説明

リサイクルシステム

【課題】ロータリーキルンへの作業負担を軽減しつつ煤塵から還元鉄及び亜鉛を効率的に取り出すことが可能なリサイクルシステムを提供する。
【解決手段】亜鉛を含有する鉄製品のスクラップを溶融する電気炉12と前記電気炉12の排ガス14に含まれる煤塵と炭材28との混合物(原料32)を燃焼させて還元鉄38を生成するロータリーキルン26と、前記煤塵から亜鉛を生成する亜鉛精錬設備66と、を有するリサイクルシステム10であって、前記排ガス14を遠心分離により第1の煤塵18を捕集するサイクロン装置16と、前記サイクロン装置16を通過した前記排ガス(排ガス20)から第2の煤塵24を捕集するフィルタ22と、が配置され、前記ロータリーキルン26は、前記第1の煤塵18から前記還元鉄38を生成し、前記亜鉛精錬設備66は、前記第2の煤塵24から亜鉛を生成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルシステムに関し、特に亜鉛を含有する鉄製品のスクラップを溶融する際に発生する煤塵から金属材料を取り出す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄製品を再生産するためには鉄製品のスクラップを溶融して金属材料ごとに精錬する必要がある。鉄製品のスクラップの溶融には電気炉が用いられるが、亜鉛が含まれる鉄製品の溶融時には、鉄及び亜鉛の酸化物を含有する煤塵が発生する。しかし、鉄製品を効率よく再生産するためには、このような煤塵に含まれる鉄及び亜鉛も再利用すべきであり、そのための技術が必要となる。例えば、煤塵から亜鉛を抽出する場合は、乾式精錬法や湿式精錬法等の精錬技術を用いて煤塵中の亜鉛を還元することができる。また煤塵から鉄や亜鉛を抽出する場合にはロータリーキルンによる還元焙焼処理を行うことができる。
【0003】
しかし、電気炉から排出される煤塵中の鉄及び亜鉛の含有量はそれぞれ30%程度であり、上述の精錬技術を用いて亜鉛を抽出するには亜鉛の濃度が低すぎ、またロータリーキルンを用いて鉄と亜鉛とを分別するには亜鉛の濃度が高すぎるといった問題があった。このため電気炉から排出された煤塵については再利用を断念して埋め立て処分がなされる場合が多かった。したがって、電気炉から排出される煤塵から亜鉛を抽出する場合には、煤塵中の酸化亜鉛の濃度を高くする必要があり、鉄を抽出する場合には、煤塵中の酸化亜鉛の濃度を低くする必要がある。
【0004】
煤塵中の酸化亜鉛濃度を高める技術として、特許文献1においては、屑鉄を溶解精錬する電気炉の排ガス、または前記電気炉の排ガスで屑鉄を予熱する屑鉄予熱装置の排ガスが集塵機に到達する前に炭素材を含む吸着剤を前記排ガスに吹き込む工程と、前記集塵機で捕集された煤塵に粒径が5mm以下の炭素材を添加し、塊成化して炭素含有量が6〜40質量%の煤塵ペレットとする工程と、前記煤塵ペレットを、電気炉の屑鉄溶解期末期から精錬期前期の間に、前記電気炉に装入して屑鉄とともに溶解精錬する亜鉛含有ダストの処理方法が開示されている。
【0005】
上記方法により、排ガス中の煤塵に含まれる酸化亜鉛の含有量を30質量%以上に濃縮することができるとともに、煤塵中のダイオキシン等の有害物質を分解して無害化することができるとされる。
【0006】
煤塵の亜鉛含有量を抑制する技術として、特許文献2においては、電気炉における鉄鋼溶解・精錬時に発生する煤塵を含む高温排ガスに対して、還元剤である天然ガスを添加して、鉄及び亜鉛を含有する煤塵から亜鉛を還元気化させ、亜鉛と、鉄を含有する煤塵と、を分別し、集塵機を用いて鉄を含有する煤塵を捕集し、鉛の溶融金属を用いて排ガス温度を降下させてガス状の亜鉛を液化・凝縮させて前記溶融金属中に捕集し、比重差分離法により亜鉛を回収する煤塵の処理方法が開示されている。
【0007】
上記方法により、煤塵から直接的に鉄分及び亜鉛分をそれぞれ分別回収でき、しかも亜鉛分は金属亜鉛として高純度で回収でき、鉄分は大部分が還元鉄として回収でき、排ガスの熱を利用して煤塵の処理を行うことができるので省エネルギー化を図ることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−156328号公報
