説明

リサイクル熱可塑性樹脂組成物

熱可塑性樹脂組成物は、回収ポリ(アリーレンエーテル)、当該熱可塑性樹脂組成物の加工処理温度での揮発分放出量が10質量%以上の第2の回収熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.1重量%以下、ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド及びこれらの2種以上の樹脂の組合せからなる群から選択される第3の回収熱可塑性樹脂を当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.025〜4.0重量%(ただし、上記第3の回収熱可塑性樹脂の2種以上の組合せの存在量は当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10重量%以下)、及び任意のバージン熱可塑性樹脂を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収ポリ(アリーレンエーテル)を含むリサイクル熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、広範な品物の製造に有用な材料として重要性を増している。以前から、廃棄物を低減するとともに貴重な天然資源を保存するため熱可塑性樹脂のリサイクルが極めて望ましいことが認識されている。熱可塑性樹脂のリサイクルは、多種多様な熱可塑性樹脂が使用されていてそれらの分離が難しいこともあって、困難な課題である。そのため、リサイクル熱可塑性樹脂は他の熱可塑性樹脂で汚染されていることが多く、リサイクル熱可塑性樹脂が適する用途範囲がバージン熱可塑性樹脂よりも狭いことが多い。この問題は、同じタイプの熱可塑性樹脂にも、物性が大きく異なる広範なグレードと種類が存在することによって一段と複雑になる。また、相溶性であるはずの何種類かの熱可塑性樹脂の混合は、添加剤の存在のためうまくいかない。
【0003】
この問題の一つの解決策は、リサイクル流の組成のバラツキがごく限られるように、利用可能な材料を細かく仕分けしたものにリサイクル材料を限定することである。別の解決策は性能特性が限られた混合製品を提供することである。こうした製品は、材料に対する要求が非常に低い用途に限定されることになる。これらの解決策は利用できる原料又は性能特性の低いリサイクルブレンドの販路のいずれかの点で大きな制約を受ける。
【特許文献1】米国特許第3093621号明細書
【特許文献2】米国特許第3211709号明細書
【特許文献3】米国特許第3646168号明細書
【特許文献4】米国特許第3790519号明細書
【特許文献5】米国特許第3884993号明細書
【特許文献6】米国特許第3894999号明細書
【特許文献7】米国特許第4059654号明細書
【特許文献8】米国特許第4166055号明細書
【特許文献9】米国特許第4584334号明細書
【特許文献10】米国特許第5772041号明細書
【特許文献11】米国特許第5894996号明細書
【特許文献12】米国特許第5951940号明細書
【特許文献13】米国特許第6274637号明細書
【特許文献14】米国特許第6426474号明細書
【特許文献15】米国特許第6522149号明細書
【特許文献16】米国特許第6588597号明細書
【特許文献17】米国特許第2933480号明細書
【特許文献18】国際公開第03/087215号パンフレット
【特許文献19】特開2003−112156号公報
【非特許文献1】Liang,et al.“The Effect of Risidual Impurities on the Rheological and Mechanical Properties of Engineering Polymers Separated from Mixed Plastics” SPE 59th ANTEC held on May 6−10,2001.5 pages
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、用途範囲の拡大したリサイクル熱可塑性樹脂含有を含む熱可塑性樹脂組成物に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、回収ポリ(アリーレンエーテル)を含むリサイクル熱可塑性樹脂組成物について開示する。一実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は、
回収ポリ(アリーレンエーテル)、
熱可塑性樹脂組成物の加工処理温度での揮発分放出量が第2の回収熱可塑性樹脂の総重量を基準にして10質量%以上の第2の回収熱可塑性樹脂:熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.1重量%以下、及び
ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド及びこれらの2種以上の樹脂の組合せからなる群から選択される第3の回収熱可塑性樹脂:当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.025〜4.0重量%(ただし、上記第3の回収熱可塑性樹脂の2種以上の組合せの存在量は当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10重量%以下)
を含む。
【0006】
別の実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は、
回収ポリ(アリーレンエーテル):熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして30〜80重量%、
熱可塑性樹脂組成物の加工処理温度での揮発分放出量が第2の回収熱可塑性樹脂の総重量を基準にして10質量%以上の第2の回収熱可塑性樹脂:熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.1重量%以下、
ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド及びこれらの2種以上の樹脂の組合せからなる群から選択される第3の回収熱可塑性樹脂:当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.025〜4.0重量%(ただし、上記第3の回収熱可塑性樹脂の2種以上の組合せの存在量は当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10重量%以下)、及び
