説明

リストバンド

【課題】使い勝手のよいリストバンドを提供する。
【解決手段】人体に巻き回されて装着されるリストバンドであって、ヒンジ部49で折り畳み可能な係止ピン取付け片45及び固着孔形成片48を有し前記係止ピン取付け片45には係止ピン42が形成され前記固着孔形成片48には固着孔46が形成された留め具40と、記録領域21を挟んで一方の側に取付け孔24,25が設けられ、他方の側に複数の挿通孔26が形成されたバンド本体20と、を備え、前記留め具40の前記係止ピン42は、立設する軸43と前記軸43に設けられた長円形状の係止部44とから構成され、前記係止部44の長円形状の長軸方向が同一方向に形成され、前記バンド本体20の前記取付け孔24,25は、前記係止ピン42の前記係止部44が挿通可能な長円形状を呈し長円形状の長軸方向が各々異なる方向に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に着用するリストバンドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療機関等では、入院患者や診察あるいは検査を受ける患者の識別や医療過誤の未然防止等を目的にリストバンドを用いている。リストバンドは、患者の氏名、血液型等の患者情報を文字もしくはバーコード等の識別記号を用いてバンド本体に印刷する。そして、それを患者の手首や足首等に取り付ける。リストバンドは、一般的に本人確認を確実に行い適正な処置が施せるように、一度つけたら意図的に切断する等の行為が無い限り外せないものとすることが一般的である。そのため、バンド本体の係止孔同士を合わせ留め具で固定することが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−351321号公報
【特許文献2】特開2005−24582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のリストバンドは、バンド本体への印刷作業の容易さを考慮してバンド本体と留め具とが別体に構成されている。そして、バンド本体を患者の手首や足首に巻きつけた状態でバンド本体の係止孔同士を合わせ、係止孔に留め具の突起を嵌入させ固着していた。そのため、持ち運びが面倒であったり、固着時に留め具が落下したり、長さ調整が面倒であったりして作業が煩雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)表面に個人を識別する情報が記録される記録領域を有するとともに、人体の一部に巻き回されて装着されるリストバンドであって、ヒンジ部で折り畳み可能な係止ピン取付け片および固着孔形成片を有し、前記係止ピン取付け片には少なくとも2つの係止ピンが形成され、前記固着孔形成片には前記係止ピン取付け片の前記係止ピンを嵌合固着する固着孔が形成された留め具と、長尺形状を呈し、前記記録領域を挟んで一方の側に少なくとも2つの取付け孔が設けられ、他方の側に複数の挿通孔が列状に形成されたバンド本体と、を備え、前記留め具の少なくとも2つの前記係止ピンは、前記係止ピン取付け片から立設する軸と前記軸の先端部に設けられた長円形状の係止部とから構成され、前記係止部の長円形状の長軸方向が同一方向に形成されており、前記バンド本体の前記取付け孔は、前記係止ピンの前記係止部が挿通可能な長円形状を呈し、長円形状の長軸方向が各々異なる方向に形成されていることを特徴とするリストバンド。
【0007】
(適用例2)前記係止部、前記取付け孔および前記挿通孔の長円形状は、小判形状であることを特徴とする上記のリストバンド。
【0008】
(適用例3)前記係止部、前記取付け孔および前記挿通孔の長円形状は、楕円形状であることを特徴とする上記のリストバンド。
【0009】
これらの構成によれば、リストバンドにおいて、バンド本体の取付け孔に留め具の係止ピン取付け片に設けられた2つの係止ピンを挿入したとき、留め具の係止ピンの長円形状をした係止部の長軸方向と、バンド本体の長円形状をした取付け孔の長軸方向とが、少なくとも一箇所で交差するようにすることができる。そのため、少なくとも一箇所の取付け部位において、バンド本体と留め具とを仮固定することができる。
【0010】
リストバンドの取り付け作業において、バンド本体の取付け孔部分に留め具を仮固定することができれば、情報の印刷場所から患者のところへ持ち運ぶとき、一体として持ち運ぶことができ紛失等を防止することができる。また、患者の手首等に巻き付け長さ調整をして、バンド本体に仮固定されている留め具の係止ピンを、バンド本体の任意の挿通孔を経由して留め具の固着孔形成片の固着孔に容易に嵌合固着することができる。すなわち、リストバンドの取り付けに伴う作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るリストバンドを装着した状態を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係るバンド本体を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る留め具の構成を示す図。
【図4】バンド本体と留め具との仮固定方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0013】
(リストバンドおよびバンド本体について)