【特許文献2】特開平11−302750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の方法では、煤塵中に含有する塩素がペレットを介して循環することになるので、塩素分の濃縮による電気炉の腐食や塩化物の析出による排ガス用の配管等への付着が懸念される。そして特許文献1の方法により得られた煤塵は鉄のリサイクルに用いることが困難となる。
【0010】
また特許文献2の方法では、還元剤として炭素を含有する高炉ダスト、廃プラスチック、石炭及びコークス等の固体源、廃油を含む油等の液体源、或いはコークス炉ガス、炭化水素ガス等の気体源を用いることになるが、高温の排ガス中にこれらの還元剤を投入することは爆発の危険を伴う。
【0011】
ところで、酸化鉄を含有する煤塵は、高炉用原料を製造する焼結プロセスの原料として利用することができる。しかし、亜鉛成分を含有する煤塵を焼結材料として焼結鉱を製造すると、亜鉛成分を含有する焼結鉱となる。よって、この焼結鉱を高炉に投入した場合、高炉内での炉壁付着物の形成や炉壁耐火物の損傷など、高炉作業に悪影響が発生する。特許文献2において、集塵機により捕集された煤塵中の亜鉛濃度は3.3質量%となっている。しかし、高炉で煤塵を鉄源として用いるためには、実用上亜鉛含有量を0.5質量%以下とする必要があるため、上記方法で得られた煤塵をそのまま鉄源として用いるには亜鉛の含有率は高く、さらなる処理が必要となる。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題点に着目し、複雑な工程を経ることなく、電気炉から排出された煤塵から鉄及び亜鉛を効率的に取り出して鉄製品を再生産可能なリサイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るリサイクルシステムは、亜鉛を含有する鉄製品のスクラップを溶融する電気炉と、前記電気炉の排ガスに含まれる煤塵と炭材との混合物を燃焼させて還元鉄を生成するロータリーキルンと、前記煤塵から亜鉛を生成する亜鉛精錬設備と、を有し、前記還元鉄と、前記亜鉛精錬設備で生成された亜鉛と、により前記鉄製品を再生産可能なリサイクルシステムであって、前記排ガスから遠心分離により第1の煤塵を捕集するサイクロン装置と、前記サイクロン装置を通過した前記排ガスから第2の煤塵を捕集するフィルタと、が配置され、前記ロータリーキルンは、前記第1の煤塵から前記還元鉄を生成し、前記亜鉛精錬設備は、前記第2の煤塵から亜鉛を生成することを特徴とする。
【0014】
本願発明者は、電気炉から排出された煤塵を包含する排ガスからサイクロン装置による遠心分離により捕集した第1の煤塵と、サイクロン装置を通過した排ガスからフィルタにより捕集した第2の煤塵と、を比較した。すると、第1の煤塵中の鉄(酸化鉄)の含有量は、サイクロン装置を通過する前のもとの煤塵中の鉄(酸化鉄)の含有量より高くなるとともに、第1の煤塵の亜鉛(酸化亜鉛)の含有量は、もとの煤塵中の亜鉛(酸化亜鉛)の含有量より低くなることを見出した。また、第2の煤塵中の鉄の含有量は、もとの煤塵中の鉄の含有量より低くなるとともに、第2の煤塵中の亜鉛の含有量は、もとの煤塵の亜鉛の含有量より高くなることを見出した。
【0015】
よって上記構成により、第1の煤塵の亜鉛の含有量は、もとの煤塵の亜鉛の含有量より低くなるのでロータリーキルンでの還元焙焼処理を行うことができるとともに、第2の煤塵の亜鉛の含有量は、もとの煤塵の亜鉛の含有量より高くなるので亜鉛精錬設備における亜鉛の精錬処理を行うことができ、鉄製品の再生産を効率よく行なうことができる。
【0016】
また、前記ロータリーキルンは、前記還元鉄とともに粗酸化亜鉛を生成するものであるため、前記亜鉛精錬設備は、前記粗酸化亜鉛から亜鉛を生成することができる。これにより、亜鉛精錬設備は、より効率的に亜鉛を生成することができる。
【0017】
そして、前記炭材としては、バイオマス廃棄物、塗料かす、有機燃料の煤塵や燃え殻を用いることができる。これにより、従来単独で焼却処分されていたバイオマス廃棄物等をロータリーキルンの炭材として用いるので、バイオマス廃棄物等を単独で焼却する場合に排出される二酸化炭素の排出量をゼロにすることができる。
