説明

リジントリイソシアネートに基づくエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、被覆組成物中におけるその使用およびその製造方法

【課題】本発明は、エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物およびこれらのエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物から製造された被覆組成物に関する。
【解決手段】これらのエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物樹脂は、(a)リジントリイソシアネートと(b)少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートの反応生成物を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リジントリイソシアネートに基づくエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、これらの新規な化合物から製造される被覆組成物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去、UV被覆物は100%固体であるともてはやされていた。残念なことに、所望の性能特性を達成するために、高い粘度を有する中分子量ないし高分子量のアクリル官能性オリゴマーが開発された。これらの物質は、非常に粘性であるため単独で用いることができず、アクリル酸またはメタクリル酸の低分子量エステルである反応性希釈剤を用いて処方された。これらの反応性希釈剤は、毒性の危険性が高いため、望ましくない。
【0003】
反応性シンナー含有量を減少させる近年の取り組みにおいては、溶媒が調製物の粘度を減少させるために用いられてきたので、十分な量の反応性シンナーに対する要求は減少してきた。当然ながら、いくつかの反応性シンナーは、VOC限界を超えないように、および被膜の特性を穏やかにするために、なお使用されている。
【0004】
市場は、反応性シンナーおよび溶媒の量を減少させるためにより低い粘度のオリゴマーを繰り返し要求してきた。この目的のために、特別なイソシアネート、すなわち、減少した粘度を有する物質が得られるアロファネートを対象としたいくつかの特許が存在する。米国特許第5739251号および同第5777024号を参照されたい。
【0005】
DE2914982には、室温で液体であるか、または室温で固体であって、60℃未満で溶融し得るウレタンを含む硬化性組成物が開示されている。該組成物は、ヒドロキシル末端基を含有するポリエステルのエステルと、二官能性および/または多官能性のイソシアナトアルキル化合物および/またはイソシアナトアリール化合物と、次いで必要に応じて単官能性のイソシアナトアルキル化合物および/またはイソシアナトアリール化合物を反応させることによって製造される。
【0006】
米国特許第5674921号には、放射線硬化性であるウレタンアクリレートプレポリマーが開示されている。該ウレタンアクリレートプレポリマーは、ポリイソシアネート官能性イソシアネートとヒドロキシル酸の無水環式エステルの加水分解性オリゴマーのウレタンプレポリマーa)と、末端化するのに十分な量でのヒドロキシルアクリレートまたはヒドロキシルメタクリレートb)の反応生成物を含んでなる。適当なプレポリマーは、リジントリイソシアネートと、エステル、例えばラクチド、グリコリド、パラ−ジオキサンおよびトリメチレンカーボネートを含むラクトンモノマーなどから製造され得、好適な混合物はパラ−ジオキサンまたはラクチドのいずれかを含むε−カプロラクトンである。これらのプレポリマーは、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレートで末端化される。反応性希釈剤を、引き続くアクリレートでの反応が分子量を増加させ、その結果、ウレタンアクリレートプレポリマーの粘度が増加し得るので、ウレタンアクリレートプレポリマーを硬化させることおよび加工することを助けるために用いることもできる。リジントリイソシアネートおよびポリカプロラクトンジオールを含有する実施例中での報告粘度は1000cp未満であるが、これらの値はより高い温度(例えば30℃または50℃)で報告され、該プレポリマーは50重量%の反応性希釈剤を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5739251号明細書
【特許文献2】米国特許第5777024号明細書
【特許文献3】独国特許発明第2914982号明細書
【特許文献4】米国特許第5674921号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物中にリジントリイソシアネートを用いると、該エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物から製造される被覆組成物は性能特性を維持しながら低粘度を有する生成物を生成することを発見した。該物質は、強靱な柔軟性の被膜を形成するために使用され得る。
【0009】
本発明の優位性には、有害な低分子量反応性希釈剤を含有しないかもしくは低濃度含有し、および溶媒を含有しないかもしくは低濃度含有する被覆物を処方する能力が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、該エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物から製造される被覆組成物、その製造方法および被覆生成物の製造方法に関する。
【0011】
本発明のエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物は、
(a)リジントリイソシアネート、
(b)少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート、および必要に応じて、
