説明

リグノセルロースバイオマスの改良された分画方法

セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの分画へのリグノセルロースバイオマスの効率的な分画方法を提供する。本方法では、バイオマスを収穫し収集した場所で、またはその場所の近くで、濃有機酸蒸気を高温でバイオマスに適用し、バイオマス中のヘミセルロースおよびリグニンを少なくとも部分的に解重合させるか、または実質的に可溶化させる。その後、大量の貯蔵の拡大のため、および/または、いくらか離れた第2の施設への搬送のために、いずれの場合にも有機酸で処理したバイオマスを乾燥させペレット化する。有機酸で処理したバイオマスを、ローカル処理サイト、またはローカル処理サイトから離れた第2の施設で、所望の化学物質、燃料および/または燃料添加剤へと処理してもよく、あるいは、ペレット化した物質を、ローカルで、またはローカル処理サイトからいくらか離れた飼育場で反芻動物の飼料として使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロースバイオマスの改良された分画方法、特に、化学物質の合成またはバイオ燃料もしくはバイオ燃料添加剤の製造にさらに使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石由来物質の供給が難しくなり、入手および使用がより困難になり、あるいはより費用がかかるようになってきていることから、現在、石油などの化石由来の物質から生成されている化学物質および燃料製品を提供するため、あるいは、そのような化学物質および燃料製品のバイオ機能代替品として許容されるものを提供するために、炭素分が化石由来でなく生物由来である物質のバイオマスを使用することが、近年急速に、研究開発の投資および取り組みの中心になってきている。
【0003】
ある種の化学物質および燃料製品の代用品または代替品は、既にバイオマスから大規模な商業的規模で製造されている。液体燃料製品の分野では、これまでにエタノールとバイオディーゼル(脂肪酸アルキルエステル)が、トウモロコシおよびサトウキビから(エタノール用)、また、各種植物油および脂肪から、商業的規模で製造されている。しかしながら、これらの例があるにしても、バイオマスの利用に改善の余地がある。
【0004】
例えば、食品として実質的に使用されていないリグノセルロースバイオマスから、または土地使用の形態や行動様式に物質的な悪影響(例えば、ダイズ、トウモロコシなどの作物を追加生産するための森林破壊など)を及ぼさずに収穫または調達して使用することができるリグノセルロースバイオマスから、適切な液体燃料および燃料添加剤(または、同じくバイオ由来の、燃料以外の興味ある化学物質)を製造できることが好ましいことであろうことは、以前から知られている。この特徴を有する非食用リグノセルロースバイオマスには、例えば意図的に成長させた非食用バイオマス作物(草、サトウモロコシ、早生樹など)、または、より具体的には、木材廃棄物(刈込み材、木材チップ、おが屑など)および植物廃棄物(例えば、葉、刈り取った草、野菜および果物廃棄物)を含む多くのものが考えられ得るであろう。その上、既に耕作中の土地に関しては、生産されたバイオマスの約4分の3は廃棄物になると推定されており、したがって、問題のバイオマスが廃棄物であろうとなかろうと、リグノセルロースバイオマスを原料として製造できるであろう着目の各種化学物質および燃料製品は、実際、経済的に製造することができるであろう。
【0005】
残念ながら、実のところ、この提案を実現するには、乗り越えるべき多くの実際的困難が実在する。第1の困難は、リグノセルロースバイオマスを含む各種成分の特性が大きく異なることに起因する。
【0006】
このことに関しては、石油などの化石系物質にも当てはまるが、必要な、または必要となるであろうあらゆる化学物質および燃料製品の代用品または代替品を、必要な規模で、また必要な品質、経済性および効率で実際に製造し得る可能性は、リグノセルロースバイオマスの場合、バイオマスを完全にかつ効率よく各種成分に分画して、それらを直接使用するか、または他の有用な形態に変換し得るか否かによる。当然のことながら、石油では、この分画は製油所で各種プロセスにより行われるが、リグノセルロースバイオマスでは、今日に至っても類似のプロセスは開発されていない。
【0007】
本発明に関し、リグノセルロースバイオマスは、主として、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの分画を含み、これら3成分の中でセルロースが最も多い。セルロースは植物の構造組織に由来し、1、4位で結合したベータグリコシド残基の長鎖からなる。これらの結合により、セルロースは高い結晶性を有する。対照的に、ヘミセルロースは非晶質のヘテロポリマーであり、リグニンは植物の繊維細胞中でセルロースとヘミセルロースとの間に存在する3次元の芳香族ポリマーである。
【0008】
リグニン分画について補足すると、用語「リグニン」に包含されると考えられている物質、及びそれに対応してバイオマス中のリグニン含有量を定量してきた方法は、歴史的には、リグニン含有量について検討されてきた背景、すなわち、「リグニン」は明確な分子構造を有さず、したがってバイオマス毎に実験的に測定されているという背景に依存している。動物科学および農学では、例えばリグノセルロースバイオマスの可消化エネルギー量を考える場合、所与のバイオマス中のリグニン量は、酸性デタージェントリグニン法(Goering and Van Soest, Forage Fiber Analyses (Apparatus, Reagents, Procedures, and Some Applications), Agriculture Handbook No. 379, Agricultural Research Service, United States Dept of Agriculture (1970); Van Soest et al., "Methods for Dietary Fiber, Neutral Detergent Fiber, and Nonstarch Polysaccharides in Relation to Animal Nutrition", J. Dairy Sci., vol. 74, pp 3583-3597 (1991))による測定がより一般的である。紙およびパルプ工業では、対照的に、所与のバイオマス中のリグニン量は、従来、クラーソン法により測定されている(Kirk and Obst, "Lignin Determination", Methods in Enzymology, vol 16, pp.: 89-101 (1988))。