まず、リストバンドおよびバンド本体について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るリストバンドを装着した状態を示す図である。図2は、本発明の実施形態に係るバンド本体を示す図であり、図2(a)は全体を示す外形図、図2(b)は取付け孔部分を示す拡大図、図2(c)は複数の挿通孔部分を示す拡大図である。図2に示すX方向は、長尺形状のリストバンドの長手方向を示し、Y方向はX方向と直交する方向を示す。
【0014】
図1に示すように、リストバンド10は、バンド本体20と留め具40とから構成される。リストバンド10は、一般に医療機関等で用いられ、入院患者や診察あるいは検査を受ける患者の識別や医療過誤の未然防止等のために、患者の氏名、血液型等の患者情報が表示され、該当する患者の手首や足首等に取り付けられる。なお、患者情報としては、患者氏名、性別、ID番号、血液型、診療科目、患者の属する病棟番号、電話番号、アレルギー項目などが挙げられ、これら患者情報は、文字や図形、シンボル画像(バーコードや2次元コード)等で印刷される。
【0015】
図2(a)に示すように、バンド本体20は、例えば、防水性を有し医学的に安全性の高いポリウレタン等の素材が好適に用いられ、長尺のシート状に形成される。バンド本体20は、一方の面に情報が印刷される記録領域21を有している。この記録領域21に対しては、例えばインクジェットプリンター等の印刷装置を用い上記患者情報が印刷される。この印刷作業は、カルテ等を参考に病院のナースセンターや事務所で行われることが多い。
【0016】
バンド本体20は、長尺の一方の端部22近傍に少なくとも2つの取付け孔24,25が設けられ、記録領域21を挟んで他方の側に複数の挿通孔26が所定のピッチで列状に形成されている。
図2(b)に示すように、取付け孔24,25は、所定の間隔(以降、ピッチPという)を隔てて、後述する留め具40の係止ピンの小判形状の係止部が挿通可能な小判形状の孔として形成されている。取付け孔24と取付け孔25とは、同一な形状を呈しているが、取付け孔24の長軸24aと取付け孔25の長軸25aとは異なる方向に形成されている。すなわち、取付け孔25の長軸25aは図中X方向に沿った方向となっているが、取付け孔24の長軸24aはX方向に対して角度αを有するように形成されている。
【0017】
図2(c)に示すように、挿通孔26は、取付け孔24,25と同様に、後述する留め具40の係止ピンの小判形状の係止部が挿通可能な小判形状に形成されている。複数の挿通孔26は、各挿通孔26の長軸26aが図中X方向に沿った状態で、所定のピッチPで列状に配置されている。
【0018】
(留め具について)
次いで、留め具について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施形態に係る留め具の構成を示す図であり、図3(a)は留め具の斜視図、図3(b)は係止ピンのE矢視図、図3(c)は固着孔のG−G断面図である。
【0019】
図3(a)に示すように、留め具40は、例えば2つの係止ピン42が設けられた係止ピン取付け片45と、係止ピン取付け片45に対してヒンジ部49で折り畳み自在に連結され、2つの係止ピン42が挿入固着される2つの固着孔46が形成された固着孔形成片48とから構成されている。なお、留め具40は、ヒンジ効果を有する樹脂、例えばポリプロピレン等が好適に使用される。
【0020】
図3(a),(b)に示すように、係止ピン42は、板状の係止ピン取付け片45から立設される円柱状の軸43と、軸43の自由端部に設けられた係止部44とから構成されている。係止部44は、図3に示すように、所定の板厚を有する長円としての小判形状に形成されている。なお、本実施形態では2つの係止ピン42が設けられ、2つの係止ピン42は所定のピッチPで立設されている。
【0021】
図3(a)に示すように、固着孔46は、係止ピン42の係止部44が挿通可能な長円としての小判形状の孔として固着孔形成片48に形成されている。図3(c)に示すように、固着孔46は、係止ピン42が挿通される孔空間部46aの入り口側周囲に固着片47が形成されている。この固着片47は、入り口側にテーパーを持った周状突起部として形成され、係止ピン取付け片45と固着孔形成片48とがヒンジ部49で折り畳まれたとき、固着孔46に嵌合する係止ピン42の係止部44を離脱不可能に固着するものである。
【0022】
(バンド本体と留め具との仮固定方法について)
ここで、バンド本体と留め具との仮固定方法について図4を参照して説明する。図4は、バンド本体と留め具との仮固定方法を説明する図である。
【0023】
図4(a)に示すように、留め具40の係止ピン取付け片45をバンド本体20の記録領域21が設けられた面の裏面側に配置する。そして、係止ピン取付け片45の立設された2つの係止ピン42の内1つ(係止ピン42a)を、バンド本体20の取付け孔24に挿入する。取付け孔24は、取付け孔25に対して角度αを有するように配置されている。そのため、係止ピン42aの小判形状の係止部44の外形状と取付け孔24の小判形状の内形状とが合うような位置、すなわち、留め具40をバンド本体20のX方向に対し角度αだけ回転させた状態で挿入する。
【0024】
その後、図4(a),(b)に示すように、留め具40全体を矢印H方向に角度αだけ回転させ、係止ピン取付け片45の立設された2つの係止ピン42の内残った1つ(係止ピン42b)を、バンド本体20の取付け孔25に挿入する。取付け孔25は、取付け孔24に対して角度−αを有するように配置されている。そのため、係止ピン42bの小判形状の係止部44の外形状と取付け孔25の小判形状の内形状とが合った状態で挿入される。
