説明

リソグラフィー用下地材及びそれを用いたパターン形成方法

【構成】 グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体から成るか、又はこれに紫外線吸収剤を含有させて成るリソグラフィー用下地材、及び(A)基板上に前記下地材から成る第一層を形成する工程、(B)この第一層の上にポジ型レジストから成る第二層を設けたのち、露光、次いで現像処理してパターン化する工程、(C)該パターン化したレジスト層をケイ素含有蒸気によりシリル化する工程、及び(D)このシリル化処理されたレジストパターンをマスクとして酸素系ガスを用いたドライエッチング法により、該下地材から成る第1層をパターン化する工程を順次施し、パターンを形成する方法である。
【効果】 断面が矩形で高解像度及び高選択比のレジストパターンが簡素化されたプロセスにより容易に得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なリソグラフィー用下地材及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明は、断面が矩形で高解像度及び高選択比のレジストパターンが得られるリソグラフィー用下地材、及びこのものを用いた簡素化されたパターン形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体素子においては、回路の高集積化や微細化の方向に進んでおり、また回路パターンも多層化の方向にある。そして、多層化に伴い、回路パターンを積層する必要があるため、基板の凹凸を埋め、平坦化する技術が重要となっている。
【0003】このような技術として、例えば(1)ポリメチルメタクリレートから成る熱軟化性樹脂を基板上に形成して表面を加熱平坦化し、その上にノボラック系レジストを形成したのち、露光、現像処理し、次いで上層のノボラック系レジストをシリル化し、さらにこのシリル化レジストパターンをマスクとして、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチング法により、前記下層の熱軟化性樹脂のパターニングを行う方法(特開平3−180033号公報)、(2)基板上に、活性光線に対する感度が異なる湿式現像可能な下部レジスト層と上部レジスト層を設け、まず上部レジスト層を露光、現像処理したのち、シリル化し、次いで下部レジスト層に上層のレジストパターンを介して遠紫外線を照射後、現像処理することによりパターンを形成する方法(特開昭62−258449号公報)などが提案されている。
【0004】しかしながら、前記(1)の方法においては、下地材としてポリメチルメタクリレートが用いられているため、上層のレジストと下地材とがインターミキシングを起こしやすく、良好な解像度のパターンが得られにくい上、シリル化をSiFやSiClなどのケイ素を含有するガスプラズマを用いてプラズマ表面処理することにより行っているので、工程が煩雑であるなどの欠点を有している。
【0005】一方、(2)の方法においては、下部レジスト層として、メチルメタクリレートとメタクリル酸と無水メタクリル酸とから成るメタクリレート系三元共重合体などを樹脂成分とする遠紫外領域に感度を有するものが用いられており、この下部レジスト層に対する遠紫外線照射工程が必要であって、パターン形成工程が煩雑になるのを免れず、また高選択比のレジストパターンが得られにくいという欠点がある。
【0006】なお、ここでいう選択比とは、シリル化した上層レジストをドライエッチングしたときの膜減り量をaとし、下地材をドライエッチングしたときの膜減り量をbとした場合、b/aで表わした値のことである。パターン形成法においては高選択比が要望されるが、これはドライエッチングにおいて、上層レジストの膜減りが少ないほど、また下地材の膜減りが多いほど、優れたパターンが形成されるからである。
【0007】他方、基板上に、有機色素を含有した色層と、この色層の上にベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含むポリグリシジルメタクリレートから成る有機材料層とを有するカラーフィルターが知られているが(特公平3−81122号公報)、この場合の有機材料はカラーフィルター用のものであって、リソグラフィー用下地材ではないし、また、このようなポリグリシジルメタクリレートを該下地材として用いた場合、高選択比のレジストパターンが得られない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情のもとで、上層レジストと下地材との間にインターミキシングが起らず断面矩形で高解像度及び高選択比のレジストパターンが得られるリソグラフィー用下地材及びこのものを用いて、簡単なプロセスにより、前記の好ましい性質を有するレジストパターンを形成する方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体又は所望に応じこれに紫外線吸収剤を含有させた下地材がポジ型レジストとインターミキシング現象を生じず、しかもドライエッチングしたときの膜減り比が相違すること、そして、基板上に、該下地材から成る第一層及びその上にポジ型レジストから成る第二層を設け、この第二層を露光、現像処理してパターン化したのち、特定の方法によりシリル化処理し、次いでこれをマスクとしてドライエッチングにより、該下地材から成る第一層をパターン化することにより、容易に矩形で高解像度及び高選択比のレジストパターンが形成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明は、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体から成るか、又はこの共重合体に紫外線吸収剤を含有させて成るリソグラフィー用下地材、及び(A)基板上に、前記リソグラフィー用下地材から成る平坦化された第一層を形成する工程、(B)前記下地材から成る第一層の上に、ポジ型レジストから成る第二層を設けたのち、画像形成露光し、次いで現像処理してパターン化する工程、(C)前記パターン化したレジスト層をケイ素を含有する蒸気と接触させてシリル化処理する工程、及び(D)このシリル化処理されたレジストパターンをマスクとして酸素系のガスを用いてドライエッチングし、前記下地材から成る第一層をパターン化する工程を順次施すことを特徴とするパターン形成方法を提供するものである。
