多孔質又は多孔質であり得る。この実施形態に使用される多孔質ベース基材のいくつかは、多孔質、微小多孔性の不織布、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0124】
官能化基材を作製する1つの代表的な方法を図1に示す。図1に示すように、例示的方法10は、吸収工程100、挟み込み工程200、照射工程300、紫外線開始型重合工程400、剥離工程500、洗浄/すすぎ工程600、乾燥工程700、及び巻き取り工程800からなる工程を含む。これらの例示の工程の各々を下記に更に詳細に説明する。
【0125】
本発明の官能化基材を作製する方法は、1つ以上の下記の工程を含んでもよい。
【0126】
吸収工程
図1に示すように、ベース基材、好ましくは多孔質ベース基材12、を含むロール11は巻き戻すことができ、その結果、多孔質ベース基材12が吸収工程100に入る。吸収工程100では、ベース基材12をアプリケータ14に接触させるか、又はアプリケータ14に近づける、すなわちアプリケータ14は、1種以上のグラフトモノマーを含有する溶液13のリザーバに接続している。ローラー15及び16がベース基材12を案内し、アプリケータ14を通過させ、その結果、ベース基材12は、所望の時間にわたって溶液13に曝露される。典型的には、多孔質ベース基材12が溶液13に曝露される時間は、最大で約1.0分、より典型的には約15秒未満である。ベース基材12は、通常、吸収工程100を通り、1分未満で照射工程300に進む。いくつかの吸収工程で、ベース基材12を溶液13で飽和させる。
【0127】
上記のように、溶液13は、表面又はベース基材、好ましくは多孔質ベース基材12の間隙表面及び外側表面の上にグラフト化するのに好適な1種以上のグラフトモノマーを含む。上記した例示のグラフトモノマーの全てを溶液13中に含むことができる。グラフトモノマーに加え、溶液13は、例えば、紫外線硬化へ向けた1種以上の他の非グラフトモノマー及び溶媒などのその他の物質を含有することができる。溶液13中の各グラフト化モノマーの濃度は、溶液13中のグラフト化モノマー又はモノマー類、所望のグラフトの程度、グラフト化モノマー(類)の反応性及び使用される溶媒を含むがこれらに限定されない多くの要因により変更されてもよい。典型的には、溶液13中の各モノマーの濃度は、溶液13の総重量に対して約1重量%〜約100重量%、望ましくは約5重量%〜約30重量%、及びより望ましくは約10重量%〜約20重量%の範囲である。
【0128】
ひとたびベース基材12に所望の時間で溶液13を吸収させると、ベース基材12は、ガイドローラ17によって挟み込み工程200に直接向かう。ガイドローラ17は、所望により吸収済みベース基材12から過剰の溶液13を計量するために使用されてもよい。あるいは、吸収済みベース基材12から気泡及び過剰の溶液13を圧搾するためにローラ(図示せず)を使用することができる。典型的には、ベース基材12は、実質的に飽和した状態で(すなわち、ベース基材12は最大量の又は最大量に近い溶液13を含有する)挟み込み工程200に入り、ここで、実質的に全ての表面、好ましくはベース基材12の全ての間隙表面及び外側表面、が溶液13でコーティングされている。
【0129】
吸収工程100は、多孔質ベース基材12に溶液13を導入する1つの可能な方法に過ぎないことに留意されたい。他の好適な方法には、スプレーコーティング、フラッドコーティング、ナイフコーティング、Meyerバーコーティング、ディップコーティング及びグラビアコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
挟み込み工程
挟み込み工程200では、吸収済みベース基材12を取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19との間に挟み込み(すなわち配置し)、多層挟み込み構造24を形成する。例示的方法10に示すように、取り外し可能なカバー層19をロール18から巻き出し、ローラー20を通って、吸収済みベース基材12の外側表面と接触させてよく、その一方で、取り外し可能なキャリア層22をロール21から巻き出し、ローラー23を介して、吸収済みベース基材12の反対側の外側表面と接触させてもよい。ローラー20及び23でギャップを形成し、多孔質基材に付与される吸収溶液13の量を調整するのに用いてもよい。取り外し可能なカバー層19及び22は、その後のラジカルプロセスから酸素を排除し、また、吸収溶液13の流出を防止する役目を果たす。
【0131】
取り外し可能なカバー層19及び取り外し可能なキャリア層22は、チャンバ25から出る際に官能化基材30(すなわち、グラフト化ベース基材12)が酸素に直接曝露されてしまうことを一時的に防ぐことができる任意の不活性シート材を含んでもよい。取り外し可能なカバー層19及び取り外し可能なキャリア層22を形成する好適な不活性シート材料には、ポリエチレンテレフタレートフィルム材、他の芳香族ポリマーフィルム材及び任意の他の非反応性ポリマーフィルム材が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、取り外し可能なキャリア層22は、紫外線透過性の材料から選択してもよい。ひとたび組み立てられると、多層挟み込み構造体24は、照射工程300に進む。
【0132】
照射工程300において、多層挟み込み構造体24は、溶液13内の1種以上のモノマーをベース基材12の表面上にグラフト化するように十分な量の電離放射線(好ましくはe−ビーム又はガンマ線)に曝露され、取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19との間に挟み込まれる官能化基材30を含む多層挟み込み構造体27を形成する。例示の方法10に示されるように、多層挟み込み構造体24は、十分な線量の放射線を供給できる少なくとも1つの装置26を含むチャンバあ25通って進む。単一のデバイス26は、十分な線量の放射線を提供可能であるが、特に比較的厚い多孔質ベース基材12の場合には、2つ以上のデバイス26を使用してもよい。典型的には、チャンバ25は、フリーラジカル重合を抑制することが知られている最少量の酸素と共に、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどのような不活性雰囲気を含む。取り外し可能なカバー層19がない状態で、ベース基材12を照射する実施形態では、チャンバ25内部の酸素量がより関心事となり得る。取り外し可能なキャリア層22及び取り外し可能なカバー層19が多孔質ベース基材12を覆っているとき、チャンバ25内部の酸素への曝露は最小限になる。
【0133】
照射工程300は、続く紫外線開始型重合を干渉するであろうあらゆる溶存酸素を、ペルオキシ化合物に変換するという更なる利点を提供する。したがって、e−ビーム照射工程300は、酸素を除去することにより、続く紫外線開始400を促進する。
【0134】
放射線の他の供給源が使用されてもよいが、装置26は、望ましくは電子ビーム源を含む。電子ビーム(e−ビーム)は一般的に、約0.00013Pa(10−6Torr)に維持された真空チャンバ内の反射板と抽出グリッドとの間に保持されているタングステンワイヤフィラメントに高電圧を印加することによって発生する。フィラメントが、高電流で加熱され、電子を生成する。電子は、リペラープレートとエキストラクターグリッドにより金属フォイルの薄いウィンドウに向かって誘導され、加速される。10メートル/秒(m/sec)を超える速度で進行し、約100〜300キロ電子ボルトを所有する加速電子は、真空チャンバからフォイルウィンドウを通過し、いかなる物質が位置付けられていても直ちにフォイルウィンドウを超えて透過する。
【0135】
生成する電子の量は、電流に直接的に関係する。エキストラクターグリッド電圧が増加すると、タングステンワイヤフィラメントから引き出される電子の加速度又は速度は増加する。コンピュータ制御下にある場合、e−ビーム処理は非常に正確であることができ、その結果、電子の正確な線量及び線量率を多層挟み込み構造体24に誘導することができる。