(c)成分(b)および(c)の全ヒドロキシル当量を基準として30ヒドロキシル当量%までの、(b)以外のヒドロキシル化合物であって、32〜400の数平均分子量を有する化合物
の反応生成物を含んでなる。
【0012】
これらのエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物の製造方法は、
(a)リジントリイソシアネート、
(b)少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート、および必要に応じて
(c)成分(b)および(c)の全ヒドロキシル当量を基準として30ヒドロキシル当量%までの、(b)以外のヒドロキシル化合物であって、32〜400の数平均分子量を有する化合物
を反応させることを含んでなる。
【0013】
本発明は、これらのエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物から製造された被覆組成物にも関する。
【0014】
該被覆組成物は、
(1)(a)リジントリイソシアネート、
(b)少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート、および
必要に応じて、
(c)成分(b)および(c)の全ヒドロキシル当量を基準として30ヒドロキシル当量%までの(b)以外のヒドロキシル化合物であって、32〜400の数平均分子量を有する化合物
の反応生成物を含んでなるエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、
(2)必要に応じて、1以上の反応性希釈剤、
(3)必要に応じて、溶媒または溶媒混合物、および
(4)必要に応じて、他の添加剤および/または助剤
を含んでなる。
【0015】
これらの被覆組成物を任意の適当な方法によって硬化させ得る。適当な方法として、例えば放射線硬化、ラジカル重合、空気酸化などが挙げられる。硬化の型に応じて、様々な添加剤および/または助剤を被覆組成物中に含ませ得る。
【0016】
本発明は、被覆生成物の製造方法にも関する。該方法は、
(A)(1)(a)リジントリイソシアネート、
(b)少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート、および必要に応じて、
(c)成分(b)および(c)の全ヒドロキシル当量を基準として30ヒドロキシル当量%までの、(b)以外のヒドロキシル化合物であって、32〜400の数平均分子量を有する化合物
の反応生成物を含んでなるエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、
(2)必要に応じて、1以上の反応性希釈剤、
(3)必要に応じて、溶媒または溶媒混合物、および
(4)必要に応じて、添加剤および/または助剤
を含んでなる被覆組成物で基材を被覆すること、および
(B)該被覆物を硬化すること
を含んでなる。
【0017】
本発明は、上記の方法によって製造された被覆生成物にも関する。
【0018】
実施例中、または特記する場合を除き、本明細書および特許請求の範囲に用いられる、成分の量、反応条件などを表す全ての数字または語句は、全ての場合において用語「約」によって修飾されると理解される。
【0019】
本発明において、用語「(メタ)アクリル」および「(メタ)アクリレート」は、アクリル酸誘導体およびメタアクリル酸誘導体をいずれも含むと意図され、例えば、アクリレートおよび(メタ)アクリレートと頻繁に称される相当するアルキルエステルは用語「(メタ)アクリレート」に包含されると意図される。
【0020】
本明細書に記載される分子量値は、ポリスチレンまたはスルホン化ポリスチレンの標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって決定し得る。Mの場合、代わりに、該値は、当技術分野において既知の滴定法を用いて官能基を滴定することによって決定し得る。
【0021】
本発明において、用語エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物は、エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加樹脂、エチレン性不飽和ポリウレタン樹脂またはエチレン性不飽和樹脂または樹脂とも称され得る。
【0022】
本明細書において用いる用語「硬化」には、完成材料へと架橋することによって原料を強化するかまたは硬化する任意の既知の硬化法が包含される。これには、これらには限定されないが、熱、空気(すなわち、酸化)、放射線硬化(電子線、紫外線などを含む)、ラジカル重合(過酸化物、アゾ化合物などを含む)などが含まれる。
【0023】
本発明において、リジントリイソシアネートは、構造:
【化1】

に相当すると定義される。
【0024】
本発明によれば、リジントリイソシアネートのプレポリマー、リジントリイソシアネートの他の化学的修飾物、例えばビウレット、アロファネート、カルボジイミドなど、ならびにリジントリイソシアネートの残渣は、本発明の成分(a)に対して望ましくない。これは、変性リジントリイソシアネートから典型的に生じる高粘度に起因するためである。
【0025】
本発明に従って成分(b)として用いる適当なヒドロキシル官能性(メタ)アクリレートとして、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPA)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、2種の異性体:
【化2】

および
【化3】

を含み得るGAMA(グリシジル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル酸付加物)が挙げられ、あるいはポリカプロラクトンヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(PCHEA)を用いることができる。PCHEAは、Dow Chemical Corp.製Tone(登録商標)として市販されている。しかしながら、任意のヒドロキシル官能性で単官能性または多官能性の(メタ)アクリレートを本発明において用いてよい。
