説明

リサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物及び成形品並びにリサイクル方法

【課題】優れた紫外線吸収特性を有し、100%リサイクルが可能なリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物及び成形品と、そのリサイクル方法を提供する。
【解決手段】スチレン系樹脂に、Ni、Mn、Mg及びCoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む異種金属含有酸化亜鉛微粒子とヒンダードアミン系光安定剤を配合してなる熱可塑性樹脂組成物よりなるリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。スチレン系樹脂に、無機紫外線吸収剤であるCo含有酸化亜鉛微粒子等の異種金属含有酸化亜鉛微粒子を配合すると共に、ヒンダードアミン系光安定剤を配合することにより、異種金属含有酸化亜鉛微粒子により優れた紫外線吸収特性が付与されると共に、ヒンダードアミン系光安定剤により、リサイクル時のスチレン系樹脂の分解、劣化が防止され、良好なリサイクル性が付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた紫外線吸収特性を有したリサイクル用熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
本発明はまた、このリサイクル用熱可塑性樹脂成形品を成形原料としてリサイクルする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ABS樹脂やASA樹脂等の熱可塑性樹脂は、成形加工性、機械的強度、耐候性などに優れており、車輌内外装材料や電子部品のハウジングなど幅広い分野に使用されている。
【0003】
しかし、近年、資源保護及び環境保護活動が活発になり、廃棄物の削減、資源の有効利用の観点から、熱可塑性樹脂のリサイクル性に対する要求が高まっている。
【0004】
熱可塑性樹脂をリサイクルする際の重要なポイントは、リサイクル後の物性保持と外観保持である。
しかしながら、熱可塑性樹脂成形品をリサイクルする際、廃棄樹脂製品を回収、粉砕、ペレット化し、再び成形する過程で、熱可塑性樹脂は劣化し、リサイクル前の性能を維持することは困難であった。
【0005】
これに対して、近年、リサイクル前の性能を維持するために、リサイクル材と同種のバージン材を一定量加えたブレンド品が、リサイクルプラスチックとして広く使用されるようになってきた。例えば、特許文献1には、未使用の熱可塑性樹脂と再生熱可塑性樹脂とを用いた多層成形法によって、リサイクル材の使用比率の向上が可能となったとされている。しかしながら、特許文献1には、リサイクル材を100%使用する手法は記載されていない。
【0006】
また、熱可塑性樹脂は、その特性向上、機能性付与を目的として様々な添加剤が配合された熱可塑性樹脂組成物として用いられているが、リサイクルを繰り返すことにより、これらの添加剤についても性能が低下する。
【0007】
例えば、熱可塑性樹脂には、耐候性の向上を目的として、紫外線吸収剤が配合されるが、有機系の紫外線吸収剤は、リサイクル時の加熱溶融の段階で、分解、昇華が進み、耐候性能が著しく低下する。
【0008】
一方、無機系の紫外線吸収剤であれば、有機系の紫外線吸収剤のように分解、昇華等の問題はないが、通常、無機系の紫外線吸収剤は表面に光活性触媒が担持されているため、熱可塑性樹脂と混練した時に、樹脂の酸化等の反応を引き起こし、熱可塑性樹脂の分解、劣化を促進させるため、樹脂の変色や機械的強度の低下を招き、リサイクルには不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−159897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、紫外線吸収剤を含むことにより優れた紫外線吸収特性を有し、しかも100%リサイクルが可能なリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物及び成形品と、そのリサイクル方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、スチレン系樹脂に、無機紫外線吸収剤であるコバルト含有酸化亜鉛微粒子等の異種金属含有酸化亜鉛微粒子を配合すると共に、ヒンダードアミン系光安定剤を配合することにより、異種金属含有酸化亜鉛微粒子により優れた紫外線吸収特性が付与されると共に、ヒンダードアミン系光安定剤により、リサイクル時の熱可塑性樹脂の分解、劣化が防止され、良好なリサイクル性が付与されることを見出した。
【0012】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0013】
[1] スチレン系樹脂に、ニッケル、マンガン、マグネシウム及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む異種金属含有酸化亜鉛微粒子と、ヒンダードアミン系光安定剤とを配合してなる熱可塑性樹脂組成物よりなることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【0014】
[2] [1]において、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子がコバルト含有酸化亜鉛微粒子であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【0015】
[3] [2]において、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子は前記金属元素を0.01〜10mol%含むことを特徴するリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【0016】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【0017】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子の含有量がスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【0018】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量がスチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【0019】
