説明

リコート時の付着性を損なわない塗料用レベリング剤

【課題】塗料に少量添加することにより、重ね塗りした時の層間密着性を損なうことなく、異種ダストに対するハジキを防止して平滑な塗装面を与える平滑剤(レベリング剤)の提供。
【解決手段】アクリレート基又はメタクリレート基を持つシリコーンオイル(モノマー成分A)2〜50重量%と末端に1級の水酸基を持つヒドロキシアクリレート又はヒドロキシメタクリレート(モノマー成分B)50〜98重量%とを共重合することにより得られる、数平均分子量が1000から60000の共重合体よりなることを特徴とする塗料用レベリング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料に少量添加することにより、レベリング性を付与し、且つ、重ね塗りした時(以下においてリコートと表現する場合もある)の層間密着性を損なわない塗料用レベリング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業ライン塗装によって塗装される塗料、例えば自動車用塗料、プレコートメタル用塗料(以下PCMと略称する)、家電用塗料、等の高級塗料は防蝕性能だけではなく美観に優れた高度な仕上がり外観が要求される。それ故、仕上がり塗面においては、ハジキ、クレーター、フィッシュアイ、曇り等が無く、平滑な外観を有することが必要不可欠となっている。この機能を満たすための塗料用添加剤としては、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、光沢付与剤、ハジキ防止剤などの表面調整剤が用いられている。
【0003】
従来からライン塗装においてはエアースプレー等の霧化塗装やロールコーター等の高速連続塗装が行われている。これらの塗装方法では、コンプレッサーやロールコーターマシーン等に使用している潤滑油のミストや塗料自身のミストなどが、被塗物の表面に付着する場合があり、これらのミストを原因としてハジキが発生することが問題となっていた。このほか、自動車用塗料のように数回に渡って塗装し、研磨する塗装ラインにおいては、サンドペーパーの研磨かすや、作業中の人の手によって汚れたことを原因とするハジキが問題となることがある(これらのハジキ要因物質を以下において異種ダストと表現する)。
【0004】
これらの塗装時のハジキの問題を解決する手段として、従来より変性シリコーンオイルやビニルエーテルポリマー(非特許文献1及び特許文献1)及びアクリルシリコーンポリマー(特許文献2及び3)が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−234478(特公平06−094545)
【特許文献2】特開2002−241698
【特許文献3】特開2003−226834(特登04−097437)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】コーティング用添加剤の技術 シーエムシー出版(2001)92〜103ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年環境対応型の塗料として塗料がハイソリッド化されたり、酸性雨対策として硬化樹脂にメラミンを使わない配合に変更されたことに伴い、変性シリコーンオイルやビニルエーテルポリマーを配合すると塗料を重ね塗りする際に層間密着性を阻害する問題がある。また、層間密着性に問題のないアクリルシリコーン系のレベリング剤でも、上塗り面の色調が変化したりする、いわゆるリコート性(塗り重ね性)を悪くする場合があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、いわゆるリコート性を阻害することなく、異種ダストに対するハジキを防止して平滑な塗装面を与える平滑剤(レベリング剤)を提供することである

【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、様々な検討を重ねた結果、(A)一般式
【0010】
【化1】

[式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1から10のアルキレン基、R
炭素数1から4のアルキル基、nは5〜100の整数をそれぞれ表す。]
で示される、アクリレート基又はメタクリレート基を持つシリコーンオイル2〜50重量%と(B)末端に1級の水酸基を持つヒドロキシアクリレート又はヒドロキシメタクリレート50〜98重量%とを共重合することにより得られる、数平均分子量が1000から60000の共重合体よりなることを特徴とする塗料用レベリング剤を塗料に配合することにより、塗装時にレベリング性を付与しつつ、異種ダストによるハジキを防止する効果が得られ、且つ、リコート時の層間密着性を損なわないことを発見した。
【0011】
さらに、上記のモノマー成分(A)及びモノマー成分(B)と共重合可能な重合性二重結合を持つ他のモノマー成分(C)を、モノマー成分全重量の50重量%を超えない範囲の割合で、モノマー成分(A)及び(B)と共重合することにより得られる、数平均分子量が1000から60000の共重合体においても同様の効果が得られることを発見した。
【0012】
成分(A)のシリコーンオイルの重量割合が2%より少ないと、平滑剤自身が十分な異種ダスト防止性を示すための効果及び、良好な平滑性を与える効果が認められない。又、50重量%より多くなると、リコート性に悪影響を及ぼす。
【0013】
成分(B)のヒドロキシアクリレート又はヒドロキシメタクリレートを50〜98重量%共重合するのは、塗り重ね時に良好な密着性を与えるためである。
