説明

リソグラフィー用下地材及びそれを用いた多層レジスト材料

【構成】 (a)少なくとも2個の架橋形成性官能基をもつトリアジン化合物、(b)高吸光性物質、及び場合により(c)アルカリ不溶性アクリル系樹脂を含有して成るリソグラフィー用下地材、並びに、基板上に、この下地材から成る層及びレジスト層を順次設けた多層レジスト材料である。好適には、(a)成分はヒドロキシル基及び/又はアルコキシル基をもつトリアジン化合物、特にメチロール基及び/又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン又はグアナミン、(b)成分はベンゾフェノン系、ジフェニルスルホン系、ジフェニルスルホキシド系のもの、(c)成分はグリシジル基をもつアクリル系樹脂である。
【効果】 基板からの反射光を十分に抑制でき、インターミキシング層の発生がなく、ノッチングが起らず、マスクパターンに対する寸法精度に優れるとともに、断面が矩形で高解像度及び高アスペクト比のレジストパターンを与える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なリソグラフィー用下地材及びそれを用いた多層レジスト材料に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明は、基板からの反射光を十分に抑制することができ、インターミキシングやノッチングなどを生じることなく、マスクパターンに忠実なレジストパターンを与える上、アスペクト比の大きい熱架橋反応性に優れたリソグラフィー用下地材、及びこの下地材を用いた多層レジスト材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、リソグラフィー工程において、アルミニウム膜、タングステンシリサイド膜などの高反射性膜を有する基板や段差を有する基板を用いる場合は、定在波の影響や基板からの乱反射により、マスクパターンに対するレジストパターンの忠実度が低下し、寸法精度の劣化、レジストパターンの局所的なゆがみ、いわゆるノッチングを生じることが知られている。
【0003】また、近年、半導体デバイスの集積度の増大とともに、像形成用放射線の短波長化が進み、i線(365nm)、遠紫外線、エキシマレーザーを用いたリソグラフィーが主流になりつつあるが、このような短波長の放射線を用いると、アルミニウム膜やタングステンシリサイド膜のような高反射性膜を有しない基板や、段差を有する基板に限らず、シリコン酸化膜のような普通の基板においても反射光が大きくなる傾向がある。
【0004】したがって、近年、反射光によるマスクパターンに対するレジストパターンの寸法精度の劣化や、ノッチングを抑制するために、基板とレジスト層との間に反射防止膜を設けるARC(Anti‐Reflective Coating)法が注目され、これまで種々の反射防止膜(下地材)が提案されている。
【0005】例えば、紫外線吸収剤を添加した反射防止膜を基板とレジスト層との間に設けたものが提案されているが(特開昭59−93448号公報)、この反射防止膜には、ポリアミン酸やポリブテンスルホン酸を樹脂成分として用いなければならないため、レジスト層や反射防止膜の密着性が低く、剥離を生じたり、残さスカムを発生するという欠点がある。
【0006】このような欠点を改良するために、ジフェニルアミン誘導体とメラミン誘導体とを酸触媒の存在下で縮合して得られる樹脂に、レジスト層の感光成分の感光特性波長域に吸収能を有する高吸光性物質を配合したパターン形成材料(特公平3−67261号公報、特開昭63−138353号公報)や、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体に紫外線吸収剤を配合した下地材(特開平6−35201号公報)や、ポリ(α‐シアノ酢酸ビニル)を用いた反射防止膜(特開平6−69124号公報)あるいは、無水マレイン酸とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を用いた反射防止膜(特開平6−75378号公報)などが提案されている。
【0007】しかしながら、これらのものは、紫外線吸収剤と樹脂成分との相容性が不十分で、配合しうる紫外線吸収剤の量に限界があり、その限界量を超えるとその上に設けるレジスト層と反射防止層や下地層との間にインターミキシングを生じるため、反射防止効果を十分に高めることができない上に、半導体デバイスの微細化に対応しうるマスクパターンの寸法精度が得られないという欠点がある。さらに、作業能率やマスクパターンに対する忠実度を高めるには、レジスト層のエッチング速度に対する下地材のエッチング速度の比、すなわちアスペクト比を大きくすることが望ましいが、これらの下地材は、このアスペクト比を十分に大きくすることができなかった。
【0008】また、ポリスルホンやポリユリアスルホンを用いたdeep UV用の反射防止膜が提案されている(米国特許第5,234,990号明細書)。しかしながら、このような反射防止膜を用いてレジストパターンを形成すると、レジストと反射防止膜との界面において(レジスト底部分)、アンダーカット現象が起こり、ひいては、パターン倒れといった現象が生じるおそれがある。