【0018】
さらに、前記炭材として、鉄系の凝集剤を用いて排水から分離した排水汚泥を用いることができる。これにより、排水汚泥を単独で焼却する場合に排出される二酸化炭素の排出量をゼロにすることができるとともに、排水汚泥中に含有する鉄成分をロータリーキルンにおいて還元鉄として抽出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るリサイクルシステムによれば、電気炉から排出された煤塵を、鉄含有量が高く、且つ亜鉛含有量の低い第1の煤塵と、亜鉛含有量が高く、且つ鉄含有量の低い第2の煤塵と、に分別し、ロータリーキルンにより第1の煤塵から還元鉄と粗酸化亜鉛とを分別生成し、亜鉛精錬設備により第2の煤塵から亜鉛を生成している。よって、ロータリーキルンでは効率的に還元鉄を生成することができ、亜鉛精錬設備では、効率的に亜鉛を生成することができる。また、亜鉛精錬設備では、ロータリーキルンから排出された粗酸化亜鉛を用いてさらに効率的に亜鉛を生成することができる。更にロータリーキルンでは、バイオマス廃棄物等を炭材として用いるので二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るリサイクルシステムのフロー図である。
【図2】本実施形態に係るロータリーキルンとその周辺機器のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0022】
本実施形態に係るリサイクルシステムのフロー図を図1に示す。図1に示すように、本実施形態のリサイクルシステム10は、亜鉛を含有する鉄製品のスクラップを溶融する際に発生する煤塵から鉄や亜鉛を抽出して、鉄製品を再生産可能な循環経路を構築するものである。
【0023】
電気炉12は、スクラップ工場で解体された鉄製品(例えば自動車)のスクラップを溶融して銑鉄を精錬するものである。そして、スクラップの溶融時には酸化鉄及び酸化亜鉛を含有する煤塵が排ガス14とともに排出される。サイクロン装置16は、電気炉12からの排ガス14を取り込み、サイクロン装置16の筐体内で排ガス14を旋回させ、旋回によって生じる遠心力により排ガス14から第1の煤塵18を分離して捕集するものである。
【0024】
フィルタ22(バグフィルタ)はサイクロン装置16を通過した排ガス20から第2の煤塵24を捕集するものであり、例えばフィルタ22の表面に定期的に高圧空気を噴射し、その噴射による衝撃によりフィルタ22の表面から第2の煤塵24を払い落とすことで捕集することができる。
【0025】
ロータリーキルン26は、第1の煤塵18から還元鉄38と粗酸化亜鉛58を分別生成するものである。そして、還元鉄38は製鉄所68に送られて製鉄材料となり、粗酸化亜鉛58は亜鉛精錬設備66に送られる。
【0026】
亜鉛精錬設備66は、第2の煤塵24及び粗酸化亜鉛58を原料とし、乾式精錬法や湿式精錬法等の精錬技術を用いて煤塵中の亜鉛を還元するものであり、還元された亜鉛は製鉄所68に送られる。
【0027】
製鉄所68は、高炉、転炉等を有し、ロータリーキルン26から送られた還元鉄38を用いて例えば鋼板を形成し、亜鉛精錬設備66から送られた亜鉛によりその表面をメッキ処理して鉄製品(亜鉛鋼板)を製造することができる。もちろん電気炉12で製造された銑鉄やそれ以外の鉄材料を鋼板の材料としてもよく、亜鉛も亜鉛精錬設備66以外の他の場所から導入してもよい。
【0028】
サイクロン装置16で捕集される第1の煤塵18は、電気炉12から排出されたもとの煤塵のうち粒径が大きいもの(質量が大きいもの)が集まったものである。よってフィルタ22で捕集される第2の煤塵24は、サイクロン装置16を通過した残りの煤塵であり、その粒径が小さいもの(質量が小さいもの)が集まったものである。
【0029】
従来技術でも述べたように、電気炉12から排出される煤塵中の酸化鉄及び酸化亜鉛の含有率は、それぞれ30質量%程度であるため、ロータリーキルン26で用いる鉄源としては酸化亜鉛の含有率が高いため不適であり、亜鉛精錬設備66で用いる亜鉛源としては酸化亜鉛の含有率が低いため不適である。