【0026】
本発明のエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物において、イソシアネート当量をベースとする、成分(a)リジントリイソシアネートの量は、組成物の成分(b)中でのヒドロキシル含有物質のヒドロキシル当量の量に本質的に等しい。系をわずかに下回ってまたはわずかに上回って指標化することは可能であるが、任意の過剰なリジントリイソシアネートをモノオールまたはポリオールと反応させ得るので望ましくない。
【0027】
過剰のリジントリイソシアネートを用いる際、他のヒドロキシル化合物は任意の残余のイソシアネート官能基と反応させるために用い得、これには、例えば、数平均分子量32〜400を有する一価ないし三価の脂肪族アルコール、すなわち本発明における成分(c)が含まれる。このようなヒドロキシル化合物の例として、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、n−ヘキサノール、イソオクタノール、イソドデカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセロールおよびアルコキシル化によってこれらのアルコールから得られたアルコールが挙げられる。
【0028】
従って、成分(c)がエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物中に存在しない場合には、その結果、NCO:OHの当量比は約1.0:1.0である。しかしながら、エチレン性不飽和樹脂が成分(c)をさらに含む場合には、その結果、成分(a)と(b)のNCO:OHの当量比は、1.0:1.0〜1.45:1.0まで、好ましくは1.0:1.0〜1.35:1.0まで、より好ましくは1.0:1.0〜1.25:1.0まで変化させ得る。
【0029】
さらに、エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物または本発明の樹脂は、1以上の添加剤および/または助剤(d)を必要に応じて含んでなる。適当な添加剤および/または助剤として、例えば、これらに限定されないが、ラジカル重合安定剤、触媒、顔料、顔料分散剤、光吸収剤、酸化防止剤、流れ調整添加剤などが挙げられる。
【0030】
エチレン性不飽和樹脂において必要に応じて用い得る適当な安定剤は、典型的には、重合反応が暴走するのを防止する遊離基捕捉剤である。このような化合物として、例えばブチル化ヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、メトキシフェノールなどが挙げられる。
【0031】
エチレン性不飽和樹脂中において必要に応じて用い得る適当な触媒として、既知のウレタン触媒、例えば有機金属化合物ならびに亜鉛触媒および/またはビスマス触媒などが挙げられる。適当な有機金属化合物のいくつかの例として、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ−2−エチルヘキソエート、亜鉛オクタノエート、ビスマスオクタノエートなどが挙げられる。
【0032】
エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物中に必要に応じて存在する、適当な顔料、光吸収剤、酸化防止剤などには、ポリウレタン化学において既知のものが含まれる。
【0033】
これらのエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物は、リジントリイソシアネート(a)と、少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート(b)を、適当な容器中で、必要に応じて、30ヒドロキシル当量%までの、数平均分子量32〜400を有する、成分(b)以外のヒドロキシル化合物(c)、および必要に応じて、ラジカル重合安定剤、1以上の触媒などを含む添加剤(d)の存在下に反応させることによって製造され得、該反応を、反応が適当な時間内に生じるのに十分な温度で実施する。
【0034】
本発明の被覆組成物は、(1)上記のエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、(2)必要に応じて、1以上の反応性希釈剤、(3)必要に応じて、溶媒または溶媒混合物、および(4)必要に応じて、他の添加剤および/または助剤を含んでなる。上記のように、イソシアネート当量をベースとする、リジントリイソシアネートの量は、組成物中におけるヒドロキシル含有物質のヒドロキシル当量の量に本質的に等しい。本発明の被覆組成物を任意の適当な方法によって硬化させ得る。このような方法の例として、ラジカル重合、放射または空気によるものが挙げられる。
【0035】
これらの被覆組成物には、1以上の反応性希釈剤(2)が必要に応じて含まれ得る。反応性希釈剤は、エチレン性不飽和樹脂および希釈剤の全重量を基準として0〜40重量%、他の場合には0.1〜40重量%、ある状況においては0.5〜35重量%、他の状況においては1〜35重量%、ある例においては1〜25重量%の範囲の量で組成物中に存在してよい。
【0036】
任意の適当な反応性希釈剤を本発明に従って用いてよい。適当な反応性希釈剤として、これらに限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピロリドン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ジビニルベンゼンおよびアルキルモノ−、ジ−、トリ−、およびテトラ(メタ)アクリレートが挙げられ、前記アルキルは例えば1〜8個の炭素原子のアルキル基である。
【0037】
