説明

リグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の新規な用途

本発明はリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の新規な用途に関するものである。具体的に本発明はリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用組成物に関するものである。化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物はメラニン生成及びチロシナーゼ活性を抑制することにより、卓越な美白効果があるので美白用化粧料組成物、食品組成物又は薬学的組成物の有効な成分として利用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2007年10月17日付で出願された大韓民国特許出願第2007−0104783号を優先権主張し、前記明細書全体は本発明の参考文献である。
【0002】
本発明はリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の新規な用途に関するものである。具体的に本発明はリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
人間の皮膚色はメラニン色素を作るメラノサイト(melanocyte)の活動性、血管の分布、皮膚の厚さ及びカロチノイド、ビリルビン等人体内外の色素含有有無のような種々な要因等により決定されるものの、その中でメラノサイトでチロシナーゼ等の種々の酵素が作用して生成されるメラニンと言う黒色色素が最も重要である。
【0004】
前記メラニン色素の形成には、遺伝的要因、ホルモン分泌、ストレス等と関連した生理的要因及び紫外線照射等のような環境的要因が影響を及ぼす。メラニンは皮膚の外郭である表皮層に存在して、紫外線等から真皮以下の皮膚器官を保護してくれると同時に、皮膚生体内に生じた自由ラジカル等を捉えてくれる役割をして、皮膚内蛋白質と遺伝子等を保護してくれる重要な機能を有しているものの、メラニンが過剰生産されることにより、しみ、そばかす等を形成するばかりでなく、皮膚老化を促進し、皮膚癌誘発にも重要な作用をするものとして知られている。
【0005】
前記しみ、そばかす、色素沈着のような皮膚色素異常沈着症状と、紫外線露出等により発生する過度なメラニン色素沈着を治療又は軽減させる為に、以前からアスコルビン酸、コジ酸、アルブチン、ヒドロキノン、グルタチオン又はこれらの誘導体、チロシナーゼ阻害活性を有する化合物を化粧料や医薬品に配合使用してきたが、これらは不十分な美白効果、皮膚に対する安定性問題、化粧料に配合する場合、発生する剤形及び安定性問題等により、その使用が制限されている。ここに、安定性が優れて美白活性が優れた天然物由来の物質に対する研究が進行されている。
【0006】
一方、肉荳蒄(nutmeg)は熱帯地方で栽培される多年生植物であるミリスチカフラグランス(Myristica fragrans)の実にして、古くから香辛料として利用されてきた。
【0007】
さらに、肉荳蒄仮種皮は前記ミリスチカフラグランスの実の表皮部分を示すものにして、ヘリコバクターピロリ菌の成長抑制活性(In Vivo., 17;541-4, 2003)、肝の解毒機作の活性化(Food Chem.Toxicol., 31;517-21.1993)、皮膚疣の化学的予防作用(Cancer Lett.,56:59-63,1991)、抗癌活性(Jpn.J.Pharmacol., 49;155-63,1999)があるものとして知られている。しかしながら、肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮が美白活性があるか否かに対しては知られたことが全くない。
【0008】
特に、前記肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮から抽出されているメースリグナンは代表的なリグナン系化合物であって(Phytochemistry,59:169-173,2002)、アポトシス(apoptosis)を誘導するカスパーゼ(caspase)−3活性増進作用(Biol.Pharm.Bull.,27:1305-1307,2004)、口腔微生物に対する抗菌活性(大韓民国特許公開特許公報10−691792号)、抗炎症作用(大韓民国特許公開特許公報10−0579752号)、抗にきび機能(大韓民国特許公開特許公報10−0567431号)、脳細胞脂質過酸化及び活性酸素生成抑制効果(Biochem.Biophys.Res.Commu., 331:1264-1269)等が報告されている。しかしながら、メースリグナンを含めて前記肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮から抽出できるアウストバイリグナン7又はリカリンEが美白活性があるか否かに対しては知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここに、本発明者等は天然物由来の美白活性がある物質に関して研究を重ねる中でリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物が、優れた美白活性があることを見出だし本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用化粧料組成物を提供することである。
【0011】
【化1】

【0012】
本発明の他の目的は前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用食品組成物を提供することである。
【0013】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用薬学的組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の化粧料組成物製造の為の用途を提供することである。
【0015】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の食品組成物製造の為の用途を提供することである。
【0016】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の薬学的組成物製造の為の用途を提供することである。
【0017】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物のメラニン生成を抑制する方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物のチロシナーゼ活性を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記のような目的を達成する為に、下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用化粧料組成物を提供する。
【0020】
【化2】

