説明

リザーバ

【課題】小型化が可能で、かつ、弁体の開閉動作を確実に行うことが可能なリザーバを提供する。
【解決手段】シャフト支持孔を構成する大径油路216aにおけるシャフト231の挿通部分の軸線とピストン部22の中心軸とをオフセットさせる。これにより、調圧リザーバ20をポンプ10等と隣接して配置させる際に、調圧リザーバ20をポンプ10等との干渉を避けつつ、よりこれらに近づけることが可能となる。また、チェック弁21の開閉動作を行うためのシャフト231をピストン部22とは別体とし、大径油路216aの内周面にてシャフト231を保持しつつ往復動可能に案内する構造とする。これにより、ピストン部22がチェック弁21から離れる方向に移動させられた際に周方向に回転したとしても、ピストン部22が再びチェック弁21側に戻された時に、シャフト231と大径油路216aとの位置ズレが生じないようにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバ室への流体の流入路の開閉を可変とする弁体を有し、この弁体をシャフトによって移動させることで流入路を開閉するリザーバに関するものであり、例えば、車両のABS制御(アンチスキッド制御)等のブレーキ液圧制御においてホイールシリンダ内のブレーキ液が流動させられる調圧リザーバに適用すると好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1、2などにおいて、調圧リザーバ(スイッチリザーバ)を用いてABS制御を行う車両用ブレーキ装置が開示されている。図6は、特許文献1に示される従来の調圧リザーバの断面図である。
【0003】
図6に示される調圧リザーバでは、ピストン100に圧入されたシャフト101における大径部101aがシートバルブ102の下面102aに接触し、ピストン100の上面100bがハウジング103のうちリザーバ室104を構成する壁面の上端面105と接触しないような構成としている。これにより、シートバルブ102の下面102aに接触するシャフト101における大径部101aよりも上の部分、つまりシャフト101の小径部101bの軸方向のサイズのみによってボール弁106のリフト量が設定されるようにしている。したがって、シャフト101をピストン100と一体化する際にバラツキが生じたり、ボール弁106、シートバルブ102およびフィルタ構成部品107などによるユニットをリザーバ孔108内にカシメ固定する際にバラツキが生じても、そのバラツキをキャンセルすることが可能となり、ボール弁106のリフト量の管理が容易に行える調圧リザーバとすることができる。
【0004】
このように構成された調圧リザーバでは、常用ブレーキ時(ABS制御等のブレーキ液圧制御の非作動時)に、ピストン100に圧入されたシャフト101がスプリング109の弾性力によって押し上げられるため、ボール弁106がシートバルブ102から離間させられ、開弁状態となる。そして、ブレーキ液圧制御が実行されてリザーバ室104内に所定量のブレーキ液が流動すると、ピストン100と共にシャフト101が下がることでボール弁106がシートバルブ102に接する。このため、ピストン100が下死点に達しないようにリザーバ室104内にブレーキ液が流入することを防ぐことができる。このとき、ピストン100に対してシャフト101が同軸上に配置されて一体化されていることから、ピストン100と同軸上に固定されたシートバルブ102やボール弁106等で構成されるチェック弁とシャフト101との位置が一致し、位置ズレすることなくチェック弁の開弁動作を行うことができる。
【0005】
また、特許文献2に開示されている調圧リザーバも、特許文献1と同様、ピストンに対してシャフトが同軸上に配置されて一体化された構造とされている。このため、ハウジングの開口部内においてピストンと同軸上に固定したチェック弁とシャフトとの位置が一致し、位置ズレすることなくチェック弁の開弁動作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−151362号公報
【特許文献2】特開2008−7080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リザーバ室にて収容できるブレーキ液量、つまりリザーバ容量を大きくする場合、ピストン径を拡大するか、もしくはピストンのストロークを長くする必要が有り、それに合せてハウジングを大きくしなければならない。特に、ピストン径を大きくしなければならない場合、上記特許文献1、2に示される調圧リザーバでは、ピストンとシャフトとが同軸構造とされているため、ピストン径の拡大に伴ってハウジングの必要肉厚確保のためにハウジングの厚みを増やさなければならないという問題が発生する。これについて、図7および図8を用いて説明する。
【0008】
図7は、調圧リザーバ110をポンプ111の近傍に配置する場合の上面レイアウトおよび正面レイアウトを示している。図8は、調圧リザーバ110を電磁弁112の近傍に配置する場合の上面レイアウトおよび正面レイアウトを示している。図7および図8に示されるように、調圧リザーバ110は、チェック弁110aとピストン部110bとが円柱状に形成され、これらが同心軸上に配置される。そして、図7に示すように、調圧リザーバ110をポンプ111の近傍に配置する場合には、調圧リザーバ110のチェック弁110aとポンプ111とを同じ高さにすることで、ハウジング113のうちポンプ111が配置される箇所の空きスペースに調圧リザーバ110を配置することができる。また、図8に示すように、調圧リザーバ110を電磁弁112の近傍に配置する場合にも、調圧リザーバ110のチェック弁110aと電磁弁112とを同じ高さにすることで、ハウジング113のうち電磁弁112が配置される箇所の空きスペースに調圧リザーバ110を配置することができる。
【0009】
ここで、調圧リザーバ110のリザーバ容量を大きくする前の状態では図7および図8中の破線で示したレイアウトとなり、ハウジング113を寸法Aとすれば、このレイアウトに見合った必要肉厚が確保される。これに対して、調圧リザーバ110のピストン径を広げてリザーバ容量を大きくすると、ハウジング113の体格をそのままにしたのでは必要肉厚が得られなくなる。このため、リザーバ容量を大きくする前の状態の寸法Aから一点差線で示した寸法A’にハウジング113の厚みを増やさなければならなくなる。