本発明の組成物は、1以上の溶媒または溶媒混合物(4)を必要に応じて含んでもよい。該組成物中に存在する場合、溶媒の量は、被覆組成物100重量%を基準として約0重量%〜約95重量%、好ましくは約10重量%〜約85重量%、より好ましくは約15重量%〜約75重量%、より特に好ましくは約20重量%〜約70重量%、最も好ましくは約25重量%〜約65重量%の範囲で存在する。本発明において、被覆組成物には、被覆組成物中に存在する固体および溶媒がいずれも含まれる。
【0038】
硬化性被覆組成物中に用い得る適当な溶媒の非限定的な例として、エーテルまたは炭素水素溶媒、エステル炭化水素溶媒が挙げられ、非限定的な例は、酢酸ブチルおよびアクリル官能基を有するものであり、非限定的な例は、ヘキサンジオールジアクリレート、アセトン、ブタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよび1−メチル−2−ピロリドンである。
【0039】
他の適当な添加剤および助剤を本発明の被覆組成物中に存在させることもできる。これらには、光開始剤、乾燥剤、光安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤、充填剤、沈降防止剤、消泡剤、湿潤剤、流れ調整剤、チキソトロープ、反応性シンナー、可塑剤、増粘剤、顔料、染料、つや消し剤(flattening agents)およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0040】
本発明に従えば、適当な光開始剤を、エチレン性不飽和樹脂および希釈剤100重量%を基準として、0〜10重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、より特に好ましくは0.5〜5重量%、もっとも好ましくは0.1〜3重量%、もっとも特に好ましくは0.1〜2.5重量%の量で被覆組成物中に存在させ得る。
【0041】
本発明の被覆組成物のための適当な光開始剤の例として、ポリウレタン被覆物の分野において既知のものが挙げられる。適当な光開始剤として、これらに限定されないが、モノアシルホスフィンオキシド(MAPO)、ビス−アシルホスフィンオキシド(BAPO)、α−ヒドロキシケトン、ベンジルジメチルケタール(BDK)、ベンゾフェノンおよびこれらの誘導体が挙げられ、非限定的な例は、ジフェノキシベンゾフェノン、ハロゲン化ベンゾフェノンおよびアミノ官能性ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェノール−1−プロパノン、フルオレノン誘導体、例えば2,2−ジエトキシアセトフェノンなど、アントラキノン誘導体、例えば2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノ−フェニル)ブタノンなど、ザントン誘導体、例えばハロゲン化アセトフェノなど、チオキサントン誘導体、例えば芳香族化合物のスルホニルクロリドなど、カンファーキノン、アシルホスフィンオキシド、ビス−アシルホスフィンオキシド、ベンジル、ベンズイミダゾール、ベンゾインエーテル、例えばベンゾインイソプロピルエーテルなど、およびヒドロキシアルキルフェノン、例えば1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどである。適当な光開始剤として、これらに限定されないが、Ciba Specialty Chemicals Corp.(タリタウン、ニューヨーク)から商品名DAROCURE(登録商標)およびIRGACURE(登録商標)として市販されているものも挙げられる。
【0042】
本発明のための適当な開始剤(または触媒)として、これらに限定されないが、既知のラジカル開始剤、例えば、脂肪族アゾ化合物、例えばアゾジイソブチロニトリル、アゾ−ビス−2−メチルバレロニトリル、1,1’−アゾ−ビス−1−シクロヘキサンニトリルおよびアルキル2,2’−アゾ−ビス−イソブチレートなど;対称性ジアシル過酸化物、例えばアセチルパーオキシド、プロピオニルパーオキシドまたはブチリルパーオキシド、ブロモ基、ニトロ基、メチル基またはメトキシ基で置換されたベンゾイルパーオキシドおよびラウリルパーオキシドなど;対称性パーオキシジカーボネート、例えばジエチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネートおよびジベンゾイルパーオキシジカーボネートなど;tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートおよびtert−ブチルパーベンゾエート;ヒドロ過酸化物、例えばtert−ブチルヒドロパーオキシドおよびクメンヒドロパーオキシドなど;およびジアルキル過酸化物、例えばジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシドまたはジtert−ブチルパーオキシドなどが挙げられる。
【0043】
本発明による被覆組成物を乾燥剤および必要に応じて(ヒドロ)過酸化物の存在下に室温で硬化させることもできる。適当な乾燥剤は既知であり、これには、亜麻仁油脂肪酸、タル油脂肪酸および大豆油脂肪酸、樹脂酸、例えばアビエチン酸およびナフテン酸など、酢酸、イソオクタン酸、ならびに無機酸、例えば塩化水素酸および硫酸などのような酸の金属塩、好ましくはコバルト塩またはバナジウム塩が含まれる。被覆組成物中に可溶性であって、乾燥剤として働くコバルトおよびバナジウムの化合物は特に適当であり、これには上記の酸の塩が含まれる。乾燥剤は通常、金属含有量がエチレン性不飽和樹脂および反応性希釈剤の総合重量100%を基準として0.0005〜3重量%、好ましくは0.001〜1重量%になるような量で、有機溶液の形態で用いられる。乾燥剤は、芳香族アミンまたは脂肪族アミンのような促進性添加剤と共に用いてもよい。その例として、トリエタノールアミン、1,3−プロパンジアミン、アニリンおよびN−ベンジルアニリンなどが挙げられる。
【0044】