バージン熱可塑性樹脂
を含む。
【0007】
上記その他の特徴について、以下の図及び詳細な説明によって例証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
熱可塑性樹脂組成物は、
回収ポリ(アリーレンエーテル)、
熱可塑性樹脂組成物の加工処理温度での揮発分放出量が10質量%以上の第2の回収熱可塑性樹脂:熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.1重量%以下、
ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド及びこれらの2種以上の樹脂の組合せからなる群から選択される第3の回収熱可塑性樹脂:当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.025〜4.0重量%(ただし、上記第3の回収熱可塑性樹脂の2種以上の組合せの存在量は当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10重量%以下)、及び
任意成分としてバージン熱可塑性樹脂
を含む。
【0009】
本明細書に開示したすべての範囲は包括的で組合せ可能である(例えば、「25重量%以下、具体的には5〜20重量%」という範囲は、「5〜25重量%」の範囲の上下限を含むとともにあらゆる中間値も含む)。本明細書における「第1」、「第2」などの用語は順序、数量又は重要性を意味するものではなく、ある構成要素を他のものから区別するために用いられ、本明細書に単数形で記載したものは、数量を限定するものではなく、そのものが1以上存在することを意味する。
【0010】
回収ポリ(アリーレンエーテル)は、第2の回収熱可塑性樹脂及び/又は第3の回収熱可塑性樹脂の量よりも多量に存在する。回収ポリ(アリーレンエーテル)は、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして30〜80重量%の量で存在し得る。この範囲内で、回収ポリ(アリーレンエーテル)は、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして30重量%以上、具体的には35重量%以上、さらに具体的には40重量%以上の量で存在し得る。同じく上記範囲内で、回収ポリ(アリーレンエーテル)は、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして70重量%以下、具体的には65重量%以下、さらに具体的には60重量%以下の量で存在し得る。
【0011】
熱可塑性樹脂組成物は1種以上のバージン熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。本明細書でいうバージン熱可塑性樹脂からは、最終用途部品に使用されたことがあるポリマー及びポリマーブレンドは除外される。バージン熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10〜95重量%の量で熱可塑性樹脂組成物に存在し得る。この範囲内で、バージン熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして20重量%以上、具体的には40重量%以上、さらに具体的には50重量%以上の量で存在し得る。同じく上記範囲内で、バージン熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして90重量%以下、具体的には80重量%以下の量で存在し得る。バージン熱可塑性樹脂は回収ポリ(アリーレンエーテル)と相溶性の熱可塑性樹脂からなる。本明細書で用いる相溶性とは、回収ポリ(アリーレンエーテル)と混和性であるか或いは回収ポリ(アリーレンエーテル)と相互作用して望ましい特性を有する熱可塑性樹脂組成物を与えるものと定義される。実施形態によっては、ガラス繊維を配合することによって回収ポリ(アリーレンエーテル)とバージン熱可塑性樹脂との相溶性を高めることができる。場合によっては、ガラス繊維は、通常は非相溶性である2種類の熱可塑性樹脂のブレンディングを可能にして相溶化剤として作用し得る。適当なバージン熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリスチレンのようなポリ(アルケニル芳香族)ポリマー、ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンやポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンのようなポリ(アルケニル芳香族)ブロックコポリマー、並びにこれらのバージン熱可塑性樹脂2種以上の組合せが挙げられる。
【0012】
1種以上の第2の回収熱可塑性樹脂の上記量は、プラスチックリサイクル技術の観点からするとかなり幅広いが、驚くべきことに、所望の物性を保持しつつ広範な用途に組成物を使用することができるようになる。以下に説明するように、組成物によっては、その組成及び目的とする最終用途に応じて、様々なレベルの第2の回収熱可塑性樹脂及び/又は追加の熱可塑性樹脂又は夾雑物を含有し得る。
【0013】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)、ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー又はこれらのポリマーの組合せを含む熱可塑性樹脂組成物は、バージンポリマーの代用として又はこれに追加して使用しても十分な物性を組成物が保持できる熱可塑性樹脂及び金属夾雑物の許容レベルに関して著しい類似性を有している。理論に束縛されるものではないが、加工処理温度、分解 温度、末端基の反応性、溶融挙動及び熱分解挙動における類似性が夾雑物の許容レベルに関する類似性の原因であると考えられる。
【0014】
熱可塑性樹脂組成物の加工処理温度で10質量%以上の揮発分を放出する第2の回収熱可塑性樹脂は、回収ポリ(アリーレンエーテル)を含む組成物には極めて望ましくない回収熱可塑性樹脂である。加工処理温度は回収ポリ(アリーレンエーテル)の軟化温度以上と定義される。
【0015】