【0021】
本発明は、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用食品組成物を提供する。
【0022】
本発明は、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用薬学的組成物を提供する。
【0023】
本発明は、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の化粧料組成物製造の為の用途を提供する。
【0024】
本発明は、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の食品組成物製造の為の用途を提供する。
【0025】
本発明は、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の薬学的組成物製造の為の用途を提供する。
【0026】
本発明は、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物のメラニン生成を抑制する方法を提供する。
【0027】
本発明は、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物のチロシナーゼ活性を抑制する方法を提供する。
【0028】
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。
【0029】
本発明で“肉荳蒄(nutmeg)”は熱帯地方で栽培される多年生植物であるミリスチカフラグランス(Myristica fragrans)の実にして、“肉荳蒄仮種皮”は前記ミリスチカフラグランスの実の皮の部分を言う。
【0030】
本発明で“肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物”は、肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮から由来した下記リグナン系化合物を含有する抽出物を言う。前記リグナン系化合物を含有できるとすれば、前記肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の製造方法には制限がないものの、好ましくは、肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮から水、C1−C6の有機溶媒及び亜臨界又は超臨界流体からなる群より選ばれた一つ以上の溶媒で抽出することにより製造し得る。さらに、必要とする場合、当業界に公知された方法により、濾過及び濃縮段階を追加的に含めて製造し得る。
【0031】
前記C1−C6の有機溶媒はこれに限定はされないものの、好ましくは、C1−C6のアルコール、アセトン、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、エチルアセテート、メチレンクロライド、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルからなる群より選ばれたことを言う。
【0032】
さらに、前記“超臨界流体”とは、一般的な条件では気体状態であるが、臨界温度と臨界圧力以上では流体であることを言う。前記にて亜臨界流体とは、亜臨界液体と気体を含み、特に、亜臨界液体は温度が超臨界温度と飽和温度より低い状態の流体であって、亜臨界気体は温度が飽和温度より高く、圧力は超臨界圧力より低い状態の流体を言う。前記超臨界流体及び亜臨界流体は医薬品工業、食品工業、化粧品?香料工業、化学工業、エネルギー工業及びその他多様な分野に応用されている。本発明で使用し得る超臨界流体及び亜臨界流体は、特別に制限されるものではなく、例えば、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、メタン、エチレン、プロパン、プロピレン、石油エーテル、エチルエーテル及びシクロヘキサン等を利用し得る。特に、二酸化炭素は大量購入が可能で、比較的安価で、非爆発性で、加工用として十分に安定的な長所の為特に好ましい。前記二酸化炭素は臨界温度が31.1℃で臨界圧力は73.8気圧である。
【0033】
本発明の一実施例では、乾燥した肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮を粉砕し、これにエタノール、ヘキサン又はクロロホルム溶媒を利用して抽出して濾過及び濃縮段階を経て肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮エタノール、ヘキサン又はクロロホルム抽出物を製造した。さらに、超臨界流体として二酸化炭素(CO)を利用した超臨界流体抽出機に肉荳蒄を投与して肉荳蒄超臨界抽出物を製造した(<実施例1>参照)。
【0034】
本発明で”リグナン系化合物?とは、下記化学式1乃至3からなる群より選ばれた化合物を言う。具体的に化学式1で表示される化合物はメースリグナン(macelignan, 4-((2S,3R)-4-Benzo[1,3]dioxol-5-yl-2,3-dimethyl-butyl)-2-methoxyphenol)を言い、化学式2で表示される化合物はアウストバイリグナン7(austobailignan 7,4-(1-Benzo[1,3]dioxol-5-yl-2-methyl-butoxymethyl)-2-methoxy-phenol)を言い、化学式3で表示される化合物はリカリンE(licarin E,5-(7-methoxy-3-methyl-5-propenyl-2,3-dihydro-benzofuran-2-yl)-benzo[1,3]dioxole)を言う。
【0035】
【化3】