【0010】
これを回避するためには、図9や図10に示すように、調圧リザーバ110の中心軸に対してチェック弁110aの中心軸をオフセットさせ、調圧リザーバ110のうちのピストン部110bがよりポンプ111や電磁弁112の方に入り込む構造となるようにすることが考えられる。このようにすれば、図中破線で示したオフセットしていない場合に必要肉厚が確保できる寸法A’に対して、それよりも小さな寸法Bにハウジング113の厚みを薄肉化できる。
【0011】
ところが、ピストン部110bの中心軸に対してチェック弁110aの中心軸をオフセットさせた場合、例えばブレーキ液圧制御の作動などによってピストンおよびシャフトが下降してチェック弁110aよりも下方に至った時にピストンが周方向に回転させられると、シャフトとチェック弁とに周方向の位置ズレが生じる。これにより、シャフトによってチェック弁の開閉動作を行うことができなくなるため、このような構造を採用することはできない。
【0012】
なお、ここでは、ABS制御に用いられる調圧リザーバを例に挙げて説明したが、リザーバ室への流体の流入路の開閉を可変とする弁体を有し、この弁体をシャフトによって移動させることで流入路を開閉するリザーバ全般について、上記の問題が発生する。
【0013】
本発明は上記点に鑑みて、より小型化が可能で、かつ、弁体の開閉動作を確実に行うことが可能なリザーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、シャフト(231)とピストン部(22)とを別体にて構成し、シャフト(231)はシャフト支持孔(216a)内にて往復動可能に支持され、シャフト支持孔(216a)におけるシャフト(231)の挿通部分は、その軸線がピストン部(22)の中心軸からオフセットさせて配置されていることを特徴としている。
【0015】
このように、シャフト支持孔(216a)におけるシャフト(231)の挿通部分の軸線とピストン部(22)の中心軸とをオフセットさせて配置している。このため、リザーバをポンプや各種制御弁等と隣接して配置させる際に、リザーバをポンプや各種制御弁等との干渉を避けつつ、よりこれらに近づけることが可能となる。これにより、ハウジング(40)の厚みを増やさなくても、ハウジング(40)のうちリザーバの外周壁を構成している部分の厚みを必要肉厚確保することができる。
【0016】
そして、シャフト(231)がピストン部(22)とは別体とされ、シャフト支持孔(216a)内にて往復動可能に支持される構造としている。このため、リザーバ室(20C)内に流体が流入してピストン部(22)が弁体(211〜213)から離れる方向に移動させられても、シャフト(231)がシャフト支持孔(216a)内に保持され、シャフト(231)がシャフト支持孔(216a)から離されることはない。これにより、ピストン部(22)が弁体(211〜213)から離れる方向に移動させられた際に周方向に回転したとしても、ピストン部(22)が再び弁体(211〜213)側に戻された時に、シャフト(231)とシャフト支持孔(216a)との周方向の位置ズレが生じないようにできる。したがって、この後もシャフト(231)によって弁体(211〜213)を移動させることが可能となり、小型化が可能で、かつ、弁体(211〜213)の移動を確実に行うことが可能な構成のリザーバとすることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、ピストン部(22)とシャフト(231)との間には、リザーバ室(20C)内と、ピストン部(22)を挟んでリザーバ室(20C)の反対側に位置する背室(40b)内との間の差圧に基づいて変位することにより、弁体(211〜213)までの距離を変化させる可動部(232、233)を有し、可動部はダイアフラム(233)を有し、該ダイアフラム(233)がリザーバ室(20C)内と背室(40b)内との間の差圧を受けて変形することで、シャフト(231)を移動させることを特徴としている。
【0018】
このように、ダイアフラム(233)を介してシャフト(231)を移動させる構造とすれば、ダイアフラム(233)の弾性によってシャフト(231)からピストン部(22)への偏荷重伝達が緩和される。つまり、ピストン部(22)への荷重伝達エリアが広がり、偏荷重の影響が小さくなる。また、弾性によってシャフト(231)に作用する径方向の力が緩和され、シャフト(231)のこじりが生じ難くなるようにできる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、可動部は、ダイアフラム(233)の変形に伴ってシャフト(231)を移動させるプレート(232)を有し、ピストン部(22)は、プレート(232)およびダイアフラム(233)のシャフト方向への移動量を規制するストッパ(225)を備え、ストッパ(225)は、ダイアフラム(233)の外縁部を固定するリング状部材であり、該リング状部材の内周面から中心方向に向かって突出させられた鍔部(225a)にてプレートのシャフト方向への移動量を規制し、該鍔部(225a)の先端が、シャフト(231)のピストン部(22)側の端部(231e)に当接して該シャフト(231)を案内する案内面(225b)を構成していることを特徴としている。
【0020】
このように、ストッパ(225)の鍔部(225a)の先端がシャフト(231)のピストン部(22)側の端部(231e)に当接して該シャフト(231)を案内する案内面(225b)を構成するようにすれば、シャフト(231)とシャフト支持孔(216a)との隙間によってシャフト(231)が傾倒することを抑制することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、ピストン部(22)はシャフト(231)のピストン部(22)側の端部(231e)に当接して該シャフト(231)を案内する案内面(225b)を備えることを特徴としている。
【0022】