【0009】さらに、ノボラック樹脂などのフェノール性樹脂とメラミン‐ホルムアルデヒド樹脂などの熱架橋剤とを含む反射防止膜が提案されている(特開平6−118631号公報)。しかしながら、この反射膜はノボラック樹脂を含有しているため、反射防止膜自体の耐エッチング性が強すぎ、反射防止膜をドライエッチングで除去する際に、その上層に形成されたレジストパターンの膜べりも大きくなり、アスペクト比が小さくなるという問題がある。さらに、熱架橋剤として含まれているメラミン‐ホルムアルデヒド樹脂は、架橋形成性官能基を有しているものの、熱架橋反応性が十分ではなく、反射防止膜を形成させる際に高温で長時間熱架橋反応させなければならず、したがって、高スループットの要求される半導体素子の製造には適していない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来技術がもつ問題を解決し、基板からの反射光を十分に抑制することができ、インターミキシングやノッチングを生じることなく、マスクパターンに対して忠実なレジストパターンを与える上、アスペクト比の大きい熱架橋反応性に優れたリソグラフィー用下地材、及びこの下地材を用いた多層レジスト材料を提供することを目的としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的を達成するために、リソグラフィー用下地材の改良について種々研究を重ねた結果、加熱により架橋を形成しうる官能基をもつトリアジン化合物と、高吸光性物質とを含有させた下地材を用いると、基板からの反射光を十分に抑制することができ、またインターミキシングやノッチングを生じることがなく、マスクパターンに対して忠実なレジストパターンを与えること及びこれにさらにアルカリ不溶性アクリル系樹脂を含有させるとアスペクト比を大きくしうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0012】すなわち、本発明は、(a)少なくとも2個の架橋形成性官能基をもつトリアジン化合物、(b)高吸光性物質、及び場合により(c)アルカリ不溶性アクリル系樹脂を含有することを特徴とするリソグラフィー用下地材、並びに、基板上に、上記(a)成分、(b)成分及び場合により(c)成分を有機溶剤に溶解したリソグラフィー用下地材溶液を塗布し、(a)成分、(b)成分及び場合により用いられる(c)成分を架橋させて形成したリソグラフィー用下地材層の上にレジスト層を設けて成る多層レジスト材料を提供するものである。
【0013】本発明において(a)成分として用いるトリアジン化合物は、加熱により自己同士で、あるいは併用される(b)成分又は(c)成分あるいはその両方との間で架橋を形成しうる官能基を2個以上もつものである。このような架橋形成性官能基の例としてはメチロール基及びアルコキシメチル基を挙げることができる。
【0014】この成分として用いるトリアジン化合物の例としては、一般式
【化3】


(式中のRは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基又は−NR34基であり、R3及びR4はたがいに同じか異なったもので、それぞれ水素原子、メチロール基、アルコキシメチル基を示すが、分子中に存在する4〜6個のR3及びR4の中の少なくとも2個はメチロール基又はアルコキシメチル基である)で表わされる置換メラミン又は置換グアナミンを挙げることができる。これらはまた、二量体あるいは三量体として存在していてもよく、トリアジン環1個当りのメチロール基又はアルコキシメチル基の数は平均3以上6未満の範囲が好ましい。
【0015】このようなトリアジン化合物は、例えば公知方法に従いメラミン又はグアナミンを沸騰水中でホルマリンと反応させてメチロール化することにより、あるいはこれにさらに低級アルコールを反応させてアルコキシル化することにより容易に製造することができる。これらの化合物の中、メトキシメチル基平均3.7個で置換されたメラミン及びメトキシメチル基平均5.8個で置換されたメラミンは、それぞれ市販品Mx−750及びMw−30(いずれも三和ケミカル社製)として入手することができる。
【0016】次に、本発明の(b)成分として用いる高吸光性物質は、本発明の下地材の上に設けられるレジスト層中の感光成分の感光特性波長域における光に対して高い吸収能を示し、基板からの反射によって生じる定在波や基板表面の段差による乱反射を防止しうるものであればよく、これまで、下地材あるいは反射防止膜の成分として用いられたものの中から任意に選んで使用することができる。このような高吸光性物質としては、例えばサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、アゾ系、ポリエン系、アントラキノン系などが知られているが、これらの中でポリヒドロキシベンゾフェノン、特に2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノンが(a)成分や溶剤に対する相容性がよい点、インターミキシングを生じない点、(a)成分の熱架橋に対し、反応促進効果を有する点、i線(365nm)以下の波長の光に対する吸光性能に優れる点、さらに(a)成分との熱架橋性に優れる点で有利である。
【0017】さらに、この(b)成分として、一般式
【化4】


(式中のXは−SO−又は−SO2−、R1及びR2は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子又は低級アルキル基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、k、m、p及びqは、それぞれ1〜3の整数で、かつk+m=5及びp+q=5の関係を満たし、R1が複数ある場合、各R1は同一でも異なっていてもよく、R2が複数ある場合、各R2は同一でも異なっていてもよい)で表わされる化合物も用いることができる。