【0036】
前記リグナン系化合物は公知の合成方法を利用して製造することができ、前記肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮から抽出して分離精製することにより収得し得る。前記肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮抽出物からリグナン系化合物の分離及び精製は、これに限定はされないものの、好ましくは、シリカゲル(silica gel)又は活性アルミナ(alumina)等の各種合成樹脂を充填したカラムクロマトグラフィー(column chromatography)及び高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)等を単独或いは併行して使用し得る。しかしながら、リグナン系化合物の抽出、分離及び精製方法は必ずしも前記の方法に限定されるものではない。
【0037】
本発明の一実施例では、乾燥した肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮抽出物から、公知されたシリカゲルカラムクロマトグラフィーを利用して前記メースリグナン、アウストバイリグナン7又はリカリンEを分離した(<実施例2>参照)。
【0038】
前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物は優れた美白活性を有している。
【0039】
具体的に前記リグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物をメラニン細胞(melanocyte)であるMelan−a細胞に投与した結果、メラニン生成が顕著に抑制され(<実験例1>参照)、メラニン生成に関与する酵素であるチロシナーゼ(tyrosinase)活性を抑制し(<実験例2>参照)、前記チロシナーゼ及びチロシナーゼ関連蛋白質(TRP−1,TRP−2)発現が抑制されることが分った(<実験例3>参照)。
【0040】
従って、前記リグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物は美白活性が優れていることから化粧料組成物、食品組成物又は薬学的組成物の有効成分として利用し得る。
【0041】
前記本発明の化粧料組成物は、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を有効成分として含有し、皮膚学的に許容可能な賦形剤と共に、基礎化粧品組成物(化粧水、クリーム、エッセンス、クレンジングフォーム及びクレンジングウォータのような洗顔剤、パック、ボディオイル)、色素化粧品組成物(ファウンデーション、リップスティック、マスカラ、メーキャップベース)、頭髪製品組成物(シャンプー、リンス、ヘアコンデショーナ、ヘアゲル)及び石鹸等の形態で製造できる。
【0042】
前記賦形剤には、これに限定はされないものの、例えば、皮膚軟化剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、濃化剤及び溶媒を含め得る。さらに、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤及び保湿剤等を追加的に含めることができ、物性改善を目的に漸増剤、無機塩類、合成高分子物質等を含め得る。例えば、本発明の化粧料組成物として洗顔剤及び石鹸を製造する場合には、通常の洗顔剤及び石鹸ベースに前記リグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を添加して容易に製造し得る。クリームを製造する場合には、一般的な水中油滴型(O/W)のクリームベースに前記リグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物又はこれに塩を添加して製造し得る。これに、香料、キレート剤、色素、酸化防止剤、防腐剤等と、物性改善を目的とした蛋白質、ミネラル、ビタミン等合成又は天然素材を追加的に添加し得る。
【0043】
本発明の化粧料組成物に含有される前記リグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の含量は、これに限定はされないものの、全体組成物総重量に対して0.001乃至10重量%であることが好ましく、0.01乃至 5重量%であることがより好ましい。前記含量が0.001重量%未満では、目的とする美白効果を期待できず、10重量%超過では安全性又は剤形上の製造に困難性があり得る。
【0044】
一方、本発明の食品組成物は機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)及び食品添加剤(food additives)等の全ての形態を含む。
【0045】
前記類型の食品組成物は当業界に公知された通常の方法により、多様な形態で製造し得る。これに限定はされないものの、例えば、健康食品には、前記リグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物そのものを、お茶、ジュース及びドリンクの形態で製造して飲用できるように、液状化、顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取し得る。さらに、前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物と美白効果があるとして知られた、公知の活性成分と共に、混合して組成物の形態で製造できる。さらに、機能性食品には、これに限定はされないものの、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例:果実缶詰、瓶詰、ジャム、ママレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例:ハム、ソーセージ、コーンビーフ等)、パン類及び麺類(例:うどん、ソバ、ラーメン、スパゲッティ、マカロニ等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例:バター、チーズ等)、食用食物油脂、マーガリン、植物性蛋白質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例:味噌、醤油、ソース等)等に前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を添加して製造し得る。さらに、前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を食品添加剤の形態で使用する為には、粉末又は濃縮液形態で製造して使用し得る。
【0046】
本発明の食品組成物の内、前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の好ましい含有量としは、これに限定はされないものの、好ましくは、最終的に製造された食品中、0.01乃至50重量%である。より好ましくは、本発明の食品組成物は特に、美白効果があるとして知られた活性成分と共に混合して健康食品の形態で製造し得る。
【0047】
一方、前記本発明の薬学的組成物は、前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を単独で含有するか、又は一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を追加的に含有し得る。
【0048】
薬学的に許容される担体には、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体を追加的に含め得る。経口投与用担体はラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸等を含め得る。さらに、非経口投与用担体は、水、適合したオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコール等を含め得る。安定化剤及び保存剤を追加的に含め得る。適合した安定剤には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適合した保存剤には、ベンズアルコニウムクロライド、メチルー又はプルピルーパラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体には、下記の文献に記載されていることを参考にできる(Remington's Pharmaceutical Sciences,19th ed., Mack Publishing Company, Easton,PA,1995)。
【0049】