【0014】
上記のモノマー成分(A)、モノマー成分(B)及びモノマー成分(C)よりなる共重合体も、同じように良好な平滑性と、異種ダストによるハジキを防止する効果及び、リコート(塗り重ね)時に十分な層間密着性を与える効果が認められる。
【0015】
合成した共重合体の数平均分子量が、1000より小さい場合、又は60000より大きい場合は、塗料に配合した重合体が、塗装時に塗料表面に配向する能力が十分ではない為に、十分な平滑性や層間密着性を得ることが出来ない。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、アクリレート基又はメタクリレート基を持つシリコーンオイル2〜50重量%とヒドロキシアクリレート又はヒドロキシメタクリレート50〜98重量%との、数平均分子量1000から60000の共重合体中の水酸基が、添加塗料中の樹脂と反応すると共に、上塗り塗料中の水酸基と反応する成分とも反応し、二つの層の塗膜間橋架けのような役割を果すことにより、密着性が向上する。本発明によれば、また、該水酸
基が添加塗料中の樹脂と反応する結果として、塗膜が溶剤などでワイピングされたときも共重合体は拭き取られることがないという効果がもたらされ、上塗り層中のアルミ顔料の配向性を変化させたり、その塗料のぬれ性を変化させたりするという従来のレベリング剤の欠点を改善することが出来る。
【0017】
前記一般式で示されるアクリレート基又はメタクリレート基を持つシリコーンオイル(A)の例としては、メタクリロイルオキシ基を有する反応性シリコーン(チッソ株式会社から市販されているサイラプレーンFM−0711、FM−0721及びFM−0725;東亞合成株式会社から市販されているAK−5及びAK−30;信越シリコーンから市販されているX22−164A、X22−164B及びX22−164C)が挙げられる。
【0018】
前記ヒドロキシアクリレート又はヒドロキシメタアクリレート(B)としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルエステル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシ−1−メチルメチルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルエステル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシ−2−プロピルエステル、メタクリル酸2(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル等が挙げられる。
【0019】
ポリマー中には、全重量の50%を超えない範囲で、上記モノマー成分(A)よりなるセグメント及び上記モノマー成分(B)よりなるセグメントのほかに、モノマー成分(C)よりなるセグメントが含まれていても良い。そのようなセグメントを構成するモノマー成分(C)の例として、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ノルマルプロピルエステル、(メタ)アクリル酸イソプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチルエステル、(メタ)アクリル酸イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチルエステル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソノニルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−オクトシエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−ラウロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチルエステル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール[エチレングリコールの重合数2〜50のもの]のエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール[プロピレングリコールの重合数2〜50のもの]のエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール[エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数2〜50のもの]のエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレン−テトラメチレン)グリコール[エチレングリコール−テトラメチレングリコールの重合数2〜50のもの]のエステル、(メタ)アクリル酸ブトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール[エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数2〜50のもの]のエステル、(メタ)アクリル酸オクトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール[エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数2〜50のもの]のエステル、(メタ)アクリル酸ラウロキシポリエチレングリコール[エチレングリコールの重合数2〜50のもの]のエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルエステルなどのような(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル類;アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクロイルモルフォリンなどのようなアクリ
ルアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどのような芳香族炭化水素系ビニル化合物類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのようなビニルエステル類およびアリル化合物類;エチルビニルエーテル、ノルマルプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ターシャリーブチルビニルエーテル、ノルマルオクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのようなビニルエーテル類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジアリル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−エチルヘキシルなどのようなマレイン酸アルキルエステル類;フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−セカンダリーブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチルなどのようなフマル酸アルキルエステル類;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチルなどのようなイタコン酸アルキルエステル類などが挙げられる。
【0020】
本発明で用いる共重合物を合成する方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などがあり、又、重合を行う開始剤としては、一般に用いられるアゾ重合開始剤や、過酸化物が用いられる。本発明は、共重合体の機能に関する発明であるから、合成方法によって何ら制限されるものではない。
【0021】
本発明で得られる塗料用平滑剤が適する塗料は、異種ダストによるハジキが問題となるようなより高外観が要求される塗料である。例えば、酸触媒を用いたアクリルメラミン塗料や酸エポキシ硬化型アクリル塗料、ポリエステルメラミン塗料などの焼き付け型塗料を用いた自動車トップコート用塗料又は、家電製品用PCMを主とする高外観塗装用塗料、或いは、フッ素樹脂塗料、アクリルウレタン塗料やポリエステルウレタン塗料などの常温乾燥型塗料を用いた自動車補修用塗料や高級家具用塗料など1級の水酸基と容易に反応することが可能な樹脂組成の塗料に対して、塗装時の異種ダストによるハジキ防止性と平滑性を同時に与え、更に、塗り重ねた塗料に対して本発明のレベリング剤の1級の水酸基が反応して橋架けの役割を持つことにより、良好な層間密着性を付与することができる。
【0022】
本発明による塗料用平滑剤を塗料に添加する時期は任意であって、顔料を混練する過程で、或いは、塗料を製造した後に添加する事が出来る。
【0023】
本発明による塗料用平滑剤の添加量は、塗料の樹脂の種類や、顔料の配合組成などにより異なるが、通常固形分換算で塗料ビヒクルに対し0.01から5重量%、好ましくは、0.5から2重量%である。
【0024】
添加量が0.01重量%より少ないと異種ダストに対するハジキ防止性を付与できないし、平滑性を十分に与える事が出来ない。また、5重量%より多く添加すると、塗料の消泡性に悪影響を及ぼしたり、上塗り塗料の平滑性を阻害する可能性が大きくなるので好ましくない。
【実施例】
【0025】
次に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。以下における「部」及び「%」は、それぞれ、「重量部」及び「重量%」を示す。
【0026】
製造実施例1
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mlの反応容器に、2−n−ブトキシエタノール(n−ブチルセルソルブ)150部を仕込み、窒素ガスを導入しながら135℃に昇温した後、下に示す滴下溶液(a−1)を滴下ロートにより2時間で等速滴下した。
滴下溶液(a−1)
メタクリル酸ヒドロキシエチルエステル(成分B) 150部
サイラプレーンFM−0711(成分A)注1) 50部
2−n−ブトキシエタノール 150部
2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン 20部
注1)メタクリロイルオキシ基含有シリコーンマクロモノマー(平均分子量1000(n=10)):チッソ(株)製
滴下溶液(a−1)の滴下終了1時間後、反応温度を130℃に調整した。130℃になった時点で、2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン2部を加え、さらに、130℃をキープしつつ2時間反応させた。反応終了後、2−n−ブトキシエタノールで固形分を20%に調整し、添加剤[A−1]を得た。合成したアクリル系共重合物のゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算の数平均分子量は、2500であった。
