説明

リクレーマ

【課題】簡易な機構によってライナーが不要なリクレーマを提供する。
【解決手段】左右方向に延びる回転軸を中心に上下に回転するリング状の回転フレームと、その回転フレームに固定されたバケットと、を備え、上記バケットは、少なくとも一部が上記回転フレームの外縁よりも径方向外方に位置すると共に移動方向に向けて開口した掻き込み口と、その掻き込み口と移動方向で対向する底面部と、上記回転フレームの径方向内方側に開口した排出口とを備える。そのバケットの取付け角度を、回転フレームの径方向に対してバケット移動方向とは反対側に傾斜させる。また、バケットの底面部の一部は、上記回転フレームの内縁よりも径方向内側に延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイル状に積まれた石炭や鉄鉱石等のバラ物の山から、回転フレームの回転に伴い上下に回転移動するバケットによって上記バラ物を掻き取って払い出すリクレーマに関する。
【背景技術】
【0002】
バラ物を掻き取って払い出すリクレーマとしては、例えば特許文献1〜3に記載のリクレーマがある。この方式のリクレーマでは、回転する回転フレームから張りだしたバケットが下側から上方に向けて移動する際に、当該バケットによって、パイル状に積み付けられた石炭や鉄鉱石等のバラ物を掻き取る。バケット内に掻き取られたバラ物は、バケットが予め設定した位置まで回転フレームの上部側に移動すると、当該バケットから自然落下することでバケット内から排出される。排出されたバラ物は、シュートを介してバケット下方に位置するブームコンベア上に落下し、該コンベヤによって搬出される。なお、上記バケットは、回転フレームの周方向に沿って複数個設けられている。
【0003】
上記各バケットは、バラ物を掻き込む掻き込み口が、側面視で回転フレームの径方向に沿った方向に向けた状態となるように当該回転フレームに固定され、また回転フレームの径方向内径側が開口して排出口が形成されている。更に、バケットは、側面視で、上記掻き込み口から排出口に向けて側面視略円弧状に延在するバケット内壁部が形成されている。
【0004】
また、バケットでバラ物を掻き込む位置からバケット内のバラ物を排出する排出位置までライナーが設けられている(特許文献3では、ライナーを構成するベルトコンベアが配置されている)。ライナーは、上記回転フレームの内縁に沿って円弧状に延設されて、バケットが掻き込み位置から排出位置まで移動する間、当該ライナーでバケットの排出口を閉塞することで、バケットが排出位置まで移動する間に、バケットの排出口から回転フレーム内径側にバラ物が落下することを防止している。
【0005】
しかし、バケットが排出位置まで移動する間、ライナー上を、バケットに掻き込まれた石炭や鉄鉱石等のバラ物が擦り動くことで、ライナーに磨耗が生じる。このため、定期的若しくは不定期に、ライナーの保守・交換を行う必要がある。また、バケットとライナーの隙間にも細かい石炭、鉄鉱石が噛み込み、両者を磨耗させるのは勿論、上記掻き込みによる摩擦が、回転フレームの回転時の摺動抵抗となり、回転フレームを回転駆動する動力源の動力を損失させてしまう。さらに、ライナーの磨耗が進むとバケット排出口とライナーとの隙間が増加し、その隙間から石炭、鉄鉱石等のバラ物が落下することで、リクレーマの能力低下に繋がってしまう。
このような課題に対し、特許文献4では、このバラ物の内壁部を形成するライナーを省略するために、バケットとして上記排出口を有しない通常のバケットを使用する代わりに、そのバケットを、回転フレームに回転自在に取り付けると共に付勢手段や回動手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−277136号公報
【特許文献2】実開昭62−153224号公報
【特許文献3】特開2000−219325号公報
【特許文献4】特開平10−17152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4では、回転フレームに対してバケットが自在に回転できる構造となっているが、バケットで掻き込む取扱い物が粉体を含むバラ物のために、その粉体などがバケットの回転機構部に侵入し、回転を阻害したり、回転抵抗増加による動力増加が発生する。また、回転フレームの上部でバケットを強制的に逆さにする必要があるため、逆さ機構の磨耗が懸念される。それに伴い、部品の取替費用が発生する。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、簡易な機構によってライナーが不要なリクレーマを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、左右方向に延びる回転軸を中心に上下に回転するリング状の回転フレームと、その回転フレームに固定されたバケットと、を備え、上記バケットは、少なくとも一部が上記回転フレームの外縁よりも径方向外方に位置すると共にバケット移動方向に向けて開口した掻き込み口と、その掻き込み口と上記移動方向で対向する底面部と、上記回転フレームの径方向内方側に開口した排出口とを備えて、回転フレームの回転に伴いバケットが下側から上側に移動する際に、上記掻き込み口からバケット内にバラ物を掻き取ると共に、そのバケットが予め設定した高さ位置まで上方に移動すると、バケット内のバラ物が上記排出口から落下して当該バラ物を払い出す構成のリクレーマであって、
