説明

リサイクル樹脂組成物およびその製造方法

【課題】従来廃棄されるか、製品価値が下級の用途に利用されていたm−PPEの回収成形品を商品価値の高い変性ポリフェニレンエーテルとして提供することを目的とする。高度の製品特性、即ち高度の寸法特性、機械特性や難燃性などの性能を有する無機フィラー含有変性ポリフェニレンエーテルのリサイクル樹脂組成物を開発する。無機フィラー含有変性ポリフェニレンエーテルは、含有する無機フィラーの種類および量によって材料特性が大きく異なり、リサイクルにおいては実用に見合った製品設計が難しいため、それを克服するリサイクル方法を開発する。
【解決手段】本発明のリサイクル樹脂組成物は、特定の回収樹脂と、特定の未使用成分とを溶融混練して得られ、ポリフェニレンエーテルならびに板状および/または鱗片状無機フィラーを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、耐熱性、機械的性質、難燃性および電気的性質に優れた樹脂として広く知られている。また、ポリフェニレンエーテル樹脂に、必要に応じてポリスチレン系樹脂を配合してその成形加工性を改善した材料、更にはリン系難燃剤を配合して難燃性を向上させた材料、無機フィラー(強化材、充填材)を配合した材料などがある。これらの材料は変性ポリフェニレンエーテル樹脂(以下、「m−PPE」と記載することがある。)として知られており、上記の優れた特性を有することから、自動車部品、電気・電子部品、事務機器、工業製品、建材等の用途に広範囲に用いられている。このようなm−PPEは、無機フィラーを配合して機械特性(特に剛性)および寸法特性を改良した材料として実用される場合が非常に多い。
【0003】
近年、プラスチック材料のリサイクルに関する需要は高く、m−PPE材料も同様にリサイクルの要求が高まっている。前述の通りm−PPEは無機フィラーを含有する成形品となっていることが多く、これをリサイクルするに際しては、少なからず無機フィラーを含有した回収m−PPE材料をいかに利用するかが重要である。
【0004】
プラスチックのリサイクルについては多くの手段や方法が検討されている。例えば、ポリスチレンの成形品を回収して変性PPEの原材料として用いる方法(例えば、特許文献1および特許文献2参照)、回収成形品の粉砕物にドリップ防止剤を混合して成形に供する方法(例えば、特許文献3参照)、回収したm−PPE成形品の粉砕物に水添スチレン系エラストマーを添加した再生樹脂材料(例えば、特許文献4参照)、ゴム質重合体を含有し、無機充填材を含んでもよいポリカーボネート成形品の粉砕物にバージンポリカーボネート、バージン無機充填材を溶融混練して製造された再生樹脂組成物(例えば、特許文献5参照)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−049065号公報
【特許文献2】特開2005−154584号公報
【特許文献3】特開2005−289047号公報
【特許文献4】特開2005−179476号公報
【特許文献5】特開2004−323825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来技術はリサイクルとしては充分なものではなく、得られたリサイクル樹脂組成物は、高度の製品特性、即ち高度の寸法特性、機械特性や難燃性などの性能の面で満足できるものではない。回収ポリスチレンを用いたm−PPEへのリサイクルはm−PPEそのもののリサイクルとしては有効ではない。回収成形品の粉砕物にドリップ防止剤を混合して成形に供する方法は、無機フィラー含有m−PPEにおいては難燃性の改善効果はなく何等意味を成さない。m−PPEにエラストマーを添加したリサイクル材は、無機フィラー非含有のm−PPEにおいては有効であるが、衝撃強度の改善以外は高性能リサイクル材とはなり得ず、無機フィラー含有m−PPEにおいては剛性および難燃性を低下させるために有効ではない。
【0007】
環境保護、省資源化が叫ばれる近年は、リサイクル品の要求はますます高まっている。その観点からも、高度の製品特性、即ち高度の寸法特性、機械特性や難燃性などの性能を有する無機フィラー含有m−PPEのリサイクル樹脂組成物の開発が望まれている。しかしながら、無機フィラー含有m−PPEは、含有する無機フィラーの種類および量によって材料特性が大きく異なり、リサイクルにおいては実用に見合った製品設計が難しいため、それを克服する無機フィラー含有m−PPEのリサイクル樹脂組成物の開発が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、無機フィラーとポリフェニレンエーテルとを含む樹脂組成物の成形品をリサイクルし、回収された成形品を再び原材料として用いて優れた特性のリサイクル樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究した結果、無機フィラー含有の回収ポリフェニレンエーテルを、未使用のポリフェニレンエーテルおよび特定の無機フィラーと溶融混練して得られるリサイクル樹脂組成物が上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、以下に関する。
【0011】
[1]
下記(a)、(b)、(c)、(d)および(e)を溶融混練して得られ、
下記(d)の全てが板状および/または鱗片状の無機フィラーであり、
ポリフェニレンエーテルならびに板状および/または鱗片状無機フィラーを含有するリサイクル樹脂組成物;
(a)回収成形品を粉砕および/または溶融混練して得られ、ポリフェニレンエーテルと無機フィラーとを含有し、無機フィラーの含有量が5〜50質量%である回収樹脂 2〜50質量%、
(b)未使用のポリフェニレンエーテル 5〜50質量%、
(c)未使用のスチレン系樹脂 0〜40質量%、
(d)未使用の無機フィラー 5〜50質量%、
(e)未使用のリン系難燃剤 0〜30質量%。
【0012】
[2]
(a)回収樹脂が繊維状無機フィラーを含有し、かつ
リサイクル樹脂組成物中の繊維状無機フィラーの最大繊維長が0.5mm未満である[1]に記載のリサイクル樹脂組成物。
【0013】
[3]
リサイクル樹脂組成物中の(a)回収樹脂の含有量が5〜30質量%である[1]または[2]に記載のリサイクル樹脂組成物。
【0014】
[4]
(a)回収樹脂がさらにスチレン系樹脂を含有し、(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との質量比(ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂)が30/70〜90/10であり、
リサイクル樹脂組成物中の(b)ポリフェニレンエーテルと(c)スチレン系樹脂との質量比((b)/(c))が20/80〜90/10である[1]乃至[3]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物。
【0015】
[5]
リサイクル樹脂組成物中の全無機フィラーの含有量が10〜50質量%である[1]乃至[4]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物。
【0016】
[6]
(d)未使用の無機フィラーが、板状または鱗片状の、ガラス、マイカ、タルクおよびクロライトからなる群より選択される1種以上である[1]乃至[5]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物。
【0017】
[7]
(e)未使用のリン系難燃剤が、下記一般式(I)で表されるリン酸エステルである[1]乃至[6]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物。
【0018】
【化1】

[式(I)中、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、フェニル基または炭素原子数1〜6のアルキル基で1〜3個置換されたアリール基であり、さらにヒドロキシル基で置換されたアリール基でもよく、
Xは、アリーレン基であり、
Nは、1〜30の整数であり、
nは、それぞれ独立して、0または1である。]
[8]
(e)未使用のリン系難燃剤が、下記一般式(II)で表されるリン酸エステルである[1]乃至[6]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物。
【0019】
【化2】

[式(II)中、
Aは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、フェニル基または炭素原子数1〜6のアルキル基で1〜3個置換されたアリール基であり、さらにヒドロキシル基で置換されたアリール基でもよく、
xおよびyは、それぞれ独立して0、1、2、3または4であり、
nは、それぞれ独立して、0または1であり、
Nは、1〜30の整数である。]
[9]
(e)未使用のリン系難燃剤が、下式(III)で表されるホスフィン酸塩、下式(IV)で表されるジホスフィン酸塩およびこれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]乃至[6]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