このように、ピストン部(22)にシャフト(231)のピストン部(22)側の端部(231e)に当接してシャフト(231)を案内する案内面(225b)を備えることができる。これにより、シャフト(231)とシャフト支持孔(216a)との隙間によってシャフト(231)が傾倒することを抑制することが可能となる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、案内面(225b)は、弁体(211〜213)側を臨むテーパ面(225c)を有していることを特徴としている。
【0024】
このように、案内面(225b)にテーパ面(225c)を設けることにより、シャフト(231)が案内面(225b)の先端位置に案内され、シャフト(231)の引っ掛かりを防止できる。このため、ピストン部(22)およびストッパ(225)などが通常位置に戻ろうとするときに、より円滑に戻ることが可能となる。
【0025】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる調圧リザーバ20を適用したブレーキ装置の配管概略図である。
【図2】調圧リザーバ20の断面図である。
【図3】(a)は、シャフト231の上面図、(b)は、シャフト231の斜視図である。
【図4(a)】常用ブレーキ時の調圧リザーバ20の作動を表した断面図である。
【図4(b)】調圧時の調圧リザーバ20の作動を表した断面図である。
【図4(c)】自吸時の調圧リザーバ20の作動を表した断面図である。
【図4(d)】ABS制御時の調圧リザーバ20の作動を表した断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる調圧リザーバ20の断面図である。
【図6】従来の調圧リザーバの断面図である。
【図7】調圧リザーバ110をポンプ111の近傍に配置する場合の上面レイアウトおよび正面レイアウトを示す模式図である。
【図8】調圧リザーバ110を電磁弁112の近傍に配置する場合の上面レイアウトおよび正面レイアウトを示す模式図である。
【図9】調圧リザーバ110のチェック弁110aをピストン部110bに対してオフセットさせる場合の上面レイアウトおよび正面レイアウトを示す模式図である。
【図10】調圧リザーバ110のチェック弁110aをピストン部110bに対してオフセットさせる場合の上面レイアウトおよび正面レイアウトを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0028】
(第1実施形態)
図1に、本発明の一実施形態にかかる調圧リザーバを適用したブレーキ装置の配管概略図を示す。この図を参照して、本実施形態のブレーキ装置の基本構成について説明する。ただし、図1では調圧リザーバについては簡略化してあり、本発明の特徴部分については図示していないため、特徴部分については後述する図2を参照して説明する。なお、ここでは、右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の油圧回路を構成する車両に対して本実施形態にかかるブレーキ装置を適用した場合について説明する。
【0029】
図1に示すように、車両に制動力を加える際に乗員によって踏み込まれるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル1は倍力装置2と接続され、この倍力装置2によりブレーキペダル1に加えられた踏力が倍力される。
【0030】
そして、倍力装置2は、倍力された踏力をマスタシリンダ(以下、M/Cという)3に伝達するプッシュロッド等を有しており、このプッシュロッドがM/C3に配設されたマスタピストンを押圧することによりM/C圧を発生させる。
【0031】
なお、このM/C3には、M/C3内にブレーキ液を供給したり、M/C3内の余剰ブレーキ液を貯留するマスタリザーバ3aが接続されている。
【0032】
M/C圧は、ABSアクチュエータを介して各車輪のホイールシリンダ(以下、W/Cという)4、5へ伝達される。なお、図1では、右前輪FR用のW/C4及び左後輪RL用のW/C5に繋がる第1の配管系統のみを図示してあるが、左前輪FL及び右後輪RR側に繋がる第2の配管系統についても第1の配管系統と同様の構造とされている。以下の説明は、右前輪FR及び左後輪RL側について説明するが、第2の配管系統である左前輪FL及び右後輪RR側についても全く同様である。
【0033】
また、ブレーキ装置は、M/C3に接続された管路(主管路)Aを備えている。管路Aには差圧制御弁7が備えられており、この差圧制御弁7の位置で管路Aが2部位に分けられている。具体的には、管路Aは、M/C3から差圧制御弁7までの間においてM/C圧を受ける管路A1と、差圧制御弁7から各W/C4、5までの間の管路A2に分けられている。
【0034】
差圧制御弁7は、連通状態と差圧状態を制御するものである。差圧制御弁7は通常連通状態とされているが、この差圧制御弁7を差圧状態にすることによりW/C4、5側をM/C3側よりも所定の差圧分高い圧力に保持することができる。
【0035】
さらに、管路A2において、管路Aは2つに分岐しており、一方にはW/C4へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁30が備えられ、他方にはW/C5へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁31が備えられている。
【0036】
これら増圧制御弁30、31は、図示しないブレーキ液圧制御用の電子制御装置(以下、ECUという)により連通・遮断状態を制御できる2位置弁として構成されている。2位置弁が連通状態に制御されているときには、M/C圧や後述するポンプ10の吐出等に基づくブレーキ液圧を各W/C4、5に加えることができる。これら増圧制御弁30、31は、ABS制御等のブレーキ液圧制御が実行されていない常用ブレーキ時には、常時連通状態にされている。
【0037】
また、管路Aのうちの増圧制御弁30、31と各W/C4、5との間に管路Bが接続されており、この管路Bが調圧リザーバ20のリザーバ孔20Bに接続されている。そして、管路Bを通じて調圧リザーバ20へブレーキ液を流動させることにより、W/C4、5におけるブレーキ液圧を制御し、各車輪がロック傾向に至るのを防止できるように構成されている。なお、この調圧リザーバ20の詳細については後述する。