(ヒドロ)過酸化物の例として、ジ−tert.−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、ジノニルパーオキシド、ビス−(4−tert.−ブチルシクロヘキシル)−パーオキシジカーボネート、tert.−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−ヘキサン−2,5−ヒドロパーオキシドおよびジイソプロピルベンゼンモノヒドロパーオキシドが挙げられる。(ヒドロ)過酸化物は、エチレン性不飽和樹脂および反応性希釈剤の総合重量100%を基準として約1〜10重量%の量で好ましく用いられる。
【0045】
本発明のある実施態様においては、被覆組成物は、
(1)(a)リジントリイソシアネート、
(b)少なくとも1つのヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート、および
(c)必要に応じて、成分(b)および(c)の全ヒドロキシル当量を基準として30ヒドロキシル当量%までの(b)以外のヒドロキシル化合物であって、32〜400の数平均分子量を有する化合物
の反応生成物を含んでなる、約20重量%〜約100重量%、好ましくは約30重量%〜約100重量%、より好ましくは約40重量%〜約90重量%のエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、
(2)約0重量%〜約25重量%、好ましくは約0重量%〜約20重量%、より好ましくは約5重量%〜約15重量%の反応性希釈剤、および
(3)約0重量%〜約70重量%、好ましくは約0重量%〜約50重量%、より好ましくは約10重量%〜約30重量%の溶媒または溶媒混合物
を含んでなり、(1)、(2)および(3)の重量%の合計が被覆組成物の100重量%になる。
【0046】
前記被覆組成物は、電子線で硬化させる場合にはそのままで用いてよいが、紫外線/可視線を硬化のために用いる場合には、約0重量%〜約7重量%、好ましくは約0重量%〜約5重量%、より好ましくは約0重量%〜約3重量%の1以上の上記の光開始剤をさらに含み得る。
【0047】
紫外線とは約250〜365nmの波長のことであり、可視線とは約365〜450の波長のことである。紫外線に加えて、可視線も、適当な光開始剤の場合には有用である。
【0048】
本発明は、上記の被覆組成物で基材の少なくとも一部を被覆することおよび被覆して基材上で硬化することを可能にすることを含む、被覆基材の製造方法も提供する。
【0049】
これらの被覆組成物は、任意の種類の基材、例えば木材、プラスチック、皮革、紙、繊維製品、ガラス、セラミック、石膏、メーソンリー、金属およびコンクリートを被覆するために用いてよい。これらは、標準的な方法、例えばスプレー被覆、スプレッド被覆、流し被覆、注型、浸漬被覆、ロール被覆によって適用され得る。該被覆組成物は透明であっても、着色されていてもよい。
【0050】
本発明の被覆組成物を任意の既知の方法によって硬化させてよい。好適な硬化法として、例えば、空気暴露、ラジカル重合、および放射が挙げられる。
【0051】
用いる任意の不活性溶媒の蒸発後、該被覆物は、高エネルギー線、例えばUV光、電子線またはγ線などによって、過酸化物またはアゾ化合物の存在下、高温に加熱することによって、または乾燥剤酸の金属塩および必要に応じて(ヒドロ)過酸化物を用いて、高温でまたは室温または室温未満で硬化することによって架橋され得る。該被覆物をUV照射によって架橋させる場合には、光開始剤を被覆組成物に添加する。被覆物を電子線によって硬化させる場合には、被覆組成物は光開始剤を必要に応じて含む。
【0052】
高温で被覆組成物を硬化する場合、硬化は、被覆組成物の全重量を基準として0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%の1以上の適当なラジカル重合開始剤、例えば1以上の過酸化物および/またはアゾ化合物などの存在下で行わなければならない。80℃〜240℃、好ましくは120℃〜160℃の範囲の温度は、温度で該被覆組成物を硬化するために必要とされる。過酸化物開始剤を用いたラジカル重合は、適当な促進剤、例えばアミン触媒などが含まれる場合、低い温度、例えば10℃で生じ得る。
【0053】
適当な開始剤として、これらに限定されないが、既知のラジカル開始剤、例えば脂肪族アゾ化合物、例えばアゾジイソブチロニトリル、アゾ−ビス−2−メチルバレロニトリル、1,1’−アゾ−ビス−1−シクロヘキサンニトリルおよびアルキル2,2’−アゾ−ビス−イソブチレートなど;対称性ジアシル過酸化物、例えばアセチル、プロピオニルまたはブチリルパーオキシド、ブロモ基、ニトロ基、メチル基またはメトキシ基で置換されたベンゾイルパーオキシド、およびラウリルパーオキシドなど;対称性パーオキシジカーボネート、例えばジエチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネートおよびジベンゾイルパーオキシジカーボネートなど;tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートおよびtert−ブチルパーベンゾエート;ヒドロ過酸化物、例えばtert−ブチルヒドロパーオキシドおよびクメンヒドロパーオキシドなど;およびジアルキル過酸化物、例えばジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシドまたはジ−tert−ブチルパーオキシドなどが挙げられる。
【0054】