【0027】
製造実施例2
製造実施例1の滴下溶液(a−1)の代わりに下記の滴下溶液(a−2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、添加剤[A−2]を得た。
滴下溶液(a−2)
アクリル酸4−ヒドロキシブチルエステル(成分B) 150部
アクリル酸エチルエステル(成分C) 25部
X22−164A(成分A)注2) 25部
2−n−ブトキシエタノール 150部
2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン 10部
注2)メタクリロイルオキシ基含有シリコーンマクロモノマー(平均分子量2500(n=25)):信越シリコーン(株)製
合成したアクリル系共重合物の数平均分子量は、5500であった。
【0028】
製造実施例3
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mlの反応容器に、2−n−ブトキシエタノール(n−ブチルセルソルブ)150部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90℃に昇温した後、下に示す滴下溶液(a−3)を滴下ロートにより2時間で等速滴下した。
滴下溶液(a−3)
メタクリル酸ヒドロキシエチルエステル(成分B) 125部
メタアクリル酸イソブチルエステル(成分C) 25部
サイラプレーンFM−0725(成分A)注3) 50部
2−n−ブトキシエタノール 150部
ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 2部
注3)メタクリロイルオキシ基含有シリコーンマクロモノマー(平均分子量10000(n=100)):チッソ(株)製
滴下溶液(a−3)の滴下終了1時間後、ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 1部を加え、さらに、90℃をキープしつつ2時間反応させた。反応終了後、2−n−ブトキシエタノールで固形分を20%に調整し、添加剤[A−3]を得た。合成したアクリル系共重合物のゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算の数平均分子量は、55000であった。
【0029】
製造実施例4
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mlの反応容器に、2−n−ブトキシエタノール(n−ブチルセルソルブ)150部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100℃に昇温した後、下に示す滴下溶液(a−4)を滴下ロートにより2時間で等速滴下した。
滴下溶液(a−4)
メタクリル酸ヒドロキシプロピルエステル(成分B) 110部
アクリル酸2−エトキシエチルエステル(成分C) 40部
サイラプレーンFM−0721(成分A)注4) 50部
2−n−ブトキシエタノール 150部
ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 8部
滴下溶液(a−4)の滴下終了1時間後、ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 1部を加え、さらに、100℃をキープしつつ2時間反応させた。反応終了後、2−n−ブトキシエタノールで固形分を20%に調整し、添加剤[A−4]を得た。合成したアクリル系重合物の数平均分子量は、8000であった。
注4)メタクリロイルオキシ基含有シリコーンマクロモノマー(平均分子量5000(n=50)):チッソ(株)製
【0030】
製造実施例5
製造実施例1の滴下溶液(a−1)の代わりに下記の滴下溶液(a−5)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、添加剤[A−5]を得た。
滴下溶液(a−5)
メタクリル酸1−ヒドロキシ−2−プロピルエステル(成分B) 90部
フマル酸ジブチルエステル(成分C) 50部
サイラプレーンFM−0711(成分A) 30部
スチレン(成分C) 30部
2−n−ブトキシエタノール 150部
2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン 20部
合成したアクリル/二塩基酸エステル/スチレン系共重合物の数平均分子量は、1050であった。
【0031】
製造実施例6
製造実施例4の滴下溶液(a−4)の代わりに下記の滴下溶液(a−6)を用いた以外は実施例4と同様の方法で、添加剤[A−6]を得た。
滴下溶液(a−6)
メタクリル酸2(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル(成分B) 190部
サイラプレーンFM−0711(成分A)注1) 10部
2−n−ブトキシエタノール 150部
2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン 10部
合成したアクリル系共重合物の数平均分子量は、4500であった。
【0032】
製造実施例7
製造実施例1の滴下溶液(a−1)の代わりに下記の滴下溶液(a−7)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、添加剤[A−7]を得た。
滴下溶液(a−7)
アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル(成分B) 105部