本発明の薬学的組成物は人間を始め、哺乳動物にどのような方法でも投与し得る。例えば、経口又は非経口的に投与できる。非経口投与方法にはこれに限定はされないものの、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、隔膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻孔内、腸管、局所、舌下又は直腸内投与でもあり得る。本発明の薬学的組成物は上述したような投与経路により、経口投与用又は非経口投与用製剤に剤形化し得る。経口投与用製剤の場合に本発明の組成物は粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリ剤、懸濁液等に当業界に公知された方法を利用して剤形化し得る。例えば、経口用製剤は活性成分を個体賦形剤と配合し、これを粉砕して適合した補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することにより、錠剤又は糖衣錠剤を収得し得る。適合した賦形剤の例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトル、マンニトール、キシリトール、エリスリトール及びマルチトール等を含む糖類とトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉及び馬鈴薯澱粉等を含む澱粉類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等のような充填剤が含まれ得る。さらに、場合によっては、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はナトリウムアルギネート等を崩解剤として添加し得る。さらには、本発明の薬学的組成物は抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等を含め得る。非経口投与用製剤化の場合には、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤、ゲル剤、エアロゾル及び鼻孔吸込み剤の形態で当業界に公知された方法により剤形化し得る。これらの剤形は、全ての製薬化学に一般的に、公知された処方書である文献(Remington's Pharmaceutical Sciences,15th Edition,1975. Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0050】
本発明の薬学的組成物の総有効量は単一投与量(single dose)で患者に投与することができ、多重投与量(multiple dose)で長期間投与する分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与し得る。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度によって有効成分の含量を異にすることができる。非経口投与時には前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を基準にして、1日に体重1kg当り好ましくは0.01乃至50mg、さらに好ましくは、0.1乃至30mgの量で投与されるように、さらに、経口投与時には、前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を基準にして、1日に体重1kg当り好ましくは0.01乃至100mg、さらに好ましくは、0.1乃至50mgの量で投与されるように1乃至数回に分けて投与し得る。しかしながら、前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数ばかりでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率等多様な要因等を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるものであることから、このような点を考慮するに、当分野の通常的な知識を有する者であれば、前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を美白の為の特定した用途に伴う適切な有効投与量を決定し得るであろう。本発明に伴う薬学的組成物は本発明の効果を示す限りその剤形、投与経路及び投与方法に特別な制限はされない。
【0051】
さらに、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物は、美白効果が優れていることから美白用化粧料組成物、食品組成物又は薬学的組成物製造の為に利用され得る。
【0052】
前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を利用して、化粧料組成物、食品組成物又は薬学的組成物を製造する方法及び前記組成物に対する前記リグナン系化合物、又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の含量は前述した通りである。
【0053】
さらに、化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれた、リグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物は、メラニン生成抑制及びチロシナーゼ活性抑制方法に利用され得る。
【0054】
前記リグナン系化合物又は肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を、メラニン生成抑制及びチロシナーゼ活性抑制方法に利用する為に、これに限定はされないものの、これを必要とする個体に有効な量で投与することができる。
【0055】
前記“必要とする個体”とは、メラニン生成及びチロシナーゼ活性が抑制されることにより、美白が必要な哺乳動物を言い、好ましくは人間を言う。さらに、前記“有効な量”とは、前記個体内でメラニン生成及びチロシナーゼ活性が抑制され、美白効果を呈する量を言う。前記有効な量で投与する為の投与方法及び投与量は具体的に前記記述した通りである。
【発明の効果】
【0056】
以上察した通り、前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物は、メラニン生成及びチロシナーゼ活性を抑制することにより、卓越な美白効果があるので美白用化粧料組成物、食品組成物又は薬学的組成物の有効な成分として利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は肉荳蒄エタノール抽出物がメラニン生成を抑制する活性があるか否かを確認した結果である。
【図2】図2はメースリグナン化合物がメラニン生成を抑制する活性があるか否かを確認した結果である。
【図3】図3は肉荳蒄エタノール抽出物がメラニン生成に関与する酵素であるチロシナーゼ活性があるか否かを確認した結果である。
【図4】図4はメースリグナン化合物がメラニン生成に関与する酵素であるチロシナーゼ活性があるか否かを確認した結果である。
【図5】図5は肉荳蒄エタノール抽出物がチロシナーゼ及びチロシナーゼ関連蛋白質(TRP−1,TRP−2)発現を抑制する活性があるか否かを確認した結果である。
【図6】図6はメースリグナン化合物がチロシナーゼ及びチロシナーゼ関連蛋白質(TRP−1,RP−2)発現を抑制する活性があるか否かを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。しかしながら、これら実施例は本発明に対する理解を促す為に例示の目的にのみ提供したものであって、本発明の範疇及び範囲が下記実施例により制限されるものではない。
【0059】
<実施例1:美白活性がある肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮抽出物の製造>
<1−1.肉荳蒄抽出物の製造>
先ず、肉荳蒄エタノール抽出物を製造する為に、乾燥した肉荳蒄をミキサーで粉砕し、粉砕した肉荳蒄試料100gをエタノール1Lに入れて48時間常温で冷浸して抽出した。抽出した試料はワットマン(Whatman)2番濾過紙で濾過し、濾過された抽出液を真空回転濃縮機で濃縮して溶媒成分を除去して肉荳蒄エタノール抽出物を収得した。
【0060】
さらに、抽出溶媒で前記エタノールの代わりにメタノール、ヘキサン又は平成22年4月2日クロロホルムを使用して前記と同一な方法を利用することにより、肉荳蒄メタノール、ヘキサン又はクロロホルム抽出物を収得した。
【0061】
一方、超臨界流体抽出機を使用して肉荳蒄超臨界抽出物を製造した。具体的に超臨界流体で二酸化炭素を利用して抽出温度50℃、抽出圧力は200barであって抽出物から溶媒を除去することにより製造した。
【0062】
<1−2:肉荳蒄仮種皮抽出物の製造>
乾燥した肉荳蒄仮種皮をミキサーで粉砕し、粉砕した肉荳蒄仮種皮試料100gをエタノール1Lに入れて48時間常温で冷浸し、前記<実施例1−1>と同一な方法を利用して抽出することにより肉荳蒄仮種皮エタノール抽出物を収得した。
【0063】
<実施例2:肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮抽出物から美白活性がある化合物の分離>
<2−1:メースリグナン(macelignan)分離>
【0064】
前記<実施例1−1>でエタノール濃縮された肉荳蒄エタノール抽出物と、エチルアセテートを混合してエチルアセテート溶解性成分を抽出し、エチルアセテートを除去してエチルアセテート溶解性成分を濃縮した。シリカゲルを6x15cmに充填したカラムにおいて、ヘキサン、エチルアセテートを10:1(v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して非活性物質等を除去し、これをさらに、ヘキサン、エチルアセテートをそれぞれ20:1(v/v)の比率で混合した溶媒の分画物を得た後、Rp−18カラムクロマトグラフィーを利用して80%メタノールでさせて濃縮液乾燥し、最終的に純粋な単一美白活性物質である下記化学式1のメースリグナン(macelignan,4-((2S, 3R)-4-Benzo[1,3]dioxol-5-yl-2,3-dimethyl-butyl)-2-methoxyphenol)を分離した。
【0065】
【化4】