第2の回収熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリウレタン及びこれらの2種以上の組合せが挙げられる。これらのポリマー又はこれらのポリマーの組合せの量は、回収ポリ(アリーレンエーテル)の種類を問わず、組成物の総重量を基準にして0.1重量%を超えてはならない。一実施形態では、第2の回収熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.05重量%以下の量で存在する。第2の回収熱可塑性樹脂は不安定で、ポリ(アリーレンエーテル)に用いられる加工処理温度で分解する。分解生成物は押出装置又は成形装置、周囲の環境及び/又は熱可塑性樹脂組成物に悪影響を与えかねない。
【0016】
第3の回収熱可塑性樹脂は一般に回収ポリ(アリーレンエーテル)とは非混和性である。こうした非混和性のため、量が増すと第3の回収熱可塑性樹脂の大きなドメインを生じて組成物の機械的特性及び表面外観に影響を与えるおそれがある。影響を受ける可能性のある機械的特性としては、ガラス転移温度、メルトフロー、加工性及びこれらの1以上の特性を含む組合せが挙げられる。実際、場合によっては、多量の第3の回収熱可塑性樹脂が加工処理装置のある箇所(典型的には流れの乱れる領域又は流動性の低い領域)に堆積し、これが周期的に取れて、製品の一貫性に悪影響を与えることがある。
【0017】
なお、第3の回収熱可塑性樹脂は、組成物の総重量を基準にして、個々に0.025〜4.0重量%の量で存在し得る。この範囲内で、第3の回収熱可塑性樹脂は、各々、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.05〜2重量%、具体的には0.1〜1.0重量%の量で存在し得る。第3の回収熱可塑性樹脂の組合せは、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして、10重量%以下、具体的には9重量%以下、さらに具体的には8重量%以下の量で存在し得る。
【0018】
第3の回収熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド、ポリアミド及びこれらの2種以上の樹脂の組合せが挙げられる。
【0019】
回収熱可塑性樹脂としてポリ(アリーレンエーテル)を含む熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)系組成物、特にポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)ポリマーブレンドに利用される。本明細書で用いる回収ポリ(アリーレンエーテル)とは、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリスチレンブレンド、相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンド、相溶化及び非相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/ポリオレフィンブレンド、並びにこれらの2種以上の樹脂の組合せを包含して意味する。
【0020】
熱可塑性樹脂組成物は、さらに、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10ppm以下の、鉄、銅、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される金属を含んでいてもよい。一実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は、さらに、熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして5ppm以下の、カドミウム、水銀、鉛及びこれらの2種以上の金属の組合せからなる群から選択される金属を含む。「金属」という用語には、イオン性金属種と非イオン性金属種が共に包含される。
【0021】
回収ポリ(アリーレンエーテル)は、寿命の尽きた部品、製造スクラップなど、並びにこれらの1種以上を含む組合せから回収し得る。耐用年数の尽きた製品及び/又は製造スクラップは収集センターに集められる。こうした部品は手作業及び/又は粉砕によって分解され、貴重な金属が回収されることもある。残った非金属性部分は主にプラスチックであり、残留金属、紙、発泡材料などを除去するためにさらに処理される。収集センターでは、部品の種類、地理、消耗部品の年数など、さらにこれらの組合せのような様々な評価基準を用いてプラスチックを予め選別してもよい。収集センターは、種類の異なる熱可塑性樹脂を分離するため以下の分離技術又は予備選別と分離技術の組合せを用いてもよい

【0022】
各々の種類の熱可塑性樹脂は、比重と静電特性のような独特な物性の組合せを有しており、これをプラスチック分離の基礎とすることができる。典型的な回収プロセスは、空気分離、磁気分離、渦電流分離、色選別、比重分離、静電分離、これらの2種以上の方法の組合せを含む。多くの回収プロセスでは、非金属性部材はかなり均一な粒度の粒子へと粉砕される。回収プロセスの例は、米国特許第5772041号、同第5894996号、同第6522149号、同第6426474号、同第5951940号、及び同第6588597号に記載されている。こうした分離段階の幾つか又は全てを繰返すことによって、材料の純度を高めることができる。段階の数が多いと、通例、処理コスト及び材料コストが増す。
【0023】
回収ポリ(アリーレンエーテル)には、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリ(アリーレンエーテル)コポリマー、グラフトコポリマー、ポリ(アリーレンエーテル)エーテルアイオノマー、アルケニル芳香族化合物やビニル芳香族化合物などとのブロックコポリマー、並びにこれらの1種以上を含む組合せが包含される。ポリ(アリーレンエーテル)は次の式(I)の構造単位を複数含んでなる公知のポリマーである。
【0024】
【化1】

式中、各構造単位において、各Q及びQは独立に水素、ハロゲン、第一又は第二低級アルキル(例えば炭素原子数7以下のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、或いはハロゲン原子と酸素原子とが2以上の炭素原子で隔てられたハロ炭化水素オキシなどである。好ましくは、各Qはアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキル基であり、各Qは水素である。