【0018】この一般式(II)で表わされる化合物において、Xが−SO2−の場合の例としては、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホンなどが挙げられ、また−SO−の場合の例としては、ビス(2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)‐スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシドなどが挙げられる。
【0019】このようなスルホン化合物やスルホキシド化合物を用いることにより、得られる下地材のdeep UV(特に248nm)に対する透過率が低く、良好の上層レジストパターンが得られるとともに、アスペクト比も大きくなる。
【0020】これらの化合物の中で、Xの位置に対し、p‐位に水酸基を有し、かつ対称構造のもの、例えばビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシドなどが、熱架橋反応性が良好で好ましく、特に、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン及びビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシドが、熱架橋反応性が高く、かつインターミキシングが発生せず、好適である。これらの高吸光性物質は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】本発明において場合により用いられる(c)成分のアルカリ不溶性アクリル系樹脂は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキルなどの原料モノマーから得られる重合体であって、このような重合体としては、例えば重量平均分子量が1万〜20万、好ましくは2万〜10万の範囲にあるポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体などが挙げられる。これらの中でも特に、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの重量比が2:8ないし8:2、好ましくは3:7ないし7:3の範囲の共重合体が、インターミキシング層が発生せず、高アスペクト比のリソグラフィー用下地材が得られるため、好ましい。
【0022】このアクリル系樹脂の製造法は次のとおりである。すなわち、上記した原料モノマーの合計重量に対して1〜5重量倍の有機溶剤、例えばメチルエチルケトン、アセトンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などに溶解させ、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなどを原料モノマーの合計重量に対して通常0.05〜0.5重量%添加し、窒素ガス雰囲気中で撹拌することによる。通常、反応温度は50〜80℃、反応時間は3〜12時間の範囲で選ばれるが、目的とする重合体の種類、重量平均分子量によって適宜調整することができる。
【0023】このようにして得られた重合体を、メタノール、エタノールなどのアルコール中に加えて析出させたのち、減圧乾燥したものが、上記アクリル系樹脂として好ましく用いられる。
【0024】(a)成分及び(b)成分の配合割合は、(a)成分100重量部に対して(b)成分10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部の範囲が好ましい。場合により、(c)成分を用いる場合は、(a)成分と(b)成分の合計量100重量部に対して1〜400重量部、好ましくは5〜300重量部の範囲が好ましい。これらの割合が上記範囲より少なすぎると目的とする吸光度が得られず、ノッチングが生じたり、目的とするアスペクト比が得られなかったりするし、また多すぎてもインターミキシング層が生じる。
【0025】本発明においては、リソグラフィー用下地材は、前述の(a)成分、(b)成分、及び場合により用いられる(c)成分を適当な溶剤に溶解して溶液の形で用いるのが好ましい。
【0026】このような溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、1,1,1‐トリメチルアセトンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール又はジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、あるいはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環状エーテル類や、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3‐メトキシプロピオン酸メチル、3‐エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】また、本発明のリソグラフィー用下地材には、さらに必要に応じて相容性のある添加物、例えば、(a)成分の少なくとも2個の架橋形成性官能基をもつトリアジン化合物の架橋反応の促進剤となる酢酸、シュウ酸、マレイン酸、o‐ヒドロキシ安息香酸、3,5‐ジニトロ安息香酸、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸、SAX(三井東圧化学社製)などの有機酸を下地材の固形分に対して、5重量%未満の範囲で添加することができる。