【0136】
チャンバ25内部の温度は、望ましくは従来の手段により周囲温度に保持される。いかなる特定のメカニズムに限定されることも意図しないが、吸収多孔質ベース基材の電子ビームへの曝露は、基材上でフリーラジカル反応開始をもたらし、続いてエチレン性不飽和基を有するモノマーなどの二重結合を有するモノマーと反応することを可能にすると思われる。
【0137】
多層挟み込み構造体24により受容される全線量は、主としてグラフト化モノマーが多孔質ベース基材上でグラフトされる度合に影響を及ぼす。一般的には、吸収工程中に加えたグラフトモノマーのうち、少なくとも10重量%、望ましくは20重量%、更に望ましくは50重量%を超えるグラフトモノマーが直接的グラフト化種に変換されることが望ましく典型的である。更に、吸収工程中にベース基材12上に付加した1種以上のグラフトモノマーのうち、多孔質ベース基材12の総重量に基づき、約5重量%の量、望ましくは約10重量%の量、より望ましくは約20重量%の量(又は約100重量%の量)をグラフト化することが望ましく典型的である。線量は、電圧、速度及びビーム電流を含む多くのプロセスパラメーターにより決まる。線量は、線速度(すなわち、多層挟み込み構造体24が装置26の下を通過する速度)及びエキストラクターグリッドに印加される電流を制御することにより便利に調節することができる。実験的に測定された係数(機械定数)をビーム電流に乗し、ウェブ速度で除することによって目標の線量(例えば、<10kGy)を利便的に算出し、曝露量を決定することができる。機械定数は、ビーム電圧の関数として変化する。
【0138】
電子ビーム照射曝露の調整量は、滞留時間によって決まるが、一般的に、多層挟み込み構造24の一部であるベース基材12上に吸収されるモノマーは、一般に約1キログレイ(kGy)の最小線量〜約100kGy未満の最大線量の範囲の調整された量の線量を受容すると、特定のポリマーによって、著しくグラフト化される。プロピレンポリマーなどの放射線感受性ポリマーに対して、その量は、典型的には約1キログレイ(kGy)の最小照射線量〜約10kGy未満の最大線量の範囲である。典型的には、プロピレンポリマーの劣化を防ぐ合計調整線量は、約9kGy未満〜約7kGyの範囲である。ナイロン又はPVDFなどの放射線感受性が低いポリマーは、より高い照射線量、典型的には10〜70kGyにさらしてもよい。
【0139】
放射線グラフトには、低線量率及びより長い滞留時間が望ましいが、実際の操作は、スピードを必要とし、より高い線量率及びより短い滞留時間が強いられる場合がある。多層挟み込み体中の酸素の除去が、電離放射線曝露後もグラフト収率が高くなるのに十分な時間、フリーラジカル化学物質が存在し続けることを可能にする。記載されていないが、いくつかの実施形態では、本方法は、紫外線硬化工程の前に追加の吸収及びグラフト化工程を含んでもよい。
【0140】
紫外線硬化工程
紫外線照射工程400では、多層挟み込み構造24を、グラフト化光開始剤基、並びに、任意の遊離未反応アクリロイル基及び/又は他のエチレン性不飽和基の間のフリーラジカル重合を開始するのに十分な量の紫外線に曝露する。ベース基材12のグラフト化表面上の未反応のエチレン性不飽和基の重合により、取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19との間に挟み込まれる官能化基材30を含む多層挟み込み構造27が形成する。代表的方法10に示すように、多層挟み込み構造24は、十分な線量の紫外線を提供可能な少なくとも1つのデバイス41を備えるチャンバ40を進む。単一のデバイス41は、十分な線量の放射線を提供可能であるが、特に比較的厚いベース基材12の場合には、2つ以上のデバイス41を使用してもよく、又はランプの出力を2倍にしてもよい。紫外線照射により、本質的に全ての残留アクリロイル及び非アクリロイル基がベース基材12の表面上のポリマーコーティング内に組み込まれる。
【0141】
典型的には、チャンバ40は、フリーラジカル重合を抑制することが知られている最少量の酸素と共に、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどのような不活性雰囲気を含む。取り外し可能なカバー層19がない状態で、ベース基材12を照射する実施形態では、チャンバ25内部の酸素量がより関心事となり得る。取り外し可能なキャリア層22及び取り外し可能なカバー層19がベース基材12を覆っているとき、チャンバ25内部の酸素への曝露は最小限になる。
【0142】
紫外線光源は、280〜400ナノメートルの波長範囲にわたって一般に10mW/cm以下United States National Institute of Standards and Technologyに承認されている手順に沿って、例えば、Electronic Instrumentation & Technology,Inc.(Sterling,VA)製のUVIMAP(商標)UM 365 L−Sラジオメーターを用いて測定される)を提供するブラックライトなどの比較的低い強度の光源、又は、10mW/cmを超え、好ましくは15〜450mW/cmの強度を提供する中圧水銀ランプなどの比較的高い強度の光源、であることができる。組成物を全部又は一部、重合させるために紫外線が使用される場合、中位の強度及びより長い曝露時間が好ましい。例えば、約10〜50mW/cmの強度及び約1〜5秒の曝露時間が効果的に使用され得る。好ましい紫外線供給源は、Quantum Technologies(Irvine,CA)からのQuant 48(商標)UV Curing Systemである。
【0143】
剥離工程
チャンバ25から出ると、多層挟み込み構造27は剥離工程500に進む。剥離工程500では、多層挟み込み構造27は、取り外し可能なキャリア層22及び取り外し可能なカバー層19を官能化基材30から分離することによって分解される。例示的方法10に示したように、取り外し可能なカバー層19は、官能化基材30の外側表面から分離され、ロール28として巻き取られ、一方、取り外し可能なキャリア層22は、官能化基材30の反対の外側表面から分離され、ロール29として巻き取られる。
【0144】
1つの望ましい実施形態では、電子ビームへの曝露、紫外線硬化、及びチャンバ40からの退出後、取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19は、官能化基材30の酸素曝露からの長期保護を備えるよう、剥離工程400に先立ちしばらくの時間、官能化基材30にとどまることができる。望ましくは、取り外し可能なキャリア層22と取り外し可能なカバー層19は、チャンバ25を退出後、少なくとも15秒間、より望ましくは約30秒〜約60秒間、官能化基材30にとどまる。しかし、グラフト品質を低下させることになる上限時間制限はなく、多層挟み込み構造体27は、多層挟み込み構造体27のバッチ処理ロールが調製される場合のように長期間そのままで留まることができる。一旦多層挟み込み構造27を分解すると、官能化基材30は任意の洗浄/すすぎ工程600に進むことができる。
【0145】
任意の洗浄/すすぎ工程600では、官能化基材30は、すすぎチャンバ31で1回以上洗浄するか又はすすいで、いずれもの未反応モノマー、溶媒又はその他反応副生成物を官能化基材30から除去する。実質、官能化基材30は、水リンス剤、アルコールリンス剤、水及びアルコールリンス剤の組合せ及び/又は溶媒リンス剤(例えば、アセトン、MEKなど)を使用して3回まで洗浄又はすすがれる。アルコールリンス剤を使用する時、リンス剤には、イソプロパノール、メタノール、エタノール又は使用して実用的である全ての他のアルコール及び全ての残留モノマーに有効な溶媒を挙げることができるがこれらに限定されない。各すすぎ工程で、官能化基材30は、すすぎ浴又はすすぎスプレーを通過してもよい。
【0146】