【0009】
本発明の基準枠として、酸性デタージェントに不溶のリグニン分が6%以上(乾燥重量基準)というのは、反芻動物用としては比較的低栄養価であり、したがって多くは他の用途に転用されている、成長した寒冷地牧草とほぼ一致している。したがって、本発明により提供される改良は、一般に、あらゆるリグノセルロースバイオマスに有用であるものの、本発明が最も直接関係するのは、この一般的特徴を有するリグノセルロースバイオマスである。
【0010】
バイオマスのセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの分画の違いのため、また各種バイオマス中に異なる程度で存在する、比較的少量の他の分画を考慮して、Faroneらの米国特許第5,562,777号「Method of Producing Sugars Using Strong Acid Hydrolysis of Cellulosic and Hemicellulosic Materials」に記載されているように、リグノセルロースバイオマスを分画する方法が、長年に亘って数多く開発、または提案されている。その多くは、セルロースおよびヘミセルロース分画をC6およびC5の糖に加水分解することを含むものである。
【0011】
基本的に、生物学的方法および非生物学的方法の両方が開示されており、セルロースから糖を製造する最も古くかつ最もよく知られている非生物学的方法は、酸による加水分解、最も一般的には、希酸法、濃酸法、またはこれらの2つの組み合わせを使用する硫酸ベースの加水分解を含むものである。Faroneらの米国特許第5,562,777号には、この分野でその時点において知られていた硫酸ベースの各種方法の利点と欠点が記載され、強酸/硫酸加水分解を使用し、かつ非晶化工程の組み合わせを1回以上繰り返して行うさらなる変法を提案している。この方法では、バイオマス(および/または、その前の繰り返しの際の非晶化工程で残った固体を含む)を、25〜90パーセントの硫酸溶液と混合してバイオマスの1部を可溶化し、その後、酸を20〜30パーセントに希釈し、その混合物を、好ましくは摂氏80〜100度に一定時間加熱して、加水分解されなかったセルロース分画およびヘミセルロース物質を可溶化する。
【0012】
効果的な分画方法が示されていても、リグノセルロースバイオマスの化学物質、燃料、および燃料添加剤への変換の提案によって持ち掛けられるさらなる課題が、a)例えば、広大な地域から極めて大量の農業残留物を収穫もしくは収集し、その後、それらを、通常はいくらか離れて位置する大規模な化学または石油化学の処理および流通の拠点へ搬送しなければならない、またはb)バイオマスを、貯蔵および搬送条件によってバイオマス(が影響される)よりも影響が少ない中間体、さもなければ化学物質および燃料の処理および流通拠点へ搬送するのにより適した中間体、例えばシロップ状のC5およびC6の糖、もしくはC5およびC6の糖アルコール/多価アルコールに予め加工するローカル施設を建設する、またはc)リグノセルロースバイオマス源に隣接して、最終的な化学物質、燃料または燃料添加剤を製造するための比較的小規模なグリーンフィールドプラントを多数建設する、とのロジスティクスから端的に発生する。選択肢b)は、a)またはc)より好ましいと考えられるが、これまでに提案されているリグノセルロースバイオマスの精製構想は、残念ながら、依然として、経済的な搬送が困難な中間体を目指すものである。
【0013】
さらに、これらのバイオマスが生物由来であるという事実から、別の困難も生じてくる。いかなる変換方法であっても、原料の安定性は常に課題であるが、バイオマスは生物由来であるから、原料の品質は本質的に変動し得るものであり、収穫、貯蔵、および輸送における原料の安定性に特別な課題を提示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した困難の一部または全部に対処し、かつ克服し得る方法で、リグノセルロースバイオマスを処理する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
例えば、第1の方法の本発明は、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの分画へ、リグノセルロースバイオマスを効率良く分画する方法であって、濃有機酸の蒸気をバイオマスに、バイオマスを収穫および収集した場所またはその場所の近傍で、高温で適用して、バイオマス中のヘミセルロースおよびリグニンを少なくとも部分的に解重合させる方法を提供する。有機酸処理したバイオマスを、その後、大量貯蔵を拡大するため、または所望の化学物質、燃料、または燃料添加剤の需要源により近いもしくはそれらの流通手段により近い第2の施設への搬送を拡大するため、あるいは既存の化学物質または燃料の加工施設を利用するため、乾燥後の固体がペレット化され得る程度まで乾燥させる。あるいは、この物質を、ローカル処理サイトで貯蔵し、その後、所望の化学物質、燃料、および/または燃料添加剤に加工するようにしてもよく、また、問題の第2の施設を(隣接していようと、近くであろうと、または遠くであろうと)反芻動物の飼育場として、ペレット化した物質を反芻動物の飼料として使用してもよい。
【0016】
第2の施設における燃料、燃料添加剤、および化学物質の製造では、少なくとも部分的に解重合したヘミセルロースおよび塩を、これらを適当な溶媒に溶解させ、濾過することにより1つの分画として回収する。リグニン分画は実質的に水に不溶であるので、溶媒は通常、熱水であり、少なくとも部分的に解重合したリグニン分画を、次に、より高濃度の有機酸、または他の適当な溶媒に溶解させ、濾過することにより回収する。残留する固体は実質的に不純物を含まないセルロースパルプを含む。さらに後述するように、ヘミセルロース、セルロース、およびリグニン由来の分画は、その後、燃料、燃料添加剤、または他の望ましい化学物質を製造するためにさらに処理を行ってもよい。
【0017】
他の一実施形態では、リグノセルロースバイオマス中のヘミセルロースおよびリグニンを、通常、より高濃度の有機酸の蒸気に高温で暴露することにより実質的に可溶化し、その後、ローカル処理施設で、適当な溶媒による洗浄と濾過により、残留する主にセルロースからなる固体分画から分離する。次いで、残留固形分を乾燥させ、好ましくはペレット化して、ローカル処理用に貯蔵したり、より一般的には上述のように、所望の化学物質、燃料または燃料添加剤の需要源、もしくは流通手段により近い第2の施設へ搬送したり、あるいは既存の化学物質または燃料の加工施設を利用したりできる、乾燥したコンパクトなセルロース分画を得る。残留固形分は、ペレット化して、燃料、化学物質または燃料添加剤を製造する物質としてではなく、飼料として使用するために反芻動物の飼育場(他の第2の施設として)に提供してもよい。