【0028】また、塗布性の向上やストリエーション防止のための界面活性剤を添加することができる。このような界面活性剤としては、サーフロンSC−103、SR−100(旭硝子社製)、EF−351(東北肥料社製)、フロラードFc−431、フロラードFc−135、フロラードFc−98、フロラードFc−430、フロラードFc−176(住友3M社製)などのフッ素系界面活性剤が挙げられ、その添加量は、下地材の固形分に対して2000ppm未満の範囲で添加することができる。
【0029】本発明のリソグラフィー用下地材は、ネガ型、ポジ型を問わずどのようなレジストでも利用することができる。そのようなレジストとしては、■ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含有するポジ型レジスト、■露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト、■露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト、■露光により酸を発生する化合物、架橋剤、アルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジストなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】このリソグラフィー用下地材を用いて、本発明の多層レジスト材料を作製するには、まず、適当な基板上に、該下地材を上記した有機溶剤に溶解して調製した下地材溶液をスピンナーなどにより回転塗布したのち、100〜300℃の温度でベークし、0.05〜0.3μmの膜厚の下地材層を形成する。この温度で本発明の下地材は架橋反応を生じ、アルカリ溶液に対して不溶となり、上層レジスト層とのインターミキシング層を形成しにくくなる。このようにして下地材層を形成したのち、この上にレジスト層をスピンナーなどにより回転塗布し、乾燥してレジスト層を設ければよい。
【0031】このようにして得られた多層レジスト材料のレジスト層に対して、紫外線を発光する光源、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプ、エキシマレーザーステッパーなどを用い所要のマスクパターンを介して露光するか、あるいは電子線を走査しながら照射する。次にこれを現像液、例えば1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液に浸せきすると、ポジ型であれば露光部分が、ネガ型であれば未露光部分が選択的に溶解除去されて、マスクパターンに忠実なレジストパターンが形成される。
【0032】次いで、下地材層をレジストパターンをマスクとして、塩素ガスを用いたドライエッチング法によりパターン化する。なお、アスペクト比を高くするために上層レジスト層をシリル化することは既に公知の方法であるが、このシリル化処理を組み合わせて行ってもよい。このようなシリル化処理の1例としては、上層レジストをパターンニングしたのち、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、他の多官能性シラザン類などのシリル化剤の蒸気に、30〜100℃の範囲の温度で1〜60分間該パターンニングしたレジスト層をさらすことによって行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
【発明の効果】本発明のリソグラフィー用下地材は、アスペクト比の大きい熱架橋反応性に優れており、また、基板からの反射光を十分に抑制でき、インターミキシング層の発生がなく、ノッチングが起らず、マスクパターンに対する寸法精度に優れるとともに、断面が矩形で高解像度及び高アスペクト比のレジストパターンを与えることができる。
【0034】製造例1メラミン環1個当たり平均3.7個のメトキシメチロール基で置換された化合物である、MX−750(三和ケミカル社製)100g、2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン100g及びFc−430(住友3M社製、フッ素系界面活性剤)1000ppmをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2700gに溶解し、孔径が0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過することによって、下地材の溶液を得た。
【0035】製造例2グリシジルメタクリレート100gとメチルメタクリレート100gとをメチルエチルケトン200gに溶解し、N,N′‐アゾビスイソブチロニトリル2gを加えて窒素ガス雰囲気中で撹拌しながら、60℃で約7時間反応させた。反応終了後、反応物をメタノール1リットル中に加え、重合体を析出させ、この重合体を室温下で、減圧乾燥した。重合体の収量は150gであり、重量平均分子量は6万であった。この重合体91gとメラミン環1個当たり平均5.8個のメトキシメチロール基で置換された化合物である、Mw−30(三和ケミカル社製)27.2g、2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン72.8g、SAX(三井東圧化学社製)9.0g及びFc−430(住友3M社製、フッ素系界面活性剤)1000ppmをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2600gに溶解し、孔径が0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過することによって、下地材の溶液を得た。