任意の乾燥工程700では、官能化基材30を乾燥させ、官能化基材30から全てのすすぎ溶液を除去する。典型的に、官能化基材30は、比較的低いオーブン温度を有するオーブン32内で所望の時間(本明細書で「オーブン滞留時間」とする)乾燥される。オーブン温度は、典型的には約60℃〜約120℃の範囲であり、オーブン滞留時間は、典型的には約120秒〜約600秒の範囲である。いずれかの従来のオーブンを、本発明の任意の乾燥工程700で使用してもよい。好適なオーブンとしては、対流式オーブンが挙げられるがこれに限定されない。
【0147】
他の実施形態では、乾燥工程700を、洗浄/すすぎ工程600の前に行なうことができ、グラフトされていない残留物の抽出の前に揮発性成分を除去する点にも留意するべきある。
【0148】
任意の乾燥工程700の後に、工程800において、乾燥させた官能化基材30をロール33としてロール形態で巻き取ることができる。官能化基材30は、将来使用するためにロールの形状で貯蔵されてもよく、そのままで直ちに使用されてもよく、又は親水性基材30の表面特性を更に変えるために更に加工されてもよい。
【0149】
1つの代表的な実施形態において、官能化基材30は、更に処理され、官能化基材30の表面特性を変える。この実施形態では、官能化基材30は、(i)追加のグラフトモノマーを官能化基材30の間隙表面及び外側表面にグラフト化する、(ii)追加のグラフトモノマーを官能化基材30の間隙表面及び外側表面から延在するグラフト種にグラフト化する又は(iii)(i)及び(ii)の両方のために、例示的方法10などのグラフト化プロセスにより2回(又は更に多い回数)にわたって処理が行われる。
【0150】
例えば、一例示的実施形態では、官能化基材30は、ベース基材を、溶媒中に1種以上のグラフト光開始剤モノマー(式XII)を含む第一溶液でコーティングする、好ましくは多孔質ベース基材に吸収させる、こと、次いで、光開始剤a)モノマーをベース基材の表面にグラフト化するために第一溶液を吸収したベース基材を調整された量の電離放射線、好ましくは電子ビーム又はガンマ放射線、に曝露することにより、調製される。
【0151】
生じた第一官能化基材は、所望により(しかし、好ましくはない)、任意の未反応グラフトモノマーを除去するためにすすがれ、その後続いて、(b)1種以上の上記リガンドモノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、(d)所望により、1種以上の親水性モノマーと、を含む第二溶液を吸収させられてもよく、その後、第二溶液を吸収した第一官能化基材を調整量の電離放射線に曝露して、光開始剤基とリガンド基の両方及び他の任意の基を有する第二官能化基材を形成する。遊離及び未グラフト化モノマーは、続いて、その後の紫外線重合の際にベース基材に組み込まれる(間接的にグラフト化される)。
【0152】
別の例示的実施形態では、官能化基材30は、ベース基材を、1種以上のグラフト親水性モノマーを含む第一溶液でコーティングする、好ましくは多孔質ベース基材に吸収させる、ことにより、調製される。この実施形態は、PVDF基材などの疎水性基材を親水性にするのに特に有用である。生じた第一官能化基材は、所望により(しかし、好ましくはない)、任意の未反応グラフトモノマーを除去するためにすすがれ、その後続いて、a)光開始剤モノマーと、(b)1種以上の上記リガンドモノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、を含む第二溶液を吸収させられてもよく、その後、第二溶液を吸収した第一官能化基材を調整量の電子ビーム照射に曝露して、光開始剤基とリガンド基の両方及び他の任意の基を有する第二官能化基材を形成する。遊離及び未グラフト化モノマーは、続いて、その後の紫外線重合の際にベース基材に組み込まれる(間接的にグラフト化される)。
【0153】
同様に、第二吸収工程は、電離放射線への曝露によりグラフト化される上記光開始剤モノマーのみを含んでもよく、光開始剤基と親水性基とを両方有する官能化物品は、これに続いて、その後の紫外線重合の際に間接的にグラフト化される(b)1種以上の上記リガンドモノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、を含む第三溶液での第三吸収工程にかけられる。
【0154】
更に改質された官能化基材30は、次に例示的方法10の例示的洗浄/すすぎ工程500などの適宜な洗浄/すすぎ工程及び例示的方法10の例示的乾燥工程600などの適宜な乾燥工程を介して進めることができる。2工程のグラフト化プロセスに続き、吸収済み基材を紫外線照射工程により更に加工することができる。
【0155】
任意の加熱工程(図示せず)において、リガンド官能化基材30は加熱される。典型的には、任意の加熱工程中に、多くの要因(反応物質、多孔質ベース基材、グラフト化種に存在している官能基、及びオーブン36内での滞留時間が挙げられるが、これらに限定されない)に依存して、リガンド官能化基材30を最大で約120℃のオーブン温度を有するオーブンに入れる。典型的には、任意の加熱工程で用いるオーブン温度は、30℃以上(望ましくは40℃以上、50℃以上、又は60℃以上)である。オーブン温度は典型的には約60℃〜約120℃の範囲である。典型的には、任意の加熱工程中のオーブンでの滞留時間は、約60秒〜約1時間の範囲である。
【0156】
任意の加熱工程などの本発明の任意の加熱工程では、従来の任意のオーブンを使用してもよい。好適なオーブンとしては、例示的方法10の適宜な乾燥工程600に使用される上記オーブンが挙げられるがこれに限定されない。望ましくは、例示的方法50の適宜な加熱工程800に使用されるオーブンは、循環空気オーブンを含む。
【0157】
リガンド官能化基材33は、ロール形態で更なる使用ために貯蔵されてもよく、そのままで直ちに使用されてもよく、又は1つ以上の追加のプロセス工程(図示せず)で更に処理されてもよい。好適な追加のプロセス工程には、コーティング組成物を更なる官能化基材35に適用する反応工程又はコーティング工程、1つ以上の追加層を更なる官能化基材33に一時的又は恒久的に結合する積層工程、更なる官能化基材33を1つ以上の追加の構成要素と組み合わせて最終製品(例えばフィルターアセンブリ)を形成する組み立て工程、更なる官能化基材33又は更なる官能化基材33を含む最終製品を所望の包装材(例えばポリエチレンフィルム又はバッグ)で包装する包装工程、又はこれらのいずれかの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0158】
本発明の官能化基材を作製する方法は、下記に示すプロセスパラメーターを含むが、これらに限定されない1つ以上のパラメーターにより説明されてもよい。
【0159】
1.バッチ対連続プロセス
本発明のリガンド官能化基材を製造する方法は、連続プロセス(例えば、図1に示されている例示的方法10)を用いて行なってもよく、又は上述の1つ以上のプロセス工程をそれぞれ別個に行なうバッチプロセスを用いて行なってもよいことに留意するべきである。望ましくは、官能化基材を作製する方法は、図1に示した例示的方法10などの連続プロセスを使用して行われる。
【0160】
2.ライン張力
例示的方法10などの連続プロセスを使用するとき、1つ以上の駆動ロール(図示せず)を使用し、多孔質ベース基材12又は官能化基材30を連続プロセスを通して移動してもよい。1つ以上の駆動ロールは、多孔質ベース基材12及び官能化基材30に十分な張力を付与し、多孔質ベース基材12及び官能化基材30を所定の装置を通って移動させる。加工中の多孔質ベース基材12又は官能化基材30の収縮及び/又は引裂きを防止するため、適用する張力量を決定する際には注意をしなければならない。ベース基材12又は官能化基材30を運ぶために用いるキャリアウェブ(例えば、取り外し可能なキャリア層22)が強固な場合、基材自体に張力の負荷をかけることなく、張力の負荷を調整しやすくなる。
【0161】