【0018】
第2の実施形態の変形として、可溶化したヘミセルロースおよびリグニンは、それ自体、蒸発により濃縮して、混合物固体としてもよく、この混合物固体は、ペレット化して第2の施設へ経済的に搬送することができ、あるいは、貯蔵した後、ローカルで処理することができ、いずれの場合も、さらなる処理には、ヘミセルロースの溶解には有効であるがリグニン分画は実質的に不溶な溶媒(または、溶媒混合物)(適当な溶媒は、単に水である)中にヘミセルロース成分を抽出することにより、ヘミセルロース成分とリグニン成分を分離し、その後、ヘミセルロース、セルロースおよびリグニンにそれぞれ由来する分画の一部または全部を処理して、所望の化学物質、燃料または燃料代替物を得ることが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の方法を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態の方法を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態の一変形の方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
紙・パルプ産業では、リグノセルロースバイオマスの処理に、ギ酸を含む有機酸が長く使用されてきた。現在のパルプ化法は、通常、摂氏90〜150度の温度で、溶媒:バイオマス固形分比4:1以上として高濃度のギ酸水溶液(例えば、80〜90パーセントのギ酸)を使用して、バイオマス中のリグニンと低分子量ヘミセルロースとを(解重合により)可溶化し、後にそれらを除去できるようにする。所望のセルロースパルプ固体をリグニンおよびヘミセルロースを含む蒸解液から分離し、その後、洗浄し、必要ならば漂白する。一方、リグニンが水に実質的に不溶であって、ヘミセルロースは可溶であるから、その後、水を加えることによってリグニンとヘミセルロースを分離することができる。
【0021】
濃ギ酸は、リグノセルロースバイオマスのセルロース成分からリグニン成分およびヘミセルロース成分の両方を溶解し分離するのに有効であるが、この方法は、パルプスラリーを生成するのに必要な大量のギ酸と水を加熱するために、かなりのエネルギーを使用し、また、溶媒を再利用するのに十分な高濃度でのギ酸の除去および回収は、水、酢酸およびギ酸が共沸混合物を生成するために、困難であり、かつ経費も嵩む。
【0022】
しかしながら、化学物質の合成、またはバイオ燃料もしくは燃料添加剤の製造にリグノセルロースバイオマスを使用することに関し、これらの有機酸ベースの既知の分画方法では、エネルギー消費や溶媒(および、溶媒の回収)に対する要求が、化学物質、バイオ燃料、または燃料添加剤の製造コストを、そのような物質を石油から製造するコストと比べて著しく上昇させるであろう。
【0023】
対照的に、本発明では、バイオマスに浸透する高温の有機酸蒸気を使用して、ヘミセルロースおよびリグニンを容易に抽出できる分画に可溶化するので、従来のパルプ法で使用されているような大量のギ酸および水を処理する必要はない。さらに、我々は、従来の液体ベースのギ酸分画法と比べて、より低濃度のギ酸を使用でき、これにより分画からのギ酸の回収要求をさらに低減できることを見出した。使用したギ酸は、パルプ法の適用で考慮した共沸蒸留により回収することができる。あるいは、使用する水および酸が比較的少量であるという正にその理由から、再利用のために回収しようとしているギ酸は、我々が特定した有機共溶媒を使用し、単に蒸留することにより、簡単に、かつ水−ギ酸の共沸混合系を破壊する必要もなく回収することができる。そして、言うまでもなく、以前から知られたパルプ化の処理と比べ、我々の方法で、リグノセルロースバイオマスをさらに処理するための分画を行うために使用する有機酸の量は非常に少量であるので、分画完了後に残留する有機酸は、(酸を回収する費用を考慮して)全部、またはその一部を単に中和するだけでもよい。
【0024】
本発明は、本発明の好ましい実施形態(10)の方法を概略的に示す図1を参照することにより、より容易に理解することができよう。通常、酸性デタージェントに不溶なリグニンを6%以上(乾燥重量基準で)含有するリグノセルロースバイオマス12を、まず、好ましくは、バイオマスの生産または生育地に近い場所(サイトA)に収集し、必要に応じて泥および他の汚れを除去した後、任意選択により、工程14で、動物用飼料または肥料として望ましいであろうタンパク質がより富む成分を(一例として、バイオマスの機械的破砕及び空気分級により)分離するために、および/または、下流での除去がより困難であり、また、下流での目的とする変換を阻害もしくはより困難なものにし得る、および/またはさらなる処理により得られる生成物に悪影響を及ぼし得る、種または物質(例えば、窒素化合物、硫黄化合物、高灰分成分)を比較的高含有量で有する成分16を分離するために前処理を行う。前処理工程14で除去することが望ましい有望なバイオマスにおける成分の例は、トウモロコシ茎葉の葉分画であろう。これは、窒素分が多いが、反芻動物の飼料として考えるならば、干し草に近い栄養価を有する。
【0025】
工程14において、任意選択のバイオマス12の前処理を行った後、バイオマス12(または任意選択により成分16を除去した後のバイオマス12の残部)を、好ましくは工程18で、その後の工程20で高温の濃有機酸蒸気22と接触させるための準備/前処理を行う。工程18の前処理は、濃酸蒸気22がバイオマス12により容易に浸透し、工程14では達成されなかった程度にまで、バイオマス12中のリグニンおよびヘミセルロースを少なくとも部分的に解重合するかまたは実質的に可溶化されるよう、バイオマス12を機械的に破砕することを含む。さらに、工程18は、含水量が好ましくは10パーセント以下になるように、バイオマス12を乾燥することを含むことができるが、当業者であれば、酸浸漬工程(acid steeping step)20の湿分濃度は、例えば、高温の濃有機酸蒸気22の供給濃度と供給量を含む他の手段でも同様に調節し得ることを理解するであろう。工程18において、バイオマスを機械的に破砕する方法は、限定はされないものの、例えば、摩砕、細断、およびハンマーミルによる粉砕など、当業者には数多く知られており、工程20における高温の濃有機酸蒸気22との効率的かつ有効な接触によってバイオマス中のリグニンおよびヘミセルロースが少なくとも部分的に解重合されるかまたは実質的に可溶化されるようなバイオマス12の破砕手段を選択することは、当業者であれば十分になし得ることであろう。