【0036】製造例3製造例2で用いたものと同じ重合体100gと2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン80g及びFc−430(住友3M社製、フッ素系界面活性剤)1000ppmをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2400gに溶解し、孔径が0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過することによって、下地材の溶液を得た。
【0037】製造例4製造例2で用いたものと同じ重合体100gと2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン30g及びFc−430(住友3M社製、フッ素系界面活性剤)1000ppmをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2400gに溶解し、孔径が0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過することによって、下地材の溶液を得た。
【0038】製造例5メラミン環1個当たり、平均3.7個のメトキシメチロール基で置換された化合物であるMX−750(三和ケミカル社製)5g、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン5g及びFc−430(住友3M社製、フッ素系界面活性剤)1000ppmをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90gに溶解し、孔径が0.2ミクロンのメンブランフィルターを用いてろ過することにより、下地材の溶液を得た。
【0039】製造例6メラミン環1個当たり、平均3.7個のメトキシメチロール基で置換された化合物であるMX−750(三和ケミカル社製)5g、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド5g及びFc−430(住友3M社製、フッ素系界面活性剤)1000ppmをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90gに溶解し、孔径が0.2ミクロンのメンブランフィルターを用いてろ過することにより、下地材の溶液を得た。
【0040】製造例7(特開平6−118631号公報に記載された反射防止膜)フェノールとホルムアルデヒドとを酸触媒により縮合して得られたフェノールノボラック樹脂(Mw=5,000)5g、ヘキサメトキシメチルメラミンであるMw−30HM(三和ケミカル社製)2.5g及びFc−430(住友3M社製、フッ素系界面活性剤)1000ppmをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gに溶解し、孔径が0.2ミクロンのメンブランフィルターを用いてろ過することにより、下地材の溶液を得た。
【0041】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0042】実施例1シリコンウェーハ上に製造例1で得られた下地材の溶液をスピンナー塗布して、90℃で90秒間乾燥を行い、次いで180℃で5分間焼き付け、厚さ約0.15μmの下地材層を形成した。次に本質的にナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂から成るポジ型ホトレジストであるTSMR−iP3300(東京応化工業社製)を下地材層上にスピンナー塗布して、90℃にて、90秒間焼き付け、膜厚1.00μmのレジスト層を形成した。このレジスト層をNSR−1755i9C(ニコン社製)を用いてマスクパターンを介して、露光し、次いで露光後加熱処理(PEB)を110℃で90秒間行い、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて現像し、レジストパターンを形成した。
【0043】次にプラズマエッチング装置TUE−1102(東京応化工業社製)を用いて、塩素ガスをエッチャントとして、30mTorr、出力150W、温度20℃にて、ドライエッチングを行った。その際のアスペクト比を求めたところ、1.91であった。また、形成されたインターミキシング、ノッチング、上層レジストの断面形状について、下記の方法により、評価したところ全ての特性について○であった。
【0044】実施例2実施例1において、用いた下地材を製造例2で調製したものに代えた以外は実施例1と同様にして、アスペクト比、インターミキシング、ノッチング、断面形状について評価した。その結果を表1に示す。
【0045】比較例1実施例1において、用いた下地材を製造例3で調製したものに代えた以外は実施例1と同様にして、アスペクト比、インターミキシング、ノッチング、断面形状について評価した。その結果を表1に示す。
【0046】比較例2実施例1において、用いた下地材を製造例4で調製したものに代えた以外は実施例1と同様にして、アスペクト比、インターミキシング、ノッチング、断面形状について評価した。その結果を表1に示す。