本発明の例示的な連続グラフトプロセスでは、多孔質ベース基材12又は官能化基材30を所定の装置を通して移動するために、1つ以上の駆動ロールは、典型的には、多孔質ベース基材12又は官能化基材30の30cm(12インチ)幅ウェブ上を22〜178ニュートン(5〜40ポンド)の範囲で駆動し、多孔質ベース基材12又は官能化基材30の線センチメートル当たり0.7〜5.9ニュートンの張力をもたらす。1つの所望される実施形態では、1つ以上の駆動ロールは、多孔質ベース基材12又は官能化基材30の線センチメートル当たり1.4〜3.0ニュートンの範囲で駆動する。
【0162】
3.ライン速度
本発明の例示的な連続グラフトプロセスにおいて、1つ以上の駆動ロールは、所定の装置を通して所望のライン速度も付与する。望ましくは、多孔質ベース基材12及び官能化基材30は、少なくとも約1.52メートル/分(mpm)(5fpm)のライン速度で所定の装置を通って移動する。1つの所望される実施形態では、多孔質ベース基材12及び官能化基材30は、特定の装置を通って約3.05mpm(10fpm)〜約30.5mpm(100fpm)の範囲のライン速度で移動する。
【0163】
開示されている方法は、種々のリガンド官能化基材を調整するために使用され得る。リガンド官能化基材は、グラフト化、その後のグラフト化された光開始剤a)、リガンドモノマーb)、所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を含む1種以上のモノマー(c)、(d)所望により、直接的に又は間接的にグラフト化され得る1種以上の親水性モノマー、からの紫外線開始型重合、から誘導される重合済みコーティングを有する。
【0164】
上述の官能化基材の製造方法のいずれかでは、特定の官能化基材を形成するために、上述の多孔質ベース基材、グラフトモノマー、及び反応物質のうちのいずれかを用いてもよい。多孔質ベース基材は、微小多孔性膜などの多孔質膜、不織布ウェブ、又は多孔質繊維の形態である場合が多い。いくつかの実施形態では、多孔質ベース基材は、熱誘起相分離(TIPS)法により形成された微小多孔性膜を含む。
【0165】
一実施形態では、本方法は、その表面上にリガンド官能化コーティングを有する物品を提供し、リガンド官能化コーティングは、グラフト化光開始剤基と、1種以上のリガンドモノマーと、1種以上のエチレン性不飽和重合性モノマーと、グラフト化されていないアクリロイル基又は他の非アクリロイルエチレン性不飽和重合性基であり得る1種以上の親水性モノマーと、の紫外線重合反応生成物を含む。
【0166】
リガンド官能化基材の製造方法は、グラフト化され紫外線重合された種がリガンド基を含むので、多孔質ベース基材の従来の性質を変える。
【0167】
本発明は、多孔質ベース基材の多くの利点(例えば、機械的及び熱的安定性、多孔性)を有するが、ウィルスなどの生体物質に対して強化された親和性を持つリガンド官能化基材の形成を可能にし、これは所与の官能化基材を形成するために使用されるモノマー及び工程から生じる。本発明は、親水性ポリマーから形成された多孔質ベース基材に関連する多くの既知の問題(湿度により膨張するという問題、加湿のない場合の脆弱性、機械的強度の低さ、並びに耐溶剤性、耐苛性及び/又は耐酸性の低さが挙げられるが、これらに限定されない)を軽減又は解消する。
【0168】
一実施形態では、第一グラフトアクリレート基と第二非グラフトエチレン性不飽和重合性基とを有するグラフトモノマーは、式VII、VIII、X及び/又はXI(上記)に示されているように、親水性基を有してもよい。例えば、式VIII及び/又はXIのポリ(アルキレンオキシド)化合物は、PVDF基材などの疎水性ベース基材に親水性を付与するために使用することができる。これらのグラフトモノマーは、親水性ポリ(アルキレンオキシド)基を有してもよい。
【0169】
あるいは、イオン基を含有する式IX又はXのグラフトモノマーが使用されてもよい。これらの場合、グラフトアクリレート基又は非アクリレート重合性基と、四級アンモニウム基などの親水性基と、を含有し得る第四のモノマーを用いて、親水性が付与される。このようなイオン基は、好適なpHにてイオン基と同様の電荷を有する生物学的種を反発することにより、官能化基材に対して拡張された選択性を更に付与することができる。
【0170】
リガンド官能化多孔質基材は、生体サンプルから、ウィルスと選択的に結合し、ウィルスを除去するための濾材として特に適している。リガンドがベース基材に(直接的に又は間接的にのいずれかで)グラフト化されているので、リガンド官能化基材は耐久性がある。次に、本開示は、サンプルを本明細書に記載のもののようなリガンド官能化基材に接触させることを含む、生体サンプルなどのウィルス含有サンプルからウィルスを除去するための方法を提供する。
【0171】
サンプルは、溶液が0〜約50mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウィルスに対する少なくとも1.0の収率log減少値(LRV)に十分な時間にわたって、より好ましくは、溶液が0〜約150mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウィルスに対する少なくとも1.0の収率log減少値(LRV)で静止したまま、ウィルス捕捉膜に接触させられる。溶液は、溶液が0〜約50mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウィルスに対する少なくとも5.0の収率log減少値(LRV)に十分な時間にわたって、より好ましくは、溶液が0〜約150mMの塩を含むとき、溶液中に配置された中性ウィルスに対する少なくとも5.0の収率log減少値(LRV)で静止したまま、ウィルス捕捉膜に接触させられることが更にいっそう好ましい。用語「中性ウィルス」は、約7又は所望により公称6〜8の等電点(pl)を有する任意のウィルスを示すために使用される。サンプル溶液は、結果としてウィルスが負に帯電しているpHであってもよい。
【0172】
塩の存在下でのウィルス浄化のこの重要性、「耐塩性」、は、バイオ医薬品製造業で使用される多くのプロセス溶液が15〜30mS/cmの範囲の導電率を有するということである。耐塩性は、標的範囲よりも3〜6倍小さな導電率にて一部のウィルス(例えば、φX174)に対しての能力を急速に失う、例えば、0mMのNaClから50mMのNaClにすると6log減少値(LRV)から1LRVのウィルス浄化に落ち込む、従来のQリガンド(AETMA、2−アミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド)と比較して測定される。φX174のようなウィルスは、7に近いplを有し、中性又はほぼ中性である。
【0173】
多くの実施形態では、基材は、他のタンパク質がリガンド官能化基材から排除又は反発され、一方、ウィルスが式V又はVIのリガンド官能基に結合するように、官能化され得る。更に、先述したように、基材は1種以上のイオン性モノマーで直接的に又は間接的にグラフト化され得る。特に、多孔質基材は、その多くが中性pHにて正電荷であるモノクローナル抗体などのタンパク質の帯電斥力を生じるように、生体サンプル溶液の選択されたpHにて正電荷であるグラフト化イオン基を含み得る。
【0174】
mAb結合などのタンパク質結合の防止は、リガンドのpKaを上昇させることか、又は、装填中にmAbとリガンドが両方とも正電荷であるように追加の正電荷官能基をグラフト化することにより、達成することができる。これは、リガンド及び基材表面からのmAbの帯電斥力を生じる。対照的に、ウィルスは、負電荷又は中性のいずれかであり、リガンドに結合する。ほとんどの治療用mAbは、8〜10のplを有する傾向がある。それゆえに、mAbは中性pHにて正電荷であり、これはそれらが基材表面に結合するのを防止する。一方、ウィルスは、様々なplを有し、多くは負のplを有する。したがって、サンプル溶液のpHは、対象のタンパク質(mAbなど)の等電点よりも低く、ウィルスの等電点よりも高い。