【0011】本発明の下地材は、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体又はこれに紫外線吸収剤を含有させたものであって、該共重合体としては、グリシジルメタクリレート単位とメチルメタクリレート単位との割合が重量比で2:8ないし8:2、好ましくは3:7ないし7:3にあり、かつ平均分子量が1万〜20万、好ましくは2万〜10万の範囲にあるものが好適である。該組成比や平均分子量が前記範囲を逸脱すると、ポジ型レジストとインターミキシングを起しやすくなり、平坦化性も悪い上、高選択比、高解像度及びプロファイル形状の優れたレジストパターンが得られにくい。
【0012】また、所望に応じて前記共重合体に配合される紫外線吸収剤については特に制限はなく、例えばサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、アゾ系、ポリエン系、アントラキノン系など、いずれも用いることができるが、本発明においてはベンゾフェノン系のものが好ましい。
【0013】ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2′‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2′‐ジヒドロキシ‐4,4′‐ジメトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐n‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシ‐2′‐カルボキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクタデシロキシベンゾフェノン、4‐ドデシロキシ‐2‐ヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐(2‐ヒドロキシ‐3‐メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、N,N′‐テトラメチル‐4,4′‐ジアミノベンゾフェノン、2‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,5‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4′‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,3,4‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′3,4,4′‐ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3′4,4′,5′‐ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0014】サリシレート系紫外線吸収剤としては、例えばフェニルサリシレート、p‐tert‐ブチルフェニルサリシレート、p‐オクチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。
【0015】ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2‐(2′‐ヒドロキシ‐5′‐メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐5′‐tert‐ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′,5′‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′‐tert‐ブチル‐5′‐メチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′,5′‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′,5′‐ジ‐tert‐アミノフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0016】シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば2‐エチルヘキシル‐2‐シアノ‐3,3‐ジフェニルアクリレート、エチル‐2‐シアノ‐3,3‐ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。アゾ系紫外線吸収剤としては、例えば4‐ジメチルアミノ‐4′‐ヒドロキシアゾベンゼン、1‐エトキシ‐4‐(4′‐N,N‐ジエチルアミノフェニルアゾ)‐ベンゼンなどが挙げられる。ポリエン系紫外線吸収剤としては、例えば4‐ジメチルアミノ‐4′‐ヒドロキシ‐3′‐ニトロスチルベン、4‐ジエチルアミノ‐4′‐ヒドロキシ‐3′‐ニトロスチルベンなどが挙げられる。アントラキノン系紫外線吸収剤としては、例えば1,2,5,8‐テトラヒドロキシアントラキノン、1,4,9,10‐テトラヒドロキシアントラセン、1,5‐ジアミノアントラキノンなどが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】前記紫外線吸収剤の使用量については特に制限はなく、使用する基板の光の反射率に応じて適宜選ばれるが、通常該共重合体に対して10〜40重量%、好ましくは20〜30重量%の割合で用いられる。この紫外線吸収剤を含有させることにより、アルミニウムのような高反射率基板を用いても、断面矩形で高解像度のレジストパターンが得られる。