[式(III)、(IV)中、
5およびR6は、それぞれ独立して、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C6−アルキル、アリールまたはフェニルであり、
7は、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレンまたはC6〜C10−アリールアルキレンであり、
Mは、カルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)およびプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上であり、
mは、2または3であり、
qは、1〜3の整数であり、
zは、1または2である。]
[10]
(a)回収樹脂が、家電製品、OA機器、E&E機器および情報通信関係機器の内部部品からなる群より選択される1種以上の回収成形品を粉砕および/または溶融混練して得られる回収樹脂である[1]乃至[9]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物。
【0022】
[11]
以下の第1工程〜第3工程を含む[1]乃至[10]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物の製造方法;
回収成形品を粉砕する第1工程、
第1工程で得られた回収成形品の粉砕物をブレンドし、押出機により溶融混練して均一混合ペレットとして(a)回収樹脂を得る第2工程、
ニーディングディスクを組み込んだスクリューを有する二軸押出機を用いて、第2工程で得られた(a)回収樹脂と(b)未使用のポリフェニレンエーテルとを前記二軸押出機トップの第1供給口から供給し、(c)未使用のスチレン系樹脂、(d)未使用の板状および/または鱗片状の無機フィラー、ならびに(e)未使用のリン系難燃剤を前記二軸押出機途中から供給して溶融混練し、ペレットとしてリサイクル樹脂組成物を得る第3工程。
【0023】
[12]
[1]乃至[10]のいずれかに記載のリサイクル樹脂組成物を成形して得られる成形品。
【0024】
[13]
家電製品、情報処理関係機器または情報通信関係機器の内部機構部品である[12]に記載の成形品。
【0025】
[14]
家電製品、情報処理関係機器または情報通信関係機器のシャーシ部品である[12]記載の成形品。
【発明の効果】
【0026】
本発明のリサイクル樹脂組成物は、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂の成形品、特に無機フィラーを含有する不要な成形品を回収し、該成形品の粉砕物を原料として有効に使用することができる。さらには本発明によれば、使用済みの回収成形品を、特定割合で特定の未使用原材料と溶融混練することにより、未使用原材料のみから得られた樹脂組成物よりも寸法性および難燃性に優れ、機械特性が良く高度な材料特性を有するリサイクル樹脂組成物を得ることが可能である。本発明のリサイクル樹脂組成物は、環境保護、資源の再利用の観点からも非常に有用であり、その奏する工業的効果は格別なものである。更に、本発明のリサイクル樹脂組成物の製造方法は、使用済みの成形品を特定割合で特定の未使用樹脂、特定の無機フィラーおよび特定難燃剤と溶融混練することにより、成形品の寸法異方性や反り抑制に優れ、良好な剛性および難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であり、環境保護、資源の再利用の観点からも非常に有用である。また本発明のリサイクル樹脂組成物は、使用済み成形品の再利用の選択肢を拡大すると共に、同一製品における再利用が可能となることから製品設計においてかかる点を充分に考慮した効率の高い再利用を可能とする。したがって、その奏する工業的効果は格別なものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】回収成形品のモデルに用いたシャーシ部品想定の成形品Aの形状を示す図である。
【図2】成形収縮率および反りの評価に用いた平板成形品の寸法および測定部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
【0029】
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0030】
≪リサイクル樹脂組成物≫
本実施形態に係るリサイクル樹脂組成物は、下記(a)、(b)、(c)、(d)および(e)を溶融混合して得られ、下記(d)の全てが板状および/または鱗片状の無機フィラーである。
(a)回収成形品を粉砕および/または溶融混練して得られ、ポリフェニレンエーテルと無機フィラーとを含有し、無機フィラーの含有量が5〜50質量%である回収樹脂 2〜50質量%、
(b)未使用のポリフェニレンエーテル 5〜50質量%、
(c)未使用のスチレン系樹脂 0〜40質量%、
(d)未使用の無機フィラー 5〜50質量%、
(e)未使用のリン系難燃剤 0〜30質量%。
【0031】
また、本実施形態に係るリサイクル樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルならびに板状および/または鱗片状無機フィラーを含有し、さらにスチレン系樹脂を含有することが好ましい。またさらに、本実施形態に係るリサイクル樹脂組成物は、(a)回収樹脂が繊維状無機フィラーを含有し、かつリサイクル樹脂組成物中の繊維状無機フィラーの最大繊維長が0.5mm未満であることが好ましい。
【0032】
以下、リサイクル樹脂組成物の各構成成分について、詳細に説明する。
【0033】
1.原材料
[(a)回収樹脂]
本実施形態に用いる(a)回収樹脂は、回収成形品を粉砕および/または溶融混練して得られ、ポリフェニレンエーテルと無機フィラーとを含有し、無機フィラーの含有量が5〜50質量%である回収樹脂である。(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルの含有量は、5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、15〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態において、回収成形品とは、使用済みで回収された成形品であり、例えば、家電製品、OA機器、E&E機器および情報通信関係機器の内部部品からなる群より選択される1種以上の回収成形品が挙げられる。
【0035】
粉砕前の回収成形品として、例えば、m−PPEを識別できるものであれば無機フィラー含有の有無あるいは難燃剤含有の有無を問わず用いることができるが、無機フィラー含有しないm−PPEの成形品を用いる場合は、無機フィラー含有するm−PPEの成形品を併用することにより、ポリフェニレンエーテルと無機フィラーとを含有する(a)回収樹脂を得ることができる。
【0036】
実用成形品の回収成形品におけるm−PPEの識別は、一般には実用金型に変性ポリフェニレンエーテルを意味する刻印、例えば「MPPE」、「PPE−PS」等が記されているので簡単に識別できる。また、回収成形品としては、例えば、ポリフェニレンエーテルと無機フィラーとを含有し、無機フィラーとしての灰分量が5〜50質量%である成形品を用いることができる。(a)回収樹脂は、例えば、これらの含有成分の異なる成形品を粉砕し、更にブレンドして溶融混練により均一化することで得ることができる。
【0037】
また、上記溶融混練する方法としては、例えば、押出機により溶融混練する方法などが挙げられる。この場合の押出機は特定するものではなく、単軸押出機または二軸押出機のいずれでもよく、スクリューも特に指定はなく溶融混練できるものであれば使用できる。押出機バレル設定温度は、好ましくは250〜330℃の範囲、より好ましくは260〜320℃の範囲である。
【0038】
以下、(a)回収樹脂について詳述する。
【0039】
(a)回収樹脂としては、例えば、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m−PPE)が挙げられる。また、(a)回収樹脂は、少なくともポリフェニレンエーテル(例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル)を必須とし、かつ所定の方法によって測定された無機フィラーとしての灰分を5〜50質量%含有し、その他の任意成分としてリン系難燃剤等を含有する回収成形品を、粉砕および/またはその粉砕物を溶融混練して得られるペレットである。
【0040】
ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルの単独重合体の他に下記の単独重合体または共重合体を併用することができる。ポリフェニレンエーテルの単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルの他に、ポリ(2−メチル−6−エチル−14−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
【0041】
この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましく、特開昭63−301222号公報等に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含んでいるポリフェニレンエーテルも好ましく用いられる。
【0042】
共重合体の例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールおよびo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。
【0043】
一般に成形材料m−PPEの出発原料として用いられるポリフェニレンエーテルは、0.5g/100mlクロロホルム溶液の30℃で測定された還元粘度が、好ましくは0.30〜0.70dl/g、より好ましくは0.35〜0.65dl/g、さらに好ましくは0.38〜0.60dl/g、特に好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
【0044】
一般的なm−PPEは、他の原材料と加熱溶融混練することにより成形材料として得られルものであり、(a)回収樹脂もそのようにして得られた材料を成形加工されたものであることが好ましい。ところで、一般にポリフェニレンエーテルは加熱溶融混練されることによって分子量が上昇する。(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルのポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは30,000〜120,000、より好ましくは40,000〜100,000、さらに好ましくは45,000〜80,000である。
【0045】
(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルの分子量の測定は、ポリフェニレンエーテルを溶解分別後、市販されている分子量既知の単分散ポリスチレンを基準として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーを用いて行い、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
【0046】
(a)回収樹脂は、例えば、多種多様のm−PPEを含む回収成形品を粉砕したものが挙げられ、必然的に無機フィラーを含有しており、また最も多用される繊維状無機フィラーを含有する場合がほとんどである。(a)回収樹脂は、無機フィラーを含有しない成形品と無機フィラーを含有する成形品とを併用して得ることができることは勿論であり、無機フィラーの含有有無を問わずに混合して用いられることから少なからず無機フィラーは含有される。(a)回収樹脂は、回収成形品を粉砕および/または溶融混練してペレットとしたものであり、無機フィラーの含有量(以下の方法で測定された灰分量)が5〜50質量%の範囲のものである。
【0047】
ここで、灰分量(無機フィラーの含有量)の測定方法は、均一にブレンドされた回収成形品の粉砕物または溶融混練後のペレットを、約2g精秤し、磁器坩堝に入れて、電気炉にて800℃で樹脂成分がなくなるまで燃焼後、室温まで冷却した後の磁器坩堝中の残渣量を灰分量(無機フィラーの含有量)として測定する方法である。
【0048】
得られた灰分(無機フィラー)は、例えば、ポリエチレングリコ−ルを用いてスライドグラス上に破損しないよう静かにのばし、これを光学顕微鏡下で観察して繊維状無機フィラーの繊維長を観察することができる。
【0049】
(a)回収樹脂中に含有する無機フィラーの形状は、繊維状のほか、非繊維状フィラーとしての鱗片状・板状、粒状、無定形など種々の形状であってもよい。繊維状フィラーの具体例としては、ガラス繊維、中空ガラス繊維、カーボン繊維、中空カーボン繊維、酸化チタンウィスカー、繊維状ワラストナイトが挙げられる。非繊維状フィラーの具体例としては、タルク、マイカ、クレー、シリカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、中空フィラー、雲母等が挙げられる。
【0050】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物は、(a)回収樹脂が繊維状無機フィラーを含有し、かつ、リサイクル樹脂組成物中の繊維状無機フィラーの最大繊維長が0.5mm未満であることが好ましい。このようなリサイクル樹脂組成物は、寸法特性および難燃性に優れる傾向にある。
【0051】
リサイクル樹脂組成物中の繊維状無機フィラーの最大繊維長は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0052】
(a)回収樹脂(例えば、m−PPE)は、さらにスチレン系樹脂を含有することが好ましい。また、スチレン系樹脂を含有する場合、(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との質量比(ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂)は、20/80〜90/10であることが好ましく、30/70〜90/10であることがより好ましい。(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との質量比が前記範囲であると、リサイクル樹脂組成物は、成形流動性および耐熱性に優れる傾向にある。
【0053】
スチレン系樹脂は、例えば、m−PPEの成形加工性を向上するために添加される。また、ゴム状重合体含有の耐衝撃スチレン系樹脂(ハイインパクトポリスチレン)やスチレン共重合ゴム質重合体は、耐衝撃精改良のために添加される。
【0054】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物は、(a)回収樹脂がポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂とを含有し、(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との質量比(ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂)が30/70〜90/10であり、リサイクル樹脂組成物中の(b)ポリフェニレンエーテルと(c)スチレン系樹脂との質量比((b)/(c))が20/80〜90/10であることが好ましい。このようなリサイクル樹脂組成物は、成形流動性、耐熱性、難燃性に優れる傾向にある。
【0055】
(a)回収樹脂(例えば、m−PPE)が難燃材料である場合には、一般的にリン系難燃剤を含有する。(a)回収樹脂中のリン系難燃剤の含有量は3〜20質量%であることが好ましい。難燃剤を含有しない非難燃m−PPEと併用混合して用いることもできる。
【0056】
実用されているm−PPEの難燃剤としては、一般的にハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物は用いられず、リン酸エステル等のリン系難燃剤が用いられる。
【0057】
リン系難燃剤としては、難燃剤として公知のリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸塩、ポリリン酸塩、赤リン等から選択されたものを使用することができるが、従来実用されているのはリン酸エステル化合物がほとんどである。
【0058】
リン酸エステル化合物の具体例としては、トリフェニルフォスフェート、トリスノニルフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−[ビス(メチルフェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン等が挙げられるが、これらに制限されることはない。さらに上記以外のリン系難燃剤としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系難燃剤、ジフェニル−4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラブロモベンジルホスフォネート、ジメチル−4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンジルホスフォネート、ジフェニル−4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンジルホスフォネート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2、3−ジブロモプロピル)−2、3−ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ハイドロキノニルジフェニルホスフェート、フェニルノニルフェニルハイドロキノニルホスフェート、フェニルジノニルフェニルホスフェートなどのモノリン酸エステル化合物、および芳香族縮合リン酸エステル化合物などが挙げられる。
【0059】
これらの中、加工時のガス発生が少なく、熱安定性などに優れることから芳香族縮合リン酸エステル化合物が好適に用いられる。これらの芳香族縮合リン酸エステル化合物は、一般に市販されており、例えば、大八化学工業(株)のCR741、CR733S、PX200などが知られている。特に好ましいのは、酸価が0.1以下(JIS K2501に準拠して得られた値)の芳香族縮合リン酸エステル化合物およびフェノキシホスファゼンである。
【0060】
これらのリン系難燃剤は、一般的には単独で用いられが、2種以上を併用することもできる。
【0061】
(a)回収樹脂(例えば、m−PPE)中には、上記以外の一般的に用いられるその他の添加剤が含有していても構わない。
【0062】
(a)回収樹脂(例えば、m−PPE)中に一般的に用いられるその他の添加剤としては、熱安定剤、離型剤、耐衝撃改良剤、着色剤などが挙げられる。
【0063】
熱安定剤としては、従来用いられているヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、金属酸化物、金属硫化物等が挙げられ、これらの1種以上が添加される。
【0064】
離型剤としては、高級脂肪酸の金属塩、ビスアマイド化合物、エステル化合物などの他、ポリオレフィンワックス、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、これらの1種以上が添加される。
【0065】
耐衝撃改良剤としては、スチレンとジエン化合物からなるゴム状共重合体やその水素添加物が従来一般的に用いられる。
【0066】
着色剤としては、黒着色用のカーボンブラックが最も一般的であり、酸化チタンや硫化亜鉛等の無機系白着色剤、有彩色用および補色用着色剤としての各種染料が挙げられる。
【0067】
本実施形態で用いられる(a)回収樹脂は、家電製品、OA機器、E&E機器および情報通信関係機器の内部部品からなる群より選択される1種以上の回収成形品を粉砕および/または溶融混練して得られる回収樹脂であることが、本実施形態のリサイクル樹脂組成物の設計およびその用途上から好ましい。