【0025】
ホモポリマー及びコポリマーのポリ(アリーレンエーテル)が共に包含される。好ましいホモポリマーは2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位からなるものである。適当なコポリマーには、かかる単位を例えば2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むランダムコポリマー或いは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合で得られるコポリマーがある。また、ビニルモノマー又はポリスチレンのようなポリマーをグラフトして得られる部分を含むポリ(アリーレンエーテル)、並びに低分子量ポリカーボネートやキノンや複素環式化合物やホルマールのようなカップリング剤を公知の方法で2本のポリ(アリーレンエーテル)鎖のヒドロキシ基と反応させてさらに高分子量のポリマーとしたカップリング化ポリ(アリーレンエーテル)も挙げられる。ポリ(アリーレンエーテル)には、これらの1種以上を含む組合せも包含される。
【0026】
ポリ(アリーレンエーテル)は、単分散ポリスチレン標準、40℃のスチレンジビニルベンゼンゲル及びクロロホルム中濃度1mg/mlのサンプルを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、3000〜40000g/molの数平均分子量及び/又は5000〜80000g/molの重量平均分子量を有する。ポリ(アリーレンエーテル)は、25℃のクロロホルム中で測定して、0.10〜0.60dl/g、具体的には0.29〜0.48dl/gの固有粘度を有する。固有粘度の高いポリ(アリーレンエーテル)と固有粘度の低いポリ(アリーレンエーテル)を組合せて使用してもよい。2つの固有粘度を用いるときの正確な比率の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的物性にある程度依存する。
【0027】
ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノール及び/又は2,3,6−トリメチルフェノールのような1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングによって製造できる。かかる酸化カップリングには概して触媒系が用いられるが、触媒系は通例、銅、マンガン又はコバルト化合物のような1種類以上の重金属化合物を通常は第二アミン、第三アミン、ハロゲン化物又はそれらの組合せのような他の様々な物質と共に含んでいる。
【0028】
ポリオレフィンは一般式C2nのもので、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンが挙げられ、好ましいホモポリマーはポリエチレン、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)及びMDPE(中密度ポリエチレン)並びにアイソタクチックポリプロピレンである。この一般構造のポリオレフィン樹脂及びその製造方法は当技術分野で周知であり、例えば米国特許第2933480号、同第3093621号、同第3211709号、同第3646168号、同第3790519号、同第3884993号、同第3894999号、同第4059654号、同第4166055号及び同第4584334号に記載されている。
【0029】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)グラフトコポリマーは、組成の異なる2以上のポリマー部分が化学結合したものを含む。グラフトコポリマーは好ましくは、アルケニル芳香族繰返し単位と、ブタジエンのような共役ジエン又は別の共役ジエンの重合で得られる単位とを含むポリマー骨格を有する。ポリマー骨格は1種以上、好ましくは2種のグラフト化モノマーを有しており、ポリマー骨格の存在下で重合させてグラフトコポリマーを得る。
【0030】
ポリマー骨格は好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレンのような共役ジエンポリマー、又はブタジエン−スチレン、ブタジエン−アクリロニトリルなどのコポリマーである。
【0031】
グラフトコポリマーのポリマー骨格の製造に常用される共役ジエンモノマーは次の式(XIII)で表される。
【0032】
【化2】

式中、Xは水素、C〜Cアルキル、塩素、臭素などである。使用し得る共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−及び2,4−ヘキサジエン、ジクロロブタジエン、ブロモブタジエン、ジブロモブタジエンのようなクロロ及びブロモ置換ブタジエン、これらの共役ジエンモノマーを1種以上含む混合物などである。好ましい共役ジエンモノマーはブタジエンである。
【0033】
ポリマー骨格の存在下で重合し得る1種又は1群のモノマーはモノビニル芳香族炭化水素である。利用されるモノビニル芳香族モノマーは次の式(XIV)で表される。
【0034】
【化3】

式中、Xは水素、C〜C12アルキル(シクロアルキルを含む)、C〜C12アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12アリールオキシ、塩素、臭素などである。モノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ−クロロスチレン、これらの化合物を1種以上含む混合物などが挙げられる。好ましいモノビニル芳香族モノマーはスチレン及び/又はα−メチルスチレンである。
【0035】
ポリマー骨格の存在下で重合できる第2の群のモノマーは、アクリロニトリル、並びにメタクリル酸メチルのようなC〜Cアルキルアクリレートなどで例示されるアクリロニトリル、置換アクリロニトリル及び/又はアクリル酸エステルのようなアクリルモノマーである。
【0036】
アクリロニトリル、置換アクリロニトリル又はアクリル酸エステルは次の式(XV)で表される。
【0037】
【化4】