【0018】次に、本発明のパターン形成方法について説明すると、まず、(A)工程において適当な基板上に、前記のグリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体から成るか、又はこの共重合体に前記紫外線吸収剤を含有させた下地材から成る平坦化された第一層を形成させる。この際用いられる基板については特に制限はなく、従来リソグラフィーによるパターン形成に慣用されているもの、例えばシリコンウエハーや、アルミニウム、タンタルなどの金属基板などが用いられる。
【0019】また、該基板上に、下地材から成る第一層を設けるには、適当な溶剤中にグリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体及び場合により用いられる紫外線吸収剤を溶解させて塗布液を調製し、この溶液をスピンナーなどを用いて、該基板上に塗布し、乾燥すればよい。
【0020】次に、(B)工程において、このようにして形成された該下地材から成る第一層の上に、ポジ型レジストから成る第二層を設けたのち、画像形成露光、次いで現像処理してパターン化する。この(B)工程において用いられるポジ型レジストとしては、通常被膜形成用物質としてのアルカリ可溶性樹脂と感光性成分としてのキノンジアジド基含有化合物とを組み合わせたものが使用される。該アルカリ可溶性樹脂としては、例えばノボラック樹脂、アクリル樹脂、スチレンとアクリル酸との共重合体、ヒドロキシスチレンの重合体、ポリビニルフェノール、ポリα‐メチルビニルフェノールなどが挙げられ、中でも特にアルカリ可溶性ノボラック樹脂が好ましい。
【0021】このアルカリ可溶性ノボラック樹脂については特に制限はなく、従来ポジ型ホトレジストにおいて被膜形成用物質として慣用されているもの、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールなどの芳香族ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドなどのアルデヒド類とを酸性触媒の存在下に縮合させたものなどが用いられる。このアルカリ可溶性ノボラック樹脂としては、低分子領域をカットした重量平均分子量が2000〜20000、好ましくは5000〜15000の範囲のものが好ましい。
【0022】一方、キノンジアジド基含有化合物としては、例えばオルトベンゾキノンジアジド、オルトナフトキノンジアジド、オルトアントラキノンジアジドなどのキノンジアジド類のスルホン酸と、フェノール性水酸基又はアミノ基を有する化合物とを部分若しくは完全エステル化、あるいは部分若しくは完全アミド化したものなどが挙げられる。フェノール性水酸基又はアミノ基を有する化合物としては、例えば2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのポリヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸アルキル、没食子酸アリール、フェノール、フェノール樹脂、p‐メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ポリヒドロキシジフェニルアルカン、ポリヒドロキシジフェニルアルケン、ビスフェノールA、α,α′,α″‐トリス(4‐ヒドロキシフェニル)‐1,3,5‐トリイソプロピルベンゼン、1‐〔1‐(4‐ヒドロキシフェニル)イソプロピル〕‐4‐〔1,1‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン又はそのメチル置換体、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール‐1,3‐ジメチルエーテル、没食子酸、水酸基を一部残してエステル化又はエーテル化された没食子酸、アニリン、p‐アミノジフェニルアミンなどが挙げられる。特に好ましいキノンジアジド基含有化合物は、ポリヒドロキシベンゾフェノンとナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐5‐スルホン酸又はナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐4‐スルホン酸との完全エステル化物や部分エステル化物であり、特に、平均エステル化度が70%以上のものが好ましい。該キノンジアジド基含有化合物から成る感光性成分は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】このキノンジアジド基含有化合物は、例えば前記ポリヒドロキシベンゾフェノンを、ナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐5‐スルホニルクロリド又はナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐4‐スルホニルクロリドとをジオキサンなどの適当な溶媒中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリなどのアルカリの存在下に縮合させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより製造することができる。
【0024】本発明においては、該ポジ型レジストは、前記のアルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド基含有化合物を適当な溶剤に溶解して溶液の形で用いるのが好ましい。