【0175】
本明細書のリガンド及びグラフト化官能基は、上記基準及び結果に基づいて選択され、すなわち、耐塩性であり、mAbの帯電斥力を生じる高いpKa(例えば、>10)を有する。リガンドは多孔質膜上に固定され、ウィルス含有流体は膜を通して流れ、一方、ウィルスはリガンドにより捕捉される。
【0176】
いくつかの実施形態では、結合したウィルスを含有するグラフト化された物品は使い捨てである。このような実施形態では、濾材へのウィルスの結合は、好ましくは本質的に不可逆であるが、それは結合したウィルスを再生する必要が存在しないからである。それにもかかわらず、溶出溶液のイオン強度を上昇させることにより、ウィルスの結合を無効にすることができる。対照的に、タンパク質結合においては、結合現象は必然的に可逆性であるか、又は、所望のタンパク質はカラムから溶出できない。
【0177】
ウィルス捕捉のための基材は、先述のいずれであってもよいが、好ましくは微小多孔性膜である。所望される膜孔径は、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜0.3μm、最も好ましくは0.8〜2μmである。内側の孔構造のために大きな表面積を有する膜が所望され、これは典型的には微細孔径に相当する。しかしながら、孔径が小さ過ぎる場合、膜は、サンプル溶液中に存在する微細粒子で塞がれる傾向がある。
【0178】
所望される場合、ウィルス結合及び捕捉の効率は、フィルター要素として複数の積層されたリガンド官能化多孔質基材を使用することにより、改善され得る。それゆえに、本開示は、1つ以上の層の多孔質リガンド官能化基材を含むフィルター要素を提供する。個々の層は、同一であっても又は異なっていてもよく、異なる多孔性及び上記グラフトモノマーによるグラフト度を有してもよい。フィルター要素は、上流プレフィルター及び下流支持層を更に含む。個々のフィルター要素は、所望されるように、平面的であっても又はひだ状であってもよい。
【0179】
好適なプレフィルター及び支持層の材料の例には、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、樹脂結合した又は結合剤を有さない繊維(例えば、ガラス繊維)及び他の合成繊維(織られた又は織られていないフリース構造);ポリオレフィン、金属及びセラミックスなどの焼結材料;糸;特殊濾紙(例えば、繊維とセルロースとポリオレフィンと結合剤との混合物);ポリマー膜:並びに他のもの、の任意の好適な多孔質膜が挙げられる。
【0180】
別の実施形態では、上記フィルター要素を含むフィルターカートリッジが提供される。更に他の実施形態では、フィルター要素とフィルターハウジングとを含むフィルターアセンブリが提供される。更なる実施形態では、本発明は、
a)本開示のリガンド官能化ベース基材の1つ以上の層を含むフィルター要素を提供する工程と、
b)ウィルスの結合をもたらすのに十分な時間にわたって、ウィルスを含有する移動している生物学的溶液をフィルター要素の上流表面上に衝突させる工程と、を含むウィルス捕捉方法に関する。
【0181】
本発明を上記で説明し、更に下記に実施例により説明するが、それは、いかなる方法においても発明の範囲に限定を課すと解釈されるものではない。それとは逆に、本明細書を読んだ後、本発明の趣旨及び/又は添付した請求項の範囲から逸脱することなくそれら自身を当業者に示唆できる種々の他の実施形態、修正及びその等価物に対して手段を有してもよいことが明瞭に理解される。
【実施例】
【0182】
材料
「VAZPIA」は、米国特許第5,506,279号(Babu et al.)の実施例1に従って調製される、2−プロペノイルアミノエタン酸2−(4−(2−ヒドロキシ−2メチルプロパノイル)フェノキシ)エチルエステルを指す。
【0183】
「PEG400」、ポリエチレングリコール、分子量400、Aldrich Chemical Co.。
【0184】
「LUCIRIN TPO」は、BASF(Charlotte,N.C.)から入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0185】
電子ビーム照射は、Energy Sciences,Inc.(Wilmington,MA)から得られた型式CB−300電子ビームシステムを使用して行った。フィルム試料は、照射のためポリ(エチレンテレフタレート)の2枚のシートの間に定置した。
【0186】
特に定めのない限り、以下の手順にしたがった。フィルム試料を、101.6マイクロメートル(4ミル)厚さのPETの2つのより大きな面積寸法片の間に定置し、一方の末端部でテープ留めした。次に、この挟み込み体を開き、試料フィルムをモノマー溶液で湿らせ、挟み込み体を再度閉じた。閉じ込められた空泡を除き、挟み込み体の表面上に緩やかにゴムローラーを適用することにより過剰な液体を絞り出した。挟み込み体をPETの移動ウェブにテープ留めし、目標とする線量をもたらすのに十分なビーム電流をカソードに印加して、6.1mpm(20fpm)の速度、及び300keVの電圧で電子ビームプロセッサを通って移動させた。ビームを薄膜線量計を使用して検量し、較正し、国立標準研究所(RISO,Denmark)に遡及した。場合によっては、ビーム照射下での全体の線量率を低下させ、一方、滞留時間を長くするために、ウェブ方向に伸びるカソードを用いて、電子ビームをより特徴的にするように、ビームを複数回通して、より長い曝露時間を模擬することによって、線量をフラクション化した(すなわち、BroadBeamなど)。
【0187】
膜の試験
リガンド測定:グラフト化されたリガンドの量を膜中に存在するNの%で測定した。LECO 932 CHNS元素分析装置を使用して、燃焼によりサンプルを窒素の重量パーセントについて分析した。清浄なハサミで各膜の中心から小片を切り出すことにより、サンプルを調製した。サンプルサイズは約0.7〜2.0mgの範囲であり、3度試験した。
【0188】
水流動試験:水流動は、およそ47ミリメートル(1.85インチ)の直径を有する試験フィルムのディスクを型式4238Pall Gelman磁気フィルターホルダー(Pall Corp.(East Hills,NY)から入手可能)内に定置することにより測定した。次に、フィルターホルダーを真空ポンプに取り付けたフィルターフラスコに定置した。真空をモニターするため真空計を使用した。約150ミリリットルの水をフィルターホルダーに入れ、減圧した。約50ミリリットルの水がフィルムを通過した後(減圧ゲージはこの時点で約0.83mmHg(およそ68.9kPa(10psi))を指していた)、ストップウォッチを用いてタイミング測定を開始した。残りの水全てがフィルムを通過したとき、時間測定を中止した。水流動は、減圧0.83mmHgで100ミリリットルの水が膜を通過するのにかかった時間(秒で測定)であった。
【0189】
ウシ血清アルブミンの結合:穿孔した膜の6層積層体を通して、AKTAクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare,NY)に結合した直径25mmのホルダー内に定置された直径25mmのディスクの中に試験検体の溶液を通過させることにより、タンパク質の結合について膜を分析した。pH8にて25mMのTRIS−HCl緩衝液中1mg/mLの濃度の溶液として、Sigmaからのウシ血清アルブミン(BSA)を調製した。1mL/分の流速にてBSA溶液を膜積層体を通して流し、流出液の紫外線吸収度を280nmの波長にてモニターした。標準的クロマトグラフィー技術を使用して、膜の動的結合能力を評価した。
【0190】