上記バケット底面部の少なくとも上記排出口側の部分は、側面視で、上記回転フレームの径方向に対し、予め設定した設定角度だけ上記移動方向とは反対方向に傾斜し、
上記バケットの底面部の一部は、上記回転フレームの内縁よりも径方向内側に延設されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、「回転フレームの径方向に対し上記移動方向とは反対方向に傾斜」とは、対象とするバケットに向けて回転フレームの中心から径方向に延びる線に対し、回転フレームの径方向内方側よりも径方向外方側が、バケット移動方向とは反対側に離れるように傾斜していることを指す。
【0010】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記バケットの掻き込み口も、側面視で、上記回転フレームの径方向に対し、上記移動方向とは反対方向に傾斜させたことを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記設定角度は、20度以上60度以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくともバケットの底面部が、従来よりもバケット移動方向とは反対側に傾斜しているので、回転フレームの径方向内側を向く開口部である排出口を有していても、掻き込んだバラ物を、バケット内に収容した状態とすることが可能となる。
さらに、底面部を回転フレームの径方向向内側に延設することで、バケットからのバラ物の落下をより確実に防止可能となる。この結果、目的とする排出位置までバケットが移動するまでの間、より確実にバラ物が排出口から落下し難くなる。
この結果、上記従来技術で必要とするライナーを省略出来る。
【0012】
なお、本発明は、上記ライナーが不要となるため、ライナーとの干渉を考えることなく、バケットの底面部の一部を回転フレームの内側に延設可能となる。
また、請求項2のように、掻き込み口も底面部と同じ方向に傾斜させることで、過度にバケット内へバラ物を掻き込むことが防止されて、更に、排出位置まで移動する前におけるバケットからのバラ物の落下をより確実に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に基づく実施形態に係るリクレーマを示す側面図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係るバケットの形状を示す側面図である。
【図3】図2における端壁部内面位置でのバケット内の構造を示す図である。
【図4】図2におけるA−A断面図である。
【図5】収容体の構造を示す図であって、(a)が側面図を、(b)が排出口からみた正面図である。
【図6】取付け角度を説明する図である。
【図7】傾斜することによるバラ物の収容状態を説明する図である。
【図8】バケットによるバラ物の掻き込み及び掻き込んだバラ物のバケット内での状態変化を説明するための図である。
【図9】底面部の変形を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態のリクレーマは、例えば、走行フレーム(不図示)上に旋回・起伏可能に設けられたブーム(不図示)の先端部に設けられる。
そのリクレーマは、図1及び図8に示すように、回転フレーム1、複数のバケット2、及びシュート3を備える。
【0015】
回転フレーム1は、リング状のフレームからなる。その回転フレーム1は、中心部に配置されたボス部5と同心に配置され、ボス部5に対し複数のスポーク部6を介して支持された構造となっている。その回転フレーム1、ボス部5、及びスポーク部6は一体的に構成されている。そして、回転フレーム1は、ボス部5に連結し左右方向に延びる回転軸Pを回転中心として、不図示の回転駆動アクチュエータ(電動モータ等)によってボス部5が回転駆動されることで、上記回転フレーム1は、上記回転軸Pを中心にして回転可能となっている。上記回転軸Pは、例えば上記ブーム先端部(不図示)に支持される。
その回転フレーム1に対して、上述のように複数のバケット2が取り付けられている。その複数のバケット2は、リング状の回転フレーム1に沿って予め設定した間隔置きに配置される。