【0025】
このように、取り付けることによって、留め具40とバンド本体20とは、係止ピン42aの小判形状の係止部44と小判形状の取付け孔24とが互いに交差するように係止される。すなわち、留め具40とバンド本体20は、少なくとも2つの係止ピン42のうちどちらかが離脱困難な状態で取付け孔24,25に係合して仮固定される。なお、この角度αは特に限定しない。ただし、角度αが直角に近づくほど効果が高まる。
【0026】
(リストバンドの取付け方法について)
ここで、リストバンドの取付け方法について説明する。上述のように仮固定された留め具40とバンド本体20とを、本リストバンド10が装着される患者のところへもっていく。留め具40とバンド本体20とは仮固定されているため、一体で持ち運ぶことができる。そのため、留め具40の落下やそれに伴う紛失を防止することができる。
【0027】
次いで、留め具40が仮固定されたバンド本体20を、バンド本体20の記録領域21が外側を向くように、患者(被装着者)の手首もしくは足首に巻きつける。このとき、患者の手首や足首の太さに合わせ長さ調整をすることが好ましい。適正な長さに調整した後、バンド本体20の複数の挿通孔26の内、バンド本体20の一方の端部22の取付け孔24,25から突出する留め具40の2つの係止ピン42に最も近い2つの挿通孔26を、留め具40の当該2つの係止ピン42に嵌合させる。
【0028】
そして、留め具40の固着孔形成片48をヒンジ部49で折り畳む。固着孔形成片48がヒンジ部49で折り畳まれることによって、係止ピン取付け片45に設けられた2つの係止ピン42は、固着孔形成片48に形成された固着孔46に、バンド本体20の取付け孔24,25が形成された部位と挿通孔26が形成された部位とを挟持した状態で離脱不可能な状態で嵌合される。そして、図1に示すように、手首もしくは足首に恒久的に固定される。なお、退院時等に患者からリストバンド10を外すときには、バンド本体20をハサミ等で切断する。
【0029】
以下、本実施形態の効果を記載する。
リストバンド10において、バンド本体20の取付け孔24,25に留め具40の係止ピン取付け片45に設けられた2つの係止ピン42を挿入したとき、留め具40の係止ピン42の小判形状をした係止部44の長軸方向と、バンド本体20の小判形状をした取付け孔24,25の長軸方向とが、少なくとも一箇所で交差するようにすることができる。そのため、少なくとも一箇所の取付け部位において、バンド本体20と留め具40とを仮固定することができる。
【0030】
リストバンド10の取り付け作業において、バンド本体20の取付け孔24,25部分に留め具40を仮固定することができれば、情報の印刷場所から患者のところへ持ち運ぶとき一体として持ち運ぶことができ紛失等を防止することができる。また、患者の手首等に巻き付け長さ調整をして、バンド本体20に仮固定されている留め具40の係止ピン42を、バンド本体20の任意の挿通孔26を経由して留め具40の固着孔形成片48の固着孔46に容易に嵌合固着することができる。すなわち、リストバンド10の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0032】
10…リストバンド、20…バンド本体、21…記録領域、24,25…取付け孔、24a,25a,26a…長軸、26…挿通孔、40…留め具、42,42a,42b…係止ピン、43…軸、44…係止部、45…係止ピン取付け片、46…固着孔、47…固着片、48…固着孔形成片、49…ヒンジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に個人を識別する情報が記録される記録領域を有するとともに、人体の一部に巻き回されて装着されるリストバンドであって、
ヒンジ部で折り畳み可能な係止ピン取付け片および固着孔形成片を有し、前記係止ピン取付け片には少なくとも2つの係止ピンが形成され、前記固着孔形成片には前記係止ピン取付け片の前記係止ピンを嵌合固着する固着孔が形成された留め具と、
長尺形状を呈し、前記記録領域を挟んで一方の側に少なくとも2つの取付け孔が設けられ、他方の側に複数の挿通孔が列状に形成されたバンド本体と、
を備え、
前記留め具の少なくとも2つの前記係止ピンは、前記係止ピン取付け片から立設する軸と前記軸の先端部に設けられた長円形状の係止部とから構成され、前記係止部の長円形状の長軸方向が同一方向に形成されており、
前記バンド本体の前記取付け孔は、前記係止ピンの前記係止部が挿通可能な長円形状を呈し、長円形状の長軸方向が各々異なる方向に形成されていることを特徴とするリストバンド。
【請求項2】
前記係止部、前記取付け孔および前記挿通孔の長円形状は、小判形状であることを特徴とする請求項1に記載のリストバンド。
【請求項3】
前記係止部、前記取付け孔および前記挿通孔の長円形状は、楕円形状であることを特徴とする請求項1に記載のリストバンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88692(P2013−88692A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230404(P2011−230404)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】