【0068】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物中の(a)回収樹脂の含有量は、2〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。(a)回収樹脂の含有量が、2質量%以上であると、(a)回収樹脂の有効利用としての効果が発揮され、50質量%以下の場合に所望の特性を有するリサイクル樹脂組成物が設計し易いため好ましい。また、光学顕微鏡で(a)回収樹脂中の無機フィラーを観察した際に、繊維状フィラーがほぼ半量以上含まれる場合、リサイクル樹脂組成物において、(a)回収樹脂の含有量は、好ましくは(a)回収樹脂由来の無機フィラーの含有量(灰分量)が10質量%以下、即ち繊維状フィラーの含有量が5質量%以下、より好ましくは3質量%以下となるようにする。その結果、本実施形態のリサイクル樹脂組成物の寸法特性および難燃特性が良好となる傾向にある。
【0069】
本実施形態においては、上記(a)回収樹脂は無機フィラーとしての灰分を5〜50質量%含有したものであるが、本実施形態のリサイクル樹脂組成物中の繊維状フィラーの含有量が5質量%以下とするならば、(a)回収樹脂中の無機フィラーとしての灰分が10〜50質量%、更には20〜50質量%の(a)回収樹脂を利用でき、無機フィラーを含有する(a)回収樹脂を効率よく多量にリサイクルすることが可能なことから、社会的、工業的価値が大きい。
【0070】
[(b)未使用のポリフェニレンエーテル]
本実施形態に用いる(b)未使用のポリフェニレンエーテル(以下「(b)未使用PPE」または「成分(b)」とも記す。)は、以下の単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、共重合体(コポリマー)であってもよい。
【0071】
なお、本実施形態において、「未使用」の成分(例えば、成分(b)〜(e))とは、(a)回収樹脂のような成形品に使用されていた成分ではなく、成形品等の原料として初めて使用する成分を意味する。
【0072】
PPEの単独重合体として、以下に制限されないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、およびポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテルが挙げられる。入手の容易性および価格の観点から、好ましくは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルである。
【0073】
ここでいう単独重合体には、繰り返し単位構造中の一部の構造単位が、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル構造単位および/または2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル構造単位で置換された構造を有するものも含まれる。
【0074】
加工時の分子量調整の容易性の観点から、より好ましくは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルの一部の構造単位が、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル構造単位および/または2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル構造単位で置換された共重合体である。
【0075】
一方、PPEの共重合体とは、例えば、フェニレンエーテル構造を主たる構造単位とする共重合体が挙げられる。
【0076】
前記共重合体の具体例として、以下に制限されないが、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、および2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの(3元)共重合体が挙げられる。
【0077】
実用上の観点から、(b)未使用PPEの還元粘度(ηsp/c)は、好ましくは0.3〜0.7であり、より好ましくは0.4〜0.6である。なお、本実施形態において、「実用上の観点」とは、樹脂組成物を実際に使用する上での判断を意味する。当該判断基準は、成形加工性、機械特性、耐薬品性、難燃性等である。また、還元粘度(ηsp/c)は、ウベローデ粘度管により、30℃において0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液で測定した値である。
【0078】
また、(b)未使用PPEの[重量平均分子量/数平均分子量]の比は、好ましくは1.8〜5.0であり、より好ましくは2.2〜3.5である。なお、本明細書における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の分子量を基準として算出された値である。
【0079】
(b)未使用PPEとしては、上記のような物性・特性を具備するポリフェニレンエーテルであることが、成形流動性の観点からも好適である。中でも、上記のような物性・特性を具備するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。
【0080】
さらに、本実施形態においては、(b)未使用PPEとして、ポリフェニレンエーテルの一部または全部を不飽和カルボン酸またはその誘導体で官能化した、官能化ポリフェニレンエーテルを用いることもできる。
【0081】
このような官能化ポリフェニレンエーテルは、特開平2−276823号公報、特開昭63−108059号公報や特開昭59−59724号公報などに記載されており、例えばラジカル開始剤の存在下または非存在下で、ポリフェニレンエーテルに不飽和カルボン酸やその誘導体を溶融混練し、これらを反応させることによって得られる。また、上記官能化ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸またはその誘導体とを、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で有機溶剤に溶解し、かかる溶液中で反応させることによっても得られる。不飽和カルボン酸またはその誘導体で官能化されたポリフェニレンエーテルは、未官能化のポリフェニレンエーテルに対して無機充填材との密着性が良好であり好ましい。
【0082】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物において、上記の(b)未使用PPEは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物において、(b)未使用PPEの含有量は、5〜50質量%であり、5〜45質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。(b)未使用PPEの含有量は、目標とする材料特性に応じて適宜決定されるが、5質量%以上で実用上の耐熱性および難燃性に優れ、50質量%以下において成形流動性、離型性等の成形加工性に優れる。
【0084】
[(c)未使用のスチレン系樹脂]
本実施形態に用いる(c)未使用のスチレン系樹脂(以下「成分(c)」とも記す。)は、スチレン系化合物の単独重合体またはスチレン系化合物と共重合可能な化合物との共重合体であることが好ましい。また、これらの1種以上のスチレン系化合物をゴム質重合体存在下で重合して得られる重合体であってもよい。
【0085】
上記のスチレン系化合物として、以下に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレンが挙げられる。中でもスチレンが好ましい。
【0086】
また、上記のスチレン系化合物と共重合可能な化合物として、以下に制限されないが、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリルやメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸、フェニルマレイミドなどのマレイン酸誘導体が挙げられる。これらの化合物は、上述の通り、上記のスチレン系化合物とともに使用される。前記スチレン系化合物と共重合可能な化合物の使用量は、当該共重合可能な化合物と上記スチレン系化合物との合計量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
【0087】
上記のゴム質重合体としては、以下に制限されないが、例えば、共役ジエン系ゴム、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体系ゴムが挙げられる。ゴム質重合体の具体例としては、以下に制限されないが、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体およびスチレン−ブタジエンブロック共重合体、ならびにこれらを部分的にまたはほぼ完全に水素添加したゴム成分が挙げられる。
【0088】
市場で入手できる(c)未使用のスチレン系樹脂の具体例としては、(ホモ)ポリスチレン(アタクチックポリスチレン)、シンジオタクチックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(ゴム変性ポリスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂等のゴム変性スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体などが挙げられる。
【0089】
好ましい(c)未使用のスチレン系樹脂は、ポリスチレンおよび/またはゴム変性ポリスチレンである。また、スチレン−アクリロニトリル共重合体は、アクリロニトリルを7〜15質量%含有することが好ましい。このようなスチレン−アクリロニトリル共重合体の含有量を、全成分(c)100質量%に対して、最大80質量%まで、好ましくは20〜70質量%までにすることによって、さらに成形流動性と耐熱性とのバランスに優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0090】
上述した成分(c)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0091】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物において、上記の(c)未使用のスチレン系樹脂の含有量は、0〜40質量%であり、0〜35質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。(c)未使用のスチレン系樹脂の含有量は、目標とする材料特性に応じて適宜決定されるが、成分(c)の含有量が多いほど成形流動性等の成形加工性に優れ、40質量%以下において実用上の耐熱性および難燃性に優れる。
【0092】
[(d)未使用の無機フィラー]
本実施形態のリサイクル樹脂組成物は、成分(d)の全てが、板状および/または鱗片状の無機フィラーである。(d)未使用の無機フィラーとしては、板状または鱗片状の、ガラス、マイカ(例えば、白マイカ、金マイカ)、タルク、クロライトおよび雲母が好ましく、板状または鱗片状の、ガラス、マイカ、タルクおよびクロライトからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0093】
板状または鱗片状のガラスの製法としては、溶融ガラスのバルーンを破砕するバルーン法や超遠心力によるスパン法等が知られている。一般に篩分けによる重量平均径が0.05mm〜2mm、厚み1〜10μmのガラスが利用されることが好ましい。本実施形態のリサイクル樹脂組成物中において、長径が好ましくは1000μm以下、より好ましくは1〜500μmの範囲であり、かつ重量平均アスペクト比(重量平均長径と重量平均厚みとの比)が好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは30以上のガラスを用いる。
【0094】
板状または鱗片状のガラスを、他の成分と混合してリサイクル樹脂組成物を調製する際に、板状または鱗片状のガラスは破壊されてそのサイズが小さくなる場合がある。リサイクル樹脂組成物中における板状または鱗片状のガラスの長径および厚みの測定は、リサイクル樹脂組成物を溶解し、濾過して板状または鱗片状のガラスを取り出し、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察することによって行うことができる。
【0095】
前記板状または鱗片状のガラスが長径2mmを超えるガラスである場合は、樹脂への配合時に、樹脂との均一混合が困難となり、また成形品の物性にムラを生じる場合がある。一方、アスペクト比が5未満のものは、成形品の熱変形温度の向上効果が充分には得られず、またアイゾット衝撃強さおよび剛性が低下する傾向にある。
【0096】
また、前記板状または鱗片状のガラスとしては、上述したガラス繊維同様に、表面処理剤および集束剤で処理したガラスが好ましく、樹脂との親和性を改良する目的で、例えばシラン系(例えばアミノシラン系)やチタネート系等の種々のカップリング剤で表面処理したガラスも使用できる。
【0097】
板状または鱗片状のガラスの市販品の例としては、日本板硝子社のマイクログラス・フレカ(登録商標)、GLASS FLAKE Limited社(英国)の鱗片状硝子が挙げられる。板状または鱗片状ガラスとしては市販されているものをそのまま用いることができるが、樹脂に配合する前に適当に粉砕してから用いてもよい。
【0098】
(d)未使用の無機フィラーとしてのマイカは、鱗片状の珪酸アルミニウム系の鉱物であることが好ましく、例えば、KAl2(AlSi310)(OH)2(白マイカ)、K(Mg,Fe)3(AlSi310)(OH)2(黒マイカ)、KMg3(AlSi310)(OH)2(金マイカ)、KLi2Al(Si410)(OH)2(鱗マイカ)、NaAl2(AlSi310)(OH)2(ソーダマイカ)、KMg3(AlSi310)F2(フッ素金マイカ)の化学式で示される種々のマイカが挙げられる。
【0099】
これらのマイカは、へき開性を有しており、本実施形態では、いずれのマイカも使用可能である。
【0100】
マイカの平均粒径は、本実施形態のリサイクル樹脂組成物の剛性と寸法特性とのバランスを良好なものとする観点から、3〜200μm(篩分け法)が好ましく、より好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜100μmである。平均粒径が3μm以上で補強効果および寸法性に対して効果が顕著であり、200μm以下において成形品のウエルド強度の低下や表面外観の悪化が小さくなる。
【0101】
(d)未使用の無機フィラーとしてのタルクは、主成分がケイ酸マグネシウムであることが好ましく、不純物としてカルシウム、鉄、ナトリウム、カリウム等の塩が含まれていてもよい。
【0102】
本実施形態に用いるタルクは、天然滑石を粉砕、分級したものであることが好ましく、鱗片状または平板状の鉱物であることがより好ましい。
【0103】
また、前記タルクは、化学組成が含水ケイ酸マグネシウムとして4SiO2・3MgO・H2Oで表されるものが好ましい。当該含水ケイ酸マグネシウムは、産地により異なるが、通常SiO2を55〜63質量%、MgOを25〜33質量%、灼熱減量(H2O)5質量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFe23を0.1〜5質量%、Al23を0.1〜3質量%、CaOを0.1〜5質量%等を含有している。
【0104】
前記タルクの平均粒径については、特に制限されるものではないが、通常、0.5μm〜20μm(篩分け法)が好ましく、より好ましくは1μm〜15μm、さらに好ましくは1.5μm〜10μmである。
【0105】
前記タルクの平均粒径が0.5μm以上であると、補強効果および寸法性に対して効果が顕著であり、前記タルクの平均粒径が20μm以下であると、成形品のウエルド強度の低下や表面外観の悪化が小さくなる傾向にある。
【0106】
(d)未使用の無機フィラーとしてのクロライトは、緑泥石群天然鉱石であることが好ましい。
【0107】
緑泥石群鉱石とは、Mg、Fe、Mn,Ni等からなる酸化物、Al、Fe、Cr、Ti等からなる酸化物、Si、Al等からなる酸化物の各群から選択される所定のものを含有する鉱石であり、結晶構造としては、単斜晶系と斜方晶系とがある。
【0108】
緑泥石群鉱石の平均粒径は、特に制限されるものではないが、0.5μm〜30μm(篩分け法)が好ましく、より好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは3μm〜15μmである。
【0109】
前記緑泥石群鉱石の平均粒径が0.5μm以上であると、補強効果および寸法性に対して効果が顕著であり、前記緑泥石群鉱石の平均粒径が30μm以下であると、成形品のウエルド強度の低下や表面外観の悪化が小さくなる傾向にある。
【0110】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物において、緑泥石群鉱石を含有させることにより、機械物性と寸法特性とを改善するだけでなく、難燃効果を発揮すると考えられる。
【0111】
緑泥石群鉱物としては、クロライトの他、クックアイト、ナンタイト等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特にクロライトが入手の容易さの観点から好ましい。クロライト製品は、富士タルク工業(株)や巴工業(株)により製造されているものを用いることができる。
【0112】
本実施形態に用いる(d)未使用の無機フィラーは、本実施形態のリサイクル樹脂組成物から射出成形される成形品の寸法特性、特に異方性および反り特性を良好とする観点において必須成分である。
【0113】
上述した成分(d)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0114】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物において、全無機フィラーの含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。全無機フィラーの含有量は、目標とする材料特性に応じて適宜決定されるが、5質量%以上において機械特性としての剛性、寸法性としての成形収縮率に優れ、50質量%以下において機械特性としての剛性、寸法性としての成形収縮率が満足できる特性を有する。
【0115】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物中の上記の(d)未使用の無機フィラーの含有量は、(a)回収樹脂中の無機フィラーの種類にもある程度左右されるが、目標とする製品特性を達成するためには(a)回収樹脂中の無機フィラーを含む全無機フィラー含有量の半量以上であることが好ましい。
【0116】
[(e)未使用のリン系難燃剤]
本実施形態のリサイクル樹脂組成物は、成分(e)として、未使用のリン系難燃剤を含有する。リン系難燃剤としては、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸塩類、ホスフォン酸塩類、ホスホルアミド化合物等が挙げられる。
【0117】
(有機リン酸エステル化合物)
有機リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5’−トリ−メチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチル−ヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル−(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルフォスフェート、1−ナフチルジフェニルフォスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルフォスフェート等が挙げられる。
【0118】
上記(e)未使用のリン系難燃剤としては、下記一般式(I)または式(II)で表されるリン酸エステル(芳香族縮合リン酸エステル化合物)が好ましい。
【0119】
【化5】