【0047】実施例3シリコンウェーハ上に製造例1で得られた下地材の溶液をスピンナー塗布して、90℃で90秒間乾燥処理を行い、次いで180℃で5分間焼き付け、厚さ約0.15μmの下地材層を形成した。次に本質的に酸発生剤と架橋剤とアルカリ可溶性樹脂からなるTHMR−iN200(東京応化工業社製)を下地材層上にスピンナー塗布して、110℃にて、90秒間焼き付け、膜厚1.00μmのレジスト層を形成した。このレジスト層をNSR−1755i9C(ニコン社製)を用いてマスクパターンを介して、露光し、ついで露光後加熱処理(PEB)を100℃で90秒間行い、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて現像し、レジストパターンを形成した。
【0048】以下のドライエッチング処理は、実施例1と同様にして行ないアスペクト比、インターミキシング、ノッチング、断面形状について評価した。その結果を表1に示す。
【0049】実施例4実施例3において、用いた下地材を製造例2で調製したものに代えた以外は実施例3と同様にして、アスペクト比、インターミキシング、ノッチング、断面形状について評価した。その結果を表1に示す。
【0050】比較例3実施例3において、用いた下地材を製造例3で調製したものに代えた以外は実施例3と同様にして、アスペクト比、インターミキシング、ノッチング、断面形状について評価した。その結果を表1に示す。
【0051】比較例4実施例3において、用いた下地材を製造例4で調製したものに代えた以外は実施例3と同様にして、アスペクト比、インターミキシング、ノッチング、断面形状について評価した。その結果を表1に示す。なお、各実施例及び比較例における各物性は以下の方法により評価した。
【0052】(1)アスペクト比;実施例1のエッチング条件で乾燥後の上層レジストのエッチングレートをXとし、乾燥後の下地材のエッチングレートをYとした場合、Y/Xを求めアスペクト比とした。
【0053】(2)インターミキシング;試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、上層レジストと下地材との境界にインターミキシング層が形成されていない場合を○、インターミキシング層が形成されている場合を×とした。
【0054】(3)ノッチング;0.40μmのマスクパターンを介し、実施例1又は実施例3に記載した露光、露光後の加熱処理、現像、ドライエッチングの一連の処理を施し、試料の平面上に平行に形成させた数本の直線状レジストパターンを観察し、変形が認められない場合を○、各直線にゆがみを生じた場合を×とした。
【0055】(4)断面形状;0.40μmのマスクパターンを介し、実施例1又は実施例3に記載した露光、露光後の加熱処理、現像の一連の処理を施し、レジストパターンの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、端部がシャープな場合を○、丸くなっている場合を×とした。
【0056】
【表1】


【0057】実施例5シリコンウェーハ上に製造例5で調製した下地材の溶液をスピンナー塗布して、90℃で90秒間乾燥を行い、次いで180℃で90秒間焼き付け、厚さ約0.1ミクロン下地材層を形成した。
【0058】次に、本質的に、酸発生剤と酸の作用によりアルカリ可溶性に変わる置換基を有するポリヒドロキシスチレンから成る化学増幅型ポジ型レジストであるDP−007AS(東京応化工業社製)を下地材上にスピンナー塗布し、90℃にて90秒間焼き付け、膜厚0.7ミクロンのレジスト層を得た。このレジスト層をNSR2005Ex8A(NA=0.5、ニコン社製)を用いて、マスクパターンを介して、露光し、次いで露光後加熱処理(PEB)を110℃で90秒間行い、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて65秒間パドル現像し、レジストパターンを形成した。その結果、0.3ミクロンのラインアンドスペースパターンが矩形状に形成されていた。
【0059】次に、プラズマエッチング装置TUE−1102(東京応化工業社製)を用いて、塩素ガスをエッチングガスとして、30mTorr、出力150W、温度20℃にて、ドライエッチングを行った。その際、乾燥後の上層レジスト層のエッチングレートをXとし、乾燥後の下地材層のエッチングレートをYとし、Y/Xを求めアスペクト比を算出したところ、2.0であった。また、試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、インターミキシング層は観察されなかった。さらに、ノッチングについても走査型電子顕微鏡にて観察したところ、ノッチングは観察されなかった。
【0060】実施例6実施例5において、下地材を製造例6で調製したものに代えた以外は、実施例5と同様にして、レジストパターンを得、次いでエッチング処理をし、断面形状、アスペクト比、インターミキシング及びノッチングの有無について評価した。その結果、0.3ミクロンのラインアンドスペースパターンが矩形状に形成された。アスペクト比は2.0であり、インターミキシング、ノッチングも観察されなかった。
【0061】比較例5実施例5において、下地材をポリスルホン系のポリマーを溶解して成る反射防止膜材料であるCD−7(ブリューワ サイエンス社製)に代えた以外は、実施例5と同様にしてレジストパターンを形成したところ、0.4ミクロンのラインアンドスペースパターンしか解像されず、また、レジスト底部にアンダーカットが生じ、またある箇所ではパターン倒れが発生した。そのため、エッチング処理は困難となった。