式中、Xは上記で定義した通りであり、Yはシアノ、C〜C12アルコキシカルボニルなどである。かかるモノマーの例としては、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、β−ブロモアクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、これらのモノマーを1種以上含む混合物などが挙げられる。好ましいモノマーには、アクリロニトリル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルがある。
【0038】
適宜、ポリマー骨格は、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、これらの1種以上含む混合物などの重合生成物のようなアクリレートゴムであってもよい。また、マトリックスポリマーとのグラフト化を向上させるため少量のジエンをアクリレートゴム骨格中に共重合してもよい。
【0039】
ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(メタクリル樹脂としても知られる)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート/ABSブレンド、並びにポリカーボネート/ポリエステルは周知のポリマーであり、その性状は当業者に周知である。
【実施例】
【0040】
以下の非限定的な実施例によって本組成物をさらに例示する。
【0041】
ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)と耐衝撃性ポリスチレンと難燃剤の市販ブレンド(GE Advanced Materials社製のNORYL N190X)を、表2及び表3に示す追加の成分と共に溶融ブレンドした。表1に、実施例で用いた追加の成分をまとめて示す。ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン及びポリウレタンはN190Xの総重量を基準にして0.5重量%の量で存在していた。ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマーブレンド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートブレンド、ポリメチルメタクリレート及びポリアミドはN190Xの総重量を基準にして5重量%の量で存在してた。
【0042】
溶融ブレンド後、組成物を適宜試験サンプルに射出成形し、ASTM 790に準拠してモジュラス、降伏応力、降伏歪み、破断応力及び破断歪み、ASTM D256に準拠して衝撃強さ(ノッチ付アイゾット、NIIと略す。)、ASTM D648に準拠して1.8MPaでの加熱撓み温度(HDT)、ASTM D 1238に準拠して280℃、荷重5kgでのメルトボリュームレート(MVR)を試験した。これらの実施例の試験値を、NORYL N190Xで実施した同じ試験の3回の試験値の平均と比較して、その絶対差を表2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

以上の実施例から明らかな通り、0.5重量%のポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン又はポリウレタンを含む組成物は、ベース樹脂と物性の変動が20%を超えていた。物性の20%の変動は、そのベース樹脂が用いられる多くの用途での使用に適さなくなるのに十分であろう。
【0046】
上記の実施例は、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートブレンドのような第3の熱可塑性樹脂が4〜5重量%混入したときの効果を示す。各例で、ベース樹脂に比べ1つの物性又は2つの物性の組合せが15%以上変化している。物性が20%以上変化すると、材料は多くの用途に適さなくなるおそれがある。実施形態によっては、2つの物性の合計15%の変化で、ある用途での組成物の適性に悪影響を与えるおそれがある。
【0047】
また、上記の実施例では、金属及び金属化合物の混入の効果も示している。金属化合物が少量でも混入すると、組成物の物性に顕著な効果を与えかねない。各実施例では、2つの物性の合計15%の変化及び/又は単一の物性の20%以上の変化を示している。上述の通り、この程度の変化で材料は多くの用途に適さなくなるおそれがある。
【0048】
ポリ(アリーレンエーテル)を含むリサイクル熱可塑性樹脂組成物に上記のポリマーが単独又は組合せて存在すると、リサイクル熱可塑性樹脂組成物の物性に影響を生じるおそれがあり、そのため熱可塑性樹脂リサイクル業界では、通常はバージン樹脂が用いられる用途にリサイクル熱可塑性樹脂を役立てるにはその純度が極めて高くなくてはならないと一般に考えられている。こうした通説に反して、リサイクル熱可塑性樹脂は、副次的な樹脂をかなり高レベルで含んでいてもよく、それでもバージン材料と実質的に同じ物性プロフィールを保持する。
【0049】
以上、代表的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更をなすことができ、本発明の構成要素を均等物で置換できることは当業者には明らかであろう。さらに、本発明の本質的範囲から逸脱せずに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正をなすことができる。本発明は本発明を実施するための最良の形態として本明細書に開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物であって、
回収ポリ(アリーレンエーテル)、
当該熱可塑性樹脂組成物の加工処理温度での揮発分放出量が10質量%以上の第2の回収熱可塑性樹脂:当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.1重量%以下、及び
ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド及びこれらの2種以上の樹脂の組合せからなる群から選択される第3の回収熱可塑性樹脂:当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.025〜4.0重量%(ただし、上記第3の回収熱可塑性樹脂の2種以上の組合せの存在量は当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10重量%以下)