なお、図1では、回転フレーム1は時計回りに回転する場合を例示している。
【0016】
次に、バケット2の構造を図2〜図5を参照して説明する。
上記バケット2の外形フレームは、図2に示すように、側面視略長方形形状の箱形形状をしている。そのバケット2は、図2中、上側の一辺側が上方に開口して掻き込み口10を構成すると共に、その掻き込み口10の上下方向下方に底面部11が配置される。また、回転フレーム1の径方向外方側に位置する辺側の壁部(端壁部12と呼ぶ)は閉じていると共に、回転フレーム1の径方向内方側を向く壁部が開口して排出口14が形成されている。すなわち、バケット2の外形フレームは、図2の位置では、上方の面(バケット2の移動方向を向く面)及び回転方向内方側の面(排出口14が形成される面)が開口した箱形形状となっている。
【0017】
そのバケット2の底面部11は、バラ物30を収容する収容体15で構成され、その収容体15の底側が上記底面部11となっている。
図3は、バケット2の外形フレームの端壁部12内面側を回転フレーム1の径方向内方から見た図であり、図4は、図2のA−A断面図である。図5は、上記収容体15を示す図である。
【0018】
上記収容体15は、掻き込み口10側が開口した断面U字状の膜材から構成されると共に(図5参照)、排出口14に向けて延在している。本実施形態の収容体15は、ゴム材などの弾性体から構成されている。収容体15は、内面をコーティングした布材や金属板などから構成されていても良い。その断面U字状の収容体15は、図3に示すように、端壁部12内面に固定されていると共に、その下端部位置では、図4に示すように、突設支持部16によって、U字状の最下部が支持された状態となっている。
【0019】
また、掻き込み口10を構成する上端開口側の側壁部や端壁部12上部には、掻き込み用の掻き込み板17が固定されている。
上記のような構成のバケット2が、回転フレーム1に固定されている。バケット2の回転フレーム1への固定は、図6に示すように、バケット2の回転フレーム1への取付け角度を、側面視で、回転フレーム1の径方向L0に対して移動方向とは反対方向に、予め設定した取付け角度θだけ傾斜した状態にして、当該バケット2を回転フレーム1に取り付けている。具体的には、掻き込み口10側の回転フレーム内径側である、バケット2の外形フレームの上内端部側を回転可能に回転フレーム1に取り付けると共に、外形フレームの上外端部を移動方向とは反対方向に傾斜させことで上記取付け角度θに設定して固定している。
【0020】
ここで、「側面視で、回転フレーム1の径方向L0に対して移動方向とは反対方向に傾斜」とは、回転フレーム1の径方向に延びる中心軸Pから放射状に延びる線L0(対象とするバケットに向けて延びる径方向の線)に対し、回転フレーム1の径方向内方側よりも径方向外方側がバケット移動方向とは反対側に離れるように傾斜していることを指す。
ここで、バラ物30は、例えば石炭や鉄鉱石等である。
上述のように本実施形態では、上記収容体15の底面側がバケット2の底面部11を形成する。底面部11は平坦であっても良い。
【0021】
(動作その他)
本実施形態のバケット2は、図7に示すように、その取付け角度θをバケット移動方向とは反対方向に予め設定した角度だけ傾けた。このため、バラ物30の山31からバラ物30を掻き取った際に、図7のように端壁部12と底面部11との角部を中心にしてバラ物30がバケット2内に収容された状態となる。この結果、バケット2が所定以上上側に移動しない状態では、バケット2の排出口14からバラ物30が落下することが防止される。
【0022】
具体的には、図8に示すように、まず、バラ物30は、バケット2の端壁部12側に掻き込まれ(図8中、符号A)、バケット2が上方に移動するにつれて、底面部11を排出口14側に移動する。なおこのとき、回転ホイールの径方向略水平位置にバケット2が位置した状態では(図8中、符号B)、まだバケット2の底面部11は、径方向外側が下となるように傾いており、上記径方向水平方向から取付け角度θだけ上方に移動したときに底面部11がやっと水平となる。この状態では、バラ物は安息角をもって底面部11に載った状態となっている。
【0023】
その後バケット2が上昇するにつれて、バラ物30が底面部11を排出口14側に徐々に移動して、所定の角度まで上昇するとバケット2の排出口14からバラ物30が落下し始める。その落下開始の角度よりも少し小さい角度のところにシュート3を配置しておけば、バケット2から落下したバラ物30は、シュート3に案内されて下方にコンベヤ4の上に落下し、続けてコンベヤ4によって搬送される。
【0024】
この結果、径方向内方に開口する排出口14を有するバケット2を使用しても、従来のように、バラ物30の落下を抑えるためのライナーが不要となる。このようにライナーの取替が必要なくなるため、補修費低減、摺動抵抗が減少するため動力損失減少を図ることができる。