【0066】
<2−2:アウストバイリグナン7の分離>
前記実施例<1−2>から得た濃縮された肉荳蒄仮種皮エタノール抽出物をエチルアセテート、ブタノール、水で分画した。エチルアセテート分画物(10.29g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを利用して、クロロホルムとエチルアセテートを9:1(v/v)の比率で混合した溶媒で溶出させ、分画物V(0.52)と分画物VI(0.19g)を得た。分画物VIをクロロホルムとエチルアセテートとアセトン30:1:2(v/v/v)の比率で混合した溶媒でカラムクロマトグラフィーして、分画物VI−B(0.52g)を得た。以降、分画物VI−Bをリサイクリング高性能液体クロマトグラフィーを利用して100%エタノールで溶出することにより、最終的に純粋な単一美白活性物質である下記化学式2のアウストバイリグナン7(4-(1-Benzo[1, 3]dioxol-5-yl-2-methyl-butoxymethyl)-2-methoxy-phenol)0.011gを分離した。
【0067】
【化5】

【0068】
<2−3:リカリンEの分離>
前記実施例<1−2>から得た濃縮された肉荳蒄仮種皮エタノール抽出物をエチルアセテート、ブタノール、水で分画した。エチルアセテート分画物(18.44g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを利用して、クロロホルムとエチルアセテートを9:1(v/v)の比率で混合した溶媒で溶出させ、分画物II(3.04g)を得た。分画物IIをクロロホルムとヘキサンとエチルアセテートとアセトン15:10:0.1:0.1(v/v/v/v)の比率で混合した溶媒でカラムクロマトグラフィーして、分画物II−B(0.4G)を得た。以降、分画物II−Bをリサイクリング高性能液体クロマトグラフィーを利用して100%メタノールで溶出することにより、最終的に純粋な単一美白活性物質である下記化学式3のリカリンE(5-(7-Methoxy-3-methyl-5-propenyl-2, 3-dihydro-benzofuran-2-yl)-benzo[1, 3]dioxle)0.016gを分離した。
【0069】
【化6】

【0070】
<実験例1:メラニン生成抑制活性>
<1−1:肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮抽出物のメラニン生成抑制>
先ず、前記<実施例1−1>で製造された肉荳蒄エタノール抽出物がメラニン生成抑制活性があるか否かを確認した。
【0071】
具体的に10%FBSと2μMのTPA(phorbol 12-myristate 13-acetate)が含有されたRPMI1640で6−ウェルプレート(メラニン定量)に2×10cell(最終嵩3mL)のMelan−a細胞を入れ、10%CO培養器(MCO-20AIC,Sanyo)で37℃で24時間培養した。前記培養後培地を除去し、RPMI1640培地に前記<実施例1−1>で製造された肉荳蒄エタノール抽出物を添加して、3日間毎日処理した。5日後6−wellプレートで培養された培地を除去し、0.25%trypsin−EDTA(Sigma Chemical Co.)溶液を処理して細胞ペレット(pellet)を回収して1.5mLチューブに移して10.000rpmで10分間遠心分離して上澄液を除去した。収得したペレットを60℃で乾燥させ、1NのNaOH100μLを入れて細胞内メラニンを溶解させた。この溶液をPBSで希釈した後、ELISA reader 475nmで吸光度を測定して下記数学式1により、メラニン含量を求めてその結果を図1に記載した。この際、肉荳蒄エタノール抽出物を添加剤しない群を対照群とした。
【0072】
【数1】