を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリ(アリーレンエーテル)が当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして30〜80重量%の量で存在する、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
当該組成物がさらにバージン熱可塑性樹脂を含む、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記バージン熱可塑性樹脂が当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10〜95重量%の量で存在する、請求項3記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
第2の回収熱可塑性樹脂の存在量が当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.05重量%以下である、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
第2の回収熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリウレタン及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
第3の回収熱可塑性樹脂の存在量が当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.1〜1重量%である、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
当該組成物がさらに、当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10ppm以下の、鉄、銅、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される金属を含む、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
当該熱可塑性樹脂組成物が、当該組成物の総重量を基準にして5ppm以下の、カドミウム、水銀、鉛及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される金属を含む、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
回収ポリ(アリーレンエーテル):当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして30〜80重量%、
当該熱可塑性樹脂組成物の加工処理温度での揮発分放出量が10質量%以上の第2の回収熱可塑性樹脂:当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.1重量%以下、
ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート/ポリエステルブレンド及びこれらの2種以上の樹脂の組合せからなる群から選択される第3の回収熱可塑性樹脂:当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.025〜4.0重量%(ただし、上記第3の回収熱可塑性樹脂の2種以上の組合せの存在量は当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10重量%以下)、及び
バージン熱可塑性樹脂
を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記バージン熱可塑性樹脂が当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10〜95重量%の量で存在する、請求項10記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
第2の回収熱可塑性樹脂の存在量が当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.05重量%以下である、請求項10記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
第2の回収熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリウレタン及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される、請求項10記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
第3の回収熱可塑性樹脂の存在量が当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして0.1〜1重量%である、請求項10記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
当該組成物がさらに、当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準にして10ppm以下の、鉄、銅、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される金属を含む、請求項10記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項16】
熱可塑性樹脂組成物が、当該組成物の総重量を基準にして5ppm以下の、カドミウム、水銀、鉛及びこれらの2種以上の組合せからなる群から選択される金属を含む、請求項10記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公表番号】特表2007−533795(P2007−533795A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507501(P2007−507501)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/011788
【国際公開番号】WO2005/100477
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】