【0025】このような溶剤の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、1,1,1‐トリメチルアセトンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール又はジエチレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3‐エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】また、該レジストには、さらに必要に応じて相容性のある添加物、例えばレジスト膜の性能などを改良するための付加的樹脂、可塑剤、安定剤あるいは現像した像をより一層可視的にするための着色料、またより増感効果を向上させるための増感剤などの慣用されているものを添加含有させることができる。
【0027】本発明方法における(B)工程においては、このように調製されたポジ型レジストを、前記(A)工程で形成された下地材から成る第一層の上に、スピンナーなどで塗布し、乾燥してポジ型レジストから成る第二層を設け、次いで紫外線を発光する光源、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプなどを用い所要のマスクパターンを介して露光するか。あるいは電子線を走査しながら照射する。次にこれを現像液、例えば1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のような弱アルカリ性水溶液に浸せきすると、露光によって可溶化した部分が選択的に溶解除去されて、マスクパターンに忠実なパターンが形成される。
【0028】次いで、(C)工程において、前記のパターン化したレジスト層をケイ素を含有する蒸気中に曝してシリル化処理を行う。このシリル化処理は、例えばヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、他の多官能性シラザン類などのケイ素を含有する蒸気に、好ましくは30〜100℃の範囲の温度で1〜60分間程度該パターン化したレジスト層を曝すことにより行われる。
【0029】次に、(D)工程において、前記のようにしてシリル化されたレジストパターンをマスクとして、酸素系のガスを用いたドライエッチング法により、該下地材から成る第1層をパターン化する。前記ドライエッチング法としては、従来公知の方法、例えばプラズマエッチング法などが有利である。このようにして、断面が矩形で高解像度及び高選択比のレジストパターンが容易に得られる。
【0030】
【発明の効果】本発明のリソグラフィー用下地材は、ポジ型レジストと組み合わせて使用することにより、断面が矩形で高解像度及び高選択比のレジストパターンを与えることができる。また、この下地材を用いることにより、簡素化されたプロセスで、前記の好ましい性質を有するレジストパターンが容易に得られる。
【0031】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0032】実施例1(1)下地材の製造グリシジルメタクリレート100gとメチルメタクリレート100gとを混合し、N,N′‐アゾビスイソブチロニトリル2gを加えて窒素ガス雰囲気中でかきまぜながら60℃で約7時間反応させた。反応終了後、反応物をメタノール1リットル中に注加してポリマーを析出させ、得られたポリマーを室温下で減圧乾燥した。ポリマーの収量は150gであり、重量平均分量(Mw)は10万で、分散度は1.7であった。
【0033】上記の操作により得られたグリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体10gと2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン3gをエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート100gに溶解し、メンブランフィルターでろ過して、不純物を除去することによって下地材の溶液を得た。
【0034】(2)レジストパターンの形成アルミニウムが蒸着されたシリコンウエハー上に前記(1)で得られた下地材の溶液をスピンナー塗布して、180℃で5分間焼き付け、厚さ約0.5μmの平坦下層を形成した。次に、ポジ型ホトレジストTHMRip2800(東京応化工業社製)を、上記平坦化層上にスピンナー塗布して、90℃にて、90秒間焼き付け、厚さ約1.26μmの層を形成した。このレジスト層をNSR‐150517A(ニコン社製)を用いて、マスクを介して、露光し、2.38wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて現像して、パターン化した。
【0035】上述の方法で、パターン化したウエハーをヘキサメチルジシラザン蒸気でみたした乾燥器中に、70℃にて15分間ベーパー処理した。ヘキサメチルジシラザンとしてはOAP(東京応化工業社製)を用いた。次に、プラズマエッチング装置TCA‐2400(東京応化工業社製)を用いて、CHF3とO2の容量比2:3の混合ガスを反応ガスとして、0.80Torr、出力300W、ステージ温度60℃、エッチング時間30秒の条件でドライエッチングを行った。その際の残膜より選択比を求めたところ6.0であった。また、形成された上層レジストのパターンは、断面が矩形で良好なものであった。
【0036】さらに、形成された下地材と上層レジストのインターミキシングの状態、ノッチング(照射光の基板からの反射によるレジストパターンの変形)の状態、及び平坦化性について観察したところ、これら全てにおいて良好な結果が得られた。これらの結果を表1に示す。
【0037】比較例1及び比較例2比較例1においては、下地材をポリメチルメタクリレートとし、比較例2においては、下地材をポリグリシジルメタクリレートとしたこと以外は、実施例1と同様の操作によりレジストパターンを形成し、選択比を求めた。さらにインターミキシングの状態、ノッチングの状態、平坦化性及びプロファイルの形状を観察した。それらの結果を表1に示す。