【0038】
また、管路Bには、ECUにより連通・遮断状態を制御できる減圧制御弁32、33が配設されている。これらの減圧制御弁32、33は常用ブレーキ時には常時遮断状態とされており、上述した調圧リザーバ20へブレーキ液を流動させる際に適宜連通状態とされる。
【0039】
管路Aのうち差圧制御弁7と増圧制御弁30、31との間には、管路Cが接続されており、この管路Cを通じて管路Aと調圧リザーバ20のリザーバ孔20Bとが結ばれている。管路Cには、ポンプ10がチェック弁10a、10bと共に配設されていると共に、ポンプ10が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために、管路Cのうちのポンプ10の下流側にアキュムレータ12が配設されている。そして、リザーバ孔20AとM/C3とを接続するように管路Dが設けられており、ポンプ10はこの管路Dと調圧リザーバ20を介して管路A1のブレーキ液を汲み取り、管路Bの一部および管路Cを通じて管路A2へ吐出してW/C圧を増圧させるようになっている。
【0040】
次に、上述した調圧リザーバ20の構成について、図2に調圧リザーバ20の具体的な断面構成を示して説明する。
【0041】
調圧リザーバ20は、ABSアクチュエータの外形をなすハウジング40に内蔵されており、ハウジング40に形成された凹部40aの内壁面によってリザーバ孔20A、20Bおよびリザーバ室20Cが構成されている。
【0042】
リザーバ孔20Aは、ハウジング40に形成した中空部によって構成され、M/C3に接続されており、M/C圧と同等の圧力となる流入管路としての管路Dからブレーキ液の流動を受ける。リザーバ孔20Bは、ハウジング40に形成したリザーバ孔20Aよりも大径の中空部によって構成され、流出管路としての管路B、Cとリザーバ室20Cを接続する。リザーバ室20Cは、ハウジング40のうちリザーバ孔20Bを構成する壁面や後述するピストン本体221等によって区画され、リザーバ孔20Aもしくはリザーバ孔20Bを通じて流動してきたブレーキ液を蓄え、リザーバ孔20Bを通じて送り出す部屋である。ここで、管路B、C、Dは、リザーバ室20Cに連通される「液流路」を構成する。
【0043】
具体的には、ハウジング40の一面からリザーバ孔20Bが形成されており、ハウジング40のうちリザーバ室20Cを構成する壁面の上端面20Dからリザーバ孔20Aが形成されている。これらリザーバ孔20Aおよびリザーバ孔20Bは、ハウジング40対して円柱形状の凹部を形成することにより構成されており、本実施形態では、リザーバ孔20Aの中心線とリザーバ孔20Bの中心線とがオフセットさせられるように形成されている。
【0044】
リザーバ孔20Aには、チェック弁21が備えられている。チェック弁21は、バルブ211、ボール弁212、ピン213、フィルタ構成部品214、スプリング215およびシートバルブ216を有した構成とされている。
【0045】
バルブ211は、鉄系金属等で構成され、ボール弁212およびピン213と共に、後述するようにシートバルブ216に形成されている大径油路216aの開閉を行う弁体を構成する。また、バルブ211は、シートバルブ216の大径油路216aの閉弁時にシートバルブ216の大径油路216aよりも小径なブレーキ液流動経路を構成する。具体的には、バルブ211は、円筒形状で構成されており、その軸線上にブレーキ液流動経路となる中空部211aが形成されている。
【0046】
中空部211aは、シートバルブ216側に向かって徐々にブレーキ液流動経路が小さくなる段付形状とされている。この中空部211aのうち最もシートバルブ216側が大径油路216aよりも小径(通路面積が小さい)の第1油路を構成する小径油路211bとなる。また、中空部211aのうち、小径油路211bよりもシートバルブ216と反対側において小径油路211bよりも大径とされた第1収容部211cにボール弁212が配置され、さらにそれよりも大径とされた第2収容部211dにピン213が配置されている。小径油路211bと第1収容部211cとの境界部はボール弁212が離着するテーパ状のシート面となっている。
【0047】
ボール弁212は、鉄径金属等で構成され、第1収容部211cよりも小径かつ小径油路211bよりも大径で構成されている。このボール弁212がバルブ211のシート面に離着することにより小径油路211bの開閉が行われる。
【0048】
ピン213は、鉄系金属等で構成され、ボール弁212をバルブ211内に保持するためのものである。このピン213によりボール弁212がバルブ211内に保持され、常用ブレーキ時にはボール弁212により小径油路211bが閉じられる。
【0049】
本実施形態では、ピン213をバルブ211の内周面に圧入することで、バルブ211と一体化した構造としている。そして、ピン213の先端がバルブ211の段付部分に接触することでピン213がバルブ211に位置決めされた状態で固定されている。また、ピン213は、一端にフランジが形成された円柱形状を為しており、1箇所もしくは複数箇所に軸線方向に延設された連通路213aが形成された形状とされている。この連通路213aを通じてブレーキ液が流動させらることにより、ブレーキ流動経路が確保されている。
【0050】
さらに、ピン213のうちバルブ211への挿入方向の先端には、ボール弁212が収容される凹部213bが形成されている。この凹部213bの深さは、ボール弁212がバルブ211のシート面に着座した状態のときにはボール弁212が凹部213bの底面から離れるように設定されている。尚かつ、凹部213bの深さは、ボール弁212がシャフト231に押されてシート面から離れる方向に移動するときのリフト量が、シャフト231の後述する十字形状部231cとバルブ211との間の距離よりも小さくなるように設定されている。
【0051】