【0062】比較例6実施例5において、下地材を製造例7で調製したものに代えた以外は、実施例5と同様にして、レジストパターンを形成したところ、インターミキシングが生じ、裾引きのレジストパターン形状となった。そのため、エッチング処理を施すまでもなかった。
【0063】比較例7実施例5において、下地材を製造例7で調製したものに代え、下地材の焼き付け処理を300℃で5分間に代えた以外は実施例5と同様にして、レジストパターンを形成したところ、インターミキシングは生じず、矩形状のレジストパターンが得られた。
【0064】次いで、実施例5と同様にして、エッチングしたところアスペクト比は1.0と小さいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)少なくとも2個の架橋形成性官能基をもつトリアジン化合物及び(b)高吸光性物質を含有することを特徴とするリソグラフィー用下地材。
【請求項2】 (a)少なくとも2個の架橋形成性官能基をもつトリアジン化合物、(b)高吸光性物質及び(c)アルカリ不溶性アクリル系樹脂を含有することを特徴とするリソグラフィー用下地材。
【請求項3】 (a)成分がヒドロキシル基又はアルコキシル基あるいはその両方をもつトリアジン化合物である請求項1又は2記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項4】 (a)成分がメチロール基又はアルコキシメチル基あるいはその両方で置換されたメラミン若しくはグアナミンである請求項3記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項5】 (b)成分がベンゾフェノン系高吸光性物質である請求項1又は2記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項6】 ベンゾフェノン系高吸光性物質がポリヒドロキシベンゾフェノンである請求項5記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項7】 (b)成分が、一般式
【化1】


(式中のXは−SO−又は−SO2−、R1及びR2は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子又は低級アルキル基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、k、m、p及びqは、それぞれ1〜3の整数で、かつk+m=5及びp+q=5の関係を満たし、R1が複数ある場合、各R1は同一でも異なっていてもよく、R2が複数ある場合、各R2は同一であっても異なっていてもよい)で表わされる化合物である請求項1又は2記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項8】 (b)成分がビス(ポリヒドロキシフェニル)スルホン又はビス(ポリヒドロキシフェニル)スルホキシドである請求項7記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項9】 (c)成分がグリシジル基をもつアクリル系樹脂である請求項2記載のリソグラフィー用下地材。
【請求項10】 基板上に、(a)少なくとも2個の架橋形成性官能基をもつトリアジン化合物及び(b)高吸光性物質を有機溶剤に溶解したリソグラフィー用下地材溶液を塗布し、(a)成分と(b)成分とを架橋させて形成した下地材層の上にレジスト層を設けて成る多層レジスト材料。
【請求項11】 基板上に、(a)少なくとも2個の架橋形成性官能基をもつトリアジン化合物、(b)高吸光性物質及び(c)アルカリ不溶性アクリル系樹脂を有機溶剤に溶解したリソグラフィー用下地材溶液を塗布し、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を架橋させて形成したリソグラフィー用下地材層の上にレジスト層を設けて成る多層レジスト材料。
【請求項12】 (a)成分がヒドロキシル基又はアルコキシル基あるいはその両方をもつトリアジン化合物である請求項10又は11記載の多層レジスト材料。
【請求項13】 (a)成分がメチロール基又はアルコキシメチル基あるいはその両方で置換されたメラニン若しくはグアナミンである請求項12記載の多層レジスト材料。
【請求項14】 (b)成分がベンゾフェノン系高吸光性物質である請求項10又は11記載の多層レジスト材料。
【請求項15】 ベンゾフェノン系高吸光性物質がポリヒドロキシベンゾフェノンである請求項14記載の多層レジスト材料。
【請求項16】 (b)成分が、一般式
【化2】


(式中のXは−SO−又は−SO2−、R1及びR2は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子又は低級アルキル基であり、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、k、m、p及びqは、それぞれ1〜3の整数で、かつk+m=5及びp+q=5の関係を満たし、R1が複数ある場合、各R1は同一でも異なっていてもよく、R2が複数ある場合、各R2は同一でも異なっていてもよい)で表わされる化合物である請求項10又は11記載の多層レジスト材料。
【請求項17】 (b)成分がビス(ポリヒドロキシフェニル)スルホン又はビス(ポリヒドロキシフェニル)スルホキシドである請求項16記載の多層レジスト材料。
【請求項18】 (c)成分がグリシジル基をもつアクリル系樹脂である請求項11記載の多層レジスト材料。