【0038】比較例3シリル化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作によりレジストパターンを形成し、選択比を求めた。さらにインターミキシングの状態、ノッチングの状態、平坦化性及びプロファイルの形状を観察した。それらの結果を表1に示す。
【0039】比較例4及び比較例5比較例4においては、下地材をポリメチルメタクリレートとし、比較例5においては、下地材をポリグリシジルメタクリレートとしたこと以外は、比較例3と同様の操作によりレジストパターンを形成し、選択比を求めた。さらにインターミキシングの状態、ノッチングの状態、平坦化性及びプロファイルの形状を観察した。それらの結果を表1に示す。
【0040】実施例2〜4下地材の重量比、平均分子量、紫外線吸収剤の種類と添加量を変えた以外は、実施例1と同様の操作により、リソグラフィー用下地材を得た。そして、得られた下地材を用いて実施例1と同様の操作によりレジストパターンを形成し、選択比を求めた。さらにインターミキシングの状態、ノッチングの状態、平坦化性及びプロファイルの形状を観察した。それらの結果を表1に示す。
【0041】比較例6及び比較例7比較例6においては、下地材の平均分子量を30万とし、また比較例7においては、下地材の平均分子量を5千とした以外は、実施例1と同様の操作によりリソグラフィー用下地材を得た。そして、得られた下地材を用いて実施例1と同様の操作によりレジストパターンを形成し、選択比を求めた。さらにインターミキシングの状態、ノッチングの状態、平坦化性及びプロファイルの形状を観察した。それらの結果を表1に示す。
【0042】実施例5紫外線吸収剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作によりリソグラフィー用下地材を得た。さらに、その得られた下地材を用い、アルミニウムが蒸着されていないシリコンウエハー基板を使用した以外は、実施例1と同様の操作によりレジストパターンを形成し、選択比を求めた。さらにインターミキシングの状態、ノッチングの状態、平坦化性及びプロファイルの形状を観察した。それらの結果を表1に示す。
【0043】実施例6紫外線吸収剤の添加量を5重量%とした以外は、実施例1と同様の操作によりリソグラフィー用下地材を得た。得られたその下地材を用いて、実施例5と同様にアルミニウムが蒸着されていないシリコンウエハー基板を使用した以外は、実施例1と同様の操作によりレジストパターンを形成し、選択比を求めた。さらにインターミキシングの状態、ノッチングの状態、平坦化性及びプロファイルの形状を観察した。それらの結果を表1に示す。なお、表1における各物性は以下の方法により評価したものである。
【0044】(1)選択比;リソグラフィー用下地材を基板上に塗布し、乾燥したのち、これをドライエッチングしたときのエッチングレートxと、ポジ型レジストを基板上に塗布し、乾燥したのち、パターン化し、これをドライエッチングしたときのエッチングレートyとの比x/yを求め選択比とした。
【0045】(2)インターミキシング;試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、上層レジストと下地材との境界にインターミキシング層が形成されていない場合を○、インターミキシング層が形成されている場合を×とした。
【0046】(3)ノッチング;試料の平面上の平行に形成させた数本の直線状レジストパターンを観察し、変形が認められない場合を○、各直線にゆがみを生じた場合を×とした。
【0047】(4)平坦化性;試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、下地材層の上面が直線状の場合を○、波状の場合を×とした。
【0048】(5)プロファイル形状;断面が矩形のパターンの試料の断面を光学顕微鏡で観察し、端部がシャープな場合を○、丸くなっている場合を×とした。
【0049】また、表1中の略号は次の化合物を意味する。
MMA:メチルメタクリレートGMA:グリシジルメタクリレートPMMA:ポリメチルメタクリレートPGMA:ポリグリシジルメタクリレートTEB:2,2′4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノンTRB:2,4,5‐トリヒドロキシベンゾフェノン
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体から成るリソグラフィー用下地材。
【請求項2】 グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体に紫外線吸収剤を含有させて成るリソグラフィー用下地材。
【請求項3】 紫外線吸収剤がベンゾフェノン系化合物である請求項2記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項4】 ベンゾフェノン系化合物が2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノンである請求項3記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項5】 (A)基板上に請求項1又は2のリソグラフィー用下地材から成る平坦化された第一層を形成する工程、(B)前記下地材から成る第一層の上に、ポジ型レジストから成る第二層を設けたのち、画像形成露光し、次いで現像処理してパターン化する工程、(C)前記パターン化したレジスト層をケイ素を含有する蒸気と接触させてシリル化処理する工程、及び(D)このシリル化処理されたレジストパターンをマスクとして酸素系のガスを用いてドライエッチングし、前記下地材から成る第一層をパターン化する工程を順次施すことを特徴とするパターン形成方法。