[7] [1]ないし[6]のいずれかにおいて、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子とヒンダードアミン系光安定剤の割合が重量比で異種金属含有酸化亜鉛微粒子:ヒンダードアミン系光安定剤=1:0.1〜50であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【0020】
[8] [1]ないし[7]のいずれかに記載のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物を成形してなるリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品。
【0021】
[9] [8]に記載のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品を粉砕及びペレット化して得られることを特徴とするリサイクル材料。
【0022】
[10] [8]に記載のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品の粉砕物を成形原料として用いることを特徴とするリサイクル方法。
【0023】
[11] [10]において、前記成形原料中の樹脂成分として、前記粉砕物のみを用いることを特徴とするリサイクル方法。
【0024】
[12] [10]又は[11]のリサイクル方法により得られたことを特徴とするリサイクル成形品。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スチレン系樹脂に、コバルト含有酸化亜鉛微粒子等の異種金属含有酸化亜鉛微粒子とヒンダードアミン系光安定剤を配合することにより、優れた紫外線吸収特性を有し、かつリサイクル時の紫外線吸収剤による樹脂の分解、劣化の問題がなく、100%リサイクル可能な熱可塑性樹脂組成物が提供され、この熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品を回収、粉砕、ペレット化して成形原料として用いることにより、リサイクル前の成形品に対して物性や特性が大きく損なわれることのないリサイクル成形品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、以下において、「(共)重合」とは「重合」と「共重合」の一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」の一方又は双方を意味するものとする。
【0027】
[リサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物]
本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂に異種金属含有酸化亜鉛微粒子とヒンダードアミン系光安定剤を配合してなるものである。
【0028】
<スチレン系樹脂>
本発明において使用されるスチレン系樹脂は、ゴム質重合体の存在下で、芳香族ビニル化合物、或いは芳香族ビニル化合物および芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系単量体とからなる単量体成分を(共)重合したゴム強化スチレン系(共)重合体;芳香族ビニル化合物、或いは芳香族ビニル化合物および他のビニル系単量体からなる単量体成分を(共)重合したスチレン系(共)重合体;上記ゴム強化スチレン系(共)重合体とスチレン系(共)重合体との混合物;が挙げられる。
【0029】
ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、シリコーン系ゴム、アクリルゴム、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化ブタジエン系重合体、エチレン系アイオノマーなどが挙げられ、特にポリブタジエン、アクリルゴムが好ましい。これらのゴム質重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0030】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0031】
また、他のビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミノアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミノメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などの不飽和酸;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物;グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエーテル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレンなどのアミノ基含有不飽和化合物;3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレンなどの水酸基含有不飽和化合物;ビニルオキサゾリンなどのオキサゾリン基含有不飽和化合物などが挙げられ、特にアクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。これらの他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0032】
本発明のスチレン系樹脂としては、具体例には、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、AS樹脂、MS樹脂などが挙げられる。
【0033】
本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物には、これらのスチレン系樹脂の1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0034】
なお、スチレン系樹脂に異種金属含有酸化亜鉛微粒子とヒンダードアミン系光安定剤を配合して本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物を製造する際のスチレン系樹脂としては、100重量%をバージン材料として用いることが好ましい。
【0035】
<異種金属含有酸化亜鉛微粒子>