【0026】
バイオマス12は、上記のように、任意のリグノセルロースバイオマスであってよいが、先述したように、人の食料源として実質的に使用されていないものが好ましく、バイオマスから製造される化学物質、バイオ燃料および燃料代替品の需要が最大の場所で、容易に利用可能な(または、容易に利用可能にすることができる)バイオマスであることがより好ましいであろう。成長した草、穀物サイレージから分離した、または穀物サイレージに含まれる穀物残渣、トウモロコシの茎葉、小麦の藁、大麦の藁、ススキ種、スイッチグラス、バヒアグラス、ソルガム種、サトウキビの絞り粕、カモガヤ、クサヨシ、綿繰り機の屑が、考えられ得るバイオマスの例である。食用作物の収穫物および処理物からのバイオマスを含む各種起源のバイオマスの混合物も明らかに考慮されるものであり、単称の「バイオマス」および「リグノセルロースバイオマス」が使用されたときにも包含されると考えるべきである。植物全体のサイレージ、例えば、収穫され、嫌気的に大量に貯蔵されて/サイロに貯蔵されてサイレージを形成する植物全体としてのトウモロコシは、一種の混合バイオマス供給原料と考えられ、再生可能源をベースとした化学物質、燃料および燃料添加剤を製造する殆どの施設が、それらの施設へのバイオマスまたはバイオマスベースの供給原料を年中入手する必要があろうという点で興味深いものである。各種起源からの数種の異なるバイオマスが使用される場合、意図的に栽培した非食用バイオマス、または農業廃棄物のバイオマスが、混合物中にそれらの数種のバイオマスの最も大きな分画を含むことが好ましい。混合バイオマス供給原料の例には、トウモロコシの茎葉およびトウモロコシの繊維が含まれ、好ましくは、トウモロコシの繊維よりトウモロコシの茎葉が供給原料に大きい割合で含まれる。
【0027】
なお、当業者であれば、ある種のバイオマスが、他のものより、ある種の化学物質、燃料および添加物(または、所望の割合の一連の製品)を製造するのにより適していることはあり得るものの、リグノセルロースバイオマスの分画に広く適応可能であり、また、後述するように、特に、所望の化学物質、燃料および/または燃料添加剤の製造施設が遠隔地にあるため、別の方法では実施できるとは考え難いバイオマスの分画に適応可能であることが本発明の利点であることを認識するであろう。
【0028】
次に図1に戻って、酸蒸気浸漬工程20において、高温の濃有機酸22を作用させ、使用した酸の濃度にも一部依存するが、前処理工程18からのバイオマス中のヘミセルロースおよびリグニンを少なくとも部分的に解重合させるか、またはリグニンおよび低分子量のヘミセルロースを実質的に可溶化させて、液体と、バイオマスのセルロース分画を含む繊維質固体残渣を生成させる。濃酸蒸気22は、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、またはギ酸などの有機酸の蒸気であるか、あるいはそのような酸の混合物からなることが好ましい。酸を50〜90体積パーセント以上含み、残りが水蒸気である、濃ギ酸または濃酢酸の蒸気22を使用することが最も好ましい。
【0029】
この点に関し、我々は、50パーセント以上の酢酸水溶液の蒸気を、十分に分断して混合したトウモロコシ茎葉バイオマスと、十分な温度および時間で接触させると、部分的に解重合した物質が、乾燥工程およびペレット化または高密度化工程26および28から得られるペレット化した物質24のバインダーとして働き得る程度まで、茎葉中のヘミセルロースおよびリグニンを十分に解重合させることができることを見出した。ローカルでの大量貯蔵の拡大、あるいは反芻動物用飼料としての使用、または、以下にさらに説明するような、第2、もしくは中央の施設(図中に、そのように標示されている)でのさらなる分画および処理のための第2の場所への輸送に望まれる耐久性を有するペレットを製造するために、追加のバインダーを必要としないことが好ましい。
【0030】
バイオマス中のヘミセルロースおよびリグニンを実質的に可溶化させるために、70パーセント〜90パーセント超の酸を含む、より高濃度の酸の蒸気を使用することができる(後者のリグニンの大部分は、50パーセント濃度の溶液には不溶である)。バイオマス12中のヘミセルロースおよびリグニンを実質的に可溶化させる実施形態を図2および3に概略的に示すが、示した実施形態中の共通する特徴部分には、同一符号を付している。これらの実施形態を、図2および3を参照しながら、以下により詳細に説明する。
【0031】
しかしながら、説明する各実施形態においては、好ましくは、場合によって、バイオマス12に濃酸蒸気22を浸透させ、かつ、酸蒸気浸漬工程20において、バイオマス12中のリグニンおよびヘミセルロースを少なくとも部分的に解重合させるかまたは実質的に可溶化させるのに十分な圧力および温度に対応する条件下で、一定時間、バイオマス12を蒸気22と接触させておく。バイオマス12を濃酸蒸気22と接触する前に加熱してもよいし、濃酸蒸気22を過熱状態にした後、バイオマス12に接触させてもよいし、あるいは、蒸気22とバイオマス12を共に加熱して酸蒸気浸漬工程20に導入してもよいし、その工程中に加熱してもよい。さらに、濃酸蒸気22は、バイオマス12と、バイオマス12に接触している濃有機酸溶液を共に加熱するか、または濃有機酸溶液を高温バイオマス12に接触させるなどして、そのままで(in situ)発生させてもよい。
【0032】
所与のバイオマス12中のリグニンおよびヘミセルロースを少なくとも部分的に解重合させるかまたは実質的に可溶化させるのに必要な圧力、温度、および滞留時間の条件は、処理する特定のバイオマスとその組成、バイオマスがどの程度細かく分断されて酸蒸気浸漬工程に供給され得るか、選択した特定の有機酸、および使用する酸の濃度によって、多少変動するであろうが、一般には、酸蒸気浸漬工程は、大気圧〜約500psigの範囲の圧力、摂氏約50度以上の温度、および30分以上の程度の時間で行われることが要求される。図1の実施形態では、図2および3の実施形態と比較して、より低濃度の酸、より緩和な温度および圧力条件、ならびにより短い滞留時間が要求されるであろう。
【0033】
酸蒸気浸漬工程20に続いて、工程26で物質が乾燥され、乾燥されかつ一部処理されたバイオマスをその後ペレット化または高密度化工程28でペレット化するのに十分な量の湿分を除去する。乾燥/脱水工程26は、残留固体をペレット化するのに適した濃度まで水性スラリーを濃縮し、水を除去する従来の多くの装置またはそのような装置の組み合わせ、例えば、遠心分離機、ハイドロクロン、ベルトフィルタープレス乾燥機、流動層乾燥機、間接式または直接式ロータリードラム乾燥機、スピンフラッシュドライヤーなどにより実施することができる。ペレット化を促進し、搬送コストを低減させるためには、乾燥工程26を出るバイオマスは、水分含有量が好ましくは10パーセント以下、より好ましくは8重量パーセント以下、最も好ましくは6重量パーセント以下である。