[式(I)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、フェニル基または炭素原子数1〜6のアルキル基で1〜3個置換されたアリール基であり、さらにヒドロキシル基で置換されたアリール基でもよい。Xはアリーレン基であり、Nは1〜30の整数であり、nはそれぞれ独立して0または1である。]
上記式(I)の構造を有する(e)未使用のリン系難燃剤として特に好ましい芳香族縮合リン酸エステル化合物は、下記一般式(II)で表されるリン酸エステルである。
【0120】
【化6】

[式(II)中、Aは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、フェニル基または炭素原子数1〜6のアルキル基で1〜3個置換されたアリール基であり、さらにヒドロキシル基で置換されたアリール基でもよく、xおよびyは、それぞれ独立して0、1、2、3または4であり、nは、それぞれ独立して0または1であり、Nは、1〜30の整数である。]
上記式(I)および(II)の構造を有する難燃剤のうち、より好ましくは、上記式(I)および(II)におけるR1、R2、R3、R4が、それぞれ独立して炭素原子数6〜20のアリール基であることが好ましく、フェニル基、キシレニル基、及びクレジル基からなる群より選ばれるいずれかであることがより好ましい。上記式(I)および(II)の構造を有する難燃剤のうち、さらに好ましくは、nが1であり、Nが1〜5の整数、特にNが1であるリン酸エステルを50%以上含有するものである。
【0121】
また、上記式(II)中、Aは、それぞれ独立してメチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。x及びyは、それぞれ独立して0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0122】
前記一般式(I)および(II)で表されるリン化合物は、一般にはNの異なるリン化合物の混合物である。この場合、Nは平均値として表し、当該平均値が上記範囲内であればよい。従ってNが上記数値範囲外であるリン化合物が不純物として含まれることを排除するものではない。N=0の場合は、モノリン化合物を表し、一般に不純物として含まれる。
【0123】
縮合リン酸エステルとして、さらに好ましくは、酸価が0.1未満のものである。
【0124】
ここで、酸価とは、JIS K2501に準拠し、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される値である。
【0125】
縮合リン酸エステルの酸価が大きい場合には、リサイクル樹脂組成物の成形時に金型が腐食され易く、該化合物が分解しやすいために加工時のガスの発生が多くなり、更にはリサイクル樹脂組成物の電気特性が悪化する等の問題が起こる。
【0126】
上記式(I)の構造を有するリン系難燃剤としては、従来市販されているものとしては、例えば、大八化学(株)製 商品名CR−741、CR−747、CR733S、PX−200など、(株)ADEKA製 商品名FP−600、FP700等が挙げられる。
【0127】
上記式(II)の構造を有するリン系難燃剤として市販されているものとしては、例えば、(株)ADEKA製 商品名FP−800が挙げられる。
【0128】
(ホスファゼン化合物)
ホスファゼン化合物としては、下記式(V)に示す環状および直鎖状の構造を有するものが挙げられるが、環状構造化合物が好ましく、n=3および4の6員環および8員環のフェノキシホスファゼン化合物が特に好ましい。
【0129】
【化7】