【0073】
図1に記載された通り、肉荳蒄エタノール抽出物はメラニン生成を抑制する活性が優れているので美白効果が卓越であることが分った(**:P<0.01)。
【0074】
さらに、前記実施例<1−1>で製造された肉荳蒄ヘキサン抽出物、クロロホルム抽出物、超臨界抽出物及び前記実施例<1−2>で製造された肉荳蒄仮種皮エタノール抽出物40μg/mLをそれぞれMelan−a細胞に処理して、前記と同一な方法でメラニン生成程度を測定した結果、肉荳蒄ヘキサン抽出物の場合約53.74%、肉荳蒄クロロホルム抽出物の場合約66.93%、肉荳蒄超臨界抽出物の場合約73.80%、肉荳蒄仮種皮エタノール抽出物の場合約70.50%、程度でメラニン生成が抑制されることが分った(結果未図示)。
【0075】
従って、肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮抽出物はメラニン生成を抑制する活性が優れていて、美白用組成物の有効な成分として利用できるものとして思慮された。
【0076】
<1−2:メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンEのメラニン生成抑制>
前記<実施例2−1>で分離されたメースリグナンをMelan−a細胞に処理して前記<実験例1−1>と同一な方法でメラニン生成を測定してその結果を図2に示した。
【0077】
図2に示した通り、メースリグナンはメラニン生成を抑制する活性が優れているので美白効果が卓越であることが分った(**:P<0.01)。
【0078】
さらに、前記<実施例2>で分離されたアウストバイリグナン7(750μM)及びリカリンE(50μM)をそれぞれMelan−a細胞に処理して、前記<実験例1−1>と同一な方法でメラニン生成程度を測定した結果、アウストバイリグナン7の場合、約53.89%、リカリンEの場合約58.44%程度でメラニン生成が抑制されることが分った(結果未図示)。
【0079】
従って、メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンEはメラニン生成を抑制する活性が優れて、美白用組成物の有効な成分として利用し得るものと思慮された。
【0080】
<実験例2:チロシナーゼ(tyrosinase)活性抑制>
<2−1:肉荳蒄又は肉荳蒄仮種皮抽出物のチロシナーゼ活性抑制>
先ず、前記実施例<1−1>で製造された肉荳蒄エタノール抽出物がメラニン生成に関与する酵素であるチロシナーゼ活性を抑制するか否かを確認した。
【0081】
前記<実験例1−1>の通り、培養されたMelan−a細胞に前記<実施例1−1>で製造された肉荳蒄エタノール抽出物を3日間処理して、5日後6−4ウェルプレートで培養された培地を除去して、0.25%trypsin−EDTA(Sigma Chemical Co.)溶液を処理して細胞ペレットを回収した。回収されたペレットを1.5mLチューブに移してリン酸塩緩衝液(pH6.8)200μLを添加し、10,000rpmで10分間遠心分離後上澄液を集めて、その内150μLを96−ウェルマイクロプレート(96-well microplate)に入れ、カテコール(catechol)50μLを添加した。前記添加後37℃で30分間培養した後、マイクロプレートリーダ(microplate reader)を利用して生成されたドーパクロム(dopa chrome)の量を490nmで吸光度を測定してその結果を図3に記載した。
【0082】
図3に記載された通り、前記<実施例1−1>で製造された肉荳蒄エタノール抽出物を処理した場合、生成されたドーパクロム(dopa chrome)の量が著しく減少されたことが分った。従って、チロシナーゼがドーパクロム生成に関与する酵素である点を考慮すれば、前記<実施例1−1>にて製造された肉荳蒄エタノール抽出物は、チロシナーゼ活性を制限することにより、メラニン生成を抑制し得ることが分った(**:P<0.01)。
【0083】
さらに、前記<実施例1−1>にて製造された肉荳蒄ヘキサン抽出物、クロロホルム抽出物、超臨界抽出物及び前記<実施例1−2>にて製造された肉荳蒄仮種皮エタノール抽出物40μg/mLをそれぞれMelan−a細胞に処理して前記と同一な方法でドーパクロム生成程度を測定した結果、肉荳蒄ヘキサン抽出物の場合、約54.92%、肉荳蒄クロロホルム抽出物の場合、約62.89%、肉荳蒄超臨界抽出物の場合、約68.34%、肉荳蒄仮種皮エタノール抽出物の場合、約772.75%程度、ドーパクロム生成が抑制されることが分った(結果未図示)。