本発明で用いる異種金属含有酸化亜鉛微粒子は、ニッケル、マンガン、マグネシウム及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、この金属元素を「活性元素」と称す場合がある。)を含む酸化亜鉛微粒子である。異種金属含有酸化亜鉛微粒子に含まれる活性元素として、特に紫外線吸収特性の面からCoが好ましい。
【0036】
本発明で用いる異種金属含有酸化亜鉛微粒子の製造方法については、特に制限はないが、例えば、次のような方法が挙げられる。
即ち、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等の亜鉛原料と、ニッケル、マンガン、マグネシウム、コバルトの、カルボン酸塩や、塩化物、硝酸塩などの活性元素原料と、高沸点のアルコール系溶媒に溶解させて均一溶液としたものを加熱して異種金属含有酸化亜鉛微粒子を析出させる。亜鉛原料としては、中でも酢酸亜鉛・2水和物が好ましく、活性元素原料としては塩化物が好ましい。
【0037】
高沸点のアルコール系溶媒とは、常圧において異種金属含有酸化亜鉛微粒子の生成に必要な温度より高い沸点を有するものであり、140℃以上、さらに好適には200℃以上の沸点を有するアルコール系溶媒が望ましい。高沸点のアルコール系溶媒の種類は限定されないが、ジエチレングリコールなどのグリコール系溶媒が好適である。
【0038】
このような方法により酸化亜鉛微粒子にコバルト等の活性元素を固溶(ドープ)させた異種金属含有酸化亜鉛微粒子を得ることができる。
【0039】
このような異種金属含有酸化亜鉛微粒子中のコバルト等の活性元素の含有量は、優れた紫外線吸収特性を確保するために0.01mol%以上であることが好ましい。この含有量の上限は特に限定されないが、10mol%以下であれば、異種金属含有酸化亜鉛微粒子の着色を抑え、スチレン系樹脂に分散させた際にスチレン系樹脂の着色を防止することができるため好ましい。
【0040】
また、コバルト含有酸化亜鉛微粒子等の異種金属含有酸化亜鉛微粒子の平均粒子径は、100nm以下であることが、スチレン系樹脂への分散性に優れることから好ましく、この平均粒子径はより好ましくは50nm以下、例えば10〜50nmである。
【0041】
なお、コバルト含有酸化亜鉛微粒子等の異種金属含有酸化亜鉛微粒子は、1種のみを用いてもよく、活性元素の種類や含有量、平均粒子径が異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0042】
<ヒンダードアミン系光安定剤>
本発明で用いるヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジンオン)、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、1,2,3,4−ブタンカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン2,4,−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物が挙げられ、特にビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物が望ましい。これらのヒンダードアミン系光安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0043】
<配合量>
本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物において、コバルト含有酸化亜鉛微粒子等の異種金属含有酸化亜鉛微粒子の含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部、特に0.1〜0.5重量部であることが好ましい。異種金属含有酸化亜鉛微粒子の含有量が上記下限以上であることにより、優れた紫外線吸収特性を得ることができ、上記上限以下であることにより、リサイクル時の樹脂の分解、劣化を防止してリサイクル性を高めることができる。
【0044】
また、ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部、特に0.1〜2.0重量部、とりわけ0.1〜1.0重量部であることが好ましい。
【0045】
なお、本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物中の異種金属含有酸化亜鉛微粒子とヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、上記範囲において、重量比で異種金属含有酸化亜鉛微粒子:ヒンダードアミン系光安定剤=1:0.1〜50であることが、ヒンダードアミン系光安定剤の含有量を過度に多くすることなく、異種金属含有酸化亜鉛微粒子によるリサイクル時の樹脂の分解、劣化を有効に防止する上で好ましい。特に、異種金属含有酸化亜鉛微粒子:ヒンダードアミン系光安定剤(重量比)=1:1〜5であることが好ましい。
【0046】
<その他の成分>
本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物においては、上記のスチレン系樹脂、異種金属含有酸化亜鉛微粒子及びヒンダードアミン系光安定剤以外に、さらに酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、改質剤等の公知の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲において添加することができる。
【0047】
<製造方法>
本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に従って製造することができ、例えば、スチレン系樹脂、異種金属含有酸化亜鉛微粒子及びヒンダードアミン系光安定剤、更に必要に応じて添加されるその他の添加剤の所定量を混合し、押出機、バンバリーミキサー、混練ロール等により混練することにより、容易に製造することができる。
【0048】
[リサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品]
本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品は、上述の本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、その成形方法には特に制限はなく、公知の各種成形方法を採用することができる。
【0049】
[リサイクル方法]