(ここで、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜20の脂肪族基または芳香族基を表し、nは3以上の整数である。)
さらに、これらの化合物は、フェニレン基、ビフェニレン基および下記一般式(VI)で示される基からなる群より選ばれる架橋基によって架橋されていてもよい。
【0130】
【化8】

(式中Xは、−C(CH32−、−SO2−、−S−または−O−を示す。)
一般式(V)で示されるホスファゼン化合物は、公知の化合物であり、例えばJames E. Mark, Harry R. Allcock, Robert West著、”Inorganic Polymers”Pretice-Hall International, Inc., 1992, p61-p140に記載されている。
【0131】
これらホスファゼン化合物を得るための合成例は、例えば、特公平3−73590号公報、特開平9−71708号公報、特開平9−183864号公報および特開平11−181429号公報等に開示されている。
【0132】
例えば、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物の合成については、H.R.Allcock著、“Phosphorus−NitrogenCompounds“,Academic Press,(1972)に記載の方法に準じて行うことができ、ジクロルホスファゼンオリゴマー(3量体62%、4量体38%の混合物)1.0ユニットモル(115.9g)を含む20%クロルベンゼン溶液580gに、ナトリウムフェノラートのトルエン溶液を撹拌下で添加し、その後、110℃で4時間反応させ、精製することにより、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物が得られる。
【0133】
ホスファゼン化合物は、当該化合物中のリン含有量が通常のリン酸エステル化合物よりも高いため、少量の添加でも充分な難燃性を確保でき、耐加水分解性や耐熱分解性にも優れているため、リサイクル樹脂組成物の物性低下が抑えられ、リン系難燃剤としては特に好ましい化合物である。
【0134】
さらに、酸価が0.5以下のホスファゼン化合物は、難燃性、耐水性および電気特性面からより好ましい。
【0135】
(ホスフィン酸塩類)
ホスフィン酸塩類としては、下記式(III)で表されるホスフィン酸塩、下記式(IV)で表されるジホスフィン酸塩およびこれらの縮合物(本明細書中では、ホスフィン酸塩類と略記)からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0136】
【化9】