【0034】
動物飼料および燃料用木質バイオマスのペレット化については十分に確立されているので、工程28のペレット化は、当業者に知られている従来の方法および装置により同様に実施することができ、その物質が空気輸送されようと、あるいはコンベヤーベルト/システムにより、トラックもしくは鉄道により、他の手段により、または手段の組み合わせで輸送されようと、選択された輸送手段による第2の場所または中央施設30への輸送に対して、十分に耐えられるだけの凝集性と完全性とを有する物質が得られることが好ましい。サイトAから第2の場所へのペレット化した物質の輸送は、後述の特許請求の範囲および本明細書では、便宜上、ローカルサイトAから第2の場所への物質の「搬送(shipping)」と記載するが、「搬送」の使用には、船舶、航空機、鉄道またはトラック、あるいは類似の乗り物による輸送手段に限定することを意図するものではなく、そのようなペレット化した物質をサイトAから第2の場所へ移動させ得る任意の方法を含むと理解すべきである。
【0035】
この点に関し、ペレット化した物質に要求される耐久性―取扱い、輸送、および貯蔵時に、ペレットが過剰量の微粉を生成しないことを主として意味する―は、より詳しくは、所与のサイトA、サイトAと所与の中央施設/第2の場所との間、および中央施設/第2の場所でのこの物質の取扱い、輸送、および貯蔵の仕方によるであろう。さらに、耐久性を示す正確な数値が妥当性をもって先験的に割り当てられるおそれがないように、ペレットの耐久性を評価するために開発された装置とそれに関連する方法がいくつかある。しかしながら、ペレット化され、部分的に処理されたバイオマスは、いかなる例(図1〜3、および特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に包含されるその任意の変形)においても、ペレット化工程28の完了からペレット化された物質の最終処理までに、細粉または微粉の生成によって5パーセント超の質量の損失が生じないだけの耐久性を有していることが好ましく、この移動において、ペレット化され、部分的に処理されたバイオマスの3パーセント超が微粉として失われないことが好ましい。
【0036】
ペレット化した物質24は、飼育場の形態の第2の場所30へ輸送し、反芻動物の飼料として直接使用してもよい。再生可能源をベースとした燃料、燃料添加剤および/または化学物質が所望の最終製品である場合、ペレット化され部分的に処理されたバイオマス24は、その後、さらなる処理のために中央施設/第2の場所30へ搬送するのが好都合である。このさらなる処理には、溶媒洗浄工程32で、溶媒または溶媒の組み合わせにより洗浄することが少なくとも含まれ、該溶媒は、バイオマス中のヘミセルロース物質の加水分解により生成されたペントースとセルロースを主とする固体分画とを含む生成物またはストリーム34中の少なくとも部分的に解重合されたヘミセルロース物質が効果的に分離されるように選択される。図1において、実質的に水不溶性のリグニンとセルロース分画をヘミセルロース分画から分離するために、工程32において熱水を使用することが好ましく、セルロース固体分画36およびリグニン分画38を最終的に生成するために、より高濃度の有機酸の洗浄(部分的に解重合したリグニンが溶解する)および濾過プロセスを1回以上繰り返す。
【0037】
再生可能源ベースの燃料、燃料添加剤および/または化学物質を得るさらなる処理のために、ペレット化した物質を第2の場所30へ輸送することが望まれる特定のシナリオでは、中央プラントの周りにローカル処理サイトを分散して配置することを企図し得る(「ハブアンドスポーク(hub and spoke)」概念)。その場合、ローカル処理サイト(サイトA)は、通常、中央プラントから平均して50キロメートル以上離れており、中央プラントから平均して80キロメートル以上離れていることもしばしばあり得る。
【0038】
言うまでもなく、当業者であれば、これらの分離を行うのに、他の溶媒または溶媒の組み合わせも有利に使用し得ることを認識し、セルロース固体分画36から残留するヘミセルロースおよびリグニン物質を可溶化して除去するために、例えば、図2および3の実施形態を参照して後述するような有機共溶媒を使用し得る。
【0039】
このようにして回収または分画されたセルロース固体分画36は、この変換の実施に適した条件下での強力な鉱酸の加水分解により、ヘキソース生成物または実質的にヘキソースからなるストリームへ変換することができる。ヘキソース生成物またはストリームは、全体が実質的にC6単糖類からなり、かつ最小限のさらなる前処理と精製を行うことによって、所望のバイオ化学物質およびバイオ燃料製品にまで品質を高めるのに適した性質を有するものであることが好ましい。C6単糖類から誘導できるバイオ化学物質およびバイオ燃料製品の例には、水素化および水素化処理による燃料添加剤製品、あるいは醗酵によるエタノール、リシン、トレオニン、乳酸、グルコン酸または他の有機酸が含まれる。
【0040】
同様に、バイオマス12中のヘミセルロースの加水分解により生成したペントース生成物またはストリーム34は、全体が実質的にC5単糖類からなり、かつそのようなC5単糖類から誘導できるバイオ化学物質およびバイオ燃料製品、例えば、醗酵によるエタノール、トレオニン、リシン、乳酸、グルコン酸または他の有機酸、水素化および水素化処理によるフルフラール、フルフリルアルコール、メチルテトラヒドロフルフラール、フルフリル酸および燃料添加剤にまで品質を高めるのに適した性質を有するものであることが好ましい。
【0041】
セルロース固体分画36の加水分解に好ましい強鉱酸は硫酸であり、摂氏25度〜摂氏100度の温度、大気圧〜0.7MPaのゲージ圧(100psig)の圧力、および、主として使用温度条件に依存するが15分〜2時間の滞留時間で、1〜80、好ましくは40〜80パーセント濃度の硫酸水溶液として使用される。
【0042】
リグニン分画38も、同様に、例えば、米国特許出願公開第2009/0718498A1号などの教示に基づき、オゾン分解により、燃焼用燃料としての合成ガスを製造するガス化供給原料としての芳香族燃料添加剤へと変換したり、あるいは、オゾン分解により、バイオ直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩製造用の芳香族スルホン化供給原料を製造したりすることによって、さらなる実際的な使用に供し得る。