本発明のリサイクル方法は、上述の本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品を粉砕し、粉砕物を通常の樹脂のリサイクル方法に従ってペレット化して本発明のリサイクル材料を得、これを成形原料として再度所望の形状に成形して本発明のリサイクル成形品を得るものであり、本発明によれば、その優れたリサイクル性により、少なくとも樹脂成分の成形原料として上記粉砕物のみを用いて、従って、バージン材料を全く用いることなく、リサイクル前の成形品に対して物性や特性において遜色のないリサイクル成形品を得ることができる。
【0050】
本発明のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物は、その優れたリサイクル性により、100%リサイクル材料を用いて1回以上、例えば1〜5回ものリサイクルを行うことが可能である。
【0051】
なお、本発明が適用される成形品には特に制限はなく、本発明は、食品容器、文房具、雑貨、自動車部品、家電製品、OA機器、機械部品など幅広い分野の成形品に適用することができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
<実施例1,2>
スチレン系樹脂として、ASA樹脂(UMG ABS(株)製「S310」)を用い、コバルト含有酸化亜鉛微粒子(東罐マテリアル・テクノロジー(株)製「42−950A」、Co含有量:1mol%、平均粒子径:50nm)と、ヒンダードアミン系光安定剤(三共ライフテック(株)製「サノールLS−770」(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート))を表1に示す割合で配合した。
【0054】
<比較例1,2>
実施例1,2で用いたものと同様のスチレン系樹脂とヒンダードアミン系光安定剤を用い、コバルト含有酸化亜鉛微粒子の代りに有機系紫外線吸収剤(城北化学工業(株)製「JF−77」(2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール))を表2に示す割合で配合した。
【0055】
<成形>
各混合物を2軸押出機でバレル温度を230℃にて溶融混練し、ダイスから吐出したストランドを切断して成形用ペレットを得た。この成形用ペレットを用い、射出成形機により厚さ3mmのプラスチックプレート(以下、「バージンプラスチックプレート」と称す。)を成形した。
【0056】
<リサイクル試験>
リサイクル試験としては、上記成形用ペレットを原料とし、2軸押出機でバレル温度230℃にて、5回繰り返し混練し、リサイクルペレットを得た。このリサイクルペレットを用い、射出成形機により厚さ3mmのプラスチックプレート(以下、「リサイクルプラスチックプレート」と称す。)を成形した。
【0057】
<評価>
上記のバージンプラスチックプレートとリサイクルプラスチックプレートについて、それぞれサンシャインウェザーメータ(スガ試験機製)で1000時間までの促進耐候試験を行った。照射時間終了後、それぞれ分光測色計(ミノルタ製)にて色差(ΔE)を測定し、以下の式で色差維持率を算出した。結果を表1,2に示す。
【0058】
【数1】

A:バージンプラスチックプレートの色差(ΔE)
B:リサイクルプラスチックプレートの色差(ΔE)
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
以上の結果より次のことが明らかである。
有機系紫外線吸収剤を使用した表2の比較例1,2では、リサイクル後の色差維持率が大きく低下しているのに対して、表1の実施例1,2のスチレン系樹脂にコバルト含有酸化亜鉛微粒子とヒンダードアミン系光安定剤を配合してなる本発明の組成物は、リサイクルを5回実施しても、色差維持率が100%であり、リサイクル前の紫外線吸収特性を維持しており、リサイクル性に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂に、ニッケル、マンガン、マグネシウム及びコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む異種金属含有酸化亜鉛微粒子と、ヒンダードアミン系光安定剤とを配合してなる熱可塑性樹脂組成物よりなることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1において、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子がコバルト含有酸化亜鉛微粒子であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2において、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子は前記金属元素を0.01〜10mol%含むことを特徴するリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子の含有量がスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量がスチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記異種金属含有酸化亜鉛微粒子とヒンダードアミン系光安定剤の割合が重量比で異種金属含有酸化亜鉛微粒子:ヒンダードアミン系光安定剤=1:0.1〜50であることを特徴とするリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂組成物を成形してなるリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品。
【請求項9】
請求項8に記載のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品を粉砕及びペレット化して得られることを特徴とするリサイクル材料。
【請求項10】
請求項8に記載のリサイクル用紫外線吸収性熱可塑性樹脂成形品の粉砕物を成形原料として用いることを特徴とするリサイクル方法。
【請求項11】
請求項10において、前記成形原料中の樹脂成分として、前記粉砕物のみを用いることを特徴とするリサイクル方法。
【請求項12】
請求項10又は11のリサイクル方法により得られたことを特徴とするリサイクル成形品。

【公開番号】特開2012−46597(P2012−46597A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188457(P2010−188457)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(502163421)ユーエムジー・エービーエス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】