【0137】
【化10】

[式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C6−アルキルおよび/またはアリールもしくはフェニルであり、R7は、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレンまたはC6〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)およびプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上であり、mは、2または3であり、qは、1〜3の整数であり、zは、1または2である。]
ホスフィン酸塩類は、欧州特許出願公開第699708号公報や特開平08−73720号公報に記載されている公知の方法によって製造できる。
【0138】
例えば、ホスフィン酸塩は、水溶液中にホスフィン酸を金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物と反応させることにより製造できるが、この方法に限定されるものではなく、ゾル−ゲル法等によって製造してもよい。
【0139】
ホスフィン酸塩類は、一般にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3の縮合物であるポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。
【0140】
前記ホスフィン酸塩類を構成するホスフィン酸としては好適なものとしては、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0141】
前記ホスフィン酸塩類を構成する金属成分等としては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上が挙げられ、特に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンおよび亜鉛イオンからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0142】
ホスフィン酸塩類の具体例としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
【0143】
特に、リサイクル樹脂組成物において優れた難燃性を確保し、モールドデポジット(成形の際に難燃剤が金型表面に付着する現象)の抑制を図る観点から、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
【0144】
ホスフィン酸塩類の平均粒子径(d50%)は、0.2μm以上40μm未満であることが好ましく、0.5μmを超え30μm以下がより好ましく、0.5μmを超え20μm以下がさらに好ましく、1.0μmを超え10μm以下が特に好ましい。
【0145】
上記範囲の平均粒子径を有するホスフィン酸塩類を得るための手法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記範囲の平均粒子径以上のホスフィン酸塩類の塊を溶剤中に分散して湿式粉砕し、分級する方法が挙げられる。
【0146】
特に、平均粒子径が0.5μmを超え20μm以下の微粉末のホスフィン酸塩類を用いることにより、本実施形態のリサイクル樹脂組成物において、高い難燃性が発揮され、成形品の耐衝撃性の向上効果が得られ、良好な流動性、成形加工性が確保でき、さらには外観特性が改善する。
【0147】
上述した(e)成分の粒子径分布としては、粒子径の小さい方から25%の粒子径(d25%)と75%の粒子径(d75%)との比(d75%/d25%)が、1.0を超え5.0以下であることが好ましく、1.2〜4.0であることがより好ましく、1.5〜3.0であることがさらに好ましい。
【0148】
d75%/d25%の値が1.0を超え5.0以下であるホスフィン酸塩類を使用することにより、本実施形態のリサイクル樹脂組成物の面衝撃強度を著しい向上が図られる。
【0149】
上記平均粒子径(d50%)および粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径に基づいている。また、ホスフィン酸塩類の分散媒として3%イソプロパノール水溶液を用いて測定される値である。
【0150】
具体的には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所(株)製)を用いて、3%イソプロパノール水溶液の分散媒でブランク測定を行った後、測定試料を規定の透過率(95%〜70%)になるように入れて測定することにより求められる。
【0151】
なお、分散媒中への試料の分散は、超音波を1分間照射することにより行う。
【0152】
また、ホスフィン酸塩類は、本実施形態の効果を損なわなければ、未反応物や副生成物が残存していてもよい。
【0153】
本実施形態のリサイクル樹脂組成物においては、上述した(e)未使用のリン系難燃剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0154】
また、(e)未使用のリン系難燃剤は、必要な難燃性レベルに応じて添加され、リサイクル樹脂組成物(例えば、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)+成分(e)の合計量)に対して0〜30質量%の範囲で用いられる。好ましくは1〜25質量%の範囲、より好ましくは3〜20質量%の範囲である。(e)未使用のリン系難燃剤の含有量を、1質量%以上とすることにより難燃効果が得られ、30質量%以下とすることにより、リサイクル樹脂組成物の機械的強度や耐熱性の低下を実用上充分な程度に抑制できる。
【0155】
[その他の添加剤]
本実施形態のリサイクル樹脂組成物は、さらにゴム状物質、オレフィン系ポリマー、脂環族飽和炭化水素樹脂、高級脂肪酸エステル、テルペン類、ワックス類、石油炭化水素類、芳香族炭化水素系石油樹脂、ポリオキシアルキレン、フッ素系樹脂、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤および着色剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含んでいてもよい。
【0156】
ゴム状物質としては、ガラス転移温度が−100℃以上50℃以下の重合体または該重合体を共重合されてなる共重合体で、イソプレン系、ブタジエン系、オレフィン系、ポリエステルエラストマー系、アクリル系が挙げられる。これらはホモポリマーを用いてもよいが、必要に応じて共重合体として用いることもできる。これらのうち、汎用的に用いられるものとしては、ブタジエン系、オレフィン系が挙げられる。ブタジエン系の共重合体としては、スチレンとの共重合体であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体、あるいはその水添物が使用される。さらには、酸成分との3元系共重合体も有用であり、具体的にはアクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体、カルボン酸/カルボン酸無水物含有酸化合物−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0157】
オレフィン系ゴム状物質は、エチレン系、プロピレン系を用いるのが一般的であるが両者を組み合わせたエチレン−プロピレン共重合体も使用できる。またブタジエン系ゴム状物質と同様にさらに酸成分で変性されたオレフィン系ゴム成分も有用であり、さらにまたエポキシ基含有オレフィン系のゴム成分も使用してもよい。
【0158】
オレフィン系ポリマーは、耐薬品性や成形時の離型性を改良する際に有用である。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンのようにホモポリマーを単体で使用してもよいし、目的に応じて組合せで使用してもよい。また製法においても、高密度型、低密度型や鎖状型、枝分かれ型などがあるがいずれも有用に使用することができる。また他の化合物との共重合体として使うこともできる。たとえばマレイン酸やクエン酸、またはその酸無水物のようなカルボン酸基含有化合物、アクリル酸エステルのようなアクリル酸基を含む酸化合物との共重合体等も有用に使用できる。
【0159】
脂環族飽和炭化水素樹脂は芳香族炭化水素樹脂の水添物であり、芳香族炭化水素樹脂としては一般的に、C9炭化水素樹脂、C5/C9炭化水素樹脂、インデン?クマロン樹脂、ビニル芳香族樹脂、テルペン?ビニル芳香族樹脂等が挙げられる。水添化率は高いほど良いが少なくとも30%以上が望ましい。芳香族成分が多いと他の物性が損なわれるので好ましくない。
【0160】
テルペン類としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン類を原料とするテルペン類が使用される。芳香族炭化水素(フェノール、ビスフェノールA等)で変性されたものや水添されたテルペン等も有用に使用できる。
【0161】
ワックス類としては、例えば、オレフィン系ワックス、モンタンワックスなどが一般的に使用されるが、中でも低分子量ポリエチレンなどは汎用的に用いられる。
【0162】
石油炭化水素類としては、例えば、液状石油留分が好適に使用される。
【0163】
芳香族炭化水素系石油樹脂としては、例えば、C9炭素類に代表される芳香族炭化水素留分重合物が使用される。
【0164】
熱安定剤または酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’?メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−0−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレートなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロビオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール-テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などを挙げることができ、しばしば2種以上を併用することもある。
【0165】
変性PPEにおいては、更に酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの金属化合物も熱安定剤として使われることもある。
【0166】
帯電防止剤としては一般的に成形体表面に吸湿性を持たせることでその効果を発揮するという作用を有するものであり、樹脂中に添加剤的に用いる場合と塗布など二次加工として付与する場合がある。添加剤的に使用される帯電防止剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
【0167】
紫外線吸収剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、エポキシ系などが挙げられる。一種のみの使用でもよいが、組合せで用いるとさらに効果が期待できる。
【0168】
これらのその他添加剤の添加量としては特に制限されるものではないが、通常はリサイクル樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲であることが好ましく、0.1〜3重量部の範囲であることがより好ましい。
【0169】
[リサイクル樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係るリサイクル樹脂組成物は、上述した各成分を、加熱下で溶融混練することにより製造することができる。その製造方法は、例えば、下記の第1工程〜第3工程を含む。
【0170】
第1工程は、回収成形品を粉砕する工程である。回収成形品は、粉砕する前に金属や付着異物を除去しておくことが好ましく、水分やオイル等もふき取りや洗浄により除去することがより好ましい。
【0171】
第2工程は、第1工程で得られた回収成形品の粉砕物をブレンドし、押出機により溶融混練して均一混合ペレットとして(a)回収樹脂を得る工程である。この場合の押出機は特定するものではなく、単軸押出機または二軸押出機のいずれでもよく、スクリューも特に指定はなく溶融混練できるものであれば使用できる。押出機バレル設定温度は、好ましくは250〜330℃の範囲、より好ましくは260〜320℃の範囲である。
【0172】
後述の第3工程の前に、(a)回収樹脂(均一混合ペレット)の組成を分析する工程を行ってもよい。該工程は、具体的には、(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルとポリスチレンとの質量比および無機フィラーの含有量(灰分量)を測定する。
【0173】
(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルとポリスチレンとの質量比は、KBr錠剤法あるいはキャストフィルム法により試料を調製し、赤外分光光度計を用いて1300cm-1と700cm-1の吸光度比から、予め準備した検量線により算出することができる。
【0174】
(a)回収樹脂中の無機フィラーの含有量(灰分量)の測定は、回収樹脂のペレット約2g精秤し、磁器坩堝に入れて、電気炉にて800℃で樹脂成分がなくなるまで焼却後、室温まで冷却した後の磁器坩堝中の残渣量を灰分量として測定することができる。
【0175】
また、(a)回収樹脂(均一混合ペレット)の測定組成を踏まえてリサイクル樹脂組成物の特性に見合った材料組成を設計し、仕込み組成を決定する工程を行ってもよい。
【0176】
該工程において、目標とする材料の機械的特性、難燃性、寸法特性および耐熱性や流動特性などの特性に鑑み、知見を基に設計することができる。必要に応じ、トライアンドエラーを繰り返し、最終材料とする。
【0177】
第3工程は、ニーディングディスクを組み込んだスクリューを有する二軸押出機を用いて、目的とするリサイクル樹脂組成物を得る工程である。
【0178】
この際、押出機バレル前段では、第2工程で得られた(a)回収樹脂と(b)未使用のポリフェニレンエーテルとを前記二軸押出機トップの第1供給口から供給して混練し、バレル後段では、(c)未使用のスチレン系樹脂、(d)未使用の板状および/または鱗片状の無機フィラー、ならびに(e)未使用のリン系難燃剤を前記二軸押出機途中から供給して溶融混練し、冷却ストランドをペレタイザーで裁断してリサイクル樹脂組成物のペレットを回収する。
【0179】
二軸押出機は異方向回転、同方向回転のいずれでもよく、使用するスクリューにおいて、バレル前段のスクリュー構成は、ニーディングディスクとして正送りディスクと直行(位相角度90度)エレメントおよびまたは逆送りディスクを少なくとも各1個組み込んだ構成とすることが好ましく、バレル後段のスクリュー構成も前段同等のスクリュー構成とすることが好ましい。
【0180】
樹脂温度は、リサイクル樹脂組成物の組成、耐熱温度、無機フィラー含量によって変化するが、樹脂の熱分解、熱劣化の観点から好ましくは270〜370℃の範囲、より好ましくは280〜360℃の範囲である。スクリュー回転数および押出レートも樹脂温度を確認しながら適宜設定するが、一般的なスクリュー回転数は200〜600rpmの範囲であることが好ましい。押出レートは、押出機スケールによって異なる。
【0181】
[樹脂組成物の特性]
本実施形態のリサイクル樹脂組成物は、高度の寸法特性、機械特性、成形流動性、耐熱性に優れる。そして、本実施形態のリサイクル樹脂組成物は、有害なハロゲン系化合物やアンチモン化合物を用いずに優れた難燃性を有し、生産および使用上において環境面や安全衛生面に優れる。また、本実施形態のリサイクル樹脂組成物は、生産性もよく、厳しい射出成形条件下での金型汚染およびその付着物に基因した成形品の不具合がない。
【0182】
[成形品、用途]
本実施形態の成形品は、上述のリサイクル樹脂組成物を成形して得られる。
【0183】
上述のリサイクル樹脂組成物を成形する方法としては、従来ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が使用されていた公知の成形法が特に制限なく適用可能である。成形法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形などが挙げられるが、射出成形法がより好ましい。
【0184】
このような上述のリサイクル樹脂組成物を成形して得られる本実施形態の成形体は、従来無機フィラー含有m−PPEが使用されていた用途全般に使用可能であり、吸湿性、電気特性は勿論のこと、高度の寸法性、剛性、難燃性が要求される家電製品、情報処理関係機器および情報通信関係機器の内部機構部品用途、特にこれらのシャーシ用途に適する。
【0185】
具体的部品の用途例としては、テレビ内部部品、ACアダプター、電源ボックス、エアコン内部部品、オーティオ内部部品、モニター内部部品、CDやDVD等の各種記憶媒体ドライブ部品、プリンター内部部品、トナーカートリッジ、給紙用トレイ、スキャナーフレーム、携帯電話バッテリー、ゲーム機内部部品等が挙げられる。これらの中で特に好ましい用途は、情報処理機器用機構部品であり、例えば、各種機能を備えた大型複合プリンター、インクジェットプリンター、レーザービームプリンター、複写機、FAX等の事務機器におけるキャリッジ類、シャーシ類、ギア類、シャフト類、プーリー類等が挙げられる。その他には、コンピュータ、ゲーム機、音楽プレーヤー、ビデオプレーヤー、AV機器等における光ディスクドライブ(CD−ROM、CD−R、CD−RW、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、MD、MO)等のシャーシ類(ピックアップシャーシ、トラバースベース、サブシャーシ、ベースシャーシ等)、トレー類(ディスクトレー、チェンジャートレー等)、ギア類、シャフト類、プーリー類等が挙げられる。
【実施例】
【0186】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0187】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0188】
(a)回収樹脂
回収成形品からの回収樹脂(a)のモデルとして、以下の製造例1〜4により得られた回収樹脂(a−1)〜(a−4)を用いた。回収樹脂(a−1)〜(a−4)は、表1に示す組成にて、各成分を溶融混練して組成物ペレットを得て、得られた組成物ペレットを用いて成形し、その成形品(回収成形品)を粉砕した粉砕物とした。
【0189】
[製造例1〜4]
表1に示す組成にて、ウェルナー社製の二軸同方向回転押出機ZSK―25(スクリュー径25mm、サイドフィード装置付)を使用し、各成分を溶融混練して組成物ペレットを得た。
【0190】
具体的には、押出機のバレル温度を280〜300℃に設定し、ポリフェニレンエーテル(PPE)およびゴム変性ポリスチレン(HIPS)を、押出機トップの第1供給口から供給し、無機フィラーを押出機途中のサイドフィード装置から供給して溶融混練し、冷却ストランドをペレタイザーで裁断して組成物ペレットを得た。その際、全成分(PPE、HIPSおよび無機フィラー)の合計100質量部に対し、安定剤として酸化亜鉛を0.2質量部および(株)ADEKA製のアデカスタブPEP36を0.2質量部、カーボンブラック40質量%のポリスチレンマスターバッチ1質量部をHIPSとブレンドして添加した。押出機のバレル5のベント口は、約90kPaに真空吸引した。スクリュー回転数を300rpmとし、押出レートを15kg/hrとした。また、バレル前段のスクリュー構成は、ニーディングディスクとして正送りディスク、直行(位相角度90度)エレメントおよび逆送りディスクを各1個組み込んだ構成とし、無機フィラーをサイドフィードした後の後段のスクリュー構成は、正送りディスク、直行(位相角度90度)エレメントおよび逆送りスクリューを各1個組み込んだスクリュー構成とした。
【0191】
得られた各組成物ペレットから、加熱シリンダー温度280℃、金型温度80℃に設定した射出成形機を用いて、図1に示す成形品を各50個成形し、該成形品をモデル回収成形品とした。その成形品(モデル回収成形品)を、穴径約10mmφのスクリーンを有する粉砕機を用いて粉砕し、得られた粉砕物を回収樹脂(a−1)〜(a−4)とした。
【0192】
【表1】