【0030】
一方、本願発明者は、電気炉12から排出される煤塵を包含する排ガス14からサイクロン装置16による遠心分離により捕集した第1の煤塵18と、サイクロン装置16を通過した排ガス20からフィルタ22により捕集した第2の煤塵24と、を比較した。すると、第1の煤塵18中の鉄(酸化鉄)の含有量は、サイクロン装置16を通過する前のもとの煤塵中の鉄の含有量より高くなるとともに、第1の煤塵18中の亜鉛(酸化亜鉛)の含有量は、もとの煤塵中の亜鉛(酸化亜鉛)の含有量より低くなることを見出した。
【0031】
また、第2の煤塵24中の鉄の含有量は、もとの煤塵中の鉄の含有量より低くなるとともに、第2の煤塵24中の亜鉛の含有量は、もとの煤塵の亜鉛の含有量より高くなることを見出した。具体的には、第1の煤塵18では鉄の含有量が50質量%で亜鉛の含有量が10質量%であり、第2の煤塵24では鉄の含有量が20質量%であり、亜鉛の含有量が40質量%であることを見出した。
【0032】
これは、鉄の密度(7.87×10−3kg/cm)が亜鉛の密度(7.14×10−3kg/cm)より高く、鉄の多く含有する煤塵の質量が大きくなりサイクロン装置16により捕集されやすいことが考えられる。したがって、第1の煤塵18は、ロータリーキルン26で還元焙焼するのに適した材料となり、第2の煤塵24は、亜鉛精錬設備66で亜鉛を精錬するのに適した材料となる。
【0033】
図2に、本実施形態に係るロータリーキルンとその周辺機器のフロー図を示す。図2に示すように本実施形態のロータリーキルン26は、第1の煤塵18と炭材28との混合物(原料32)を燃焼して還元鉄38と粗酸化亜鉛58を生成するものである。図2において、Aは還元焙焼する原料32の経路を示し、Bは還元鉄38の経路を示し、Cはロータリーキルン26から排出される排ガスの経路を示し、Dは粗酸化亜鉛58(酸化亜鉛を多く含有する煤塵)の経路を示す。
【0034】
経路Aに沿って説明すると、ロータリーキルン26が配置された敷地(不図示)において、第1の煤塵18等に炭材28を配合して原料32を生成する原料配合槽30と、原料配合槽30で配合された原料32中の第1の煤塵18と炭材28とを均一に混ぜ合わせる混練機34と、原料32を蓄えるとともにロータリーキルン26に原料32を供給する原料槽36と、が配置されている。
【0035】
また経路Bに沿って説明すると、ロータリーキルン26から排出された還元鉄38を空冷式又は水冷式で冷却するクーラー40と、冷却された還元鉄38をその外径により分級する振動篩42と、が配置されている。
【0036】
そして経路Cに沿って説明すると、ロータリーキルン26から排出された排ガス46を混練機34に送り込むファン48と、混練機34から排出された排ガス46を取り込み排ガス46中に混入している煤塵52を遠心分離により取り出すサイクロン装置50と、サイクロン装置50を通過した排ガス54から粗酸化亜鉛58を捕集するフィルタ56(バグフィルタ)と、フィルタ56を通過した排ガス60を、排気塔64を通じて外部に放出させるファン62と、が配置されている。
【0037】
本実施形態において、第1の煤塵18等に配合する炭材28は、コーヒーかすや大豆かす等の炭素を有するバイオマス廃棄物、火力発電所等で燃焼される石油等の有機燃料の煤塵や燃え殻、自動車用等の塗料のかす、などの廃棄物を用いることが好適である。これらの廃棄物は、本来清掃工場等で焼却処分されたり、埋め立て処分がなされるものである。しかし、本実施形態のようにロータリーキルン26内で炭材28として用いることにより、これらの廃棄物を単独で焼却した場合に排出される二酸化炭素をゼロにすることができる。もちろん炭材28としてはこれ以外にコークスや石炭等を用いてもよい。
【0038】
また、食品工場等から排出される排水(炭素成分を多く含有)に鉄系の凝集剤を投入して、排水から排水汚泥を分離することが行なわれている。よって、炭材28として、この排水汚泥を用いることもできる。鉄系の凝集剤としては、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化第二鉄、鉄−シリカ無機高分子凝集剤、塩化第二鉄−シリカ無機高分子凝集剤(PSI)を用いることができる。これにより、排水汚泥を単独に焼却する場合に発生する二酸化炭素の排出量をゼロにすることができるとともに、排水汚泥中に含有する鉄成分をロータリーキルン26において還元鉄として抽出することができる。