このため、通常時にはボール弁212がバルブ211のシート面に着座して小径油路211bを塞ぎ、ブレーキ液流動経路を閉じているが、ピストン部22がリザーバ室20C内の容量を減少させる側に移動させられたときには、ボール弁212がシャフト231に押されてシート面から離れる。そして、十字形状部231cとバルブ211との間よりもボール弁212のリフト量の方が小さくされているため、十字形状部231cとバルブ211が接触せずにボール弁212が凹部213bの底面に接する。したがって、シャフト231からボール弁212に加えられる紙面上側の力に基づき、ピン213がスプリング215の弾性力に抗して紙面上方に移動させられる。これにより、ピン213と一体化されたバルブ211も共に移動させられ、大径油路216aを開くことができる。
【0052】
フィルタ構成部品214は、金属または樹脂等で構成され、円形状の底面部214aに対して六本の柱状の部材214bを等間隔に配置すると共に、柱状の部材214bの周囲をメッシュ状のフィルタ(図示せず)で囲むことによって構成されており、全体的に見れば略コップ形状を為している。
【0053】
スプリング215は、ピン213とフィルタ構成部品214との間に配置され、弾性力によってピン213およびバルブ211をシートバルブ216側に付勢している。
【0054】
シートバルブ216は、鉄系金属等からなる中空状部材で構成され、その中空部により構成された大径油路216aを備えた構造とされている。この大径油路216aが流体としてブレーキ液をリザーバ室20C内に流入するための流入路(液流路)を構成しており、その内部にシャフト231が挿通され、その内周面によってシャフト231を保持しつつ往復動可能に案内する。すなわち、流入路(液流路)を構成する大径油路216aはシャフト231を支持するシャフト支持孔としても機能する。
【0055】
シートバルブ216のうちフィルタ構成部品214側の先端部の外径はフィルタ構成部品214の開口部分の内径に対して同等または若干大きくされている。そして、フィルタ構成部品214内にバルブ211、ボール弁212、ピン213およびスプリング215を収容したのち、フィルタ構成部品214の開口部分にシートバルブ216を圧入することで、これら各部品が一体化され、ユニット化されたチェック弁21が構成されている。また、シートバルブ216の外周面は段付き形状にされており、フィルタ構成部品214と反対側の先端位置において外径が最も大きくされている。この外径はリザーバ孔20Aを構成する中空部の入口側の内径よりも大きくされている。このため、リザーバ孔20Aを構成する中空部内にフィルタ構成部品214などと共にシートバルブ216を挿入することにより、シートバルブ216のうち最も外径が大きな部分によってハウジング40の一部がかしめられることで、ハウジング40内にチェック弁21が保持されている。
【0056】
なお、シートバルブ216の外周面には、当該外周面を一周する環状溝216bが形成されており、この環状溝216b内にハウジング40の一部が入り込むことで、ハウジング40内にチェック弁21を強固に保持できるようにされている。
【0057】
一方、リザーバ孔20Bには、ピストン部22および弁開閉機構部23が備えられている。
【0058】
ピストン部22は、ピストン本体221、Oリング222、スプリング223、カバー224およびストッパ225を有した構成とされている。
【0059】
ピストン本体221は、樹脂等で構成されている。このピストン本体221は、リザーバ孔20Bの内壁面を紙面上下方向に摺動するように構成されている。このピストン本体221における中央位置に弁開閉機構部23が配置されている。具体的には、ピストン本体221は仕切壁部221aが備えられた円筒形状で構成されており、仕切壁部221aよりもチェック弁21側を収容部として弁開閉機構部23が収容されている。また、仕切壁部221aの中央位置には連通孔221bが備えられ、背室40b内の圧力(大気圧)が弁開閉機構部23内へ伝えられる。
【0060】
Oリング222は、ピストン本体221の外周面に備えられている。ピストン本体221のうちOリング222が配置される部位には環状溝221cが備えられており、この環状溝221c内にOリング222が嵌め込まれている。
【0061】
スプリング223は、ピストン本体221とカバー224との間に配置され、ピストン本体221の仕切壁部221aと接触することでピストン本体221をチェック弁21側、つまりリザーバ室20Cの容量を減少させる方向に付勢している。
【0062】
カバー224は、スプリング223を受け止める役割を果たす。このカバー224は、ハウジング40の中空部の入口にかしめ固定されている。なお、図2では図示されていないが、カバー224の所望位置には大気導入孔が備えられ、ピストン本体221とカバー224の間に構成される背室40b内が大気圧に保たれるようにしている。
【0063】
ストッパ225は、樹脂もしくは鉄系金属などで構成されたリング状部材であり、ピストン本体221を支持部材として支持されている。ストッパ225はダイアフラム233の外縁部をピストン本体221側に押えることで固定する役割と、プレート232の紙面上方側(シャフト方向)への移動を規制する役割を果たす。ストッパ225は、ピストン本体221の内周面におけるチェック弁21側の先端位置に引っ掛けられるようになっており、ダイアフラム233およびプレート232を配置した状態でストッパ225をピストン本体221内に圧入することで、ピストン本体221内にダイアフラム233およびプレート232と共にストッパ225がスナップフットにより固定されている。そして、ストッパ225には、ストッパ225の内周面から中心方向に向かって突出させられた鍔部225aが備えられており、鍔部225aの穴径がプレート232の外径よりも小さくされているため、この鍔部225aにてプレート232の移動が規制される。
【0064】
また、弁開閉機構部23は、シャフト231、プレート232およびダイアフラム233にて構成されている。
【0065】
シャフト231は、シートバルブ216の大径油路216a内に配置され、バルブ211側の先端部に小径油路211bよりも小径な突起部231aを備えた構造とされている。このシャフト231は、大径油路216a内において摺動させられ、それに伴って小径油路211b内で突起部231aが移動することにより、ボール弁212を押したりボール弁212から離れたりできるようになっている。