また、バケット2からの落鉱が無くなるため、リクレーマの能力UPに繋がる。
【0025】
本実施形態では、上記取付け角度θを40度に設定したものである。取付け角度θは、20度から60度の範囲で設定すればよい。
この取付け角度θは、対象とするバラ物30の安息角から決定すれば良く、安息角が大きなバラ物30を対象とする場合には、取付け角度θを小さく設定可能である。好ましくは、30度〜45度である。取付け角度θの上限は、回転フレーム1の上部にバケット2が移動した際に、排出口14からシュート3内にバラ物30が落下可能であれば、大きくしても良いが、余り取付け角度θを大きくすると1回の掻き取り量が減少するため、60度以下、好ましくは45度以下に設定することが好ましい。
【0026】
また底面部11側を傾斜させると共に、掻き込み口10についても同方向に傾斜させることで、バケット2への掻き込み量が調整させて、バケット2内への過度な掻き込みが防止出来る。この結果、ライナーが無くても、より排出位置までの間、排出口14からのバラ物30の落下を防止することが出来る。ここで、掻き込み口10は、回転フレーム1の径方向に沿って上記取付け角度θが0度の場合が一番掻き込み能率が良い。取付け角度θを傾斜させるとその分掻き込み量が少なくなる。
【0027】
また、本実施形態では、底面部11を回転フレーム1の内縁よりも内径方向に張り出すことで、より排出位置までの間、排出口14からのバラ物30の落下を防止することが出来る。
ここで、本実施形態では、収容体15を弾性体で構成することで、バスケット2にバラ物30が掻き込まれた状態では、バラ物30の重さで下側に若干撓んだ状態となるが、バケット2が排出位置まで上方に移動すると、撓んでいた弾性体からなる収容体15の復元する力がバラ物30を排出する方向に作用する結果、よりバラ物30をバスケット2から排出し易くする。
【0028】
ここで本実施形態では、側面視において、底面部11及び掻き込み口10の両方を、径方向に対してバケット2移動方向とは反対側に同一角度傾斜させる場合を例示している。底面部11の傾斜角と掻き込み口10の傾斜角度は異なっていても良い。また、底面部11を回転フレーム1の内縁よりも内径方向に張り出させなくても良い。
また、回転フレーム1の径方向に対する移動方向反対方向への傾斜は、一定でなくても良い。例えば図9に示すように、排出口14側の底面部1120aの傾斜を大きくしても良い。このようにすると、より排出口14からのバラ物30の落下を防止することが出来る。
【符号の説明】
【0029】
1 回転フレーム
2 バケット
3 シュート
4 コンベヤ
5 ボス部
6 スポーク部
10 掻き込み口
11 底面部
12 端壁部
14 排出口
15 収容体
16 突設支持部
30 バラ物
31 バラ物の山
θ 取付け角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に延びる回転軸を中心に上下に回転するリング状の回転フレームと、その回転フレームに固定されたバケットと、を備え、
上記バケットは、少なくとも一部が上記回転フレームの外縁よりも径方向外方に位置すると共にバケット移動方向に向けて開口した掻き込み口と、その掻き込み口と上記移動方向で対向する底面部と、上記回転フレームの径方向内方側に開口した排出口とを備えて、回転フレームの回転に伴いバケットが下側から上側に移動する際に、上記掻き込み口からバケット内にバラ物を掻き取ると共に、そのバケットが予め設定した高さ位置まで上方に移動すると、バケット内のバラ物が上記排出口から落下して当該バラ物を払い出す構成のリクレーマであって、
上記バケット底面部の少なくとも上記排出口側の部分は、側面視で、上記回転フレームの径方向に対し、予め設定した設定角度だけ上記移動方向とは反対方向に傾斜し、
上記バケットの底面部の一部は、上記回転フレームの内縁よりも径方向内側に延設されていることを特徴とするリクレーマ。
【請求項2】
上記バケットの掻き込み口も、側面視で、上記回転フレームの径方向に対し、上記移動方向とは反対方向に傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載したリクレーマ。
【請求項3】
上記設定角度は、20度以上60度以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したリクレーマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−82552(P2013−82552A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225041(P2011−225041)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)