【0043】
ここで、図2を参照すると、代替の実施形態が概略的に示されている。実施形態40において、ペレット化した物質24には、バイオマス12からのセルロース分画のみが含まれており、反芻動物用飼料、あるいはバイオの燃料、燃料添加剤または化学物質用のヘキソース生成物またはストリームへとさらに処理するために中央施設30へ搬送されるが、一方、ヘミセルロース分画およびリグニン分画は、好ましくはバイオマスの生産地または生育地に近い第1のサイト(サイトA)で加水分解される。
【0044】
図2の実施形態40および図3の実施形態70においては、前述したように、中央施設でのさらなる処理のために乾燥され、ペレット化され、搬送され得る、または動物飼料中で使用し得る清浄なセルロース固体パルプを製造するために、ヘミセルロースおよびリグニンを1種以上の弱有機酸(ギ酸または酢酸がここでも好ましい)を含む溶媒に可能な限り溶解させることが好ましい。したがって、酸蒸気浸漬工程20で、70パーセント〜90パーセント超の酸を含む、高温の高濃度の酸の蒸気流22を使用することに加えて、溶媒洗浄工程32において、1回以上の洗浄/溶解および濾過の繰り返しを介して追加の濃酸溶液と共に有機共溶媒を使用することが好ましい。
【0045】
図2の実施形態40では、このようにして濾液中に可溶化されたリグニンおよびヘミセルロースはその後、実施形態10で記載したようにサイトAでストリームまたは生成物38および34へ分離することができ、残留するセルロース固体分画は、図1について上述したように、動物用飼料での使用またはさらなる処理に向けて第2の場所/中央施設へストリームまたは生成物24として輸送するために、対応する工程26および28で乾燥およびペレット化できる。
【0046】
図3に示す実施例70では、工程32の洗浄および濾過で可溶化したヘミセルロースおよびリグニンを含有する濾液を工程26で並行してセルロース質固体へと蒸発させることができ、沈殿によって生成した固体を工程28でペレット化し、第2の場所/中央施設へ輸送するか、あるいは後にサイトAでさらに使用および/または処理するために貯蔵することができる。このようにして、図3ではペレット化された2つの製品が提供され、バイオマス12のセルロース成分はペレット化製品24bの大半を占め、バイオマス12のヘミセルロースおよびリグニン成分はペレット化製品24aの大半を占めるが、これに関して、当業者(および分画方法に詳しい者)であれば、各実施形態10、40、および70において、ペレット化製品24aがバイオマス12中に元から存在しているセルロース物質の一部を含有し、ペレット化製品24bが特に高分子量のヘミセルロースおよびリグニンの一部を含有しているであろうことを確実に認識するであろう。
【0047】
ペレット化製品24a中に見出されるペントース(工程20および32で、バイオマス12中のヘミセルロースを酸加水分解して得られたもの)およびリグニン成分は、その後第2の場所/中央施設において動物用飼料中で使用するか、あるいは、例えば、第2の場所/中央施設で熱水または他の適切な溶媒による固体24aの1回以上の洗浄および濾過の繰り返しにより、それぞれ生成物またはストリーム34および38へ分離することができる。
【0048】
図2の物質24または図3の物質24b中のセルロース固体は、図1のセルロース固体分画36について述べた方法で使用するか、またはさらに処理することができ、同様に、ストリームまたは生成物34に見出されるペントースおよびストリームまたは生成物38に見出されるリグニンは、図1に関連して先に記載したように、使用するかまたはさらに処理することができる。
【0049】
上述したように、濃ギ酸がリグノセルロースバイオマスのリグニンおよびヘミセルロースの両成分をセルロース成分から溶解し分離するのに有効であることはパルプおよび紙工業では知られているが、パルプ製造の文脈でこの目的のために高濃度ギ酸を使用することの詳細は、再生可能源ベースの燃料、燃料添加剤、および/または化学物質の製造用原料を開発するために、リグノセルロースバイオマスを分画することの文脈において同一または類似の方法を上手く適用できそうもないものである。濃ギ酸を使用してバイオマスからパルプを製造する場合、パルプスラリーを生成するのに必要な量のギ酸および水を加熱するために、非常に大量のエネルギーが必要であり、また溶媒の再利用に十分な高濃度のギ酸を除去し回収することは、水、酢酸、およびギ酸が共沸混合物を生成するために困難であり、経費もかかる。
【0050】
しかしながら、有機酸としてギ酸を使用する本発明の文脈では、バイオマスを完全に濡らし、その中のリグニンおよびヘミセルロースを部分的に解重合させるかまたは実質的に可溶化させることができる最小限の蒸気相のギ酸を使用することにより(場合によって)、乾燥工程26で蒸発除去される物質中の水に対するギ酸の濃度を酸蒸気浸漬工程20におけるそれと実質的に同じに維持することができ、したがって、既知のギ酸法パルプ製造プロセスに付随するエネルギー集約的かつ高コストの共沸蒸留回収法を避けて、全体をストリーム22用に凝縮し、再利用し、および再使用することができる。さらに、製紙用の固体スラリーの製造に対して、少なくとも部分的に解重合したまたは実質的に可溶化したヘミセルロースおよびリグニンを使用して、良好なペレット化を可能にする最小限の残留湿分含有物質を製造するという目的を考えれば、一般に水とギ酸の必要量ははるかに少なくて済み、それに相応して、エネルギー必要量は大幅に低減される。
【0051】
本発明の方法で、ギ酸を単独で使用するか、または他の弱有機酸と組み合わせて使用するかにかかわらず、あるいは水と共沸混合物を形成しない他の弱有機酸を使用するかどうかにかかわらず、使用し得る酸の量は、回収および再利用の経費を正当化するには、実際不十分であり得るので、中和することが好ましいこともある。しかしながら、酸の回収および再利用が望ましい場合、当業者であれば、それをするために適した手段を十分に選択し、使用することができるであろう―乾燥工程26で蒸発した物質の回収および再利用、ならびに、さらに後の処理による最終的なペントースおよびヘキソースのストリームからの弱有機酸の回収および再利用の両方によって。ギ酸に代えて酢酸を使用する後者の場合、酢酸は単蒸留で回収することができる。ギ酸を使用する場合は、共沸蒸留を行ってもよく、またはギ酸を非常に高濃度で少量のストリームで使用する場合、含まれている水を分離する必要はなく、単蒸留によって高濃度で酸を回収し、再利用し、および再使用することができる。我々は、この場合、セルロース固体からヘミセルロースおよびリグニンを完全に可溶化し分離するのに有用であると確認されたある種の有機共溶媒が、ギ酸の単蒸留および回収の有効な共沸剤としても働くことを見出した。我々が確認した適切な有機共溶媒には、ギ酸エチル、乳酸エチル、およびヒドロキシメチルテトラヒドロフランが含まれるが、ギ酸エチルが好ましい。