【0039】
ロータリーキルン26に投入される原料32は、原料配合槽30で生成される。原料配合槽30では、炭材28と第1の煤塵18のほかに高炉ダストや、転炉ダストが配合される。なお、高炉ダスト及び転炉ダストには、未燃の炭素成分を含有しており、この成分がロータリーキルン26において還元鉄を生成するための炭材として用いられる。
【0040】
混練機34は、原料32内の第1の煤塵18等と炭材28とを均一に混ぜ合わせるものであるが、上述の高炉ダスト及び転炉ダストは、水分を含有するスラリー状態で搬入され、原料32は50%程度の水分を有している。そこで、混練機34にはロータリーキルン26から排出された高温の排ガス46を導入し、原料32の水分を20%程度にまで低下させ、ロータリーキルン26での燃焼効率を高めている。
【0041】
ロータリーキルン26は、中空の円筒形の炉であって、長手方向をわずかに傾斜勾配させた状態で配置されるとともに、円筒の中心軸を中心として一定の回転速度で回転するものである。そして、炉内の長手方向の上方となる一方の端部26aに原料32が導入され、長手方向の下方となる他方の端部26bからはキルン内供給ガス44(空気)が供給され、炉内の原料32の一部を燃焼させて炉内温度を上昇させるとともに、一酸化炭素(CO)ガスを発生させる。
【0042】
炉内に導入された原料32は、炉の回転運動により転動運動を行なって攪拌されつつ炉の一方の端部26aから他方の端部26bまで移動し、他方の端部26bから還元鉄38として排出される。一方、キルン炉内供給ガス44は、他方の端部26bから一方の端部26aに向かって原料32とは逆方向に流れ、一方の端部26aから排ガス46が排出される。この間、ロータリーキルン26内は炭材28の燃焼により発生する一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)などにより還元雰囲気に保たれ、炉内温度は最高1300℃以上に達している。
【0043】
このような高温かつ還元雰囲気下においては、亜鉛成分はZnO(固相)としてよりも、Zn(気相)の方が熱力学的に安定となるので、原料32の亜鉛の揮発により脱亜鉛処理が可能となる。また鉄成分は、Fe(固相)、Fe、FeO(固相)としてよりも、Fe(固相)の方が安定となるので、原料32は酸化鉄から金属鉄を含有する還元鉄38へと還元される。すなわち、ロータリーキルン26内では、還元焙焼処理が進行し、原料32から亜鉛成分が揮発除去されるとともに、金属鉄を40質量%以上含有する還元鉄38が製造される。このようにして製造された還元鉄38は、クーラー40により冷却され、振動篩42により分級され、篩上産物38aは製鉄所68(高炉)の鉄源材料として搬送され、篩下産物38bは焼結工場において焼結され製鉄所68(高炉)の鉄源材料として搬送される。
【0044】
一方、ロータリーキルン26から排出された排ガス46は、混練機34に送られ、混練機34で混ぜ合わされている原料32の水分を蒸発させるとともにサイクロン装置50に排出され、サイクロン装置50から排出された排ガス54はフィルタ56に供給され、フィルタ56を通過した排ガス60は排気塔64から排気される。
【0045】
このとき排ガス46は、混練機34に至る経路及び混練機34内において冷却され、排ガス46中の亜鉛は粗酸化亜鉛58となる。サイクロン装置50においては、質量が大きく且つ亜鉛濃度が低い煤塵52が捕集される。この煤塵52は、原料配合槽30において、第1の煤塵18、高炉ダスト、転炉ダスト、炭材28と混合され再びロータリーキルン26で燃焼される。また、サイクロン装置50を通過した排ガス54中の粗酸化亜鉛58は、フィルタ56より捕集され、この粗酸化亜鉛58は、亜鉛精錬設備66に搬送される。
【0046】