本発明による被覆組成物を、乾燥剤および必要に応じて(ヒドロ)過酸化物の存在下に室温で硬化させてもよい。適当な乾燥剤は既知であり、これには、亜麻仁油脂肪酸、タル油脂肪酸および大豆油脂肪酸、樹脂酸、例えばアビエチン酸およびナフテン酸など、酢酸、イソオクタン酸、および無機酸、例えば塩化水素酸および硫酸などのような酸の金属塩、好ましくはコバルト塩およびバナジウム塩が含まれる。被覆組成物中に可溶性であって、乾燥剤として働くコバルトおよびバナジウムの化合物は特に適当であり、これには上記の酸の塩が含まれる。該乾燥剤は通常、金属含量がエチレン性不飽和樹脂および反応性希釈剤の総合重量100%を基準として0.0005〜3重量%、好ましくは0.001〜1重量%になるような量で有機溶液の形態で用いられる。乾燥剤は、芳香族アミンまたは脂肪族アミンなどのような促進性添加剤と共に用いてもよい。その例として、トリエタノールアミン、1,3−プロパンジアミン、アニリンおよびN−ベンジルアニリンなどが挙げられる。(ヒドロ)過酸化物の例として、ジ−tert.−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、ジノニルパーオキシド、ビス−(4−tert.−ブチルシクロヘキシル)−パーオキシジカーボネート、tert.−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−ヘキサン−2,5−ヒドロパーオキシドおよびジイソプロピルベンゼンモノヒドロパーオキシドが挙げられる。(ヒドロ)過酸化物は、エチレン性不飽和樹脂および反応性希釈剤の総合重量100%を基準として約1〜10重量%の量で好ましく用いられる。
【0055】
ある特定の実施態様においては、樹脂を1以上の光開始剤と組み合わせ、混合し、および必要に応じて溶媒で希釈する。調製物を、厚さ1〜15ミルを有する湿潤膜として基材に適用する。次いで湿潤膜を、該膜を硬化させるために十分な時間、放射線に暴露する。
【0056】
本発明によれば、放射線は、紫外線、可視光線、電子線放射線またはこれらの組み合わせであってよい。
【0057】
多くの場合、放射線は少なくとも250nmの波長を有する。ある場合には、放射線は約320〜約450nmの波長を有する。
【0058】
得られる被覆膜は、強靱で柔軟性の被膜である。非限定的な例として、本発明によって提供される被覆膜は、少なくとも30秒、好ましくは少なくとも33秒、より好ましくは少なくとも35秒の振子硬度を有する。さらに、本発明の被覆膜は、200秒以下、好ましくは160秒以下、より好ましくは120秒以下の振子硬度を有する。硬化被覆膜の振子硬度は、これらの上限値と下限値の(これらの値も含む)任意な組み合わせの間の範囲、例えば、少なくとも30秒〜200秒以下、好ましくは少なくとも33秒〜160秒以下、より好ましくは少なくとも35秒〜120秒以下であり得る。硬化被覆膜の振子硬度をASTM D 4366−95(試験法A)(ケーニッヒ硬度計を用いる振子減衰試験による有機被覆物の硬度のための標準的な試験方法)を用いて決定してよい。
【0059】
本発明は、上記の方法に従って被覆された基材も提供する。
【0060】
以下の実施例により、本発明の組成物の製造および使用についての詳細をさらに説明する。先に記載した本発明は、これらの実施例によって精神または範囲が制限されるべきではない。当業者であれば、以下の製造方法の条件および方法の既知の変形を使用してこれらの組成物を製造し得ることを容易に理解するであろう。特記がない限り、全ての温度はセルシウス度であり、全ての部およびパーセンテージはそれぞれ重量部および重量%である。
【実施例】
【0061】
以下の原料を実施例において用いた:
〔イソシアネート A〕
リジントリイソシアネート

〔イソシアネート B〕
官能価約3.13、25℃で粘度約1000cpsを有し、イソシアヌレート約1.98mol/kgを含有し、およびNCO基含有量約24重量%を有するヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー
〔PCHEA〕
ヒドロキシル当量344を有する(2−ヒドロキシエチルアクリレートのポリ(ε−カプロラクトン)エステル)、これはDOW Chemicals製Tone M 100として市販されている。
〔HEA〕
ヒドロキシル当量116.1を有するヒドロキシエチルアクリレート、これはDOW Chemical Company製HEAモノマーとして市販されている。
〔HPA〕
ヒドロキシル当量130.1を有するヒドロキシプロピルアクリレート、これはDOW Chemical Company製HPAモノマーとして市販されている。
〔GAMA〕
グリシジルメタクリレートのアクリル酸付加物(ヒドロキシ官能性ジアクリレート)
〔EHD〕
2−エチルヘキサンジオール
【0062】
GAMAの調製は次のとおりであった
攪拌機、ヒーター、滴下漏斗および酸素注入管を備えた2リットル丸底フラスコ中に、グリシジルメタクリレート653g(4.59当量)、トリフェニルホスフィン触媒3.5gおよびブチル化ヒドロキシトルエン安定剤1.0gを添加した。該混合物を、均一になるまで攪拌し、70℃に加熱した。該混合物にアクリル酸345.5(4.79当量)を1時間にわたって添加した。次いで該反応混合物を90℃に加熱し、酸価が12.8mgKOH/g樹脂になるまで該温度で12時間保持した。次いで、さらなるトリフェニルホスフィン1.0gを添加した。該反応を、酸価が3.4mgKOH/g樹脂になるまで90℃でさらに10時間保持した。最終生成物(GAMA)は25℃で粘度64mPa・秒および密度9.5lbs/gal(=1.1383511g/cc)を有した。
【0063】
実施例1:PCHEA、HEAおよびHPAのリジントリイソシアネート付加物の調製:
攪拌機、ヒーター、滴下漏斗および酸素注入管を備えた2リットル丸底フラスコ中に、イソシアネート A(リジントリイソシアネート)82.9g(0.930当量)、PCHEA160.2g(0.465当量)、HEA27.3g(0.232当量)、HPA30.6g(0.232当量)およびブチル化ヒドロキシトルエン安定剤1.5gを添加した。該混合物を均一になるまで攪拌し、次いでジブチル錫ジラウレート触媒1gを添加した。該反応混合物を60℃に加熱し、イソシアネートがIRスペクトル中に確認されなくなるまで該温度で6時間保持した。粘度は25℃で12500mPa・秒であり、密度は9.22lbs/gal(=1.1047997g/cc)であった。