ウィルス捕捉の測定:PDA Technical Report 41(TR41),Virus Filtrationに記載のように、米国食品医薬品局において開発された標準的プロトコルを使用して、ウィルス捕捉を測定した。試験ウィルスは、バクテリオファージφX−174であった。pH7.5にて10mMのTRIS−HCl緩衝液中に10pfu/mL(溶菌斑形成単位)を含有する標準原液を、150mMのNaCl濃度で、調製した。この原液を先述のように膜積層体を通して流した。画分回収器を使用して、分留流出液を1mL画分として回収した。膜を通過した10mL、20mL、30mL、40mL及び50mLの総流量に対応する画分を取っておき、これらをいくつかの十進法希釈(decadaldilutions)にかけた。ウィルス原液もまた同様の希釈系列にかけた。次に、希釈した画分を大腸菌溶液でインキュベートし、トリプティックソイブロスから構成される成長培地と共になっている寒天プレート上に塗り付けた。プレートを一晩インキュベートし、死んだ溶菌斑の数を計数した。対応する希釈比及びファージの初期濃度の情報から、LRV(すなわちウィルス負荷におけるlog減少)を評価した。
【0191】
親水性PVDF膜:米国特許第7,338,692号(Smith et al.)に記載の一般手順を使用して、微小多孔性ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、約127マイクロメートル厚さ(5mil)、72%多孔性、Gurley(空気流)約4.5秒/50cc、1.4μm平均孔径及び1.9μm泡立ち点孔径(最大有効孔径)並びに水流動時間約10秒(100mL、47mmホルダー、77.9kPa(Hgでは23)減圧)を調製した。メタノール中のポリエチレングリコールジアクリレート(Sartomer 344として入手可能、SARTOMER Company,Inc.(Exton,PA))の10重量%溶液を吸収させることによりPVDF微多孔性フィルムを親水性にした。次に、湿潤した膜を2層のポリ(エチレンテレフタレート)フィルムを有する挟み込み体の中に配置し、2Mradにて300keVの電圧で電子ビーム照射にかけた。次に、膜を挟み込み体から剥離し、次に水で3回にわたって洗浄し、乾燥させた。
【0192】
ナイロン膜:米国特許第6,413,070号(Meyering et al.)に記載の一般手順を使用して、ナイロン膜を調製した。ポリマー鎖の大部分がアミン末端基を含有するナイロン66の射出成形から膜を調製した。膜は単強化層ナイロン三領域膜であり、3つの領域全てが等しい孔径及び組成である。膜は単強化層ナイロン三領域膜であり、3つの領域全てが等しい孔径及び組成である。膜は、1.5マイクロメートルの公称Coulter平均フロー孔、60:40のイソプロパノール/水において約41kPa(6psi)の前進流泡立ち点、及び、約152マイクロメートル(6mil)の公称厚さを有する。膜は、およそ33g/m(1オンス/平方ヤード)のカレンダー仕上げされたスパンボンドポリエステルの強化スクリム上に支持され、全体に等方性である。
【0193】
リガンド及びグラフト化の実施例:
比較実施例1:活性化PVDF膜上でのアグマチンの結合
親水性にしたPVDF膜にCH=CHCONHC(CHCONHCHCH=CHの20%溶液を吸収させることにより、アリル基で官能化したPVDF膜を製造した。このモノマーは、アリルアミンでのビニルジメチルアズラクトン(VDM)付加物である。次に、アリル基をブロモヒドリン基に変換し、生じた膜をアグマチンサルフェートで処理して、アグマチン基を有する表面にする。これらの膜に関してLRVは、6であることが分かった。これにより、膜上にこれらの基を付与する容易な方法を提供するための、グアニジニウム基を含有するモノマーを設計することが可能になった。
【0194】
実施例2:アクリルアミドアグマチンの調製:
【0195】
【化16】

【0196】
このモノマーの合成手順は、米国特許第7,294,743号から適合させた。
【0197】
【化17】

【0198】
手順:
電磁攪拌器を装備した丸底フラスコ(100mL)内でアグマチンサルフェート(9.12g、40mmol)を蒸留水(20mL)中に溶解させた。KCO(16.56g、100mmol)を水(20mL)中に溶解させ、丸底フラスコに加えた。反応混合物を氷浴で冷却し、混合物を5℃にて10分間にわたって攪拌した。アクリロイルクロライド(7.24g、6.50mL、80mmol)をアセトン(20mL)中に溶解させ、パスツールピペットを使用して、フラスコに滴下して加えた。反応を5℃にて1時間にわたって進行させた。次に、攪拌を停止した。次に、水相を濃硫酸でpH2.3に固定し、次に、ガラスフィルターで濾過した。次に、メチルイソブチルケトン(MIBK、2×100mL)で水相を抽出して、反応中に形成された過剰なアクリル酸を除去した。次に、KCOを加えることにより、水相のpHをpH7に固定し、最終的な透明溶液をグラフト化に利用した。
【0199】
アクリルアミドアグマチンのグラフト化
電子ビーム照射により、アクリルアミドアグマチンを親水性PVDF膜上にグラフト化した。2つの異なるアプローチを使用した。
【0200】
2a:直接:プラスチックピペットと、均一性のために絞りローラとを使用して、親水性PVDF膜にアクリルアミドアグマチン溶液を吸収させた。次に、湿潤した膜を2層のPETを有する挟み込み体の中に配置し、4Mradにて電子ビーム照射にかけた。次に、膜を挟み込み体から剥離し、次に水で3回にわたって洗浄し、乾燥させた。
【0201】
2b:間接:親水性PVDF膜を2層のPETライナーの間に挟み込み、4mradの線量にて電子ビームに曝露して、フリーラジカルが豊富な基材を得た。次に、この挟み込み体をグローブボックス内の不活性雰囲気に移した。アクリルアミドアグマチン溶液を膜の中に吸収させ、湿潤した膜をZiplocバッグに移し、一晩貯蔵した。次に、膜を水浴中で3回洗浄し、次に周囲で乾燥させた。
【0202】
直接的アプローチでは、モノマーは放射線に曝露される。膜にグラフト化が生じないホモポリマー形成が溶液中で生じ得る可能性が存在する。間接的アプローチでは、モノマーは放射線に曝露されず、膜の表面からの鎖成長がより容易なプロセスである。
【0203】
直接的方法によりアクリルアミドアグマチンで誘導体化されたサンプル膜は、0.247%のNを与え、44μmol/gの膜のリガンド負荷に相当する。
【0204】
実施例3:ガンマ線によるアクリルアミドアグマチンのグラフト化
27%アクリルアグマチン濃縮物から各々1%、2%、3%及び4%の4つのアクリルアグマチン/水の溶液を作製した。これらを親水性PVDF及びナイロンフィルムサンプル上に吸収させた。8つのフィルムサンプルをPETライナーの間に挟み込み、枠の中に圧締めし、気密アルミニウム運搬具の中に配置した。運搬具は空気を抜き、Nで充填した。これらのフィルムを12kGyまでガンマ線で照射した(2時間の持続時間に相当する)。各片の重量増加は、表1に記録されている(フィルムの開始重量は、各々公称15.2cm×20.3cm(6インチ×8インチ)のサイズのシートについて各々約2.8グラムである)。
【0205】
【表2】

【0206】
実施例4:アグマチンアナログを含有する膜の調製
【0207】
【化18】

【0208】
アグマチンと本質的に同一のpKa値を有するアグマチンのN,N’−ジメチルグアニジニウム誘導体を合成した。リガンドは、市販のMustang Q(商標)膜(Pall Life Sciences(Ann Arbor,MI)から入手可能な、表面上に四級アンモニウム基を有するように官能化された多孔質ポリエーテルスルホン膜)と比較して、塩が存在しない状態で5log減少を提供したが、50mMのNaClでは、完全に機能停止する。上記アクリルアミド誘導体は合成されたが、(おそらくはウィルス上の周囲アミド基との)水素結合親和性相互作用が必要とされ得、未置換グアニジウム基とのみ利用可能であることを示している。
【0209】
実施例5:アクリルアミドアルギニンの調製:
アミノ酸アルギニンから誘導される、対応するアクリルアミドを調製した。
【0210】
【化19】

【0211】
手順:
電磁攪拌器を装備した丸底フラスコ(100mL)内でアルギニンモノヒドロクロライド(4.17g、20mmol)を蒸留水(10mL)中に溶解させた。KCO(8.28g、50mmol)を水(10mL)中に溶解させ、丸底フラスコに加えた。反応混合物を氷浴で冷却し、混合物を5℃にて10分間にわたって攪拌した。アクリロイルクロライド(3.62g、3.25mL、40mmol)をアセトン(10mL)中に溶解させ、パスツールピペットを使用して、フラスコに滴下して加えた。反応を5℃にて1時間にわたって進行させた。次に、攪拌を停止した。次に、水相を濃硫酸でpH2.3に固定し、次に、ガラスフィルターで濾過した。次に、メチルイソブチルケトン(MIBK、2×100mL)で水相を抽出して、反応中に形成された過剰なアクリル酸を除去した。次に、KCOを加えることにより水相のpHをpH7に固定し、液体窒素で冷却し、凍結乾燥により水を除去した。次に、最終的な白色の綿毛状の固体をMeOH中に溶解させ、濾過し、MeOHを40℃にてロータリー蒸発により除去した。フィルムをHO中に取り込み、凍結乾燥して白色の綿毛状固体を得た。
【0212】
(pH7.4にて)グアニジウム基の正電荷がカルボキシレートの負電荷により中和されたとき、バクテリオファージ結合は(追加の塩が加えられてなくても)観察されなかったが、これは、リガンドアセンブリ全体上の正電荷が所望されることを明瞭に示している。この場合には、2つの正電荷が未置換のグアニジウム単位と共に存在し、一方はα−アミン基のため、もう一方はグアニジン基についてである。
【0213】
実施例6:IEM−アグマチン付加物の調製
【0214】
【化20】

【0215】
42gのアグマチンサルフェート(AGM;184mmol)を蒸留水(300mL)とアセトン(300mL)との混合物中で攪拌した。溶液にジイソプロピルエチルアミン(DIEA;32ml、184mmol)を加え、その後、15分間にわたってイソシアナトエチルメタクリレート(IEM;32ml、206mmol)を滴下しながら加えた。溶液は、IEMを加えると透明になった。反応物を4時間にわたって撹拌した。粗反応溶液のNMRは、完全な転換を示した。反応物の揮発性成分、アセトン及び過剰なDIEA、を真空下で除去した。残存する水溶液を凍結し、高真空下で凍結乾燥した。48時間の凍結乾燥の後、94gの白色粉末を得た。回収された総質量は94グラムであり、所望のIEM−AGMを含有したが、他の副生成物、硫酸及びDIEAもまた含有した。活性成分、メタクリレートモノマー、の重量/重量パーセントは、総質量の53.5%(重量/重量)である。
【0216】
IEM−アグマチン付加物のグラフト化
アクリルアミドアクマチンについて実施例2で使用したのと同様の手順により、IEMアグマチン付加物を親水性化したPVDF及びナイロン膜の上にグラフト化した。更に、下記のように、二段階プロセスを採用した。
【0217】
6a:直接:プラスチックピペットと、均一性のために絞りローラとを使用して、メタノール中の16%のIEM−アグマチン溶液を、親水性化したPVDF膜に吸収させた。次に、湿潤した膜を2層のPETを有する挟み込み体の中に配置し、4Mradにて電子ビーム照射にかけた。次に、膜を挟み込み体から剥離し、次に水で3回にわたって洗浄し、乾燥させた。この手順をナイロン基材についても繰り返した。
【0218】
6b:間接:親水性化したPVDF膜を2層のPETライナーの間に挟み込み、4mradの線量にて電子ビームに曝露して、フリーラジカルが豊富な基材を得た。次に、この挟み込み体をグローブボックス内の不活性雰囲気に移した。メタノール中の10%のIEM−アグマチン溶液を膜の中に吸収させ、湿潤した膜をZiplocバッグに移し、一晩貯蔵した。次に、膜を水浴中で3回洗浄し、次に周囲で乾燥させた。
【0219】
6c:二段階プロセス:300keVの電圧にて設定された4Mradの線量で第一官能化e−ビーム照射プロセスを行った。コーティング溶液は、メタノール中に5.0% 2%の3−(アクリルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを1.0%のVAZPIAと共に含有していた。コーティング溶液を親水性TIPS PVDF微小多孔性膜の中に吸収させた。このサンプルを、ウェブキャリア上でビームの中を移動させ、ビームチャンバを出たとき、酸素の膜内への再拡散を遅らせるように、101.6マイクロメートル(4mil)のPET層間に「湿潤状態」で挟み込んだ。3分後、挟み込み体を開き、膜を乾燥させておいた(この工程からのあらゆる未反応モノマーは残存させておいた)。
【0220】
第二官能化工程において使用された分子は、IEM−アグマチンであった。コーティング溶液は、メタノール中に10.0%のIEM−AGMを含有した。コーティング溶液をコーティング済みTIPS PVDF微小多孔性膜の中に吸収させ、挟み込み体を閉じ、あらゆる捕捉された空気をローラーで除去した。次に、UVAランプを用いるQuant 48(商標)UV Curing Systemを使用して、サンプルを紫外線照射し、1分当たり約1フィート(121.9メートル(4フィート)の曝露長、31mW/cmにて片面)の速度でUVプロセッサの下を移動させた。サンプル挟み込み体を反転し、再び同一速度で移動させた。グラフト化された多孔質膜を挟み込み体から取り出し、トレイの水に浸漬させ、これを清浄な水と3回交換することにより、洗浄して清浄にした。官能化膜を空気乾燥させておいた。この手順をナイロン基材についても繰り返した。
【0221】
実施例7:アミノグアニジン−ビニルジメチルアズラクトン付加物の調製
250mL丸底フラスコにアミノグアニジン塩酸塩(1.1g、TCl(Portland,OR))、イソプロパノール(100mL)及びビニルジメチルアズラクトン(1.39g)を充填した。磁気攪拌しながら、無水炭酸ナトリウム(3.2g)を加え、混合物を一晩攪拌した(約16時間)。反応混合物を濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、2.25gの無色固体を得た。H−NMR(d−メタノール)は、出発物質の不在、及び、アクリルアミドアクリル化生成物の混合物への完全な転換を示した。
【0222】
実施例8:ビニルジメチルアズラクトン−グアニジン付加物の調製
250mL丸底フラスコにグアニジン塩酸塩(1.08g、EMD Chemicals)、イソプロパノール(50mL)及びビニルジメチルアズラクトン(1.57g)を充填した。磁気攪拌しながら、無水炭酸ナトリウム(2.4g)を加え、混合物を一晩攪拌した(約16時間)。反応混合物を濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、2.53gの泡沫状固体を得た。H−NMR(d−メタノール)は出発物質の不在を示し、予想されたアクリルアミドアクリル化グアニジン生成物と一致した。
【0223】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンド官能化基材の製造方法であって、前記方法は、
1)ベース基材を提供する工程と、
2)前記ベース基材を、(a)アクリロイル基と光開始剤基とを有する少なくとも1種のグラフトモノマーと、(b)1種以上の次式のリガンドモノマー
【化1】

(式中、
は、H又はC〜Cアルキルであり、
は、所望によりエステル、アミド、ウレタン又は尿素連結基を含有する、二価アルキレンであり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
は、H、C〜Cアルキル又は−N(Rであり、
は、−O−又は−NR−である)と、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的なエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、(d)所望により、1種以上の親水性モノマーと、を含む溶液でコーティングする工程と、
3)前記ベース基材の表面に結合したグラフト化光開始剤基を含む第一官能化基材を形成するために、前記コーティングされたベース基材を電離放射線に曝露する工程と、