サイラプレーンFM−0711(成分A)注1) 95部
2−n−ブトキシエタノール 150部
2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン 5部
合成したアクリル系共重合物の数平均分子量は、6000であった。
【0033】
製造比較例1
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mlの反応容器に、酢酸ブチル150部を仕込み、窒素ガスを導入しながら酢酸ブチルが還流する温度に昇温した後、下に示す滴下溶液(n−1)を滴下ロートにより2時間で等速滴下した。
滴下溶液(n−1)
メタクリル酸エチルエステル(成分C) 150部
サイラプレーンFM−0711(成分A) 50部
酢酸ブチル 150部
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト 5部
滴下溶液(n−1)の滴下終了1時間後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト2部を加え、さらに、126℃をキープしつつ2時間反応させた。反応終了後、酢酸ブチルで固形分を20%に調整し、添加剤[N−1]を得た。合成したアクリル系共重合物のゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算の数平均分子量は、5500であった。
【0034】
製造比較例2
製造比較例1の滴下溶液(n−1)の代わりに下記の滴下溶液(n−2)を用いた以外は比較例1と同様の方法で、添加剤[N−2]を得た。
滴下溶液(n−2)
メタクリル酸ヒドロキシエチルエステル(成分B) 70部
アクリル酸2−エトキシエチルエステル(成分C) 20部
サイラプレーンFM−0711(成分A) 110部
酢酸ブチル 150部
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト 5部
合成したアクリル系共重合物の数平均分子量は、6000であった。
【0035】
製造比較例3
製造実施例1の滴下溶液(a−1)の代わりに下記の滴下溶液(n−3)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、添加剤[N−3]を得た。
滴下溶液(n−3)
メタクリル酸ヒドロキシエチルエステル(成分B) 150部
メタアクリル酸イソブチルエステル(成分C) 48部
サイラプレーンFM−0711(成分A) 2部
2−n−ブトキシエタノール 150部
2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン 5部
合成したアクリル系共重合物の数平均分子量は、5000であった。
【0036】
製造比較例4
製造実施例1の滴下溶液(a−1)の代わりに下記の滴下溶液(n−4)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、添加剤[N−4]を得た。
滴下溶液(n−4)
メタクリル酸ヒドロキシプロピルエステル(成分B) 80部
サイラプレーンFM−0711(成分A) 20部
2−n−ブトキシエタノール 150部
2,2−ジ−(t−アミルパーオキシ)ブタン 20部
合成したアクリル系共重合物の数平均分子量は、800であった。
【0037】
製造比較例5
製造実施例3の滴下溶液(a−3)の代わりに下記の滴下溶液(n−5)を用いて、反応温度を75℃とした以外は実施例3と同様の方法で、添加剤[N−5]を得た。
滴下溶液(n−5)
メタクリル酸ヒドロキシエチルエステル(成分B) 125部
メタアクリル酸イソブチルエステル(成分C) 25部
サイラプレーンFM−0711(成分A) 50部
2−n−ブトキシエタノール 150部
ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 2部
合成したアクリル系共重合物の数平均分子量は、65000であった。
【0038】
製造比較例6
製造比較例1の滴下溶液(n−1)の代わりに下記の滴下溶液(n−6)を用いた以外は比較例1と同様の方法で、添加剤[N−6]を得た。
滴下溶液(n−6)
メタクリル酸ヒドロキシエチルエステル(成分B) 80部
アクリル酸イソブチルエステル(成分C) 110部
サイラプレーンFM−0711(成分A) 20部
酢酸ブチル 150部
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト 5部
合成したアクリル系共重合物の数平均分子量は、5000であった。
【0039】
製造比較例7
アクリル系重合物の平滑剤としてL−1984−50(楠本化成(株)製)とシリコーン系の平滑剤としてKF−69(ジメチルシリコーンオイル:信越シリコーン(株)製)を固形分比で75:25の割合で混合した物を作成し、トルエンで不揮発分を20%に調整した。これを添加剤[N−7]とした。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
塗料試験例
以下に製造実施例に示した各種レベリング剤の試験結果を示す。
第4表及び第6表に示した配合のアクリル樹脂/メラミン硬化型塗料組成物について、レベリング性とミスト防止性の性能試験を行った。
先ず、第3表から第6表の配合の塗料をそれぞれ作成した。その後、第4表のトップコート用クリアー塗料および、第6表のトップコート用ソリッド塗料に、第1表のA−1からA−7、および第2表のN−1からN−7の試験サンプルを添加し、ラボディスパーで2000rpmで1分間分散した。