【0066】
図3(a)、(b)は、シャフト231の上面図と斜視図である。図3(a)、(b)に示されるように、シャフト231は軸方向に並行なスリット231bが周方向において等間隔に複数本備えられることで軸方向に垂直な断面形状が十字形状とされた十字形状部231cとされている。このため、十字形状部231cのスリット231bを通じてブレーキ液が流動できるように構成されている。
【0067】
突起部231aは、十字形状部231cの先端に備えられている。十字形状部231cからの突起部231aの突出量は十字形状部231cがバルブ211に接した時にボール弁212を押し上げられる長さに設計されている。また、十字形状部231cとバルブ211との間の距離は、後述するダイアフラム233の変位量の最大値よりも小さくされ、十字形状部231cによりバルブ211が押し上げられるように設計されている。
【0068】
さらに、十字形状部231cは、バルブ211側からピストン部22側に掛けて外径が縮小させられた段付部231dが備えられている。この段付部231dと対応して、シートバルブ216の大径油路216aの内壁面には段付部216cが備えられており、シャフト231がシートバルブ216の大径油路216a内に保持されるようにしてある。このため、シャフト231は、チェック弁21内に収容された状態でチェック弁21と共にハウジング40に保持される。そして、シートバルブ216の段付部216cからシートバルブ216の上端面までの距離は一定であり、さらにシャフト231の段付部231dから突起部231aまでの距離も一定であるため、突起部231aとボール弁212との位置関係も一義的に決まり、ボール弁212のリフト量の管理も容易に行えるようになっている。
【0069】
プレート232は、シャフト231をボール弁212側に移動させる役割と、シャフト231の移動量を規制する役割を果たす。プレート232は、例えば鉄系金属等からなる円盤状部材で構成されている。プレート232は、ダイアフラム233の変形に伴って紙面上下方向に移動させられるが、プレート232の外縁部がストッパ225に接することで紙面上方への移動量が規制される構造とされている。このため、プレート232の移動に伴ってシャフト231を移動させたとしても、その移動量はプレート232がストッパ225と接するまでの距離と同等となる。
【0070】
ダイアフラム233は、弾性材料、例えばゴムにより構成されており、プレート232と仕切壁部221aとの間に配置されている。このダイアフラム233は、ブレーキ液圧制御が非作動時には図2に示すように平坦な形状であるが、リザーバ室20C内の圧力(リザーバ内圧)と背室40b内の圧力(大気圧)との差圧が生じると、それに基づいて変形させられる。つまり、ポンプ10によるブレーキ液の吸入によってリザーバ室20C内が負圧になると背室40b内の大気圧よりも低くなるため、ダイアフラム233が変形させられる。この変形により、ダイアフラム233がプレート232を紙面上方に押し上げられ、シャフト231が移動させられる。
【0071】
このように、ダイアフラム233を介してシャフト231を移動させる構造とすれば、ダイアフラム233の弾性によってシャフト231からピストン部22への偏荷重伝達が緩和される。つまり、ピストン部22への荷重伝達エリアが広がり、偏荷重の影響が小さくなる。また、弾性によってシャフト231に作用する径方向に力が緩和され、シャフト231のこじりが生じ難くなるようにできる。
【0072】
このようにして、弁開閉機構部23が構成されている。本実施形態においては、このように構成された弁開閉機構部23のうちのプレート232およびダイアフラム233が可動部として機能する。
【0073】
以上のようにして本実施形態にかかる調圧リザーバ20が構成されている。このように構成された調圧リザーバ20では、上述したように、リザーバ孔20Aの中心線とリザーバ孔20Bの中心線とをオフセットさせている。このため、リザーバ孔20A内に配置されるチェック弁21の中心軸とリザーバ孔20B内に配置されるピストン部22の中心軸がオフセットされた状態となる。換言すれば、流入路を構成する大径油路216aにおけるシャフト231の挿通部分の軸線とピストン部22の中心軸とをオフセットさせて配置できる。
【0074】
このように、流入路を構成する大径油路216aにおけるシャフト231の挿通部分の軸線とピストン部22の中心軸とをオフセットさせれば、調圧リザーバ20をポンプ10や各種制御弁7、30〜33等と隣接して配置させる際に、調圧リザーバ20をポンプ10や各種制御弁7、30〜33等との干渉を避けつつ、よりこれらに近づけることが可能となる。これにより、ハウジング40のうち調圧リザーバ20の外周壁を構成している部分の厚みを必要肉厚確保することができ、ハウジング40の厚みを増やさなくても済む。
【0075】
次に、図4(a)〜(d)に、調圧リザーバ20の作動を表した断面図を示し、この図を参照して調圧リザーバ20の作動について説明する。
【0076】
まず、常用ブレーキ時には、ポンプ10が駆動されておらず、リザーバ内圧とブレーキ液圧とが釣り合っているため、ダイアフラム233は変形しない。よって、図4(a)に示すように、シャフト231が紙面上方に移動させられないため、突起部231aがボール弁212から離れた状態となり、シャフト231の十字形状部231cの先端位置もバルブ211から離れた状態となる。これにより、ボール弁212がバルブ211のシート面に着座し、小径油路211bが閉じられると共に大径油路216aも閉じられる。したがって、調圧リザーバ20のチェック弁21が閉弁状態となり、ブレーキペダル1の踏み込みによりM/C圧がリザーバ孔20Aに加えられたとしても、リザーバ室20C内にブレーキ液が流入することを防止することができる。これにより、常用ブレーキ時にチェック弁21を閉弁化でき、不要にブレーキ液が消費されることを防止できる。
【0077】