[製造例5〜7]
更に、表2に示すとおり、回収樹脂(a−1)〜(a−4)を組み合わせてブレンドし、スクリュー系40mmの単軸押出機を用い、バレル設定温度280〜300℃、スクリュー回転数150rpm、押出レート15kg/hrで溶融混練して、回収樹脂ペレット(a−13、a−124、aー24)を得た。その回収樹脂ペレット(a−13、a−124、aー24)を実施例および比較例におけるリサイクル樹脂組成物の製造に用いた。
【0193】
【表2】

製造例で用いた成分(PPE、HIPSおよび無機フィラー)は、以下の実施例および比較例におけるリサイクル樹脂組成物の製造で用いた原材料と同一とした。
【0194】
(b)未使用のポリフェニレンエーテル(PPE)
ポリフェニレンエーテル(PPE)として、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルを使用した。該ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルは、0.5g/100mlクロロホルムでの還元粘度が30℃で0.51dl/gであった。
【0195】
(c)未使用のスチレン系樹脂(HIPS)
スチレン系樹脂(HIPS)として、ゴム変性ポリスチレンを使用した。
該ゴム変性ポリスチレンは、結合構造中のシス1,4結合構造単位が約98%のポリブタジエン12重量%を含有し、体積平均ゴム粒子径が1.5μmであり、マトリックスポリスチレンの30℃下で測定された、0.5g/100mlトルエン溶液での還元粘度が0.65dl/gであった。
【0196】
(d)未使用の板状または鱗片状無機フィラー
(1)板状無機フィラーとしての板状ガラス(GFL); 日本板硝子(株)製、アミノシランおよびウレタン樹脂で表面処理された板状ガラス、製品名 CEF150A。
【0197】
(2)鱗片状無機フィラーとしての鱗片状マイカ(Mica); (株)クラレ製、製品名 スゾライト・マイカ200KI。
【0198】
(3)板状無機フィラーとしての板状タルク(Talc); 竹原化学(株)製、製品名 ハイトロンA。
【0199】
(d’)繊維状無機フィラー
繊維状無機フィラーとしてのガラス繊維(GF); 日本電気硝子(株)製、アミノシランおよびウレタン樹脂で表面処理された、平均長さ約3mmのチョップドストランド、製品名 T−249。
【0200】
(e)未使用のリン系難燃剤
(1)BA−DP; 下記化学式(VII)においてN=1を主成分とするリン酸エステル化合物の混合物、大八化学工業(株)社製、製品名 CR741。
【0201】
【化11】

(2)BPh−DP; 下記化学式(VIII)においてN=1を主成分とするリン酸エステル化合物の混合物、(株)ADEKA製、製品名 アデカスタブFP−800。
【0202】
【化12】