【0043】
評価実施例1 (異種ダスト防止性の試験)
第5表に示した配合の中塗り用塗料の粘度をフォードカップ#4で18秒になるように調整した後、ブリキ板(200mm×300mm)にエアスプレー塗装し、140℃で20分間オーブンで焼き付けを行い中塗り塗装板を用意した。室温まで冷却後、第7表に示した各種異種ダスト物質を中塗り塗板上に付着させた。
その後、各種レベリング剤を添加した、第6表に示したトップコート用ソリッド塗料を異種ダスト物質を付着させた中塗り塗装板にエアスプレーを用いて、膜厚10μm〜50μmになるように傾斜塗りを行った。5分間室温で放置後、140℃のオーブンで20分間焼き付けを行い、異種ダストによるハジキの観察と、レベリング性の評価を行った。
塗膜の試験の評価は以下のように行った。汚染物質によるハジキの観察は、ハジキの発生した膜厚とハジキの状況を観察し、「最良」(5)から「最悪」(1)までの5段階に評価した。また、塗膜のレベリング性の評価は、最良から最悪までの5段階の標準板を用意し、塗膜表面の平滑性と鮮映性の状況を目視で評価した。その結果を第8表に示す。
【0044】
評価実施例2(リコート性の評価)
第3表の水性メタリックベース塗料を蒸留水を用いて塗料の粘度がフォードカップ#4で30秒になるように希釈した後、エアスプレーを用いて、乾燥後膜厚が15μmになるように中塗り板の上に塗装した。この塗装膜を室温で5分間静置後、80℃のオーブンで10分間プレヒートした後室温まで冷却し、検討用の表面調整剤を添加した第4表のトップコートクリアー塗料をエアスプレーを用いて、30μmの膜厚になるように塗装した(ウェット・オン・ウェット塗装)。室温で5分間静置後、140℃のオーブンで20分間焼き付けた。室温まで冷却後イソプロピルアルコールを塗装膜上に滴下し自然乾燥させた。乾燥後の塗膜上には添加剤が集まって濃縮された状態になっている。この塗装膜上に上記と同じ手順でメタリックベースコート塗料とトップコートクリアー塗料を上記と同様の
手順でエアスプレー塗装し、140℃のオーブンで20分間焼き付けた。室温まで冷却後、添加剤の集まった部分のベースコートの色目の変化の状況と、レベリング性の評価を行った。更に、リコート付着性の評価を碁盤目試験により行った。
【0045】
評価実施例3(層間付着性の評価)
ブリキ板の代わりにカチオン電着板(70mm×150mm)を用いて検討用の表面調整剤を添加した第4表のトップコートクリアー塗料をエアスプレーを用いて、30μmの膜厚になるように塗装した。この塗装膜を室温で5分間静置後、160℃で30分間焼き付けた。室温まで冷却後、第3表の水性ベース塗料をドライ膜厚が15μになるようにスプレー塗装した。この塗装膜を室温で5分間静置後、80℃のオーブンで10分間プレヒートした後室温まで冷却し、1層目と同じクリヤー塗料をエアスプレーを用いて、スプレー塗装した。室温で5分間静置後、130℃のオーブンで20分間焼き付けた。
【0046】
塗膜の試験の評価は以下のように行った。イソプロピルアルコールによる色目の変化(IPAオカサレ性と表記する)とレベリング性の評価は目視で行い、「最良」(5)から「最悪」(1)までの5段階に評価した。また、層間付着性の試験は、塗装板をカッターによって20mm×20mm角内に等幅の2mmの碁盤目を100個作り、セロテープによる剥離試験を行い残存した上塗り部分を数えた。試験結果を第9表に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
【表7】

【0052】
【表8】

【0053】
【表9】

製造実施例1〜7では、評価1になるものは無く、かつ、層間付着性も向上した。
それに対し、製造比較例1〜7では、評価1があるか、または、層間付着性の低下が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料に少量添加することにより、レベリング性を付与し、且つ、リコート時の層間密着性を損なわない塗料用レベリング剤であって、(A)一般式
【化1】

[式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1から10のアルキレン基、Rは炭素数1から4のアルキル基、nは5〜100の整数をそれぞれ表す。]
で示される、アクリレート基又はメタクリレート基を持つシリコーンオイル2〜50重量%と(B)末端に1級の水酸基を持つヒドロキシアクリレート又はヒドロキシメタクリレート50〜98重量%とを共重合することにより得られる、数平均分子量が1000から60000の共重合体よりなることを特徴とする塗料用レベリング剤。
【請求項2】
請求項1に記載のモノマー成分(A)及びモノマー成分(B)と共重合可能な重合性二重結合を持つ他のモノマー成分(C)を、モノマー成分全重量の50重量%を超えない範囲の割合で、モノマー成分(A)及び(B)と共重合することにより得られる、数平均分子量が1000から60000の共重合体よりなることを特徴とする塗料用レベリング剤。

【公開番号】特開2011−116880(P2011−116880A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276461(P2009−276461)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(000225854)楠本化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】