【0052】
本発明の好ましい実施形態を本明細書で説明してきたが、同様に多くの変更と修正を着想できることを、当業者であれば認識しているであろう。例えば、バイオマスのヘミセルロース分画およびセルロース分画を加水分解するために、酸と共に酵素を使用することができる。バイオマスにサイレージを使用する場合は、ある期間に亘ってサイレージ自体を嫌気性醗酵させることにより、乳酸が生成され、この乳酸は弱有機酸として酸蒸気浸漬工程20で使用することができる。当業者には、以下の特許請求の範囲に示す本発明の真の範囲から逸脱することなく、さらに他の変更が可能なことは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン分画を含むリグノセルロースバイオマスの処理方法であって、
前記バイオマスに、少なくとも50重量パーセントの1種以上の有機酸を含有する高濃度の有機酸の蒸気を適用して、前記バイオマス中の前記ヘミセルロースおよびリグニン物質を少なくとも部分的に解重合する工程;
前記弱酸処理したバイオマスを乾燥させて、ペレット化するのに十分な固体含有量の物質を提供する工程;および
前記乾燥工程からの前記物質をペレット化する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記ペレット化した物質を反芻動物の飼料に使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルロース質固体生成物を、前記ペレット化した物質から、前記ペレット化した物質の溶剤洗浄を濾過と共に1回以上繰り返すことにより回収し、それにより、前記ペレット化した物質からの前記少なくとも部分的に解重合したヘミセルロースおよびリグニン物質を、残留する前記セルロース質固体から共に分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも部分的に解重合したヘミセルロースおよびリグニン物質の洗浄を濾過と共に1回以上繰り返して、水不溶性リグニン固体を水溶性ヘミセルロース物質から分離する工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも部分的に解重合したヘミセルロース物質を、前記ペレット化した物質から、前記ペレット化した物質の水による洗浄を濾過と共に1回以上繰り返すことにより分離し、その後、前記リグニンを、前記セルロース固体生成物から、異なる溶媒洗浄を濾過と共にまた1回以上繰り返すことにより分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも部分的に解重合したヘミセルロース物質に対し、これを前記リグニンおよびセルロース固体生成物から分離した後に、さらなる酸加水分解工程を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヘミセルロース物質の前記さらなる酸加水分解の生成物を発酵させて、エタノール、リシン、トレオニン、乳酸、グルコン酸、またはその他の有機酸を製造する工程、または、前記さらなる酸加水分解工程の生成物を水素化および水素化処理して、輸送燃料用の燃料添加剤製品を得る工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水不溶性のリグニンを、オゾン分解、もしくは1種以上の他の酸化剤に暴露する、または燃料として燃焼させる、または液体炭化水素製品およびコークを製造するためのコーキングプロセスに供給する、または合成ガスを製造するためのガス化装置に送入する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項9】
前記セルロース質固体を強酸性の鉱酸に接触させて、それを加水分解し、ヘキソース生成物またはストリームを提供し、かつ前記ヘキソース生成物またはストリームを醗酵させて、エタノール、リシン、トレオニン、乳酸、グルコン酸、またはその他の有機酸を製造する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記リグノセルロースバイオマスが、乾燥重量基準で6重量パーセント以上の酸性デタージェントに不溶なリグニンの含有量を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リグノセルロースバイオマスが、成長した草、穀物サイレージから分離したまたは穀物サイレージに含まれる穀物残渣、トウモロコシの茎葉、小麦の藁、大麦の藁、ススキ種、スイッチグラス、バヒアグラス、ソルガム種、サトウキビの絞り粕、カモガヤ、クサヨシ、綿繰り機の屑の1種以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
処理された前記リグノセルロースバイオマスが、トウモロコシの茎葉およびトウモロコシの繊維を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
処理された前記リグノセルロースバイオマスが、サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシであり、かつ前記濃有機酸蒸気を適用する前に、前記サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシの少なくとも1成分を分離し除去するために前記バイオマスを前処理する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシバイオマスを前記濃有機酸蒸気と接触させる前に、前記トウモロコシバイオマスからコーン油を回収する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシバイオマスを前記濃有機酸蒸気と接触させる前に、前記トウモロコシバイオマスから前記トウモロコシ茎葉の葉分画を機械的に分離し、除去する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシバイオマスを前記濃有機酸蒸気と接触させる前に、前記トウモロコシバイオマスから硫黄、窒素、または灰分含有量が高い1種以上の成分を機械的に分離し、除去する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記濃有機酸蒸気を、摂氏50度以上の高温で前記バイオマスに適用する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記バイオマスに適用した前記1種以上の有機酸が、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、および乳酸の1種以上からなり、かつ前記濃酸蒸気を摂氏50度〜摂氏160度の温度、大気圧〜3.5MPaゲージ圧の圧力で、かつ30分以上の時間、適用する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