【0064】
実施例2:PCHEAのリジントリイソシアネート付加物の調製:
攪拌機、ヒーター、滴下漏斗および酸素注入管を備えた3リットル丸底フラスコ中に、リジントリイソシアネート72.7g(0.815当量)、PCHEA280.5g(0.815当量)およびブチル化ヒドロキシトルエン安定剤1.8gを添加した。該混合物を均一になるまで攪拌し、次いでジブチル錫ジラウレート触媒0.06gを添加した。次いで該反応混合物を65℃に加熱し、イソシアネートがIRスペクトル中に確認されなくなるまで該温度で6時間保持した。粘度は25℃で5610mPa・秒であり、密度は9.59lbs/gal(=1.1491354g/cc)であった。
【0065】
実施例3:GAMAのリジントリイソシアネート付加物の調製:
攪拌機、ヒーター、滴下漏斗および酸素注入管を備えた2リットル丸底フラスコ中に、リジントリイソシアネート83.2g(0.989当量)、GAMA211.9g(0.989当量)およびブチル化ヒドロキシトルエン安定剤1.5gを添加した。該混合物を均一になるまで攪拌し、次いでジブチル錫ジラウレート触媒0.06gを添加した。該反応混合物を60℃に加熱し、イソシアネートがIRスペクトル中に確認されなくなるまで該温度で6時間保持した。粘度は25℃で1640mPa・秒であり、密度は9.45lbs/gal(=1.1323597g/cc)であった。
【0066】
実施例4:HEA、HPAおよびEHDのリジントリイソシアネート付加物の調製:
攪拌機、ヒーター、滴下漏斗および酸素注入管を備えた2リットル丸底フラスコ中に、リジントリイソシアネート100.1g(1.124当量)、HEA74.0g(0.637当量)、HPA35.5g(0.273当量)、酢酸ブチル80.0gおよびブチル化ヒドロキシトルエン安定剤0.16gを添加した。該混合物を均一になるまで攪拌し、次いでジブチル錫ジラウレート触媒0.16gを添加した。次いで該反応混合物を60℃に加熱し、イソシアネートが2.38%NCOになるまで該温度で6時間保持した。次いで、EHD10.1g(0.17当量)を添加し、NCOがIRスペクトル中に確認されなくなるまでさらに4.5時間加熱を継続した。粘度は25℃で889mPa・秒であり、密度は9.38lbs/gal(=1.1239719g/cc)であった。
【0067】
比較例5:PCHEAのイソシアネートB付加物の調製:
攪拌機、ヒーター、滴下漏斗および酸素注入管を備えた3リットル丸底フラスコ中に、イソシアネートB72.7g(0.815当量)、PCHEA280.5g(0.815当量)およびブチル化ヒドロキシトルエン安定剤1.8gを添加した。該混合物を均一になるまで攪拌し、次いでジブチル錫ジラウレート触媒0.06gを添加した。次いで該反応混合物を65℃に加熱し、イソシアネートがIRスペクトル中に確認されなくなるまで該温度で6時間保持した。粘度は25℃で5610mPa・秒であり、密度は9.59lbs/gal(=1.1491354g/cc)であった。
【0068】
比較例6:GAMAのイソシアネートB付加物の調製:
攪拌機、ヒーター、滴下漏斗および酸素注入管を備えた2リットル丸底フラスコ中に、イソシアネートB469.7g(2.52当量)、GAMA539.3g(2.52当量)およびブチル化ヒドロキシトルエン安定剤5.0gを添加した。該混合物を均一になるまで攪拌し、次いでジブチル錫ジラウレート触媒0.06gを添加した。次いで該反応混合物を60℃に加熱し、イソシアネートがIRスペクトル中に確認されなくなるまで該温度で6時間保持した。該樹脂を酢酸n−ブチル253.5gで80%固体に希釈した。粘度は25℃で3700mPa・秒であり、密度は9.20lbs/gal(=1.1024031g/cc)であった。
【0069】
比較例7:HEA、HPAおよびEHDのイソシアネートB付加物の調製:
攪拌機、ヒーター、滴下漏斗および酸素注入管を備えた2リットル丸底フラスコ中に、イソシアネートB100.1g(1.124当量)、HEA74.0g(0.637当量)、HPA35.5g(0.273当量)、酢酸ブチル80.0gおよびブチル化ヒドロキシトルエン安定剤0.16gを添加した。該混合物を均一になるまで攪拌し、次いでジブチル錫ジラウレート触媒0.16gを添加した。次いで該反応混合物を60℃に加熱し、イソシアネートが2.38%NCOになるまで該温度で6時間保持した。EHD10.1g(0.17当量)を添加し、NCOがIRスペクトル中に確認されなくなるまでさらに4.5時間加熱を継続した。粘度は25℃で889mPa・秒であり、密度は9.38lbs/gal(=1.1239719g/cc)であった。
【0070】
放射線硬化性被覆組成物の処方:
実施例1〜7における上記の付加物から、該付加物と付加物100部あたりDarocure 4265(光開始剤)5部と付加物100部あたりIrgacure 184(光開始剤)1部を均一になるまで付加物を混合し、次いで十分な量の酢酸n−ブチルで希釈して、85%固体での溶液を作製することによって、ポリウレタン処方物を製造した。
【0071】
処方、硬化方法および試験:
該処方物を、4ミル湿潤膜厚の延展棒を用いて、MEK往復摩擦評価用の冷間圧延スチールパネル上および振子硬度評価用のガラスパネル上で被膜へと形成した。すべてのパネルを、延展後30秒間フラッシュし、2分間、H&S Autoshot 400A 低強度UVAランプ下、10インチのランプ距離で硬化した。
【0072】
MEK往復摩擦は、数枚のチーズクロスの層で覆った2ポンド丸頭ハンマーを用いて決定した。該チーズクロスにはMEKを含浸させた。MEK湿潤ハンマーを、該ハンマーが表面に対して90度の角度になるように、被覆表面上に設置した。下方の圧力を適用せずに、ハンマーを、被覆物の約4インチ長の領域にわたって前後に動かした。1回の前後の動きを、1往復摩擦として数えた。各25往復摩擦後にMEKを布に含浸させた。100往復摩擦またはハンマーがパネル表面まで基材を破壊した場合を終点とした。
【0073】