よって、亜鉛精錬設備66においては、第2の煤塵24と粗酸化亜鉛58との2つの材料から亜鉛を製造することになるが、第2の煤塵24に含まれる亜鉛も酸化物であるので、精錬プロセスはどちらの材料も基本的に同様である。特に粗酸化亜鉛58の亜鉛の含有率は、第2の煤塵24中の亜鉛の含有率より高くなるので、亜鉛精錬設備66においては亜鉛の精錬を効率的に行なうことができる。
【0047】
以上述べたように、本実施形態に係るリサイクルシステム10によれば、電気炉12から排出された煤塵を、鉄含有量が高く、且つ亜鉛含有量の低い第1の煤塵18と、亜鉛含有量が高く、且つ鉄含有量の低い第2の煤塵24と、に分別し、ロータリーキルン26により第1の煤塵18から還元鉄と粗酸化亜鉛とを分別生成し、亜鉛精錬設備66により第2の煤塵24から亜鉛を生成している。よって、ロータリーキルン26では効率的に還元鉄を生成することができ、亜鉛精錬設備66では、効率的に亜鉛を生成することができる。また、亜鉛精錬設備66では、ロータリーキルン26から排出された粗酸化亜鉛58を用いてさらに効率的に亜鉛を生成することができる。更にロータリーキルン26では、バイオマス廃棄物等を炭材28として用いるので二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
複雑な工程を経ることなく電気炉から排出された煤塵から効率的に鉄及び亜鉛を取り出して鉄製品を再生産可能なリサイクルシステムとして利用できる。
【符号の説明】
【0049】
10………リサイクルシステム、12………電気炉、14………排ガス、16………サイクロン装置、18………第1の煤塵、20………排ガス、22………フィルタ、24………第2の煤塵、26………ロータリーキルン、26a………端部、26b………端部、28………炭材、30………原料配合槽、32………原料、34………混練機、36………原料槽、38………還元鉄、38a………篩上産物、38b………篩下産物、40………クーラー、42………振動篩、44………キルン内供給ガス、46………排ガス、48………ファン、50………サイクロン装置、52………煤塵、54………排ガス、56………フィルタ、58………粗酸化亜鉛、60………排ガス、62………ファン、64………排気塔、66………亜鉛精錬設備、68………製鉄所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛を含有する鉄製品のスクラップを溶融する電気炉と、
前記電気炉の排ガスに含まれる煤塵と炭材との混合物を燃焼させて還元鉄を生成するロータリーキルンと、
前記煤塵から亜鉛を生成する亜鉛精錬設備と、を有し、
前記還元鉄と、前記亜鉛精錬設備で生成された亜鉛と、により前記鉄製品を再生産可能なリサイクルシステムであって、
前記排ガスから遠心分離により第1の煤塵を捕集するサイクロン装置と、
前記サイクロン装置を通過した前記排ガスから第2の煤塵を捕集するフィルタと、が配置され、
前記ロータリーキルンは、
前記第1の煤塵から前記還元鉄を生成し、
前記亜鉛精錬設備は、
前記第2の煤塵から亜鉛を生成することを特徴とするリサイクルシステム。
【請求項2】
前記ロータリーキルンは、
前記還元鉄とともに粗酸化亜鉛を生成し、
前記亜鉛精錬設備は、
前記粗酸化亜鉛から亜鉛を生成することを特徴とする請求項1に記載のリサイクルシステム。
【請求項3】
前記炭材は、バイオマス廃棄物、塗料かす、有機燃料の煤塵や燃え殻であることを特徴とする請求項1または2に記載のリサイクルシステム。
【請求項4】
前記炭材は、鉄系の凝集剤を用いて排水から分離した排水汚泥であることを特徴とする請求項1または2に記載のリサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76149(P2013−76149A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218005(P2011−218005)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591059825)鹿島選鉱株式会社 (8)
【出願人】(000170325)鴻池運輸株式会社 (3)
【Fターム(参考)】