【0084】
<2−2:メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンEのチロシナーゼ活性抑制>
【0085】
前記<実施例2−1>にて分離されたメースリグナンをMelan−a細胞に処理して、前記<実験例2−1>と同一な方法でドーパクロム生成程度を測定してその結果を図4に記載した。
【0086】
図4に記載した通り、メースリグナンはドーパクロム生成を抑制する活性が優れているので、チロシナーゼ活性を抑制し得ることが分った(**:P<0.01)。
【0087】
さらに、前記<実施例2>にて分離されたアウストバイリグナン7及びリカリンEを、それぞれMelan−a細胞に処理して前記<実験例1−1>と同一な方法でドーパクロム生成程度を測定した結果、アウストバイリグナン7の場合約54.87%、リカリンEの場合約60.04%程度、ドーパクロム生成が抑制されることが分った(結果未図示)。
【0088】
従って、チロシナーゼドーパクロム生成に関与する酵素である点を考慮すれば、メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンEはチロシナーゼ活性を阻害することにより、メラニン生成を抑制し得ることが分った。
【0089】
<実験例3:チロシナーゼ及びチロシナーゼ関連蛋白質(TRP−1,TRP−2)発現抑制>
<3−1:肉荳蒄抽出物のチロシナーゼ、TRP−1及びTRP−2発現抑制>
前記<実施例1−1>で製造された肉荳蒄エタノール抽出物が、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連蛋白質1(tyrosinase related protein-1,TRP-1)及びチロシナーゼ関連蛋白質2(tyrosinase related protein-2,TRP-2)発現を抑制するか否かを確認する為に、ウェスタンブロット(Western blot)を利用して分析してブラッドフォード(Bradford)法を利用して蛋白質を定量した。
【0090】
具体的に前記<実験例1−1>で肉荳蒄エタノール抽出物が処理された細胞から抽出された蛋白質を、10%SDS−ポリアクリルアミドゲルに電気泳動させ、ニトロセルロース膜(nitrocellulose membrance)でゲルの蛋白質を転移させた。5%脱脂粉乳を1時間常温で処理し、チロシナーゼ、TRP−1及びTRP−2の1次抗体を5%脱脂粉乳に、1:1000の比率で希釈して2時間常温で反応させた。1次抗体反応後10分ずつ2回にわたってTBST(Tris-buffer Saline Tween 20)でゆさぶりながら洗滌した。それぞれの1次抗体を認知する2次抗体を5%脱脂粉乳に1:1000になるように、希釈して1時間常温で反応させて1次抗体の時と同様に、10分ずつ3回にわたってTBST(Tris-buffer Saline Tween 20)でゆさぶりながら洗滌した後、下記の化学発光法(chemiluminescence)で現像してその結果を図5に記載した。
【0091】
図5に記載した通り、前記肉荳蒄エタノール抽出物はチロシナーゼ、TRP−1及びTRP−2の発現を阻害することにより、メラニン生成を抑制し得ることが分った(**:P<0.01)。
【0092】
<3−2:メースリグナンのチロシナーゼ、TRP−1及びTRP−2発現抑制>
前記<実施例2−1>で分離されたメースリグナンをMelan−a細胞に処理して前記<実験例3−1>と同一な方法によりチロシナーゼ、TRP−1及びTRP−2の発現を抑制するか、否かを確認してその結果を図6に記載した。
【0093】
図6に記載した通り、前記メースリグナンはチロシナーゼ、TRP−1及びTRP−2の発現を疎外することにより、メラニン生成を抑制し得ることが分った(**:P<01)。
【0094】
<剤形例1:化粧品>
<1−1乃至1−3:栄養化粧水(ミルクローション)>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)を下記表1の栄養化粧水剤形比率の通り通常的な方法により栄養化粧水を製造した。
【0095】
【表1】