振子硬度は、(今や廃止された)ASTMD4366−95(試験法A)(ケーニッヒ硬度計を用いる振子減衰試験による有機被覆物の硬度用の標準的な試験方法)を用いて決定した。
【0074】
【表1】


【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
データは、トリマートリイソシアネートを用いて製造された比較生成物について確認されたのと同様の特性がリジントリイソシアネートを用いて製造された新規な低粘度生成物についても確認されたことを示している。これは、リジントリイソシアネートが柔軟な骨格を有し、および該トリマーが硬質環構造を有しているので意外であった。
【0078】
例示の目的で本発明を上記に詳しく説明したが、そのような詳細は、単なる例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定され得ることを除き、本発明の精神および範囲から逸脱せずに当業者によって変更され得ると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)リジントリイソシアネート、
(b)少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート、および必要に応じて、
(c)成分(b)および(c)の全ヒドロキシル当量を基準として30ヒドロキシル当量%までの、(b)以外のヒドロキシル化合物であって、32〜400の数平均分子量を有する化合物
の反応生成物を含んでなるエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物。
【請求項2】
光開始剤、乾燥剤、ラジカル重合安定剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、光吸収剤、顔料および触媒からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含んでなる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(b)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル酸付加物、ポリカプロラクトンヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの混合物からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
(c)は、メタノール、エタノール、n−ヘキサノール、イソオクタノール、イソドデカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセロール、これらの混合物およびこれらのアルコキシル化生成物からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
エチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物の製造方法であって、
(a)リジントリイソシアネートと、
(b)少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートと、必要に応じて、
(c)成分(b)および(c)の全ヒドロキシル当量を基準として30ヒドロキシル当量%までの、(b)以外のヒドロキシル化合物であって、32〜400の数平均分子量を有する化合物
を反応させることを含んでなる、前記方法。
【請求項6】
(1)請求項1に記載のエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、
(2)必要に応じて、1以上の反応性希釈剤、
(3)必要に応じて、1以上の溶媒または溶媒混合物、および
(4)必要に応じて、1以上の添加剤および/または助剤
を含んでなる被覆組成物。
【請求項7】
前記1以上の添加剤および/または助剤(4)は、光開始剤、乾燥剤、光安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤、充填剤、沈降防止剤、消泡剤、湿潤剤、流れ調整剤、チキソトロープ、反応性シンナー、可塑剤、増粘剤、顔料、染料、つや消し剤(flattening agents)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の被覆組成物。
【請求項8】
ラジカル重合、空気酸化または放射による、請求項6に記載の被覆組成物の硬化方法。
【請求項9】
被覆生成物の製造方法であって、
(A)(1)請求項1に記載のエチレン性不飽和ポリイソシアネート付加化合物、
(2)必要に応じて、1以上の反応性希釈剤、
(3)1以上の溶媒または溶媒混合物、および
(4)必要に応じて、1以上の添加剤または助剤
を含んでなる被覆組成物で基材を被覆すること、および
(B)該被覆物を硬化すること
を含んでなる、前記方法。
【請求項10】
硬化は、ラジカル重合、空気酸化または放射によるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被覆組成物は、光開始剤、乾燥剤、光安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤、充填剤、沈降防止剤、消泡剤、湿潤剤、流れ調整剤、チキソトロープ、反応性シンナー、可塑剤、増粘剤、顔料、染料、つや消し剤(flattening agents)およびこれらの混合物からなる群から選択される1以上の添加剤または助剤(4)を含んでなる、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2009−138193(P2009−138193A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−304294(P2008−304294)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】