50重量パーセント以上のギ酸もしくは酢酸またはギ酸と酢酸との組み合わせを含み、残部が水である濃有機酸蒸気を前記バイオマスに適用する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記濃有機酸蒸気が、70重量パーセント以上の前記1種以上の酸を含み、残部が水である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記有機酸処理したバイオマスを10重量パーセント以下の水分含有量にまで乾燥させる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥させたバイオマスをさらなるバインダーを加えずにペレット化する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
共通の第2の場所へペレット化した物質を搬送するために、前記有機酸蒸気の浸漬、乾燥、およびペレット化工程を複数の場所で適用する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記複数のサイトが、前記共通の第2の場所から平均して50キロメートル以上の距離にある、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数のサイトが、前記共通の第2の場所から平均して80キロメートル以上の距離にある、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の場所から少なくとも50キロメートルの場所で、前記有機酸蒸気の浸漬、乾燥およびペレット化工程を適用し、ペレット化物質を製造する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記有機酸蒸気と接触させる前に、タンパク質に富みかつ動物用飼料中もしくは動物用飼料用としての使用に適しているか、あるいは硫黄、窒素、または灰分の含有量が所望の値より大きい、前記バイオマスの少なくとも1つの成分を分離し除去するために、前記バイオマスを前処理する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの分画を含むリグノセルロースバイオマスの処理方法であって、
酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、および乳酸から選択される1種以上の有機酸の濃有機酸蒸気を、前記バイオマス中のヘミセルロースおよびリグニン物質を実質的に可溶化させるのに十分な条件下で、前記バイオマスに適用する工程;
前記処理したバイオマスの溶媒または溶媒混合物による洗浄および濾過を1回以上繰り返して、前記濾液中のヘミセルロースおよびリグニン物質と、固体残渣のセルロース物質とを分離する工程;
前記固体残渣を乾燥させて、ペレット化するのに十分な固体含有量の物質を提供する工程;および
前記乾燥工程からの前記物質をペレット化する工程
を含む方法。
【請求項29】
前記濾液中のヘミセルロースおよびリグニン物質の水による洗浄を追加の濾過と共に1回以上繰り返して、水溶性ヘミセルロース物質から水不溶性リグニン固体を分離する工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
摂氏50度〜摂氏160度の温度、大気圧〜3.5MPaゲージ圧の圧力で、30分以上の時間、濃ギ酸、濃酢酸、または濃ギ酸/濃酢酸の蒸気を前記バイオマスに適用する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記蒸気は、70重量パーセント以上が前記有機酸であって、残部が水である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記蒸気は、重量で90重量パーセント以上が前記有機酸であって、残部が水である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記固体残渣を乾燥させる際に蒸発した物質を収集し、そのような物質に含有される前記有機酸と水とを予め分離することなく、前記有機酸蒸気の浸漬工程で再利用する、請求項28〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記濃有機酸蒸気と接触させる前に、タンパク質に富み、かつ動物用飼料中もしくは動物用飼料用としての使用に適する、あるいは硫黄、窒素、または灰分の含有量が所望の値より大きい、前記バイオマスの少なくとも1つの成分を分離し除去するために前記バイオマスを前処理する工程をさらに含む、請求項28〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
実質的に可溶化されたヘミセルロースおよびリグニンを含有する前記濾液を乾燥させて、ペレット化するのに十分な固体含有量の物質を提供する工程、および得られた物質をペレット化する工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記リグノセルロースバイオマスが、6重量パーセント以上の酸性デタージェントに不溶なリグニンの含有量を有すること特徴とする、請求項28〜35のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518880(P2013−518880A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551991(P2012−551991)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022000
【国際公開番号】WO2011/097075
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(507303309)アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド カンパニー (16)
【Fターム(参考)】