4)残存する前記エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を架橋するために、グラフト化光開始剤基を含む前記ベース基材を紫外線に曝露する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記基材が、間隙表面及び外側表面を有する多孔質基材である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接触させる工程が、前記多孔質基材に前記溶液を吸収させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電離放射線が、ガンマ線又は電子ビーム照射である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1)ベース基材を提供する工程と、
2)前記ベース基材を、(a)アクリロイル基と光開始剤基とを有する少なくとも1種のグラフトモノマーと、(b)所望により、1種以上のリガンドモノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的なエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、(d)所望により、1種以上の親水性モノマーと、を含む第一溶液でコーティングする工程と、
3)その表面に結合したグラフト化光開始剤基を有する前記ベース基材を含む第一官能化基材を形成するために、前記コーティングされたベース基材を電離放射線に曝露する工程と、
4)前記グラフト化光開始剤基を有するベース基材を、(b)1種以上の前記リガンドモノマーと、(c)所望により、少なくとも1つのアクリレート基と少なくとも1つの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有する1種以上のモノマーと、(d)所望により、1種以上の親水性モノマーと、を含む第二溶液でコーティングする工程と、
5)残存する前記エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を重合させるために、前記グラフト化光開始剤基を含むベース基材を紫外線に曝露する工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基材が、間隙表面及び外側表面を有する多孔質基材である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
接触させる工程が、前記多孔質基材に前記溶液を吸収させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2つ以上のフリーラジカル重合性基を有する前記モノマー(c)が、前記多孔質ベース基材にグラフト化するための第一アクリロイル基と、続く紫外線重合のための第二メタクリロイル基と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記モノマーc)が、式:
[CH=CH−C(O)−X−R10−Q−Z
(式中、Zは、アクリロイル又は非アクリロイルのエチレン性不飽和重合性基であり、
は、−O−又は−NRであり、ここで、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
Qは、共有結合「−」、−O−、−NR−、−CO−、及び
−CONR−から選択される二価結合基であり、ここでRは、H又はC〜Cアルキルであり、
10は、価数a+bのアルキレン基であり、所望により1つ以上のカテナリー酸素原子及び/又は1つ以上のヒドロキシル基を含有し、
a及びbは各々少なくとも1である)を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記多孔質ベース基材が微小多孔性である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多孔質ベース基材が、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ又は多孔質繊維から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記モノマーc)が、少なくとも1つのアクリロイル基と少なくとも1つの追加的エチレン性不飽和フリーラジカル重合性基とを有するポリ(アルキレンオキシド)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマーc)が、式:
Z−Q−(CH(R)−CH−O)−C(O)−CH=CH
(式中、Zは、アクリロイル又は非アクリロイルの、重合性エチレン性不飽和基であり、
は、H又はC〜Cアルキル基であり、nは2〜100、好ましくは5〜20であり、Qは、共有結合「−」、−O−、−NR−、−CO−、及び−CONR−から選択される二価結合基であり、ここでRは、H又はC〜Cアルキルである)を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第一溶液が、c)フリーラジカル重合性基と親水性基とを有する1種以上の追加のモノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記親水性モノマーが式:
CH=CR−C(O)−X−(CH(R)−CH−O)−R
(式中、各Rは独立してH又はC〜Cアルキルであり、Xは−O−又は−NR−であり、ここで、RはH又はC〜Cアルキルである)を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記微小多孔性ベース基材が、熱誘起相分離(TIPS)法により形成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記微小多孔性ベース基材が、ポリ(フッ化ビニリデン)微小多孔性ベース基材を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記調整された量の電子ビーム照射曝露が、80kGy未満の線量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記リガンドモノマーが式:
【化2】

(式中、
は、H又はC〜Cアルキルであり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
は、H、C〜Cアルキル又は−N(Rであり、
は、−O−又は−NR−であり、ここで、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
及びRは、各々独立してC〜C10アルキレンであり、
Zは、エステル、アミド、尿素又はウレタン基である)である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
式:
【化3】

(式中、
は、H又はC〜Cアルキルであり、
各Rは、独立してH又はC〜Cアルキルであり、
は、H、C〜Cアルキル又は−N(Rであり、
は、−O−又は−NR−であり、ここで、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
及びRは、各々独立してC〜C10アルキレンであり、
Zは、エステル、アミド、尿素又はウレタン基である)のリガンドモノマー。

【図1】
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【公表番号】特表2011−522090(P2011−522090A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511747(P2011−511747)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/045110
【国際公開番号】WO2009/148869
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】