次に、調圧時、例えば加圧助勢(ブレーキアシスト制御)が実行されているときのようにブレーキペダル1が踏み込まれていてM/C圧がリザーバ孔20Aに加えられるときには、ポンプ10が駆動されることによってリザーバ室20C内が負圧となる。このため、図4(b)に示すように、ダイアフラム233が変形し、それに伴ってプレート232が紙面上方に移動することで、シャフト231も紙面上方に押し上げられ、突起部231aが小径油路211b内に挿通させられる。このとき、リザーバ孔20Aに対してM/C圧が加えられた状態になっているため、M/C圧とリザーバ内圧との差圧が釣り合うようにボール弁212とバルブ211のシート面との間の隙間の間隔が保たれ、リザーバ内圧が調圧される。このため、ダイアフラム233の変形は最大にはならず、突起部231aによってボール弁212が押し上げられるだけで、シャフト231によってバルブ211が押し上げられはしない。
【0078】
そして、自吸時、例えばトラクション制御や横すべり防止制御時のようにM/C圧が発生していない状態においてポンプ10を駆動させることでブレーキ液を吸入して制動力を発生させる場合には、ポンプ10が駆動されることによってリザーバ室20C内が負圧となる。このとき、リザーバ孔20Aに対してM/C圧が加えられていない状態であるため、図4(c)に示すようにダイアフラム233が変形し、その変形量が最大になる。そして、ダイアフラム233の変形に伴ってプレート232が紙面上方に移動することでシャフト231も紙面上方に押し上げられると、ダイアフラム233の変形量が最大となるため、突起部231aによってボール弁212が押し上げられるだけでなく、ボール弁212が凹部213bの底面に接し、ピン213と共にバルブ211も押し上げられる。これにより、大径油路216aも開状態になり、小径油路211bのみが開状態になっている場合と比べて吸入径を拡大することができる。したがって、ブレーキ液圧制御時の応答性を向上させることが可能となる。
【0079】
また、ABS制御時のように、管路Bを通じてリザーバ室20C内にブレーキ液が排出されるときには、図4(d)に示すように、リザーバ室20C内に流入したブレーキ液の圧力により、スプリング223の弾性力に抗してピストン部22が紙面下方に移動させられる。これにより、ブレーキ液が排出された分、W/C圧が減少させられ、車輪がロックに至ることを防止することが可能となる。
【0080】
このとき、ピストン部22と共に、弁開閉機構部23が紙面下方に移動させられる。しかしながら、シャフト231については、シートバルブ216の段付部216cに引っ掛かるため、それ以上はピストン部22と共に紙面下方に移動させられることはなく、チェック弁21内に残された状態となる。このため、ABS制御の増圧タイミングもしくはABS制御の終了などによって、ピストン部22が再び紙面上方の初期位置に戻った時に、仮にピストン部22が周方向に回転したとしても、シャフト231とチェック弁21との位置ズレが生じることはない。したがって、この後、再びシャフト231によってチェック弁21の開閉動作を行うことが可能となる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の調圧リザーバ20では、常用ブレーキ時には小径油路211bと大径油路216aの双方が閉状態になる。このため、常用ブレーキ時にチェック弁21を閉弁化でき、不要にブレーキ液が消費されることを防止できる。また、調圧時には小径油路211bのみが開状態になることで、的確に調圧作用が発揮できるようにすることができる。そして、自吸時には、大径油路216aが開状態になることで、吸入径を拡大することができ、ブレーキ液圧制御時の応答性を向上させることが可能となる。
【0082】
このような構造において、流入路を構成する大径油路216aにおけるシャフト231の挿通部分の軸線とピストン部22の中心軸とがオフセットされるようにしている。このため、調圧リザーバ20をポンプ10や各種制御弁7、30〜33等と隣接して配置させる際に、調圧リザーバ20をポンプ10や各種制御弁7、30〜33等との干渉を避けつつ、よりこれらに近づけることが可能となる。これにより、ハウジング40のうち調圧リザーバ20の外周壁を構成している部分の厚みを必要肉厚確保することができ、ハウジング40の厚みを増やさなくても済む。
【0083】
そして、チェック弁21の開閉動作を行うためのシャフト231がピストン部22とは別体とされ、大径油路216aの内周面にてシャフト231を保持しつつ往復動可能に案内する構造としている。このため、リザーバ室20C内にブレーキ液が流入してピストン部22がチェック弁21から離れる方向に移動させられても、シャフト231が大径油路216aの内周面に保持され、シャフト231が大径油路216aから離されることはない。これにより、ピストン部22がチェック弁21から離れる方向に移動させられた際に周方向に回転したとしても、ピストン部22が再びチェック弁21側に戻された時に、シャフト231と大径油路216aとの位置ズレが生じないようにできる。したがって、この後、再びシャフト231によってチェック弁21の開閉動作を行うことが可能となり、調圧リザーバ20を小型化が可能で、かつ、チェック弁の開閉動作を確実に行うことが可能な構成とすることができる。
【0084】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して調圧リザーバ20の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、調圧リザーバ20についてのみ説明する。
【0085】
図5は、本実施形態にかかる調圧リザーバ20の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第1実施形態の調圧リザーバ20に対してストッパ225の構造を変更している。具体的には、本実施形態では、第1実施形態と比較してストッパ225の内径を縮小し、ストッパ225の内周壁を構成する鍔部225aの先端がシャフト231のピストン部22側の端部231eに当接して該シャフト231を案内する案内面225bとして機能する構造としている。また、ストッパ225のうちチェック弁21側において、鍔部225aの先端を面取りしてテーパ面225cとしている。このような構造の調圧リザーバ20によれば、以下の効果を得ることができる。
【0086】