(3)TPP; トリフェニルホスフェート、大八化学工業(株)社製、製品名 TPP。
【0203】
(4)PhA−Al; ホスフィン酸アルミニウム、クラリアント社製、製品名 Exolit OP1230。
【0204】
≪特性評価≫
得られた樹脂組成物の特性評価は、以下の方法および条件で行った。
【0205】
(1)灰分量の測定および繊維状無機フィラーの最大繊維長の確認
灰分量の測定は、以下のとおりとした。まず、組成物ペレットを約2g精秤し、磁器坩堝に入れて、電気炉にて800℃で樹脂成分がなくなるまで燃焼した。燃焼後、室温まで冷却した後の磁器坩堝中の残渣量を灰分量として測定した。
【0206】
得られた灰分(無機フィラー)を、ポリエチレングリコ−ルを用いてスライドグラス上に破損しないよう静かにのばし、これを光学顕微鏡下で観察して繊維状無機フィラーの繊維長を確認し、最大繊維長が0.5mm以上または0.3mm以上の繊維状無機フィラーの有無判定を行った。結果を表3に示す。
【0207】
(2)難燃性
UL−94垂直燃焼試験に基づき、樹脂組成物から作成した1.6mm厚みの射出成形試験片を用いて難燃性を測定し、難燃性レベルをランク付けした。難燃性のレベルは、V−0が最も優れ、V−1、V−2のランクになるにしたがって劣る。
【0208】
(3)成形収縮率
加熱シリンダー温度280℃、金型温度80℃に設定した型締め圧80トンの射出成形機を用いて、樹脂組成物から図2に示す平板を成形した。得られた平板について、MD方向およびTD方向の寸法を測定し、金型寸法に対する収縮割合(%)を評価した。
【0209】
(4)反りおよび反り変化量
成形収縮率を測定したものと同一条件で成形した平板を、金属定盤上に置き一角(固定点A)を固定し、他の3角(B,C,D)の反り量(浮き上がり高さ)を隙間ゲージにより測定した。各2枚の平板について測定して平均値を算出した。反り変化量は、下記エージング前の反り量(mm)と下記エージング後の反り量(mm)の差で表した。
〔エージング:上記平板を、温度60℃、相対湿度95%の恒温恒湿下で72時間放置後に、温度23℃、相対湿度50%下に2時間放置した。〕
(5)成形品外観
成形収縮率および反りを評価した平板を用いて、表面のフィラーの浮き(キラキラ感)を以下の判定基準で目視判定した。
○:キラキラ感が僅か。
△:キラキラ感が明らかに目立つ。
×:キラキラ感が酷く目立つ。
【0210】
(6)曲げ弾性率
加熱シリンダー温度280℃、金型温度80℃に設定した型締め圧80トンの射出成形機を用いて、樹脂組成物から試験片を作成し、該試験片について、ISO−178試験法に準じて曲げ弾性率を評価した。
【0211】
(7)流動性
樹脂組成物から127mm×12.7mm×厚み1.6mmのバーを成形する際のショートショット圧力(SSP: MPa)を実測した。SSP値が小さいほど流動性が優れることを意味する。
【0212】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
表2に示す組成にて、各成分を以下のとおり溶融混練してリサイクル樹脂組成物ペレットを得た。
【0213】
溶融混練機は、ウェルナー社製の二軸同方向回転押出機ZSK―25(スクリュー径25mm,バレル数10,L/D=約43、バレル6部位にサイドフィード装置付)を使用した。
【0214】
バレル前段のスクリュー構成は、バレル4部位にニーディングディスクとして正送りディスク、直行(位相角度90度)エレメントおよび逆送りディスクを各1個組み込み、バレル5の後部に逆送りスクリュー1個を組み込んだ構成とした。無機フィラーをサイドフィード後の後段のスクリュー構成は、バレル7から8部位に正送りディスク、直行(位相角度90度)エレメントおよび逆送りスクリューを各1個組み込み、難燃剤添加後にはミキシングスクリューを組み込んだスクリュー構成とした。
【0215】
バレル温度は、バレルNo.1は水冷、前段(バレルNo.2〜5)を300℃、後段(バレルNo.6〜10)およびダイ部を280℃に設定した。
【0216】
ここで、(a)回収樹脂、(b)未使用のPPE(粉体)および(c)未使用のHIPSは、バレル1の第1供給口から、(d)未使用の無機フィラーはバレル6の第2供給口からサイドフィードした。(e)未使用のリン系難燃剤のうち、常温で液状のBA−DPおよびBPh−DPはバレル9の注入口から約80℃に加温して圧入供給し、固体のTPPおよびPhA−Alは第1供給口から供給した。その際、全成分((a)〜(e))の合計100質量部に対し、安定剤として酸化亜鉛を0.2質量部および(株)ADEKA製のアデカスタブPEP36を0.2質量部、カーボンブラック40質量%のポリスチレンマスターバッチ1質量部を(c)HIPSとブレンドして添加した。
【0217】
バレル5部位のベント口は、約90kPaに真空吸引した。スクリュー回転数を300rpm、押出レートを15kg/hrとした。ダイ穴から押し出されたストランドを水浴で冷却しペレタイザーで裁断してリサイクル樹脂組成物ペレットを得た。
【0218】
得られたリサイクル樹脂組成物の特性を、前記評価方法により測定した。測定結果を表3に示す。
【0219】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明によれば、変性ポリフェニレンエーテル成型品を回収し、資源の有効利用を目的として変性ポリフェニレンエーテルのリサイクルに利用する。本発明のリサイクル樹脂組成物は、環境保護、資源の再利用の観点からも非常に有用である。また、本発明のリサイクル樹脂組成物は、高度の寸法特性、機械特性、成形流動性、耐熱性に優れ、さらに、有害なハロゲン系化合物やアンチモン化合物を用いずに優れた難燃性を有し、生産および使用上において環境面や安全衛生面に優れる。またさらに、本発明のリサイクル樹脂組成物は、生産性もよく、厳しい射出成形条件下での金型汚染およびその付着物に基因した成形品の不具合がない。
【0221】
本発明のリサイクル樹脂組成物から成形体を得る際には、従来ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が使用されていた公知の成形法を特に制限なく適用可能である。成形法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形などが挙げられるが射出成形法がより好ましい。
【0222】
このような本発明のリサイクル樹脂組成物から得られる成形体は、吸湿性、電気特性は勿論のこと、高度の寸法性、剛性、難燃性が要求される家電製品、情報処理関係機器および情報通信関係機器の内部機構部品用途、特にこれらのシャーシ用途に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)、(c)、(d)および(e)を溶融混練して得られ、
下記(d)の全てが板状および/または鱗片状の無機フィラーであり、
ポリフェニレンエーテルならびに板状および/または鱗片状無機フィラーを含有するリサイクル樹脂組成物;
(a)回収成形品を粉砕および/または溶融混練して得られ、ポリフェニレンエーテルと無機フィラーとを含有し、無機フィラーの含有量が5〜50質量%である回収樹脂 2〜50質量%、
(b)未使用のポリフェニレンエーテル 5〜50質量%、
(c)未使用のスチレン系樹脂 0〜40質量%、
(d)未使用の無機フィラー 5〜50質量%、
(e)未使用のリン系難燃剤 0〜30質量%。
【請求項2】
(a)回収樹脂が繊維状無機フィラーを含有し、かつ
リサイクル樹脂組成物中の繊維状無機フィラーの最大繊維長が0.5mm未満である請求項1に記載のリサイクル樹脂組成物。
【請求項3】
リサイクル樹脂組成物中の(a)回収樹脂の含有量が5〜30質量%である請求項1または2に記載のリサイクル樹脂組成物。
【請求項4】
(a)回収樹脂がさらにスチレン系樹脂を含有し、(a)回収樹脂中のポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との質量比(ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂)が30/70〜90/10であり、
リサイクル樹脂組成物中の(b)ポリフェニレンエーテルと(c)スチレン系樹脂との質量比((b)/(c))が20/80〜90/10である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物。
【請求項5】
リサイクル樹脂組成物中の全無機フィラーの含有量が10〜50質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物。
【請求項6】
(d)未使用の無機フィラーが、板状または鱗片状の、ガラス、マイカ、タルクおよびクロライトからなる群より選択される1種以上である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物。
【請求項7】
(e)未使用のリン系難燃剤が、下記一般式(I)で表されるリン酸エステルである請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物。
【化1】

[式(I)中、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、フェニル基または炭素原子数1〜6のアルキル基で1〜3個置換されたアリール基であり、さらにヒドロキシル基で置換されたアリール基でもよく、
Xは、アリーレン基であり、
Nは、1〜30の整数であり、
nは、それぞれ独立して、0または1である。]
【請求項8】
(e)未使用のリン系難燃剤が、下記一般式(II)で表されるリン酸エステルである請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物。
【化2】

[式(II)中、
Aは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、フェニル基または炭素原子数1〜6のアルキル基で1〜3個置換されたアリール基であり、さらにヒドロキシル基で置換されたアリール基でもよく、
xおよびyは、それぞれ独立して0、1、2、3または4であり、
nは、それぞれ独立して、0または1であり、
Nは、1〜30の整数である。]
【請求項9】
(e)未使用のリン系難燃剤が、下式(III)で表されるホスフィン酸塩、下式(IV)で表されるジホスフィン酸塩およびこれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物。
【化3】

【化4】

[式(III)、(IV)中、
5およびR6は、それぞれ独立して、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C6−アルキル、アリールまたはフェニルであり、
7は、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレンまたはC6〜C10−アリールアルキレンであり、
Mは、カルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)およびプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上であり、
mは、2または3であり、
qは、1〜3の整数であり、
zは、1または2である。]
【請求項10】
(a)回収樹脂が、家電製品、OA機器、E&E機器および情報通信関係機器の内部部品からなる群より選択される1種以上の回収成形品を粉砕および/または溶融混練して得られる回収樹脂である請求項1乃至9のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物。
【請求項11】
以下の第1工程〜第3工程を含む請求項1乃至10のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物の製造方法;
回収成形品を粉砕する第1工程、
第1工程で得られた回収成形品の粉砕物をブレンドし、押出機により溶融混練して均一混合ペレットとして(a)回収樹脂を得る第2工程、
ニーディングディスクを組み込んだスクリューを有する二軸押出機を用いて、第2工程で得られた(a)回収樹脂と(b)未使用のポリフェニレンエーテルとを前記二軸押出機トップの第1供給口から供給し、(c)未使用のスチレン系樹脂、(d)未使用の板状および/または鱗片状の無機フィラー、ならびに(e)未使用のリン系難燃剤を前記二軸押出機途中から供給して溶融混練し、ペレットとしてリサイクル樹脂組成物を得る第3工程。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のリサイクル樹脂組成物を成形して得られる成形品。
【請求項13】
家電製品、情報処理関係機器または情報通信関係機器の内部機構部品である請求項12に記載の成形品。
【請求項14】
家電製品、情報処理関係機器または情報通信関係機器のシャーシ部品である請求項12記載の成形品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−251039(P2012−251039A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123372(P2011−123372)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】