【0096】
<1−4乃至1−6:柔軟化粧水(スキンローション)>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)を、下記表2の柔軟化粧水剤形比率の通り通常的な方法により柔軟化粧水を製造した。
【0097】
【表2】

【0098】
<1−7乃至1−9:栄養クリーム>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)を下記表3の栄養クリーム剤形比率の通り通常的な方法により栄養クリームを製造した。
【0099】
【表3】

【0100】
<1−10乃至1−12:マッサージクリーム>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)を下記表4のマッサージクリーム剤形比率の通り通常的な方法によりマッサージクリームを製造した。
【0101】
【表4】

【0102】
<1−13乃至1−15:パック>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)を下記表5のパック剤形比率の通り通常的な方法によりパックを製造した。
【0103】
【表5】

【0104】
<1−16乃至1−18:ゲル>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)を下記表6のゲル剤形比率の通り通常的な方法によりゲルを製造した。
【0105】
【表6】

【0106】
<剤形例2:食品>
<2−1:健康食品の製造>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)1000mg、ビタミンAアセテート70μg、ビタミンE:1.0mg、ビタミンB1:0.13mg、ビタミンB2:0.15mg、ビタミンB6:0.5mg、ビタミンB12:0.2mg、ビタミンC:10mg、ビオチン10μg、ニコチン酸アミド1.7mg、葉酸50μg、パントテン酸カルシウム0.5mg、硫酸第1鉄1.75mg、酸化亜鉛0.82mg、炭酸マグネシウム25.3mg、第1リン酸カルシウム15mg、第2リン酸カルシウム55mg、クエン酸カルシウム90mg、炭酸カルシウム100mg、塩化マグネシウム24.8mgを混合して製造することができ、その配合比を任意に変更実施しても良く、通常の健康食品製造方法により、前記の成分を混合した後、顆粒を製造し、通常の方法により健康食品組成物製造に使用できる。
【0107】
<2−2:健康飲料の製造>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)1000mg、クエン酸1000mg、オリゴ糖100g、梅実濃縮液2g、タウリン1gに精製水を加えて全体900mLを通常の健康飲料製造方法により前記の成分を混合し、約1時間85℃で撹拌加熱して作られた溶液を濾過して滅菌された2L容器に収得して密封滅菌冷蔵保管して健康飲料組成物製造に使用し得る。
【0108】
<2−3:チューインガム>
ガムベース20重量%、砂糖76.9重量%、香料1重量%及び水2重量%と、前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)0.1重量%を配合して通常の方法によりチューインガムを製造した。
【0109】
<2−4:キャンデー>
砂糖60重量%、水飴39.8重量%及び香料0.1重量%と、前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)0.1重量%を配合して通常の方法によりキャンデーを製造した。
【0110】
<2−5:ビスケット>
薄力1級25.59重量%、重力1級22.22重量%、精白糖4.80重量%、食塩0.73重量%、ブドウ糖0.78重量%、パームショートニング11.78重量%、アンモニウム1.54重量%、重曹0.17重量%、重亜硫酸ナトリウム0.16重量%、米粉1.45重量%、ビタミンB1:0.0001重量%、ビタミンB2:0.0001重量%、ミルク香0.04重量%、水20.6998重量%、全脂粉乳1.16重量%、代用粉乳0.29重量%、第1リン酸カルシウム0.03重量%、散布塩0.29重量%及び噴霧乳7.27重量%と前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)1重量%を配合して通常の方法によりビスケットを製造した。
【0111】
<剤形例3:医薬品>
<3−1:散剤>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)50mg、結晶セルロース2gを混合した後、通常の散剤製造方法により機密包に充填して散剤を製造した。
【0112】
<3−2:錠剤>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)50mg、結晶セルロース400mg、ステアリン酸マグネシウム5mgを混合した後、通常の錠剤剤製造方法により打錠して錠剤を製造した。
【0113】
<3−3:カプセル剤>
前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)30mg、乳清蛋白質100mg、結晶セルロース400mg、ステアリン酸マグネシウム6mgを混合した後、通常のカプセル剤製造方法によりゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0114】
<3−4:注射剤>
通常の注射剤製造方法により、活性成分を注射用蒸留水に溶解し、pHを約7.5に調節した後、前記<実施例1>で製造された肉荳蒄抽出物、肉荳蒄仮種皮抽出物又は前記<実施例2>で分離された化合物(メースリグナン、アウストバイリグナン7及びリカリンE)100mg、注射用蒸留水、pH調節剤を混合して2mL容量のアンプルに充填、滅菌して注射剤を製造した。
【0115】
<適用例>
前記<剤形例1−1>乃至<剤形例1−18>により製造された栄養化粧水、柔軟化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、パック及びゲルによる色素沈着抑制効果を下記の通り検証した。
【0116】
先ず、健康な男女20名ずつを選定して、両腕の下膊部に径7mm大の孔が6個ずつ2条に窪んだアルミニウムホイルを着けて、腕より10cm離れた距離でORIEL solar simulator 1000Wを使用して60J/cmの光量を照射した。照射前に70%エタノール水溶液で照射部位を綺麗に洗滌した。照射後照射部位に1日3回ずつ美白成分を含有する<剤形例1−1>乃至<剤形例1−18>を塗布した。3週間塗布後色素沈着度を肉眼で判定し、前記剤形例が対照群に比べて色素沈着を抑制した程度を著しい効果、有効、無効の3段階で評価し、さらに、皮膚副作用発生可否を観察した後その結果を表7に示した。
【0117】
【表7】

【0118】
前記表7に記載した通り、本発明に伴う美白成分を含有する皮膚美白用組成物を彼試験者20名の中で最少12名以上に対して美白効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0119】
前記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物、又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物は、メラニン生成及びチロシナーゼ活性を抑制することにより、卓越な美白効果があるので、美白用化粧料組成物、食品組成物又は薬学的組成物の有効な成分で利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用化粧料組成物。
【化1】

【請求項2】
下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用食品組成物。
【化2】

【請求項3】
下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物を含有することを特徴とする美白用薬学的組成物。
【化3】

【請求項4】
前記肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物は、水、C1−C6の有機溶媒及び亜臨界又は超臨界流体からなる群より選ばれた一つ以上の溶媒による抽出物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記C1−C6の有機溶媒は、C1−C6のアルコール、アセトン、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、エチルアセテート、メチレンクロライド、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル、からなる群より選ばれたことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の化粧料組成物製造の為の用途。
【化4】

【請求項7】
下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の食品組成物製造の為の用途。
【化5】

【請求項8】
下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物の薬学的組成物製造の為の用途。
【化6】

【請求項9】
下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物のメラニン生成を抑制する方法。
【化7】

【請求項10】
下記化学式1乃至化学式3からなる群より選ばれたリグナン系化合物又はこれを含有する肉荳蒄抽出物又は肉荳蒄仮種皮抽出物のチロシナーゼ活性を抑制する方法。
【化8】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−500670(P2011−500670A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529874(P2010−529874)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006143
【国際公開番号】WO2009/051437
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(503344078)バイオケア カンパニ−リミテッド (4)
【出願人】(510103369)ニューツリー、カンパニー、リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NEWTREE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】11F Tech Center, SK n Techno Park, 190−1, Sangdaewon−Dong, Joongwon−Gu, Sungnam−City, Gyeonggi−Do 462−120 Republic of Korea
【Fターム(参考)】