具体的には、シャフト231とシートバルブ216の大径油路216a等を構成する内周壁面とは、隙間が無いのが理想的であるが、製造バラツキ等を考慮して、実際には隙間が存在することになる。このため、この隙間によってシャフト231が傾倒する。これに対して、本実施形態のようにストッパ225の鍔部225aの案内面225bがシャフト231と接する構造となるようにすれば、シャフト231の傾倒をより抑制することが可能となる。
【0087】
また、リザーバ室20C内へのブレーキ液の排出によってピストン部22が紙面下方に移動させられたのち、再びピストン部22が紙面上方に戻る際に、ストッパ225がシャフト231に接触することになる。このとき、ストッパ225の鍔部225aにテーパ面225cを設けてあるため、シャフト231がストッパ225の鍔部225aの先端位置に案内され、鍔部225aとシャフト231とが引っ掛かることを防止できる。このため、ピストン部22および弁開閉機構部23のうちのシャフト231以外の部分が通常位置に戻ろうとするときに、より円滑に戻ることが可能となる。なお、案内面225bは、図5に示すようにチェック弁21側(図では上側)およびその反対側(図では下側)の双方にテーパ面225cを有していてもよいし、チェック弁21側にのみテーパ面225cを有していてもよいが、テーパ面225cを有することは必須ではない。また、シャフト231の傾倒を抑制する案内面225bを設ける場合、上記に限らずリザーバ孔20Bに摺接する部材であるピストン本体221自体に直接設けてもよい。
【0088】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、チェック弁21の構造の一例を挙げたが、内部に小径油路211bが備えられたバルブ211および小径油路211bを塞ぐボール弁212等で構成される弁体を有し、バルブ211が大径油路216aの弁体も構成しているような構造であれば、どのような構造であっても構わない。
【0089】
また、上記各実施形態では、ABS制御に用いられる調圧リザーバ20を例に挙げて説明したが、リザーバ室への流体の液流路の開閉を可変とする弁体を有し、この弁体をシャフトによって移動させることで液流路を開閉するリザーバ全般について、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…ブレーキペダル、3…M/C、4、5…W/C、10…ポンプ、20…調圧リザーバ、20A…リザーバ孔、20B…リザーバ孔、20C…リザーバ室、21…チェック弁、22…ピストン部、23…弁開閉機構部、40…ハウジング、40b…背室、211…バルブ、211b…小径油路、212…ボール弁、213…ピン、216…シートバルブ、216a…大径油路、221…ピストン本体、221a…仕切壁部、223…スプリング、225…ストッパ、225a…鍔部、225b…案内面、225c…テーパ面、231…シャフト、231a…突起部、232…プレート、233…ダイアフラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(40)に対して凹部(40a)を形成することにより構成したリザーバ室(20C)と、
該リザーバ室(20C)に連通される液流路(D)の開閉を可変とする弁体(211〜213)と、
前記ハウジング(40)に設けられたシャフト支持孔(216a)に挿通され弁体を移動させるシャフト(231)と、
前記リザーバ室(20C)を区画し、前記シャフト(231)を往復動させるピストン部(22)とを備えるリザーバにおいて、
前記シャフト(231)と前記ピストン部(22)とは別体にて構成され、前記シャフト(231)は前記シャフト支持孔(216a)内にて往復動可能に支持され、前記シャフト支持孔(216a)における前記シャフト(231)の挿通部分は、その軸線が前記ピストン部(22)の中心軸からオフセットさせて配置されていることを特徴とするリザーバ。
【請求項2】
前記ピストン部(22)と前記シャフト(231)との間には、前記リザーバ室(20C)内と、前記ピストン部(22)を挟んで前記リザーバ室(20C)の反対側に位置する背室(40b)内との間の差圧に基づいて変位することにより、前記弁体(211〜213)までの距離を変化させる可動部(232、233)を有し、
前記可動部はダイアフラム(233)を有し、該ダイアフラム(233)が前記リザーバ室(20C)内と前記背室(40b)内との間の差圧を受けて変形することで、前記シャフト(231)を移動させることを特徴とする請求項1に記載のリザーバ。
【請求項3】
前記可動部は、前記ダイアフラム(233)の変形に伴って前記シャフト(231)を移動させるプレート(232)を有し、
前記ピストン部(22)は、前記プレート(232)および前記ダイアフラム(233)の前記シャフト方向への移動量を規制するストッパ(225)を備え、
前記ストッパ(225)は、前記ダイアフラム(233)の外縁部を固定するリング状部材であり、該リング状部材の内周面から中心方向に向かって突出させられた鍔部(225a)にて前記プレートの前記シャフト方向への移動量を規制し、該鍔部(225a)の先端が、前記シャフト(231)の前記ピストン部(22)側の端部(231e)に当接して該シャフト(231)を案内する案内面(225b)を構成していることを特徴とする請求項2に記載のリザーバ。
【請求項4】
前記ピストン部(22)は前記シャフト(231)の前記ピストン部(22)側の端部(231e)に当接して該シャフト(231)を案内する案内面(225b)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のリザーバ。
【請求項5】
前記案内面(225b)は、前記弁体(211〜213)側を臨むテーパ面(225c)を有していることを特徴とする請求項3に記載のリザーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131436(P2012−131436A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286811(P2010−286811)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】